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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123323
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】金型及び打ち抜き方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 28/24 20060101AFI20240905BHJP
【FI】
B21D28/24 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030631
(22)【出願日】2023-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142022
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 一晃
(74)【代理人】
【識別番号】100196623
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 計介
(72)【発明者】
【氏名】本田 武
(72)【発明者】
【氏名】永野 義人
【テーマコード(参考)】
4E048
【Fターム(参考)】
4E048JA03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】加工対象ごとに打ち抜く位置を変更可能であり、且つ、コンパクトな構成の金型を提供する。
【解決手段】金型は、ダイと、軸線に沿って移動するパンチとによって、加工対象に打ち抜き加工をするための金型である。金型は、軸線を中心として回転可能な回転部と、軸線が延びる方向である軸線方向から見て、回転部とダイとの間で、軸線を囲んで環状に並ぶ複数のパンチと、回転部を、軸線を中心として回転させる回転駆動部と、軸線方向に移動することにより回転部を軸線方向に移動させる軸方向移動部と、を有する。回転部は、パンチ側の端面上の一部に第1逃し部を有する。第1逃し部は、パンチの回転部側の一部を収容可能な形状を有する窪みである。回転駆動部は、回転部を、軸線を中心として回転させることにより、軸線方向から見て、複数のパンチのうち一部のパンチの回転部側の端部と重なる位置に第1逃し部を位置付ける。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイと、軸線に沿って移動するパンチとによって、加工対象に打ち抜き加工をするための金型であって、
前記軸線を中心として回転可能な回転部と、
前記軸線が延びる方向である軸線方向から見て、前記回転部と前記ダイとの間で、前記軸線を囲んで環状に並ぶ複数の前記パンチと、
前記回転部を、前記軸線を中心として回転させる回転駆動部と、
前記軸線方向に移動することにより前記回転部を前記軸線方向に移動させる軸方向移動部と、
を有し、
前記回転部は、
前記パンチ側の端面上の一部に第1逃し部を有し、
前記第1逃し部は、
前記パンチの前記回転部側の一部を収容可能な形状を有する窪みであり、
前記回転駆動部は、
前記回転部を、前記軸線を中心として回転させることにより、前記軸線方向から見て、前記複数のパンチのうち一部のパンチの前記回転部側の端部と重なる位置に前記第1逃し部を位置付ける、
金型。
【請求項2】
請求項1に記載の金型において、
前記回転部における前記窪みの側面は、
前記回転部を前記軸線方向から見て、周方向の一側に位置する側面部及び前記周方向の他側に位置する側面部を有し、
前記周方向の一側に位置する側面部及び前記周方向の他側に位置する側面部のうち少なくとも一方の側面部は、第1傾斜面を有し、
前記第1傾斜面は、
前記窪みの開口に向かうにつれて、他方の側面部から離れる方向に傾く面である、
金型。
【請求項3】
請求項2に記載の金型において、
前記複数のパンチの前記端部は、
前記回転部の前記窪み内に収容された状態で、前記窪みの前記第1傾斜面と対向する部分に第2傾斜面を有し、
前記第2傾斜面は、
前記パンチの前記回転部側の先端に向かうにつれて、前記周方向に隣り合うパンチから離れる方向に傾く面である、
金型。
【請求項4】
請求項3に記載の金型において、
前記軸線方向と前記窪みの前記第1傾斜面とがなす角度は、前記軸線方向と前記パンチの前記第2傾斜面とがなす角度よりも大きい、
金型。
【請求項5】
請求項3に記載の金型において、
前記回転駆動部は、
前記回転部を、回転方向の一方または他方に回転させ、
前記回転部における前記窪みの前記周方向の一側に位置する側面部及び前記周方向の他側に位置する側面部は、それぞれ前記第1傾斜面を有する、
金型。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一つに記載の金型において、
前記回転部は、
前記パンチ側の端面上において、前記軸線方向から見て前記複数のパンチの前記端部と重なる部分に、前記パンチの前記端部と接触する接触部を有し、
前記複数のパンチの前記端部は、
前記回転部の前記接触部と接触する被接触部を有し、
前記接触部は、前記軸線方向に垂直な面であり、
前記被接触部は、前記軸線方向に垂直な面である、
金型。
【請求項7】
請求項1に記載の金型において、
前記回転部は、
前記パンチ側とは反対側の端部に、軸線方向に突出する突出部を有し、
前記軸方向移動部は、
前記回転部に対して前記反対側に位置し、
前記回転部側の端面上に第2逃し部を有し、
前記第2逃し部は、
前記回転部の前記突出部を収容可能な大きさを有する窪みであり、
前記軸方向移動部は、
前記軸線方向から見て、前記回転部の前記突出部が前記第2逃し部と重なる位置と、重ならない位置との間を移動可能である、
金型。
【請求項8】
請求項1に記載の金型を用いて加工対象に打ち抜き加工をする打ち抜き方法であって、
前記回転部を前記回転駆動部によって前記軸線を中心として回転させて、前記軸線方向から見て前記複数のパンチのそれぞれの前記回転部側の端部と重なる位置に、接触部または前記第1逃し部を位置付ける回転工程と、
前記軸方向移動部によって前記回転部を前記軸線方向に移動させて、前記第1逃し部が位置付けられた前記パンチの前記回転部側の一部を前記第1逃し部の前記窪み内に収容し、且つ、前記接触部が位置付けられた前記パンチの前記端部に前記回転部を接触させ、前記接触部が位置付けられた前記パンチによって前記加工対象を打ち抜く打ち抜き工程と、
を有する、
打ち抜き方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型及び打ち抜き方法に関する。
【背景技術】
【0002】
加工対象を打ち抜き加工するための金型が知られている。例えば、特許文献1には、回転体、複数の抜きパンチ、複数の被駆動カム及び複数の駆動カムを有する上型と、抜きダイとを有する抜き加工装置が開示されている。前記抜き加工装置の前記被駆動カムは、抜きダイ側に移動すると、抜きパンチを前記抜きダイ側に押す。前記駆動カムは、回転体が回転すると当該回転体と一体に移動し、複数の被駆動カムを逐次抜きパンチ側に押圧し、前記抜きパンチと前記抜きダイとの間の金属帯板に回転方向に並ぶ複数の通孔を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-166172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ダイとパンチとで加工対象を打ち抜く工程において、加工対象ごとに打ち抜く位置を変更したい場合がある。この場合、それぞれの位置を打ち抜くために、複数の金型を準備するか、それぞれ別の金型を有する複数の加工ステージを用意する必要があった。この場合、加工装置が大型化するという問題があった。
【0005】
前記特許文献1には、加工対象に対して異なる位置に逐次通孔を形成しつつ、小型化が可能な構成が開示されている。しかしながら、特許文献1の加工装置は、複数の通孔を連続的に形成する構成を有しているだけであり、加工対象ごとに通孔を形成する位置を変更可能な構成を有していない。したがって、加工対象ごとに打ち抜く位置を変更可能であり、且つ、コンパクトな構成の金型が求められている。
【0006】
本発明の目的は、加工対象ごとに打ち抜く位置を変更可能であり、且つ、コンパクトな構成の金型を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の例示的な一実施形態に係る金型は、ダイと、軸線に沿って移動するパンチとによって、加工対象に打ち抜き加工をするための金型である。前記金型は、前記軸線を中心として回転可能な回転部と、前記軸線が延びる方向である軸線方向から見て、前記回転部と前記ダイとの間で、前記軸線を囲んで環状に並ぶ複数の前記パンチと、前記回転部を、前記軸線を中心として回転させる回転駆動部と、前記軸線方向に移動することにより前記回転部を前記軸線方向に移動させる軸方向移動部と、を有する。前記回転部は、前記パンチ側の端面上の一部に第1逃し部を有する。前記第1逃し部は、前記パンチの前記回転部側の一部を収容可能な形状を有する窪みである。前記回転駆動部は、前記回転部を、前記軸線を中心として回転させることにより、前記軸線方向から見て、前記複数のパンチのうち一部のパンチの前記回転部側の端部と重なる位置に前記第1逃し部を位置付ける。
【0008】
本発明の例示的な一実施形態に係る打ち抜き方法は、前記金型を用いて加工対象に打ち抜き加工をする打ち抜き方法である。前記打ち抜き方法は、前記回転部を前記回転駆動部によって前記軸線を中心として回転させて、前記軸線方向から見て前記複数のパンチのそれぞれの前記回転部側の端部と重なる位置に、接触部または前記第1逃し部を位置付ける回転工程と、前記軸方向移動部によって前記回転部を前記軸線方向に移動させて、前記第1逃し部が位置付けられた前記パンチの前記回転部側の一部を前記第1逃し部の前記窪み内に収容し、且つ、前記接触部が位置付けられた前記パンチの前記端部に前記回転部を接触させ、前記接触部が位置付けられた前記パンチによって前記加工対象を打ち抜く打ち抜き工程と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、加工対象ごとに打ち抜く位置を変更可能であり、且つ、コンパクトな構成の金型を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施形態1に係る金型の概略構成を模式的に示す図である。
図2図2は、加工対象の打ち抜き領域の一例を示す平面図である。
図3図3は、回転部及び複数のパンチの概略構成を示す斜視図である。
図4図4は、複数のパンチを回転部から離隔させて示す斜視図である。
図5図5は、回転部及び複数のパンチを軸線方向から見た図である。
図6図6は、回転部を複数のパンチに対して回転させた状態を示す斜視図である。
図7図7は、回転部の第1傾斜面と、パンチの第2傾斜面の関係を説明する図である。
図8図8は、回転部の第1逃し部内からパンチが抜き出される様子を説明する図である。
図9図9は、実施形態1に係る金型を用いた打ち抜き方法を示すフローチャートである。
図10図10は、加工対象の第1の領域が打ち抜かれた状態を示す平面図である。
図11図11は、加工対象の第2の領域を打ち抜く場合の複数のパンチに対する回転部の回転位置を説明する図である。
図12図12は、加工対象の第2の領域が打ち抜かれた状態を示す平面図である。
図13図13は、加工対象の第3の領域を打ち抜く場合の複数のパンチに対する回転部の回転位置を説明する図である。
図14図14は、加工対象の第3の領域が打ち抜かれた状態を示す平面図である。
図15図15は、実施形態2に係る金型の概略構成を模式的に示す図である。
図16図16は、実施形態2に係る金型の動作を説明する図である。
図17図18は、実施形態2に係る金型の動作を説明する図である。
図18図18は、実施形態2に係る金型の動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照し、本発明の例示的な実施の形態を詳しく説明する。なお、図中の同一または相当部分については同一の符号を付してその説明は繰り返さない。また、各図中の構成部材の寸法は、実際の構成部材の寸法及び各構成部材の寸法比率等を忠実に表しているわけではない。
【0012】
なお、以下の説明では、金型1において、回転部4の回転軸を軸線P、軸線Pと平行な方向を軸線方向、軸線Pを中心とする円弧に沿う方向を周方向、軸線方向に直交する方向を径方向と称する。また、軸線方向において、回転部4に対して複数のパンチ3が位置する側を、軸線方向の一側、その反対側を軸線方向の他側と称する。
【0013】
また、以下の説明において、“固定”、“接続”及び“取り付ける”等の表現は、部材同士が直接、固定等されている場合だけでなく、他の部材を介して固定等されている場合も含む。すなわち、以下の説明において、固定等の表現には、部材同士の直接的及び間接的な固定等の意味が含まれる。
【0014】
(実施形態1)
(金型の構成)
図1から図8を参照して、本発明の例示的な実施形態1に係る金型1について説明する。金型1は、ダイ6とパンチ3とによって、加工対象Wに打ち抜き加工をする。本発明の金型1は、加工対象Wにおいて環状に並ぶ複数の打ち抜き領域のうち、一部の領域を打ち抜くことができる。また、金型1は、複数の加工対象Wのそれぞれに対して、前記複数の領域のうち異なる領域を打ち抜くことができる。
【0015】
図2に、加工対象Wの打ち抜き領域の一例を示す。図2に示す例では、加工対象Wは、金型1における回転部4の軸線Pが通る中心点Cを中心として、環状に並ぶ6つの打ち抜き領域Ra~Rfを有する。例えば、金型1は、第1の加工対象Waに対しては領域Raを打ち抜き、第2の加工対象Wbに対しては領域Rbを打ち抜き、第3の加工対象Wcに対しては領域Rcを打ち抜くことができる。なお、打ち抜き領域は、軸線方向から見て環状に並んでいればよく、例えば、2つずつが、中心点Cを中心とした回転対称に並んでいてもよい。
【0016】
図1に示すように、金型1は、軸方向移動部2と、複数のパンチ3と、回転部4と、回転駆動部5と、ダイ6とを有する。
【0017】
軸方向移動部2は、本体部21と、駆動部22とを有する。本体部21は、複数のパンチ3と、回転部4とを支持する。本体部21は、駆動部22によって、軸線方向に移動する。軸方向移動部2の本体部21は、軸線方向に移動することにより、回転部4を軸線方向に移動させる。
【0018】
図1図3及び図4に示すように、複数のパンチ3は、それぞれ、軸線方向に延びる柱状である。複数のパンチ3は、図1に示すように、軸方向移動部2の本体部21から軸線方向の一側に突出している。複数のパンチ3は、軸方向移動部2の本体部21に、軸線方向に移動可能に支持されている。
【0019】
図5に示すように、複数のパンチ3は、軸線方向から見て、軸線Pを囲んで環状に並んでいる。金型1が有するパンチ3の数は、加工対象Wにおける打ち抜き領域の数と一致する。本実施形態では、金型1は、6つのパンチ3を有する。
【0020】
軸線方向から見た複数のパンチ3の位置は、加工対象Wにおける打ち抜き領域の位置と一致する。本実施形態では、6つのパンチ3は、前記軸線方向から見て、軸線Pを囲んで周方向に60度ごとに位置している。
【0021】
図1図3及び図4に示すように、パンチ3は、軸部31と、駆動カム部32と、パンチ本体部33とを有する。軸部31は、軸線方向に延びる柱状である。
【0022】
駆動カム部32は、軸部31の軸線方向の他側に位置する。駆動カム部32は、軸線方向に延びる柱状である。詳しくは、駆動カム部32は、筒部34と、テーパ部35とを有する。筒部34は、軸部31の軸線方向の他側から軸線方向に延びている。筒部34の直径は、軸部31の直径よりも大きい。
【0023】
テーパ部35は、筒部34の軸線方向の他側の端部に位置する。テーパ部35は、軸線方向の他側の端面に向かうにつれて直径が小さくなるテーパ状である。駆動カム部32の詳細な構成は、後述する。
【0024】
パンチ本体部33は、軸部31の軸線方向の一側に位置する。パンチ本体部33は、軸線方向の一側の端部に刃33aを有する。刃33aは、パンチ3が軸線方向の一側に移動した際に、加工対象Wと接触して、加工対象Wを打ち抜く。
【0025】
図1図3及び図4に示すように、回転部4は、円板状である。回転部4は、軸線Pを囲んで環状に並ぶ複数のパンチ3に対して、軸線方向の他側に位置している。図5に示すように、回転部4は、軸線方向から見て、環状に並ぶ複数のパンチ3の軸線方向の他側の端部と重なる位置に位置している。
【0026】
回転部4は、軸線Pを中心として回転する。すなわち、回転部4は、軸方向移動部2の本体部21に、軸線Pを中心として回転可能に支持されている。回転部4は、軸方向移動部2の本体部21が軸線方向に移動することにより、軸線方向に移動する。
【0027】
回転部4は、軸線方向の一側の端面上に少なくとも一つの逃し部41と、少なくとも一つの接触部42とを有する。回転部4が有する逃し部41の数と、回転部4が有する接触部42の数とを合計した数は、パンチ3の数と一致する。回転部4の逃し部41は、本発明の第1逃し部に対応する。
【0028】
本実施形態では、回転部4は、4つの逃し部41と、2つの接触部42とを有する。具体的には、4つの逃し部41及び2つの接触部42は、軸線方向から見て、回転部4の周方向に60度ごとに間隔を開けて並んでいる。なお、逃し部及び接触部の周方向の間隔は、周方向に並ぶ複数のパンチと同じであればよい。
【0029】
逃し部41は、窪みである。逃し部41は、パンチ3における軸線方向の他側の端部の一部を収容可能な形状を有する。逃し部41内には、回転部4が軸線方向の一側に移動した際に、パンチ3における軸線方向の他側の端部の一部が収容される。逃し部41の詳細な構成は、後述する。
【0030】
接触部42は、軸線方向に対して垂直な面である回転部4の端面の一部である。接触部42には、パンチ3の軸線方向の他側の端面が接触する。
【0031】
図1に示すように、回転駆動部5は、回転部4を、軸線Pを中心として回転させる。回転駆動部5は、軸線方向から見て、複数のパンチ3のうち一部のパンチ3の回転部4側の端部と重なる位置に逃し部41を位置付けて、複数のパンチ3のうち残部のパンチ3の回転部4側の端部と重なる位置に接触部42を位置付ける。
【0032】
図6に示すように、回転駆動部5は、回転部4を、軸線Pを中心として回転させることにより、逃し部41が位置付けられるパンチ3と、接触部42が位置付けられるパンチ3とを、変更する。なお、図6は、図5で示す状態の回転部4を、図5における白抜き矢印の方向に60度回転させた状態を示す。
【0033】
本実施形態では、回転駆動部5は、回転部4を周方向の一側及び他側の両方向に回転させる。なお、回転駆動部は、回転部を周方向の一側または他側のうち一方にのみ回転させる構成を有していてもよい。
【0034】
図1に示すように、ダイ6は、複数のパンチ3に対して軸線方向の一側に位置する。ダイ6上には、加工対象Wが置かれる。ダイ6は、軸線方向から見て、加工対象Wの打ち抜き領域と重なる位置に、溝61を有する。ダイ6上に加工対象Wが置かれた状態で、パンチ3が軸線方向の一側に移動することにより、パンチ3の刃33aによって、加工対象Wが打ち抜かれる。
【0035】
(パンチ及び回転部の詳細な構成)
次に、図4図5図7及び図8を参照して、パンチ3及び回転部4の詳細な構成について、説明する。
【0036】
図4に示すように、本実施形態では、回転部4の逃し部41は、パンチ3側に開口する開口部41aと、径方向外方に開口する開口部41bとを有する。逃し部41は、底面411と、側面412とを有する。底面411は、軸線方向に垂直な面である。側面412は、底面411と、開口部41a及び開口部41bとを接続している。
【0037】
図5に示すように、本実施形態では、逃し部41の側面412は、底面411に対して、径方向の内側と、周方向の一側及び他側とに位置している。図4及び図7に示すように、本実施形態では、側面412は、軸線方向に対して交差する方向に延びる。すなわち、側面412のうち、周方向の一側に位置する側面部及び周方向の他側に位置する側面部は、それぞれ傾斜面412aである。
【0038】
図7に示すように、周方向の一側に位置する傾斜面412aは、パンチ3側の開口部41aに向かうにつれて、周方向の他側に位置する傾斜面412aから離れる方向に傾く面である。周方向の他側に位置する傾斜面412aは、パンチ3側の開口部41aに向かうにつれて、周方向の一側に位置する傾斜面412aから離れる方向に傾く面である。逃し部41の傾斜面412aは、本発明の第1傾斜面に対応する。
【0039】
これにより、図8に示すように、回転部4が軸線Pを中心として回転した際に、端部が逃し部41内に収容されたパンチ3は、傾斜面412aによって軸線方向に押される。これにより、パンチ3を、逃し部41の外にスムーズに移動させることができる。
【0040】
図4に示すように、パンチ3における駆動カム部32のテーパ部35は、被接触面351と、傾斜面352とを有する。
【0041】
被接触面351は、パンチ3の軸線方向の他側の端面である。被接触面351は、軸線方向に対して垂直な面である。被接触面351は、回転部4の接触部42、または、回転部4における逃し部41の底面411と接触する。被接触面351は、本発明の被接触部に対応する。
【0042】
図4に示すように、傾斜面352は、筒部34の外周面と、被接触面351とを接続している。図7に示すように、傾斜面352は、軸線方向に対して交差する方向に延びている。傾斜面352は、駆動カム部32が回転部4の逃し部41内に収容された状態で、逃し部41の傾斜面412aと対向する。駆動カム部32の傾斜面352は、本発明の第2傾斜面に対応する。
【0043】
すなわち、本実施形態では、複数のパンチ3の軸線方向の他側の端部は、回転部4の逃し部41内に収容された状態で、逃し部41の傾斜面412aと対向する部分に傾斜面352を有する。傾斜面352は、パンチ3の回転部4側の先端に向かうにつれて、周方向に隣り合うパンチ3から離れる方向に傾く面である。
【0044】
これにより、図8に示すように、端部が逃し部41内に収容されたパンチ3の傾斜面352は、回転部4が回転すると、回転部4によって軸線方向に押される。これにより、パンチ3を、逃し部41の外にスムーズに移動させることができる。
【0045】
本実施形態では、図7に示すように、軸線方向と逃し部41の傾斜面412aとがなす角度D4は、軸線方向とパンチ3の傾斜面352とがなす角度D3よりも大きい。
【0046】
この構成により、回転部4の傾斜面412aと、パンチ3の傾斜面352との接触面積を小さくすることができる。これにより、パンチ3の傾斜面352が、逃し部41の傾斜面412aによって軸線方向に押された際、パンチ3の傾斜面352と逃し部41の傾斜面412aとの摩擦を低減することができる。したがって、端部が逃し部41内に収容されたパンチ3を、よりスムーズに逃し部41の外に移動させることができる。
【0047】
本実施形態では、回転駆動部5は、回転部4を、回転方向の一方または他方に回転させる。回転部4における逃し部41の前記周方向の一側に位置する側面部及び前記周方向の他側に位置する側面部は、それぞれ傾斜面412aを有する。
【0048】
これにより、回転駆動部5が回転部4を回転方向の一方に回転させた場合、または、他方に回転させた場合のいずれにおいても、パンチ3を、逃し部41の外にスムーズに移動させることができる構成を実現できる。
【0049】
以上の構成を有する例示的な実施形態に係る金型1は、ダイ6と、軸線Pに沿って移動するパンチ3とによって、加工対象Wに打ち抜き加工をするための金型である。金型1は、軸線Pを中心として回転可能な回転部4と、軸線Pが延びる方向である軸線方向から見て、回転部4とダイ6との間で、軸線Pを囲んで環状に並ぶ複数のパンチ3と、回転部4を、軸線Pを中心として回転させる回転駆動部5と、前記軸線方向に移動することにより回転部4を前記軸線方向に移動させる軸方向移動部2と、を有する。回転部4は、パンチ3側の端面上の一部に逃し部41を有する。逃し部41は、パンチ3の回転部4側の一部を収容可能な形状を有する窪みである。回転駆動部5は、回転部4を、軸線Pを中心として回転させることにより、前記軸線方向から見て、複数のパンチ3のうち一部のパンチ3の回転部4側の端部と重なる位置に逃し部41を位置付ける。
【0050】
上述の構成では、回転駆動部5は、ダイ6と、回転部4の間に位置する複数のパンチ3に対して、前記軸線方向から見て、回転部4側の端部と重なる位置の一部に、回転部4の逃し部41を位置付ける。逃し部41は、パンチ3の前記端部を収容することができる。よって、軸方向移動部2が回転部4を軸線方向に移動させた際、逃し部41が位置付けられているパンチ3の前記端部は、逃し部41内に収容される。これにより、逃し部41が位置付けられていないパンチ3は、加工対象Wを打ち抜く。その一方で、逃し部41が位置付けられたパンチ3は、加工対象Wを打ち抜かない。すなわち、金型1で、複数のパンチ3のうち一部のパンチ3によって、加工対象Wを打ち抜くことができる。
【0051】
回転部4は、回転駆動部5によって回転する。すなわち、回転駆動部5は、逃し部41の位置を、加工対象Wごとに、変更することができる。したがって、複数の金型または複数の加工ステージを準備することなく、加工対象Wごとに打ち抜く位置を変更することができる金型1を提供することができる。
【0052】
本実施形態では、回転部4は、パンチ3側の端面上において、前記軸線方向から見て複数のパンチ3の前記端部と重なる部分に、パンチ3の前記端部と接触する接触部42を有する。複数のパンチ3の前記端部は、回転部4の接触部42と接触する被接触面351を有する。接触部42は、前記軸線方向に垂直な面である。被接触面351は、前記軸線方向に垂直な面である。
【0053】
これにより、パンチ3の端部を接触部42によって均等な力でダイ6に向かって押すことができる。これにより、加工対象Wに対して、パンチ3を真っすぐ且つ均等に押し付けることができる。これにより、打ち抜き精度を向上することができる。
【0054】
なお、上述の構成では、回転駆動部5は、回転部4を、回転方向の一方または他方に回転させる。また、回転部4における逃し部41の前記周方向の一側に位置する側面部及び前記周方向の他側に位置する側面部は、それぞれ傾斜面412aを有する。
【0055】
しかしながら、回転駆動部は、回転部を、回転方向の一方にのみ回転させる構成であってもよい。この場合、周方向の一側に位置する側面部及び前記周方向の他側に位置する側面部のうち、前記回転方向の後側に位置する側面部が、傾斜面を有してもよい。
【0056】
すなわち、回転部における逃し部の側面は、前記回転部を前記軸線方向から見て、周方向の一側に位置する側面部及び前記周方向の他側に位置する側面部を有し、前記周方向の一側に位置する側面部及び前記周方向の他側に位置する側面部のうち少なくとも一方の側面部が、傾斜面を有してもよい。前記傾斜面は、前記逃し部の開口に向かうにつれて、他方の側面部から離れる方向に傾く面である。
【0057】
この構成によっても、回転駆動部が軸線Pを中心として回転部を回転させた際に、逃し部の傾斜面は、端部が逃し部内に収容されたパンチを、軸線方向の開口に向かって押すことができる。
【0058】
(打ち抜き方法)
次に、図1図9を参照して、上述の構成を有する金型1によって、加工対象Wを打ち抜く打ち抜き方法の一例について説明する。
【0059】
図9に示すように、打ち抜き方法は、回転工程S1と、打ち抜き工程S2とを有する。
【0060】
回転工程S1は、回転駆動部5によって、軸線Pを中心として回転部4を回転させて、複数のパンチ3のそれぞれに対して、逃し部41または接触部42を位置付ける。
【0061】
詳しくは、回転工程S1では、回転部4を回転駆動部5によって軸線Pを中心として回転させる。これにより、前記軸線方向から見て複数のパンチ3のうち一部のパンチ3における回転部4側の端部と重なる位置に、接触部42を位置付ける。そして、残りのパンチ3における前記端部と重なる位置に、逃し部41を位置付ける。
【0062】
打ち抜き工程S2では、接触部42が位置付けられたパンチ3によって加工対象Wを打ち抜く。
【0063】
詳しくは、打ち抜き工程S2では、軸方向移動部2を軸線方向に移動させる。これにより、回転部4を軸線方向に移動させる。回転部4が軸線方向に移動することにより、逃し部41が位置付けられたパンチ3の回転部4側の一部は、逃し部41の窪み内に収容される。一方、接触部42が位置付けられたパンチ3の前記端部は、回転部4に押されて軸線方向に移動する。これにより、接触部42が位置付けられたパンチ3によって、加工対象Wの所定の領域が打ち抜かれる。
【0064】
次に、図5図10から図14を参照して、加工対象W1の領域Ra及びRdを打ち抜いて製品X1を製造し、加工対象W2の領域Rb及びReを打ち抜いて製品X2を製造し、加工対象W3の領域Rc及びRfを打ち抜いて製品X3を製造する方法の一例について説明する。
【0065】
本実施形態では、金型1のダイ6上には、加工対象W1、加工対象W2及び加工対象W3が、順番に置かれる。
【0066】
金型1のダイ6上に加工対象W1が置かれた場合、回転工程S1では、回転駆動部5は、回転部4を回転させることにより、回転部4を、図5に示す回転角度に設定する。すなわち、回転駆動部5は、軸線方向から見て、複数のパンチ3のうち領域Ra及び領域Rdを打ち抜くパンチ3における回転部4側の端部と重なる位置に、接触部42を位置付ける。
【0067】
続いて、打ち抜き工程S2で、軸方向移動部2を軸線方向に移動させる。これにより、図10に示すように、加工対象W1の領域Ra及び領域Rdが打ち抜かれて製品X1が製造される。
【0068】
次に、金型1のダイ6上から製品X1を取り除き、ダイ6上に、加工対象W2を置く。
【0069】
金型1のダイ6上に加工対象W2が置かれた場合、回転工程S1では、回転駆動部5は、回転部4を回転させることにより、回転部4を、図11に示す回転角度に設定する。すなわち、回転駆動部5は、軸線方向から見て、複数のパンチ3のうち領域Rb及び領域Reを打ち抜くパンチ3における回転部4側の端部と重なる位置に、接触部42を位置付ける。続いて、打ち抜き工程S2で、軸方向移動部2を軸線方向に移動させる。これにより、図12に示すように、加工対象W2の領域Rb及び領域Reが打ち抜かれて製品X2が製造される。
【0070】
次に、金型1のダイ6上から製品X2を取り除き、ダイ6上に、加工対象W3を置く。
【0071】
金型1のダイ6上に加工対象W3が置かれた場合、回転工程S1では、回転駆動部5は、回転部4を回転させることにより、回転部4を、図13に示す回転角度に設定する。すなわち、回転駆動部5は、軸線方向から見て、複数のパンチ3のうち領域Rc及び領域Rfを打ち抜くパンチ3における回転部4側の端部と重なる位置に、接触部42を位置付ける。続いて、打ち抜き工程S2で、軸方向移動部2を軸線方向に移動させる。これにより、図14に示すように、加工対象W3の領域Rc及び領域Rfが打ち抜かれて製品X3が製造される。
【0072】
これにより、金型1によって、領域Ra及び領域Rdが打ち抜かれた製品X1と、領域Rb及び領域Reが打ち抜かれた製品X2と、領域Rc及び領域Rfが打ち抜かれた製品X3とが製造される。
【0073】
以上説明したように、本実施形態に係る打ち抜き方法は、金型1を用いて加工対象Wに打ち抜き加工をする打ち抜き方法である。前記打ち抜き方法は、回転工程S1と、打ち抜き工程S2とを有する。回転工程S1は、回転部4を回転駆動部5によって軸線Pを中心として回転させて、前記軸線方向から見て複数のパンチ3のそれぞれの回転部4側の端部と重なる位置に、接触部42または逃し部41を位置付ける。打ち抜き工程S2は、軸方向移動部2によって回転部4を前記軸線方向に移動させて、逃し部41が位置付けられたパンチ3の回転部4側の一部を逃し部41の前記窪み内に収容し、且つ、接触部42が位置付けられたパンチ3の前記端部に回転部4を接触させ、接触部42が位置付けられたパンチ3によって加工対象Wを打ち抜く。
【0074】
本実施形態に係る打ち抜き方法では、回転駆動部5は、軸線方向から見て複数のパンチ3の回転部4側の端部と重なる位置に、逃し部41または接触部42を位置付ける。軸方向移動部2が、回転部4を軸線方向に移動させると、逃し部41が位置付けられているパンチ3の回転部4側の一部は、逃し部41の窪み内に収容される。これにより、接触部42が位置付けられたパンチ3は、加工対象Wを打ち抜く一方、逃し部41が位置付けられたパンチ3は、加工対象Wを打ち抜かない。すなわち、金型1を用いた打ち抜き方法では、複数のパンチ3のうち一部のパンチ3によって、加工対象Wを打ち抜くことができる。回転部4は、回転駆動部5によって回転する。すなわち、回転駆動部5は、逃し部41及び接触部42の位置を、加工対象Wごとに、変更することができる。したがって、加工対象Wごとに打ち抜く位置を変更することができる打ち抜き方法を実現することができる。
【0075】
(実施形態2)
次に、図15から図18を参照して、本発明の例示的な実施形態2に係る金型101について説明する。本実施形態に係る金型101では、軸方向移動部102及び回転部104の構成が、実施形態1の金型1における軸方向移動部2及び回転部4の構成とは異なる。以下では、実施形態1と同一の構成には同一の符号を付し、説明を省略し、実施形態1の構成とは異なる構成について説明する。
【0076】
図15に示すように、本実施形態に係る金型101は、軸方向移動部102と、複数のパンチ3と、回転部104と、回転駆動部5と、ダイ6と、を有する。
【0077】
軸方向移動部102は、本体部121と、スライダ122と、軸方向駆動部123と、スライダ駆動部124とを有する。
【0078】
本体部121は、複数のパンチ3と、回転部104と、スライダ122とを支持する。本体部121は、軸方向駆動部123によって、軸線方向に移動する。本体部121は、実施形態1の本体部21と同様に、軸線方向に移動することにより、回転部104を軸線方向に移動させる。
【0079】
スライダ122は、回転部104に対して、軸線方向の他側に位置する。スライダ122は、板状である。スライダ122の厚み方向は、本体部121の移動方向である。
【0080】
スライダ122は、回転部104側の端面上に第2逃し部122aを有する。第2逃し部122aは、窪みである。第2逃し部122aは、回転部104の突出部143を収容可能な大きさを有する。第2逃し部122a内には、回転部104の突出部143を収容可能である。
【0081】
図15及び図16に示すように、スライダ122は、軸線方向と交差する方向に移動可能である。詳しくは、スライダ122は、軸線方向から見て、回転部104の突出部143が第2逃し部122aと重なる位置と、重ならない位置との間を移動可能である。
【0082】
軸方向駆動部123は、本体部121を軸線方向に移動させる。軸方向駆動部123の構成は、実施形態1の駆動部22の構成と同様であるため、説明を省略する。
【0083】
スライダ駆動部124は、スライダ122を軸線方向と交差する方向に移動させる。これにより、スライダ122は、軸線方向から見て、第2逃し部122aが回転部104の突出部143と重なる位置と、重ならない位置との間を移動する。
【0084】
本実施形態では、回転部104は、回転本体部104aと、筐体104bと、を有する。
【0085】
回転本体部104aは、軸線Pを中心として回転する。回転本体部104aは、軸線方向の一側の端面上に少なくとも一つの第1逃し部141と、少なくとも一つの接触部42とを有する。第1逃し部141の構成は、実施形態1の逃し部41の構成と同様であるため、説明を省略する。
【0086】
回転本体部104aは、筐体104b内に収容されている。回転本体部104aのその他の構成は、実施形態1の回転部4の構成と同様であるため、説明を省略する。
【0087】
回転部104の筐体104bは、軸方向移動部102の本体部121に対して回転しない。回転部104の筐体104bは、軸方向移動部102の本体部121に対して軸線方向に移動可能である。
【0088】
筐体104bは、回転本体部104aを、軸線Pを中心として回転可能に収容する。筐体104bは、回転本体部104aを、軸線方向に移動不能に収容する。よって、筐体104bが軸線方向に移動した場合、回転本体部104aも軸線方向に移動する。
【0089】
筐体104bは、スライダ122側の端面上に突出部143を有する。突出部143は、スライダ122の第2逃し部122a内に収容可能な大きさを有する。図16に示すように、突出部143は、軸線方向から見て、スライダ122の第2逃し部122aと、突出部143とが重なる位置にスライダ122が位置する状態で、軸方向移動部102の本体部121が軸線方向に移動した際に、図18に示すように、第2逃し部122a内に収容される。
【0090】
以上の構成を有する金型101では、図15に示すように、軸線方向から見てスライダ122の第2逃し部122aと突出部143とが重ならない状態で、軸方向移動部102の本体部121が軸線方向の一側に移動した場合、回転部104は、軸線方向に移動する。よって、図17に示すように、接触部42が位置付けられたパンチ3は、加工対象Wの所定の領域を打ち抜く。
【0091】
一方、図16に示すように、軸線方向から見て、スライダ122の第2逃し部122aと突出部143とが重なる状態で、軸方向移動部102の本体部121が軸線方向の一側に移動した場合、突出部143は、第2逃し部122a内に収容される。これにより、回転部104の軸線方向への移動距離を、本体部121の軸線方向への移動距離よりも短くすることができる。すなわち、複数のパンチ3の軸線方向への移動距離を、本体部121の軸線方向への移動距離よりも短くすることができる。よって、図18に示すように、複数のパンチ3は、加工対象Wのいずれの領域も打ち抜かない。
【0092】
すなわち、例示的な本実施形態に係る金型101において、回転部104は、パンチ3側とは反対側の端部に、軸線方向に突出する突出部143を有する。軸方向移動部102は、回転部104に対して前記反対側に位置し、回転部104側の端面上に第2逃し部122aを有する。第2逃し部122aは、回転部104の突出部143を収容可能な大きさを有する窪みである。軸方向移動部102は、前記軸線方向から見て、回転部104の突出部143が第2逃し部122aと重なる位置と、重ならない位置との間を移動可能である。
【0093】
この構成により、前記軸線方向から見て、軸方向移動部102の第2逃し部122aが回転部104の突出部143と重なる位置に位置する状態で、軸方向移動部102が軸線方向に移動した場合、第2逃し部122a内に、回転部104の突出部143が収容される。これにより、突出部143が第2逃し部122a内に収容されない場合に比べて、回転部104の軸線方向への移動距離を短くすることができる。すなわち、金型101では、軸方向移動部102が軸線方向に移動した際の回転部104の前記軸線方向への移動距離を変更することができる。よって、この構成により、例えば、加工対象Wを全く打ち抜かないことができる。これにより、金型101の汎用性をさらに高めることができる。
【0094】
(その他の実施形態)
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【0095】
前記各実施形態のパンチ3の構成および各図に示すパンチ3の形状は、一例である。パンチは、回転部側の一部が前記回転部の逃し部内に収容可能な構成および形状を有していればよい。
【0096】
前記各実施形態の各図に示す回転部4,104の逃し部41,第1逃し部141の形状は、一例である。回転部の逃し部および第1逃し部は、パンチの回転部側の一部を収容可能な形状を有していればよい。
【0097】
前記各実施形態では、パンチ3の駆動カム部32は、軸線方向の他側にテーパ部35を有する。しかしながら、パンチの駆動カム部は、テーパ部を有さなくてもよい。
【0098】
前記各実施形態では、パンチ3の被接触面351は、回転部4,104における逃し部41,第1逃し部141の底面411に接触する。しかしながら、パンチの被接触部は、回転部における逃し部の底面に接触しなくてもよい。
【0099】
前記各実施形態では、回転部4,104の接触部42は、回転部4,104における軸線方向の一側の端面の一部である。しかしながら、回転部の接触部は、パンチの被接触部と接触可能な構成および形状を有していればよい。前記接触部は、例えば、回転部における軸線方向の一側の端面から突出した部分であってもよいし、前記端面上に位置し、且つ、逃し部よりも深さが浅い凹部の底面であってもよい。
【0100】
前記各実施形態では、回転部4,104の逃し部41,第1逃し部141は、軸線方向及び径方向に開口している。しかしながら、回転部の逃し部および第1逃し部は、軸線方向にのみ開口していてもよい。
【0101】
前記各実施形態では、回転部4,104の逃し部41,第1逃し部141は、軸線方向に垂直な底面411を有する。しかしながら、逃し部の底面は、軸線方向に垂直な面でなくてもよい。
【0102】
前記各実施形態では、回転部4,104の逃し部41,第1逃し部141の側面部は、軸線方向に対して交差する方向に延びる傾斜面412aを有する。しかしながら、回転部の逃し部の側面部は、軸線方向に延びていてもよい。
【0103】
前記各実施形態では、パンチ3の被接触面351は、軸線方向に垂直な面である。回転部4,104の接触部42は、軸線方向に垂直な面である。しかしながら、パンチの被接触面は、回転部の接触部と接触可能であれば、軸線方向に垂直な面でなくてもよい。回転部の接触部は、パンチの被接触部と接触可能であれば、軸線方向に垂直な面でなくてもよい。
【0104】
前記各実施形態では、軸線方向と回転部4,104の逃し部41,第1逃し部141の傾斜面412aとがなす角度D4は、軸線方向とパンチ3の傾斜面352とがなす角度D3よりも大きい。しかしながら、軸線方向と回転部の逃し部および第1逃し部の傾斜面とがなす角度D4は、軸線方向とパンチの傾斜面とがなす角度D3と同じであってもよい。
【0105】
(構成例)
なお、本技術は以下のような構成をとることも可能である。
【0106】
(1)金型は、ダイと、軸線に沿って移動するパンチとによって、加工対象に打ち抜き加工をするための金型である。前記金型は、前記軸線を中心として回転可能な回転部と、前記軸線が延びる方向である軸線方向から見て、前記回転部と前記ダイとの間で、前記軸線を囲んで環状に並ぶ複数の前記パンチと、前記回転部を、前記軸線を中心として回転させる回転駆動部と、前記軸線方向に移動することにより前記回転部を前記軸線方向に移動させる軸方向移動部と、を有する。前記回転部は、前記パンチ側の端面上の一部に第1逃し部を有する。前記第1逃し部は、前記パンチの前記回転部側の一部を収容可能な形状を有する窪みである。前記回転駆動部は、前記回転部を、前記軸線を中心として回転させることにより、前記軸線方向から見て、前記複数のパンチのうち一部のパンチの前記回転部側の端部と重なる位置に前記第1逃し部を位置付ける。
【0107】
(2)(1)に記載の金型において、前記回転部における前記窪みの側面は、前記回転部を前記軸線方向から見て、周方向の一側に位置する側面部及び前記周方向の他側に位置する側面部を有する。前記周方向の一側に位置する側面部及び前記周方向の他側に位置する側面部のうち少なくとも一方の側面部は、第1傾斜面を有する。前記第1傾斜面は、前記窪みの開口に向かうにつれて、他方の側面部から離れる方向に傾く面である。
【0108】
(3)(2)に記載の金型において、前記複数のパンチの前記端部は、前記回転部の前記窪み内に収容された状態で、前記窪みの前記第1傾斜面と対向する部分に第2傾斜面を有する。前記第2傾斜面は、前記パンチの前記回転部側の先端に向かうにつれて、前記周方向に隣り合うパンチから離れる方向に傾く面である。
【0109】
(4)(3)に記載の金型において、前記軸線方向と前記窪みの前記第1傾斜面とがなす角度は、前記軸線方向と前記パンチの前記第2傾斜面とがなす角度よりも大きい。
【0110】
(5)(3)または(4)に記載の金型において、前記回転駆動部は、前記回転部を、回転方向の一方または他方に回転させる。前記回転部における前記窪みの前記周方向の一側に位置する側面部及び前記周方向の他側に位置する側面部は、それぞれ前記第1傾斜面を有する。
【0111】
(6)(1)から(5)のいずれか一つに記載の金型において、前記回転部は、前記パンチ側の端面上において、前記軸線方向から見て前記複数のパンチの前記端部と重なる部分に、前記パンチの前記端部と接触する接触部を有する。前記複数のパンチの前記端部は、前記回転部の前記接触部と接触する被接触部を有する。前記接触部は、前記軸線方向に垂直な面である。前記被接触部は、前記軸線方向に垂直な面である。
【0112】
(7)(1)から(6)のいずれか一つに記載の金型において、前記回転部は、前記パンチ側とは反対側の端部に、軸線方向に突出する突出部を有する。前記軸方向移動部は、前記回転部に対して前記反対側に位置し、前記回転部側の端面上に第2逃し部を有する。前記第2逃し部は、前記回転部の前記突出部を収容可能な大きさを有する窪みである。前記軸方向移動部は、前記軸線方向から見て、前記回転部の前記突出部が前記第2逃し部と重なる位置と、重ならない位置との間を移動可能である。
【0113】
(8)打ち抜き方法は、(1)から(7)のいずれか一つに記載の金型を用いて加工対象に打ち抜き加工をする打ち抜き方法である。前記打ち抜き方法は、前記回転部を前記回転駆動部によって前記軸線を中心として回転させて、前記軸線方向から見て前記複数のパンチのそれぞれの前記回転部側の端部と重なる位置に、接触部または前記第1逃し部を位置付ける回転工程と、前記軸方向移動部によって前記回転部を前記軸線方向に移動させて、前記第1逃し部が位置付けられた前記パンチの前記回転部側の一部を前記第1逃し部の前記窪み内に収容し、且つ、前記接触部が位置付けられた前記パンチの前記端部に前記回転部を接触させ、前記接触部が位置付けられた前記パンチによって前記加工対象を打ち抜く打ち抜き工程と、
を有する。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明は、ダイとパンチとによって加工対象に打ち抜き加工をするための金型に適用可能である。
【符号の説明】
【0115】
1、101 金型
2、102 軸方向移動部
3 パンチ
4、104 回転部
5 回転駆動部
6 ダイ
21、121 本体部
22 駆動部
31 軸部
32 駆動カム部
33 パンチ本体部
33a 刃
34 筒部
35 テーパ部
41 逃し部(第1逃し部)
41a、41b 開口部
42 接触部
61 溝
104a 回転本体部
104b 筐体
122 スライダ
122a 第2逃し部
123 軸方向駆動部
124 スライダ駆動部
141 第1逃し部
143 突出部
351 被接触面(被接触部)
352 傾斜面(第2傾斜面)
411 底面
412 側面
412a 傾斜面(第1傾斜面)
D3 軸線方向とパンチの傾斜面とがなす角度
D4 軸線方向と逃し部の傾斜面とがなす角度
P 軸線
W 加工対象
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18