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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123341
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】パワー半導体装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/28 20060101AFI20240905BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20240905BHJP
   H01L 25/07 20060101ALI20240905BHJP
   H01L 23/00 20060101ALI20240905BHJP
   H01L 23/24 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
H01L23/28 L
H01L23/30 B
H01L25/04 C
H01L23/00 B
H01L23/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030656
(22)【出願日】2023-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岸本 幸樹
【テーマコード(参考)】
4M109
【Fターム(参考)】
4M109AA02
4M109BA03
4M109CA02
4M109DB09
4M109DB15
4M109EA02
4M109EA10
4M109EC20
(57)【要約】
【課題】低気圧環境下においても金属製の部品を起点に発生する放電を抑制できるパワー半導体装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本願のパワー半導体装置は、熱伝導性を有するベース板1と、ベース板1の表面に設けられた絶縁層2と、絶縁層2の表面に設けられた表面電極3に、はんだ14により接合された半導体素子4と、半導体素子4及び表面電極3とボンディングワイヤ5を介して電気的に接続された端子6と、端子6と電気的に接続し、端子6を介して半導体素子4に外部から電圧を供給するバスバー7と、半導体素子4を格納し、バスバー7を端子6と接続して内部に固定するケース11と、ケース11の内部に充填された封止樹脂12と、を備え、封止樹脂12は、ショア硬度がA66以上、D90以下とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱伝導性を有するベース板と、
前記ベース板の表面に設けられた絶縁層と、
前記絶縁層の表面に設けられた表面電極に接合された半導体素子と、
前記半導体素子及び前記表面電極と電気的に接続された内部端子と、
前記内部端子と電気的に接続された外部端子と、
前記半導体素子を格納するケースと、
前記ケースの内部に充填され、前記半導体素子と前記半導体素子の接続部を封止する第一の封止樹脂と、
前記ケースの内部に充填され、前記外部端子の接続部を封止する第二の封止樹脂と、
を備え、
前記第一の封止樹脂及び前記第二の封止樹脂は、ショア硬度がA66以上、D90以下であることを特徴とするパワー半導体装置。
【請求項2】
前記第一の封止樹脂及び前記第二の封止樹脂は、同一の樹脂であることを特徴とする請求項1に記載のパワー半導体装置。
【請求項3】
前記ケースは、内部に仕切り板が設けられ、前記仕切り板で仕切られたそれぞれの領域に、前記第一の封止樹脂及び前記第二の封止樹脂がそれぞれ充填されたことを特徴とする請求項1に記載のパワー半導体装置。
【請求項4】
前記ケースは、第一のケース及び第二のケースからなり、それぞれの内部に前記第一の封止樹脂及び前記第二の封止樹脂がそれぞれ充填されたことを特徴とする請求項1に記載のパワー半導体装置。
【請求項5】
少なくとも前記第二の封止樹脂より外部の領域にある前記外部端子の表面を覆う絶縁被覆を備え、前記絶縁被覆は、ショア硬度がA66以上、D90以下であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のパワー半導体装置。
【請求項6】
熱伝導性を有するベース板と、
前記ベース板の表面に設けられた絶縁層と、
前記絶縁層の表面に設けられた表面電極に接合された半導体素子と、
前記半導体素子及び前記表面電極と電気的に接続された内部端子と、
前記内部端子と電気的に接続された外部端子と、
前記半導体素子を格納する第一のケースと、
前記外部端子の接続部を格納する第二のケースと、
前記第一のケースの内部に充填され、前記半導体素子と前記半導体素子の接続部を封止する第一の封止樹脂と、
前記第二のケースの内部に充填され、前記外部端子の接続部を封止する第三の封止樹脂と、
少なくとも前記第三の封止樹脂より外部の領域にある前記外部端子の表面を覆う絶縁被覆と、
を備え、
前記第二のケースは、前記外部端子を内部に固定する領域を囲う内壁に底部領域が狭くなるように傾斜が設けられ、
前記第一の封止樹脂及び前記絶縁被覆は、ショア硬度がA66以上、D90以下であることを特徴とするパワー半導体装置。
【請求項7】
前記第一のケースと前記第二のケースは、一つのケースの内部に仕切り板が設けられ、前記仕切り板で仕切られたそれぞれの領域に、前記第一の封止樹脂及び前記第三の封止樹脂がそれぞれ充填されたことを特徴とする請求項6に記載のパワー半導体装置。
【請求項8】
前記第一のケースと前記第二のケースは、別々のケースで設けられ、それぞれの内部に前記第一の封止樹脂及び前記第三の封止樹脂がそれぞれ充填されたことを特徴とする請求項6に記載のパワー半導体装置。
【請求項9】
前記第三の封止樹脂は、シリコーン系樹脂であることを特徴とする請求項6から請求項8のいずれか1項に記載のパワー半導体装置。
【請求項10】
前記底部領域には、第二の封止樹脂が充填され、前記第二の封止樹脂は、ショア硬度がA66以上、D90以下であることを特徴とする請求項6から請求項8のいずれか1項に記載のパワー半導体装置。
【請求項11】
熱伝導性を有するベース板と、
前記ベース板の表面に設けられた絶縁層と、
前記絶縁層の表面に設けられた表面電極に接合された半導体素子と、
前記半導体素子及び前記表面電極と電気的に接続された内部端子と、
前記内部端子と電気的に接続された外部端子と、
前記半導体素子を格納するケースと、
前記ケースの内部に充填され、前記半導体素子と前記半導体素子の接続部を封止する封止樹脂と、
前記外部端子及び前記外部端子の接続部の表面を覆う絶縁被覆と、
を備え、
前記封止樹脂及び前記絶縁被覆は、ショア硬度がA66以上、D90以下であることを特徴とするパワー半導体装置。
【請求項12】
ケースで囲われ、前記ケースの内壁に底部領域が狭くなるように傾斜が設けられた領域内に、外部端子を内部端子と接続して固定する工程と、
前記ケースの開口部側から、前記ケース側にシリコーン系樹脂を付着させた蓋を前記ケースに被せるとともに、前記外部端子と前記内部端子の接続部を封止する工程と、
を含み、
前記外部端子は、少なくとも前記シリコーン系樹脂より外部の領域にある前記外部端子の表面を覆う絶縁被覆が設けられ、
前記絶縁被覆は、ショア硬度がA66以上、D90以下であることを特徴とするパワー半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記外部端子を固定する工程の後に前記底部領域に封止樹脂を充填する工程を含み、前記封止樹脂は、ショア硬度がA66以上、D90以下であることを特徴とする請求項12に記載のパワー半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、パワー半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機及び電鉄等の電力変換装置に用いられる一般的なパワー半導体装置は、表面に半導体素子が搭載された絶縁基板、及び絶縁基板の裏面に接合されたベース板から構成される。この絶縁基板とベース板の組立体を取り囲むようにケースがベース板に金属製のねじで固定されている。ケース内部に絶縁基板と間隔を空けて制御基板が配置され、絶縁基板及び制御基板は外部接続端子により外部に電気的に接続される。半導体素子及び電極はボンディングワイヤにより電気的に接続される。また、ケース内部に半導体素子保護、並びに部分放電及び絶縁破壊防止のためにシリコーンゲル、あるいは、エポキシ樹脂組成物等の硬質樹脂が充填されている。
【0003】
この従来のパワー半導体装置では、充電部となる外部接続端子と、接地部となる外部接続端子、ベース板、または金属製のねじとの間において強い電界が生じ、気中に露出した金属製の部品を起点に放電が発生する。
【0004】
そこで、気中に露出した箇所を樹脂で埋め、放電発生を抑制する技術が検討されている。例えば、特許文献1では、ケースと金属製のねじの間に形成された空隙に高耐電圧樹脂を充填し、放電発生を抑制する構造としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006―032392(段落0016、図4
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のパワー半導体装置では、高耐電圧樹脂で充填した箇所において、低気圧環境下で高耐電圧樹脂に引張応力がかかり、高耐電圧樹脂内部に気泡が発生する可能性がある。高耐電圧樹脂に比べ空気の絶縁破壊電界は低いため、この気泡内で放電が発生するという課題があった。また、空気の絶縁破壊電界が低下する低気圧環境下において、外部接続端子などの気中に露出した金属製の部品を起点に放電が発生するという課題があった。
【0007】
本願は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、低気圧環境下においても金属製の部品を起点に発生する放電を抑制できるパワー半導体装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願に開示されるパワー半導体装置は、熱伝導性を有するベース板と、前記ベース板の表面に設けられた絶縁層と、前記絶縁層の表面に設けられた表面電極に接合された半導体素子と、前記半導体素子及び前記表面電極と電気的に接続された内部端子と、前記内部端子と電気的に接続された外部端子と、前記半導体素子を格納するケースと、前記ケースの内部に充填され、前記半導体素子と前記半導体素子の接続部を封止する第一の封止樹脂と、前記ケースの内部に充填され、前記外部端子の接続部を封止する第二の封止樹脂と、を備え、前記第一の封止樹脂及び前記第二の封止樹脂は、ショア硬度がA66以上、D90以下であることを特徴とする。
【0009】
また、本願に開示されるパワー半導体装置は、熱伝導性を有するベース板と、前記ベース板の表面に設けられた絶縁層と、前記絶縁層の表面に設けられた表面電極に接合された半導体素子と、前記半導体素子及び前記表面電極と電気的に接続された内部端子と、前記内部端子と電気的に接続された外部端子と、前記半導体素子を格納する第一のケースと、前記外部端子の接続部を格納する第二のケースと、前記第一のケースの内部に充填され、前記半導体素子と前記半導体素子の接続部を封止する第一の封止樹脂と、前記第二のケースの内部に充填され、前記外部端子の接続部を封止する第三の封止樹脂と、少なくとも前記第三の封止樹脂より外部の領域にある前記外部端子の表面を覆う絶縁被覆と、を備え、前記第二のケースは、前記外部端子を内部に固定する領域を囲う内壁に底部領域が狭くなるように傾斜が設けられ、前記第一の封止樹脂及び前記絶縁被覆は、ショア硬度がA66以上、D90以下であることを特徴とする。
【0010】
また、本願に開示されるパワー半導体装置は、熱伝導性を有するベース板と、前記ベース板の表面に設けられた絶縁層と、前記絶縁層の表面に設けられた表面電極に接合された半導体素子と、前記半導体素子及び前記表面電極と電気的に接続された内部端子と、前記内部端子と電気的に接続された外部端子と、前記半導体素子を格納するケースと、前記ケースの内部に充填され、前記半導体素子と前記半導体素子の接続部を封止する封止樹脂と、前記外部端子及び前記外部端子の接続部の表面を覆う絶縁被覆と、を備え、前記封止樹脂及び前記絶縁被覆は、ショア硬度がA66以上、D90以下であることを特徴とする。
【0011】
本願に開示されるパワー半導体装置の製造方法によれば、ケースで囲われ、前記ケースの内壁に底部領域が狭くなるように傾斜が設けられた領域内に、外部端子を内部端子と接続して固定する工程と、前記ケースの開口部側から、前記ケース側にシリコーン系樹脂を付着させた蓋を前記ケースに被せるとともに、前記外部端子と前記内部端子の接続部を封止する工程と、を含み、前記外部端子は、少なくとも前記シリコーン系樹脂より外部の領域にある前記外部端子の表面を覆う絶縁被覆が設けられ、前記絶縁被覆は、ショア硬度がA66以上、D90以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本願に開示されるパワー半導体装置によれば、低気圧環境下においても金属製の部品を起点に発生する放電を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施の形態1に係るパワー半導体装置の概略構成を示す断面図および側面図である。
図2】実施の形態1に係るパワー半導体装置の他の概略構成を示す部分断面図である。
図3】実施の形態2に係るパワー半導体装置の概略構成を示す断面図である。
図4】実施の形態2に係るパワー半導体装置の他の概略構成を示す部分断面図である。
図5】実施の形態2に係るパワー半導体装置の他の概略構成を示す断面図である。
図6】実施の形態2に係るパワー半導体装置の他の概略構成を示す部分断面図である。
図7】実施の形態3に係るパワー半導体装置の概略構成を示す部分断面図及び側面断面図である。
図8】実施の形態3に係るパワー半導体装置の製造工程を示す部分断面図である。
図9】実施の形態4に係るパワー半導体装置の概略構成を示す部分断面図及び側面断面図である。
図10】実施の形態5に係るパワー半導体装置での接続部の概略構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本実施の形態について図を参照して説明する。なお、各図中、同一符号は、同一または相当部分を示すものとする。
【0015】
実施の形態1.
図1A及び図1Bを用いて実施の形態1に係るパワー半導体装置100について説明する。図1A及び図1Bはそれぞれ、本願の実施の形態1に係るパワー半導体装置100の構成を示す断面図及び側面図である。
【0016】
図1Aに示すように、パワー半導体装置100は、ベース板1、ベース板1の裏面に設けられたヒートシンク13、ベース板1の表面に設けられた絶縁層2、絶縁層2の表面に設けられた表面電極3、表面電極3にはんだ14により接合された半導体素子4、半導体素子4及び表面電極3とボンディングワイヤ5を介して電気的に接続された内部端子としての端子6、端子6と電気的に接続し、端子6を介して半導体素子4に外部から電圧を供給する外部端子としてのバスバー7、半導体素子4を格納しバスバー7をねじ8及びナット9で内部に固定するケース11、ベース板1とケース11とで囲まれる領域内に充填され半導体素子4を封止する第一の封止樹脂としての封止樹脂12、を備える。
【0017】
ベース板1は、半導体素子4から発生する熱を放熱するため、例えば、アルミニウム合金、銅等の熱伝導に優れる材料で作られる。ベース板1は、表面及び裏面が平坦であり且つ上面視で矩形の板状であり、半導体素子4が搭載された絶縁層2を支持し、ケース11を固定する。ベース板1の裏面には、パワー半導体装置100の冷却性を向上させるため、ヒートシンク13が設けられる。
【0018】
絶縁層2は、ベース板1の表面に接合されている。絶縁層2は、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等のセラミック、またはエポキシ樹脂等の樹脂で構成され、アルミニウム合金、銅等の金属で構成された表面電極3が貼り合わされている。絶縁層2の表面側に設けられた表面電極3には配線パターンが形成されている。表面電極3は互いに分離されるように複数設けられ、そのうちの一つに半導体素子4がはんだ14を用いて接合されている。はんだ14として、具体的には、板はんだ、はんだペースト、軟ろう等が用いられている。
【0019】
半導体素子4は、例えば、シリコン(Si)素材のIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、ダイオード、または逆導通IGBTである。なお、半導体素子4は、シリコンカーバイド(SiC)、窒化ガリウム(GaN)等、Siに比べてバンドギャップの大きい素材で作製されたMOSFET (Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)、ショットキーダイオード等としてもよい。半導体素子4は、絶縁層2の表面電極3にはんだ14を用いて接合される。絶縁層2に搭載される半導体素子4の個数は限定されず、用途に応じて必要な個数の半導体素子4が搭載されてよい。
【0020】
ボンディングワイヤ5は、半導体素子4の表面電極(図示せず)及び絶縁層2の表面電極3と端子6を電気的に接続している。ボンディングワイヤ5は、線径0.1~0.5mmのアルミニウム合金製若しくは銅合金製の線材が用いられる。実施の形態1ではボンディングワイヤ5を用いているが、これに限定されるものではなく、ボンディングリボン等を用いてもよい。
【0021】
端子6は、ケース11に取り付けられ、半導体素子4の表面電極(図示せず)及び絶縁層2の表面電極3にボンディングワイヤ5を介して接続される。また、端子6とバスバー7は、ねじ8及びナット9によって固定され、電気的に接続される。パワー半導体装置100の動作時、バスバー7を通じてそれぞれ高電圧及び接地電圧が半導体素子4に供給される。実施の形態1に係るパワー半導体装置100では、図1Bに示すように、隣接するそれぞれのバスバー7を通じて、高電圧及び接地電圧が半導体素子4に供給される。端子6、バスバー7、ねじ8及びナット9は、アルミニウム合金、銅等の金属で構成される。端子6の数及びバスバー7の数はそれぞれ2つに限らず、3つ以上でもよい。
【0022】
ケース11は、空間を取り囲む4つの平面状の側壁が一体成形されてなる部材であり、その空間に半導体素子4が搭載された絶縁層2を格納する。ケース11は、封止樹脂が流し込まれる際の枠組みとなる役割を果たし、例えば、PPS(Polyphenylenesulfide)で形成される。ケース11は、シリコーン系またはエポキシ系等の接着剤(図示せず)によりベース板1に接着される。
【0023】
封止樹脂12は、ベース板1とケース11とで囲まれる領域内に充填することにより形成され、半導体素子4、半導体素子4を接続する接続部分、端子6、バスバー7の一部、及びバスバー7と端子6をねじ8及びナット9で接続する接続部分を封止する。封止樹脂12は、ショア硬度がA66以上、D90以下のものである。A66未満の場合、低気圧環境下で樹脂の膨張により樹脂内部に気泡が発生する。D90を超えると、高温環境下で熱応力が大きくなり、樹脂の割れ及び剥離が発生する。封止樹脂12の材質は、例えばシリコーンゴム又はエポキシ系の樹脂である。
【0024】
従来のパワー半導体装置では、低気圧環境下では封止樹脂に引張応力がかかり、封止樹脂が膨張する。封止樹脂の膨張に伴い、封止樹脂内部に気泡が発生する。気体である気泡は、個体の樹脂に比べ絶縁破壊電界が低く、放電が発生しやすい。そのため、高電圧が発生する端子、バスバー、ねじ、及びナットの近傍の封止樹脂内部に、低気圧環境下で気泡が発生した場合、気泡中で放電が発生し得る。
【0025】
これに対し、実施の形態1に係るパワー半導体装置100では、ショア硬度がA66以上、D90以下の封止樹脂12を設ける。ショア硬度がA66以上、D90以下の材料は0.1気圧までほとんど膨張しないため、材料内部に気泡が発生することを抑制することができる。そのため、低気圧環境下において、パワー半導体装置100の金属製の部品を起点に発生する放電を抑制することができる。
【0026】
なお、上記実施の形態1では、ショア硬度を限定した封止樹脂12を用いたが、さらにバスバー7の表面に絶縁被覆を設けても良い。
【0027】
図2は、実施の形態1に係るパワー半導体装置100の他の概略構成を示す部分断面図である。図2に示すように、この実施の形態では、パワー半導体装置100において、バスバー7の表面に絶縁被覆10が設けられ、少なくとも封止樹脂12より外部に突出するバスバー7の露出表面を覆う。絶縁被覆10は、ショア硬度がA66以上、D90以下のものであり、A66未満の場合、低気圧環境下で樹脂の膨張により樹脂内部に気泡が発生する。D90を超えると、高温環境下で熱応力が大きくなり、樹脂の割れ及び剥離が発生する。絶縁被覆10の材質は、例えばシリコーンゴムである。
【0028】
これにより、低気圧環境下において、パワー半導体装置100の金属製の部品を起点に発生する放電をさらに抑制することができる。
【0029】
以上のように、本実施の形態1に係るパワー半導体装置100によれば、熱伝導性を有するベース板1と、ベース板1の表面に設けられた絶縁層2と、絶縁層2の表面に設けられた表面電極3に、はんだ14により接合された半導体素子4と、半導体素子4及び表面電極3とボンディングワイヤ5を介して電気的に接続された端子6と、端子6と電気的に接続し、端子6を介して半導体素子4に外部から電圧を供給するバスバー7と、半導体素子4を格納し、バスバー7を端子6と接続して内部に固定するケース11と、ケース11の内部に充填された封止樹脂12と、を備え、封止樹脂12は、ショア硬度がA66以上、D90以下となるようにしたので、封止樹脂に気泡が発生することを抑制することができ、低気圧環境下においも金属製の部品を起点に発生する放電を抑制することができる。
【0030】
また、少なくとも封止樹脂12より外部に突出するバスバー7の露出表面を覆う絶縁被覆10を備え、絶縁被覆10は、ショア硬度がA66以上、D90以下となるようにしたので、金属製の部品を起点に発生する放電をさらに抑制することができる。
【0031】
実施の形態2.
実施の形態1では、ケース11の内側を封止樹脂12で一括充填した場合について説明したが、実施の形態2では、端子6及びバスバー7の部分を別のケースで囲み、封止樹脂を充填する場合について説明する。
【0032】
図3を用いて実施の形態2に係るパワー半導体装置101について説明する。図3は、本願の実施の形態2に係るパワー半導体装置101の構成を示す断面図である。
【0033】
図3に示すように、パワー半導体装置101は、半導体素子4、半導体素子4を接続する接続部分、及び端子6の一方の端部が第一のケースとしてのケース11aで囲われ、ケース11a内には封止樹脂12が充填されている。端子6の他方の端部、バスバー7の一部、及びバスバー7と端子6をねじ8及びナット9で接続する接続部分が、ケース11aとは別の第二のケースとしてのケース11bで囲われることで、ケース11b内には第二の封止樹脂としての封止樹脂15が充填される。
【0034】
封止樹脂12は、半導体素子4、半導体素子4を接続する接続部分、及び端子6の一方の端部を封止し、封止樹脂15は、端子6の他方の端部、バスバー7の一部、及びバスバー7と端子6をねじ8及びナット9で接続する接続部分を封止する。封止樹脂12及び封止樹脂15は、ショア硬度A66以上、D90以下の材料である。A66未満の場合、低気圧環境下で樹脂の膨張により樹脂内部に気泡が発生する。D90を超えると、高温環境下で熱応力が大きくなり、樹脂の割れ及び剥離が発生する。封止樹脂12と封止樹脂15の材質は、例えばシリコーンゴム又はエポキシ系の樹脂であり、封止樹脂12と封止樹脂15は同じ材料でも異なる材料でもよい。
【0035】
実施の形態2によるパワー半導体装置101のその他の構成については、実施の形態1のパワー半導体装置100と同様であり、対応する部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0036】
実施の形態2に係るパワー半導体装置101において、実施の形態1におけるパワー半導体装置100と同様の効果を持つ。加えて、封止樹脂12で充填した領域と封止樹脂15で充填した領域が分かれているため、樹脂材料の選定の自由度が向上する。そのため、封止樹脂12と封止樹脂15の材料を用途に応じて使い分けることを可能とする。例えば、高電界がかかり高温となる半導体素子4を封止する封止樹脂12には絶縁耐圧及び耐熱温度が高い樹脂を使用し、半導体素子4に比べると電界が低い接続部分を封止する封止樹脂15には絶縁耐圧及び耐熱温度が低い安価な樹脂を使用するといった使い分けが可能である。
【0037】
なお、上記実施の形態2では、ケース11aとケース11bに、それぞれ封止樹脂12と封止樹脂15を充填したが、さらにバスバー7の表面に絶縁被覆を設けても良い。
【0038】
図4は、実施の形態1に係るパワー半導体装置101の他の概略構成を示す部分断面図である。図4に示すように、この実施の形態では、パワー半導体装置101は、ケース11aとケース11bに、それぞれ封止樹脂12と封止樹脂15が充填されているだけでなく、少なくとも封止樹脂15より外部に突出するバスバー7の露出表面、及びケース11aとケース11bの間に露出する端子6の表面に、それぞれ絶縁被覆10及び絶縁被覆20が設けられる。絶縁被覆10及び絶縁被覆20は、ショア硬度がA66以上、D90以下のものである。A66未満の場合、低気圧環境下で樹脂の膨張により樹脂内部に気泡が発生する。D90を超えると、高温環境下で熱応力が大きくなり、樹脂の割れ及び剥離が発生する。絶縁被覆10及び絶縁被覆20の材質は、例えばシリコーンゴムである。
【0039】
これにより、上記実施の形態2の効果に加えて、低気圧環境下において、パワー半導体装置100の金属製の部品を起点に発生する放電をさらに抑制することができる。
【0040】
また、上記実施の形態2では、ケース11aとケース11bのように別のケースとしたが、これに限るものではない。実施の形態1のケース11の内部に仕切り板を設けても良い。
【0041】
図5は、実施の形態2に係るパワー半導体装置101の他の概略構成を示す断面図である。図5に示すように、この実施の形態では、パワー半導体装置101は、実施の形態1のケース11に仕切り板であるケース11cを設け、バスバー7と端子6をねじ8及びナット9で接続する接続部分が、ケース11とケース11cとで囲われた構成となっている。
【0042】
ケース11内は、仕切り板であるケース11cで仕切られ、半導体素子4、半導体素子4を接続する接続部分、及び端子6の一方の端部が囲われた領域には封止樹脂12が充填され、端子6の他方の端部、バスバー7の一部、及びバスバー7と端子6をねじ8及びナット9で接続する接続部分が囲われた領域には、封止樹脂15が充填されている。
【0043】
封止樹脂12は、半導体素子4、半導体素子4を接続する接続部分、及び端子6の一方の端部を封止し、封止樹脂15は、端子6の他方の端部、バスバー7の一部、及びバスバー7と端子6をねじ8及びナット9で接続する接続部分を封止する。封止樹脂12及び封止樹脂15は、ショア硬度A66以上、D90以下の材料である。A66未満の場合、低気圧環境下で樹脂の膨張により樹脂内部に気泡が発生する。D90を超えると、高温環境下で熱応力が大きくなり、樹脂の割れ及び剥離が発生する。封止樹脂12と封止樹脂15の材質は、例えばシリコーンゴム又はエポキシ系の樹脂であり、封止樹脂12と封止樹脂15は同じ材料でも異なる材料でもよい。
【0044】
この構成により、封止樹脂12を充填した領域と封止樹脂15を充填した領域に分けることができ、上記実施の形態2と同様の効果を得ることができるだけでなく、部品数の増加抑制、装置の大型化の抑制を可能とする。
【0045】
また、この実施の形態では、仕切り板であるケース11cを設けて封止樹脂12を充填した領域と封止樹脂15を充填した領域に分けたが、さらにバスバー7の表面に絶縁被覆を設けても良い。
【0046】
図6は、実施の形態2に係るパワー半導体装置101の他の概略構成を示す部分断面図である。図6に示すように、この実施の形態では、パワー半導体装置101は、仕切り板であるケース11cを設けて封止樹脂12を充填した領域と封止樹脂15を充填した領域に分けただけでなく、少なくとも封止樹脂15より外部に突出するバスバー7の露出表面を覆う絶縁被覆10が設けられる。絶縁被覆10は、ショア硬度がA66以上、D90以下のものである。A66未満の場合、低気圧環境下で樹脂の膨張により樹脂内部に気泡が発生する。D90を超えると、高温環境下で熱応力が大きくなり、樹脂の割れ及び剥離が発生する。絶縁被覆10の材質は、例えばシリコーンゴムである。
【0047】
これにより、上記実施の形態2の効果に加えて、部品数の増加抑制、装置の大型化の抑制を可能とするとともに、低気圧環境下において、パワー半導体装置100の金属製の部品を起点に発生する放電をさらに抑制することができる。
【0048】
以上のように、本実施の形態2に係るパワー半導体装置101によれば、熱伝導性を有するベース板1と、ベース板1の表面に設けられた絶縁層2と、絶縁層2の表面に設けられた表面電極3に、はんだ14により接合された半導体素子4と、半導体素子4及び表面電極3とボンディングワイヤ5を介して電気的に接続された端子6と、端子6と電気的に接続し、端子6を介して半導体素子4に外部から電圧を供給するバスバー7と、半導体素子4を格納し、バスバー7を端子6と接続して内部に固定するケース(11a、11b)又は(11、11c)と、ケース(11a、11b)又は(11、11c)の内部に充填され、半導体素子4と半導体素子4の接続部、及びバスバー7の接続部を、それぞれ封止する封止樹脂12及び封止樹脂15と、を備え、封止樹脂12及び封止樹脂15は、ショア硬度がA66以上、D90以下となるようにしたので、実施の形態1と同様の効果を有するだけでなく、封止樹脂を充填する領域が分かれているため、樹脂材料の選定の自由度が向上する。そのため、封止樹脂の材料を用途に応じて使い分けることを可能とする。例えば、高電界がかかり高温となる半導体素子を封止する封止樹脂には絶縁耐圧及び耐熱温度が高い樹脂を使用し、半導体素子に比べると電界が低い接続部分を封止する封止樹脂には絶縁耐圧及び耐熱温度が低い安価な樹脂を使用するといった使い分けが可能である。
【0049】
実施の形態3.
実施の形態1及び実施の形態2では、ショア硬度を限定した封止樹脂のみを用いた場合について説明したが、実施の形態3では、バスバーの接続部の封止にショア硬度を限定しない樹脂を用いた場合について説明する。
【0050】
図7A及び図7Bを用いて実施の形態3に係るパワー半導体装置102について説明する。図7A及び図7Bはそれぞれ、本願の実施の形態3に係るパワー半導体装置102の構成を示す部分断面図及び側面断面図である。
【0051】
図7A及び図7Bに示すように、パワー半導体装置102は、ケース11に仕切り板であるケース11cを設け、バスバー7と端子6をねじ8及びナット9で接続する接続部分が、ケース11と仕切り板であるケース11cとで囲われ、さらにケース11と仕切り板であるケース11cとで囲われた領域の内壁に、底部領域が狭くなるように傾斜が設けられた構成となっている。
【0052】
ケース11内は、仕切り板であるケース11cで仕切られ、半導体素子4、半導体素子4を接続する接続部分、及び端子6の一方の端部が囲われた領域には封止樹脂12が充填され、ケース11及び仕切り板であるケース11cの傾斜する内壁で、端子6の他方の端部、バスバー7の一部、及びバスバー7と端子6をねじ8及びナット9で接続する接続部分が囲われた領域には、第三の封止樹脂としてのシリコーン系樹脂16が充填されている。なお、ケース11内を仕切り板であるケース11cで仕切ったが、実施の形態2のケース11aとケース11bのように、別々のケースとしても良い。
【0053】
封止樹脂12は、半導体素子4、半導体素子4を接続する接続部分、及び端子6の一方の端部を封止し、シリコーン系樹脂16は、端子6の他方の端部、バスバー7の一部、及びバスバー7と端子6をねじ8及びナット9で接続する接続部分を封止する。封止樹脂12は、ショア硬度A66以上、D90以下の材料である。A66未満の場合、低気圧環境下で樹脂の膨張により樹脂内部に気泡が発生する。D90を超えると、高温環境下で熱応力が大きくなり、樹脂の割れ及び剥離が発生する。封止樹脂12の材質は、例えばシリコーンゴム又はエポキシ系の樹脂である。
【0054】
ケース11と仕切り板であるケース11cとで囲われた領域の開口部には、蓋17が設けられ、内部を密閉する。蓋17により、パワー半導体装置102の内部と外部を分離し、粉塵等がパワー半導体装置102内部に侵入することを防いでいる。蓋17は、例えば、PPS(Polyphe nylenesulfide)で形成され、シリコーン系若しくはエポキシ系等の接着剤(図示せず)又はネジ(図示せず)でケース11及び仕切り板であるケース11cに固定される。
【0055】
バスバー7には、少なくともシリコーン系樹脂16より外部に突出する露出表面を覆う絶縁被覆10が設けられる。絶縁被覆10は、ショア硬度がA66以上、D90以下のものである。A66未満の場合、低気圧環境下で樹脂の膨張により樹脂内部に気泡が発生する。D90を超えると、高温環境下で熱応力が大きくなり、樹脂の割れ及び剥離が発生する。絶縁被覆10の材質は、例えばシリコーンゴムである。
【0056】
実施の形態3によるパワー半導体装置102のその他の構成については、実施の形態1のパワー半導体装置100と同様であり、対応する部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0057】
次に、実施の形態3に係るパワー半導体装置102の製造方法について、図8Aから図8Dに基づき説明する。図8Aから図8Dは、実施の形態3に係るパワー半導体装置102の製造工程の各工程を示す図である。
【0058】
最初に、図8Aに示すように、ケース11、11cの内部に端子6及びナット9を設置する。端子6は仕切り板であるケース11cに設けられた貫通孔(図示せず)を通して固定し、ナット9はケース11の下部に設けられた溝(図示せず)に置くことで固定される。ねじ8でバスバー7を端子6に固定する際に、ナット9が回転して動かないように、溝の大きさを制限する。
【0059】
続いて、図8Bに示すように、絶縁被覆10付きのバスバー7を端子6と接するように配置し、ねじ8を用いて固定する。
【0060】
次いで、図8Cに示すように、蓋17の裏面にシリコーン系樹脂16を付着させ、ケース11の取り付ける位置の上方に配置する。
【0061】
続いて、図8Dに示すように、シリコーン系樹脂16が付着した蓋17を、蓋17に設けられた貫通孔(図示せず)にバスバー7を挿通させ、ケース11と仕切り板であるケース11cとで囲われた領域の開口部に、接着剤又はねじを用いてケース11及び仕切り板であるケース11cに固定する。
【0062】
このとき、シリコーン系樹脂16は、柔らかく、力を受けることで変形するため、蓋17の取り付け時にケース11の内壁に設けられた傾斜に沿って変形しながら充填される。
【0063】
以上のようにして、図7Aに示されるパワー半導体装置102の構造が得られる。
【0064】
従来のパワー半導体装置では、低気圧環境下では封止樹脂に引張応力がかかり、封止樹脂が膨張する。封止樹脂の膨張に伴い、封止樹脂内部に気泡が発生する。気体である気泡は個体の樹脂に比べ絶縁破壊電界が低く、放電が発生しやすい。そのため、高電圧が発生する端子、バスバー、ねじ、及びナットの近傍の封止樹脂内部に、低気圧環境下で気泡が発生した場合、気泡中で放電が発生し得る。
【0065】
これに対し、実施の形態3に係るパワー半導体装置102では、シリコーン系樹脂16が蓋17の取り付け時にケース11の内壁に設けられた傾斜に沿って変形しながら充填されるため、シリコーン系樹脂16には圧縮応力がかかる。低気圧環境下においても圧縮応力が保持されることで、シリコーン系樹脂16の膨張を抑制することができ、材料内部に気泡が発生することを抑制することができる。そのため、低気圧環境下において、パワー半導体装置102のシリコーン系樹脂16で覆われたバスバー7及びねじ8を起点に発生する放電を抑制することができる。
【0066】
また、シリコーン系樹脂16は、硬化した状態でケース11内部に設けられるため、シリコーン系樹脂16とケース11は強固に接合せず、力をかけることで取り外しが可能である。したがって、パワー半導体装置102の故障時に、シリコーン系樹脂16及びねじ8を取り外し、パワー半導体装置を交換することができる。
【0067】
以上のように、本実施の形態3に係るパワー半導体装置102によれば、熱伝導性を有するベース板1と、ベース板1の表面に設けられた絶縁層2と、絶縁層2の表面に設けられた表面電極3に、はんだ14により接合された半導体素子4と、半導体素子4及び表面電極3とボンディングワイヤ5を介して電気的に接続された端子6と、端子6と電気的に接続し、端子6を介して半導体素子4に外部から電圧を供給するバスバー7と、内部に仕切り板であるケース11cが配置され、半導体素子4を格納する領域及びバスバー7を端子6と接続して内部に固定する領域がそれぞれ設けられたケース11と、ケース11の内部に充填され、半導体素子4と半導体素子4の接続部、及びバスバー7の接続部を、それぞれ封止する封止樹脂12及びシリコーン系樹脂16と、少なくともシリコーン系樹脂16より外部の領域にあるバスバー7の表面を覆う絶縁被覆10を備え、ケース11、11cは、バスバー7を内部に固定する領域を囲う内壁に底部領域が狭くなるように傾斜が設けられ、封止樹脂12及び絶縁被覆10は、ショア硬度がA66以上、D90以下となるようにしたので、バスバーの外部側を起点に発生する放電を抑制することができるだけでなく、封止されたバスバー及びバスバーの接続部においては、低気圧環境下においても圧縮応力が保持されることでシリコーン系樹脂の膨張を抑制することができ、材料内部に気泡が発生することを抑制することができる。そのため、低気圧環境下において、封止されているバスバー及びバスバーの接続部を起点に発生する放電も抑制することができる。また、バスバーの接続部ではショア硬度が限定された封止樹脂を用いることなく放電を抑制することができるため、樹脂材料の選定の自由度が向上し、封止樹脂の材料を用途に応じて使い分けることを可能とする。
【0068】
また、本実施の形態3に係るパワー半導体装置102の製造方法によれば、ケース11、11cで囲われ、ケース11、11cの内壁に底部領域が狭くなるように傾斜が設けられた領域内に、バスバー7を端子6と接続して固定する工程と、ケース11、11cの開口部側から、ケース側にシリコーン系樹脂16を付着させた蓋17をケース11、11cに被せるとともに、バスバー7と端子6の接続部を封止する工程と、を含み、バスバー7は、少なくともシリコーン系樹脂16より外部の領域にあるバスバー7の表面を覆う絶縁被覆10が設けられ、前記絶縁被覆は、ショア硬度がA66以上、D90以下となるようにしたので、シリコーン系樹脂は硬化した状態でケース内部に設けられるため、シリコーン系樹脂とケースは強固に接合せず、力をかけることで取り外しが可能である。したがって、パワー半導体装置の故障時に、シリコーン系樹脂及びねじを取り外し、パワー半導体装置を交換することができる。
【0069】
実施の形態4.
実施の形態3では、傾斜が設けられたケース11、11cの内部にシリコーン系樹脂16のみを充填した場合を説明したが、実施の形態4では、2種の樹脂を充填した場合について説明する。
【0070】
図9A及び図9Bを用いて実施の形態4に係るパワー半導体装置103について説明する。図9A及び図9Bはそれぞれ、本願の実施の形態4に係るパワー半導体装置103の構成を示す部分断面図及び側面断面図である。
【0071】
図9A及び図9Bに示すように、パワー半導体装置103は、傾斜が設けられたケース11、11cの内部の底部領域に、第二の封止樹脂としての封止樹脂15が充填され、シリコーン系樹脂16とともに、バスバー7の接続部を封止する。封止樹脂15は、ショア硬度A66以上、D90以下の材料である。A66未満の場合、低気圧環境下で樹脂の膨張により樹脂内部に気泡が発生する。D90を超えると、高温環境下で熱応力が大きくなり、樹脂の割れ及び剥離が発生する。封止樹脂15の材質は、例えばシリコーンゴム又はエポキシ系の樹脂である。
【0072】
実施の形態3に係るパワー半導体装置102の製造方法では、実施の形態3の製造方法で図8Aに示すケース11、11cの内部に端子6及びナット9を設置して固定する工程の後に、傾斜が設けられたケース11、11cの内部の底部領域に、封止樹脂15を充填する工程が追加される。
【0073】
実施の形態4によるパワー半導体装置103のその他の構成及び製造方法については、実施の形態3のパワー半導体装置102と同様であり、対応する部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0074】
実施の形態4に係るパワー半導体装置103では、実施の形態3におけるパワー半導体装置102と同様の効果を持つ。加えて、シリコーン系樹脂16だけでなく封止樹脂15も充填されるため、低気圧環境下において、端子6及びナット9を起点に発生する放電をさらに抑制することができる。
【0075】
以上のように、本実施の形態4に係るパワー半導体装置103によれば、実施の形態3のパワー半導体装置102の構成において、さらにケース11、11cの内部の底部領域に、封止樹脂15が充填され、封止樹脂15は、ショア硬度がA66以上、D90以下となるようにしたので、実施の形態3と同様の効果を有するだけでなく、シリコーン系樹脂だけでなくショア硬度が限定された封止樹脂も充填されるため、低気圧環境下において、バスバー及びバスバーの接続部を起点に発生する放電をさらに抑制することができる。
【0076】
実施の形態5.
実施の形態5では、バスバー7だけでなく、バスバー7及びバスバー7の接続部分の表面全体に絶縁被覆10を設ける場合について説明する。
【0077】
図10を用いて実施の形態5に係るパワー半導体装置104について説明する。図10は、本願の実施の形態5に係るパワー半導体装置104の構成を示す部分断面図及び側面断面図である。
【0078】
図10に示すように、実施の形態5に係るパワー半導体装置104は、実施の形態2のパワー半導体装置101で封止樹脂15を充填する代わりに、端子6、バスバー7、ねじ8、及びナット9の表面に絶縁被覆10が設けられ、端子6とバスバー7が互いに接触する表面の一部に電気接続を確保するために、端子6とバスバー7には、それぞれ金属露出部6a及び金属露出部7aが設けられている。絶縁被覆10は、A66以上、D90以下の材料である。A66未満の場合、低気圧環境下で樹脂の膨張により樹脂内部に気泡が発生する。D90を超えると、高温環境下で熱応力が大きくなり、樹脂の割れ及び剥離が発生する。絶縁被覆10の材質は、例えばシリコーンゴムである。
【0079】
実施の形態5に係るパワー半導体装置104では、端子6、バスバー7、ねじ8、及びナット9の表面が絶縁被覆10で覆われているため、低気圧環境下において、パワー半導体装置104の端子6、バスバー7、ねじ8、及びナット9を起点に発生する放電を抑制することができる。
【0080】
また、この構成を用いることにより、実施の形態2のパワー半導体装置101(図3及び図5参照)において、それぞれ封止樹脂15の充填が不要なため、部品数の増加抑制を可能とする。また、バスバー7及びねじ8は封止樹脂によって固定されないため取り外しが可能であり、パワー半導体装置104の故障時に、ねじ8を取り外し、パワー半導体装置を交換することができる。
【0081】
実施の形態5によるパワー半導体装置104のその他の構成については、実施の形態2のパワー半導体装置101と同様であり、対応する部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0082】
なお、上記実施の形態5では、バスバー7及びバスバー7の接続部がケース11b又は11の内部に配置したが、これに限るものではない。バスバー7及びバスバー7の接続部をケース外に配置しても良い。これにより、部品数の増加抑制が可能となるとともに、バスバー7及びねじ8は封止樹脂によって固定されないため取り外しが容易となり、パワー半導体装置104の故障時に、ねじ8を取り外し、パワー半導体装置を交換することができる。
【0083】
また、この構成を、実施の形態1のパワー半導体装置100に適用しても良い。これにより、バスバー及びバスバーの接続部を起点に発生する放電をさらに抑制することができる。
【0084】
以上のように、本実施の形態5に係るパワー半導体装置104によれば、熱伝導性を有するベース板1と、ベース板1の表面に設けられた絶縁層2と、絶縁層2の表面に設けられた表面電極3に、はんだ14により接合された半導体素子4と、半導体素子4及び表面電極3とボンディングワイヤ5を介して電気的に接続された端子6と、端子6と電気的に接続し、端子6を介して半導体素子4に外部から電圧を供給するバスバー7と、半導体素子4を格納するケース11と、ケース11の内部に充填され、半導体素子4と半導体素子4の接続部を封止する封止樹脂12と、バスバー7及びバスバー7の接続部の表面を覆う絶縁被覆と、を備え、封止樹脂12及び絶縁被覆10は、ショア硬度がA66以上、D90以下となるようにしたので、低気圧環境下において金属製の部品を起点に発生する放電を抑制することができるだけでなく、バスバー及びバスバーの接続部では封止樹脂の充填が不要なため、部品数の増加抑制を可能とする。また、バスバー及びバスバーの接続部は封止樹脂によって固定されないため取り外しが可能であり、パワー半導体装置の故障時に、ねじを取り外し、パワー半導体装置を交換することができる。
【0085】
本願は、様々な例示的な実施の形態及び実施例が記載されているが、1つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。従って、例示されていない無数の変形例が、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
【0086】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0087】
(付記1)
熱伝導性を有するベース板と、
前記ベース板の表面に設けられた絶縁層と、
前記絶縁層の表面に設けられた表面電極に接合された半導体素子と、
前記半導体素子及び前記表面電極と電気的に接続された内部端子と、
前記内部端子と電気的に接続された外部端子と、
前記半導体素子を格納するケースと、
前記ケースの内部に充填され、前記半導体素子と前記半導体素子の接続部を封止する第一の封止樹脂と、
前記ケースの内部に充填され、前記外部端子の接続部を封止する第二の封止樹脂と、
を備え、
前記第一の封止樹脂及び前記第二の封止樹脂は、ショア硬度がA66以上、D90以下であることを特徴とするパワー半導体装置。
(付記2)
前記第一の封止樹脂及び前記第二の封止樹脂は、同一の樹脂であることを特徴とする付記1に記載のパワー半導体装置。
(付記3)
前記ケースは、内部に仕切り板が設けられ、前記仕切り板で仕切られたそれぞれの領域に、前記第一の封止樹脂及び前記第二の封止樹脂がそれぞれ充填されたことを特徴とする付記1に記載のパワー半導体装置。
(付記4)
前記ケースは、第一のケース及び第二のケースからなり、それぞれの内部に前記第一の封止樹脂及び前記第二の封止樹脂がそれぞれ充填されたことを特徴とする付記1に記載のパワー半導体装置。
(付記5)
少なくとも前記第二の封止樹脂より外部の領域にある前記外部端子の表面を覆う絶縁被覆を備え、前記絶縁被覆は、ショア硬度がA66以上、D90以下であることを特徴とする付記1から付記4のいずれか1項に記載のパワー半導体装置。
(付記6)
熱伝導性を有するベース板と、
前記ベース板の表面に設けられた絶縁層と、
前記絶縁層の表面に設けられた表面電極に接合された半導体素子と、
前記半導体素子及び前記表面電極と電気的に接続された内部端子と、
前記内部端子と電気的に接続された外部端子と、
前記半導体素子を格納する第一のケースと、
前記外部端子の接続部を格納する第二のケースと、
前記第一のケースの内部に充填され、前記半導体素子と前記半導体素子の接続部を封止する第一の封止樹脂と、
前記第二のケースの内部に充填され、前記外部端子の接続部を封止する第三の封止樹脂と、
少なくとも前記第三の封止樹脂より外部の領域にある前記外部端子の表面を覆う絶縁被覆と、
を備え、
前記第二のケースは、前記外部端子を内部に固定する領域を囲う内壁に底部領域が狭くなるように傾斜が設けられ、
前記第一の封止樹脂及び前記絶縁被覆は、ショア硬度がA66以上、D90以下であることを特徴とするパワー半導体装置。
(付記7)
前記第一のケースと前記第二のケースは、一つのケースの内部に仕切り板が設けられ、前記仕切り板で仕切られたそれぞれの領域に、前記第一の封止樹脂及び前記第三の封止樹脂がそれぞれ充填されたことを特徴とする付記6に記載のパワー半導体装置。
(付記8)
前記第一のケースと前記第二のケースは、別々のケースで設けられ、それぞれの内部に前記第一の封止樹脂及び前記第三の封止樹脂がそれぞれ充填されたことを特徴とする付記6に記載のパワー半導体装置。
(付記9)
前記第三の封止樹脂は、シリコーン系樹脂であることを特徴とする付記6から付記8のいずれか1項に記載のパワー半導体装置。
(付記10)
前記底部領域には、第二の封止樹脂が充填され、前記第二の封止樹脂は、ショア硬度がA66以上、D90以下であることを特徴とする付記6から付記9のいずれか1項に記載のパワー半導体装置。
(付記11)
熱伝導性を有するベース板と、
前記ベース板の表面に設けられた絶縁層と、
前記絶縁層の表面に設けられた表面電極に接合された半導体素子と、
前記半導体素子及び前記表面電極と電気的に接続された内部端子と、
前記内部端子と電気的に接続された外部端子と、
前記半導体素子を格納するケースと、
前記ケースの内部に充填され、前記半導体素子と前記半導体素子の接続部を封止する封止樹脂と、
前記外部端子及び前記外部端子の接続部の表面を覆う絶縁被覆と、
を備え、
前記封止樹脂及び前記絶縁被覆は、ショア硬度がA66以上、D90以下であることを特徴とするパワー半導体装置。
(付記12)
ケースで囲われ、前記ケースの内壁に底部領域が狭くなるように傾斜が設けられた領域内に、外部端子を内部端子と接続して固定する工程と、
前記ケースの開口部側から、前記ケース側にシリコーン系樹脂を付着させた蓋を前記ケースに被せるとともに、前記外部端子と前記内部端子の接続部を封止する工程と、
を含み、
前記外部端子は、少なくとも前記シリコーン系樹脂より外部の領域にある前記外部端子の表面を覆う絶縁被覆が設けられ、
前記絶縁被覆は、ショア硬度がA66以上、D90以下であることを特徴とするパワー半導体装置の製造方法。
(付記13)
前記外部端子を固定する工程の後に前記底部領域に封止樹脂を充填する工程を含み、前記封止樹脂は、ショア硬度がA66以上、D90以下であることを特徴とする付記12に記載のパワー半導体装置の製造方法。
【符号の説明】
【0088】
1 ベース板、2 絶縁層、3 表面電極、4 半導体素子、5 ボンディングワイヤ、6 端子、7 バスバー、10 絶縁被覆、11、11c ケース、12 封止樹脂、15 封止樹脂、16 シリコーン系樹脂、17 蓋、100、101、102、103、104 パワー半導体装置。
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図10