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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123329
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】放熱部材、および冷却装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/473 20060101AFI20240905BHJP
   F28F 1/22 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
H01L23/46 Z
F28F1/22 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030639
(22)【出願日】2023-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西川 和宏
【テーマコード(参考)】
5F136
【Fターム(参考)】
5F136BA22
5F136CB07
(57)【要約】      (修正有)
【課題】冷却効率を向上させることができる放熱部材を提供する。
【解決手段】放熱部材において、フィンは、第1方向に沿って配置される複数のスポイラーを有する。複数のスポイラーはそれぞれ、側板部301に第2方向に貫通して設けられる開口部の周縁において1箇所のみ第2方向に突出し、かつ、下流側である第1方向一方側かつ第3方向他方側に傾斜する。複数のスポイラーは、1つの上流側スポイラー304Aと、上流側スポイラー304Aよりも第1方向一方側に配置される少なくとも1つの下流側スポイラー304B,304Cと、を含む。上流側スポイラー304Aの第1方向他方側端部の第3方向他方側端T1は側板部、301の第3方向中心位置よりも第3方向一方側に位置する。すべての下流側スポイラー304B、304Cの少なくとも一部は、上流側スポイラー304Aの第1方向一方側端部の第3方向他方側端よりも第3方向他方側に位置する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒が流れる方向に沿う第1方向、かつ第1方向に直交する第2方向に広がり、第1方向および第2方向に直交する第3方向に厚みを有する板形状のベース部と、
前記ベース部から第3方向一方側に突出し、かつ第1方向に延びるフィンと、
を有し、
前記フィンは、
第1方向かつ第3方向に広がり、かつ第2方向に厚みを有する側板部と、
第1方向に沿って配置される複数のスポイラーと、
を有し、
前記複数のスポイラーはそれぞれ、前記側板部に第2方向に貫通して設けられる開口部の周縁において1箇所のみ第2方向に突出し、かつ下流側である第1方向一方側かつ第3方向他方側に傾斜し、
前記複数のスポイラーは、1つの上流側スポイラーと、前記上流側スポイラーよりも第1方向一方側に配置される少なくとも1つの下流側スポイラーと、を含み、
前記上流側スポイラーの第1方向他方側端部の第3方向他方側端は、前記側板部の第3方向中心位置よりも第3方向一方側に位置し、
すべての前記下流側スポイラーの少なくとも一部は、前記上流側スポイラーの第1方向一方側端部の第3方向他方側端よりも第3方向他方側に位置する、放熱部材。
【請求項2】
前記上流側スポイラーの第1方向一方側端部の第3方向他方側端は、前記第3方向中心位置よりも第3方向一方側に位置する、請求項1に記載の放熱部材。
【請求項3】
少なくとも1つの前記下流側スポイラーの全部は、前記上流側スポイラーの第1方向一方側端部の第3方向他方側端よりも第3方向他方側に位置する、請求項1に記載の放熱部材。
【請求項4】
前記下流側スポイラーは、複数設けられ、
前記複数の前記下流側スポイラーは、第1方向に沿う順序において隣り合って配置される第1方向他方側の第1下流側スポイラーと第1方向一方側の第2下流側スポイラーとからなる下流側スポイラー組を少なくとも1つ有し、
少なくともいずれかの前記下流側スポイラー組において、前記第2下流側スポイラーの少なくとも一部は、前記第1下流側スポイラーの第1方向一方側端部の第3方向他方側端よりも第3方向他方側に位置する、請求項1に記載の放熱部材。
【請求項5】
前記複数のスポイラーのうち少なくともいずれかの前記スポイラーと第1方向とがなす角度は45度以下である、請求項1に記載の放熱部材。
【請求項6】
前記複数のスポイラーは、第1方向に沿う順序において隣り合って配置される第1方向他方側の第1スポイラーと第1方向一方側の第2スポイラーとからなるスポイラー組を少なくとも1つ有し、
少なくともいずれかの前記スポイラー組における前記第1スポイラーと前記第2スポイラーとの第1方向の間と、最も第1方向一方側に配置される前記第2スポイラーの第1方向一方側と、の少なくとも一方には、前記側板部を第2方向に貫通するスリットが少なくとも1つ設けられ、
前記スリットの少なくとも一部は、当該スリットの第1方向他方側において最も当該スリットの近くに配置される前記スポイラーの第1方向一方側端部の第3方向他方側端よりも第3方向他方側に位置する、請求項1に記載の放熱部材。
【請求項7】
少なくともいずれかの前記スリットの全部は、前記近くに配置される前記スポイラーの第1方向一方側端部の第3方向他方側端よりも第3方向他方側に位置する、請求項6に記載の放熱部材。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の放熱部材と、
前記放熱部材が設置される液冷ジャケットと、
を有し、
前記液冷ジャケットは、第3方向一方側の成分を有する方向に延びる壁面に沿って設けられる出口側流路を有し、
前記ベース部の第3方向他方側においては、前記壁面の第1方向他方側端から第1方向一方側に少なくとも一部が配置される発熱体を設置可能であり、
前記複数のスポイラーのうち少なくとも最も第1方向一方側の前記スポイラーは、前記発熱体の第3方向一方側に配置される、冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、放熱部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発熱体の冷却に放熱部材が用いられる。放熱部材は、ベース部と、複数のフィンと、を有する。複数のフィンは、ベース部から突出する。複数のフィンにおける隣接するフィン同士の間を水などの冷媒が流れることにより、発熱体の熱は冷媒に移動する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】中国特許出願公開第106546116号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
放熱部材においては、ベース部の底面側(フィンとは反対側)に発熱体が配置されるため、ベース部側が高温となる。従って、冷却効率を向上させるためには、ベース部側の冷却性能を改善することが課題となる。
【0005】
上記状況に鑑み、本開示は、冷却効率を向上させることができる放熱部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の例示的な放熱部材は、冷媒が流れる方向に沿う第1方向、かつ第1方向に直交する第2方向に広がり、第1方向および第2方向に直交する第3方向に厚みを有する板形状のベース部と、前記ベース部から第3方向一方側に突出し、かつ第1方向に延びるフィンと、を有する。前記フィンは、第1方向かつ第3方向に広がり、かつ第2方向に厚みを有する側板部と、第1方向に沿って配置される複数のスポイラーと、を有する。前記複数のスポイラーはそれぞれ、前記側板部に第2方向に貫通して設けられる開口部の周縁において1箇所のみ第2方向に突出し、かつ下流側である第1方向一方側かつ第3方向他方側に傾斜する。前記複数のスポイラーは、1つの上流側スポイラーと、前記上流側スポイラーよりも第1方向一方側に配置される少なくとも1つの下流側スポイラーと、を含む。前記上流側スポイラーの第1方向他方側端部の第3方向他方側端は、前記側板部の第3方向中心位置よりも第3方向一方側に位置する。すべての前記下流側スポイラーの少なくとも一部は、前記上流側スポイラーの第1方向一方側端部の第3方向他方側端よりも第3方向他方側に位置する。
【発明の効果】
【0007】
本開示の例示的な放熱部材によれば、冷却効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本開示の例示的な実施形態に係る放熱部材の斜視図である。
図2図2は、放熱部材において一部のフィンを取り外した状態を示す斜視図である。
図3図3は、図2に示す状態の放熱部材を第2方向一方側へ視た側面図である。
図4図4は、フィンの第1方向一方側(下流側)における一部構成を示す斜視図である。
図5図5は、図2の状態の放熱部材における下流側の一部を第2方向一方側に視た側面図である。
図6図6は、上流側スポイラーの位置関係を示す図である。
図7図7は、図2の状態の放熱部材における下流側の一部を第2方向一方側に視た側面図である。
図8図8は、図2の状態の放熱部材における下流側の一部を第2方向一方側に視た側面図である。
図9図9は、図2の状態の放熱部材における下流側の一部を第2方向一方側に視た側面図である。
図10図10は、図2の状態の放熱部材における下流側の一部を第2方向一方側に視た側面図である。
図11図11は、放熱部材を備える冷却装置の一部側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本開示の例示的な実施形態について、図面を参照して説明する。
【0010】
なお、図面においては、第1方向をX方向として、X1を第1方向一方側、X2を第1方向他方側として示す。第1方向は、冷媒Wが流れる方向Fに沿い、下流側をF1、上流側をF2として示す。また、第1方向に直交する第2方向をY方向として、Y1を第2方向一方側、Y2を第2方向他方側として示す。また、第1方向および第2方向に直交する第3方向をZ方向として、Z1を第3方向一方側、Z2を第3方向他方側として示す。なお、上記直交とは、90度から若干ずれた角度での交差も含む。また、上記の各方向は、放熱部材および冷却装置を各種機器に組み込んだときの方向を限定しない。
【0011】
<1.放熱部材の全体構成>
図1は、本開示の例示的な実施形態に係る放熱部材1の斜視図である。図2は、放熱部材1において一部のフィンを取り外した状態を示す斜視図である。図3は、図2に示す状態の放熱部材1を第2方向一方側へ視た側面図である。ただし、図3においては、放熱部材1により冷却する対象となる発熱体4A,4B,4C,4D,4E,4F(以下、4A等)も図示している。
【0012】
放熱部材1は、第1方向に配置される複数の発熱体4A等を冷却する装置である。発熱体4A等は、例えば、車両の車輪を駆動するためのトラクションモータに備えられるインバータのパワートランジスタである。当該パワートランジスタは、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)である。この場合、放熱部材1は、トラクションモータに搭載される。なお、発熱体の個数は、6個以外の複数個であってもよいし、単数であってもよい。
【0013】
放熱部材1は、ベース部2と、放熱フィン部10と、を有する。
【0014】
ベース部2は、第1方向かつ第2方向に広がり、第3方向に厚みを有する板形状である。ベース部2は、熱伝導性の高い金属から構成され、例えば銅板から構成される。
【0015】
放熱フィン部10は、フィン3を第2方向に複数配置することで、いわゆるスタックドフィンとして構成される。1枚のフィン3は、第1方向に延びる金属板から構成され、例えば、銅板により構成される。放熱フィン部10は、例えばろう付けにより、ベース部2の第3方向一方側の面21に固定される。すなわち、放熱部材1は、ベース部2から第3方向一方側に突出し、かつ第1方向に延びるフィン3を有する。
【0016】
なお、図2は、放熱フィン部10において第2方向他方側の複数のフィン3から構成される部分を取り外した状態であり、取り外した状態で最も第2方向他方側に位置するフィン30が図示されている。図1に示す放熱部材1においては、第2方向位置によって異なる形状のフィン3が使用されるが、使用されるフィン3がすべて同じ形状であってもよい。フィン30の構成については、後に詳細に述べる。
【0017】
発熱体4A等は、ベース部2の第3方向他方側の面22に直接的または間接的に接触される(図3参照)。第3方向に視て、発熱体4A等は、それぞれ放熱フィン部10と重なる。
【0018】
放熱フィン部10よりも上流側から冷媒Wが放熱フィン部10に供給されることで、冷媒Wは、第2方向に隣り合うフィン3の間を第1方向一方側へ流れ、発熱体4A等から発生した熱は、それぞれベース部2およびフィン3を介して冷媒Wに移動する。これにより、発熱体4A等が冷却される。
【0019】
<2.フィンの構成>
ここで、図4を用いてフィン30の構成について説明する。図4は、フィン30の第1方向一方側(下流側)における一部構成を示す斜視図である。図4に示すように、フィン30は、第1方向かつ第3方向に広がり、かつ第2方向に厚みを有する側板部301を有する。また、フィン30は、側板部301の第3方向一方側端部において第2方向他方側へ折り曲げられて形成される天板部302と、側板部301の第3方向他方側端部において第2方向他方側へ折り曲げられて形成される底板部303と、を有する。なお、図4において、天板部302および底板部303は、第1方向に沿って分割されているが、必ずしも分割されていなくてもよい。底板部303がベース部2の第3方向一方側の面21に固定される。冷媒Wは、側板部301、天板部302、および底板部303に沿って流れる。
【0020】
図4に示すように、側板部301には、第2方向に貫通する開口部305が設けられる。開口部305は、矩形状である。開口部305は、周縁を構成する4辺のうち、第1方向一方側かつ第3方向他方側に傾斜する辺305A,305Bを有する。辺305Aは、辺305Bよりも第3方向一方側に位置する。
【0021】
スポイラー304は、辺305Aと辺305Bの少なくとも一方において、第2方向他方側に折り曲げられることで形成される。スポイラー304は、側板部301に切り込みを入れて折り曲げることで形成できる。スポイラー304は、第1方向一方側かつ第3方向他方側に傾斜する。辺305A,305Bのうち一方のみから突出して設けられるスポイラーは、シングルスポイラーと呼ばれる。図4に示す4個のスポイラー304は、シングルスポイラーである。辺305A,305Bの両方からともに第2方向他方側に突出して設けられるスポイラーの組は、ダブルスポイラーと呼ばれる。
【0022】
スポイラー304は、冷媒Wが流れる方向、すなわち第1方向一方側に対向する対向面Sを有する。スポイラー304は、対向面Sにより冷媒Wの流れを妨げる機能を有する。対向面S付近に冷媒Wの乱流を発生させやすくなり、フィン3による冷却性能を向上させることができる。
【0023】
<3.スポイラーの構成>
ここで、スポイラー304のうち、最下流側のスポイラー304A,304B,304Cに着目して説明する。スポイラー304A,304B,304Cは、いずれもシングルスポイラーである。すなわち、フィン30は、第1方向に沿って配置される複数のスポイラー304A,304B,304Cを有する。複数のスポイラー304A,304B,304Cはそれぞれ、側板部301に第2方向に貫通して設けられる開口部305の周縁において1箇所のみ第2方向に突出し、かつ第1方向一方側かつ第3方向他方側に傾斜する。
【0024】
以下、スポイラー304Aを上流側スポイラー304A、スポイラー304B,304Cを下流側スポイラー304B,304Cと呼ぶ。なお、下流側スポイラーは、3個以上の複数個であってもよいし、単数であってもよい。すなわち、複数のスポイラー304A,304B,304Cは、1つの上流側スポイラー304Aと、上流側スポイラー304Aよりも第1方向一方側に配置される少なくとも1つの下流側スポイラー304B,304Cと、を含む。
【0025】
図5は、図2の状態の放熱部材1における下流側の一部を第2方向一方側に視た側面図である。図5に示すように、上流側スポイラー304Aの第1方向他方側端部(上流側端部)の第3方向他方側端T1は、側板部301の第3方向中心位置Cよりも第3方向一方側に位置する。なお、第3方向他方側端T1は、図6に示すように第3方向中心位置Cに位置する状態から第3方向一方側に位置すればよい。
【0026】
また、図7は、図5と同様の側面図である。図7に示すように、下流側スポイラー304B,304Cの全部は、上流側スポイラー304Aの第1方向一方側端部(下流側端部)の第3方向他方側端T2よりも第3方向方他方側に位置する。なお、例えば、下流側304Bを図7の位置よりも第3方向一方側にずらして、下流側スポイラー304Bの一部が、第3方向他方側端T2よりも第3方向方他方側に位置するようにしてもよい。すなわち、すべての下流側スポイラー304B,304Cの少なくとも一部は、上流側スポイラー304Aの第1方向一方側端部の第3方向他方側端T2よりも第3方向他方側に位置する。
【0027】
スポイラー304は、第3方向一方側(ベース部2と反対側)と第3方向他方側(ベース部2側)に冷媒を分流する作用を有するが、複数のスポイラー304A,304B,304Cにおいて最も上流側に配置される上流側スポイラー304Aを第3方向中心位置Cに対して上記位置関係とすることにより、第3方向一方側に分流する冷媒量を減らし、第3方向他方側へ冷媒Wをより多く引き込める。上流側スポイラー304Aにより第3方向他方側へ押し付けられた冷媒Wは、下流側スポイラー304B,304Cにより再度第3方向他方側へ押し付けることができる。ベース部2側となる第3方向他方側では高温となるので、冷媒を第3方向他方側へ押し付けることで冷却効率が向上される。なお、スポイラー304A,304B,304Cはシングルスポイラーである。同一開口部の対向する辺にスポイラーを形成するダブルスポイラーでは、互いの距離が近く乱流を起こしやすい構造であるが、シングルスポイラーは冷媒を第3方向他方側へ押し付ける効果が高い。
【0028】
また、図5に示すように、上流側スポイラー304Aの第1方向一方側端部の第3方向他方側端T2は、第3方向中心位置Cよりも第3方向一方側に位置する。これにより、上流側スポイラー304Aにより、より多くの冷媒Wを第3方向他方側へ引き込める。
【0029】
また、図7に示すように、少なくとも1つの下流側スポイラー304B,304Cの全部は、上流側スポイラー304Aの第1方向一方側端部の第3方向他方側端T2よりも第3方向他方側に位置する。これにより、下流側スポイラー304B,304Cによる冷媒Wを第3方向他方側へ押し付ける効果が大きくなる。
【0030】
また、図8は、図5と同様の側面図である。図8に示すように、下流側スポイラー304Cの一部は、下流側スポイラー304Bの第1方向一方側端部の第3方向他方側端T3よりも第3方向他方側に位置する。なお、下流側スポイラー304Cの全部が、第3方向他方側端T3よりも第3方向他方側に位置するようにしてもよい。
【0031】
すなわち、下流側スポイラー304B,304Cは、複数設けられる。複数の下流側スポイラー304B,304Cは、第1方向に沿う順序において隣り合って配置される第1方向他方側の第1下流側スポイラー304Bと第1方向一方側の第2下流側スポイラー304Cとからなる下流側スポイラー組Gを少なくとも1つ有する。少なくともいずれかの下流側スポイラー組Gにおいて、第2下流側スポイラー304Cの少なくとも一部は、第1下流側スポイラー304Bの第1方向一方側端部の第3方向他方側端T3よりも第3方向他方側に位置する。これにより、下流側ほど冷媒Wを第3方向他方側へ押し付ける効果を大きくできる。下流側ほど冷媒Wが高温となるので、このような構成が望ましい。
【0032】
また、図9は、図5と同様の側面図である。図9に示すように、スポイラー304A,40B,304Cのそれぞれと第1方向とがなす角度θ1,θ2,θ3は、いずれも45度以下である。すなわち、複数のスポイラー304A,304B,304Cのうち少なくともいずれかのスポイラーと第1方向とがなす角度は45度以下である。これにより、スポイラー304A,304B,304Cによる乱流の発生による圧力損失を抑制しつつ、冷媒Wを第3方向他方側へ押し付ける効果を奏することができる。
【0033】
また、図10は、図5と同様の側面図である。図10に示すように、上流側スポイラー304Aと下流側スポイラー304Bとからスポイラー組G1が構成される。上流側スポイラー304Aと下流側スポイラー304Bとの第1方向の間には、スリットS1が設けられる。下流側スポイラー304Bと下流側スポイラー304Cとからスポイラー組G2が構成される。下流側スポイラー304Bと下流側スポイラー304Cとの第1方向の間には、スリットS2が設けられる。下流側スポイラー304Cの第1方向一方側には、スリットS3が設けられる。スリットS1,S2,S3は、側板部301を第2方向に貫通して設けられる。
【0034】
スリットS1の全部は、スリットS1の上流側直近の上流側スポイラー304Aの第1方向一方側端部の第3方向他方側端T2よりも第3方向他方側に位置する。スリットS2の全部は、スリットS2の上流側直近の下流側スポイラー304Bの第1方向一方側端部の第3方向他方側端T3よりも第3方向他方側に位置する。スリットS3の一部は、スリットS3の上流側直近の下流側スポイラー304Cの第1方向一方側端部の第3方向他方側端T4よりも第3方向他方側に位置する。
【0035】
スリットS1,S2,S3を設けることで、側板部301で発達する流れの境界層を破壊し、かつ乱流を促進するため、冷却効率が向上する。
【0036】
すなわち、複数のスポイラー304A,304B,304Cは、第1方向に沿う順序において隣り合って配置される第1方向他方側の第1スポイラーと第1方向一方側の第2スポイラーとからなるスポイラー組G1,G2を少なくとも1つ有する。少なくともいずれかのスポイラー組G1,G2における第1スポイラーと第2スポイラーとの第1方向の間と、最も第1方向一方側に配置される第2スポイラーの第1方向一方側と、の少なくとも一方には、側板部301を第2方向に貫通するスリットS1,S2,S3が少なくとも1つ設けられる。スリットS1,S2,S3の少なくとも一部は、当該スリットの第1方向他方側において最も当該スリットの近くに配置されるスポイラーの第1方向一方側端部の第3方向他方側端よりも第3方向他方側に位置する。上流側の第1スポイラーによって冷媒Wの流れを集中させた状態で、冷却性能を有するスリットS1,S2,S3へ冷媒Wを流すため、冷却性能をより向上させることができる。
【0037】
また、少なくともいずれかのスリットS1,S2の全部は、上記近くに配置されるスポイラー304A,304Bの第1方向一方側端部の第3方向他方側端T2,T3よりも第3方向他方側に位置する。これにより、スポイラー304A,304Bの第1方向一方側端部の第3方向他方側端T2,T3よりも第3方向一方側にはスリットS1,S2を設けないため、乱流による圧力損失を抑制できる。
【0038】
<4.冷却装置の構成>
図11は、放熱部材1を備える冷却装置15の一部側面断面図である。図11は、放熱部材1の最下流側における構成を示す。冷却装置15は、放熱部材1と、放熱部材1が設置される液冷ジャケット5と、を有する。
【0039】
液冷ジャケット5と放熱部材1とで囲まれる空間を冷媒Wが流れる。液冷ジャケット5は、出口側流路52を有する。出口側流路52は、液冷ジャケット5に設けられる壁面51に沿って形成される。壁面51は、第1方向一方側かつ第3方向一方側に傾斜する。すなわち、壁面51は、第1方向一方側の成分と第3方向一方側の成分とを合成した方向に延びる。なお、壁面51は、第1方向の成分を含まず第3方向一方側の成分を含む方向(図11の紙面上方)に延びて形成されてもよい。すなわち、液冷ジャケット5は、第3方向一方側の成分を有する方向に延びる壁面51に沿って設けられる出口側流路52を有する。
【0040】
図11に示すように、最下流側の発熱体4Fの一部は、壁面51の第1方向他方側端T5から第1方向一方側に位置する。なお、発熱体4Fの全部が、第1方向他方側端T5から第1方向一方側に位置するようにしてもよい。すなわち、ベース部2の第3方向他方側においては、壁面51の第1方向他方側端T5から第1方向一方側に少なくとも一部が配置される発熱体4Fを設置可能である。
【0041】
図11に示すように、スポイラー304A,304B,304Cのうち、下流側スポイラー304B,304Cは、発熱体4Fの第3方向一方側に配置される。なお、上流側スポイラー304Aおよび下流側スポイラー304B,304Cが発熱体4Fの第3方向一方側に配置されてもよいし、下流側スポイラー304Cのみが発熱体4Fの第3方向一方側に配置されてもよい。すなわち、複数のスポイラー304A,304B,304Cのうち少なくとも最も第1方向一方側のスポイラー304Cは、発熱体4Fの第3方向一方側に配置される。
【0042】
出口側流路52により最下流側において冷媒Wは第3方向一方側に流れやすいが、冷媒Wが第3方向一方側に流れることを少なくともスポイラー304Cにより抑制するので、冷媒Wを最下流側の発熱体4F付近に導き、当該発熱体4Fの温度上昇を抑制できる。
【0043】
なお、以上説明したスポイラー304A,304B,304Cについては、放熱部材1における最下流側に限らず、より上流側に設けてもよい。
【0044】
<5.その他>
以上、本開示の実施形態を説明した。なお、本開示の範囲は上述の実施形態に限定されない。本開示は、発明の主旨を逸脱しない範囲で上述の実施形態に種々の変更を加えて実施することができる。また、上述の実施形態で説明した事項は、矛盾を生じない範囲で適宜任意に組み合わせることができる。
【0045】
<6.付記>
以上のように、本開示の一態様に係る放熱部材は、
冷媒が流れる方向に沿う第1方向、かつ第1方向に直交する第2方向に広がり、第1方向および第2方向に直交する第3方向に厚みを有する板形状のベース部と、
前記ベース部から第3方向一方側に突出し、かつ第1方向に延びるフィンと、
を有し、
前記フィンは、
第1方向かつ第3方向に広がり、かつ第2方向に厚みを有する側板部と、
第1方向に沿って配置される複数のスポイラーと、
を有し、
前記複数のスポイラーはそれぞれ、前記側板部に第2方向に貫通して設けられる開口部の周縁において1箇所のみ第2方向に突出し、かつ下流側である第1方向一方側かつ第3方向他方側に傾斜し、
前記複数のスポイラーは、1つの上流側スポイラーと、前記上流側スポイラーよりも第1方向一方側に配置される少なくとも1つの下流側スポイラーと、を含み、
前記上流側スポイラーの第1方向他方側端部の第3方向他方側端は、前記側板部の第3方向中心位置よりも第3方向一方側に位置し、
すべての前記下流側スポイラーの少なくとも一部は、前記上流側スポイラーの第1方向一方側端部の第3方向他方側端よりも第3方向他方側に位置する構成としている(第1の構成)。
【0046】
また、上記第1の構成において、前記上流側スポイラーの第1方向一方側端部の第3方向他方側端は、前記第3方向中心位置よりも第3方向一方側に位置する構成としてもよい(第2の構成)。
【0047】
また、上記第1または第2の構成において、少なくとも1つの前記下流側スポイラーの全部は、前記上流側スポイラーの第1方向一方側端部の第3方向他方側端よりも第3方向他方側に位置する構成としてもよい(第3の構成)。
【0048】
また、上記第1から第3のいずれかの構成において、前記下流側スポイラーは、複数設けられ、
前記複数の前記下流側スポイラーは、第1方向に沿う順序において隣り合って配置される第1方向他方側の第1下流側スポイラーと第1方向一方側の第2下流側スポイラーとからなる下流側スポイラー組を少なくとも1つ有し、
少なくともいずれかの前記下流側スポイラー組において、前記第2下流側スポイラーの少なくとも一部は、前記第1下流側スポイラーの第1方向一方側端部の第3方向他方側端よりも第3方向他方側に位置する構成としてもよい(第4の構成)。
【0049】
また、上記第1から第4のいずれかの構成において、前記複数のスポイラーのうち少なくともいずれかの前記スポイラーと第1方向とがなす角度は45度以下である構成としてもよい(第5の構成)。
【0050】
また、上記第1から第5のいずれかの構成において、前記複数のスポイラーは、第1方向に沿う順序において隣り合って配置される第1方向他方側の第1スポイラーと第1方向一方側の第2スポイラーとからなるスポイラー組を少なくとも1つ有し、
少なくともいずれかの前記スポイラー組における前記第1スポイラーと前記第2スポイラーとの第1方向の間と、最も第1方向一方側に配置される前記第2スポイラーの第1方向一方側と、の少なくとも一方には、前記側板部を第2方向に貫通するスリットが少なくとも1つ設けられ、
前記スリットの少なくとも一部は、当該スリットの第1方向他方側において最も当該スリットの近くに配置される前記スポイラーの第1方向一方側端部の第3方向他方側端よりも第3方向他方側に位置する構成としてもよい(第6の構成)。
【0051】
また、上記第6の構成において、少なくともいずれかの前記スリットの全部は、前記近くに配置される前記スポイラーの第1方向一方側端部の第3方向他方側端よりも第3方向他方側に位置する構成としてもよい(第7の構成)。
【0052】
また、本開示の一態様に係る冷却装置は、上記第1から第7のいずれかの構成の放熱部材と、
前記放熱部材が設置される液冷ジャケットと、
を有し、
前記液冷ジャケットは、第3方向一方側の成分を有する方向に延びる壁面に沿って設けられる出口側流路を有し、
前記ベース部の第3方向他方側においては、前記壁面の第1方向他方側端から第1方向一方側に少なくとも一部が配置される発熱体を設置可能であり、
前記複数のスポイラーのうち少なくとも最も第1方向一方側の前記スポイラーは、前記発熱体の第3方向一方側に配置される(第8の構成)。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本開示の技術は、例えば、各種発熱体の冷却に利用することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 放熱部材
2 ベース部
3 フィン
4A,4B,4C,4D,4E,4F 発熱部材
5 液冷ジャケット
10 放熱フィン部
15 冷却装置
30 フィン
51 壁面
52 出口側流路
301 側板部
302 天板部
303 底板部
304 スポイラー
304A 上流側スポイラー
304B,304C 下流側スポイラー
305 開口部
305A,305B 辺
C 第3方向中心位置
G 下流側スポイラー組
G1,G2 スポイラー組
S 対向面
S1 スリット
S1,S2,S3 スリット
T1,T2,T3,T4 第3方向他方側端
T5 第1方向他方側端
W 冷媒
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11