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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123364
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】開閉器
(51)【国際特許分類】
   H01H 9/44 20060101AFI20240905BHJP
   H01H 9/38 20060101ALI20240905BHJP
   H01H 33/20 20060101ALI20240905BHJP
   H01H 73/18 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
H01H9/44 A
H01H9/38
H01H33/20
H01H73/18 A
H01H73/18 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030703
(22)【出願日】2023-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】000227401
【氏名又は名称】日東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001977
【氏名又は名称】弁理士法人クスノキ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】出原 侑昌
(72)【発明者】
【氏名】黒田 進太朗
【テーマコード(参考)】
5G027
5G030
【Fターム(参考)】
5G027BB03
5G027BC07
5G030DA01
(57)【要約】
【課題】固定接触子と可動接触子の間で生じるアークを引き延ばすことが可能な永久磁石を備える開閉器に高めの電流を流す場合でも、永久磁石の性能の低下を抑制できるようにすること。
【解決手段】外郭をケースとカバーで構成し、
固定接点13を有した固定接触子14と、回路を開く際に固定接点と離れる可動接点15を有した可動接触子16と、固定接点と可動接点との間で生じるアークを消弧可能な永久磁石17と、を備えた開閉器であって、壁部Waで覆われた永久磁石の近くに、ケース若しくはカバーよりも耐アーク性に優れる樹脂部Reを設けた開閉器とする。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外郭をケースとカバーで構成し、
固定接点を有した固定接触子と、
回路を開く際に固定接点と離れる可動接点を有した可動接触子と、
固定接点と可動接点との間で生じるアークを消弧可能な永久磁石と、
を備えた開閉器であって、
壁部で覆われた永久磁石の近くに、ケース若しくはカバーよりも耐アーク性に優れる樹脂部を設けた開閉器。
【請求項2】
固定接触子は、固定接点から永久磁石の方向に延びるアークランナを有し、
ケース若しくはカバーよりも耐アーク性に優れる樹脂部が、アークランナと壁部との間に位置する請求項1に記載の開閉器。
【請求項3】
可動接触子は、回路を開閉する際に永久磁石の上方を通過するものであり、かつ、回路を開いた状態において永久磁石よりも上方に位置するものであり、
樹脂部は、回路を開閉するために移動中の可動接触子又は可動接点と壁部との間、若しくは、回路を開いた状態における可動接触子又は可動接点と壁部との間に位置する請求項1に記載の開閉器。
【請求項4】
ケース内を区画可能な区画部を備え、
樹脂部は、可動接点より上方から、固定接触子とは反対側の壁部の側方まで延びる区画部の一部である請求項1に記載の開閉器。
【請求項5】
壁部は、ケースに備えられた第一板部から突出する第一収納部と、カバーに備えられた第二板部から突出する第二収納部とを組み合わせて構成され、
樹脂部は、第一収納部の第一板部側の端部若しくは第二収納部の第二板部側の端部に設けられる請求項2から4の何れかに記載の開閉器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定接触子と可動接触子を備えた開閉器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
固定接触子の固定接点と、可動接触子の可動接点を離したり接触させたりすることで回路を開いたり閉じたりする直流開閉器が知られている。また、特許文献1に記載されているように、このような直流開閉器において、固定接点と可動接点の接触位置の近傍に永久磁石を配置し、接点間に発生したアークを速やかに消弧できるようにすることは知られている。また、特許文献1には、直接アークに曝されることによる磁力の低下で永久磁石の消弧性能が失われないようにするために、永久磁石を覆う壁部を備えた構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-235748号公報
【0004】
所定の定格電流におけるアークの消弧については、特許文献1に開示の従来技術で十分な性能を満たすことが可能である。しかしながら、定格電流を更に増加しようとした場合、この従来技術では、アークにより永久磁石の磁力の低下が引き起こされるおそれがあった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本件の発明者は、この点について鋭意検討することにより、解決を試みた。本発明が解決しようとする課題は、固定接触子と可動接触子の間で生じるアークを引き延ばすことが可能な永久磁石を備える開閉器に高めの電流を流す場合でも、永久磁石の性能の低下を抑制できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、外郭をケースとカバーで構成し、固定接点を有した固定接触子と、回路を開く際に固定接点と離れる可動接点を有した可動接触子と、固定接点と可動接点との間で生じるアークを消弧可能な永久磁石と、を備えた開閉器であって、壁部で覆われた永久磁石の近くに、ケース若しくはカバーよりも耐アーク性に優れる樹脂部を設けた開閉器とする。
【0007】
また、固定接触子は、固定接点から永久磁石の方向に延びるアークランナを有し、ケース若しくはカバーよりも耐アーク性に優れる樹脂部が、アークランナと壁部との間に位置する構成とすることが好ましい。
【0008】
また、可動接触子は、回路を開閉する際に永久磁石の上方を通過するものであり、かつ、回路を開いた状態において永久磁石よりも上方に位置するものであり、樹脂部は、回路を開閉するために移動中の可動接触子又は可動接点と壁部との間、若しくは、回路を開いた状態における可動接触子又は可動接点と壁部との間に位置する構成とすることが好ましい。
【0009】
また、ケース内を区画可能な区画部を備え、樹脂部は、可動接点より上方から、固定接触子とは反対側の壁部の側方まで延びる区画部の一部である構成とすることが好ましい。
【0010】
また、壁部は、ケースに備えられた第一板部から突出する第一収納部と、カバーに備えられた第二板部から突出する第二収納部とを組み合わせて構成され、樹脂部は、第一収納部の第一板部側の端部若しくは第二収納部の第二板部側の端部に設けられる構成とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、固定接触子と可動接触子の間で生じるアークを引き延ばすことが可能な永久磁石を備える開閉器に高めの電流を流す場合でも、永久磁石の性能の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態における開閉器の斜視図である。
図2図1に示す開閉器の分解斜視図である。
図3図2に示すケース周りを左側面方向から見た図である。
図4図3に示す可動接触子の移動前後の位置の変化を示す図である。ただし、(a)は回路を閉じた状態を表しており、(b)は回路を開いた状態を表している。
図5図1におけるハンドルの回動中心付近で切った断面をV矢視方向から見た断面図である。
図6】実施例1における壁部周りの斜視図である。
図7】実施例2における壁部周りの斜視図である。
図8】実施例2における壁部周りの側面図である。
図9】実施例3における壁部周りの斜視図である。
図10】実施例3における壁部周りの側面図である。
図11】実施例4における開閉器の分解斜視図である。
図12】実施例5における壁部周りの斜視図である。
図13】実施例5における壁部周りの側面図である。
図14】実施例6における壁部周りの斜視図である。
図15】実施例6における壁部周りの側面図である。
図16】実施例7における壁部周りの斜視図である。
図17】実施例7における壁部周りの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に発明を実施するための形態を示す。本実施形態の開閉器1は、外郭をケース11とカバー12で構成している。また、この開閉器1は、固定接点13を有した固定接触子14と、回路を開く際に固定接点13と離れる可動接点15を有した可動接触子16と、固定接点13と可動接点15との間で生じるアークを消弧可能な永久磁石17と、を備えている。また、この開閉器1は、壁部Waで覆われた永久磁石17の近くに、ケース11若しくはカバー12よりも耐アーク性に優れる樹脂部Reを設けている。このため、固定接触子14と可動接触子16の間で生じるアークを引き延ばすことが可能な永久磁石17を備える開閉器1に高めの電流を流す場合でも、永久磁石17の性能の低下を抑制できる。
【0014】
開閉器1は直流回路内に配置されるものであってもよいし、交流回路内に配置されるものであってもよい。開閉器1としては、例えば、回路内に漏電電流や過電流などの異常が生じた場合に、回路を遮断する機能を有する回路遮断器や接触器、断路器を含むものである。
【0015】
図1に示す開閉器は、二極の開閉器であって、ケース11と、ケース11を覆う二枚のカバー12で外郭が形成されている(図2参照)。また、ケース11とカバー12で囲われた空間には可動接点15を有する可動接触子16が備えられている。可動接点15は固定接触子14に備えられた固定接点13と接触したり離れたりすることができる。
【0016】
図3に示す例においては、固定接触子14は、固定接点13と反対側の端部に第一端子部31が備えられている。また、可動接触子16は第二端子部32と電線33で接続されている。固定接点13と可動接点15を接触させれば、第一端子部31から第二端子部32までが電気的に接続することになるが、ハンドル19を操作して可動接点15を動かし、可動接点15と固定接点13とを離せば、第一端子部31から第二端子部32まで電気的に接続されていた状態が解消され、電気を流すことができなくなる(図4参照)。
【0017】
第一端子部31と第二端子部32の間にしっかりと電気が流れている間に可動接点15と固定接点13とを離すと、可動接触子16と固定接触子14の間にアークが生じる。このアークを早く消弧するために、可動接点15と固定接点13の接触位置付近に永久磁石17を配置している。また、永久磁石17を保護するために、永久磁石17の近くに壁部Waを設けている。
【0018】
永久磁石17を保護する壁部Waは、どのように構成されていてもよいが、実施形態においては、壁部Waは、ケース11に備えられた第一板部11aから突出する第一収納部11bと、カバー12に備えられた第二板部12aから突出する第二収納部12bとを組み合わせて構成されている(図2及び図5参照)。
【0019】
壁部Waが、ケース11に備えられた第一板部11aから突出する第一収納部11bと、カバー12に備えられた第二板部12aから突出する第二収納部12bとを組み合わせて構成される場合、樹脂部Reは、第一収納部11bの第一板部11a側の端部若しくは第二収納部12bの第二板部12a側の端部に設けられる構成とするのが好ましい。
【0020】
図4に示す壁部Waは、永久磁石17から見て固定接点13側(前側)に設けられる第一壁部Wa1と、永久磁石17から見て固定接点13側と反対側(後側)に設けられる第三壁部Wa3と、第一壁部Wa1と第三壁部Wa3を繋ぐ第二壁部Wa2(上側)を備えている。
【0021】
永久磁石17の近傍に耐アーク性に優れた樹脂部Reを配置するが、以下に記す実施例1から6については、壁部Waの外側にケース11若しくはカバー12よりも耐アーク性に優れた樹脂部Reを配置する例である。また、実施例7については、壁部Waに耐アーク性に優れた樹脂部Reを用いた例である。
【0022】
ここで、「ケース11若しくはカバー12よりも耐アーク性に優れた樹脂部Re」とは、ASTM D495「Standard Test Method for High-Voltage, Low-Current, Dry Arc Resistance of Solid Electrical Insulation(訳)固体電気絶縁の高電圧、低電流、ドライアーク抵抗の標準試験法」や、IEC61621「Dry, solid insulating materials - Resistance test to high-voltage, low-current arc discharges」、JIS C2135「乾燥固体電気絶縁材料-高電圧小電流耐アーク性試験方法」などに基づいて耐アーク試験を実施し、ケース11若しくはカバー12に使用される樹脂材料よりも耐アーク性に優れていると判断される樹脂材料を含んで形成されたものである。
【実施例0023】
永久磁石17を覆う壁部Waの外側にケース11やカバー12よりも耐アーク性に優れた樹脂部Reを配置する。具体的には、収納部の第一壁部Wa1、第二壁部Wa2、第三壁部Wa3とそれぞれ平行な第一面Re1、第二面Re2、第三面Re3を備える樹脂部材を配置する。第一面Re1は、アークランナ14aと第一壁部Wa1の間に位置するものであり、第一壁部Wa1の途中から第一壁部Wa1の上方まで延びる(図4参照)。
【0024】
第二面Re2は、「回路を開閉するために移動中の可動接触子16又は可動接点15」と第二壁部Wa2との間、若しくは「回路を開いた状態における可動接触子16又は可動接点15」と第二壁部Wa2との間に位置するものであり、第二壁部Wa2の前端から後端までをカバーできる前後方向の長さとなっている。なお第二面Re2は、可動接触子16と第二壁部Wa2との間の中でも、可動接点15と第二壁部Wa2との間に位置することができるように構成するのが好ましい。
【0025】
第三面Re3は、可動接点15より上方から第三壁部Wa3の側方までを覆う区画部Arと、第三壁部Wa3の間に位置し、第一板部11aと一体的に形成された区画部Arに設けられた係合部Araに係合して、樹脂部材が固定されている。区画部Arは発生したアークを固定接触子14と可動接触子16の付近で留め、ケース11全体に被害が及ばないようにするためのものであるが、第三面Re3も区画部Arの一部として機能する。
【0026】
ところで、アークは、固定接点13と可動接点15の間で発生するが、可動接触子16が開くにつれて、発生箇所が移動する。例えば、固定接点13と可動接触子16の間、固定接触子14と可動接点15の間、固定接触子14と可動接触子16の間などでアークが発生する。例えば、固定接触子14の固定接点13から永久磁石17の方向に延びるアークランナ14aは、アークの発生箇所を固定接点13から、アークランナ14aへ移すことを目的として設けられている。
【0027】
アークランナ14aと可動接触子16若しくは可動接点15との間でアークが発生するため、アークランナ14aと「可動接触子16若しくは可動接点15」との間に位置する「第一壁部Wa1」、「第二壁部Wa2」、「第一壁部Wa1と第二壁部Wa2の連結部分」は特にアークに曝される可能性が高い。このため、それらの位置を重点的に保護するように樹脂部Reを設けることが好ましい。
【0028】
このようなことが言えるため、固定接触子14は、固定接点13から永久磁石17の方向に延びるアークランナ14aを有し、ケース11若しくはカバー12よりも耐アーク性に優れる樹脂部Reが、アークランナ14aと壁部Waとの間に位置する構成とすることが好ましい。
【0029】
また、図4に示すように、可動接触子16が、回路を開閉する際に永久磁石17の上方を通過するものであり、かつ、回路を開いた状態において永久磁石17よりも上方に位置するものである場合、樹脂部Reは、「回路を開閉するために移動中の可動接触子16又は可動接点15」と壁部Waとの間、若しくは、「回路を開いた状態における可動接触子16又は可動接点15」と壁部Waとの間に位置する構成とすることが好ましい。
【0030】
また、アークと永久磁石17との関係でいえば、永久磁石17の磁力は、アークに対してアークを引き延ばすように作用する。例えば、アークは永久磁石17の作用により、ケース11の側面方向(第一収納部11bの第一板部11a側)若しくはカバー12の側面方向(第二収納部12bの第二板部12a側)に引き延ばされる。
【0031】
例えば、アークは、固定接触子14から第一壁部Wa1の左右端部付近に向かい、第一壁部Wa1の左右端部付近に沿って第二壁部Wa2との連結部分付近に向かい、第二壁部Wa2の左右端部付近に沿って前部から後部へ向かい、第二壁部Wa2の後部付近から可動接触子16へと向かうように引き延ばされる。つまり壁部Waは左右方向の中央位置よりも、左右端部の方がアークに曝される可能性が高い。したがって、壁部Waの左右端部付近において樹脂部Reを厚くするのが好ましい。逆に言えば、樹脂部Reは、第二壁部Wa2の左右方向の中央位置付近は薄くしたり、設けないようにしたりすることも可能である。
【0032】
このため、本実施例の樹脂部Reにおいては、第一壁部Wa1の上部と、第二壁部Wa2、第一壁部Wa1と第二壁部Wa2の連結部分を保護する樹脂部材としている。この樹脂部材の一部が、第二壁部Wa2の上方に重なるように配置されるが、樹脂部材は第二面Re2の左右方向端部付近を厚く形成している(図6参照)。
【0033】
また、図6に示すことから理解されるように、この実施例においては、第二面Re2の中央部分に開口Re21を備えた構成となっている。これは、第二面Re2が可動接触子16の動作の妨げにならないようにするための構造である。したがって、第二面Re2が可動接触子16の動作の妨げにならないなら、第二面Re2に開口Re21を設けないようにしてもよい。
【0034】
この樹脂部材の第三面Re3は、樹脂部材の固定に利用している。より詳しくは、可動接点15より上方から、固定接触子14とは反対側の壁部Waの側方まで延びる区画部Arとしてケース11に設けられた部分の一部と係合するなどして固定されている。また、この第三面Re3はケース11内を区画可能な区画部Arとして機能させるように利用している。したがって、この例における第三面Re3に関しては、樹脂部材以外の構成との関係により、他の構成で代替したり、設けないようにしたりすることもある。
【実施例0035】
実施例2は、実施例1と同様、第一壁部Wa1と、第二壁部Wa2、第一壁部Wa1と第二壁部Wa2の連結部分を保護することを重視した例であるが、図7及び図8に示すことから理解されるように、実施例1とは異なり、第二面Re2に開口Re21を設けていない。また、樹脂部材は第二面Re2が第二壁部Wa2の全体を覆うように壁部Waに被せて固定されるものである。この樹脂部材は第一壁部Wa1と第三壁部Wa3と当接して壁部Waを挟み込むように構成されている。
【0036】
また、実施例1においては、区画部Arが、可動接点15より上方から、固定接触子14とは反対側の壁部Waの側方まで延びる構成としていたが、区画部Arは、固定接触子14とは反対側の壁部Waの側方には設けないことも考えられる。実施例2においては、可動接点15より上方から、固定接触子14とは反対側の壁部Waの側方まで延びる区画部Arの下方にアーク発生時に生じるガスなどの通路である通路部1aを設けている。この通路部1aは、第三壁部Wa3の側方に位置している。
【実施例0037】
ところで、実施形態では、永久磁石17を囲う壁部Waは、ケース11側の第一収納部11bと、カバー12側の第二収納部12bを合わせて形成される。そのため、第一収納部11bの第一板部11a側の端部若しくは第二収納部12bの第二板部12a側の端部が樹脂部Reで保護するのが適している個所となる。また、開閉器が直流回路に設置される場合、電気は一方向に流れるため、永久磁石17の配置や向きにより、アークの引き延ばされる方向(左右方向)はある程度コントロールできる。このため、樹脂部Reは、アークを引き延ばす方向(左右方向)にのみ設けてもよい。
【0038】
実施例3は、ケース11に備えられた第一収納部11bの第一板部11a側の端部付近における第一壁部Wa1、第二壁部Wa2、第一壁部Wa1と第二壁部Wa2の連結部分を保護することを重視した例である。上記したとおり、永久磁石17により引き延ばされたアークは、壁部Waの左右方向の端部(ケース11側面側など)を通過する可能性が高い。そこで、ケース11側面側にのみ樹脂部Reを設ける構造としている。図9及び図10に示すことから理解されるように、実施例3では樹脂部材は第二壁部Wa2の左右方向中央までは覆っていない。更に言えば、樹脂部材は第一収納部11bの上面の左右方向の半分以上は覆っていない。この樹脂部材は、実施例2と同様、第一壁部Wa1と第三壁部Wa3と当接して壁部Waを挟み込むように構成されている。
【実施例0039】
実施例4は、カバー12に備えられた第二収納部12bの第二板部12a側の端部付近における第一壁部Wa1、第二壁部Wa2、第一壁部Wa1と第二壁部Wa2の連結部分を保護することを重視した例である。図11に示すことから理解されるように、実施例4では樹脂部材は第二壁部Wa2の左右方向中央までは覆っていない。更に言えば、樹脂部材は第二収納部12bの上面の左右方向の半分以上は覆っていない。この樹脂部材は、実施例2と同様、第一壁部Wa1と第三壁部Wa3と当接して壁部Waを挟み込むように構成されている。
【実施例0040】
実施例5は、第一壁部Wa1と、第一壁部Wa1と第二壁部Wa2の連結部分を保護することを重視した例である。図12及び図13に示すことから理解されるように、樹脂材料は、壁部Waに備えられた第一壁部Wa1、第二壁部Wa2、第三壁部Wa3の全てを覆うものではない。この例では、アークランナ14aと第一壁部Wa1の間に樹脂部材を配置している。つまり、第二壁部Wa2の真上や第三壁部Wa3と対向する位置に樹脂部材は存在していない。
【0041】
樹脂材料は、アークランナ14aと第一壁部Wa1の間に嵌め込むようにしてもよいし、第一壁部Wa1と係止させてもよいが、作業性や樹脂部材の紛失等を考慮すると、樹脂部材をアークランナ14aに装着する構造とすることが好ましい。アークランナ14aに樹脂部材を装着した状態で、固定接触子14を開閉器に組み付けることができる構造であれば、作業性が向上し、樹脂部材の紛失等を防止することが可能となる。
【実施例0042】
実施例6は、第一壁部Wa1、第二壁部Wa2については覆うことなく、第三壁部Wa3の側方に設けられたガス通路を塞ぎ、区画部Arの一部を構成するように樹脂部材を利用した例である。第三壁部Wa3の側方にガス通路として通路部1aを設けた場合、永久磁石17により引き延ばされたアークは、第二壁部Wa2の左右端部の後方から可動接触子16の位置する上方への経路を通る際、通路部1a側を経由して上方へ向かう。そのため、通路部1a側を経由する間、永久磁石17がアークに曝される時間が長くなることもありえ、永久磁石17の磁力低下が生じる可能性がある。これに対して、本実施例では、樹脂部材により通路部1aを覆い、樹脂部材を区画部Arの一部として用いた。このような構成とすることで、永久磁石17がアークに曝される時間を短くし、永久磁石17の磁力低下を抑制することが可能となる。
【0043】
なお、ケース11内を区画可能な区画部Arを備える構成については、実施例1に示す例や実施例6に示す例に限ることはない。ただし、ケース11内を区画可能な区画部Arを備える場合、樹脂部Reは、可動接点15より上方から、固定接触子14とは反対側の壁部Waの側方まで延びる区画部Arの一部とするのが好ましい。
【実施例0044】
実施例1から6においては、永久磁石17が壁部Waに囲われ、樹脂部Reを壁部Waの外側に設けた例について説明をしたが、壁部Waの一部若しくは全部を樹脂部Reとしても構わない。例えば、ケース11やカバー12に対して壁部Waを着脱可能とし、樹脂部Reで構成された壁部Waに永久磁石17を挿入する構造としてもよい(図16及び図17参照)。
【0045】
ここまではケース11若しくはカバー12よりも耐アーク性能が優れた樹脂材料を用いて構成される樹脂部材を樹脂部Reとしてケース11やカバー12に設置する例を説明したが、樹脂部Reは、樹脂塗料などにしてもよい。例えば、ケース11やカバー12、壁部Waや区画部Ar、永久磁石17などに塗布することで、永久磁石17の周囲に樹脂部Reが位置する構成としてもよい。
【0046】
以上、実施形態を例に挙げて本発明について説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、各種の態様とすることが可能である。例えば、壁部は、ケースに備えられた第一板部から突出する第一収納部をカバーに備えられた第二板部付近まで延ばし、カバーには第二収納部を備えないようにしてもよい。またカバーに備えられた第二板部から突出する第二収納部をケースに備えられた第一板部付近まで延ばし、ケースには第一収納部を備えないようにしてもよい。このように、壁部はケースのみ若しくはカバーのみで形成することも可能である。
【0047】
また、実施形態では第一板部は開閉器の内部に位置し、第二板部は開閉器の外郭の一部となるものであるが、そのような例に限る必要はない。例えば、第一板部が開閉器の外郭の一部となるものであってもよい。また、第二板部が開閉器の内部に位置するものであってもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 開閉器
11 ケース
11a 第一板部
11b 第一収納部
12 カバー
12a 第二板部
12b 第二収納部
13 固定接点
14 固定接触子
14a アークランナ
15 可動接点
16 可動接触子
17 永久磁石

Ar 区画部
Re 樹脂部
Wa 壁部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17