(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123319
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 10/08 20060101AFI20240905BHJP
B60K 6/442 20071001ALI20240905BHJP
B60W 10/06 20060101ALI20240905BHJP
B60W 10/26 20060101ALI20240905BHJP
B60W 10/30 20060101ALI20240905BHJP
B60W 20/20 20160101ALI20240905BHJP
B60L 50/61 20190101ALI20240905BHJP
B60L 58/20 20190101ALI20240905BHJP
B60L 58/12 20190101ALI20240905BHJP
B60L 50/16 20190101ALI20240905BHJP
B60L 50/12 20190101ALI20240905BHJP
F02D 29/02 20060101ALI20240905BHJP
F02N 11/04 20060101ALI20240905BHJP
F02N 11/08 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
B60W10/08 900
B60K6/442 ZHV
B60W10/06 900
B60W10/26 900
B60W10/30 900
B60W20/20
B60L50/61
B60L58/20
B60L58/12
B60L50/16
B60L50/12
F02D29/02 321B
F02N11/04 D
F02N11/08 V
F02N11/08 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030626
(22)【出願日】2023-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100183689
【弁理士】
【氏名又は名称】諏訪 華子
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】平田 健敏
【テーマコード(参考)】
3D202
3G093
5H125
【Fターム(参考)】
3D202AA02
3D202BB05
3D202BB12
3D202BB23
3D202BB43
3D202CC35
3D202CC37
3D202CC42
3D202DD13
3D202DD16
3D202DD18
3D202DD26
3D202DD45
3D202FF12
3G093AA07
3G093BA21
3G093CA02
3G093DA01
3G093DA12
3G093EA03
5H125AA01
5H125AC08
5H125AC12
5H125BC25
5H125BC29
5H125BD17
5H125CA02
5H125CA09
5H125EE08
5H125EE27
(57)【要約】
【課題】ハイブリッド車両の制御装置に関し、EV走行領域を拡大する。
【解決手段】開示のハイブリッド車両の制御装置10は、駆動源としてのエンジン1及びモーター2とエンジン1を始動させる際にクランキングする回転電機3とを具備し、走行モードとしてエンジン1が停止した状態でモーター2を使用して走行するEVモードと、少なくともエンジン1を使用して走行するエンジン走行モードと、のいずれか選択されるハイブリッド車両に適用される。この制御装置10は、EVモードと併用可能なEV優先モードを備える。EV優先モードの設定時には、EVモードからエンジン走行モードへの移行条件がEV優先モードの非設定時よりも緩和される。EV優先モードの設定時におけるエンジン1を始動させる際の回転電機3によるエンジン1のクランキング回転数である始動回転数は、EV優先モードの非設定時における始動回転数よりも小さく設定される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源としてのエンジン及びモーターと、前記エンジンを始動させる際に前記エンジンをクランキングする回転電機と、を具備し、走行モードとして前記エンジンが停止した状態で前記モーターを使用して走行するEVモードと、少なくとも前記エンジンを使用して走行するエンジン走行モードと、のいずれかが選択されるハイブリッド車両の制御装置であって、
前記EVモードと併用可能なEV優先モードを備え、前記EV優先モードの設定時には、前記EVモードから前記エンジン走行モードへの移行条件が前記EV優先モードの非設定時よりも緩和され、
前記EV優先モードの設定時における前記エンジンを始動させる際の前記回転電機による前記エンジンのクランキング回転数である始動回転数が、前記EV優先モードの非設定時における前記始動回転数よりも小さく設定される
ことを特徴とする、ハイブリッド車両の制御装置。
【請求項2】
前記エンジン走行モードは、前記エンジン及び前記モーターが併用されるハイブリッドモードを含み、
前記ハイブリッドモードが、前記エンジン及び前記モーターの駆動力を駆動輪へ伝達するパラレルモードと、前記エンジンの駆動力を前記駆動輪以外に伝達し前記モーターの駆動力を前記駆動輪に伝達するシリーズモードとを含み、
前記EV優先モードの設定時において、前記EVモードから前記パラレルモードへ移行する際の前記始動回転数が、前記EVモードから前記シリーズモードへ移行する際の前記始動回転数よりも大きく設定される
ことを特徴とする、請求項1記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項3】
前記エンジンの燃料残量が所定量以下の場合に、前記EV優先モードの設定時における前記始動回転数が、前記EV優先モードの非設定時における前記始動回転数と同一値に設定される
ことを特徴とする、請求項1記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項4】
前記エンジンの停止時間が所定時間以上の場合に、前記EV優先モードの非設定時における前記始動回転数が、前記EV優先モードの設定時における前記始動回転数と同一値に設定される
ことを特徴とする、請求項1記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項5】
前記回転電機が、前記シリーズモードにおいて前記エンジンによって回転駆動されて発電するものであり、
前記ハイブリッド車両が、前記モーター及び前記回転電機に電力を供給する高電圧バッテリーと、前記回転電機及び補機に電力を供給する補機バッテリーとを備え、
前記補機バッテリーの充電率が所定充電率未満の場合に、前記高電圧バッテリーから前記回転電機に電力を供給して前記エンジンを始動させ、
前記補機バッテリーの充電率が前記所定充電率以上の場合に、前記補機バッテリーから前記回転電機に電力を供給して前記エンジンを始動させる
ことを特徴とする、請求項2記載のハイブリッド車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、ハイブリッド車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、駆動源としてのモーター及びエンジンを具備するハイブリッド車両において、モーターのみを使用して走行するEVモードとモーター及びエンジンを併用して走行するハイブリッドモードとが自動的に選択されるものが知られている。この種のハイブリッド車両では、EVモードが選択される運転領域を拡大するための各種制御が提案されている。例えば、モーター駆動用の高電圧バッテリーとは別個にエンジン始動用の低電圧バッテリーを設け、エンジン始動に係る電力負荷を軽減する技術が提案されている。このような手法により、高電圧バッテリーにエンジン始動用の電力を確保しておく必要がなくなり、高電圧バッテリーによるモーターの最大出力を増大させて、EVモードの運転領域を拡大することができる(特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-107539号公報
【特許文献1】特開2014-015133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エンジンを始動させるために要する始動回転数の大きさは必ずしも一定ではなく、クランキングの実施時間に応じて変化する。例えば、短時間で迅速にエンジンを始動させたい場合には、比較的大きな始動回転数でエンジンをクランキングすることが求められる。反対に、時間をかけてゆっくりとエンジンを始動させてもよい場合には、比較的小さな始動回転数でエンジンをクランキングしても問題がない。既存の技術ではこのような始動回転数の特性が充分に考慮されていないため、実際に必要な電力よりも大きなエンジン始動用の電力が確保されている場合があり、EVモードの運転領域を拡大する上で改善の余地がある。
【0005】
本件の目的の一つは、上記のような課題に照らして創案されたものであり、EV走行領域を拡大できるようにしたハイブリッド車両の制御装置を提供することである。なお、この目的に限らず、後述する「発明を実施するための形態」に示す各構成から導き出される作用効果であって、従来の技術では得られない作用効果を奏することも、本件の他の目的として位置付けられる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示のハイブリッド車両の制御装置は、以下に開示する態様(適用例)として実現でき、上記の課題の少なくとも一部を解決する。態様2以降の各態様は、何れもが付加的に適宜選択されうる態様であって、何れもが省略可能な態様である。態様2以降の各態様は、何れもが本件にとって必要不可欠な態様や構成を開示するものではない。
【0007】
態様1.開示のハイブリッド車両の制御装置は、駆動源としてのエンジン及びモーターと、前記エンジンを始動させる際に前記エンジンをクランキングする回転電機と、を具備し、走行モードとして前記エンジンが停止した状態で前記モーターを使用して走行するEVモードと、少なくとも前記エンジンを使用して走行するエンジン走行モードと、のいずれかが選択されるハイブリッド車両の制御装置である。この制御装置は、前記EVモードと併用可能なEV優先モードを備える。前記EV優先モードの設定時には、前記EVモードから前記エンジン走行モードへの移行条件が前記EV優先モードの非設定時よりも緩和される。また、前記EV優先モードの設定時における前記エンジンを始動させる際の前記回転電機による前記エンジンのクランキング回転数である始動回転数が、前記EV優先モードの非設定時における前記始動回転数よりも小さく設定される。
【0008】
態様2.上記の態様1において、前記エンジン走行モードは、前記エンジン及び前記モーターが併用されるハイブリッドモードを含むことが好ましい。また、前記ハイブリッドモードが、前記エンジン及び前記モーターの駆動力を駆動輪へ伝達するパラレルモードと、前記エンジンの駆動力を前記駆動輪以外に伝達し前記モーターの駆動力を前記駆動輪に伝達するシリーズモードとを含むことが好ましい。また、前記EV優先モードの設定時において、前記EVモードから前記パラレルモードへ移行する際の前記始動回転数が、前記EVモードから前記シリーズモードへ移行する際の前記始動回転数よりも大きく設定されることが好ましい。
【0009】
態様3.上記の態様1又は2において、前記エンジンの燃料残量が所定量以下の場合に、前記EV優先モードの設定時における前記始動回転数が、前記EV優先モードの非設定時における前記始動回転数と同一値に設定されることが好ましい。
態様4.上記の態様1~3の何れかにおいて、前記エンジンの停止時間が所定時間以上の場合に、前記EV優先モードの非設定時における前記始動回転数が、前記EV優先モードの設定時における前記始動回転数と同一値に設定されることが好ましい。
【0010】
態様5.少なくとも上記の態様2を含む態様において、前記回転電機が、前記シリーズモードにおいて前記エンジンによって回転駆動されて発電するものであり、前記ハイブリッド車両が、前記モーター及び前記回転電機に電力を供給する高電圧バッテリーと、前記回転電機及び補機に電力を供給する補機バッテリーとを備えることが好ましい。また、前記補機バッテリーの充電率が所定充電率未満の場合に、前記高電圧バッテリーから前記回転電機に電力を供給して前記エンジンを始動させ、前記補機バッテリーの充電率が前記所定充電率以上の場合に、前記補機バッテリーから前記回転電機に電力を供給して前記エンジンを始動させることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
開示のハイブリッド車両の制御装置によれば、EV優先モードの設定時におけるエンジンの始動回転数を通常時(EV優先モードの非設定時)よりも小さくすることで、エンジン始動に係る消費電力を削減できる。したがって、EVモード時に確保されるエンジン始動用の電力を小さくすることができ、EV走行領域を拡大することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】ハイブリッド車両の構成を示すブロック図である。
【
図3】エンジン始動時のエンジン回転数(始動回転数)の変化を示すグラフである。(A)はEV優先モードの非設定時(オフ)のグラフ、(B)はEV優先モードの設定時(オン)であってEVモードからパラレルモードへの移行時のグラフ、(C)はEV優先モードの設定時(オン)であってEVモードからシリーズモードへの移行時のグラフである。
【
図4】始動回転数の調整に係るフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
開示の制御装置は、以下の実施例に記載のハイブリッド車両(ハイブリッド電気自動車,HEV,Hybrid Electric Vehicle)に適用される。ここでいうハイブリッド車両は、駆動源としてのエンジン及びモーターとエンジンを始動させる際にクランキングする回転電機とを具備する。このハイブリッド車両では、走行モード(車両の走行に係る駆動力の伝達経路及び使用する駆動力の組み合わせについての制御様式)として、エンジンが停止した状態でモーターを使用して走行するEVモードと、少なくともエンジンを使用して走行するエンジン走行モードとが選択される。EVモード及びエンジン走行モードは、互いに排他的に設定,選択(自動選択又は手動選択)される。エンジン走行モードには、ハイブリッドモードが含まれる。ハイブリッドモードは、エンジン及びモーターが併用される走行モードである。なお、エンジン走行モードはエンジンのみが使用されるエンジンモードを含んでもよい。
【実施例0014】
[1.装置構成]
図1は、実施例としてのハイブリッド車両の構成を例示するブロック図である。このハイブリッド車両は、駆動源としてのエンジン1及びモーター2とエンジン1の駆動軸に接続されるジェネレーター3と高電圧バッテリー4とクラッチ5と昇圧器6と補機バッテリー7とを備える。本実施例のハイブリッド車両は、高電圧バッテリー4に対する外部充電又は高電圧バッテリー4からの外部給電が可能なプラグインハイブリッド車両(プラグインハイブリッド電気自動車,PHEV,Plug-in Hybrid Electric Vehicle)である。このハイブリッド車両には、外部充電設備からの電力が送給される充電ケーブルを差し込むための充電口(インレット)や、外部給電用のコンセント(アウトレット)が設けられる。
【0015】
高電圧バッテリー4は比較的高電圧の二次電池であり、モーター2及びジェネレーター3に対して電気的に接続される。補機バッテリー7は比較的(高電圧バッテリー4に比べ)低電圧の二次電池であり、補機(例えば、冷却装置,燃料供給装置,点火装置,空調装置,照明装置,車載電装品等)に接続されるとともに、昇圧器6を介してモーター2及びジェネレーター3に対して電気的に接続される。高電圧バッテリー4は、少なくともモーター2及びジェネレーター3に電力を供給できるものであればよく、補機バッテリー7は、少なくともジェネレーター3及び補機に電力を供給できるものであればよい。高電圧バッテリー4は、例えばリチウムイオン二次電池,ニッケル水素電池等であり、補機バッテリー7は、例えばリチウムイオン二次電池,ニッケル水素電池,鉛蓄電池等である。
【0016】
エンジン1は、例えばガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの内燃機関である。ジェネレーター3は、エンジン1を始動させる際にクランキングする回転電機としての機能と、始動後のエンジン1によって駆動されて発電する発電機としての機能とを併せ持つ電動機兼発電機である。ジェネレーター3の発電電力は、モーター2の駆動や高電圧バッテリー4及び補機バッテリー7の充電に用いられる。エンジン1とジェネレーター3とを繋ぐ動力伝達経路上には、図示しない変速機構が介装されうる。
【0017】
モーター2は、高電圧バッテリー4及び補機バッテリー7の電力やジェネレーター3の発電電力を用いてハイブリッド車両を走行させる機能と、回生発電により高電圧バッテリー4及び補機バッテリー7に充電する機能とを兼ね備えた電動機兼発電機である。モーター2の駆動軸は、ハイブリッド車両の駆動輪に連結される。モーター2と駆動輪とを繋ぐ動力伝達経路上には、図示しない変速機構が介装されうる。
【0018】
エンジン1とモーター2とを繋ぐ動力伝達経路上には、クラッチ5が介装される。エンジン1はクラッチ5を介して駆動輪に接続され、モーター2はクラッチ5よりも駆動輪側に配置される。また、ジェネレーター3はクラッチ5よりもエンジン1側に接続される。クラッチ5が切断(解放)されると、エンジン1及びジェネレーター3が駆動輪に対して非接続の状態となり、モーター2が駆動輪に対して接続された状態となる。一方、クラッチ5が接続(締結)されると、エンジン1,モーター2,ジェネレーター3の三者が駆動輪に対して接続された状態となる。
【0019】
昇圧器6は、モーター2とジェネレーター3と高電圧バッテリー4とを接続する高電圧回路と補機バッテリー7側の低電圧回路との間で電圧を変換するDC-DCコンバーターである。低電圧回路には、ハイブリッド車両に搭載される各種電装品が接続されている。昇圧器6は、例えば補機バッテリー7に蓄えられている電力を昇圧させてモーター2や高電圧バッテリー4に供給することができ、モーター2やジェネレーター3で発電された電力を降圧させて補機バッテリー7や各種電装品に供給することもできる。
【0020】
[2.制御構成]
本実施例のハイブリッド車両における駆動系装置(エンジン1,モーター2,ジェネレーター3,高電圧バッテリー4,クラッチ5)の各々の作動状態は、制御装置10によって制御される。制御装置10は、ハイブリッド車両の走行状態に応じて駆動系装置の作動状態を制御するためのコンピュータ(電子制御装置,ECU,Electronic Control Unit)である。制御装置10は、プロセッサ(演算処理装置)及びメモリ(記憶装置)を内蔵する。制御装置10が実施する制御の内容(制御プログラム)はメモリに保存され、その内容がプロセッサに適宜読み込まれることによって実行される。
【0021】
制御装置10には、EV優先モードスイッチ11や燃料センサー12が接続されるとともに、図示しない車速センサー,アクセル開度センサー,ブレーキ液圧センサー等が接続される。また、高電圧バッテリー4及び補機バッテリー7の各々について、図示しないバッテリー電圧センサー,バッテリー電流センサー,バッテリー温度センサー等が接続される。EV優先モードスイッチ11は、EV優先モードの設定状態(オン,オフ)を切り替えるためのスイッチであり、運転者や乗員によって操作される。また、燃料センサー12は、エンジン1の燃料残量(燃料タンク内に存在する燃料量)を検出するセンサーであり、エンジン1の燃料が貯留される燃料タンクに付設される。
【0022】
EV優先モードとは「EVモードとハイブリッドモードとの切り替え条件」についての制御様式を意味する。EV優先モードを切り替えることで、走行モードをEVモードからハイブリッドモードへと切り替えるための条件や、走行モードをハイブリッドモードからEVモードへと切り替えるための条件が変更される。制御装置10は、各種センサー及び各種セレクターから入力される情報に基づいて駆動系装置の作動状態を制御する。
【0023】
図2は、本実施例のハイブリッド車両における各種モードの一覧表である。このハイブリッド車両には、三種類の走行モードと、オン又はオフの二状態を有するEV優先モードと、同じくオン又はオフの二状態を有するメンテナンスモードとが設けられる。
走行モードには、EVモードとハイブリッドモードとが含まれ、ハイブリッドモードには、シリーズモードとパラレルモードとが含まれる。EVモードは、モーター2のみが使用される走行モードであり、ハイブリッドモードは、エンジン1及びモーター2が併用される走行モードである。EVモードでは、エンジン1及びジェネレーター3が停止したままモーター2のみの駆動力でハイブリッド車両が走行する。
【0024】
ハイブリッドモードのうちシリーズモードでは、クラッチ5が切断された状態でエンジン1が作動し、ジェネレーター3が発電した状態で、モーター2の駆動力が駆動輪に伝達されてハイブリッド車両が走行する。また、ハイブリッドモードのうちパラレルモードは、クラッチ5が接続された状態でエンジン1及びモーター2が作動し、エンジン1及びモーター2の駆動力が駆動輪に伝達されてハイブリッド車両が走行する。このとき、ジェネレーター3は停止させたままにしてもよいし、ジェネレーター3に発電させてもよい。
【0025】
これらの三種類の走行モードのうち何れか一つが、所定の条件〔例えば車速,高電圧バッテリー4のSOC(State of Charge,充電率),高電圧バッテリー4のバッテリー温度,アクセル開度,アクセル開度の変化速度等〕に従って自動的に選択されて設定される。EVモードは、例えば高電圧バッテリー4のSOCがある程度確保されている状態において、車速が比較的低速である場合に選択される。一方、例えば高電圧バッテリー4のSOCが低下した場合や車速がやや上昇した場合にはシリーズモードが選択され、エンジン1及びジェネレーター3による発電が実施される。また、エンジン1の燃費や効率が良好となる高速走行時にはパラレルモードが選択され、エンジン出力を主体とした走行(モーター出力が副次的に使用されるモーターアシスト走行)が実施される。
【0026】
EV優先モードは、EV優先モードスイッチ11の操作状態に応じて設定されるモードである。EV優先モードの設定時(EV優先モードスイッチ11がオンのとき)には、EV優先モードの非設定時(EV優先モードスイッチ11がオフのとき)と比較してEV走行モードの運転領域が拡大される。言い換えれば、EV優先モードの設定時には、EV優先モードの非設定時と比較してエンジン1が始動しにくくなっている。したがって、モーター2の作動時かつエンジン1の非作動時にエンジン1を始動させるための条件(エンジン始動条件)に着目すれば、EV優先モード設定時のエンジン始動条件は、EV優先モード非設定時のエンジン始動条件よりも厳しくなっている。
【0027】
なお、具体的なエンジン始動条件としては、公知の各種条件を適用可能である。例えば、電池の充放電可能出力,SOC,電池電圧,電池温度,ドライバー要求トルク,車速,アクセル開度等のパラメーターに基づいて、エンジン1を始動させるべきか否かが判定される。この判定に係る閾値について、EV優先モードの設定時の閾値は、EV優先モードの非設定時の閾値と比較して、厳しい値(エンジン始動条件が成立しにくい値)となっている。
【0028】
メンテナンスモードは、エンジン1の停止時間に応じて自動的に設定されるモードであり、例えばエンジン1が最後に作動を停止したときからの経過時間が所定の燃料劣化期間(例えば、数百時間~数ヶ月程度)以上である場合にオンになるモードである。ここで判定される経過時間は、例えばエンジン1の作動や給油を検知したときにリセット(又は短縮)されるようになっている。
【0029】
メンテナンスモードの作動時(メンテナンスモードがオンであるとき)には、エンジン1が自動的に強制始動され、古い燃料の消費が促進される。このとき、高電圧バッテリー4への充電が可能であれば、ジェネレーター3による発電が併せて実施される。このような制御は、例えばメンテナンスモードの実施時間や燃料残量等に基づく終了条件(メンテナンスモードをオフにするための条件)が成立した場合に終了する。
【0030】
[3.エンジンの始動制御]
制御装置10は、走行モードがEVモードからエンジン走行モード〔具体的にはハイブリッドモード(パラレルモード,シリーズモード)〕へと移行する際に、EV優先モードの状態(オン,オフ)に応じてエンジン1の始動回転数を設定する機能を持つ。EV優先モードがオフである場合(すなわち、EV優先モードの非設定時)には、
図3(A)に示すように、エンジン1の始動回転数(ジェネレーター3によるクランキングの回転数)が第一回転数N
1に設定される。この設定は、移行先となる走行モードがシリーズモードである場合にもパラレルモードである場合にも適用される。第一回転数N
1でのクランキングによる予想始動時間(エンジン1が完爆するまでの予想時間)は第一時間T
1である。本実施形態では、エンジン1が所定の始動完了回転数N
0を超えると「完爆した」と判断する。
【0031】
EV優先モードがオンである場合(すなわち、EV優先モードの設定時)には、少なくともEV優先モードがオフである場合と比較して、エンジン1の始動回転数が小さく設定される。この場合、始動時間はEV優先モードがオフである場合よりも長くなる。一方、ジェネレーター3によるクランキングの回転数が小さくなるため、ジェネレーター3での電力消費が省電力化される。したがって、EVモード時に確保しておくべきエンジン始動用の電力が小さくなり、EV走行領域が拡大される。
【0032】
本実施例の制御装置10は、EV優先モードがオンである場合に、移行先となる走行モードの種類に応じてエンジン1の始動回転数を設定する機能を持つ。移行先となる走行モードがパラレルモードである場合には、
図3(B)に示すように、エンジン1の始動回転数が第一回転数N
1よりもやや小さい第二回転数N
2に設定される(N
2<N
1)。第二回転数N
2でのクランキングによる予想始動時間は第二時間T
2である(T
1<T
2)。
【0033】
一方、移行先となる走行モードがシリーズモードである場合には、
図3(C)に示すように、エンジン1の始動回転数が第二回転数N
2よりもさらに小さい第三回転数N
3に設定される(N
3<N
2)。第三回転数N
3でのクランキングによる予想始動時間は第三時間T
3である(T
2<T
3)。このように、パラレルモードへの移行時における始動回転数をシリーズモードへの移行時における始動回転数よりも大きくすることで、パラレルモードへの移行時におけるエンジン1の予想始動時間がシリーズモードへの移行時よりも短くなる。
【0034】
制御装置10は、原則的にはEV優先モードの状態に応じてエンジン1の始動回転数を設定する。しかし、以下の条件が成立する場合には例外的に、EV優先モードの状態によらずにエンジン1の始動回転数を設定する。
・条件1.エンジン1の燃料残量が所定量以下の場合
・条件2.エンジン1の停止時間が所定時間以上の場合(燃料劣化が懸念される場合)
【0035】
条件1が成立する場合、EV優先モードがオンであっても、制御装置10はEV優先モードの設定時におけるエンジン1の始動回転数をEV優先モードがオフである場合(EV優先モードの非設定時)と同一値に設定する。つまり、エンジン1の始動回転数を小さくすることによってエンジン1の始動時間が長引き、エンジン1の燃料が不足しやすくなる可能性があるため、エンジン1の始動回転数を減少させる制御を行わないようになっている。なお、
図3(A)~(C)の各々におけるトータルの燃料消費量をF
1,F
2,F
3とおけば、これらの大小関係は典型的には「F
1≦F
2≦F
3」となる。エンジン1の始動時は、クランキングしながら燃料噴射を行うため、クランキング時間が短いほどエンジン1の始動時の燃料消費量が小さくなる。
【0036】
条件2が成立する場合、EV優先モードがオフであっても、制御装置10はEV優先モードの非設定時におけるエンジン1の始動回転数をEV優先モードがオンである場合(EV優先モードの設定時)と同一値に設定する。つまり、劣化が懸念される燃料を積極的に消費することで、メンテナンスモードに入りにくくするとともに、万が一、その後にメンテナンスモードに入った場合であっても、メンテナンスモードが比較的短時間で終わるようにしている。なお、条件2中の所定時間は、燃料劣化が懸念される放置時間(メンテナンスモードに入る可能性が高まりつつある状態に対応する時間)であって、燃料劣化期間より短い時間、例えば数十時間~数週間程度の時間である。
【0037】
また、制御装置10は、エンジン1を始動させるための電源として、高電圧バッテリー4と補機バッテリー7とを使い分ける制御を実施する。制御装置10は、補機バッテリー7のSOCが所定充電率未満である場合に、高電圧バッテリー4の電力を用いてエンジン1を始動させる。この場合、高電圧バッテリー4からジェネレーター3に電力が供給されて、ジェネレーター3が回転駆動される。
【0038】
一方、制御装置10は、補機バッテリー7のSOCが所定充電率以上である場合に、補機バッテリー7の電力を用いてエンジン1を始動させる。この場合、補機バッテリー7の電力が昇圧器6で昇圧されてジェネレーター3に供給され、ジェネレーター3が回転駆動される。このように、補機バッテリー7の電力を利用することで、高電圧バッテリー4の電力を消費することなくエンジン1を始動させることが可能となる。つまり、EVモード時に確保しておくべき高電圧バッテリー4の電力が小さくなり、EV走行領域が拡大される。
【0039】
[4.フローチャート]
図4は、EVモード中にエンジン始動条件が成立した場合(エンジン始動要求が発生した場合)に、エンジン1の始動回転数を設定するためのフローチャートである。ステップA1では、エンジン1の燃料残量が所定量以下であるか否かが判定される。この条件が成立する場合には、ステップA10に進み、高電圧バッテリー4を使用してジェネレーター3を駆動することが決定され、ステップA11に進む。ステップA11では、始動回転数が通常の始動回転数(第一回転数N
1)に設定されてエンジン1のクランキングが実施される。クランキングによる予想始動時間は第一時間T
1である。
【0040】
このように、エンジン1の燃料残量が少ない場合には、EV優先モードの状態を判定するためのステップA3がスキップされ、通常の始動回転数(第一回転数N1)でエンジン1を始動することが決定される。これにより、エンジン1が比較的短時間で始動しやすくなり、トータルの燃料消費量が減少しやすくなる。一方、ステップA1の条件が成立しない場合には、ステップA2に進む。
【0041】
ステップA2では、エンジン1の停止時間が所定時間以上であるか否かが判定される。ステップA2の条件が成立する場合には、ステップA4に進む。ステップA4以降では、後述するように、少なくともエンジン1の始動回転数が第一回転数N1よりも小さく設定されてエンジン1のクランキングが実施される。つまり、エンジン1が長時間作動しておらず燃料劣化が懸念される場合には、EV優先モードの状態を判定するためのステップA3がスキップされ、エンジン1の始動回転数を通常の始動回転数(第一回転数N1)よりも小さくすることが決定される。これにより、劣化しそうな燃料の消費が促進される。ステップA2の条件が成立しない場合には、ステップA3に進む。
【0042】
ステップA3では、EV優先モードがオンである(EV優先モードが設定されている)か否かが判定される。この条件が成立する場合にはステップA4に進み、成立しない場合にはステップA10に進む。つまり、EV優先モードがオンであれば、エンジン1の始動回転数を通常の始動回転数(第一回転数N1)よりも小さくすることが決定され、EV優先モードがオフであれば、通常の始動回転数(第一回転数N1)でエンジン1を始動することが決定される。
【0043】
ステップA4では、補機バッテリー7のSOCが所定充電率以上であるか否かが判定される。この条件が成立する場合にはステップA5に進み、補機バッテリー7を使用してジェネレーター3を駆動することが決定され、ステップA7に進む。一方、ステップA4の条件が不成立の場合にはステップA6に進み、高電圧バッテリー4を使用してジェネレーター3を駆動することが決定され、ステップA7に進む。このような制御により、補機バッテリー7に蓄えられている電力の利用が促進され、高電圧バッテリー4の電力が温存されやすくなる。
【0044】
ステップA7では、移行先となる走行モードがパラレルモードであるか否かが判定される。この条件が成立する場合(パラレルモードへの移行時)には、ステップA8に進み、始動回転数が第一回転数N1よりもやや小さい第二回転数N2に設定されてエンジン1のクランキングが実施される。これにより、クランキングによる予想始動時間は、第一時間T1よりもやや長い第二時間T2となる。
【0045】
ステップA7の条件が不成立の場合(シリーズモードへの移行時)には、ステップA9に進む。ステップA9では、始動回転数が第二回転数N2よりも小さい第三回転数N3に設定されてエンジン1のクランキングが実施される。これにより、クランキングによる予想始動時間は、第二時間T2よりも長い第三時間T3となる。
【0046】
なお、補機バッテリー7を使用してジェネレーター3を駆動することが決定された場合に、ステップA8とステップA9とで昇圧器6による昇圧幅(ジェネレーター3に供給される電圧)を相違させてもよい。例えば、パラレルモードへの移行時(ステップA8)における昇圧幅を、シリーズモードへの移行時(ステップA9)における昇圧幅よりも大きくしてもよい。このように、ステップA8でのジェネレーター3への供給電圧をステップA9でのジェネレーター3への供給電圧よりも高くすることで、ジェネレーター3からエンジン1に与えられるクランキングトルクが増大し、エンジン1の始動時間が短縮されうる。
【0047】
ただし、補機バッテリー7のバッテリー容量は高電圧バッテリー4と比較して小さいため、昇圧器6による昇圧幅を増大させて電力消費量を増加させることで補機バッテリー7のSOCが低下しやすくなってしまう。そこで、補機バッテリー7のSOCを適度に維持することを考慮して、ステップA8とステップA9とで昇圧器6による昇圧幅を同一にしてもよいし、エンジン1を始動させうる適度なクランキングトルクが得られるように、昇圧器6による昇圧幅を調節してもよい。
【0048】
[5.効果]
(1)本実施例の制御装置10は、駆動源としてのエンジン1及びモーター2とエンジン1を始動させる際にクランキングするジェネレーター3(回転電機)とを具備し、走行モードとしてEVモード(エンジン1が停止した状態でモーター2を使用して走行する走行モード)とエンジン走行モード(少なくともエンジン1を使用して走行する走行モード)とのいずれかが選択されるハイブリッド車両に適用される。
【0049】
この制御装置10は、EVモードと併用可能なEV優先モードを備える。EV優先モードの設定時(オンであるとき)には、EVモードからエンジン走行モードへの移行条件がEV優先モードの非設定時(オフであるとき)よりも緩和される。また、
図3(A)~(C)に示すように、EV優先モードの設定時におけるジェネレーター3によるエンジン1の始動回転数(第二回転数N
2,第三回転数N
3)は、EV優先モードの非設定時におけるエンジン1の始動回転数(第一回転数N
1)よりも小さく設定される。
【0050】
このような構成により、EV優先モードがオンであるときのエンジン始動に係る消費電力を削減できる。したがって、EVモード時に確保されるエンジン始動用の電力を小さくすることができ、EV走行領域を拡大することができる。なお、上記の制御によれば、消費電力が削減される代わりにエンジン1の始動時間が延長されることになる。一方、EV優先モードをオフにすることで、消費電力の削減効果の代わりにエンジン始動時間の短縮効果を得ることができる。したがって、本実施例の制御装置10によれば、トレードオフの関係にある消費電力とエンジン始動時間とをバランスよく両立させて、総合的なドライブフィーリングを向上させることができる。
【0051】
(2)上記の実施例におけるエンジン走行モードには、エンジン1及びモーター2が併用されるハイブリッドモードが含まれる。ハイブリッドモードには、エンジン1及びモーター2の駆動力を駆動輪へ伝達するパラレルモードと、エンジン1の駆動力を駆動輪以外に伝達しモーター2の駆動力を駆動輪に伝達するシリーズモードとが含まれる。また、
図3(A)~(C)に示すように、EV優先モードの設定時において、EVモードからパラレルモードへ移行する際のエンジン1の始動回転数(第二回転数N
2)は、EVモードからシリーズモードへ移行する際のエンジン1の始動回転数(第三回転数N
3)よりも大きく設定される。
【0052】
このような構成により、EVモードからパラレルモードへの移行時におけるエンジン始動時間(第二時間T2)を、EVモードからシリーズモードへの移行時におけるエンジン始動時間(第三時間T3)よりも短縮することができる。これにより、例えばパラレルモードでエンジン始動後に実施されるクラッチ5の接続動作を早期に開始することができ、EVモードでのEV走行領域を拡大しつつ、パラレルモードでの走行性能を向上させることができる。また、エンジン1の駆動力が駆動輪に伝達される状態になるまでの時間が短縮されるため、アクセルペダルの強い踏み込みによってEVモードがパラレルモードへと移行した場合の加速レスポンスを改善できる。したがって、ドライブフィーリングを向上させることができる。
【0053】
(3)上記の実施例においてエンジン1の燃料残量が所定量以下の場合には、EV優先モードの設定によらずエンジン1の始動回転数がEV優先モードの非設定時におけるエンジン1の始動回転数(第一回転数N1)と同一値に設定される。このような制御により、エンジン1の始動回転数を低下させた場合と比較して始動時間を短縮することができ、トータルの燃料消費量を減少させることができる。したがって、燃料不足によるエンストの発生を防止することができる。なお、EV優先モードの設定時にエンジン1の燃料残量が所定量以下の場合に、EV優先モードの設定時にエンジン1の燃料残量が所定量を超える場合に比べエンジン1の始動回転数を上昇させるのであれば、第一回転数N1とする必要はないが、第一回転数N1とすることでその効果をより高めることができる。
【0054】
(4)上記の実施例においてエンジン1の停止時間が所定時間以上の場合には、EV優先モードの設定によらず、エンジン1の始動回転数がEV優先モードの設定時におけるエンジン1の始動回転数(第一回転数N1,第二回転数N2)と同一値に設定される。このような制御により、劣化しそうな燃料を積極的に消費することができ、エンジン1や燃料系部品(燃料タンク,燃料配管,燃料フィルター,燃料ポンプ等)の故障及び劣化を防止することができる。また、劣化しそうな燃料を削減することで、メンテナンスモードに入りにくくすることができ、仮にメンテナンスモードに入った場合であってもその実施時間を短縮することができる。なお、EV優先モードの非設定時にエンジン1の停止時間が所定時間以上の場合に、EV優先モードの非設定時にエンジン1の停止時間が所定時間未満の場合に比べエンジン1の始動回転数を低下させるのであれば、第一回転数N1,第二回転数N2とする必要はないが、第一回転数N1,第二回転数N2とすることでその効果をより高めることができる。
【0055】
(5)上記のジェネレーター3(回転電機)は、シリーズモードにおいてエンジン1によって回転駆動されて発電する機能を持つ。また、上記のハイブリッド車両は、モーター2及びジェネレーター3に電力を供給する高電圧バッテリー4と、ジェネレーター3及び補機に電力を供給する補機バッテリー7とを備える。また、上記の制御装置10は、補機バッテリー7の充電率が所定充電率未満の場合に、高電圧バッテリー4からジェネレーター3に電力を供給してエンジン1を始動させる。一方、補機バッテリー7の充電率が所定充電率以上の場合には、高電圧バッテリー4に代えて補機バッテリー7からジェネレーター3に電力を供給してエンジン1を始動させる。
【0056】
このように、補機バッテリー7の電力に余力がある状況では補機バッテリー7を使用してエンジン1を始動させることで、高電圧バッテリー4の電力を温存しておくことができ、EV走行領域を拡大することができる。また、補機バッテリー7を使用してエンジン1を始動させる際には、通常の始動回転数(第一回転数N1)よりも小さい始動回転数(第二回転数N2,第三回転数N3)でエンジン1がクランキングされるため、補機バッテリー7の電力消費を抑制することができ、補機バッテリー7のSOCを低下しにくくすることができる。
【0057】
[6.その他]
上記の実施例はあくまでも例示に過ぎず、本実施例で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施例の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。また、本実施例の各構成は必要に応じて取捨選択でき、あるいは、適宜組み合わせることができる。
【0058】
上記の実施例では、ジェネレーター3でエンジン1をクランキングして始動させる装置構成を例示したが、ジェネレーター3の代わりにスターターモーターを使用してもよい。ハイブリッド車両には、少なくとも、エンジン1を始動させる際にクランキングする回転電機が設けられていればよい。このようなハイブリッド車両において、EV優先モードの設定時におけるエンジン1の始動回転数をEV優先モードの非設定時における始動回転数よりも小さく設定することで、上述の実施例と同様の作用効果を獲得できる。