(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123350
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】車両用空調装置
(51)【国際特許分類】
B60H 1/00 20060101AFI20240905BHJP
【FI】
B60H1/00 102P
B60H1/00 102V
B60H1/00 102H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030684
(22)【出願日】2023-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】505113632
【氏名又は名称】ヴァレオ システム テルミク
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(74)【代理人】
【識別番号】100192533
【弁理士】
【氏名又は名称】奈良 如紘
(72)【発明者】
【氏名】吉崎 久善
【テーマコード(参考)】
3L211
【Fターム(参考)】
3L211AA01
3L211BA55
3L211DA01
3L211DA10
3L211DA43
3L211DA50
3L211DA52
(57)【要約】
【課題】前席乗員の足元のスペースを十分に確保することができる車両用空調装置を提供すること。
【解決手段】車両用空調装置は、冷却用熱交換器(32)と、加熱用熱交換器(33)とが収納されたハウジング(50)を有している。加熱用熱交換器(33)を通過した送風空気を後席(13)に導くための後席用送風部材(41)は、冷却用熱交換器(32)と加熱用熱交換器(33)の間に設けられている。後席用送風部材(41)は、加熱用熱交換器(33)を通過した送風空気が導入される導入部(41b)と、この導入部(41b)において導入された送風空気が流れる送風部材本体部(41c)と、を有している。送風部材本体部(41c)は、加熱用熱交換器(33)よりも幅が狭く、導入部(41b)は、送風部材本体部(41c)よりも幅が広い。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の乗員が着席可能な前席(12)とこの前席(12)の後方に配置されている後席(13)とに向かって送風可能であり、
ハウジング(50)の内部空間(IS)に、送風空気を冷却可能な冷却用熱交換器(32)と、この冷却用熱交換器(32)を通過した空気を加熱可能な加熱用熱交換器(33)と、が設けられ、
車両の進行方向を基準として、前記加熱用熱交換器(33)は、前記冷却用熱交換器(32)よりも後方となるように設けられ、
前記内部空間(IS)には、前記冷却用熱交換器(32)のみを通過した送風空気が流れる冷風流路(CP)と、前記加熱用熱交換器(33)を通過した送風空気が流れる温風流路(HP)と、前記冷風流路(CP)を流れた送風空気と前記温風流路(HP)を流れた送風空気とが混合される混合流路(MP)と、が形成されている車両用空調装置において、
送風空気の流れる方向を基準として、前記加熱用熱交換器(33)の下流側には、前記加熱用熱交換器(33)を通過した送風空気を前記後席(13)に導くための後席用送風部材(41)が設けられ、
前記後席用送風部材(41)は、前記加熱用熱交換器(33)を通過した送風空気が導入される導入部(41b)と、この導入部(41b)において導入された送風空気が流れ前記冷却用熱交換器(32)と前記加熱用熱交換器(33)との間に設けられている送風部材本体部(41c)と、を有し、
車両の幅に沿った方向を基準として、前記送風部材本体部(41c)は、前記加熱用熱交換器(33)よりも幅が狭く、前記導入部(41b)は、前記送風部材本体部(41c)よりも幅が広いことを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記後席用送風部材(41)は、前記導入部(41b)と前記送風部材本体部(41c)との間に、前記導入部(41b)から前記送風部材本体部(41c)に向かって連続的に幅が狭まるテーパー形状部(41d)を有している、請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記冷風流路(CP)を通過する送風空気と前記温風流路(HP)を通過する送風空気との割合を調節可能な前席用温度調整装置(34)をさらに有し、
前記前席用温度調整装置(34)は、回転駆動部(34a)と、この回転駆動部(34a)によって駆動され、前記冷風流路(CP)と前記混合流路(MP)との境界部と、前記温風流路(HP)と前記混合流路(MP)との境界部との間を移動可能なドア本体(34b)と、を有し、
前記導入部(41b)の少なくとも一部は、前記加熱用熱交換器(33)と前記回転駆動部(34a)との間に位置している、請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記後席用送風部材(41)は、前記導入部(41b)から前記温風流路(HP)まで延び前記加熱用熱交換器(33)を通過した送風空気を前記導入部(41b)に導く延出部(41e)を有している、請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記冷風流路(CP)を通過する送風空気と前記温風流路(HP)を通過する送風空気との割合を調節可能な前席用温度調整装置(34)をさらに有し、
前記前席用温度調整装置(34)は、回転駆動部(34a)と、この回転駆動部(34a)によって駆動され、前記冷風流路(CP)と前記混合流路(MP)との境界部と、前記温風流路(HP)と前記混合流路(MP)との境界部との間を移動可能なドア本体(34b)と、を有し、
前記延出部(41e)の少なくとも一部は、前記加熱用熱交換器(33)と前記回転駆動部(34a)との間に位置している、請求項4に記載の車両用空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、後席への送風が可能な車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの車両に車室内の温度を調節するために車両用空調装置が搭載されている。一部の車両用空調装置は、後席への送風を行うことができる。このような車両用空調装置に関する従来技術として、特許文献1に開示される技術がある。
【0003】
特許文献1に開示された車両用空調装置は、ハウジングに送風空気を冷却可能な冷却用熱交換器と、この冷却用熱交換器を通過した空気を加熱可能な加熱用熱交換器と、が設けられてなる。加熱用熱交換器の後方には、後席に向かって延び、後席の乗員へ送風を行なうためのダクトが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通常、車両用空調装置は、前席の前方に配置される。後席へ送風を行なうためのダクトが車両用空調装置の後方に大きく突出すると、前席の乗員の足元のスペースが狭くなる。
【0006】
本発明は、前席乗員の足元のスペースを十分に確保することができる車両用空調装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下の説明では、本発明の理解を容易にするために添付図面中の参照符号を括弧書きで付記するが、それによって本発明は図示の形態に限定されるものではない。
【0008】
本開示によれば、車両の乗員が着席可能な前席(12)とこの前席(12)の後方に配置されている後席(13)とに向かって送風可能であり、
ハウジング(50)の内部空間(IS)に、送風空気を冷却可能な冷却用熱交換器(32)と、この冷却用熱交換器(32)を通過した空気を加熱可能な加熱用熱交換器(33)と、が設けられ、
車両の進行方向を基準として、前記加熱用熱交換器(33)は、前記冷却用熱交換器(32)よりも後方となるように設けられ、
前記内部空間(IS)には、前記冷却用熱交換器(32)のみを通過した送風空気が流れる冷風流路(CP)と、前記加熱用熱交換器(33)を通過した送風空気が流れる温風流路(HP)と、前記冷風流路(CP)を流れた送風空気と前記温風流路(HP)を流れた送風空気とが混合される混合流路(MP)と、が形成されている車両用空調装置において、
送風空気の流れる方向を基準として、前記加熱用熱交換器(33)の下流側には、前記加熱用熱交換器(33)を通過した送風空気を前記後席(13)に導くための後席用送風部材(41)が設けられ、
前記後席用送風部材(41)は、前記加熱用熱交換器(33)を通過した送風空気が導入される導入部(41b)と、この導入部(41b)において導入された送風空気が流れ前記冷却用熱交換器(32)と前記加熱用熱交換器(33)との間に設けられている送風部材本体部(41c)と、を有し、
車両の幅に沿った方向を基準として、前記送風部材本体部(41c)は、前記加熱用熱交換器(33)よりも幅が狭く、前記導入部(41b)は、前記送風部材本体部(41c)よりも幅が広いことを特徴とする車両用空調装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、前席乗員の足元のスペースを十分に確保することができる車両用空調装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例による車両用空調装置が搭載された車両の模式図である。
【
図2】
図1に示された車両用空調装置の概略断面図である。
【
図4】
図3に示された後席用送風部材の斜視図である。
【
図5】
図4に示された後席用送風部材の変更例について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。説明中、前後とは車両用空調装置の搭載されている車両の進行方向を基準として前後、左右とは車両の乗員を基準として左右をいう。図中Frは車両進行方向を基準として前、Rrは車両進行方向を基準として後、Leは乗員から見て左、Riは乗員から見て右、Upは上、Dnは下を示している。
【0012】
<実施例>
図1を参照する。
図1には、車両用空調装置20(以下、「空調装置20」という。)の搭載された車両10が示されている。車両10は、例えば乗用車であり、車室VI内の前部に設けられた左右の前席12、12と、これらの前席12、12の後方に車幅方向の両端に亘って設けられた後席13と、を有する。
【0013】
空調装置20は、前席12、12の前方に設けられ、前席12、12及び後席13の乗員に所定の温度に調節された空気を送風するために用いられる。前席12の前方であって車幅方向の右側端と左側端にはそれぞれ、送風空気の吹き出しの可否を切り替え可能なサイドベント切替部14、14が形成されている。前席12の前方であって車幅方向の中央側には、送風空気の吹き出しの可否を切り替え可能なセンターベント切替部15、15が形成されている。
【0014】
空調装置20には後席13へ向かって延びるリヤダクト16が接続されており、リヤダクト16を介して後席13へ送風を行なうことができる。リヤダクト16の後端あるいは下流端には、後席13への送風空気の吹き出しの可否を切り替え可能な後席用送風切替部17が設けられている。
【0015】
リヤダクト16は、例えば、センターコンソールの下面に沿って後方に向かって延びると共に、センターコンソールの後面に沿って上方に向かって延びるように配置することができる。又は、車室内の床下を通りBピラーに沿って立ち上げられていても良い。また、途中で分岐して後席乗員の上半身及び下半身に送風可能となるよう配置されても良い。
【0016】
それぞれの切替部14、15、17は、ルーバーによって構成され乗員が操作部14a、15a、17aをスイングさせることにより、全開から全閉まで送風量を切り替えることができる。
【0017】
空調装置20は、車室内及び/又は車外の空気を取り入れて送風することが可能な送風ユニット21と、この送風ユニット21から送られた送風空気を所定の温度に調節可能な温度調節ユニット30と、を有する。送風ユニット21から左に向かって送られた風は、温度調節ユニット30内を後方に向かって流れる。
【0018】
送風ユニット21は、周知の構成を採用することができ、例えば、ブロアファンが内蔵されている。
【0019】
なお、空調装置20は、送風ユニット21が温度調節ユニット30の左側に配置される構成であっても良い。ステアリングハンドルの左右位置等により適宜選択可能である。
【0020】
図2を参照する。温度調節ユニット30は、送風ユニット21(
図1参照)からの送風空気が送られるハウジング50と、このハウジング50の内部空間ISに設けられ送風空気を冷却可能な冷却用熱交換器32と、この冷却用熱交換器32を通過した空気を加熱可能な加熱用熱交換器33と、この加熱用熱交換器33の下流に設けられ加熱用熱交換器33を通過する送風空気の量を調節する前席用温度調整装置34と、この前席用温度調整装置34の下流に設けられ開口部51~54(サイドベント開口部52については
図1を参照。)の開閉を切り替えるデフロスタ開閉ドア36、ベント開閉ドア37、フット開閉ドア38と、加熱用熱交換器33の前部において下方に延び加熱用熱交換器33を通過した空気を後席13(
図1参照)に導く後席用送風部材41と、後席13に送られる送風空気の温度を調節する後席用温度調節装置70と、を有している。
【0021】
ハウジング50は、例えば、複数のパーツによって構成される。より具体的には、上部の左右を構成するパーツ、及び、下部を構成するパーツの3つのパーツにより構成される。それぞれのパーツには、射出成形品を用いることができる。なお、ハウジング50は、2つのパーツによって構成されていても良いし、4つ以上のパーツによって構成されていても良い。
【0022】
図1を併せて参照する。ハウジング50には、フロントガラスへ送られる送風空気が通過するデフロスタ開口部51と、前席12の乗員の上半身に送られる送風空気が通過するベント開口部52、53と、前席12の乗員の足元に送られる送風空気が通過するフット開口部54と、後席13の乗員に送られる送風空気が通過するリヤ開口部55と、が空けられている。
【0023】
また、内部空間ISは、冷却用熱交換器32のみを通過した送風空気が流れる冷風流路CPと、加熱用熱交換器33を通過した送風空気が流れる温風流路HPと、冷風流路CPを流れた送風空気と温風流路HPを流れた送風空気とが混合される混合流路MPと、を有している。
【0024】
ベント開口部52、53は、サイドベント切替部14から吹き出される送風空気が通過するサイドベント開口部52と、センターベント切替部15から吹き出される送風空気が通過するセンターベント開口部53と、からなる。
【0025】
なお、ベント開口部52、53は、必ずしも車幅中央用と外側用の2カ所ずつに形成される必要はない。
【0026】
図2を参照する。冷却用熱交換器32は、ハウジング50の前部において、略前後方向に送風空気が通過するよう設けられている。送風空気は、冷却用熱交換器32の内部を通過する熱媒体との熱交換により冷却される。熱媒体には、例えばフロン系の冷媒や、二酸化炭素を用いることができる。
【0027】
加熱用熱交換器33は、冷却用熱交換器32の後方に設けられていると共に、略上下方向に送風空気が通過するよう設けられている。加熱用熱交換器33は、例えば、エンジンを通過し温められた温水が内部を流れる温水ヒータ33aと、通電することにより加熱される電気ヒータ33bと、からなる。
【0028】
図に示される状態において、冷却用熱交換器32を通過した送風空気の一部は、後席用送風部材41の左右を通過して加熱用熱交換器33の下方に導かれ、上方に向かって流れる。この際、送風空気は、加熱用熱交換器33によって温められる。
【0029】
なお、加熱用熱交換器33は、必ずしも温水ヒータ33a及び電気ヒータ33bの2つから構成される必要はなく、どちらか1つであっても良い。また、温水以外の熱媒体を用いたヒータを採用することもできる。熱媒体には、例えばフロン系の冷媒や、二酸化炭素を用いることができる。
【0030】
前席用温度調整装置34は、通電することにより回転駆動力を発生する図示しない前席温度調整用アクチュエータと、ピニオンギヤを有し前席温度調整用アクチュエータに連結されて回転する回転駆動部34aと、回転駆動部34aが回転することにより略前後方向にスライドするドア本体34bと、を有する。ドア本体34bは、ピニオンギヤに噛み合うラックを含む。
【0031】
ドア本体34bが移動することにより冷風流路CPと温風流路HPとの開放量が調節される。これにより、混合流路MPへ流れる冷風の風量と温風の風量とが調節され、混合流路MPで混合された際に所定の温度となる。
【0032】
なお、前席用温度調整装置34は、スライドドアではなく、回転軸を中心に回転可能なスイングドアによって構成されていても良い。
【0033】
デフロスタ開閉ドア36は、スイングドアによって構成され、スイングすることによりデフロスタ開口部51の開放量を調節可能である。
【0034】
ベント開閉ドア37は、スイングドアによって構成され、スイングすることによりベント開口部52、53(サイドベント開口部52については、
図1を参照。)の開放量を調節可能である。
【0035】
フット開閉ドア38は、スイングドアによって構成され、スイングすることによりフット開口部54の開放量を調節可能である。
【0036】
後席用送風部材41は、加熱用熱交換器33の前方において上下方向に延びているダクト状の部材である。後席用送風部材41は、後述する送風部材本体部41cの左右方向の幅が、加熱用熱交換器33の左右方向の幅に比べて小さく形成されている。これにより、冷却用熱交換器32通過した送風空気は、後席用送風部材41の左右を通過して加熱用熱交換器33へ流れることが可能とされている。後席用送風部材41の上端は、加熱用熱交換器33の下流側の端部に臨み、後席用送風部材41の下端は、リヤダクト16の上流側端部に臨んでいる。
【0037】
後席用送風部材41の後面であって冷風流路CPに臨む部位には、冷風を取り入れるための冷風取入開口部41aが開けられている。
【0038】
図2及び
図3を参照する。後席用送風部材41は、加熱用熱交換器33を通過した送風空気が導入される導入部41bと、この導入部41bにおいて導入された送風空気が流れる送風部材本体部41cと、を主な構成要素とする。導入部41bと送風部材本体部41cとの間は、導入部41bから送風部材本体部41cに向かって連続的に幅が狭まるテーパー形状部41dとされている。さらに、後席用送風部材41は、導入部41bの上部及び側部から温風流路HPまで延びる延出部41eを含む。
【0039】
図3及び
図4を参照する。導入部41bは、ハウジング50の左右に亘って形成されている。導入部41bの車幅方向の幅W1は、加熱用熱交換器33の車幅方向の幅W1と略同じであり、送風部材本体部41cの幅W2よりも幅が広い。導入部41bは、一部が加熱用熱交換器33の上方且つ回転駆動部34aの下方に位置している。
【0040】
なお、導入部41bは、送風部材本体部41cよりも幅が広ければよく、必ずしもハウジング50の左右に亘って設けられている必要はない。理由は後述する。
【0041】
送風部材本体部41cは、ダクト状に形成されている。送風部材本体部41cの後面のうち冷風流路CPに面した位置には、冷風取入開口部41aが形成されている。
【0042】
図2を参照する。送風部材本体部41cの内部は、加熱用熱交換器33によって温められた送風空気が通過する後席用温風通路RHと、この後席用温風通路RHの下流に位置し冷風取入開口部41aから取り入れられた冷たい送風空気が混合され温度が調節される後席用混合流路RMと、されている。送風部材本体部41cは、冷却用熱交換器32と加熱用熱交換器33の間に設けられている。
【0043】
このように後席用温風通路RHは、周囲を冷風流路CPによって囲まれるため、後席用温風通路RHを通流する温風が意図せずに冷却される懸念がある。あるいは、冷風流路CPを流れる冷風が意図せずに温められる懸念がある。この場合、例えば後席用送風部材41の周囲に発泡ウレタンなどの断熱材を貼り付けることや、後席用送風部材41自体を発泡樹脂により構成し、断熱性を向上して、意図しない熱交換を防止できる。このような断熱対策は必ずしも実施せずともよく、空調装置20から吹き出される調和空気の吹出温度やコスト等を勘案し、適宜選択される。また、後席用送風部材41に断熱材を貼り付ける場合、その場所は、後席用送風部材41のうち外表面でもよく、あるいは後席用温風通路RHに面する内表面でもよい。
【0044】
図3を併せて参照する。テーパー形状部41dは、導入部41bから送風部材本体部41cに向かって徐々に曲率半径が小さくなる湾曲形状とされている。
【0045】
延出部41eとは、導入部41bの下端部41b1よりも上流側に延びている部位(
図4の二点鎖線よりも上流側に延びている部位)をいう。延出部41eの一部は、導入部41bの一部と共に加熱用熱交換器33の上方且つ回転駆動部34aの下方に位置している。導入部41bの上面及び延出部41eの上面は、連続していると共にドア本体34bの軌道に沿った形状を呈している。延出部41eは、加熱用熱交換器33から離間している。延出部41eは、温風流路HPの一部に延びている。
【0046】
後席用送風部材41の下部にはリヤダクト16が接続されている。リヤダクト16は、後席用送風部材41の下端から下方に延び、床面に沿って後方に延びる。
【0047】
なお、後席用送風部材41は、ハウジング50に一体的に形成されていても良いし、ハウジング50とは別部材によって構成されていても良い。
【0048】
図5を参照する。
図5には、変更例による後席用送風部材41Xが示されている。
図4と共通する部分については、符号を流用している。後席用送風部材41Xの導入部41bの下端部41b1は、両端がテーパー形状部41dの上流側の端部と一致している(P1参照)。この場合、導入部41bは、後席用送風部材41Xの肉厚分の厚みによって構成される。
【0049】
図4を参照する。後席用温度調節装置70は、通電することにより回転駆動力を発生する後席温度調整用アクチュエータ71と、後席温度調整用アクチュエータ71が作動することによりスイングし温風と冷風との混合割合を調節する後席用温度調節ドア72と、を有する。後席温度調整用アクチュエータ71には、例えば、ステッピングモータを用いることができる。
【0050】
本発明について以下に纏める。
【0051】
図1及び
図2を参照する。第1に、空調装置20は、車両の乗員が着席可能な前席12とこの前席12の後方に配置されている後席13とに向かって送風可能であり、ハウジング50の内部空間ISに、送風空気を冷却可能な冷却用熱交換器32と、この冷却用熱交換器32を通過した空気を加熱可能な加熱用熱交換器33と、が設けられている。車両の進行方向を基準として、加熱用熱交換器33は、冷却用熱交換器32よりも後方となるように設けられている。内部空間ISには、冷却用熱交換器32のみを通過した送風空気が流れる冷風流路CPと、加熱用熱交換器33を通過した送風空気が流れる温風流路HPと、冷風流路CPを流れた送風空気と温風流路HPを流れた送風空気とが混合される混合流路MPと、が形成されている。送風空気の流れる方向を基準として、加熱用熱交換器33の下流側には、加熱用熱交換器33を通過した送風空気を後席13に導くための後席用送風部材41が設けられている。
【0052】
図3及び
図4を参照する。後席用送風部材41は、加熱用熱交換器33を通過した送風空気が導入される導入部41bと、この導入部41bにおいて導入された送風空気が流れ冷却用熱交換器32と加熱用熱交換器33の間に設けられている送風部材本体部41cと、を有している。車両の幅に沿った方向を基準として、送風部材本体部41cは、加熱用熱交換器33よりも幅が狭く、導入部41bは、送風部材本体部41cよりも幅が広い。
【0053】
図2を参照する。後席用温風通路RHは、冷却用熱交換器32と加熱用熱交換器33の間に設けられている。これにより、ハウジング50の後方下部を避けてリヤダクト16等を接続することができる。前席12(
図1参照)乗員の足元のスペースを十分に確保することができる。
【0054】
図3及び
図4を参照する。加えて、導入部41bの車幅方向の幅は、送風部材本体部41cの車幅方向の幅よりも広い。これにより広い範囲から暖かい送風空気を導入することが可能となる。後席へ向かってより確実に所定量の送風空気を送ることが可能となる。
【0055】
第2に、第1の空調装置20であって、後席用送風部材41は、導入部41bと送風部材本体部41cとの間に、導入部41bから送風部材本体部41cに向かって連続的に幅が狭まるテーパー形状部41dを有している。
【0056】
テーパー形状部41dを有することにより、導入部41bから送風部材本体部41cに向かって効率的に円滑に送風を行うことができる。後席へ向かってより確実に所定量の送風空気を送ることが可能となる。
【0057】
図2を参照する。第3に第1又は第2の空調装置20であって、空調装置20は、冷風流路CPを通過する送風空気と温風流路HPを通過する送風空気との割合を調節可能な前席用温度調整装置34をさらに有している。前席用温度調整装置34は、回転駆動部34aと、この回転駆動部34aによって駆動され、冷風流路CPと混合流路MPとの境界部と、温風流路HPと混合流路MPとの境界部との間を移動可能なドア本体34bと、を有している。導入部41bの少なくとも一部は、加熱用熱交換器33と回転駆動部34aとの間に位置している。
【0058】
加熱用熱交換器33と回転駆動部34aとの間は、常にドア本体34bの一部が存するデッドスペースである。すなわち、温風流路HPから混合流路MPに温風が流れることがない領域である。このようなデッドスペースを利用して導入部41bを形成する。通気抵抗の上昇を抑えつつ、導入部41bを設けることができる。
【0059】
図3及び
図4を参照する。第4に、第1乃至第3のいずれかの空調装置20であって、後席用送風部材41は、導入部41bから温風流路HPまで延び加熱用熱交換器33を通過した送風空気を導入部41bに導く延出部41eを有している。
【0060】
延出部41eを有することにより、加熱用熱交換器33を通過して上方に送られた送風空気をより多く取り込むことが可能となる。後席へ向かってより確実に所定量の送風空気を送ることが可能となる。
【0061】
図2を参照する。第5に第4の空調装置20であって、空調装置20は、冷風流路CPを通過する送風空気と温風流路HPを通過する送風空気との割合を調節可能な前席用温度調整装置34をさらに有している。前席用温度調整装置34は、回転駆動部34aと、この回転駆動部34aによって駆動され、冷風流路CPと混合流路MPとの境界部と、温風流路HPと混合流路MPとの境界部との間を移動可能なドア本体34bと、を有している。延出部41eの少なくとも一部は、加熱用熱交換器33と回転駆動部34aとの間に位置している。
【0062】
加熱用熱交換器33と回転駆動部34aとの間は、常にドア本体34bの一部が存するデッドスペースである。このようなデッドスペースを利用して延出部41eを形成する。通気抵抗の上昇を抑えつつ、延出部41eを設けることができる。
【0063】
尚、本発明の作用及び効果を奏する限りにおいて、本発明は、実施例に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の空調装置は、乗用車に搭載する空調装置に好適である。
【符号の説明】
【0065】
12…前席
13…後席
20…車両用空調装置
32…冷却用熱交換器
33…加熱用熱交換器
34…前席用温度調整装置、34a…回転駆動部、34b…ドア本体
41…後席用送風部材、41b…導入部、41c…送風部材本体部、41d…テーパー形状部、41e…延出部
50…ハウジング
IS…内部空間
CP…冷風流路
HP…温風流路
MP…混合流路