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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024012339
(43)【公開日】2024-01-30
(54)【発明の名称】セメント添加剤
(51)【国際特許分類】
   C04B 24/26 20060101AFI20240123BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20240123BHJP
   C08F 220/28 20060101ALI20240123BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
C04B24/26 F
C04B24/26 E
C04B24/26 B
C04B28/02
C08F220/28
C08F290/06
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023179694
(22)【出願日】2023-10-18
(62)【分割の表示】P 2021563764の分割
【原出願日】2020-10-16
(31)【優先権主張番号】P 2019223116
(32)【優先日】2019-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】河合 萌
(72)【発明者】
【氏名】横山 裕哉
(57)【要約】      (修正有)
【課題】セメントの流動保持性を改善し、かつ、セメントの粘性を低減することができるセメント添加剤を提供する。
【解決手段】ポリカルボン酸系共重合体を含むセメント添加剤であって、該ポリカルボン酸系共重合体は、下記式(1)で表されるポリアルキレングリコール系単量体(A)由来の構造単位(a)、不飽和モノカルボン酸系単量体(B)由来の構造単位(b)及びカルボン酸ヒドロキシアルキルエステル(C)由来の構造単位(c)の含有割合がそれぞれ、全構造単位100質量%に対して50~99質量%、1~30質量%及び0~20質量%であることを特徴とするセメント添加剤である。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカルボン酸系共重合体を含むセメント添加剤であって、
該ポリカルボン酸系共重合体は、下記式(1);
【化1】
(式中、R、R及びRは、同一又は異なって、水素原子、又は、メチル基を表す。Rは、水素原子、又は、炭素数1~30の炭化水素基を表す。(RO)は、同一又は異なって、炭素数2~18のオキシアルキレン基を表す。nは、オキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、5~24の数である。xは、0~4の数を表す。yは、0又は1を表す。)で表されるポリアルキレングリコール系単量体(A)由来の構造単位(a)、不飽和モノカルボン酸系単量体(B)由来の構造単位(b)及びカルボン酸ヒドロキシアルキルエステル(C)由来の構造単位(c)の含有割合がそれぞれ、全構造単位100質量%に対して50~99質量%、1~30質量%及び0~20質量%であることを特徴とするセメント添加剤。
【請求項2】
前記ポリカルボン酸系共重合体は、前記式(1)におけるyが0であることを特徴とする請求項1に記載のセメント添加剤。
【請求項3】
前記カルボン酸ヒドロキシアルキルエステル(C)は、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートであることを特徴とする請求項1又は2に記載のセメント添加剤。
【請求項4】
前記ポリカルボン酸系共重合体は、重量平均分子量が3000~100000であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のセメント添加剤。
【請求項5】
前記ポリカルボン酸系共重合体は、ポリアルキレングリコール系単量体(A)、不飽和モノカルボン酸系単量体(B)及びカルボン酸ヒドロキシアルキルエステル(C)以外のその他の単量体(E)由来の構造単位(e)の割合が、全構造単位100質量%に対して0~10質量%であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のセメント添加剤。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載のセメント添加剤とセメントとを含むことを特徴とするセメント組成物。
【請求項7】
前記セメント組成物は、更に、前記セメント添加剤以外の他のセメント分散剤及び/又は減水剤を含むことを特徴とする請求項6に記載のセメント組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント添加剤に関する。より詳しくは、セメント組成物等に好適に用いることができるセメント添加剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ(メタ)アクリル酸等のポリカルボン酸の側鎖にポリアルキレングリコールを有するポリカルボン酸系共重合体は、その優れたセメント分散性能により、セメントペースト、モルタル、コンクリート等のセメント組成物から土木・建築構造物等を構築するために欠かすことのできないものとなっている。
このような共重合体を含むセメント混和剤は、減水剤等として用いられ、セメント組成物の流動性を高めてセメント組成物を減水させることにより、硬化物の強度や耐久性等を向上させる作用を有することになる。なお、減水剤としては、従来、ナフタレン系等の減水剤が使用されていたが、これに比べてポリカルボン酸系共重合体等の共重合体を主成分とするセメント添加剤は高い減水性能を発揮できるため、高性能AE減水剤として多くの使用実績を有するに至っている。
【0003】
このようなセメント添加剤は、セメントの初期分散性を向上させることのみならず、セメントの流動性を長時間保持することも求められ、従来種々のポリカルボン酸系共重合体が開発されている。例えば、特許文献1、2には、特定の構造で表される単量体1と特定の構造で表される単量体2とを含む単量体と特定の構造で表される単量体3とを重合して得られる共重合体を含有する水硬性組成物用分散剤であって、該共重合体の構成単量体中、単量体1、単量体2、単量体3の比率が、それぞれ特定範囲にある水硬性組成物用分散剤が開示されている。特許文献3には、特定の構造で表される単量体1と特定の構造で表される単量体2と特定の構造で表される単量体3とを重合して得られる重量平均分子量が30000~60000の共重合体からなる水硬性組成物用分散保持剤であって、単量体2の少なくとも一部が、所定の関係を満たし、該共重合体の該共重合体の構成単量体中、単量体1が25~78重量%、単量体3が0~18重量%である、水硬性組成物用分散保持剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-096672号公報
【特許文献2】特開2009-173527号公報
【特許文献3】特開2009-221025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし従来のポリカルボン酸系共重合体は、流動保持性において充分ではなかった。また、近年天然骨材資源の枯渇の問題から、低品質の骨材がコンクリート材料として用いられることがある。このような場合、セメント組成物の塑性粘度や降伏値等の粘性が上昇し、施工作業性が低下するという問題が生じる。そのため、セメント組成物の粘性を低減することも求められている。
【0006】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、セメントの流動保持性を改善し、かつ、セメントの粘性を低減することができるセメント添加剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、セメント組成物等に用いることができる重合体について種々検討したところ、オキシアルキレン基の平均付加モル数が特定の範囲であるポリアルキレングリコール系単量体、不飽和モノカルボン酸系単量体及びカルボン酸ヒドロキシアルキルエステル由来の構造単位の含有割合が特定の範囲である共重合体がセメント組成物の流動保持性を向上させ、かつ、セメント組成物の粘性を低減することができることを見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
【0008】
すなわち本発明は、ポリカルボン酸系共重合体を含むセメント添加剤であって、
上記ポリカルボン酸系共重合体は、下記式(1);
【0009】
【化1】
【0010】
(式中、R、R及びRは、同一又は異なって、水素原子、又は、メチル基を表す。Rは、水素原子、又は、炭素数1~30の炭化水素基を表す。(RO)は、同一又は異なって、炭素数2~18のオキシアルキレン基を表す。nは、オキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、5~24の数である。xは、0~4の数を表す。yは、0又は1を表す。)で表されるポリアルキレングリコール系単量体(A)由来の構造単位(a)、不飽和モノカルボン酸系単量体(B)由来の構造単位(b)及びカルボン酸ヒドロキシアルキルエステル(C)由来の構造単位(c)の含有割合がそれぞれ、全構造単位100質量%に対して50~99質量%、1~30質量%及び0~20質量%であるセメント添加剤である。
【0011】
上記ポリカルボン酸系共重合体は、前記式(1)におけるyが0であることが好ましい。
【0012】
上記カルボン酸ヒドロキシアルキルエステル(C)は、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートであることが好ましい。
【0013】
上記不飽和モノカルボン酸系単量体(B)は、(メタ)アクリル酸、マレイン酸と炭素数1~22のアルコール又は炭素数2~4のグリコールとのハーフエステル、フマル酸と炭素数1~22のアルコール又は炭素数2~4のグリコールとのハーフエステル、及び、これらの塩からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0014】
上記ポリカルボン酸系共重合体は、ポリアルキレングリコール系単量体(A)、不飽和モノカルボン酸系単量体(B)及びカルボン酸ヒドロキシアルキルエステル(C)以外のその他の単量体(E)由来の構造単位(e)の割合が、全構造単位100質量%に対して0~10質量%であることが好ましい。
【0015】
上記ポリカルボン酸系共重合体は、重量平均分子量が3000~100000であることが好ましい。
【0016】
本発明はまた、上記セメント添加剤とセメントとを含むセメント組成物でもある。
【0017】
上記セメント組成物は、更に、上記セメント添加剤以外の他のセメント分散剤及び/又は減水剤を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明のセメント添加剤は、上述の構成よりなり、セメント組成物の流動保持性を向上させ、かつ、粘性を低減することができるため、セメント組成物等に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明の好ましい形態について具体的に説明するが、本発明は以下の記載のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。なお、以下に記載される本発明の個々の好ましい形態を2又は3以上組み合わせた形態も、本発明の好ましい形態に該当する。
【0020】
〔ポリカルボン酸系共重合体〕
本発明のセメント添加剤に含まれるポリカルボン酸系共重合体(以下、本発明の共重合体ともいう。)は、上記式(1)で表されるポリアルキレングリコール系単量体(A)由来の構造単位(a)と不飽和モノカルボン酸系単量体(B)由来の構造単位(b)とを有する。
【0021】
上記ポリカルボン酸系共重合体において、構造単位(a)の割合は、全構造単位100質量%に対して50~99質量%である。好ましくは60~95質量%であり、より好ましくは65~95質量%であり、更に好ましくは70~90質量%であり、最も好ましくは75~90質量%である。
上記ポリカルボン酸系共重合体における各構造単位の割合は高速液体クロマトグラフィーにより測定される各単量体の残存量に基づき算出することができる。
【0022】
上記ポリカルボン酸系共重合体において、構造単位(b)の割合は、全構造単位100質量%に対して1~30質量%である。好ましくは5~30質量%であり、より好ましくは10~30質量%であり、更に好ましくは15~30質量%であり、最も好ましくは15~25質量%である。なお、本発明において、上記構造単位(b)の全構造単位100質量%に対する質量割合(質量%)を計算する場合は、対応するナトリウム塩換算で計算するものとする。例えば、アクリル酸に由来する構造単位の質量割合は、対応するナトリウム塩であるアクリル酸ナトリウムに由来する構造単位の質量割合(質量%)として計算する。
【0023】
上記ポリカルボン酸系共重合体は、更にカルボン酸ヒドロキシアルキルエステル(C)由来の構造単位(c)を有していてもよく、構造単位(c)の含有割合は、構造単位100質量%に対して0~20質量%である。好ましくは0~18質量%であり、これにより、セメント組成物の流動保持性をより向上させることができる。より好ましくは0~15質量%であり、更に好ましくは0~12質量%であり、最も好ましくは0~10質量%である。
【0024】
上記ポリカルボン酸系共重合体は、ポリアルキレングリコール系単量体(A)、不飽和モノカルボン酸系単量体(B)及びカルボン酸ヒドロキシアルキルエステル(C)以外のその他の単量体(E)由来の構造単位(e)を有していてもよい。
上記共重合体における構造単位(e)の割合は、全構造単位100質量%に対して0~10質量%であることが好ましい。
より好ましくは0~8質量%であり、更に好ましくは0~5質量%であり、最も好ましくは0質量%である。
【0025】
上記ポリカルボン酸系共重合体は、重量平均分子量が3000~100000であることが好ましい。これにより、セメント組成物の流動保持性をより向上させ、粘性をより低減することができる。より好ましくは3000~50000であり、更に好ましくは4000~30000あり、一層好ましくは4000~20000であり、より一層好ましくは4500~18000であり、特に好ましくは5000~15000である。
上記重量平均分子量は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0026】
<ポリアルキレングリコール系単量体(A)>
上記ポリアルキレングリコール系単量体(A)(以下、単量体(A)ともいう。)は、上記式(1)で表される化合物である。
上記式(1)において、R~Rは、同一又は異なって、水素原子又はメチル基を表す。好ましくはR、Rが水素原子であって、Rが水素原子又はメチル基である。より好ましくは、R、Rが水素原子であって、Rがメチル基である。
【0027】
上記式(1)におけるRは、水素原子、又は、炭素数1~30の炭化水素基を表す。好ましくは炭素数1~20の炭化水素基又は水素原子であり、より好ましくは、水素原子又は炭素数1~18の炭化水素基、更に好ましくは、水素原子又は炭素数1~12の炭化水素基、特に好ましくは、水素原子又は炭素数1~8の炭化水素基、最も好ましくは、水素原子又は炭素数1~3の炭化水素基である。
炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、3-ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、イソオクチル基、2,3,5-トリメチルヘキシル基、4-エチル-5-メチルオクチル基及び2-エチルヘキシル基、テトラデシル基、オクタデシル基、イコシル基等の直鎖または分岐鎖のアルキル基;シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びシクロオクチル等の環状のアルキル基;フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、o-,m-若しくはp-トリル基、2,3-若しくは2,4-キシリル基、メシチル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ビフェニリル基、ベンズヒドリル基、トリチル基及びピレニル基等のアリール基等が挙げられる。これらの中でも、直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基が好ましい。
【0028】
上記式(1)中、ROは、「同一又は異なって、」炭素数2~18のオキシアルキレン基を表すが、これは、ポリアルキレングリコール中にn個存在するROのオキシアルキレン基が全て同一であってもよく、異なっていてもよいことを意味する。
上記オキシアルキレン基の炭素数は2~18であることが好ましい。より好ましくは2~12であり、更に好ましくは2~8であり、特に好ましくは2~4である。
上記式(1)中、ROで表されるオキシアルキレン基は、アルキレンオキシド付加物であり、このようなアルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、イソブチレンオキシド、1-ブテンオキシド、2-ブテンオキシド、スチレンオキシド等の炭素数2~8のアルキレンオキシドが挙げられる。より好ましくは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等の炭素数2~4のアルキレンオキシドであり、更に好ましくは、エチレンオキシド、プロピレンオキシドである。
また、上記ポリアルキレングリコールが、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシド等の中から選ばれる任意の2種類以上のアルキレンオキシド付加物である場合、ランダム付加、ブロック付加、交互付加等のいずれの形態であってもよい。なお、親水性と疎水性とのバランス確保のため、ポリアルキレングリコール中のオキシアルキレン基として、オキシエチレン基を必須成分として有することが好ましく、50モル%以上がオキシエチレン基であることがより好ましく、90モル%以上がオキシエチレン基であることが更に好ましい。
【0029】
上記式(1)中、nは、オキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、5~24である。これによりセメント組成物の粘性が低減される。nとしては好ましくは5~22であり、より好ましくは5~20であり、更に好ましくは5~18であり、特に好ましくは5~15である。
【0030】
上記式(1)中、xは、0~4の数を表し、yは、0又は1を表す。
xは1~4であることが好ましい。yは0であることが好ましい。yが0である単量体(A)は安価であるため、低コストで本発明のポリカルボン酸系共重合体を製造することができる。
yが0である場合、xは1~4であることが好ましく、より好ましくは1又は2であり、更に好ましくは2である。xが1~4である場合、Rはメチル基であることが好ましい。
上記yが1の場合には、xは0であることが好ましい。この場合、Rは水素原子、又は、メチル基であることがより好ましい。
【0031】
上記ポリアルキレングリコール系単量体(A)として具体的には、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等の(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート及びこれらの末端を炭素数1~30の炭化水素基で疎水変性したアルコキシ(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート;ビニルアルコール、アリルアルコール、メタリルアルコール、3-メチル-3-ブテン-1-オール、3-メチル-2-ブテン-1-オール、2-メチル-3-ブテン-1-オール、2-メチル-2-ブテン-1-オール、3-アリルオキシ-1,2-プロパンジオール等の炭素数2~8の不飽和アルコールにアルキレンオキサイドを5~24モル付加させた化合物及びこれらの末端を炭素数1~30の炭化水素基で疎水変性した化合物等が挙げられる。これらの中でも、炭素数2~8の不飽和アルコールにアルキレンオキサイドを5~24モル付加させた化合物及びこれらの末端を炭素数1~30の炭化水素基で疎水変性した化合物が好ましい。より好ましくは炭素数2~8の不飽和アルコールにアルキレンオキサイドを5~24モル付加させた化合物であり、更に好ましくはメタリルアルコール又は3-メチル-3-ブテン-1-オールにアルキレンオキサイドを付加させたものである。
【0032】
<不飽和モノカルボン酸系単量体(B)>
上記不飽和モノカルボン酸系単量体(B)(以下、単量体(B)ともいう。)は、分子内に不飽和基とカルボアニオンを形成しうる基とを1つずつ有する単量体であればよく、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、チグリン酸、3-メチルクロトン酸、2-メチル-2-ペンテン酸、α-ヒドロキシアクリル酸等;これらの1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩;下記不飽和ジカルボン酸系単量体と炭素数1~22のアルコール又は炭素数2~4のグリコールとのハーフエステル;不飽和ジカルボン酸系単量体と炭素数1~22のアミンとのハーフアミド等が挙げられる。
不飽和ジカルボン酸系単量体としては、分子内に不飽和基を1つとカルボアニオンを形成しうる基を2つとを有する単量体であればよく、マレイン酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、フマル酸等や、それらの1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩及び有機アミン塩等、それらの無水物が挙げられる。
上記不飽和モノカルボン酸系単量体(B)としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸と炭素数1~22のアルコール又は炭素数2~4のグリコールとのハーフエステル、フマル酸と炭素数1~22のアルコール又は炭素数2~4のグリコールとのハーフエステル、及び、これらの塩が好ましい。より好ましくは(メタ)アクリル酸(塩)であり、更に好ましくはアクリル酸(塩)である。
【0033】
上記炭素数1~22のアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナオール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール、ノナデカノール、イコサノール等が挙げられる。
【0034】
上記炭素数2~4のグリコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール等が挙げられる。
【0035】
上記炭素数1~22のアミンとしては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ペンチルアミン、ジペンチルアミン、ヘキシルアミン、ジヘキシルアミン、ヘプチルアミン、ジヘプチルアミン、オクチルアミン、ジオクチルアミン、ドデシルアミン等が挙げられる。
【0036】
<カルボン酸ヒドロキシアルキルエステル(C)>
上記カルボン酸ヒドロキシアルキルエステル(C)(以下、単量体(C)ともいう。)は、不飽和カルボン酸アルキルエステルのアルキル基に水酸基を有するものが挙げられる。上記不飽和カルボン酸としては、上述の不飽和モノカルボン酸系単量体(B)や不飽和ジカルボン酸系単量体が挙げられる。
上記不飽和カルボン酸としては、不飽和モノカルボン酸系単量体(B)が好ましく、より好ましくは(メタ)アクリル酸であり、更に好ましくはアクリル酸である。すなわち、カルボン酸ヒドロキシアルキルエステル(C)として、好ましくはヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートである。
上記カルボン酸ヒドロキシアルキルエステル(C)は、炭素数1~12のヒドロキシアルキル基を有することが好ましい。ヒドロキシアルキル基の炭素数としてより好ましくは1~8であり、更に好ましくは1~6であり、特に好ましくは1~4である。
ヒドロキシアルキル基として具体的には、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシ-1-メチルエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基、ヒドロキシペンチル基、ヒドロキシヘキシル基、ヒドロキシオクチル基、ヒドロキシノニル基、ヒドロキシデシル基等が挙げられる。
【0037】
上記カルボン酸ヒドロキシアルキルエステル(C)として具体的には、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-1-メチルエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチルアクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でも好ましくは2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートであり、より好ましくは2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートである。
【0038】
本発明の共重合体は、単量体(A)、(B)、(C)以外のその他の単量体(E)由来の構造単位(e)を有していてもよい。
その他の単量体(E)は、単量体(A)、(B)、(C)と共重合することができる限り特に制限されないが、例えば、3-(メタ)アリルオキシ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸、2-(メタ)アリルオキシエチレンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、p-スチレンスルホン酸、α-メチル-p-スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、ビニルスルファミン酸、(メタ)アリルスルホン酸、イソプレンスルホン酸、4-(アリルオキシ)ベンゼンスルホン酸、1-メチル-2-プロペン-1-スルホン酸、1,1-ジメチル-2-プロペン-1-スルホン酸、3-ブテン-1-スルホン酸、1-ブテン-3-スルホン酸、2-アクリルアミド-1-メチルプロパンスルホン酸、2-アクリルアミドプロパンスルホン酸、2-アクリルアミド-n-ブタンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-フェニルプロパンスルホン酸、2-((メタ)アクリロイルオキシ)エタンスルホン酸等の不飽和スルホン酸及びこれらの塩;3-(メタ)アリルオキシ-1,2-ジヒドロキシプロパン、1-アリルオキシ-3-ブトキシプロパン-2-オール等の水酸基含有エーテル類;N-ビニルピロリドン等のN-ビニルラクタム系単量体;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸iso-ノニル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル等の(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリルアミド、N-モノメチル(メタ)アクリルアミド、N-モノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド等のN置換若しくは無置換の(メタ)アクリルアミド;スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、インデン、ビニルナフタレン、フェニルマレイミド、ビニルアニリン等のビニルアリール単量体;エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソブチレン、オクテン等のアルケン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のカルボン酸ビニル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルエチレンカーボネート及びその誘導体;N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール及びこれらの塩またはこれらの4級化物等の不飽和アミン;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル系単量体等が挙げられる。
【0039】
〔共重合体の製造方法〕
本発明のポリカルボン酸系共重合体の製造は特に制限されないが、単量体成分を重合することにより製造することができ、単量体成分の具体例及び好ましい例は、上述のとおりである。また、全単量体成分100質量%に対する各単量体成分の含有割合は、上述の全構造単位100質量%に対する構造単位(a)~(e)の割合に基づき決定することができる。ポリアルキレングリコール系単量体(A)について式(1)におけるyが0である場合、反応性の観点から、ポリアルキレングリコール系単量体(A)の使用量は、構造単位(a)の目的とする割合よりも多くすることが好ましい。
【0040】
上記共重合体の製造において、得られる重合体の分子量調整のために、連鎖移動剤を使用することができる。連鎖移動剤としては、例えば、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、3-メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、2-メルカプトエタンスルホン酸等のチオール系連鎖移動剤;イソプロピルアルコール等の2級アルコール;亜リン酸、次亜リン酸及びその塩(次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム等)、亜硫酸、亜硫酸水素、亜二チオン酸、メタ重亜硫酸及びその塩(亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜二チオン酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム等)の低級酸化物及びその塩等の親水性連鎖移動剤が挙げられる。
【0041】
上記連鎖移動剤としてはまた、疎水性連鎖移動剤を使用することもできる。疎水性連鎖移動剤としては、例えば、ブタンチオール、オクタンチオール、デカンチオール、ドデカンチオール、ヘキサデカンチオール、オクタデカンチオール、シクロヘキシルメルカプタン、チオフェノール、チオグリコール酸オクチル、3-メルカプトプロピオン酸オクチル等の炭素数3以上の炭化水素基を有するチオール系連鎖移動剤が好適に使用される。
また、共重合体の分子量調整のためには、単量体(E)として、(メタ)アリルスルホン酸(塩)類等の連鎖移動性の高い単量体を用いることも有効である。
【0042】
上記連鎖移動剤の使用量は、適宜設定すればよいが、単量体成分の総量100モルに対し、好ましくは0.1モル以上、より好ましくは0.25モル以上、更に好ましくは0.5モル以上であり、また、好ましくは20モル以下、より好ましくは15モル以下、更に好ましくは10モル以下である。
【0043】
上記重合反応は、必要に応じてラジカル重合開始剤を使用し、溶液重合や塊状重合等の方法により行うことができる。溶液重合は、回分式でも連続式でも又はそれらの組み合わせでも行うことができ、その際に使用される溶媒としては、例えば、水;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール;ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n-ヘキサン等の芳香族又は脂肪族炭化水素;酢酸エチル等のエステル化合物;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル化合物等が挙げられる。中でも、水溶液重合法によって重合することが好適である。
【0044】
上記水溶液重合を行う場合は、ラジカル重合開始剤として、水溶性の重合開始剤、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;過酸化水素;2,2’-アゾビス-2-メチルプロピオンアミジン塩酸塩等のアゾアミジン化合物、2,2’-アゾビス-2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン塩酸塩等の環状アゾアミジン化合物、2-カルバモイルアゾイソブチロニトリル等のアゾニトリル化合物等の水溶性アゾ系開始剤等が使用され、この際、亜硫酸水素ナトリウム等のアルカリ金属亜硫酸塩、メタ二亜硫酸塩、次亜燐酸ナトリウム、モール塩等のFe(II)塩、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム二水和物、ヒドロキシルアミン塩酸塩、チオ尿素、L-アスコルビン酸(塩)、エリソルビン酸(塩)等の促進剤を併用することもできる。中でも、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩、過酸化水素とL-アスコルビン酸(塩)等の促進剤との組み合わせが好ましい。これらのラジカル重合開始剤や促進剤はそれぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、低級アルコール、芳香族若しくは脂肪族炭化水素、エステル化合物又はケトン化合物を溶媒とする溶液重合を行う場合、又は、塊状重合を行う場合には、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ナトリウムパーオキシド等のパーオキシド;t-ブチルハイドロパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド等のハイドロパーオキシド;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物等がラジカル重合開始剤として用いられる。この際アミン化合物等の促進剤を併用することもできる。更に、水-低級アルコール混合溶媒を用いる場合には、上記の種々のラジカル重合開始剤又はラジカル重合開始剤と促進剤の組み合わせの中から適宜選択して用いることができる。
【0045】
上記ラジカル重合開始剤の使用量は、単量体成分の総量100モルに対し、好ましくは0.001モル以上、より好ましくは0.01モル以上、更に好ましくは0.1モル以上、特に好ましくは0.2モル以上であり、また、好ましくは20モル以下、更により好ましくは10モル以下、特に好ましくは5モル以下、最も好ましくは3モル以下である。
【0046】
上記重合反応において、重合温度等の重合条件としては、用いられる重合方法、溶媒、重合開始剤、連鎖移動剤により適宜定められるが、重合温度としては、0℃以上であることが好ましく、また、150℃以下であることが好ましい。より好ましくは30℃以上であり、更に好ましくは50℃以上である。また、より好ましくは120℃以下であり、更に好ましくは100℃以下である。
【0047】
各単量体成分の反応容器への投入方法は特に限定されず、全量を反応容器に初期に一括投入する方法;全量を反応容器に分割又は連続投入する方法;一部を反応容器に初期に投入し、残りを反応容器に分割又は連続投入する方法等が挙げられる。また、反応途中で各モノマーの反応容器への投入速度を連続的又は段階的に変えて、各単量体の単位時間あたりの投入重量比を連続的又は段階的に変化させることにより、モノマー比が異なる2種以上の共重合体を重合反応中に同時に合成するようにしてもよい。なお、ラジカル重合開始剤は反応容器に初めから仕込んでもよく、反応容器へ滴下してもよく、また目的に応じてこれらを組み合わせてもよい。
上記のようにして得られた各重合体は、そのままでも分散剤として用いることができるが、必要に応じて、更にアルカリ性物質で中和して用いてもよい。アルカリ性物質としては、一価金属又は二価金属の水酸化物や炭酸塩等の無機塩;アンモニア;有機アミンが好適である。また、反応終了後、必要ならば濃度調整を行うこともできる。
【0048】
〔セメント添加剤〕
本発明のセメント添加剤は、本発明の共重合体を必須とするものであるが、上記共重合体を2種以上含んでいてもよく、上記共重合体と異なる共重合体を1種以上含んでいてもよい。
上記セメント添加剤における上記共重合体の含有量(2種以上の共重合体を含む場合は、その総含有量)は、特に制限されないが、セメント添加中の固形分(すなわち不揮発分)100質量%中、2質量%以上50質量%以下であることが好ましい。より好ましくは3質量%以上40質量%以下、更に好ましくは4質量%以上35質量%以下、特に好ましくは5質量%以上30質量%以下である。
なお、本明細書中、「セメント添加剤」とは、セメントペースト、モルタル、コンクリート等のセメント組成物へ添加される添加剤のことをいい、上記共重合体のみからなる剤であってもよいし、また、上記共重合体だけでなく、必要に応じて更に他の成分や添加剤等を含む剤であってもよい。
【0049】
上記セメント添加剤はまた、通常使用される他のセメント分散剤や減水剤を更に含有していてもよく、複数の併用も可能である。他のセメント分散剤(減水剤)としては特に限定されず、例えば、分子中にスルホン酸基を有する各種スルホン酸系分散剤(減水剤)や、分子中にポリオキシアルキレン鎖とカルボキシル基とを有する各種ポリカルボン酸系分散剤(減水剤)、分子中にリン酸基を有する各種リン酸系分散剤(減水剤)等が挙げられる。
本発明の共重合体と、通常使用される他のセメント分散剤(減水剤)とを併用する場合、本発明の共重合体は、流動性保持剤として、特に本発明の技術的意義を発揮することとなる。
上記セメント添加剤が本発明の共重合体と他のセメント分散剤及び/又は減水剤とを含む形態もまた、本発明の好ましい実施形態の1つである。
本発明の共重合体を他のセメント分散剤(減水剤)と併用する場合、本発明の共重合体の含有量は、他のセメント分散剤(減水剤)の含有量100質量%に対して5~100質量%であることが好ましい。より好ましくは5~40質量%である。
【0050】
上記スルホン酸系分散剤(減水剤)としては、分子中にスルホン酸基又はスルホン酸の塩の基を有する化合物を含むものであればよい。スルホン酸基又はスルホン酸の塩の基を有する化合物としては、分子中に芳香環を有するものであることが好ましい。
上記スルホン酸系分散剤(減水剤)としては、例えば、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、メチルナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、アントラセンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等のポリアルキルアリールスルホン酸塩系分散剤(減水剤);メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等のメラミンホルマリン樹脂スルホン酸塩系分散剤(減水剤);アミノアリールスルホン酸-フェノール-ホルムアルデヒド縮合物等の芳香族アミノスルホン酸塩系分散剤(減水剤);リグニンスルホン酸塩、変性リグニンスルホン酸塩等のリグニンスルホン酸塩系減水剤;ポリスチレンスルホン酸塩系分散剤(減水剤)等が挙げられる。
上記スルホン酸系分散剤(減水剤)としては、ポリアルキルアリールスルホン酸塩系分散剤(減水剤)及びリグニンスルホン酸塩系分散剤(減水剤)が好ましく、より好ましくは、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物である。
【0051】
上記ポリカルボン酸系分散剤(減水剤)としては、不飽和カルボン酸系単量体と(ポリ)アルキレングリコール系単量体とを含む単量体成分を共重合して得られる重合体が好ましい。
不飽和カルボン酸系単量体としては、上述の単量体(B)と同様の単量体が挙げられる。
(ポリ)アルキレングリコール系単量体としては、具体的には例えば、炭素数2~8の不飽和アルコールにアルキレンオキサイドを1~300モル付加させた化合物及びこれらの末端疎水変性物や、不飽和カルボン酸系単量体と平均付加モル数1~300の(ポリ)アルキレングリコールとのエステル化物及びこれらの末端疎水変性物等が挙げられる。
【0052】
上記ポリカルボン酸系分散剤(減水剤)は、不飽和カルボン酸系単量体由来の構造単位の割合が、全構造単位100質量%に対して、5~45質量%であることが好ましい。より好ましくは10~30質量%である。
上記ポリカルボン酸系分散剤(減水剤)は、(ポリ)アルキレングリコール系単量体由来の構造単位の割合が、全構造単位100質量%に対して、55~95質量%であることが好ましい。より好ましくは70~90質量%である。
上記ポリカルボン酸系分散剤(減水剤)は、重量平均分子量が、5000~500000であることが好ましい。より好ましくは7000~200000であり、更に好ましくは8000~100000である。上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、後述する実施例に記載の条件で測定することができる。
【0053】
上記リン酸系分散剤(減水剤)としては、例えば、ポリアルキレングリコールを含むリン酸系重合体、リン酸系縮合物が挙げられる。
リン酸系重合体としては、(ポリ)アルキレングリコール系単量体とリン酸系単量体とを含む単量体成分を共重合して得られる重合体が好ましい。
上記リン酸系単量体としては、例えば、リン酸モノ(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリル酸エステル、リン酸ジ-{(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリル酸}エステル、(ポリ)アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートアシッドリン酸エステル等が挙げられる。
リン酸系縮合物としては、例えば、リン酸エステルとアルデヒド化合物との縮合物が好適である。リン酸エステルとしては、リン酸類(塩であってもよい)と、水酸基含有化合物とのエステル化物であれば特に限定されず、1種又は2種以上を使用することができる。なお、リン酸モノエステル、リン酸ジエステル、リン酸トリエステルのいずれであってもよい。
【0054】
また、上記セメント添加剤は、例えば、水溶性高分子物質、高分子エマルジョン、遅延剤、早強剤・促進剤、鉱油系消泡剤、油脂系消泡剤、脂肪酸系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤、オキシアルキレン系消泡剤、アルコール系消泡剤、アミド系消泡剤、リン酸エステル系消泡剤、金属石鹸系消泡剤、シリコーン系消泡剤、AE剤、界面活性剤、防水剤、防錆剤、ひび割れ低減剤、膨張材、セメント湿潤剤、増粘剤、分離低減剤、凝集剤、乾燥収縮低減剤、強度増進剤、セルフレベリング剤、防錆剤、着色剤、防カビ剤、高炉スラグ、フライアッシュ、シンダーアッシュ、クリンカーアッシュ、ハスクアッシュ、シリカヒューム、シリカ粉末、石膏等のセメント添加剤(材)の1種又は2種以上を含んでいてもよい。
【0055】
〔セメント組成物〕
上記セメント添加剤は、各種水硬性材料、すなわちセメントや石膏等のセメント組成物やそれ以外の水硬性材料に用いることができる。このような水硬性材料と水と上記セメント添加剤とを含有し、更に必要に応じて細骨材(砂等)や粗骨材(砕石等)を含む水硬性組成物の具体例としては、セメントペースト、モルタル、コンクリート、プラスター等が挙げられる。これらの水硬性組成物の中でも、水硬性材料としてセメントを使用するセメント組成物が最も好ましく、上記セメント添加剤とセメントとを含むセメント組成物もまた、本発明の1つである。
【0056】
本発明のセメント組成物において、セメントとしては、ポルトランドセメント(普通、早強、超早強、中庸熱、耐硫酸塩及びそれぞれの低アルカリ形);各種混合セメント(高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント);白色ポルトランドセメント;アルミナセメント;超速硬セメント(1クリンカー速硬性セメント、2クリンカー速硬性セメント、リン酸マグネシウムセメント);グラウト用セメント;油井セメント;低発熱セメント(低発熱型高炉セメント、フライアッシュ混合低発熱型高炉セメント、ビーライト高含有セメント);超高強度セメント;セメント系固化材;エコセメント(都市ごみ焼却灰、下水汚泥焼却灰の1種以上を原料として製造されたセメント)等の他、これらに高炉スラグ、フライアッシュ、シンダーアッシュ、クリンカーアッシュ、ハスクアッシュ、シリカヒューム、シリカ粉末、石灰石粉末等の微粉体や石膏を添加したもの等が挙げられる。本発明のセメント組成物に含まれるセメントは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
上記骨材としては、砂利、砕石、水砕スラグ、再生骨材等以外に、珪石質、粘土質、ジルコン質、ハイアルミナ質、炭化珪素質、黒鉛質、クロム質、クロマグ質、マグネシア質等の耐火骨材等が挙げられる。
【0057】
上記セメント組成物においては、その1mあたりの単位水量、セメント使用量及び水/セメント比は特に限定されず、例えば、単位水量100~185kg/m、使用セメント量250~800kg/m、水/セメント比(重量比)=0.12~0.74であることが好ましい。より好ましくは、単位水量120~175kg/m、使用セメント量270~800kg/m、水/セメント比(重量比)=0.15~0.65である。このように本発明のセメント組成物は、貧配合~富配合まで幅広く使用可能であり、単位セメント量の多い高強度コンクリート、単位セメント量が300kg/m以下の貧配合コンクリートのいずれにも有効である。また、本発明のセメント組成物は、比較的高減水率の領域、すなわち、水/セメント比(重量比)=0.15~0.5(好ましくは0.15~0.4)といった水/セメント比の低い領域においても、良好に使用することができる。
【0058】
また本発明のセメント添加剤を使用することにより、得られるセメント組成物は幅広い配合において長時間の優れた作業性を有することから、特にレディーミクストコンクリート、吹付けコンクリート等に有効に適用できる。その一方で、コンクリート2次製品用のコンクリート(プレキャストコンクリート)、遠心成形用コンクリート、振動締め固め用コンクリート、蒸気養生コンクリート等にも適用可能である。また、中流動コンクリート(スランプ値が22~25cmの範囲のコンクリート)、高流動コンクリート(スランプ値が25cm以上で、スランプフロー値が500~700mmの範囲のコンクリート)、自己充填性コンクリート、セルフレベリング材等の高い流動性を要求されるモルタルやコンクリートにも本発明のセメント添加剤は有効である。
【0059】
上記セメント組成物において、本発明のセメント添加剤の配合割合としては、例えば、本発明の必須成分である共重合体(複数含む場合はその合計量)が、固形分換算で、セメント質量の全量100質量%に対して、0.005~10質量%となるように設定することが好ましい。0.005質量%未満では性能的に充分とはならないおそれがあり、逆に10質量%を超えると、その効果は実質上頭打ちとなり経済性の面からも不利となるおそれがある。より好ましくは0.01~5質量%であり、更に好ましくは0.02~3質量%である。なお、本明細書中、固形分含量は、以下のようにして測定することができる。
<固形分測定方法>
1.アルミ皿を精秤する。
2.1で精秤したアルミ皿に固形分測定物を精秤する。
3.窒素雰囲気下130℃に調温した乾燥機に2で精秤した固形分測定物を1時間入れる。
4.1時間後、乾燥機から取り出し、室温のデシケーター内で15分間放冷する。
5.15分後、デシケーターから取り出し、アルミ皿+測定物を精秤する。
6.5で得られた質量から1で得られたアルミ皿の質量を差し引き、2で得られた固形分測定物の質量で除することで固形分を測定する。
【実施例0060】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0061】
<ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)>
ポリカルボン酸系共重合体の重量平均分子量は、以下の測定方法により測定した。
装置:Alliance(e2695)(Waters社製)
解析ソフト:Empower2プロフェッショナル+GPCオプション(Waters社製)
使用カラム:TSKguardcolumnsSWXL(内径:6.0mm×40mm)+TSKgel G4000SWXL(内径:7.8mm×300mm)+G3000SWXL(内径:7.8mm×300mm)+G2000SWXL(内径:7.8mm×300mm)(いずれも東ソー社製)
検出器:示差屈折率計(RI)検出器(Waters社製、Waters 2414)
溶離液:イオン交換水10999gとアセトニトリル6001gの混合溶媒に酢酸ナトリウム三水和物115.6gを溶解し、さらに酢酸でpH6.0に調整した溶液。
流量:1mL/分
カラム温度:40℃
測定時間:45分
試料液注入量:100μL(試料濃度0.5質量%の溶離液溶液)
GPC標準サンプル:東ソー(株)製のポリエチレングリコール、Mp=255000、200000、107000、72750、44900、31400、21300、11840、6450、4020、1470
検量線:上記ポリエチレングリコールのMp値を用いて3次式で作成した。
【0062】
<高速液体クロマトグラフィー(LC)>
反応原料として用いた各単量体の残存量を、以下の条件で測定し、ポリカルボン酸系共重合体の組成計算に使用した。
装置:Alliance 2695(Waters社製)
解析ソフト:Empowerプロフェッショナル(Waters社製)
カラム:Atlantis dC18 5μm(内径4.6mm×長さ250mm)×2本(Waters社製)
検出器:示差屈折率計(RI)検出器(Waters 2414)、多波長可視紫外(PDA)検出器(Waters 2996)
溶媒:100mM酢酸ナトリウム水溶液とアセトニトリルを6:4の比率で混合した溶液流量:1mL/分
カラム温度:40℃
測定時間:30分
試料液注入量:100μL(試料濃度は1質量%)
【0063】
<モルタル試験方法>
モルタル試験は、温度が20℃±1℃、相対湿度が60%±15%の環境下で行った。モルタルは下記に示す材料を用いてC/S/W=900/1260/270(g)となるように配合した。
C:セメント(普通ポルトランドセメント、太平洋セメント社製)
S:細骨材(大井川産陸砂)
W:試料(共重合体)と消泡剤のイオン交換水溶液
なお、Wについては所定量の試料およびセメント質量に対して0.005質量%の消泡剤(マイクロエア404、BASFポゾリス社製)を含み、イオン交換水中充分に均一溶解させた。また各試料の添加量は、セメント質量に対する各試料の固形分の質量%で示した。
【0064】
<モルタルの調製>
モルタルの調製は次のように行った。ハイパワーミキサー(丸東製作所製、型番:CB-34)を用い、混練容器へ上記C(セメント)および上記S(細骨材)を投入し、低速で10秒間混練した。さらに低速で混練しながら、W(試料と消泡剤のイオン交換水溶液)を15秒間かけて投入した。混練を始めてから40秒後にミキサーを停止し、20秒間かけて容器の壁に付着したモルタルの掻き落としを行った。その後、さらに高速で180秒間混練を行い、モルタルを調製した。
【0065】
<モルタルフロー値の測定方法>
上記のようにして得られたモルタルを、水平に設置したフロー測定板(鋼製平板、60cm×60cm)上に置かれたスランプコーン(JIS-A―1171に準拠、上端内径50mm、下端内径100mm、高さ150mm)に半量詰めて15回突き棒で突き、さらにモルタルをスランプコーンのすりきりいっぱいまで詰めて15回突き棒で突いた後、スランプコーンの表面をならした。その後、最初にミキサーを始動させてから11分後にスランプコーンを垂直に引き上げ、広がったモルタルの直径(最も長い部分の直径(長径)および該長径に対して90度をなす部分の直径)を2箇所測定し、その平均値をモルタルフロー値とした(初期フロー値)。なお、モルタルフロー値は、数値が大きいほど分散性能が優れていることを示す。同様にして、ミキサー始動開始より、60分経過後のモルタルフロー値を測定した。
【0066】
<ロート流下時間の測定方法>
得られたモルタルのロート流下時間は、土木学会規準JSCE-F541に準じて、J14ロートを用いて測定した。同様にして、ミキサー始動開始より60分経過後のモルタルのロート流下時間を測定した。
【0067】
<減水性能、保持性能、及び粘性の評価>
上記モルタルフロー値と上記ロート流下時間より、各試料の性能を評価した。
【0068】
<減水性能>
混練直後(初期)のフロー値が250mmとなるために必要な試料の添加量に基づいてセメント(C)に占める割合([wt%/C])を算出した。
【0069】
<保持性能>
上記混練直後(初期)のフロー値が250mmのモルタルを使用し、該モルタルの混練後60分経過後のフロー値を測定して、フロー保持率(60分後フロー値/初期フロー値)を算出した。
【0070】
<粘性>
混練直後(初期)のフロー値が250mmとなるように調製したモルタルを使用し、該初期フロー値のロート流下時間(初期流下時間)、及び混練後60分経過後のフロー値が280mmとなったロート流下時間(60分後流下時間)を測定した。なお、流下時間が短いほど、粘性が低いと評価した。
【0071】
<製造例1>
温度計、撹拌機、滴下ロート、窒素導入管及び還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、イオン交換水282部、3-メチル-3-ブテン-1-オールにエチレンオキシドを平均10モル付加した不飽和ポリアルキレングリコール(IPN-10)を仕込み、65℃に昇温した後、そこへ過酸化水素1.47部とイオン交換水2.72部とを含む過酸化水素水溶液を添加した。次に、アクリル酸を反応容器内に5時間かけて滴下し、それと同時に、イオン交換水93.1部にL-アスコルビン酸0.76部及び3-メルカプトプロピオン酸7.62部を溶解させた水溶液を5.5時間かけて滴下した。その後、1時間引き続いて65℃に温度を維持し重合反応を終了した。その後、重合反応温度以下の温度で水酸化ナトリウム水溶液を用いて反応溶液をpH7に中和し、重量平均分子量5,000の共重合体1の水溶液を得た。IPN-10及びアクリル酸の合計の使用量は408部であり、LCにより測定した単量体の残存量に基づき共重合体における単量体組成の仕上がり比を算出した。
【0072】
<製造例2>
温度計、撹拌機、滴下ロート、窒素導入管及び還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、イオン交換水272部、3-メチル-3-ブテン-1-オールにエチレンオキシドを平均10モル付加した不飽和ポリアルキレングリコール(IPN-10)を仕込み、65℃に昇温した後、そこへ過酸化水素1.47部とイオン交換水2.72部とを含む過酸化水素水溶液を添加した。次に、アクリル酸を反応容器内に5時間かけて滴下し、それと同時に、イオン交換水105部にL-アスコルビン酸0.76部及び3-メルカプトプロピオン酸6.10部を溶解させた水溶液を5.5時間かけて滴下した。その後、1時間引き続いて65℃に温度を維持し重合反応を終了した。その後、重合反応温度以下の温度で水酸化ナトリウム水溶液を用いて反応溶液をpH7に中和し、重量平均分子量6,000の共重合体2の水溶液を得た。IPN-10及びアクリル酸の合計の使用量は408部であり、LCにより測定した単量体の残存量に基づき共重合体における単量体組成の仕上がり比を算出した。
【0073】
<製造例3>
温度計、撹拌機、滴下ロート、窒素導入管及び還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、イオン交換水287部、3-メチル-3-ブテン-1-オールにエチレンオキシドを平均10モル付加した不飽和ポリアルキレングリコール(IPN-10)を仕込み、65℃に昇温した後、そこへ過酸化水素1.47部とイオン交換水2.72部とを含む過酸化水素水溶液を添加した。次に、アクリル酸を反応容器内に5時間かけて滴下し、それと同時に、イオン交換水91部にL-アスコルビン酸0.76部及び3-メルカプトプロピオン酸4.58部を溶解させた水溶液を5.5時間かけて滴下した。その後、1時間引き続いて65℃に温度を維持し重合反応を終了した。その後、重合反応温度以下の温度で水酸化ナトリウム水溶液を用いて反応溶液をpH7に中和し、重量平均分子量7,500の共重合体3の水溶液を得た。IPN-10及びアクリル酸の合計の使用量は408部であり、LCにより測定した単量体の残存量に基づき共重合体における単量体組成の仕上がり比を算出した。
【0074】
<製造例4>
温度計、撹拌機、滴下ロート、窒素導入管及び還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、イオン交換水317部、3-メチル-3-ブテン-1-オールにエチレンオキシドを平均10モル付加した不飽和ポリアルキレングリコール(IPN-10)を仕込み、65℃に昇温した後、そこへ過酸化水素1.91部とイオン交換水3.56部とを含む過酸化水素水溶液を添加した。次に、アクリル酸を反応容器内に5時間かけて滴下し、それと同時に、イオン交換水126部にL-アスコルビン酸2.32部及び3-メルカプトプロピオン酸3.10部を溶解させた水溶液を5.5時間かけて滴下した。その後、1時間引き続いて65℃に温度を維持し重合反応を終了した。その後、重合反応温度以下の温度で水酸化ナトリウム水溶液を用いて反応溶液をpH7に中和し、重量平均分子量10,000の共重合体4の水溶液を得た。IPN-10及びアクリル酸の合計の使用量は500.4部であり、LCにより測定した単量体の残存量に基づき共重合体における単量体組成の仕上がり比を算出した。
【0075】
<製造例5>
温度計、撹拌機、滴下ロート、窒素導入管及び還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、イオン交換水268部、3-メチル-3-ブテン-1-オールにエチレンオキシドを平均10モル付加した不飽和ポリアルキレングリコール(IPN-10)を仕込み、65℃に昇温した後、そこへ過酸化水素2.12部とイオン交換水3.94部とを含む過酸化水素水溶液を添加した。次に、アクリル酸及びアクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEA)を反応容器内に5時間かけて滴下し、それと同時に、イオン交換水213部にL-アスコルビン酸2.56部及び3-メルカプトプロピオン酸4.32部を溶解させた水溶液を5.5時間かけて滴下した。その後、1時間引き続いて65℃に温度を維持し重合反応を終了した。その後、重合反応温度以下の温度で水酸化ナトリウム水溶液を用いて反応溶液をpH7に中和し、重量平均分子量11,000の共重合体5の水溶液を得た。IPN-10、アクリル酸及びHEAの合計の使用量は500部であり、LCにより測定した単量体の残存量に基づき共重合体における単量体組成の仕上がり比を算出した。
【0076】
<製造例6>
温度計、撹拌機、滴下ロート、窒素導入管及び還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、イオン交換水260部、3-メチル-3-ブテン-1-オールにエチレンオキシドを平均10モル付加した不飽和ポリアルキレングリコール(IPN-10)を仕込み、65℃に昇温した後、そこへ過酸化水素2.24部とイオン交換水4.16部とを含む過酸化水素水溶液を添加した。次に、アクリル酸及びアクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEA)を反応容器内に5時間かけて滴下し、それと同時に、イオン交換水212部にL-アスコルビン酸2.71部及び3-メルカプトプロピオン酸4.86部を溶解させた水溶液を5.5時間かけて滴下した。その後、1時間引き続いて65℃に温度を維持し重合反応を終了した。その後、重合反応温度以下の温度で水酸化ナトリウム水溶液を用いて反応溶液をpH7に中和し、重量平均分子量10,000の共重合体6の水溶液を得た。IPN-10、アクリル酸及びHEAの合計の使用量は507.6部であり、LCにより測定した単量体の残存量に基づき共重合体における単量体組成の仕上がり比を算出した。
【0077】
<製造例7>
温度計、撹拌機、滴下ロート、窒素導入管及び還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、イオン交換水293部、3-メチル-3-ブテン-1-オールにエチレンオキシドを平均10モル付加した不飽和ポリアルキレングリコール(IPN-10)を仕込み、65℃に昇温した後、そこへ過酸化水素2.29部とイオン交換水4.25部とを含む過酸化水素水溶液を添加した。次に、アクリル酸及びアクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEA)を反応容器内に5時間かけて滴下し、それと同時に、イオン交換水178部にL-アスコルビン酸2.77部及び3-メルカプトプロピオン酸4.96部を溶解させた水溶液を5.5時間かけて滴下した。その後、1時間引き続いて65℃に温度を維持し重合反応を終了した。その後、重合反応温度以下の温度で水酸化ナトリウム水溶液を用いて反応溶液をpH7に中和し、重量平均分子量10,000の共重合体7の水溶液を得た。IPN-10、アクリル酸及びHEAの合計の使用量は508.1部であり、LCにより測定した単量体の残存量に基づき共重合体における単量体組成の仕上がり比を算出した。
【0078】
<製造例8>
温度計、撹拌機、滴下ロート、窒素導入管及び還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、イオン交換水153部、3-メチル-3-ブテン-1-オールにエチレンオキシドを平均50モル付加した不飽和ポリアルキレングリコール(IPN-50)を仕込み、65℃に昇温した後、そこへ過酸化水素0.36部とイオン交換水6.77部とを含む過酸化水素水溶液を添加した。次に、アクリル酸及びアクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEA)を反応容器内に3時間かけて滴下し、それと同時に、イオン交換水29.0部にL-アスコルビン酸0.46部及び3-メルカプトプロピオン酸1.39部を溶解させた水溶液を3.5時間かけて滴下した。その後、1時間引き続いて65℃に温度を維持し重合反応を終了した。その後、重合反応温度以下の温度で水酸化ナトリウム水溶液を用いて反応溶液をpH7に中和し、重量平均分子量30,000の共重合体8の水溶液を得た。IPN-10、アクリル酸及びHEAの合計の使用量は254.9部であり、LCにより測定した単量体の残存量に基づき共重合体における単量体組成の仕上がり比を算出した。
【0079】
<製造例9>
温度計、撹拌機、滴下ロート、窒素導入管及び還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、イオン交換水106部、3-メチル-3-ブテン-1-オールにエチレンオキシドを平均50モル付加した不飽和ポリアルキレングリコール(IPN-50)を仕込み、65℃に昇温した後、そこへ過酸化水素0.19部とイオン交換水3.59部とを含む過酸化水素水溶液を添加した。次に、アクリル酸を反応容器内に5時間かけて滴下し、それと同時に、イオン交換水49.3部にL-アスコルビン酸0.24部を溶解させた水溶液を5.5時間かけて滴下した。その後、1時間引き続いて65℃に温度を維持し重合反応を終了した。その後、重合反応温度以下の温度で水酸化ナトリウム水溶液を用いて反応溶液をpH7に中和し、重量平均分子量40,000の共重合体9の水溶液を得た。IPN-50及びアクリル酸の合計の使用量は274.7部であり、LCにより測定した単量体の残存量に基づき共重合体における単量体組成の仕上がり比を算出した。
【0080】
<製造例10>
温度計、撹拌機、滴下ロート、窒素導入管及び還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、イオン交換水277部、3-メチル-3-ブテン-1-オールにエチレンオキシドを平均50モル付加した不飽和ポリアルキレングリコール(IPN-50)を仕込み、65℃に昇温した後、そこへ過酸化水素0.67部とイオン交換水12.73部とを含む過酸化水素水溶液を添加した。次に、アクリル酸を反応容器内に3時間かけて滴下し、それと同時に、イオン交換水16.49部にL-アスコルビン酸0.87部及び3-メルカプトプロピオン酸1.57部を溶解させた水溶液を3.5時間かけて滴下した。その後、1時間引き続いて65℃に温度を維持し重合反応を終了した。その後、重合反応温度以下の温度で水酸化ナトリウム水溶液を用いて反応溶液をpH7に中和し、重量平均分子量30,000の共重合体10の水溶液を得た。IPN-50及びアクリル酸の合計の使用量は458.4部であり、LCにより測定した単量体の残存量に基づき共重合体における単量体組成の仕上がり比を算出した。
【0081】
製造例1~10で得られた共重合体1~10における各構造単位の組成比(仕上がり比)、重量平均分子量を表1に示した。
【0082】
【表1】
【0083】
<実施例1~6及び比較例1、2>
製造例1~6、8及び9で得られた共重合体1~6、8及び9について上述の方法により流動性保持率、粘性の保持性を評価した。結果を表2に示した。
【0084】
【表2】
【0085】
<実施例7~13及び比較例3、4>
製造例1~9で得られた共重合体1~9のいずれかとセメント分散剤として共重合体10とを7:3の質量比で混合して試料を調製した。これらについて上述の方法により流動性保持率、粘性の保持性を評価した。結果を表3に示した。
なお、表3における添加量は試料の添加量である。
【0086】
【表3】