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特開2024-123311見せ玉検知システム、方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123311
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】見せ玉検知システム、方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 40/04 20120101AFI20240905BHJP
【FI】
G06Q40/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030604
(22)【出願日】2023-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】522339112
【氏名又は名称】株式会社JPX総研
(71)【出願人】
【識別番号】514148650
【氏名又は名称】日本取引所自主規制法人
(74)【代理人】
【識別番号】100103090
【弁理士】
【氏名又は名称】岩壁 冬樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124501
【弁理士】
【氏名又は名称】塩川 誠人
(72)【発明者】
【氏名】鹿島 裕
(72)【発明者】
【氏名】藤本 圭
(72)【発明者】
【氏名】指田 浩希
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 丈夫
(72)【発明者】
【氏名】福田 健二
【テーマコード(参考)】
5L040
5L055
【Fターム(参考)】
5L040BB52
5L055BB52
(57)【要約】
【課題】不公正取引における見せ玉を検知する見せ玉検知システムを提供する。
【解決手段】ニューラルネットワーク81は、入力層と出力層とを有し、入力層の入力データを、過去の取引データから得られる情報であって、価格の変動に関する情報である価格変動情報、誘因期間内の約定数に関する情報である誘因期間情報、参加者属性に関する情報である属性情報、および、反対売買の期間に関する情報である反対売買情報の少なくとも一つを含む情報とし、出力層の出力データを取引データが見せ玉を示すデータか否かを示す情報とする。機械学習手段82は、入力データおよび出力データを含むデータを教師データとしてニューラルネットワーク81を学習する。判定手段83は、ニューラルネットワーク81に、判定対象とする取引データである判定対象データを入力データとして入力して、その判定対象データが見せ玉を示すデータか否か判定する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報処理装置によりニューラルネットワークを実現する見せ玉検知システムであって、
入力層と出力層とを有し、前記入力層の入力データを、過去の取引データから得られる情報であって、価格の変動に関する情報である価格変動情報、誘因期間内の約定数に関する情報である誘因期間情報、参加者属性に関する情報である属性情報、および、反対売買の期間に関する情報である反対売買情報の少なくとも一つを含む情報とし、前記出力層の出力データを前記取引データが見せ玉を示すデータか否かを示す情報とするニューラルネットワークと、
前記入力データおよび前記出力データを含むデータを教師データとして前記ニューラルネットワークを学習する機械学習手段と、
前記機械学習手段にて学習された前記ニューラルネットワークに、判定対象とする取引データである判定対象データを前記入力データとして入力して、当該判定対象データが見せ玉を示すデータか否か判定する判定手段と
前記判定の結果を出力する出力手段とを備えた
ことを特徴とする見せ玉検知システム。
【請求項2】
ニューラルネットワークは、出力層の出力データを取引データの見せ玉らしさを示す見せ玉度とし、
判定手段は、前記ニューラルネットワークに判定対象データを入力データとして入力して、当該判定対象データの前記見せ玉度を推定し、推定された前記見せ玉度に基づいて前記判定対象データが見せ玉を示すデータか否か判定する
請求項1記載の見せ玉検知システム。
【請求項3】
ニューラルネットワークは、価格変動情報として、反対売買が対になった取引データにおいて、発注から取り消しまでの期間における価格の変動率を表わす価格変動率を用いる
請求項1または請求項2記載の見せ玉検知システム。
【請求項4】
ニューラルネットワークは、誘因期間情報として、反対売買が対になった取引データにおいて、発注から取り消しまでの期間における参加者ごとの約定数を表わす誘因期間約定数を用いる
請求項1または請求項2記載の見せ玉検知システム。
【請求項5】
ニューラルネットワークは、属性情報として、予め定めた規則に基づいて参加者の情報をフラグ化した参加者属性、および、反対売買の最大約定を得た参加者の情報をフラグ化した参加者属性の少なくとも1つを用いる
請求項1または請求項2記載の見せ玉検知システム。
【請求項6】
ニューラルネットワークは、反対売買情報として、反対売買が対になった取引データにおいて、発注から取り消しまでの期間を示す見せ玉反対売買約定時間、時間比見せ玉反対売買約定時間に対する板存在時間の時間比を示す約定板存在時間比、注文から反対売買の約定までの期間を示す反対売買約定時間、および、反対売買の約定から見せ玉注文取消までの期間を示す約定見せ玉取消時間の少なくとも1つを用いる
請求項1または請求項2記載の見せ玉検知システム。
【請求項7】
情報処理装置によりニューラルネットワークを実現する見せ玉検知方法であって、
前記ニューラルネットワークは、入力層と出力層とを有し、前記入力層の入力データを、過去の取引データから得られる情報であって、価格の変動に関する情報である価格変動情報、誘因期間内の約定数に関する情報である誘因期間情報、参加者属性に関する情報である属性情報、および、反対売買の期間に関する情報である反対売買情報の少なくとも一つを含む情報とし、前記出力層の出力データを前記取引データが見せ玉を示すデータか否かを示す情報とし、
前記入力データおよび前記出力データを含むデータを教師データとして前記ニューラルネットワークを学習し、
学習された前記ニューラルネットワークに、判定対象とする取引データである判定対象データを前記入力データとして入力して、当該判定対象データが見せ玉を示すデータか否か判定し、
前記判定の結果を出力する
ことを特徴とする見せ玉検知方法。
【請求項8】
ニューラルネットワークは、出力層の出力データを取引データの見せ玉らしさを示す見せ玉度とし、
前記ニューラルネットワークに判定対象データを入力データとして入力して、当該判定対象データの前記見せ玉度を推定し、推定された前記見せ玉度に基づいて前記判定対象データが見せ玉を示すデータか否か判定する
請求項7記載の見せ玉検知方法。
【請求項9】
ニューラルネットワークを実現するコンピュータに適用される見せ玉検知プログラムであって、
前記ニューラルネットワークは、入力層と出力層とを有し、前記入力層の入力データを、過去の取引データから得られる情報であって、価格の変動に関する情報である価格変動情報、誘因期間内の約定数に関する情報である誘因期間情報、参加者属性に関する情報である属性情報、および、反対売買の期間に関する情報である反対売買情報の少なくとも一つを含む情報とし、前記出力層の出力データを前記取引データが見せ玉を示すデータか否かを示す情報とし、
前記コンピュータに、
前記入力データおよび前記出力データを含むデータを教師データとして前記ニューラルネットワークを学習する機械学習処理、
前記機械学習処理で学習された前記ニューラルネットワークに、判定対象とする取引データである判定対象データを前記入力データとして入力して、当該判定対象データが見せ玉を示すデータか否か判定する判定処理、および、
前記判定の結果を出力する出力処理
を実行させるための見せ玉検知プログラム。
【請求項10】
ニューラルネットワークは、出力層の出力データを取引データの見せ玉らしさを示す見せ玉度とし、
コンピュータに、
判定処理で、前記ニューラルネットワークに判定対象データを入力データとして入力して、当該判定対象データの前記見せ玉度を推定させ、推定された前記見せ玉度に基づいて前記判定対象データが見せ玉を示すデータか否か判定させる
請求項9記載の見せ玉検知プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不公正取引における見せ玉を検知する見せ玉検知システム、見せ玉検知方法および見せ玉検知プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インターネットを介したオンライントレードが発達し、多くの投資家が容易に株取引を行えるようになっている。一方、株取引が容易になってきていることから、株式相場を意図的に操作するような不公正取引が行われる危険性も高まっているため、このような取引を適切に監視できることが望まれている。
【0003】
AI(Artificial Intelligence )で検知可能な不公正取引の一つに見せ玉があげられる。見せ玉は、ある特定の株式の売買が繁盛に行われていると他の投資家に誤解させ、取引を誘因することを目的として、売買を成立させる意図がない大量の売買注文の発注、取消および訂正を頻繁に繰り返す行為を言う。
【0004】
また、特許文献1には、取引データに見せ玉による相場操縦取引が疑われる被疑データが含まれるか判定する装置が記載されている。特許文献1に記載された装置は、複数の取引データの確率分布の密度比を推定し、密度比関数に基づいて取引データの異常度を算出して、不公正取引が疑われる被疑データが含まれるか判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-071751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された装置では、教師データを必要としない学習モデルによって取引データの異常度を算出し、不公正取引が疑われる被疑データが含まれるか判定する。具体的には、所定期間ごとの売買注文量やキャンセル量の密度比に着目して、不公正取引が含まれると想定される異常期間が判定される。
【0007】
しかし、密度比が変化するのは、不公正取引があった場合に限られない。例えば、突発的なニュースやイベントが生じた場合、売買注文量やキャンセル量が変化することも想定される。このような場合、特許文献1に記載された装置では、異常か否かを適切に判断することは困難である。
【0008】
そこで、本発明では、対象とする取引データから不公正取引における見せ玉を検知できる見せ玉検知システム、見せ玉検知方法および見せ玉検知プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による見せ玉検知システムは、情報処理装置によりニューラルネットワークを実現する見せ玉検知システムであって、入力層と出力層とを有し、入力層の入力データを、過去の取引データから得られる情報であって、価格の変動に関する情報である価格変動情報、誘因期間内の約定数に関する情報である誘因期間情報、参加者属性に関する情報である属性情報、および、反対売買の期間に関する情報である反対売買情報の少なくとも一つを含む情報とし、出力層の出力データを取引データが見せ玉を示すデータか否かを示す情報とするニューラルネットワークと、入力データおよび出力データを含むデータを教師データとしてニューラルネットワークを学習する機械学習手段と、機械学習手段にて学習されたニューラルネットワークに、判定対象とする取引データである判定対象データを入力データとして入力して、その判定対象データが見せ玉を示すデータか否か判定する判定手段と判定の結果を出力する出力手段とを備えたことを特徴とする。
【0010】
本発明による見せ玉検知方法は、情報処理装置によりニューラルネットワークを実現する見せ玉検知方法であって、ニューラルネットワークは、入力層と出力層とを有し、入力層の入力データを、過去の取引データから得られる情報であって、価格の変動に関する情報である価格変動情報、誘因期間内の約定数に関する情報である誘因期間情報、参加者属性に関する情報である属性情報、および、反対売買の期間に関する情報である反対売買情報の少なくとも一つを含む情報とし、出力層の出力データを取引データが見せ玉を示すデータか否かを示す情報とし、入力データおよび出力データを含むデータを教師データとしてニューラルネットワークを学習し、学習されたニューラルネットワークに、判定対象とする取引データである判定対象データを入力データとして入力して、その判定対象データが見せ玉を示すデータか否か判定し、判定の結果を出力することを特徴とする。
【0011】
本発明による見せ玉検知プログラムは、ニューラルネットワークを実現するコンピュータに適用される見せ玉検知プログラムであって、ニューラルネットワークは、入力層と出力層とを有し、入力層の入力データを、過去の取引データから得られる情報であって、価格の変動に関する情報である価格変動情報、誘因期間内の約定数に関する情報である誘因期間情報、参加者属性に関する情報である属性情報、および、反対売買の期間に関する情報である反対売買情報の少なくとも一つを含む情報とし、出力層の出力データを取引データが見せ玉を示すデータか否かを示す情報とし、コンピュータに、入力データおよび出力データを含むデータを教師データとしてニューラルネットワークを学習する機械学習処理、機械学習処理で学習されたニューラルネットワークに、判定対象とする取引データである判定対象データを入力データとして入力して、その判定対象データが見せ玉を示すデータか否か判定する判定処理、および、判定の結果を出力する出力処理を実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、対象とする取引データから不公正取引における見せ玉を検知できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明による見せ玉検知システムの一実施形態の構成例を示すブロック図である。
図2】モデルの例を示す説明図である。
図3】見せ玉検知システムの動作例を示すフローチャートである。
図4】本発明による見せ玉検知システムの概要を示すブロック図である。
図5】少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0015】
図1は、本発明による見せ玉検知システムの一実施形態の構成例を示すブロック図である。本実施形態の見せ玉検知システム100は、記憶部10と、過去データ入力部20と、データ加工部30と、機械学習部40と、判定データ入力部50と、判定部60と、出力部70とを備えている。
【0016】
記憶部10は、見せ玉検知システム100が各種処理を行うために必要な情報を記憶する。記憶部10は、過去に行われた取引を表わすデータを記憶してもよい。以下の説明では、取引を表わすデータを単に取引データと記し、過去の取引データを、単に過去データと記すこともある。
【0017】
また、記憶部10は、後述するデータ加工部30が生成した教師データや、機械学習部40が生成したモデル11などを記憶してもよい。取引データとして、例えば、株取引の注文データなどが挙げられる。[注文ID,日付,時間,銘柄,最良気配値,1本上,2本上…]などの情報を含むデータが、株取引の注文データの一例である。なお、モデル11の内容は後述される。記憶部10は、例えば、磁気ディスク等により実現される。
【0018】
過去データ入力部20は、過去に行われた取引を表わすデータ(すなわち、過去データ)とそのデータが見せ玉を示すデータか否かを示す情報とを含むデータの入力を受け付ける。本実施形態では、見せ玉を示すデータか否かを示す情報が、見せ玉を示すデータの場合に1、見せ玉を示すデータではない場合に0で表わされる例を説明する。なお、見せ玉を示すデータか否かを示す情報が、取引データの見せ玉らしさを示す値(以下、見せ玉度と記す。)で表わされていてもよい。
【0019】
また、過去データ入力部20が受け付ける過去データの数は、1件に限られず、複数件であってもよい。また、過去データ入力部20は、記憶部10に記憶された過去データの入力を受け付けてもよく、見せ玉検知システム100に含まれない外部ストレージ(図示せず)から通信回線を通じて過去データの入力を受け付けてもよい。なお、本実施形態では、過去データには、後述する教師データを生成するために必要な情報が少なくとも含まれているものとする。
【0020】
データ加工部30は、過去データを加工して後述する機械学習部40がモデル11の学習に用いる教師データを生成する。具体的には、データ加工部30は、過去データから、モデル11が利用する各種の情報(以下、説明変数と記すこともある。)を生成する。データ加工部30が対象とする過去データは1つのデータでもよいし、予め定めた期間や予め定めた件数、同一の参加者や同一の銘柄などをまとめた複数のデータでもよい。
【0021】
本実施形態で利用するモデル11は、取引データを入力し、その取引データが不公正取引における見せ玉を示すデータか否かを推定するモデルである。また、本実施形態では、見せ玉を示すデータか否かを推定する精度を向上させるため、実際に得られた取引データを加工して、モデルに適用する説明変数を作成し、その説明変数をモデルに適用することで、見せ玉を示すデータか否かを推定する。
【0022】
以下、本実施形態で用いられるモデル11が利用する説明変数について、詳細に説明する。本実施形態では、モデル11が利用する説明変数として、大きく4種類の説明変数を想定する。なお、これらの4種類の説明変数のうち、少なくとも1種類の説明変数を利用するモデル11が学習されればよい。また、説明変数の組み合わせは任意であり、多くの説明変数を用いたモデルを学習するほど、より推定精度の高いモデルを生成することが可能になる。
【0023】
本実施形態では、データ加工部30は、価格の変動に関する説明変数(以下、価格変動情報)、誘因期間内の約定数に関する説明変数(以下、誘因期間情報)、参加者属性に関する説明変数(以下、属性情報)および、反対売買の期間に関する説明変数(以下、反対売買情報)のうちの、少なくとも1種類の説明変数を過去データから生成する。ここでの参加者とは、取引に関わる人物のことである。なお、データ加工部30は、これら以外の説明変数を過去データから加工し、後述のモデル11の学習に利用してもよい。
【0024】
初めに、第一の説明変数の種類である価格変動情報について説明する。価格変動情報は、上述するように、価格の変動に関する情報である。本実施形態では、価格変動情報を示す説明変数として、価格変動率(価格上昇率/価格下落率)を用いる場合について説明する。価格変動率は、見せ玉注文履歴上の取引の発注から取り消しまでの間で、株価の上昇(下落)がどの程度起こっているか示す情報である。すなわち、本実施形態の価格変動率は、反対売買が対になった取引データにおいて、発注から取り消しまでの期間における価格の変動率を表わす。
【0025】
データ加工部30は、発注直前価格と誘因期間(発注~取消)の最高値/最安値から以下に示す計算式1を用いて価格変動率(価格上昇率/価格下落率)を計算する。ここで、発注直前価格は、見せ玉の発注直前の約定価格を示す。なお、発注直前価格がない場合、発注直後の約定価格(初値/始値)が用いられればよい。また、同一時刻の約定価格が複数ある場合、板更新回数がより多く、約定成立通番のより大きいデータの約定価格が採用されればよい。
【0026】
[計算式1]
売りの場合:
発注直前価格と誘因期間の約定成立の最安値から、価格下落率(最安値/発注直前価格×100)を計算する。
買いの場合:
発注直前価格と誘因期間の約定成立の最高値から、価格上昇率(最高値/発注直前価格×100)を計算する。
【0027】
なお、データ加工部30は、モデル11を学習する精度を向上させるため、算出された価格変動率について標準化してもよい。価格変動率を標準化する方法は任意である。
【0028】
次に、第二の説明変数の種類である誘因期間情報について説明する。誘因期間情報は、上述するように、誘因期間内の約定数に関する情報である。本実施形態では、誘因期間情報を示す説明変数として、誘因期間約定数、誘因期間参加者毎約定数、および、誘因期間最大約定数の3種類の説明変数を用いる場合について説明する。
【0029】
誘因期間約定数は、見せ玉注文履歴上の取引の発注から取り消しまでの間で反対売買を、誰がどの程度行っているかを示す情報であり、約定総件数に着目した情報である。誘因期間参加者毎約定数も、見せ玉注文履歴上の取引の発注から取り消しまでの間で反対売買を誰がどの程度行っているかを示す情報であり、見せ玉注文履歴の発注参加者と同じ参加者による約定総件数に着目した情報である。また、誘因期間最大約定数も、見せ玉注文履歴上の取引の発注から取り消しまでの間で反対売買を誰がどの程度行っているかを示す情報であり、最大約定件数に着目した情報である。なお、この情報では、同じ注文時刻の約定は纏められる。すなわち、本実施形態の誘因期間約定数、誘因期間参加者毎約定数、および、誘因期間最大約定数は、いずれも、反対売買が対になった取引データにおいて、発注から取り消しまでの期間における参加者ごとの約定数を表わす。
【0030】
データ加工部30は、以下に示す計算式2を用いて誘因期間約定数を計算する。
【0031】
[計算式2]
売りの場合:誘因期間の約定成立の買い株数の総数。
買いの場合:誘因期間の約定成立の売り株数の総数。
【0032】
また、データ加工部30は、以下に示す計算式3を用いて誘因期間参加者毎約定数を計算する。
【0033】
[計算式3]
売りの場合:見せ玉発注参加者の誘因期間の約定成立の買い株数の総数。
買いの場合:見せ玉発注参加者の誘因期間の約定成立の売り株数の総数。
【0034】
また、データ加工部30は、以下に示す計算式4を用いて誘因期間最大約定数を計算する。
【0035】
[計算式4]
売りの場合:誘因期間の注文時刻毎の約定成立の買い株数の最大数。
買いの場合:誘因期間の注文時刻毎の約定成立の売り株数の最大数。
【0036】
なお、データ加工部30は、価格変動率と同様、計算された値(因期間約定数、誘因期間参加者毎約定数、および、誘因期間最大約定数)のそれぞれを標準化してもよい。
【0037】
次に、第三の説明変数の種類である属性情報について説明する。属性情報は、上述するように、参加者属性に関する情報である。本実施形態では、属性情報を示す説明変数として、参加者属性、および、反対売買の最大約定の参加者属性の2種類の説明変数を用いる場合について説明する。
【0038】
データ加工部30は、参加者属性が示す参加者の情報(例えば、数値情報等)を、予め定めた規則に基づいてフラグ化する。フラグ化の方法は任意である。データ加工部30は、例えば、ネット取引の参加者に“1”、それ以外の会社関係等の参加者(国内大手企業、国内中小企業、外資大手企業、外資中小企業、属性不明等)に“-1”を設定してもよい。なお、データ加工部30は、不明な内容のデータには“0”を設定してもよい。
【0039】
また、データ加工部30は、反対売買の最大約定の参加者属性について、まず、注文時間、および、参加者コード毎に、板存在時間(発注~取消)の反対売買の株数の総数を計算する。そして、データ加工部30は、所定の条件に合致する参加者を、最大約定の反対売買参加者と決定する。データ加工部30は、例えば、約定株数の総数が最も多い参加者を、最大約定の反対売買参加者と決定してもよい。その後、データ加工部30は、決定した最大約定の反対売買参加者の参加者属性を、上記と同様に、予め定めた規則に基づいてフラグ化する。
【0040】
次に、第四の説明変数の種類である反対売買情報について説明する。反対売買情報は、上述するように、反対売買の期間に関する情報である。本実施形態では、反対売買情報を示す説明変数として、見せ玉反対売買約定期間、約定板存在時間比、反対売買約定期間および約定見せ玉取消時間の4種類の説明変数を用いる場合について説明する。
【0041】
見せ玉反対売買約定時間は、見せ玉注文が発注されてからどの程度時間が経過してから反対売買が約定したかを示す情報である。約定板存在時間比は、見せ玉反対売買約定時間に対する板存在時間の時間比を示す情報である。反対売買約定時間は、反対売買が注文からどの程度の時間で約定したかを示す情報である。約定見せ玉取消時間は、反対売買の約定から見せ玉注文の取り消しまでどの程度時間があったかを示す情報である。これらの情報を計算するに際し、まず、データ加工部30は、過去データから、反対売買が対になったリスト(以下、反対売買リストを抽出する)。
【0042】
まず、見せ玉反対売買約定期間について、データ加工部30は、同一参加者コードの板存在時間(発注~取消)の反対売買リストから、所定の条件に合致する約定成立データを、計算に利用する反対売買として抽出する。データ加工部30は、例えば、約定株数の総数が最も多い約定成立データを、計算に利用する反対売買として抽出してもよい。そして、データ加工部30は、抽出した反対売買について、見せ玉の発注時刻から反対売買の約定時刻までの時間を、見せ玉反対売買約定期間として計算する。
【0043】
次に、約定板存在時間比について、データ加工部30は、同一参加者コードの板存在時間(発注~取消)の反対売買リストから、所定の条件に合致する約定成立データを、計算に利用する反対売買として抽出する。データ加工部30は、例えば、約定株数の総数が最も多い約定成立データを、計算に利用する反対売買として抽出してもよい。そして、データ加工部30は、抽出した反対売買について、「板存在時間÷見せ玉反対売買約定時間」を約定板存在時間比として計算する。
【0044】
次に、反対売買約定期間について、データ加工部30は、同一参加者コードの板存在時間(発注~取消)の反対売買リストから、所定の条件に合致する約定成立データを、計算に利用する反対売買として抽出する。データ加工部30は、例えば、約定株数の総数が最も多い約定成立データを、計算に利用する反対売買として抽出してもよい。そして、データ加工部30は、反対売買の発注時刻から反対売買の約定時刻までの時間を、反対売買約定時間として計算する。
【0045】
次に、約定見せ玉取消時間について、データ加工部30は、同一参加者コードの板存在時間(発注~取消)の反対売買リストから、所定の条件に合致する約定成立データを、計算に利用する反対売買として抽出する。データ加工部30は、例えば、約定株数の総数が最も多い約定成立データを、計算に利用する反対売買として抽出してもよい。そして、データ加工部30は、反対売買の約定時刻から見せ玉の取消時刻までの時間を、約定見せ玉取消時間として計算する。
【0046】
なお、データ加工部30は、価格変動率と同様、計算された上記値(見せ玉反対売買約定期間、約定板存在時間比、反対売買約定期間および約定見せ玉取消時間)のそれぞれを標準化してもよい。
【0047】
以上に示す計算結果に基づいて、データ加工部30は、上述する少なくとも1種類の説明変数に、見せ玉を示すデータか否かを示す情報を目的変数として付与した教師データを生成する。データ加工部30は、生成した教師データを記憶部10に記憶させてもよい。
【0048】
機械学習部40は、生成された教師データを用いてモデル11を学習する。本実施形態では、モデル11の態様として、入力層と出力層とを有するニューラルネットワークを想定する。具体的には、モデル11は、入力層の入力データを、上述する価格変動情報、誘因期間情報、属性情報および反対売買情報の少なくとも一つを含む情報とし、モデル11の出力層の出力データを、取引データが見せ玉を示すデータか否かを示す情報とするニューラルネットワークである。
【0049】
機械学習部40は、上述する入力データおよび出力データを含む教師データの入力を受け付け、受け付けた教師データを用いてモデル11(ニューラルネットワーク)を学習する。本実施形態では、機械学習部40がデータ加工部30によって生成された教師データを用いてモデル11を学習する場合について説明する。ただし、教師データの生成は、データ加工部30によって生成される場合に限定されず、他の装置(図示)が、予め教師データを生成してもよい。
【0050】
また、機械学習部40が、モデル11を学習する方法は任意であり、例えば、ディープラーニングが挙げられる。なお、ディープラーニングは、ニューラルネットワークの学習方法として広く知られているため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0051】
図2は、本実施形態で用いられるモデル11の例を示す説明図である。図2に示す例では、上述する価格変動情報、誘因期間情報、属性情報、および、反対売買情報を入力とし、見せ玉を示すデータか否かを出力とする見せ玉検知のニューラルネットワークN1を示す。ニューラルネットワークN1の各層において計算処理が行われることで、上記説明変数を作成する基礎になったデータが、見せ玉を示すデータか否かを推定することが可能になる。図2に例示するような、過去データから生成された説明変数を入力データとし、見せ玉か否かを出力データとするニューラルネットワークがモデル11として学習されてもよい。
【0052】
ただし、本実施形態で用いられるモデルはニューラルネットワークに限定されず、また、モデルの学習方法も、ディープラーニングに限定されない。また、本実施形態では、機械学習部40がモデル11を学習することから、機械学習部40を実現する装置を、モデル学習装置と言うことができる。
【0053】
判定データ入力部50は、判定対象とする取引データ(以下、判定対象データと記す。)の入力を受け付ける。判定データ入力部50は、例えば、入力インタフェースを介してユーザから判定対象データの入力を受け付けてもよい。また、判定データ入力部50は、通信回線を介して、他のシステム(図示せず)から判定対象データの入力を受け付けてもよい。なお、本実施形態では、判定対象データには、入力データ、または、入力データを生成するために必要な情報が少なくとも含まれているものとする。
【0054】
このとき、判定データ入力部50は、判定対象データから、モデル11に入力する入力データを抽出してもよい。また、判定対象データから加工された説明変数を入力データとして用いる場合、判定データ入力部50は、データ加工部30に対して判定対象データの加工処理を依頼して、モデル11に必要な説明変数を生成させてもよい。これらの処理により、見せ玉度を推定するために必要な入力データが生成される。
【0055】
判定部60は、機械学習部40にて学習されたモデル11に、判定データ入力部50が受け付けた判定対象データを入力データとして入力して、その判定対象データが見せ玉を示すデータか否か判定する。判定部60は、例えば、出力データによる推定結果をそのまま結果として用いてもよい。
【0056】
出力部70は、判定部60による判定の結果を出力する。出力部70が出力する内容は任意であり、例えば、見せ玉を示すデータと判定されたデータそのものを出力してもよいし、見せ玉を示すデータの有無を示す情報を出力してもよい。
【0057】
過去データ入力部20と、データ加工部30と、機械学習部40と、判定データ入力部50と、判定部60と、出力部70とは、プログラム(見せ玉検知プログラム)に従って動作する情報処理装置であるコンピュータのプロセッサ(例えば、CPU(Central Processing Unit )、GPU(Graphics Processing Unit))によって実現される。
【0058】
例えば、プログラムは、記憶部10に記憶され、プロセッサは、そのプログラムを読み込み、プログラムに従って、過去データ入力部20、データ加工部30、機械学習部40、判定データ入力部50、判定部60、および、出力部70として動作してもよい。また、見せ玉検知システム100の機能がSaaS(Software as a Service )形式で提供されてもよい。
【0059】
過去データ入力部20と、データ加工部30と、機械学習部40と、判定データ入力部50と、判定部60と、出力部70とは、それぞれが専用のハードウェアで実現されていてもよい。また、各装置の各構成要素の一部又は全部は、汎用または専用の回路(circuitry )、プロセッサ等やこれらの組合せによって実現されてもよい。これらは、単一のチップによって構成されてもよいし、バスを介して接続される複数のチップによって構成されてもよい。各装置の各構成要素の一部又は全部は、上述した回路等とプログラムとの組合せによって実現されてもよい。
【0060】
また、見せ玉検知システムの各構成要素の一部又は全部が複数の情報処理装置や回路等により実現される場合には、複数の情報処理装置や回路等は、集中配置されてもよいし、分散配置されてもよい。例えば、情報処理装置や回路等は、クライアントサーバシステム、クラウドコンピューティングシステム等、各々が通信ネットワークを介して接続される形態として実現されてもよい。
【0061】
次に、本実施形態の見せ玉検知システムの動作を説明する。図3は、本実施形態の見せ玉検知システム100の動作例を示すフローチャートである。過去データ入力部20は、過去データとそのデータが見せ玉を示すデータか否かを示す情報とを含むデータの入力を受け付ける(ステップS11)。データ加工部30は、過去データを加工して教師データを生成する(ステップS12)。機械学習部40は、生成された教師データを用いてモデルを機械学習する(ステップS13)。
【0062】
その後、判定データ入力部50は、学習されたモデルに判定対象データを入力する(ステップS14)。判定部60は、入力された判定対象データが見せ玉を示すデータか否かを判定する(ステップS15)。そして、出力部70は、判定の結果を出力する(ステップS16)。
【0063】
以上のように、本実施形態では、入力層の入力データを、過去の取引データから得られる情報であって、価格の変動に関する情報である価格変動情報、誘因期間内の約定数に関する情報である誘因期間情報、参加者属性に関する情報である属性情報、および、反対売買の期間に関する情報である反対売買情報の少なくとも一つを含む情報とし、出力層の出力データを取引データが見せ玉を示すデータか否かを示す情報とするニューラルネットワークを用いる。機械学習部40が、上記入力データおよび出力データを含むデータを教師データとして、上記ニューラルネットワークを学習し、判定部60が、上記ニューラルネットワークに、判定対象データを入力データとして入力して、その判定対象データが見せ玉を示すデータか否か判定する。よって、対象とする期間内の取引データから不公正取引における見せ玉を検知できる。
【0064】
次に、本実施形態の見せ玉検知システムの変形例を説明する。上記実施形態では、ニューラルネットワークの出力層が、出力データとして、取引データが見せ玉を示すデータか否かを示す情報を出力する場合について説明した。本実施形態では、ニューラルネットワーク(モデル11)の出力層が、出力データとして、見せ玉度を出力する場合について説明する。なお、見せ玉検知システムの構成は、上記実施形態と同様である。
【0065】
本変形例の機械学習部40は、モデル11として、入力層の入力データを、上述する価格変動情報、誘因期間情報、属性情報および反対売買情報の少なくとも一つを含む情報とし、モデル11の出力層の出力データを、取引データの見せ玉らしさを示す見せ玉度とするニューラルネットワークを学習する。なお、ニューラルネットワークの学習方法は、上記実施形態と同様である。
【0066】
判定部60は、機械学習部40にて学習されたモデル11に、判定データ入力部50が受け付けた判定対象データを入力データとして入力して、出力データである見せ玉度を推定する。そして、判定部60は、推定された見せ玉度に基づいて、判定対象データが見せ玉を示すデータか否か判定する。判定部60は、例えば、予め定めた閾値よりも見せ玉度が大きい判定対象データを、見せ玉を示すデータと判定してもよい。
【0067】
そのような構成によっても、対象とする期間内の取引データから不公正取引における見せ玉を検知できる。本変形例の場合、閾値に応じて見せ玉を示すデータと判定されるデータ量が変化するため、管理者が見せ玉か否かをチェックする対象のデータ量を調整することも可能になる。
【0068】
次に、本発明の概要を説明する。図4は、本発明による見せ玉検知システムの概要を示すブロック図である。本発明による見せ玉検知システム90は、情報処理装置によりニューラルネットワークを実現する見せ玉検知システム(例えば、見せ玉検知システム100)であって、入力層と出力層とを有し、入力層の入力データを、過去の取引データから得られる情報であって、価格の変動に関する情報である価格変動情報、誘因期間内の約定数に関する情報である誘因期間情報、参加者属性に関する情報である属性情報、および、反対売買の期間に関する情報である反対売買情報の少なくとも一つを含む情報とし、出力層の出力データを取引データが見せ玉を示すデータか否かを示す情報とするニューラルネットワーク81(例えば、モデル11)と、入力データおよび出力データを含むデータを教師データとしてニューラルネットワーク81を学習する機械学習手段82(例えば、機械学習部40)と、機械学習手段82にて学習されたニューラルネットワーク81に、判定対象とする取引データである判定対象データを入力データとして入力して、その判定対象データが見せ玉を示すデータか否か判定する判定手段83(例えば、判定部60)と、判定の結果を出力する出力手段84(例えば、出力部70)とを備えている。
【0069】
そのような構成により、対象とする取引データから不公正取引における見せ玉を検知できる。
【0070】
また、ニューラルネットワーク81は、出力層の出力データを取引データの見せ玉らしさを示す見せ玉度としてもよい。そして、判定手段83は、ニューラルネットワーク81に判定対象データを入力データとして入力して、その判定対象データの見せ玉度を推定し、推定された見せ玉度に基づいて判定対象データが見せ玉を示すデータか否か判定してもよい。
【0071】
また、ニューラルネットワーク81は、価格変動情報として、反対売買が対になった取引データにおいて、発注から取り消しまでの期間における価格の変動率を表わす価格変動率(例えば、価格上昇率、価格下落率)を用いてもよい。
【0072】
他にも、ニューラルネットワーク81は、誘因期間情報として、反対売買が対になった取引データにおいて、発注から取り消しまでの期間における参加者ごとの約定数を表わす誘因期間約定数(例えば、誘因期間約定数、誘因期間参加者毎約定数、誘因期間最大約定数)を用いてもよい。
【0073】
他にも、ニューラルネットワーク81は、属性情報として、予め定めた規則に基づいて参加者の情報をフラグ化した参加者属性、および、反対売買の最大約定を得た参加者の情報をフラグ化した参加者属性の少なくとも1つを用いてもよい。
【0074】
また、ニューラルネットワーク81は、反対売買情報として、反対売買が対になった取引データにおいて、発注から取り消しまでの期間を示す見せ玉反対売買約定時間、時間比見せ玉反対売買約定時間に対する板存在時間の時間比を示す約定板存在時間比、注文から反対売買の約定までの期間を示す反対売買約定時間、および、反対売買の約定から見せ玉注文取消までの期間を示す約定見せ玉取消時間の少なくとも1つを用いてもよい。
【0075】
図5は、少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。コンピュータ1000は、プロセッサ1001、主記憶装置1002、補助記憶装置1003、インタフェース1004を備える。
【0076】
上述の見せ玉検知システム、および、モデル生成装置は、コンピュータ1000に実装される。そして、上述した各処理部の動作は、プログラム(例えば、見せ玉検知プログラム)の形式で補助記憶装置1003に記憶されている。プロセッサ1001は、プログラムを補助記憶装置1003から読み出して主記憶装置1002に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。
【0077】
なお、少なくとも1つの実施形態において、補助記憶装置1003は、一時的でない有形の媒体の一例である。一時的でない有形の媒体の他の例としては、インタフェース1004を介して接続される磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM(Compact Disc Read-only memory )、DVD-ROM(Read-only memory)、半導体メモリ等が挙げられる。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ1000に配信される場合、配信を受けたコンピュータ1000が当該プログラムを主記憶装置1002に展開し、上記処理を実行してもよい。
【0078】
また、当該プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、当該プログラムは、前述した機能を補助記憶装置1003に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせで実現するもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0079】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0080】
(付記1)情報処理装置によりニューラルネットワークを実現する見せ玉検知システムであって、
入力層と出力層とを有し、前記入力層の入力データを、過去の取引データから得られる情報であって、価格の変動に関する情報である価格変動情報、誘因期間内の約定数に関する情報である誘因期間情報、参加者属性に関する情報である属性情報、および、反対売買の期間に関する情報である反対売買情報の少なくとも一つを含む情報とし、前記出力層の出力データを前記取引データが見せ玉を示すデータか否かを示す情報とするニューラルネットワークと、
前記入力データおよび前記出力データを含むデータを教師データとして前記ニューラルネットワークを学習する機械学習手段と、
前記機械学習手段にて学習された前記ニューラルネットワークに、判定対象とする取引データである判定対象データを前記入力データとして入力して、当該判定対象データが見せ玉を示すデータか否か判定する判定手段と
前記判定の結果を出力する出力手段とを備えた
ことを特徴とする見せ玉検知システム。
【0081】
(付記2)ニューラルネットワークは、出力層の出力データを取引データの見せ玉らしさを示す見せ玉度とし、
判定手段は、前記ニューラルネットワークに判定対象データを入力データとして入力して、当該判定対象データの前記見せ玉度を推定し、推定された前記見せ玉度に基づいて前記判定対象データが見せ玉を示すデータか否か判定する
付記1記載の見せ玉検知システム。
【0082】
(付記3)ニューラルネットワークは、価格変動情報として、反対売買が対になった取引データにおいて、発注から取り消しまでの期間における価格の変動率を表わす価格変動率を用いる
付記1または付記2記載の見せ玉検知システム。
【0083】
(付記4)ニューラルネットワークは、誘因期間情報として、反対売買が対になった取引データにおいて、発注から取り消しまでの期間における参加者ごとの約定数を表わす誘因期間約定数を用いる
付記1または付記2記載の見せ玉検知システム。
【0084】
(付記5)ニューラルネットワークは、属性情報として、予め定めた規則に基づいて参加者の情報をフラグ化した参加者属性、および、反対売買の最大約定を得た参加者の情報をフラグ化した参加者属性の少なくとも1つを用いる
付記1または付記2記載の見せ玉検知システム。
【0085】
(付記6)ニューラルネットワークは、反対売買情報として、反対売買が対になった取引データにおいて、発注から取り消しまでの期間を示す見せ玉反対売買約定時間、時間比見せ玉反対売買約定時間に対する板存在時間の時間比を示す約定板存在時間比、注文から反対売買の約定までの期間を示す反対売買約定時間、および、反対売買の約定から見せ玉注文取消までの期間を示す約定見せ玉取消時間の少なくとも1つを用いる
付記1または付記2記載の見せ玉検知システム。
【0086】
(付記7)
不公正取引における見せ玉を検知するモデルを学習するモデル学習装置であって、過去に行われた取引を表わすデータである過去データと当該過去データが見せ玉を示すデータか否かを示す情報とを含むデータから生成された、過去の取引データから得られる情報であって、価格の変動に関する情報である価格変動情報、誘因期間内の約定数に関する情報である誘因期間情報、参加者属性に関する情報である属性情報、および、反対売買の期間に関する情報である反対売買情報の少なくとも一つを含む情報を入力データとし、前記取引データが見せ玉を示すデータか否かを示す情報を出力データとして含む教師データの入力を受け付け、前記入力データを入力層とし前記出力データを出力層とするニューラルネットワークを前記教師データを用いて学習する機械学習手段を備えた
ことを特徴とするモデル学習装置。
【0087】
(付記8)情報処理装置によりニューラルネットワークを実現する見せ玉検知方法であって、
前記ニューラルネットワークは、入力層と出力層とを有し、前記入力層の入力データを、過去の取引データから得られる情報であって、価格の変動に関する情報である価格変動情報、誘因期間内の約定数に関する情報である誘因期間情報、参加者属性に関する情報である属性情報、および、反対売買の期間に関する情報である反対売買情報の少なくとも一つを含む情報とし、前記出力層の出力データを前記取引データが見せ玉を示すデータか否かを示す情報とし、
前記入力データおよび前記出力データを含むデータを教師データとして前記ニューラルネットワークを学習し、
学習された前記ニューラルネットワークに、判定対象とする取引データである判定対象データを前記入力データとして入力して、当該判定対象データが見せ玉を示すデータか否か判定し、
前記判定の結果を出力する
ことを特徴とする見せ玉検知方法。
【0088】
(付記9)ニューラルネットワークは、出力層の出力データを取引データの見せ玉らしさを示す見せ玉度とし、
前記ニューラルネットワークに判定対象データを入力データとして入力して、当該判定対象データの前記見せ玉度を推定し、推定された前記見せ玉度に基づいて前記判定対象データが見せ玉を示すデータか否か判定する
付記8記載の見せ玉検知方法。
【0089】
(付記10)ニューラルネットワークを実現するコンピュータに適用される見せ玉検知プログラムであって、
前記ニューラルネットワークは、入力層と出力層とを有し、前記入力層の入力データを、過去の取引データから得られる情報であって、価格の変動に関する情報である価格変動情報、誘因期間内の約定数に関する情報である誘因期間情報、参加者属性に関する情報である属性情報、および、反対売買の期間に関する情報である反対売買情報の少なくとも一つを含む情報とし、前記出力層の出力データを前記取引データが見せ玉を示すデータか否かを示す情報とし、
前記コンピュータに、
前記入力データおよび前記出力データを含むデータを教師データとして前記ニューラルネットワークを学習する機械学習処理、
前記機械学習処理で学習された前記ニューラルネットワークに、判定対象とする取引データである判定対象データを前記入力データとして入力して、当該判定対象データが見せ玉を示すデータか否か判定する判定処理、および、
前記判定の結果を出力する出力処理
を実行させるための見せ玉検知プログラム。
【0090】
(付記11)ニューラルネットワークは、出力層の出力データを取引データの見せ玉らしさを示す見せ玉度とし、
コンピュータに、
判定処理で、前記ニューラルネットワークに判定対象データを入力データとして入力して、当該判定対象データの前記見せ玉度を推定させ、推定された前記見せ玉度に基づいて前記判定対象データが見せ玉を示すデータか否か判定させる
付記9記載の見せ玉検知プログラム。
【0091】
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0092】
10 記憶部
20 過去データ入力部
30 データ加工部
40 機械学習部
50 判定データ入力部
60 判定部
70 出力部
100 見せ玉検知システム
N1 ニューラルネットワーク
図1
図2
図3
図4
図5