IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ セイコーエプソン株式会社の特許一覧

特開2024-123401インクジェットインク組成物及びインクジェット記録方法
<>
  • 特開-インクジェットインク組成物及びインクジェット記録方法 図1
  • 特開-インクジェットインク組成物及びインクジェット記録方法 図2
  • 特開-インクジェットインク組成物及びインクジェット記録方法 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123401
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】インクジェットインク組成物及びインクジェット記録方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/322 20140101AFI20240905BHJP
   C09D 11/324 20140101ALI20240905BHJP
   C09D 11/326 20140101ALI20240905BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20240905BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240905BHJP
   C09D 11/30 20140101ALI20240905BHJP
   C09D 11/38 20140101ALI20240905BHJP
【FI】
C09D11/322
C09D11/324
C09D11/326
B41M5/00 120
B41J2/01 501
C09D11/30
C09D11/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030795
(22)【出願日】2023-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】青山 哲也
(72)【発明者】
【氏名】鍔本 智史
(72)【発明者】
【氏名】矢竹 正弘
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4J039
【Fターム(参考)】
2C056FB02
2C056FC01
2H186FB11
2H186FB15
2H186FB16
2H186FB17
2H186FB22
2H186FB25
2H186FB29
2H186FB31
2H186FB48
2H186FB58
4J039AB00
4J039AB09
4J039AB12
4J039AD10
4J039AE04
4J039AE06
4J039BA02
4J039BA03
4J039BA04
4J039BB01
4J039BB02
4J039BB03
4J039BC07
4J039BC09
4J039BC10
4J039BC11
4J039BC79
4J039BE01
4J039BE22
4J039CA03
4J039CA06
4J039DA02
4J039EA36
4J039EA40
4J039EA46
4J039FA01
4J039FA02
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】CO2の排出量を削減しつつ、耐擦性及び耐ブロッキング性に優れるインクジェットインク組成物等を提供することを目的とする。
【解決手段】顔料と、樹脂粒子と、ワックス粒子と、を含み、前記樹脂粒子が、植物由来の、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、又はポリエステル樹脂の何れか1種以上を含み、前記ワックス粒子が、植物由来のワックスを含み、インク固形分のバイオマス度が10~100%である、インクジェットインク組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料と、樹脂粒子と、ワックス粒子と、を含み、
前記樹脂粒子が、植物由来の、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、又はポリエステル樹脂の何れか1種以上を含み、
前記ワックス粒子が、植物由来のワックスを含み、
インク固形分のバイオマス度が10~100%である、
インクジェットインク組成物。
【請求項2】
前記ワックス粒子の融点が70℃以上である、
請求項1に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項3】
前記顔料が、植物炭又は植物油炭の何れか1種以上を含む、
請求項1に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項4】
前記顔料の分散剤として、リグニン類を含む、
請求項1に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項5】
前記ワックス粒子が、カルナバワックス、キャンデリアワックス、ミツロウワックス、ヒマシ油ワックス、ライスワックス、シェラックワックス、PHAワックス、又はビーズワックスの何れか1種以上を含む、
請求項1に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項6】
前記樹脂粒子の含有量Aに対する、前記ワックス粒子の含有量Bの質量比(B/A)が、0.10~1.00である、
請求項1に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項7】
非吸収記録媒体又は低吸収記録媒体への記録に用いられる、
請求項1に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項8】
請求項1~7の何れか一項に記載のインクジェットインク組成物をインクジェットヘッドから吐出して記録媒体に付着させるインク付着工程を含む、
記録方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットインク組成物及びインクジェット記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方法は、比較的単純な装置で、高精細な画像の記録が可能であり、各方面で急速な発展を遂げている。その中で、環境問題に配慮しつつ、インクの性能を向上させることについて種々の検討がなされている。例えば、特許文献1には、コポリエステルであり、30と50mol%のイソヘキシドである第1のモノマー;40と60mol%の、芳香族ジカルボン酸又は環状脂肪族ジカルボン酸である第2のモノマー;及び1と20mol%の、脂肪族ジオールである第3のモノマーからなり、前記コポリエステルが、10と50の間の酸価を持つ、コポリエステルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2014-514382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のインクジェットインク組成物は、耐擦性及び耐ブロッキング性に劣る傾向にあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、顔料と、樹脂粒子と、ワックス粒子と、を含み、上記樹脂粒子が、植物由来の、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、又はポリエステル樹脂の何れか1種以上を含み、上記ワックス粒子が、植物由来のワックスを含み、インク固形分のバイオマス度が10~100%である、インクジェットインク組成物である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本実施形態で使用する記録装置の概略図である。
図2】実施例の結果を示す表である。
図3】実施例の結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0008】
1.インクジェットインク組成物
本実施形態に係るインクジェットインク組成物(以下、単に「インク組成物」ともいう。)は、顔料と、樹脂粒子と、ワックス粒子と、を含み、上記樹脂粒子が、植物由来の、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、又はポリエステル樹脂の何れか1種以上を含み、上記ワックス粒子が、植物由来のワックスを含み、インク固形分のバイオマス度が10~100%である。
【0009】
環境に配慮したインク組成物を提供するために、植物由来の樹脂が用いられている。しかしながら、通常用いられる石油由来の樹脂を用いたインク組成物と比較すると、耐擦性及び耐ブロッキング性が低い傾向にあり、この傾向は、非吸収記録媒体又は低吸収記録媒体に記録する際に顕著であった。
【0010】
このように耐擦性及び耐ブロッキング性が低い要因は、植物由来の樹脂はガラス転移温度(Tg)が、石油由来の樹脂に比べて低い傾向にあるためと考えられる。但し、耐擦性及び耐ブロッキング性が低い要因はこれに限定されない。
【0011】
そこで、本実施形態においては、植物由来のウレタン樹脂、アクリル樹脂、又はポリエステル樹脂の何れか1種以上を含む樹脂粒子を用いたインク組成物に、植物由来のワックスを含むワックス粒子を更に加える。植物由来のワックスを含むワックス粒子を含むことで、印刷後のインク塗膜の滑りがよくなるため、CO2の排出量を削減しつつ、耐擦性及び耐ブロッキング性に優れると考えられる。但し、CO2の排出量を削減しつつ、耐擦性及び耐ブロッキング性に優れる要因はこれに限定されない。
【0012】
インク組成物のバイオマス度は、10~100%であり、好ましくは、15~100%であり、20~100%であり、30~100%であり、40~100%であり、50~100%であり、60~100%であり、70~100%であり、80~100%であり、90~100%である。インク組成物のバイオマス度が、上記範囲内であることにより、CO2の排出量を削減したインク組成物となる。ここで、バイオマス度とは、使用したバイオマス原料の乾燥重量割合である。
【0013】
バイオマス原料とは、動植物から生まれた有機性の資源のうち、化石資源を除いたもののことである。本実施形態であれば、バイオマス樹脂やリグニン類、動植物由来の顔料などがバイオマス原料に当たる。
【0014】
バイオマス度は、加速器質量分析法(AMS法)により測定した14Cの濃度に基づく公知の方法により測定できる。より具体的には、実施例に記載の方法で測定できる。
【0015】
1.1.顔料
本実施形態のインク組成物は、顔料を含む。顔料としては、特に限定されないが、例えば、樹脂によって顔料が分散される樹脂分散顔料、顔料自身が分散性を有する自己分散顔料が挙げられる。より具体的には、赤土、黄土、緑土、孔雀石、胡粉、黒鉛等の天然鉱物顔料、紺青、亜鉛華、コバルト青、エメラルド緑、ビリジャン、チタン白、酸化鉄等の合成無機顔料、アルカリブルー、リゾールレッド、ジスアゾイエロー、石油由来のカーボンブラック等の有機顔料、竹炭、備長炭などの木炭等の植物炭、ヒマシ油、松やに油等を原料とした植物油由来のカーボンブラック(植物油炭)、イカスミ、タコスミ等を原料とした動物由来顔料が挙げられる。この中でも、CO2の排出量削減の観点からは、天然鉱物顔料、合成無機顔料、植物炭、植物油炭、動物由来顔料が好ましく、植物炭、植物油炭がより好ましい。顔料は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0016】
顔料の含有量は、インク組成物の総量に対して、好ましくは、1~20質量%であり、2~15質量%であり、4~10質量%である。顔料の含有量が、上記範囲内であることにより、耐擦性及び耐ブロッキング性に優れる傾向にある。
【0017】
1.2.分散剤
本実施形態のインク組成物は分散剤を含んでもよい。インク組成物が分散剤を含むことにより、インク組成物中に顔料を良好に分散できる。
【0018】
分散剤としては、リグニン類、ビニル系ポリマー及びコポリマー、アクリル系ポリマー及びコポリマー、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、アミノ系ポリマー、含珪素ポリマー、含硫黄ポリマー、含フッ素ポリマー、エポキシ樹脂が挙げられ、この中でも、CO2の排出量削減の観点及び分散性向上の観点からは、リグニン類が好ましい。また、顔料として、植物炭、植物油炭を使用するとき、これらにはリグニン類が成分として含まれており、リグニン類との親和性が高いことから、分散剤としてリグニン類を含むことで、より高い分散性を示す傾向にある。
【0019】
リグニン類としては、特に限定されないが、例えば、リグニン、リグニン誘導体が挙げられる。リグニン誘導体としては、特に限定されないが、例えば、リグニンスルホン酸、リグニンスルホン酸塩(リグニンスルホン酸ナトリウム、リグニンスルホン酸カリウム等)、クラフトリグニン、ソーダリグニンが挙げられる。何れもパルプ製造時の黒液から得られ、亜硫酸法からはリグニンスルホン酸が、クラフト法からはクラフトリグニンが、ソーダ法からはソーダリグニンが得られる。但し、これらのリグニンを得る方法はこれらに限定されない。分散剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0020】
分散剤の含有量は、インク組成物の総量に対して、好ましくは、1~10質量%であり、1~5質量%である。
【0021】
1.3.樹脂粒子
本実施形態のインク組成物は、植物由来の、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、又はポリエステル樹脂(これらを総称して、以下、「植物由来樹脂」ともいう。)の何れか1種以上を含む樹脂粒子を含む。インク組成物が、上記樹脂粒子を含むことにより、CO2の排出量を削減しつつ、耐擦性、耐ブロッキング性、及び記録媒体への密着性を向上させる傾向にある。
【0022】
植物由来樹脂とは、化石原料を除いた、植物由来の原料のみから製造されたモノマー、又は、化石原料を除いた、植物由来の原料を含む原料から製造されたモノマー(両者を総称して、以下、「植物由来モノマー」ともいう。)から製造された樹脂である。植物由来樹脂は、植物由来モノマーのみから製造された樹脂であってもよいし、植物由来モノマーと石油由来のモノマーから製造された樹脂であってもよい。
【0023】
植物由来モノマーとしては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル(ステアリルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、メチルメタクリレート等)、アクリロニトリル、シアノアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、アクリルアミド、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ポリプロピレングリコール、ポリエステルポリオール、ポリエチレングリコール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートジオール、ポリブタジエンポリオール、ポリエーテルポリオール、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、2,2-ジメチロールプロピオン酸、イソソルビド、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、オレフィン、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、ビニルアルコール、ビニルエーテル、ビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルカルバゾール、ビニルイミダゾール、及び塩化ビニリデンが挙げられる。バイオマス材料は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
植物由来樹脂を含む樹脂粒子の含有量は、インク組成物の総量に対して、好ましくは、0.5~10.0質量%であり、1.0~8.0質量%であり、1.5~5.0質量%である。植物由来樹脂を含む樹脂粒子の含有量が、上記範囲内であることにより、CO2の排出量を削減しつつ、耐擦性、耐ブロッキング性、及び記録媒体への密着性を向上させる傾向にある。
【0025】
1.4.ワックス粒子
上述のとおり、植物由来の樹脂を用いたインク組成物は、耐擦性及び耐ブロッキング性が低い傾向にある。しかしながら、植物由来の樹脂を用いたインク組成物に、植物由来のワックスを含むワックス粒子をさらに含むことで、CO2の排出量を削減しつつ、耐擦性及び耐ブロッキング性に優れる傾向にある。
【0026】
植物由来のワックスとは、植物由来の原料のみから製造されたワックス、又は、植物由来の原料を含む原料から製造されたワックスである。
【0027】
植物由来のワックスとしては、特に限定されないが、例えば、カルナバワックス、キャンデリアワックス、ミツロウワックス、ヒマシ油ワックス、ライスワックス、シェラックワックス、PHA(ポリヒドロキシアルカノエート)ワックス、ビーズワックス、ヒマワリワックス、イボタワックス、晒モンタンワックスが挙げられる。
【0028】
植物由来のワックスを含むワックス粒子の融点は、好ましくは、30℃以上であり、40℃以上であり、50℃以上であり、60℃以上であり、70℃以上であり、30~190℃であり、40~180℃であり、50~170℃であり、60~160℃であり、70~150℃である。植物由来のワックスを含むワックス粒子の融点が、上記範囲内であることにより、耐擦性及び耐ブロッキング性に優れる傾向にある。
【0029】
植物由来のワックスを含むワックス粒子の含有量は、インク組成物の総量に対して、好ましくは、0.1~10.0質量%であり、0.2~5.0質量%であり、0.4~3.0質量%であり、0.5~1.5質量%である。植物由来のワックスを含むワックス粒子の含有量が、上記範囲内であることにより、CO2の排出量を削減しつつ、耐擦性及び耐ブロッキング性に優れる傾向にある。
【0030】
植物由来樹脂を含む樹脂粒子の含有量Aに対する、植物由来のワックスを含むワックス粒子の含有量Bの質量比(B/A)は、好ましくは、0.05~1.50であり、0.10~1.00であり、0.20~0.90であり、0.30~0.85である。質量比(B/A)が、上記範囲内であることにより、耐擦性及び耐ブロッキング性に優れる傾向にある。
【0031】
1.5.有機溶剤
本実施形態のインク組成物は有機溶剤を含んでいてもよい。有機溶剤としては、特に限定されないが、例えば、浸透剤や保湿剤が挙げられ、具体的には、一価アルコール類、ポリオール類、及びグリコールエーテル類等の水溶性有機溶剤が挙げられる。有機溶剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
一価アルコール類としては、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、イソプロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブタノール、及び2-メチル-2-プロパノール等が挙げられる。
【0033】
ポリオール類としては、特に限定されないが、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、グリセリン等が挙げられる。
【0034】
グリコールエーテル類としては、特に限定されないが、例えば、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル等が挙げられる。
【0035】
ポリオール類のうち、標準沸点が280℃超のポリオール類としては、特に限定されないが、例えば、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、及びグリセリン等が挙げられる。
【0036】
また、標準沸点が280℃以下のポリオール類としては、特に限定されないが、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール等が挙げられる。
【0037】
有機溶剤の含有量は、インク組成物の総量に対して、好ましくは、2~35質量%であり、3~30質量%であり、5~25質量%であり、10~20質量%である。有機溶剤の含有量が、上記範囲内であることにより、耐擦性及び耐ブロッキング性が向上する傾向にある。
【0038】
標準沸点が280℃超のポリオール類の含有量は、インク組成物の総量に対して、好ましくは、0.0~2.0質量%であり、0.0~1.0質量%であり、0.0~0.5質量%であり、0.0~0.1質量%である。標準沸点が280℃超のポリオール類の含有量が、上記範囲内であることにより、耐擦性及び耐ブロッキング性が向上する傾向にある。
【0039】
1.6.界面活性剤
本実施形態のインク組成物は界面活性剤を含んでいてもよい。界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、アセチレングリコール系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、及びポリシロキサン系界面活性剤が挙げられる。界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0040】
アセチレングリコール系界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール及び2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオールのアルキレンオキサイド付加物、並びに2,4-ジメチル-5-デシン-4-オール及び2,4-ジメチル-5-デシン-4-オールのアルキレンオキサイド付加物から選択される一種以上が好ましい。アセチレングリコール系界面活性剤の市販品としては、特に限定されないが、例えば、オルフィン104シリーズやオルフィンE1010等のEシリーズ、サーフィノール104やサーフィノール61(日信化学工業社製)などが挙げられる。
【0041】
フッ素系界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキルベタイン、パーフルオロアルキルアミンオキサイド化合物が挙げられる。フッ素系界面活性剤の市販品としては、特に限定されないが、例えば、S-144、S-145(旭硝子株式会社製);FC-170C、FC-430、フロラード-FC4430(住友スリーエム株式会社製);FSO、FSO-100、FSN、FSN-100、FS-300(Dupont社製);FT-250、251(株式会社ネオス製)などが挙げられる。
【0042】
シリコーン系界面活性剤としては、ポリシロキサン系化合物、ポリエーテル変性オルガノシロキサン等が挙げられる。シリコーン系界面活性剤の市販品としては、特に限定されないが、具体的には、BYK-306、BYK-307、BYK-333、BYK-341、BYK-345、BYK-346、BYK-347、BYK-348、BYK-349(ビックケミー・ジャパン株式会社製)、KF-351A、KF-352A、KF-353、KF-354L、KF-355A、KF-615A、KF-945、KF-640、KF-642、KF-643、KF-6020、X-22-4515、KF-6011、KF-6012、KF-6015、KF-6017(信越化学株式会社製)等が挙げられる。
【0043】
界面活性剤の含有量は、インク組成物の総量に対して、好ましくは、0.1~5.0質量%であり、0.2~2.0質量%であり、0.5~1.5質量%である。
【0044】
1.7.水
本実施形態のインク組成物に含まれる水としては、特に限定されないが、例えば、イオン交換水、限外ろ過水、逆浸透水、及び蒸留水等が挙げられる。本実施形態において「水系インク」とは、水を主要な溶剤成分として含むインク組成物をいう。
【0045】
水の含有量は、インク組成物の総量に対して、好ましくは、60~90質量%であり、65~80質量%である。
【0046】
1.8.その他の成分
本実施形態のインク組成物は、上記の各成分の他に、従来のインク組成物に用いられ得る公知のその他の成分を含んでもよい。その他の成分としては、特に限定されないが、例えば、浸透剤、保湿剤、溶解助剤、粘度調整剤、pH調整剤、酸化防止剤、防腐剤、腐食防止剤、及び分散に影響を与える所定の金属イオンを捕獲するためのキレート剤その他の添加剤、及び上記以外の有機溶剤等が挙げられる。その他の成分は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。浸透剤としては、特に限定されないが、例えば、1,2-ヘキサンジオールが挙げられる。保湿剤としては、特に限定されないが、例えば、プロピレングリコールが挙げられる。キレート剤としては、特に限定されないが、例えば、EDTA2Na(エデト酸二ナトリウム)が挙げられる。
【0047】
2.インク組成物の製造方法
本実施形態のインク組成物の製造方法は、特に限定されないが、例えば、上記各成分を混合してもよい。また、本実施形態のインク組成物の製造方法においては、顔料と樹脂粒子とを水に分散させた、顔料分散液を調製し、得られた顔料分散液とその他の上記各成分とを混合してもよい。
【0048】
顔料分散液は、インク組成物を調製する前にあらかじめ調製されていてもよいし、インク組成物を調製する際に、他の成分と同時に混合、分散されて調製されてもよい。
【0049】
顔料分散液は、特に限定されないが、例えば、顔料と樹脂粒子と水とを、サンドグラインダーにより混合して得てもよい。このとき用いられるビーズは、例えば、直径0.5mmのジルコニアビーズであってもよく、直径及び材質は、所望の物性に基づいて適宜選択される。サンドグラインダーによる分散処理時間は、好ましくは、0.5~2.0時間であり、0.5~1.5時間である。
【0050】
3.記録媒体
本実施形態のインク組成物の記録に用いる記録媒体としては、特に限定されないが、例えば、吸収性記録媒体、低吸収性記録媒体、及び非吸収性記録媒体が挙げられる。
【0051】
本実施形態のインク組成物は、植物由来のワックスを含むワックス粒子を含むため、非吸収記録媒体又は低吸収記録媒体に記録する際にも、耐擦性及び耐ブロッキング性に優れる傾向にある。
【0052】
吸収性記録媒体としては、特に限定されないが、例えば、インクの浸透性が高い電子写真用紙等の普通紙、インクジェット用紙(シリカ粒子やアルミナ粒子から構成されたインク吸収層、あるいは、ポリビニルアルコール(PVA)やポリビニルピロリドン(PVP)等の親水性ポリマーから構成されたインク吸収層を備えたインクジェット専用紙)、布帛が挙げられる。
【0053】
低吸収性記録媒体は、特に限定されないが、例えば、インクの浸透性が比較的低い一般のオフセット印刷に用いられるアート紙、コート紙、キャスト紙等が挙げられる。
【0054】
非吸収性記録媒体としては、特に限定されないが、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリウレタン等のプラスチック類のフィルムやプレート;鉄、銀、銅、アルミニウム等の金属類のプレート;又はそれら各種金属を蒸着により製造した金属プレートやプラスチック製のフィルム、ステンレスや真鋳等の合金のプレート;紙製の基材にポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリウレタン等のプラスチック類のフィルムを接着(コーティング)した記録媒体等が挙げられる。
【0055】
4.インクジェット記録方法
本実施形態のインクジェット記録方法は、本実施形態のインク組成物をインクジェットヘッドから吐出して記録媒体に付着させるインク付着工程を含み、また、必要に応じて、記録媒体を搬送する搬送工程等のその他の工程を含んでいてもよい。
【0056】
4.1.インク付着工程
インク付着工程では、本実施形態のインク組成物をインクジェットヘッドから吐出して記録媒体に付着させる。より具体的には、インクジェットヘッド内に設けられた圧力発生手段を駆動させて、インクジェットヘッドの圧力発生室内に充填されたインク組成物をノズルから吐出させる。
【0057】
インク付着工程において用いるインクジェットヘッドとしては、ライン方式により記録を行うラインヘッドと、シリアル方式により記録を行うシリアルヘッドが挙げられる。
【0058】
ラインヘッドを用いたライン方式では、例えば、記録媒体の記録幅以上の幅を有するインクジェットヘッドを記録装置に固定する。そして、記録媒体を副走査方向(記録媒体の搬送方向)に沿って移動させ、この移動に連動してインクジェットヘッドのノズルからインク滴を吐出させることにより、記録媒体上に画像を記録する。
【0059】
シリアルヘッドを用いたシリアル方式では、例えば、記録媒体の幅方向に移動可能なキャリッジにインクジェットヘッドを搭載する。そして、キャリッジを主走査方向(記録媒体の幅方向)に沿って移動させ、この移動に連動してインクジェットヘッドのノズルからインク滴を吐出させることにより、記録媒体上に画像を記録する。
【0060】
4.2.搬送工程
本実施形態のインクジェット記録方法は搬送工程を含んでいてもよい。搬送工程では、記録装置内で所定の方向に記録媒体を搬送する。より具体的には、記録装置内に設けられた搬送ローラーや搬送ベルトを用いて、記録装置の給紙部から排紙部へと記録媒体を搬送する。その搬送過程において、インクジェットヘッドから吐出されたインク組成物が記録媒体に付着し、記録物が形成される。インク付着工程と搬送工程は同時に行ってもよいし、交互に行ってもよい。
【0061】
5.記録装置
インクジェット装置の一例として、図1に、シリアルプリンタの斜視図を示す。図1に示すように、シリアルプリンタ20は、搬送部220と、記録部230とを備えている。搬送部220は、シリアルプリンタに給送された記録媒体Fを記録部230へと搬送し、記録後の記録媒体をシリアルプリンタの外に排出する。具体的には、搬送部220は、各送りローラーを有し、送られた記録媒体Fを副走査方向T2へ搬送する。
【0062】
また、記録部230は、搬送部220から送られた記録媒体Fに対してインク組成物を吐出するノズルを有するインクジェットヘッド231を搭載するキャリッジ234と、キャリッジ234を記録媒体Fの主走査方向S1、S2に移動させるキャリッジ移動機構235を備える。
【0063】
シリアルプリンタの場合には、インクジェットヘッド231として記録媒体の幅より小さい長さであるヘッドを備え、ヘッドが移動し、複数パスで記録が行われる。また、シリアルプリンタでは、所定の方向に移動するキャリッジ234にヘッド231が搭載されており、キャリッジの移動に伴ってヘッドが移動することにより記録媒体F上にインク組成物を吐出する。これにより、2パス以上で記録が行われる。なお、パスを主走査ともいう。パスとパスの間には記録媒体を搬送する副走査を行う。つまり主走査と副走査を交互に行う。
【0064】
また、本実施形態のインクジェット装置は、上記シリアル方式のプリンタに限定されず、上述したライン方式のプリンタであってもよい。ライン方式のプリンタは、記録媒体の記録幅以上の長さを有するインクジェットヘッドであるラインヘッドを用いて、記録媒体に、1回の走査で記録を行うプリンタである。
【実施例0065】
以下、本発明を実施例及び比較例を用いてより具体的に説明する。本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0066】
1.顔料分散液の調製
1.1.分散剤を含まない顔料分散液(自己分散顔料)の調製
図2~3に記載の顔料10gと、p-アミノ-N-安息香酸3.41gとをイオン交換水72gによく混合した後、これに硝酸1.62gを滴下し、70℃で撹拌した。その後、5gの水に1.07gの亜硝酸ナトリウムを溶かした溶液を加え、更に1時間撹拌した。得られたスラリーを定性濾紙No.2(アドバンテック東洋社製)で濾過して、顔料粒子を十分に水洗し、90℃のオーブンで乾燥させた後、この顔料に水を足して顔料濃度10質量%の顔料分散液を作製した。
【0067】
1.2.分散剤を含む顔料分散液(樹脂分散顔料)の調製
図2~3に記載の顔料10質量部と、分散剤5質量部とをイオン交換水50質量部によく混合し、サンドグラインダーを用いて1時間分散させた後、遠心分離処理によって粗大粒子を除去し、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フイルム製)にて加圧濾過し、顔料が分散剤により分散された顔料濃度10質量%の顔料分散液を得た。
【0068】
2.インクジェットインク組成物の調製
図2~3に記載の組成となるように、得られた顔料分散液と、残りの成分とを混合物用タンクに入れて混合して、実施例及び比較例のインク組成物を得た。なお、図中の各例に示す各成分の数値は特段記載のない限り質量%を表す。また、顔料、分散剤、樹脂粒子、ワックス粒子の含有量(質量%)については、固形分濃度を表す。
【0069】
図2~3に示す材料は以下のとおりである。
<顔料>
・備長炭(キリヤ化学株式会社製、備長炭)
・石油由来カーボンブラック(三菱ケミカル株式会社製、C.I.ピグメントブラック7)
<分散剤>
・サンエキスP252(日本製紙株式会社製、リグニンスルホン酸ナトリウム)
・ジョンクリル61J(BASF社製、スチレンアクリル系ポリマー)
<浸透剤>
・1,2-ヘキサンジオール(大阪有機化学工業製)
<界面活性剤>
・BYK349(ビッグケミージャパン社製)
<その他の成分>
・プロピレングリコール(保湿剤;関東化学社製)
・EDTA2Na(キレート剤;関東化学社製)
【0070】
<樹脂粒子>
・ウレタン樹脂粒子1
攪拌機、温度計、分水器および窒素ガス導入管を備えた丸底フラスコに、ネオペンチルグリコール18質量部(バイオマス度:40%)、1,3-プロパンジオール14質量部(バイオマス度:100%)、アジピン酸14質量部(バイオマス度:0%)、セバシン酸54質量部(バイオマス度:100%)、テトラブチルチタネート0.002質量部を仕込み、窒素気流下に230℃で縮合により生じる水を除去しながらエステル化を8時間行った。ポリエステルの酸価が15以下になったことを確認後、真空ポンプにより徐々に真空度を上げ反応を終了した。これにより数平均分子量2000、水酸基価56.1mgKOH/g、酸価0.3mgKOH/g、バイオマス度75.2%のポリエステルポリオ-ル(A1)を得た。なお、水酸基価及び酸価は、JIS K0070に記載の方法にしたがって算出した。
【0071】
次に、還流冷却管、滴下漏斗、ガス導入管、撹拌装置、及び温度計を備えた反応器中で窒素ガスを導入しながら、ポリエステルポリオールA1を121.2質量部、数平均分子量2000のポリエチレングリコール115.4質量部、2,2-ジメチロールプロピオン酸30.1質量部、及びメチルエチルケトン(MEK)250.0質量部を混合、撹拌しながらイソホロンジイソシアネート90.6質量部を1時間かけて滴下し、80℃で4時間反応させて末端イソシアネートプレポリマーとし、末端イソシアネートプレポリマー溶液を得た。得られた末端イソシアネートプレポリマーに対し、2-アミノエチルエタノールアミン2.7質量部及びイソプロパノール(IPA)150質量部を混合したものを室温で徐々に添加して、40℃で2時間反応させ、溶液型ポリウレタン樹脂溶液を得た。次に、10質量%アンモニア水38.1質量部及びイオン交換水801.4質量部を上記溶液型ポリウレタン樹脂溶液に徐々に添加して中和することにより水溶化し、さらにMEK及びIPAを減圧留去した後、水を加えて固形分濃度の調整を行い、固形分濃度が30質量%のウレタン樹脂粒子1の溶液を得た。このウレタン樹脂粒子1のバイオマス度は、25%であった。
【0072】
・ウレタン樹脂粒子2
温度計、窒素ガス導入管、撹拌機を備えた窒素置換された容器中で、ポリエーテルポリオール(デュポン株式会社製、Cerenol H2000、数平均分子量2000)195質量部、イソホロンジイソシアネート145質量部、2,2-ジメチロールプロピオン酸26質量部、及び1,4-シクロヘキサンジメタノール28質量部を、メチルエチルケトン中で反応させることによって、分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液を得た。
【0073】
次いで、25質量%のアンモニア水溶液13.3質量部を加えることで上記ウレタンプレポリマーが有するカルボキシ基の一部又は全部を中和し、さらにイオン交換水727質量部と、鎖伸長剤としての80質量%のヒドラジン水溶液9.1質量部を加え、十分に撹拌することにより、ウレタン樹脂の水分散体を得、次いでエージング・脱溶剤することによって、固形分濃度が40質量%のウレタン樹脂粒子2を得た。このウレタン樹脂粒子2のバイオマス度は、60%であった。
【0074】
・アクリル樹脂粒子1
温度計、還流冷却器、撹拌機、滴下漏斗等を備えた反応容器に、イオン交換水237g、及びフォスファノールRD-720(東邦化学社製、リン酸エステル系界面活性剤)3gを入れて、70℃に加温して溶媒とした。次いで、ステアリルメタクリレート(新日本理化株式会社製、エヌジェルブCM-18)288gと、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(共栄社化学工業株式会社製、ライトエステルHOM)48gと、メチルメタクリレート(三菱ケミカル株式会社製、アクリエステルM)144gとを混合し、得られたモノマー混合液中に、重合開始剤として、2,2‘-アゾビスイソブチロニトリル(大塚化学株式会社製、AIBN)5.4gを入れ溶解した。このようにして調製したモノマー混合液を滴下漏斗に入れ、反応容器に1/4量を添加した後、残りを1.5時間かけて滴下した。70℃でさらに4時間熟成させてポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液に28質量%アンモニア水2.5質量部を添加したところ、重量平均分子量57000のアクリル樹脂粒子1が得られた。このアクリル樹脂粒子1のバイオマス度は、49%であった。
【0075】
・ポリエステル樹脂粒子1
ディーンスタークトラップを備えた三つ首丸底フラスコ内に、窒素雰囲気下、0.21molのイソソルビド(30.7g)、0.04molの1,4-ブタンジオール(3.6g)及び0.25molの1,4-シクロヘキサンジカルボン酸(43.9g)を導入し、混合物を調製した。この混合物を、180℃で加熱し、2-エチルヘキサン酸スズ(II)塩を、溶融した上記混合物中に添加した。この反応混合物を230℃で3.5時間撹拌した。次いで、(重)縮合反応によって生成した水が、ディーンスタークトラップから除去された。この反応混合物を、さらに230℃で3.5時間、真空(10-2mbar以下)中で撹拌した。こうして得られたやや黄色の透明生成物を窒素下で室温(25℃)に冷却した。こうして得られたポリエステル樹脂粒子1のバイオマス度は、99%であった。
【0076】
・ウレタン樹脂粒子3
撹拌機及び加熱装置を備えた簡易加圧反応装置にポリテトラメチレンエーテルグリコールであるPTMG2000(三菱化学株式会社製)65.2質量部、1,4-ブタンジオール3.3質量部、2,2-ジメチロールプロピオン酸4.8質量部、イソホロンジイソシアネート26.7質量部、及びメチルエチルケトン54質量部を仕込み、70℃で12時間攪拌しウレタン化反応を行い、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液を製造した。
【0077】
次いで、トリエチルアミン3.6部を加えて均一化した後、200rpmで撹拌しながらイオン交換水263部を加え、ポリウレタンプレポリマーを水に分散させた。得られた分散体を50℃に加熱して4時間攪拌して水による鎖伸長反応を行い、更に減圧下60℃に加熱してメチルエチルケトンを留去した。その後、水およびDOWSIL 401LS(ダウ・東レ株式会社製)を3.0質量部加えて固形分濃度を30質量%に調製することでウレタン樹脂粒子を得た。このウレタン樹脂粒子のバイオマス度は、0%であった。
【0078】
<ワックス粒子>
・カルナバワックス
容器に、温水27.5g、乳化剤(ビックケミー・ジャパン社製、BYK348、シリコン系界面活性剤)2.5g、及びカルナバワックス(山桂産業株式会社製、融点80℃)5gを投入し、ロッキングミルにおいて、直径1mmのジルコニアビーズ135gを使用し、60Hzで3時間撹拌してカルナバワックスを水に分散させ、固形分濃度が35質量%のカルナバワックスエマルジョン(体積平均粒径D50:300nm)を調製した。こうして得られたカルナバワックスを含むワックス粒子のバイオマス度は、80%であった。
【0079】
なお、体積平均粒子径D50は、動的光散乱法によって測定した。測定装置としては、ELSZ-1000(大塚電子株式会社社製)を使用した。
【0080】
・ライスワックス
カルナバワックスを含むワックス粒子の調製方法において、カルナバワックスの代わりにライスワックス(山桂産業株式会社製、融点75℃)を使用した以外は、カルナバワックスを含むワックス粒子と同様の調製方法により、ライスワックスを含むワックス粒子を調製した。こうして得られたライスワックスを含むワックス粒子のバイオマス度は、80%であった。
【0081】
・ひまし油ワックス
カルナバワックスを含むワックス粒子の調製方法において、カルナバワックスの代わりにひまし油由来ワックス(山桂産業株式会社製、ITOHWAX J-630、12-ヒドロキシステアリン酸系アミド、融点135℃)を使用した以外は、カルナバワックスを含むワックス粒子と同様の調製方法により、ひまし油由来ワックスを含むワックス粒子を調製した。こうして得られたひまし油由来ワックスを含むワックス粒子のバイオマス度は、80%であった。
【0082】
・ビーズワックス
カルナバワックスを含むワックス粒子の調製方法において、カルナバワックスの代わりにビーズワックス(山桂産業株式会社製、融点63℃)を使用した以外は、カルナバワックスを含むワックス粒子と同様の調製方法により、ビーズワックスを含むワックス粒子を調製した。こうして得られたビーズワックスを含むワックス粒子のバイオマス度は、80%であった。
【0083】
・ポリエチレンワックス
カルナバワックスを含むワックス粒子の調製方法において、カルナバワックスの代わりにポリエチレンワックス(サンノプコ社製、ノプコマルMS-40、融点79℃)を使用した以外は、カルナバワックスを含むワックス粒子と同様の調製方法により、ポリエチレンワックスを含むワックス粒子を調製した。こうして得られたポリエチレンワックスを含むワックス粒子のバイオマス度は、0%であった。
【0084】
3.評価
コロナ処理OPPフィルム(フタムラ化学株式会社製、FOS-AQ#60)に、加熱プラテンに改造したインクジェットインク装置(セイコーエプソン社製「PX-G930」)を用いて、ドット重量13ng、記録解像度720×720dpi、プラテン温度55℃の条件で、インク組成物を100%dutyで印刷して印刷部を形成し、90℃で10分乾燥させ、印字物を作成した。下記の評価のうち、耐擦性、密着性、耐ブロッキング性に関する評価は、上記印字物に対して行った。
【0085】
3.1.バイオマス度
インク組成物の各成分のバイオマス度は、12Cの同位体である14Cの濃度に基づいて計算し、14Cの濃度は加速器質量分析法(AMS法)により測定した。また、インク組成物の固形分のバイオマス度は、インク組成物の固形分の各成分のバイオマス度に基づき計算し、評価した。具体的には、以下の式で計算した。
(各成分のバイオマス度×質量%)/(各成分の質量%の和)
※各成分とは、ここでは、顔料、分散剤、樹脂粒子、及びワックス粒子である。
[評価基準]
A:バイオマス度が40%以上である。
B:バイオマス度が20%以上40%未満である。
C:バイオマス度が10%以上20%未満である。
D:バイオマス度が10%未満である。
【0086】
3.2.耐擦性
JIS L0849 2013 に基づいてテスター産業の学振式耐擦過性評価装置AB-301を用いて行った。耐擦過性試験は乾燥した金巾綿で試験する乾摩擦性試験と湿った金巾綿で試験する湿摩擦性試験があり、両方の試験を行った。乾摩擦性試験は200g荷重100往復の条件、湿摩擦性試験は200g荷重10往復の条件でそれぞれ行った。上記印字物に、1.0インチ×0.5インチの大きさの上記印刷部を形成し、記録の1日後にそれぞれ、上記印刷部の上に金巾綿を押し当てて評価した。その後、金巾綿の汚れ、非印刷部の汚れ、及び上記印刷部の剥がれ具合を目視で確認して、以下に示す評価基準にしたがって耐擦過性の評価を行った。
[評価基準]
A:金巾綿の汚れ及び非印刷部の汚れがなく、上記印刷部の剥がれがない。
B:金巾綿の汚れ及び非印刷部の汚れがあるが少なく、上記印刷部の剥がれがほとんどない。
C:金巾綿の汚れ及び非印刷部の汚れがあり、上記印刷部の剥がれがある。
【0087】
3.3.密着性
上記印字物に対して、JIS K5600に準じたクロスカット試験を行った際の、フィルムにおける上記印刷部の残存状態とテープへの転写状態を観察して、以下に示す評価基準にしたがって密着性の評価を行った。
[評価基準]
A:フィルムにおける上記印刷部の剥離はなく、テープへの転写もない。
B:フィルムにおける上記印刷部の剥離が、5%以下である。
C:フィルムにおける上記印刷部の剥離が、5%より大きい。
【0088】
3.4.耐ブロッキング性
上記印字物に対して5cm×5cmの大きさで上記印刷部を形成し、上記印字物から上記印刷部を切り取って、耐ブロッキング性評価用サンプルを作成した。その後、このサンプルと同じ大きさの、未印刷であるコロナ処理OPPフィルム(フタムラ化学株式会社製、FOS-AQ#60)の、非コロナ処理面と、上記サンプルの記録面と、を合わせて、50℃で、10kg/cm2の加圧を24時間行い、その後フィルムと上記サンプルを剥離した際の、印刷部の剥がれの程度及び抵抗感を評価した。
[評価基準]
A:上記印字物から上記印刷部の剥がれが全く見られず、剥離時の抵抗感もない。
B:上記印字物から上記印刷部の剥がれが、印刷部全体の10%以上50%未満である。
C:上記印字物から上記印刷部の剥がれが、印刷部全体の50%以上である。
【0089】
4.評価結果
図2~3の評価結果から、実施例1~12は何れも、植物由来樹脂を含む樹脂粒子を用いず、植物由来樹脂を含まない樹脂粒子を用いる比較例1及び4、樹脂粒子を用いない比較例3及び6、植物由来のワックスを含むワックス粒子を用いず、植物由来のワックスを含まないワックス粒子を用いる比較例1及び2、ワックス粒子を用いない比較例5と比較して、CO2の排出量を削減しつつ、耐擦性、密着性、耐ブロッキング性に優れることがわかった。
【符号の説明】
【0090】
20…シリアルプリンタ、220…搬送部、230…記録部、231…インクジェットヘッド、234…キャリッジ、235…キャリッジ移動機構、F…記録媒体、S1,S2…主走査方向、T2…副走査方向
図1
図2
図3