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特開2024-123384セラミド含有水中油型乳化組成物及びそれを含む化粧料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123384
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】セラミド含有水中油型乳化組成物及びそれを含む化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/68 20060101AFI20240905BHJP
   A61K 8/60 20060101ALI20240905BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20240905BHJP
   A61K 8/39 20060101ALI20240905BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20240905BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20240905BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
A61K8/68
A61K8/60
A61K8/34
A61K8/39
A61K8/06
A61K8/31
A61K8/81
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030734
(22)【出願日】2023-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】592262543
【氏名又は名称】日本メナード化粧品株式会社
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 仁志
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA122
4C083AB282
4C083AB442
4C083AC012
4C083AC021
4C083AC022
4C083AC072
4C083AC102
4C083AC112
4C083AC121
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC302
4C083AC351
4C083AC352
4C083AC402
4C083AC422
4C083AC442
4C083AC482
4C083AC532
4C083AC641
4C083AC642
4C083AC662
4C083AD021
4C083AD022
4C083AD041
4C083AD042
4C083AD092
4C083AD152
4C083AD221
4C083AD222
4C083AD332
4C083AD352
4C083AD432
4C083AD532
4C083AD642
4C083BB13
4C083CC02
4C083CC04
4C083CC05
4C083DD23
4C083DD27
4C083DD31
4C083DD33
4C083EE01
4C083EE03
(57)【要約】
【課題】セラミドの結晶が析出せず経時安定性に優れた半透明又は透明な外観を有するセラミド含有水中油型乳化組成物、及び該セラミド含有水中油型乳化組成物を含有し、セラミドの結晶が析出せず経時安定性に優れた化粧料の提供を課題とする。
【解決手段】(A)光学活性体であるセラミド、(B)パルミチン酸スクロース及びステアリン酸スクロースから選ばれる1種又は2種以上、(C)液状油剤、(D)グリセリン及びジグリセリンから選ばれる1種又は2種及び(E)水を含有し、(B)/(A)=2~10、(C)/(B)=2~4、(D)/(B)=2~4を満たし、(C)液状油剤の50重量%以上が非極性油である半透明又は透明な外観を有するセラミド含有水中油型乳化組成物及び該セラミド含有水中油型乳化組成物を含有する化粧料を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)~(E)
(A)光学活性体であるセラミド 1.0重量%以下
(B)パルミチン酸スクロース及びステアリン酸スクロースから選ばれる1種又は2種以上
(C)25℃で液状である油剤
(D)グリセリン及びジグリセリンから選ばれる1種又は2種
(E)水
を含有し、(B)/(A)=2~10、(C)/(B)=2~4、(D)/(B)=2~4を満たし、(C)25℃で液状である油剤の50重量%以上が非極性油である半透明又は透明な外観を有するセラミド含有水中油型乳化組成物。
【請求項2】
成分(C)の非極性油が流動パラフィン及び水添ポリイソブテンから選ばれる1種又は2種以上である請求項1記載のセラミド含有水中油型乳化組成物。
【請求項3】
請求項1又は2記載のセラミド含有水中油型乳化組成物を含有する化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミドの結晶が析出せず経時安定性に優れた半透明又は透明な外観を有するセラミド含有水中油型乳化組成物、及び該セラミド含有水中油型乳化組成物を含有し、セラミドの結晶が析出せず経時安定性に優れた化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミドは皮膚の角層の細胞間脂質に存在し、皮膚バリア機能に寄与しているといわれており、高機能性保湿剤として注目されている。しかしながら、セラミドは一般に水溶性、油溶性を問わず化粧品基材への溶解性が悪いため、化粧料へ含有させることが困難である。また、たとえ含有させることができても、経時的に結晶が析出してしまう。セラミドが結晶化してしまうと、セラミドが本来持つ高い保湿効果が損なわれ、商品価値が低下してしまう。特に化粧水のような半透明又は透明な剤型の化粧料では、それに加えて外観の変化が問題となる。このような背景からセラミドを結晶化させずに化粧料に含有させる技術、特に半透明又は透明な化粧料にもセラミドを結晶化させずに含有させることができる技術が望まれている。
【0003】
セラミドは光学活性を持たないラセミ体と光学活性を持つ光学活性体とに分けられる。天然に存在するセラミドはすべて光学活性体であり、光学活性体の方が保湿効果が高いとされている。しかし一方で、光学活性体は融点が高く結晶性が強いため、化粧料に多量に含有させることはラセミ体のものよりも困難であることが知られている(非特許文献1)。保湿効果の高さを化粧料に付与するためにはセラミドの中でも光学活性体のセラミドを結晶化させずに化粧料に含有させることが望ましい。
【0004】
セラミドを結晶化させずに化粧料に含有させるために、数多くの試みが行われている。その例としては、セラミド、長鎖脂肪酸、非イオン性界面活性剤、水を組み合わせることで水性透明化粧料添加用組成物が得られる技術(特許文献1)、セラミド、ステロール類及びイソステアリン酸を含有する油性成分、非イオン性界面活性剤、多価アルコール、水を組み合わせることで半透明化粧料が得られる技術(特許文献2)、セラミド、非イオン性界面活性剤、ヘキサンジオール、水を組み合わせることで透明な化粧料が得られる技術(特許文献3)等が挙げられる。
【0005】
しかし、これらの技術では、含有する長鎖脂肪酸やステロール類が、べたつき等の使用感の悪化を引き起こす、使用されている界面活性剤や油剤、多価アルコールの皮膚刺激性に懸念がある、経時安定性が不十分である等、産業上解決しなければならない課題が依然としてあり、その解決が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001-316217号公報
【特許文献2】国際公開第2004/045566号
【特許文献3】特開2014-148473号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「オレオサイエンス」 第4巻 第3号 第19頁、2004年、日本油化学会発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、セラミドの結晶が析出せず経時安定性に優れた半透明又は透明な外観を有するセラミド含有水中油型乳化組成物、及び該セラミド含有水中油型乳化組成物を含有し、セラミドの結晶が析出せず経時安定性に優れた化粧料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる実情に鑑み、本発明者は鋭意検討した結果、(A)光学活性体であるセラミド、(B)パルミチン酸スクロース及びステアリン酸スクロースから選ばれる1種又は2種以上、(C)25℃で液状である油剤、(D)グリセリン及びジグリセリンから選ばれる1種又は2種及び(E)水を含有し、(B)/(A)=2~10、(C)/(B)=2~4、(D)/(B)=2~4を満たし、(C)25℃で液状である油剤の50重量%以上が非極性油である半透明又は透明な外観を有するセラミド含有水中油型乳化組成物はセラミドの結晶が析出せず経時安定性に優れること、及び該セラミド含有水中油型乳化組成物を含有する化粧料においても、結晶が析出せず経時安定性に優れることを見出した。
【0010】
すなわち本発明は、(A)光学活性体であるセラミド 1.0重量%以下、(B)パルミチン酸スクロース及びステアリン酸スクロースから選ばれる1種又は2種以上、(C)25℃で液状である油剤、(D)グリセリン及びジグリセリンから選ばれる1種又は2種及び(E)水を含有し、(B)/(A)=2~10、(C)/(B)=2~4、(D)/(B)=2~4を満たし、(C)25℃で液状である油剤の50重量%以上が非極性油である半透明又は透明な外観を有するセラミド含有水中油型乳化組成物を提供するものである。
【0011】
また、本発明は、成分(C)の非極性油がミネラルオイル又は水添ポリイソブテンである半透明又は透明な外観を有するセラミド含有水中油型乳化組成物を提供するものである。
【0012】
また、本発明は、上記セラミド含有水中油型乳化組成物を含有する化粧料を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によって、セラミドの結晶が析出せず経時安定性に優れた半透明又は透明な外観を有するセラミド含有水中油型乳化組成物及び該セラミド含有水中油型乳化組成物を含む化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
前述の通り、セラミドには光学活性体、ラセミ体があるが、本発明では光学活性体を用いる。本発明に使用されるセラミドとは、スフィンゴシンのアミノ基に長鎖脂肪酸がアミド結合した化合物の総称である。化粧品原料として使用されるものでは、スフィンゴシンの構造及び長鎖脂肪酸の構造の違いによりセラミド1~6が知られている。本発明の成分(A)光学活性体であるセラミドは何れのセラミドでも使用できるが、その中でも、セラミド2が好ましい。このセラミド2を用いたとき、特に経時安定性に優れたセラミド含有水中油型乳化組成物を得ることができるためである。また、これらは必要に応じて1種又は2種以上を用いることができる。セラミド2としては、高砂香料工業製のセラミド TIC-001があり、これを購入して使用することができる。セラミド3としては、エボニック製のCeramide III、Ceramide IIIBがあり、これらを購入して使用することができる。セラミド6としてはエボニック製のCeramide VIがあり、これを購入して使用することができる。
【0015】
成分(A)光学活性体であるセラミドの含有量は1.0重量%以下である。1.0重量%より大きいと結晶が析出する場合がある。
【0016】
本発明の成分(B)はパルミチン酸スクロース及びステアリン酸スクロースから選ばれる1種又は2種以上である。パルミチン酸スクロース、ステアリン酸スクロースはスクロースの水酸基がパルミチン酸又はステアリン酸とエステル結合しているものである。
【0017】
成分(B)のHLB値は特に限定されないが、11~16がより好ましい。HLB値が11より小さい場合、まれに経時的に外観が白濁し、セラミドの結晶が析出することがある。尚、本発明におけるパルミチン酸スクロース、ステアリン酸スクロースのHLB値はカタログ(サーフホープ SE COSME 2001年5月(三菱ケミカル))に記載されている値を参照した。2種以上のパルミチン酸スクロース、ステアリン酸スクロースを含有する場合は加成性があるとしてHLB値を計算することができる。
【0018】
パルミチン酸スクロース、ステアリン酸スクロースは市販品を用いることが可能であり、例えば、市販されている三菱ケミカル製のサーフホープ SE COSME C-1615、サーフホープ SE COSME C-1616、サーフホープ SE COSME C-1809、サーフホープ SE COSME C-1811、サーフホープ SE COSME C-1815、サーフホープ SE COSME C-1816等を用いることができる。
【0019】
本発明の成分(C)25℃で液状である油剤としては、通常化粧品原料、医薬品原料として用いられる非極性油、極性油、シリコーン油等の油剤が使用できる。非極性油とは炭素と水素のみからなる油剤であり、例としてはイソドデカン、イソヘキサデカン、流動パラフィン、α-オレフィンオリゴマー、スクワラン、水添ポリイソブテン等が挙げられるがこれらに限定するものではない。極性油とは高級脂肪酸、高級アルコール、油脂、エーテル、エステル油等の分子中に水酸基、カルボキシル基、エーテル結合、エステル結合を含む油剤であり、例としてはオレイン酸、イソステアリン酸、リノール酸、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、アボカド油、オリーブ油、パーシック油、ククイナッツ油、ブドウ種子油、サフラワー油、アーモンド油、コーン油、ピスタシオ種子油、ヒマワリ油、ヘーゼルナッツ油、マカデミアナッツ油、メドウフォーム油、ローズヒップ油、ジイソノニルエーテル、ホホバ油、ミリスチン酸ブチル、ステアリン酸ブチル、エチルヘキサン酸セチル、オレイン酸エチル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、ミリスチン酸イソセチル、ステアリン酸イソセチル、パルミチン酸エチルヘキシル、イソステアリン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソステアリル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ステアリン酸エチルヘキシル、リノール酸エチル、リノール酸イソプロピル、ネオペンタン酸オクチルドデシル、サリチル酸ブチルオクチル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、ジカプリン酸プロピレングリコール、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル、モノカプリル酸プロピレングリコール、ジカプリル酸プロピレングリコール、トリエチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、2-エチルヘキサン酸2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、セバシン酸ジエチル、アジピン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジイソプロピル、2,6-ナフタリンジカルボン酸ジ2-エチルヘキシル、セバシン酸ジブチルオクチル、リンゴ酸ジイソステアリル、クエン酸トリエチルヘキシル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、ペンタオレイン酸デカグリセリル、デカイソステアリン酸デカグリセリル、デカオレイン酸デカグリセリル、デカマカデミアナッツ油脂肪酸デカグリセリル等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。シリコーン油とはケイ素と酸素がシロキサン結合により交互に連なった骨格を持つ油剤である。例としてはジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、環状ジメチルシリコーン、アルキル変性シリコーン等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。また、これらは必要に応じて、1種又は2種以上を用いることができる。
【0020】
本発明においては、成分(C)の50重量%以上が非極性油である。また、成分(C)の80重量%以上が非極性油であることがより好ましい。50重量%未満であると、経時的にセラミドの結晶が析出してしまう場合がある。
【0021】
成分(C)の非極性油は流動パラフィン、水添ポリイソブテンが好ましい。これら以外の非極性油を用いた場合、経時的に粒子径が大きくなり、白濁してしまう場合がある。
【0022】
本発明の成分(D)はグリセリン及びジグリセリンから選ばれる1種又は2種である。グリセリン、ジグリセリンは通常化粧品原料、医薬品原料として用いられるものであれば使用できる。市販品としては、例えばグリセリンであれば、阪本薬品工業製の化粧品用濃グリセリン、日油製のRG・コ・P、ジグリセリンであれば阪本薬品工業製のジグリセリンSがあり、これを購入して使用することができる。
【0023】
含有比(B)/(A)=2~10、(C)/(B)=2~4、(D)/(B)=2~4を満たす成分(A)~(D)を60℃以上で混合し均一に溶解し、60℃以上に加温した(E)水を含む水相を成分(A)~(D)に添加することで本発明のセラミド含有水中油型乳化組成物を得ることができる。このセラミド含有水中油型乳化組成物はセラミドの結晶が析出せず経時安定性が良好であり、半透明又は透明な外観を有することを特徴とする。
【0024】
尚、本発明における半透明又は透明とは分光光度計UV-160A(島津製作所製)を用いて、可視領域の波長600nmにおける光の透過率を厚さ10mmの石英セルで測定し、透過率が50%以上のものと定義した。ただし、ここでは水の透過率を100%とする。
【0025】
本発明の平均粒子径はnanoSAQLA(大塚電子製)で動的光散乱測定を行い、キュムラント解析で算出したものである。本発明のセラミド含有水中油型乳化組成物の平均粒子径は300nm以下であることが好ましい。平均粒子径が300nmより大きい場合、外観が白濁したり、セラミドの結晶が析出し経時安定性に問題が生じる場合がある。
【0026】
本発明の半透明又は透明な外観を有するセラミド含有水中油型乳化組成物には、その使用目的に応じて各種成分、例えば、界面活性剤、25℃で固形状あるいはペースト状である油剤、紫外線吸収剤、防腐剤、保湿剤、増粘剤、色剤、金属イオン封鎖剤、酸化防止剤、美容成分、香料、清涼剤、pH調整剤等を適宜含有することができる。
【0027】
本発明では、上記のセラミド含有水中油型乳化組成物を化粧料に含有させることによって、セラミドの結晶が析出せず経時安定性に優れたセラミド含有化粧料を提供できる。また、セラミド含有水中油型乳化組成物自体を化粧料として使用することも可能である。
【0028】
本発明のセラミド含有水中油型乳化組成物を含む化粧料には、発明の効果を損なわない範囲で、その使用目的に応じて各種成分、例えば、界面活性剤、油剤、紫外線吸収剤、防腐剤、保湿剤、増粘剤、色剤、金属イオン封鎖剤、酸化防止剤、美容成分、香料、清涼剤、pH調整剤等を適宜含有することができる。
【0029】
本発明のセラミド含有水中油型乳化組成物を含む化粧料は、化粧水、美容液、乳液、クリーム、パック料等の基礎化粧料を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【実施例0030】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。例中の含有量はすべて重量%である。
【0031】
実施例1~実施例26、比較例1~比較例8 セラミド含有水中油型乳化組成物
本願発明のセラミド含有水中油型乳化組成物の調製方法及び評価法について詳細に説明する。以下に示す実施例1~26及び比較例1~8に示した処方にて、パーツAを80℃まで加温し混合し均一に溶解させた後、80℃まで加温したパーツBをパーツAに加え、その後30℃まで冷却しセラミド含有水中油型乳化組成物を得た。得られたセラミド含有水中油型乳化組成物の外観観察、透過率測定、平均粒子径測定を行った。外観観察、透過率測定、平均粒子径測定の結果、外観が良好且つ、透過率が50%以上且つ、平均粒子径が300nm以下であった場合は、50℃で1ヶ月間放置した後も同様に外観観察、透過率測定、平均粒子径測定を行い、経時安定性を確認した。
【0032】
外観観察の評価は下記の通り行った。
得られたセラミド含有水中油型乳化組成物を目視によって観察し、以下のように分類した。
○:半透明又は透明であり、結晶の析出も見られない。
×:白濁している、もしくは結晶の析出が見られる。
【0033】
透過率は分光光度計UV-160A(島津製作所製)を用いて、可視領域の波長600nmにおける光の透過率を厚さ10mmの石英セルで測定した。
【0034】
平均粒子径はnanoSAQLA(大塚電子製)で動的光散乱測定を行い、キュムラント解析で平均粒子径を算出した。
【0035】
【表1】
*1:セラミド TIC-001(高砂香料工業製)
*2:サーフホープ SE COSME C-1816(三菱ケミカル製)
*3:CARNATION(SONNEBORN製)
*4:RG・コ・P(日油製)
【0036】
表1に(B)/(A)、(C)/(B)、(D)/(B)を固定しつつ、成分(A)光学活性体であるセラミドの含有量を変化させた場合の結果を示す。成分(A)光学活性体であるセラミドが1.0重量%以下である実施例1~5では、外観が良好且つ、透過率が50%以上且つ、平均粒子径が300nm以下であり、50℃で1ヶ月間放置した後も同様であった。一方、成分(A)光学活性体であるセラミドが1.0重量%より大きい比較例1では結晶の析出が見られ、透過率が50%より小さくなり、平均粒子径が300nmより大きくなった。
【0037】
【表2】
*5:サーフホープ SE COSME C-1616(三菱ケミカル製)
【0038】
表2に(C)/(B)、(D)/(B)を固定しつつ、(B)/(A)を変化させた場合の結果を示す。(B)/(A)が2~10である実施例6~9では、外観が良好且つ、透過率が50%以上且つ、平均粒子径が300nm以下であり、50℃で1ヶ月間放置した後も同様であった。一方、(B)/(A)が2より小さい比較例2では、結晶の析出が見られ、透過率が50%より小さくなり、(B)/(A)が10より大きい比較例3では、白濁が見られ、透過率が50%より小さくなり、平均粒子径が300nmより大きくなった。
【0039】
【表3】
*6:ジグリセリンS(阪本薬品工業製)
【0040】
表3に(B)/(A)、(D)/(B)を固定しつつ、(C)/(B)を変化させた場合の結果を示す。(C)/(B)が2~4である実施例10~12では、外観が良好且つ、透過率が50%以上且つ、平均粒子径が300nm以下であり、50℃で1ヶ月間放置した後も同様であった。一方、(C)/(B)が2より小さい比較例4では、結晶の析出が見られ、透過率が50%より小さくなり、平均粒子径が300nmより大きくなり、(C)/(B)が4より大きい比較例5では、調製直後は外観が良好且つ、透過率が50%以上且つ、平均粒子径が300nm以下であったが、50℃で1ヶ月間放置すると、白濁し、透過率が50%より小さくなり、平均粒子径が300nmより大きくなった。
【0041】
【表4】
*7:パールリーム EX(日油製)
【0042】
表4に(B)/(A)、(C)/(B)を固定しつつ、(D)/(B)を変化させた場合の結果を示す。(D)/(B)が2~4である実施例13~15では、外観が良好且つ、透過率が50%以上且つ、平均粒子径が300nm以下であり、50℃で1ヶ月間放置した後も同様であった。一方、(D)/(B)が2より小さい比較例6、4より大きい比較例7では、白濁し、透過率が50%より小さくなり、平均粒子径が300nmより大きくなった。
【0043】
【表5】
*8:ODM(高級アルコール工業製)
【0044】
表5に成分(C)25℃で液状である油剤として非極性油である流動パラフィン、極性油であるミリスチン酸オクチルドデシルを含有させ、非極性油と極性油の比率を変化させた場合の結果を示す。成分(C)25℃で液状である油剤の50重量%以上が非極性油である実施例16~18では、外観が良好且つ、透過率が50%以上且つ、平均粒子径が300nm以下であり、50℃で1ヶ月間放置した後も同様であった。特に、成分(C)25℃で液状である油剤の80重量%以上が非極性油である実施例18では、50℃で1ヶ月間放置後も調製直後と透過率、平均粒子径がほとんど変化しなかった。一方、成分(C)25℃で液状である油剤中の非極性油の含有量が50重量%未満である比較例8では、結晶の析出が見られ、透過率が50%より小さくなり、平均粒子径が300nmより大きくなった。
【0045】
【表6】
*9:NIKKOL シンセラン4SP(日光ケミカルズ製)
*10:NIKKOL シュガースクワラン(日光ケミカルズ製)
【0046】
表6に非極性油の種類を変化させた場合の結果を示す。非極性油として流動パラフィン、水添ポリイソブテンを用いた場合は、50℃で1ヶ月間放置後も調製直後と透過率、平均粒子径がほとんど変化しない一方で、非極性油としてα-オレフィンオリゴマー、スクワランを用いた場合は、透過率、平均粒子径の変化が見られた。このことから、経時安定性の観点から非極性油として流動パラフィン、水添ポリイソブテンを用いることがより望ましいことがわかる。
【0047】
【表7】
*11:サーフホープ SE COSME C-1815(三菱ケミカル製)
*12:サーフホープ SE COSME C-1811(三菱ケミカル製)
*13:サーフホープ SE COSME C-1809(三菱ケミカル製)
【0048】
表7に成分(B)ステアリン酸スクロースのHLB値を変化させた場合の結果を示す。HLB値が11以上である場合は、50℃で1ヶ月間放置後も調製直後と透過率、平均粒子径がほとんど変化しないが、HLB値が11より小さい場合は、透過率、平均粒子径の変化が見られた。このことから、経時安定性の観点から成分(B)にはHLB値が11以上のものを用いることがより望ましいことがわかる。
【0049】
以下にセラミド含有水中油型乳化組成物を含有する化粧料の実施例を挙げる。これらの実施例においても、結晶の析出は見られず、50℃で1ヶ月間放置した後も変化は見られなかった。
【0050】
(実施例27:化粧水)
(成分名) 重量(%)
(1) 精製水 残 余
(2) 1,3-ブチレングリコール 10.0
(3) ジプロピレングリコール 5.0
(4) クエン酸 0.1
(5) クエン酸ナトリウム 0.3
(6) メタリン酸ナトリウム 0.1
(7) ヒアルロン酸ナトリウム 0.01
(8) アスコルビン酸リン酸マグネシウム 0.01
(9) グリチルリチン酸ジカリウム 0.05
(10)エタノール 12.0
(11)メチルパラベン 0.1
(12)フェノキシエタノール 0.1
セラミド含有水中油型乳化組成物パーツ
(13)セラミド3 (*14) 0.03
(14)ステアリン酸スクロース(HLB:16) (*2) 0.2
(15)流動パラフィン (*3) 0.55
(16)グリセリン (*4) 0.5
(17)精製水 8.72
*14:Ceramide III(エボニック製)
(製造方法)
1.成分(1)~(12)を混合し、均一に溶解する。
2.セラミド含有水中油型乳化組成物パーツの成分(13)~(16)を80℃まで加温し均一に溶解させて、80℃まで加温した成分(17)を成分(13)~(16)に加え、その後30℃まで冷却しセラミド含有水中油型乳化組成物を得る。
3.セラミド含有水中油型乳化組成物を成分(1)~(12)に添加する。
【0051】
(実施例28:美容液)
(成分名) 重量(%)
(1) イソステアリン酸デカグリセリル 1.5
(2) ラウリン酸デカグリセリル 1.5
(3) グリセリン 7.0
(4) ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/フィトステリル/ベヘニル)
0.3
(5) テオブロマグランジフロルム種子脂 0.5
(6) ミリスチン酸オクチルドデシル 4.0
(7) マカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリル 1.0
(8) スクワラン 5.0
(9) 香料 適 量
(10)精製水 残 余
(11)EDTA-2Na 0.05
(12)キサンタンガム 0.4
(13)ヒアルロン酸ナトリウム 0.1
(14)1,3-ブチレングリコール 8.0
(15)メチルパラベン 0.3
セラミド含有水中油型乳化組成物パーツ
(16)セラミド6 (*15) 0.05
(17)パルミチン酸スクロース(HLB:16) (*5) 0.22
(18)水添ポリイソブテン (*7) 0.6
(19)ジグリセリン (*6) 0.5
(20)精製水 7.63
(21)1,3-ブチレングリコール 1.0
*15:Ceramide VI(エボニック製)
(製造方法)
1.成分(1)~(9)を70℃まで加温し、均一に溶解する。
2.成分(10)~(15)を70℃まで加温し、均一に溶解し、成分(1)~(9)に加える。その後、30℃まで冷却する。
3.セラミド含有水中油型乳化組成物パーツの成分(16)~(19)を80℃まで加温し均一に溶解させて、80℃まで加温した成分(20)~(21)を成分(16)~(19)に加え、その後30℃まで冷却しセラミド含有水中油型乳化組成物を得る。
4.セラミド含有水中油型乳化組成物を成分(1)~(15)に添加する。
【0052】
(実施例29:乳液)
(成分名) 重量(%)
(1) ミリスチン酸デカグリセリル 1.0
(2) ラウリン酸デカグリセリル 1.0
(3) グリセリン 3.0
(4) ジメチコン 3.0
(5) ミリスチン酸オクチルドデシル 1.5
(6) イソノナン酸イソトリデシル 1.5
(7) ホホバ油 3.0
(8) ワセリン 1.0
(9) 香料 適 量
(10)精製水 残 余
(11)メタリン酸ナトリウム 0.03
(12)キサンタンガム 0.3
(13)ベントナイト 0.2
(14)メチルグルセス-20 3.0
(15)1,3-ブチレングリコール 10.0
(16)ペンチレングリコール 1.0
(17)メチルパラベン 0.3
(18)水溶性コラーゲン 0.1
セラミド含有水中油型乳化組成物パーツ
(19)セラミド2 (*1) 0.03
(20)ステアリン酸スクロース(HLB:16) (*2) 0.2
(21)α-オレフィンオリゴマー (*9) 0.45
(22)グリセリン (*4) 0.5
(23)精製水 8.82
(製造方法)
1.成分(1)~(9)を70℃まで加温し、均一に溶解する。
2.成分(10)~(18)を70℃まで加温し、均一に溶解し、成分(1)~(9)に加える。その後、30℃まで冷却する。
3.セラミド含有水中油型乳化組成物パーツの成分(19)~(22)を80℃まで加温し均一に溶解させて、80℃まで加温した成分(23)を成分(19)~(22)に加え、その後30℃まで冷却しセラミド含有水中油型乳化組成物を得る。
4.セラミド含有水中油型乳化組成物を成分(1)~(18)に添加する。
【0053】
(実施例30:クリーム)
(成分名) 重量(%)
(1)モノステアリン酸ソルビタン 1.6
(2)PEG-40水添ヒマシ油 1.6
(3)ステアリン酸PEG-25 2.0
(4)α-オレフィンオリゴマー 15.0
(5)ミリスチン酸オクチルドデシル 5.0
(6)マカデミアナッツ油 10.0
(7)ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル) 4.0
(8)ワセリン 2.0
(9)ベヘニルアルコール 3.0
(10)香料 適 量
(11)精製水 残 余
(12)カルボマー 0.2
(13)キサンタンガム 0.2
(14)1,3-ブチレングリコール 6.0
(15)メチルパラベン 0.2
セラミド含有水中油型乳化組成物パーツ
(16)セラミド2 (*1) 0.015
(17)ステアリン酸スクロース(HLB:16) (*2) 0.1
(18)流動パラフィン (*3) 0.25
(19)グリセリン (*4) 0.25
(20)精製水 4.385
(製造方法)
1.成分(1)~(10)を80℃まで加温し、均一に溶解する。
2.成分(11)~(15)を80℃まで加温し、均一に溶解し、成分(1)~(10)に加える。その後、30℃まで冷却する。
3.セラミド含有水中油型乳化組成物パーツの成分(16)~(19)を80℃まで加温し均一に溶解させて、80℃まで加温した成分(20)を成分(16)~(19)に加え、その後30℃まで冷却しセラミド含有水中油型乳化組成物を得る。
4.セラミド含有水中油型乳化組成物を成分(1)~(15)に添加する。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明によれば、セラミドの結晶が析出せず経時安定性に優れた半透明又は透明な外観を有するセラミド含有水中油型乳化組成物、及び該セラミド含有水中油型乳化組成物を含有し、セラミドの結晶が析出せず経時安定性に優れた化粧料を提供することができる。