(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123367
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】電圧検出装置
(51)【国際特許分類】
G01R 19/00 20060101AFI20240905BHJP
【FI】
G01R19/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030709
(22)【出願日】2023-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三島 光紀
【テーマコード(参考)】
2G035
【Fターム(参考)】
2G035AB01
2G035AC01
2G035AD10
2G035AD11
2G035AD12
2G035AD13
2G035AD20
2G035AD56
(57)【要約】
【課題】電圧検出の高精度化に寄与する。
【解決手段】入力端子及び中間ノード間に接続された第1入力抵抗(R
P)と、中間ノードと基準電圧(Vc)が加わる基準ノードとの間に接続された第2入力抵抗(R
PS)と、中間ノードにおける第1電圧(INP)のインピーダンス変換を行うことで第2電圧(INP0)を生成するバッファアンプ(110P)と、第2電圧と基準電圧との差電圧を分圧することで第3電圧(INPa)を生成する分圧回路(120P)と、第3電圧及び基準電圧間の差を増幅することで第4電圧(PMN)を生成する増幅回路(130P)と、を備える。分圧回路は、可変抵抗を用いて差電圧の分圧を行うことにより分圧比を可変設定し、第4電圧に可変オフセット電圧を付与する可変オフセット付与回路(140P)を増幅回路に接続した。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力端子と、
前記入力端子及び中間ノード間に接続された第1入力抵抗と、
前記中間ノードと基準電圧が加わる基準ノードとの間に接続された第2入力抵抗と、
前記中間ノードにおける第1電圧のインピーダンス変換を行うことで第2電圧を生成するよう構成されたバッファアンプと、
前記第2電圧と前記基準電圧との差電圧を分圧することで第3電圧を生成するよう構成された分圧回路と、
前記第3電圧及び前記基準電圧間の差を増幅することで第4電圧を生成するよう構成された増幅回路と、を備え、
前記分圧回路は、可変抵抗を用いて前記差電圧の分圧を行うことにより前記第2電圧から前記第3電圧を得る際の分圧比を可変設定し、
前記第4電圧に可変オフセット電圧を付与するよう構成された可変オフセット付与回路を前記増幅回路に接続した
、電圧検出装置。
【請求項2】
前記バッファアンプが有する入力オフセット電圧及び前記増幅回路が有する入力オフセット電圧が、前記可変オフセット電圧の付与により前記第4電圧にて打ち消される
、請求項1に記載の電圧検出装置。
【請求項3】
前記可変オフセット付与回路は、前記基準電圧を内包する調整範囲内の調整電圧を出力するよう構成された調整電圧出力回路を有し、
前記第4電圧が前記調整電圧に応じて増減するよう前記可変オフセット付与回路が前記増幅回路に接続され、前記可変オフセット付与回路において前記調整電圧が可変設定されることで前記第4電圧に付与される前記可変オフセット電圧が変動する
、請求項2に記載の電圧検出装置。
【請求項4】
前記入力端子、前記中間ノードは、夫々、第1入力端子、第1中間ノードであり、
前記バッファアンプ、前記分圧回路、前記増幅回路、前記可変オフセット付与回路は、夫々、第1バッファアンプ、第1分圧回路、第1増幅回路、第1可変オフセット付与回路であり、
前記差電圧、前記可変抵抗、前記分圧比、前記可変オフセット電圧は、夫々、第1差電圧、第1可変抵抗、第1分圧比、第1可変オフセット電圧であり、
当該電圧検出回路は、
第2入力端子と、
前記第2入力端子及び第2中間ノード間に接続された第3入力抵抗と、
前記第2中間ノードと前記基準ノードとの間に接続された第4入力抵抗と、
前記第2中間ノードにおける第5電圧のインピーダンス変換を行うことで第6電圧を生成するよう構成された第2バッファアンプと、
前記第6電圧と前記基準電圧との第2差電圧を分圧することで第7電圧を生成するよう構成された第2分圧回路と、
前記第7電圧及び前記基準電圧間の差を増幅することで第8電圧を生成するよう構成された第2増幅回路と、を更に備え、
前記第2分圧回路は、第2可変抵抗を用いて前記第2差電圧の分圧を行うことにより前記第6電圧から前記第7電圧を得る際の第2分圧比を可変設定し、
前記第8電圧に第2可変オフセット電圧を付与するよう構成された第2可変オフセット付与回路を前記第2増幅回路に接続した
、請求項1に記載の電圧検出装置。
【請求項5】
前記第1バッファアンプが有する入力オフセット電圧及び前記第1増幅回路が有する入力オフセット電圧が、前記第1可変オフセット電圧の付与により前記第4電圧にて打ち消され、
前記第2バッファアンプが有する入力オフセット電圧及び前記第2増幅回路が有する入力オフセット電圧が、前記第2可変オフセット電圧の付与により前記第8電圧にて打ち消される
、請求項4に記載の電圧検出装置。
【請求項6】
前記第1可変オフセット付与回路は、前記基準電圧を内包する第1調整範囲内の第1調整電圧を出力するよう構成された第1調整電圧出力回路を有し、
前記第4電圧が前記第1調整電圧に応じて増減するよう前記第1可変オフセット付与回路が前記第1増幅回路に接続され、前記第1可変オフセット付与回路において前記第1調整電圧が可変設定されることで前記第4電圧に付与される前記第1可変オフセット電圧が変動し、
前記第2可変オフセット付与回路は、前記基準電圧を内包する第2調整範囲内の第2調整電圧を出力するよう構成された第2調整電圧出力回路を有し、
前記第8電圧が前記第2調整電圧に応じて増減するよう前記第2可変オフセット付与回路が前記第2増幅回路に接続され、前記第2可変オフセット付与回路において前記第2調整電圧が可変設定されることで前記第8電圧に付与される前記第2可変オフセット電圧が変動する
、請求項5に記載の電圧検出装置。
【請求項7】
前記第4電圧及び前記第8電圧間の差に応じた出力電圧を生成するよう構成された出力電圧生成回路を更に備える
、請求項4~6の何れかに記載の電圧検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電圧検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電圧検出装置は入力電圧を検出して検出結果を出力する。一種の電圧検出装置では、高電圧を入力電圧として受け、高電圧の検出結果を低電圧にて出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電圧検出装置において電圧検出の高精度化が要望される。
【0005】
本開示は、電圧検出の高精度化に寄与する電圧検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る電圧検出装置は、入力端子と、前記入力端子及び中間ノード間に接続された第1入力抵抗と、前記中間ノードと基準電圧が加わる基準ノードとの間に接続された第2入力抵抗と、前記中間ノードにおける第1電圧のインピーダンス変換を行うことで第2電圧を生成するよう構成されたバッファアンプと、前記第2電圧と前記基準電圧との差電圧を分圧することで第3電圧を生成するよう構成された分圧回路と、前記第3電圧及び前記基準電圧間の差を増幅することで第4電圧を生成するよう構成された増幅回路と、を備え、前記分圧回路は、可変抵抗を用いて前記差電圧の分圧を行うことにより、前記第2電圧から前記第3電圧を得る際の分圧比を可変設定し、前記第4電圧に可変オフセット電圧を付与するよう構成された可変オフセット付与回路を前記増幅回路に接続した。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、電圧検出の高精度化に寄与する電圧検出装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態に係るシステムの概略全体構成図である。
【
図2】
図2は、本開示の実施形態に係り、電圧検出装置に対して入力される高電圧と電圧検出装置からの出力電圧との関係を示す図である。
【
図3】
図3は、本開示の実施形態に係り、電圧検出装置に対して入力される高電圧と、電圧検出装置にて生成される電圧(2つの電圧)との関係を示す図である。
【
図4】
図4は、本開示の実施形態に係る電圧検出装置の回路図である。
【
図5】
図5は、本開示の実施形態に係り、電圧検出装置で生成される調整電圧の調整範囲を示す図である。
【
図6】
図6は、本開示の実施形態に係り、電圧検出装置で生成される調整電圧の調整範囲を示す図である。
【
図7】
図7は、本開示の実施形態に係り、理想状態と誤差を含む状態との差異を説明するための図である。
【
図8】
図8は、本開示の実施形態に係り、電圧検出装置に関わる動作フローチャートである。
【
図9】
図9は、本開示の実施形態に係り、電圧検出装置に対して入力される高電圧と、電圧検出装置にて生成される電圧(2つの電圧)との関係を示す図である。
【
図10】
図10は、本開示の実施形態に係り、調整工程のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態の例を、図面を参照して具体的に説明する。参照される各図において、同一の部分には同一の符号を付し、同一の部分に関する重複する説明を原則として省略する。尚、本明細書では、記述の簡略化上、情報、信号、物理量、機能部、回路、素子又は部品等を参照する記号又は符号を記すことによって、該記号又は符号に対応する情報、信号、物理量、機能部、回路、素子又は部品等の名称を省略又は略記することがある。例えば、後述の“140P”によって参照される可変オフセット付与回路は(
図4参照)、可変オフセット付与回路140Pと表記されることもあるし、回路140Pと略記されることもあり得るが、それらは全て同じものを指す。
【0010】
本開示の実施形態においてグランドとは、基準となる0V(ゼロボルト)の電位を有する基準導電部を指す又は0Vの電位そのものを指す。基準導電部は金属等の導体を用いて形成されて良い。0Vの電位をグランド電位と称することもある。本開示の実施形態において、特に基準を設けずに示される電圧はグランドから見た電位を表す。任意の回路素子、端子及びノードなど、回路を形成する複数の部位間についての接続とは、特に記述なき限り、電気的な接続を指すと解して良い。
【0011】
図1に本開示の実施形態に係るシステム1の概略全体構成を示す。システム1は、電圧検出装置10、電圧源20及び機能装置30を備える。
【0012】
電圧検出装置10は、半導体基板上に形成された半導体集積回路を有する半導体チップと、半導体チップを収容する筐体(パッケージ)と、筐体から電圧検出装置10の外部に対して露出する複数の外部端子と、を備えた電子部品である。半導体チップを樹脂にて構成された筐体(パッケージ)内に封入することで電圧検出装置10が形成される。
図1には、電圧検出装置10に設けられる複数の外部端子の一部として、端子T
HVP、T
HVN、T
VCC、T
VOUT、T
VC、T
PMN、T
NMN及びT
GNDが示される。これら以外の外部端子も電圧検出装置10に設けられる。尚、
図1に示される端子T
HVP、T
HVN、T
VCC、T
VOUT、T
VC、T
PMN、T
NMN及びT
GNDの配置位置及び配置順序は例に過ぎず、それらは任意に設計可能である。端子T
HVPは第1入力端子に相当し、端子T
HVNは第2入力端子に相当する。
【0013】
電圧源20は負側出力端子及び正側出力端子を有し、負側出力端子の電位を基準に電圧HVを正側出力端子から出力する。即ち、電圧源20において、正側出力端子の電位は負側出力端子の電位よりも電圧HVだけ高い。電圧源20は、例えば高電圧を出力可能なバッテリである。電圧源20が正常に動作しているとき、電圧HVは比較的高い電圧値を有し、1000Vを超えることもある。このため、以下では、電圧HVを適宜、高電圧HVと称する。電圧源20の負側出力端子は端子THVNに接続され、電圧源20の正側出力端子は端子THVPに接続される。このため、端子THVN及びTHVP間に高電圧HVが加わり、この際、端子THVNの電位から見て端子THVPの電位が電圧HVだけ高い。
【0014】
端子TVCCに対して電源電圧VCCが印加される。電源電圧VCCは所定の正の直流電圧値(例えば5V)を有する。端子TGNDはグランドに接続される。電圧検出装置10は、グランド電位を基準に電源電圧VCCに基づいて駆動する。機能装置30もグランドに接続され且つ電源電圧VCCの供給を受け、グランド電位を基準に電源電圧VCCに基づいて駆動する。
【0015】
機能装置30は電源電圧VCCに基づいて駆動するマイクロコンピュータ等を有する。電圧検出装置10は、高電圧HVの値を機能装置30にて読み取ることができるように、高電圧HVの検出結果を低電圧にて出力する機能を備える。
【0016】
図2を参照し、ここでは高電圧HVが0Vから所定電圧HV
MAXまでの範囲内で変動し得るものとし、電圧検出装置10は高電圧HVの検出結果を0V以上且つ所定電圧VOUT
MAX以下の電圧VOUTにて出力するものとする。所定電圧HV
MAXは電源電圧VCC及び所定電圧VOUT
MAXよりも遥かに高い。以下、電圧VOUTは出力電圧VOUTとも称され得る。電源電圧VCCは所定電圧VOUT
MAXと一致する又は所定電圧VOUT
MAXよりも高い。誤差が存在しない理想状態において高電圧HVが0V以上且つ所定電圧HV
MAX以下であれば、電圧検出装置10は下記式(1)を満たす電圧VOUTを生成及び出力する。ここでは具体例として、所定電圧VOUT
MAXが5Vであって且つ所定電圧HV
MAXが1300Vであるとする。kは電圧HV及びVOUT間の比例係数を表し、故にここでは“k=VOUT
MAX/HV
MAX=5/1300”である。高電圧HVが所定電圧HV
MAX以上であるとき、電圧VOUTは所定電圧VOUT
MAXで固定される。尚、仮に高電圧HVが負であったならば電圧VOUTは0Vで固定される。
VOUT=k×HV
=(VOUT
MAX/HV
MAX)×HV
=(5/1300)×HV ・・・(1)
【0017】
電圧検出装置10は端子TVOUTから電圧VOUTを出力する。電圧VOUTはアナログ電圧であり、後述の電圧PMN、NMN及びVcもアナログ電圧である。機能装置30は端子TVOUTに接続され、電圧VOUTは機能装置30に供給される。端子TVOUTと機能装置30との間に、電圧VOUTの高域周波数成分を低減するためのローパスフィルタを挿入し、高域周波数成分が低減された後の電圧VOUTを機能装置30に供給して良い。
【0018】
端子TVCには基準電圧VCが加わる。電圧検出装置10は、電圧VOUTが取り得る最大電圧と電圧VOUTが取り得る最小電圧との平均電圧を基準電圧Vcに設定する。ここでは、電圧VOUTの最大電圧及び最小電圧が夫々5V及び0Vであることを想定しているため、基準電圧Vcは2.5Vである。機能装置30は端子TVCに接続され、基準電圧Vcは機能装置30に供給される。端子TVCとグランドとの間に基準電圧Vcを安定化させるためのコンデンサが設けられていて良い。
【0019】
電圧検出装置10は端子T
PMNから電圧PMNを出力し、端子T
NMNから電圧NMNを出力する。
図3に、高電圧HVと電圧PMN及びNMNとの関係を示す。誤差が存在しない理想状態において高電圧HVが0V以上且つ所定電圧HV
MAX以下であれば、電圧検出装置10は下記式(2)及び(3)を満たす電圧PMN及びNMNを生成及び出力する。式(2)及び(3)において、高電圧HVに乗じられる係数(Vc/HV
MAX)は上記比例係数kの1/2に等しい。
PMN=(Vc/HV
MAX)×HV+Vc
=(2.5/1300)×HV+2.5 ・・・(2)
NMN=-(Vc/HV
MAX)×HV+Vc
=-(2.5/1300)×HV+2.5 ・・・(3)
【0020】
機能装置30は端子TPMNに接続され、電圧PMNは機能装置30に供給される。端子TPMNと機能装置30との間に、電圧PMNの高域周波数成分を低減するためのローパスフィルタを挿入し、高域周波数成分が低減された後の電圧PMNを機能装置30に供給して良い。機能装置30は端子TNMNに接続され、電圧NMNは機能装置30に供給される。端子TNMNと機能装置30との間に、電圧NMNの高域周波数成分を低減するためのローパスフィルタを挿入し、高域周波数成分が低減された後の電圧NMNを機能装置30に供給して良い。
【0021】
電圧検出装置10は高電圧HVを低電圧に変換する役割を持ち、変換後の電圧を、電圧VOUT、PMN又はNMNとして出力する。電圧検出装置10の出力電圧(VOUT、PMN又はNMN)は高電圧HVの検出結果を表す。この際、高電圧HVの検出に高い精度が要求される。但し、高電圧HVを低電圧に変換するための回路において、各素子の電気的特性は製造ばらつきの影響を受け、製造ばらつきは検出精度の劣化要因となる。電圧検出装置10は、このような製造ばらつきの影響を良好に低減する構成を持つ。
【0022】
図4に電圧検出装置10の内部構成を示す。尚、以下では、特に記述なき限り、高電圧HVは1300V以下の正の電圧値(例えば、300V、600V又は1200V)を有するものとする。
【0023】
電圧検出装置10は、入力抵抗RP、RPS、RNS及びRNと、バッファアンプ110P及び110Nと、分圧回路120P及び120Nと、増幅回路130P及び130Nと、可変オフセット付与回路140P及び140Nと、差動増幅回路(出力電圧生成回路)150と、を備える。
【0024】
入力抵抗RP、RPS、RNS及びRNは端子THVP及びTHVN間に直列接続された高耐圧の抵抗群である。入力抵抗RPの第1端は端子THVPに接続され、入力抵抗RPの第2端及び入力抵抗RPSの第1端は中間ノードNDm1に接続される。入力抵抗RPSの第2端は基準ノードNDcに接続される。入力抵抗RNの第1端は端子THVNに接続され、入力抵抗RNの第2端及び入力抵抗RNSの第1端は中間ノードNDm2に接続される。入力抵抗RNSの第2端は基準ノードNDcに接続される。端子THVPにおける電圧を電圧HVPと称し、端子THVNにおける電圧を電圧HVNと称する。電圧HVPはグランド電位から見た端子THVPの電位であり、電圧HVNはグランド電位から見た端子THVNの電位である。
【0025】
中間ノードNDm1における電圧を電圧INPと称し、中間ノードNDm2における電圧を電圧INNと称する。電圧検出装置10内において電源電圧VCCを元に生成された基準電圧Vcが基準ノードNcに供給される。数100V又は1000Vを超える高電圧HVを数V程度の電圧に圧縮するべく、抵抗RPは抵抗PSよりも遥かに大きな抵抗値を有し且つ抵抗RNは抵抗NSよりも遥かに大きな抵抗値を有する。
【0026】
電圧検出装置10に第1半導体チップ及び第2半導体チップを含む複数の半導体チップが設けられる。電圧検出装置10の筐体内において、第1半導体チップ及び第2半導体チップは互いに分離して配置される。第1半導体チップ及び第2半導体チップ間における必要な電気的接続は周知のワイヤボンディングを用いて実現される。第1半導体チップは、Cr(クロム)とSi(ケイ素)を主材料とする半導体チップであり、第1半導体チップにて入力抵抗RP、RPS、RNS及びRNが形成される。バッファアンプ110P及び110N、分圧回路120P及び120N、増幅回路130P及び130N、可変オフセット付与回路140P及び140N並びに差動増幅回路150は、第2半導体チップ内に形成される。第2半導体チップ内の各回路はグランド電位を基準に電源電圧VCCに基づいて動作し、異常時を除き、第2半導体チップ内の各回路には電源電圧VCCを超える電圧又は負の電圧は加わらない。
【0027】
バッファアンプ110P、分圧回路120P、増幅回路130P及び可変オフセット付与回路140Pは、電圧PMNを生成するためのP側検出回路群を形成する。
【0028】
バッファアンプ110Pは中間ノードNDm1に接続されて電圧INPを受ける。バッファアンプ110Pは電圧INPに対してインピーダンス変換を行うことで電圧INP0を生成及び出力する。バッファアンプ110Pは電圧INPを高インピーダンスで受け、電圧INPと略同じ電圧値を有する電圧INP0を低インピーダンスで出力する。詳細には、バッファアンプ110PはオペアンプAMP1から成り、オペアンプAMP1をボルテージフォロアとして機能させることで、電圧INPから電圧INP0を生成する。オペアンプAMP1は、中間ノードNDm1に接続されて電圧INPを受ける非反転入力端子と、互いに短絡された反転入力端子及び出力端子を有する。オペアンプAMP1の出力端子から電圧INP0が十分に低いインピーダンスで出力される。オペアンプAMP1における入力オフセット電圧を記号“Δoff1”にて表す。本実施形態において、任意のオペアンプの入力オフセット電圧は、反転入力端子の電位から見て非反転入力端子に加わるオフセット電圧を指すものとする。
【0029】
分圧回路120PはオペアンプAMP1の出力端子と基準電圧Vcが加わるノードとに接続され、電圧INP0と基準電圧Vcとの差電圧を分圧することで電圧INPaを生成及び出力する。具体的には、分圧回路120Pは抵抗R1及びR2を備える。抵抗R1の第1端に電圧INP0が加わる。抵抗R1の第2端及び抵抗R2の第1端はノードNDa1に接続される。抵抗R2の第2端に基準電圧Vcが加わる。ノードNDa1に電圧INPaが生じる。
【0030】
抵抗R1及びR2は夫々に変更可能な抵抗値を有する可変抵抗である。抵抗R1の抵抗値及び抵抗R2の抵抗値の少なくとも一方を変更することで、電圧INP0から電圧INPaを得る際の分圧比(分圧回路120Pでの分圧比)が変更される。即ち、分圧回路120は可変抵抗(R1、R2)を用いて電圧INP0及びVc間の差電圧の分圧を行うことにより、電圧INP0から電圧INPaを得る際の分圧比を可変設定する。
【0031】
増幅回路130Pは分圧回路120Pからの電圧INPaを受ける。増幅回路130Pに対して基準電圧Vcも供給される。増幅回路130Pは電圧INPaと基準電圧Vcとの差を増幅することで電圧PMNを生成する。
【0032】
具体的には、増幅回路130Pは、オペアンプAMP3、抵抗R6及びR7を備えた非反転増幅回路である。ノードNDa1がアンプ用入力抵抗を介してオペアンプAMP3の非反転入力端子に接続されることで、オペアンプAMP3の非反転入力端子に電圧INPaが加わる(ここにおけるアンプ用入力抵抗は省略可能である)。抵抗R6の第1端と抵抗R7の第1端とオペアンプAMP3の反転入力端子とはノードNDb1にて共通接続される。ノードNDb1における電圧を記号“INPb”にて参照する。抵抗R6の第2端には基準電圧Vcが加わる。抵抗R7の第2端はオペアンプAMP3の出力端子に接続される。オペアンプAMP3の出力端子に電圧PMNが生じる。オペアンプAMP3の出力端子からの電圧PMNが端子TPMNを通じて機能装置30に出力される。オペアンプAMP3における入力オフセット電圧を記号“Δoff3”にて表す。
【0033】
電圧PMNは基準電圧Vcの電位を基準とする電圧である。故に、オフセット等がゼロであると仮定したならば、“INPa=Vc”であるとき“PMN=Vc”となる。
【0034】
可変オフセット付与回路140Pは電圧PMNに対して意図的にオフセット電圧を付与する。ここで付与されるオフセット電圧は調整可能(換言すれば変更可能)となっている。故に、可変オフセット付与回路140Pが電圧PMNに対して意図的に付与するオフセット電圧は、以下、可変オフセット電圧と称され得る。
【0035】
可変オフセット付与回路140Pは抵抗R10と調整電圧出力回路141Pを備える。抵抗R10の第1端はノードNDb1(従ってオペアンプAMP3の反転入力端子)に接続される。調整電圧出力回路141Pは抵抗R10の第2端に対して調整電圧Vt1を供給する。調整電圧出力回路141Pは基準電圧Vcが加わるノードに接続され、基準電圧Vcを内包する第1調整範囲内の電圧を調整電圧Vt1として抵抗R10の第2端に出力する。調整電圧出力回路141Pは第1調整範囲内において調整電圧Vt1を調整可能(換言すれば変更可能)に構成される。
【0036】
図5を参照し、第1調整範囲は電圧(Vc-ΔV
D1)から電圧(Vc+ΔV
U1)までの電圧範囲である。ΔV
D1及びΔV
U1は正の所定電圧を表す。電圧ΔV
D1及びΔV
U1の大きさは互いに一致していても良いし、互いに相違していても良い。ここでは、電圧ΔV
D1及びΔV
U1が共に0.5Vであるとする。そうすると、調整電圧Vt1は、基準電圧Vcより0.5Vだけ低い電圧以上、且つ、基準電圧Vcより0.5Vだけ高い電圧以下の範囲(第1調整範囲)にて可変となる。調整電圧Vt1の値に依存して、ノードNDb1と回路141Pとの間に電流が流れることで、電圧PMNに対して回路140Pによる可変オフセット電圧が付与される。即ち、電圧PMNが調整電圧Vt1に応じて増減するよう可変オフセット付与回路140Pが増幅回路130Pに接続され、調整電圧Vt1が可変設定されることで電圧PMNに付与される可変オフセット電圧(回路140Pによる可変オフセット電圧)が変動する。
【0037】
バッファアンプ110N、分圧回路120N、増幅回路130N及び可変オフセット付与回路140Nは、電圧NMNを生成するためのN側検出回路群を形成する。
【0038】
バッファアンプ110Nは中間ノードNDm2に接続されて電圧INNを受ける。バッファアンプ110Nは電圧INNに対してインピーダンス変換を行うことで電圧INN0を生成及び出力する。バッファアンプ110Nは電圧INNを高インピーダンスで受け、電圧INNと略同じ電圧値を有する電圧INN0を低インピーダンスで出力する。詳細には、バッファアンプ110NはオペアンプAMP2から成り、オペアンプAMP2をボルテージフォロアとして機能させることで、電圧INNから電圧INN0を生成する。オペアンプAMP2は、中間ノードNDm2に接続されて電圧INNを受ける非反転入力端子と、互いに短絡された反転入力端子及び出力端子を有する。オペアンプAMP2の出力端子から電圧INN0が十分に低いインピーダンスで出力される。オペアンプAMP2における入力オフセット電圧を記号“Δoff2”にて表す。
【0039】
分圧回路120NはオペアンプAMP2の出力端子と基準電圧Vcが加わるノードとに接続され、電圧INN0と基準電圧Vcとの差電圧を分圧することで電圧INNaを生成及び出力する。具体的には、分圧回路120Nは抵抗R3及びR4を備える。抵抗R3の第1端に電圧INN0が加わる。抵抗R3の第2端及び抵抗R4の第1端はノードNDa2に接続される。抵抗R4の第2端に基準電圧Vcが加わる。ノードNDa2に電圧INNaが生じる。
【0040】
抵抗R3及びR4は夫々に変更可能な抵抗値を有する可変抵抗である。抵抗R3の抵抗値及び抵抗R4の抵抗値の少なくとも一方を変更することで、電圧INN0から電圧INNaを得る際の分圧比(分圧回路120Nでの分圧比)が変更される。即ち、分圧回路120は可変抵抗(R3、R4)を用いて電圧INN0及びVc間の差電圧の分圧を行うことにより、電圧INN0から電圧INNaを得る際の分圧比を可変設定する。
【0041】
増幅回路130Nは分圧回路120Nからの電圧INNaを受ける。増幅回路130Nに対して基準電圧Vcも供給される。増幅回路130Nは電圧INNaと基準電圧Vcとの差を増幅することで電圧NMNを生成する。
【0042】
具体的には、増幅回路130Nは、オペアンプAMP4、抵抗R8及びR9を備えた非反転増幅回路である。ノードNDa2がアンプ用入力抵抗を介してオペアンプAMP4の非反転入力端子に接続されることで、オペアンプAMP4の非反転入力端子に電圧INNaが加わる(ここにおけるアンプ用入力抵抗は省略可能である)。抵抗R8の第1端と抵抗R9の第1端とオペアンプAMP4の反転入力端子とはノードNDb2にて共通接続される。ノードNDb2における電圧を記号“INNb”にて参照する。抵抗R8の第2端には基準電圧Vcが加わる。抵抗R9の第2端はオペアンプAMP4の出力端子に接続される。オペアンプAMP4の出力端子に電圧NMNが生じる。オペアンプAMP4の出力端子からの電圧NMNが端子TNMNを通じて機能装置30に出力される。オペアンプAMP4における入力オフセット電圧を記号“Δoff4”にて表す。
【0043】
電圧NMNは基準電圧Vcの電位を基準とする電圧である。故に、オフセット等がゼロであると仮定したならば、“INNa=Vc”であるとき“NMN=Vc”となる。
【0044】
可変オフセット付与回路140Nは電圧NMNに対して意図的にオフセット電圧を付与する。ここで付与されるオフセット電圧は調整可能(換言すれば変更可能)となっている。故に、可変オフセット付与回路140Nが電圧NMNに対して意図的に付与するオフセット電圧は、以下、可変オフセット電圧と称され得る。
【0045】
可変オフセット付与回路140Nは抵抗R11と調整電圧出力回路141Nを備える。抵抗R11の第1端はノードNDb2(従ってオペアンプAMP4の反転入力端子)に接続される。調整電圧出力回路141Nは抵抗R11の第2端に対して調整電圧Vt2を供給する。調整電圧出力回路141Nは基準電圧Vcが加わるノードに接続され、基準電圧Vcを内包する第2調整範囲内の電圧を調整電圧Vt2として抵抗R11の第2端に出力する。調整電圧出力回路141Nは第2調整範囲内において調整電圧Vt2を調整可能(換言すれば変更可能)に構成される。
【0046】
図6を参照し、第2調整範囲は電圧(Vc-ΔV
D2)から電圧(Vc+ΔV
U2)までの電圧範囲である。ΔV
D2及びΔV
U2は正の所定電圧を表す。電圧ΔV
D2及びΔV
U2の大きさは互いに一致していても良いし、互いに相違していても良い。また、電圧ΔV
D1、ΔV
U1、ΔV
D2及びΔV
U2の一致又は不一致は問わない。ここでは、電圧ΔV
D2及びΔV
U2は、電圧ΔV
D1及びΔV
U1と同じく、0.5Vであるとする。そうすると、調整電圧Vt2は、基準電圧Vcより0.5Vだけ低い電圧以上、且つ、基準電圧Vcより0.5Vだけ高い電圧以下の範囲(第2調整範囲)にて可変となる。調整電圧Vt2の値に依存して、ノードNDb2と回路141Nとの間に電流が流れることで、電圧NMNに対して回路140Nによる可変オフセット電圧が付与される。即ち、電圧NMNが調整電圧Vt2に応じて増減するよう可変オフセット付与回路140Nが増幅回路130Nに接続され、調整電圧Vt2が可変設定されることで電圧NMNに付与される可変オフセット電圧(回路140Nによる可変オフセット電圧)が変動する。
【0047】
差動増幅回路150は、増幅回路130P及び130Nに接続され、増幅回路130Pから出力される電圧PMN及び増幅回路130Nから出力される電圧NMNを受ける。差動増幅回路150は電圧PMN及びNMN間の差に応じた電圧VOUTを生成及び出力する出力電圧生成回路として機能する。差動増幅回路150の出力電圧VOUTは端子TVOUTを通じて機能装置30に出力される。
【0048】
具体的には差動増幅回路150は、オペアンプAMP5及び抵抗R12~R15を備える。抵抗R12の第1端はオペアンプAMP3の出力端子に接続されて電圧PMNを受ける。抵抗R12の第2端及び抵抗R13の第1端はオペアンプAMP5の非反転入力端子に接続される。抵抗R13の第2端はグランドに接続される。抵抗R14の第1端はオペアンプAMP4の出力端子に接続されて電圧NMNを受ける。抵抗R14の第2端及び抵抗R15の第1端はオペアンプAMP5の反転入力端子に接続される。抵抗R15の第2端はオペアンプAMP5の出力端子に接続される。オペアンプAMP5の出力端子は端子TVOUTに接続され、オペアンプAMP5の出力端子から電圧VOUTが出力される。オペアンプAMP5における入力オフセット電圧を記号“Δoff5”にて表す。
【0049】
図7において、実線610は誤差を含なまい理想状態における高電圧HVと出力電圧VOUTとの関係を示す。理想状態では上記式(1)~(3)が満たされる。破線620は誤差を含む状態における高電圧HVと出力電圧VOUTとの関係を示す。破線620に対応する状態と実線610に対応する理想状態との乖離は、第1及び第2誤差要因によるものである。各誤差要因について説明する。
【0050】
抵抗RP及びRPS間の抵抗値比に対して第1設計比が定められており、抵抗RP及びRPS間の抵抗値比が第1設計比と一致することを目指して電圧検出装置10が製造される。しかしながら、製造ばらつきにより、抵抗RP及びRPS間の実際の抵抗値比は第1設計比から見て増大又は減少向きに、最大で例えば2%程度変動する。抵抗RP及びRPS間の実際の抵抗値比と第1設計値とのずれは第1誤差要因に該当する。同様に、抵抗RN及びRNS間の抵抗値比に対して第2設計比が定められており、抵抗RN及びRNS間の抵抗値比が第2設計比と一致することを目指して電圧検出装置10が製造される。しかしながら、製造ばらつきにより、抵抗RN及びRNS間の実際の抵抗値比は第2設計比から見て増大又は減少向きに、最大で例えば2%程度変動する。抵抗RN及びRNS間の実際の抵抗値比と第2設計値とのずれは第1誤差要因に該当する。第1誤差要因により、高電圧HVの変化に対する電圧VOUTの変化の傾きが理想状態(実線610)からずれる。
【0051】
またオペアンプAMP1及びAMP3の入力オフセット電圧Δoff1及びΔoff3の成分が電圧PMNに重畳する。同様に、オペアンプAMP2及びAMP4の入力オフセット電圧Δoff2及びΔoff4の成分が電圧NMNに重畳する。これらの成分(Δoff1~Δoff4)が第2誤差要因となる。第2誤差要因により、電圧VOUTがオフセット方向に理想状態(実線610)からずれる。
【0052】
第1及び第2誤差要因の影響が出力電圧VOUTにおいて抑制されるよう、即ち上記式(1)~(3)が完全に又は極力満たされるよう、抵抗R1~R4の値が調整及び決定され且つ調整電圧Vt1及びVt2の値が調整及び決定される。以下、数式を用いて、これらの調整の意義を説明する。尚、以下の各式において、RP、RPS、RNS及びRNは夫々入力抵抗RP、RPS、RNS及びRNの抵抗値を表し、R1~R15は夫々抵抗R1~R15の抵抗値を表す(但し、それらの抵抗値の記号が全て式中に現れるとは限らない)。また、オペアンプAMP1~AMP5の開ループゲインを、夫々、記号“A1”、“A2”、“A3”、“A4”、“A5”にて表す。
【0053】
まず電圧INPに関して下記式(1a)が成立する。ここで、“RP>>RPS”であることから、“RP/(RP+RPS)”を1とみなす近似を用いた。
【0054】
【0055】
次にバッファアンプ110Pの入出力電圧に関して下記式(2a)が成立する。式(2a)を変形することで式(2b)が得られる。但し、式(2a)から式(2b)へ変形する際、開ループゲインA1が1より遥かに大きいが故に、“A1/(1+A1)”を1とみなす近似を用いた。
【0056】
【0057】
次に分圧回路120Pの入出力電圧に関して下記式(3a)が成立する。抵抗R1及びR2の各抵抗値は後述の調整工程にて調整されることになるが、抵抗R1及びR2が互いに同じ抵抗値を持つときに上記式(1)~式(3)が成立することを目指して、電圧検出装置10の各回路定数が設計されている。このため、式(3a)は式(3b)に近似される。
【0058】
【0059】
次に増幅回路130Pの入出力電圧に関して下記式(4a)が成立する。また、増幅回路130P及び可変オフセット付与回路140Pの部分の各素子の接続関係より、下記式(4b)が成立する。ここで、(R10//R6)は抵抗R10及びR6の並列接続回路の合成抵抗値を表し、(R10//R7)は抵抗R10及びR7の並列接続回路の合成抵抗値を表し、(R6//R7)は抵抗R6及びR7の並列接続回路の合成抵抗値を表す。式(4a)及び(4b)から下記式(4c)が得られる。ここで、抵抗R10は抵抗R6及びR7と比べて遥かに大きな抵抗値を有する。例えば、抵抗R10は10MΩ程度の抵抗値を有するのに対し、抵抗R6及びR7は数kΩ程度の抵抗値を有する。このため、“(R10//R6)≒R6”及び“(R10//R7)≒R7”の近似が成り立つ。更に抵抗R6及びR7は互いに同じ抵抗値を有するよう形成される。このため、式(4c)の右辺第1項において電圧PWMにかかる係数は1/2に近似され且つ式(4c)の右辺第2項において電圧Vcにかかる係数は1/2に近似される。また、合成抵抗値(R6//R7)は抵抗値(R6/2)に等しいとみなすことができ且つ“R6<<R10”より、式(4c)の右辺第3項において電圧Vt1にかかる係数は“(1/2)・(R6/R10)”に近似される。従って式(4c)に基づく近似式(4d)が成り立つ。
【0060】
【0061】
一方、式(3b)を式(2b)及び(1a)を用いて変形すると式(4e)が得られる。式(4d)における電圧INPaに対し式(4e)の右辺を代入した式を変形することで、式(4f)が得られる。
【0062】
【0063】
差動増幅回路150において、抵抗R12及びR13は互いに同じ抵抗値を有し且つ抵抗R14及びR15は互いに同じ抵抗値を有する。また開ループゲインA5は十分に大きいため、差動増幅回路150の入出力電圧に関して下記の近似式(5a)が成立する。差動増幅回路150においては、十分に小さな入力オフセット電圧Δoff5を持つ高精度のオペアンプAMP5が用いられる。このため、実質的に“VOUT=PMN-NMN”とみなせる。
【0064】
【0065】
一方、上記式(1a)及び(2b)により下記式(6a)が得られる。式(6a)を用いて上記式(3a)を変形すると式(6b)が得られる。
【0066】
【0067】
上記式(4f)における電圧PMNには、(Δoff1+2・Δoff3)分のオフセット電圧が含まれる。オフセット電圧(Δoff1+2・Δoff3)は電圧PMNにとっての誤差要因である。但し、式(4f)の右辺第5項“(R6/R10)・Vt1”の値とオフセット電圧(Δoff1+2・Δoff3)の値とが一致するよう調整電圧Vt1の値を設定することで、電圧PMNからオフセット電圧(Δoff1+2・Δoff3)を除外することができる。
【0068】
式(4f)を導出する過程で“R1≒R2”の近似を用いたため、式(4f)では抵抗R1及びR2に関する項が存在していないが、実際には、電圧PMNは抵抗R1及びR2の各値に依存する。式(6b)に示す如く、電圧INPaが抵抗R1及びR2の各値に依存するため、電圧PMNも抵抗R1及びR2の各値に依存する。式(6b)の右辺第2項において電圧HVPにかかる係数を抵抗R1及びR2の各値の変更を通じて調整することで、高電圧HVの変化に対する電圧PMNの変化の傾きを理想状態に近づけることができる。但し、式(6b)の右辺にはオフセット電圧の項“(R2/(R1+R2))Δoff1”が含まれているため、傾きに関する調整を行ってからオフセット電圧に関する調整を行う。
【0069】
入力抵抗RP及びRPSとP側検出回路群(110P、120P、130P、140P)に注目して各種の数式を記述したが、入力抵抗RN及びRNSとN側検出回路群(110N、120N、130N、140N)に関しても同様の数式が成立する。N側検出回路群について考える場合にあっては、
P側検出回路群の説明文又は数式におけるRP、RPSを夫々RN、RNSに読み替え、
P側検出回路群の説明文又は数式におけるHVP、INP、INP0、INPa、INPb、PMN、Vt1を、夫々HVN、INN、INN0、INNa、INNb、NMN、Vt2に読み替え、
P側検出回路群の説明文又は数式におけるΔoff1、Δoff3、A1、A3を、夫々、Δoff2、Δoff4、A2、A4に読み替え、
P側検出回路群の説明文又は数式におけるR1、R2、R6、R7、R10を、夫々、R3、R4、R8、R9、R11に読み替え、且つ、
P側検出回路群の説明文における110P~140P、AMP1、AMP3を、夫々、110N~140N、AMP2、AMP4に読み替えれば良い。
【0070】
図8に示す如く、電圧検出装置10の動作は、ステップS1における調整工程の動作と、ステップS2における実稼働工程の動作と、に分類される。調整工程は電圧検出装置10の出荷検査の中で実施される。調整工程を経た後に実稼働工程が実施される。調整工程の実施前の状態を初期状態と称する。初期状態では、抵抗R1~R4の夫々に対して所定の初期抵抗値が設定され、且つ、調整電圧Vt1及びVt2の夫々に対して所定の初期電圧値が設定される。
図7の破線620に対応する状態が初期状態に相当する。但し、初期状態が、偶然、理想状態と一致することもあり得る。調整工程後における電圧検出装置10の状態(即ち実稼働工程における電圧検出装置10の状態)が実線610に対応する理想状態と極力同じとなるように、調整工程にて抵抗R1~R4の各値並びに調整電圧Vt1及びVt2の各値が調整される。
【0071】
電圧PMN及びNMNを下記式(7a)及び(7b)にて表すことができる。
図9に、式(7a)にて表される電圧PMN及びHV間の関係と、式(7b)にて表される電圧NMN及びHV間の関係を示す。電圧PMNは高電圧HVを変数とする第1の一次関数で表され、a
P及びb
Pは第1の一次関数における傾き及び切片である。同様に、電圧NMNは高電圧HVを変数とする第2の一次関数で表され、a
N及びb
Nは第2の一次関数における傾き及び切片である。
PMN=a
P×HV+b
P ・・・(7a)
NMN=a
N×HV+b
N ・・・(7b)
【0072】
図10にステップS1における調整工程の詳細フローチャートを示す。調整工程はステップS11~S14の処理から成る。ステップS11、S12、S13、S14の処理がこの順番で実行される。但し、ステップS13及びS14の処理の組を先に行った後に、ステップS11及びS12の処理の組を行うようにしても良い。或いはステップS11及びS12の処理の組とステップS13及び14の処理の組とは同時に行われても良い。何れにせよ、ステップS12の処理はステップS11の後に行われ、ステップS14の処理はステップS13の後に行われる。
【0073】
調整工程ではトリミング回路(不図示)が利用される。電圧検出装置10内にトリミング回路が設けられていて良い。トリミング回路は、電圧検出装置10外に設けられる回路であり得ても良い。
【0074】
理想状態における式(1)の成立には“aP=(Vc/HVMAX)”の成立が必要である。ステップS11では、電圧値が既知のテスト電圧を高電圧HVとして端子THVP及びTHVN間に印加した状態で、トリミング回路により電圧PMNの値を読み取る。テスト電圧として互いに電圧値が異なる複数のテスト電圧を用意し、テスト電圧ごとにトリミング回路により電圧PMNの値を読み取る。
【0075】
ステップS11においてトリミング回路は、読み取った電圧PMNの値に基づき“aP=(Vc/HVMAX)”を成立させる抵抗R1の値及び抵抗R2の値を夫々最適抵抗値R1OPT及びR2OPTとして探索及び特定する。ステップS11において最適抵抗値R1OPT及びR2OPTが特定されると、トリミング回路は抵抗R1の値に最適抵抗値R1OPTを設定し且つ抵抗R2の値に最適抵抗値R2OPTを設定する。それらの設定が成された状態で、ステップS12の処理が実行される。ステップS11において、抵抗R1及びR2の値に最適抵抗値R1OPT及びR2OPTが設定される前には抵抗R1及びR2の値として初期抵抗値又は他の抵抗値が設定される。
【0076】
理想状態における式(1)の成立には“bP=Vc”の成立が必要である。ステップS12では、電圧値が既知のテスト電圧を高電圧HVとして端子THVP及びTHVN間に印加した状態で、トリミング回路により電圧PMNの値を読み取る。ステップS12においてトリミング回路は、読み取った電圧PMNの値に基づき“bP=Vc”を成立させる調整電圧Vt1の値を最適電圧値Vt1OPTとして探索及び特定する。ステップS12において最適電圧値Vt1OPTが特定されると、トリミング回路は調整電圧Vt1の値に最適電圧値Vt1OPTを設定する。ステップS12において、調整電圧Vt1の値に最適電圧値Vt1OPTが設定される前には調整電圧Vt1の値として初期電圧値又は他の電圧値が設定される。
【0077】
上記式(4f)に示されるよう電圧PMNは、オフセット電圧(Δoff1+2・Δoff3)と電圧((R6/R10)・Vt1)とに依存する。電圧((R6/R10)・Vt1)は回路140Pにより電圧PMNに対して付与される可変オフセット電圧である。調整電圧Vt1が最適電圧値Vt1OPTを有するとき、オフセット電圧(Δoff1+2・Δoff3)と可変オフセット電圧((R6/R10)・Vt1)とが完全に又は概ね一致する。つまり、電圧PMNにおけるオフセット電圧(Δoff1+2・Δoff3)が可変オフセット電圧((R6/R10)・Vt1)を電圧PMNに付与することで打ち消される。換言すれば、オフセット電圧(Δoff1+2・Δoff3)が可変オフセット電圧((R6/R10)・Vt1)の付加により、電圧PMNにおいて打ち消される。但し、ここにおける打消しは部分的な打ち消しであり得る。
【0078】
理想状態における式(1)の成立には“aN=-(Vc/HVMAX)”の成立が必要である。ステップS13では、電圧値が既知のテスト電圧を高電圧HVとして端子THVP及びTHVN間に印加した状態で、トリミング回路により電圧NMNの値を読み取る。テスト電圧として互いに電圧値が異なる複数のテスト電圧を用意し、テスト電圧ごとにトリミング回路により電圧NMNの値を読み取る。
【0079】
ステップS13においてトリミング回路は、読み取った電圧NMNの値に基づき“aN=-(Vc/HVMAX)”を成立させる抵抗R3の値及び抵抗R4の値を夫々最適抵抗値R3OPT及びR4OPTとして探索及び特定する。ステップS13において最適抵抗値R3OPT及びR4OPTが特定されると、トリミング回路は抵抗R3の値に最適抵抗値R3OPTを設定し且つ抵抗R4の値に最適抵抗値R4OPTを設定する。それらの設定が成された状態で、次のステップS14の処理が実行される。ステップS13において、抵抗R3及びR4の値に最適抵抗値R3OPT及びR4OPTが設定される前には抵抗R3及びR4の値として初期抵抗値又は他の抵抗値が設定される。
【0080】
理想状態における式(1)の成立には“bN=Vc”の成立が必要である。ステップS14では、電圧値が既知のテスト電圧を高電圧HVとして端子THVP及びTHVN間に印加した状態で、トリミング回路により電圧NMNの値を読み取る。ステップS14においてトリミング回路は、読み取った電圧NMNの値に基づき“bN=Vc”を成立させる調整電圧Vt2の値を最適電圧値Vt2OPTとして探索及び特定する。ステップS14において最適電圧値Vt2OPTが特定されると、トリミング回路は調整電圧Vt2の値に最適電圧値Vt2OPTを設定する。ステップS14において、調整電圧Vt2の値に最適電圧値Vt2OPTが設定される前には調整電圧Vt2の値として初期電圧値又は他の電圧値が設定される。
【0081】
電圧PMNと同様に電圧NMNは、オフセット電圧(Δoff2+2・Δoff4)と電圧((R8/R11)・Vt2)とに依存する。電圧((R8/R11)・Vt2)は回路140Nにより電圧NMNに対して付与される可変オフセット電圧である。調整電圧Vt2が最適電圧値Vt2OPTを有するとき、オフセット電圧(Δoff2+2・Δoff4)と可変オフセット電圧((R8/R11)・Vt2)とが完全に又は概ね一致する。つまり、電圧NMNにおけるオフセット電圧(Δoff2+2・Δoff4)が可変オフセット電圧((R8/R11)・Vt2)を電圧NMNに付与することで打ち消される。換言すれば、オフセット電圧(Δoff2+2・Δoff4)が可変オフセット電圧((R8/R11)・Vt2)の付加により、電圧NMNにおいて打ち消される。但し、ここにおける打消しは部分的な打ち消しであり得る。
【0082】
調整工程を経た後の実稼働工程では、抵抗R1~R4は夫々最適抵抗値R1OPT~R4OPTを有し、且つ、調整電圧Vt1及びVt2は夫々最適電圧値Vt1OPT及びVt2OPTを有する。このため、理想状態にて或いは理想状態に極めて近い状態にて、高電圧HVの検出が可能となる。
【0083】
電圧検出装置10に不揮発性メモリから成るトリミングデータ保持部(不図示)を設けておき、トリミング回路は最適抵抗値R1OPT~R4OPT並びに最適電圧値Vt1OPT及びVt2OPTを表すトリミングデータを、調整工程の中でトリミングデータ保持部に不揮発的に記録して良い。トリミングデータは、抵抗R1~R4の値に対して最適抵抗値R1OPT~R4OPTを設定するために必要なデータ及び調整電圧Vt1及びVt2の値に対して最適電圧値Vt1OPT及びVt2OPTを設定するために必要なデータを含む。そして、実稼働工程において電圧検出装置10が起動するたびに、トリミング回路がトリミングデータ保持部からトリミングデータを読み出して、読み出したトリミングデータに基づき抵抗R1~R4の値に夫々最適抵抗値R1OPT~R4OPTを設定し且つ調整電圧Vt1及びVt2の値に夫々最適電圧値Vt1OPT及びVt2OPTを設定して良い。
【0084】
或いは、調整工程において最適抵抗値R1OPT~R4OPT並びに最適電圧値Vt1OPT及びVt2OPTが特定された後、トリミング回路は、抵抗R1~R4の値を夫々最適抵抗値R1OPT~R4OPTにて不可逆的に固定し且つ調整電圧Vt1及びVt2の値を夫々最適電圧値Vt1OPT及びVt2OPTにて不可逆的に固定しても良い。
【0085】
抵抗R1及びR2は、複数の要素抵抗の直接接続回路から成る第1ラダー抵抗体により構成されていて良い。この場合、第1ラダー抵抗体において電圧INPaを取り出すタップを可変に選択することで抵抗R1及びR2間の抵抗値比が可変設定されて良い。同様に、抵抗R3及びR4は、複数の要素抵抗の直接接続回路から成る第2ラダー抵抗体により構成されていて良い。この場合、第2ラダー抵抗体において電圧INNaを取り出すタップを可変に選択することで抵抗R3及びR4間の抵抗値比が可変設定されて良い。
【0086】
抵抗R1及びR2の双方を可変抵抗とする構成について上述したが、抵抗R1及びR2の内、何れか一方のみを可変抵抗とし、他方は不変の抵抗値を持つ固定抵抗としても良い。この場合でも、抵抗R1及びR2間の抵抗値比(即ち、電圧INP0から電圧INPaを得る際の分圧比)を調整できるからである。抵抗R1及びR2の内、抵抗R1のみが可変抵抗であれば、ステップS11にて抵抗R1の最適抵抗値R1OPTのみが探索及び特定されることになる。抵抗R2のみが可変抵抗である場合も同様である。
【0087】
同様に抵抗R3及びR4の内、何れか一方のみを可変抵抗とし、他方は不変の抵抗値を持つ固定抵抗としても良い。この場合でも、抵抗R3及びR4間の抵抗値比(即ち、電圧INN0から電圧INNaを得る際の分圧比)を調整できるからである。抵抗R3及びR4の内、抵抗R3のみが可変抵抗であれば、ステップS13にて抵抗R3の最適抵抗値R3OPTのみが探索及び特定されることになる。抵抗R4のみが可変抵抗である場合も同様である。
【0088】
上述の電圧検出装置10では、高電圧HVの検出結果をアナログ電圧VOUT、PMN及びNMNとして機能装置30に出力する。但し、電圧検出装置10は、高電圧HVの検出結果をデジタル信号として機能装置30に出力するようにしても良い。この場合、アナログ電圧VOUT、PMN及びNMNの夫々をデジタル信号に変換するAD変換器を電圧検出装置10に設け、アナログ電圧VOUTの電圧値を示すデジタル信号、アナログ電圧PMNの電圧値を示すデジタル信号、及び、アナログ電圧NMNの電圧値を示すデジタル信号を、電圧検出装置10から機能装置30に出力すれば良い。
【0089】
尚、抵抗R1及びR2ではなく入力抵抗RP及びRPSの値を調整する方法も検討される。しかしながら、入力抵抗RP及びRPSは高耐圧を実現する半導体チップで形成され、高耐圧の半導体チップにおいて入力抵抗RP及びRPSの値を様々に可変設定する制御系を設けることは、現実的には難しい。入力抵抗RN及びRNSについても同様である。
【0090】
本開示の実施形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。以上の実施形態は、あくまでも、本開示の実施形態の例であって、本開示ないし各構成要件の用語の意義は、以上の実施形態に記載されたものに制限されるものではない。上述の説明文中に示した具体的な数値は、単なる例示であって、当然の如く、それらを様々な数値に変更することができる。
【0091】
<<付記>>
上述の実施形態にて具体的構成例が示された本開示について付記を設ける。尚、以下の第1~第3の構成に係る電圧検出装置の記述では、電圧検出装置と上述の実施形態のP側検出回路群との対応関係を例としてカッコ書きで示す。しかしながら、第1~第3の構成に係る電圧検出装置は、上述の実施形態のN側検出回路群にも対応し得る。
【0092】
本開示の一側面に係る電圧検出装置(10)は、入力端子(THVP)と、前記入力端子及び中間ノード(NDm1)間に接続された第1入力抵抗(RP)と、前記中間ノードと基準電圧(Vc)が加わる基準ノード(NDc)との間に接続された第2入力抵抗(RPS)と、前記中間ノードにおける第1電圧(INP)のインピーダンス変換を行うことで第2電圧(INP0)を生成するよう構成されたバッファアンプ(110P)と、前記第2電圧と前記基準電圧との差電圧を分圧することで第3電圧(INPa)を生成するよう構成された分圧回路(120P)と、前記第3電圧及び前記基準電圧間の差を増幅することで第4電圧(PMN)を生成するよう構成された増幅回路(130P)と、を備え、前記分圧回路は、可変抵抗を用いて前記差電圧の分圧を行うことにより前記第2電圧から前記第3電圧を得る際の分圧比を可変設定し、前記第4電圧に可変オフセット電圧を付与するよう構成された可変オフセット付与回路(140P)を前記増幅回路に接続した構成(第1の構成)である。
【0093】
これにより、基準電圧から見た入力端子の電圧を検出して、検出結果を示す第4電圧を生成できる。この際、入力端子の電圧の一定変化に対する第4電圧の変化量(傾き)は、第1及び第2入力抵抗間における抵抗値の相対的なばらつきによって、理想からずれることがある。しかしながら、第1の構成によれば分圧比の可変設定により上記のずれを抑制できる。また第4電圧には、バッファアンプ及び増幅回路の各オフセットに由来するオフセット電圧が重畳し得る。しかしながら、第1の構成によれば可変オフセット電圧の付与により、バッファアンプ及び増幅回路の各オフセットに由来するオフセット電圧を相殺できる。つまり、第1の構成に係る電圧検出装置によれば高精度の電圧検出が可能であり、入力端子の電圧が高電圧であったとしても十分に高い精度を持たせることができる。
【0094】
上記第1の構成に係る電圧検出装置において、前記バッファアンプが有する入力オフセット電圧(Δoff1)及び前記増幅回路が有する入力オフセット電圧(Δoff3)が、前記可変オフセット電圧の付与により前記第4電圧にて打ち消される構成(第2の構成)であっても良い。
【0095】
上記第2の構成に係る電圧検出装置において、前記可変オフセット付与回路は、前記基準電圧を内包する調整範囲内の調整電圧(Vt1)を出力するよう構成された調整電圧出力回路(141P)を有し、前記第4電圧が前記調整電圧に応じて増減するよう前記可変オフセット付与回路が前記増幅回路に接続され、前記可変オフセット付与回路において前記調整電圧が可変設定されることで前記第4電圧に付与される前記可変オフセット電圧が変動する構成(第3の構成)であっても良い。
【0096】
上記第1の構成に係る電圧検出装置において、前記入力端子、前記中間ノードは、夫々、第1入力端子、第1中間ノードであり、前記バッファアンプ、前記分圧回路、前記増幅回路、前記可変オフセット付与回路は、夫々、第1バッファアンプ、第1分圧回路、第1増幅回路、第1可変オフセット付与回路であり、前記差電圧、前記可変抵抗、前記分圧比、前記可変オフセット電圧は、夫々、第1差電圧、第1可変抵抗、第1分圧比、第1可変オフセット電圧であり、当該電圧検出回路は、第2入力端子(THVN)と、前記第2入力端子及び第2中間ノード(NDm2)間に接続された第3入力抵抗(RN)と、前記第2中間ノードと前記基準ノードとの間に接続された第4入力抵抗(RNS)と、前記第2中間ノードにおける第5電圧(INN)のインピーダンス変換を行うことで第6電圧(INN0)を生成するよう構成された第2バッファアンプ(110N)と、前記第6電圧と前記基準電圧との第2差電圧を分圧することで第7電圧(INNa)を生成するよう構成された第2分圧回路(120N)と、前記第7電圧及び前記基準電圧間の差を増幅することで第8電圧(NMN)を生成するよう構成された第2増幅回路(130N)と、を更に備え、前記第2分圧回路は、第2可変抵抗を用いて前記第2差電圧の分圧を行うことにより前記第6電圧から前記第7電圧を得る際の第2分圧比を可変設定し、前記第8電圧に第2可変オフセット電圧を付与するよう構成された第2可変オフセット付与回路(I40N)を前記第2増幅回路に接続した構成(第4の構成)であっても良い。
【0097】
これにより、基準電圧から見た第1入力端子の電圧を検出して、検出結果を示す第4電圧を生成できると共に、基準電圧から見た第2入力端子の電圧を検出して、検出結果を示す第8電圧を生成できる。この際、第1の構成に係る電圧検出装置に関して述べた理由と同様の理由により、高精度の電圧検出が可能であり、第1及び第2入力端子間の電圧が高電圧であったとしても十分に高い精度を持たせることができる。
【0098】
上記第4の構成に係る電圧検出装置において、前記第1バッファアンプが有する入力オフセット電圧(Δoff1)及び前記第1増幅回路が有する入力オフセット電圧(Δoff3)が、前記第1可変オフセット電圧の付与により前記第4電圧にて打ち消され、前記第2バッファアンプが有する入力オフセット電圧(Δoff2)及び前記第2増幅回路が有する入力オフセット電圧(Δoff4)が、前記第2可変オフセット電圧の付与により前記第8電圧にて打ち消される構成(第5の構成)であっても良い。
【0099】
上記第5の構成に係る電圧検出装置において、前記第1可変オフセット付与回路は、前記基準電圧を内包する第1調整範囲内の第1調整電圧(Vt1)を出力するよう構成された第1調整電圧出力回路(141P)を有し、前記第4電圧が前記第1調整電圧に応じて増減するよう前記第1可変オフセット付与回路が前記第1増幅回路に接続され、前記第1可変オフセット付与回路において前記第1調整電圧が可変設定されることで前記第4電圧に付与される前記第1可変オフセット電圧が変動し、前記第2可変オフセット付与回路は、前記基準電圧を内包する第2調整範囲内の第2調整電圧(Vt2)を出力するよう構成された第2調整電圧出力回路(141N)を有し、前記第8電圧が前記第2調整電圧に応じて増減するよう前記第2可変オフセット付与回路が前記第2増幅回路に接続され、前記第2可変オフセット付与回路において前記第2調整電圧が可変設定されることで前記第8電圧に付与される前記第2可変オフセット電圧が変動する構成(第6の構成)であっても良い。
【0100】
上記第4~第6の構成の何れかに係る電圧検出装置において、前記第4電圧及び前記第8電圧間の差に応じた出力電圧(VOUT)を生成するよう構成された出力電圧生成回路(150)を更に備える構成(第7の構成)であっても良い。
【0101】
これにより、第1及び第2入力端子間の電圧を高精度で検出して検出結果を示す出力電圧を生成できる。第1及び第2入力端子間の電圧が高電圧であったとしても十分に高い精度を持たせることができる。
【符号の説明】
【0102】
1 システム
10 電圧検出装置
20 電圧源
30 機能装置
THVP、THVN、TVCC、TVOUT、TVC、TPMN、TNMN、TGND 端子
VCC 電源電圧
HV 電圧(高電圧)
VOUT 出力電圧
Vc 基準電圧
PMN、NMN 電圧
RP、RPS、RNS、RN 入力抵抗
110P、110N バッファアンプ
120P、120N 分圧回路
130P、130N 増幅回路
140P、140N 可変オフセット付与回路
141P、141N 調整電圧出力回路
150 差動増幅回路
AMP1~AMP5 オペアンプ
R1~R4 可変抵抗
R6~R15 抵抗
Δoff1~Δoff5 入力オフセット電圧
Vt1、Vt2 調整電圧
NDm1、NDm2 中間ノード
NDc 基準ノード
INP、INP0、INPa、INPb 電圧
INN、INN0、INNa、INNb 電圧