IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 千葉 植の特許一覧

<>
  • 特開-安全なNAS電池 図1
  • 特開-安全なNAS電池 図2
  • 特開-安全なNAS電池 図3
  • 特開-安全なNAS電池 図4
  • 特開-安全なNAS電池 図5
  • 特開-安全なNAS電池 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123305
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】安全なNAS電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/39 20060101AFI20240905BHJP
【FI】
H01M10/39 Z
H01M10/39 A
H01M10/39 B
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030588
(22)【出願日】2023-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】391049781
【氏名又は名称】千葉 植
(72)【発明者】
【氏名】千葉 植
【テーマコード(参考)】
5H029
【Fターム(参考)】
5H029AJ12
5H029AK05
5H029AL13
5H029AM12
5H029BJ22
5H029BJ27
5H029DJ02
5H029DJ08
(57)【要約】
【課題】安全性の高いNAS電池とする。
【解決手段】NAS電池の缶をより強固に接合して、事故時に缶が開放しにくい構造とする。NAS電池を伸縮可能な構造とする。
NAS電池に、強靭な繊維の網で補強して、厚さを薄くした電解質を採用する。陽極内に導電性と絶縁性の繊維を立体編みし、従来より空疎で抵抗値の低い充填材を使用する。
断熱容器と圧力容器の、二重密閉容器にNAS電池を収容する。圧力容器に、適切な蒸気圧の加圧液を封入する。
断熱容器の周囲に水を保持る。
NAS電池の内部抵抗を測定し、抵抗増大で充放電を停止させる。

【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
NAS電池の陰極缶を陽極缶の上に配置し、陰極板と電解質を重ねて陽極缶に蓋をし、陰極板で陰極缶に蓋をし、陽極缶と陰極缶の連結部で、陰極板と電解質と陽極缶と陰極缶をリベット等で締結する。
【請求項2】
NAS電池の陽極缶と陰極缶を向い合わせて配置し、陽極缶と陰極缶の間を電解質で仕切り、陽極缶と陰極缶と電解質もしくは電解質を支える陰極板の、三者の内の二者に、伸縮自在な構造を持たせ、電池を伸縮可能とする。
【請求項3】
NAS電池の電解質を、強度の高い網に電解質粒子を焼結して作成する。
【請求項4】
NAS電池の陽極の充填材に、導電性と絶縁性の繊維を使用し、立体編みして充填材を作成する。
【請求項5】
NAS電池を収容する容器に、断熱容器と圧力容器の二重密封容器を採用し、断熱容器に断熱材と圧力容器を収容し、圧力容器に電池と適切な蒸気圧の加圧液を収容する。
【請求項6】
NAS電池を収容した圧力容器に、圧力容器に収容した加圧液の蒸気圧で伸縮する放熱器を装備する。
【請求項7】
NAS電池を収容した断熱容器に、水等を収容した水容器を装着し、沸騰した際の蒸気で警笛を鳴らす。
【請求項8】
NAS電池の内部抵抗を測定し、内部抵抗の増大で充電放電を停止させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
当発明は、活物質を高温で熔解させて運用し、充電可能なナトリウム硫黄電池(NAS電池と略す)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電力備蓄用に、NAS電池が既に実用化されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001ー243977号公報
【特許文献2】特開2002-298908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
NAS電池は高性能であるが、電気自動車には、安全性に不安があるとして採用されていない。携帯機器には、搭載方向に制約があり採用されていない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
NAS電池の陰極缶を陽極缶の上に配置し、陰極板と電解質を重ねて陽極缶に蓋をし、陰極板で陰極缶に蓋をし、陽極缶と陰極缶の連結部で、陰極板と電解質と陽極缶と陰極缶をリベット等で締結する。
【0006】
NAS電池の陽極缶と陰極缶を向い合わせて配置し、陽極缶と陰極缶の間を電解質で仕切り、陽極缶と陰極缶と電解質もしくは電解質を支える陰極板の、三者の内の二者に、伸縮自在な構造を持たせ、電池を伸縮可能とする。
【0007】
NAS電池の電解質を、強度の高い網に電解質粒子を焼結して作成する。
【0008】
NAS電池の陽極の充填材に、導電性と絶縁性の繊維を使用し、立体編みして充填材を作成する。
【0009】
NAS電池を収容する容器に、断熱容器と圧力容器の二重密封容器を採用し、断熱容器に断熱材と圧力容器を収容し、圧力容器に電池と適切な蒸気圧の加圧液を収容する。
【0010】
NAS電池を収容した圧力容器に、圧力容器に収容した加圧液の蒸気圧で伸縮する放熱器を装備する。
【0011】
NAS電池を収容した断熱容器に、水等を収容した水容器を装着し、沸騰した際の蒸気で警笛を鳴らす。
【0012】
NAS電池の内部抵抗を測定し、内部抵抗の増大で充電放電を停止させる。
【発明の効果】
【0013】
従来のNAS電池は、構造を強固にして、衝撃に耐える様にしている。当発明では、寧ろ柔軟性を優先して耐衝撃性を高め、電池が潰れるよな事故でも、缶が破裂せず、活物質が混合したり漏れたりしないように、安全性を優先した構造としている。又、電池の内部抵抗と熱抵抗を削減して、高い電流容量と安全性を実現している。
【0014】
当発明のNAS電池では、陰極缶を陽極缶の上に配置し、二つの缶の連結部を、リベット等で締結し、電池の周囲を二重巻締して、電池を組み立てると。陰極缶が上にあり、陰極のナトリウムが、重力で陰極缶の下に溜まり、自然に電解質に導かれ、陽極缶との間で移動できる。缶の深さを浅くして、より扁平な構造とし、電流容量を任意に増やせる構造をしている。
【0015】
陽極缶と陰極缶の周囲には、事前に絶縁性の封止材を塗っておき、密封と絶縁を維持させ、陰極板と電解質の間には封止材を塗らずに置くと、ナトリウムは陰極板と電解質との隙間を通って流れる事ができる。
【0016】
この構造のNAS電池は、事故等で電池が大きく変形した場合でも、強固に締結され、缶の接合部が容易には分離せず、缶の気密が維持される。電池が潰されても、電池の活物質が内部で急速に混合したり外部に漏洩せず、安全性の高いNAS電池が得られる。
【0017】
前記の電池を含め、従来のNAS電池は、中に空洞があり、空洞が移動して電解質と活物質が接触しない状態では、動作が不安定に成る。その為に、方向が任意で、空洞が移動してしまう、携帯機器等には使用できなかった。
【0018】
当発明の別の構造のNAS電池は、電池を伸縮可能とし、電池を収容した圧力容器に、電池活物質より蒸気圧の高い液体を封入し、加圧液の蒸気圧で電池内の空洞を無くして稼働させる。
【0019】
伸縮可能としたNAS電池は、内部に空洞が無く、設置方向の制約がなくなり、飛行機や衛星や携帯用機器等に使用できる電池となる。NAS電池の、活物質の蒸気圧は大気圧より低く、圧力容器を省略して大気圧で押す構造も採用できる。
【0020】
伸縮可能にしたNAS電池は、陽極缶と陰極缶を向い合せに配置し、中央を電解質で区切った構造にすると、充放電時に両缶の伸びる方向が相反していて、電池全体の寸法変化がより少ない、伸縮するNAS電池になる。
【0021】
伸縮可能にしたNAS電池は、電解質を陰極板で裏打ちすることで、事故時に電解質が大きく破損しても、陰極板は維持される可能性が高い。陰極板は、微小な穴を開けてナトリウムの流路とすると、電池内の圧力は均衡していて、電池活物質が急速に大規模に混合し電池が高温になることを防げる。
【0022】
伸縮可能にしたNAS電池は、電池の缶の周囲を二重巻締し、密封性を維持させると、電池が変形しても缶が破裂せず、電池活物質の流失や混合が避けられる可能性が高く、安全性の高いNAS電池が得られる。
【0023】
網で補強した電解質は、振動や衝撃の激しい環境でも破損しにくく、従来より電解質を薄くできる。
【0024】
網で補強した電解質は、破損した部分が網で繋がって脱落せず、亀裂も網の繊維で止まる可能性が高く、電解質に大きな欠落部が生じ難くくなる。その結果、電解質が大規模に破損し、活物質が急速に混合して、高温になって電池が破損する事故が防げ、安全性の高い電池が得られる。
【0025】
電解質の破損個所では、漏れた硫黄とナトリウムの反応が進んでNa2Sになり、Na2Sは熔解温度が高く固体になる。破損個所が網で微細に止まる事と相まって、破損個所が自然に塞がる可能性が高く、電解質の寿命や信頼性が向上する。
【0026】
当発明のNAS電池は、網で電解質を補強し、電池の構造は陰極板が担い、電解質を可能な限り薄くできる。Βアルミナより導電率の高い、硫黄や燐系の電解質の採用も可能であり、電解質の電気抵抗を削減し発熱を減少させ、電池の熱的安定性が改善できる。
【0027】
充放電に伴い、電解質は電池活物質に浸食されて薄くなり、浸食速度は陽極側と陰極側で異なる。浸食速度に比例して、網からの電解質の厚さを増やし、電解質内の網の位置を最適に設定でき、電解質の寿命を最長にできる。
【0028】
陽極の充填材に、従来の炭素繊維の代わりに、導電繊維と絶縁繊維を混ぜて使用する。立体編みして伸縮性の充填材を作成すると、繊維は、電解質から陽極缶に向かって均一に伸び、電流と熱の流れに沿っていて、効率的に熱と電子を運べ、充填材の量を減らせる。
【0029】
立体編みした充填材は伸縮性に富み、電池を伸縮可能とした際に、陽極缶の伸縮に対して、充填材も伸縮して対応できる。
【0030】
導電繊維は硫黄と親和性が高く、硫黄の流路になる。電解質と絶縁繊維は、硫化ナトリウムとの親和性が高く、硫化ナトリウムの流路になる。立体編みした絶縁繊維は、陽極缶内に硫化ナトリウムを行き渡らせ、導電繊維の1割以下の容積で十分機能する。硫黄は導電繊維に沿って流れ、層分離した硫黄と硫化ナトリウムが、常に電解質近辺に混在し、電池の内部抵抗の削減に寄与する。
【0031】
充填材の導電繊維に、ニクロムやステンレス等の耐蝕性の高い金属線が採用できる。電気伝導率の低いニクロム線を採用した場合でも、炭素繊維よりも電気伝導率が高く、陽極容積の1%の充填材で、陽極の電気抵抗を十分に下げられる。導電繊維に鉄やアルミニウムや銅を採用し、表面にクロムや炭素メッキ等を施して、耐蝕性を持たせて使用することも可能である。
【0032】
充填材の絶縁繊維に、耐熱性と絶縁性のガラスやセラミック繊維が採用できる。絶縁繊維で、導電繊維と電解質間の絶縁を維持させる事ができる。電解質に接触している絶縁繊維が、電解質表面の硫化ナトリウムを吸引し、反動で導電繊維を伝って硫黄を電解質近辺に引き寄せて、ナトリウムの拡散を容易にし、陽極の内部抵抗を減らせる。
【0033】
電解質近辺の、充填材の絶縁繊維と導電繊維が交差した箇所で、硫化ナトリウムが導電繊維に接触して電流が流れる。交差箇所の密度を増やすと、硫化ナトリウム内の電流流路が短縮され、陽極の内部抵抗を削減できる。電流は、電解質,硫化ナトリウム、導電繊維、陽極缶の経路で流れる。編み方や密度や繊維の太さや構成や比率を調整して、各種要請に応じた多様な充填材とする事ができる。
【0034】
充填材が、従来よりも削減され、空疎になり整列していて、流動抵抗が削減されて陽極活物質が流動し易くなる。電解質と充填材の改良で、電池の内部抵抗が減少して電力損失が減少し、電流容量と熱安定性が改善され、信頼性の高い電池が得られる。
【0035】
断熱容器と圧力容器の、二重密封容器に収容したNAS電池は、断熱容器に収容した高性能な断熱材により、電池の温度を長時間維持できる。電池を利用している期間には、充放電の熱損失で電池が温められ、電池の温度を維持できる可能性が高い。規定温度より温度が低下した際には、電池や外部の電力で電池を温め、僅かな電力で電池の温度を維持できる。
【0036】
電池を収容する圧力容器に、活物質と蒸気圧が近い液体を、加圧液として封入する事で、陽極缶と圧力容器の圧力を、ほぼ均衡させられる。その結果、陽極缶に掛かる圧力差を低減でき、可能な範囲内で厚さの薄い素材を採用できる。伸縮可能とした電池では、活物質より蒸気圧の高い加圧液を選び、電池内外の圧力は常に均衡し、より薄い板材を採用できる。
【0037】
電池の放電が進んで硫黄が消失すると、残った硫化ナトリウムの沸点温度は高く、蒸気圧は急減して圧力差が広がる。陽極缶に窒素ガス等を充填し、圧力の低下を防ぐことができる。伸縮可能とした電池では、電池内に空洞はなく、圧力は外部と常に均衡していて、加圧ガスも不要にできる。
【0038】
圧力容器に封入した加圧液は、電池や圧力容器や塗装や絶縁体の表面に、溝や粒子や網を付ける等の毛細管現象の起きる毛細管構造にすると、表面を伝って加圧液が流動し易くなる。電池の缶に突起や溝を多数設け、電池の電極面の隙間を毛細管構造にすると、電解質近くを加圧液が循環しやすくなり、電池周辺の熱伝導を高めるのに効果的である。
【0039】
圧力容器に封入した加圧液が、温度差で圧力容器内を、蒸気や液体として移動循環し、極めて低い熱抵抗の熱媒体として機能し、電池や圧力容器の温度を均一に保つのに役立ち、電池の熱安定性が高くなり、電池の信頼性も向上する。
【0040】
圧力容器に装備した伸縮する放熱器は、圧力容器の温度が上昇して加圧液の蒸気圧が高まると、放熱器が伸びて断熱容器に接触し、圧力容器から断熱容器に、放熱器を経由して熱が伝わる。加圧液の圧力は温度で累乗的に変化し、比較的精度の低い放熱器でも機能する。放熱器は、蛇腹構造等の簡便な構造にして、板等を曲げて容易に作成できる。放熱器が、圧力容器の温度上昇を抑え、電池の安定動作に寄与する。
【0041】
伸縮する放熱器の動作を確実にするために、断熱容器内は真空に排気して、断熱容器の温度変動の影響を無くす事ができる。断熱容器内を真空にした場合、断熱材を省略できる場合もある。断熱容器の断熱材を省略した場合には、支柱等で圧力容器を支える必要がある。
【0042】
圧力容器に、不活性な加圧液を封入すると、電池からの一方だけの活物質の流出であれば、火災になる可能性を排除でき、安全性が高まる。加圧液に硫黄との蒸気圧の近い、各種のシリコンオイル等が利用でき、適切な蒸気圧を選択できる。
【0043】
電池の缶が破れて、活物質の流出量が多い場合には、電池は即利用できなくなる。活物質の流出量が少ない場合、電池は動くが、何れにせよ危険で利用は勧められない。
【0044】
電池の缶の破損事故では、圧力容器内に、破損した電池から流出した活物質が、加圧液の蒸気に混ざって漂う。活物質の蒸気を検出して、電池の異常を知り、迅速な対応が可能になる。活物質の極微量な蒸気を検出できると、電池の故障の前兆を検出でき、事故に発展する前に、修理補修が可能になり、信頼性と利便性が高まる。
【0045】
電池の陽極缶と陰極缶が同時に破れると、火災に発展する危険性が高い。この種の事故は、発生頻度が大幅に下がるが、完全に根絶することは難しい。内部要因でこの種の事故が極力起きないように、耐振動性や衝撃性を考慮して、缶や板や電解質の厚さや材質や構造を選ぶことになる。電池の各部の表面処理の良しあしも重要な要素であり、安定した製造と確実な不良品の排除が求められる。
【0046】
二重密封容器により、例え電池が大規模に破損し高温になっても、活物質は圧力容器内に留まる。放熱器が熱を外部に伝えるが、断熱容器の断熱は保たれ、外部に高温が直ちに広がる事が遮られ、避難や消火等の時間的余裕が生まれる。
【0047】
二重密封容器では、断熱容器が破れても、圧力容器には直に影響せず、短時間は電池の温度を維持でき、電池は正常に作動する。電気自動車等では走行時の急な停車は避けられ、安全に停車する等の時間的余裕が生まれる。断熱容器を真空に排気した場合には、真空度を監視すると、適切な対応が可能になり、安全性が高まる。
【0048】
二重密封容器では、圧力容器が破れた場合、断熱容器の破れよりも早く温度が下がる。短時間であれば電池は正常に機能し、その間に退避する等の時間的余裕が存在する。
【0049】
その他の、各種の破損パターンが考えられるが、二重密封容器で、外部への活物質の流失が抑えられ、事故の拡大を防げる可能性が高い。
【0050】
自動車等の、利用時の事故が避けられない用途では、事故に伴って電池が破裂すると、事故が一層拡大してしまう。事故時に極力電池が破裂しない事が要請され、前記の破裂しにくい電池の缶の構造が、その要請に沿っている。
【0051】
電気自動車用の単電池の重量は、1kg前後であり、軽い分耐衝撃性も向上する。また、電池の缶はアルミニウム等で作成し、強度が高く破損しにくい。電池が破裂しない事が要請されるが、経済性を勘案して、電池自体は、破損しない範囲内でより軽量に柔軟に作り、信頼性を維持しつつ、可能な限り重量を削減することになる。
【0052】
電気自動車等に利用する組電池は、単電池を数百個使用して重量も重く、電池を収容した外部容器には、衝突の衝撃に耐えられる高い強度が要請される。当発明の電池は、断熱容器の強度を上げることで対応可能である。
【0053】
断熱容器の剛性を高めてあれば、電気自動車の前後が潰れるような事故でも、床下に搭載した電池は多くの場合に変形を免れ、電池の安全性が確保される可能性が高い。更に、電池の圧力容器も潰れ、電池が変形した場合ても、当発明の電池は、電池の缶の密封が維持されて火災等に発展せず、安全性が確保される可能性が高い。
【0054】
更に、電池が破裂するような事故も起きえる。組電池は、多数の電池を使用し、多くの缶に活物質が小分けされていて、それらが一斉に混合し、高温になって一挙に爆発する事態は起きにくい。硫黄は沸点近くで使用していて、事故で温度が上がり硫黄の圧力が高まり、まだ破裂していない電池の缶が、次々と破裂する事故が起きると考えられ、圧力が高くなる前に硫黄を逃がす、防爆弁が有効になる。
【0055】
自動車では、フレーム材で自動車の剛性を担保している例が多く、電池の断熱容器を、強靭化してフレーム材や外板と共用にする事で、自動車の構造材を節約し、自動車の重量を軽減する事が可能である。
【0056】
その場合、電池は断熱容器の蓋と圧力容器までの構成となり、電池の収容空間を規格化して、異なる電気容量でサイズや種類が異なる電池を、同一に取り扱うようにできる。もしくは、小容量の電池を任意数接続して収容可能とし、容量を可変とすることも可能になる。
【0057】
断熱容器に水容器を装着し、水容器に水を収容しておくと、電池が大規模に破損して高温に成っても、断熱容器の温度を水の沸騰で抑える事ができ、直ちに外部に延焼する等の事故が防げる。また、高温に成った水の蒸気で警笛を鳴らすと、警笛の音が事故の発生を知らせ、消火や避難等の行動の切っ掛けになる。
【0058】
NAS電池は、過充電や過放電に陥ると、急激に内部抵抗が増大する。電池の内部抵抗を測定し、内部抵抗が規定値を超えたら充電放電を打ち切ることで、過放電過充電を避けられる。
【0059】
当NAS電池は、高温で危険な硫黄とナトリウムを大量に搭載しているが、水容器を含めた3重の容器と、変形に強い電池の缶の採用により、安全性は格段に強化されている。当発明の電池は、事故時に火災等に発展する可能性が少なく、例え内部が火災に発展しても、外部への延焼の危険性が抑えられる。
【0060】
既存のNAS電池は、10年以上の寿命があり、当電池でも同様な寿命が得られる。逆に、寿命を短く設定して、より高性能を狙うという選択肢もあり得る。
【0061】
当NAS電池は、薄い電解質と高い導電率の充填材で内部抵抗を削減し、収容容器に封入した加圧液で低い熱抵抗を実現し、熱的な安定性を確保してあり、電流容量が増大して短時間で充電でき、電気自動車等に採用可能な電池が得られる。
【0062】
伸縮可能にしたNAS電池は、安全性を確保して、携帯機器に利用でき、寿命も長くなり、短時間で充電でき、従来より利便性の高い電池が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
図1】NAS電池の断面図。 (実施例1)
図2】NAS電池の部分断面図。 (実施例2)
図3】組電池の断面図。 (実施例3)
図4】電動自動車の部分断面図。 (実施例4)
図5】携帯機器向けNAS電池の断面図。 (実施例5)
図6】NAS電池の充放電特性図。 (実施例6)
【発明を実施するための形態】
【0064】
当発明のNAS電池の構造や構成や有効性を実施例とともに説明する。
【実施例0065】
図1は、平板な形状のNAS電池の断面図である。
【0066】
図1の電池1は、陽極缶2の上に陰極缶6があり、缶底を左に向けて並置し、電池1の容器としている。陽極缶2の開口部を電解質9と陰極板10で塞ぎ、陰極缶6の開口部を陰極板10で塞いだ構造をしている。
【0067】
図1の電池1は、陽極缶2と陰極缶6と陰極板10の周囲を二重巻締して組立てている。陰極缶6と陽極缶2と電解質9と陰極板10が重なる缶の連結部は、補強材19を左右に重ね、リベット13を通して締結している。リベット13は、漏洩が無く、陽極缶2と絶縁されている必要がある。
【0068】
図1の電池1の封止材12で、陽極缶2と陰極缶6の密封を維持し、陽極缶2を周囲から絶縁する。高温に耐え且つ絶縁性が要求され、封止材12に低融点のガラスや耐熱性のフッ素樹脂等が利用できる。封止材12を、陽極缶2と陰極缶6の周囲に塗って置き、電池1を組立後に加熱し、密封を確実にする。
【0069】
図1の電池1は、陽極缶2の中に、活物質の硫黄4と硫化ナトリウム16と充填材5と加圧ガス14を収容している。陰極缶6の中に、活物質のナトリウム8と加圧ガス14を収容している。
【0070】
図1の陽極缶2の加圧ガス14として、窒素ガスが利用できる。加圧ガス14で陽極圧力の下限を規定する。陰極缶6の加圧ガス14には、アルゴンガスが利用できる。当電池は、加圧しなくても電解質9にナトリウム8が届き、陰極缶6の加圧ガス14を省略することが可能である。
【0071】
図1の陽極缶2と陰極缶6と陰極板10は、金属の薄板が使用可能である。アルミニウム材が,缶や板の要求を満たし、軽量でもあり多く採用される。図1とは異なるが、陽極缶2と陰極缶6を一体で作成し、陰極缶6の内面に絶縁塗装を施してナトリウム8と絶縁すると、同様な機能外観の電池1とすることができる。
【0072】
図1の電池1の、陽極缶2の内面は、腐食性の硫黄4や硫化ナトリウム16に耐えるために、寿命を勘案して厚めのクロム又は炭素メッキを表面に施す。陽極缶2の外面と陰極板10には、電極となり導電性が必要であり、酸化しないように、薄めのクロム又は炭素のメッキを表面に施す。メッキ以外に、蒸着やスパッタリングでもクロムや炭素の層を表面に付けられる。
【0073】
陽極缶2の内面のメッキは、微細な欠陥も許されず、高い品質が要請される。メッキに穴があると、陽極缶2が腐食して漏れが生じる原因になり、事故に結びつく。メッキを検査して補修すると、陽極缶の歩留まりを上げ、品質の高い電池1を提供できるので、製造技術と共に検査技術が重要になる。電解質9に付いても、欠陥の発見と補修が要請され、同様の事がいえる。
【0074】
図1の電池1の組立後に、各々の缶に圧縮空気を吹き込んで、漏れがないか耐圧試験を行う。陽極缶2と陰極缶6及び陰極板10間の、電気の絶縁試験も行う。
【0075】
次に、陽極缶2に、注入口17から加熱して液体の硫黄4と加圧ガス14を注入し、陰極缶6に、注入口18から加熱して液体のナトリウム8と加圧ガス14を注入する。次に、電池1の内部を、加圧ガス14の注入時の適正圧力に減圧し、注入口17と18を封じる。
【0076】
図1の注入口17と18を使用せず、事前に成形した、充填材5を内蔵した硫黄4とナトリウム8を缶に入れ、加圧ガス14の減圧雰囲気下で巻締し、連結部をリベット13で締結する手法も可能である。
【0077】
組み上がった電池1を300℃に加熱すると、硫黄4とナトリウム8が熔解し、電池として機能する。初期状態は満充電であり、電池1を放電して電圧と電流の特性を検査し、不良品を排除する。
【0078】
図1の陰極缶6が上にあり、ナトリウム8が減少しても確実に電解質9に届く。陰極缶6に収容したナトリウム8は、電解質9と陰極板10との間隙を通って移動する。電解質9や陰極板10の表面に、細かな溝や凹凸を設けて、ナトリウム8の移動を容易にする事も有効である。電解質9は陰極板10に裏打ちされ、電池の構造を支える必要がないので、可能な範囲で薄くできる。
【0079】
図1の陰極板10には多数の突起3があり、突起3が積層した電池1の陽極缶2や端子板と接触して、低い電気抵抗値で接続可能な様に、突起3を配置する。電池1を積み重ねて使用する際には、電池1の電極面以外は絶縁塗装して使用すると、電流の漏洩や短絡事故を防いで安全性が高まる。
【0080】
図1の突起3により、電池1を積み重ねた際に空間が空き、空間を毛細管構造に表面処理し、実施例3の加圧液15の流路として突起3の周囲が機能し、電池1周辺の熱抵抗を下げるのに役立つ。
【0081】
図1の陽極缶2と陰極缶6は、組立修理の際には常温で内部が低圧になり、大気圧で潰されて変形しないように、強度や柔軟性を考慮する必要がある。
【0082】
図1の電池1は、食品缶等に採用されている、アルミニウムや鉄の薄板を採用でき、長年の製造経験の蓄積もあり、缶や板に高い信頼性が期待できる。
【0083】
図1の充填材5と電解質9は、実施例2の充填材5と電解質9を採用して、電池1の高い電流容量を実現する。
【0084】
図1の電池1は、陰極缶6を上にして配置し、横に電池1を積層して使用し、電気自動車の床下に搭載しやすい形状をしている。電池1は電流が図1の左右方向に、陽極缶2と充填材5と電解質9と陰極板10を経由して流れ、低い内部抵抗を実現しやすい形状をしている。陽極缶2と陰極缶6の深さを浅くし、横幅を伸ばして、電池1の面積を増やすと、同一電気容量でより電流容量の大きな電池1が得られる。
【0085】
図1の電池1は、事故等で電池1が大きく変形しても、電池1の連結部をリベット13で保持されて開かず密封状態を維持し、周囲の二重巻締と相まって、液体である活物質の急激な流出や混合を阻み、電池1の安全性を確保できる。
【実施例0086】
図2は、NAS電池の部分断面図である。
【0087】
図2は、図1の電池1の、陰極板10から陽極缶2間の一部を図示している。陰極板10の上に電解質9があり、その上に充填材5があり、最上部に陽極缶2がある。図2は、電解質9と充填材5の詳細構造を図示している。
【0088】
図2の電解質9内の網28は、緯線20と経線21を縦横に織って作られ、電解質9を補強する。高温での焼結に耐えられる、炭素やセラミック等の繊維が網28に利用できる。網28の位置は、上下の厚さを陽極側と陰極側の損耗速度に比例させ、厚さが偏っている。
【0089】
図2の電解質9は、βアルミナ等の微粒子を溶剤と混ぜて網28に塗布し、焼結して電解質9を製造する。βアルミナ以外に、NATP(Na-Al-Ti-P3O5)等のより導電率の高い材料があり、採用すると更に電解質9の内部抵抗を下げられる。損耗速度が速く、別途保護膜を必要とする場合もある。
【0090】
図2の電解質9は、網28により振動や衝撃で破損しにくくなり、電池1の信頼性を高められる。網28は機能的には障害物なので、有用な範囲で、可能な限り細い繊維を使用し疎に編む。網28の位置近くまで、電解質9が損耗しても、電解質としての機能を果たせ、寿命に応じた最小な厚さの電解質9にできる。
【0091】
電解質9の破損が起きても、網28により小規模に収まり、破損個所が固体のNa2Sで塞がる可能性が高く、自己修復性が期待できる。網28により、電解質9の損傷が起きても、修復されて大事故に発展する可能性が低くなる。
【0092】
図2の充填材5は、緯線22と経線23と上緯線27と絶縁経線24で構成されている。充填材5は、硫黄4と硫化ナトリウム16の低い電気と熱の伝導率を補って、電池1の内部抵抗と温度差を低減する役目を担っている。
【0093】
図2の充填材5は、導電繊維と絶縁繊維を混ぜて使用し、立体編みして厚さと柔軟性を持たせる。充填材5に、ある程度の電気抵抗を持たせた方が、電池1の動作が安定し、電気抵抗がある程度高く耐蝕性のニクロム線が有用である。充填材5の繊維は、充填材5の抵抗値を勘案して、繊維の構成や編み方を決定する。
【0094】
図2の充填材5の、緯線22と上緯線27は離れて居て、経線23が交互に緯線22と上緯線27に絡んで編まれ、厚みのある充填材5としている。上緯線27無しで、経線23をループ状に編んでも同じ結果になるが、上緯線27で経線23の位置が固定され、充填材5の均一性を維持させる効果がある。
【0095】
図2の充填材5の、緯線22は必要数の倍あり、半数の緯線22は絶縁経線24で充填材5に編み込まれている。絶縁経線24が、電解質9と緯線22や経線23との間隔を維持させ絶縁させる。絶縁経線24に細い繊維を使用して、電解質9と緯線22や経線23との間隔を狭めている。絶縁経線24は、緯線22を四回の内一回跳躍して編み、電解質9との接触面積を増やし、少ない絶縁経線24で、より効果的に電解質9から硫化ナトリウム16を引き寄せられる。
【0096】
図2の電解質9と絶縁経線24は、硫化ナトリウム16と親和性が高く、硫化ナトリウム16が、電解質9と絶縁経線24の周囲に保持される。残された空間に、導電繊維を伝って硫黄4が流動して電解質9に接近する。絶縁経線24に接触している、緯線22や経線23の絶縁繊維を伝って、陽極内に硫化ナトリウム16が流動していく。
【0097】
充填材5に、導電繊維と絶縁繊維を混ぜて使用することで、硫黄4の量が大きく変動しても、電解質9は安定的に動作する。
【0098】
電解質9の表面のナトリウム8と硫化ナトリウム16の界面で、電池としての電圧が維持される。電解質9と硫化ナトリウム16の界面を、ナトリウム8が移動して電流が流れる。更に硫化ナトリウム16と硫黄4の界面でナトリウム8が拡散移動し、硫化ナトリウム16と硫黄4の比率が変化する。この界面は、硫黄4が絶縁体で電流が流れず、界面電圧が存在したとしても、電池1に反映されない。硫黄4が消費尽くされると、硫化ナトリウム16内を、ナトリウム8が濃度勾配に応じて拡散移動する。
【0099】
図2の充填材5を、陽極缶2の深さよりも幾分か厚くし、充填材5で内部から電解質9と陽極缶2を押させ、充填材5を安定して陽極缶2に収容する。図5の伸縮性の電池1にも採用可能で、図5の陽極缶2の深さは最大約50%増え、それに応じて伸びるように図5の充填材5を作成する。
【実施例0100】
図3は、実施例1の電池1を複数使用した、組電池の断面図である。
【0101】
図3の組電池30は、断熱容器31と圧力容器32の、二重密封容器で構成されている。断熱容器31に断熱材42で包んだ圧力容器32を収容し、圧力容器32に図1の電池1を32個と加圧液15を収容している。
【0102】
図3の断熱容器31と圧力容器32は、各々が上下に分割可能な構造で、双方の容器の各フランジ部36と各パッキン37を、複数のボルト38とナット39で締結して気密を維持し、修理補修時には容易に分解組立可能としている。断熱材42も上下に分割しておく。
【0103】
図3の断熱容器31と圧力容器32を貫通して、バルブ43が各々に取り付けられている。バルブ43に真空ポンプを接続して、断熱容器31と圧力容器32内を真空に排気しバルブ43を閉じる。組電池30を修理する際には、バルブ43を開いて断熱容器31と圧力容器32内に空気等を導入し、真空を解除する。
【0104】
図3の組電池30は、左側の電池1に陽極端子40が接続され、右側の電池1には、陰極端子41が接続されている。陽極端子40と陰極端子41は、圧力容器32と断熱容器31を貫通子69で、絶縁と密封性を維持しながら貫いて、組電池30の外部に出ていて、組電池30に収容された32個の直列に接続された電池1と外部とを接続可能にしている。
【0105】
図3の組電池30の32個の電池1は、絶縁板34により圧力容器32との間を電気的に絶縁している。絶縁板34の代わりに圧力容器32の内面に、絶縁塗装を施しても同様の効果が得られる。
【0106】
図3の圧力容器32の組立は、内部に電池1を収容し加圧液15を注入した後で蓋を閉じ、圧力容器32の内部を真空に排気する。加圧液15として、陽極缶2内の加圧ガス14の圧力より蒸気圧が低い、不活性なシリコンオイル等が利用できる。
【0107】
図3の圧力容器32の下部には、加熱器47が張り付けられている。組電池30の起動時に、加熱器47に外部から電流を流して加熱し、電池1の温度を上げて使用可能にする。電池1が下限温度より冷えてきたら、外部又は組電池30から加熱器47に電流を流して加熱し、電池1の温度を維持させる。
【0108】
図3の圧力容器32には、断熱材42に穴をあけた箇所に、圧力に応じて伸縮する放熱器49を、圧力容器32の密封を維持しながら複数装着している。放熱器49は、圧力容器32の温度が高くなると、伸びて断熱容器31に接触し、圧力容器32の熱を断熱容器31に逃がし、圧力容器32と電池1を上限温度に自律的に制御する。
【0109】
図3の加圧液15の蒸気と水65が流動して熱を運び、比較的小型な放熱器49でも、効率よく熱を運ぶことができる。圧力容器32の一部に、環状の襞等を設け伸縮可能にし、放熱器49とすることも可能である。
【0110】
図3の電池1の外周部や端子の表面を絶縁塗装して、電池1の流出物での短絡事故を避けると安全性が高まる。電池1は、低温では内部圧力が低く縮んでいて組立解体は容易であり、稼働時には高温で、電池1が膨らみ圧力容器32で押さえられて位置が固定される。自動車等の振動の激しい環境では、図3の電池1の直列数は多すぎ、分割板等を追加し、直列数を小分けして安定性を向上させる。
【0111】
図3の電池1と絶縁板34の表面を、加圧液15が流動する様に、表面に毛細管構造を装備する。加圧液15が、高温な箇所で蒸発し低温な箇所で凝縮して循環し、熱抵抗の低い熱媒体として機能し、圧力容器32内の温度を均一化する。同様の目的で、図1の突起3周囲を加圧液15が流れ、僅かな温度差で電解質9の熱を運び去り、電池1の熱安定性を向上させる。
【0112】
図3の断熱容器31の断熱材42に、アルミ箔とガラスウール等を多層に重ねた断熱材を使用すると、1mm程度の厚さの薄く軽量な断熱材で、高い断熱性を実現できる。断熱容器31に、より高い断熱性を求めて、断熱容器31内を真空に排気する。断熱容器31内を真空にすることで、放熱器49の動作が安定する効果も期待できる。
【0113】
図3の断熱容器31の上部には、水容器64が被さり、断熱容器31と水容器64間の空洞に水65を収容する。水容器64の一部を断熱容器31が兼ねている。電池1は、最大で1割前後の電力損失があり、連続的に使用すると温度が上がる。その場合にも水65が沸騰しないように、組電池30の外周に放熱フィンやファンを付けるなど、温度を下げる様に熱設計する必要がある。
【0114】
図3の電池1の多くが破損する等の、事故で高温になると、加圧液15の蒸気圧が上がり、放熱器49が熱を水65に伝え、水65はやがて沸騰する。沸騰した蒸気を蒸気弁68が蒸気管66に逃し、蒸気管66は水容器64を貫通し警笛67を経由して外に蒸気を逃がす。沸騰した蒸気で警笛67が鳴って事故を知らせ、避難や消火活動に繋げられる。
【0115】
図3の圧力容器32に収容した電池1が破損したり、断熱容器31の断熱が破れた際に、水65の比熱と気化熱で、断熱容器31の温度は一定時間は水の沸点を限度に上昇せず、外部への波及を抑えられ、事故の拡大を防げる可能性が高い。また、断熱容器31と圧力容器32が、電池1の活物質の外界への流出を妨げ、水を使っての冷却を可能にし、安全に冷却や鎮火できる可能性が高い。
【0116】
図3の組電池30は、水容器64と二重密閉構造の外部容器を採用していて、上記の例や発明の効果で説明した様に、収容した電池1の各種故障や、断熱容器31や圧力容器32の破損に対応でき、安全性と信頼性の高い組電池30が得られる。
【0117】
図3の組電池30には、各種計測装置を装着し、電池制御監視装置を接続して利用に供する。
【実施例0118】
図4は電動自動車の部分断面図である。
【0119】
車体62の下部の前部右側を切取って図示してあり、関連する基本的な部材のみを図示し他は省略してある。
【0120】
図4の車体底板60には、中央に凸型の電池収容部61があり、内部に圧力容器32を収容している。圧力容器32内には、図3にある様に、多数の電池1と加圧液15を収容している。
【0121】
電池収容部61の下から、断熱容器蓋63で蓋をして使用する。車体底板60が図3の断熱容器31の一部を兼ねた構造をしている。電池収容部61と断熱容器蓋63の内面に、断熱材42を張って圧力容器32と断熱する。
【0122】
図4の電池収容部61の上部に、水容器64が被さり、電池収容部61と水容器64の空洞に水65を収容する。水容器64には蒸気管66が接続され、警笛67を経由して車外に沸騰した蒸気を逃がす。
【0123】
電池1が大規模に破損し、圧力容器32が高温に成っても、水65が沸騰している間は周囲への延焼を免れ、事故が起きた事を警笛67が鳴って知らせる。
【0124】
図4の水容器64と、車体62の図示していない床板とは空間を開け、床板に断熱材を貼っておくと、熱が遮られて安全性が一層高まる。
【0125】
図4の車体62が、衝突事故等により周囲が潰れた場合でも、電池収容部61が潰れないように、電池収容部61を強固に補強するのが一般的で、圧力容器32は守られる可能性が高い。圧力容器32が無事なら、収容した電池1の安全が確保される確率が高い。
【0126】
更に、事故で圧力容器32が変形しても、電池1は容易には破裂せずに密封を維持し、活物質が混合して火災等に発展する可能性は低く、車体62の安全が保たれる可能性が高い。
【0127】
更に、電池1が破裂して火災に発展しても、水65が熱を吸収して、外部への延焼を避けられ、警笛67が火災を知らせ、避難や救助や消火の時間的溶融が生まれる。
【0128】
図4の電池収容部61に収容されたNAS電池は、外部容器と水65を加えても、300W/kgを超える性能が得られる。当電池は製造も容易で、安価な資源を多用していて価格も安くでき、乗用車に100kWhの電池の搭載を実現しやすい、トラック用の千kWhクラスの電池も安価に提供できる。
【実施例0129】
図5は携帯機器向けNAS電池の断面図である。
【0130】
図5は携帯用電池70は、水容器64と断熱容器31と圧力容器32の三重の密封容器に、伸縮構造の電池1を収容している。各密封容器も伸縮可能にして、携帯用電池70も伸縮し、上下方向をスポンジやバネ等で押さえて使用する。携帯電話やノート型計算機や電動工具等の携帯機器での使用を目的としている。
【0131】
図5の電池1は、陽極缶2と陰極缶6との間を、電解質9と陰極板10で区切った構造をしている。陽極缶2と陰極缶6の双方の周囲に、多重に褶曲した蛇腹部7を持たせ、電池1を上下方向に伸縮可能な構造としている。図5では上下に湾曲した蛇腹部7としているが、左右に湾曲させ上下に湾曲部を積層した蛇腹部7も採用できる。
【0132】
図5の電池1は陽極缶2内に、硫黄4と硫化ナトリウム16と充填材5を収容している。陰極缶6にはナトリウム8を収容している。陽極缶2と陰極缶6の間を、陰極板10に支えられた電解質9で仕切って、電池として動作させる。
【0133】
図5の陰極板10には、ナトリウム8が通過する穴11が複数開けられている。電解質9は、陰極板10に裏打ちされ、電池の構造を支える必要がなく、圧力も均衡しているので、可能な範囲で薄くできる。穴11を細くすると、穴11の数を増やして対応できる。穴11を細くすると、電池1が潰れた際に、急激な圧力上昇に対して、流動抵抗が増してナトリウム8が移動しにくくなり、電池1の安全性が高まる。
【0134】
図5の電池1の、陽極缶2の周囲を封止材12で絶縁し、陽極缶2と陰極缶6と陰極板10の周囲を二重巻締して密封している。二重巻締により、電池1が潰れても容易には開放せず、活物質の混合や流失が避けられ、安全性の高い電池1とすることができる。図2の充填材5は伸縮性に富み、図5の電池1に採用可能な充填材5になる。
【0135】
図5の陽極缶2の内面は、硫黄4や硫化ナトリウム16に浸食されないように、厚目のクロムや炭素メッキ等を施す。陽極缶2のその他の面と陰極板10と陰極缶6の表面には、酸化されないように、薄めのクロムや炭素メッキ等を施す。
【0136】
図5の圧力容器32には、少量の加圧液15と電池1を収容し、硫黄4より高い蒸気圧を加圧液15で発生させて、電池1内部に空洞が生じない様にして動作させる。加圧液15は、温度差で循環して、低い熱抵抗の熱媒体として機能し、電池1の温度を均一に保つ。
【0137】
図5の圧力容器32の内面や電池1の周囲を、毛細管構造とすると、加圧液15が循環しやすくなり、熱抵抗を一層下げられる。圧力容器32と陽極缶2の間を、絶縁板34で絶縁している。圧力容器32が絶縁体なら絶縁板34は省略できる。
【0138】
図5の圧力容器32の外周に、断熱材42を巻き、断熱容器31に収容している。断熱材42で、圧力容器32と電池1を外界から断熱して、電池1の高温を維持する。断熱材42には、アルミ箔とグラスウール等を積層した断熱材が利用可能で、薄くても高い断熱性が期待できる。断熱性を高め、放熱器49の動作を確実にするために、断熱容器31内は真空に排気して使用する。
【0139】
図5の圧力容器32には、断熱材42に穴をあけた箇所に、放熱器49が、圧力容器32の密封を維持しながら取り付けられていて、圧力容器32が過熱した際に、放熱器49が伸びて断熱容器31に接触し、電池1の熱を外部に逃がす。放熱器49の代わりに、圧力容器32の一部が、伸縮する構造も採用できる。加圧液15として、電池1の稼働温度で、加圧液15蒸気圧>硫黄4蒸気圧の、不活性なシリコンオイル等が利用できる。
【0140】
電力損失が少ない携帯用電池70の利用形態では、充電時に上限温度を越えない様に制御して、圧力容器32と加圧液15と放熱器49を省略できる場合もある。
【0141】
図5の圧力容器32には、加熱器47が張り付けられ、起動時や電池1の温度が低下した際に、加熱器47に電流を流して加熱し、電池1の温度を維持させる。
【0142】
図5では断熱容器31の外周を水容器64で覆い、間に水65を収容している。断熱容器31が高温になっても、水65に熱が吸収され、断熱容器31は水65の沸点近辺の温度を短時間は維持できる。
【0143】
図5の電池1が過熱し、放熱器49が作動し、水65が沸騰すると、蒸気弁68が開き、蒸気管66で水容器64の外に警笛67経由で蒸気を逃がす。蒸気で警笛67が鳴って事故を知らせ、周囲の注意を引き付け、迅速な対応を要請する。
【0144】
図5の電池1は、陽極端子40で陽極缶2に接続し、陰極端子41で陰極缶6に接続している。陽極端子40と陰極端子41は、絶縁性と気密を維持しながら、水容器64と断熱容器31と圧力容器32を貫通子69で貫通し、電池1と外部とを接続可能にしている。
【0145】
図5の電池1は、大気圧で押され、内部に空洞が生じない。電池1は、搭載した機器が、いずれの方向でも正常に動作し、各種の携帯機器の利用に合致する。
【0146】
電池1の内圧と外圧は均衡していて、高い差圧が発生しないので、電池1に使用する板と電解質9は、可能な範囲で薄くできる。
【0147】
電池1は、満充電で陽極缶2と陰極缶6の深さを各2mmと仮定すると、完放電で陽極缶2は3mmに、陰極缶6は0mmに深さが変化し、携帯用電池70は厚さが1mm縮む。
【0148】
図5では、単一の電池1を携帯用電池70に収容しているが、複数の電池1を直列に接続した組電池とすることも可能である。携帯電話は4V程度の電圧の電池が好まれ、電動工具やノート型計算機では10Vが好まれる。電池1に、各種計測装置と、充放電の監視や電池の遮断等を行う制御回路を付加して利用に供する。
【0149】
図5の伸縮可能な電池1を、図3の組電池30に採用可能である。その際に、図5の電池1の片側をバネ等で押して使用する。図5の電池1を折り返して同数並べると、隣接電池間の接続に、平で可動な接続板を採用でき、簡便な電池1の収容構造にできる。
【0150】
図5の携帯用電池70は、二重密封容器と水容器64に収容され、実施例と発明の効果で説明したように、各種の事故に対応していて、長い寿命と高い信頼性と安全性が確保できる。
【実施例0151】
図6はNAS電池の充放電特性図である。
【0152】
当発明のNAS電池を、電流容量の半分の定電流で充放電した際の、電池の電圧と残容量を曲線で示してある。
【0153】
電池は、陽極の成分比がNa2S5までは一定の電圧を保ち、更に放電してナトリウム成分が増えて、一定傾斜で電圧が低下していき、Na2S2.78で完放電となる。充放電の電圧差は、電池の内部抵抗で発生している。
【0154】
満充電から40%の残容量までは、陽極内に硫黄とNa2S5が層分離して併存している。放電して、陽極内にナトリウムが追加され、Na2S5が硫黄を取り込みNa2S5が増える。充電して、陽極内のナトリウムが削減され、Na2S5が硫黄を吐き出しNa2S5が減る。硫黄は絶縁体であり電流が流れず、電解質のナトリウムとNa2S5の界面電圧が反映され、電池は一定電圧を維持する。
【0155】
40%から0%の残容量では、硫黄は消費尽くされて硫化ナトリウムしか存在せず、充放電で硫化ナトリウム中のナトリウムが増減し、Na2S2とNa2S5間で構成比が徐々に変化し、電池電圧も変化していく。電流が流れると、硫化ナトリウム中をナトリウムが拡散移動する。
【0156】
充電して満充電に近づくと、硫化ナトリウムが枯渇して電圧が上昇する。放電して完放電に近づくと、ナトリウムが枯渇して電圧が下降する。枯渇する前に、電解質の反応領域が狭まって、電池の内部抵抗が徐々に上がり、曲線の傾斜が次第に急になる。
【0157】
枯渇したら、電圧に制限はなく、電池が破壊される。電池の内部抵抗の増大で、充放電を停止すると、過放電過充電を避けられる。通常は、曲線が傾斜する前までを、利用可能範囲として電池を利用する。電池が劣化すると、利用可能範囲が次第に狭まっていく。
【0158】
電池が劣化すると、図6の実線から点線の様に特性が変化し、定期的に特性を記憶しておくと、正確に劣化の度合いと傾向を判定できる。電池内で漏電してる場合には、一点鎖線で示すように徐々に右に特性がシフトし、シフト量は積算漏電量に応じて増える。電池間の漏電等で、左に特性がシフトする状況もあり得る。
【0159】
組電池では、早期に劣化した電池が、満充電や完放電に達して充電や放電を終了させ、電池の実効容量が減少してしまう。組電池の点検修理時に、劣化の早い電池は交換し、シフトは、全電池を満充電に充電し直してリセットする。傾斜領域で、電池間の電圧差で電力を融通して、容量を平準化する装置が使える。
【0160】
活物質の外部への漏洩を除くと、電池の劣化は、固体化したNa2Sが生成されたり、活物質への電池の缶や電解質の溶解で起き、次第に蓄積して電池の容量が減少していく。組電池を利用して、一律に点線の様に劣化して使用を終了するのが理想であり、費用対効果も最大化が見込める。
【産業上の利用可能性】
【0161】
フォード社が、1960年代にNAS電池を発明したが、電気自動車としては成功していない。その後の各社のNAS電池も、同様である。
【0162】
その理由は、NAS電池の熱安定性が低く、電流を流せない事にあり、自動車での運用を諦めたと考えられる。当時は石油も安く、環境問題も今ほど深刻ではなく、自動車で使う為の工夫もなされていない。その後リチウム系の電池が成功して、今はNAS電池は忘却されている。
【0163】
電力備蓄向けの用途では、長時間で充放電を行い低い電流容量で使用し、安全性が確保できるので、NAS電池が利用されている。
【0164】
当発明のNAS電池は、電解質を薄くし電池を扁平にして電解質の面積を広げ、電解質の内部抵抗を削減している。また、陽極の充填材は、立体編みの金属線を採用して、電気抵抗を下げている。更に、電池を圧力容器に収め適切な蒸気圧の加圧液を注入し、加圧液が自然循環して電池周囲の熱抵抗を下げて、高い熱安定性を実現している。
【0165】
NAS電池を、断熱容器と圧力容器の二重密封容器に収容し、更に水容器に水を入れて火災等に備え、電池の缶も柔軟性を確保して破裂しにくくし、電解質を網で補強し、電池の安全性を高めている。
【0166】
その結果、電気自動車で要請される、2C~4Cの電流容量が得られ、信頼性も確保できる。更に電流容量を増やし、数分で充電可能な電池も作れる。
【0167】
NAS電池は300℃から360℃と高温で稼働し、周囲を高度に断熱して、少ない電力で高温を維持できる。NAS電池は、ー70℃から60℃の気温で問題なく動作し、地球上のあらゆる地点で利用できる。電池が高温であることは危険でもあるが、安全性を確保すれば問題はなく、寧ろ気温に左右されない利点が生きてくる。
【0168】
電力の備蓄用の当発明のNAS電池は、容量100kWh、寸法1m/2.55m/54mm、重量156kg、641Wh/kgの性能が得られる。
【0169】
この電池100個を、断熱容器と圧力容器に収めて組電池とし、組電池を100組使用して、20kVで1GWhの電力を蓄えられ、50m/50m/10mの容積に収まる。
【0170】
自然エネルギーの発電所や大都市に、電力備蓄設備を設けて電力を平準化して、過剰発電や過剰需要に備えられる。送電網に利用すると、変動する送電電力が平準化でき、送電網の実効送電電力を引き上げられる。
【0171】
1GWの標準的な原子力発電所から、都市の電力を賄うと、1GWの送電線を使用し、3GWhの備蓄電池を都市側に設置して、一日の需要は650MW~1300MWの間で変化し、需要変動を電池で補って、発電所を概ね1GWの定出力で運用できる。一般には、太陽光や風力の発電があり、原子力発電所の出力を落として、自然エネルギーで補い、更に不足分を火力発電で補っている。備蓄電池で、原子力発電所の稼働率を上げ、火力発電を削減できる。
【0172】
電気自動車向けの、当発明のNAS電池は、容量500Wh、寸法100mm×850mm×9mm、容積765cc、重さ1010g、電圧2V、電流容量4C1kA、495Wh/kgの性能が得られ、15分で充電できる。
【0173】
より扁平な形状の電池とすると、電流容量が10Cで6分で充電できる電池が得られ、重量が増えて性能が355Wh/kgに低下する。
【0174】
500Wh4CのNAS電池を200個使い、直列に接続して400Vの組電池とし、断熱容器と圧力容器に入れ水容器を付加して、電気自動車の床下に装備可能な組電池とする。
【0175】
この組電池は、外形1708mm/1006mm/112mm、容量100KWh、重量300kg、333Wh/kgの性能が得られる。夏冬の消費電力の多い時期に、満充電で600km走れる。平均的なリチュームイオン電池より高性能で、高い性能の電池と同等な性能が得られる。
【0176】
この100kWhの組電池は、50Wの電力で電池の温度を維持でき、満充電の電池の電力で、80日温度を維持できる。放電して電池が冷えた状態から、400kWの充電器を使用して、3分で加熱し15分で充電して運用可能になる。
【0177】
伸縮するNAS電池は、大気圧>加圧液蒸気圧>活物質蒸気圧の式を満たすと、大気圧で押され空洞をなくして動作する。硫黄の蒸気圧は358℃で15kPaであり、エベレスト山でも支障なく利用できる。密封容器を工夫すれば、航空宇宙向けにも利用可能である。
【0178】
ノート型計算機向けに、水容器と断熱容器と圧力容器と三つの密封容器に収容した、伸縮可能なNAS電池は、外形75mm/150mm/10mm、容量40Wh、重さ152g、263Wh/kgの性能が得られる。NAS電池を2個重ね、電圧4Vになり、電流容量100Ah10C以上あり、内部抵抗は極めて低く数分で充電できる。より扁平にして厚さを薄くしたNAS電池の作成も可能である。
【0179】
現状のノート型計算機用のリチウムイオン電池と同等な性能があり、寿命は長く計算機の寿命を超えて使える。計算機停止なら、満充電で10日電池の温度を維持できる。計算機をスタンバイさせると、数日維持できる。放電し冷えた状態から、200Wの充電器を使用して、5分で電池を温め12分で充電できる。
【0180】
携帯電話向けの、より小型のNAS電池では、数日で電池が空になる。電池が空になって冷えても、短時間で加熱し充電して、携帯電話として直ぐに利用できる。NAS電池の寿命は長く、電池が要因で携帯電話の寿命が尽きる可能性を低くできる。
【0181】
NAS電池は、過充電や過放電に陥ると極めて危険である。積層電池では全体の電圧も高く、過充電や過放電に陥ると、電池の電圧が急激に上昇又は下降し、電流を遮断しないと、電池が高温に成って破壊されてしまう。過充電過放電で電池の内部抵抗が急増するのを検出し、電流を遮断して安全を図る事ができる。
【0182】
電力備蓄施設で起きたNAS電池の火災は、活物質が漏洩して電池が劣化した結果、想定外の過充電又は過放電が起きたと推察できる。電池の上部から活物質が噴出して、近接電池と連鎖的に短絡して高温になり、多くの電池が発火したと考えられる。電池を監視して、電池の劣化を検出し、過充電過放電を避け、適切に運用して修理補修する事が必要不可欠になる。
【0183】
当発明の電池では、各種安全策を用意して多様な故障に対応し、事故時の危険性の多くを排除して、高い信頼性と安全性が確保できる。電池が故障した場合に、多くは単独事象であり、大事故に発展する前に故障を検出し、修理して電池の交換や再利用が可能になり、高い有用性と利便性を提供できる。
【0184】
従来のNAS電池では、10年以上の平均寿命を達成できていて、当発明の電池も基本構造は類似であり、10年以上の寿命確保が可能である。寿命要因の一つは、活物質への不純物の蓄積であり、大型の電池では活物質を定期的に交換精製して不純物を除くと、100年の寿命も不可能ではない。
【0185】
既に実用化されている電力備蓄用のNAS電池では、静止時の寿命は100年近くあり、2500回の充放電寿命がある。当発明の100kWh容量の電気自動車向け電池は、同じ寿命なら150万kmを走行できる。
【0186】
2500回の充放電寿命は、一日の平均走行距離が300kmを超えるタクシー等の営業車に使用して、10年を超える寿命が見込める。トラック等のより稼働率の高い車両では、5年程度の寿命になる。タクシー等では、電池の容量を50kWhに減らして重量を100kg以上削減し、充電回数を増やして利用すると、電池の寿命は半減するが、kW当たりの走行距離が一割程度伸びて電力費を削減できる。
【0187】
電池を200個使用した、電気自動車向けの組電池は、2年に1度の平均修理回数を見込むと、350万時間のMTBFが電池に要請される。製造技術を磨き、欠陥を排除して実現を図る事になる。NAS電池の構成要素は、十数点と少なく構造も単純であり、原因の究明も迅速にでき、実現が容易と考えられる。
【0188】
NAS電池は、使用量の多い硫黄とナトリウムは、安価であり資源量も多く、原料を精製するだけで利用できる。リチウムイオン電池と比較して、電池の材料費を大幅に削減できる。
【0189】
当発明のNAS電池は、二つの缶に硫黄とナトリウムを各々注入した単純な構造で、製缶工程を流用して組立られ、原材料も安く調達でき、リチウムイオン電池と比較して、電池の製造費を大幅に下げられる。NAS電池を収容する外部容器が必須になるが、部品点数は少なく、安価な素材を使用でき、外部容器を安価に作れる。
【0190】
廃棄されたNAS電池は、缶と液体の活物質が主要構成要素であり、電池を分解分離精製して、容易に再利用可能である。電解質は、堅牢な化合物で使用量が少なく、再利用が難しいが、大量に集めれば再利用の可能性も出てくる。電池の活物質に溶解した缶や電解質等の部材は、活物質の精製過程で不純物として分離できる。分離された不純物から、更に各元素に分離して、再利用が可能である。
【0191】
当発明のNAS電池は、再利用が不可能な廃棄物は少なく、廃棄電池の多くの部材が循環再利用できる。当発明の電池は、リチウムイオン電池と比較して、環境への負担を大幅に低く抑えられる。
【符号の説明】
【0192】
1 電池
2 陽極缶
3 突起
4 硫黄
5 充填材
6 陰極缶
7 蛇腹部
8 ナトリウム
9 電解質
10 陰極板
11 穴
12 封止材
13 リベット
14 加圧ガス
15 加圧液
16 硫化ナトリウム
17 注入口
18 注入口
19 補強材
20 緯線
21 経線
22 緯線
23 経線
24 絶縁経線
25 絶縁膜
27 上緯線
28 網
30 組電池
31 断熱容器
32 圧力容器
34 絶縁板
36 フランジ部
37 パッキン
38 ボルト
39 ナット
40 陽極端子
41 陰極端子
42 断熱材
43 バルブ
47 加熱器
49 放熱器
60 車体底板
61 電池収容部
62 車体
63 断熱容器蓋
64 水容器
65 水
66 蒸気管
67 警笛
68 蒸気弁
69 貫通子
70 携帯用電池
図1
図2
図3
図4
図5
図6