(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123342
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】バレル研磨用容器
(51)【国際特許分類】
B24B 31/16 20060101AFI20240905BHJP
B24B 31/02 20060101ALI20240905BHJP
B24B 31/12 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
B24B31/16
B24B31/02 Z
B24B31/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030657
(22)【出願日】2023-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101465
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 正和
(72)【発明者】
【氏名】梅本 啓太
(72)【発明者】
【氏名】坂本 敦
(72)【発明者】
【氏名】佐川 千鶴子
【テーマコード(参考)】
3C158
【Fターム(参考)】
3C158AA02
3C158AA09
3C158AB04
3C158AB08
3C158AC04
3C158CA04
3C158CB03
(57)【要約】
【課題】ワークを選別して取り出すことができるバレル研磨用容器を提供する。
【解決手段】被加工物とこの被加工物よりも小さく形成された研磨石とを収容するバレル研磨用容器1であって、被加工物分離用の第一分離容器20と、この第一分離容器20を中に入れる有底筒状の容器本体部10と、この容器本体部10の開口を開閉する蓋40と、を備え、第一分離容器20は、被加工物を第一分離容器20内から第一分離容器20外へ通過させず、且つ研磨石を第一分離容器20内から第一分離容器20外へ通過させる複数の第一孔を備えている。さらに第一分離容器20を容器本体部10に入れた状態で研磨石の第一孔の通過が容器本体部10の底によって阻止されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物とこの被加工物よりも小さく形成された研磨石とを収容するバレル研磨用容器であって、
被加工物分離用の第一分離容器と、この第一分離容器を中に入れる有底筒状の容器本体部と、この容器本体部の開口を開閉する蓋と、を備え、
前記第一分離容器は、前記被加工物を第一分離容器内から第一分離容器外へ通過させず、且つ前記研磨石を第一分離容器内から第一分離容器外へ通過させる複数の第一孔を底に備え、
さらに前記第一分離容器を前記容器本体部に入れた状態で前記研磨石の前記第一孔の通過が前記容器本体部の底によって阻止されていることを特徴とする、バレル研磨用容器。
【請求項2】
被加工物とこの被加工物よりも小さく形成された研磨石とを収容するバレル研磨用容器であって、
被加工物分離用の第一分離容器と、この第一分離容器を中に入れる研磨石分離用の第二分離容器と、この第二分離容器を中に入れる有底筒状の容器本体部と、前記容器本体部の開口を開閉する蓋と、を備え、
前記第一分離容器は、前記被加工物を第一分離容器内から第一分離容器外へ通過させず、且つ前記研磨石を第一分離容器内から第一分離容器外へ通過させる複数の第一孔を底に備え、
前記第二分離容器は、前記研磨石を第二分離容器内から第二分離容器外へ通過させない複数の第二孔を底に備え、
さらに前記第一分離容器を前記第二分離容器に入れた状態で前記研磨石の前記第一孔の通過が前記第二分離容器の底によって阻止されていることを特徴とする、バレル研磨用容器。
【請求項3】
前記第一分離容器の前記第一孔が円形であり、前記第一孔の内径が前記被加工物の短辺サイズの5/6以下であることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のバレル研磨用容器。
【請求項4】
前記蓋は、容器本体部内から容器本体部外へ通じていると共に前記被加工物及び前記研磨石を通過させない複数の第三孔を有する蓋本体部と、前記第三孔を開閉する封止板と、を備えていることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のバレル研磨用容器。
【請求項5】
前記第二孔と前記第三孔はスリット状に形成されており、
さらに前記第三孔のスリット幅が前記第二孔のスリット幅よりも小さいことを特徴とする、請求項4に記載のバレル研磨用容器。
【請求項6】
前記封止板の線熱膨張係数が前記蓋本体部の線熱膨張係数以下であることを特徴とする、請求項4に記載のバレル研磨用容器。
【請求項7】
前記容器本体部に形成されて前記容器本体部内に通じる液体注入部と、この液体注入部に設けられて前記容器本体部内への液体の流入を制御する第一開閉バルブと、を備えたことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のバレル研磨用容器。
【請求項8】
前記蓋本体部を貫通した圧抜き穴と、この圧抜き穴に設けられて気体の流入を制御する第二開閉バルブと、を備えたことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のバレル研磨用容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バレル研磨の際に被加工物と研磨石とを収容するバレル研磨用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
機械加工した被加工物の表面仕上げとしてバレル研磨が従来より行われている。
特許文献1のバレル研磨装置は、研磨を行った後に、被加工物を入れた容器の被加工物投入口の蓋を網状部材に取り換えて、すすぎを行うことができるように構成されている。
また、特許文献2には乾式のバレル研磨装置が開示されていて、外部から気体を取り込み可能な孔を設けた容器を備えていて、この容器の中に被加工物と研磨石とを収容し、容器を回転させて被加工物の研磨を行っている。
さらに、特許文献3には、バレル研磨後の被加工物や使用した研磨石を受け取る受部を、容器の下方に備えたバレル研磨装置が開示されている。また、受部では、網状部材を配置して、小さな研磨石を通過させ、被加工物を網で集めて、被加工物と研磨石とを分けるように構成されている。
容器内で被加工物と研磨石とを分けることができるバレル研磨装置が特許文献4に開示されており、このバレル研磨装置は、被加工物を通過させず、且つ研磨石を通さない網を容器内に設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7-132455号公報
【特許文献2】特開2002-36095号公報
【特許文献3】特開2006-938号公報
【特許文献4】特開2022-122406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の開示のバレル研磨装置では、研磨の後に、網状の蓋を取り外して、容器の中から被加工物を取り出すが、容器の中には研磨石もあるため、被加工物と研磨石とを分けなければならず、作業が煩雑になってしまう。このような問題が、特許文献2でも同様に存在する。
特許文献3のバレル研磨装置では、容器の外に出した被加工物と研磨石とを容器の下方の受部で分けることができるとしても、容器の中に、被加工物が残る恐れがあり、このような容器内の被加工物の取り出しは作業が非常に困難であり手間がかかるものである。
特許文献4のバレル研磨装置では、容器内で被加工物と研磨石とを分けることができるとしても、蓋を開けて開口から被加工物を取り出す作業が必要であり、この取出し作業も煩雑であり、また被加工物が残る恐れがある。
また、被加工物の残留リスクは、バレル研磨工程の自動化を行う際に最も重要な課題の1つとして残る。
【0005】
そこで、本発明は、被加工物を選別して取り出すことができるバレル研磨用容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、被加工物とこの被加工物よりも小さく形成された研磨石とを収容するバレル研磨用容器であって、被加工物分離用の第一分離容器と、この第一分離容器を中に入れる有底筒状の容器本体部と、この容器本体部の開口を開閉する蓋と、を備え、前記第一分離容器は、前記被加工物を第一分離容器内から第一分離容器外へ通過させず、且つ前記研磨石を第一分離容器内から第一分離容器外へ通過させる複数の第一孔を底に備えている。さらに前記第一分離容器を前記容器本体部に入れた状態で前記研磨石の前記第一孔の通過が前記容器本体部の底によって阻止されている。
【0007】
被加工物の材料や形は限定されるものではないが、例えば金属製で加工を施された成形品である。
研磨石を第一分離容器の第一孔を通して、第一分離容器から容器本体部に移すことができるため、第一分離容器によって被加工物を選別することができる。
【0008】
本発明は、被加工物とこの被加工物よりも小さく形成された研磨石とを収容するバレル研磨用容器であって、被加工物分離用の第一分離容器と、この第一分離容器を中に入れる研磨石分離用の第二分離容器と、この第二分離容器を中に入れる有底筒状の容器本体部と、前記容器本体部の開口を開閉する蓋と、を備え、前記第一分離容器は、前記被加工物を第一分離容器内から第一分離容器外へ通過させず、且つ前記研磨石を第一分離容器内から第一分離容器外へ通過させる複数の第一孔を底に備え、前記第二分離容器は、前記研磨石を第二分離容器内から第二分離容器外へ通過させない複数の第二孔を底に備えている。さらに前記第一分離容器を前記第二分離容器に入れた状態で前記研磨石の前記第一孔の通過が前記第二分離容器の底によって阻止されている。
【0009】
第一分離容器によって被加工物を選別することができることに加えて、第二分離容器では研磨石が第二孔を通過しないことで、第二分離容器に研磨石を残して集めることができる。
【0010】
本発明のバレル研磨用容器は、好ましくは、前記第一分離容器の前記第一孔が円形であり、前記第一孔の内径は前記被加工物の短辺サイズの5/6以下である。
【0011】
ここで、「短辺サイズ」とは、前記被加工物が平面的であれば外側で接する最小の矩形の短辺のサイズである。なお、「外側で接する」は、前記被加工物を平面的に捉えた際に前記被加工物の周縁の複数箇所に接して、前記被加工物を囲うことを意味し、例えば複数の角を有するものであれば、全ての角に接することは必ずしも条件ではない。
前記被加工物が棒状であれば、その最小の太さをいう。なお、直線状に延びた形態に限らず、角を有してL字型等に曲がった形態、弓なりの形態などでもよい。
また、前記被加工物が立体的形状であれば外側で接する最小の直方体の直交する三辺の長さが相違する場合は2番目に短い辺のサイズであり、最小の直方体の直交する三辺のうち二以上の辺の長さが同じである場合は「最も短い辺」である。なお、立体的形状の被加工部に関する「外側で接する」は、前記被加工物の表面の複数箇所に接して、被加工物を包むことを意味する。
第一孔の円形の大きさを被加工物の短辺サイズの5/6以下にすることで、被加工物が第一孔の通過を防止できる。
【0012】
本発明のバレル研磨用容器は、好ましくは、前記蓋は、容器本体部内から容器本体部外へ通じていると共に前記被加工物及び前記研磨石を通過させない複数の第三孔を有する蓋本体部と、前記第三孔を開閉する封止板と、を備えている。
【0013】
封止板によって第三孔の開閉状態を変えることができ、被加工物の研磨の際には第三孔を閉じることで水漏れを防止し、また第三孔が開いた状態で第三孔から給水或いは排水などを行える。蓋全体を取り外さずに、封止板によって第三孔を開閉することで効率良く研磨の工程からすすぎの工程への切替が可能となる。
【0014】
本発明のバレル研磨用容器は、好ましくは、前記第二孔と前記第三孔はスリット状に形成されており、さらに前記第三孔のスリット幅が前記第二孔のスリット幅よりも小さい。
【0015】
前記第三孔のスリット幅が前記第二孔のスリット幅よりも小さいことで、例えば研磨に用いた溶媒を第三孔から排出することができる。
【0016】
本発明のバレル研磨用容器は、好ましくは、前記封止板の線熱膨張係数が前記蓋本体部の線熱膨張係数以下である。
【0017】
封止板の熱膨張係数が蓋本体部の熱膨張係数以下であることで、研磨中に発生する熱によって封止板と蓋本体部との封止が確実に行われ、さらに封止板の熱膨張による蓋本体部の変形を防ぐことができる。
【0018】
本発明のバレル研磨用容器は、好ましくは、前記容器本体部に形成されて前記容器本体部内に通じる液体注入部と、この液体注入部に設けられて前記容器本体部内への液体の流入を制御する第一開閉バルブと、を備えている。
【0019】
内部に入っている水を入れ替えて被加工物のすすぎを行う際に、蓋を外して容器本体部の開口側からの水の注入などに代えて、容器本体部の液体注入部からすすぎ用の水の注入を行うことができ、研磨からすすぎへの移行に伴う作業を短縮できる。また自動化の観点でも機械設計が容易になる。
【0020】
本発明のバレル研磨用容器は、好ましくは、前記蓋本体部を貫通した圧抜き穴と、この圧抜き穴に設けられて気体の流入を制御する第二開閉バルブと、を備えている。
【0021】
圧抜用貫通穴があることで、蓋の開閉の際の極端な圧力変化を抑制し、粉や液体噴出を防止できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、被加工物を選別する煩雑な作業を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】(a)は本発明の第一実施形態に係るバレル研磨用容器の斜視図であり、(b)は(a)のバレル研磨用容器の分解斜視図であり、(c)は(a)のバレル研磨用容器の平面図である。
【
図2】(a)は
図1(b)の容器本体部の平面図であり、(b)は(a)の容器本体部のA1-A1線に沿った断面図である。
【
図3】(a)は
図1(b)の第一分離容器の平面図であり、(b)は(a)の第一分離容器のA2-A2線に沿った断面図である。
【
図4】(a)は
図1(b)の第二分離容器の平面図であり、(b)は(a)の第二分離容器のA3-A3線に沿った断面図である。
【
図5】
図1(c)のA4-A4線に沿ったバレル研磨用容器の底側の部分断面図である。
【
図6】(a)は
図1(b)の蓋の平面図であり、(b)はは
図1(b)の蓋の底面図である。
【
図7】
図6(b)の底面側から見た蓋の分解図である。
【
図8】(a)は
図6(a)のA5-A5線に沿った蓋の断面図であり、(b)は
図6(a)のA6-A6線に沿った蓋の断面図であり、(c)は
図7のA7-A7線に沿った蓋本体部の断面図である。
【
図9】(a)~(c)は本発明の第一実施形態に係るバレル研磨用容器の固定部材を説明するための図である。
【
図10】本発明の第一実施形態に係るバレル研磨用容器の蓋をした状態の部分断面図である。
【
図11】(a)~(c)は第一本発明の実施形態に係るバレル研磨用容器を用いた被加工物の研磨方法の工程を示す図である。
【
図12】(a)~(f)は
図11(a)の研磨方法の工程を説明するための図である。
【
図13】本発明の実施形態に係るバレル研磨用容器を用いる研磨装置を示す概略図である。
【
図14】
図11(b)及び(c)の研磨方法のすすぎ工程を説明するための図である。
【
図15】(a)は本発明の第二実施形態に係るバレル研磨用容器の分解斜視図であり、(b)は本発明の第二実施形態に係るバレル研磨用容器の平面図である。
【
図16】(a)及び(b)は本発明の第二実施形態に係るバレル研磨用容器の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1(a)及び(b)に示すように、本発明の第一実施形態に係るバレル研磨用容器1は、有底筒状の容器本体部10と、この容器本体部10の中に入れられる有底筒状の第一分離容器20及び第二分離容器30と、第一分離容器20及び第二分離容器30を容器本体部10に入れた状態で容器本体部10の開口を覆う蓋40と、蓋40を容器本体部10に着脱自在に固定する固定部材50と、を備えている。
【0025】
(容器本体部10)
図2(a)及び(b)に示すように、容器本体部10は、バレル研磨用容器1の外周面を構成する外筒部110と、この外筒部110の一方の開口を塞いで底を構成する本体閉塞板120と、を備えている。
外筒部110は、断面が六角形の筒状に形成されており、本体閉塞板120が設けられる端部側には、容器本体部10外から容器本体部10内へ通じる液体注入部111が形成されている。
以下、
図2(b)に一点鎖線で示すニップル一体型の第一開閉バルブ130が液体注入部111に設けられていることを前提に説明をする。
【0026】
(第一分離容器20)
図3(a)及び3(b)に示すように、第一分離容器20は、第一内筒部210と、この第一内筒部210の一方の開口を塞いで底を構成する第一閉塞板220と、から有底筒状に形成されている。第一内筒部210は、断面が六角形の筒状に形成されている。
第一閉塞板220には、第一分離容器20内から第一分離容器20外へ通じる第一孔221が複数形成されている。これらの第一孔221は、第一分離容器20の平面視で円形に形成されていて、各第一孔221は、加工して形成された金属製のワーク(被加工物)を第一分離容器20内から第一分離容器20外へ通過させず、且つ研磨石を第一分離容器20内から第一分離容器20外へ通過させる大きさに形成されている。
図3(a)に示す例では、複数の第一孔221は、第一閉塞板220の中心位置から放射状に並んで配置されている。
なお、ワークの形状によるが、第一孔221の内径(円の直径)φはワークの短辺サイズの5/6以下に、より好ましくはワークの短辺サイズの2/3以下とする。ここで、ワークの短辺サイズとは、ワークが板形状(穴が開いていてリング状でもよい。)などの平面的な物であれば外側で接する最小の矩形の短辺のサイズである。なお、「外側で接する」は、ワークを平面的に捉えた際にワークの周縁の複数箇所に接して、ワークを囲うことを意味し、例えば複数の角を有するワークであれば、全ての角に接することは必ずしも条件ではない。ワークが棒状であれば、その最小の太さをいう。なお、直線状に延びた形態に限らず、角を有してL字型等に曲がった形態、弓なりの形態などでもよい。ワークが、球状や断面が複数の短形の組合せからなる部品などの立体的な物であれば外側で接する最小の直方体の直交する三辺の長さが相違する場合は2番目に短い辺のサイズであ、最小の直方体の直交する三辺のうち二以上の辺の長さが同じである場合は「最も短い辺」である。なお、立体的形状のワークに関する「外側で接する」は、ワークの表面の複数箇所に接して、被加工物を包むことを意味する。また、第一閉塞板220における第一孔221の配置は、第一分離容器20の平面視で第一閉塞板220の中心から放射状の並びに限らず、第一分離容器20の中心軸と直交する方向に沿って配置されるなど複数の第一孔221の配置は限定されるものではない。
【0027】
さらに、バレル研磨用容器1は、好ましくは、第一内筒部210の内面と第一閉塞板220の内面とを覆うライニングを設けるとよい。このライニングは、例えばプラスチック又はゴムからシート状に形成されている。ライニングが第一分離容器20の内側に接着剤等を介して張られていると、第一内筒部210の摩耗などを抑えることができる。なお、
図5では、符号251,252を付してライニングを表しており、第一閉塞板220の内側に張られたライニング252には、第一閉塞板220の第一孔221に対応して設けられ第一孔221と同じ形状に形成された複数の孔252Aが形成されており、第一閉塞板220の第一孔221とライニング252の孔252Aとが続くように配置されている。
図3(b)に示すように、第一分離容器20では、第一閉塞板220が、上げ底として設けられていて、第一内筒部210の底側に配置される端211よりも開口210A側に位置をずらして配置されている。
【0028】
(第二分離容器30)
図4(a)及(b)に示すように、第二分離容器30は、第二内筒部310と、この第二内筒部310の一方の開口を塞いで底を構成する第二閉塞板320と、から有底筒状に形成されている。第二内筒部310は、断面が六角形の筒状に形成されている。
第二閉塞板320には、第二分離容器30内から第二分離容器30外へ通じる分離用の第二孔321が複数形成されている。各第二孔321は、研磨石を第二分離容器30内から第二分離容器30外へ通過させない大きさに形成されている。第二分離容器30を平面視した場合の第二孔321の形状も限定されるものではないが、図示例のように、第二孔321の形状は第一孔221の形状と異なるものとし、好ましくは第二孔321がスリットとして形成される。スリット幅は、研磨石のサイズのうち、最小の粒子径のサイズの2/3以下、好ましくは5/6以下に設定される。
図4(b)に示す第二分離容器30では、第二閉塞板320が、上げ底として設けられていて、第二内筒部310の底側の端321よりも開口310A側に位置をずらして配置されている。
【0029】
このように容器本体部10、第二分離容器30、第二分離容器30略が相似した形に構成されていて、中心軸と直交する方向に沿った寸法では、容器本体部10が最も大きく、その次に大きいのが第二分離容器30であり、最も小さいのが第一分離容器20であり、これらは入れ子式に重ねることができるように構成されている。具体的には、容器本体部10が最も外側に配置され、次に大きい第二分離容器30が容器本体部10の中に入れられ、さらに第一分離容器20が第二分離容器30の中に入れられる。第一分離容器20を第二分離容器30に重ねる際には、第一分離容器20の底(第一閉塞板220)が第二分離容器30の中の奥に入れられ、これと同様に第二分離容器30の底(第二閉塞板320)が容器本体部10の中の奥に入れられる。また、第一分離容器20の第一内筒部210の外周面の出隅部212が、第二分離容器30の第二内筒部310の内周面の入隅部311に当接して或いは対向して配置され、これにより第一分離容器20が第二分離容器30の中で、位置決めされる。
第二分離容器30の第二内筒部310の外周面の出隅部312が、容器本体部10の外筒部110の内周面の入隅部112に当接して或いは対向して配置される。これにより第二分離容器30が容器本体部10の中で、位置決めされる。
【0030】
このように、入れ子式に容器本体部10、第二分離容器30、第二分離容器30を重ねた状態では、本体閉塞板120と第二閉塞板320とが合わさるように、また第二閉塞板320と第一閉塞板220とが合わさるように構成することもできるが、好ましくは
図5に示すように、第一分離容器20の第一閉塞板220と第二分離容器30の第二閉塞板320との間には第一クリアランスCL1が構成され、第二分離容器30の第二閉塞板320と容器本体部10の本体閉塞板120との間には第二クリアランスCL2が構成される。
なお、第一クリアランスCL1(第一閉塞板220と第二閉塞板320との間隔t)は研磨石を入り込ませない大きさに設定されている。このため、第一分離容器20を第二分離容器30に入れた状態で研磨石の第一孔221の通過が第二分離容器30の底(第二閉塞板320)によって阻止される。第一閉塞板220が第二閉塞板320に合わさる場合は第一孔221が第二分離容器30の底(第二閉塞板320)によって閉ざされて研磨石の第一孔221の通過が阻止される。
また、第二内筒部310の外周面は外筒部110の内周面に当接するか、間に微小のクリアランスを配置して重なり、第一内筒部210の外周面は第二内筒部310の内周面に当接するか、間に微小のクリアランスを配置して重なる。これらの微小のクリアランスには研磨石が入りこまないように構成されている。容器本体部10の外筒部110と第二分離容器30の第二内筒部310との間、容器本体部10の本体閉塞板120と第二分離容器30の第二内筒部310の底側の端(或いは底)との間、第二分離容器30の第二内筒部310と第一分離容器20の第一内筒部210との間には、研磨石が入り込むことができない間隔の隙間を設ける場合、これらの隙間を液体注入部111から第一分離容器20への液体の流路として用いることができる。
【0031】
また、容器本体部10、第一分離容器20、第二分離容器30を重ねた状態の開口側では、後述の
図10に示すように、第二分離容器30の第二内筒部310の開口310Aを構成する先端部313は、容器本体部10の外筒部110の開口110Aを構成する先端部113よりも本体閉塞板120側にずれて配置されて、第二分離容器30はその全体が容器本体部10に収まる。第一分離容器20の第一内筒部210の開口210Aを構成する先端部213は、後述の
図9(a)に示すように、容器本体部10の外筒部110の開口110Aを構成する先端部113よりも外に突出し、突出するサイズは例えば数ミリメートルである。容器本体部10、第一分離容器20、第二分離容器30の開口110A,210A,310Aを構成する先端部の位置を揃えて構成されてもよい。
【0032】
(蓋40)
図6(a)及び(b)と
図7に示すように、蓋40は、容器本体部10の開口110Aを覆う蓋本体部410と、封止部420と、を備えている。
蓋本体部410は、板状に形成されていて、容器本体部10の本体閉塞板120を臨む側の第一面410Aに、隣接する箇所よりも厚みを薄くして形成されていて封止部420を入れるための封止用凹部411と、封止用凹部411の底を構成する薄肉部411Aを貫通して容器本体部10内から容器本体部10外へ通じる複数の第三孔411Bと、を備えている。
封止用凹部411は、蓋本体部410を平面視した場合に、蓋本体部410の第一面410Aで周縁よりも内側の箇所から周縁の一部までに亘って形成されており、封止用凹部411によって周縁の一部の箇所は周縁の他の箇所よりも厚さが薄く形成されていて、蓋本体部410の周縁には封止用凹部411内への入口412が形成されている。
また、封止用凹部411では、薄肉部411Aが蓋本体部410の平面視で矩形状に形成されており、薄肉部411Aの二つの長辺縁から立ち上がっていて対向する第一内壁面411Cと第二内壁面411Dと、蓋本体部410の周縁より内側に配置される短辺縁から立ち上がる第三内壁面411Eとを備えている。
【0033】
各第三孔411Bは、ワーク及び研磨石をバレル研磨用容器1内からバレル研磨用容器1外へ通過させない大きさに形成されている。
蓋本体部410を平面視した場合の第三孔411Bの形状も限定されるものではないが、例えば第三孔411Bはスリットとして形成される。第三孔411Bのスリット幅は、第二孔321のスリット幅と同じに或いは第二孔321のスリット幅よりも小さくしてもよい。
図示例では、長さが同じの複数の第三孔411Bが封止用凹部411の薄肉部411Aにその短辺縁と平行にスリットの端の位置を揃えて形成されているが、第三孔411Bの長さや配置は図示例に限らず、例えば薄肉部411Aの長辺縁に沿って配置すること等などでもよい。
さらに、蓋本体部410は、薄肉部411Aと比べて厚く形成された箇所を貫通する圧抜き穴413を有する。この圧抜き穴413からの気体の流れを制御する第二開閉バルブ45が、
図1(c)に示すように、蓋本体部410の第一面410Aとは反対側に位置する第二面410B側に配置される。
【0034】
なお、封止用凹部411の薄肉部411Aでは、複数の第三孔411Bのまわりが孔を設けていない非貫通環状部423として形成されており、この非貫通環状部の本体閉塞板120側を臨む面423Aは、好ましくは矩形の枠状で弾性のパッキン430が接着剤などで固定して、覆われている。
また、蓋本体部410の封止用凹部411のまわりにある面は、好ましくは、弾性の蓋第一ライニング440で覆われている。この蓋第一ライニング440は、例えばゴムからなりシート状に形成されている。蓋第一ライニング440が接着剤等を介して蓋本体部410に固定される。この蓋第一ライニング440には、蓋本体部410の圧抜き穴413に対応して設けられ圧抜き穴413と同じ形状に形成された穴441が形成されており、
図8(a)に示すように、蓋本体部410の圧抜き穴413と蓋第一ライニング440の穴441とが続くように配置されている。
さらに、蓋本体部410の封止用凹部411の第一内壁面411Cと第二内壁面411Dとには、好ましくは、
図8(a)に示すように、弾性の蓋第二ライニング450が接着剤等を介して設けられている。これらの蓋第二ライニング450は、例えばゴムからなりシート状に形成されている。
【0035】
(封止部420)
封止部420は、封止板421と、弾性の蓋第三ライニング422と、を備えている。
封止板421は、蓋本体部410の薄肉部411Aに形成された複数の第三孔411Bを覆う大きさに形成されており、周縁側が薄肉部411Aに取り付けられている枠状のパッキン430に当たるように、平面視で輪郭が矩形状に形成されている。
蓋第三ライニング422は、例えばゴムからシート状に形成されており、接着剤等を介して蓋本体部410の本体閉塞板120側を臨む面に固定されている。バレル研磨用容器1では、好ましくは、蓋第三ライニング422を設けるが、省いて封止部420を構成することもできる。なお、前記の蓋第二ライニング450は、封止用凹部411に設けずに、封止部420の側面に設けてもよい。
また、
図6(a)及び(b)に示すように、封止部420の一方の短辺縁側の端部は、蓋本体部410の封止用凹部411に入れた状態で、蓋本体部410の周縁より突き出るように配置され、このように突出する端部側には指を通すことができるように、封止板421の指掛け穴421Aと蓋第三ライニング422の指掛け穴422Aとが厚み方向に連なって設けられている。
【0036】
(固定部材50)
固定部材50は、容器本体部10の開口を蓋40で覆った状態を保持するためのものであり、蓋40を容器本体部10に着脱自在に固定する。
図9(a)に示すように、固定部材50は、容器本体部10の外筒部110の外面に設けられた本体側固定部510と、蓋40の蓋本体部410に設けられた蓋側固定部520と、を備えていて、本体側固定部510が蓋側固定部520を留めるように構成されている。
固定部材50は、蓋側固定部520と本体側固定部510とを一組として、複数設けている。
図1(c)に示すように、固定部材50は、バレル研磨用容器1の中心軸まわりに120度の角度の間隔で三組設けているが、中心軸まわりの間隔や組数は限定されるものではない。なお、
図1(b)では固定部材50を省略している。また
図9では、三つの固定部材50のうち、
図1(c)の矢印αで指す固定部材50だけを表しているが、他の二つの固定部材50も構成や取り扱いは同じである。
【0037】
固定部材50はヒンジボルトであり、
図9(a)に示すように、本体側固定部510は、容器本体部10の外筒部110に固定されたベース511と、ベース511に回転自在に支持された回転軸512と、この回転軸512に基端側を固定したボルト513と、ボルト513の外周面に形成されたねじに螺着しておりボルト513に沿って移動自在に設けられた押さえ部514と、を備えている。
蓋側固定部520は、蓋本体部410の周縁より中心軸と直交する方向に張り出していて本体側固定部510のベース511に載る突出部521を備えている。
この突出部521は、
図6(a)及び(b)に示すように、本体側固定部510のボルト513を通す切り欠き521Aが設けられている。
ここで、蓋40の固定方法について説明すると、先ず
図9(b)に示すように、蓋40で容器本体部10の開口を覆うと共に、各蓋側固定部520の突出部521を本体側固定部510のベース511にそれぞれ載せる。
次に、
図9(c)に示すように、本体側固定部510のボルト513を回転軸512まわりに回転させて立ち上がる状態にして、押さえ部514を各蓋側固定部520の突出部521の上方に配置し、さらに押さえ部514を回転させて下降させる。これにより各蓋側固定部520の突出部521が本体側固定部510のベース511と押さえ部514とに挟まれて、蓋40が容器本体部10に固定される。なお、固定部材50は、ヒンジボルト513に限定されるものではなく、蓋側固定部520や本体側固定部510のそれぞれ突出箇所を挟んで留めるようなもの、またクランプなどでもよい。
このように、蓋40を固定部材50によって容器本体部10に固定した状態では、
図10に示すように、第一分離容器20の第一内筒部210の先端部213が、蓋40の蓋第三ライニング422に密着すると共に、
図10では示していないが蓋第一ライニング440にも密着して、第一分離容器20の開口210Aが塞がれる。またこの蓋状態では、第一分離容器20は蓋40と容器本体部10の底とに挟まれて固定される。これに伴って第二分離容器30の底が第一分離容器20の底と容器本体部10の底とに挟まれて、第二分離容器30も固定される。
図10では第二固定部材520を蓋本体部410に固定するためのボルトと、蓋第三ライニング422が第一分離容器20の開口より第一分離容器20の中に入り込む形態と、を省略している。
また、容器本体部10の外筒部110の先端部113も、第二分離容器30と同様、
図10に示すように、蓋40の蓋第三ライニング422に密着すると共に、
図10では示していないが蓋第一ライニング440にも密着して、容器本体部10の開口110Aが塞がれる。
さらに、蓋40の第三孔411Bと容器本体部10等の開口110A,210A,310Aとの間には、封止部420やパッキン430が配置されていて、第三孔411Bを通って容器本体部10内から容器本体部10外への液体の移動が阻止され、またこれとは逆に第三孔411Bを通って容器本体部10外から容器本体部10内への液体の移動が阻止される。封止部420が蓋本体部410の封止用凹部411に入った状態では、
図8(a)に示すように、第二蓋ライニング450が蓋本体部410と封止部420とで挟まれて、蓋本体部410の第一内壁面411Cと封止部420の側面との間と、第二内壁面411Dと封止部420の側面との間を埋めて、封じている。
このように、外側の容器本体部10の開口110Aや、第一分離容器20の開口210Aが、蓋40で塞がれて、内部が水密状態に保持される。なお、蓋が圧抜き穴413や第二開閉バルブ45を設ける場合は、第二開閉バルブ45を閉じ状態とする。
【0038】
上記の容器本体部10と第一分離容器20及と第二分離容器30と蓋本体部410と封止板421は、材料が限定されるものではないが、金属からなり、例えばステンレス鋼(SUS304)からなる。
第一分離容器20はプラスチックで構成されてもよい。
また、封止部420の封止板421の線熱膨張係数が蓋本体部410の線熱膨張係数以下となるように構成してもよい。この場合、封止板421はカーボンからなり、蓋本体部410は鉄からなる。
図6(b)に示すように、封止部420の封止板421の幅寸法w1が蓋本体部410の封止用凹部411の幅寸法w2(第一内壁面411Cと第二内壁面411Dとの間隔)より小さい(w1<w2)ことから、研磨中に発生する熱で封止板421の熱膨張による蓋本体部410の変形を防ぐことができる。封止板421と蓋本体部410との隙間が第二蓋ライニング450で埋められて、封止が確実に行われる。なお、封止板421の幅寸法w1は第三孔411Bのスリット長L1やパッキン430の穴よりも大きく設定されている。
容器本体部10は、
図2(b)に示すように、外筒部110の外周面から突出した取っ手140を備えてもよい。取っ手140を利用することで、バレル研磨用容器1を容易に持ち運びできる。
第一内筒部210は、
図3(b)に示すように、第一内筒部210の開口210Aに寄せた位置に指掛け穴214を設けてもよい。指通し穴214があることで、第一分離容器20を第二分離容器30からの取出しなどが容易になる。
第二内筒部310も、
図4(b)に示すように、第二閉塞板320が設けられる端部とは反対側には指掛け穴314を設けてもよい。指通し穴314があることで、第二分離容器30を容器本体部10からの取出しなどが容易になる。
【0039】
(使用方法)
以下、バレル研磨用容器1を用いたワークの研磨方法を説明する。
図11(a)に示すように、ワークの研磨方法は、ワーク等をバレル研磨用容器1に入れる投入工程と、投入工程の後にバレル研磨用容器1の開口を蓋40で閉じる蓋閉工程と、蓋閉工程の後にバレル研磨用容器1を回転させてワークの表面を磨く研磨工程と、研磨工程の後にバレル研磨用容器1の蓋40を開ける蓋開工程と、蓋開工程の後にワークを取り出すワーク取出工程と、ワーク取出工程の後に研磨石を取り出す研磨石取出工程と、を備えている。以下、工程別に説明する。
【0040】
(投入工程)
図12(a)に示すように、投入工程では、先ず蓋40を開けると共に、容器本体部10と第一分離容器20と第二分離容器30が重なった状態とする。このとき、第一開閉バルブ130も閉状態とする。次に、第一分離容器20の中に、ワーク70と、ワーク70よりサイズが小さい研磨石80とを入れる。研磨石80は各種利用することができ、例えば金属製、セラミックス製、プラスチック製などのものを用いることができる。なお、ワーク70と研磨石80の他に、水などの液体、研磨材、界面活性剤を加えてもよい。ここで、研磨材とは研磨石とワークの間に入り込み、外部からの力で運動することで、ワークの表面を削ることを助ける役割を果たす。従って、研磨石よりも小さいサイズを一般的に用いる。
【0041】
(蓋閉工程)
図12(b)に示すように、蓋閉工程では、ワーク70と研磨石80とが第一分離容器20に収まった状態で、容器本体部10の開口を蓋40で閉じ、さらに固定部材50で蓋40を容器本体部10に固定する。なお、
図12では、蓋40は細部を省き一点鎖線の矩形として表し、固定部材50、第一開閉バルブ130、第二開閉バルブ45は省略している。
また、蓋40を容器本体部10に固定する際、蓋40の封止部420を蓋本体部410の封止用凹部411に入れて、蓋本体部410の複数の第三孔411Bを内側から覆った状態とする。
図1(c)及び
図9(b)に示すように、封止部420は指掛け穴421A,422Aが配置された一方の端部を蓋本体部410の周縁より外に張り出すように配置し、また指掛け穴421A,422Aとは反対に位置にする短辺縁側の端部を封止用凹部411の第三内壁面411Eに当てるように配置し、さらに指掛け穴421A,422Aがある一方の端部側を容器本体部10と蓋本体部410とで挟んで封止部420を固定する。
蓋40の容器本体部10の本体閉塞板120を臨む裏面には、それぞれ弾性の蓋第一ライニング440と蓋第二ライニング420が張られていることで、容器本体部10と蓋40との間が水密に塞がれる。このように蓋40が容器本体部10の開口110Aを閉じた状態では、第一分離容器20の開口210Aは蓋40で閉ざされ、且つ研磨石の第一孔221の通過が第二分離容器30の底(第二閉塞板320)によって阻止される。
さらに、第二開閉バルブ45を閉じ状態にして、バレル研磨用容器1を密封状態にする。
【0042】
(研磨工程)
研磨工程では、バレル研磨用容器1が例えば
図13に示す研磨装置90にセットされて、ワーク70の研磨を行う。研磨装置90は、バレル研磨用容器1を支持した状態で第一方向D1に回転する回転部91と、回転部91を回転させる図示省略の駆動部と、を備えている。
研磨工程では、
図12(c)に示すように、ワーク70、研磨石80、水を入れて密封された状態で、バレル研磨用容器1を回転させることで、内部でワーク70の表面が研磨石80で磨かれる。
なお、バレル研磨用容器1の内面、つまり第一分離容器20の内面にはライニングが設けられ、さらに蓋40の内面にも弾性の蓋第一ライニング440や蓋第三ライニング422が設けられていることで、第一分離容器20の摩耗やなどによるワーク70の変形等を防止できる。
【0043】
(蓋開工程)
図12(d)に示すように、蓋開工程は、先ず固定部材50を解除して蓋40を容器本体部10から外す。なお、研磨工程によって、バレル研磨用容器1の圧力が高くなる場合には、固定部材50の解除を行う前に第二開閉バルブ45を開いて、バレル研磨用容器1内を減圧する。これにより、内圧上昇した状態での蓋開動作の際の研磨屑等の噴出を防止する。
【0044】
(ワーク取出工程)
図12(e)に示すように、蓋40が開いて、容器本体部10と第一分離容器20と第二分離容器30が重なっている状態で、第一分離容器20を取り出す。この際、例えば、容器本体部10などの開口が上方を臨んだ状態で、第一分離容器20を上昇させると、複数の第一孔221が第一分離容器20の第一閉塞板220に設けられていることから、第一孔221を通して研磨石80を第二分離容器30の中に移すことができる。
これにより、第一分離容器20を容器本体部10と第二分離容器30とから離すと、ワーク70だけを取り出すことができる。
なお、先の投入工程の際に、ワーク70及び研磨石80と共に水を第一分離容器20に入れる場合には、第一分離容器20を取り出す前に、封止部420を蓋本体部410の封止用凹部411内でスライドさせて外に引き出して(封止部420のスライドについては後述の「蓋スライド工程」参照。)、複数の第三孔411Bを開状態とし、これらの第三孔411Bから研磨の際に使用した水を排出する。
【0045】
(研磨石取出工程)
図12(f)に示すように、研磨石取出工程では、蓋40が開いて、容器本体部10と第二分離容器30が重なった状態で、第二分離容器30を取り出す。この際、例えば、容器本体部10などの開口が上方を臨んだ状態で、第二分離容器30を上昇させると、複数の第二孔321が第二分離容器30の第二閉塞板320に設けられていることから、第二孔321を通して微小の研磨屑などの残渣物を容器本体部10の中に移すことができる。これにより、第二分離容器30を容器本体部10から離すと、研磨石80だけを取り出すことができる。
【0046】
(すすぎ工程)
バレル研磨用容器1を用いたワークの研磨方法としては、
図11(b)に示すように、研磨工程と蓋開工程との間にすすぎ工程を設けてもよい。
図11(c)に示すように、すすぎ工程は、封止部420をスライドさせて第三孔411Bを開ける蓋スライド工程と、蓋スライド工程の後に内部に給水する給水工程と、給水工程の後に封止部420をスライドさせて第三孔411Bを閉じる蓋スライド戻し工程と、蓋スライド戻し工程の後にワーク70のすすぎを行うすすぎ運転工程と、を備えている。
以下、工程別に説明する。
【0047】
(蓋スライド工程)
図14(a)に示すように、本体側固定部510の押さえ部514を蓋側固定部520の突出部521の上方に移動させて封止部420の固定を解除し、封止部420を蓋本体部410の封止用凹部411内でスライドさせて外に引き出す。この際に、封止部420の全体を引き出さずに、指掛け穴421A,422Aとは反対側の端部を容器本体部10と蓋本体部410との間に残して配置し、封止部420が片持ち状に支持される状態にする。なお、封止部420の固定を解除する前に第二開閉バルブ45を開いて、バレル研磨用容器1内を減圧するとよい。
【0048】
(給水工程)
図14(b)に示すように、容器本体部10の外筒部110の液体注入部111に設けた第一開閉バルブ130に給水管95を接続してバレル研磨用容器1に給水を行う。水などの液体は液体注入部111から容器本体部10へ流れ込むと、容器本体部10と第二分離容器30との隙間、第二クリアランスCL2、第二孔321、第一クリアランスCL1、第一孔221を経て、第一分離容器20の中に流入する。
なお、先の研磨工程の際に、ワーク70及び研磨石80と共に水を用いている場合には、給水工程に代えてバレル研磨用容器1の中の水を入れ替える水入替工程を実施してもよい。
水入替工程は、研磨の際に使用した水を第三孔411Bから排出する排水工程と、排水工程の後に給水管95、第一開閉バルブ130及び液体注入部111より給水を行う給水工程と、を備えている。
また、図示することを省略するが、液体注入部111は液体排出部として機能させてもよい。この場合の水入替工程では、第三孔411Bを給水側として利用し、第三孔411Bに向けて給水管95の開口端を配置し、第三孔411Bを通してバレル研磨用容器1に給水を行い、容器本体部10の外筒部110の液体注入部111(液体排出部)に設けた第一開閉バルブ130に排水管を接続してもよい。
さらに、容器本体部10が液体注入部111を設けていない場合には、蓋40の第三孔411Bを給水口兼排水口として利用することができる。
【0049】
(蓋スライド戻し工程)
蓋スライド戻し工程は、蓋本体部410から張り出す封止部420を、封止用凹部411内でスライドさせて奥にある第三内壁面411Eに当るまで押し込む。これにより蓋本体部410の第三孔411Bが閉じ、この状態で本体側固定部510の押さえ部514を蓋側固定部520の突出部521の上面に当て、封止部420を容器本体部10と蓋本体部410とで挟んで固定する。また、この押さえ部514による押さえ付けで、蓋本体部410も容器本体部10に固定される。
【0050】
(すすぎ運転工程)
すすぎ運転工程では、ワーク70、研磨石80、水を入れて密封された状態で回転して、ワーク70のすすぎを行う。
このようなすすぎ運転を行うことで、研磨された表面に残渣物が残ることを防止できる。
【0051】
第一実施形態のバレル研磨用容器1では、第一分離容器20によってワーク70を選別してワーク70の全数取り出すことができる。これにより、ワーク70の表面に付着した研磨石80を取り除く作業を省くことができ、作業性を向上させることができる。自動化ラインを構築する場合も、ワーク70の回収残りがないため、容器内に残るワーク70を再び研磨したことによって発生する、寸法はずれや品質不良の仕上げ製品の製造を防ぐことができる。さらに残留ワークを取り出す複雑な自動取り出し機構も不要である。
【0052】
また、第二分離容器30によって研磨石80を選別して取り出すことができる。これにより、研磨石分離にかかる作業時間を大幅に削減できる。
使用した研磨石80がまとめて取り扱えるので、別のワーク70の使用にそのまま利用することができ、作業時間の短縮を図ることができる。必要に応じて研磨石80の取り出しと再計量を経てバレル研磨石の量的な条件を維持することができ、ワーク70の表面仕上げの安定化にもつながる。
【0053】
封止板421によって第三孔411Bの開閉状態を変えることができ、ワーク70の研磨の際には第三孔411Bを閉じることで水漏れを防止し、また第三孔411Bが開いた状態で第三孔411Bから給水或いは排水などを行える。蓋全体を取り外さずに、封止板421によって第三孔411Bを開閉することで効率良く研磨の工程からすすぎの工程への切替が可能となる。
【0054】
封止板421の熱膨張係数が蓋本体部410の熱膨張係数以下であることで、研磨中に発生する熱によって封止板421と蓋本体部410との封止が確実に行われ、さらに封止板421の熱膨張による蓋本体部の変形を防ぐことができる。
【0055】
内部に入っている水を入れ替えてワーク70のすすぎを行う際に、蓋40を外して容器本体部10の開口側からの水の注入などに代えて、容器本体部10の液体注入部111からすすぎ用の水の注入を行うことができ、研磨からすすぎへの移行に伴う作業を短縮できる。また自動化の観点でも機械設計が容易になる。
【0056】
圧抜き穴413があることで、蓋40の開閉の際の極端な圧力変化を抑制し、粉や液体噴出を防止できる。
【0057】
蓋40を開けて、容器本体部10と第一分離容器20と第二分離容器30が重なった状態で、第一分離容器20の第一閉塞板220との間には第一クリアランスCL1が設けられ、さらに第一クリアランスCL1が第一孔221を介して第一分離容器20の内部につながっていることで、第一分離容器20の第一閉塞板220が第二分離容器30の第二閉塞板320と密着する場合に比べると、第一分離容器20を第二分離容器30から容易に取り出すことができる。
第二分離容器30の第二閉塞板320と容器本体部10の本体閉塞部120との間には第二クリアランスCL2が設けられ、さらにこの第二クリアランスCL2が第二孔321を介して第二分離容器30の内部につながっていることで、第二分離容器30の第二閉塞板320が容器本体部10の本体閉塞板120と密着する場合に比べると、第二分離容器30を容器本体部10から容易に取り出すことができる。
【0058】
また、取っ手140が容器本体部10に設けられていることで容易に持ち運びを行えることができ、さらに第一分離容器20や第二分離容器30を取り出した後、容器本体部10の中に研磨の残渣物が残ったとしても、内部の洗浄などを容易に行うことができる。
【0059】
(第二実施形態)
図15(a)及び(b)に示すように、本発明の第二実施形態に係るバレル研磨用容器1Aは、有底筒状の第一分離容器20と、この第一分離容器20を中に入れる有底筒状の容器本体部10′と、第一分離容器20を容器本体部10′に入れた状態で容器本体部10′の開口を覆う蓋40と、蓋40を容器本体部10′に着脱自在に固定する固定部材50と、を備えている。
【0060】
バレル研磨用容器1Aは第一実施形態のバレル研磨用容器1と比べると、前記第二分離容器30を省いて構成されていて、容器本体部10′の内周面が第二分離容器30の外周面に当接して或いは対向して設けられ、外筒部110と本体閉塞板120の寸法が前記の容器本体部10の外筒部110と本体閉塞板120の寸法と異なる。なお、第一実施形態のバレル研磨用容器1の構成と同じ構成には同じ符号を用いてその説明を省略する。
【0061】
蓋40を固定部材50によって容器本体部10′に固定した状態では、
図16(a)に示すように、容器本体部10′の外筒部110の先端部113と第一分離容器20の第一内筒部210の先端部213とが、蓋40の蓋第三ライニング422に密着すると共に、
図16(a)では示していないが蓋第一ライニング440にも密着して、容器本体部10′の開口や第一分離容器20の開口が塞がれる。なお、
図16(a)では、蓋第三ライニング422が第一分離容器20の開口より第一分離容器20の中に入り込む形態を省略している。
【0062】
またこの蓋状態では、第一分離容器20は蓋40と容器本体部10′の底とに挟まれて固定される。第一内筒部210が上げ底に形成されていることから、
図16(b)に示すように、第一分離容器20の第一閉塞板220と容器本体部10′の本体閉塞板120との間には第一クリアランスCL1′が構成される。この第一クリアランスCL1′(第一閉塞板220と本体閉塞板120との間隔t′)は研磨石を入り込ませない大きさに設定されている。このため、第一分離容器20を容器本体部10′に入れた状態で研磨石の第一孔221の通過が容器本体部10′の底(本体閉塞板120)によって阻止される。また、第一分離容器20の第一内筒部210の外周面の出隅部が、容器本体部10′の外筒部110の内周面の入隅部に当接して或いは対向して配置され、これにより第一分離容器20が容器本体部10′の中で、位置決めされる。
【0063】
さらに、蓋40の第三孔411Bと容器本体部10等の開口との間には、
図16(a)に示すように、封止部420やパッキン430が配置されていて、第三孔411Bを通ってバレル研磨用容器1Aの中からバレル研磨用容器1Aの外への液体の移動が阻止され、またこれとは逆に第三孔411Bを通ってバレル研磨用容器1Aの外からバレル研磨用容器1Aの中への液体の移動も阻止される。
【0064】
このように、容器本体部10′の開口や第一分離容器20の開口が蓋40で塞がれて、バレル研磨用容器1Aの内部は水密状態に保持される。なお、蓋が圧抜き穴413や第二開閉バルブ45を設ける場合は、第二開閉バルブ45を閉じ状態とする。
【0065】
バレル研磨用容器1Aを用いたワークの研磨方法は、ワーク等をバレル研磨用容器1Aに入れる投入工程と、投入工程の後にバレル研磨用容器1の開口を蓋40で閉じる蓋閉工程と、蓋閉工程の後にバレル研磨用容器1を回転させてワークの表面を磨く研磨工程と、研磨工程の後にバレル研磨用容器1の蓋40を開ける蓋開工程と、蓋開工程の後にワークを取り出すワーク取出工程と、を備え、また必要に応じてすすぎ工程を加えてもよい。これらの各工程は、前記の
図11(a)に示すワークの研磨方法の工程と同様であるため、説明を省略する。
【0066】
第二実施形態のバレル研磨用容器1Aも、第一実施形態のバレル研磨用容器1と同様に、第一分離容器20によってワーク70を選別してワーク70の全数取り出すことができる。これにより、ワーク70の表面に付着した研磨石80を取り除く作業を省くことができ、作業性を向上させることができる。また、ワークの全数を取り出すことができるため、バレル研磨用容器1Aは自動化ライン構築の際にも利用することができる。
【0067】
本発明は上記の説明に限らず実施をすることができる。
第一分離容器の第一孔の形状は、円形に限らず、他の形状としてもよい。
前記の実施形態では、第二孔が第二分離容器の第二閉塞板に設けた形態を例示したが、第二内筒部にも第二孔を設けてもよく、例えば第二分離容器全体を網状に形成することもできる。
容器本体部、第一分離容器、第二分離容器の形状も図示例に限るものではなく、例えば断面が八角形状に形成されてもよい。
また、容器本体部、第一分離容器、第二分離容器が互いに非相似の形として構成されてもよい。例えば、外筒部(容器本体部)や第二内筒部(第二分離容器)を円筒状に形成し、第一分離容器の第一内筒部を角筒状に形成して、第一分離容器を容器本体部や第二分離容器に入れた状態で、第一分離容器の第一内筒部の角(出隅部)を容器本体部の外筒部や第二分離容器の第二内筒部に当てて、動かないように収容させてもよい。この場合、外側の外筒部或いは第二内筒部と第一内筒部との間は、研磨石が入る大きさの隙間として構成することもできる。
また、第一分離容器の第一内筒部と第二分離容器の第二内筒部との間隔は、スペーサを介在させて、研磨石の寸法よりも大きく設定されてもよい。第二分離容器の第二内筒部と容器本体部の外筒部との間隔も、スペーサを介在させて、研磨石の寸法よりも大きく設定されてもよい。
位置決めする部材を用いて、内側の容器を外側の容器の中に配置してもよい。
第一分離容器や第二分離容器も、それぞれの開口を閉じる第一分離容器用の蓋や第二分離容器用の蓋を備えてもよく、第一分離容器は蓋をした状態で第二分離容器や容器本体部に入れられ、第二分離容器は蓋をした状態で容器本体部に入れられる。この場合も第一分離容器を第二分離容器や容器本体部に入れた状態で研磨石の前記第一孔の通過が第二分離容器の底や容器本体部の底によって阻止される。
バレル研磨用容器は
図13に示す研磨装置90以外の他の構成の研磨装置にも用いることができる。
【符号の説明】
【0068】
1,1A バレル研磨用容器
10,10′ 容器本体部
110 外筒部
110A,210A,310A 開口
120 本体閉塞板(底)
130 第一開閉バルブ
20 第一分離容器
210 第一内筒部
220 第一閉塞板(底)
221 第一孔
30 第二分離容器
310 第二内筒部
320 第二閉塞板(底)
321 第二孔
40 蓋
410 蓋本体部
411 封止用凹部
411A 薄肉部
411B 第三孔
413 圧抜用貫通穴
420 封止部
421 封止板
430 パッキン
440 蓋第一ライニング
45 第二開閉バルブ
50 固定部材
510 蓋側固定部
520 本体側固定部