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特開2024-123400インクジェットインク組成物及びインクジェット記録方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123400
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】インクジェットインク組成物及びインクジェット記録方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/08 20060101AFI20240905BHJP
   C09D 11/324 20140101ALI20240905BHJP
   C09D 11/326 20140101ALI20240905BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20240905BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
C09D11/08
C09D11/324
C09D11/326
B41M5/00 120
B41J2/01 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030794
(22)【出願日】2023-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】青山 哲也
(72)【発明者】
【氏名】鍔本 智史
(72)【発明者】
【氏名】矢竹 正弘
(72)【発明者】
【氏名】粂田 宏明
(72)【発明者】
【氏名】菊池 健太
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4J039
【Fターム(参考)】
2C056EA13
2C056FA10
2C056FC01
2H186FB11
2H186FB15
2H186FB16
2H186FB17
2H186FB22
2H186FB25
2H186FB29
2H186FB31
2H186FB48
2H186FB58
4J039AB00
4J039AD10
4J039AE04
4J039AE06
4J039BA02
4J039BA03
4J039BA04
4J039BC07
4J039BC09
4J039BC10
4J039BC11
4J039BC79
4J039BE01
4J039BE22
4J039CA03
4J039CA06
4J039DA02
4J039EA38
4J039EA39
4J039EA40
4J039EA46
4J039FA01
4J039FA02
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】CO2の排出量を削減しつつ、耐擦性及び耐マーカー性に優れるインクジェットインク組成物等を提供することを目的とする。
【解決手段】顔料と、分散剤と、バイオマス樹脂と、を含み、前記顔料は、前記分散剤により水分散しており、前記分散剤が、リグニン類を含む、水系インクであるインクジェットインク組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料と、分散剤と、バイオマス樹脂と、を含み、
前記顔料は、前記分散剤により水分散しており、
前記分散剤が、リグニン類を含む、
水系インクであるインクジェットインク組成物。
【請求項2】
前記顔料が、植物炭又は植物油炭の何れか1種以上を含む、
請求項1に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項3】
前記リグニン類が、リグニンスルホン酸塩を含む、
請求項1に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項4】
前記バイオマス樹脂が、脂環構造又は芳香環構造の何れか1種以上を有する、
請求項1に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項5】
前記顔料の含有量Aに対する、前記バイオマス樹脂の含有量Bの質量比(B/A)が、0.5~6.0である、
請求項1に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項6】
前記顔料の含有量Aに対する、前記リグニン類の含有量Cの質量比(C/A)が、0.5~2.0である、
請求項1に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項7】
体積平均粒子径D50が、300nm以下である、
請求項1に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項8】
インク固形分のバイオマス度が、60~100%である、
請求項1に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項9】
有機溶剤としてポリオール類をさらに含む、
請求項1に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項10】
請求項1~9の何れか一項に記載のインクジェットインク組成物をインクジェットヘッドから吐出して記録媒体に付着させるインク付着工程を含む、
記録方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットインク組成物及びインクジェット記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方法は、比較的単純な装置で、高精細な画像の記録が可能であり、各方面で急速な発展を遂げている。その中で、環境問題に配慮しつつ、インクの性能を向上させることについて種々の検討がなされている。例えば、特許文献1には、植物由来の炭化色材と、リグニン樹脂と、を含む、インクジェットインク組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-167623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のインクジェットインク組成物は、耐擦性及び耐マーカー性に改良の余地が残されていることがわかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、顔料と、分散剤と、バイオマス樹脂と、を含み、上記顔料は、上記分散剤により水分散しており、上記分散剤が、リグニン類を含む、水系インクであるインクジェットインク組成物である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本実施形態で使用する記録装置の概略図である。
図2】実施例の結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0008】
1.インクジェットインク組成物
本実施形態に係るインクジェットインク組成物(以下、単に「インク組成物」ともいう。)は、顔料と、分散剤と、バイオマス樹脂と、を含み、上記顔料は、上記分散剤により水分散しており、上記分散剤が、リグニン類を含む、水系インクである。
【0009】
環境に配慮したインク組成物を提供するために、顔料の分散剤としてリグニン類が用いられている。リグニン類は、化石資源を除いた、動植物から生まれた有機性の資源由来(以下、「動植物由来」ともいう。)の材料で、CO2排出量削減のために有望な材料であり、また、顔料の分散剤として優れた性能を有する。しかしながら、顔料をリグニン類で分散させたインク組成物を用いて印刷された記録物は、耐擦性及び耐マーカー性に改良の余地がある。
【0010】
そこで、本実施形態においては、顔料をリグニン類で分散させたインク組成物が、バイオマス樹脂を更に含むことで、CO2の排出量を削減しつつ、耐擦性及び耐マーカー性に優れる傾向にある。CO2の排出量を削減しつつ、耐擦性及び耐マーカー性に優れる要因は、バイオマス樹脂は動植物由来の材料を用いており、同様に動植物由来であるリグニン類との親和性が高く、分散剤としてリグニン類が付着した顔料を定着させることができる定着樹脂としての機能を有するためであると考えられる。但し、CO2の排出量を削減しつつ、耐擦性及び耐マーカー性に優れる要因はこれに限定されない。
【0011】
また、上述のとおり、バイオマス樹脂はリグニン類との親和性が高いため、リグニン類により分散された顔料の高い分散安定性は、インク組成物がバイオマス樹脂を更に含んでも維持されるため好ましい。
【0012】
インク組成物の固形分のバイオマス度は、好ましくは、50~100%であり、60~100%であり、70~100%であり、80~100%である。インク組成物の固形分のバイオマス度が、上記範囲内であることにより、CO2の排出量を削減したインク組成物となる。ここで、バイオマス度とは、使用したバイオマス原料の乾燥重量割合である。
【0013】
バイオマス原料とは、動植物から生まれた有機性の資源のうち、化石資源を除いたもののことである。本実施形態であれば、バイオマス樹脂やリグニン類、動植物由来の顔料などがバイオマス原料に当たる。
【0014】
バイオマス度は、加速器質量分析法(AMS法)により測定した14Cの濃度に基づく公知の方法により測定できる。より具体的には、実施例に記載の方法で測定できる。
【0015】
インク組成物の体積平均粒子径D50は、好ましくは、300nm以下であり、50~300nmであり、100~275nmであり、100~250nmである。インク組成物のD50が、上記範囲内であることにより、耐擦性及び耐マーカー性に優れる傾向にある。
【0016】
インク組成物のD50は、公知の粒度分布測定装置により測定できる。より具体的には、動的光散乱法など実施例に記載の方法で測定できる。また、インク組成物のD50は、インク組成物の成分を変更すること、インク組成物の組成を変更すること、インク組成物の分散条件を変更すること、等によって調整できる。
【0017】
以下、本実施形態のインク組成物の各成分についてそれぞれ詳説する。
【0018】
1.1.顔料
本実施形態のインク組成物は、顔料を含む。顔料としては、特に限定されないが、例えば、赤土、黄土、緑土、孔雀石、胡粉、黒鉛等の天然鉱物顔料、紺青、亜鉛華、コバルト青、エメラルド緑、ビリジャン、チタン白、酸化鉄等の合成無機顔料、アルカリブルー、リゾールレッド、ジスアゾイエロー、石油由来のカーボンブラック等の有機顔料、竹炭、備長炭などの木炭等の植物炭、ヒマシ油、松やに油等を原料とした植物油由来のカーボンブラック(植物油炭)、イカスミ、タコスミ等を原料とした動物由来顔料が挙げられる。この中でも、CO2の排出量削減の観点からは、天然鉱物顔料、合成無機顔料、植物炭、植物油炭、動物由来顔料が好ましく、植物炭、植物油炭がより好ましい。顔料は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0019】
顔料の含有量は、インク組成物の総量に対して、好ましくは、1~20質量%であり、2~15質量%であり、4~10質量%である。顔料の含有量が、上記範囲内であることにより、耐擦性及び耐マーカー性に優れる傾向にある。
【0020】
1.2.分散剤
本実施形態のインク組成物に含まれる分散剤は、リグニン類を含む。分散剤がリグニン類を含むことにより、インク組成物中に顔料を良好に分散できる。特に、顔料として、植物炭、植物油炭を使用するとき、これらには、リグニン類が成分として含まれているため、リグニン類との親和性が高く、より高い分散性を示す。
【0021】
リグニン類としては、特に限定されないが、例えば、リグニン、リグニン誘導体が挙げられる。リグニン誘導体としては、特に限定されないが、例えば、リグニンスルホン酸、リグニンスルホン酸塩(リグニンスルホン酸ナトリウム、リグニンスルホン酸カリウム等)、クラフトリグニン、ソーダリグニンが挙げられる。何れもパルプ製造時の黒液から得られ、亜硫酸法からはリグニンスルホン酸が、クラフト法からはクラフトリグニンが、ソーダ法からはソーダリグニンが得られる。但し、これらのリグニンを得る方法はこれらに限定されない。
【0022】
リグニン類以外の分散剤を含んでもよく、そのような分散剤としては、特に限定されないが、例えば、ビニル系ポリマー及びコポリマー、アクリル系ポリマー及びコポリマー、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、アミノ系ポリマー、含珪素ポリマー、含硫黄ポリマー、含フッ素ポリマー、エポキシ樹脂が挙げられる。分散剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0023】
分散剤の含有量は、インク組成物の総量に対して、好ましくは、1~15質量%であり、3~10質量%である。分散剤の含有量が、上記範囲内であることにより、吐出安定性及び沈降性に優れる傾向にある。
【0024】
リグニン類の含有量は、インク組成物の総量に対して、好ましくは、1~15質量%であり、3~10質量%である。リグニン類の含有量が、上記範囲内であることにより、吐出安定性及び沈降性に優れる傾向にある。
【0025】
顔料の含有量Aに対する、リグニン類の含有量Cの質量比(C/A)は、好ましくは、0.1~6.0であり、0.2~5.0であり、0.3~4.0であり、0.4~2.5であり、0.5~2.0であり、0.6~1.5である。質量比(C/A)が、上記範囲内であることにより、吐出安定性及び沈降性に優れる傾向にある。
【0026】
1.3.バイオマス樹脂
上述のとおり、顔料をリグニン類で分散させたインク組成物を用いて印刷された記録物は、耐擦性及び耐マーカー性に改良の余地がある。しかしながら、顔料をリグニン類で分散させたインク組成物に、バイオマス樹脂を更に含むことで、CO2の排出量を削減しつつ、耐擦性及び耐マーカー性に優れる傾向にある。
【0027】
バイオマス樹脂は、脂環構造又は芳香環構造の何れか1種以上を有することで、耐擦性及び耐マーカー性に優れる傾向にある。耐擦性及び耐マーカー性に優れる傾向にある要因は、インク組成物に含まれるリグニン類が環状構造を有するため、バイオマス樹脂が環状構造である、脂環構造又は芳香環構造の何れか1種以上を有することで、バイオマス樹脂とリグニン類との親和性が向上し、バイオマス樹脂の定着樹脂としての機能が向上するためと考えられる。但し、耐擦性及び耐マーカー性に優れる傾向にある要因はこれに限定されない。
【0028】
バイオマス樹脂としては、特に限定されないが、例えば、バイオマス原料のみから製造されたモノマー、又は、バイオマス原料を含む原料から製造されたモノマー(両者を総称して、以下、「バイオマスモノマー」ともいう。)から製造された樹脂である。バイオマス樹脂は、バイオマスモノマーのみから製造された樹脂であってもよいし、バイオマスモノマーと石油由来のモノマーから製造された樹脂であってもよい。
【0029】
バイオマスモノマーとしては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル(メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等)、アクリロニトリル、シアノアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、アクリルアミド、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ポリプロピレングリコール、ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートジオール、ポリブタジエンポリオール、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、オレフィン、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、ビニルアルコール、ビニルエーテル、ビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルカルバゾール、ビニルイミダゾール、及び塩化ビニリデンが挙げられる。バイオマスモノマーは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
バイオマス樹脂としては、特に限定されないが、例えば、上記バイオマスモノマーからなる群より選択される1種以上を用いて製造された、バイオウレタン樹脂、バイオポリエステル樹脂、バイオアクリル樹脂が挙げられ、バイオアクリル樹脂が好ましい。バイオマス樹脂の形態は、特に限定されないが、例えば、水溶性樹脂であってもよいし、樹脂微粒子であってもよいし、樹脂エマルジョンであってもよい。
【0031】
バイオマスモノマーとしては、上述の例示の中でもステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、イソボルニル(メタ)アクリレート等の脂環構造又は芳香環構造の何れか1種以上を有する(メタ)アクリル酸エステルがより好ましい。これらのバイオマスモノマーから製造された樹脂を用いることにより、CO2の排出量を削減しつつ、耐擦性及び耐マーカー性に優れる傾向にある。また、直鎖構造に比べ環状構造のイソボルニル基等を有することにより、リグニン類との親和性が向上し、色材塗膜の基材定着がより強固となり、耐擦性及び耐マーカー性がより向上する傾向にある。
【0032】
バイオマス樹脂の含有量は、インク組成物の総量に対して、好ましくは、0.1~20.0質量%であり、0.5~15.0質量%であり、1.0~10.0質量%であり、2.5~7.5質量%である。バイオマス樹脂の含有量が、上記範囲内であることにより、耐擦性及び耐マーカー性に優れる傾向にある。
【0033】
顔料の含有量Aに対する、バイオマス樹脂の含有量Bの質量比(B/A)は、好ましくは、0.1~8.0であり、0.2~7.0であり、0.5~6.0であり、0.6~4.0であり、0.7~3.0である。質量比(B/A)が、上記範囲内であることにより、耐擦性及び耐マーカー性に優れる傾向にある。
【0034】
1.4.有機溶剤
本実施形態のインク組成物は有機溶剤を含んでいてもよい。有機溶剤としては、特に限定されないが、例えば、一価アルコール類、ポリオール類、及びグリコールエーテル類等の水溶性有機溶剤が挙げられる。その中でも、ポリオール類を含むことが好ましい。有機溶剤を含むことにより、耐擦性及び耐マーカー性に優れる傾向にある。有機溶剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0035】
一価アルコール類としては、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、イソプロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブタノール、及び2-メチル-2-プロパノール等が挙げられる。
【0036】
ポリオール類としては、特に限定されないが、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール等のジオール類、1,2,5-ヘキサントリオール、1,2,6-ヘキサントリオール、ポリオキシプロピレントリオール、グリセリン等のトリオール類、ペンタエリスリトール等のテトラオール類が挙げられる。
【0037】
グリコールエーテル類としては、特に限定されないが、例えば、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル等が挙げられる。
【0038】
有機溶剤の含有量は、インク組成物の総量に対して、好ましくは、2~35質量%であり、3~30質量%であり、5~25質量%であり、10~20質量%である。有機溶剤の含有量が、上記範囲内であることにより、耐擦性及び耐マーカー性に優れる傾向にある。
【0039】
1.5.界面活性剤
本実施形態のインク組成物は界面活性剤を含んでいてもよい。界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、アセチレングリコール系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、及びポリシロキサン系界面活性剤が挙げられる。界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0040】
アセチレングリコール系界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール及び2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオールのアルキレンオキサイド付加物、並びに2,4-ジメチル-5-デシン-4-オール及び2,4-ジメチル-5-デシン-4-オールのアルキレンオキサイド付加物から選択される一種以上が好ましい。アセチレングリコール系界面活性剤の市販品としては、特に限定されないが、例えば、オルフィン104シリーズやオルフィンE1010等のEシリーズ(日信化学工業株式会社製)、サーフィノール104やサーフィノール61(エボニック・インダストリー社製)などが挙げられる。
【0041】
フッ素系界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキルベタイン、パーフルオロアルキルアミンオキサイド化合物が挙げられる。フッ素系界面活性剤の市販品としては、特に限定されないが、例えば、S-144、S-145(旭硝子株式会社製);FC-170C、FC-430、フロラード-FC4430(住友スリーエム株式会社製);FSO、FSO-100、FSN、FSN-100、FS-300(Dupont社製);FT-250、251(株式会社ネオス製)などが挙げられる。
【0042】
シリコーン系界面活性剤としては、ポリシロキサン系化合物、ポリエーテル変性オルガノシロキサン等が挙げられる。シリコーン系界面活性剤の市販品としては、特に限定されないが、具体的には、BYK-306、BYK-307、BYK-333、BYK-341、BYK-345、BYK-346、BYK-347、BYK-348、BYK-349(ビックケミー・ジャパン株式会社製)、KF-351A、KF-352A、KF-353、KF-354L、KF-355A、KF-615A、KF-945、KF-640、KF-642、KF-643、KF-6020、X-22-4515、KF-6011、KF-6012、KF-6015、KF-6017(信越化学株式会社製)等が挙げられる。
【0043】
界面活性剤の含有量は、インク組成物の総量に対して、好ましくは、0.1~5.0質量%であり、0.2~2.0質量%である。
【0044】
1.6.水
本実施形態のインク組成物に含まれる水としては、特に限定されないが、例えば、イオン交換水、限外ろ過水、逆浸透水、及び蒸留水等が挙げられる。本実施形態において「水系インク」とは、水を主要な溶剤成分として含むインク組成物をいう。
【0045】
水の含有量は、インク組成物の総量に対して、好ましくは、60~90質量%であり、65~80質量%である。
【0046】
1.7.その他の成分
本実施形態のインク組成物は、上記の各成分の他に、従来のインク組成物に用いられ得る公知のその他の成分を含んでもよい。その他の成分としては、特に限定されないが、例えば、溶解助剤、粘度調整剤、pH調整剤、酸化防止剤、防腐剤、腐食防止剤、及び分散に影響を与える所定の金属イオンを捕獲するためのキレート化剤その他の添加剤、及び上記以外の有機溶剤等が挙げられる。その他の成分は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0047】
2.インク組成物の製造方法
本実施形態のインク組成物の製造方法は、特に限定されないが、例えば、上記各成分を混合してもよい。また、本実施形態のインク組成物の製造方法においては、顔料と分散剤とを水に分散させた、顔料分散液を調製し、得られた顔料分散液とその他の上記各成分とを混合してもよい。
【0048】
顔料分散液は、インク組成物を調製する前にあらかじめ調製されていてもよいし、インク組成物を調製する際に、他の成分と同時に混合、分散されて調製されてもよい。
【0049】
顔料分散液は、特に限定されないが、例えば、顔料と分散剤と水とを、ピンタイプの横型ビーズミルにより混合して得てもよい。このとき用いられるビーズは、例えば、直径0.3mmのジルコニアビーズであってもよく、直径及び材質は、所望の物性に基づいて適宜選択される。サンドグラインダーによる分散処理時間は、好ましくは、0.5~3.0時間であり、0.5~2.5時間である。
【0050】
3.記録媒体
本実施形態のインク組成物の記録に用いる記録媒体としては、特に限定されないが、例えば、吸収性記録媒体、低吸収性記録媒体、及び非吸収性記録媒体が挙げられる。
【0051】
吸収性記録媒体としては、特に限定されないが、例えば、インクの浸透性が高い電子写真用紙等の普通紙、インクジェット用紙(シリカ粒子やアルミナ粒子から構成されたインク吸収層、あるいは、ポリビニルアルコール(PVA)やポリビニルピロリドン(PVP)等の親水性ポリマーから構成されたインク吸収層を備えたインクジェット専用紙)、布帛が挙げられる。
【0052】
低吸収性記録媒体は、特に限定されないが、例えば、インクの浸透性が比較的低い一般のオフセット印刷に用いられるアート紙、コート紙、キャスト紙等が挙げられる。
【0053】
非吸収性記録媒体としては、特に限定されないが、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリウレタン等のプラスチック類のフィルムやプレート;鉄、銀、銅、アルミニウム等の金属類のプレート;又はそれら各種金属を蒸着により製造した金属プレートやプラスチック製のフィルム、ステンレスや真鋳等の合金のプレート;紙製の基材にポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリウレタン等のプラスチック類のフィルムを接着(コーティング)した記録媒体等が挙げられる。
【0054】
ビジネスインクジェットプリンタにおいては、記録媒体の中でも普通紙が一般に用いられるが、普通紙はインクジェット用紙のようなインク受容層を有さないため、普通紙に印刷すると耐擦性に劣る傾向にある。しかしながら、本実施形態のインク組成物を用いることで、ビジネスインクジェットプリンタを用いて普通紙に印刷しても十分な耐擦性及び耐マーカー性を有する傾向にある。
【0055】
4.インクジェット記録方法
本実施形態のインクジェット記録方法は、本実施形態のインク組成物をインクジェットヘッドから吐出して記録媒体に付着させるインク付着工程を含み、また、必要に応じて、記録媒体を搬送する搬送工程等のその他の工程を含んでいてもよい。
【0056】
4.1.インク付着工程
インク付着工程では、本実施形態のインク組成物をインクジェットヘッドから吐出して記録媒体に付着させる。より具体的には、インクジェットヘッド内に設けられた圧力発生手段を駆動させて、インクジェットヘッドの圧力発生室内に充填されたインク組成物をノズルから吐出させる。
【0057】
インク付着工程において用いるインクジェットヘッドとしては、ライン方式により記録を行うラインヘッドと、シリアル方式により記録を行うシリアルヘッドが挙げられる。
【0058】
ラインヘッドを用いたライン方式では、例えば、記録媒体の記録幅以上の幅を有するインクジェットヘッドを記録装置に固定する。そして、記録媒体を副走査方向(記録媒体の搬送方向)に沿って移動させ、この移動に連動してインクジェットヘッドのノズルからインク滴を吐出させることにより、記録媒体上に画像を記録する。
【0059】
シリアルヘッドを用いたシリアル方式では、例えば、記録媒体の幅方向に移動可能なキャリッジにインクジェットヘッドを搭載する。そして、キャリッジを主走査方向(記録媒体の幅方向)に沿って移動させ、この移動に連動してインクジェットヘッドのノズルからインク滴を吐出させることにより、記録媒体上に画像を記録する。
【0060】
4.2.搬送工程
本実施形態のインクジェット記録方法は搬送工程を含んでいてもよい。搬送工程では、記録装置内で所定の方向に記録媒体を搬送する。より具体的には、記録装置内に設けられた搬送ローラーや搬送ベルトを用いて、記録装置の給紙部から排紙部へと記録媒体を搬送する。その搬送過程において、インクジェットヘッドから吐出されたインク組成物が記録媒体に付着し、記録物が形成される。インク付着工程と搬送工程は同時に行ってもよいし、交互に行ってもよい。
【0061】
5.記録装置
インクジェット装置の一例として、図1に、シリアルプリンタの斜視図を示す。図1に示すように、シリアルプリンタ20は、搬送部220と、記録部230とを備えている。搬送部220は、シリアルプリンタに給送された記録媒体Fを記録部230へと搬送し、記録後の記録媒体をシリアルプリンタの外に排出する。具体的には、搬送部220は、各送りローラーを有し、送られた記録媒体Fを副走査方向T2へ搬送する。
【0062】
また、記録部230は、搬送部220から送られた記録媒体Fに対してインク組成物を吐出するノズルを有するインクジェットヘッド231を搭載するキャリッジ234と、キャリッジ234を記録媒体Fの主走査方向S1、S2に移動させるキャリッジ移動機構235を備える。
【0063】
シリアルプリンタの場合には、インクジェットヘッド231として記録媒体の幅より小さい長さであるヘッドを備え、ヘッドが移動し、複数パスで記録が行われる。また、シリアルプリンタでは、所定の方向に移動するキャリッジ234にヘッド231が搭載されており、キャリッジの移動に伴ってヘッドが移動することにより記録媒体F上にインク組成物を吐出する。これにより、2パス以上で記録が行われる。なお、パスを主走査ともいう。パスとパスの間には記録媒体を搬送する副走査を行う。つまり主走査と副走査を交互に行う。
【0064】
また、本実施形態のインクジェット装置は、上記シリアル方式のプリンタに限定されず、上述したライン方式のプリンタであってもよい。ライン方式のプリンタは、記録媒体の記録幅以上の長さを有するインクジェットヘッドであるラインヘッドを用いて、記録媒体に、1回の走査で記録を行うプリンタである。
【0065】
普通紙印刷を主な用途とするビジネスインクジェットプリンタ(BIJプリンタ)は、インク使用量が多くなるため、本実施形態のインク組成物をBIJプリンタに用いることで、化石資源由来の材料を用いた従来のインクジェットインク組成物を用いた場合に比べて、CO2排出量を削減することができ好ましい。
【実施例0066】
以下、本発明を実施例及び比較例を用いてより具体的に説明する。本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0067】
1.顔料分散液の調製
顔料10質量部と、分散剤10質量部とをイオン交換水50質量部によく混合し、ピンタイプの横型ビーズミルを用いて、直径0.3mmジルコニアビーズにより2時間分散処理し、顔料分散液を得た。
【0068】
2.インクジェットインク組成物の調製
図2に記載の組成となるように、得られた顔料分散液と、残りの成分とを混合物用タンクに入れて混合して、実施例及び比較例のインク組成物を得た。なお、図2中の各例に示す各成分の数値は特段記載のない限り質量%を表す。また、図2における顔料、分散剤、及びバイオマス樹脂の含有量(質量%)については、固形分濃度を表す。
【0069】
図2に示す材料は以下のとおりである。
<顔料>
・備長炭(キリヤ化学株式会社製、備長炭末)
・竹炭(キリヤ化学株式会社製、竹炭末)
・植物油由来カーボンブラック(特開2009-024071の実施例1に記載の製造方法で得られるカーボンブラック)
・石油由来カーボンブラック(三菱ケミカル株式会社製、C.I.ピグメントブラック7)
<分散剤>
・サンエキスP252(日本製紙株式会社製、リグニンスルホン酸ナトリウム)
・ジョンクリル61J(BASF社製)
<有機溶剤>
・プロピレングリコール
・1,3-ブタンジオール
・グリセリン
<界面活性剤>
・オルフィンE1010(日信化学工業株式会社製)
・サーフィノール104(エボニック・インダストリー社製)
<水>
・イオン交換水
【0070】
<バイオマス樹脂>
・エマルジョン1:
撹拌機、還流コンデンサー、滴下装置、及び温度計を備えた反応容器に、イオン交換水900g及びラウリル硫酸ナトリウム3gを仕込み、窒素置換し、撹拌しながら70℃まで昇温した。内温を70℃に保ち、重合開始剤として過硫酸カリウム4gを添加し、溶解後、あらかじめイオン交換水450gに、ラウリル硫酸ナトリウム3g、アクリルアミド20g、バイオマスモノマーであるイソボルニルアクリレート(IBXA)1250g(6モル)、ブチルアクリレート380g、メタクリル酸30g、及びエチレングリコールジメタクリレート2gを撹拌しながら加えて調製した乳化物を、反応容器内に連続的に4時間かけて滴下した。滴下終了後、3時間の熟成を行った。得られた水性エマルジョンを常温(25℃)まで冷却した後、イオン交換水とアンモニア水とを添加して、固形分質量が40重量%であり、pHが8であるように調整した。
【0071】
・エマルジョン2:
上記エマルジョン1の調製において、IBXAのかわりに、バイオマスモノマーであるイソボルニルメタクリレート(IBMA)を同モル用いたこと以外は、エマルジョン1と同様の調製方法により、エマルジョン2を調製した。
【0072】
・エマルジョン3:
上記エマルジョン1の調製において、IBXAのかわりに、バイオマスモノマーであるステアリルアクリレート(STA)を同モル用いたこと以外は、エマルジョン1と同様の調製方法により、エマルジョン3を調製した。
【0073】
<その他の樹脂>
・エマルジョン4:
上記エマルジョン1の調製において、IBXAのかわりに、バイオマスモノマーではないメチルアクリレート(MA)を同モル用いたこと以外は、エマルジョン1と同様の調製方法により、エマルジョン4を調製した。
【0074】
上記エマルジョン1~4の調製に用いたIBXA、IBMA、STA、MAは以下のとおりである。
・IBXA(大阪有機化学工業株式会社製、バイオマスアクリレート)
・IBMA(三和ケミファ社製b-IBOMA、バイオマスアクリレート)
・STA(大阪有機化学工業株式会社製、バイオマスアクリレート)
・MA(東京化成工業株式会社製)
【0075】
インク組成物の各成分のバイオマス度は、12Cの同位体である14Cの濃度に基づいて計算し、14Cの濃度は加速器質量分析法(AMS法)により測定した。また、インク組成物の固形分のバイオマス度は、インク組成物の固形分の各成分のバイオマス度に基づき計算した。具体的には、以下の式で計算した。
(各成分のバイオマス度×質量%)/(各成分の質量%の和)
※各成分とは、ここでは、顔料、分散剤、バイオマス樹脂、及びその他の樹脂である。
【0076】
インク組成物の体積平均粒子径D50は、動的光散乱法によって測定した。測定装置としては、ELSZ-1000(大塚電子株式会社製)を使用した。
【0077】
3.評価
3.1.沈降性
遠心管、蓋、及びインク組成物の全質量が55gとなるように、インク組成物を遠心管に入れ蓋をした。当該蓋付き遠心管を遠心分離機(日立工機株式会社製、CR-20B2、ROTOR No.36)にセットし、10000rpmの回転数で15分間処理した後、気液界面から5mLの溶液を採取した。そのようにして得られた上澄み液、及び遠心分離前のインク組成物の、波長500nmの光の吸光度を測定した。そして、遠心分離前のインク組成物の波長500nmの光の吸光度(C0)と上澄み液の波長500nmの光の吸光度(C1)を用いて、沈降率(P1)を下記式により算出し、以下の評価基準により評価した。
P1(%)=(C1/C0)×100
[評価基準]
A:P1が90%以上である。
B:P1が80%以上90%未満である。
C:P1が80%未満である。
【0078】
3.2.吐出安定性
インクジェット記録装置(セイコーエプソン社製「PX-S840」)を用い、そのインクジェット記録装置のインクカートリッジに各インク組成物を充填し、全ノズルよりインク組成物が吐出できることを確認した。その後、A4サイズの普通紙に100%Dutyベタ印字で、50枚連続で印刷した。印刷後、インク組成物が吐出できないノズルの本数(ノズルの抜け本数)から、下記評価基準により吐出安定性を評価した。
[評価基準]
A:ノズル抜け本数が10本未満である。
B:ノズル抜け本数が10本以上20本未満である。
C:ノズル抜け本数が20本以上50本未満である。
D:ノズル抜け本数が50本以上である。
【0079】
3.3.耐マーカー性
上記吐出安定性試験と同様にして記録物を得て、印字後、30分間の自然乾燥を行い、記録媒体上のインク組成物が印刷された面と、印刷されていない面と、の境界を、市販の水性蛍光ペン(FABER-CASTELL社製テキストライナー)でなぞった場合の、汚れ度合いを目視にて観察し、以下の基準に従って、パネラー3人で評価した。評価A,B,Cは、何れも実用上問題がないレベルの評価であるが、評価Dは実用上問題があるレベルの評価である。
[評価基準]
A:蛍光ペンで2度なぞっても尾引き等の汚れが生じない。
B:蛍光ペンで1度なぞっても尾引き等の汚れが生じないが、2度なぞると尾引き等の汚れが生じる。
C:蛍光ペンで1度なぞると尾引き等の汚れが生じる。
D:蛍光ペンで1度なぞると著しい尾引き等の汚れが生じる。
【0080】
3.4.耐擦性
JIS L0849 2013 に基づいてテスター産業の学振式耐擦過性評価装置AB-301を用いて行った。耐擦過性試験は乾燥した金巾綿で試験する乾摩擦性試験と湿った金巾綿で試験する湿摩擦性試験があり、両方の試験を行った。乾摩擦性試験は200g荷重100往復の条件、湿摩擦性試験は200g荷重10往復の条件でそれぞれ行った。
【0081】
上記吐出安定性試験と同様にして、インクジェット記録装置(セイコーエプソン社製「PX-S840」)を用いて、1.0インチ×0.5インチの記録物を得た。記録の1日後にそれぞれ、記録物のベタ画像の上に金巾綿を押し当てて評価した。その後、金巾綿の汚れ、非記録部の汚れ、及び印刷部分の剥がれ具合を目視で確認して、以下に示す評価基準にしたがって耐擦過性の評価を行った。
[評価基準]
A:金巾綿の汚れ及び非記録部の汚れがなく、印刷部分は剥がれなかった。
B:金巾綿の汚れ及び非記録部の汚れがほとんどなく、印刷部分はほとんど剥がれなかった。
C:金巾綿の汚れ及び非記録部の汚れがあるが少なく、印刷部分はほとんど剥がれなかった。
D:金巾綿の汚れ及び非記録部の汚れがあり、印刷部分は剥がれる箇所があった。
【0082】
4.評価結果
図2の評価結果から、実施例1~8は何れも、バイオマス樹脂を用いない比較例1~2、リグニン類を用いない比較例3~4と比較して、沈降性、及び吐出安定性に優れつつ、加えて、耐擦性及び耐マーカー性に優れることがわかった。
【符号の説明】
【0083】
20…シリアルプリンタ、220…搬送部、230…記録部、231…インクジェットヘッド、234…キャリッジ、235…キャリッジ移動機構、F…記録媒体、S1,S2…主走査方向、T2…副走査方向
図1
図2