IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ セイコーエプソン株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-液体吐出装置、及び、液体吐出方法 図1
  • 特開-液体吐出装置、及び、液体吐出方法 図2
  • 特開-液体吐出装置、及び、液体吐出方法 図3
  • 特開-液体吐出装置、及び、液体吐出方法 図4
  • 特開-液体吐出装置、及び、液体吐出方法 図5
  • 特開-液体吐出装置、及び、液体吐出方法 図6
  • 特開-液体吐出装置、及び、液体吐出方法 図7
  • 特開-液体吐出装置、及び、液体吐出方法 図8
  • 特開-液体吐出装置、及び、液体吐出方法 図9
  • 特開-液体吐出装置、及び、液体吐出方法 図10
  • 特開-液体吐出装置、及び、液体吐出方法 図11
  • 特開-液体吐出装置、及び、液体吐出方法 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123405
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】液体吐出装置、及び、液体吐出方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/015 20060101AFI20240905BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
B41J2/015 101
B41J2/01 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030799
(22)【出願日】2023-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 諒
(72)【発明者】
【氏名】越智 和浩
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EB07
2C056EB30
2C056EC07
2C056EC42
2C057AF23
2C057AG44
2C057AL25
2C057AM16
2C057AR08
2C057BA04
2C057BA14
(57)【要約】
【課題】圧力室の固有振動周期に基づく複数の吐出パルスを駆動素子に供給した場合であっても、吐出性能が低下することを抑制すること。
【解決手段】液体吐出装置は、吐出部を備えた液体吐出ヘッドと、駆動信号を生成する駆動信号生成部と、温度を計測する温度計測部とを備え、温度計測部が第1温度を計測した場合、駆動信号は、温度計測部が第1温度を計測した場合に駆動素子に供給される第1駆動波形を含み、第1駆動波形は、一周期内に、時系列に並ぶ3以上のN個の第1吐出パルスと、N個の第1吐出パルスのうち互いに隣り合う2つの第1吐出パルスを接続するN-1個の第1接続成分と、を含み、N個の第1吐出パルスのそれぞれは、ノズルから液滴を吐出させるように圧力室内の液体に圧力変動を与えるように電位が変化するパルスであり、N-1個の第1接続成分のそれぞれは、一定の電位を前記圧力室の固有振動周期の0.6倍以上の期間維持する成分である。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を液滴として吐出するノズルと、前記ノズルに連通する圧力室と、駆動信号に応じて前記圧力室内の液体に圧力変動を与える駆動素子と、を有する吐出部を備えた液体吐出ヘッドと、
前記駆動信号を生成する駆動信号生成部と、
温度を計測する温度計測部と、
を備え、
前記温度計測部が第1温度を計測した場合、前記駆動信号は、前記温度計測部が前記第1温度を計測した場合に前記駆動素子に供給される第1駆動波形を含み、
前記第1駆動波形は、一周期内に、時系列に並ぶ3以上のN個の第1吐出パルスと、前記N個の第1吐出パルスのうち互いに隣り合う2つの第1吐出パルスを接続するN-1個の第1接続成分と、を含み、
前記N個の第1吐出パルスのそれぞれは、前記ノズルから液滴を吐出させるように前記圧力室内の液体に圧力変動を与えるように電位が変化するパルスであり、
前記N-1個の第1接続成分のそれぞれは、一定の電位を前記圧力室の固有振動周期の0.6倍以上の期間維持する成分である、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記温度計測部が前記第1温度より高い第2温度を計測した場合、前記駆動信号は、前記温度計測部が前記第2温度を計測した場合に前記駆動素子に供給される第2駆動波形を含み、
前記第2駆動波形は、一周期内に、時系列に並ぶ前記N個の第2吐出パルスと、前記N個の第2吐出パルスのうち互いに隣り合う2つの第2吐出パルスを接続するN-1個の第2接続成分と、を含み、
前記N-1個の第2接続成分のそれぞれは、一定の電位を維持する成分であり、
前記N個の第2吐出パルスのうち時系列で末尾に位置する第2吐出パルスの直前の第2接続成分の期間は、前記N個の第1吐出パルスのうち時系列で末尾に位置する第1吐出パルスの直前の第1接続成分の期間より長く、
前記N個の第2吐出パルスのうち時系列で末尾に位置する第2吐出パルスより前の第2吐出パルスの直前の第2接続成分の期間は、前記N個の第1吐出パルスのうち時系列で末尾に位置する第1吐出パルスより前の第1吐出パルスの直前の第1接続成分の期間より短い、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記N個の第2吐出パルスのうち時系列で先頭に位置する第2吐出パルスの開始時点から時系列で末尾に位置する第2吐出パルスの終了時点までの期間は、前記N個の第1吐出パルスのうち時系列で先頭に位置する第1吐出パルスの開始時点から時系列で末尾に位置する第1吐出パルスの終了時点までの期間より短い、
ことを特徴とする請求項2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記N個の第2吐出パルスのうち時系列で先頭に位置する第2吐出パルスの開始時点から時系列で末尾に位置する第2吐出パルスの開始時点までの期間は、前記N個の第1吐出パルスのうち時系列で先頭に位置する第1吐出パルスの開始時点から時系列で末尾に位置する第1吐出パルスの開始時点までの期間より短い、
ことを特徴とする請求項2に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記N個の第1吐出パルス及び前記N個の第2吐出パルスは、前記圧力室の体積を膨張させるように電位が変化する膨張要素と、膨張した前記圧力室の体積を収縮させて前記ノズルから液滴を吐出させる吐出要素と、前記ノズルから液滴を吐出させたあとに残存する前記圧力室内の液体の圧力振動を抑制させるように前記圧力室を収縮させる制振要素と、をそれぞれ含み、
前記N個の第2吐出パルスの1周期の開始から1以上N以下の整数であるn1番目の第2吐出パルスの制振要素の単位時間当たりの電位変化量の絶対値は、前記N個の第1吐出パルスの1周期の開始から前記n1番目の第1吐出パルスの制振要素の前記単位時間当たりの電位変化量の絶対値より大きい、
ことを特徴とする請求項2に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記N個の第1吐出パルス及び前記N個の第2吐出パルスは、前記圧力室の体積を膨張させるように電位が変化する膨張要素と、膨張した前記圧力室の体積を収縮させて前記ノズルから液滴を吐出させる吐出要素と、をそれぞれ含み、
前記N個の第2吐出パルスのうち1周期の開始から1以上N-1以下の整数であるn2番目の第2吐出パルスの吐出要素の単位時間当たりの電位変化量の絶対値は、前記N個の第1吐出パルスの1周期の開始から前記n2番目の第1吐出パルスの吐出要素の前記単位時間当たりの電位変化量の絶対値より小さい、
ことを特徴とする請求項2に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記液体吐出ヘッドは、媒体に対して液滴を吐出し、
前記第1駆動波形を前記駆動素子に供給することにより前記ノズルから吐出される前記N個の第1吐出パルスに1対1に対応するN個の液滴は、前記媒体に着弾するまでに合体する、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記N個の第1吐出パルスは、前記圧力室の体積を膨張させるように電位が変化する膨張要素と、膨張した前記圧力室の体積を収縮させて前記ノズルから液滴を吐出させる吐出要素と、をそれぞれ含み、
前記N個の第1吐出パルスのうちの時系列で末尾に位置する第1吐出パルスの膨張要素の開始時点から吐出要素の開始時点までの期間と前記圧力室の固有振動周期の0.5倍との差の絶対値は、前記N個の第1吐出パルスのうち時系列で末尾以外に位置する第1吐出パルスの膨張要素の開始時点から吐出要素の開始時点までの期間と前記圧力室の固有振動周期の0.5倍との差の絶対値より小さい、
ことを特徴とする請求項7に記載の液体吐出装置。
【請求項9】
前記N個の第1吐出パルスのそれぞれは、前記圧力室の体積を膨張させるように電位変化する膨張要素と、膨張した前記圧力室の体積を収縮させて前記ノズルから液滴を吐出させる吐出要素と、を含み、
前記N個の第1吐出パルスのうち時系列で末尾に位置する第1吐出パルスの吐出要素の単位時間当たりの電位変化量の絶対値は、前記N個の第1吐出パルスのうち時系列で末尾以外に位置する第1吐出パルスの吐出要素の前記単位時間当たりの電位変化量の絶対値より大きい、
ことを特徴とする請求項7に記載の液体吐出装置。
【請求項10】
液体を液滴として吐出するノズルと、前記ノズルに連通する圧力室と、駆動信号に応じて前記圧力室内の液体に圧力変動を与える駆動素子と、を有する吐出部を備えた液体吐出ヘッドと、
前記駆動信号を生成する駆動信号生成部と、
温度を計測する温度計測部と、
前記駆動信号生成部を制御する制御部と、
を備える液体吐出装置の液体吐出方法であって、
前記制御部は、
前記温度計測部から温度を示す温度情報を取得し、
前記温度情報が第1温度を示す場合、前記駆動信号生成部に、前記駆動素子に供給される第1駆動波形を含む前記駆動信号を生成させ、
前記第1駆動波形は、一周期内に、時系列に並ぶ3つ以上のN個の第1吐出パルスと、前記N個の第1吐出パルスの互いに隣り合う2つの第1吐出パルスを接続するN-1個の第1接続成分と、を含み、
前記N個の第1吐出パルスのそれぞれは、前記ノズルから液滴を吐出させるように前記圧力室内の液体に圧力変動を与えるように電位が変化するパルスであり、
前記N-1個の第1接続成分のそれぞれは、一定の電位を前記圧力室の固有振動周期の0.6倍以上の期間維持する成分である、
ことを特徴とする液体吐出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置、及び、液体吐出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、液体を吐出するノズルと、ノズルに連通する圧力室と、駆動信号に応じて圧力室内の液体に圧力変動を与える駆動素子と、を有し、液体を媒体に吐出する液体吐出装置が普及している。例えば、特許文献1には、吐出性能を向上させるため、圧力室の固有振動周期に基づいて複数の吐出パルスを有する駆動信号を生成する液体吐出装置が開示されている。吐出パルスは、ノズルから液体を吐出させるように圧力室内の液体に圧力変動を与えるように電位が変化するパルスである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-146011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の技術のように、圧力室の固有振動周期に基づいて複数の吐出パルスを有する駆動信号を生成し、この生成された駆動信号を駆動素子に供給したとしても、吐出性能が低下する場合が発生して、媒体に形成される画像の質が低下する場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る液体吐出装置は、液体を液滴として吐出するノズルと、前記ノズルに連通する圧力室と、駆動信号に応じて前記圧力室内の液体に圧力変動を与える駆動素子と、を有する吐出部を備えた液体吐出ヘッドと、前記駆動信号を生成する駆動信号生成部と、温度を計測する温度計測部と、を備え、前記温度計測部が第1温度を計測した場合、前記駆動信号は、前記温度計測部が第1温度を計測した場合に前記駆動素子に供給される第1駆動波形を含み、前記第1駆動波形は、一周期内に、時系列に並ぶ3以上のN個の第1吐出パルスと、前記N個の第1吐出パルスのうち互いに隣り合う2つの第1吐出パルスを接続するN-1個の第1接続成分と、を含み、前記N個の第1吐出パルスのそれぞれは、前記ノズルから液滴を吐出させるように前記圧力室内の液体に圧力変動を与えるように電位が変化するパルスであり、前記N-1個の第1接続成分のそれぞれは、一定の電位を前記圧力室の固有振動周期の0.6倍以上の期間維持する成分である、ことを特徴とする。
【0006】
本発明の一態様に係る液体吐出方法は、液体を液滴として吐出するノズルと、前記ノズルに連通する圧力室と、駆動信号に応じて前記圧力室内の液体に圧力変動を与える駆動素子と、を有する吐出部を備えた液体吐出ヘッドと、前記駆動信号を生成する駆動信号生成部と、温度を計測する温度計測部と、前記駆動信号生成部を制御する制御部と、を備える液体吐出装置の液体吐出方法であって、前記制御部は、前記温度計測部から温度を示す温度情報を取得し、前記温度情報が第1温度を示す場合、前記駆動信号生成部に、前記駆動素子に供給される第1駆動波形を含む前記駆動信号を生成させ、前記第1駆動波形は、一周期内に、時系列に並ぶ3つ以上のN個の第1吐出パルスと、前記N個の第1吐出パルスの互いに隣り合う2つの第1吐出パルスを接続するN-1個の第1接続成分と、を含み、前記N個の第1吐出パルスのそれぞれは、前記ノズルから液滴を吐出させるように前記圧力室内の液体に圧力変動を与えるように電位が変化するパルスであり、前記N-1個の第1接続成分のそれぞれは、一定の電位を前記圧力室の固有振動周期の0.6倍以上の期間維持する成分である、ことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態におけるインクジェットプリンター1の構成の一例を示す機能ブロック図。
図2】インクジェットプリンター1を例示する模式図。
図3】吐出部Dを含むように記録ヘッドHDを切断した、記録ヘッドHDの概略的な一部断面図。
図4】液体吐出ヘッドHUの構成の一例を示すブロック図。
図5】インクジェットプリンター1の記録期間Tu[i]における動作を説明するためのタイミングチャートを示す図。
図6】第1駆動波形PXにより吐出されるインク滴の合体の態様の一例を説明するための図。
図7】制御部6の動作を示すフローチャートを示す図。
図8】波形指定信号管理テーブルTBLの一例を示す図。
図9】第1実施例、第2実施例、第3実施例、及び比較例におけるインク滴の形状を説明する図。
図10】第1変形例に係る液体吐出ヘッドHUAの構成の一例を示すブロック図。
図11】第1変形例に係るインクジェットプリンター1の記録期間Tu[i]における動作を説明するためのタイミングチャートを示す図。
図12】個別指定信号SdA[m]が取り得る3つの駆動態様を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。ただし、各図において、各部の寸法及び縮尺は、実際のものと適宜に異ならせてある。また、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0009】
1.第1実施形態
本実施形態では、インクをインク滴として吐出して記録用紙PPに画像を形成するインクジェットプリンター1を例示して、液体吐出装置を説明する。インクジェットプリンター1は、「液体吐出装置」の一例である。インクは、「液体」の一例である。インク滴は「液滴」の一例である。記録用紙PPは、「媒体」の一例である。
【0010】
1-1.インクジェットプリンター1の概要
図1及び図2を参照しつつ、本実施形態におけるインクジェットプリンター1の構成について説明する。ここで、図1は、本実施形態におけるインクジェットプリンター1の構成の一例を示す機能ブロック図である。また、図2は、インクジェットプリンター1を例示する模式図である。
【0011】
インクジェットプリンター1には、パーソナルコンピューターやデジタルカメラ等のホストコンピューターから、インクジェットプリンター1が形成すべき画像を示す印刷データImgと、インクジェットプリンター1が形成すべき画像の印刷部数を示す情報と、が供給される。インクジェットプリンター1は、ホストコンピューターから供給される印刷データImgが示す画像を記録用紙PPに形成する印刷処理を実行する。
【0012】
図1に例示するように、インクジェットプリンター1は、インク滴を吐出する吐出部Dが設けられた液体吐出ヘッドHUと、インクジェットプリンター1の各部の動作を制御する制御部6と、吐出部Dを駆動するための駆動信号Comを生成する駆動信号生成回路2と、インクジェットプリンター1の制御プログラム及びその他の情報を記憶する記憶部5と、記録用紙PPを搬送する搬送機構7と、液体吐出ヘッドHUを移動させる移動機構8と、温度を計測する温度計測部4とを備える。なお、駆動信号生成回路2が、「駆動信号生成部」の一例である。
【0013】
本実施形態において、液体吐出ヘッドHUは、M個の吐出部Dを具備する記録ヘッドHDと、切替回路10とを備える。本実施形態において、Mは、1以上の整数である。
【0014】
以下では、記録ヘッドHDに設けられたM個の吐出部Dの各々を区別するために、順番に、1段、2段、…、M段と称することがある。また、m段の吐出部Dを、吐出部D[m]と称する場合がある。変数mは、1以上M以下を満たす整数である。また、インクジェットプリンター1の構成要素や信号等が、吐出部D[m]の段数mに対応するものである場合には、当該構成要素や信号等を表すための符号に、段数mに対応していることを示す添え字[m]を付して表現することがある。
【0015】
本実施形態では、インクジェットプリンター1が、シリアルプリンターである場合を想定する。具体的には、インクジェットプリンター1は、図2に示すように、副走査方向に記録用紙PPを搬送し主走査方向に液体吐出ヘッドHUを移動させつつ、吐出部Dからインク滴を吐出することで、印刷処理を実行する。本実施形態では、図2に示すように、+X方向及び+X方向に反対方向の-X方向が主走査方向であり、+Y方向が副走査方向であることとする。以下、+X方向及び-X方向を「X軸に沿う方向」と総称し、以下、+Y方向及び+Y方向の反対方向である-Y方向を「Y軸に沿う方向」と総称する。更に、X軸に沿う方向及びY軸に沿う方向に垂直な方向であり、且つ、インクの吐出方向である方向を、-Z方向と称する。-Z方向及び-Z方向の反対方向である+Z方向を「Z軸に沿う方向」と総称する。
【0016】
図3を参照しつつ、記録ヘッドHDと、記録ヘッドHDに設けられる吐出部Dについて説明する。
【0017】
図3は、吐出部Dを含むように記録ヘッドHDを切断した、記録ヘッドHDの概略的な一部断面図である。図3に示すように、吐出部Dは、インク滴を-Z方向に吐出するノズルNzと、ノズルNzに連通する圧力室320と、駆動信号Comに応じて圧力室320内のインクに圧力変動を与える圧電素子PZと、振動板310と、を備える。なお、圧電素子PZは、「駆動素子」の一例である。
【0018】
駆動信号Comに応じて圧力室320内のインクに圧力変動を与えるとは、駆動信号Comのうち一部又は全部の信号が圧電素子PZに供給されることにより、圧電素子PZが圧力室320内のインクに圧力変動を与えることを意味する。以下、駆動信号Comのうち、実際に圧電素子PZに供給される信号を、供給駆動信号Vinと記載することがある。
【0019】
圧力室320は、キャビティプレート340と、ノズルNzが形成されたノズルプレート330と、振動板310と、により区画される空間である。圧力室320は、インク供給口360を介してリザーバ350と連通している。リザーバ350は、インク取入口370を介して、当該吐出部Dに対応する液体容器14と連通している。
【0020】
本実施形態では、圧電素子PZとして、図3に示すようなユニモルフ型を採用する。なお、圧電素子PZは、ユニモルフ型に限らず、バイモルフ型や積層型等を採用してもよい。
【0021】
圧電素子PZは、上部電極Zuと、下部電極Zdと、上部電極Zu及び下部電極Zdの間に設けられた圧電体Zmと、を有する。圧電素子PZは、供給駆動信号Vinの電位変化に応じて変形する受動素子である。下部電極Zdが定電位Vbsに設定された給電線LHbに電気的に接続され、上部電極Zuに供給駆動信号Vinが供給されることで、上部電極Zu及び下部電極Zdの間に電圧が印加されると、当該印加された電圧に応じて圧電素子PZが+Z方向又は-Z方向に変位し、この変位の結果、圧電素子PZが振動する。
【0022】
キャビティプレート340の上面開口部には、振動板310が設置される。振動板310には、下部電極Zdが接合されている。このため、圧電素子PZが駆動信号Comにより駆動されて振動すると、振動板310も振動する。そして、振動板310の振動により圧力室320の容積が変化し、圧力室320内に充填されたインクがノズルNzより吐出される。インクの吐出により圧力室320内のインクが減少した場合、リザーバ350からインクが供給される。
【0023】
説明を図1及び図2に戻す。切替回路10は、駆動信号生成回路2から出力される駆動信号Comを各吐出部Dに供給するか否かを切り替える。
【0024】
搬送機構7は、記録用紙PPを+Y方向に搬送する。具体的には、搬送機構7は、回転軸がX軸に沿う方向に平行な不図示の搬送ローラーと、搬送ローラーを制御部6による制御のもとで回転させる不図示のモーターとを具備する。
【0025】
移動機構8は、制御部6による制御のもとで液体吐出ヘッドHUをX軸に沿って往復させる。図2に例示する通り、移動機構8は、液体吐出ヘッドHUを収容する略箱型の搬送体82と、搬送体82が固定された無端ベルト81とを備える。
【0026】
記憶部5は、RAM等の揮発性のメモリーと、ROM、EEPROM、又は、PROM等の不揮発性メモリーと、を含んで構成され、ホストコンピューターから供給される印刷データImg、及び、インクジェットプリンター1の制御プログラム等の各種情報を記憶する。RAMは、Random Access Memoryの略称である。ROMは、Read Only Memoryの略称である。EEPROMは、Electrically Erasable Programmable Read-Only Memoryの略称である。PROMは、Programmable ROMの略称である。
【0027】
制御部6は、CPUを含んで構成される。CPUは、Central Processing Unitの略である。但し、制御部6は、CPUの代わりに、FPGA等のプログラマブルロジックデバイスを備えていてもよい。FPGAは、Field Programmable Gate Arrayの略である。
【0028】
制御部6は、制御部6に設けられたCPUが、記憶部5に記憶されている制御プログラムに従って動作することにより、インクジェットプリンター1が、印刷処理を実行する。
【0029】
温度計測部4は、温度を計測する温度センサーである。温度計測部4は、計測した温度を示す温度情報KTを生成し、温度情報KTを制御部6に出力する。第1実施形態では、温度計測部4が、制御部6が設けられる基板上の電子回路に実装される場合を想定するが、このような態様に限定されるものではない。温度計測部4は、吐出部Dに充填されているインクの温度を精度良く計測できるように設けられることが好ましい。従って、例えば、温度計測部4は、液体吐出ヘッドHU内の基板上の電子回路に実装されてもよい。
【0030】
制御部6は、液体吐出ヘッドHUを制御するための印刷信号SIと、駆動信号生成回路2を制御するための波形指定信号dComと、搬送機構7を制御するための信号と、移動機構8を制御するための信号とを生成する。
ここで、波形指定信号dComとは、駆動信号Comの波形を規定するデジタルの信号である。また、駆動信号Comとは、吐出部Dを駆動するためのアナログの信号である。駆動信号生成回路2は、DA変換回路を含み、波形指定信号dComが規定する波形を有する駆動信号Comを生成する。
また、印刷信号SIとは、吐出部Dの動作の種類を指定するためのデジタルの信号である。具体的には、印刷信号SIは、吐出部Dに対して駆動信号Comを供給するか否かを指定することで、吐出部Dを駆動した際に当該吐出部Dからインクが吐出されるか否かを指定することである。
【0031】
1-2.液体吐出ヘッドHUの構成
以下、図4を参照しつつ、液体吐出ヘッドHUの構成について説明する。
【0032】
図4は、液体吐出ヘッドHUの構成の一例を示すブロック図である。上述のように、液体吐出ヘッドHUは、記録ヘッドHDと、切替回路10と、を備える。また、液体吐出ヘッドHUは、駆動信号生成回路2から駆動信号Comが供給される内部配線LHaを備える。
【0033】
図4に示すように、切替回路10は、M個のスイッチSWaとして、スイッチSWa[1]~SWa[M]と、各スイッチの接続状態を指定する接続状態指定回路11と、を備える。なお、各スイッチとしては、例えば、トランスミッションゲートを採用することができる。
【0034】
mが1からMまでにおいて、スイッチSWa[m]は、接続状態指定信号SLa[m]に応じて、内部配線LHaと、吐出部D[m]に設けられた圧電素子PZ[m]の上部電極Zu[m]と、の導通及び非導通を切り替える。例えば、スイッチSWa[m]は、接続状態指定信号SLa[m]がハイレベルの場合にオンし、ローレベルの場合にオフする。スイッチSWa[m]がオンである場合に、供給駆動信号Vin[m]が圧電素子PZ[m]に供給される。
【0035】
1-3.駆動信号Comについて
ノズルNzから吐出されたインクの吐出量及び吐出速度の一方及び両方である吐出性能を向上させるため、圧力室320の固有振動周期Tcに基づいて複数の吐出パルスPLを有する駆動信号Comを生成することが考えられる。吐出パルスPLとは、ノズルNzからインク滴を吐出させるように圧力室320内のインクに圧力変動を与えるように電位が変化するパルスである。吐出部Dが駆動された後に当該吐出部Dにおいて残留している振動である残留振動は、固有振動周期Tcに同期する。従って、固有振動周期Tcに基づいて、前の吐出パルスPLによる残留振動を利用して、次の吐出パルスPLにより吐出されるインクの吐出速度を大きくすることにより、前の吐出パルスPLにより吐出されたインク滴と、次の吐出パルスPLにより吐出されたインク滴とを、記録用紙PPに着弾する前に合体させることができる。吐出された2つのインク滴を合体させることにより、記録用紙PPの搬送、及び、インク滴の吐出等によって発生する気流に起因する濃度のムラ、いわゆる風紋の発生を抑制できる。
【0036】
しかしながら、液体吐出ヘッドHU内の複数の吐出部Dの各固有振動周期Tcは製造誤差等によりばらつくため、基準の固有振動周期Tcに基づいて生成された複数の吐出パルスPLを有する駆動信号Comが圧電素子PZに供給されたとしても、基準の固有振動周期Tcと実際の吐出部Dの固有振動周期Tcとの位相の差によって、吐出性能が低下する場合が発生して、記録用紙PPに形成される画像の質が低下する場合があった。また、吐出性能が低下する要因として、インクの温度が上昇すると、インク滴の尾引きが悪化する場合があることが、発明者らの実験で得られた。尾引きの悪化とは、尾引きが長くなる、又は、尾引きが太くなる等である。尾引きが悪化すると、例えば、尾引きに起因した霧状の微細な液滴、いわゆるインクミストが発生する。インクミストがノズルNzの周囲に付着することによって吐出性能の劣化及び吐出不良の原因となり得る。吐出性能の劣化及び吐出不良によって、記録用紙PPに形成される画像の質が低下する。
【0037】
インクの温度が上昇すると尾引きが悪化する原因について説明する。一般的に、インクの温度が上昇すると、インクの粘度が低下する。インクの粘度が低下すると、残留振動の減衰率が低下する。言い換えれば、インクの粘度が低下すると、残留振動が減衰しにくくなる。そして、ある吐出パルスPLによる残留振動が、次の吐出パルスPLの開始まで想定以上に存在し続けると、次の吐出パルスPLにおいて尾引きが長くなる現象が発生する。より具体的には、ある吐出パルスPLによる残留振動が、次の吐出パルスPLの開始まで想定以上に存在し続けると、残留振動の位相と次の吐出パルスPLにより生じる圧力変動の位相とが共振の関係にあった場合、次の吐出パルスPLにより吐出されたインク滴の-Z方向の端部の速度と、吐出されたインク滴の+Z方向の端部の速度との差が大きくなり、この差が尾引きを悪化させる原因と考えられる。
【0038】
また、ある吐出パルスPLによる残留振動が、次の吐出パルスPLの開始まで想定以上に存在していると、残留振動の位相と次の吐出パルスPLにより生じる圧力変動の位相とが非共振の関係にあった場合、次の吐出パルスPLの吐出性能が低下する場合がある。この場合、ある吐出パルスPLにより吐出されたインク滴と、次の吐出パルスPLにより吐出されたインク滴とが、記録用紙PPに着弾する前に合体できない場合がある。吐出されたインク滴が合体しないと、風紋が発生し、記録用紙PPに形成される画像の質が低下する。
【0039】
そこで、本実施形態では、駆動信号Comを、温度計測部4が計測した温度に基づいて変更する。具体的には、本実施形態では、駆動信号Comは、温度計測部4が計測した温度が通常温度である場合に圧電素子PZに供給される第1駆動波形PXを含む場合がある。より具体的には、温度計測部4が計測した温度が通常温度である場合、駆動信号Comは、第1駆動波形PXを含む。第1駆動波形PXは、一周期内に、時系列に並ぶ3つの吐出パルスPLXと、3つの吐出パルスPLXのうち互いに隣り合う2つの吐出パルスPLXを接続する2つの接続成分SCXとを有する。2つの接続成分SCXのそれぞれは、一定の電位を固有振動周期Tcの0.6倍以上の期間維持する成分である。通常温度は、例えば、吐出部D内のインクの平常の温度である。通常温度は、例えば、摂氏22度である。通常温度は、「第1温度」の一例である。
【0040】
また、駆動信号Comは、温度計測部4が計測した温度が通常温度より高い高温度である場合に圧電素子PZに供給される第2駆動波形PYを含む場合がある。具体的には、温度計測部4が計測した温度が高温度である場合、駆動信号Comは、第2駆動波形PYを含む。第2駆動波形PYは、一周期内に、時系列に並ぶ3つの吐出パルスPLYと、3つの吐出パルスPLYのうち互いに隣り合う2つの吐出パルスPLYを接続する2つの接続成分SCYとを有する。以下の記載において、第1駆動波形PXと第2駆動波形PYとを区別せずに、駆動波形と総称する場合がある。高温度は、例えば、摂氏35度である。高温度は、「第2温度」の一例である。
【0041】
以下の記載において、吐出パルスPLは、吐出パルスPLXと吐出パルスPLYとの総称である。また、接続成分SCXと接続成分SCYとを、接続成分SCと総称することがある。なお、吐出パルスPLX及び吐出パルスPLYの個数である3が、「3以上のN」の一例である。このように、第1実施形態では、Nが3の例を示しているが、吐出パルスPLX及び吐出パルスPLYの個数は、3に限らなく、4以上でもよい。3つの吐出パルスPLXが、「N個の第1吐出パルス」の一例である。2つの接続成分SCXは、「N-1個の第1接続成分」の一例である。3つの吐出パルスPLYが、「N個の第2吐出パルス」の一例である。2つの接続成分SCYは、「N-1個の第2接続成分」の一例である。
【0042】
1-4.液体吐出ヘッドHUの動作
以下、図5及び図6を参照しつつ、液体吐出ヘッドHUの動作について説明する。
【0043】
本実施形態において、インクジェットプリンター1の動作期間は、1又は複数の記録期間Tuを含む。本実施形態に係るインクジェットプリンター1は、各記録期間Tuにおいて、印刷処理における各吐出部Dの駆動を実行する場合を想定する。以下の記載では、インクジェットプリンター1の動作期間は、I個の記録期間Tuを有する。Iは、1以上の整数である。更に、i番目の記録期間Tuを、記録期間Tu[i]と称することがある。iは、1からIまでの整数である。
なお、一般的に、インクジェットプリンター1は、連続的又は間欠的な複数の記録期間Tuに亘り印刷処理を繰り返し実行して各吐出部Dからインク滴を吐出させることで、印刷データImgの示す画像を形成する。
【0044】
図5は、インクジェットプリンター1の記録期間Tu[i]における動作を説明するためのタイミングチャートである。
【0045】
図5に示すように、制御部6は、パルスPlsLを有するラッチ信号LATを出力する。これにより、制御部6は、パルスPlsLの立ち上がりから次のパルスPlsLの立ち上がりまでの期間として、記録期間Tu[i]を規定する。1つの記録期間Tuの長さは、例えば、約85[μs]である。[μs]は、マイクロ秒を示す。
【0046】
図5に示すように、駆動信号Comは、温度計測部4が計測した温度が通常温度である場合に第1駆動波形PXを含み、温度計測部4が計測した温度が高温度である場合に第2駆動波形PYを含む。図5に示す[℃]は、摂氏温度の単位である。
【0047】
第1駆動波形PXは、3つの吐出パルスPLXとして、吐出パルスPLX1と、吐出パルスPLX2と、吐出パルスPLX3とを含む。更に、第1駆動波形PXは、2つの接続成分SCXとして、吐出パルスPLX1と吐出パルスPLX2とを接続する接続成分SCX1と、吐出パルスPLX2と吐出パルスPLX3とを接続する接続成分SCX2とを含む。
【0048】
同様に、第2駆動波形PYは、3つの吐出パルスPLYとして、吐出パルスPLY1と、吐出パルスPLY2と、吐出パルスPLY3とを含む。更に、第2駆動波形PYは、2つの接続成分SCYとして、吐出パルスPLY1と吐出パルスPLY2とを接続する接続成分SCY1と、吐出パルスPLY2と吐出パルスPLY3とを接続する接続成分SCY2とを含む。
【0049】
第1実施形態では、吐出パルスPLX1と吐出パルスPLX2とは同一の形状である。但し、吐出パルスPLX1と吐出パルスPLX2とが異なる形状でもよい。同様に、吐出パルスPLY1と吐出パルスPLY2とは同一の形状である。但し、吐出パルスPLY1と吐出パルスPLY2とが異なる形状でもよい。
【0050】
3つの吐出パルスPLXのそれぞれの最高電位VHと、3つの吐出パルスPLYのそれぞれの最高電位VHとは、略同一である。3つの吐出パルスPLXの最低電位VLと、3つの吐出パルスPLYのそれぞれの最低電位VLとは、略同一である。従って、3つの吐出パルスPLXのそれぞれの最高電位と最低電位との電位差ΔVhと、3つの吐出パルスPLYのそれぞれの電位差ΔVhとも、略同一である。略同一とは、完全に同一である場合の他に、製造上の誤差を考慮すれば同一であると看做せる場合を含む。
【0051】
吐出パルスPLX1は、膨張要素DX11と、膨張電位維持要素DX12と、吐出要素DX13と、収縮電位維持要素DX14と、制振要素DX15とを有する。吐出パルスPLX2も、吐出パルスPLX1と同様に、膨張要素DX21と、膨張電位維持要素DX22と、吐出要素DX23と、収縮電位維持要素DX24と、制振要素DX25とを有する。吐出パルスPLX3は、膨張要素DX31と、膨張電位維持要素DX32と、吐出要素DX33と、収縮電位維持要素DX34と、制振要素DX35と、制振電位維持要素DX36と、復帰要素DX37とを有する。吐出パルスPLY1は、膨張要素DY11と、膨張電位維持要素DY12と、吐出要素DY13と、収縮電位維持要素DY14と、制振要素DY15とを有する。吐出パルスPLY2も、吐出パルスPLY1と同様に、膨張要素DY21と、膨張電位維持要素DY22と、吐出要素DY23と、収縮電位維持要素DY24と、制振要素DY25とを有する。吐出パルスPLY3は、膨張要素DY31と、膨張電位維持要素DY32と、吐出要素DY33と、収縮電位維持要素DY34と、制振要素DY35と、制振電位維持要素DY36と、復帰要素DY37とを有する。
【0052】
膨張要素DX11、膨張要素DX21、膨張要素DX31、膨張要素DY11、膨張要素DY21、及び、膨張要素DY31は、圧力室320の体積を膨張させるように電位が変化する要素である。以下、説明の簡略化のため、膨張要素DX11、膨張要素DX21、膨張要素DX31、膨張要素DY11、膨張要素DY21、及び、膨張要素DY31を区別せずに、膨張要素と総称することがある。図5から理解されるように、膨張要素は、中間電位V0から最低電位VLまで電位を降下させる。中間電位V0は、最低電位VLと最高電位VHとの間の電位である。例えば、中間電位V0は、最低電位VLを0[%]の電位とし、最高電位VHを100[%]の電位とした場合に、約60[%]の電位である。
【0053】
膨張電位維持要素DX12、膨張電位維持要素DX22、膨張電位維持要素DX32、膨張電位維持要素DY12、膨張電位維持要素DY22、及び、膨張電位維持要素DY32は、膨張要素に続いて、膨張要素の最終電位を維持する要素である。膨張要素の最終電位は、第1実施形態では、最低電位VLである。以下、説明の簡略化のため、膨張電位維持要素DX12、膨張電位維持要素DX22、膨張電位維持要素DX32、膨張電位維持要素DY12、膨張電位維持要素DY22、及び、膨張電位維持要素DY32を区別せずに、膨張電位維持要素と総称することがある。
【0054】
吐出要素DX13、吐出要素DX23、吐出要素DX33、吐出要素DY13、吐出要素DY23、及び、吐出要素DY33は、膨張電位維持要素に続いて、膨張した圧力室320の体積を収縮させてノズルNzからインク滴を吐出させる要素である。以下、説明の簡略化のため、吐出要素DX13、吐出要素DX23、吐出要素DX33、吐出要素DY13、吐出要素DY23、及び、吐出要素DY33を区別せずに、吐出要素と総称することがある。吐出要素は、最低電位VLから最高電位VHまで電位を上昇させる。
【0055】
収縮電位維持要素DX14、収縮電位維持要素DX24、収縮電位維持要素DX34、収縮電位維持要素DY14、収縮電位維持要素DY24、及び、収縮電位維持要素DY34は、吐出要素に続いて、吐出要素の最終電位を維持する要素である。吐出要素の最終電位は、最高電位VHである。以下、説明の簡略化のため、収縮電位維持要素DX14、収縮電位維持要素DX24、収縮電位維持要素DX34、収縮電位維持要素DY14、収縮電位維持要素DY24、及び、収縮電位維持要素DY34を区別せずに、収縮電位維持要素と総称することがある。
【0056】
制振要素DX15、制振要素DX25、制振要素DX35、制振要素DY15、制振要素DY25、及び、制振要素DY35は、ノズルNzからインク滴を吐出させたあとに残存する圧力室320内のインクの圧力振動を抑制させるように圧力室320を収縮させる要素である。以下、説明の簡略化のため、制振要素DX15、制振要素DX25、制振要素DX35、制振要素DY15、制振要素DY25、及び、制振要素DY35を区別せずに、制振要素と総称することがある。制振要素DX15、制振要素DX25、制振要素DY15、及び、制振要素DY25は、最高電位VHから中間電位V0まで電位を降下させる。制振要素DX35は、最高電位VHから電位V1まで電位を降下させる。制振要素DY35は、最高電位VHから電位V2まで電位を降下させる。電位V1及び電位V2は、最低電位VLと中間電位V0との間の電位である。図5から理解されるように、電位V1は、電位V2よりも高い。最低電位VLを0[%]の電位とし、最高電位VHを100[%]の電位とした場合に、電位V1は約49.7[%]の電位であり、電位V2は約35.0[%]の電位である。
【0057】
制振電位維持要素DX36及び制振電位維持要素DY36は、制振要素に続いて、制振要素の最終電位を維持する要素である。制振要素DX35の最終電位は、電位V1である。制振要素DY35の最終電位は、電位V2である。以下、説明の簡略化のため、制振電位維持要素DX36及び制振電位維持要素DY36を区別せずに、制振電位維持要素と総称することがある。
【0058】
復帰要素DX37及び復帰要素DY37は、制振電位維持要素に続いて、電位を中間電位V0に復帰させる要素である。以下、説明の簡略化のため、復帰要素DX37及び復帰要素DY37を区別せずに、復帰要素と総称することがある。復帰要素は、制振電位維持要素の最終電位から中間電位V0まで電位を上昇させる。
【0059】
接続成分SCX1、接続成分SCX2、接続成分SCY1、及び、接続成分SCY2は、一定の電位を維持する成分である。以下、説明の簡略化のため、接続成分SCX1、接続成分SCX2、接続成分SCY1、及び、接続成分SCY2を区別せずに、接続成分SCと総称することがある。本実施形態において、接続成分SCは、一定の電位として中間電位V0を維持する。
【0060】
接続成分SCY2の期間の長さは、接続成分SCX2の期間の長さよりも長い。接続成分SCY1の期間の長さは、接続成分SCX1の期間の長さよりも短い。また、接続成分SCY1の期間の長さは、接続成分SCY2の期間の長さよりも短い。なお、接続成分SCY2は、「N個の第2吐出パルスのうち時系列で末尾に位置する第2吐出パルスの直前の第2接続成分」の一例である。接続成分SCX2は、「N個の第1吐出パルスのうち時系列で末尾に位置する第1吐出パルスの直前の第1接続成分」の一例である。接続成分SCY1は、「N個の第2吐出パルスのうち時系列で末尾に位置する第2吐出パルスより前の第2吐出パルスの直前の第2接続成分」の一例である。接続成分SCX1は、「N個の第1吐出パルスのうち時系列で末尾に位置する第1吐出パルスより前の第1吐出パルスの直前の第1接続成分」の一例である。
【0061】
具体的には、接続成分SCX1及び接続成分SCX2の期間の長さは、固有振動周期Tcの0.6倍以上である。更に、接続成分SCX1及び接続成分SCX2の期間の長さは、例えば、固有振動周期Tcの1.1倍以下である。接続成分SCY1の期間の長さは、固有振動周期Tcの0.5倍以上であり、かつ、固有振動周期Tcの0.8倍以下である。接続成分SCY2の期間の長さは、固有振動周期Tcの0.8倍以上であり、かつ、固有振動周期Tcの1.1倍以下である。
【0062】
また、図5に示すように、期間TYEは、期間TXEより短い。期間TYEは、時点tsから時点tye3までの期間である。期間TXEは、時点tsから時点txe3までの期間である。時点tsは、吐出パルスPLX1及び吐出パルスPLY1の開始時点である。時点tye3は、吐出パルスPLY3の終了時点である。時点txe3は、吐出パルスPLX3の終了時点である。なお、時点tsは、「時系列で先頭に位置する第2吐出パルスの開始時点」の一例であり、「時系列で先頭に位置する第1吐出パルスの開始時点」の一例でもある。時点tye3は、「時系列で末尾に位置する第2吐出パルスの終了時点」の一例である。時点txe3は、「時系列で末尾に位置する第1吐出パルスの終了時点」の一例である。
【0063】
また、図5に示すように、期間TYSは、期間TXSより短い。期間TYSは、時点tsから時点tys3までの期間である。期間TXSは、時点tsから時点txs3までの期間である。時点tys3は、吐出パルスPLY3の開始時点である。時刻txs3は、吐出パルスPLX3の開始時点である。なお、時点tys3は、「時系列で末尾に位置する第2吐出パルスの開始時点」の一例である。時点txs3は、「時系列で末尾に位置する第1吐出パルスの開始時点」の一例である。
【0064】
また、制振要素DY15の単位時間当たりの電位変化量の絶対値は、制振要素DX15の単位時間当たりの電位変化量の絶対値より大きい。言い換えれば、制振要素DY15の電位変化は、制振要素DX15の電位変化より急峻である。単位時間は、どのような時間でもよく、例えば、1秒間である。制振要素の単位時間当たりの電位変化量の絶対値は、制振要素の電位変化量の絶対値を制振要素の期間で除した値である。すなわち、制振要素の期間が短くなることに応じて、制振要素の単位時間当たりの電位変化量の絶対値が大きくなる。そして、第1実施形態では、制振要素DY15と制振要素DX15とのそれぞれの電位変化量は、最高電位VHから中間電位V0までと略同一である。従って、第1実施形態において、制振要素DY15の単位時間当たりの電位変化量の絶対値が、制振要素DX15の単位時間当たりの電位変化量の絶対値より大きいことは、図5に示すように、制振要素DY15の期間TY15が、制振要素DX15の期間TX15より短いことと同義である。また、吐出パルスPLX1と吐出パルスPLX2との形状が互いに同一であり、且つ、吐出パルスPLY1と吐出パルスPLY2との形状が互いに同一であるから、制振要素DY25の単位時間当たりの電位変化量の絶対値は、制振要素DX25の単位時間当たりの電位変化量の絶対値より大きい。同様に、制振要素DY35の単位時間当たりの電位変化量の絶対値は、制振要素DX35の単位時間当たりの電位変化量の絶対値より大きい。
【0065】
以上により、1以上且つ吐出パルスPLの個数Nである3以下の整数である変数n1を用いると、n1番目の吐出パルスPLYの制振要素の単位時間当たりの電位変化量の絶対値は、n1番目の吐出パルスPLXの制振要素の単位時間当たりの電位変化量の絶対値より大きい。
【0066】
また、吐出要素DY23の単位時間当たりの電位変化量の絶対値は、吐出要素DX23の単位時間当たりの電位変化量の絶対値より小さい。言い換えれば、吐出要素DY23の電位変化は、吐出要素DX23の電位変化より平坦に近い。吐出要素の単位時間当たりの電位変化量の絶対値は、吐出要素の電位変化量の絶対値を吐出要素の期間で除した値である。すなわち、吐出要素の期間が短くなることに応じて、吐出要素の単位時間当たりの電位変化量の絶対値が大きくなる。そして、第1実施形態では、吐出要素DY23と吐出要素DX23とのそれぞれの電位変化量は、ともに最低電位VLから最高電位VHまでと略同一である。従って、第1実施形態において、吐出要素DY23の単位時間当たりの電位変化量の絶対値が吐出要素DX23の単位時間当たりの電位変化量の絶対値より小さいことは、図5に示すように、吐出要素DY23の期間TY23が、吐出要素DX23の期間TX23より長いことと同義である。また、吐出パルスPLX1と吐出パルスPLX2との形状が互いに同一であり、且つ、吐出パルスPLY1と吐出パルスPLY2との形状が互いに同一であるから、吐出要素DY13の単位時間当たりの電位変化量の絶対値は、吐出要素DX13の単位時間当たりの電位変化量の絶対値より小さい。
【0067】
以上により、1以上且つ吐出パルスPLYの個数N-1である2以下の整数である変数n2を用いると、n2番目の吐出パルスPLYの吐出要素の単位時間当たりの電位変化量の絶対値は、n2番目の吐出パルスPLXの吐出要素の単位時間当たりの電位変化量の絶対値より小さい。
【0068】
また、期間TX3と固有振動周期Tcの0.5倍との差の絶対値は、期間TX2と固有振動周期Tcの0.5倍との差の絶対値より小さい。期間TX3は、膨張要素DX31の開始時点から吐出要素DX33の開始時点までの期間である。期間TX2は、膨張要素DX21の開始時点から吐出要素DX23の開始時点までの期間である。また、吐出パルスPLX1と吐出パルスPLX2との形状が互いに同一であるから、期間TX3と固有振動周期Tcの0.5倍との差の絶対値は、期間TX1と固有振動周期Tcの0.5倍との差の絶対値より小さい。期間TX1は、膨張要素DX11の開始時点から吐出要素DX13の開始時点までの期間である。
【0069】
以上により、吐出パルスPLXの個数であるN番目、すなわち時系列で末尾に位置する吐出パルスPLXの膨張要素の開始時点から吐出要素の開始時点までの期間と固有振動周期Tcの0.5倍との差の絶対値は、時系列で末尾以外に位置する吐出パルスPLXの膨張要素の開始時点から吐出要素の開始時点までの期間と固有振動周期Tcの0.5倍との差の絶対値より小さい。
【0070】
また、期間TY3と固有振動周期Tcの0.5倍との差の絶対値は、期間TY2と固有振動周期Tcの0.5倍との差の絶対値より小さく、且つ、期間TY1と固有振動周期Tcの0.5倍との差の絶対値より小さい。期間TY3は、膨張要素DY31の開始時点から吐出要素DY33の開始時点までの期間である。期間TY2は、膨張要素DY21の開始時点から吐出要素DY23の開始時点までの期間である。期間TY1は、膨張要素DY11の開始時点から吐出要素DY13の開始時点までの期間である。
【0071】
また、吐出要素DX33の単位時間当たりの電位変化量の絶対値は、吐出要素DX23の単位時間当たりの電位変化量の絶対値より大きい。言い換えれば、吐出要素DX33の電位変化は、吐出要素DX23の電位変化より急峻である。第1実施形態では、吐出要素DX33と吐出要素DX23とのそれぞれの電位変化量は、ともに最低電位VLから最高電位VHまでと略同一である。従って、第1実施形態において、吐出要素DX33の単位時間当たりの電位変化量の絶対値が吐出要素DX23の単位時間当たりの電位変化量の絶対値より大きいことは、図5に示すように、吐出要素DX33の期間TX33が、吐出要素DX23の期間TX23より短いことと同義である。同様に、吐出要素DX33の単位時間当たりの電位変化量の絶対値は、吐出要素DX13の単位時間当たりの電位変化量の絶対値より大きい。
【0072】
以上により、吐出パルスPLXの個数であるN番目、すなわち時系列で末尾に位置する吐出パルスPLXの吐出要素の単位時間当たりの電位変化量の絶対値は、時系列で末尾以外に位置する吐出パルスPLXの吐出要素の単位時間当たりの電位変化量の絶対値より大きい。
【0073】
印刷信号SIは、各記録期間Tuにおける吐出部D[1]~D[M]の駆動の態様を指定する個別指定信号Sd[1]~Sd[M]を含む。そして、制御部6は、記録期間Tu[i]において印刷処理が実行される場合、図5に示すように、記録期間Tu[i]の開始に先立って、個別指定信号Sd[1]~Sd[M]を含む印刷信号SIを、クロック信号CLに同期させて接続状態指定回路11に供給する。この場合、接続状態指定回路11は、1からMまでの任意のmにおいて、記録期間Tu[i]に対して、個別指定信号Sd[m]に基づいて接続状態指定信号SLa[m]を生成する。
【0074】
なお、1からMまでの任意のmについて、本実施形態に係る個別指定信号Sd[m]は、各記録期間Tuにおいて、吐出部D[m]を駆動させるか否かの2種類の態様を指定する信号である。例えば、本実施形態では、個別指定信号Sd[m]は、1ビットのデジタル信号である。
【0075】
1からMまでの任意のmについて、接続状態指定回路11は、個別指定信号Sd[m]が吐出部D[m]を駆動させることを示す場合、接続状態指定信号SLa[m]をハイレベルに設定し、個別指定信号Sd[m]が吐出部D[m]を駆動させないことを示す場合、接続状態指定信号SLa[m]をローレベルに設定する。
【0076】
図6は、第1駆動波形PXにより吐出されるインク滴の合体の態様の一例を説明するための図である。第1駆動波形PXを圧電素子PZに供給することによりノズルNzから吐出される3つの吐出パルスPLXに1対1に対応する3個のインク滴は、記録用紙PPに着弾するまでに合体する。なお、図示を省略するが、第2駆動波形PYを圧電素子PZに供給することによっても、3つの吐出パルスPLYに1対1に対応する3個のインク滴が、記録用紙PPに着弾するまでに合体する。
【0077】
図6に示す時刻td1において、吐出要素DX13によってノズルNzからインク滴DR1が吐出され、インク滴DR1が-Z方向に飛翔する。次に、時刻td1の後の時刻td2において、吐出要素DX23によってノズルNzからインク滴DR2が吐出され、インク滴DR2が-Z方向に飛翔する。時刻td2の後の時刻td3において、吐出要素DX33によってノズルNzからインク滴DR3が吐出され、インク滴DR3が-Z方向に飛翔する。更に、時刻td2と時刻td3との間で、インク滴DR1とインク滴DR2とが合体し、合体滴DR12が形成される。時刻td3の後の時刻td4において、合体滴DR12とインク滴DR3とが合体し、合体滴DR123が形成される。
【0078】
但し、インク滴の合体の態様は、図6に示す態様に限られない。例えば、インク滴DR2とインク滴DR3とが合体し、この合体により形成された合体滴とインク滴DR1とが合体してもよいし、インク滴DR1とインク滴DR2とインク滴DR3とが同時に合体してもよい。
【0079】
図7は、制御部6の動作を示すフローチャートである。図7では、印刷処理を実行する場合の制御部6の一連の動作を示す。制御部6が印刷データImgを受信した場合、ステップS2において、制御部6は、温度計測部4から温度情報KTを取得する。次に、制御部6は、ステップS4において、温度情報KTに応じた駆動波形を有する駆動信号Comを、駆動信号生成回路2に生成させる。ステップS2の具体的な方法について説明する。例えば、記憶部5は、図8に示す波形指定信号管理テーブルTBLを記憶する。
【0080】
図8は、波形指定信号管理テーブルTBLの一例を示す図である。波形指定信号管理テーブルTBLは、温度計測部4が計測し得る複数の温度ごとに、駆動波形を規定する波形指定信号dComを記憶する。図8の例では、通常温度の一例である摂氏22度に対して、第1駆動波形PXを規定する波形指定信号dCom-PXが関連付けて記憶されており、高温度の一例である摂氏35度に対して、第2駆動波形PYを規定する波形指定信号dCom-PYが関連付けて記憶されている。
【0081】
制御部6は、波形指定信号管理テーブルTBLを参照して、温度情報KTが示す温度に関連付けられた波形指定信号dComを取得する。波形指定信号管理テーブルTBLに、温度情報KTが示す温度が登録されていない場合、例えば、制御部6は、波形指定信号管理テーブルTBLに登録された複数の温度のうち、温度情報KTが示す温度に最も近い温度に関連付けられた波形指定信号dComを取得する。そして、制御部6は、取得した波形指定信号dComを駆動信号生成回路2に出力する。駆動信号生成回路2は、波形指定信号dComが規定する駆動波形を有する駆動信号Comを生成する。
【0082】
説明を図7に戻す。ステップS4の処理終了後、制御部6は、ステップS6において、1又は複数の記録期間Tuについて、印刷データImgに基づき生成した個別指定信号Sd[1]~Sd[M]を液体吐出ヘッドHUに出力する。また、図7には記載していないが、制御部6は、ステップS6において、1又は複数の記録期間Tuについて、クロック信号CL及びラッチ信号LATを出力する。
【0083】
ステップS6の終了後、制御部6は、図7に示す一連の処理を終了する。但し、制御部6の一連の動作は、図7に示す動作に限られない。例えば、印刷処理の間に、吐出部Dに充填されているインクの温度が大きく変動する可能性がある場合、制御部6は、所定の条件が充足する度に、ステップS2の処理とステップS4の処理とを実行して、生成される駆動信号Comを変更してもよい。所定の条件は、例えば、所定の枚数の記録用紙PPに対して画像を形成した場合、所定数の記録期間Tuが経過した場合、及び、液体吐出ヘッドHUがX軸の一端から他端まで移動し、更に一端までに戻るまでを所定回数繰り返した場合である。
【0084】
1-5.実施例
以下、第1実施形態の実施例を示すが、第1実施形態は以下の例により限定されるものではない。
【0085】
図9は、第1実施例、第2実施例、第3実施例、及び比較例におけるインク滴の形状を説明する図である。第1実施例は、インクの温度が通常温度の22[℃]である場合に圧電素子PZに供給される第1駆動波形PXの接続成分SCX1及び接続成分SCX2の長さが固有振動周期Tcの0.9倍である例を示す。第2実施例は、インクの温度が通常温度の22[℃]である場合に圧電素子PZに供給される第1駆動波形PXの接続成分SCX1の長さが固有振動周期Tcの0.9倍であり、且つ、接続成分SCX2の長さが固有振動周期Tcの0.8倍である例を示す。第3実施例は、インクの温度が高温度の35[℃]である場合に圧電素子PZに供給される第2駆動波形PYの接続成分SCY1の長さが固有振動周期Tcの0.7倍であり、且つ、接続成分SCY2の長さが固有振動周期Tcの0.9倍である例を示す。比較例は、インクの温度が高温度の35[℃]である場合に圧電素子PZに供給される第2駆動波形PYの接続成分SCY1の長さが固有振動周期Tcの0.9倍であり、且つ、接続成分SCY2の長さが固有振動周期Tcの0.8倍である例を示す。
【0086】
図9では、4つの合体滴DRaと、4つの合体滴DRbと、4つの合体滴DRcと、4つの合体滴DRdとを示してある。4つの合体滴DRaは、第1実施例において、温度計測部4が計測した温度が摂氏22度である場合に、第1駆動波形PXが4つの圧電素子PZに供給され、4つの圧電素子PZにそれぞれ対応するノズルNzから吐出された合計12個のインク滴が3つずつ合体して形成された4つの合体滴を模式的に示してある。4つの合体滴DRaから理解されるように、同一の駆動波形が複数の圧電素子PZに供給されたとしても、圧力室320の製造誤差、及び、ノズルNzの形状の誤差によって、圧力室320毎の固有振動周期Tcが異なり、複数の圧電素子PZのそれぞれに対応するノズルNzから吐出されるインク滴の吐出性能が異なることがある。しかし、第1実施例では、接続成分SCX1及び接続成分SCX2の長さが固有振動周期Tcの0.6倍以上の0.9倍であるため、複数の圧電素子PZのそれぞれに対応するノズルNzから吐出されるインク滴の吐出性能を略同一とすることができる。
【0087】
4つの合体滴DRbは、第2実施例において、温度計測部4が計測した温度が摂氏22度である場合に、第1駆動波形PXが4つの圧電素子PZに供給され、4つの圧電素子PZにそれぞれ対応するノズルNzから吐出された合計12個のインク滴が3つずつ合体して形成された4つの合体滴を模式的に示してある。第2実施例では、接続成分SCX1及び接続成分SCX2の長さが固有振動周期Tcの0.6倍以上であるため、第1実施例と同様に圧力室320毎の固有振動周期Tcの差異の影響を受けることなく、複数の圧電素子PZのそれぞれに対応するノズルNzから吐出されるインク滴の吐出性能を略同一とすることができる。さらに、第2実施例では、接続成分SCX1の長さを固有振動周期Tcの0.9倍とし、接続成分SCX2の長さを接続成分SCX1の長さより短い固有振動周期Tcの0.8倍としたことで、第2実施例での吐出パルスPLX3による液滴の吐出タイミングを第1実施例の場合より早くでき、これにより、第2実施例では第1実施例の場合より早く先発の液滴と合体できるため、合体滴Rbの尾引きの長さLbは合体滴Raの尾引きの長さLaより短い。
【0088】
4つの合体滴DRcは、第3実施例において、温度計測部4が計測した温度が摂氏35度である場合に、第2駆動波形PYが4つの圧電素子PZに供給され、4つの圧電素子PZにそれぞれ対応するノズルNzから吐出された合計12個のインク滴が3つずつ合体して形成された4つの合体滴を模式的に示してある。第3実施例は、接続成分SCY1の長さを圧力室320の固有振動周期Tcの0.7倍であり、接続成分SCY2の長さを圧力室320の固有振動周期Tcの0.9倍以上である。
【0089】
4つの合体滴DRdは、比較例において、温度計測部4が計測した温度が摂氏35度である場合に、第2駆動波形PYが4つの圧電素子PZに供給され、4つの圧電素子PZにそれぞれ対応するノズルNzから吐出された合計12個のインク滴が3つずつ合体して形成された4つの合体滴を模式的に示してある。比較例は、接続成分SCY1の長さを第2実施例の接続成分SCX1の長さと同様の圧力室320の固有振動周期Tcの0.9倍であり、接続成分SCY2の長さを第2実施形態の接続成分SCX2の長さと同様の圧力室320の固有振動周期Tcの0.8倍である。
ここで、上述の通り、インクの温度が上昇すると、残留振動が減衰しにくくなるため、高温時の場合は、接続成分SCY1の長さ及び接続成分SCY2の長さを圧力室320の固有振動周期Tcの0.6倍以上としても、先発の吐出パルスPLYによる残留振動の影響をうけ後発の吐出パルスPLYにより吐出される液滴の尾引きが長くなることがある。そこで、第3実施例の接続成分SCY2の長さを、圧力室320の固有振動周期Tcの0.9倍とし、吐出パルスPLY3が供給される時点での残留振動の影響を小さくした。さらに、第3実施例の接続成分SCY1の長さを、圧力室320の固有振動周期Tcの0.7倍とし、接続成分SCY2の長さを長くしたことにより最初の吐出パルスPLY1が供給されてから最後の吐出パルスPLY3が供給されるまでの期間が長くなることを抑制する。これにより、先行の吐出パルスPLYにより吐出された液滴と最後の吐出パルスPLYにより吐出された液滴との合体をより早めることができミストの発生を抑制することができる。接続成分SCY1の長さを固有振動周期Tcの0.7倍とすることで、吐出パルスPLY2の供給時に残留振動の影響があり、吐出パルスPLY2により吐出された液滴の尾引きが長くなったとしても、後続の吐出パルスPLY3により吐出された液滴と合体することでミストの発生は抑えられる。
【0090】
図9に示すように、合体滴DRbの尾引きの長さLbは、合体滴DRaの尾引きの長さLaより短い。また、合体滴DRcの尾引きの長さLcは、合体滴DRdの尾引きの長さLdより短い。
【0091】
また、図9に示すように、インクの温度が通常温度である場合、接続成分SCX2を固有振動周期Tcの0.9倍とした第1実施例の尾引きの長さLaよりも、接続成分SCX2を固有振動周期Tcの0.8倍とした第2実施例の尾引きの長さLbの方が短くできる。
また、図9に示すように、インクの温度が高温度である場合、接続成分SCY1を、インクの温度が通常温度である第2実施例の接続成分SCX1よりも短い固有振動周期Tc0.7倍とし、接続成分SCY2を、インクの温度が通常温度である第2実施例の接続成分SCX2よりも長い固有振動周期Tc0.9倍としたことで、接続成分の長さを通常温度の第2実施例と等しくした比較例での合体滴DRdの尾引きの長さLdよりも、第3実施例の合体滴DRcの尾引きの長さLcを短くまとまって形成できた。
【0092】
1-6.第1実施形態のまとめ
以上説明したように、インクジェットプリンター1は、インクをインク滴として吐出するノズルNzと、ノズルNzに連通する圧力室320と、駆動信号Comに応じて圧力室320内の液体に圧力変動を与える圧電素子PZと、を有する吐出部Dを備えた液体吐出ヘッドHUと、駆動信号Comを生成する駆動信号生成回路2と、温度を計測する温度計測部4と、を備え、温度計測部4が通常温度を計測した場合、駆動信号Comは、温度計測部4が通常温度を計測した場合に圧電素子PZに供給される第1駆動波形PXを含み、第1駆動波形PXは、一周期内に、時系列に並ぶ3以上のN個の吐出パルスPLXと、N個の吐出パルスPLXのうち互いに隣り合う2つの吐出パルスPLXを接続するN-1個の接続成分SCXと、を含み、N個の吐出パルスPLXのそれぞれは、ノズルNzからインク滴を吐出させるように圧力室320内のインクに圧力変動を与えるように電位が変化するパルスであり、N-1個の接続成分SCXのそれぞれは、一定の電位を固有振動周期Tcの0.6倍以上の期間維持する成分である。
第1実施形態に係るインクジェットプリンター1は、通常温度ではN-1個の接続成分SCXのそれぞれの期間が、固有振動周期Tcの0.6倍以上であることにより、nを1からN-1までの任意の整数とした場合、n番目の吐出パルスPLXによる残留振動が、n+1番目の吐出パルスPLXによる吐出に与える影響を抑制できるので、N-1個の接続成分SCXの期間の長さが固有振動周期Tcの0.6倍未満である態様と比較して、n+1番目の吐出パルスPLXによる吐出性能が低下することを抑制でき、記録用紙PPに形成される画像の質が低下することを抑制できる。
【0093】
また、温度計測部4が通常温度より高い高温度を計測した場合、駆動信号Comは、温度計測部4が高温度を計測した場合に圧電素子PZに供給される第2駆動波形PYを含み、第2駆動波形PYは、一周期内に、時系列に並ぶN個の吐出パルスPLYと、N個の吐出パルスPLYのうち互いに隣り合う2つの吐出パルスPLYを接続するN-1個の接続成分SCYと、を含み、N-1個の接続成分SCYのそれぞれは、一定の電位を維持する成分であり、N個の吐出パルスPLYのうち時系列で末尾に位置する吐出パルスPLYの直前の接続成分SCY、すなわち、N-1番目の接続成分SCYの期間は、N個の吐出パルスPLXのうち時系列で末尾に位置する吐出パルスPLXの直前の接続成分SCX、すなわち、N-1番目の接続成分SCXの期間より長く、N個の吐出パルスPLYのうち時系列で末尾に位置する吐出パルスPLYより前の吐出パルスPLYの直前の接続成分SCYの期間は、N個の吐出パルスPLXのうち時系列で末尾に位置する吐出パルスPLXより前の吐出パルスPLXの直前の接続成分SCXの期間より短い。
上述したように、インクの温度が上昇すると、残留振動の減衰率が低下する。そして、N個の吐出パルスPLYによるN個のインク滴の吐出速度のうち、最後に吐出されるインク滴の吐出速度が、N個のインク滴が合体したインク滴の着弾位置の精度に最も影響する。そこで、通常温度よりもインクの温度が上昇した高温度の状態では、第2駆動波形PY内の時系列で末尾に位置する接続成分SCYの期間を長くすることで、最後に吐出されるインク滴の残留振動の影響を抑えて、N個のインク滴が合体したインク滴の着弾位置の精度の低下を抑制できる。また、最後に吐出されるインク滴の尾引きの長さを短くまとめることができる、一方で、第2駆動波形PY内の時系列で末尾以外に位置する接続成分SCYの期間を短くすることにより、第2駆動波形PYの一周期の長さと第1駆動波形PXの一周期の長さとを略同一にできる。第2駆動波形PYの一周期の長さと第1駆動波形PXの一周期の長さとが互いに異なると、温度に応じて記録期間Tuの長さを変更する必要があるが、第2駆動波形PYの一周期の長さと第1駆動波形PXの一周期の長さとが略同一であることにより、温度に応じて記録期間Tuの長さを変更しなくてよい。従って、第2駆動波形PYの一周期の長さと第1駆動波形PXの一周期の長さとが略同一であることにより、記録期間Tuの長さを変更しなくてよいため、液体吐出ヘッドHUの制御が容易になる。
【0094】
また、N個の吐出パルスPLYのうち時系列で先頭に位置する吐出パルスPLYの開始時点から時系列で末尾に位置する吐出パルスPLYの終了時点までの期間、図5の例では期間TYEは、N個の吐出パルスPLXのうち時系列で先頭に位置する吐出パルスPLXの開始時点から時系列で末尾に位置する吐出パルスPLXの終了時点までの期間、図5の例では期間TXEより短い。
上述したように、インクの温度が上昇すると残留振動の減衰率が低下する。従って、インクの温度が上昇した場合、時系列で連続する2つの記録期間Tuにおいて、先の記録期間Tuの末尾に位置する吐出パルスPLXの終了時点から、後の記録期間Tuの先頭に位置する吐出パルスPLYの開始時点までの間隔を長くすることにより、前の記録期間Tuの吐出パルスによる残留振動が充分に減衰されるので、後の記録期間Tuの吐出パルスPLによって吐出されるインク滴の吐出性能の低下を抑制できる。第1実施形態によれば、期間TYEが期間TXEより長い態様と比較して、時系列で連続する2つの記録期間Tuにおける、前の記録期間Tuの第2駆動波形PYの末尾に位置する吐出パルスPLYから、後の記録期間Tuの第2駆動波形PYの先頭に位置する吐出パルスPLYまでの期間を長くすることができるので、後の記録期間Tuの第2駆動波形PYのN個の吐出パルスPLYによって吐出されるインク滴の吐出性能の低下を抑制できる。
【0095】
また、N個の吐出パルスPLYのうち時系列で先頭に位置する吐出パルスPLYの開始時点から時系列で末尾に位置する吐出パルスPLYの開始時点までの期間、図5の例では期間TYSは、N個の吐出パルスPLXのうち時系列で先頭に位置する吐出パルスPLXの開始時点から時系列で末尾に位置する吐出パルスPLXの開始時点までの期間、図5の例では期間TXSより短い。
従って、期間TYSが期間TXSより短いことにより、期間TYSが期間TXSより長い態様と比較して、時系列で末尾に位置する吐出パルスPLYをより早く吐出することができ、時系列で末尾に位置する吐出パルスPLYによるインク滴を、先行して吐出されたインク滴に合体させやすくできる。これにより、時系列で末尾に位置する吐出パルスPLYの吐出要素の電位変化の傾きを緩やかにしても先行して吐出されたインク滴に合体させることができ、時系列で末尾に位置する吐出パルスPLYによるインク滴の吐出によるミストの発生を抑制することができる。
【0096】
また、N個の吐出パルスPLYの1周期の開始から1以上N以下の整数であるn1番目の吐出パルスPLYの制振要素の単位時間当たりの電位変化量の絶対値は、N個の吐出パルスPLXの1周期の開始からn1番目の吐出パルスPLXの制振要素の単位時間当たりの電位変化量の絶対値より大きい。言い換えれば、n1番目の吐出パルスPLYの制振要素の電位変化は、n1番目の吐出パルスPLXの制振要素の電位変化より急峻である。
上述したように、インクの温度が上昇すると残留振動の減衰率が低下する。そこで、第1実施形態では、n1番目の吐出パルスPLYの制振要素の電位変化を急峻にすることで、圧力室320内のインクの圧力振動を抑制させる力が大きくできる。従って、第1実施形態によれば、n1番目の吐出パルスPLXの制振要素の電位変化がn1番目の吐出パルスPLYの制振要素の電位変化より急峻である態様と比較して、高温度時の吐出パルスPLYによる残留振動を減衰できる。
【0097】
また、N個の吐出パルスPLYのうち1周期の開始から1以上N-1以下の整数であるn2番目の吐出パルスPLYの吐出要素の単位時間当たりの電位変化量の絶対値は、N個の吐出パルスPLXの1周期の開始からn2番目の吐出パルスPLXの吐出要素の単位時間当たりの電位変化量の絶対値より小さい。言い換えれば、n2番目の吐出パルスPLYの吐出要素の電位変化は、n2番目の吐出パルスPLXの吐出要素の電位変化より平坦に近い。
インクの温度が上昇すると、インクの粘度が低下し、インク滴の吐出速度が上昇する傾向にある。従って、n2番目の吐出パルスPLYの吐出要素の電位変化の傾きを平坦に近づけることにより、n2番目の吐出パルスPLYによるインク滴の吐出速度が低下し、n2+1番目の吐出パルスPLYによるインク滴がn2番目の吐出パルスPLYによるインク滴に追いつくことが容易になる。従って、n2番目の吐出パルスPLYによるインク滴と、n2+1番目の吐出パルスPLYによるインク滴との合体が容易になる。更に、上述したように、インクの温度が上昇すると残留振動の減衰率が低下する。そこで、n2番目の吐出パルスPLYの吐出要素の電位変化の傾きを平坦に近づけることにより、n2番目の吐出パルスPLYによるインク滴の吐出速度が低下し、残留振動を小さくできる。従って、第1実施形態によれば、n2番目の吐出パルスPLYの吐出要素の電位変化がn2番目の吐出パルスPLXの吐出要素の電位変化より急峻である態様と比較して、n2番目の吐出パルスPLYによるインク滴とn2+1番目の吐出パルスPLYによるインク滴との合体が容易になり、且つ、n2番目の吐出パルスPLYによる残留振動を小さくできる。
【0098】
液体吐出ヘッドHUは、記録用紙PPに対してインク滴を吐出し、第1駆動波形PXを圧電素子PZに供給することによりノズルNzから吐出されるN個の吐出パルスPLXに1対1に対応するN個のインク滴は、記録用紙PPに着弾するまでに合体する。
N個のインク滴が記録用紙PPに着弾するまでに合体することにより、N個のインク滴が合体しない態様と比較して、風紋の発生を抑制できて、記録用紙PPに形成される画像の質の低下を抑制できる。
【0099】
また、N個の吐出パルスPLXのうちの時系列で末尾に位置する吐出パルスPLXの膨張要素の開始時点から吐出要素の開始時点までの期間と固有振動周期Tcの0.5倍との差の絶対値は、N個の吐出パルスPLXのうち時系列で末尾以外に位置する吐出パルスPLXの膨張要素の開始時点から吐出要素の開始時点までの期間と固有振動周期Tcの0.5倍との差の絶対値より小さい。
吐出パルスPLの膨張要素の開始時点から吐出要素の開始時点までの期間を、固有振動周期Tcの0.5倍に近づけることにより、吐出パルスPLにより吐出される液滴の吐出速度を高くできる。従って、第1実施形態によれば、時系列で末尾に位置する吐出パルスPLXによるインク滴の吐出速度を、時系列で末尾以外に位置する吐出パルスPLXによるインク滴の吐出速度よりも高くすることにより、時系列で末尾に位置する吐出パルスPLXによるインク滴を、時系列で末尾以外に位置する吐出パルスPLXによるインク滴に合体させやすくできる。
【0100】
また、N個の吐出パルスPLXのうち時系列で末尾に位置する吐出パルスPLXの吐出要素の単位時間当たりの電位変化量の絶対値は、N個の吐出パルスPLXのうち時系列で末尾以外に位置する吐出パルスPLXの吐出要素の単位時間当たりの電位変化量の絶対値より大きい。言い換えれば、時系列で末尾に位置する吐出パルスPLXの吐出要素の電位変化は、時系列で末尾以外に位置する吐出パルスPLXの吐出要素の電位変化より急峻である。
吐出パルスPLの吐出要素の電位変化を急峻にすることにより、吐出パルスPLにより吐出される液滴の吐出速度を高くできる。従って、第1実施形態によれば、時系列で末尾以外に位置する吐出パルスPLXの吐出要素の電位変化が時系列で末尾に位置する吐出パルスPLXの吐出要素の電位変化より急峻である態様と比較して、時系列で末尾に位置する吐出パルスPLXによるインク滴を、時系列で末尾以外に位置する吐出パルスPLXによるインク滴に合体させやすくできる。
【0101】
また、第1実施形態に係るインクジェットプリンター1は、液体をインク滴として吐出するノズルNzと、ノズルNzに連通する圧力室320と、駆動信号Comに応じて圧力室320内の液体に圧力変動を与える圧電素子PZと、を有する吐出部Dを備えた液体吐出ヘッドHUと、駆動信号Comを生成する駆動信号生成回路2と、温度を計測する温度計測部4と、駆動信号生成回路2を制御する制御部6と、を備える液体吐出装置の液体吐出方法を実行しているとも言える。制御部6は、温度計測部4から温度を示す温度情報KTを取得し、温度情報KTが通常温度を示す場合に、駆動信号生成回路2に、圧電素子PZに供給される第1駆動波形PXを含む駆動信号Comを生成させる。
第1実施形態によれば、インクジェットプリンター1は、温度情報KTが通常温度を示す場合に、通常温度に適した第1駆動波形PXを含む駆動信号Comを生成できる。
【0102】
2.変形例
以上に例示した各形態は多様に変形され得る。具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は、相互に矛盾しない範囲で適宜に併合され得る。
【0103】
2-1.第1変形例
第1実施形態では、駆動信号Comに含まれる可能性がある第1駆動波形PXの全部、又は、第2駆動波形PYの全部が圧電素子PZに供給されていたが、第1駆動波形PXの一部、又は、第2駆動波形PYの一部が圧電素子PZに供給されてもよい。
【0104】
図10は、第1変形例に係る液体吐出ヘッドHUAの構成の一例を示すブロック図である。液体吐出ヘッドHUAは、切替回路10の替わりに切替回路10Aを有する点で、液体吐出ヘッドHUと相違する。切替回路10Aは、接続状態指定回路11の替わりに接続状態指定回路11Aを有する点で、切替回路10と相違する。接続状態指定回路11Aは、第1変形例に係る制御部6から、チェンジ信号CHを更に受け付け、接続状態指定信号SLa[1]~SLa[M]の替わりに接続状態指定信号SLaA[1]~SLaA[M]を出力する点で、接続状態指定回路11と相違する。
【0105】
図11は、第1変形例に係るインクジェットプリンター1の記録期間Tu[i]における動作を説明するためのタイミングチャートである。
【0106】
第1変形例に係る制御部6は、印刷信号SIの替わりに印刷信号SIAを出力し、パルスPlsCを有するチェンジ信号CHを出力する点で、第1実施形態に係る制御部6と相違する。以下、第1変形例の説明では、第1変形例に係る制御部6を、単に、制御部6と記載することがある。
【0107】
図5に示すように、制御部6は、チェンジ信号CHに含まれるパルスPlsCにより、記録期間Tu[i]を制御期間Tcu1、制御期間Tcu2、及び、制御期間Tcu3に区分する。
【0108】
図11から理解されるように、駆動信号Comに第1駆動波形PXが含まれる場合、制御期間Tcu1には吐出パルスPLX1が設けられ、制御期間Tcu2には吐出パルスPLX2が設けられ、制御期間Tcu3には吐出パルスPLX3が設けられる。また、駆動信号Comに第2駆動波形PYが含まれる場合、制御期間Tcu1には吐出パルスPLY1が設けられ、制御期間Tcu2には吐出パルスPLY2が設けられ、制御期間Tcu3には吐出パルスPLY3が設けられる。言い換えれば、1つの記録期間Tu[i]の1つ目のパルスPlsCが立ち上がる時点は、接続成分SCX1の期間に含まれ、且つ、接続成分SCY1の期間にも含まれる。同様に、1つの記録期間Tu[i]の2つ目のパルスPlsCが立ち上がる時点は、接続成分SCX2の期間に含まれ、且つ、接続成分SCY2の期間にも含まれる。更に言い換えれば、駆動信号Comに第1駆動波形PX又は第2駆動波形PYのいずれが含まれても適切に制御期間Tcu1、制御期間Tcu2、及び、制御期間Tcu3を区切るため、接続成分SCX1の期間と接続成分SCY1の期間とには互いに重なる期間が存在し、且つ、接続成分SCX2の期間と接続成分SCY2の期間とには互いに重なる期間が存在する、とも言える。
【0109】
印刷信号SIAは、各記録期間Tuにおける吐出部D[1]~D[M]の駆動の態様を指定する個別指定信号SdA[1]~SdA[M]を含む。そして、制御部6は、記録期間Tu[i]において印刷処理が実行される場合、図11に示すように、記録期間Tu[i]の開始に先立って、個別指定信号SdA[1]~SdA[M]を含む印刷信号SIAを、クロック信号CLに同期させて接続状態指定回路11Aに供給する。この場合、接続状態指定回路11Aは、1からMまでの任意のmにおいて、記録期間Tu[i]に対して、個別指定信号SdA[m]に基づいて接続状態指定信号SLaA[m]を生成する。
【0110】
個別指定信号SdA[m]は、各記録期間Tuにおいて、以下に示す駆動態様α1から駆動態様α3までの3つの駆動態様のうち、いずれか1つの駆動態様を指定する信号である。本実施形態では、一例として、個別指定信号SdA[m]が、2ビットのデジタル信号である場合を想定する。
【0111】
図12は、個別指定信号SdA[m]が取り得る3つの駆動態様を説明するための図である。個別指定信号SdA[m]は、駆動態様α1を示す値(1,1)と、駆動態様α2を示す値(0,1)と、駆動態様α3を示す値(0,0)とのうちのいずれかの値を示す。
【0112】
接続状態指定回路11Aは、個別指定信号SdA[m]が駆動態様α1を示す場合、制御期間Tcu1、制御期間Tcu2、及び、制御期間Tcu3において、接続状態指定信号SLaA[m]をハイレベルに設定する。接続状態指定回路11Aは、個別指定信号SdA[m]が駆動態様α2を示す場合、制御期間Tcu1において、接続状態指定信号SLaA[m]をローレベルに設定し、制御期間Tcu2、及び、制御期間Tcu3において、接続状態指定信号SLaA[m]をハイレベルに設定する。接続状態指定回路11Aは、個別指定信号SdA[m]が駆動態様α3を示す場合、制御期間Tcu1、制御期間Tcu2、及び、制御期間Tcu3において、接続状態指定信号SLaA[m]をローレベルに設定する。
【0113】
個別指定信号SdA[m]が吐出部D[m]に対して、駆動態様α1を指定する場合、接続状態指定回路11Aは、接続状態指定信号SLaA[m]を記録期間Tuにおいてハイレベルに設定する。吐出部D[m]は、記録期間Tuにおいて3つのインク滴を吐出し、この3つのインク滴が空中で合体する。具体的には、温度情報KTが常温温度を示す場合、供給駆動信号Vin[m]には、3つの吐出パルスPLXが含まれる。そして、吐出部D[m]は、記録期間Tuにおいて、3つの吐出パルスPLXによって3つのインク滴を吐出する。一方、温度情報KTが高温度を示す場合、吐出部D[m]は、記録期間Tuにおいて、3つの吐出パルスPLYから3つのインク滴を吐出する。
【0114】
個別指定信号SdA[m]が吐出部D[m]に対して、駆動態様α2を指定する場合、接続状態指定回路11Aは、接続状態指定信号SLaA[m]を、制御期間Tcu1においてローレベルに設定し、制御期間Tcu2及び制御期間Tcu3においてハイレベルに設定する。この場合、吐出部D[m]は、記録期間Tuにおいて2つのインク滴を吐出し、この2つのインク滴が空中で合体する。具体的には、温度情報KTが常温温度を示す場合、供給駆動信号Vin[m]には、吐出パルスPLX2及び吐出パルスPLX3が含まれる。そして、吐出部D[m]は、記録期間Tuにおいて、吐出パルスPLX2及び吐出パルスPLX3によって2つのインク滴を吐出する。一方、温度情報KTが高温度を示す場合、吐出部D[m]は、記録期間Tuにおいて、吐出パルスPLY2及び吐出パルスPLY3によって2つのインク滴を吐出する。
【0115】
個別指定信号SdA[m]が吐出部D[m]に対して、駆動態様α3を指定する場合、接続状態指定回路11Aは、接続状態指定信号SLaA[m]を記録期間Tuにおいてローレベルに設定する。この場合、吐出部D[m]は、記録期間Tuにおいてインク滴を吐出しない。
【0116】
例えば、吐出部Dは、駆動態様α1によって37[ng]のインク滴を吐出できる。[ng]は、ナノグラムを示す。また、吐出部Dは、駆動態様α2によって24[ng]のインク滴を吐出できる。従って、吐出部Dは、駆動態様α1によって駆動態様α2の約1.5倍の量のインクを吐出できる。このように、第1変形例によれば、吐出部Dの駆動態様を変更することにより、温度によって適切な駆動波形を変更しつつ、記録用紙PPに形成されるドットの大きさを変更できる。
【0117】
なお、第1変形例において、個別指定信号SdAは、吐出部Dの駆動態様が3つのうちいずれか1つを選択したが、吐出部Dの駆動態様は上述した3つの駆動態様に限らない。例えば、個別指定信号SdAは、記録期間Tuにおいて、1つ目の吐出パルスPLと、3つ目の吐出パルスPLとからインク滴を吐出する態様が選択できてもよい。
【0118】
2-2.第2変形例
上述の各態様では、第1駆動波形PX及び第2駆動波形PYに含まれる吐出パルスPLの数Nを3としたが、Nは4以上であってもよい。更に、第1変形例を適用して、吐出部Dの駆動態様には、4つ以上の吐出パルスPLのうち、1又は複数の吐出パルスPLとからインク滴を吐出する態様が含まれてもよい。例えば、4つ以上の吐出パルスPLのうち、3つ以上のn3個の吐出パルスPLと、このn3個の吐出パルスPLのうち互いに隣り合う2つの吐出パルスPLを接続するn3-1個の接続成分とを有する駆動波形を圧電素子PZに供給してもよい。第2変形例において、n3個の吐出パルスPLとn3-1個の接続成分とを有する駆動波形が、「第1駆動波形」の一例である。
【0119】
2-3.第3変形例
上述の各態様では、N個の吐出パルスPLYのうち時系列で先頭に位置する吐出パルスPLYの開始時点から時系列で末尾に位置する吐出パルスPLYの終了時点までの期間は、N個の吐出パルスPLXのうち時系列で先頭に位置する吐出パルスPLXの開始時点から時系列で末尾に位置する吐出パルスPLXの終了時点までの期間より短いが、これに限らない。例えば、時系列で先頭に位置する吐出パルスPLYの開始時点から時系列で末尾に位置する吐出パルスPLYの終了時点までの期間は、時系列で先頭に位置する吐出パルスPLXの開始時点から時系列で末尾に位置する吐出パルスPLXの終了時点までの期間より長くてもよい。
【0120】
2-4.第4変形例
上述の各態様では、N個の吐出パルスPLYのうち時系列で先頭に位置する吐出パルスPLYの開始時点から時系列で末尾に位置する吐出パルスPLYの開始時点までの期間は、N個の吐出パルスPLXのうち時系列で先頭に位置する吐出パルスPLXの開始時点から時系列で末尾に位置する吐出パルスPLXの開始時点までの期間より短いが、これに限らない。例えば、時系列で先頭に位置する吐出パルスPLYの開始時点から時系列で末尾に位置する吐出パルスPLYの開始時点までの期間は、時系列で先頭に位置する吐出パルスPLXの開始時点から時系列で末尾に位置する吐出パルスPLXの開始時点までの期間より長くてもよい。
【0121】
2-5.第5変形例
上述の各態様では、1以上N以下の整数であるn1番目の吐出パルスPLYの制振要素の電位変化は、n1番目の吐出パルスPLXの制振要素の電位変化より急峻であるが、n1番目の吐出パルスPLXの制振要素の電位変化が、n1番目の吐出パルスPLYの制振要素の電位変化より急峻でもよい。
【0122】
2-6.第6変形例
上述の各態様では、1以上N-1以下の整数であるn2番目の吐出パルスPLYの吐出要素の電位変化は、n2番目の吐出パルスPLXの吐出要素の電位変化より平坦に近いが、n2番目の吐出パルスPLYの吐出要素の電位変化は、n2番目の吐出パルスPLXの吐出要素の電位変化より急峻でもよい。
【0123】
2-7.第7変形例
上述の各態様では、N個の吐出パルスPLに1対1に対応するN個のインク滴は、記録用紙PPに着弾するまでに合体するが、これに限らない。例えば、N個のインク滴の全てが記録用紙PPに着弾するまでに合体しなくてもよいし、N個のインク滴の一部のインク滴が記録用紙PPに着弾するまでに合体し、残余のインク滴が記録用紙PPに着弾するまでに合体しなくてもよい。
【0124】
2-8.第8変形例
上述の各態様では、時系列で末尾に位置する吐出パルスPLXの膨張要素の開始時点から吐出要素の開始時点までの期間と固有振動周期Tcの0.5倍との差の絶対値は、時系列で末尾以外に位置する吐出パルスPLXの膨張要素の開始時点から吐出要素の開始時点までの期間と固有振動周期Tcの0.5倍との差の絶対値より小さいが、これに限らない。例えば、時系列で末尾に位置する吐出パルスPLXの膨張要素の開始時点から吐出要素の開始時点までの期間と固有振動周期Tcの0.5倍との差の絶対値は、時系列で末尾以外に位置する吐出パルスPLXの膨張要素の開始時点から吐出要素の開始時点までの期間と固有振動周期Tcの0.5倍との差の絶対値より大きくてもよい。
【0125】
2-9.第9変形例
上述の各態様では、時系列で末尾に位置する吐出パルスPLXの吐出要素の電位変化は、時系列で末尾以外に位置する吐出パルスPLXの吐出要素の電位変化より急峻であるが、時系列で末尾以外に位置する吐出パルスPLXの吐出要素の電位変化が、時系列で末尾に位置する吐出パルスPLXの吐出要素の電位変化より急峻でもよい。
【0126】
2-10.第10変形例
上述の各態様では、温度計測部4が計測した温度が高温度である場合、駆動信号Comは、第2駆動波形PYを含むが、第2駆動波形PYを含まなくてもよい。
【0127】
2-11.第11変形例
上述の各態様において、液体吐出ヘッドHUは、圧電素子PZの替わりに、圧力室320内のインクの加熱により圧力室320内に気泡を発生させる発熱素子を有してもよい。第11変形例において、発熱素子が、「駆動素子」の一例である。
【0128】
2-12.第12変形例
上述した各態様では、液体吐出ヘッドHUを、X軸に沿う方向に往復同させるシリアル方式のインクジェットプリンター1を例示したが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。液体吐出装置は、複数のノズルNzが、記録用紙PPの全幅に亘り分布する、ライン方式のインクジェットプリンターであってもよい。
【0129】
2-13.その他の変形例
上述の液体吐出装置は、印刷に専用される機器のほか、ファクシミリ装置及びコピー機等の各種の機器に採用され得る。もっとも、本発明の液体吐出装置の用途は印刷に限定されない。例えば、色材の溶液を吐出する液体吐出装置は、液晶表示装置のカラーフィルターを形成する製造装置として利用される。また、導電材料の溶液を吐出する液体吐出装置は、配線基板の配線及び電極を形成する製造装置として利用される。
【0130】
3.付記
以上に例示した形態から、例えば以下の構成が把握される。
【0131】
好適な態様である第1態様に係る液体吐出装置は、液体を液滴として吐出するノズルと、前記ノズルに連通する圧力室と、駆動信号に応じて前記圧力室内の液体に圧力変動を与える駆動素子と、を有する吐出部を備えた液体吐出ヘッドと、前記駆動信号を生成する駆動信号生成部と、温度を計測する温度計測部と、を備え、前記温度計測部が第1温度を計測した場合、前記駆動信号は、前記温度計測部が第1温度を計測した場合に前記駆動素子に供給される第1駆動波形を含むことが可能であり、前記第1駆動波形は、一周期内に、時系列に並ぶ3以上のN個の第1吐出パルスと、前記N個の第1吐出パルスのうち互いに隣り合う2つの第1吐出パルスを接続するN-1個の第1接続成分と、を含み、前記N個の第1吐出パルスのそれぞれは、前記ノズルから液滴を吐出させるように前記圧力室内の液体に圧力変動を与えるように電位が変化するパルスであり、前記N-1個の第1接続成分のそれぞれは、一定の電位を前記圧力室の固有振動周期の0.6倍以上の期間維持する成分である。
第1態様によれば、第1温度ではN-1個の第1接続成分のそれぞれの期間が、固有振動周期の0.6倍以上であることにより、nを1からN-1までの任意の整数とした場合、n番目の第1吐出パルスによる残留振動が、n+1番目の第1吐出パルスによる吐出に与える影響を抑制できるので、N-1個の第1接続成分の期間の長さが固有振動周期の0.6倍未満である態様と比較して、n+1番目の第1吐出パルスによる吐出性能が低下することを抑制できて、媒体に形成される画像の質が低下することを抑制できる。
【0132】
第1態様の具体例である第2態様において、前記温度計測部が前記第1温度より高い第2温度を計測した場合、前記駆動信号は、前記温度計測部が前記第2温度を計測した場合に前記駆動素子に供給される第2駆動波形を含み、前記第2駆動波形は、一周期内に、時系列に並ぶ前記N個の第2吐出パルスと、前記N個の第2吐出パルスのうち互いに隣り合う2つの第2吐出パルスを接続するN-1個の第2接続成分と、を含み、前記N-1個の第2接続成分のそれぞれは、一定の電位を維持する成分であり、前記N個の第2吐出パルスのうち時系列で末尾に位置する第2吐出パルスの直前の第2接続成分の期間は、前記N個の第1吐出パルスのうち時系列で末尾に位置する第1吐出パルスの直前の第1接続成分の期間より長く、前記N個の第2吐出パルスのうち時系列で末尾に位置する第2吐出パルスより前の第2吐出パルスの直前の第2接続成分の期間は、前記N個の第1吐出パルスのうち時系列で末尾に位置する第1吐出パルスより前の第1吐出パルスの直前の第1接続成分の期間より短い。
液体の温度が上昇すると、液滴が吐出した後の残留振動の減衰率が低下する。そして、N個の第2吐出パルスによるN個の液滴の吐出速度のうち、最後に吐出されるインク滴の吐出速度が、N個の液滴が合体した液滴の着弾位置の精度に最も影響する。そこで、第2態様によれば、通常温度よりも液滴の温度が上昇した第2温度の状態では、第2駆動波形内の時系列で末尾に位置する接続成分の期間を長くすることで、N個の液滴が合体した液滴の着弾位置の精度の低下を抑制できる。一方で、第2態様によれば、第2駆動波形内の時系列で末尾以外に位置する第2接続成分の期間を短くすることにより、第2駆動波形の一周期の長さを、第1駆動波形の一周期の長さと同一にできる。
【0133】
第2態様の具体例である第3態様において、前記N個の第2吐出パルスのうち時系列で先頭に位置する第2吐出パルスの開始時点から時系列で末尾に位置する第2吐出パルスの終了時点までの期間は、前記N個の第1吐出パルスのうち時系列で先頭に位置する第1吐出パルスの開始時点から時系列で末尾に位置する第1吐出パルスの終了時点までの期間より短い。
第3態様によれば、時系列で先頭に位置する第2吐出パルスの開始時点から時系列で末尾に位置する第2吐出パルスの終了時点までの期間が、時系列で先頭に位置する第1吐出パルスの開始時点から時系列で末尾に位置する第1吐出パルスの終了時点までの期間より長い態様と比較して、第2駆動波形の次の周期のN個の第2吐出パルスによって吐出される液滴の吐出性能の低下を抑制できる。
【0134】
第2態様の具体例である第4態様において、前記N個の第2吐出パルスのうち時系列で先頭に位置する第2吐出パルスの開始時点から時系列で末尾に位置する第2吐出パルスの開始時点までの期間は、前記N個の第1吐出パルスのうち時系列で先頭に位置する第1吐出パルスの開始時点から時系列で末尾に位置する第1吐出パルスの開始時点までの期間より短い。
時系列で先頭に位置する第2吐出パルスの開始時点から時系列で末尾に位置する第2吐出パルスの開始時点までの期間が時系列で先頭に位置する第1吐出パルスの開始時点から時系列で末尾に位置する第1吐出パルスの開始時点までの期間より長い態様と比較して、時系列で末尾に位置する第2吐出パルスをより早く吐出することができ、時系列で末尾に位置する吐出パルスによる液滴を、先行して吐出された液滴に合体させやすくできる。
【0135】
第2態様の具体例である第5態様において、前記N個の第1吐出パルス及び前記N個の第2吐出パルスは、前記圧力室の体積を膨張させるように電位が変化する膨張要素と、膨張した前記圧力室の体積を収縮させて前記ノズルから液滴を吐出させる吐出要素と、前記ノズルから液滴を吐出させたあとに残存する前記圧力室内の液体の圧力振動を抑制させるように前記圧力室を収縮させる制振要素と、をそれぞれ含み、前記N個の第2吐出パルスの1周期の開始から1以上N以下の整数であるn1番目の第2吐出パルスの制振要素の単位時間当たりの電位変化量の絶対値は、前記N個の第1吐出パルスの1周期の開始から前記n1番目の第1吐出パルスの制振要素の前記単位時間当たりの電位変化量の絶対値より大きい。
第1実施形態によれば、n1番目の吐出パルスPLXの制振要素の電位変化がn1番目の第2吐出パルスの制振要素の電位変化より急峻である態様と比較して、第2温度時の第2吐出パルスによる残留振動を減衰できる。
【0136】
第2態様の具体例である第6態様において、前記N個の第1吐出パルス及び前記N個の第2吐出パルスは、前記圧力室の体積を膨張させるように電位が変化する膨張要素と、膨張した前記圧力室の体積を収縮させて前記ノズルから液滴を吐出させる吐出要素と、をそれぞれ含み、前記N個の第2吐出パルスのうち1周期の開始から1以上N-1以下の整数であるn2番目の第2吐出パルスの吐出要素の単位時間当たりの電位変化量の絶対値は、前記N個の第1吐出パルスの1周期の開始から前記n2番目の第1吐出パルスの吐出要素の前記単位時間当たりの電位変化量の絶対値より小さい。
第6態様によれば、n2番目の第2吐出パルスの吐出要素の電位変化がn2番目の第2吐出パルスの吐出要素の電位変化より急峻である態様と比較して、n2番目の第2吐出パルスによるインク滴とn2+1番目の第2吐出パルスによる液滴との合体が容易になり、且つ、n2番目の第2吐出パルスによる残留振動を小さくできる。
【0137】
第1態様の具体例である第7態様において、前記液体吐出ヘッドは、媒体に対して液滴を吐出し、前記第1駆動波形を前記駆動素子に供給することにより前記ノズルから吐出される前記N個の第1吐出パルスに1対1に対応するN個の液滴は、前記媒体に着弾するまでに合体する。
第7態様によれば、N個の液滴が合体しない態様と比較して、風紋の発生を抑制できて、媒体に形成される画像の質の低下を抑制できる。
【0138】
第7態様の具体例である第8態様において、前記N個の第1吐出パルスは、前記圧力室の体積を膨張させるように電位が変化する膨張要素と、膨張した前記圧力室の体積を収縮させて前記ノズルから液滴を吐出させる吐出要素と、をそれぞれ含み、前記N個の第1吐出パルスのうちの時系列で末尾に位置する第1吐出パルスの膨張要素の開始時点から吐出要素の開始時点までの期間と前記圧力室の固有振動周期の0.5倍との差の絶対値は、前記N個の第1吐出パルスのうち時系列で末尾以外に位置する第1吐出パルスの膨張要素の開始時点から吐出要素の開始時点までの期間と前記圧力室の固有振動周期の0.5倍との差の絶対値より小さい。
第8態様によれば、時系列で末尾に位置する第1吐出パルスによる液滴の吐出速度を、時系列で末尾以外に位置する第1吐出パルスによる液滴の吐出速度よりも高くすることにより、時系列で末尾に位置する第1吐出パルスによる液滴を、時系列で末尾以外に位置する第1吐出パルスによる液滴に合体させやすくできる。
【0139】
第7態様の具体例である第9態様において、前記N個の第1吐出パルスのそれぞれは、前記圧力室の体積を膨張させるように電位変化する膨張要素と、膨張した前記圧力室の体積を収縮させて前記ノズルから液滴を吐出させる吐出要素と、を含み、前記N個の第1吐出パルスのうち時系列で末尾に位置する第1吐出パルスの吐出要素の単位時間当たりの電位変化量の絶対値は、前記N個の第1吐出パルスのうち時系列で末尾以外に位置する第1吐出パルスの吐出要素の前記単位時間当たりの電位変化量の絶対値より大きい。
第9態様によれば、時系列で末尾以外に位置する第1吐出パルスの吐出要素の電位変化が時系列で末尾に位置する第1吐出パルスの吐出要素の電位変化より急峻である態様と比較して、時系列で末尾に位置する第1吐出パルスによる液滴を、時系列で末尾以外に位置する第1吐出パルスによる液滴に合体させやすくできる。
【0140】
好適な態様である第10態様に係る液体吐出方法は、液体を液滴として吐出するノズルと、前記ノズルに連通する圧力室と、駆動信号に応じて前記圧力室内の液体に圧力変動を与える駆動素子と、を有する吐出部を備えた液体吐出ヘッドと、前記駆動信号を生成する駆動信号生成部と、温度を計測する温度計測部と、前記駆動信号生成部を制御する制御部と、を備える液体吐出装置の液体吐出方法であって、前記制御部は、前記温度計測部から温度を示す温度情報を取得し、前記温度情報が第1温度を示す場合、前記駆動信号生成部に、前記駆動素子に供給される第1駆動波形を含む前記駆動信号を生成させ、前記第1駆動波形は、一周期内に、時系列に並ぶ3つ以上のN個の第1吐出パルスと、前記N個の第1吐出パルスの互いに隣り合う2つの第1吐出パルスを接続するN-1個の第1接続成分と、を含み、前記N個の第1吐出パルスのそれぞれは、前記ノズルから液滴を吐出させるように前記圧力室内の液体に圧力変動を与えるように電位が変化するパルスであり、前記N-1個の第1接続成分のそれぞれは、一定の電位を前記圧力室の固有振動周期の0.6倍以上の期間維持する成分である。
第10態様によれば、第1態様と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0141】
1…インクジェットプリンター、2…駆動信号生成回路、4…温度計測部、5…記憶部、6…制御部、7…搬送機構、8…移動機構、10,10A…切替回路、11,11A…接続状態指定回路、14…液体容器、81…無端ベルト、82…搬送体、310…振動板、320…圧力室、330…ノズルプレート、340…キャビティプレート、350…リザーバ、360…インク供給口、370…インク取入口、CH…チェンジ信号、CL…クロック信号、Com…駆動信号、D…吐出部、DR1…インク滴、DR12,DR123…合体滴、DR2,DR3…インク滴、DRa,DRb,DRc,DRd…合体滴、DX11,DX21,DX31,DY11,DY21,DY31…膨張要素、DX12,DX22,DX32,DY12,DY22,DY32…膨張電位維持要素、DX13,DX23,DX33,DY13,DY23,DY33…吐出要素、DX14,DX24,DX34,DY14,DY24,DY34…収縮電位維持要素、DX15,DX25,DX35,DY15,DY25,DY35…制振要素、DX36,DY36…制振電位維持要素、DX37,DY37…復帰要素、HD…記録ヘッド、HU,HUA…液体吐出ヘッド、Img…印刷データ、KT…温度情報、LAT…ラッチ信号、LHa…内部配線、LHb…給電線、Nz…ノズル、PLX1,PLX2,PLX3,PLY1,PLY2,PLY3…吐出パルス、PP…記録用紙、PX…第1駆動波形、PY…第2駆動波形、PZ…圧電素子、PlsC,PlsL…パルス、SCX1,SCX2,SCY1,SCY2…接続成分、SI,SIA…印刷信号、SLa,SLaA…接続状態指定信号、SWa…スイッチ、Sd,SdA…個別指定信号、TBL…波形指定信号管理テーブル、TX1,TX15,TX2,TX23,TX3,TX33,TXE,TXS,TY1,TY15,TY2,TY23,TY3,TYE,TYS…期間、Tc…固有振動周期、Tcu1,Tcu2,Tcu3…制御期間、Tu…記録期間、V0…中間電位、V1,V2…電位、VH…最高電位、VL…最低電位、Vbs…定電位、Vin…供給駆動信号、Zd…下部電極、Zm…圧電体、Zu…上部電極、dCom,dCom-PX,dCom-PY…波形指定信号、ΔVh…電位差。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12