(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123302
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】接着用組成物、それを用いた接合体および接合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C09J 4/02 20060101AFI20240905BHJP
C09J 5/02 20060101ALI20240905BHJP
C09J 115/00 20060101ALI20240905BHJP
B32B 7/12 20060101ALI20240905BHJP
B32B 25/04 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
C09J4/02
C09J5/02
C09J115/00
B32B7/12
B32B25/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021127543
(22)【出願日】2021-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】000214250
【氏名又は名称】ナガセケムテックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】弁理士法人河崎特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡部 拓也
【テーマコード(参考)】
4F100
4J040
【Fターム(参考)】
4F100AA20C
4F100AB03B
4F100AK01C
4F100AK12C
4F100AK25C
4F100AK25D
4F100AK73C
4F100AK73D
4F100AK75A
4F100AK75C
4F100AK75D
4F100AL01C
4F100AN00A
4F100AN00B
4F100AN00C
4F100AN02A
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA07
4F100CA30C
4F100EH46C
4F100EJ65D
4F100JL11C
4J040CA031
4J040DA161
4J040DB061
4J040FA131
4J040JB02
4J040KA12
4J040MA02
4J040MA12
4J040PA02
(57)【要約】
【課題】ゴム製の第1部材と第2部材とを高い接着性で接着することができる接着用組成物を提供する。
【解決手段】接着用組成物は、成分(A):第1重合性モノマー、成分(B):ゴム成分、成分(C):第1反応性官能基を有するポリマー成分、および成分(D):重合開始剤、を含む。前記成分(B)および前記成分(C)は、前記成分(A)に溶解している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム製の第1部材と、第2部材と、を接着するために使用される接着用組成物であって、
成分(A):第1重合性モノマー、
成分(B):ゴム成分、
成分(C):第1反応性官能基を有するポリマー成分、および
成分(D):重合開始剤、を含み、
前記成分(B)および前記成分(C)は、前記成分(A)に溶解している、接着用組成物。
【請求項2】
前記第1重合性モノマーおよび前記ゴム成分は、それぞれ、重合性炭素炭素不飽和結合を含む、請求項1に記載の接着用組成物。
【請求項3】
前記第1重合性モノマーは、(メタ)アクリロイル基を含む、請求項1または2に記載の接着用組成物。
【請求項4】
前記ゴム成分は、ビニル基、エチリデン基、シクロオレフィン環、および主鎖中の炭素炭素不飽和結合からなる群より選択される少なくとも一種を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の接着用組成物。
【請求項5】
前記第1反応性官能基は、カルボキシ基、酸無水物基、アミノ基、オキサゾリン環、ヒドロキシ基、エポキシ基、オキセタン環、イソシアネート基、塩素原子、酸クロライド基、スルホン酸基、エステル基、シラノール基、アルコキシシリル基、ビニルシリル基、およびヒドロシリル基からなる群より選択される少なくとも1つである、請求項1~4のいずれか1項に記載の接着用組成物。
【請求項6】
前記成分(B)の量は、前記成分(A)100質量部に対して、1質量部以上50質量部以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の接着用組成物。
【請求項7】
前記成分(C)の量は、前記成分(A)100質量部に対して、0.1質量部以上50質量部以下である、請求項1~6のいずれか1項に記載の接着用組成物。
【請求項8】
有機溶剤を含まない、請求項1~7のいずれか1項に記載の接着用組成物。
【請求項9】
前記第1部材に塗布される、請求項1~8のいずれか1項に記載の接着用組成物。
【請求項10】
さらに、成分(E):前記第1反応性官能基と反応して結合または架橋構造を形成可能な第2反応性官能基を有する第2重合性モノマーを含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の接着用組成物。
【請求項11】
前記成分(E)の量は、前記成分(A)100質量部に対して、3質量部以上300質量部以下である、請求項10に記載の接着用組成物。
【請求項12】
前記第2部材は、ゴム製である、請求項1~11のいずれか1項に記載の接着用組成物。
【請求項13】
前記第2部材は、非ゴム製である、請求項10または11に記載の接着用組成物。
【請求項14】
前記第1部材および前記第2部材の少なくとも一方は、接着面と連通する中空部を有する、請求項12または13に記載の接着用組成物。
【請求項15】
ゴム製の第1部材とゴム製の第2部材とが、請求項1~11のいずれか1項に記載の接着用組成物の硬化物で接着されている、接合体。
【請求項16】
ゴム製の第1部材と非ゴム製の第2部材とが、請求項10または11に記載の接着用組成物の硬化物で接着されている、接合体。
【請求項17】
ゴム製の第1部材と、非ゴム製の第2部材と、前記第1部材および前記第2部材間を接着する接着用組成物の硬化物とを備える接合体であって、
少なくとも一部が前記第1部材に浸透したプライマー層と、前記プライマー層に一部が浸透するとともに前記プライマー層と前記第2部材との間に配置された接着剤層とを介して、前記第1部材と前記第2部材とが接合しており、
前記プライマー層は、請求項1~11のいずれか1項に記載の接着用組成物の硬化物を含み、
前記接着剤層は、請求項10または11に記載の接着用組成物の硬化物を含み、
前記プライマー層の前記接着剤層が浸透した部分では、前記第1反応性官能基と前記第2反応性官能基とが反応して、結合または架橋構造を形成している、接合体。
【請求項18】
ゴム製の第1部材およびゴム製の第2部材の少なくとも一方に、請求項1~11のいずれか1項に記載の接着用組成物を付与する工程と、
前記第1部材と前記第2部材とを、前記第1部材および前記第2部材が前記接着用組成物と接触するように重ねて積層物を形成する工程と、
前記接着用組成物を硬化させて、前記第1部材と前記第2部材とが前記接着用組成物の硬化物によって接着された接合体を形成する工程と、を含む、接合体の製造方法。
【請求項19】
ゴム製の第1部材および非ゴム製の第2部材の少なくとも一方に、請求項10または11に記載の接着用組成物を付与する工程と、
前記第1部材と前記第2部材とを、前記第1部材および前記第2部材が前記接着用組成物と接触するように重ねて積層物を形成する工程と、
前記接着用組成物を硬化させて、前記第1部材と前記第2部材とが前記接着用組成物の硬化物によって接着された接合体を形成する工程と、を含む、接合体の製造方法。
【請求項20】
ゴム製の第1部材に請求項1~11のいずれか1項に記載の接着用組成物を浸透させてプライマー層を形成する工程と、
請求項10または11に記載の接着用組成物を、前記プライマー層および非ゴム製の第2部材の少なくとも一方の表面に付与して接着剤層を形成する工程と、
前記第1部材と前記第2部材とを重ねるとともに前記接着用組成物を前記プライマー層に浸透させて積層物を形成する工程と、
前記プライマー層および前記接着剤層における前記接着用組成物を硬化させて、前記第1部材と前記第2部材とが前記接着用組成物の硬化物によって接着された接合体を形成する工程と、を備え、
前記接合体を形成する工程では、前記プライマー層の前記接着剤層が浸透した部分において、前記第1反応性官能基と、前記第2反応性官能基とが反応して、結合または架橋構造が形成される、接合体の製造方法。
【請求項21】
前記プライマー層を形成する工程の後、前記接着剤層を形成する工程において、前記接着用組成物を前記プライマー層および非ゴム製の第2部材の少なくとも一方の表面に付与する前に、前記成分(A)の少なくとも一部を重合させる、請求項20に記載の接合体の製造方法。
【請求項22】
ゴム製の第1部材に請求項10または11に記載の接着用組成物を付与し、浸透させて、接着剤層とともにプライマー層を形成する工程と、
前記第1部材と前記第2部材とを、前記第1部材および前記第2部材が前記接着用組成物と接触するように重ねて積層物を形成する工程と、
前記プライマー層および前記接着剤層における前記接着用組成物を硬化させて、前記第1部材と前記第2部材とが前記接着用組成物の硬化物によって接着された接合体を形成する工程と、を備え、
前記接合体を形成する工程では、前記プライマー層の前記接着剤層が浸透した部分において、前記第1反応性官能基と、前記第2反応性官能基とが反応して、結合または架橋構造が形成される、接合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、接着用組成物、それを用いた接合体および接合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の部材を、接着剤を用いて接着する場合には、接着による高い密着性を確保する観点から、熱硬化性の接着剤がしばしば使用される。接着剤の組成は、接着される部材の材質、求められる強度などに応じて決定されることが多い。
【0003】
ゴム製部材と金属部材とを接着する場合には、未加硫ゴム製の部材を用いて、未加硫ゴムの加硫と接着剤による接着との双方により高い強度を確保する試みもなされている。例えば、特許文献1は、金属と未加硫ゴムとを接着剤を介して加熱することにより、ゴムを加硫するとともに、ゴムと金属とを接着する加硫接着方法において、金属をリン酸鉄系処理剤によって化成処理しておくことを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
接着剤は、通常、接着面間に配置され、接着面同士を接着する。そのため、接着面間の物理的な接着効果だけでは高い接着強度を確保することは難しい。ゴム製部材の場合には、未加硫ゴム製の部材を使用すれば、接着剤による接着効果に加えて加硫による接着効果が得られるため、比較的高い接着強度が得られ易い。しかし、被着体の少なくとも一方は未加硫ゴムに限定されるため、汎用性が低い。未加硫ゴムだけでなく、加硫ゴムなども含めて様々なゴム製部材の接着に利用できる優れた接着性を有する接着用組成物が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1側面は、ゴム製の第1部材と、第2部材と、を接着するために使用される接着用組成物であって、
成分(A):第1重合性モノマー、
成分(B):ゴム成分、
成分(C):第1反応性官能基を有するポリマー成分、および
成分(D):重合開始剤、を含み、
前記成分(B)および前記成分(C)は、前記成分(A)に溶解している、接着用組成物に関する。
【0007】
本開示の第2側面は、ゴム製の第1部材とゴム製の第2部材とが、上記の接着用組成物(第1接着用組成物)または第1接着用組成物にさらに、成分(E):前記第1反応性官能基と反応して結合または架橋構造を形成可能な第2反応性官能基を有する第2重合性モノマー、を含む接着用組成物(第2接着用組成物)の硬化物で接着されている、接合体に関する。
【0008】
本開示の第3側面は、ゴム製の第1部材と非ゴム製の第2部材とが、上記の第2接着用組成物の硬化物で接着されている、接合体に関する。
【0009】
本開示の第4側面は、ゴム製の第1部材と、非ゴム製の第2部材と、前記第1部材および前記第2部材間を接着する接着用組成物の硬化物とを備える接合体であって、
少なくとも一部が前記第1部材に浸透したプライマー層と、前記プライマー層に一部が浸透するとともに前記プライマー層と前記第2部材との間に配置された接着剤層とを介して、前記第1部材と前記第2部材とが接合しており、
前記プライマー層は、上記の第1接着用組成物または上記の第2接着用組成物の硬化物を含み、
前記接着剤層は、上記の第2接着用組成物の硬化物を含み、
前記プライマー層の前記接着剤層が浸透した部分では、前記第1反応性官能基と前記第2反応性官能基とが反応して、結合または架橋構造を形成している、接合体に関する。
【0010】
本開示の第5側面は、ゴム製の第1部材およびゴム製の第2部材の少なくとも一方に、上記の第1接着用組成物または上記の第2接着用組成物を付与する工程と、
前記第1部材と前記第2部材とを、前記第1部材および前記第2部材が前記第1接着用組成物または前記第2接着用組成物と接触するように重ねて積層物を形成する工程と、
前記第1接着用組成物または前記第2接着用組成物を硬化させて、前記第1部材と前記第2部材とが前記第1接着用組成物または前記第2接着用組成物の硬化物によって接着された接合体を形成する工程と、を含む、接合体の製造方法に関する。
【0011】
本発明の第6側面は、ゴム製の第1部材および非ゴム製の第2部材の少なくとも一方に、上記の第2接着用組成物を付与する工程と、
前記第1部材と前記第2部材とを、前記第1部材および前記第2部材が前記第2接着用組成物と接触するように重ねて積層物を形成する工程と、
前記第2接着用組成物を硬化させて、前記第1部材と前記第2部材とが前記第2接着用組成物の硬化物によって接着された接合体を形成する工程と、を含む、接合体の製造方法に関する。
【0012】
本発明の第7側面は、ゴム製の第1部材に上記の第1接着用組成物または上記の第2接着用組成物を浸透させてプライマー層を形成する工程と、
上記の第2接着用組成物を、前記プライマー層および非ゴム製の第2部材の少なくとも一方の表面に付与して接着剤層を形成する工程と、
前記第1部材と前記第2部材とを重ねるとともに前記第2接着用組成物を前記プライマー層に浸透させて積層物を形成する工程と、
前記プライマー層および前記接着剤層における前記第1接着用組成物および前記第2接着用組成物、または前記第2接着用組成物を硬化させて、前記第1部材と前記第2部材とが前記第1接着用組成物および前記第2接着用組成物の硬化物、または前記第2接着用組成物の硬化物によって接着された接合体を形成する工程と、を備え、
前記接合体を形成する工程では、前記プライマー層の前記接着剤層が浸透した部分において、前記第1反応性官能基と、前記第2反応性官能基とが反応して、結合または架橋構造が形成される、接合体の製造方法に関する。
【0013】
本発明の第8側面は、ゴム製の第1部材に上記の第2接着用組成物を付与し、浸透させて、接着剤層とともにプライマー層を形成する工程と、
前記第1部材と前記第2部材とを、前記第1部材および前記第2部材が前記第2接着用組成物と接触するように重ねて積層物を形成する工程と、
前記プライマー層および前記接着剤層における前記第2接着用組成物を硬化させて、前記第1部材と前記第2部材とが前記第2接着用組成物の硬化物によって接着された接合体を形成する工程と、を備え、
前記接合体を形成する工程では、前記プライマー層の前記接着剤層が浸透した部分において、前記第1反応性官能基と、前記第2反応性官能基とが反応して、結合または架橋構造が形成される、接合体の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0014】
ゴム製の第1部材と第2部材とを高い接着性で接着することができる接着用組成物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の接合体の一実施形態を説明するための概略断面図である。
【
図2】本発明の接合体の製造方法の一実施形態を説明するためのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
例えば、接着面に反応性の官能基が存在する場合には、物理的な接着の場合とは異なり、接着剤と反応させることで接着強度を高めることができる。しかし、この場合にも、接着面間の接着になるため、接着強度の向上効果は限定的である。接着面間の接着強度を高める観点から、接着剤を付与する前に、接着面に表面処理で凹凸を設けることもある。表面に凹凸に接着剤が入り込み、アンカー効果が得られるためである。しかしながら、接着される部材同士は、熱膨張係数が異なることが多く、接着剤を熱硬化する際や接着された部材が使用される環境において、部材同士の熱歪みの差が生じて、高い接着強度を確保することが難しい。
【0017】
接着面間の接着に加えて、接着剤が部材の内部まで浸透して、部材内部においても接着性を発揮できれば、部材の深部までアンカーのように強固に固定できるため、全体として優れた接着性を確保することができる。しかし、接着される部材への接着剤の浸透性を高めるため、有機溶剤を用いると、接着剤を硬化させる際に、揮発性有機化合物(VOC:Volatile Organic Compounds)が発生して、周囲の環境が損なわれる。そのため、有機溶剤を用いなくても優れた塗布性および優れた接着性が得られる接着剤が求められている。
【0018】
上記に鑑み、本発明の第1側面に係る接着用組成物は、ゴム製の第1部材と、第2部材とを接着するために使用される接着用組成物であって、成分(A):第1重合性モノマー、成分(B):ゴム成分、成分(C):第1反応性官能基を有するポリマー成分、および成分(D):重合開始剤、を含む。接着用組成物では、成分(B)および成分(C)は、成分(A)に溶解している。
【0019】
成分(A)および(D)に比べると、成分(B)および(C)は高分子量であるが、成分(C)は、第1反応性官能基によって比較的高い極性を有するため、成分(A)に溶解し易い。また、成分(C)は、第1反応性官能基の存在によって、成分(B)および(A)の相溶化剤としても作用する。成分(A)に溶解するような成分(B)は、通常、重合性官能基などのある程度の極性を有する官能基を有している。また、ゴム成分である成分(B)は、ゴム製の第1部材に対する親和性が高い。これらの成分を含む接着用組成物は、第1部材に対する浸透性が高い。そのため、少なくともいずれか一方の接着面に接着用組成物を塗布して接着面同士を重ね合わせると、低分子の成分(A)および(D)とともに、成分(B)および(C)まで第1部材の内部に浸透させることができる。そして、接着用組成物は、熱や光のエネルギーの作用によって、成分(D)が活性化し、第1部材の内部に浸透した部分と第1部材および第2部材の接着面間に存在する部分とで、主に成分(A)の重合反応により硬化して、第1部材の内部から接着面間まで一体に硬化するため、高い接着性が得られる。第2部材がゴム製である場合には、接着用組成物を第2部材の内部に浸透させることもでき、第2部材の内部も一体に硬化させることができるため、さらに高い接着性が得られる。しかも、接着用組成物の硬化物は、成分(B)および成分(C)により、ある程度の弾性を有する。そのため、得られた第1部材と第2部材との接合体に、各部材の熱膨張係数の違いにより熱歪みが加わっても、硬化物中に微分散された状態の成分(B)および成分(C)により応力が緩和される。よって、接着面間での剥離が抑制され、優れた接着性を確保することができる。
【0020】
接着用組成物は、特に有機溶剤を含まなくても、上記の組成により第1部材に対する高い浸透性を有し、高い接着性を確保することができる。よって、VOCが生成する問題を回避することができ、周囲の環境を改善することができる。
【0021】
第2部材がゴム製である場合には、ゴム製部材同士の接着で、成分(A)~(D)を含む接着用組成物を用いることで、高い接着性を確保することができる。ゴム製部材同士の接着に、成分(A)~(D)に加えて、成分(E):第1反応性反応基と反応して結合または架橋構造を形成可能な第2反応性官能基を有する第2重合性モノマーを含む接着用組成物を用いてもよい。第2部材が非ゴム製である場合には、ゴム製の部材に比べると、接着用組成物の浸透性が低い。そのため、成分(A)~(D)に加えて、成分(E)を含む接着用組成物を用いることが好ましい。接着用組成物が成分(E)を含む場合、成分(A)による重合に加えて、成分(C)と成分(E)との結合または架橋構造が形成されることによって、ゴム製の第1部材の内部から接着面間に渡る部分における強固な結合が形成される。そのため、ゴム製部材同士の接着の場合には、ゴム製部材同士の接着強度を高めることができる。さらに、ゴム製の第1部材と非ゴム製の第2部材との接着の場合には、非ゴム製の第2部材への接着用組成物の浸透性が低い場合でも、強固な接着性を得ることができる。成分(A)~(D)に加え、成分(E)を含むこのような接着用組成物を、本明細書中、第2接着用組成物と称することがある。一方、成分(A)~(D)を含み、成分(E)を含まない接着用組成物を第1接着用組成物と称することがある。第2接着用組成物では、成分(B)および成分(C)のそれぞれは、成分(E)に可溶であってもよい。第2接着用組成物では、成分(B)および成分(C)は、通常、成分(A)および成分(E)の混合物に溶解した状態である。
【0022】
第1接着用組成物および第2接着用組成物のいずれにおいても、成分(A)に溶解する成分(B)のゴム成分は、通常、重合性官能基(未加硫部分など)を有しており、未加硫ゴムも包含する。重合性官能基(未加硫部分など)を有することで、成分(A)への溶解性が高まることに加えて、成分(A)の第1重合性モノマーと重合反応を行うことができる。よって、より高い接着強度が得られる。成分(B)の重合性官能基が成分(C)のポリマーと反応してしまうと、硬化物中で成分(B)および(C)が分離析出し易くなり、応力を分散する上では不利である。このような観点からは、成分(B)の重合性官能基は、成分(C)の第1反応性官能基とは反応しないことが好ましい。成分(B)の重合性官能基は、成分(A)の重合性モノマーと反応するものを選択すれば、硬化物中に成分(B)を微分散し易いため、剥離を抑制する効果が高まる観点からは有利である。しかし、各成分の種類および量を選択および調節して、各成分の溶解性および分散性を高めた上で、成分(C)の第1反応性官能基の少なくとも一部として、成分(A)または成分(B)の重合性官能基または成分(E)の重合性官能基と反応する基を選択し、接着強度をさらに高めてもよい。
【0023】
本明細書中、成分(B)のゴム成分とは、成分(A)に溶解するようなゴム成分であり、熱硬化性エラストマーに分類される。成分(B)は、成分(C)とは異なる。成分(B)としては、通常、第1反応性官能基を有さないものが用いられる。また、成分(B)は、通常、成分(C)とは反応しない成分である。より具体的に説明すると、成分(D)の存在下で進行する重合反応では、通常、成分(B)は成分(C)とは反応しない。
【0024】
成分(C)のポリマー成分は、第1反応性官能基を有しており、成分(A)に可溶である。成分(C)の第1反応性官能基は、通常、成分(B)が有する重合性官能基よりも極性が高いため、成分(C)の成分(A)への溶解性を高めることができる。また、第1反応性官能基の極性によって、成分(A)と成分(B)とを相溶化させることができる。成分(C)は、通常、成分(A)とは反応しない成分である。一方で、成分(C)の第1反応性官能基と、成分(E)の第2反応性官能基とは反応して、結合または架橋構造を形成可能である。
【0025】
成分(E)の第2重合性モノマーは、通常、第2反応性官能基以外に、重合性官能基を有していてもよい。第2重合性モノマーは、第1重合性モノマーと重合可能であってもよく、成分(B)と重合可能であってもよい。
【0026】
第1接着用組成物は、単独でも、第1部材と第2部材とを接着することができる。第1接着用組成物は、ゴム製の第1部材とゴム製の第2部材との接着に適している。第2接着用組成物は、単独でも、第1部材と第2部材とを接着することができる。第2接着用組成物は、ゴム製の第1部材とゴム製の第2部材との接着に用いてもよい。第2接着用組成物は、特に、高い接着強度が得られ易いため、ゴム製の第1部材と非ゴム製の第2部材との接着に適している。
【0027】
ゴム製の第1部材と非ゴム製の第2部材とを接着する場合には、第1接着用組成物と第2接着用組成物との双方を用いるとさらに高い接着強度を確保することができる。例えば、第1接着用組成物をゴム製の第1部材にプライマーとして用い、第2接着用組成物と併用することで高い接着強度が得られる。しかし、この場合に特に制限されず、ゴム製の第1部材とゴム製の第2部材との接着に、第1接着用組成物と第2接着用組成物の双方を用いてもよい。この場合、第1接着用組成物を第1部材および第2部材の少なくとも一方のプライマーとして用いてもよい。
【0028】
以下に、本発明の接着用組成物、接着用組成物を用いた接合体および接合体の製造方法についてより具体的に説明する。
【0029】
[接着用組成物]
第1接着用組成物および第2接着用組成物において共通する成分についてはまとめて説明する。
【0030】
(A)第1重合性モノマー
成分(A)である第1重合性モノマーは、成分(B)および(C)を溶解する重合性モノマーである。成分(A)~(C)を組み合わせることで、有機溶剤を用いなくても、均一な接着用組成物が得られるとともに、第1部材に対する高い浸透性が得られる。成分(A)は、接着用組成物における主材であってもよい。換言すると、成分(A)は、接着用組成物に含まれる成分のうち、最も比率が多い成分であってもよいが、必ずしもこの場合に限定されない。
【0031】
第1重合性モノマーは、成分(D)の活性化により重合するような重合性官能基を有している。成分(B)および(C)を溶解し、接着用組成物のゴム製の第1部材への高い浸透性を確保する観点から、第1重合性モノマーは、比較的低極性であることが好ましい。同様の観点から、第1重合性モノマーは、重合性官能基を1つ有する単官能性化合物、重合性官能基を2つ有する二官能性化合物などであってもよい。
【0032】
第1重合性モノマーが有する重合性官能基としては、例えば、重合性炭素炭素不飽和結合が挙げられる。第1重合性モノマーは、通常、一種の重合性官能基を有しているが、重合性官能基の種類によっては、二種の重合性官能基を有していてもよい。例えば、第1重合性モノマーは、二種の重合性炭素炭素不飽和結合を有していてもよい。重合性炭素炭素不飽和結合を有する第1重合性モノマーは、好ましくは、重合性炭素炭素不飽和結合を有する基を有している。このような基としては、ビニル基(ビニリデン基も含む)、エチリデン基、ビニレン基、アリル基、ジエニル基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。なお、本明細書中、アクリロイル基およびメタクリロイル基を、まとめて(メタ)アクリロイル基と称することがあり、アクリロイルオキシ基およびメタクリロイルオキシ基を、まとめて(メタ)アクリロイルオキシ基と称することがある。
【0033】
第1重合性モノマーのうち、ビニル基を有するモノマー(ビニル化合物)としては、ヒドロキシ化合物のビニルエーテル、芳香族ビニルモノマー(スチレンなど)、脂環族ビニルモノマー、ビニル基を有する複素環化合物(N-ビニルピロリドンなど)、シアン化ビニル化合物(アクリロニトリル、メタクリロニトリルなど)が例示できる。ジエニル基を有するモノマーとしては、イソプレン、ブタジエンが例示できる。また、第1重合性モノマーには、シクロオレフィン(ジシクロペンタジエン、ノルボルネンなど)も包含される。
【0034】
第1重合性モノマーのうち、(メタ)アクリロイル基を含むモノマーとしては、例えば、ヒドロキシ化合物の(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。なお、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルを合わせて(メタ)アクリル酸エステルまたは(メタ)アクリレートと称する場合がある。
【0035】
ビニルエーテルまたは(メタ)アクリル酸エステルを構成するヒドロキシ化合物としては、脂肪族ヒドロキシ化合物、芳香族ヒドロキシ化合物、脂環族ヒドロキシ化合物、複素環式ヒドロキシ化合物のいずれであってもよい。ヒドロキシ化合物は、一価アルコールおよびポリオールのいずれであってもよい。脂肪族ヒドロキシ化合物は、芳香環、脂肪族環および複素環からなる群より選択される少なくとも1つを有してもよい。脂肪族環は、架橋環であってもよい。なお、第1重合性モノマーにおいて、ヒドロキシ化合物がポリオールの場合、全てのヒドロキシ基がエーテル化またはエステル化されていてもよく、一部のヒドロキシ基がエーテル化またはエステル化されていてもよい。ただし、上述のように、重合性官能基は1つまたは2つであることが好ましい。
【0036】
ヒドロキシ化合物は、脂肪族アルコール、脂環式アルコール、芳香族アルコール(または芳香族ヒドロキシ化合物(フェノール化合物も含む))、複素環式アルコールまたはこれらのアルキレンオキサイド付加物のいずれであってもよい。脂肪族アルコールは、芳香環、脂肪族環または複素環を有してもよい。脂肪族環は、架橋環であってもよい。これらのヒドロキシ化合物において、ヒドロキシ基は、1つまたは2つ以上である。
【0037】
脂肪族アルコールとしては、例えば、アルキルアルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ヘキサノール、ラウリルアルコール、ステアリルアルコールなど)、グリコール(エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオールなど)、ポリアルキレングリコール(ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、テトラメチレングリコールなど)、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、キシリレングリコール、フタル酸とエチレングリコールとのモノエステル、フェノキシエチルアルコール、シクロヘキサンメタノール、シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。脂肪族アルコールとしては、例えば、C1-20脂肪族アルコールが挙げられ、C1-10脂肪族アルコールであってもよく、C1-6脂肪族アルコール(またはC1-4脂肪族アルコール)であってもよい。脂環式アルコールとしては、脂環式C5-20アルコール(脂環式C5-10アルコールなど)などが挙げられる。脂環式アルコールの具体例としては、シクロヘキサノール、メントール、ボルネオール、イソボルネオール、ジシクロペンタニルアルコールが挙げられる。芳香族アルコールとしては、芳香族C6-10アルコールなどが挙げられる。芳香族アルコールの具体例としては、フェノール、ナフトールが挙げられる。
【0038】
複素環式アルコールとしては、例えば、ヘテロ原子を環の構成原子として含む複素環基を有するアルコールなどが挙げられる。複素環を有する脂肪族アルコールとしては、ヘテロ原子を環の構成原子として含む複素環基を有する脂肪族アルコールなどが挙げられる。これらの複素環基としては、例えば、4員~8員の複素環基が挙げられ、5員または6員の複素環基であってもよい。複素環基は、不飽和複素環基であってもよく、飽和複素環基であってもよい。ヘテロ原子としては、例えば、窒素、酸素、および硫黄からなる群より選択される少なくとも1つが挙げられる。複素環基に対応する複素環としては、酸素含有複素環(フラン、テトラヒドロフラン、オキソラン、ジオキソラン、テトラヒドロピラン、ジオキサンなど)、窒素含有複素環(ピロール、イミダゾリン、ピロリジン、イミダゾール、ピペリジン、ピリジンなど)、硫黄含有複素環(チオフェン、テトラヒドロチオフェンなど)、複数種のヘテロ原子を含む複素環(モルホリン、チアジンなど)などが挙げられる。複素環基を有する脂肪族アルコールとしては、複素環基を有するC1-6脂肪族アルコールまたは複素環基を有するC1-4脂肪族アルコールが好ましい。
【0039】
アルキレンオキサイド付加物の1分子中に含まれるオキシアルキレン基の個数は、例えば、1以上4以下であってもよい。オキシアルキレン基としては、例えば、オキシC1-4アルキレン基(オキシメチレン、オキシエチレン、オキシプロピレン、オキシトリメチレン基など)が挙げられる。オキシアルキレン基は、オキシC2-4アルキレン基であってもよく、オキシC2-3アルキレン基であってもよい。
【0040】
接着用組成物は、第1重合性モノマーを一種含んでもよく、二種以上組み合わせて含んでもよい。二種以上の第1重合性モノマーを組合せる場合には、各モノマーの重合性官能基の種類は、成分(B)の重合性官能基の種類などに応じて選択される。
【0041】
ゴム製の第1部材への高い浸透性が得られる観点からは、第1重合性モノマーは、少なくとも非芳香族性の重合性モノマー(例えば、脂肪族アルコールまたは脂環式アルコールの(メタ)アクリル酸エステル)を用いることが好ましい。高い浸透性が得られ易い観点から、第1部材のゴムの化学構造に類似するような構造の第1重合性モノマーを選択してもよい。
【0042】
入手が容易で、高い硬化速度が得られ易い観点からは、成分(A)は、重合性官能基として、少なくとも、(メタ)アクリロイル基を含む基などのラジカル重合性の官能基((メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基)などを有することが好ましい。また、成分(A)は、成分(E)とは異なり、通常、成分(C)の第1反応性官能基と反応する第2反応性官能基を有さない。
【0043】
(B)ゴム成分
成分(B)としてのゴム成分は、成分(A)に溶解するゴム成分が使用される。このようなゴム成分としては、成分(A)と極性が近いゴム成分が利用される。例えば、成分(B)としては、成分(A)と重合可能な重合性官能基を有するゴム成分が好ましい。このようなゴム成分には、未加硫ゴムも包含される。
【0044】
成分(B)は、重合性官能基として、重合性炭素炭素不飽和結合などを含んでもよい。成分(B)の重合性官能基は、成分(A)と重合可能であることが好ましい。
【0045】
成分(B)に含まれる重合性炭素炭素不飽和結合としては、例えば、ビニル基、エチリデン基、シクロオレフィン環、および主鎖中の炭素炭素不飽和結合が挙げられる。主鎖中の炭素炭素不飽和結合としては、例えば、ビニレン基、ジエニレン基、主鎖に組み込まれたシクロオレフィン環などが挙げられる。しかし、成分(B)に含まれる重合性炭素炭素不飽和結合は、これらに限定されず、成分(A)と重合可能であればよい。成分(B)は、これらの炭素炭素不飽和結合を一種含んでもよく、二種以上含んでもよい。
【0046】
成分(B)としては、未加硫の天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリクロロプレンゴム(CR)、ブタジエンゴム(BR)、ニトリルゴム(NBR)、ミラブルウレタンゴム、エピクロルヒドリンゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)などが挙げられる。換言すると、このようなゴム成分で、上記のような重合性官能基を有する成分が成分(B)として用いられる。成分(B)中に含まれる重合性官能基の種類に応じて、成分(A)を選択してもよい。
【0047】
成分(B)は、成分(A)や成分(E)の重合性官能基と反応する重合性官能基は有するが、通常、成分(C)のような第1反応性官能基を有さない。
【0048】
成分(B)は、室温(例えば、20℃以上35℃以下)で液状であってもよく、固形であってもよい。
【0049】
成分(B)の重量平均分子量(Mw)は、例えば、1000以上100万以下である。成分(B)のMwがこのような範囲である場合、成分(A)に溶解し易く、第1部材への高い浸透性が得られ易い。室温で液状の成分(B)のMwは、例えば、1000以上6万以下である。室温で固形の成分(B)のMwは、例えば、1万以上100万以下である。
【0050】
本明細書中、重量平均分子量Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0051】
本明細書中、Mwは、例えば、以下の手順で求められる。
Mwを測定する成分を溶媒に溶解させて測定用試料を調製する。溶媒は、成分の種類に応じて、成分を溶解可能な液状媒体から選択される。測定用試料を用いて下記の条件でGPCを測定し、Mwを求める。
装置:SHODEX社製、SYSTEM-21H
検出器:RI検出器
移動相:テトラヒドロフラン
流量:1mL/分
カラム:SHODEX社製、 KD-806M(×3本)
カラム温度:40℃
基準物質:標準ポリスチレン(標準ポリスチレンのMwは、市販品のうち、測定する成分のMwに近いものが選択される。)
【0052】
接着用組成物において、成分(B)の量は、成分(A)100質量部に対して、例えば、1質量部以上50質量部以下である。成分(B)の量がこのような範囲である場合、成分(A)に成分(B)を溶解させ易いことに加え、成分(B)の第1部材への親和性により、接着面における高い濡れ性および接着用組成物のより高い浸透性が得られ易い。このような効果をより高める観点からは、第1接着用組成物では、成分(B)の量は、成分(A)100質量部に対して、2質量部以上50質量部以下であってもよく、1質量部以上(または2質量部以上)30質量部以下であってもよく、1質量部以上(または2質量部以上)10質量部以下であってもよい。第2接着用組成物では、成分(B)の量は、成分(A)100質量部に対して、3質量部以上(または10質量部以上)50質量部以下であってもよく、3質量部以上(または10質量部以上)30質量部以下であってもよく、3質量部以上(または10質量部以上)20質量部以下であってもよい。このような範囲である場合、成分(A)および成分(E)に対する成分(B)の高い分散性が得られ易いことに加え、成分(B)の第1部材への親和性により、接着面における高い濡れ性および接着用組成物のより高い浸透性が得られ易い。
【0053】
(C)ポリマー成分
成分(C)としては、第1反応性官能基を有するポリマーが挙げられる。ポリマーには、オリゴマー、プレポリマーも包含される。ポリマーにはエラストマーも含まれる。成分(C)は、室温(例えば、20℃以上35℃以下)で液状であってもよく、固体であってもよい。
【0054】
第1反応性官能基としては、例えば、カルボキシ基、酸無水物基(マレイン酸無水物基、イタコン酸無水物基など)、アミノ基、オキサゾリン環、ヒドロキシ基、エポキシ基、オキセタン環、イソシアネート基、塩素原子、酸クロライド基、スルホン酸基、シラノール基、アルコキシシリル基、ビニルシリル基、ヒドロシリル基が挙げられる。成分(C)は、第1反応性官能基を一種有していてもよく、二種以上組み合わせて有していてもよい。中でも、第1反応性官能基は、カルボキシ基、酸無水物基、アミノ基、オキサゾリン環、ヒドロキシ基、エポキシ基、オキセタン環、およびイソシアネート基からなる群より選択される少なくとも1つが好ましい。成分(D)を用いた重合反応系でも反応が進行し易い観点から、カルボキシ基、酸無水物基、およびヒドロキシ基からなる群より選択される少なくとも1つを有する成分(C)が好ましい。
【0055】
成分(C)は、第1反応性官能基の種類によって、第1反応性官能基を、ポリマー鎖の末端に有していてもよく、ポリマーの主鎖中に有していてもよく、側鎖として有していてもよく、これらから選択されるいくつかの組合せであってもよい。
【0056】
成分(C)の重量平均分子量(Mw)は、例えば、1000以上6万以下であり、2000以上4万以下であってもよい。成分(C)のMwがこのような範囲である場合、成分(A)に溶解し易く、第1部材の比較的浸透し易いことに加え、接着により得られる接合体にある程度の応力が加わっても、剥離を抑制する効果が高まる。成分(C)としてこのようなMwを有するポリマーを用いたり、室温で液状のポリマーを用いたりすると、ゴム製の第1部材または第2部材への高い浸透性が得られるため、高い接着性を確保する上でより有利である。
【0057】
ポリマー成分の骨格の種類は特に制限されない。例えば、ビニル系ポリマー(スチレン系ポリマーなどの芳香族ビニル系ポリマー、ハロゲン化ビニル系ポリマー、シアン化ビニル系ポリマー、酢酸ビニル系ポリマーなど)、オレフィン系ポリマー、アクリル系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、ポリアミド系ポリマー、ポリウレタン系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマー、シリコーン系ポリマーが挙げられる。例えば、成分(C)は、ポリマーの変性によって、第1反応性官能基がポリマー成分中に導入された変性ポリマー(例えば、変性エラストマーなど)であってもよい。第1反応性官能基を有する共重合性モノマーを用いて導入された第1反応性官能基を有するポリマーであってもよい。また、シリコーン系ポリマーでは、シランカップリング剤などを用いて第1反応性官能基がポリマーに導入されていてもよい。
【0058】
成分(C)としてエラストマーを用いる場合には、第1部材と第2部材との接合体に、各部材の熱膨張係数の違いにより熱歪みが加わっても、成分(C)による応力緩和効果がより発揮され易くなる。そのため、より高い接着性を確保する上で有利である。
【0059】
エラストマーには、熱硬化性エラストマーおよび熱可塑性エラストマーが包含される。熱硬化性エラストマーは、ゴムと呼ばれる成分であってもよい。エラストマーは、水素添加物であってもよい。
【0060】
成分(C)のうち、エラストマーとしては、例えば、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、シリコーン系エラストマーが挙げられる。熱硬化性エラストマーとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリクロロプレンゴム(CR)、ブタジエンゴム(BR)、ニトリルゴム(NBR)、ミラブルウレタンゴム、エピクロルヒドリンゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)などが挙げられる。成分(C)は、熱硬化性エラストマーであってもよいが、成分(C)は、少なくとも熱可塑性エラストマーを含むことが好ましい。
【0061】
変性エラストマーとしては、例えば、酸変性エラストマー、酸無水物変性エラストマー(スチレン-無水マレイン酸共重合体、オレフィン-無水マレイン酸共重合体、オレフィン-無水イタコン酸共重合体、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性水添スチレン系熱可塑性エラストマー(SEBS)、無水マレイン酸変性ポリブタジエンなど)、アミン変性エラストマー(アミン変性SEBS、アミノエチル化アクリルポリマー、ポリアリルアミン系エラストマーなど)、エポキシ変性エラストマー(エポキシ変性ポリブタジエン、エポキシ変性スチレンブタジエンスチレン共重合体(ESBS)など)、シランカップリング剤で第1反応性官能基が導入されたシリコーン系エラストマーが挙げられる。オキサゾリン環を有するエラストマーとしては、スチレン-ビニルオキサゾリン共重合体などが挙げられる。ヒドロキシ基を有するエラストマーとしては、ポリヒドロキシポリオレフィン系エラストマー、フェノキシ樹脂系エラストマーなどが挙げられる。
【0062】
成分(C)は、第1反応性官能基を有しており、成分(A)や成分(B)について説明したような重合性官能基を有していてもよい。しかし、成分(C)は、重合性官能基を有さないことが好ましい。
【0063】
成分(C)の量は、成分(A)100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上50質量部以下である。成分(C)の量がこのような範囲であることで、より高い接着性が得られ易いことに加えて、成分(B)との相溶状態が得られ易い。より高い効果が得られる観点からは、第1接着用組成物では、成分(C)の量は、成分(A)100質量部に対して、0.5質量部以上(または2質量部以上)50質量部以下であってもよく、0.5質量部以上(または2質量部以上)30質量部以下であってもよく、0.5質量部以上(または2質量部以上)20質量部以下であってもよい。成分(C)の量がこのような範囲である場合、成分(B)との高い相溶性を確保し易く、第1接着用組成物をプライマーとして用いる場合に、プライマーと第2接着用組成物との反応をさらに高める上で有利である。第2接着用組成物では、成分(C)の量は、成分(A)100質量部に対して、3質量部以上(または10質量部以上)30質量部以下であってもよく、3質量部以上(または10質量部以上)20質量部以下であってもよい。成分(C)の量がこのような範囲である場合、成分(B)との高い相溶性を確保し易く、プライマーと第2接着用組成物との反応をさらに高める上で有利である。
【0064】
(D)重合開始剤
重合開始剤は、熱または光の作用により活性化して、少なくとも成分(A)の重合反応を開始させる。第2接着用組成物では、成分(A)および成分(E)の重合性官能基同士の重合反応を開始させる重合開始剤を用いてもよい。重合開始剤は、成分(A)、成分(E)の重合性官能基の種類などに応じて選択される。重合開始剤としては、熱または光の作用により、ラジカル、カチオン、またはアニオンを発生させる成分などが使用される。重合開始剤としては、例えば、ラジカル重合開始剤(アゾ化合物、過酸化物(ベンゾイルパーオキサイド、クミルパーオキサイドなど)、アルキルフェノン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤、分子内水素引き抜き型光重合開始剤、オキシムエステル系光重合開始剤など)、イオン重合開始剤(スルホン酸エステル、スルホニウム塩、ジシアンジアミド、ヨードニウム塩など)などが挙げられる。また、重合開始剤として、メタセシス重合開始剤を用いてもよい。しかし、重合開始剤は、これらに限定されない。接着用組成物は、重合開始剤を一種含んでもよく、二種以上組み合わせて含んでもよい。
【0065】
成分(D)の量は、成分(A)100質量部に対して、0.01質量部以上(または0.05質量部以上)20質量部以下であってもよく、2質量部以上20質量部以下(または10質量部以下)であってもよく、2質量部以上7質量部以下であってもよい。成分(D)の量がこのような範囲である場合、比較的高い貯蔵安定性が確保し易いことに加え、成分(A)が関与する重合反応をスムーズに進行させることができる。
【0066】
(E)第2重合性モノマー
第2接着用組成物に含まれる第2重合性モノマーは、成分(C)の第1反応性官能基と反応して結合または架橋構造を形成可能な第2反応性官能基を有する。第2反応性官能基の種類は、第1反応性官能基に応じて選択される。
【0067】
例えば、第1反応性官能基と第2反応性官能基との組合せとしては、以下の組合せが例示できる。組合せの一方が第1反応性官能基であれば、他方が第2反応性官能基である。組合せのどちらが第1反応官能基であってもよい。
(a1)カルボキシ基または酸無水物基と、(a2)エポキシ基、オキセタン環、アミノ基、オキサゾリン環、イソシアネート基、エステル基との組合せ、
(b1)アミノ基と、(b2)塩素原子、酸クロライド基、エポキシ基、オキセタン環、オキサゾリン環、イソシアネート基、ヒドロキシ基、スルホン酸基、またはエステル基との組合せ、
(c1)オキサゾリン環と、(c2)カルボキシ基、酸無水物基、ヒドロキシ基、エポキシ基、オキセタン環、アミノ基、またはスルフィン酸基との組合せ、
(d1)ヒドロキシ基(フェノール性ヒドロキシ基を含む)と、(d2)カルボキシ基、酸無水物基、エポキシ基、オキセタン環、イソシアネート基、アルデヒド基、またはエステル基との組合せ。
(e1)シラノール基と、(f2)シラノール基との組合せ
(f1)アルコキシシリル基と、(g2)アルコキシシリル基との組合せ
(g1)ビニルシリル基と、(h2)ヒドロシリル基との組合せ
【0068】
成分(E)の第2重合性モノマーは、好ましくは成分(A)の第1重合性モノマーと、重合開始剤(D)の活性化によって重合反応可能である。このような第2重合性モノマーは、第2反応性官能基以外に、重合性官能基を有している。重合性官能基としては、成分(A)について記載した重合性官能基、具体的には、重合性炭素炭素不飽和結合を有する基が挙げられる。中でも、ビニル基、ジエニル基、(メタ)アクリロイルオキシ基が好ましい。第2重合性モノマーは、重合性官能基を1つ有していてもよく、2つ以上有していてもよい。
【0069】
第2重合性モノマーとしては、例えば、第2反応性官能基を有するビニル化合物、第2反応性官能基を有するジエン化合物、第2反応性官能基を有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。第2重合性モノマーの具体例としては、アミノスチレン、1,2-エポキシ-4-ビニルシクロヘキサン、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなど)、テトラメチルピペリジル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、(3-エチルオキセタン-3-イル)メチル(メタ)アクリレート、2-アクリロイルオキシエチルイソシアナート、ヒドロキシジシクロペンタジエン、アリルアルコール、アリルフェノールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0070】
第2重合性モノマーとして、第2反応性官能基を有するアルコキシシラン化合物を用いてもよい。このようなアルコキシシラン化合物としては、ビニルトリエトキシシラン、アミノトリエトキシシラン、グリシジルトリエトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。第2重合性モノマーとして、シランカップリング剤(例えば、ビニル基またはアリル基などの重合性官能基を有するシランカップリング剤)を用いてもよい。
【0071】
第2重合性モノマーのうち、エポキシ基を有するモノマーとしては、エポキシ基を有する化合物(グリシジル基を有する化合物も含む)が挙げられる。エポキシ化合物は、例えば、エポキシシクロヘキサン環または2,3-エポキシプロピロキシ基を含むものであってよい。成分(B)および(C)の高い溶解性が確保し易い観点から、脂肪族エポキシ化合物、脂肪族オキセタン化合物、脂肪族イソシアネート化合物などを用いてもよい。
【0072】
第2接着用組成物は、成分(E)を一種含んでもよく、二種以上組み合わせて含んでもよい。成分(E)を二種以上組み合わせて用いる場合には、第2接着用組成物に含まれる成分の種類と反応性とを考慮して、成分(E)を選択してもよい。
【0073】
第2接着用組成物において、成分(E)の量は、成分(A)100質量部に対して、例えば、3質量部以上(または5質量部以上)300質量部以下であり、15質量部以上(または20質量部以上)300質量部以下であってもよく、3質量部以上(または5質量部以上)150質量部以下であってもよく、15質量部以上(または20質量部以上)150質量部以下であってもよい。成分(E)が成分(A)と重合する場合には、成分(A)の量を成分(E)より多くしてもよい。例えば、上記の成分(E)の量の範囲において、100質量部未満または90質量部以下としてもよく、80質量部以下または60質量部以下としてもよく、50質量部以下としてもよい。中でも、成分(E)の量は、20質量部以上90質量部以下、または20質量部以上80質量部以下が好ましい。成分(E)の量がこのような範囲である場合、第2部材とのより高い接着性を確保し易く、プライマーと組み合わせる場合にはより高い接着強度が得られ易い。また、成分(B)および成分(C)の高い相溶性を確保し易い。
【0074】
(その他)
各接着用組成物は、必要に応じて、成分(A)、(B)、(C)および(E)以外の重合性化合物を含んでもよい。このような重合性化合物としては、重合性オリゴマー、プレポリマー(ただし、第1反応性官能基を有さない)が挙げられる。また、重合性化合物として、一般的な硬化性材料(例えば、エポキシ樹脂など)などを接着用組成物に添加してもよい。接着用組成物の構成成分の高い溶解性、および第1部材への高い浸透性を確保し易い観点からは、接着用組成物に含まれるこのような重合性化合物の量は、少ない方が好ましく、例えば、成分(A)100質量部に対して、10質量部以下であり、5質量部以下または1質量部以下であってもよい。また、接着用組成物が、このような重合性化合物を含まない場合も好ましい。
【0075】
接着用組成物は、必要に応じて、他の添加剤を含んでもよい。例えば、フィラー(シリカ、アルミナ、ゴム粒子など)、接着付与剤、シランカップリング剤、リン酸エステル、ホスホン酸エステル、レベリング剤、粘度調整剤、ゴム添加剤(カーボンブラック、パラフィンオイル、ナフテンオイル、ステアリン酸、酸化亜鉛、有機亜鉛錯体、ジスルフィド化合物、チオール化合物、チウラム化合物、チオウレア化合物、ニトロソ化合物、パラホルムアルデヒドなど)、可塑剤(ワックス)、相溶化剤(ポリブタジエン、カルポキシル基末端ブタジエンニトリルゴムなど)、重合促進剤(カルボン酸化合物、芳香族アミン化合物など)、重合触媒、酸化剤、還元剤(遷移金属錯体、3級アミン化合物など)、酸化防止剤(ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物、リン化合物など)、光安定化剤、顔料、重合禁止剤が挙げられるが、添加剤はこれらに限定されない。例えば、エステル交換反応で成分同士の反応が進行する場合には、酸、塩基、アルコキシチタン、アルコキシスズ等の金属錯体などの触媒を用いてもよい。また、エポキシ基が関与する反応によって成分同士の反応が進行する場合には、例えば、イミダゾール化合物などを触媒として用いてもよい。
【0076】
接着用組成物は、構成成分を混合することによって調製することができる。構成成分を混合する順序は特に制限されない。必要に応じて、加熱下で混合してもよい。
【0077】
本発明の接着用組成物は、特にゴム製の第1部材に対する浸透性が高いため、ゴム製の第1部材と第2部材とを接着するのに適している。接着用組成物をゴム製の第1部材またはゴム製の第2部材に塗布すると、各部材の内部に浸透するため、硬化させたときに高い接着性が得られ易い。ゴム製の第1部材と非ゴム製の第2部材とを接着する場合には、第2部材に接着用組成物を塗布して、第1部材に移行させてもよいが、少なくとも第1接着用組成物は第1部材に塗布した方が効率的である。第1部材と第2部材とを接着面に接着用組成物が介在した状態で重ね合わせて、加熱または光照射を行い、接着用組成物を硬化させることによって、接合体が得られる。
【0078】
ゴム製の第1部材と非ゴム製の第2部材とを接着させる場合には、一般に、高い接着強度が得られにくい。接着面の対向面積が小さい場合には特に高い接着強度が得られにくい。例えば、第1部材および第2部材の少なくとも一方が、接着面と連通する中空部を有する場合には、高い接着強度が得られにくい。しかし、第2接着用組成物を用いると(好ましくは、プライマーとしての第1接着用組成物または第2接着用組成物と、接着剤としての第2接着用組成物とを組み合わせて用いると)、第1部材および第2部材を強固に接着することができる。
【0079】
各接着用組成物の25℃における粘度は、例えば、10mPa・s以上5000mPa・s以下であり、50mPa・s以上3000mPa・s以下であってもよい。有機溶剤を用いなくても、成分(A)を用いることで、このように比較的低粘度の接着用組成物を得ることができる。なお、接着用組成物の粘度は、調製直後の接着用組成物の温度を25℃に調節した状態で測定される。本明細書中、粘度は、E型粘度計(TVE-20H、東機産業(株))を用いて、25℃にて、20rpmの回転速度で測定される。
【0080】
接着用組成物は、第1部材または第2部材に対して、第1部材または第2部材の面積1mm2あたり、乾燥固形分の質量が、例えば、30μg以上700μg以下、好ましくは50μg以上300μg以下となるように付与される。なお、第1部材または第2部材の面積1mm2あたりの乾燥固形分の質量は、接着用組成物の密度と塗布直後の塗膜の厚みから見積もることができる。
【0081】
[接合体]
本発明には、第1部材と第2部材とが接着用組成物を用いて接着された接合体も包含される。このような接合体としては、例えば、ゴム製の第1部材とゴム製の第2部材とが第1接着用組成物または第2接着用組成物の硬化物で接着されている接合体、ゴム製の第1部材と非ゴム製の第2部材とが、第2接着用組成物の硬化物で接着されている接合体も包含される。
【0082】
本発明の接合体には、ゴム製の第1部材とゴム製または非ゴム製の第2部材とが、プライマーとしての第1接着用組成物または第2接着用組成物と、接着剤としての第2接着用組成物とを用いて接着された接合体も包含される。より具体的には、このような接合体は、第1部材および第2部材間を接着する接着用組成物の硬化物を備える。接合体では、第1部材と第2部材とは、少なくとも一部が第1部材に浸透したプライマー層と、プライマー層に一部が浸透するとともに、プライマー層と第2部材との間に配置された接着剤層とを介して接合している。プライマー層は、第1接着用組成物または第2接着用組成物の硬化物を含み、接着剤層は、第2接着用組成物の硬化物を含む。プライマー層の接着剤層が浸透した部分では、成分(C)の第1反応性官能基と、成分(E)の第2反応性官能基とが反応することで、結合または架橋構造が形成される。プライマー層や接着剤層では、成分(A)の重合が進行するとともに、成分(A)と成分(B)との反応も進行する。接着剤層では、さらに成分(A)と成分(E)との重合反応も進行する。これらの反応は、プライマー層の接着剤層が浸透した部分でも起こり、全体として強固な結合が得られる。加えて、プライマー層の接着剤層が浸透した部分で、成分(C)と成分(E)との反応により結合または架橋構造が形成されることで、さらに強固な接合状態が得られる。このように、第1部材の内部から第1部材と第2部材との接着面間において強固な接合状態が得られることで、優れた接着強度を確保することができる。接着用組成物は。ゴム製の第1部材への浸透性が高いため、第1部材として特に未加硫のゴムを用いなくても高い接着強度が得られる。
【0083】
第1部材を構成するゴム材料としては、例えば、天然ゴム、ニトリルゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、アクリルゴム、イソプレンゴム、スチレンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム、エチレン・酢ビゴム、クロロプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、多硫化ゴムなどが挙げられる。しかし、これらに限定されない。接着用組成物が浸透し易い観点からは、天然ゴム、ニトリルゴム、ウレタンゴム、イソプレンゴム、スチレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム、クロロプレンゴム、エピクロルヒドリンゴムなどが挙げられる。
【0084】
第2部材を構成する材料としては特に制限されないが、金属材料、セラミックス材料、樹脂材料、無機材料などが挙げられる。第2部材は、一種の材料を含んでもよく、二種以上の材料を含んでもよい。特に、ゴム製の第1部材と金属製の第2部材との接着において、高い接着強度を確保することは難しいが、本発明の接着用組成物を用いると、第2部材が金属である場合にも高い接着強度を確保することができる。
【0085】
[接合体の製造方法]
接合体は、第1部材および第2部材の少なくとも一方に接着用組成物を付与する工程と、第1部材と第2部材とを重ねて積層物を形成する工程と、接着用組成物を硬化させて接合体を形成する工程とを経ることによって製造できる。
【0086】
接着用組成物は第1部材および第2部材の少なくとも一方に付与される。付与の方法は特に制限されず、各種コーティング方法などで塗布することにより行ってもよく、転写などにより行ってもよい。接着用組成物は、ゴム製の第1部材に付与してもよいが、第2部材の接着面に付与し、第2部材の接着面と第1部材の接着面とを重ねて、第1部材が第2部材に対して鉛直下方に位置するように配置し、第2部材側から第1部材に接着用組成物を移行させてもよい。同様に、第2部材に接着用組成物を付与し、第1部材に接着用組成物を移行させてもよい。また、第1部材の接着面および第2部材の接着面の双方に接着用組成物を付与し、接着面同士を重ね合わせてもよい。いずれの場合にも、第1部材と第2部材とは、双方の部材が接着用組成物と接触するように重ねられる。つまり、第1部材と第2部材とは、接着面同士を重ね合わせた状態で、重ねられる。
【0087】
ゴム製の第1部材とゴム製の第2部材とを用いて接合体を形成する場合、第1部材および第2部材の少なくとも一方に第1接着用組成物または第2接着用組成物が付与される。ゴム製の第1部材と非ゴム製の第2部材とを用いて接合体を形成する場合、例えば、第1部材および第2部材の少なくとも一方に第2接着用組成物が付与される。
【0088】
第2接着用組成物を用いて、第1部材と第2部材とを接着する場合には、第2接着用組成物をプライマーとして用いるとともに、接着剤として用いてもよい。例えば、ゴム製の第1部材に第2接着用組成物を付与し、浸透させて、接着剤層とともにプライマー層を形成し、プライマー層および接着剤層における第2接着用組成物を硬化させて、第1部材と第2部材とが第2接着用組成物の硬化物によって接着された接合体を形成してもよい。この場合、プライマー層の接着剤層が浸透した部分では、成分(C)の第1反応性官能基と成分(E)の第2反応性官能基とが反応して、結合または架橋構造が形成されている。また、上述したように、第2接着用組成物に含まれる成分(A)や(E)の重合、成分(A)と成分(C)との反応も進行して、強固な接合状態が得られる。
【0089】
接着用組成物をプライマーおよび接着剤の双方として用いてゴム製の第1部材と非ゴム製の第2部材との接合体を形成する場合、接合体は、
第1部材に第1接着用組成物または第2接着用組成物を浸透させてプライマー層を形成する工程と、
第2接着用組成物をプライマー層および第2部材の少なくとも一方の表面に付与して接着剤層を形成する工程と、
第1部材と第2部材とを重ねるとともに第2接着用組成物をプライマー層に浸透させて積層物を形成する工程と、
プライマー層および接着剤層における接着用組成物(第1接着用組成物および第2接着用組成物、もしくは第2接着用組成物)を硬化させて、第1部材と第2部材とが接着用組成物の硬化物によって接着された接合体を形成する工程と、を経ることによって得ることができる。接合体を形成する工程では、プライマー層の接着剤層が浸透した部分において、第1反応性官能基と、第2反応性官能基とが反応して、結合または架橋構造が形成される。また、上述したように、各接着用組成物に含まれる成分の重合や反応も進行して、強固な接合状態が得られる。
【0090】
プライマー層を形成する場合、プライマー層を形成する工程の後、接着剤層を形成する工程において、第2接着用組成物をプライマー層および第2部材の少なくとも一方の表面に付与する前に、成分(A)の少なくとも一部を重合させてもよい。第1接着用組成物および第2接着用組成物はゴム製の第1部材への浸透性が高いため、第1部材の深部まで過度に浸透してしまう場合がある。第2部材との高い接着強度を確保する上では、第1接着用組成物または第2接着用組成物(つまり、プライマー層)をある程度上部にとどめておいた方が有利である。そのため、プライマー層を形成した後に成分(A)の少なくとも一部を重合させて、プライマー層の位置を固定しておくことが好ましい。成分(A)の重合は、例えば、加熱または光照射により行ってもよい。この段階では、成分(A)を全て重合させる必要はなく、接着剤層としての第2接着用組成物を浸透させた後、プライマー層の接着剤層が浸透した部分で残存する反応成分を重合または反応させる方が、より強固に接合させることができる。よって、上記の段階では、成分(A)の一部を重合させることが好ましい。プライマー層の組成にもよるが、例えば、100℃以上150℃以下の温度で、1分以上30分以下(または15分以下)の加熱を行うことで、プライマー層を固定させてもよい。このような加熱は、プライマー層を構成する接着用組成物の塗布から、例えば、1分以上10分以下経過した時点で行ってもよい。
【0091】
図1は、本発明の接合体の一実施形態を説明するための概略断面図である。なお、
図1では、接着用組成物の浸透状態を説明するために断面のハッチングを省略している。
接合体10は、ゴム製の第1部材1と非ゴム製(金属製など)の第2部材2とを備えている。第1部材1と第2部材2とは、プライマーとしての第1接着用組成物と、第2接着用組成物とを用いて接着されている。第2部材2は、それぞれ、接着面2aに通じる中空部c2を有している。第1部材1には、第1接着用組成物が第1部材1に浸透することでプライマー層Pが形成されており、さらに第2接着用組成物が第1部材1に浸透することで接着剤層Aが形成されている。第1部材1の接着面1aと第2部材2の接着面2aとの間には第2接着用組成物が介在しており、この部分も接着剤層Aの一部を構成する。プライマー層Pの接着剤層Aが浸透した部分3では、第1接着用組成物および第2接着用組成物が共存した状態である。この状態で接着用組成物を硬化させると、プライマー層Pの接着剤層Aが浸透した部分3では、第1接着用組成物の成分(C)の第1反応性官能基と第2接着用組成物の成分(E)の第2反応性官能基とが反応して、結合または架橋構造が形成される。また、第1接着用組成物や第2接着用組成物が存在する部分では、各接着用組成物の構成成分の重合や反応が進行するため、第1部材1の内部から接着面1aおよび2aの間まで硬化物が存在し、高い接着強度を確保することができる。第2部材2が接着面に中空部c2を有するような場合であっても、第1部材と強固に接着することができる。
【0092】
図2は、本発明の接合体の製造方法の一実施形態を説明するためのフロー図である。
図2の例では、第1接着用組成物をプライマーとして用いるとともに、第2接着用組成物を用いて、ゴム製の第1部材と非ゴム製の第2部材とを接合する。プライマーとして第1接着用組成物に代えて、第2接着用組成物を用いても同様に接合物を得ることができる。
【0093】
図2の例では、まず、ゴム製の第1部材に第1接着用組成物を浸透させてプライマー層を形成する(ステップS1)。次いで、第2接着用組成物を付与する前に、プライマー層に含まれる第1接着用組成物の成分(A)の少なくとも一部を重合させる(ステップS2)。ステップS2の後、第2接着用組成物を、プライマー層および第2部材の少なくとも一方の表面に付与して、接着剤層を形成する(ステップS3)。第1部材と非ゴム製の第2部材とを重ね、第2接着用組成物をプライマー層に浸透させて、積層物を形成する(ステップS4)。プライマー層および接着剤層における接着用組成物(第1接着用組成物および第2接着用組成物)を硬化させて、第1部材と第2部材とが接着用組成物(第1接着用組成物および第2接着用組成物)の硬化物によって接着された接合体を形成する(ステップS5)。
【0094】
[実施例]
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0095】
《実施例1および比較例1~3》
表に示す材料を表に示す割合(質量部)で混合することによって、第1接着用組成物(プライマー)と、第2接着用組成物とをそれぞれ調製した。
図2に示すような手順で、加硫済みのエチレン・プロピレン・ジエンゴム製の第1部材(縦125mm×横25.0mm×厚さ6.0mm)の1つの表面(接着面)にプライマーを0.2 mg/mm
2の塗布量で塗布し、塗布から5分後に、120℃で10分間加熱した。次いで第2接着用組成物を第1部材の接着面に200μg/mm
2の塗布量で塗布し、冷間圧延鋼板(SPCC、縦60mm×横25mm×厚さ2.0mm)を重ね合わせて積層物を作製した。積層物をクランプで挟んだ状態で、120℃で10分加熱することによって、接着用組成物を硬化させた。このようにして第1部材と第2部材とが接合された接合体を得た。
【0096】
なお、実施例1で調製した第1接着用組成物および第2接着用組成物について、既述の手順で測定した25℃の粘度は、それぞれ、2500mPa・sおよび2800mPa・sであった。
【0097】
得られた接合体を用いて、下記の評価を行った。
(1)剥離試験(手動剥離試験)
接合体を構成する一方の部材をクランプで固定して、他方の部材を、一方の部材から離れる方向に手で力を加えることによって、手動剥離試験を行った。このときの接合体の状態または剥離の状態を下記の基準で評価した。
5:力を入れても剥離不可。
4:力を入れると剥離でき、ゴム製の第1部材内が破壊される。
3:力を入れると剥離でき、第1部材と第2部材との接着面で剥離(界面剥離または接着用組成物の凝集破壊)。
2:力を入れることなく第1部材と第2部材とを剥離できる。
1:第1部材および第2部材が全く接着していない。クランプによる固定を解いて、一方の部材を持ち上げると他方の部材の自重で第1部材と第2部材との間が離れる。
【0098】
(2)90度剥離試験
JISK6256-2:2013に準拠して、90度剥離試験を行い、剥離が起こるときの引張強度(N/mm)を求めるとともに、接合体のどの部分が破壊されていたのか(剥離の状態)を目視で確認した。
評価結果を表1に示す。
【0099】
【0100】
表1に示されるように、比較例では、手動剥離試験でもほとんど接着しておらず、90度剥離試験では第1部材と接着剤との界面が破壊されており、剥離強度も測定できなかった。それに対して、実施例では、90度剥離試験では6.3N/mmの高い剥離強度が得られ、第1部材の内部が破壊されていた。なお、比較例3では、成分(C)に代えて第1反応性官能基を有さないポリマー成分である水添スチレン系熱可塑性エラストマー(SEBS)を用いた。
【0101】
《実施例2および3》
表に示す材料を表に示す割合(質量%)で混合することによって、第1接着用組成物および第2接着用組成物をそれぞれ調製した。加硫済みのエチレン・プロピレン・ジエンゴム製の第1部材(縦125mm×横25.0mm×厚さ6.0mm)の1つの表面(接着面)の25.0mm×10.0mmの面積の領域に、第1接着用組成物または第2接着用組成物を、0.2 mg/mm2の塗布量で塗布した。第1部材と同じ材質およびサイズの第2部材を、第1部材の第1または第2接着用組成物を塗布した面に重ね合わせて積層物を作製した。積層物をクランプで挟んだ状態で、120℃で10分加熱することによって、接着用組成物を硬化させた。このようにしていずれもゴム製の第1部材と第2部材とが接合された接合体を得た。
【0102】
得られた接合体を用いて、上記(2)と同様に90度剥離試験を行い、そのときの破壊の状態を目視で確認した。また、接合体を用いて下記の評価を行った。
【0103】
(3)せん断接着試験
接合体を用いて、JIS K 6850:1999に準拠して、引張速度:5.0mm/minの条件でせん断接着試験を行い、せん断接着強度(MPa)を求めた。
結果を表2に示す。
【0104】
【0105】
表2に示されるように、第1接着用組成物または第2接着用組成物の一方を用いる場合でも、ゴム製の部材同士を高い接着強度で接着することができた(実施例2,3)。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明の接着用組成物は、ゴム製の第1部材と第2部材とを強固に接合することができる。よって、ゴム製部材の接着が関係する様々な用途に利用することができる。
【符号の説明】
【0107】
1:ゴム製の第1部材
2:第2部材
3:プライマー層の接着剤層が浸透した部分
P:プライマー層
A:接着剤層
1a、2a:接着面
c2:中空部