(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123339
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】再生ゴム含有ゴム組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 17/00 20060101AFI20240905BHJP
【FI】
C08L17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030652
(22)【出願日】2023-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森本 祥平
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AC01W
4J002AC03W
4J002AC06W
4J002AC07W
4J002AC08W
4J002AC09W
4J002AC13X
4J002EP016
4J002EV286
4J002FD010
4J002FD030
4J002FD140
4J002FD150
4J002FD206
4J002GN01
(57)【要約】
【課題】加硫ゴム廃材を原料として得られた再生ゴムを含有する場合であっても、最終的に得られる加硫ゴムのゴム物性に優れた再生ゴム含有ゴム組成物の製造方法を提供すること。
【解決手段】加硫ゴムに対し、せん断力を付与しつつ加熱処理することにより、100℃におけるムーニー粘度が100以上かつ220以下である再生ゴムを製造する第1工程と、ゴム成分および配合剤に加え、再生ゴムおよび脱硫剤を配合し、加熱混合することによりゴム組成物を製造する第2工程とを有する再生ゴム含有ゴム組成物の製造方法。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生ゴム含有ゴム組成物の製造方法であって、
加硫ゴムに対し、せん断力を付与しつつ加熱処理することにより、100℃におけるムーニー粘度が100以上かつ220以下である再生ゴムを製造する第1工程と、
ゴム成分および配合剤に加え、前記再生ゴムおよび脱硫剤を配合し、加熱混合することによりゴム組成物を製造する第2工程とを有する再生ゴム含有ゴム組成物の製造方法。
【請求項2】
前記脱硫剤が、アルキルアミド基を有する脱硫剤である請求項1に記載の再生ゴム含有ゴム組成物の製造方法。
【請求項3】
前記脱硫剤が、炭素数12以上のアルキルアミンのアミド化合物である請求項2に記載の再生ゴム含有ゴム組成物の製造方法。
【請求項4】
前記脱硫剤が、アルキルスルホンアミド基を有する脱硫剤である請求項1に記載の再生ゴム含有ゴム組成物の製造方法。
【請求項5】
前記脱硫剤が、炭素数12以上のアルキルアミンのスルホンアミド化合物である請求項4に記載の再生ゴム含有ゴム組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生ゴム含有ゴム組成物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、環境意識の高まりから、使用済タイヤやその他のゴム製品から生ずる加硫ゴム廃材を再利用することが強く要望されている。
【0003】
下記特許文献1では、脱硫剤がアミン化合物であり、ゴムがEPDMポリマーを含み、硫黄架橋ゴムが、脱硫の間、250~350℃の温度に加熱され、硫黄架橋ゴムの脱硫が5~10MPaの圧力で行われる、再加硫可能な脱硫生成物を得る方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らが鋭意検討したところ、上記従来技術で得られた脱硫生成物をゴム組成物中に配合した場合、加硫時間やスコーチタイムが著しく短くなるため、十分な混練工程を消化できず、その結果、最終的に得られる加硫ゴムのゴム物性が悪化する傾向があった。
【0006】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、加硫ゴム廃材を原料として得られた再生ゴムを含有する場合であっても、最終的に得られる加硫ゴムのゴム物性に優れた再生ゴム含有ゴム組成物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は下記の如き構成により解決し得る。すなわち本発明は、再生ゴム含有ゴム組成物の製造方法であって、加硫ゴムに対し、せん断力を付与しつつ加熱処理することにより、100℃におけるムーニー粘度が100以上かつ220以下である再生ゴムを製造する第1工程と、ゴム成分および配合剤に加え、前記再生ゴムおよび脱硫剤を配合し、加熱混合することによりゴム組成物を製造する第2工程とを有する再生ゴム含有ゴム組成物の製造方法(1)に関する。
【0008】
上記再生ゴム含有ゴム組成物の製造方法(1)において、前記脱硫剤が、アルキルアミド基を有する脱硫剤である再生ゴム含有ゴム組成物の製造方法(2)であることが好ましい。
【0009】
上記再生ゴム含有ゴム組成物の製造方法(1)または(2)において、前記脱硫剤が、炭素数12以上のアルキルアミンのアミド化合物である再生ゴム含有ゴム組成物の製造方法(3)であることが好ましい。
【0010】
上記再生ゴム含有ゴム組成物の製造方法(1)において、前記脱硫剤が、アルキルスルホンアミド基を有する脱硫剤である再生ゴム含有ゴム組成物の製造方法(4)であることが好ましい。
【0011】
上記再生ゴム含有ゴム組成物の製造方法(1)または(4)において、前記脱硫剤が、炭素数12以上のアルキルアミンのスルホンアミド化合物である再生ゴム含有ゴム組成物の製造方法(5)であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
従来技術のように脱硫剤としてアミン化合物が使用された場合、アミン化合物が有するアミノ基は塩基性が強いため、アミン化合物からなる脱硫剤と加硫ゴムとを混合処理してなる脱硫ゴムを配合したゴム組成物は、加硫時間やスコーチタイムが著しく短くなる傾向があった。このため、十分な混練工程を消化できず、その結果、最終的に得られる加硫ゴムのゴム物性が悪化する傾向があった。
【0013】
ここで、従来の再生ゴム含有ゴム組成物の製造方法では、加硫ゴムに対し、せん断力を付与しつつ加熱処理する工程において脱硫剤を配合することにより再生ゴムを製造するが、本発明者が検討した結果、該再生ゴムを配合したゴム組成物は、物性が悪化する傾向があることが判明した。かかる傾向に基づきさらに検討した結果、再生ゴム含有ゴム組成物を製造する際、加硫ゴムに対し、せん断力を付与しつつ加熱処理することにより再生ゴムを製造する第1工程には敢えて脱硫剤を配合せず、ゴム成分および配合剤を混合することによりゴム組成物を製造する第2工程に、再生ゴムと脱硫剤とを配合し、混合することで、最終的に得られる加硫ゴムのゴム物性に優れた再生ゴム含有ゴム組成物を製造できることが判明した。つまり、本発明に係る再生ゴム含有ゴム組成物の製造方法では、再生ゴムを製造する第1工程ではなく、ゴム成分および配合剤を混合することによりゴム組成物を製造する第2工程ではじめて、再生ゴムと共に脱硫剤を配合することにより、最終的に得られる加硫ゴムのゴム物性に優れた再生ゴム含有ゴム組成物を製造できる。
【0014】
加えて、本発明者は、第1工程において、加硫ゴムに対しせん断力を付与しつつ加熱処理する際に、加硫ゴムに与えるエネルギー量の尺度としてムーニー粘度に着目し、検討を行ったところ、最終的に得られる加硫ゴムのゴム物性と加熱処理後の再生ゴムのムーニー粘度との間に関係性があることを見出した。これは、加硫ゴムへ付与するエネルギー量が不十分だと、加硫ゴムの脱硫反応のきっかけとなるゴム中のラジカル成分や脱硫反応が発生し易いゴムの低分子量成分の生成量が不十分となるため、再生ゴムを含むゴム組成物を加硫してもゴム物性の改善効果が得られず、一方、加硫ゴムへ付与するエネルギー量が過剰になると、ゴムの低分子量成分の生成量が増えすぎるため、脱硫反応によるゴム物性の改善効果と再生ゴムの過度の分子量低下によるゴム物性悪化とのバランスが崩れてしまうことが原因と考えられる。本発明に係る再生ゴム含有ゴム組成物の製造方法では、第1工程において、加硫ゴムに対し、せん断力を付与しつつ加熱処理することにより、100℃におけるムーニー粘度が100以上かつ220以下である再生ゴムを製造する。つまり、加硫ゴムに与えるエネルギー量の尺度としてムーニー粘度を採用し、これを最適化することで、最終的に得られる加硫ゴムのゴム物性を向上することができる。
【0015】
特に本発明では、脱硫剤として、アルキルアミド基を有する脱硫剤、より好ましくは脱硫剤として、炭素数12以上のアルキルアミンのアミド化合物を使用する場合、最終的に得られる加硫ゴムのゴム物性に優れた再生ゴム含有ゴム組成物を製造できる。このような優れた効果が得られる理由は以下のように推定可能である。
【0016】
脱硫剤が有するアルキルアミド基では窒素原子上の孤立電子対の密度が低下している。このため、アルキルアミド基は、アミノ基に比して塩基性が低く抑えられている。したがって、第2工程において、再生ゴム、ゴム成分および配合剤と、アルキルアミド基を有する脱硫剤とを加熱混合しても、加硫時間やスコーチタイムを十分に確保できる。これにより、第2工程において、再生ゴムと脱硫剤とを選択的に反応させつつ、ゴム成分および配合剤を安定に保つことができるため、再生ゴム含有ゴム組成物製造後の保存性に優れ、長期保管後であっても加硫ゴムの物性劣化が特に抑制される。
【0017】
また、特に本発明では、脱硫剤として、アルキルスルホンアミド基を有する脱硫剤、より好ましくは脱硫剤として、炭素数12以上のアルキルアミンのスルホンアミド化合物を使用する場合であっても、最終的に得られる加硫ゴムのゴム物性に優れた再生ゴム含有ゴム組成物を製造できる。このような優れた効果が得られる理由は以下のように推定可能である。
【0018】
脱硫剤が有するアルキルスルホンアミド基では、アルキルアミド基と同様に窒素原子上の孤立電子対の密度が低下している。このため、アルキルスルホンアミド基は、アミノ基に比して塩基性が低く抑えられている。したがって、第2工程において、再生ゴム、ゴム成分および配合剤と、アルキルスルホンアミド基を有する脱硫剤とを加熱混合しても、加硫時間やスコーチタイムを十分に確保できる。これにより、第2工程において、再生ゴムと脱硫剤とを選択的に反応させつつ、ゴム成分および配合剤を安定に保つことができるため、再生ゴム含有ゴム組成物製造後の保存性に優れ、長期保管後であっても加硫ゴムの物性劣化が特に抑制される。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る再生ゴム含有ゴム組成物の製造方法は、加硫ゴムに対し、せん断力を付与しつつ加熱処理することにより、100℃におけるムーニー粘度が100以上かつ220以下である再生ゴムを製造する第1工程と、ゴム成分および配合剤に加え、再生ゴムおよび脱硫剤を配合し、加熱混合することによりゴム組成物を製造する第2工程とを有する。
【0020】
(第1工程)
第1工程では、加硫ゴムに対し、せん断力を付与しつつ加熱処理することにより、100℃におけるムーニー粘度が100以上かつ220以下である再生ゴムを製造する。加硫ゴムにせん断力を付与する方法としては、当業者において一般的に使用されるロール機、バンバリーミキサー、押出機、ギアポンプ、かみ合い式ミキサー、ニーダー、またはコニーダーを使用し、せん断力を付与しつつ、加硫ゴムと脱硫剤とを加熱混合する方法が挙げられる。本発明においては、加硫ゴムにせん断力を付与する際、ロール機、バンバリーミキサー、押出機、ギアポンプ、かみ合い式ミキサー、ニーダー、およびコニーダーを単独で使用してもよく、あるいはいずれかの装置を併用してもよい。ロール機を使用する場合、例えば加硫ゴムを当業者に公知のロール機に通す方法などが挙げられる。また、バンバリーミキサーを使用する場合、例えば加硫ゴムをバンバリーミキサー内に投入・撹拌する方法などが挙げられる。せん断力を付与する際のせん断圧としては、ロール機またはバンバリーミキサー使用時に、混練対象物に付与されるせん断圧でよく、例えば0.1~10MPa程度でよい。
【0021】
第1工程での加熱温度は、5~80℃に制御することが好ましく、15~40℃に制御することがより好ましい。
【0022】
第1工程後に得られる再生ゴムの100℃におけるムーニー粘度は、100以上であり、120以上であることが好ましい。また、第1工程後に得られる再生ゴムの100℃におけるムーニー粘度は、220以下であり、200以下であることが好ましい。
【0023】
(第2工程)
第2工程では、ゴム成分および配合剤に加え、再生ゴムおよび脱硫剤を配合し、加熱混合することによりゴム組成物を製造する。各成分の配合方法は特に限定されず、(i)再生ゴムおよび脱硫剤を予め混練してマスターバッチとし、次いでゴム成分、ならびに硫黄および加硫促進剤などの加硫系成分以外の配合剤をさらに混練してマスターバッチとし、最終的に硫黄および加硫促進剤などの加硫系成分を混練する方法、(ii)硫黄および加硫促進剤などの加硫系成分以外の配合剤を予め混練してマスターバッチとし、残りの成分を添加してさらに混練する方法、(iii)各成分を任意の順序で添加し混練する方法、(iv)全成分を同時に添加して混練する方法などのいずれでもよい。
【0024】
以下において、本発明に係る再生ゴム含有ゴム組成物の製造方法において使用する各成分(材料)について説明する。
【0025】
本発明に係る再生ゴムの原料として使用する加硫ゴムとして、ジエン系ゴムの加硫ゴムを使用することが好ましい。ジエン系ゴムとしては、特に限定されるものでなく、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、スチレン-イソプレン共重合体ゴム、ブタジエン-イソプレン共重合体、スチレン-イソプレン-ブタジエン共重合体ゴムなどが挙げられる。これらはそれぞれ単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。ジエン系ゴムとして、好ましくは、天然ゴム、ブタジエンゴムおよびスチレンブタジエンゴム、またはこれらの2種以上のブレンドである。
【0026】
加硫ゴムの原料となる硫黄は通常のゴム用硫黄であればよく、例えば粉末硫黄、沈降硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄などを用いることができる。
【0027】
加硫ゴムの原料として、ゴム成分および硫黄と共に、必要に応じて加硫促進剤、カーボンブラック、シリカ、シランカップリング剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、加硫遅延剤、有機過酸化物、老化防止剤、ワックスやオイルなどの軟化剤、加工助剤などの通常ゴム工業で使用される配合剤を適宜配合したゴム組成物を加硫したものが使用可能である。
【0028】
カーボンブラックとしては、当業者に公知のカーボンブラックが使用可能であり、例えばSAF、ISAF、HAF、FEF、GPFなどが用いられる。脱硫ゴムの原料となる加硫ゴム中のゴム成分の全量を100質量部としたとき、カーボンブラックの含有量は30~100質量部であることが好ましく、30~60質量部であることがより好ましい。
【0029】
加硫促進剤としては、ゴム加硫用として通常用いられる、スルフェンアミド系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、チオウレア系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤、ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤などの加硫促進剤を単独、または適宜混合して使用しても良い。
【0030】
老化防止剤としては、ゴム用として通常用いられる、芳香族アミン系老化防止剤、アミン-ケトン系老化防止剤、モノフェノール系老化防止剤、ビスフェノール系老化防止剤、ポリフェノール系老化防止剤、ジチオカルバミン酸塩系老化防止剤、チオウレア系老化防止剤などの老化防止剤を単独、または適宜混合して使用しても良い。
【0031】
本発明において使用する脱硫剤として、アルキルアミド基を有する化合物を使用することが好ましく、長鎖アルキルアミン化合物をアミド化した化合物を使用することがより好ましく、炭素数12以上のアルキルアミンのアミド化合物を使用することが特に好ましい。特に好適な脱硫剤としては、例えばヘキサデシルアミン(炭素数16)をアミド化した化合物、ドデシルアミン(炭素数12)をアミド化した化合物、あるいはステアリルアミン(炭素数18)をアミド化した化合物などが挙げられる。
【0032】
また、本発明において使用する脱硫剤として、アルキルスルホンアミド基を有する化合物を使用することも好ましく、長鎖アルキルアミン化合物をスルホンアミド化した化合物を使用することがより好ましく、炭素数12以上のアルキルアミン化合物をスルホンアミド化した化合物を使用することが特に好ましい。特に好適な脱硫剤としては、例えばヘキサデシルアミン(炭素数16)をスルホンアミド化した化合物、ドデシルアミン(炭素数12)をスルホンアミド化した化合物、あるいはステアリルアミン(炭素数18)をスルホンアミド化した化合物などが挙げられる。
【0033】
再生ゴム含有ゴム組成物の加硫ゴムの物性の向上を図る観点から、再生ゴムに対する脱硫剤の配合割合としては、再生ゴムの全量を100質量部としたとき、0.5~30質量部であることが好ましく、1~20質量部であることがより好ましい。
【0034】
また、再生ゴム含有ゴム組成物の加硫ゴムの物性の向上を図る観点から、ゴム組成物中のゴム成分(未架橋ゴム)の全量を100質量部としたときの再生ゴムの配合量は、1~30質量部であることが好ましく、5~20質量部であることがより好ましい。
【0035】
第2工程において再生ゴムおよび脱硫剤と共に使用する、ゴム成分および配合剤、具体的には各種ジエン系ゴム、硫黄、加硫促進剤、カーボンブラック、シリカ、シランカップリング剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、加硫遅延剤、有機過酸化物、老化防止剤、ワックスやオイルなどの軟化剤、加工助剤などは、前記と同様のものが使用可能である。
【0036】
上記再生ゴム含有ゴム組成物の加硫ゴムはゴム物性に優れる。したがって、多量のゴム部を備える空気入りタイヤ用途に使用する再生ゴム含有ゴム組成物の製造方法として、特に好適に使用可能である。
【実施例0037】
以下に、この発明の実施例を記載してより具体的に説明する。
【0038】
(第1工程)
再生ゴムの原料となる加硫ゴムとして、アサヒ再生ゴム社製の加硫済みの粉末ゴムPN-42を用意した。PN-42(加硫ゴム)に対し、関西ロール製6インチロールを用いて、間隙を最小に設定し、表1に記載の時間でロールを通した、つまりせん断力を付与したゴムを再生ゴム1~7とした。第1工程での加熱温度は25℃に制御した。再生ゴム1~7の100℃におけるムーニー粘度を表1に示す。なお、ムーニー粘度はJIS K6300に準拠したムーニー粘度計を用いて、100℃でL型ローターを使用して測定した。なお、再生ゴム1のムーニー粘度は測定上限を超えたため、>400とした。
【0039】
【0040】
(第2工程)
ゴム成分100質量部に対して、表2の配合処方に従って各成分を配合し、ダイハン社製ラボミキサーを用いて混練し、実施例1~4および比較例1~5に係る再生ゴム含有ゴム組成物を製造した(第2工程)。ただし第2工程については、硫黄および加硫促進剤を除く配合剤および脱硫剤をゴム成分に対して混合する第1混合段階と、第1混合段階後に得られた混合物を室温に冷却後、硫黄および加硫促進剤を加え、100℃を超えないように混練することにより再生ゴム含有ゴム組成物を製造する第2混合段階とに分けて実施した。
【0041】
表2中の各成分の詳細は、以下のとおりである。
・天然ゴム(NR):STR20
・カーボンブラック(CB):東海カーボン社製「シースト3」
・亜鉛華:三井金属鉱業社製「亜鉛華1種」
・老化防止剤:大内新興化学工業社製「ノクラック6C」
・ステアリン酸:花王社製「ルナックS-20」
・硫黄:細井化学工業社製「ゴム用粉末硫黄150メッシュ」
・加硫促進剤:大内新興化学工業社製「ノクセラーNS」
・脱硫剤1:「ステアリルアミンのアセチル化物」(アルキルアミド基を有する脱硫剤、炭素数20)
【0042】
なお、上記脱硫剤1は以下の方法により製造した。
(脱硫剤1)
ステアリルアミン10.8g、東京化成社製ピリジン6gをナカライテスク製酢酸エチル500mlに溶解させた。この溶液に東京化成社製無水酢酸5gを室温で攪拌しながら滴下した後、80℃に加熱し4時間攪拌を続けた。攪拌終了後沈殿物を濾別した濾液を10%クエン酸水溶液(クエン酸はナカライテスク製)100mlで3回洗浄後、ナカライテスク社製無水硫酸マグネシウムを適量加えて脱水した。無水硫酸マグネシウムを濾別後、溶液を減圧下で濃縮しスラリーを得た。これを濾過し、固体をヘキサン(ナカライテスク製)で洗浄した後真空乾燥することにより、下記式(1)に記載の脱硫剤2を得た。
【0043】
【0044】
得られた再生ゴム含有ゴム組成物について、150℃、25分間の条件で加硫して所定形状の試験片を作製し、得られた試験片を用いて以下の試験を行った。
・300%伸長時応力:JIS K6251に準拠した引張試験(JIS3号ダンベル)で300%伸長時応力を測定し、比較例1の値を100とした指数で表示した。数値が大きいほど、加硫ゴムの300%伸長時応力が優れることを意味する。
・破断強度:JIS K6251に準拠した引張試験(JIS3号ダンベル)で破断強度を測定し、比較例1の値を100とした指数で表示した。数値が大きいほど、加硫ゴムの破断強度が優れることを意味する。
【0045】
【0046】
表2の結果から、実施例1~4に係る再生ゴム含有ゴム組成物の製造方法により製造した再生ゴム含有ゴム組成物の加硫ゴムは、300%伸長時応力および破断強度に優れることがわかる。