(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123333
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】電源装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/155 20060101AFI20240905BHJP
【FI】
H02M3/155 W
H02M3/155 C
H02M3/155 Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030644
(22)【出願日】2023-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】徐 炳億
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA20
5H730AS04
5H730BB14
5H730BB57
5H730BB82
5H730BB89
5H730DD04
5H730FF09
5H730FG05
5H730ZZ11
5H730ZZ15
5H730ZZ17
(57)【要約】
【課題】変圧用のコイルを導電パターンで形成した場合に、電力を適正に供給することができる電源装置を提供する。
【解決手段】電源装置1において、基板ユニットBUは、基材Bに形成される導電パターンであって第1磁気コアM1の周りに螺旋状に形成される第1コイル状パターンL1、及び、基材Bに形成される導電パターンであって第2磁気コアM2の周りに螺旋状に形成される第2コイル状パターンL2を含む。制御部は、第1スイッチング素子及び第2スイッチング素子をPWM制御する際に、第1コイル状パターンL1に供給される1周期当たりの電力量を当該第1コイル状パターンL1で許容可能な電力量とする周波数で第1スイッチング素子を制御し、かつ、第2コイル状パターンL2に供給される1周期当たりの電力量を当該第2コイル状パターンL2で許容可能な電力量とする周波数で第2スイッチング素子を制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1DC/DCコンバータと第2DC/DCコンバータとが互いに並列に接続して設けられ直流電力の電圧を変圧するマルチフェーズ型DC/DCコンバータと、
前記マルチフェーズ型DC/DCコンバータをPWM制御する制御部と、を備え、
前記マルチフェーズ型DC/DCコンバータは、絶縁性を有する基材、磁性材料を含み前記基材に形成された第1貫通孔に設けられる第1磁気コア、前記基材に形成される導電パターンであって前記第1磁気コアの周りに螺旋状に形成される第1コイル状パターン、磁性材料を含み前記基材に形成された第2貫通孔に設けられる第2磁気コア、及び、前記基材に形成される導電パターンであって前記第2磁気コアの周りに螺旋状に形成される第2コイル状パターンを含み、前記第1コイル状パターン及び前記第2コイル状パターンが結合された結合コイル状パターンを構成する基板ユニットと、
前記第1コイル状パターンに流れる電流を通電又は遮断する第1スイッチング素子と、
前記第2コイル状パターンに流れる電流を通電又は遮断する第2スイッチング素子と、
前記第1コイル状パターン及び前記第2コイル状パターンから出力される直流電力を平滑化するコンデンサと、を含んで構成され、
前記第1DC/DCコンバータは、前記第1磁気コア、前記第1コイル状パターン、及び、前記第1スイッチング素子を含み、
前記第2DC/DCコンバータは、前記第2磁気コア、前記第2コイル状パターン、及び、前記第2スイッチング素子を含み、
前記制御部は、前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子を前記PWM制御する際に、前記第1コイル状パターンに供給される1周期当たりの電力量を当該第1コイル状パターンで許容可能な電力量とする周波数で前記第1スイッチング素子を制御し、かつ、前記第2コイル状パターンに供給される1周期当たりの電力量を当該第2コイル状パターンで許容可能な電力量とする周波数で前記第2スイッチング素子を制御することを特徴とする電源装置。
【請求項2】
前記第1コイル状パターンは、一端が電源に接続され、他端が負荷部及びグランドに接続され、
前記第1スイッチング素子は、コイル側第1スイッチング素子、及び、コンデンサ側第1スイッチング素子を含み、
前記コイル側第1スイッチング素子は、前記第1コイル状パターンの前記他端と前記グランドとの間に設けられ、前記第1コイル状パターンと前記グランドとの間に流れる電流を通電又は遮断し、
前記コンデンサ側第1スイッチング素子は、前記第1コイル状パターンの前記他端と前記負荷部との間に設けられ、前記第1コイル状パターンと前記負荷部との間に流れる電流を通電又は遮断し、
前記第2コイル状パターンは、一端が電源に接続され、他端が前記負荷部及び前記グランドに接続され、
前記第2スイッチング素子は、コイル側第2スイッチング素子、及び、コンデンサ側第2スイッチング素子を含み、
前記コイル側第2スイッチング素子は、前記第2コイル状パターンの前記他端と前記グランドとの間に設けられ、前記第2コイル状パターンと前記グランドとの間に流れる電流を通電又は遮断し、
前記コンデンサ側第2スイッチング素子は、前記第2コイル状パターンの前記他端と前記負荷部との間に設けられ、前記第2コイル状パターンと前記負荷部との間に流れる電流を通電又は遮断し、
前記コンデンサは、前記コンデンサ側第1スイッチング素子及び前記コンデンサ側第2スイッチング素子と前記負荷部との間に設けられ、前記負荷部に出力される直流電力を平滑化する請求項1に記載の電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電源装置として、例えば、特許文献1には、マルチフェーズ方式のDC/DCコンバータが記載されている。このDC/DCコンバータは、導体パターンにより積層基板に形成された結合コイルと、積層基板に設けられたコアとを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述の特許文献1に記載のマルチフェーズ方式のDC/DCコンバータは、導体パターンにより結合コイルを形成しているため、例えば、導電線により結合コイルを形成した場合と同じように電力を供給すると、導体パターンで形成された結合コイルが供給電力を許容できないおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、結合コイルを導電パターンで形成した場合に、電力を適正に供給することができる電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る電源装置は、第1DC/DCコンバータと第2DC/DCコンバータとが互いに並列に接続して設けられ直流電力の電圧を変圧するマルチフェーズ型DC/DCコンバータと、前記マルチフェーズ型DC/DCコンバータをPWM制御する制御部と、を備え、前記マルチフェーズ型DC/DCコンバータは、絶縁性を有する基材、磁性材料を含み前記基材に形成された第1貫通孔に設けられる第1磁気コア、前記基材に形成される導電パターンであって前記第1磁気コアの周りに螺旋状に形成される第1コイル状パターン、磁性材料を含み前記基材に形成された第2貫通孔に設けられる第2磁気コア、及び、前記基材に形成される導電パターンであって前記第2磁気コアの周りに螺旋状に形成される第2コイル状パターンを含み、前記第1コイル状パターン及び前記第2コイル状パターンが結合された結合コイル状パターンを構成する基板ユニットと、前記第1コイル状パターンに流れる電流を通電又は遮断する第1スイッチング素子と、前記第2コイル状パターンに流れる電流を通電又は遮断する第2スイッチング素子と、前記第1コイル状パターン及び前記第2コイル状パターンから出力される直流電力を平滑化するコンデンサと、を含んで構成され、前記第1DC/DCコンバータは、前記第1磁気コア、前記第1コイル状パターン、及び、前記第1スイッチング素子を含み、前記第2DC/DCコンバータは、前記第2磁気コア、前記第2コイル状パターン、及び、前記第2スイッチング素子を含み、前記制御部は、前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子を前記PWM制御する際に、前記第1コイル状パターンに供給される1周期当たりの電力量を当該第1コイル状パターンで許容可能な電力量とする周波数で前記第1スイッチング素子を制御し、かつ、前記第2コイル状パターンに供給される1周期当たりの電力量を当該第2コイル状パターンで許容可能な電力量とする周波数で前記第2スイッチング素子を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る電源装置は、スイッチング素子を相対的に高い周波数で制御することで周期を短くすることができ、周期を短くすることで1周期当たりの電力量を小さくすることができる。これにより、電源装置は、受動素子(コンデンサ)の1周期当たりに扱う電力量を、コイル状パターンでも許容可能な電力量まで下げることができる。これにより、電源装置は、コイル状パターン及び磁気コアによって結合コイル状パターンを構成することができる。この結果、電源装置は、電力を適正に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係るマルチフェーズ型DC/DCコンバータの構成例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係るマルチフェーズ型DC/DCコンバータの構成例を示す断面図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る電源装置の構成例を示す回路図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る電源装置の動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。更に、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0010】
図面を参照しながら実施形態に係る電源装置1について説明する。以下の説明では、互いに交差する第1方向、第2方向、及び、第3方向のうち、第1方向を「幅方向X」といい、第2方向を「奥行き方向Y」といい、第3方向を「軸線方向Z」という。ここでは、幅方向Xと奥行き方向Yと軸線方向Zとは、相互に交差し、典型的には直交する。幅方向Xは、基材Bの幅に沿う方向に相当する。奥行き方向Yは、基材Bの奥行きに沿う方向に相当する。軸線方向Zは、第1コイル状パターンL1の軸線Z1及び第2コイル状パターンL2の軸線Z2に沿う方向である。
【0011】
電源装置1は、例えば、車両に搭載され、車両の電源Pから供給される直流電力の電圧を変圧(例えば、昇圧)するものである。電源装置1は、
図1、
図2、
図3に示すように、マルチフェーズ型DC/DCコンバータ10と、制御部20とを備える。
【0012】
マルチフェーズ型DC/DCコンバータ10は、第1DC/DCコンバータ11と第2DC/DCコンバータ12とが互いに並列に接続して設けられ、制御部20の制御によって直流電力の電圧を変圧(例えば、昇圧)するものである。マルチフェーズ型DC/DCコンバータ10は、基板ユニットBUと、第1スイッチング素子Q1と、第2スイッチング素子Q2と、コンデンサCとを含んで構成される。
【0013】
基板ユニットBUは、基材Bと、磁気コアMと、第1コイル状パターンL1と、第2コイル状パターンL2とを含んで構成される。
【0014】
基材Bは、絶縁性を有し、矩形の板状に形成された部材である。基材Bは、例えば、エポキシ樹脂、ガラスエポキシ樹脂、紙エポキシ樹脂やセラミック等の絶縁性の材料から形成されている。基材Bは、第1貫通孔Ba1と、第2貫通孔Ba2と、第3貫通孔Ba3とを含んでいる。第1貫通孔Ba1、第2貫通孔Ba2、及び、第3貫通孔Ba3は、それぞれが軸線方向Zに沿って基材Bを貫通した円形状の貫通孔である。第1貫通孔Ba1、第2貫通孔Ba2、及び、第3貫通孔Ba3は、それぞれが幅方向Xに沿って並んで設けられている。この例では、第1貫通孔Ba1及び第2貫通孔Ba2は、基材Bの幅方向Xの両側に設けられ、第3貫通孔Ba3は、第1貫通孔Ba1と第2貫通孔Ba2との間に設けられている。
【0015】
磁気コアMは、フェライト等の磁性材料を含む部材である。磁気コアMは、例えば、第1磁気コアM1と、第2磁気コアM2と、第3磁気コアM3と、第1連結部Maと、第2連結部Mbとを含んで構成され、これらが一体形成されている。
【0016】
第1磁気コアM1は、軸線方向Zに沿って円柱状に形成されている。第1磁気コアM1は、軸線方向Zに沿って基材Bの第1貫通孔Ba1に挿通して設けられている。
【0017】
第2磁気コアM2は、軸線方向Zに沿って円柱状に形成され、例えば、第1磁気コアM1と同じ形状に形成されている。第2磁気コアM2は、軸線方向Zに沿って基材Bの第2貫通孔Ba2に挿通して設けられている。
【0018】
第3磁気コアM3は、軸線方向Zに沿って円柱状に形成され、例えば、第1磁気コアM1及び第2磁気コアM2よりも軸線方向Zの長さが短く形成されている。第3磁気コアM3は、軸線方向Zに沿って基材Bの第3貫通孔Ba3に挿通して設けられている。
【0019】
第1連結部Maは、第1磁気コアM1と第2磁気コアM2と第3磁気コアM3とを連結するものである。第1連結部Maは、幅方向Xに沿って板状に形成され、軸線方向Zの一方側に設けられている。第1連結部Maは、第1磁気コアM1の軸線方向Zの一端と第2磁気コアM2の軸線方向Zの一端と第3磁気コアM3の軸線方向Zの一端とを連結する。
【0020】
第2連結部Mbは、第1磁気コアM1と第2磁気コアM2とを連結するものである。第2連結部Mbは、幅方向Xに沿って板状に形成され、軸線方向Zの他方側に設けられている。第2連結部Mbは、第1磁気コアM1の軸線方向Zの他端と第2磁気コアM2の軸線方向Zの他端とを連結する。なお、第2連結部Mbは、第3磁気コアM3の軸線方向Zの他端とは連結されていない。
【0021】
第1コイル状パターンL1は、基材Bに形成される導電パターンである。第1コイル状パターンL1は、基材Bの絶縁層に、銅等の導電性の材料によって導電パターン(プリントパターン)が印刷されることで形成される。第1コイル状パターンL1は、第1磁気コアM1の軸線Z1周りに螺旋状に形成されている。第1コイル状パターンL1は、例えば、第1磁気コアM1の軸線Z1周りに1周半、螺旋状に形成されている。第1コイル状パターンL1は、一端L1aが電源Pに接続され、他端L1bが負荷部R及びグランドに接続される。具体的には、第1コイル状パターンL1は、一端L1aが電源Pの正極端子11aに接続され、他端L1bが負荷部Rの第1端子12a及び電源Pの負極端子11bに接続される。
【0022】
第2コイル状パターンL2は、基材Bに形成される導電パターンである。第2コイル状パターンL2は、基材Bの絶縁層に、銅等の導電性の材料によって導電パターン(プリントパターン)が印刷されることで形成される。第2コイル状パターンL2は、第2磁気コアM2の軸線Z2周りに螺旋状に形成されている。第2コイル状パターンL2は、例えば、第2磁気コアM2の軸線Z2周りに1周半、螺旋状に形成されている。第2コイル状パターンL2は、一端L2aが電源Pに接続され、他端L2bが負荷部R及びグランドに接続される。具体的には、第2コイル状パターンL2は、一端L2aが電源Pの正極端子11aに接続され、他端L2bが負荷部Rの第1端子12a及び電源Pの負極端子11bに接続される。上述の第1コイル状パターンL1及び第2コイル状パターンL2は、共通の磁気コアMに設けられ、幅方向Xに沿って対向配置されることで、各コイル状パターンL1、L2が結合された結合コイル状パターンGを構成する。第1コイル状パターンL1及び第2コイル状パターンL2は、結合コイル状パターンGを構成することで、各コイル状パターンL1、L2及び磁気コアMを小型化することができる。
【0023】
第1スイッチング素子Q1は、第1コイル状パターンL1に流れる電流を通電又は遮断する高性能のパワー半導体である。第1スイッチング素子Q1は、コイル側第1スイッチング素子Q11と、コンデンサ側第1スイッチング素子Q12とを含んで構成される。コイル側第1スイッチング素子Q11及びコンデンサ側第1スイッチング素子Q12は、例えば、Nチャネル型のMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-effect transistor)である。
【0024】
コイル側第1スイッチング素子Q11は、第1コイル状パターンL1の他端L1bとグランドとの間に設けられ、ドレイン端子が第1コイル状パターンL1の他端L1bに接続され、ソース端子がグランドに接続され、ゲート端子が制御部20に接続されている。コイル側第1スイッチング素子Q11は、第1コイル状パターンL1とグランドとの間に流れる電流を通電又は遮断する。
【0025】
コンデンサ側第1スイッチング素子Q12は、第1コイル状パターンL1の他端L1bと負荷部Rとの間に設けられ、ドレイン端子が第1コイル状パターンL1の他端L1bに接続され、ソース端子が負荷部Rの第1端子12aに接続され、ゲート端子が制御部20に接続されている。コンデンサ側第1スイッチング素子Q12は、第1コイル状パターンL1と負荷部Rとの間に流れる電流を通電又は遮断する。
【0026】
第2スイッチング素子Q2は、第2コイル状パターンL2に流れる電流を通電又は遮断する高性能のパワー半導体である。第2スイッチング素子Q2は、コイル側第2スイッチング素子Q21と、コンデンサ側第2スイッチング素子Q22とを含んで構成される。コイル側第2スイッチング素子Q21及びコンデンサ側第2スイッチング素子Q22は、例えば、Nチャネル型のMOSFETである。
【0027】
コイル側第2スイッチング素子Q21は、第2コイル状パターンL2の他端L2bとグランドとの間に設けられ、ドレイン端子が第2コイル状パターンL2の他端L2bに接続され、ソース端子がグランドに接続され、ゲート端子が制御部20に接続されている。コイル側第2スイッチング素子Q21は、第2コイル状パターンL2とグランドとの間に流れる電流を通電又は遮断する。
【0028】
コンデンサ側第2スイッチング素子Q22は、第2コイル状パターンL2の他端L2bと負荷部Rとの間に設けられ、ドレイン端子が第2コイル状パターンL2の他端L2bに接続され、ソース端子が負荷部Rの第1端子12aに接続され、ゲート端子が制御部20に接続されている。コンデンサ側第2スイッチング素子Q22は、第2コイル状パターンL2と負荷部Rとの間に流れる電流を通電又は遮断する。
【0029】
コンデンサCは、負荷部Rに供給される直流電力を平滑化するものである。コンデンサCは、コンデンサ側第1スイッチング素子Q12及びコンデンサ側第2スイッチング素子Q22と負荷部Rとの間に設けられている。コンデンサCは、負荷部Rの第1端子12a及び負荷部Rの第2端子12bに並列に接続され、第1コイル状パターンL1及び第2コイル状パターンL2から負荷部Rに出力される直流電力を平滑化する。
【0030】
上述のように構成されたマルチフェーズ型DC/DCコンバータ10は、第1DC/DCコンバータ11と第2DC/DCコンバータ12とが互いに並列に接続して設けられている。第1DC/DCコンバータ11は、第1磁気コアM1、第1コイル状パターンL1、及び、第1スイッチング素子Q1を含み、昇圧チョッパ回路を構成する。第2DC/DCコンバータ12は、第2磁気コアM2、第2コイル状パターンL2、及び、第2スイッチング素子Q2を含み、昇圧チョッパ回路を構成する。マルチフェーズ型DC/DCコンバータ10は、制御部20からの制御信号に基づき、第1DC/DCコンバータ11及び第2DC/DCコンバータ12によって、電源Pから供給される直流電力を昇圧し、昇圧後の直流電力を負荷部Rに供給する。
【0031】
制御部20は、マルチフェーズ型DC/DCコンバータ10をPWM(Pulse Width Modulation)制御するものである。制御部20は、CPU、記憶部を構成するROM、RAM及びインターフェースを含む周知のマイクロコンピュータを主体とする電子回路を含んで構成される。制御部20は、第1DC/DCコンバータ11及び第2DC/DCコンバータ12から出力されるそれぞれの変換後の出力電圧の位相を互いにずらすように、各DC/DCコンバータ11、12をPWM制御する。制御部20は、例えば、負荷部Rの第1端子12aと第2端子12bとの間の電圧に基づいて、第1スイッチング素子Q1(コイル側第1スイッチング素子Q11、コンデンサ側第1スイッチング素子Q12)及び第2スイッチング素子Q2(コイル側第2スイッチング素子Q21、コンデンサ側第2スイッチング素子Q22)をPWM制御し、電源Pから負荷部Rに供給される直流電力の電圧を制御する。そして、制御部20は、第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2をPWM制御する際に、第1コイル状パターンL1に供給される1周期当たりの電力量(エネルギー量)を当該第1コイル状パターンL1で許容可能な電力量とする周波数で第1スイッチング素子Q1を制御し、かつ、第2コイル状パターンL2に供給される1周期当たりの電力量(エネルギー量)を当該第2コイル状パターンL2で許容可能な電力量とする周波数で第2スイッチング素子Q2を制御する。すなわち、制御部20は、予め定められた相対的に高い周波数(例えば、数MHz)で第1スイッチング素子Q1を制御することにより、第1コイル状パターンL1に供給される1周期当たりの電力量を、当該第1コイル状パターンL1で許容可能な電力量とし、かつ、予め定められた相対的に高い周波数(例えば、数MHz)で第2スイッチング素子Q2を制御することにより、第2コイル状パターンL2に供給される1周期当たりの電力量を、当該第2コイル状パターンL2で許容可能な電力量とする。ここで、第1スイッチング素子Q1を制御する周波数は、例えば、実際に、第1コイル状パターンL1に電力を供給した際の実験結果として得られる。また、第1スイッチング素子Q1を制御する周波数は、第1コイル状パターンL1の断面積等に基づいて求めてもよい。同様に、第2スイッチング素子Q2を制御する周波数は、例えば、実際に、第2コイル状パターンL2に電力を供給した際の実験結果として得られる。また、第2スイッチング素子Q2を制御する周波数は、第2コイル状パターンL2の断面積等に基づいて求めてもよい。
【0032】
次に、電源装置1の動作例について説明する。電源装置1は、
図4に示すように、車両の電源Pから直流電力を入力する(ステップS1)。次に、電源装置1は、制御部20により、第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2をPWM制御する(ステップS2)。制御部20は、例えば、第1DC/DCコンバータ11及び第2DC/DCコンバータ12から出力されるそれぞれの変換後の出力電圧の位相を互いにずらすように、第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2をPWM制御する。制御部20は、例えば、第1DC/DCコンバータ11の第1スイッチング素子Q1において、コイル側第1スイッチング素子Q11をオンし且つコンデンサ側第1スイッチング素子Q12をオフすることで第1コイル状パターンL1にエネルギーを蓄え、コイル側第1スイッチング素子Q11をオフし且つコンデンサ側第1スイッチング素子Q12をオンすることで第1コイル状パターンL1に蓄えられたエネルギーを負荷部Rに放出する。また、制御部20は、例えば、第2DC/DCコンバータ12の第2スイッチング素子Q2において、コイル側第2スイッチング素子Q21をオンし且つコンデンサ側第2スイッチング素子Q22をオフすることで第2コイル状パターンL2にエネルギーを蓄え、コイル側第2スイッチング素子Q21をオフし且つコンデンサ側第2スイッチング素子Q22をオンすることで第2コイル状パターンL2に蓄えられたエネルギーを負荷部Rに放出する。そして、制御部20は、第1コイル状パターンL1に供給される1周期当たりの電力量(エネルギー量)を当該第1コイル状パターンL1で許容可能な電力量とする周波数(例えば、数MHz)で第1スイッチング素子Q1を制御し、かつ、第2コイル状パターンL2に供給される1周期当たりの電力量(エネルギー量)を当該第2コイル状パターンL2で許容可能な電力量とする周波数(例えば、数MHz)で第2スイッチング素子Q2を制御する。そして、電源装置1は、第1DC/DCコンバータ11及び第2DC/DCコンバータ12により、電源Pから直流電力の電圧を昇圧し、昇圧後の直流電力を負荷部Rに供給する。
【0033】
以上のように、実施形態に係る電源装置1は、第1DC/DCコンバータ11と第2DC/DCコンバータ12とが互いに並列に接続して設けられ直流電力の電圧を変圧するマルチフェーズ型DC/DCコンバータ10と、マルチフェーズ型DC/DCコンバータ10をPWM制御する制御部20とを備える。マルチフェーズ型DC/DCコンバータ10は、基板ユニットBUと、第1スイッチング素子Q1と、第2スイッチング素子Q2と、コンデンサCとを含んで構成される。基板ユニットBUは、絶縁性を有する基材B、磁性材料を含み基材Bに形成された第1貫通孔Ba1に設けられる第1磁気コアM1、基材Bに形成される導電パターンであって第1磁気コアM1の周りに螺旋状に形成される第1コイル状パターンL1、磁性材料を含み基材Bに形成された第2貫通孔Ba2に設けられる第2磁気コアM2、及び、基材Bに形成される導電パターンであって第2磁気コアM2の周りに螺旋状に形成される第2コイル状パターンL2を含み、第1コイル状パターンL1及び第2コイル状パターンL2が結合された結合コイル状パターンGを構成する。第1スイッチング素子Q1は、第1コイル状パターンL1に流れる電流を通電又は遮断する。第2スイッチング素子Q2は、第2コイル状パターンL2に流れる電流を通電又は遮断する。コンデンサCは、第1コイル状パターンL1及び第2コイル状パターンL2から出力される直流電力を平滑化する。上記第1DC/DCコンバータ11は、第1磁気コアM1、第1コイル状パターンL1、及び、第1スイッチング素子Q1を含む。上記第2DC/DCコンバータ12は、第2磁気コアM2、第2コイル状パターンL2、及び、第2スイッチング素子Q2を含む。制御部20は、第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2をPWM制御する際に、第1コイル状パターンL1に供給される1周期当たりの電力量を当該第1コイル状パターンL1で許容可能な電力量とする周波数で第1スイッチング素子Q1を制御し、かつ、第2コイル状パターンL2に供給される1周期当たりの電力量を当該第2コイル状パターンL2で許容可能な電力量とする周波数で第2スイッチング素子Q2を制御する。
【0034】
この構成により、電源装置1は、第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2を相対的に高い周波数で制御することで周期を短くすることができ、周期を短くすることで1周期当たりの電力量を小さくすることができる。これにより、電源装置1は、受動素子(例えば、コンデンサC)の1周期当たりに扱う電力量を、各コイル状パターンL1、L2でも許容可能な電力量まで下げることができる。これにより、電源装置1は、各コイル状パターンL1、L2及び各磁気コアM1、M2によって結合コイル状パターンGを構成することができる。電源装置1は、導電パターンで形成された各コイル状パターンL1、L2により結合コイル状パターンGを構成するので、インダクタを小型化できる。さらに、電源装置1は、1周期当たりの電力量を小さくすることができるので、受動素子(例えば、コンデンサC)も小型化できる。また、電源装置1は、結合コイル状パターンGにより磁気を打ち消しあうことができるので、各磁気コアM1、M2の小型化や、磁気損失の減少による発熱の抑制、電圧変換の高効率化を実現することができる。この結果、電源装置1は、電力を適正に供給することができる。
【0035】
上記電源装置1において、第1コイル状パターンL1は、一端L1aが電源Pに接続され、他端L1bが負荷部R及びグランドに接続される。第1スイッチング素子Q1は、コイル側第1スイッチング素子Q11、及び、コンデンサ側第1スイッチング素子Q12を含む。コイル側第1スイッチング素子Q11は、第1コイル状パターンL1の他端L1bとグランドとの間に設けられ、第1コイル状パターンL1とグランドとの間に流れる電流を通電又は遮断する。コンデンサ側第1スイッチング素子Q12は、第1コイル状パターンL1の他端L1bと負荷部Rとの間に設けられ、第1コイル状パターンL1と負荷部Rとの間に流れる電流を通電又は遮断する。第2コイル状パターンL2は、一端L2aが電源Pに接続され、他端L2bが負荷部R及びグランドに接続される。第2スイッチング素子Q2は、コイル側第2スイッチング素子Q21、及び、コンデンサ側第2スイッチング素子Q22を含む。コイル側第2スイッチング素子Q21は、第2コイル状パターンL2の他端L2bとグランドとの間に設けられ、第2コイル状パターンL2とグランドとの間に流れる電流を通電又は遮断する。コンデンサ側第2スイッチング素子Q22は、第2コイル状パターンL2の他端L2bと負荷部Rとの間に設けられ、第2コイル状パターンL2と負荷部Rとの間に流れる電流を通電又は遮断する。コンデンサCは、コンデンサ側第1スイッチング素子Q12及びコンデンサ側第2スイッチング素子Q22と負荷部Rとの間に設けられ、負荷部Rに出力される直流電力を平滑化する。この構成により、電源装置1は、各コイル状パターンL1、L2及び各磁気コアM1、M2によって、インダクタを導電パターンで形成した結合コイル状パターンGを有する昇圧回路を構成することができる。
【0036】
なお、上記説明では、マルチフェーズ型DC/DCコンバータ10は、昇圧回路を構成する例について説明したが、これに限定されず、例えば、電源Pから供給される直流電力の電圧を降圧する降圧回路を構成してもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 電源装置
10 マルチフェーズ型DC/DCコンバータ
11 第1DC/DCコンバータ
12 第2DC/DCコンバータ
20 制御部
B 基材
BU 基板ユニット
Ba1 第1貫通孔
Ba2 第2貫通孔
C コンデンサ
L1 第1コイル状パターン
L1a 一端
L1b 他端
L2 第2コイル状パターン
L2a 一端
L2b 他端
M1 第1磁気コア
M2 第2磁気コア
Q1 第1スイッチング素子
Q11 コイル側第1スイッチング素子
Q12 コンデンサ側第1スイッチング素子
Q2 第2スイッチング素子
Q21 コイル側第2スイッチング素子
Q22 コンデンサ側第2スイッチング素子
G 結合コイル状パターン