(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123398
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】管用ねじ継手
(51)【国際特許分類】
F16L 15/06 20060101AFI20240905BHJP
F16L 15/04 20060101ALI20240905BHJP
E21B 19/16 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
F16L15/06
F16L15/04 A
E21B19/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030786
(22)【出願日】2023-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】595099867
【氏名又は名称】バローレック・オイル・アンド・ガス・フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100104444
【弁理士】
【氏名又は名称】上羽 秀敏
(74)【代理人】
【識別番号】100107593
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 太郎
(72)【発明者】
【氏名】栗生 賢
(72)【発明者】
【氏名】丸田 賢
(72)【発明者】
【氏名】井瀬 景太
(72)【発明者】
【氏名】杉野 正明
(72)【発明者】
【氏名】小川 正裕
【テーマコード(参考)】
2D129
3H013
【Fターム(参考)】
2D129AB01
2D129EA21
2D129EA23
2D129EA26
3H013JA02
3H013JA03
(57)【要約】
【課題】圧縮荷重負荷時においても高い密封性能を発揮できる管用ねじ継手を提供する。
【解決手段】管用ねじ継手1はピン2とボックス3とからなる。ピン2は、外ショルダ面21と、テーパーねじからなる雄ねじ22と、ピンシール面23と、内ショルダ面25とを含む。ボックス3は、外ショルダ面31と、雌ねじ32と、ボックスシール面33と、内ショルダ面35とを含む。ピン2及びボックス3の外ショルダ面21,31は、締結時に互いに接触するトルクショルダとして機能する。ピン2及びボックス3の内ショルダ面25,35は、締結時には接触せず、締結状態で比較的大きな圧縮荷重が負荷されると圧縮荷重の一部を負担するように互いに接触し、これによりピン及びボックスの相対的な軸方向移動を抑制し、シール面23,33同士の接触による密封性能を維持する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の管状部材の管端部に設けられた管状のピンと、第2の管状部材の管端部に設けられた管状のボックスとから構成され、前記ピンが前記ボックスにねじ込まれて前記ピンと前記ボックスとが締結される、管用ねじ継手であって、
前記ピンは、前記ピンの外周に設けられ且つ先端側に至るにしたがって徐々に小径となるテーパーねじからなる雄ねじと、前記雄ねじよりも先端側で前記ピンの外周に設けられたピンシール面と、前記ピンシール面よりも先端側に設けられたノーズ部と、前記ノーズ部の先端面により構成されるピン内ショルダ面と、前記ピンの基端部に設けられ且つ前記第1の管状部材の管本体の外周面から径方向内方に延びるピン外ショルダ面とを備え、
前記ボックスは、前記ボックスの内周に設けられ且つ締結状態で前記雄ねじと噛み合う雌ねじと、前記ボックスの内周に設けられ且つ締結状態で前記ピンシール面に接触するボックスシール面と、締結状態で前記ノーズ部の外周面に対して隙間を有して径方向に対向する内周面を有するねじ無し部と、前記ピン内ショルダ面に対して軸方向に対向するボックス内ショルダ面と、前記ピン外ショルダ面に対して軸方向に対向するボックス外ショルダ面とを備え、
前記ピン外ショルダ面及び前記ボックス外ショルダ面は、締結時に互いに接触するトルクショルダとして機能し、
締結状態の前記ねじ継手に軸方向荷重が負荷されていないときは前記ピン内ショルダ面と前記ボックス内ショルダ面との間に隙間が形成されるよう、前記ピンと前記ボックスとが締結される前の前記ピン外ショルダ面と前記ピン内ショルダ面との間の軸方向距離Dpよりも、前記ピンと前記ボックスとが締結される前の前記ボックス外ショルダ面と前記ボックス内ショルダ面との間の軸方向距離Dbが大きく、
締結状態の前記ねじ継手に所定の軸方向圧縮荷重が負荷されると前記ピン及び前記ボックスの弾性変形により前記ピン内ショルダ面と前記ボックス内ショルダ面とが接触してこれらショルダ面間で軸方向圧縮荷重の一部が伝達されるよう、前記距離Dpと前記距離Dbとの差の大きさが定められている、管用ねじ継手。
【請求項2】
請求項1に記載の管用ねじ継手において、
締結状態の前記ねじ継手に軸方向荷重が負荷されていないときは前記雄ねじの挿入面と前記雌ねじの挿入面との間に隙間が形成されるとともに、締結状態の前記ねじ継手に所定の軸方向圧縮荷重が負荷されると前記雄ねじの挿入面と前記雌ねじの挿入面とが接触してこれら挿入面間で軸方向圧縮荷重の一部が伝達されるよう、前記雄ねじ及び前記雌ねじが構成されており、
前記距離Dpと前記距離Dbとの差の大きさは、締結状態で軸方向荷重無負荷時に前記雄ねじ及び前記雌ねじの挿入面間に形成される隙間の大きさとの対比において、等しいか若しくはより大きい、管用ねじ継手。
【請求項3】
請求項1に記載の管用ねじ継手において、
締結状態の前記ねじ継手に軸方向荷重が負荷されていないときは前記雄ねじの挿入面と前記雌ねじの挿入面との間に隙間が形成されるとともに、締結状態の前記ねじ継手に所定の軸方向圧縮荷重が負荷されると前記雄ねじの挿入面と前記雌ねじの挿入面とが接触してこれら挿入面間で軸方向圧縮荷重の一部が伝達されるよう、前記雄ねじ及び前記雌ねじが構成されており、
締結状態で軸方向荷重無負荷時に前記ピン内ショルダ面と前記ボックス内ショルダ面との間に形成される隙間の大きさが、締結状態で軸方向荷重無負荷時に前記雄ねじ及び前記雌ねじの挿入面間に形成される隙間の大きさと等しくなるように、前記距離Dp及び前記距離Dbが定められている、管用ねじ継手。
【請求項4】
請求項1に記載の管用ねじ継手において、
前記第2の管状部材の管本体の内径は前記第1の管状部材の管本体の内径よりも小さく、前記ピンの内周面は、前記第1の管状部材の管本体の内周面に連なり且つ前記第1の管状部材の管本体と等しい内径を有する非縮径加工部と、前記非縮径加工部よりも先端側に位置し且つ前記第2の管状部材の管本体と等しい内径を有する縮径加工部とを含む、管用ねじ継手。
【請求項5】
請求項4に記載の管用ねじ継手において、
前記ボックスの奥側の前記雌ねじの端部は、締結状態で前記ピンの前記縮径加工部の径方向外方に位置する、管用ねじ継手。
【請求項6】
請求項1に記載の管用ねじ継手において、
前記ピン外ショルダ面及び前記ボックス外ショルダ面は、軸方向に沿う断面においてそれらの径方向内端よりも径方向外端が前記ピンの先端側に所定の傾斜角で傾斜しており、
前記ピン内ショルダ面及び前記ボックス内ショルダ面は、軸方向に沿う断面においてそれらの径方向内端よりも径方向外端が前記ピンの先端側に所定の傾斜角で傾斜している、管用ねじ継手。
【請求項7】
請求項6に記載の管用ねじ継手において、
前記ピン外ショルダ面の傾斜角及び前記ピン内ショルダ面の傾斜角のうち少なくとも一方が5°以上である、管用ねじ継手。
【請求項8】
請求項6に記載の管用ねじ継手において、
前記ピン外ショルダ面の傾斜角及び前記ピン内ショルダ面の傾斜角の両方が5°以上である、管用ねじ継手。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の管用ねじ継手において、
前記ボックスは、前記第1の管状部材の管本体の外径の100%よりも大きく110%よりも小さい外径を有する、管用ねじ継手。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか1項に記載の管用ねじ継手において、
前記第1の管状部材は油井管であり、前記第1の管状部材の管本体は前記油井管の管本体であり、前記第2の管状部材は、前記油井管を他の油井管に連結するためのカップリングである、管用ねじ継手。
【請求項11】
請求項10に記載の管用ねじ継手において、
前記所定の軸方向圧縮荷重は、次式(1)で表される荷重Lcである、管用ねじ継手。
Lc=Lp×(CCS/Ap)・・・(1)
ここで、Lpは内外圧無負荷時における前記油井管の管本体の圧縮降伏荷重、CCSは、前記ピンの危険断面積PCCS及び前記ボックスの危険断面積BCCSのうちいずれか小さい方として定義されるねじ継手の危険断面積、Apは前記油井管の管本体の横断面の断面積である。
【請求項12】
請求項1~8のいずれかに記載の管用ねじ継手において、
前記雄ねじよりも前記ピンの基端側では前記ピンの外周にシール面が設けられていない、管用ねじ継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、油井管などの鋼管の連結に好適に用いることのできる管用ねじ継手に関する。
【背景技術】
【0002】
油井、天然ガス井等(以下、総称して「油井」ともいう。)においては、地下資源を採掘するため、複数段の井戸壁を構築するケーシングや、該ケーシング内に配置されてオイルやガスを生産するチュービングが用いられる。これらケーシングやチュービングは、多数の鋼管が順次連結されて成り、その連結に下記の特許文献1~4に示されるようなねじ継手が用いられる。油井に用いられる鋼管は油井管とも称される。
【0003】
ねじ継手の形式は、インテグラル型とカップリング型とに大別される。
【0004】
インテグラル型では、油井管同士が直接連結される。具体的には、油井管の一端には雌ねじ部が、他端には雄ねじ部が設けられ、一の油井管の雌ねじ部に他の油井管の雄ねじ部がねじ込まれることにより、油井管同士が連結される。
【0005】
カップリング型では、管状のカップリングを介して油井管同士が連結される。具体的には、カップリングの両端に雌ねじ部が設けられ、油井管の両端には雄ねじ部が設けられる。そして、カップリングの一方の雌ねじ部に一の油井管の一方の雄ねじ部がねじ込まれるとともに、カップリングの他方の雌ねじ部に他の油井管の一方の雄ねじ部がねじ込まれることにより、油井管同士が連結される。すなわち、カップリング型では、締結対象の一対の管状部材のうち、一方の管状部材が油井管であり、他方の管状部材がカップリングである。
【0006】
一般に、雄ねじ部が形成された油井管の管端部は、他の油井管又はカップリングに形成された雌ねじ部に挿入される要素を含むことから、ピンと称される。雌ねじ部が形成された油井管又はカップリングの端部は、他の油井管に形成された雄ねじ部を受け入れる要素を含むことから、ボックスと称される。
【0007】
近年、さらなる高温高圧深井戸の開発が進んでいる。深井戸では、地層圧の深さ分布の複雑さ等により、ケーシングやチュービングを多層構造で埋設していく多段ストリングデザインが採用されている。多段ストリングデザインでは、継手の最大外径、すなわちボックスの外径が油井管の管本体の外径とほぼ同程度のインテグラル型ねじ継手(例えば下記の特許文献1~5参照)が広く用いられている。ボックス外径が油井管の管本体の外径にほぼ等しいねじ継手はフラッシュ型ねじ継手とも称される。また、ボックス外径が油井管の管本体の外径より僅かに大きいねじ継手(一例においてボックス外径が油井管の管本体の外径の110%未満であるねじ継手)はセミフラッシュ型ねじ継手とも称される。これらフラッシュ型及びセミフラッシュ型を総称してスリム型とも称される。
【0008】
これらフラッシュ型及びセミフラッシュ型のインテグラル型ねじ継手の製造工程においては、通常、ピンが設けられる油井管の一端部に縮径加工が施されるとともに、ボックスが設けられる油井管の他端部に拡径加工が施される。縮径加工及び拡径加工のような矯正加工を行った場合には、これらの管端矯正加工後に残留応力除去のための熱処理(Stress Relief)を行う必要がある。したがって、フラッシュ型及びセミフラッシュ型のインテグラル型ねじ継手は、カップリング型のねじ継手と比較して製造工数が増加し、製造効率が悪化する。
【0009】
特許文献6~9に示されるようなカップリング型ねじ継手においては、油井管とは別個に製造されるカップリングの外径を油井管外径とは別個に設計できるため、インテグラル型ねじ継手のような熱処理をカップリングに対して行う必要がない。したがって、カップリングの外径が油井管の外径と同程度の大きさのスリム型のカップリング型ねじ継手が要望されている。
【0010】
一方、近年、一層の深井戸化によって油井管継手の使用環境が益々厳しくなってきており、スリム型のカップリング型ねじ継手においても、優れた耐圧縮強度が要求されるとともに、優れた外圧密封性能が要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第5371007号公報
【特許文献2】国際公開第2016/056222号
【特許文献3】国際公開第2015/095039号
【特許文献4】国際公開第2018/109371号
【特許文献5】特開昭53-14411号公報
【特許文献6】国際公開第2015/194160号
【特許文献7】国際公開第2017/104282号
【特許文献8】国際公開第2021/145163号
【特許文献9】国際公開第2018/135267号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本開示の目的は、耐圧縮強度および外圧密封性能に優れたスリム型のねじ継手、特にカップリング型ねじ継手、に好適に適用し得る新たな管用ねじ継手のデザインを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本開示による管用ねじ継手は、第1の管状部材の管端部に設けられた管状のピンと、第2の管状部材の管端部に設けられた管状のボックスとから構成され、前記ピンが前記ボックスにねじ込まれて前記ピンと前記ボックスとが締結される。
【0014】
前記ピンは、前記ピンの外周に設けられ且つ先端側に至るにしたがって徐々に小径となるテーパーねじからなる雄ねじと、前記雄ねじよりも先端側で前記ピンの外周に設けられたピンシール面と、前記ピンシール面よりも先端側に設けられたノーズ部と、前記ノーズ部の先端面により構成されるピン内ショルダ面と、前記ピンの基端部に設けられ且つ前記第1の管状部材の管本体(以下、「ピンの管本体」とも言う。)の外周面から径方向内方に延びるピン外ショルダ面とを備える。
【0015】
前記ボックスは、前記ボックスの内周に設けられ且つ締結状態で前記雄ねじと噛み合う雌ねじと、前記ボックスの内周に設けられ且つ締結状態で前記ピンシール面に接触するボックスシール面と、締結状態で前記ノーズ部の外周面に対して隙間を有して径方向に対向する内周面を有するねじ無し部と、前記ピン内ショルダ面に対して軸方向に対向するボックス内ショルダ面と、前記ピン外ショルダ面に対して軸方向に対向するボックス外ショルダ面とを備える。
【0016】
前記ピン外ショルダ面及び前記ボックス外ショルダ面は、締結時に互いに接触するトルクショルダとして機能する。
【0017】
本開示による管用ねじ継手においては、締結状態の前記ねじ継手に軸方向荷重が負荷されていないときは前記ピン内ショルダ面と前記ボックス内ショルダ面との間に隙間が形成されるよう、前記ピンと前記ボックスとが締結される前の前記ピン外ショルダ面と前記ピン内ショルダ面との間の軸方向距離Dpよりも、前記ピンと前記ボックスとが締結される前の前記ボックス外ショルダ面と前記ボックス内ショルダ面との間の軸方向距離Dbが大きい。
【0018】
また、本開示による管用ねじ継手においては、締結状態の前記ねじ継手に所定の軸方向圧縮荷重が負荷されると前記ピン及び前記ボックスの弾性変形により前記ピン内ショルダ面と前記ボックス内ショルダ面とが接触してこれらショルダ面間で軸方向圧縮荷重の一部が伝達されるよう、前記距離Dpと前記距離Dbとの差の大きさが定められている。
【発明の効果】
【0019】
本開示によれば、ある程度大きな軸方向圧縮荷重の負荷時に、ピン内ショルダ面とボックス内ショルダ面との接触によって軸方向圧縮荷重の一部が負担される。したがって、ピン外ショルダ面及びボックス外ショルダ面の接触面積が、要求される耐圧縮強度に比して小さくても、ねじ継手全体として十分な耐圧縮強度が得られる。
【0020】
また、ピン外ショルダ面をピンの管本体の外周面から径方向内方に延びるように設けたので、ピン外ショルダ面の面積を比較的大きくすることができる。すなわち、ピン外ショルダ面の面積Sは、その外周縁の半径をr、ピン外ショルダ面の径方向幅をdとすると、次の式(2)で表される。
S=π・r2-π・(r-d)2 =π・(2dr-d2)・・・(2)
【0021】
ピン外ショルダ面のために利用できる径方向幅dを定数とすると、外周縁の半径rが大きい程、大きなピン外ショルダ面の面積を確保することができる。したがって、本開示によれば、ショルダ面がピン管本体の肉厚範囲の中間位置や最内周部位に存在する場合と比較して、ピン外ショルダ面の径方向幅dが同じであってもピン外ショルダ面の面積を大きく確保することができ、比較的大きな締結トルクを生じさせることができる。さらに、前記雄ねじよりも前記ピンの基端側では前記ピンの外周にシール面が設けられていないので、このようなシール面を設けるための径方向寸法が不要となり、限られた管肉厚の範囲内で外ショルダ面、雄ねじ及び雌ねじ、並びに、内ショルダ面のより大きな径方向寸法を確保できる。
【0022】
本開示は、矯正加工後の残留応力除去のための熱処理が不要となるためカップリング型の油井管用ねじ継手に好適に適用できるが、インテグラル型のねじ継手に適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る鋼管用ねじ継手の締結状態の縦断面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すねじ継手のピン先端近傍の拡大断面図である。
【
図3】
図3は、FEM解析による密封性能の評価における荷重ステップの経路を示す図である。
【
図4】
図4は、挿入面隙間が0.25mmである場合の各荷重ステップにおける内ショルダ面間の最小隙間の遷移を示すグラフである。
【
図5】
図5は、挿入面隙間が0.11mmである場合の各荷重ステップにおける内ショルダ面間の最小隙間の遷移を示すグラフである。
【
図6】
図6は、挿入面隙間が0.01mmである場合の各荷重ステップにおける内ショルダ面間の最小隙間の遷移を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本開示による管用ねじ継手は、第1の管状部材の管端部に設けられた管状のピンと、第2の管状部材の管端部に設けられた管状のボックスとから構成され、ピンがボックスにねじ込まれてピンとボックスとが締結される。
【0025】
ピンは、ピンの外周に設けられ且つ先端側に至るにしたがって徐々に小径となるテーパーねじからなる雄ねじと、雄ねじよりも先端側でピンの外周に設けられたピンシール面と、ピンシール面よりも先端側に設けられたノーズ部と、ノーズ部の先端面により構成されるピン内ショルダ面と、ピンの基端部に設けられ且つ第1の管状部材の管本体の外周面から径方向内方に延びるピン外ショルダ面とを備える。一態様において、前記雄ねじよりも前記ピンの基端側では前記ピンの外周にシール面が設けられておらず、これにより雄ねじよりも先端側にあるピンシール面だけで外圧及び内圧に対する密封性能を得る構成として、外圧が雄ねじ全体の外周に作用するよう構成されていてよい。
【0026】
ノーズ部は、ボックスシール面との干渉量によってピンシール面が縮径変形した場合に、ピンシール面近傍におけるピンの弾性復元力を向上し、シール接触力を高める機能を有する。雄ねじよりも先端側に設けたピンシール面のみで内圧及び外圧に対する十分な密封性能を発揮するためには、ピンシール面が設けられた部位及びノーズ部における管肉厚を比較的大きく確保することが好ましい。本開示によれば、ピン外ショルダ面が比較的小さくとも十分な耐圧縮性能を発揮できるので、ピンシール面が設けられた部位及びノーズ部における管肉厚を比較的大きく確保することが可能である。これにより外圧に対するピンの剛性も確保することができる。
【0027】
ボックスは、ボックスの内周に設けられ且つ締結状態で雄ねじと噛み合う雌ねじと、ボックスの内周に設けられ且つ締結状態でピンシール面に接触するボックスシール面と、締結状態でノーズ部の外周面に対して隙間を有して径方向に対向する内周面を有するねじ無し部と、ピン内ショルダ面に対して軸方向に対向するボックス内ショルダ面と、ピン外ショルダ面に対して軸方向に対向するボックス外ショルダ面とを備える。雄ねじは、ボックスの奥側に至るにしたがって徐々に小径となるテーパーねじからなり、雌ねじに適合するねじプロファイルを有する。ボックスシール面は、雌ねじよりもボックスの奥側に設けられる。ねじ無し部は、ボックスシール面よりもボックスの奥側に設けられる。ボックス外ショルダ面は、ボックスの開口端面により構成してもよいし、ボックスの開口端面から少し奥側でボックス内周面に設けた段部により構成することもできる。
【0028】
本開示による管用ねじ継手では、ピン外ショルダ面及びボックス外ショルダ面は、締結時に互いに接触するトルクショルダとして機能する。したがって、これら外ショルダ面同士の接触面積は、要求される締結トルクに応じた大きさとすることが好ましい。
【0029】
本開示による管用ねじ継手においては、締結状態のねじ継手に軸方向荷重が負荷されていないときはピン内ショルダ面とボックス内ショルダ面との間に隙間が形成されるよう、ピンとボックスとが締結される前のピン外ショルダ面とピン内ショルダ面との間の軸方向距離Dpよりも、ピンとボックスとが締結される前のボックス外ショルダ面とボックス内ショルダ面との間の軸方向距離Dbが大きい。
【0030】
また、本開示による管用ねじ継手においては、締結状態の前記ねじ継手に所定の軸方向圧縮荷重が負荷されると前記ピン及び前記ボックスの弾性変形により前記ピン内ショルダ面と前記ボックス内ショルダ面とが接触してこれらショルダ面間で軸方向圧縮荷重の一部が伝達されるよう、前記距離Dpと前記距離Dbとの差(Db-Dp)の大きさが定められている。ここで、「所定の軸方向圧縮荷重」は、一例においてねじ継手の圧縮降伏荷重である。本開示による管用ねじ継手は、所定の軸方向圧縮荷重が負荷された状態で内ショルダ面同士が接触するものであればよく、所定の軸方向圧縮荷重よりも小さな圧縮荷重で内ショルダ面同士の接触が開始するものであってもよい。
【0031】
なお、ピンとボックスとの締結時に生じる軸方向圧縮応力によりピン及びボックスが軸方向に僅かに収縮変形し、ボックスに対してピンが僅かに軸方向先端側へ押し込まれるため、締結状態におけるピン外ショルダ面とピン内ショルダ面との間の距離と、設計寸法である上記距離Dpとは僅かに異なる。同様に、締結状態におけるボックス外ショルダ面とボックス内ショルダ面との間の距離と、設計寸法である上記距離Dbとは僅かに異なる。締結状態における内ショルダ面間の隙間の大きさは、ピン及びボックスの締結トルクが増大するほど小さくなる。一例において、締結状態で軸方向荷重無負荷時の内ショルダ面間の隙間の大きさは、距離Dpと距離Dbとの差(Db-Dp)よりも0.1mm小さい。
【0032】
一実施形態において、ピン外ショルダ面と雄ねじとの間のピン外周部に第2のピンシール面を設けるとともに、ボックス外ショルダ面と雌ネジとの間のボックス内周部には、締結状態で第2のピンシール面に接触する第2のボックスシール面を設けることもできる。これら第2のシール面を設ける場合、第2のシール面は主として外圧に対するシール部として機能させ、雄ねじよりも先端側に設けた第1の上記ピンシール面、並びに、第1のピンシール面に対応する第1の上記ボックスシール面を、主として内圧に対するシール部として機能させることができる。但し、限られた管肉厚範囲内に継手構成要素を配置することが要求されるフラッシュ型若しくはセミフラッシュ型のねじ継手においては、第1のピンシール面及び第1のボックスシール面により外圧及び内圧の双方に対する密封性能を発揮させ、第2のピンシール面及び第2のボックスシール面を設けない方が、ねじ継手の最大外径サイズを小さくすることができる。
【0033】
第2のピンシール面及び第2のボックスシール面を設けない場合には、次のような利点がある。雄ねじ及び雌ねじよりもピンの先端側に設けられるピンシール面及びボックスシール面は、トルクショルダとして機能するピン外ショルダ面及びボックス外ショルダ面から軸方向に大きく離れた位置にある。圧縮荷重負荷時には、ピン及びボックスの締結時点で既に接触しているピン外ショルダ面及びボックス外ショルダ面の近傍に比較的大きな歪みが生じるが、ピンシール面及びボックスシール面がピン外ショルダ面及びボックス外ショルダ面から大きく離れた位置にあれば、これら外ショルダ面に生じる歪みに伴うピンシール面及びボックスシール面の近傍の歪みの発生を回避できる。
【0034】
第1の管状部材、例えば油井管の管端に設けられるピンは、ピンの管本体の外径よりも内側にすべての構成要素を配置する必要がある。また、耐圧縮性能を確保するために、雄ねじの基端側(すなわち、軸方向における管本体側の端部)の噛み合い端部近傍のねじ谷底径により規定されるピン危険断面(PCCS)の面積を可能な限り大きく確保することが求められることから、軸方向からみてピン危険断面の外径とピンの管本体の外径との間に設けられるピン外ショルダ面の面積を大きく確保することができない。したがって、圧縮荷重をピン外ショルダ面及びボックス外ショルダ面のみで負担させると、特に圧縮荷重及び外圧の複合荷重が負荷された場合に密封性能を維持できなくなり、最新の規格、例えばAPI 5C5 CAL-IV 2017の試験規格を満足する継手構造とすることができない。
【0035】
本開示の管用ねじ継手では、所定の軸方向圧縮荷重が負荷されるとピン及びボックスの弾性変形によりピン内ショルダ面とボックス内ショルダ面とが接触してこれらショルダ面間で軸方向圧縮荷重の一部が伝達されるよう、前記距離Dpと前記距離Dbとの差の大きさが定められている。したがって、ある程度大きな軸方向圧縮荷重であってねじ継手の圧縮降伏荷重よりも小さな圧縮荷重の負荷時に、ピン内ショルダ面とボックス内ショルダ面との接触によって軸方向圧縮荷重の一部が負担されるため、要求される耐圧縮性能に比してピン外ショルダ面及びボックス外ショルダ面の接触面積が小さくても、ねじ継手全体として十分な耐圧縮性能を発揮することができる。
【0036】
さらに、締結状態のねじ継手に軸方向荷重が負荷されていないときは、ピン内ショルダ面とボックス内ショルダ面との間に隙間が形成され、軸方向圧縮荷重がある程度大きくなった時点でこれら内ショルダ面同士が接触開始するので、ねじ継手の降伏圧縮荷重が負荷された場合でも内ショルダ面近傍に生じる変形量は限定的なものとなる。したがって、締結状態のねじ継手に軸方向荷重が負荷されていないときの内ショルダ面間の隙間の大きさを適切に設定することにより、比較的大きな軸方向荷重負荷時においても、内ショルダ面に近い位置に設けられているピンシール面及びボックスシール面への影響も抑制することができ、圧縮荷重負荷時の密封性能を維持できる。
【0037】
好ましくは、ある程度大きな軸方向圧縮荷重であってねじ継手の圧縮降伏荷重よりも小さな圧縮荷重の負荷時に、雄ねじ及び雌ねじの挿入面同士が接触して、これら挿入面同士の接触によっても軸方向圧縮荷重の一部が負担されるように、締結状態で軸方向圧縮荷重無負荷時の挿入面間の隙間の大きさを設計することができる。これによれば、大きな軸方向圧縮荷重を、外ショルダ面、内ショルダ面に加えて、挿入面によっても負担させることができ、要求される耐圧縮性能に対して外ショルダ面同士の接触面積及び内ショルダ面同士の接触面積が十分でなくとも、ねじ継手全体として十分な耐圧縮性能を得ることができる。なお、挿入面同士が接触開始する軸方向圧縮荷重と、内ショルダ面同士が接触開始する軸方向圧縮荷重は、異なっていてもよいし、ほぼ同じであってもよい。
【0038】
好ましくは、締結状態のねじ継手に軸方向荷重が負荷されていないときは雄ねじの挿入面と雌ねじの挿入面との間に隙間が形成されるとともに、締結状態のねじ継手に所定の軸方向圧縮荷重が負荷されると雄ねじの挿入面と雌ねじの挿入面とが接触してこれら挿入面間で軸方向圧縮荷重の一部が伝達されるよう、雄ねじ及び雌ねじを構成することができる。
【0039】
一実施形態において、距離Dpと距離Dbとの差の大きさ(Db-Dp)は、締結状態で軸方向荷重無負荷時に雄ねじ及び雌ねじの挿入面間に形成される軸方向の隙間の大きさとの対比において、等しいか、若しくは、より大きい。これによれば、ピン内ショルダ面及びボックス内ショルダ面が負担する圧縮荷重の一部の大きさが過大となる前に挿入面同士を接触させることができ、ピン内ショルダ面近傍及びボックス内ショルダ面近傍に生じる歪みを抑制でき、ピンシール面とボックスシール面との接触による密封性能への影響を抑制できる。
【0040】
より好ましくは、締結状態で軸方向荷重無負荷時にピン内ショルダ面とボックス内ショルダ面との間に形成される隙間Sの大きさが、締結状態で軸方向荷重無負荷時に雄ねじ及び雌ねじの挿入面間に形成される隙間Cの大きさと等しくなるように、距離Dp及び距離Dbを定めることができる。ここで、「大きさが等しい」とは、実質的に等しいことを意味し、さらに補足すると、軸方向圧縮荷重によってピンがボックスに対して僅かに押し込まれたときに挿入面同士並びに内ショルダ面同士がほぼ同時に接触することを意味する。一例において、雄ねじ及び雌ねじのねじピッチをPとすると、(S-C)/Pの絶対値が0.02未満であれば挿入面隙間Cと内ショルダ面隙間Sとは実質的に等しいと言うことができる。例えば、ねじピッチが5mmである場合には、(S-C)の絶対値が0.10mm未満であれば、これらは実質的に等しい。
【0041】
これによれば、ねじ継手にある程度大きな軸方向圧縮荷重が負荷された場合に、ピンがボックスに対して僅かに先端側に押し込まれて、挿入面同士並びに内ショルダ面同士が実質的に同時に接触開始することとなる。したがって、挿入面に軸方向圧縮荷重の一部を負担させることで内ショルダ面に大きな圧縮力が作用することを回避できる。これにより、特にピン内ショルダ面を有するノーズ部が圧縮力によって塑性変形して、ピンシール面とボックスシール面との接触力、すなわち密封性能が低下することを回避できる。
【0042】
雄ねじ及び雌ねじよりもピン先端側にのみピンシール面及びボックスシール面を設けた場合、外圧負荷時には外圧がピンの雄ねじ形成部位全体に作用して、ピン先端側を縮径させようとする。内ショルダ面間の隙間をある程度小さくしておけば、ピン先端側、すなわちノーズ部が径方向内方に僅かに変形すると、ピン内ショルダ面がボックス内ショルダ面に強く当接して、それ以上の縮径変形が防止される。内ショルダ面間の隙間が大きすぎると、ある程度大きな軸方向圧縮荷重が負荷されておらず且つ外圧負荷時に、内ショルダ面同士の当接によるノーズ部の縮径変形防止効果が得られず、ノーズ部及びピンシール面が比較的大きく縮径変形して、密封性能に悪影響を及ぼす可能性がある。この問題は、後述するようにピン及びボックスの外ショルダ面、並びに、ピン及びボックスの内ショルダ面を傾斜させることによって解消し得る。
【0043】
一例において、雄ねじ及び雌ねじのねじピッチをP、締結状態で軸方向荷重無負荷時に雄ねじ及び雌ねじの挿入面間に形成される軸方向の隙間の大きさをCとすると、下記の式(3)を満たすように距離Dp及び距離Dbを定めることが好ましい。
-0.020 < {(Db-Dp)-C}/P < 0.028 ・・・(3)
【0044】
例えば、ねじピッチが5mmである場合は、距離Dpと距離Dbとの差(Db-Dp)と、挿入面間の隙間Cとの差{(Db-Dp)-C}が、-0.1mm以上0.14mm以下であることが好ましい。
【0045】
好ましくは、ボックスが、第1の管状部材の管本体の外径の100%よりも大きく110%よりも小さい外径を有する。より好ましくは、ボックス外径は、第1の管状部材の管本体外径の105%未満である。
【0046】
好ましくは、第2の管状部材の管本体の内径は第1の管状部材の管本体の内径よりも小さく、ピンの内周面は、第1の管状部材の管本体の内周面に連なり且つ第1の管状部材の管本体と等しい内径を有する非縮径加工部と、前記非縮径加工部よりも先端側に位置し且つ前記第2の管状部材の管本体と等しい内径を有する縮径加工部とを含む。これによれば、ピン先端部に設けられるノーズ部及びピンシール面近傍のピン肉厚、すなわち剛性を大きくすることができ、内圧及び外圧に対する密封性能を確保できる。
【0047】
好ましくは、ボックスの奥側の雌ねじの端部は、締結状態でピンの縮径加工部の径方向外方に位置する。これによれば、ボックスの奥側の雌ねじの端部近傍のねじ谷底径により規定されるボックス危険断面の比較的大きな断面積を確保しつつ、ピンのノーズ部及びピンシール面近傍の比較的大きなピン肉厚を確保することができる。
【0048】
好ましくは、第1の管状部材は油井管であり、第1の管状部材の管本体は油井管の管本体であり、第2の管状部材は、一対の油井管同士を連結するためのカップリングである。これによれば、耐圧縮性能に優れたフラッシュ型若しくはセミフラッシュ型のカップリング型油井管用ねじ継手を提供できる。
【0049】
好ましくは、上記の所定の軸方向圧縮荷重は、次式(1)で表される荷重Lcである。
Lc=Lp×(CCS/Ap)・・・(1)
【0050】
ここで、Lpは内外圧無負荷時における油井管の管本体の圧縮降伏荷重、CCSは、ピンの危険断面積PCCS及びボックスの危険断面積BCCSのうちいずれか小さい方として定義されるねじ継手の危険断面積、Apは油井管の管本体の横断面の断面積である。より好ましくは、荷重Lcの70%の軸方向圧縮荷重の負荷時にも内ショルダ面同士が接触していてよい。CCS/Apは継手効率と呼ばれるものであり、油井管の分野においてねじ継手の強度設計指標として用いられている。この継手効率CCS/Apは75%以上であることが好ましい。
【0051】
ピンの危険断面積PCCSは、締結状態における雄ねじと雌ねじとの噛み合い範囲の両端のうち、雄ねじの基端側(すなわちピンの管本体側)の噛み合い端におけるねじ谷底位置を包含するピンの横断面の断面積である(
図1参照)。ボックスの危険断面積BCCSは、締結状態における雄ねじと雌ねじとの噛み合い範囲の両端のうち、雌ねじの基端側(すなわちボックスの管本体側)の噛み合い端におけるねじ谷底位置を包含するボックスの横断面の断面積である(
図1参照)。ある縦断面においてねじ谷底であっても、ねじは螺旋状に延びるため、危険断面の周方向一部に完全ねじ部又は不完全ねじ部が含まれる場合があるが、ピン及びボックスの危険断面積は、雄ねじ及び雌ねじの完全ねじ部及び不完全ねじ部を除外した部分の断面積であってよい。また、上記Lcよりも小さな軸方向圧縮荷重が作用した時点で、ピン及びボックスの弾性変形により内ショルダ面同士が接触開始することが好ましい。
【0052】
本開示による管用ねじ継手の雄ねじ及び雌ねじは、API規格のバットレスねじ、台形ねじ又は楔形ねじなど、適宜のねじ山形状を有していてよい。雄ねじのねじ山頂面と雌ねじのねじ谷底面との間、並びに、雄ねじのねじ谷底面と雌ねじのねじ山頂面との間には隙間があってもよいし、無くてもよい。雄ねじと雌ねじの少なくとも一方にドープと呼ばれる潤滑用のコンパウンドグリースが塗布される場合には、ドープの排出性を考慮して、締結状態で雄ねじのねじ山頂面と雌ねじのねじ谷底面との間に隙間が生じるよう設計することが好ましい。この場合、本開示によるねじ継手では、締結状態で内ショルダ面間に隙間が存在するため、雄ねじ及び雌ねじからのドープの排出性が一層良好なものとなる。
【0053】
ピンシール面及びボックスシール面は、いずれもピンの先端側に至るにしたがって徐々に小径となるテーパー形状であってよい。また、ピンシール面がピンの先端側に至るにしたがって徐々に小径となるテーパー形状であり、ボックスシール面はピンシール面に接触する凸曲面形状であってもよい。また、ボックスシール面がピンの先端側に至るにしたがって徐々に小径となるテーパー形状であり、ピンシール面がボックスシール面に接触する凸曲面形状であってもよい。さらに、ピンシール面及びボックスシール面がいずれも凸曲面形状であってもよい。さらに、ピンシール面及びボックスシール面の少なくとも一方が、テーパー面部分と曲面部分とを含む複合面形状であってもよい。
【0054】
好ましくは、前記ピン外ショルダ面及び前記ボックス外ショルダ面は、軸方向に沿う断面においてそれらの径方向内端よりも径方向外端が前記ピンの先端側に所定の傾斜角で傾斜しており、前記ピン内ショルダ面及び前記ボックス内ショルダ面は、軸方向に沿う断面においてそれらの径方向内端よりも径方向外端が前記ピンの先端側(すなわち、前記ボックスの奥側)に所定の傾斜角で傾斜している。ここで、ピン及びボックスの外ショルダ面の傾斜角は、管軸に直交する平面に対する各外ショルダ面の角度である。ピン及びボックスの内ショルダ面の傾斜角は、管軸に直交する平面に対する各内ショルダ面の角度である。このように外ショルダ面及び内ショルダ面を傾斜させておくと、外圧負荷時にピンが外圧によって縮径変形しようとしても、外ショルダ面同士が係合してピン全体の縮径変形が抑制される。また、内ショルダ面同士が離れていても、その隙間量及び傾斜角によってはピン先端部の僅かな縮径変形によって内ショルダ面同士が係合し、それ以上のピンの縮径変形が抑制される。これらにより外圧によるピンの縮径量、特にピンシール面近傍のピンの縮径量が小さくなり、ピンシール面とボックスシール面との接触力の低下を抑制できるため、外圧負荷時においても優れた密封性能を維持できる。特に、所定の軸方向圧縮荷重の負荷時においては、ピン内ショルダ面とボックス内ショルダ面同士が接触しており、外ショルダ面同士の接触部と内ショルダ面同士の接触部の2箇所でボックスがピンを支えるようになり、ピンの縮径変形をより確実に抑制できる。したがって、大深度の油井など、高い耐圧縮強度と優れた外圧密封性能が要求される用途に本開示による管用ねじ継手を公的に使用できる。
【0055】
好ましくは、前記ピン外ショルダ面の傾斜角及び前記ピン内ショルダ面の傾斜角のうち少なくとも一方が5°以上である。より好ましくは、前記ピン外ショルダ面の傾斜角及び前記ピン内ショルダ面の傾斜角の両方が5°以上である。
【0056】
本開示に係る管用ねじ継手は、ボックスの最大外径が、ピンの管本体の外径の100%以上110%未満であるスリム型のねじ継手において好適に実施できる。より好ましくは、本開示に係る管用ねじ継手は、カップリング型のスリム型ねじ継手として好適に実施できる。
【0057】
〔管用ねじ継手の構成〕
図1を参照して、本実施の形態に係る油井管用ねじ継手1は、セミフラッシュ型のカップリング型ねじ継手であって、長尺の油井管Pの管端部に設けられた管状のピン2と、短尺のカップリングCの管端部に設けられた管状のボックス3とから構成される。油井管P及びカップリングCはいずれも鋼製であってよい。カップリングCは、その軸方向両端部にそれぞれボックス3が設けられ、カップリングCを介して一対の油井管Pが連結される。
【0058】
ピン2は、油井管Pの管本体Pbodyの端部から軸方向に沿ってピン2の先端側(
図1において右側)に延びている。ピン2の外周には、管本体Pbody側から先端側に向けて順に、管本体Pbodyの端部を構成するとともに管本体Pbodyの外周面から径方向内方に延びるピン外ショルダ面21、先端側に至るにしたがって徐々に小径となるテーパーねじからなる雄ねじ22、ピンシール面23が設けられている。ピン2は、ピンシール面23よりも先端側に設けられた円筒状のノーズ部24を有する。ノーズ部24の先端面はピン内ショルダ面25を構成する。
【0059】
図示実施形態のねじ継手1では、ピン外ショルダ面21及びピン内ショルダ面25はいずれも径方向外側がピン2の先端側に傾斜するテーパー面により構成されている。軸方向に沿う断面において管軸CLに直交する平面に対するピン外ショルダ面21の傾斜角θ1は例えば0~10°である。軸方向に沿う断面において管軸CLに直交する平面に対するピン内ショルダ面25の傾斜角θ2は例えば0~10°である。なお、これらショルダ面21,25は、管軸CLに直交する平坦面であってもよいし、径方向外側がピン2の管本体側に傾斜するテーパー面により構成してもよい。雄ねじ22は、縦断面形状が台形状のねじにより構成されており、その荷重面22Lは負のフランク角を有し、ねじ山頂面及びねじ谷底面は縦断面において管軸CLに平行である。雄ねじ22の先端部は
図2に示すように雌ねじと噛み合わない不完全ねじ22Aとして形成されている。ピンシール面23は先端側に至るにしたがって徐々に小径となるテーパー面により構成されている。ノーズ部24は、ピンシール面23に滑らかに連続する外周面を有する。また、
図1に示すように、ピン2の先端部から雄ねじ22が設けられている領域の途中までの領域でピン2には縮径加工が施されており、これによりピンシール面23が設けられている部位の内周面、並びに、ノーズ部24の内周面は、ピン管本体Pbodyの内周面よりも僅かに小径である。
【0060】
ボックス3は、カップリングCの管本体Cbodyの端部から軸方向に沿ってボックス3の先端側(
図1において左側)に延びている。本明細書において、ボックス3の先端側を、開口端側とも言うことがある。ボックス3の開口端面はボックス外ショルダ面31を構成する。ボックス3の内周には、ボックス3の開口端側からカップリングCの管本体Cbody側に向けて順に、雄ねじ22に対応する雌ねじ32、ピンシール面23に対応するボックスシール面33、ノーズ部24に対応するねじ無し部34、及び、ピン内ショルダ面25に対応するボックス内ショルダ面35が設けられている。ボックス外ショルダ面31は、ピン外ショルダ面21と同じ傾斜角θ1を有するテーパー面であってよい。ボックス内ショルダ面35は、ピン内ショルダ面25と同じ傾斜角θ2を有するテーパー面であってよい。
【0061】
本実施形態において、ボックス3の開口端部の内周面と、これに対向するピン外周面との間には隙間が形成されている。ボックスシール面33は凸曲面により構成されている。
【0062】
雌ねじ32は、雄ねじ22に適合するテーパーねじからなる。図示実施形態において、
図2に示す締結状態で、雄ねじ22及び雌ねじ32の荷重面同士は接触するが、雄ねじ22及び雌ねじ32の挿入面間には微小隙間Cが形成されるようねじプロファイルが定められている。この隙間Cの軸方向寸法は、例えば0.01mm~0.25mmの範囲内の所定値であってよい。この隙間Cは、ある程度の大きさの軸方向圧縮荷重が締結状態のピン2及びボックス3に作用すると、ピン2がボックス3に対して僅かに押し込まれて、雄ねじ22及び雌ねじ32の挿入面同士が接触するような大きさとすることができる。好ましくは、締結状態で、雄ねじ22のねじ谷底面と雌ねじ32のねじ山頂面とは接触するが、雄ねじ22のねじ山頂面と雌ねじ32のねじ谷底面との間には隙間が形成されるよう雄ねじ22及び雌ねじ32のねじプロファイルを定めることができる。なお、締結状態で、雄ねじ22のねじ山頂面と雌ねじ32のねじ谷底面とは接触するが、雄ねじ22のねじ谷底面と雌ねじ32のねじ山頂面との間には隙間が形成されるよう雄ねじ22及び雌ねじ32のねじプロファイルを定めてもよい。
【0063】
ねじ無し部34及びボックス内ショルダ面35は、ピン2のノーズ部24が嵌まり込む凹部をボックス3の内周に形成する。ねじ無し部34の内周面はボックス内シール面33に滑らかに連続する円筒面であり、ねじ無し部34の内周面とノーズ部24の外周面との間には隙間が形成されている。
【0064】
ボックス外ショルダ面31は、ピン外ショルダ面21に対して軸方向に対向しているとともに、締結状態で軸方向荷重無負荷時(特に軸方向引張荷重の無負荷時)にピン外ショルダ面21と接触する。これら外ショルダ面21,31は、締結時にトルクショルダとして機能する。
【0065】
ボックス内ショルダ面35は、ピン内ショルダ面25に対して軸方向に対向しているが、各油井管Pの規格毎に定められた所定の締結トルクで締結された状態では、軸方向圧縮荷重無負荷時においては内ショルダ面25,35は軸方向に離間しており、内ショルダ面25,35の間に隙間が形成されるようになっている。すなわち、ピン2及びボックス3が締結される前、すなわちピン2及びボックス3に締結トルクが生じていない状態のピン外ショルダ面21とピン内ショルダ面25との間の軸方向距離Dpよりも、ピン2及びボックス3が締結される前のボックス外ショルダ面31とボックス内ショルダ面35との間の軸方向距離Dbの方が大きい。距離Dpと距離Dbとの差の大きさ(Db-Dp)は、締結状態で軸方向荷重無負荷時に雄ねじ22及び雌ねじ32の挿入面間に形成される隙間Cの大きさとの対比において、等しいか、若しくは、より大きい。
【0066】
なお、所定の締結トルクで締結すると、ピン2及びボックス3が軸方向に僅かに収縮して、ピン内ショルダ面25が軸方向に僅かに(一例において約0.1mm程度)押し込まれるようになるため、この押し込み量よりも大きな差を距離Dpと距離Dbとの間に設けておくことが好ましい。但し、締結状態における内ショルダ面25,35間の隙間が大きすぎると、外圧負荷時に内ショルダ面25,35同士の接触による外圧に対する抵抗力が生じず、ピンシール面23が外圧により外周側から圧縮されて大きく変形し、密封性能が得られなくなるため、外圧負荷時にピン先端部がわずかに外圧によって縮径変形するとピン内ショルダ面25の少なくとも一部がボックス内ショルダ面35に当接するように、距離Dp及び距離Dbを定めておくことが好ましい。
【0067】
さらに、締結状態で軸方向荷重無負荷時にピン内ショルダ面25とボックス内ショルダ面との間に形成される隙間Sの大きさが、締結状態で軸方向荷重無負荷時に雄ねじ22及び雌ねじ32の挿入面間に形成される隙間Cの大きさと実質的に等しくなるように、距離Dp及び距離Dbが定められている。
【0068】
カップリングCの管本体Cbodyの内径は、油井管Pの管本体Pbodyの内径よりも僅かに小さい。カップリングCの管本体Cbodyの外径は、油井管Pの管本体Pbodyの外径よりも僅かに大きい。カップリングCは管製造工程において上記外径及び内径を有する素管を製造し、この素管の管端部の内周を切削加工することによって形成される。切削加工後に必要に応じて適宜の表面処理を行うことができる。
【0069】
ピン2の内周面は、ピンの管本体Pbodyの内周面に連なり且つピンの管本体Pbodyと等しい内径を有する非縮径加工部2aと、非縮径加工部2aよりも先端側に位置し且つボックスの管本体Cbodyと等しい内径を有する縮径加工部2bとを含む。さらに、雌ねじ32の両端部のうち、ボックス3の奥側に位置する端部が、締結状態で縮径加工部2bの径方向外方に位置している。これにより、ボックス危険断面積BCCSを犠牲にすることなく、ピンシール面23近傍のピン肉厚を大きく確保することができる。さらに、ねじ継手全体の滑らかな内周面形状が得られ、管内部を流れる流体に乱流が生じることを抑制できる。
【実施例0070】
本実施の形態に係る油井管用ねじ継手の内ショルダ面間の隙間による効果を確認するため、弾塑性有限要素法による数値解析シミュレーションを実施した。
【0071】
<試験条件>
内ショルダ面間の隙間による効果を確認するために
図1~
図2に示すカップリング型の油井管用ねじ継手1の外ショルダ面21,31及び内ショルダ面25,35を管軸に直交する平坦面とするとともに、スタブ面隙間Cと、距離Dpと距離Dbとの差(Db-Dp)とを変更した複数の供試体(解析モデル)を作成し、各供試体毎に弾塑性有限要素法解析を実施して、内ショルダ面同士の接触の有無、並びに、ピンシール面23とボックスシール面33のシール性能を比較した。
【0072】
供試体#1~#5の挿入面隙間Cは0.11mm、供試体#6~#10の挿入面隙間Cは0.25mm、供試体#11~#15の挿入面隙間Cは0.01mmとした。各供試体の距離Dpと距離Dbとの差の変更方は、距離Dbを固定し、ピン2のノーズ部24の軸長を変更することによって行った。各供試体の距離Dbと距離Dpとの差の大きさ(Db-Dp)の値は、供試体#1,#6,#11が1.00mm、供試体#2,#7,#12が0.50mm、供試体#3,#8,#13が0.25mm、供試体#4,#9,#14が0.15mm、供試体#5,#10,#15が0.10mmである。
【0073】
すべての供試体に共通の試験条件を以下に示す。
鋼管サイズ:14″115#(管本体公称外径:355.6mm、管本体公称内径:314.6mm)
材料:API規格の油井管材料Q125(公称耐力YS=862MPa(125ksi))
ボックス外径:365.27mm
【0074】
[解析方法]
ピン外ショルダ面21及びボックス外ショルダ面31が接触を開始してから所定の締結完了位置(ショルダリングから1/100ターン)までの締結過程を模擬した解析を行い、締結完了時点の内ショルダ面25,35間の隙間の大きさを計測した。また、締結完了状態のねじ継手に実体試験を模擬した繰り返し複合荷重を負荷した。繰り返し複合荷重の各荷重ステップの経路は、
図3に示すように、ISO13679で規定される荷重ステップの経路に従い、軸方向荷重は油井管の管本体P
bodyの降伏荷重にねじ継手1の継手効率(本実施例では79.3%)を乗じた値を負荷した。
【0075】
[耐圧縮強度及びシール性能の評価]
各荷重ステップにおいて、内ショルダ面25,35同士の隙間の大きさを計測した。挿入面隙間が0.25mmである供試体#1~#5の計測結果を
図4に示す。挿入面隙間が0.11mmである供試体#6~#10の計測結果を
図5に示す。挿入面隙間が0.01mmである供試体#11~#15の計測結果を
図6に示す。内ショルダ面25,35同士が接触しているものは、内ショルダ面25,35で軸方向圧縮荷重の一部が伝達されることとなるため、耐圧縮強度が向上されているものと評価した。
【0076】
シール性能評価については、各荷重ステップにおいてシール面23,33に生じる接触面圧を算出した。すなわち、各荷重ステップにおけるシール接触面圧を求め、すべての荷重経路のうち最もシール接触面圧が低くなる荷重経路におけるシール接触面圧を最小シール接触力と定義し、その値で評価した。評価結果を表1に示す。
【表1】
【0077】
表1において、「33.3%C+IP」は
図3の荷重ステップ6及び22を示し、「66.7%+IP」は
図3の荷重ステップ7及び23を示し、「100%C」は
図3の荷重ステップ8,10及び24を示し、「100%C+EP」は
図3の荷重ステップ11を示す。
【0078】
[評価結果]
表1及び
図4~6に示すように、距離Dpと距離Dbとの差が大きい供試体#1,#6,#11においては、ねじ継手の軸方向の圧縮降伏荷重の負荷時においても内ショルダ面同士が接触せず、耐圧縮強度が極めて低いため、シール性能も得られないことが確認された。
【0079】
Db-Dpが0.50以下のすべての供試体において、少なくとも100%Cの軸方向の圧縮降伏荷重負荷時には内ショルダ面同士の接触が確認された。したがって、少なくとも外ショルダ面近傍の塑性変形を低減するように内ショルダ面間で軸方向圧縮荷重の一部が伝達されており、一定の耐圧縮強度向上が図られているものと評価できる。
【0080】
一方、シール性能評価に関しては、表1において網掛けをした供試体#3,#4,#5,#8,#14,#15において良好なシール性能を発揮することが確認されたが、その他の供試体については良好なシール性能が得られなかった。良好なシール性能が確認された供試体においては、締結完了時点であって軸方向荷重無負荷時の内ショルダ面隙間Sと挿入面隙間Cとの差の絶対値(大きさ)がいずれも0.10mm未満となっており、大きな軸方向圧縮荷重負荷時に挿入面同士と内ショルダ面同士とがほぼ同時に接触開始することで、内ショルダ面に大きな軸方向圧縮荷重が負担させることなく、雄ねじ及び雌ねじにも分担させることで、ピンのノーズ部24の塑性変形を抑制でき、これによりノーズ部24に近い位置に設けられたシール面23,33への影響を低減できているものと評価できる。
【0081】
また、距離Dpと距離Dbとの差(Db-Dp)と、挿入面隙間Cとの差の大きさ(Db-Dp)-Cに着目すると、この値が-0.01~0.14mmである場合に良好なシール性能が得られていることが確認された。したがって、距離Dpと距離Dbとの差の大きさが、締結状態で軸方向荷重無負荷時に雄ねじ及び雌ねじの挿入面間に形成される隙間Cの大きさとの対比において、等しいか、若しくは、より大きい場合に、軸方向圧縮荷重負荷時に内ショルダ面同士の接触と挿入面同士の接触とがバランスよく生じ、シール性能の向上に寄与しているものと評価できる。
表2中、「内ショルダ」が「なし」の供試体#2-1及び#2-6は、内ショルダ面同士が解析中に接触しないように内ショルダ面間に大きな隙間を設けたものである。また、ショルダ角度0°は、各ショルダ面が管軸に直交する平坦面であることを意味する。また、供試体#2-6~#2-10は、ノーズ24の長さを0mm、すなわちノーズ24のない構成とした。
表2に示すように、外ショルダのみを設けた供試体#2-1においては、ショルダ面積の総和が小さいために外ショルダに圧縮荷重が集中し、耐圧縮強度が低くなるためにシール性能が得られなかった。
外ショルダおよび内ショルダを設けた供試体#2-2においては、ショルダ面積の総和が十分確保されており、外ショルダ及び内ショルダによって圧縮荷重を負担することで優れた耐圧縮強度が得られ、圧縮荷重負荷時においてもシール性能が得られることが確認された。
外ショルダおよび内ショルダを設け、外ショルダの傾斜角を5°とした供試体#2-3においては、外ショルダ面同士の引っ掛かりにより外圧負荷時にピン全体の縮径変形が抑制されたことで、外ショルダから大きく離れたピン先端部近傍のシール部におけるシール性能が向上することが確認された。
外ショルダおよび内ショルダを設け、内ショルダの傾斜角を5°とした供試体#2-4においては、内ショルダ面同士の引っ掛かりにより外圧負荷時にピン先端部の縮径変形が抑制されたことで、ピン先端部近傍のシール部におけるシール性能が大きく向上することが確認された。
外ショルダおよび内ショルダを設け、外ショルダおよび内ショルダの傾斜角をいずれも5°とした供試体#2-5においては、外ショルダ及び内ショルダの2点でボックスがピンを保持する構造となることから、外ショルダ及び内ショルダのいずれか一方のみを5°とした供試体#2-3及び供試体#2-4のいずれよりも良好なシール性能が得られることが確認された。
ノーズが無い場合は、供試体#2-6~2-8でシール性能が得られなかった。また、外ショルダおよび内ショルダを設け、外ショルダおよび内ショルダの傾斜角をいずれも5°とした供試体#2-8のシール性能も差ほど大きくはなく、内ショルダのみ傾斜角を5°として供試体#2-7のシール性能と同等であった。