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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123347
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】海苔の表面異物の目視検査システム
(51)【国際特許分類】
   A23L 17/60 20160101AFI20240905BHJP
【FI】
A23L17/60 103C
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030678
(22)【出願日】2023-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】392024699
【氏名又は名称】株式会社川島製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100086092
【弁理士】
【氏名又は名称】合志 元延
(72)【発明者】
【氏名】川島 一美
【テーマコード(参考)】
4B019
【Fターム(参考)】
4B019LT04
(57)【要約】
【課題】第1に、色落ちや凹凸に関係なく、異物を区別,発見し易く、第2に、しかもこれが簡単容易に実現される、海苔の表面異物の目視検査システムを提案する。
【解決手段】目視検査システムSは、海苔Bに付着した異物の除去作業に際し、異物の目視検査に供される補助システムに関する。そして光源1,光源側偏光板2,目視側偏光板3を、備えている。光源1は、海苔Bを照射する。光源側偏光板2は、光源1に付設され、光源1の照射光Lについて、一定偏光面の光のみを透過する。目視側偏光板3は、目視側に設けられ、偏光面が90度ずらされており、光源側偏光板2を経由した光源1の照射光Lを、海苔Bを介し反射光Rとして受光する。もって、目視側偏光板3の光透過や遮光に基づき、目視にて異物検査が行われる。そして光源1は、目視側の上位に配され、ライン状をなし、角度をつけた斜めの一方向から、海苔Bを鋭角に照射する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
海苔の外表面に付着した異物の除去作業に際し、異物の目視検査に供される補助システムであって、光源,光源側偏光板,目視側偏光板を備えており、
該光源は、定置された海苔を照射し、
該光源側偏光板は、該光源に付設され、該光源の照射光について、一定偏光面の光のみを透過し、
該目視側偏光板は、目視側に設けられ、偏光面が90度ずらされており、該光源側偏光板を経由した該光源の照射光を、海苔を介し反射光として受光し、該目視側偏光板の光透過や遮光に基づき、目視にて異物検査が行われ、
該光源は、目視側の上位に配され、ライン状をなし、角度をつけた斜めの一方向から、海苔を鋭角に照射する設定よりなること、を特徴とする、海苔の表面異物の目視検査システム。
【請求項2】
請求項1において、異物無の場合、反射光が該目視側偏光板で遮光され透過せず、目視に際し入光が無いのに対し、
異物有の場合、その乱反射により反射光の偏光面にずれが発生し、反射光が該目視側偏光板で遮光されず透過し、目視に際し入光状態となり、もって異物有と判定されること、を特徴とする、海苔の表面異物の目視検査システム。
【請求項3】
請求項2において、海苔について色落ちや凹凸がある場合、その反射光の偏光面にずれが発生して、遮光されず透過する反射光もあり、目視に際し入光状態となるが、
色落ちや凹凸は、該光源の前記設定によりその反射が抑えられると共に、目視に際して入光が全体的であり入光明度も低いので、色落ちや凹凸に関係なく異物が区別,発見されること、を特徴とする、海苔の表面異物の目視検査システム。
【請求項4】
請求項2において、該光源は、LEDよりなり、海苔の目視側端より外側の上位に配され、垂線に対し20度~30度程度、内側の角度設定よりなり、
該目視側偏光板は、垂線に対し20度~45度程度、外側の角度設定よりなること、を特徴とする、海苔の表面異物の目視検査システム。
【請求項5】
請求項1において、請求項1中の目視側偏光板の記載については、これによらず、目視側偏光板に代え目視側偏光眼鏡とすること、を特徴とする、海苔の表面異物の目視検査システム。
【請求項6】
請求項2において、請求項2中の目視側偏光板の記載については、これによらず、目視側偏光板に代え目視側偏光眼鏡とすること、を特徴とする、海苔の表面異物の目視検査システム。
【請求項7】
請求項1において、目視検査は、箱体を使用して行われ、該箱体は、目視側が開放されると共に、上部下に該光源が配され、下部上に海苔の置台が配されており、
該置台は、目視側に向け下降傾斜していること、を特徴とする、海苔の表面異物の目視検査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海苔の表面異物の目視検査システムに関する。すなわち、海苔に付着した異物の除去作業に際して、異物の目視検査に供される、補助システムに関する。
【背景技術】
【0002】
《技術的背景》
海苔(乾海苔)の生産ラインでは、生海苔摘採,水洗,抄き,脱水,乾燥等の前工程ラインの後、異物選別,カウント集積,折曲,結束等の後工程ラインを辿って、海苔が生産,出荷されている。
そして異物選別工程では、異物選別機により、図4の(1)図,(2)図に示したように、各種夾雑物や金属等の異物Aが付着した、海苔Bの選別が行われる。
選別され異物Aが付着した海苔Bは、他の良品の海苔Bから取り除かれ、ラインから一旦取り除かれて、不良バケットに回収される。
そして事後、不良バケットから取り出し、1枚1枚について人手により、異物Aの除去作業がナイフ等を用いて行われ、もって、異物Aが除去された海苔Bが、商品として再びラインに戻されていた。
【0003】
さて、このような異物Aの除去作業は、海苔Bを目視検査しつつ行われる。目視により、異物Aを探し出し,発見し,位置を見定める目視検査により発見した異物Aを、手作業で除去していた。
ところで異物Aは、上記生産ラインへの供給前に生海苔について実施される、除去装置による除去にて、大きなサイズのものは既に除去されている。もって、この異物Aの除去作業に供される異物Aは、小さなサイズのものが多く、目視検査での異物A発見は、容易でなかった。小サイズの異物Aの目視検査は、困難を伴っていた。
【0004】
《従来技術》
このような状況に鑑み、従来、目視検査システムが、開発されていた。すなわち異物Aの除去作業に際し、異物Aの目視検査に供される補助システムが、開発されていた。
このシステムは、海苔Bの反射特性がほぼ全反射であることを前提として利用し、光源,光源側偏光板,目視側偏光板を、備えていた。
光源は、海苔Bを真上から全体的に照射していた。光源側偏光板は、光源の照射光について、一定偏光面の光のみを透過する。目視側偏光板は、偏光面が90度ずらされており、光源の照射光を海苔Bを介し反射光として受光する。
もって、異物A無の場合は、→目視側偏光板で遮光され、→目視に際し入光が無い。
これに対し、異物A有の場合は、→異物Aの乱反射により、反射光について偏光面にずれが生じ、→目視側偏光板で遮光されず、→目視に際し入光する。もって、異物A有と判定される。
このシステムでは、このように異物Aへの明るさ付与により、異物Aの目視検査の容易化が、図られていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
このような従来技術としては、例えば、次の非特許文献1中に示されたものが挙げられる。
【非特許文献1】中嶋 但著、株式会社テクノシステム発行、1995年1月6日初版発行、「目視検査の自動化技術」、291ページから293ページに掲載の「8.海苔のキズ・異物混入検査法」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した従来の海苔Bの表面異物Aの目視検査システムについては、次の問題が課題として指摘されていた。
まず海苔Bは、海の栄養分が少なくなると、黒色→薄茶色→金色と、図4の(3)図に示したように、色合いが全体的に色落ちCする。
又、海苔Bの裏面には、図4の(4)図に示したように、毛羽立ちによる凹凸Dが、多少の程度差はあるが全体的に生じる。
そこで、従来の目視検査システムについては、このような色落ちCや凹凸Dがある海苔Bの場合、異物Aが区別,発見しづらくなる、という問題が指摘されていた。特に、色落ちCの程度がひどい場合や、凹凸Dの程度が大きい場合、区別,発見困難となることもあった。
【0007】
これについて詳述する。
凹凸Dは、異物Aと同様に多方向に乱反射する。色落ちCも、所定一定方向のみならず他方向にも反射する。もって、異物Aと同様に反射光について偏光面にずれが生じて、目視側偏光板で遮光されず、目視に際し入光されてしまう。
そして、従来の目視検査システムでは、光源が海苔Bを、真上の全方向から全体的に均等に照射していたので、色落ちCや凹凸Dがある海苔Bの場合、その表面反射が大きく、偏光効果が低減していた。
すなわち目視に際し、図3の(2)の目視明度分布図にも示したように、海苔Bの色落ちCや凹凸Dによる明暗部分が、全体背景・バックボーンをなすと共に、明暗数が多く多数がバラツクと共に、明暗相互間の明度差も大きかったので、その明暗が目立ち、目を奪われ易かった。
このような全体状況下において、異物Aは、乱反射による明度が高く最も明るいものの、サイズが微小で数が少なく点在するに過ぎない。
もって、異物Aを探し出し,発見し,見定める検査が、容易でなく時間を要していた。海苔B全体を見渡し,観察して、全体で最も明るい所を探す必要があり、時間も要していた。
特に、色落ちCの程度や凹凸D(毛羽立ち)の程度によっては、異物Aとの区別が困難化することもあった。異物Aの発見ミス,除去モレ等の虞があった。
従来は、このような問題が課題として指摘されていた。
【0008】
《本発明について》
本発明に係る海苔の表面異物の目視検査システムは、このような実情に鑑み、上記従来技術の課題を解決すべくなされたものである。
そして本発明は、第1に、海苔の色落ちや凹凸に関係なく、異物を区別,発見し易く、第2に、しかもこれが、簡単容易に実現される、海苔の表面異物の目視検査システムを提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
《各請求項について》
このような課題を解決する本発明の技術的手段は、特許請求の範囲に記載したように、次のとおりである。
請求項1については、次のとおり。
請求項1の海苔の表面異物の目視検査システムは、海苔の外表面に付着した異物の除去作業に際し、異物の目視検査に供される補助システムに関する。そして、光源,光源側偏光板,目視側偏光板を、備えている。
該光源は、定置された海苔を照射する。
該光源側偏光板は、該光源に付設され、該光源の照射光について、一定偏光面の光のみを透過する。
該目視側偏光板は、目視側に設けられ、偏光面が90度ずらされており、該光源側偏光板を経由した該光源の照射光を、海苔を介し反射光として受光する。もって、該目視側偏光板の光透過や遮光に基づき、目視にて異物検査が行われる。
そして該光源は、目視側の上位に配され、ライン状をなし、角度をつけた斜めの一方向から、海苔を鋭角に照射する設定よりなること、を特徴とする。
【0010】
請求項2については、次のとおり。
請求項2の海苔の表面異物の目視検査システムでは、請求項1において、異物無の場合、反射光が該目視側偏光板で遮光され透過せず、目視に際し入光が無い。
これに対し異物有の場合、その乱反射により反射光の偏光面にずれが発生し、反射光が該目視側偏光板で遮光されず透過し、目視に際し入光状態となり、もって異物有と判定されること、を特徴とする。
請求項3については、次のとおり。
請求項3の海苔の表面異物の目視検査システムでは、請求項2において、海苔について色落ちや凹凸がある場合、その反射光の偏光面にずれが発生して、遮光されず透過する反射光もあり、目視に際し入光状態となる。
しかし色落ちや凹凸は、該光源の前記設定によりその反射が抑えられると共に、目視に際して入光が全体的であり入光明度も低いので、色落ちや凹凸に関係なく異物が区別,発見されること、を特徴とする。
【0011】
請求項4については、次のとおり。
請求項4の海苔の表面異物の目視検査システムでは、請求項2において、該光源は、LEDよりなり、海苔の目視側端より外側の上位に配され、垂線に対し20度~30度程度、内側の角度設定よりなる。該目視側偏光板は、垂線に対し20度~45度程度、外側の角度設定よりなること、を特徴とする。
請求項5については、次のとおり。
請求項5の海苔の表面異物の目視検査システムでは、請求項1において、請求項1中の目視側偏光板の記載については、これによらず、目視側偏光板に代え目視側偏光眼鏡とすること、を特徴とする。
請求項6については、次のとおり。
請求項6の海苔の表面異物の目視検査システムでは、請求項2において、請求項2中の目視側偏光板の記載については、これによらず、目視側偏光板に代え目視側偏光眼鏡とすること、を特徴とする。
請求項7については、次のとおり。
請求項7の海苔の表面異物の目視検査システムでは、請求項1において、目視検査は、箱体を使用して行われる。該箱体は、目視側が開放されると共に、上部下に該光源が配され、下部上に海苔の置台が配されている。該置台は、目視側に向け下降傾斜していること、を特徴とする。
【0012】
《作用等について》
本発明は、このような手段よりなるので、次のようになる。
(1)海苔に付着した異物の除去作業は、目視検査システムを補助的に用いて、目視検査しつつ行われる。
(2)そして目視検査システムでは、光源の照射光は、光源側偏光板を透過し、もって一定偏光面の光が海苔にて反射され、反射光として、偏光面が90度ずらされた目視側偏光板に、受光される。
もって、目視側偏光板での光透過か遮光かにより、異物の有無が判定,検査される。以下、このような目視検査システムについて、詳述する。
(3)まず、異物無の場合は、反射光が目視側偏光板で遮光されて透過せず、目視に際し入光が無い。もって異物無とされる。
(4)これに対し、異物有の場合は、その乱反射により反射光の偏光面にずれが発生し、反射光が目視側偏光板で遮光されず透過し、目視に際し入光する。もって、異物有とされる。
(5)さて、海苔に色落ちや凹凸がある場合も、その反射光の偏光面にずれが発生して、目視側偏光板で遮光されずに透過する反射光もあり、目視に際し入光状態となる。
しかしながら色落ちや凹凸は、光源の設定によりその反射が抑えられると共に、目視に際して入光が全体的であり入光明度も低い。もって、色落ちや凹凸に関係なく、異物を容易に区別,発見可能である。
これについては、以下の(6),(7),(8)のとおり。
(6)色落ちは、反射光が所期の一定方向のみならず他方向にも存在し、反射光の偏光面にずれが若干発生する。凹凸は、他方向に若干乱反射し、反射光の偏光面にずれが若干発生する。もって、色落ち凹凸は、目視に際し入光状態となる。
(7)そこで本発明では、光源がライン状をなし、海苔の目視側端より外側上位の斜めの一方向から、鋭角に照射する設定よりなる。
これらにより、海苔の色落ちや凹凸も表面反射が低く抑えられ、目視に際し、その明暗の数が少なく、相互間の明度差も小さくなる。
(8)色落ちや凹凸は、海苔の全体背景・バックボーンをなすが、元々入光明度が低い上に、このように明暗が目立たない状態となっている。
これに対し異物は、小サイズながら、最も明度が高く点在し、顕在化する。これらにより、色落ちや凹凸に関係なく、異物を容易に区別,発見可能である。
【発明の効果】
【0013】
《第1の効果》
第1に、海苔の色落ちや凹凸に関係なく、異物を区別,発見し易い。
本発明に係る海苔の表面異物の目視検査システムでは、海苔に色落ちや凹凸がある場合も、その反射を低く抑えることにより、異物が顕在化し、偏光効果が維持される。
すなわち目視に際し、海苔の全体背景・バックボーンをなす色落ちや凹凸について、その明暗の数が減少し、明暗相互間の明度差も小さくなる。目視に際し、前述した従来技術のように、その明暗が目立ち、目を奪われる虞は少ない。
これに対し、小サイズながら最も明るく点在する異物が、目立ち顕在化するので、これを探し出し,発見し,位置を見定めることが、容易化される。全体を見渡すことなく、局部的に観察するだけで、短時間で判定,検査可能となる。
特に、色落ちや凹凸の程度がひどく大きい海苔の場合でも、これらに関係なく異物の区別,発見が可能であり、異物の発見ミス,除去モレの虞は解消される。
【0014】
《第2の効果》
第2に、しかもこれは、簡単容易に実現される。
本発明に係る海苔の表面異物の目視検査システムは、従来より公知のシステム、すなわち光源,光源側偏光板,目視側偏光板を備えたシステムについて(先行技術文献欄に記載の非特許文献1も参照)、新たな構成を加えたことを、特徴とする。
すなわち光源を、目視側の上位に配し、ライン状をなし、角度をつけ斜めの一方向から、鋭角に照射する設定としたこと、を特徴とする。このような簡単な構成により、色落ちや凹凸に関係なく異物の区別,発見が実現される。
なお、目視側偏光板に代え、目視側偏光眼鏡を採用すると、除去作業が邪魔なく行え、顔等の反射映り込みもない等、簡単容易化に資する面もある。
このように、この種従来技術に存した課題がすべて解決される等、本発明の発揮する効果は、顕著にして大なるものがある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る海苔の表面異物の目視検査システムについて、発明を実施するための形態の説明に供し、側断面図である。そして(1)図は、実施例1を示し、(2)図は、実施例2を示す。
図2】同発明を実施するための形態の説明に供し、実施例1の正面図である。
図3】同発明を実施するための形態の説明に供し、目視明度分布の説明図であり、(1)図は、本発明に関し、(2)図は、従来例に関する。
図4】異物が付着した海苔の説明に供し、(1)図は、海苔の平面図、(2)図は、海苔の縦断面拡大図である。(3)図は、色落した海苔の平面図、(4)図は、裏面が毛羽立ち凹凸した海苔の縦断面拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明について、図1図4の図面及び表1を参照して、詳細に説明する。
《本発明の概要》
まず、本発明の概要については、次のとおり。
本発明の海苔Bの表面異物Aの目視検査システムSは、海苔Bの外表面に付着した異物Aの除去作業に際し、異物Aの目視検査に供される補助システムに関する。そして、光源1,光源側偏光板2,目視側偏光板3を備えている。
光源1は、定置された海苔Bを照射する。
光源側偏光板2は、光源1に付設され、光源1の照射光Lについて、一定偏光面の光のみを透過する。
目視側偏光板3は、目視側に設けられ、偏光面が90度ずらされており、光源側偏光板2を経由した光源1の照射光Lを、海苔Bを介し反射光Rとして受光する。もって、目視側偏光板3の光透過や遮光に基づき、目視にて異物検査が行われる(非特許文献1も参照)。
そして本発明は、光源1が、目視側の上位に配され、ライン状をなし、角度をつけた斜めの一方向から、海苔Bを鋭角に照射する設定よりなること、を特徴とする。
本発明の概要については、以上のとおり。以下、このような本発明について、更に詳述する。
【0017】
【表1】
【0018】
《海苔Bについて》
まず、海苔Bについて、図4の(1)図,(2)図を参照して、説明する。
海中から摘取されて生産ラインで加工製造される海苔Bは、規格上、左右横幅寸法190mm、前後縦長さ寸法210mm程度の略長方形シート状をなす。そして、夾雑物や金属が、異物Aとして多々付着している。
すなわち、ビニール片,羽毛,貝殻,紙,木片,木屑,石屑,砂,土,微細石,海老,虫等々の夾雑物が、異物Aとして付着していることも多い。又、鉄を始めアルミ,銅,ステンレス,その他の金属の歯こぼれ片,微小片,摩耗片,錆,微粉,残滓等々の異物Aが、付着していることもある。
そして異物Aは、海苔Bの外表面、すなわち海苔Bの表面や裏面に付着している。異物A除去作業に際し、裏面は上下反転して作業に供される(なお、本願の発明の名称中に記載した表面は、広義で用いており、外表面と同意味である)。
生産ライン,異物A選別工程,異物A除去作業等については、技術的背景欄で前述した所を参照。
ところで海苔Bは、通常は黒色だが、摘採される生海苔について海の栄養分が少なくなると、色落ちCする。黒色→薄茶(段ボール色)→金色と、色合いが全体的に色落ちC変化する。
又、海苔Bの裏面には、凹凸Dが存する。生産ラインの抄き工程の関係上、毛羽立ちによる凹凸Dが、多少の程度差はあるが全体的に生じている。
海苔Bについては、以上のとおり。
【0019】
《目視検査システムS》
本発明の目視検査システムSは、海苔Bの外表面に付着した異物Aの除去作業に際し、異物Aの目視検査に供される。
すなわち、異物Aの目視検査時に補助的に使用され、目視検査で探し出され,発見され,位置を見定められた異物Aが、その都度、目視者Pの手作業で除去される。
もって、この目視検査システムSは、図1の(1)図に示したように、光源1,光源側偏光板2,目視側偏光板3を備えている。
【0020】
目視検査システムSを使用した目視検査は、箱体4を用いて行われる。箱体4は、目視者P側が開放されると共に、内部の上部下に光源1が配され、下部上に海苔Bのプレート置台5が配されている。置台5は、目視者Pによる異物Aの除去作業の容易さに鑑み、目視者P側に向け下降傾斜している。
光源側偏光板2は、光源1の前面側に付設されている。目視側偏光板3は、箱体4の開放側にヒンジ等により取付けられている。
目視検査システムSの概要については、以上のとおり。
【0021】
《光源1について》
まず、目視検査システムSの光源1について、図1の(1)図,図2の(1)図を参照して、説明する。
光源1は、直線棒状・ライン状のLED(発光ダイオード)よりなり、箱体4内の上部下で、海苔Bの目視側端より外側の上位に、配されている。もって、箱体4内の下部の置台5上に定置された海苔Bを、照射する。
そして光源1は、次の設定よりなる。すなわち、ライン状をなし、角度をつけた斜めの照射光Lにより、一方向から海苔Bを鋭角に照射する設定よりなる。照射角αは、例えば20度~30度程度、垂線に対し内側に向けられた角度設定よりなる。
光源1については、以上のとおり。
【0022】
《光源側偏光板2について》
次に、目視検査システムSの光源側偏光板2について、図1の(1)図を参照して、説明する。
光源側偏光板2は、光源1の前面に付設され、光源1の照射光Lについて、一定偏光面の光のみを透過する。
すなわち、光源1から照射される照射光Lは、光源側偏光版2にてフィルターされ、一定の偏光面の光しか透過しない。光源1からの自然光である照射光Lの内、直線的に入ってくる偏光成分のみをそのまま透過する。
光源側偏光板2については、以上のとおり。
【0023】
《目視側偏光板3について》
次に、目視検査システムSの目視側偏光板3について、図1の(1)図,図2の(1)図を参照して、説明する。
目視側偏光板3は、箱体4外の目視者P側に設けられ、偏光面が90度ずらされている。そして、光源側偏光板2を経由した光源1の照射光Lを、海苔Bを介し反射光Rとして受光する。そして、目視側偏光板3による光透過や遮光に基づき、目視にて異物A検査が行われる。
目視側偏光板3は、例えば20度~45度程度、垂線に対し外側に向けられた板角β設定よりなる。目視者Pが、箱体4内の海苔Bを外から見やすい角度設定よりなる。
そして目視側偏光板3は、光源1つまりその一定偏光面の光に対し、90度偏光面をずらされている。そして、光源1からの光源側偏光板2を経由した照射光Lが、海苔Bにて反射された後、反射光Rとして受光される。
もって、目視側偏光板3のフィルター状態に基づき、すなわち受光した反射光Rが、光透過したか遮光されたかに基づき、目視者Pにより異物Aの有無が判定,検査される。
目視側偏光板3については、以上のとおり。
【0024】
《目視側偏光眼鏡6について》
次に、目視検査システムSの目視側偏光眼鏡6について、図1の(2)図を参照して、説明する。
この目視検査システムSでは、目視側偏光板3に代えて、目視側偏光眼鏡6で代用することも可能である。
目視側偏光眼鏡6の構成,機能等については、箱体4に取付けられるか目視者Pがかけるかの点を除き、目視側偏光板3について説明した所に準じる。
すなわち、目視側偏光眼鏡6は、目視側に設けられ偏光面が90度ずらされており、光源側偏光板2を経由した光源1の照射光Lを、海苔Bを介し反射光Rとして受光し、目視側偏光眼鏡6の光透過や遮光に基づき、目視にて異物A検査が行われる。
【0025】
異物A無の場合、反射光Rが目視側偏光眼鏡6で遮光され透過せず、目視に際し入光が無い。
これに対し異物A有の場合、その乱反射により反射光Rの偏光面にずれが発生し、反射光Rが目視側偏光眼鏡6で遮光されず透過し、目視に際し入光状態となり、もって異物A有と判定される。
目視側偏光眼鏡6と目視側偏光板3とを比較すると、次のとおり。目視側偏光眼鏡6は、異物Aの除去作業,手作業に際し、目視側偏光板3のようにその邪魔や障害となる可能性が無く、気にせず手作業ができる。又、目視側偏光板3の場合、自分の顔が反射映り込みして、異物Aを見にくくなることもありうるが、そのような虞がない。
目視側偏光眼鏡6については、以上のとおり。
【0026】
《作用等》
本発明の海苔Bの表面異物の目視検査システムSは、以上説明したように構成されている。そこで以下のようになる。
(1)海苔Bに付着した異物Aの除去作業は、海苔Bを目視検査しつつ行われる。そして目視検査は、目視検査システムSを補助的に用いて行われる。
【0027】
(2)目視検査システムSは、海苔Bの反射特性が、ほぼ全反射であることを前提として利用する。
そして、図1の(1)図に示したように、光源1の照射光Lは、→光源側偏光板2を透過し、もって一定偏光面の光が、→海苔Bにて反射されて、→反射光Rとして目視側偏光板3に、受光される。→目視側偏光板3は、90度偏光面がずらされており、→その光透過か遮光かにより、異物Aの有無が判定,検査される(非特許文献1も参照)。
このような、目視検査システムSの作用について、以下詳述する。
【0028】
(3)まず、海苔Bに付着した異物Aが、無の場合は、反射光Rが目視側偏光板3で遮光されて透過せず、目視に際し入光が無い。これにより、目視者Pつまり作業者は、異物A無と判定,検査,認識する。
すなわち、表1中にも示したように、この場合は、外表面が全体的に黒色の海苔Bであり、その反射光Rは所期の一定方向で、偏光面のずれがない。もって所期のとおり、目視側偏光板3で遮光され、目視に際し入光は無い。
【0029】
(4)これに対し、図4の(1)図,(2)図に示したように、異物A有の場合は、その乱反射により反射光Rの偏光面にずれが発生し、反射光Rが目視側偏光板3で遮光されず透過し、目視に際し入光状態となる。目視者Pつまり作業者は、異物A有と判定,検査,認識して、異物Aの除去作業を実施する。
すなわち、表1中にも示したように、異物Aは海苔Bの外表面に点在するが、それぞれ多方向に乱反射し、反射光Rに偏光面のずれが発生する。もって、目視側偏光板3では遮光されず透過し、目視に際し入光する。そして乱反射する異物Aの場合、その明度は極めて高い。
この目視検査システムSは、まず、このように作用し用いられる。
【0030】
(5)さて、図4の(3)図,(4)図に示したように、海苔Bについて、色落ちCや凹凸Dがある場合も、その反射光Rの偏光面にずれが発生する。もって、目視側偏光板3では遮光されず透過する反射光Rもあり、目視に際し入光状態となる。
しかしながら、色落ちCや凹凸Dは、光源1の設定によりその反射が抑えられると共に、目視に際して入光が全体的であり入光明度も低い。もって色落ちCや凹凸Dに関係なく、異物Aを容易に区別,発見可能である。
これについては、表1中にも示したように、以下の(6),(7),(8)のとおり。
【0031】
(6)まず、色落ちC(例えば薄茶色)や凹凸D(毛羽立ち)は、海苔Bについて、外表面全体に発生する(なお凹凸Dは、外表面の裏面全体のみに発生する)。
そして色落ちCは、その反射光Rが、所期の一定方向のみならず他方向にも存在して、反射光Rの偏光面にずれが若干発生する。凹凸Dは、その凸部分において他方向に若干乱反射し、反射光Rの偏光面にずれが若干発生する。
もって、色落ちCや凹凸D共に、目視に際し入光状態となる。その入光明度は、異物Aほど高くはなく、反射光Rの程度に従いそれぞれ中程度や低程度の明度である。
【0032】
(7)さて、本発明の目視検査システムSでは、その光源1が、ライン状をなし、海苔Bの目視側端より外側上位の斜めの一方向から、海苔Bを鋭角に照射する設定よりなる。
これらにより、海苔Bの色落ちCや凹凸Dも、表面反射が低く抑えられている。もって、図3の(1)図に示したように、目視に際し、色落ちCや凹凸Dによる、明暗の数が少なくなる。明暗相互間の明度差も小さくなる。従って、色落ちCや凹凸Dによる明暗は、目立たない状態にある(図3の(2)図の従来例と比較対照)。
【0033】
(8)このように、海苔Bの全体背景・バックボーンをなす色落ちCや凹凸Dは、元々入光明度が低い上に、その明暗が目立たない状態となっている。
これに対し異物Aは、小サイズながら、最も明度が高く点在し、顕在化する。これらにより、色落ちCや凹凸Dに関係なく、異物Aを容易に区別,発見可能である。
作用等については、以上のとおり。
【符号の説明】
【0034】
A 異物
B 海苔
C 色落ち
D 凹凸
L 照射光
R 反射光
P 目視者
S 目視検査システム
α 照射角
β 板角
1 光源
2 光源側偏光板
3 目視側偏光板
4 箱体
5 置台
6 目視側偏光眼鏡
図1
図2
図3
図4