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特開2024-123411近赤外線透過カバー及び近赤外線センサ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123411
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】近赤外線透過カバー及び近赤外線センサ
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/481 20060101AFI20240905BHJP
   G01S 17/931 20200101ALN20240905BHJP
【FI】
G01S7/481 A
G01S17/931
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030809
(22)【出願日】2023-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】平野 里彩
(72)【発明者】
【氏名】深川 鋼司
(72)【発明者】
【氏名】三宅 光一
(72)【発明者】
【氏名】浦住 兵庫
(72)【発明者】
【氏名】川口 滉
【テーマコード(参考)】
5J084
【Fターム(参考)】
5J084AA05
5J084AB01
5J084AB07
5J084AC02
5J084BA20
5J084BB40
5J084EA32
(57)【要約】
【課題】近赤外線が加飾層と被覆層との間の段差を透過する際に大きく屈折するのを抑制し、屈折に起因する近赤外線センサの検出精度の低下を抑制する。
【解決手段】近赤外線透過カバー20は、近赤外線センサを、近赤外線IRの送信方向における前方から覆うカバー本体部21を備える。カバー本体部21の骨格部分は、板状の基材本体部23を有する基材22により構成される。カバー本体部21は、基材本体部23、加飾層28、被覆層30及び反射抑制部ARを備える。加飾層28は、基材本体部23から送信方向における前方へ突出する。被覆層30は、加飾層28を覆った状態で基材本体部23に積層される。反射抑制部ARは、送信方向におけるカバー本体部21の最後部に位置し、かつ送信部から送信された近赤外線IRの反射を抑制する。加飾層28及び被覆層30は、互いの屈折率の差が0.03以下となる樹脂材料により形成される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め定められた角度範囲内で送信方向を変えながら近赤外線を乗物の外部へ送信する送信部と、前記外部の物体に当たって反射された前記近赤外線を受信する受信部とを備える近赤外線センサにおける前記送信部及び前記受信部を、前記送信方向における前方から覆い、かつ前記近赤外線の透過性を有するカバー本体部を備える近赤外線透過カバーであって、
前記カバー本体部の骨格部分は、板状の基材本体部を有する基材により構成され、
前記カバー本体部は、
前記基材本体部と、
前記基材本体部から前記送信方向における前方又は後方へ突出する加飾層と、
前記加飾層を覆った状態で前記基材本体部に積層された被覆層と、
前記送信方向における前記カバー本体部の最後部に位置し、かつ前記送信部から送信された前記近赤外線の反射を抑制する反射抑制部と、を備え、
前記加飾層は、前記基材の一部により構成、又は前記基材とは別の部材により構成され、
前記加飾層及び前記被覆層は、互いの屈折率の差が0.03以下となる樹脂材料により形成されている近赤外線透過カバー。
【請求項2】
前記カバー本体部は、前記送信部が前記近赤外線を前記角度範囲の中央部に向けて送信したときに、前記近赤外線が照射される部分を含む中間部と、前記中間部を取り囲む周辺部とを備え、
前記送信方向における前記周辺部の後面は、前記中間部の後面よりも後方に位置し、
前記周辺部の前記後面は、前記送信方向における前方へ膨らみ、かつ前記中間部から遠ざかるに従い、前記送信方向における後方に位置するように湾曲している請求項1に記載の近赤外線透過カバー。
【請求項3】
前記カバー本体部のうち、前記送信部から送信される前記近赤外線の入射角が40°未満の領域では、前記反射抑制部が第1反射抑制部により構成され、
前記カバー本体部のうち、前記入射角が40°以上の領域では、前記反射抑制部が、前記第1反射抑制部よりも多くの前記近赤外線の反射を抑制する第2反射抑制部により構成されている請求項1に記載の近赤外線透過カバー。
【請求項4】
前記カバー本体部の全ての構成部材は、隣り合う構成部材との屈折率の差が0.03以下となる樹脂材料により形成されている請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の近赤外線透過カバー。
【請求項5】
予め定められた角度範囲内で送信方向を変えながら近赤外線を乗物の外部へ送信する送信部と、前記外部の物体に当たって反射された前記近赤外線を受信する受信部と、前記送信方向における前端が開放され、かつ自身の内部に前記送信部及び前記受信部が配置されるケースと、前記送信部及び前記受信部を、前記送信方向における前方から覆う近赤外線透過カバーと、を備え、
前記近赤外線透過カバーは、前記送信方向における前記ケースの前側に配置される筒状の周壁部と、前記送信方向における前記周壁部の前端部に形成され、かつ前記近赤外線の透過性を有するカバー本体部とを備える近赤外線センサであって、
前記カバー本体部の骨格部分は、板状の基材本体部を有する基材により構成され、
前記カバー本体部は、
前記基材本体部と、
前記基材本体部から前記送信方向における前方又は後方へ突出する加飾層と、
前記加飾層を覆った状態で前記基材本体部に積層された被覆層と、
前記送信方向における前記カバー本体部の最後部に位置し、かつ前記送信部から送信された前記近赤外線の反射を抑制する反射抑制部と、を備え、
前記加飾層は、前記基材の一部により構成、又は前記基材とは別の部材により構成され、
前記加飾層及び前記被覆層は、互いの屈折率の差が0.03以下となる樹脂材料により形成されている近赤外線センサ。
【請求項6】
前記カバー本体部は、前記送信部が前記近赤外線を前記角度範囲の中央部に向けて送信したときに、前記近赤外線が照射される部分を含む中間部と、前記中間部を取り囲む周辺部とを備え、
前記送信方向における前記周辺部の後面は、前記中間部の後面よりも後方に位置し、
前記周辺部の前記後面は、前記送信方向における前方へ膨らみ、かつ前記中間部から遠ざかるに従い、前記送信方向における後方に位置するように湾曲している請求項5に記載の近赤外線センサ。
【請求項7】
前記カバー本体部のうち、前記送信部から送信される前記近赤外線の入射角が40°未満の領域では、前記反射抑制部が第1反射抑制部により構成され、
前記カバー本体部のうち、前記入射角が40°以上の領域では、前記反射抑制部が、前記第1反射抑制部よりも多くの前記近赤外線の反射を抑制する第2反射抑制部により構成されている請求項5に記載の近赤外線センサ。
【請求項8】
前記カバー本体部の全ての構成部材は、隣り合う構成部材との屈折率の差が0.03以下となる樹脂材料により形成されている請求項5~請求項7のいずれか1項に記載の近赤外線センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近赤外線透過カバー及び近赤外線センサに関する。
【背景技術】
【0002】
近赤外線センサ及び近赤外線透過カバーを備え、かつ車両に設置されるセンサモジュールが、例えば、特許文献1に記載されている。
近赤外線センサは、近赤外線を送信する送信部と、受信する受信部とを備える。近赤外線透過カバーは、近赤外線の透過性を有するカバー本体部を備える。カバー本体部は、近赤外線の送信方向における前方から上記送信部及び受信部を覆う。
【0003】
上記センサモジュールでは、送信部から近赤外線が車両の外部へ向けて送信される。送信された近赤外線はカバー本体部を透過する。車両の外部の物体に当たって反射された近赤外線は、カバー本体部を透過し、受信部で受信される。上記近赤外線センサでは、送信した近赤外線と受信した近赤外線とに基づき、車外の上記物体が認識されるとともに、車両と上記物体との距離、相対速度等が検出される。
【0004】
カバー本体部の骨格部分は、板状の基材本体部を有する基材により構成される。
カバー本体部としては、例えば、図18及び図19に示すものがある。図18に示すカバー本体部81は、上記送信方向における後面83が平坦な面によって構成された基材本体部82と、上記送信方向における基材本体部82の後側に形成された加飾層84とを備える。加飾層84は、例えば、基材本体部82の後面83の全面に塗料を塗布することによって形成される。
【0005】
図19に示すカバー本体部91は、上記送信方向における前面93が平坦な面によって構成された基材本体部92と、基材本体部92から上記送信方向における前方へ突出する加飾層94と、加飾層94を覆う被覆層95とを備える。加飾層94は、例えば、基材本体部92の前面93の一部に塗料を塗布することによって形成される。被覆層95は、例えば、樹脂成形されることにより、加飾層94を覆った状態で基材本体部92に積層される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-67291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記図18に示すカバー本体部81では、基材本体部82と加飾層84とが、互いの平坦な面を介して隣り合っている。カバー本体部81のうち、近赤外線IRが透過する領域には、基材本体部82に対し傾斜した部分(段差)が生じにくい。そのため、近赤外線センサの送信部から送信された近赤外線IRは、途中で屈折しにくく、真っ直ぐカバー本体部81を透過しやすい。
【0008】
これに対し、上記図19に示すカバー本体部91では、加飾層94の周辺部94Pと、被覆層95のうち、上記周辺部94Pを覆っている部分との境界に、基材本体部92に対し傾斜した部分(段差)が生ずる。加飾層94の材料と被覆層95の材料との組み合わせによっては、近赤外線IRが上記段差を透過する際に大きく屈折する場合がある。この場合、近赤外線センサが車外の物体を検出する際に、近赤外線IRが屈折した箇所では、物体の位置を正確に検出することが困難になるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための近赤外線透過カバー及び近赤外線センサの各態様を記載する。
[態様1]予め定められた角度範囲内で送信方向を変えながら近赤外線を乗物の外部へ送信する送信部と、前記外部の物体に当たって反射された前記近赤外線を受信する受信部とを備える近赤外線センサにおける前記送信部及び前記受信部を、前記送信方向における前方から覆い、かつ前記近赤外線の透過性を有するカバー本体部を備える近赤外線透過カバーであって、前記カバー本体部の骨格部分は、板状の基材本体部を有する基材により構成され、前記カバー本体部は、前記基材本体部と、前記基材本体部から前記送信方向における前方又は後方へ突出する加飾層と、前記加飾層を覆った状態で前記基材本体部に積層された被覆層と、前記送信方向における前記カバー本体部の最後部に位置し、かつ前記送信部から送信された前記近赤外線の反射を抑制する反射抑制部と、を備え、前記加飾層は、前記基材の一部により構成、又は前記基材とは別の部材により構成され、前記加飾層及び前記被覆層は、互いの屈折率の差が0.03以下となる樹脂材料により形成されている近赤外線透過カバー。
【0010】
[態様5]予め定められた角度範囲内で送信方向を変えながら近赤外線を乗物の外部へ送信する送信部と、前記外部の物体に当たって反射された前記近赤外線を受信する受信部と、前記送信方向における前端が開放され、かつ自身の内部に前記送信部及び前記受信部が配置されるケースと、前記送信部及び前記受信部を、前記送信方向における前方から覆う近赤外線透過カバーと、を備え、前記近赤外線透過カバーは、前記送信方向における前記ケースの前側に配置される筒状の周壁部と、前記送信方向における前記周壁部の前端部に形成され、かつ前記近赤外線の透過性を有するカバー本体部とを備える近赤外線センサであって、前記カバー本体部の骨格部分は、板状の基材本体部を有する基材により構成され、前記カバー本体部は、前記基材本体部と、前記基材本体部から前記送信方向における前方又は後方へ突出する加飾層と、前記加飾層を覆った状態で前記基材本体部に積層された被覆層と、前記送信方向における前記カバー本体部の最後部に位置し、かつ前記送信部から送信された前記近赤外線の反射を抑制する反射抑制部と、を備え、前記加飾層は、前記基材の一部により構成、又は前記基材とは別の部材により構成され、前記加飾層及び前記被覆層は、互いの屈折率の差が0.03以下となる樹脂材料により形成されている近赤外線センサ。
【0011】
上記[態様1]の構成を有する近赤外線透過カバー、及び上記[態様5]の構成を有する近赤外線センサは、互いに同様の作用を奏する。
近赤外線センサの送信部から、予め定められた角度範囲で送信方向を変えながら近赤外線が送信されると、その近赤外線はカバー本体部に照射される。上記送信方向におけるカバー本体部の最後部には反射抑制部が位置する。そのため、上記のように照射された近赤外線は、反射されることを反射抑制部によって抑制される。この抑制の分、反射抑制部を透過する近赤外線の量が多くなる。反射抑制部を透過した近赤外線は、カバー本体部のうち、反射抑制部よりも前方部分を透過する。カバー本体部を透過した近赤外線は、乗物の外部の物体に当たって反射された後、再びカバー本体部を透過する。カバー本体部を透過した近赤外線は、受信部によって受信される。近赤外線センサでは、送信した近赤外線と受信した近赤外線とに基づき、上記物体の位置(角度)が検出される。
【0012】
ここで、加飾層の周辺部と、被覆層のうち、上記周辺部を覆っている部分との境界には、基材本体部に対し傾斜した部分(段差)が生ずる。しかし、加飾層及び被覆層は、互いの屈折率の差が0.03以下となる樹脂材料により形成されている。そのため、近赤外線は、上記段差を透過する際に、加飾層及び被覆層の境界で屈折しにくい。近赤外線センサは、段差を透過した近赤外線によっても、段差とは異なる箇所を透過した近赤外線と同様に、上記物体の位置(角度)を精度よく検出することが可能となる。
【0013】
[態様2]前記カバー本体部は、前記送信部が前記近赤外線を前記角度範囲の中央部に向けて送信したときに、前記近赤外線が照射される部分を含む中間部と、前記中間部を取り囲む周辺部とを備え、前記送信方向における前記周辺部の後面は、前記中間部の後面よりも後方に位置し、前記周辺部の前記後面は、前記送信方向における前方へ膨らみ、かつ前記中間部から遠ざかるに従い、前記送信方向における後方に位置するように湾曲している[態様1]に記載の近赤外線透過カバー。
【0014】
[態様6]前記カバー本体部は、前記送信部が前記近赤外線を前記角度範囲の中央部に向けて送信したときに、前記近赤外線が照射される部分を含む中間部と、前記中間部を取り囲む周辺部とを備え、前記送信方向における前記周辺部の後面は、前記中間部の後面よりも後方に位置し、前記周辺部の前記後面は、前記送信方向における前方へ膨らみ、かつ前記中間部から遠ざかるに従い、前記送信方向における後方に位置するように湾曲している[態様5]に記載の近赤外線センサ。
【0015】
上記[態様2]の構成を有する近赤外線透過カバー、及び上記[態様6]の構成を有する近赤外線センサは、互いに同様の作用を奏する。
ここで、送信部から送信されて、送信方向におけるカバー本体部の後面に入射する近赤外線が、同後面における法線となす角度を入射角とする。入射角が大きくなるに従い、上記後面で反射する近赤外線が多くなる。それに伴い、カバー本体部を透過する近赤外線が少なくなる。
【0016】
送信部による近赤外線の送信方向は、角度範囲内で変化する。
ここで、近赤外線の送信方向のうち、角度範囲の中央部に向かう方向を、中央送信方向とする。近赤外線が中央送信方向に送信された場合には、その近赤外線は、送信方向における中間部の後面に照射される。送信方向における中間部の後面のうち、近赤外線が照射される上記の箇所を、中央照射箇所とする。
【0017】
中央照射箇所における法線は、中央送信方向に沿って延びる。そのため、上記中央照射箇所では近赤外線の入射角が小さく、反射する近赤外線が少ない。
送信方向におけるカバー本体部の後面のうち、近赤外線が照射される箇所が上記中央照射箇所から遠ざかるに従い、その近赤外線の送信方向が中央送信方向に対しなす角度が大きくなる。
【0018】
そのため、仮に、送信方向におけるカバー本体部の後面のうち上記中央照射箇所とは異なる箇所でも法線が、同中央照射箇所での法線に沿う方向へ延びていると、中央照射箇所から遠ざかるに従い、入射角が大きくなり、反射する近赤外線が多くなる。
【0019】
一方、カバー本体部では、中間部が周辺部によって取り囲まれている。送信方向における周辺部の後面は、上記中央照射箇所から大きく離れている。
この点、上記の構成によれば、送信方向における周辺部の後面が、中間部の後面よりも後方に位置する。しかも、周辺部の後面は、送信方向における前方へ膨らみ、かつ中間部から遠ざかるに従い、送信方向における後方に位置するように湾曲している。そのため、送信方向における周辺部の後面のいずれの箇所でも、法線は、送信方向に沿う方向へ延びる。従って、送信方向における周辺部の後面のいずれの箇所でも、近赤外線の入射角が小さくなり。送信方向における周辺部の後面で反射される近赤外線が少なくなり、同周辺部を透過する近赤外線が多くなる。その結果、近赤外線センサの検出精度がより向上する。
【0020】
[態様3]前記カバー本体部のうち、前記送信部から送信される前記近赤外線の入射角が40°未満の領域では、前記反射抑制部が第1反射抑制部により構成され、前記カバー本体部のうち、前記入射角が40°以上の領域では、前記反射抑制部が、前記第1反射抑制部よりも多くの前記近赤外線の反射を抑制する第2反射抑制部により構成されている[態様1]に記載の近赤外線透過カバー。
【0021】
[態様7]前記カバー本体部のうち、前記送信部から送信される前記近赤外線の入射角が40°未満の領域では、前記反射抑制部が第1反射抑制部により構成され、前記カバー本体部のうち、前記入射角が40°以上の領域では、前記反射抑制部が、前記第1反射抑制部よりも多くの前記近赤外線の反射を抑制する第2反射抑制部により構成されている[態様5]に記載の近赤外線センサ。
【0022】
上記[態様3]の構成を有する近赤外線透過カバー、及び上記[態様7]の構成を有する近赤外線センサは、互いに同様の作用を奏する。
ここで、近赤外線の入射角が大きくなるに従い、送信方向におけるカバー本体部の後面で反射する近赤外線が多くなる。それに伴い、カバー本体部を透過する近赤外線が少なくなる。
【0023】
一方、解析によると、送信部から送信されて、送信方向におけるカバー本体部の後面に照射される近赤外線の入射角が40°以上になると、40°未満の場合よりも透過率が低下することがわかっている。
【0024】
カバー本体部の最後部を構成する反射抑制部では、照射された近赤外線の反射が抑制される。反射が抑制される分、カバー本体部を透過する近赤外線が多くなる。
カバー本体部のうち、入射角が40°未満の領域では、近赤外線の反射が第1反射抑制部によって抑制される。40°以上の領域では、近赤外線の反射が第2反射抑制部によって抑制される。第2反射抑制部は、第1反射抑制部よりも多くの近赤外線の反射を抑制する。
【0025】
従って、入射角が40°以上の領域で反射される近赤外線が少なくなり、透過する近赤外線が多くなる。その結果、近赤外線センサの検出精度がより向上する。
[態様4]前記カバー本体部の全ての構成部材は、隣り合う構成部材との屈折率の差が0.03以下となる樹脂材料により形成されている[態様1]~[態様3]のいずれか1つに記載の近赤外線透過カバー。
【0026】
[態様8]前記カバー本体部の全ての構成部材は、隣り合う構成部材との屈折率の差が0.03以下となる樹脂材料により形成されている[態様5]~[態様7]のいずれか1つに記載の近赤外線センサ。
【0027】
上記[態様4]の構成を有する近赤外線透過カバー、及び上記[態様8]の構成を有する近赤外線センサは、互いに同様の作用を奏する。
近赤外線センサの送信部から送信された近赤外線は、カバー本体部を透過する際、同カバー本体部の全ての構成部材と、その構成部材に対し隣り合う構成部材との境界で屈折しにくい。そのため、加飾層及び被覆層のみが、互いの屈折率の差が0.03以下となる樹脂材料により形成されている場合に比べ、近赤外線センサの検出精度を向上させることが可能である。
【発明の効果】
【0028】
上記近赤外線透過カバー及び近赤外線センサによれば、近赤外線が加飾層と被覆層との間の段差を透過する際に大きく屈折するのを抑制し、屈折に起因する近赤外線センサの検出精度の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】第1実施形態におけるセンサモジュールを示す断面図である。
図2】第1実施形態の近赤外線透過カバーにおけるカバー本体部の層構成を示す部分断面図である。
図3】第1実施形態における反射抑制部の一部を拡大して示す部分断面図である。
図4】第2実施形態における反射抑制部の一部を拡大して示す部分断面図である。
図5】第2実施形態における反射抑制部の一部を拡大して示す部分背面図である。
図6】第3実施形態における反射抑制部の一部を拡大して示す部分断面図である。
図7】第3実施形態における反射抑制部の一部を拡大して示す部分背面図である。
図8】第4実施形態における反射抑制部の一部を拡大して示す部分斜視図である。
図9図8の9-9線断面図である。
図10図8の10-10線断面図である。
図11】第5実施形態の近赤外線透過カバーにおけるカバー本体部の断面図である。
図12】第6実施形態の近赤外線透過カバーにおけるカバー本体部の断面図である。
図13】第7実施形態の近赤外線透過カバーにおけるカバー本体部の層構成を示す部分断面図である。
図14】第8実施形態の近赤外線透過カバーにおけるカバー本体部の層構成を示す部分断面図である。
図15】第9実施形態における近赤外線センサの断面図である。
図16】第10実施形態における近赤外線センサの断面図である。
図17】第11実施形態の近赤外線透過カバーにおけるカバー本体部の断面図である。
図18】従来の近赤外線透過カバーにおけるカバー本体部の部分断面図である。
図19】同じく、従来の近赤外線透過カバーにおけるカバー本体部の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(第1実施形態)
以下、本発明を車両用のセンサモジュールに具体化した第1実施形態について、図1図3を参照して説明する。
【0031】
なお、以下の記載に関し、車両10の前進方向を前方とし、後進方向を後方として説明する。また、上下方向は車両10の上下方向を意味し、左右方向は車幅方向であって車両10の前進時の左右方向と一致するものとする。
【0032】
図1及び図2に示すように、車両10には、近赤外線センサ12及び近赤外線透過カバー20を備えるセンサモジュール11が搭載されている。なお、図2及び図3では、近赤外線透過カバー20におけるカバー本体部21の各部を認識可能な大きさとするために、縮尺を適宜変更して各部を示している。この点は、他の実施形態を示す図12図14についても同様であり、また、従来技術を示す図18及び図19についても同様である。
【0033】
次に、センサモジュール11を構成する各部について説明する。
<近赤外線センサ12>
図1に示すように、車両10の前端部には、前方監視用の近赤外線センサ12が設置されている。
【0034】
近赤外線センサ12の外殻部分の後半部は、前端が開放されたケース13によって構成され、前半部分はカバー16によって構成されている。ケース13の内部には、近赤外線IRの送信部14及び受信部15が配置されている。送信部14は、予め定められた角度範囲内で送信方向を変えながら、900nm付近の波長を有する近赤外線IRを車両10の外部へ向けて送信する。受信部15は、先行車両、歩行者等を含む車外の物体に当たって反射された近赤外線IRを受信する。
【0035】
なお、上述したように、近赤外線センサ12が車両10の前方に向けて近赤外線IRを送信することから、近赤外線センサ12による近赤外線IRの送信方向は、車両10の後方から前方へ向かう方向である。近赤外線IRの送信方向における前方は、車両10の前方と概ね合致し、同送信方向における後方は車両10の後方と概ね合致する。そのため、以後の記載では、近赤外線IRの送信方向における前方を単に「前方」、「前」等といい、同送信方向における後方を単に「後方」、「後」等というものとする。
【0036】
カバー16は、ケース13の前側に配置されて、送信部14及び受信部15を前方から覆っている。
<近赤外線透過カバー20>
近赤外線透過カバー20は、近赤外線センサ12とは別に設けられている。
【0037】
図1及び図2に示すように、近赤外線透過カバー20の骨格部分は、近赤外線IRの透過性を有する板状のカバー本体部21によって構成されている。カバー本体部21は、近赤外線センサ12の前方に配置されることにより、送信部14及び受信部15を、前方からカバー16を介して間接的に覆っている。ここでは、カバー本体部21の全体は、前方へ膨らむように緩やかに湾曲している。
【0038】
近赤外線透過カバー20は、上記カバー本体部21のほかにも取り付け部(図示略)を備えており、この取り付け部において、ねじ締結、爪嵌合等によって、車体(図示略)に取り付けられている。
【0039】
近赤外線透過カバー20は、送信部14及び受信部15を前方から覆うことで、近赤外線センサ12を衝撃等から保護する機能を有するほかに、車両10の前部を装飾するガーニッシュとしての機能も有している。
【0040】
図2に示すように、カバー本体部21の骨格部分は、板状の基材本体部23を有する基材22によって構成されている。基材22は、PC(ポリカーボネート)樹脂によって形成されているが、PMMA(ポリメチルメタクリレート)樹脂等のアクリル樹脂によって形成されてもよい。
【0041】
カバー本体部21は、上記基材本体部23、加飾層28、被覆層30、反射抑制部AR及びハードコート層35を備えている。基材本体部23の前面24は、単一の平坦な面によって構成されている。ここでの平坦な面とは、凹凸を有していない面を指し、平面に限らず、全体として緩やかに湾曲した面も含まれる。
【0042】
加飾層28は、基材22とは別の部材により構成されており、基材本体部23から前方へ突出している。第1実施形態では、加飾層28は、有色の塗膜層によって構成されている。加飾層28は、塗料を基材本体部23の前面24の一部に塗布することによって形成されている。
【0043】
被覆層30は、樹脂成形することによって形成されており、加飾層28を覆った状態で基材本体部23に対し、前側から積層されている。被覆層30の前面31は、単一の平坦な面によって構成されている。
【0044】
ここで、加飾層28が塗装によって形成される際に、いわゆる塗装の垂れが生ずるため、加飾層28を断面矩形状に形成することは困難である。加飾層28の周辺部28Pは、上記塗装の垂れにより、基材本体部23の前面24に対し傾斜する。被覆層30は、加飾層28及び基材本体部23に対し隣り合う。被覆層30のうち、上記周辺部28Pとの境界も、上記前面24に対し傾斜する。
【0045】
加飾層28及び被覆層30は、互いの屈折率の差が0.03以下となる樹脂材料により形成されている。屈折率の差の最小値は0である。加飾層28及び被覆層30が、互いに同一種類の樹脂材料によって形成された場合に、屈折率の差が0となる。
【0046】
屈折率は、物質中の光(ここでは近赤外線IR)の伝播に関して基本となる物理量であり、「空気中の光の伝播速度/物質中の光の伝播速度」で表される。光の伝播速度が物質により異なるため、屈折率も物質により異なる。
【0047】
上記樹脂材料としては、例えば、アクリル系樹脂及びアクリル系樹脂の組み合わせ、エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂の組み合わせ、アクリル系樹脂及びエポキシ樹脂の組み合わせ等が挙げられる。
【0048】
図2及び図3に示すように、反射抑制部ARは、カバー本体部21の最後部に位置している。反射抑制部ARは、送信部14から送信された近赤外線IRの反射を同近赤外線IRの干渉により低減し、反射が原因でカバー本体部21を透過する近赤外線IRの量が少なくなるのを抑制する機能を担っている。
【0049】
第1実施形態では、反射抑制部ARは、それぞれ薄膜からなる複数の反射抑制層33が、基材本体部23の後面25に積層されることによって形成されている。各反射抑制層33は、真空蒸着、スパッタリング、WETコーティング等によって形成されている。複数の反射抑制層33としては、屈折率や厚みが互いに異なるものが用いられてもよい。このようにすると、各反射抑制層33で反射される近赤外線IRの位相を異ならせることができる。広範囲での波長について、近赤外線IRの反射を低減できる。なお、反射抑制部ARは単一の反射抑制層33によって構成されてもよい。
【0050】
反射抑制層33は、基材本体部23の後面25の全面を対象として積層されている。この積層の対象となる面には、近赤外線IRが照射される領域が含まれている。反射抑制部ARの後面34は、カバー本体部21の後面を構成している。
【0051】
図2に示すように、ハードコート層35は、被覆層30の前面31に積層されている。ハードコート層35は、被覆層30よりも高い硬度を有するとともに、近赤外線IRの透過性を有している。ハードコート層35の前面36は、カバー本体部21の前面を構成している。
【0052】
なお、カバー本体部21の構成部材中、基材本体部23はミリメートル(mm)オーダーの厚み、例えば、2~4mm程度の厚みを有している。加飾層28、被覆層30及びハードコート層35は、マイクロメートル(ミクロンμm)オーダーの厚みを有している。反射抑制部ARは、ナノメートル(nm)オーダーの厚みを有している。
【0053】
さらに、第1実施形態では、カバー本体部21の全ての構成部材が、隣り合う構成部材との屈折率の差が0.03以下となる樹脂材料により形成されている。
次に、第1実施形態の作用について説明する。
【0054】
近赤外線センサ12の送信部14から、予め定められた角度範囲で送信方向を変えながら近赤外線IRが送信されると、その近赤外線IRは、カバー本体部21に対し後方から照射される。カバー本体部21の最後部には反射抑制部ARが位置する。そのため、上記のように照射された近赤外線IRは、反射されることを反射抑制部ARによって抑制される。この抑制の分、反射抑制部ARを透過する近赤外線IRの量が多くなる。
【0055】
反射抑制部ARを透過した近赤外線IRは、カバー本体部21のうち、反射抑制部ARよりも前方部分を透過する。カバー本体部21を透過した近赤外線IRは、車外の物体、例えば、先行車両、歩行者等に当たって反射された後、再びカバー本体部21を透過する。カバー本体部21を透過した近赤外線IRは、受信部15によって受信される。近赤外線センサ12では、送信した近赤外線IRと受信した近赤外線IRとに基づき、上記物体の認識や、車両10と同物体との距離、相対速度等の検出が行われる。上記認識には、物体の位置(角度)の検出が含まれる。
【0056】
ここで、加飾層28の周辺部28Pと、被覆層30のうち、上記周辺部28Pを覆っている部分との境界には、基材本体部23の前面24に対し傾斜した部分(段差)が生ずる。しかし、加飾層28及び被覆層30の屈折率の差は0.03以下と小さい。そのため、近赤外線IRは、上記段差を透過する際に、加飾層28及び被覆層30の境界で屈折しにくい。
【0057】
また、カバー本体部21の各構成部材と、その構成部材に対し隣り合う構成部材との屈折率の差も0.03以下と小さい。そのため、送信部14から送信された近赤外線IRが、カバー本体部21を透過する際、隣り合う構成部材の境界で屈折しにくい。
【0058】
カバー本体部21に対し前方から可視光が照射されると、その可視光の一部は、ハードコート層35及び被覆層30を透過し、加飾層28で反射又は吸収される。車両10の前方から近赤外線透過カバー20を見ると、ハードコート層35及び被覆層30を通して、その被覆層30の後側(奥側)であって基材本体部23の前側(手前側)に、有色の加飾層28が位置するように見える。
【0059】
さらに、カバー本体部21の最前部を構成するハードコート層35は、カバー本体部21の耐衝撃性を高める。また、ハードコート層35は、カバー本体部21の耐候性を高める。
【0060】
次に、第1実施形態の効果について説明する。
(1-1)第1実施形態では、屈折率の差(0.03以下)を考慮した樹脂材料によって、加飾層28及び被覆層30が形成されている。そのため、加飾層28の周辺部28Pと被覆層30との境界(段差)で近赤外線IRが屈折するのを抑制できる。近赤外線センサ12は、段差を透過した近赤外線IRによっても、段差とは異なる箇所を透過した近赤外線IRと同様に、車外の物体の位置(角度)を精度よく検出することができる。
【0061】
ここで、段差とは異なる箇所を透過した近赤外線IRのみによって物体の角度を検出する場合を比較対象とする。段差を透過した近赤外線IRによって物体の角度を検出した場合、解析によると、上記比較対象に対する検出誤差を0.1°以内に抑えることができる。
【0062】
(1-2)第1実施形態では、上述した加飾層28及び被覆層30を含め、カバー本体部21の全ての構成部材が、隣り合う構成部材との屈折率の差が0.03以下となる樹脂材料により形成されている。
【0063】
そのため、加飾層28及び被覆層30のみが、互いの屈折率の差が0.03以下となる樹脂材料により形成されている場合に比べ、近赤外線センサ12の検出精度を向上できる。
【0064】
(1-3)第1実施形態では、カバー本体部21の最後部を反射抑制部AR(反射抑制層33)によって構成している。そのため、カバー本体部21で反射される近赤外線IRを少なくし、同カバー本体部21を透過する近赤外線IRを多くすることができる。カバー本体部21が近赤外線IRの透過の妨げとなるのを抑制し、カバー本体部21を透過する際に減衰される近赤外線IRの量を許容範囲にとどめることができる。従って、近赤外線センサ12は、上記検出機能等を発揮しやすい。
【0065】
(1-4)第1実施形態では、基材本体部23の前面24に、同基材本体部23から前方へ突出する加飾層28を形成している。そのため、加飾層28によって近赤外線透過カバー20を装飾し、同近赤外線透過カバー20及びその周辺部分の外観を向上できる。
【0066】
(1-5)第1実施形態では、カバー本体部21に飛び石等により傷が付くのをハードコート層35によって抑制できる。また、太陽光、風雨、温度変化等が原因で、カバー本体部21が変質したり劣化したりするのをハードコート層35によって抑制できる。この点でも、近赤外線センサ12は、物体の位置検出機能や、上記距離、相対速度等の検出機能を発揮しやすい。
【0067】
(第2実施形態)
次に、本発明を車両用のセンサモジュールに具体化した第2実施形態について、図4及び図5を参照して説明する。第2実施形態では、反射抑制部ARが、凹凸形状をなす反射抑制構造部41によって構成されている。反射抑制構造部41は、基材本体部23の後部に形成されている。
【0068】
反射抑制構造部41は、互いに同一の断面形状を有する複数の微細な突条部42によって構成されている。各突条部42の断面形状は直角三角形である。複数の突条部42は、互いに上下方向に隣り合った状態で、左右方向(車幅方向)へ平行に延びている。各突条部42の底部から頂部までの高さH1は、同突条部42の延びる方向に一定である。隣り合う突条部42間の空間は、断面三角形状をなす微細な溝部43となっている。突条部42及び溝部43の組合せが、同突条部42の配列方向(ここでは上下方向)に繰り返されている。この繰り返しにより、微細な凹凸形状をなすモスアイ(Moth-eye:蛾の目)構造を有する反射抑制構造部41が構成されている。モスアイ構造は、蛾の目の表面に見られるような、光線(この場合、近赤外線IR)の波長よりも短い平均周期を有する凹凸構造である。各突条部42は、近赤外線IRの送信方向に対し傾斜して近赤外線IRを反射する反射抑制面44を有している。各突条部42の高さH1と、突条部42の配列方向における同突条部42の底部の寸法A1とは、それぞれ近赤外線IRの波長の半分よりも小さな値に設定されている。
【0069】
反射抑制構造部41の断面は、全体として三角波状(のこぎり歯状)をなしている。
上記以外の構成は、第1実施形態と同様である。そのため、第2実施形態において第1実施形態で説明したものと同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0070】
次に、第2実施形態の作用について説明する。
第2実施形態では、反射抑制構造部41が、モスアイ構造による反射抑制機能を発揮する。そのため、送信部14から送信された近赤外線IRは、反射抑制構造部41に照射される。この際、近赤外線IRは、反射されることを反射抑制面44によって抑制される。すなわち、モスアイ構造により、各突条部42の頂部から底部にかけて連続的に擬似的な屈折率が変化していくことで、反射抑制構造部41での近赤外線IRの反射が効果的に抑制される。
【0071】
上記反射抑制構造部41による近赤外線IRの反射抑制の分、反射抑制構造部41を透過する近赤外線IRの量が多くなる。
従って、第2実施形態によると、反射抑制部ARの構成が第1実施形態と異なるものの、近赤外線IRの反射を抑制することで、近赤外線IRの減衰を抑制できる点で、第1実施形態と共通する。そのため、第2実施形態によると、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。そのほかにも第2実施形態では、次の効果が得られる。
【0072】
(2-1)センサモジュール11(近赤外線透過カバー20)が車両10の前部に設けられる第2実施形態にあって、各突条部42に平行な方向が車幅方向とされている。そのため、各突条部42に平行な方向が垂直方向とされる場合に比べ、角度依存性が低く、より広角で、広い範囲の近赤外線IRを検出できる。
【0073】
(第3実施形態)
次に、本発明を車両用のセンサモジュールに具体化した第3実施形態について、図6及び図7を参照して説明する。第3実施形態では、反射抑制構造部51が複数の角錐状の突部52によって構成されている。
【0074】
複数の突部52は、それぞれ四角錐状をなしている。複数の突部52は、同突部52において隣り合い、かつ互いに直交する2つの底辺53,54に沿って配列されている。各突部52は、二等辺三角形の断面を有するとともに、上記送信方向に対し傾斜する反射抑制面55を備えている。各突部52の底部から頂部までの高さH2と、底辺53の長さL1と、底辺54の長さL2とは、それぞれ近赤外線IRの波長の半分よりも小さな値に設定されている。
【0075】
上記以外の構成は、第2実施形態と同様である。そのため、第3実施形態において第2実施形態で説明したものと同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
次に、第3実施形態の作用について説明する。
【0076】
第3実施形態でも、第2実施形態と同様に、反射抑制構造部51が、モスアイ構造による反射抑制機能を発揮する。そのため、送信部14から送信された近赤外線IRが反射抑制構造部51に照射されると、その近赤外線IRは、反射されることを反射抑制面55によって抑制される。すなわち、モスアイ構造により、突部52の頂部(頂点)から底部にかけて連続的に擬似的な屈折率が変化していくことで、反射抑制構造部51での近赤外線IRの反射が効果的に抑制される。上記反射抑制構造部51による近赤外線IRの反射抑制の分、カバー本体部21を透過する近赤外線IRの量が多くなる。
【0077】
従って、第3実施形態でも、第2実施形態と同様の効果が得られる。そのほかにも第3実施形態では、次の効果が得られる。
(3-1)第3実施形態では、各突部52が角錐状をなしているため、第2実施形態よりも多くの方向に対する近赤外線IRの反射を抑制できる。すなわち、入射される近赤外線IRの角度依存に対応できる。
【0078】
(第4実施形態)
次に、本発明を車両用のセンサモジュールに具体化した第4実施形態について、図8図10を参照して説明する。
【0079】
第4実施形態では、反射抑制部ARが、第2実施形態の反射抑制構造部41とは異なる形態を有している。
各突条部42は、二等辺三角形の断面形状を有している(図10参照)。各突条部42には、同突条部42の頂部から底部に向けて円弧状に凹み、かつ同突条部42の延びる方向に深さが変化する複数の凹部61が、同突条部42の延びる方向に繋がった状態で形成されている(図8図9参照)。すなわち、隣り合う凹部61は、最も浅い箇所、表現を変えると、突条部42が最も高い箇所(底部から最も遠い箇所)で繋がっている。各突条部42は、近赤外線IRの送信方向に対し傾斜して近赤外線IRを反射する反射抑制面44を備えている(図10参照)。
【0080】
各突条部42の底部から頂部までの高さH1は、同突条部42の延びる方向に異なっている。各突条部42の底部から頂部の最も高い箇所までの高さH1と、突条部42の配列方向における同突条部42の底部の寸法A1とは、それぞれ近赤外線IRの波長の半分よりも小さな値に設定されている。
【0081】
上記以外の構成は、第2実施形態と同様である。そのため、第4実施形態において第2実施形態で説明したものと同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
次に、第4実施形態の作用について説明する。
【0082】
円弧状をなす複数の凹部61が、突条部42の延びる方向に繋がった状態で形成されている第4実施形態でも、第2実施形態と同様、反射抑制構造部41がモスアイ構造による反射抑制機能を発揮する。すなわち、モスアイ構造により、各突条部42の頂部から底部にかけて連続的に擬似的な屈折率が変化していくことで、近赤外線IRの反射が効果的に抑制される。従って、第4実施形態によっても第2実施形態と同様の効果が得られる。
【0083】
(第5実施形態)
次に、本発明を車両用のセンサモジュールに具体化した第5実施形態について、図11を参照して説明する。
【0084】
なお、図11では、カバー本体部21が単一の層によって構成されているように図示されているが、第1実施形態における近赤外線透過カバー20のカバー本体部21と同様の層構成を有している。複数の層は、上記図2に示すように、前後方向における中間部分に位置する基材本体部23と、それよりも前側に積層された加飾層28、被覆層30及びハードコート層35と、カバー本体部21の最後部に位置する反射抑制部ARとによって構成される。この点は、図15(第9実施形態)、図16(第10実施形態),及び図17(第11実施形態)についても同様である。
【0085】
図11に示すように、第5実施形態では、カバー本体部21が中間部21M及び周辺部21Pを備えている。中間部21Mは、送信部14が近赤外線IRを角度範囲の中央部に向けて送信したときに、その近赤外線IRが照射される部分を含んでいる。周辺部21Pは、カバー本体部21のうち、中間部21Mを取り囲んでいる部分である。
【0086】
周辺部21Pは、中間部21Mよりも後方に位置している。周辺部21Pは、前方へ膨らみ、かつ中間部21Mから遠ざかるに従い、後方に位置するように湾曲している。カバー本体部21が、このような形状をなしているのは、同カバー本体部21の厚みの大部分を占める基材本体部23が、同様の形状に形成されているからである。加飾層28、被覆層30、ハードコート層35及び反射抑制部ARのそれぞれの厚みは、基材本体部23の厚みに比べると極端に小さい。加飾層28、被覆層30、ハードコート層35及び反射抑制部ARは、それぞれ基材本体部23に沿う形状に形成されている。
【0087】
従って、カバー本体部21における周辺部21Pの後面34Pは、中間部21Mの後面34Mよりも後方に位置している。上記後面34Pは、前方へ膨らみ、かつ中間部21Mから遠ざかるに従い、後方に位置するように湾曲している。
【0088】
同様に、周辺部21Pの前面36Pは、中間部21Mの前面36Mよりも後方に位置している。上記前面36Pは、前方へ膨らみ、かつ中間部21Mから遠ざかるに従い、後方に位置するように湾曲している。
【0089】
上記以外の構成は、第1実施形態と同様である。そのため、第5実施形態において第1実施形態で説明したものと同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
次に、第5実施形態の作用について、第1実施形態の作用との相違点を中心に説明する。
【0090】
ここで、送信部14から送信されて、カバー本体部21の後面34に入射する近赤外線IRが、同後面34における法線NLとなす角度を入射角αとする。入射角αが大きくなるに従い、上記後面34で反射する近赤外線IRが多くなる。それに伴い、カバー本体部21を透過する近赤外線IRが少なくなる。
【0091】
送信部14による近赤外線IRの送信方向は、上記角度範囲内で変化する。
ここで、近赤外線IRの送信方向のうち、角度範囲の中央部に向かう方向を、中央送信方向とする。近赤外線IRが中央送信方向に送信された場合には、その近赤外線IRは、中間部21Mの後面34Mに照射される。後面34Mのうち、近赤外線IRが照射される上記箇所を、中央照射箇所Xとする。
【0092】
中央照射箇所Xにおける法線NLは、中央送信方向に沿って延びる。そのため、上記中央照射箇所Xでは近赤外線IRの入射角αが小さく、反射する近赤外線IRが少ない。
上記後面34のうち、近赤外線IRが照射される箇所が上記中央照射箇所Xから遠ざかるに従い、その近赤外線IRの送信方向が中央送信方向に対しなす角度βが大きくなる。
【0093】
そのため、仮に、上記後面34のうち中央照射箇所Xとは異なる箇所でも法線NLが、同中央照射箇所Xでの法線NLに沿う方向へ延びていると、中央照射箇所Xから遠ざかるに従い、入射角αが大きくなり、反射する近赤外線IRが多くなる。
【0094】
中間部21Mを取り囲む周辺部21Pの後面34Pは、上記中央照射箇所Xから大きく離れている。
しかし、第5実施形態では、上記後面34Pが、中間部21Mの後面34Mよりも後方に位置する。しかも、後面34Pは、上記の条件を満たすように湾曲している。そのため、後面34Pのいずれの箇所でも、法線NLは、送信方向に沿う方向へ延びる。後面34Pのいずれの箇所でも、近赤外線IRの入射角αが小さくなる。
【0095】
従って、第5実施形態によると、第1実施形態と同様の効果が得られるほか、次の効果も得られる。
(5-1)第5実施形態では、カバー本体部21における周辺部21Pが中間部21Mよりも大きく湾曲している。周辺部21Pの後面34Pが、中間部21Mの後面34Mよりも後方に位置している。後面34Pが、前方へ膨らみ、かつ中間部21Mから遠ざかるに従い、後方に位置するように湾曲している。そのため、後面34Pのいずれの箇所でも、近赤外線IRの入射角αを小さくし、周辺部21Pを透過する近赤外線IRを多くすることができる。その結果、近赤外線センサ12の検出精度をより向上できる。
【0096】
(第6実施形態)
次に、本発明を車両用のセンサモジュールに具体化した第6実施形態について、図12を参照して説明する。
【0097】
第6実施形態では、カバー本体部21のうち、送信部14から送信される近赤外線IRの入射角αが40°未満の領域では、反射抑制部ARが第1反射抑制部AR1によって構成されている。カバー本体部21のうち、入射角αが40°以上の領域では、反射抑制部ARが、第1反射抑制部AR1よりも多くの近赤外線IRの反射を抑制する第2反射抑制部AR2によって構成されている。
【0098】
反射抑制部ARが、第1実施形態のように、複数の反射抑制層33を積層することにより構成される場合、第1反射抑制部AR1及び第2反射抑制部AR2の各厚みは、次の条件を満たすように設定されている。その条件とは、「第2反射抑制部AR2の全体の厚みが、第1反射抑制部AR1の全体の厚みに対し、1.1倍以上になる」ことである。
【0099】
なお、図12では、カバー本体部21が平板状をなしている例を示しているが、第1実施形態のように、前方へ膨らむように緩やかに湾曲していてもよい。また、図12では、加飾層28の図示が省略されている。
【0100】
上記以外の構成は、第1実施形態と同様である。そのため、第6実施形態において第1実施形態で説明したものと同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
次に、第6実施形態の作用について、第1実施形態の作用との相違点を中心に説明する。
【0101】
ここで、入射角αが大きくなるに従い、カバー本体部21で反射する近赤外線IRが多くなる。それに伴い、カバー本体部21を透過する近赤外線IRが少なくなる。この点は、第5実施形態で説明した通りである。
【0102】
一方、解析によると、送信部14から送信されて、カバー本体部21の後面34に照射される近赤外線IRの入射角αが40°以上になると、40°未満の場合よりも透過率が低下することがわかっている。
【0103】
カバー本体部21の最後部を構成する反射抑制部ARでは、照射された近赤外線IRの反射が抑制される。反射が抑制される分、カバー本体部21を透過する近赤外線IRが多くなる。
【0104】
カバー本体部21のうち、入射角αが40°未満の領域では、近赤外線IRの反射が第1反射抑制部AR1によって抑制される。40°以上の領域では、近赤外線IRの反射が、第2反射抑制部AR2によって、第1反射抑制部AR1によるよりも多く抑制される。
【0105】
従って、第6実施形態によると、第1実施形態と同様の効果が得られるほか、次の効果も得られる。
(6-1)第6実施形態では、近赤外線IRの入射角αが40°未満の領域では、反射抑制部ARが第1反射抑制部AR1によって構成されている。上記入射角αが40°以上の領域では、反射抑制部ARが、第1反射抑制部AR1よりも多くの近赤外線IRの反射を抑制する第2反射抑制部AR2によって構成されている。そのため、入射角αが40°以上の領域で反射される近赤外線IRを少なくして、透過する近赤外線IRを多くすることができる。その結果、近赤外線センサ12の検出精度をより向上できる。
【0106】
(第7実施形態)
次に、センサモジュールの第7実施形態について、図13を参照して説明する。
第7実施形態は、加飾層26が基材22の一部によって構成されている点で、加飾層28が別部材によって構成されている第1実施形態と異なっている。加飾層26は、基材本体部23の前面24から前方へ突出している。加飾層26は、その大部分を占める中間部26Mと、中間部26Mを取り囲む周辺部26Pとを備えている。中間部26Mの前面は、単一の平坦な面によって構成されている。周辺部26Pは、中間部26Mから遠ざかるに従い後方に位置するように、上記前面24に対し傾斜している。表現を変えると、加飾層26は台形状の断面形状を有している。加飾層26と基材本体部23とは、同一の樹脂材料によって一体に形成されている。
【0107】
加飾層26及び被覆層30は、互いの屈折率の差が0.03以下となる樹脂材料により形成されている。加飾層26が基材本体部23に一体に形成されている第7実施形態では、基材本体部23(基材22)及び被覆層30が、互いの屈折率の差が0.03以下となる樹脂材料により形成されている。
【0108】
上記以外の構成は、第1実施形態と同様である。そのため、第7実施形態において第1実施形態で説明したものと同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
なお、反射抑制部ARは、上記第2~第4実施形態で説明した反射抑制構造部41,51によって構成されてもよい。
【0109】
ここで、加飾層26が基材22の一部として形成されても、加飾層26の周辺部26Pと、被覆層30のうち、上記周辺部26Pを覆っている部分との境界には、基材本体部23の前面24に対し傾斜した部分(段差)が生ずる。しかし、互いの屈折率の差が0.03以下となる樹脂材料によって加飾層26(基材22)及び被覆層30が形成されることで、近赤外線IRは、上記段差を透過する際に、加飾層26及び被覆層30の境界で屈折しにくい。
【0110】
従って、第7実施形態によると、加飾層26の構成が第1実施形態における加飾層28の構成と異なるものの、(1-1)に対応する次の効果が得られる。第1実施形態との差異が加飾層26の構成のみであるため、第7実施形態でも、第1実施形態における(1-2)~(1-5)と同様の効果が得られる。
【0111】
(7-1)加飾層26を基材22の一部によって構成している第7実施形態にあって、加飾層26(基材22)及び被覆層30を、屈折率の差(0.03以下)を考慮した樹脂材料によって形成している。そのため、周辺部26Pと被覆層30との間の傾斜した部分(段差)で近赤外線IRが屈折するのを抑制できる。近赤外線センサ12は、段差を透過した近赤外線IRによっても、段差とは異なる箇所を透過した近赤外線IRと同様に、車外の物体の位置(角度)を精度よく検出できる。
【0112】
(第8実施形態)
次に、本発明を車両用のセンサモジュールに具体化した第8実施形態について、図14を参照して説明する。
【0113】
第8実施形態は、加飾層28及び被覆層30が、基材本体部23と反射抑制部ARの間に配置されている点で、基材本体部23とハードコート層35との間に配置されている第1実施形態と異なっている。より詳しくは、加飾層28は、基材22とは別の部材により構成されており、基材本体部23から後方へ突出している。加飾層28は、有色の塗膜層によって構成されている。塗膜層は、塗料を基材本体部23の後面25の一部に塗布することによって形成されている。
【0114】
被覆層30は、樹脂成形することによって形成されており、加飾層28を覆った状態で基材本体部23に対し後側から積層されている。被覆層30の後面32は、単一の平坦な面によって構成されている。
【0115】
ここで、第1実施形態で説明したように、加飾層28が塗装によって形成される際には、塗装の垂れが生ずる。そのため、加飾層28の周辺部28Pは、塗装の垂れにより、基材本体部23の後面25に対し傾斜する。被覆層30のうち、上記周辺部28Pとの境界も、基材本体部23の後面25に対し傾斜する。
【0116】
加飾層28及び被覆層30は、互いの屈折率の差が0.03以下となる樹脂材料により形成されている。
反射抑制部ARは、基材本体部23の後面25に代え、被覆層30の後面32に密着した状態で、同被覆層30に対し後側から積層されている。ハードコート層35は、被覆層30の前面31に代え、基材本体部23の前面24に対し密着した状態で前側から積層されている。
【0117】
上記以外の構成は、第1実施形態と同様である。そのため、第8実施形態において第1実施形態で説明したものと同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
ここで、加飾層28が基材本体部23の後面25の一部に形成される場合であっても、加飾層28の周辺部28Pと、被覆層30のうち、上記周辺部28Pを覆っている部分との境界に、基材本体部23の後面25に対し傾斜した部分(段差)が生ずる。しかし、互いの屈折率の差が0.03以下となる樹脂材料によって加飾層28及び被覆層30が形成されることで、近赤外線IRは、上記段差を透過する際に、加飾層28及び被覆層30の境界で屈折しにくい。
【0118】
従って、第8実施形態によると、カバー本体部21における加飾層28及び被覆層30の位置が第1実施形態と異なるものの、(1-1),(1-4)に対応する次の効果が得られる。第1実施形態との差異が、加飾層28及び被覆層30の位置のみであるため、第8実施形態でも、第1実施形態における(1-2),(1-3),(1-5)と同様の効果が得られる。
【0119】
(8-1)加飾層28及び被覆層30を、基材本体部23と反射抑制部ARとの間に配置している第8実施形態にあって、加飾層28及び被覆層30を、屈折率の差(0.03以下)を考慮した樹脂材料によって形成している。そのため、加飾層28及び被覆層30の境界(段差)において近赤外線IRが屈折するのを抑制できる。近赤外線センサ12は、段差を透過した近赤外線IRによっても、段差とは異なる箇所を透過した近赤外線IRと同様に、車外の物体の位置(角度)を精度よく検出できる。
【0120】
(8-2)第8実施形態では、基材本体部23から後方へ突出する加飾層28を形成している。その加飾層28を覆った状態で基材本体部23に対し、被覆層30を後側から積層している。そのため、車両前方から近赤外線透過カバー20を見た場合の加飾層28の見え方が、第1実施形態と異なってくる。しかし、第8実施形態によっても、第1実施形態と同様に、加飾層28によって近赤外線透過カバー20を装飾することができる。近赤外線透過カバー20及びその周辺部分の外観を向上できる。
【0121】
(第9実施形態)
次に、本発明を車両用の近赤外線センサに具体化した第9実施形態について、図15を参照して説明する。
【0122】
第9実施形態では、近赤外線センサ12のカバー16が近赤外線透過カバー70によって構成されている。近赤外線透過カバー70は、上記ケース13の前側に配置される筒状の周壁部71と、周壁部71の前端部に形成された板状のカバー本体部21とを備えている。
【0123】
近赤外線透過カバー70は、近赤外線センサ12のケース13の前端開放部分を塞ぐ大きさに形成されている。近赤外線透過カバー70は、送信部14及び受信部15を前方から覆っている。
【0124】
近赤外線透過カバー70におけるカバー本体部21は、図15では、単一の層によって構成されているように図示されているが、第1実施形態における近赤外線透過カバー20のカバー本体部21と同様の層構成(図2参照)を有している。
【0125】
上記以外の構成は、第1実施形態と同様である。そのため、第9実施形態において第1実施形態で説明したものと同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
従って、第9実施形態は、カバー本体部21の位置が第1実施形態と異なるものの、送信部14及び受信部15を前方から覆う点で第1実施形態と共通している。そのため、第9実施形態によっても第1実施形態と同様の作用及び効果が得られる。
【0126】
(第10実施形態)
次に、本発明を車両用の近赤外線センサに具体化した第10実施形態について、図16を参照して説明する。
【0127】
なお、図16では、近赤外線センサ12のカバー本体部21が単一の層によって構成されているように図示されているが、第1実施形態における近赤外線透過カバー20のカバー本体部21と同様の層構成(図2参照)を有している。
【0128】
第10実施形態では、近赤外線センサ12の近赤外線透過カバー70が、第5実施形態と同様のカバー本体部21を備えている。カバー本体部21は、中央照射箇所Xを有する中間部21Mと、その中間部21Mを取り囲む周辺部21Pとを備えている。周辺部21Pの後面34Pは、中間部21Mの後面34Mよりも後方に位置している。後面34Pは、前方へ膨らみ、かつ中間部21Mから遠ざかるに従い、後方に位置するように湾曲している。なお、図16において、図11に対応する箇所には、同一の符号が付されている。従って、第10実施形態のカバー本体部21は、第5実施形態のカバー本体部21と同様に作用する。
【0129】
近赤外線IRが中央送信方向に送信された場合には、その近赤外線IRは、中間部21Mの後面34Mの中央照射箇所Xに照射される。中央照射箇所Xにおける法線NLは、中央送信方向に沿って延びる。そのため、中央照射箇所Xでは近赤外線IRの入射角αが小さく、反射する近赤外線IRが少ない。
【0130】
カバー本体部21の後面34のうち、近赤外線IRが照射される箇所が中央照射箇所Xから遠ざかるに従い、その近赤外線IRの送信方向が中央送信方向に対しなす角度βが大きくなる。
【0131】
しかし、第10実施形態では、周辺部21Pの後面34Pが、中間部21Mの後面34Mよりも後方で、前方へ膨らむように湾曲している。そのため、上記後面34Pのいずれの箇所でも、法線NLは、送信方向に沿う方向へ延びる。上記後面34Pのいずれの箇所でも、近赤外線IRの入射角αが小さくなる。
【0132】
従って、第10実施形態によると、近赤外線センサ12のカバー本体部21において、第5実施形態における近赤外線透過カバー20のカバー本体部21と同様の効果が得られる。
【0133】
(第11実施形態)
次に、本発明をセンサモジュールに具体化した第11実施形態について、図17を参照して説明する。
【0134】
なお、図17では、カバー本体部21が単一の層によって構成されているように図示されているが、第1実施形態における近赤外線透過カバー20のカバー本体部21と同様の層構成(図2参照)を有している。
【0135】
上述した第5実施形態では、周辺部21Pの前面36Pも後面34Pと同様に湾曲している。これに対し、第11実施形態では、周辺部21Pの前面36Pが後面34Pとは異なる傾向の面に形成されている。
【0136】
図17は、中間部21Mの前面36Mと、周辺部21Pの前面36Pとがともに平面によって構成されている例を示している。この例の場合、中間部21Mの後面34Mもまた平面によって構成されている。前面36M及び後面34Mは互いに平行の関係にある。そのため、中間部21Mの厚みは均一である。これに対し、周辺部21Pの後面34Pが湾曲していることから、同周辺部21Pの厚みは、中間部21Mから遠ざかるに従い徐々に増加している。
【0137】
上記以外の構成は、第5実施形態と同様である。そのため、第11実施形態において第5実施形態で説明したものと同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0138】
第11実施形態では、周辺部21Pの前面36Pが第5実施形態と異なっている。ただし、周辺部21Pの後面34Pは、第5実施形態と同様に湾曲している。すなわち、後面34Pは、中間部21Mの後面34Mよりも後方に位置している。後面34Pは、前方へ膨らみ、かつ中間部21Mから遠ざかるに従い、後方に位置するように湾曲している。
【0139】
従って、第11実施形態によると、第5実施形態と同様の作用及び効果が得られる。
なお、上記実施形態は、これを以下のように変更した変更例として実施することもできる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0140】
・第2実施形態における突条部42の断面形状が、直角三角形から第3実施形態及び第4実施形態と同様の二等辺三角形に変更されてもよい。
上記断面形状としては、直角三角形よりも二等辺三角形が好ましい。ここで、断面形状において、頂部を構成する二辺がなす角を挟角とすると、二等辺三角形において直角三角形におけるよりも挟角を大きくでき、生産性が向上し、また、反射抑制構造部41,51が損傷しにくい。
【0141】
・第2実施形態の反射抑制構造部41における複数の突条部42は、互いに左右方向(車幅方向)に隣り合った状態で上下方向へ平行に延びてもよい。
・第8実施形態における加飾層28が、第7実施形態における加飾層26と同様に、基材22の一部によって構成されてもよい。
【0142】
・第10実施形態におけるカバー本体部21が、第11実施形態における近赤外線透過カバー20のカバー本体部21と同様の構成に変更されてもよい。すなわち、周辺部21Pの前面36Pが後面34Pとは異なる傾向の面に形成されてもよい。例えば、上記前面36Pが、中間部21Mの前面36Mとともに、平坦な面によって構成されてもよい。この場合、中間部21Mの厚みは均一であるものの、同周辺部21Pの厚みは、中間部21Mから遠ざかるに従い徐々に増加することになる。
【0143】
・第1~第7、第9~第11実施形態におけるハードコート層35は、被覆層30よりも高い硬度を有するハードコートフィルムによって構成されてもよい。
また、第8実施形態におけるハードコート層35は、基材本体部23よりも高い硬度を有するハードコートフィルムによって構成されてもよい。
【0144】
・各実施形態におけるハードコート層35が省略されてもよい。また、カバー本体部21に対し、新たな層が追加されてもよい。
・カバー本体部21の構成部材であって、互いに隣り合うものの複数の組み合わせのうち、加飾層26,28及び被覆層30の組み合わせとは異なる組み合わせについては、必ずしも屈折率の差を0.03以下にしなくてもよい。
【0145】
<その他の事項>
・近赤外線透過カバー20、近赤外線センサ12及びセンサモジュール11は、車両10の前部とは異なる箇所、例えば後部に設置されてもよいし、車両10の前部又は後部の両側部、すなわち、斜め前側部や斜め後側部に設置されてもよい。
【0146】
車両の後部に設置される場合、近赤外線センサ12の送信部14は、車両10の後方に向けて近赤外線IRを送信する。近赤外線透過カバー20は、近赤外線IRの送信方向における送信部14の前方、すなわち、送信部14に対し車両10の後方に配置される。
【0147】
・近赤外線透過カバー20、近赤外線センサ12及びセンサモジュール11は、車両とは異なる種類の乗物、例えば、電車、航空機、船舶等の乗物に搭載されてもよい。
【符号の説明】
【0148】
10…車両(乗物)
12…近赤外線センサ
13…ケース
14…送信部
15…受信部
20,70…近赤外線透過カバー
21…カバー本体部
21M…中間部
21P…周辺部
22…基材(カバー本体部の構成部材)
23…基材本体部
25,32,34,34M,34P…後面
26,28…加飾層(カバー本体部の構成部材)
30…被覆層(カバー本体部の構成部材)
35…ハードコート層(カバー本体部の構成部材)
71…周壁部
AR…反射抑制部(カバー本体部の構成部材)
AR1…第1反射抑制部(カバー本体部の構成部材)
AR2…第2反射抑制部(カバー本体部の構成部材)
IR…近赤外線
α…入射角
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19