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特開2024-12330電子デバイスエンクロージャ、物品、及び方法に好適な硬化エポキシ樹脂組成物
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  • 特開-電子デバイスエンクロージャ、物品、及び方法に好適な硬化エポキシ樹脂組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024012330
(43)【公開日】2024-01-30
(54)【発明の名称】電子デバイスエンクロージャ、物品、及び方法に好適な硬化エポキシ樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   H05K 5/02 20060101AFI20240123BHJP
   G06F 1/16 20060101ALI20240123BHJP
   H04M 1/02 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
H05K5/02 J
G06F1/16 312G
G06F1/16 312Q
H04M1/02 C
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023179208
(22)【出願日】2023-10-18
(62)【分割の表示】P 2020536144の分割
【原出願日】2018-12-21
(31)【優先権主張番号】62/610,639
(32)【優先日】2017-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】ベイアーマン,ブレット エー.
(72)【発明者】
【氏名】クラーク,ジョン シー.
(72)【発明者】
【氏名】ラーソン,エリック ジー.
(72)【発明者】
【氏名】ヒギンズ,ジェレミー エム.
(72)【発明者】
【氏名】フォーティコー,オードリー エス.
(72)【発明者】
【氏名】ロメダ,ジェイ アール.
(72)【発明者】
【氏名】マホニー,ウェイン エス.
(72)【発明者】
【氏名】チャールズ,スコット ビー.
(72)【発明者】
【氏名】フレッチャー,ティモシー ディー.
(72)【発明者】
【氏名】トンプソン,ウエンディ エル.
(72)【発明者】
【氏名】シュワルツ,カイル アール.
(57)【要約】      (修正有)
【課題】電子デバイス用のケースに使用するエポキシ樹脂組成物並びにエポキシ樹脂組成物及び電子デバイス用のエンクロージャを製造する方法を提供する。
【解決手段】ケース100及びカバー120からなる電子デバイス120用の防水エンクロージャであって、エンクロージャは、少なくとも50体積%の非導電性熱伝導性無機粒子を含む硬化エポキシ樹脂組成物を含み、この非導電性熱伝導性無機粒子が、アルミナ、窒化ホウ素、炭化ケイ素、アルミナ三水和物及びこれらの混合物から選択される。エンクロージャはまた、携帯電話、テーブルコンピュータ、ラップトップコンピュータ及びリモートマウスなどのハウジングあるいは電子デバイス用のケースであってもよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンクロージャを備え、前記エンクロージャが、少なくとも50体積%の非導電性熱伝導性無機粒子を含む硬化エポキシ樹脂組成物を含む、電子デバイス。
【請求項2】
前記エンクロージャが、ハウジング又はケースである、請求項1に記載の電子デバイス。
【請求項3】
前記電子デバイスが、電話、タブレット、ラップトップ、又はマウスから選択される、請求項1又は2に記載の電子デバイス。
【請求項4】
前記電子デバイスが、前記エンクロージャを介して充電することができる電池を備える、請求項1~3のいずれか一項に記載の電子デバイス。
【請求項5】
前記硬化エポキシ樹脂が、前記硬化エポキシ樹脂中に部分的に埋め込まれた複数の微小球を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の電子デバイス。
【請求項6】
前記硬化エポキシ樹脂中に部分的に埋め込まれた前記複数の微小球を含む前記硬化エポキシ樹脂が、6Hより大きい鉛筆硬度を有する、請求項5に記載の電子デバイス。
【請求項7】
前記硬化エポキシ樹脂が、少なくとも1W/m・Kの熱伝導率を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の電子デバイス。
【請求項8】
前記非導電性熱伝導性粒子が、>0eVの電子バンドギャップを有する材料を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の電子デバイス。
【請求項9】
前記硬化エポキシ樹脂が、高周波透過性であり、前記硬化エポキシ樹脂が、10~1010Hzの範囲において<0.03の誘電損失正接を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の電子デバイス。
【請求項10】
前記非導電性熱伝導性粒子が、>10W/m・Kのバルク熱伝導率を有する材料を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の電子デバイス。
【請求項11】
前記非導電性熱伝導性粒子が、アルミナ、窒化ホウ素、炭化ケイ素、アルミナ三水和物、及びこれらの混合物から選択される、請求項1~10のいずれか一項に記載の電子デバイス。
【請求項12】
前記非導電性熱伝導性粒子が、20、10、5、又は1ミクロン未満のメジアン粒径を有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の電子デバイス。
【請求項13】
前記硬化エポキシ樹脂組成物が、環状部分を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の電子デバイス。
【請求項14】
前記硬化エポキシ樹脂組成物が、脂環式部分を含む、請求項13に記載の電子デバイス。
【請求項15】
前記硬化エポキシ樹脂組成物が、0℃未満のガラス転移温度を有するオリゴマー又はポリマー部分を2~20重量%含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の電子デバイス。
【請求項16】
前記オリゴマー又はポリマー部分が、前記硬化エポキシ樹脂に共有結合している、請求項1~15のいずれか一項に記載の電子デバイス。
【請求項17】
前記硬化エポキシ樹脂組成物が、1~10%の範囲の破断点引張ひずみを有する、請求項1~16のいずれか一項に記載の電子デバイス。
【請求項18】
前記硬化エポキシ樹脂組成物が、5~50GPaの範囲の弾性率を有する、請求項1~17のいずれか一項に記載の電子デバイス。
【請求項19】
前記オリゴマー又はポリマー部分が、100~3000g/モルの範囲の重量平均分子量を有するエポキシ反応性オリゴマーから誘導される、請求項1~18のいずれか一項に記載の電子デバイス。
【請求項20】
前記エポキシ反応性オリゴマーが、ヒドロキシル基末端を有する、請求項1~19のいずれか一項に記載の電子デバイス。
【請求項21】
前記オリゴマー又はポリマー部分が、ポリカプロラクトンを含む、請求項15~20のいずれか一項に記載の電子デバイス。
【請求項22】
前記硬化エポキシ樹脂組成物が、分散剤を更に含む、請求項1~21のいずれか一項に記載の電子デバイス。
【請求項23】
前記硬化エポキシ樹脂組成物が、150、125、又は100℃未満のガラス転移温度を有する、請求項1~22のいずれか一項に記載の電子デバイス。
【請求項24】
前記硬化エポキシ樹脂組成物が、単一のガラス転移温度を有する、請求項1~23のいずれか一項に記載の電子デバイス。
【請求項25】
前記硬化エポキシ樹脂組成物が、50℃未満のtanδピーク半値幅を有する、請求項1~24のいずれか一項に記載の電子デバイス。
【請求項26】
前記硬化エポキシ樹脂組成物が、少なくとも2つのガラス転移温度を有する、請求項1~23のいずれか一項に記載の電子デバイス。
【請求項27】
前記硬化エポキシ樹脂組成物が、50℃以上のtanδピーク半値幅を有する、請求項1~24、及び26のいずれか一項に記載の電子デバイス。
【請求項28】
前記硬化エポキシ樹脂組成物が、硬化後に>70の光沢度を有する、請求項1~22のいずれか一項に記載の電子デバイス。
【請求項29】
請求項1~28のいずれか一項に記載の硬化エポキシ樹脂組成物を含む、電子デバイス。
【請求項30】
エポキシ樹脂を含む第1の部分と、
0℃未満のガラス転移温度を有するエポキシ反応性オリゴマー又はポリマー部分を2~20重量%含む第2の部分と、
を含む、有機成分と、
少なくとも50体積%の非導電性熱伝導性無機粒子と、
を含む、エポキシ樹脂組成物。
【請求項31】
エポキシ樹脂を含む第1の部分と、
0℃未満のガラス転移温度を有するエポキシ反応性オリゴマー又はポリマー部分を含む第2の部分と、
を含む、有機成分と、
少なくとも50体積%の非導電性熱伝導性無機粒子と、を含み、
前記エポキシ樹脂材料が、硬化後に100℃未満のガラス転移温度を有する、
エポキシ樹脂組成物。
【請求項32】
前記エポキシ樹脂組成物が、請求項5~28のいずれか一項又は組み合わせによって更に特徴づけられる、請求項30又は31に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項33】
エポキシ樹脂を含む第1の部分と、
エポキシ反応性オリゴマー又はポリマー部分を含む第2の部分と、
を含む、有機成分と、
少なくとも50体積%の非導電性熱伝導性無機粒子と、を含み、
前記エポキシ樹脂材料が、少なくとも2つのガラス転移温度、又は55℃以上のtanδピーク半値幅を有する、
エポキシ樹脂組成物。
【請求項34】
前記エポキシ樹脂組成物が、請求項5~23のいずれか一項又は組み合わせによって更に特徴づけられる、請求項33に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項35】
請求項30~34のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物を供給することと、前記組成物をハウジング又はケースに成形することと、を含む、電子デバイス用のエンクロージャを製造する方法。
【請求項36】
前記成形する工程が、前記エポキシ樹脂組成物を鋳型に供給することと、前記エポキシ樹脂組成物を硬化させることと、を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記エポキシ樹脂組成物を供給する前に、転写ポリマー層と、前記転写ポリマー層中に埋め込まれた複数の微小球とを含む転写フィルムを前記鋳型に供給する、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記エポキシ樹脂を硬化させた後に、前記転写ポリマー層を除去することを更に含む、請求項37に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
一実施形態において、エンクロージャを備え、このエンクロージャが、少なくとも50体積%の非導電性熱伝導性無機粒子を含む硬化エポキシ樹脂組成物を含む、電子デバイスについて記載する。エンクロージャは、電話、ラップトップ、又はマウスのハウジングであってもよい。あるいは、エンクロージャは、電子デバイス用のケースであってもよい。
【0002】
別の実施形態において、エポキシ樹脂を含む第1の部分と、0℃未満のガラス転移温度を有するエポキシ反応性オリゴマー又はポリマー部分を2~20重量%含む第2の部分と、を含む、有機成分と、少なくとも50体積%の非導電性熱伝導性無機粒子と、を含む、エポキシ樹脂組成物について記載する。
【0003】
別の実施形態において、エポキシ樹脂を含む第1の部分と、0℃未満のガラス転移温度を有するエポキシ反応性オリゴマー又はポリマー部分を含む第2の部分と、を含む、有機成分と、少なくとも50体積%の非導電性熱伝導性無機粒子と、を含み、エポキシ樹脂材料が、硬化後に100℃未満のガラス転移温度を有する、エポキシ樹脂組成物について記載する。
【0004】
別の実施形態において、本明細書に記載のエポキシ樹脂組成物を供給することと、組成物をハウジング又はケースに成形することと、を含む、電子デバイス用のエンクロージャを製造する方法について記載する。一実施形態において、成形する工程は、エポキシ樹脂組成物を鋳型に供給することと、エポキシ樹脂組成物を硬化させることと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】電子デバイスのケースの概略斜視図である。
図2】電子デバイスのハウジングの斜視図である。
図3】様々な具体化された硬化エポキシ樹脂組成物の温度の関数としてのtanδのプロットである。
図4】様々な具体化された硬化エポキシ樹脂組成物の温度の関数としてのtanδのプロットである。
図5】様々な具体化された硬化エポキシ樹脂組成物の温度の関数としてのtanδのプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0006】
ここでは、硬化エポキシ樹脂組成物を含む電子デバイス用のエンクロージャ(例えば、ハウジング又はケース)について述べる。硬化性エポキシ樹脂組成物についても記載されている。
【0007】
図1に関して、具体化された例示的なケース100(ケース100)は、三次元であり、概ね、外側主表面(図示せず)に平行な内側主表面110と、側壁115とを含む。ケースは、電子デバイス120を受け入れて合わせるように成形及びサイズ決めされる。ケース100は、典型的には開口部101を含む。電子デバイス120のカメラレンズ及びフラッシュは、典型的には開口部101を通して露出される。あるいは、ケース100及びカバー120が電子デバイス120用の防水エンクロージャを形成するように、開口部101は、十分に透明なフィルムを更に含んでもよい。ケース100は、電子デバイス120のディスプレイ130をフィルム125を通して見ることができるように、任意で、十分に透明なフィルム125を含むカバー120を含んでもよい。いくつかの実施形態において、ケース100全体が、本明細書に記載の硬化エポキシ樹脂組成物を含む。カバー120のフレーム121はまた、本明細書に記載の硬化エポキシ樹脂組成物を含んでもよい。いくつかの実施形態において、ケースの一部のみが、本明細書に記載の硬化エポキシ樹脂組成物を含む。いくつかの実施形態において、ケース又はその一部は、ケースを通して電池を充電できるように、電池と電気的に連通している。
【0008】
図1及び図2に関して、具体化された例示的なハウジング200及び220(ハウジング200及び220)は、三次元であり、概ね、外側主表面(図示せず)に平行な内側主表面210と、側壁215とを含む。ハウジング200及び220は、典型的には電子デバイスの背面を形成する。ハウジング220は、電子デバイス120の前面(例えば、ディスプレイ表面)130に取り付けられる。電子部品(図示せず)(例えば、電池、回路、コンピュータチップなど)は、電子デバイス120の前面(例えば、ディスプレイ表面)130とハウジング220との間に配置される。ハウジング200及び220は、典型的にはハウジング内に組み込まれたカメラレンズ205及びフラッシュ206を含む。いくつかの実施形態において、ハウジング200全体が、本明細書に記載の硬化エポキシ樹脂組成物を含む。他の実施形態において、ハウジングの一部のみが、本明細書に記載の硬化エポキシ樹脂組成物を含む。いくつかの実施形態において、ハウジング又はその一部は、ケースを通して電池を充電できるように、電池と電気的に連通している。
【0009】
本明細書に記載のエポキシ樹脂組成物は、様々な電子デバイス用のエンクロージャ(例えば、ケース及び/又はハウジング)としての使用に好適である。例示的な電子デバイスとしては、携帯電話、テーブルコンピュータ、ラップトップコンピュータ、及びリモートマウスなどの電池で動作するアクセサリが挙げられる。
【0010】
エポキシ樹脂組成物は、概ね、少なくとも2つのエポキシド基を含む少なくとも1つのエポキシ樹脂を含む。エポキシド基は、3個の環原子を有する環状エーテルであり、グリシジル基又はオキシラン基とも呼ばれることもある。エポキシ樹脂は、典型的には周囲温度で液体である低分子量モノマーである。
【0011】
エポキシ樹脂組成物は、概ね、少なくとも1つの環状部分を含む少なくとも1つのエポキシ樹脂を含む。環状部分は、芳香族又は環式脂肪族であってもよい。
【0012】
いくつかの実施形態において、エポキシ樹脂組成物は、ビスフェノールエポキシ樹脂を含む。ビスフェノールエポキシ樹脂は、エピクロロヒドリンをビスフェノールAと反応させて、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルを形成することから形成される。
【0013】
市販のビスフェノールエポキシ樹脂の例としては、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(例えば、Momentive Specialty Chemicals,Inc.から商品名EPON 828、EPON 1001、EPON 1004、EPON
2004、EPON 1510、及びEPON 1310で入手可能なもの、Dow Chemical Co.から商品名D.E.R.331、D.E.R.332、D.E.R.334、及びD.E.N.439で入手可能なもの);ビスフェノールFのジグリシジルエーテル(例えば、Huntsman Corporationから商品名ARALDITE GY 281で入手可能なもの)又はビスフェノールA樹脂とF樹脂とのブレンド(例えば、Momentive Specialty Chemicals,Inc.からのEPIKOTE 232);難燃性エポキシ樹脂(例えば、商品名DER 560で入手可能なもの、及びDow Chemical Companyから入手可能なものなどの臭素化ビスフェノール型エポキシ樹脂)が挙げられる。
【0014】
芳香族エポキシ樹脂はまた、ビフェニルジオール及びトリフェニルジオール並びにトリオールなどの芳香族アルコールとエピクロロヒドリンとの反応によって調製することもできる。このような芳香族ビフェニルエポキシ樹脂及び芳香族トリフェニルエポキシ樹脂は、ビスフェノールエポキシ樹脂ではない。1つの代表的な化合物は、Huntsman Corporation(Basel,Switzerland)からTactix(商標)742として入手可能なトリス-(ヒドロキシルフェニル)メタン系エポキシである。
【0015】
ノボラックエポキシ樹脂は、フェノールとホルムアルデヒドとの反応によって形成され、その後エピクロロヒドリンでのグリシジル化により、エポキシフェノールノボラック(EPN)及びエポキシクレゾールノボラック(ECN)などのエポキシ化ノボラックを生成する。これらは、固体樹脂に対して非常に粘稠であり、約2~6の典型的な平均エポキシド官能価を有する。代表的な市販のノボラックエポキシ樹脂は、Dowから商品名「D.E.N.431」として市販されている半固体エポキシノボラック樹脂である。このようなノボラックエポキシ樹脂は、25℃で液体であるエポキシ樹脂と組み合わせて使用することができる。
【0016】
好ましいエポキシ樹脂は、1分子当たり2つ以上の1,2エポキシ基を含む脂環式エポキシ樹脂である。これらは概ね、当該技術分野において既知であるように、過酸化水素、又は過酢酸及び過安息香酸などの過酸を使用して、シクロオレフィンなどの不飽和芳香族炭化水素化合物をエポキシ化することによって調製される。
【0017】
このような脂環式エポキシ樹脂は、飽和(すなわち、非芳香族)環構造を有し、エポキシド基は、環の一部であるか、又は環構造に結合している。これらのエポキシ樹脂は、典型的にはエポキシド基の間に1つ以上のエステル結合を含む。アルキレン(C~C)結合はまた、典型的にはエポキシド基とエステル結合との間、又はエステル結合の間に存在する。
【0018】
1つの好ましい脂環式エポキシ樹脂は、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレートであり、以下のように示される。
【化1】
【0019】
別の好ましい例示的な脂環式エポキシ樹脂は、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペートであり、以下のように示される。
【化2】
【0020】
別の好適な脂環式エポキシ樹脂としては、2つのエポキシド基(1つは環構造の一部である)を含むビニルシクロヘキサンジオキシド;3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、及びジシクロペンタジエンジオキシドが挙げられる。
【0021】
グリシジルエーテルを含む他の好適な脂環式エポキシ樹脂としては、1,2-ビス(2,3-エポキシシクロペンチルオキシ)-エタン;2,3-エポキシシクロペンチルグリシジルエーテル;ジグリシジルシクロヘキサン-1,2-ジカルボキシレート;3,4-エポキシシクロヘキシルグリシジルエーテル;ビス-(2,3-エポキシシクロペンチル)エーテル;ビス-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エーテル;5(6)-グリシジル-2-(1,2-エポキシエチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン;シクロヘキサ-1,3-ジエンジオキシド;3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル3’,4’-エポキシ-6’-メチルシクロヘキサンカルボキシレートが挙げられる。
【0022】
また、1,2-エポキシ基が様々なヘテロ原子又は官能基に結合しているエポキシ樹脂も好適であり、このような化合物としては、例えば、4-アミノフェノールのN,N,O-トリグリシジル誘導体、3-アミノフェノールのN,N,O-トリグリシジル誘導体、サリチル酸のグリシジルエーテル/グリシジルエステル、N-グリシジル-N’-(2-グリシジルオキシプロピル)-5,5-ジメチルヒダントイン、又は2-グリシジルオキシ-1,3-ビス-(5,5-ジメチル-1-グリシジルヒダントイン-3-イル)プロパンが挙げられる。
【0023】
エポキシ樹脂は、典型的には、エポキシド基1つ当たり50~250、300、350、400、450、又は500グラムのエポキシ当量重量を有する。エポキシ樹脂は、典型的には、25℃で約1000cps未満の粘度を有する。いくつかの実施形態において、粘度は、少なくとも50、100、150、200、250、又は300センチポアズである。いくつかの実施形態において、粘度は、900、800、700、600、又は500センチポアズ以下である。単一のエポキシ樹脂又はエポキシ樹脂の組み合わせを利用してもよい。エポキシ樹脂組成物は、典型的には、総エポキシ樹脂組成物の重量を基準にして、少なくとも5、6、7、8、9、又は10重量%のエポキシ樹脂を含む。高濃度の熱伝導性無機粒子により、エポキシ樹脂の量は、典型的には20重量%以下であり、いくつかの実施形態において、19、18、17、16、又は15重量%以下である。
【0024】
いくつかの実施形態において、エポキシ樹脂組成物は、オリゴマー又はポリマー成分を更に含む。オリゴマー又はポリマー成分は、硬化エポキシ樹脂組成物に可撓性、耐熱衝撃性、耐クラック性、及び耐衝突性を付与することができる。特に指定のない限り、ガラス転移温度(Tg)は、実施例に記載の試験方法に従って決定されるガラス転移温度を指す。オリゴマー又はポリマー成分は、概ね、0℃未満のガラス転移温度(Tg)を有する。いくつかの実施形態において、オリゴマー成分のガラス転移温度は、-20℃、-30℃、-40℃、-50℃、-60℃未満である。オリゴマー成分のガラス転移温度は、典型的には少なくとも-80℃又は-70℃である。様々なホモポリマーのガラス転移温度は、文献に報告されている。様々なコポリマーのガラス転移温度もまた文献に報告されているか、又はFox式を使用して概算することができる。
【0025】
いくつかの実施形態において、オリゴマー又はポリマー成分は、強化剤、エポキシ反応性オリゴマー若しくはポリマー成分、又はこれらの組み合わせである。エポキシ樹脂組成物は、少なくとも1つの強化剤及び少なくとも1つのエポキシ反応性オリゴマー若しくはポリマー成分、2つ以上の強化剤、又は2つ以上のエポキシ反応性オリゴマー及び/若しくはポリマー成分を含み得る。
【0026】
オリゴマー又はポリマー成分の非存在下でのエポキシ樹脂のガラス転移温度は、100℃よりも高い。いくつかの実施形態において、オリゴマー又はポリマー成分の非存在下でのエポキシ樹脂のガラス転移温度は、少なくとも110℃、120℃、130℃、140℃、又は150℃である。オリゴマー又はポリマー成分の非存在下でのエポキシ樹脂のガラス転移温度は、典型的には300℃、275℃、250℃、225℃、200℃、又は175℃以下である。
【0027】
オリゴマー又はポリマー成分が強化剤である場合、強化剤を含有するエポキシ樹脂組成物のガラス転移は、エポキシ樹脂単独と同じ範囲に収まり得る。いくつかの実施形態において、強化剤を含めることにより、エポキシ樹脂組成物のTgをエポキシ樹脂単独に対して10、20、30、40、又は50℃以上低下させることができる。いくつかの実施形態において、例えば、エポキシ反応性オリゴマー及び/又はポリマー成分が利用される場合、硬化エポキシ樹脂組成物は、140、135、又は130℃未満のTgを有する。いくつかの実施形態において、硬化エポキシ樹脂組成物は、125、120、115、110、105、又は100℃未満のTgを有する。いくつかの実施形態において、硬化エポキシ樹脂組成物は、100℃未満のTgを有する。いくつかの実施形態において、硬化エポキシ樹脂組成物は、少なくとも50、55、60、65、70、75、80、85、90、又は100℃のTgを有する。
【0028】
いくつかの実施形態において、硬化エポキシ樹脂組成物は、図3に示すような単一のガラス転移温度を有する。例えば、一実施形態において、エポキシ樹脂組成物がオリゴマー又はポリマー部分(例えば、ポリカプロラクトン)を含み、分散剤がオリゴマー又はポリマー部分と混和性である(例えば、ポリカプロラクトン)部分を含む場合、硬化エポキシ樹脂は、単一のTgを有し得る。硬化エポキシ樹脂組成物が単一のTgを有する場合、tanδピークは、典型的には比較的狭い。例えば、tanδピーク半値幅は、50℃以下である。
【0029】
他の実施形態において、硬化エポキシ樹脂組成物は、図4に示すような少なくとも2つのガラス転移温度を有する。
【0030】
別の実施形態において、硬化エポキシ樹脂組成物は、図5に示すような比較的広いtanδピークと組み合わせて、単一の又は複数のTgを示すことができる。本実施形態において、tanδピーク半値幅は、50℃よりも大きい。例えば、いくつかの実施形態において、tanδピーク半値幅は、少なくとも55、60、65、70、75、80、85、又は90℃である。tanδピーク半値幅は、典型的には125、120、115、又は110℃以下である。
【0031】
エポキシ樹脂組成物は、典型的には、全エポキシ樹脂組成物の重量を基準にして、少なくとも1、1.5、2、又は2.5重量%のオリゴマー及び/又はポリマー成分を含む。オリゴマー及び/又はポリマー成分の量は、典型的には20、19、18、17、16、又は15重量%以下である。いくつかの実施形態において、オリゴマー及び/又はポリマー成分の量は、14、13、12、11、又は10重量%以下である。
【0032】
エポキシ樹脂とオリゴマー及び/又はポリマー成分との重量比は、様々であり得る。典型的には、エポキシ樹脂の重量は、オリゴマー及び/又はポリマー成分の量に等しいか又はそれより大きい。エポキシ樹脂とオリゴマー及び/又はポリマー成分との重量比は、1:1~10:1の範囲であり得る。いくつかの実施形態において、エポキシ樹脂とオリゴマー及び/ポリマー成分との重量比は、少なくとも1.1:1、1.2:1、1.3:1、1.4:1、又は1.5:1である。いくつかの実施形態において、エポキシ樹脂とオリゴマー及び/又はポリマー成分との重量比は、7:1又は6:1又は5:1又は4:1又は3:1以下である。
【0033】
いくつかの実施形態において、オリゴマー又はポリマー成分は、強化剤として特徴づけることができる。強化剤は、典型的には、硬化エポキシ樹脂中で相分離する有機ポリマー添加剤である。強化剤は、非反応性オリゴマー又はポリマー成分であると特徴づけることができる。強化剤としては、例えば、ブロックコポリマー、両親媒性ブロックコポリマー、アクリルブロックコポリマー、カルボキシル末端ブタジエンアクリロニトリルゴム(CTBN)、コアシェルゴム(CSR)、直鎖ポリブタジエン-ポリアクリロニトリルコポリマー、オリゴマーポリシロキサン、シリコーンポリエーテル、オルガノポリシロキサン樹脂、又はこれらの混合物が挙げられる。
【0034】
他のエポキシ反応性ポリマー強化剤としては、カルボキシル末端ポリブタジエン、ポリスルフィド系強化剤、アミン末端ブタジエンニトリルゴム、ポリチオエーテル、又はこれらの混合物が挙げられる。
【0035】
両親媒性ポリエーテルブロックコポリマー強化剤としては、エチレンオキシド(EO)などのアルキレンオキシドから誘導された少なくとも1つのエポキシ混和性ポリエーテルブロックセグメントと、例えば、ブチレンオキシド(BO)として一般に知られる1,2-エポキシブタンなどのアルキレンオキシドから誘導された少なくとも1つのエポキシ不混和性ポリエーテルブロックセグメントと、を含む、1つ以上のポリエーテルブロックコポリマーが挙げられる。不混和性ブロックセグメントはまた、共重合して不混和性ブロックセグメントをもたらすC又はより高炭素数の類似体モノマーの混合物から構成されてもよい。
【0036】
エポキシ樹脂混和性ポリエーテルブロックセグメントの例としては、ポリエチレンオキシドブロック、プロピレンオキシドブロック、ポリ(エチレンオキシド-co-プロピレンオキシド)ブロック、ポリ(エチレンオキシド-ran-プロピレンオキシド)ブロック、又はこれらの混合物が挙げられる。好ましくは、本発明において有用なエポキシ樹脂混和性ポリエーテルブロックセグメントは、ポリエチレンオキシドブロックであり得る。
【0037】
エポキシ樹脂不混和性ポリエーテルブロックセグメントの例としては、ポリブチレンオキシドブロック、1,2-エポキシヘキサンから誘導されたポリヘキシレンオキシドブロック、1,2-エポキシドデカンから誘導されたポリドデシレンオキシドブロック、又はこれらの混合物が挙げられる。好ましくは、本発明において有用なエポキシ樹脂不混和性ポリエーテルブロックセグメントは、ポリブチレンオキシドブロックであり得る。
【0038】
両親媒性ポリエーテルブロックコポリマー強化剤としては、例えば、ジブロックコポリマー、直鎖トリブロック、直鎖テトラブロック、他のマルチブロック構造、分枝鎖ブロック構造、又は星形ブロック構造が挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
両親媒性ポリエーテルジブロックコポリマー強化剤の例としては、ポリ(エチレンオキシド)-b-ポリ(ブチレンオキシド)(PEO-PBO)又は両親媒性ポリエーテルトリブロックコポリマー、例えば、ポリ(エチレンオキシド)-b-ポリ(ブチレンオキシド)-b-ポリ(エチレンオキシド)(PEO-PBO-PEO)が挙げられる。
【0040】
別の実施形態において、エポキシ樹脂組成物は、典型的なポリマーと比較して比較的少数の繰り返し単位を含むエポキシ反応性オリゴマー成分を含む。エポキシ反応性オリゴマー成分の重量平均分子量は、典型的には少なくとも150、200、150、300、350、400、450、又は500g/モルである。いくつかの実施形態において、オリゴマー成分の重量平均分子量は、10,000、9,000、8,000、7,000、又は6,000g/モル以下であり、いくつかの実施形態において、5,000、4,500、4,000、3,500、3,000、2,500、2,000、1,500、又は1,000g/モル以下である。オリゴマー強化剤はまた、この範囲内の分子量を有し得る。他の実施形態において、ポリマー強化剤は、最大1,000,000g/モル又は2,000,000g/モル以上の範囲の、より高い分子量を有し得る。例えば、ポリマー強化剤が架橋熱硬化性である場合、分子量は、従来技術を使用して測定するには高すぎる場合がある。いくつかの実施形態において、ポリマー強化剤は、500,000、400,000、300,000、又は200,000g/モル以下の重量平均分子量を有する。
【0041】
いくつかの実施形態において、エポキシ反応性オリゴマー成分は、30℃又は25℃以下の融点を有する。融点は、典型的には少なくとも約0℃、5℃、又は10℃である。
【0042】
いくつかの実施形態において、エポキシ反応性オリゴマー成分は、カプロラクトンから誘導された直鎖又は分枝鎖ポリエステルジオールである。ポリカプロラクトン(Polycaprolactone)(PCL)ホモポリマーは、約60℃の低融点及び約-60℃のガラス転移温度を有する生分解性ポリエステルである。PCLは、当該技術分野において既知であるように、オクタン酸スズなどの触媒を使用してε-カプロラクトンの開環重合によって調製することができる。
【0043】
カプロラクトンから誘導された1つの好適な直鎖ポリエステルジオールは、Capa(商標)2054であり、これは、200~215mgKOH/gのヒドロキシル価及び18~23℃の融点を有することが報告されている。
【0044】
別の好適な三官能性ポリオールは、Dow TONE(商標)301ポリオールであり、これは、561のヒドロキシル価及び0~24℃の融点を有することが報告されている。
【0045】
いくつかの実施形態において、オリゴマー成分は、半結晶性成分として特徴づけることができる。
【0046】
「結晶性」とは、示差走査熱量計(differential scanning calorimetry)(DSC)
によって組成物中で測定したときに、材料が20℃以上で結晶融点を示すことを意味する。測定された吸熱のピーク温度を、結晶融点とする。結晶相は、材料が立体配座をとる複数の格子を含み、この立体配座では、材料が構成される隣接する化学部分の高度に規則的な配置が観察される。格子内の充填構造(最密配置)は、その化学的見地及び幾何学的見地の両方において高度に規則的である。
【0047】
半結晶性成分は、典型的には、20℃以上で非晶質及び結晶性の両方の状態又は相に現れる長いセグメントのポリマー鎖を含む。非晶質相は、ランダムに絡まったポリマー鎖の塊であると考えられる。非晶質ポリマーのX線回折パターンは、ポリマー構造が秩序化されていないことを示す拡散ハロである。非晶質ポリマーは、ガラス転移温度で軟化挙動を示すが、真の融解又は一次転移は示さない。半結晶性状態の材料は特徴的融点を示し、その点を超えると、結晶性格子は不規則になり、急速にその固有性を失う。かかる「半結晶性」材料のX線回折パターンは、概ね、結晶秩序の性質を示す同心環又はスポットの対称アレイのいずれかにより区別される。
【0048】
他のエポキシ反応性オリゴマー成分の例としては、例えば、脂肪酸;ポリアゼライン酸無水物及びドデセニルコハク酸無水物などの脂肪酸無水物;エチレングリコールなどのジオール、ポリオール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールのポリマーなどのポリエーテルジオール、脂肪族アルコール、並びにヒドロキシル基、カルボキシルエポキシ、及び/又はカルボン酸無水物官能基を有する他の材料が挙げられる。他の好適なオリゴマー成分としては、三価及び二価のカルボキシル末端、カルボン酸無水物末端、グリシジル末端、及びヒドロキシル末端ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、又はポリブチレングリコールが挙げられる。
【0049】
いくつかの実施形態において、エポキシ樹脂組成物は、柔軟な骨格鎖を含むビスフェノールエポキシ樹脂を含む。1つの代表的な構造は、以下のとおりである:
【化3】
[式中、大きい中央ブロックがオリゴマーセグメントを表し、小さいブロックが任意選択の極性セグメントを表す]。柔軟な骨格鎖を含む1つの代表的なビスフェノールエポキシ樹脂は、DEC Corporation(日本)から商品名「EPICLON EXA 4850-150」で市販されている。本実施形態において、オリゴマー成分は、エポキシ樹脂と予備反応させたエポキシ反応性成分として特徴づけることができる。
【0050】
いくつかの実施形態において、柔軟な骨格鎖を含むビスフェノールエポキシ樹脂の粘度は、25℃で50,000、45,000、40,000、35,000、30,000、又は25,000cps未満である。粘度は、典型的には25℃で少なくとも5,000cpsである。いくつかの実施形態において、柔軟な骨格鎖を含むビスフェノールエポキシ樹脂の分子量は、少なくとも200、250、又は350g/モルである。他の実施形態において、柔軟な骨格鎖を含むビスフェノールエポキシ樹脂の分子量は、少なくとも400、500、600、又は700g/モルである。更に他の実施形態において、柔軟な骨格鎖を含むビスフェノールエポキシ樹脂の分子量は、少なくとも750、800、又は900g/モルである。分子量は、典型的には2000又は1500g/モル以下である。
【0051】
他の好適なエポキシ反応性オリゴマー成分としては、一般式
【化4】
[式中、nは10~300の整数である]を有する変性ヒドロキシ末端シリコーンが挙げられる。
【0052】
他の好適なエポキシ反応性オリゴマー成分としては、ブタジエンに基づく、カルボキシル末端、ヒドロキシル末端、メルカプト末端、又はグリシジルエーテル末端コポリマー、及び極性エチレン性不飽和コモノマーが挙げられる。約1200~1300の平均分子量を有する1つの好適なエポキシ化ブタジエンプレポリマーは、Elf Atochem North America Inc.からPoly Bd 605として市販されている。
【0053】
エポキシ樹脂組成物は、任意で硬化剤を含む。エポキシ樹脂の一般的な部類の硬化剤としては、アミン、アミド、尿素、イミダゾール、及びチオールが挙げられる。硬化剤は、典型的には周囲温度においてエポキシド基との反応性が高い。
【0054】
いくつかの実施形態において、硬化剤は、反応性-NH基又は反応性-NR基[式中、R及びRは、独立して、H又はC~Cアルキルであり、最も典型的にはH又はメチルである]を含む。
【0055】
一部類の硬化剤は、一級、二級、及び三級ポリアミンである。ポリアミン硬化剤は、直鎖、分枝鎖、又は環状であってもよい。いくつかの好ましい実施形態において、ポリアミン架橋剤は脂肪族である。あるいは、芳香族ポリアミンを利用することができる。
【0056】
有用なポリアミンは、一般式R-(NR[式中、R及びRは、独立して、H又はアルキルであり、Rは、多価のアルキレン又はアリーレンであり、xは、少なくとも2である]のポリアミンである。R及びRのアルキル基は、典型的にはC~C18アルキルであり、より典型的にはC~Cアルキルであり、最も典型的にはメチルである。R及びRを組み合わせて、環状アミンを形成し得る。いくつかの実施形態において、xは2(すなわち、ジアミン)である。他の実施形態において、xは3(すなわち、トリアミン)である。更に他の実施形態において、xは4である。
【0057】
有用なジアミンは、一般式:
【化5】
[式中、R、R、R、及びRは、独立して、H又はアルキルであり、Rは、二価のアルキレン又はアリーレンである]で表してよい。いくつかの実施形態において、R、R、R、及びRは、それぞれHであり、ジアミンは、一級アミンである。他の実施形態において、R及びRは、それぞれHであり、R及びRは、それぞれ独立して、アルキルであり、ジアミンは、二級アミンである。更に他の実施形態において、R、R、R、及びRは、独立して、アルキルであり、ジアミンは、三級アミンである。
【0058】
いくつかの実施形態において、一級アミンが好ましい。例としては、ヘキサメチレンジアミン;1,10-ジアミノデカン;1,12-ジアミノドデカン;2-(4-アミノフェニル)エチルアミン;イソホロンジアミン;ノルボルナンジアミン、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン;及び1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンが挙げられる。例示的な6員環ジアミンとしては、例えば、ピペラジン及び1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(「DABCO」)が挙げられる。
【0059】
他の有用なポリアミンとしては、少なくとも3つのアミノ基を有するポリアミンが挙げられ、3つのアミノ基は、一級、二級、又はこれらの組み合わせである。例としては、3,3’-ジアミノベンジジン及びヘキサメチレントリアミンが挙げられる。
【0060】
脂環式エポキシ樹脂を硬化させるために使用される一般的な硬化剤としては、少なくとも1つの無水物基を有するカルボン酸から誘導される無水物が挙げられる。このような無水物硬化剤は、米国特許第6,194,024号に記載され、これは、本明細書に参照として組み込まれる。
【0061】
いくつかの実施形態において、例えば、エポキシ反応性オリゴマー成分ではなく強化剤が利用される場合、硬化剤は、当量を基準にして、エポキシ樹脂の約20%~約120%、好ましくは約80~110%、及びエポキシド当量の好ましくは約75%~約100%を構成する量で用いられ得る。
【0062】
しかしながら、エポキシ反応性オリゴマー成分が利用される場合、(例えば、ヒドロキシル官能性)エポキシ反応性成分は、硬化剤として作用することができる。本実施形態において、エポキシ樹脂組成物は、エポキシド当量の20%、15%、10%、5%未満の量で硬化剤を含有し得る。
【0063】
いくつかの実施形態において、エポキシ樹脂組成物は、触媒を更に含む。エポキシ樹脂に好適な触媒としては、例えば、三級アミン、並びにオクトエートスズ及び六フッ化アンチモンなどの酸性触媒、並びにイミダゾールが挙げられる。他の好適な触媒は、四級アンモニウムの水酸化物及びハロゲン化物;四級ホスホニウムハロゲン化物;アルシン、アミンオキシド;アミノフェノール;ホスフィンオキシド;ホスフィン;ホスホニウムハロゲン化物;アミン;ホスホルアミド;ホスフィンアミン;及び三級アミノフェノールを含む完全に置換された化合物である。触媒の混合物もまた好適である。
【0064】
触媒の濃度は、典型的には、全エポキシ樹脂組成物の重量を基準にして、約3、2.5、2、1.5、又は1重量%未満である。いくつかの実施形態において、触媒の量は、少なくとも0.005、0.01、0.025、0.05、又は0.1重量%である。
【0065】
エポキシ樹脂組成物は、熱伝導性無機粒子を含む。概ね、無機粒子の種類及び充填レベルは、所望の熱伝導率を提供するように選択される。いくつかの実施形態において、硬化エポキシ樹脂組成物の熱伝導率(実施例に記載される試験方法によって決定される)は、少なくとも0.90、0.95、又は1.0W/m・Kである。いくつかの実施形態において、硬化エポキシ樹脂組成物の熱伝導率は、少なくとも1.10、1.15、又は1.20W/m・Kである。いくつかの実施形態において、硬化エポキシ樹脂組成物の熱伝導率は、3.0、2.9、2.8、2.7、2.6、2.5、2.4、2.3、2.3、2.1、又は2.0W/m・K以下である。
【0066】
いくつかの実施形態において、硬化エポキシ樹脂組成物は、十分に伝導性であるため、そのような硬化エポキシ樹脂組成物を含むエンクロージャ(例えば、ハウジング及び/又はケース)を通して電池を含む電子デバイスを充電することができる。また、熱伝導性無機粒子を含めることにより、硬化エポキシ樹脂組成物は、触ると冷たくなり、プラスチック材料よりもむしろセラミックに似たものとなる。
【0067】
エポキシ樹脂組成物は、エポキシ組成物の総体積を基準にして、45体積%を超える量の熱伝導性粒子を含む。いくつかの実施形態において、熱伝導性無機充填剤の量は、少なくとも46、47、48、49、又は50体積%である。熱伝導性無機充填剤の量は、典型的には、エポキシ組成物の総体積を基準にして、75、74、73、72、71、70、69、68、67、66、65、64、63、62、61、又は60体積%以下である。
【0068】
熱伝導性粒子の濃度が比較的高いため、硬化エポキシ樹脂組成物は、より高い密度を有することができる。例えば、以下の比較例1及び2によって明らかなように、熱伝導性粒子を含まない組成物は、約1.1g/cc~約1.3g/ccの範囲の密度を有し得る。45体積%の熱伝導性粒子を含有する比較例3は、2.29g/ccの密度を有する。しかしながら、例示される組成物は、2.29g/ccを超える密度を有する。いくつかの実施形態において、硬化エポキシ樹脂組成物は、少なくとも2.30、2.31、2.32、2.33、2.34、2.35、2.36、2.37、2.38、2.39、又は2.40g/ccの密度を有する。いくつかの実施形態において、硬化エポキシ樹脂組成物は、少なくとも2.41、2.42、2.43、2.44、2.45、2.46、2.47、2.48、2.49、又は2.50g/ccの密度を有する。いくつかの実施形態において、硬化エポキシ樹脂組成物は、2.65、2.64、2.63、2.62、2.61、又は2.60g/cc以下の密度を有する。
【0069】
熱伝導性無機粒子は、好ましくは、非導電性材料である。好適な非導電性熱伝導性材料としては、金属酸化物、水酸化物、オキシ水酸化物、ケイ酸塩、ホウ化物、炭化物、及び窒化物などのセラミックスが挙げられる。好適なセラミック充填剤としては、例えば、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、三水酸化アルミニウム(ATH)、窒化ホウ素、炭化ケイ素、及び酸化ベリリウムが挙げられる。このような材料は、導電性ではなく、すなわち、0eVを超える電子バンドギャップ、いくつかの実施形態において、少なくとも1、2、3、4、又は5eVである電子バンドギャップを有する。いくつかの実施形態において、このような材料は、15又は20eV以下の電子バンドギャップを有する。エポキシ樹脂組成物は、任意で、0eV未満又は20eVを超える電子バンドギャップを有する、少濃度の熱伝導性粒子を更に含んでもよい。
【0070】
好ましい実施形態において、熱伝導性粒子は、>10W/m・Kのバルク熱伝導率を有する材料を含む。いくつかの代表的な無機材料の熱伝導率は、以下の表に記載される。
【0071】
【表1】
【0072】
いくつかの実施形態において、熱伝導性粒子は、少なくとも15又は20W/m・Kのバルク熱伝導率を有する材料を含む。他の実施形態において、熱伝導性粒子は、少なくとも25又は30W/m・Kのバルク熱伝導率を有する材料を含む。更に他の実施形態において、熱伝導性粒子は、少なくとも50、75、又は100W/m・Kのバルク熱伝導率を有する材料を含む。更に他の実施形態において、熱伝導性粒子は、少なくとも150W/m・Kのバルク熱伝導率を有する材料を含む。典型的な実施形態において、熱伝導性粒子は、約350又は300W/m・K以下のバルク熱伝導率を有する材料を含む。
【0073】
熱伝導性粒子は、多数の形状、例えば、球体、不規則形状、板状、及び針状で利用可能である。熱伝導性粒子は、概ね、100:1、75:1、又は50:1未満のアスペクト比を有する。いくつかの実施形態において、熱伝導性粒子は、3:1、2.5:1、2:1、又は1.5:1未満のアスペクト比を有する。いくつかの実施形態において、概ね対称(例えば、球形又は半球形)粒子が使用されてもよい。
【0074】
いくつかの実施形態において、熱伝導性粒子のメジアン粒径d(0.50)は、100、90、80、70、60、50ミクロン以下である。いくつかの実施形態において、熱伝導性粒子の粒径d(0.50)は、40、35、30、25、20、15ミクロン以下である。いくつかの実施形態において、熱伝導性粒子の粒径d(0.50)は、10、5、又は1ミクロン未満である。いくつかの実施形態において、熱伝導性粒子の粒径d(0.50)は、少なくとも10、15、20、又は25ナノメートルである。いくつかの実施形態において、熱伝導性粒子の粒径d(0.50)は、少なくとも50、75、100、125、150、又は200ナノメートルである。いくつかの実施形態において、熱伝導性粒子の粒径d(0.50)は、少なくとも500nm、750nm、1ミクロン、2ミクロン、又は3ミクロンである。粒径は、多くの場合、熱伝導性粒子の製造業者によって報告される。硬化エポキシ樹脂は、熱分解に供され得、粒径は、ASTM B822-17「Standard Test Method for Particle Size Distribution of Metal Powders and Related Compound by Light Scattering」を利用して測定することができる。
【0075】
典型的な実施形態において、粒径は、「一次粒径」を指し、単一の(アグリゲートしていない、アグロメレートしていない)粒子のメジアン径を意味する。一次粒子は、「粒塊」、すなわち、電荷又は極性によってまとまる場合があり、かつより小さい構成要素に分解可能である、一次粒子間の弱い会合を形成し得る。これらの弱く結合した粒塊は、典型的には高エネルギー混合プロセス中に分解する。
【0076】
いくつかの実施形態において、エポキシ樹脂組成物は、異なるサイズの熱伝導性粒子を含み、及び/又は異なる材料の熱伝導性粒子を含む。
【0077】
いくつかの実施形態において、エポキシ樹脂組成物は、1つ以上の分散剤を含む。概ね、分散剤は、分散剤を含まない組成物中の無機充填剤粒子を安定化させるように作用する場合があり、粒子は凝集する場合がある。好適な分散剤は、熱伝導性粒子の特定の独自性及び表面化学に依存し得る。いくつかの実施形態において、本開示による好適な分散剤は、少なくとも結合基及び相溶化セグメントを含み得る。結合基は、粒子表面にイオン結合されてもよい。アルミナ粒子の結合基の例としては、リン酸、ホスホン酸、スルホン酸、カルボン酸、及びアミンが挙げられる。相溶化セグメントは、硬化性マトリックスと混和性であるように選択されてもよい。エポキシ樹脂の場合、有用な相溶化剤としては、ポリアルキレンオキシド、例えば、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンオキシド、並びにポリカプロラクトン、及びこれらの組み合わせを挙げることができる。市販の例としては、BYK W-9010(BYK Additives and Instruments)、BYK W-9012(BYK Additives and Instruments)、Disberbyk 180(BYK Additives and Instruments)、及びSolplus D510(Lubrizol Corporation)が挙げられる。
【0078】
いくつかの実施形態において、分散剤は、エポキシ樹脂組成物の総重量を基準にして、少なくとも0.1、0.2、0.3、又は0.4重量%~最大10重量%の量でエポキシ樹脂組成物中に存在し得る。いくつかの実施形態において、分散剤の量は、9、8、7、6、5、4、3、又は2重量%以下である。
【0079】
いくつかの実施形態において、分散剤は、(例えば、エポキシ樹脂及び/又はエポキシ反応性)有機成分に組み込む前に、熱伝導性粒子と予混合されてもよい。このような予混合は、ニュートン流体のような未硬化エポキシ樹脂組成物を容易にするか、又はずり減粘効果挙動を可能にすることができる。
【0080】
エポキシ組成物は、任意で、様々な添加物、例えば、酸化防止剤/安定剤、着色剤、研磨顆粒、熱分解安定剤、光安定剤、導電性粒子、粘着付与剤、流動化剤、増粘剤、艶消し剤、非導電性充填剤、結合剤、発泡剤、殺真菌剤、殺菌剤、界面活性剤、可塑化剤、及び当業者に既知のその他の添加剤を更に含み得る。これらの添加剤は、存在する場合、それらに意図される目的に有効な量で添加される。このような添加剤の総量は、概ね、全エポキシ樹脂組成物の10、9、8、7、6、4、3、2、1.5、1、又は0.5重量%以下である。
【0081】
いくつかの実施形態において、硬化性組成物は、第1の部分がエポキシ樹脂を含み、第2の部分がエポキシ反応性オリゴマー成分と硬化剤などの他のエポキシ反応性成分とを含む、2剤型組成物として提供(例えば、パッケージ化)されてもよい。オリゴマー成分が強化剤である場合、強化剤は、典型的にはエポキシ樹脂と組み合わされる。
【0082】
硬化性組成物の他の成分(例えば、熱伝導性粒子、分散剤、触媒、酸化防止剤などの添加剤など)は、第1及び第2の部分の一方又は両方に含まれ得る。いくつかの実施形態において、硬化性組成物は、第1のチャンバ及び第2のチャンバを備えるディスペンサ内に提供される。第1のチャンバは、第1の(例えば、エポキシ樹脂)部分を含み、第2のチャンバは、第2の(例えば、エポキシ反応性成分)部分を含む。
【0083】
比較的高濃度の熱伝導性粒子を含むことは、機械的特性に影響を及ぼし得る。エポキシ樹脂及びオリゴマー成分は、電子デバイスのエンクロージャ(例えば、ハウジング又はケース)として特に有用な硬化エポキシ樹脂組成物を与えるように選択される。
【0084】
いくつかの実施形態において、硬化エポキシ樹脂組成物は、(実施例により詳細に記載されるように)ASTM D638に従って測定されると、少なくとも1、2、3、4、5、6、又は7%の破断点ひずみを有する。破断点ひずみは、典型的には、熱伝導性粒子を含まない同じエポキシ樹脂組成物(例えば、20%)より小さい。いくつかの実施形態において、硬化エポキシ樹脂組成物は、15%又は10%以下の破断点ひずみを有する。
【0085】
いくつかの実施形態において、硬化エポキシ樹脂組成物は、(実施例により詳細に記載されるように)ASTM D638に従って測定されると、少なくとも2、3、4、5、6、又は7GPaの弾性率を有する。いくつかの実施形態において、硬化エポキシ樹脂組成物は、50、45、40、35、30、25、20、又は15GPa以下の弾性率を有する。
【0086】
いくつかの実施形態において、硬化エポキシ樹脂組成物は、高周波透過性(radio frequency transparent)であり、硬化エポキシ樹脂は、10~1010ヘルツの範囲の周
波数に対して<0.03の損失正接を有する。
【0087】
いくつかの実施形態において、硬化エポキシ樹脂組成物は、実施例に記載される試験方法に従って測定されると、少なくとも70、75、80、又は85の光沢度値を有する。光沢度値は、典型的には95又は90以下である。
【0088】
エポキシ樹脂組成物に好適な任意の既知の成形方法を使用して、硬化性エポキシ樹脂組成物をエンクロージャに形成することができる。一実施形態において、硬化性エポキシ樹脂組成物は、2剤型組成物として提供されてもよい。概ね、2剤型組成物の2つの成分は、エポキシ樹脂組成物を鋳型に供給することなどによってエンクロージャに形成される前に混合されてもよい。
【0089】
一実施形態において、エポキシ樹脂組成物を供給する前に、剥離ライナーと、剥離ライナー上に配置された転写ポリマー層と、転写ポリマー層中に埋め込まれた複数の微小球とを含む転写フィルムを鋳型に供給する。本方法は、エポキシ樹脂を硬化させた後に、剥離ライナー及び転写ポリマー層を除去することを更に含む。転写フィルム及び成形された完成物品を作製することに関する更なる詳細は、米国特許第62/552465号に記載され、これは、本明細書に参照として組み込まれる。
【0090】
微小球は、ガラス、ガラスセラミックス、セラミックス、ポリマー、金属、及びこれらの組み合わせを含む。ガラスは非晶質材料であり、一方、セラミックは結晶性又は部分的に結晶性の材料を指す。ガラスセラミックスは、非晶質相と1つ以上の結晶相とを有する。このような材料は、当該技術分野で既知である。
【0091】
いくつかの実施形態において、微小球はガラスビーズである。ガラスビーズは大部分が球形である。ガラスビーズは、典型的には通常のソーダ石灰ガラス又はホウケイ酸ガラスを粉砕することによって、典型的にはグレイジング及び/又はガラス製品などのリサイクル源から製造される。通常の工業用ガラスは、これらの組成に応じて様々な屈折率のものであり得る。ソーダ石灰ケイ酸塩及びホウケイ酸塩は、一般的な種類のガラスである。ホウケイ酸ガラスは、典型的には、ボリア及びシリカを、アルカリ金属酸化物、アルミナなどの他の元素酸化物と共に含有する。他の酸化物のうち、特にボリア及びシリカを含有する、当業界で用いられるいくつかのガラスとしては、Eガラス、及びSchott Industries(Kansas City,Missouri)から商品名「NEXTERION GLASS D」で入手可能なガラス、及びCorning Incorporated(New York,New York)から商品名「PYREX」で入手可能なガラスが挙げられる。
【0092】
いくつかの実施形態において、微小球は実質的に球形であり、例えば、真球度が少なくとも80%、85%、又は更には90%である。真球度は、球(所定の粒子と同じ体積)の表面積を粒子の表面積で除したものと定義され、百分率で報告される。
【0093】
微小球は、透明、半透明、又は不透明であってもよい。一実施形態において、微小球は、少なくとも1.4、1.6、1.8、2.0、又は更には2.2の屈折率を有する。屈折率は、標準的なベッケ線法によって測定することができる。
【0094】
いくつかの実施形態において、平均微小球直径の有用な範囲は、少なくとも5、10、20、25、40、50、75、100、又は更には150μm(マイクロメートル)、最大で200、400、500、600、800、900、又は更には1000μmである。微小球は、用途に応じて単峰性又は多峰性(例えば、二峰性)のサイズ分布を有し得る。
【0095】
硬化エポキシ樹脂中に部分的に埋め込まれた微小球を含めることにより、鉛筆硬度を高めることができる。一実施形態において、鉛筆硬度は、少なくとも6K、7H、8H、9H、又は10Hである。鉛筆硬度は、典型的には10H以下である。
【0096】
本開示の利点及び実施形態を、以下の実施例により更に例示するが、これらの実施例に記載の特定の材料及びこれらの量、並びに他の条件及び詳細は、本発明を不当に限定するものと解釈してはならない。これらの実施例において、全ての百分率、割合及び比は、別途記載しない限り、重量に基づく。
【実施例0097】
特に記載のない限り、実施例及び本明細書のその他の箇所における全ての部、百分率、比などは、重量によるものである。特に記載のない限り、他の全ての試薬はSigma-Aldrich Company(St.Louis,Missouri)などのファインケミカル業者から入手したか、又は入手可能であり、あるいは知られている方法で合成することができる。
【0098】
実施例において使用される材料の略記を以下の表1に掲載する。
【0099】
【表2】
【0100】
試験方法
機械的試験-弾性率及び破断点ひずみ
全ての実施例は、ガラス鋳型中で樹脂を熱硬化させることによって調製した。ガラス鋳型を、離型剤、FREKOTE 55NC(Henkel(Dusseldorft,Germany))で前処理し、3回乾燥させた後に、樹脂を注入した。ガラス板を適切な厚さのゴムガスケット材料によって分離した。1/8インチ(3.18ミリメートル(mm))厚さを、引張試験片及びDMA試験片に使用した。小板(plaque)を、その厚さで約6インチ×8インチ(15.24センチメートル(cm)×20.32cm)の寸法で硬化させた。この小板から、6つの引張試験片を4.5インチ×0.75インチ(11.43cm×1.91cm)に切断し、ルータを使用して0.25インチ(6.35mm)ゲージセクションにトリミングして、ASTM D638タイプIV幾何学的形状と一致する試験片を作製した。これらのサンプルを、ロード変位を得るための伸び計及びロードセルを備えたMTS Insight(Eden Prairie,MN)ロードフレームで5mm/分の変位速度で引張状態を試験し、最終的に弾性率及び平均破断点ひずみを表4に報告した。
【0101】
硬化樹脂密度は、空気中のサンプルの質量を測定し、ヘプタン中に沈めた同じサンプルの質量を測定することによって決定した。次いで、密度をアルキメデスの原理に基づいて算出した。
【0102】
熱伝導率
樹脂を直径12.7mmのバイアル瓶内で硬化させることにより、直径約12.7mm、厚さ約2mmの硬化樹脂ディスクを調製した。バイアル瓶を離型剤(FREKOTE 55NC)処理した。硬化後、樹脂をバイアル瓶から取り出し、以下に記載のように、レーザーフラッシュ分析(LFA)用の厚さ2mmのディスクに切断した。
【0103】
光フラッシュ熱物性分析器(Netzsch Instruments North America LLC(Boston,MA)から入手した「HYPERFLASH LFA 467」)を使用して、ASTM E1461(2013)に従ってフラッシュ分析法を使用して直接熱拡散率測定を行った。全サンプルセットは、拡散率測定の制御方法として機能する参照サンプル(Netzsch Instruments North
Americaから商品名「PYROCERAM 9606」で入手)を含んだ。サンプルの光衝突側及び検出側を3~5マイクロメートルのグラファイト(Miracle Power Products Corporation(Cleveland,OH)から商品名「DGF 123 DRY GRAPHITE FILM SPRAY」で入手)のスプレー層でコーティングして、全てのサンプルについて表面の浸透率及び吸光率を正規化した。「ショット」と呼ばれる単一の測定では、InSb Ir検出器上の電圧で測定した場合、光の短持続時間パルス(キセノンフラッシュランプ、230V、持続時間15マイクロ秒)をサンプルの片側に衝突させ、サンプルの反対側のサーモグラム(測定温度の時間トレース)を記録した。拡散率は、厚さ方向についてはサーモグラムをCowan+パルス補正モデルへ適合させて計算した。厚さ方向(through-plane)の拡散率
は、Cowan法に加えて有限パルス幅補正を使用して計算し、平面方向(in-plane)の拡散率は、ソフトウェア(Netzsch(Selb,Germany)から商品名「Proteus」で入手)の助けを借りて等方性モデルを使用した。25℃で各サンプルについて5回のショットを得た。測定された密度(2.54cm(1インチ)ディスクからの幾何学的密度)、比熱容量(示差走査熱量計による)、及び拡散率の積で熱伝導率を得る。すなわち、
【数1】
【0104】
動的機械分析(Dynamic Mechanical Analysis、DMA)
ガラス転移温度は、DMAによって測定される弾性率のtan(δ)ピークから決定した。サンプルを、1.7mm×12.7mm×30mmの寸法で調製し、約20mmのスパンを有する単一のカンチレバー固定具に装着した。サンプルを、10Hzの周波数で20μmの振れを有する単一のカンチレバーモードで試験し、貯蔵弾性率(E’)及び損失弾性率(E”)を測定した。tan(δ)値を計算した。
tan(δ)=E”/E’
温度を0℃から175℃まで3℃/分で昇温しながら測定を行った。報告されたガラス転移温度(T)は、最大tan(δ)での温度である。
【0105】
硬化エポキシ樹脂組成物が少なくとも2つのガラス転移温度を有する場合、硬化Tgは、最高温度転移であってもよい最高強度の極限Tg又はtanδ転移として定義される。
【0106】
光沢度測定
3インチ×3インチ×1/8インチ(7.62cm×7.62cm×3.18mm)試験片を小板から切断し、粒径の関数として光沢度を測定するために使用した。光沢度測定(表5)は、成形サンプル上でBYKスペクトロガイド光沢計(製品番号6834、BYK Additives and Instruments(Wesel,Germany))を使用して行った。光沢計は、60°の角度で測定した。高光沢材料は、70光沢単位(gloss unit)(GU)を超える値を有するものとして定義された。
【0107】
鉛筆硬度
ASTM D3363-5 05(2011)e2に従って、試験片の鉛筆硬度を評価した。研磨紙(粒度番号400)を、平坦で滑らかなベンチトップに両面テープで接着した。Newell Rubbermaid Office Products(Oak Brook,IL)の子会社であるPrismacolor Professional
Art Suppliesからの鉛筆の芯(Turquoise Premiumの鉛筆の芯(硬度10H~6B))を使用した。鉛筆の芯は、機械的芯ホルダー(Cretacolor(Hirm,Austria)製のTOTIENS 210 99)を研磨紙に対して90°の角度で保持し、平坦で滑らかな円形の断面が得られるまで、芯の縁部にチップ又は切れ目を含まないように研磨した。鉛筆の先端部の力は、7.5ニュートン(N)に固定されたか、場合によってはより小さい値に固定された。各試験用に新たに調製した鉛筆の芯を用い、Elcometer 3086電動式鉛筆硬度試験機(Elcometer Incorporated(Rochester 15 Hills,MI))を用い、芯を断片に対して45°の角度及び所望の荷重でしっかりと押しつけ、試験パネルにわたって「順」方向に少なくとも1/4インチ(6.4mm)の長さの線を引いた。3本の鉛筆線を、芯の硬度の各等級について作成した。検査前に、砕けた芯を、イソプロピルアルコールで濡らした湿ったペーパータオルを用い、試験領域から除去した。欠陥については目視で、及び各鉛筆トラックの最初の1/8~1/4インチ(3.2~6.4mm)については光学顕微鏡(50X~1000X倍率)で、試験パネルを検査した。フィルムに擦り傷を付けることもフィルムを断裂することもない、又は、いずれの微小球も脱落若しくは部分的に脱落させることもない鉛筆が見出されるまで、より堅い芯からより軟らかい芯に換えて硬度のスケールを下げながら、上記のプロセスを繰り返した。各芯硬度の3本の線のうちの少なくとも2本がこれらの基準を満たすことを、合格の必要条件とした。合格した芯のうちの最も硬いものの硬度をその試験パネルの鉛筆硬度として記録した。5ニュートンの力において、3H以上の硬度の値が望ましい。
【0108】
RF透過性の比誘電率及び損失正接測定
用語「比誘電率」、「誘電損失」、「損失正接」は、それらの一般的に理解される定義と同じように使用される。(任意の周波数での)比誘電率は、電界振動のサイクル毎に蓄積されたエネルギーの量であり、Maxwellの式で定義された複素誘電率の実部として決定される。(任意の周波数での)誘電損失は、電界振動のサイクル毎に消散されたエネルギーの量であり、Maxwellの式で定義された複素誘電率の虚部として決定される。(任意の周波数での)損失正接は、誘電損失と比誘電率との比である。
【0109】
最大1MHzまでの誘電特性測定は、Novocontrol Technologies(Montabaur,Germany)のAlpha-A High Temperature Broadband Dielectric Spectrometerモジュール式測定システムを用いて行った。全ての試験は、ASTM D150試験規格に従って行った。フィルムのうちのいくつかは、銅塗料で塗装され、一部は、電極表面にいかに良好にサンプルが適合できたかに応じて、銅塗料を用いずに真鍮電極上に直接積層した(laminated directly)。各サンプルを2つの光学的に研磨された真鍮ディスク(直径40.0mm及び厚さ2.00mm)の間に配置すると、Novocontrol ZGS Alpha Active Sample Cellを実施した。
【0110】
1MHz超の誘電特性測定は、それぞれ2.5GHz、5.6GHz、及び9.5GHzの3つの別個のスプリッドポスト誘電体共振器を用いて行った。1MHz超の全ての測定は、規格IEC 61189-2-721に従って行った。
【0111】
屈折率測定(ベッケ線法)
Cargille of Cedar Grove(New Jersey)から入手可能な所定の屈折率試験液のセットを使用して、以下に記載の手順を用いて透明微小球の屈折率を決定した。
【0112】
透明微小球のサンプルを顕微鏡スライド上に置き、試験液の滴をサンプルと接触させ、カバースリップで被った。ビーズに焦点を合わせるように顕微鏡を調整した。焦点を合わせると、焦点を使用して顕微鏡のステージを下げ、焦点が変化するにつれて、微小球の輪郭に明るい線が観察される。ステージが下がるにつれて、明るい線が液体の中へ外向きに移動する場合、液体はビーズよりも高い屈折率を有した。一方、明るい線がビーズ内に移動する場合、微小球の屈折率がより高かった。異なる率の一連の液体を試験することにより、微小球のおおよその率が特定された。2つの液体が微小球の屈折率の両側に存在する場合、真の値の補間が行われた。
【0113】
実施例及び比較例
表1の材料は、特に記載のない限り、受け入れたままの状態で使用した。成分の重量%を表2(無機含有物及び分散剤)及び表3(硬化性有機樹脂)に記載する。熱伝導性粒子の体積%(体積%(vol.%))は、投入材料の質量を基準にして、3.9グラム/立方セ
ンチメートル(g/cc)のアルミナ粒子密度、2.2g/ccのアルミニウム三水和物(ATH)粒子密度、及び1.15g/ccの樹脂密度を仮定して計算した。
【0114】
【表3】
【0115】
【表4】
【0116】
比較例(CE)1及び2は、代表的な非充填エポキシ樹脂である。オリゴマージオールを組み込むことなく、CE1は非常に脆く、引張サンプルに機械加工することができなかった。代表的な比較例1では、300g容量のスピードミックスカップ(FlackTek Inc.(Landrum,SC))中で、90グラム(g)の脂環式エステル(L190)、60gのC2054、及び3.75gのCXC-1612を組み合わせた。毎分2200回転(rpm)で30秒間、DAC600 VACミキサー(FlackTek Inc.)中で大気圧条件下で、成分をスピード混合した後、800rpmで3分間スピード混合しながら真空脱気した。真空下で到達した最終圧力は、約10ミリバール(mbar)であった。CE2を混合し、表3と一致する樹脂量を使用して同じ方法で脱気した。
【0117】
CE1、Ex1、及びCXC-1612で硬化された任意の実施例の硬化サイクルは、80℃で30分、続いて120℃で60分であった。CE2の硬化サイクル及びNBDAで硬化された任意の材料は、80℃で1時間であった。硬化後、樹脂小板を室温まで冷却し、脱型し、機械的試験-弾性率及び破断点ひずみの節に記載のように適切な幾何学的形状に切断した。
【0118】
Ex3~Ex9は全て、表2及び表3と一致する成分の重量比率で同様に処理した。代表的な実施例3では、FlackTekスピードミックスカップ中で、240gのAX1Mアルミナ粒子を1.2gのB9012と組み合わせ、DAC600.2 VACミキサー(FlackTek Inc.)中で1500rpmで30秒間スピード混合した。次いで、1.5gのCXC-1612、33.2gのL190、及び24.1gのC2054を、スピードミックスカップに添加した後、2200rpmで30秒間、大気圧条件下でスピード混合し、800rpmで3分間スピード混合しながら真空脱気した。真空下で到達した圧力は、約10mbarであった。混合後、樹脂は流動性であったが完全に脱アグロメレートされなかったため、セラミックローラー(Exakt Technologies Inc.,Model 50 I)を備える3ロールミルに通して脱アグロメレートした。最終混合工程及び脱気工程を、1平方インチ当たり10ポンド(psi)、又は0.069メガパスカル(MPa)まで減少させた真空圧で800rpmで適用した。混合し脱気した樹脂を離型処理したガラス鋳型に注ぎ、80℃で30分間硬化させ、続いて120℃で1時間硬化させた。硬化後、樹脂小板を室温まで冷却し、脱型し、以下に記載のように適切な幾何学的形状に切断した。Ex3~Ex9では、同じ手順及び硬化サイクルを使用した。
【0119】
CE3及びEx2は、熱伝導性充填剤で充填された、CE2に記載のエポキシ樹脂からなる。アルミナ粒子を、エポキシ及び硬化剤(NBDA)成分中に別々に混合した。エポキシ及び硬化剤の両方は、表3の総重量%に等しい重量%でアルミナ粒子を含有した。代表的なEx2では、300g容量のスピードミックスカップ中で、209gのAX1Mアルミナ粒子を1.04gのB9012と、1500rpmで30秒間スピード混合した。このカップに、28gのビス-Aエポキシ及び24gの鎖延長エポキシ(E4850)を添加し、混合物をスピード混合し、上記のように3ロールミルに通した。別個の200g容量のスピードミックスカップ中で、31gのAX1Mアルミナ粒子を0.15gのB9012と組み合わせ、2200rpmで30秒間スピード混合した。次いで、7.9グラムのNBDA(硬化剤)を添加し、2200rpmで30秒間スピード混合した。単一の300gのスピードミックスカップ中で、アルミナ充填エポキシ及びアルミナ充填硬化剤を組み合わせ、10mbarの真空圧に達するまで800rpmで3分間真空脱気した。混合樹脂を離型剤で処理したガラス鋳型に注ぎ、80℃で1時間硬化させた。CE3は、表2及び3に記載の量を使用して、Ex3~Ex9と同じ手順によって調製した。Ex10は、硬度及び耐擦傷性を改善するためにホウケイ酸ガラスビーズ表面を有する、Ex4からのエポキシ樹脂組成物であった。
【0120】
ホウケイ酸ガラス粉末を、水素/酸素火炎に3グラム/分の速度で通過させることによって火炎処理装置に2回通過させ、微小球を形成し、ステンレス鋼容器に回収し、磁石を用い、金属の不純物を除去した。得られたガラス微小球を以下の方法により、600ppmのA1100で処理した。シランを水に溶解した後、混合しながら微小球に加え、終夜風乾した後、110℃で20分間乾燥した。次いで、乾燥したシラン処理微小球をふるい分けしてあらゆる粒塊を除去し、サイズが75μm以下で自由流動性の微小球を得た。得られた透明シラン処理微小球を、約140℃(284°F)まで予熱した、97μm(0.0038インチ)のポリエステル剥離ライナー上にコーティングされた25μm(0.0010インチ)低密度ポリエチレンを含む転写キャリアフィルム上に機械的シフターを使用してカスケードコーティングして、拡大画像システムによって決定される直径の約30~40%に対応する深さまで低密度ポリエチレン層中に埋め込まれた透明微小球の均一層を有するビーズキャリアを形成した。
【0121】
ホウケイ酸ビーズが埋め込まれた転写フィルムの200m×200mm(7.9インチ×7.9インチ)セクションを、ガラス鋳型(200mm×250mm×3mmのキャビティを有する)の1つの内面にビーズ化側が内側を向くように接着し、これにより、鋳型にエポキシ樹脂組成物を充填したときに、ホウケイ酸ビーズがエポキシ樹脂組成物に接触し、かつエポキシ樹脂組成物に部分的に埋め込まれる。鋳型に、Ex4に記載の樹脂を充填した。エポキシ、ビーズ化表面、及び鋳型を、90℃のオーブン内で1時間加熱して、エポキシをゲル化した。鋳型を分解し、ポリエステル剥離ライナーを低密度ポリエチレンと共にケイ酸塩ビーズから除去し、ビーズ化ホウケイ酸表面をエポキシ樹脂上に残した。これを120℃で1時間硬化した。上記のように張力及び鉛筆硬度についてEx10を機械的に試験し、結果はそれぞれ表4及び表6に含まれている。
【0122】
【表5】
【0123】
【表6】
【0124】
【表7】
【0125】
【表8】
【0126】
実施例11
FlackTekスピードミックスカップ中で、150.3グラムのAX1Mアルミナ粒子を、48.77グラムのSyna Epoxy 21、19.11グラムのC2054、及び4.81グラムのC3031と組み合わせ、DAC 600.2VACミキサー(FlackTek Inc.)中で2000rpmで30秒間スピード混合した。次いで、0.76グラムのBYK 9010を添加し、配合物を2000rpmで30秒間スピード混合した。次いで、残存する150.33グラムのAX1Mアルミナ粒子を、1.84グラムのCXC1612と共に添加し、2000rpmで30秒間スピード混合した。混合後、樹脂は流動性であったが完全に脱アグロメレートされなかったため、セラミックローラー(Exakt Technologies Inc.,Model 50 I)を備える3ロールミルに通して脱アグロメレートした。DAC 600.2を使用した最終混合工程及び脱気工程を、1平方インチ当たり10ポンド(psi)まで減少させた真空圧で200秒にわたって適用した。混合し脱気した樹脂を離型処理した鋳型に注ぎ、硬化させた。硬化後、樹脂小板を室温まで冷却し、脱型し、以下に記載のように適切な幾何学的形状に切断した。
【0127】
実施例12
FlackTekスピードミックスカップ中で、50.3グラムのAX1Mアルミナ粒子を、16.735グラムのSyna Epoxy 21、7.178グラムのC2054と組み合わせ、DAC 600.2VACミキサー(FlackTek Inc.)中で2000rpmで30秒間スピード混合した。次いで、0.498グラムのBYK 9010を添加し、配合物を2000rpmで30秒間スピード混合した。次いで、残存する50.2グラムのAX1Mアルミナ粒子を、0.6009グラムのCXC1612と共に添加し、2000rpmで30秒間スピード混合した。混合後、樹脂は流動性であったが完全に脱アグロメレートされなかったため、セラミックローラー(Exakt Technologies Inc.,Model 50 I)を備える3ロールミルに通して脱アグロメレートした。DAC 600.2を使用した最終混合工程及び脱気工程を、1平方インチ当たり10ポンド(psi)まで減少させた真空圧で200秒にわたって適用した。混合し脱気した樹脂を離型処理した鋳型に注ぎ、硬化させた。硬化後、樹脂小板を室温まで冷却し、脱型し、以下に記載のように適切な幾何学的形状に切断した。
【0128】
実施例13
FlackTekスピードミックスカップ中で、50.2グラムのAX1Mアルミナ粒子を、17.925グラムのSyna Epoxy 21、5.958グラムのC2054と組み合わせ、DAC 600.2VACミキサー(FlackTek Inc.)中で2000rpmで30秒間スピード混合した。次いで、0.4968グラムのBYK 9010を添加し、配合物を2000rpmで30秒間スピード混合した。次いで、残存する49.95グラムのAX1Mアルミナ粒子を、0.5974グラムのCXC1612と共に添加し、2000rpmで30秒間スピード混合した。混合後、樹脂は流動性であったが完全に脱アグロメレートされなかったため、セラミックローラー(Exakt Technologies Inc.,Model 50 I)を備える3ロールミルに通して脱アグロメレートした。DAC 600.2を使用した最終混合工程及び脱気工程を、1平方インチ当たり10ポンド(psi)まで減少させた真空圧で200秒にわたって適用した。混合し脱気した樹脂を離型処理した鋳型に注ぎ、硬化させた。硬化後、樹脂小板を室温まで冷却し、脱型し、以下に記載のように適切な幾何学的形状に切断した。
【0129】
実施例14
FlackTekスピードミックスカップ中で、49.98グラムのAX1Mアルミナ粒子を、18.082グラムのSyna Epoxy 21、6.041グラムのC2054と組み合わせ、DAC 600.2VACミキサー(FlackTek Inc.)中で2000rpmで30秒間スピード混合した。次いで、0.2516グラムのBYK 9012を添加し、配合物を2000rpmで30秒間スピード混合した。次いで、残存する50.2グラムのAX1Mアルミナ粒子を、0.6033グラムのCXC1612と共に添加し、2000rpmで30秒間スピード混合した。混合後、樹脂は流動性であったが完全に脱アグロメレートされなかったため、セラミックローラー(Exakt Technologies Inc.,Model 50 I)を備える3ロールミルに通して脱アグロメレートした。DAC 600.2を使用した最終混合工程及び脱気工程を、1平方インチ当たり10ポンド(psi)まで減少させた真空圧で200秒にわたって適用した。混合し脱気した樹脂を離型処理した鋳型に注ぎ、硬化させた。硬化後、樹脂小板を室温まで冷却し、脱型し、以下に記載のように適切な幾何学的形状に切断した。
【0130】
実施例15
FlackTekスピードミックスカップ中で、62.26グラムのAX1Mアルミナ粒子を、18.5228グラムのSyna Epoxy-21、11.365グラムのC2054と組み合わせ、DAC 600.2VACミキサー(FlackTek Inc.)中で2000rpmで30秒間スピード混合した。次いで、0.6224グラムのBYK 9012を添加し、配合物を2000rpmで30秒間スピード混合した。次いで、残存する62.25グラムのAX1Mアルミナ粒子を、0.7473グラムのCXC1612と共に添加し、2000rpmで30秒間スピード混合した。混合後、樹脂は流動性であったが完全に脱アグロメレートされなかったため、セラミックローラー(Exakt Technologies Inc.,Model 50 I)を備える3ロールミルに通して脱アグロメレートした。DAC 600.2を使用した最終混合工程及び脱気工程を、1平方インチ当たり10ポンド(psi)まで減少させた真空圧で200秒にわたって適用した。混合し脱気した樹脂を離型処理した鋳型に注ぎ、硬化させた。硬化後、樹脂小板を室温まで冷却し、脱型し、以下に記載のように適切な幾何学的形状に切断した。
【0131】
実施例16
FlackTekスピードミックスカップ中で、50.05グラムのAX1Mアルミナ粒子を、16.039グラムのSyna Epoxy-21、7.89グラムのC2054と組み合わせ、DAC 600.2VACミキサー(FlackTek Inc.)中で2000rpmで30秒間スピード混合した。次いで、0.4991グラムのBYK 9012を添加し、配合物を2000rpmで30秒間スピード混合した。次いで、残存する50.15グラムのAX1Mアルミナ粒子を、0.5952グラムのCXC1612と共に添加し、2000rpmで30秒間スピード混合した。混合後、樹脂は流動性であったが完全に脱アグロメレートされなかったため、セラミックローラー(Exakt Technologies Inc.,Model 50 I)を備える3ロールミルに通して脱アグロメレートした。DAC 600.2を使用した最終混合工程及び脱気工程を、1平方インチ当たり10ポンド(psi)まで減少させた真空圧で200秒にわたって適用した。混合し脱気した樹脂を離型処理した鋳型に注ぎ、硬化させた。硬化後、樹脂小板を室温まで冷却し、脱型し、以下に記載のように適切な幾何学的形状に切断した。
【0132】
【表9】
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2023-11-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0095
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0095】
硬化エポキシ樹脂中に部分的に埋め込まれた微小球を含めることにより、鉛筆硬度を高めることができる。一実施形態において、鉛筆硬度は、少なくとも6K、7H、8H、9H、又は10Hである。鉛筆硬度は、典型的には10H以下である。
本発明は以下の態様を包含する。
(1)エンクロージャを備え、前記エンクロージャが、少なくとも50体積%の非導電性熱伝導性無機粒子を含む硬化エポキシ樹脂組成物を含む、電子デバイス。
(2)前記エンクロージャが、ハウジング又はケースである、項目1に記載の電子デバイス。
(3)前記電子デバイスが、電話、タブレット、ラップトップ、又はマウスから選択される、項目1又は2に記載の電子デバイス。
(4)前記電子デバイスが、前記エンクロージャを介して充電することができる電池を備える、項目1~3のいずれかに記載の電子デバイス。
(5)前記硬化エポキシ樹脂が、前記硬化エポキシ樹脂中に部分的に埋め込まれた複数の微小球を含む、項目1~3のいずれかに記載の電子デバイス。
(6)前記硬化エポキシ樹脂中に部分的に埋め込まれた前記複数の微小球を含む前記硬化エポキシ樹脂が、6Hより大きい鉛筆硬度を有する、項目5に記載の電子デバイス。
(7)前記硬化エポキシ樹脂が、少なくとも1W/m・Kの熱伝導率を有する、項目1~6のいずれかに記載の電子デバイス。
(8)前記非導電性熱伝導性粒子が、>0eVの電子バンドギャップを有する材料を含む、項目1~7のいずれかに記載の電子デバイス。
(9)前記硬化エポキシ樹脂が、高周波透過性であり、前記硬化エポキシ樹脂が、10 ~10 10 Hzの範囲において<0.03の誘電損失正接を有する、項目1~8のいずれかに記載の電子デバイス。
(10)前記非導電性熱伝導性粒子が、>10W/m・Kのバルク熱伝導率を有する材料を含む、項目1~9のいずれかに記載の電子デバイス。
(11)前記非導電性熱伝導性粒子が、アルミナ、窒化ホウ素、炭化ケイ素、アルミナ三水和物、及びこれらの混合物から選択される、項目1~10のいずれかに記載の電子デバイス。
(12)前記非導電性熱伝導性粒子が、20、10、5、又は1ミクロン未満のメジアン粒径を有する、項目1~11のいずれかに記載の電子デバイス。
(13)前記硬化エポキシ樹脂組成物が、環状部分を含む、項目1~12のいずれかに記載の電子デバイス。
(14)前記硬化エポキシ樹脂組成物が、脂環式部分を含む、項目13に記載の電子デバイス。
(15)前記硬化エポキシ樹脂組成物が、0℃未満のガラス転移温度を有するオリゴマー又はポリマー部分を2~20重量%含む、項目1~14のいずれかに記載の電子デバイス。
(16)前記オリゴマー又はポリマー部分が、前記硬化エポキシ樹脂に共有結合している、項目1~15のいずれかに記載の電子デバイス。
(17)前記硬化エポキシ樹脂組成物が、1~10%の範囲の破断点引張ひずみを有する、項目1~16のいずれかに記載の電子デバイス。
(18)前記硬化エポキシ樹脂組成物が、5~50GPaの範囲の弾性率を有する、項目1~17のいずれかに記載の電子デバイス。
(19)前記オリゴマー又はポリマー部分が、100~3000g/モルの範囲の重量平均分子量を有するエポキシ反応性オリゴマーから誘導される、項目1~18のいずれかに記載の電子デバイス。
(20)前記エポキシ反応性オリゴマーが、ヒドロキシル基末端を有する、項目1~19のいずれかに記載の電子デバイス。
(21)前記オリゴマー又はポリマー部分が、ポリカプロラクトンを含む、項目15~20のいずれかに記載の電子デバイス。
(22)前記硬化エポキシ樹脂組成物が、分散剤を更に含む、項目1~21のいずれかに記載の電子デバイス。
(23)前記硬化エポキシ樹脂組成物が、150、125、又は100℃未満のガラス転移温度を有する、項目1~22のいずれかに記載の電子デバイス。
(24)前記硬化エポキシ樹脂組成物が、単一のガラス転移温度を有する、項目1~23のいずれかに記載の電子デバイス。
(25)前記硬化エポキシ樹脂組成物が、50℃未満のtanδピーク半値幅を有する、項目1~24のいずれかに記載の電子デバイス。
(26)前記硬化エポキシ樹脂組成物が、少なくとも2つのガラス転移温度を有する、項目1~23のいずれかに記載の電子デバイス。
(27)前記硬化エポキシ樹脂組成物が、50℃以上のtanδピーク半値幅を有する、項目1~24、及び26のいずれかに記載の電子デバイス。
(28)前記硬化エポキシ樹脂組成物が、硬化後に>70の光沢度を有する、項目1~22のいずれかに記載の電子デバイス。
(29)項目1~28のいずれかに記載の硬化エポキシ樹脂組成物を含む、電子デバイス。
(30)エポキシ樹脂を含む第1の部分と、
0℃未満のガラス転移温度を有するエポキシ反応性オリゴマー又はポリマー部分を2~20重量%含む第2の部分と、
を含む、有機成分と、
少なくとも50体積%の非導電性熱伝導性無機粒子と、
を含む、エポキシ樹脂組成物。
(31)エポキシ樹脂を含む第1の部分と、
0℃未満のガラス転移温度を有するエポキシ反応性オリゴマー又はポリマー部分を含む第2の部分と、
を含む、有機成分と、
少なくとも50体積%の非導電性熱伝導性無機粒子と、を含み、
前記エポキシ樹脂材料が、硬化後に100℃未満のガラス転移温度を有する、
エポキシ樹脂組成物。
(32)前記エポキシ樹脂組成物が、項目5~28のいずれか又は組み合わせによって更に特徴づけられる、項目30又は31に記載のエポキシ樹脂組成物。
(33)エポキシ樹脂を含む第1の部分と、
エポキシ反応性オリゴマー又はポリマー部分を含む第2の部分と、
を含む、有機成分と、
少なくとも50体積%の非導電性熱伝導性無機粒子と、を含み、
前記エポキシ樹脂材料が、少なくとも2つのガラス転移温度、又は55℃以上のtanδピーク半値幅を有する、
エポキシ樹脂組成物。
(34)前記エポキシ樹脂組成物が、項目5~23のいずれか又は組み合わせによって更に特徴づけられる、項目33に記載のエポキシ樹脂組成物。
(35)項目30~34のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物を供給することと、前記組成物をハウジング又はケースに成形することと、を含む、電子デバイス用のエンクロージャを製造する方法。
(36)前記成形する工程が、前記エポキシ樹脂組成物を鋳型に供給することと、前記エポキシ樹脂組成物を硬化させることと、を含む、項目35に記載の方法。
(37)前記エポキシ樹脂組成物を供給する前に、転写ポリマー層と、前記転写ポリマー層中に埋め込まれた複数の微小球とを含む転写フィルムを前記鋳型に供給する、項目36に記載の方法。
(38)前記エポキシ樹脂を硬化させた後に、前記転写ポリマー層を除去することを更に含む、項目37に記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンクロージャを備え、前記エンクロージャが、少なくとも50体積%の非導電性熱伝導性無機粒子を含む硬化エポキシ樹脂組成物を含む、電子デバイス。
【請求項2】
前記エンクロージャが、ハウジング又はケースである、請求項1に記載の電子デバイス。
【請求項3】
前記電子デバイスが、電話、タブレット、ラップトップ、又はマウスから選択される、請求項1又は2に記載の電子デバイス。
【請求項4】
前記電子デバイスが、前記エンクロージャを介して充電することができる電池を備える、請求項1~3のいずれか一項に記載の電子デバイス。
【請求項5】
前記硬化エポキシ樹脂が、前記硬化エポキシ樹脂中に部分的に埋め込まれた複数の微小球を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の電子デバイス。
【請求項6】
前記硬化エポキシ樹脂中に部分的に埋め込まれた前記複数の微小球を含む前記硬化エポキシ樹脂が、6Hより大きい鉛筆硬度を有する、請求項5に記載の電子デバイス。
【請求項7】
前記硬化エポキシ樹脂が、少なくとも1W/m・Kの熱伝導率を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の電子デバイス。
【請求項8】
前記非導電性熱伝導性粒子が、>0eVの電子バンドギャップを有する材料を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の電子デバイス。
【請求項9】
前記硬化エポキシ樹脂が、高周波透過性であり、前記硬化エポキシ樹脂が、10~1010Hzの範囲において<0.03の誘電損失正接を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の電子デバイス。
【請求項10】
前記非導電性熱伝導性粒子が、>10W/m・Kのバルク熱伝導率を有する材料を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の電子デバイス。
【請求項11】
前記非導電性熱伝導性粒子が、アルミナ、窒化ホウ素、炭化ケイ素、アルミナ三水和物、及びこれらの混合物から選択される、請求項1~10のいずれか一項に記載の電子デバイス。
【請求項12】
前記非導電性熱伝導性粒子が、20、10、5、又は1ミクロン未満のメジアン粒径を有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の電子デバイス。
【請求項13】
前記硬化エポキシ樹脂組成物が、環状部分を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の電子デバイス。
【請求項14】
前記硬化エポキシ樹脂組成物が、0℃未満のガラス転移温度を有するオリゴマー又はポリマー部分を2~20重量%含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の電子デバイス。
【請求項15】
エポキシ樹脂を含む第1の部分と、
0℃未満のガラス転移温度を有するエポキシ反応性オリゴマー又はポリマー部分を2~20重量%含む第2の部分と、
を含む、有機成分と、
少なくとも50体積%の非導電性熱伝導性無機粒子と、
を含む、エポキシ樹脂組成物。
【外国語明細書】