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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123423
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】車両用ドア装置
(51)【国際特許分類】
   E05F 15/649 20150101AFI20240905BHJP
   E05F 11/42 20060101ALI20240905BHJP
   B60J 5/04 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
E05F15/649
E05F11/42 D
B60J5/04 L
B60J5/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030822
(22)【出願日】2023-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】後藤 直希
(72)【発明者】
【氏名】角谷 誠一
【テーマコード(参考)】
2E052
【Fターム(参考)】
2E052AA09
2E052DA05
2E052DB05
2E052EB01
2E052EC01
(57)【要約】
【課題】有効に利用できる駆動装置近傍の車室空間を拡張する。
【解決手段】ドア装置20は、駆動トルクを出力するアクチュエータと、その駆動トルクを駆動リンク55に伝達する伝達機構70と、を有した駆動装置51を備える。伝達機構70は、車体2に対する駆動リンク55の連結軸77と同軸位置に回動中心Mを有して駆動リンク55に固定されるリンク駆動ギヤ90と、このリンク駆動ギヤ90に噛合する状態で駆動トルクが入力されるトルク入力ギヤ100と、を備える。更に、リンク駆動ギヤ90は、周方向の一部分にギヤ歯91aを有したセクターギヤ91としての構成を有する。そして、リンク駆動ギヤ90は、駆動リンク55に支持されたドアが全閉位置P0にある場合に、そのセクターギヤ91のギヤ歯91aが車外側に臨むように構成される。
【選択図】図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に対する第1の回動連結点と車両のドアに対する第2の回動連結点とを有する第1及び第2のリンクアームと、
前記第1及び第2のリンクアームの少なくとも一方を駆動リンクとして該駆動リンクを回動させることにより前記第1及び第2のリンクアームが形成するリンク機構の動作に基づき前記ドアを開閉動作させる駆動装置と、を備え、
前記駆動装置は、
駆動トルクを出力するアクチュエータと、
前記駆動トルクを前記駆動リンクに伝達する伝達機構と、を備えるとともに、
前記伝達機構は、
前記車体に対する前記駆動リンクの連結軸と同軸位置に回動中心を有して前記駆動リンクに固定されるリンク駆動ギヤと、
前記リンク駆動ギヤに噛合する状態で前記駆動トルクが入力されるトルク入力ギヤと、を備え、
前記リンク駆動ギヤは、周方向の一部分にギヤ歯を有したセクターギヤとしての構成を有するとともに、
前記駆動リンクに支持された前記ドアが全閉位置にある場合に、前記セクターギヤのギヤ歯が車外側に臨むように構成された車両用ドア装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用ドア装置において、
前記車体に対する前記駆動リンクの連結軸は、該連結軸の軸方向に離間した第1位置及び第2位置において、第1及び第2のリンク側連結部と、第1及び第2の車体側連結部とが回動可能に連結されてなるとともに、
前記連結軸の軸方向において、
前記第1のリンク側連結部と前記第1の車体側連結部とが連結された前記第1位置と、前記第2のリンク側連結部と前記第2の車体側連結部とが連結された前記第2位置との間に、前記伝達機構が配置されていること、を特徴とする車両用ドア装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の車両用ドア装置において、
前記トルク入力ギヤは、同軸に一体回転する第1ギヤ部及び第2ギヤ部を備えた二段ギヤとしての構成を有するものであって、
前記リンク駆動ギヤに歯合する前記第1ギヤ部よりも前記駆動トルクが入力される前記第2ギヤ部が大径であるとともに、
前記ドアが全閉位置にある場合に、前記リンク駆動ギヤが前記第2ギヤ部よりも車内側に突出しないように構成されること、を特徴とする車両用ドア装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の車両用ドア装置において、
前記リンク駆動ギヤは、前記ギヤ歯を有しない周方向位置に、前記リンク駆動ギヤを径方向に切り欠いた切欠き部を有するとともに、
前記ドアが全閉位置にある場合に、前記切欠き部が車内側に臨むように構成されること、を特徴とする車両用ドア装置。
【請求項5】
請求項4に記載の車両用ドア装置において、
前記切欠き部に設けられた前記リンク駆動ギヤの周方向に延在する係合凹部と、
前記車体に対して固定された状態で前記係合凹部内に配置される係合突部と、を有し、
前記係合凹部の延在方向における前記係合突部の相対変位が許容される範囲内に前記リンク駆動ギヤの回動を制限するストッパ機構を備えること、
を特徴とする車両用ドア装置。
【請求項6】
請求項1又は請求項2に記載の車両用ドア装置において、
前記リンク駆動ギヤの車内側となる位置には前記車両の内装部材が配置されるとともに、前記ドアの開動作に基づき前記車内側に臨む前記セクターギヤのギヤ歯が、前記内装部材に設けられた凹部の内側に配置されるように構成されること、
を特徴とする車両用ドア装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドア装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1に示すように、車体に対する第1の回動連結点と車両のドアに対する第2の回動連結点とを有した第1及び第2のリンクアームを備える車両用のドア装置がある。このようなドア装置は、第1及び第2のリンクアームが形成するリンク機構の動作に基づいて、そのドア開口部に設けられたドアが開閉動作する。そして、上記従来例のドア装置には、そのリンク機構を駆動するためのアクチュエータが設けられている。
【0003】
具体的には、この従来例のドア装置において、アクチュエータは、第1のリンクアームを駆動リンクとして、その車体に対する第1の回動連結点を構成するブラケットの下方に配置されている。更に、アクチュエータの出力軸には、その駆動トルクにより回動する駆動アームが連結されている。そして、この従来例のドア装置は、第1のリンクアームにおける第1の回動連結点と第2の回動連結点との間の位置に、その駆動アームの連結点を有する構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-92327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電動化が進む車両においては、その効率化はもとより、車両に対する優れた搭載性が要求される。このため、上記のようなリンク機構を利用したドア装置についてもまた、その構成要素の配置を含めた最適設計が模索されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する車両用ドア装置の各態様を記載する。
態様1の車両用ドア装置は、車体に対する第1の回動連結点と車両のドアに対する第2の回動連結点とを有する第1及び第2のリンクアームと、前記第1及び第2のリンクアームの少なくとも一方を駆動リンクとして該駆動リンクを回動させることにより前記第1及び第2のリンクアームが形成するリンク機構の動作に基づき前記ドアを開閉動作させる駆動装置と、を備え、前記駆動装置は、駆動トルクを出力するアクチュエータと、前記駆動トルクを前記駆動リンクに伝達する伝達機構と、を備えるとともに、前記伝達機構は、前記車体に対する前記駆動リンクの連結軸と同軸位置に回動中心を有して前記駆動リンクに固定されるリンク駆動ギヤと、前記リンク駆動ギヤに噛合する状態で前記駆動トルクが入力されるトルク入力ギヤと、を備え、前記リンク駆動ギヤは、周方向の一部分にギヤ歯を有したセクターギヤとしての構成を有するとともに、前記駆動リンクに支持された前記ドアが全閉位置にある場合に、前記セクターギヤのギヤ歯が車外側に臨むように構成される。
【0007】
上記構成によれば、ドアが全閉位置にある場合に、その車体に対する連結軸周りに駆動リンクと一体に回動するリンク駆動ギヤの車内側への突出量を小さく抑えることができる。また、そのギヤ歯に対して異物が干渉し難くすることができる。その結果、このリンク駆動ギヤについては、その車内側の保護構造を簡素化することが可能になる。そして、これにより、例えば、カバー部材等の保護構造を含めた車内側への突出量を抑えることで、駆動装置の近傍において、その有効に利用することのできる車室空間を拡張することができる。
【0008】
態様2の車両用ドア装置は、態様1に記載の車両用ドア装置において、前記車体に対する前記駆動リンクの連結軸は、該連結軸の軸方向に離間した第1位置及び第2位置において、第1及び第2のリンク側連結部と、第1及び第2の車体側連結部とが回動可能に連結されてなるとともに、前記連結軸の軸方向において、前記第1のリンク側連結部と前記第1の車体側連結部とが連結された前記第1位置と、前記第2のリンク側連結部と前記第2の車体側連結部とが連結された前記第2位置との間に、前記伝達機構が配置されている。
【0009】
上記構成によれば、駆動リンクに対して駆動装置の伝達機構をコンパクトに配置することができる。その結果、車両に対する高い搭載性を確保することができる。更に、第1及び第2の車体側連結部が、伝達機構の保護部材として機能する。そして、これにより、有効に利用することのできる駆動装置近傍の車室空間を拡張することができる。
【0010】
態様3の車両用ドア装置は、態様1又は態様2に記載の車両用ドア装置において、前記トルク入力ギヤは、同軸に一体回転する第1ギヤ部及び第2ギヤ部を備えた二段ギヤとしての構成を有するものであって、前記リンク駆動ギヤに歯合する前記第1ギヤ部よりも前記駆動トルクが入力される前記第2ギヤ部が大径であるとともに、前記ドアが全閉位置にある場合に、前記リンク駆動ギヤが前記第2ギヤ部よりも車内側に突出しないように構成される。
【0011】
即ち、トルク入力ギヤに二段ギヤを用いることで、簡素な構成にて、コンパクトに減速機構を形成することができる。そして、このトルク入力ギヤの第2ギヤ部を基準にリンク駆動ギヤの車内側への突出量を抑えることで、より効果的に、有効に利用することのできる駆動装置近傍の車室空間を拡張することができる。
【0012】
態様4の車両用ドア装置は、態様1~態様3の何れか一つに記載の車両用ドア装置において、前記リンク駆動ギヤは、前記ギヤ歯を有しない周方向位置に、前記リンク駆動ギヤを径方向に切り欠いた切欠き部を有するとともに、前記ドアが全閉位置にある場合に、前記切欠き部が車内側に臨むように構成される。
【0013】
上記構成によれば、より一層、そのリンク駆動ギヤの車内側への突出量を抑えることができる。そして、これにより、より効果的に、有効に利用することのできる駆動装置近傍の車室空間を拡張することができる。
【0014】
態様5の車両用ドア装置は、態様4に記載の車両用ドア装置において、前記切欠き部に設けられた前記リンク駆動ギヤの周方向に延在する係合凹部と、前記車体に対して固定された状態で前記係合凹部内に配置される係合突部と、を有し、前記係合凹部の延在方向における前記係合突部の相対変位が許容される範囲内に前記リンク駆動ギヤの回動を制限するストッパ機構を備える。
【0015】
上記構成によれば、簡素な構成にて、ドアの全閉位置を超える過剰な駆動リンクの閉動作、及びドアの全開位置を超える過剰な駆動リンクの開動作を規制することができる。そして、リンク駆動ギヤの切欠き部を利用することで、コンパクトに、そのストッパ機構を形成することができる。
【0016】
態様6の車両用ドア装置は、態様1~態様5の何れか一つに記載の車両用ドア装置において、前記リンク駆動ギヤの車内側となる位置には前記車両の内装部材が配置されるとともに、前記ドアの開動作に基づき前記車内側に臨む前記セクターギヤのギヤ歯が、前記内装部材に設けられた凹部の内側に配置されるように構成される。
【0017】
上記構成によれば、車両の内装部材を、その駆動装置を構成する伝達機構に対して、より近い位置に配置することができる。そして、これにより、有効に利用することができる車室空間を拡張することができる。
【0018】
更に、リンク駆動ギヤの車内側に配置された内装部材が、そのリンク駆動ギヤの保護部材として機能する。そして、これにより、ドアの開動作時におけるリンク駆動ギヤの保護を可能とすることで、高い信頼性を確保することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、有効に利用することのできる駆動装置近傍の車室空間を拡張することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】ドア装置の斜視図である。
図2】ドア装置の斜視図である。
図3】リンク機構を形成する第1及び第2のリンクアームの平面図である。
図4】リンク機構を形成する第1及び第2のリンクアームの平面図である。
図5】リンク機構を形成する第1及び第2のリンクアームの平面図である。
図6】リンク機構を形成する第1及び第2のリンクアームの平面図である。
図7】ドア側係合部及び車体側係合部の概略構成図である。
図8】駆動リンクに位置付けられた第1のリンクアーム及び駆動装置の斜視図である。
図9】駆動リンクに位置付けられた第1のリンクアーム及び駆動装置の正面図である。
図10】駆動リンクに位置付けられた第1のリンクアーム及び駆動装置の背面図である。
図11】駆動リンクに位置付けられた第1のリンクアーム及び駆動装置の分解斜視図である。
図12】伝達機構を形成する駆動伝達ユニットの分解斜視図である。
図13】駆動装置の平面図である。
図14】駆動装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、車両用ドア装置に関する一実施形態を図面に従って説明する。
(リンク機構)
図1及び図2に示すように、本実施形態の車両1は、車体2の側面2sに設けられたドア開口部3を備えている。そして、そのドア開口部3には、このドア開口部3に車両1のドア5を支持する第1のリンクアーム11及び第2のリンクアーム12が設けられている。
【0022】
詳述すると、本実施形態の車両1において、これら第1及び第2のリンクアーム11,12は、それぞれ、車体2に対する第1の回動連結点X1と、ドア5に対する第2の回動連結点X2と、を有している。具体的には、第1のリンクアーム11は、上下方向(各図中、上下方向)に延びる支軸N1aに軸支された状態で車体2に連結されるとともに、上下方向に延びる支軸N1bに軸支された状態でドア5に連結されている。そして、第2のリンクアーム12もまた、上下方向に延びる支軸N2aに軸支された状態で車体2に連結されるとともに、上下方向に延びる支軸N2bに軸支された状態でドア5に連結されている。
【0023】
即ち、図3図6に示すように、本実施形態の車両1においては、これらの第1及び第2のリンクアーム11,12が四節リンクとしての構成を有したリンク機構15を形成する。そして、本実施形態の車両1は、このリンク機構15の動作に基づいて、そのドア開口部3に支持されたドア5が開閉動作する構成になっている。
【0024】
さらに詳述すると、図1及び図2に示すように、本実施形態の車両1は、これらの第1及び第2のリンクアーム11,12を用いて、そのドア5を車両後方側(図1中、左側、図2中、右側)のドア開口部3に支持する。本実施形態の車両1において、これらの第1及び第2のリンクアーム11,12は、それぞれ、ドア開口部3の後縁部3r近傍において、その車体2に対して回動可能に連結された第1の回動連結点X1を有している。そして、本実施形態の車両1においては、これらの第1及び第2のリンクアーム11,12が上下方向に離間して配置されている。
【0025】
本実施形態の車両1においては、第1のリンクアーム11の方が、第2のリンクアーム12よりも上方に設けられている。また、第1のリンクアーム11は、ドア5の前後方向略中央位置において、このドア5に対して回動可能に連結された第2の回動連結点X2を有している。一方、第2のリンクアーム12は、ドア5の前端部5f近傍において、このドア5に連結された第2の回動連結点X2を有している。そして、本実施形態の車両1においては、これにより、その第1及び第2のリンクアーム11,12が形成するリンク機構15の動作に基づいて、そのドア5が開閉動作するようなドア装置20が形成されている。
【0026】
具体的には、図3図6に示すように、本実施形態のドア装置20は、ドア5の開動作時、第1及び第2のリンクアーム11,12が、それぞれ、その第1の回動連結点X1周りに、各図中、反時計回り方向に回動する。そして、これにより、これらの第1及び第2のリンクアーム11,12に支持された車両1のドア5が、車両後方側(各図中、左側)に開動作する。
【0027】
また、本実施形態のドア装置20は、ドア5の閉動作時、第1及び第2のリンクアーム11,12が、それぞれ、その第1の回動連結点X1周りに、各図中、時計回り方向に回動する。そして、これにより、これら第1及び第2のリンクアーム11,12に支持された車両1のドア5が、車両前方側(各図中、右側)に閉動作する構成になっている。
【0028】
更に、本実施形態のドア装置20は、第1及び第2のリンクアーム11,12が形成するリンク機構15の動作に基づいて、円弧状軌跡Rgを描くように、そのドア5の開閉動作軌跡Rが規定される。即ち、図5に示すように、第1及び第2のリンクアーム11,12が車幅方向(図3図6中、上下方向)に延在する状態となる中間位置においては、車両前後方向への移動成分が大きくなる。そして、図3及び図4に示すように、ドア5の開閉動作位置が全閉位置P0に近いほど、第1及び第2のリンクアーム11,12が車両前後方向(図3図6中、左右方向)に延在する状態となることで、その車幅方向への移動成分が大きくなる。
【0029】
また、本実施形態のドア装置20においては、第2のリンクアーム12よりも第1のリンクアーム11の方が、より重心Gに近い位置に、そのドア5に対する第2の回動連結点X2を有している。即ち、本実施形態のドア装置20においては、これにより、この第1のリンクアーム11が、より大きなドア荷重を支えるメインリンク21に位置付けられている。そして、第2のリンクアーム12は、その作用するドア荷重が比較的小さいサブリンク22に位置付けられている。
【0030】
尚、本実施形態のドア装置20においては、第1のリンクアーム11の方が、第2のリンクアーム12よりも大きな外形を有している。そして、本実施形態のドア装置20は、これにより、そのメインリンク21に位置付けられた第1のリンクアーム11に高い支持剛性を付与する構成となっている。
【0031】
(ドア側係合部及び車体側係合部)
図3図7に示すように、本実施形態のドア装置20は、ドア5の前端部5fに設けられたドア側係合部31と、ドア開口部3の前縁部3fに設けられた車体側係合部32と、を備えている。
【0032】
即ち、本実施形態の車両1において、ドア側係合部31は、第1及び第2のリンクアーム11,12が形成するリンク機構15の動作に基づき車両1のドア開口部3を開閉するドア5の閉動作側に位置する閉側端部33に設けられている。更に、車体側係合部32は、その車両前後方向に移動するドア5の開閉動作に基づいて、このドア5の閉側端部33が接離、即ち接近又は離間するドア開口部3の閉側端部34に設けられている。そして、本実施形態のドア装置20は、ドア5が全閉位置P0近傍にある状態において、これらのドア側係合部31及び車体側係合部32が互いに係合する構成になっている。
【0033】
詳述すると、本実施形態のドア側係合部31は、そのガイド係合部40として、車両1の上下方向(図7中、紙面に直交する方向)に延びる軸状係合部41を備えている。尚、本実施形態のドア装置20において、このガイド係合部40としての軸状係合部41は、上下方向に延在する支軸周りに回転するローラ42としての構成を有している。更に、車体側係合部32は、車幅方向(図7中、上下方向)に対向する一対の側壁部43a,43bを有してドア5の開閉動作方向に延在するガイド溝43を備えている。そして、本実施形態のドア装置20は、ドア5が全閉位置P0近傍にある場合には、このガイド溝43内に、そのガイド係合部40を構成する軸状係合部41を配置する状態で、これらのドア側係合部31及び車体側係合部32が互いに係合する構成になっている。
【0034】
即ち、車幅方向に対向する一対の側壁部43a,43b間に挟み込まれる状態で、車体側係合部32のガイド溝43内にドア側係合部31の軸状係合部41が配置されることにより、その車幅方向におけるドア5の変位が規制される。そして、本実施形態のドア装置20は、これにより、リンク機構15を形成する第1及び第2のリンクアーム11,12が並んだ状態になりやすい全閉位置P0近傍においても、そのドア5を安定的に支持することが可能になっている。
【0035】
(連結長可変機構)
また、図3図6に示すように、本実施形態のドア装置20において、サブリンク22としての位置付けを有する第2のリンクアーム12には、その第1及び第2の回動連結点X1,X2間の連結長Lを変更可能とする連結長可変機構50が設けられている。更に、この連結長可変機構50は、その第1及び第2の回動連結点X1,X2間の長さ、つまりは、この連結長可変機構50が設けられた第2のリンクアーム12によるドア5の連結長Lを短縮する方向に付勢されている。そして、本実施形態のドア装置20は、これにより、その第2のリンクアーム12による連結長Lが短縮された状態でドア5が開閉動作する構成になっている。
【0036】
また、図3図4、及び図7に示すように、本実施形態のドア装置20においては、第2のリンクアーム12に設けられた連結長可変機構50の動作に基づいて、ドア側係合部31と車体側係合部32とが係合した状態でのドア5の開閉動作が許容される。具体的には、ドア側係合部31及び車体側係合部32が係合する状態でドア5が開閉動作することにより、連結長可変機構50の動作に基づいた連結長Lの変更を伴いながら、そのガイド溝43の延在方向に沿ってガイド係合部40が相対変位する。そして、本実施形態のドア装置20は、これにより、そのドア5の開閉動作軌跡Rが変化する。
【0037】
つまり、本実施形態のドア装置20は、ドア5が全閉位置P0に移動する際、車体側係合部32に対してドア側係合部31が係合することにより、そのガイド溝43内にガイド係合部40が配置された状態でドア5の開閉動作が案内される。そして、本実施形態のドア装置20は、これにより、そのリンク機構15の動作に基づいた円弧状軌跡Rgが、ドア開口部3の開口幅方向に沿った直線状軌跡Rsに変化する構成となっている。
【0038】
具体的には、本実施形態のドア装置20においては、ドア5の全閉動作時、そのドア側係合部31と車体側係合部32とが係合する状態で、このドア5に対して閉動作方向の操作力が付与される。尚、本実施形態のドア装置20において、このドア5を開閉動作させるための操作力としては、以下に詳述する駆動装置51の駆動力又はユーザーの手動操作が想定される。更に、この場合、その閉動作方向の操作力に基づき第2のリンクアーム12に設けられた連結長可変機構50が動作することで、ドア側係合部31と車体側係合部32との係合状態に基づいて、その第2のリンクアーム12によるドア5の連結長Lが延長される。そして、本実施形態のドア装置20は、これにより、上記のような直線状軌跡Rsを描く態様で、そのリンク機構15に支持されたドア5が全閉位置P0に向かって閉動作する構成になっている。
【0039】
また、全閉位置P0からドア5が開動作する場合には、そのドア側係合部31と車体側係合部32とが係合する状態で、このドア5に対して開動作方向の操作力が付与される。更に、この場合、その開動作方向の操作力に基づき連結長可変機構50が動作することで、ドア側係合部31と車体側係合部32との係合状態に基づいて、その第2のリンクアーム12によるドア5の連結長Lが短縮される。そして、本実施形態のドア装置20は、これにより、同じく直線状軌跡Rsを描く態様で、そのリンク機構15に支持されたドア5が全閉位置P0から開動作する構成になっている。
【0040】
(駆動装置)
図8図11に示すように、本実施形態のドア装置20は、第1及び第2のリンクアーム11,12が形成するリンク機構15に支持された車両1のドア5を開閉駆動する駆動装置51を備えている。本実施形態のドア装置20において、この駆動装置51は、メインリンク21に位置付けられた第1のリンクアーム11を駆動リンク55として、この第1のリンクアーム11に対して駆動トルクを付与する。そして、本実施形態の駆動装置51は、これにより、この第1のリンクアーム11を車体2に対する第1の回動連結点X1周りに回動させることで、その第1のリンクアーム11に支持されたドア5を開閉動作させる構成となっている。
【0041】
詳述すると、本実施形態のドア装置20において、第1のリンクアーム11は、長尺略棒状の外形を有したアーム本体60を備えている。また、本実施形態の第1のリンクアーム11は、これらアーム本体60の長手方向端部に連結された基端ブラケット61及び先端ブラケット62を備えている。更に、本実施形態のドア装置20は、ドア開口部3の後縁部3r近傍に固定された状態で、第1のリンクアーム11の基端ブラケット61が回動可能に連結される車体ブラケット63を備えている。そして、本実施形態のドア装置20は、ドア5の内側面5sに固定された状態で、第1のリンクアーム11の先端ブラケット62が回動可能に連結されるドアブラケット64を備えている。
【0042】
即ち、本実施形態のドア装置20においては、その相対回動可能に連結された基端ブラケット61及び車体ブラケット63が、その第1のリンクアーム11における第1の回動連結点X1を形成する。更に、同じく相対回動可能に連結された先端ブラケット62及びドアブラケット64が、その第1のリンクアーム11における第2の回動連結点X2を形成する。そして、本実施形態の駆動装置51は、これにより、その車体2に対して回動可能に支持された第1のリンクアーム11の基端部11bに対して、その駆動トルクを入力する構成となっている。
【0043】
また、本実施形態の駆動装置51は、モータ65mを駆動源として駆動トルクを出力するアクチュエータ65と、その駆動トルクを駆動リンク55としての第1のリンクアーム11に伝達する伝達機構70と、を備えている。そして、本実施形態のドア装置20は、上記基端ブラケット61及び車体ブラケット63が、その第1のリンクアーム11における第1の回動連結点X1を形成する位置に対して、この伝達機構70を配置する構成となっている。
【0044】
具体的には、本実施形態のドア装置20において、第1のリンクアーム11の基端部11bを構成する基端ブラケット61は、上下方向に延在する状態でアーム本体60の基端60bに固定される基部72を備えている。また、基端ブラケット61は、その基部72の下端及び上端からそれぞれアーム本体60を延長する方向に延びる第1及び第2のリンク側連結部73a,73bを備えている。そして、ドア開口部3の後縁部3rにおいて車体2に固定された車体ブラケット63もまた、上下方向に離間した位置において互いに対向する第1及び第2の車体側連結部75a,75bを備えている。
【0045】
更に、本実施形態のドア装置20においては、これら第1及び第2のリンク側連結部73a,73bと、第1及び第2の車体側連結部75a,75bとが、上下方向に離間した二位置において、それぞれ、連結ピン76,76を介して回動可能に連結される。そして、本実施形態のドア装置20は、これにより、その第1の回動連結点X1となる車体2に対する駆動リンク55の連結軸77が形成される構成となっている。
【0046】
また、図9図12に示すように、本実施形態の伝達機構70は、その車体ブラケット63に対し、支持ブラケット78を有した駆動伝達ユニット80を固定することにより形成されている。
【0047】
具体的には、この駆動伝達ユニット80は、車体ブラケット63を構成する第1及び第2の車体側連結部75a,75bのうち、その下側に位置する第1の車体側連結部75aに固定された状態で、この第1の車体側連結部75aの上方に配置される。更に、本実施形態のドア装置20において、アクチュエータ65は、この駆動伝達ユニット80の上端面80sを形成するアッパブラケット81に対して固定されている。そして、本実施形態のドア装置20は、これにより、これらのアクチュエータ65及び駆動伝達ユニット80が一体化された状態で、その第1のリンクアーム11における第1の回動連結点X1の形成位置に配置される。詳しくは、第1のリンク側連結部73aと第1の車体側連結部75aとが連結された第1位置Y1と、第2のリンク側連結部73bと第2の車体側連結部75bとが連結された第2位置Y2との間に、その駆動伝達ユニット80が配置される構成となっている。
【0048】
(伝達機構)
詳述すると、図9図14に示すように、本実施形態のドア装置20は、車体2に対する駆動リンク55の連結軸77と同軸位置に回動中心Mを有する状態で、駆動リンク55としての第1のリンクアーム11に固定されるリンク駆動ギヤ90を備えている。本実施形態のドア装置20において、このリンク駆動ギヤ90は、周方向の一部分にギヤ歯91aを有したセクターギヤ91としての構成を有している。また、このリンク駆動ギヤ90は、その径方向に突出する連結突部92を備えている。更に、本実施形態のリンク駆動ギヤ90は、この連結突部92が、その第1のリンクアーム11の基端部11bを構成する基端ブラケット61に固定される。具体的には、本実施形態のドア装置20において、このリンク駆動ギヤ90の連結突部92は、基端ブラケット61の基部72に設けられた取着孔93に対し、略円筒形状のブッシュ94を介して、その先端部92aが挿入された状態で固定される。そして、本実施形態のリンク駆動ギヤ90は、これにより、その回動中心Mとなる支軸90xを車体2に対する駆動リンク55の連結軸77と同軸に配置する状態で、この連結軸77周りに駆動リンク55と一体に回転する構成になっている。
【0049】
また、本実施形態のドア装置20は、このリンク駆動ギヤ90に噛合するトルク入力ギヤ100を備えている。本実施形態のドア装置20において、このトルク入力ギヤ100は、同軸に一体回転する第1ギヤ部101及び第2ギヤ部102を備えた二段ギヤ103としての構成を有している。更に、このトルク入力ギヤ100は、第1ギヤ部101を第2ギヤ部102の上方に配置する状態で、これらの第1ギヤ部101及び第2ギヤ部102が共有する支軸100x周りに回転自在に支持される。そして、本実施形態のトルク入力ギヤ100は、この状態で、その第1ギヤ部101が、セクターギヤ91としての構成を有したリンク駆動ギヤ90に噛合する構成になっている。
【0050】
また、本実施形態のドア装置20は、このトルク入力ギヤ100の第2ギヤ部102に噛合するピニオンギヤ104を備えている。そして、本実施形態のドア装置20は、このピニオンギヤ104と一体に回転する支軸104xに対して、そのアクチュエータ65の駆動トルクを伝達するプーリ装置110を備えている。
【0051】
具体的には、本実施形態のプーリ装置110は、アクチュエータ65の出力軸65xに固定された状態で一体に回転する駆動プーリ111と、ピニオンギヤ104の支軸104xに固定された状態で一体に回転する従動プーリ112と、を備えている。また、このプーリ装置110は、これらの駆動プーリ111及び従動プーリ112に巻き掛けられた駆動ベルト113を備えている。更に、このプーリ装置110は、駆動ベルト113の環形状に与圧を付与する補助プーリ114と、その駆動プーリ111及び従動プーリ112との間に駆動ベルト113を挟み込む複数のガイドローラ115と、を備えている。そして、本実施形態のプーリ装置110は、これにより、アクチュエータ65の出力軸65xから離間した位置に、そのアクチュエータ65の駆動トルクを安定的に伝達することのできる構成となっている。
【0052】
即ち、本実施形態のドア装置20において、アクチュエータ65の出力する駆動トルクは、プーリ装置110を介してピニオンギヤ104に伝達される。更に、このピニオンギヤ104の回転が、このピニオンギヤ104に噛合する第2ギヤ部102及びリンク駆動ギヤ90に噛合する第1ギヤ部101を有したトルク入力ギヤ100を介して、そのリンク駆動ギヤ90に伝達される。そして、本実施形態のドア装置20は、これにより、このリンク駆動ギヤ90と一体に、その駆動リンク55に位置付けられた第1のリンクアーム11が車体2に対する連結軸77周りに回動する。つまりは、そのアクチュエータ65の駆動トルクを駆動リンク55に伝達する伝達機構70が形成される構成になっている。
【0053】
(駆動伝達ユニット)
さらに詳述すると、本実施形態のドア装置20においては、上記のように伝達機構70を構成するリンク駆動ギヤ90、トルク入力ギヤ100、ピニオンギヤ104、及びプーリ装置110を一体に保持する状態で、その駆動伝達ユニット80が形成されている。
【0054】
具体的には、本実施形態の駆動伝達ユニット80は、その支持ブラケット78となるロアブラケット121及びアッパブラケット81に加え、これらのロアブラケット121及びアッパブラケット81の間に配置されたミドルブラケット122を備えている。また、本実施形態の駆動伝達ユニット80においては、このミドルブラケット122とロアブラケット121との間に架け渡された支持ピン123によって、そのリンク駆動ギヤ90の支軸90xが形成されている。更に、トルク入力ギヤ100も同様に、ミドルブラケット122とロアブラケット121との間に、その支軸100xが架け渡された構成を有している。そして、トルク入力ギヤ100の第2ギヤ部102に噛合するピニオンギヤ104の支軸104xは、ミドルブラケット122に設けられた図示しない挿通孔に挿通された状態で、そのロアブラケット121とアッパブラケット81との間に架け渡されている。
【0055】
また、本実施形態の駆動伝達ユニット80においては、ミドルブラケット122とアッパブラケット81との間に、そのプーリ装置110が形成されている。具体的には、本実施形態のアクチュエータ65は、アッパブラケット81に設けられた取着孔81x、及びミドルブラケット122に設けられた図示しない支持孔に対して、その出力軸65xを挿入する状態で、駆動伝達ユニット80の上端面80sに固定される。そして、本実施形態の駆動伝達ユニット80においては、これにより、アクチュエータ65の出力軸65xに固定された駆動プーリ111が、そのミドルブラケット122とアッパブラケット81との間に配置されている。
【0056】
同様に、ピニオンギヤ104と支軸104xを共有する従動プーリ112もまた、ミドルブラケット122とアッパブラケット81との間の位置において、そのピニオンギヤ104の支軸104xに固定されている。そして、補助プーリ114及び各ガイドローラ115もまた、それぞれ、そのミドルブラケット122とアッパブラケット81との間に架け渡された図示しない支軸を備えている。
【0057】
更に、本実施形態の駆動伝達ユニット80においては、そのロアブラケット121とのミドルブラケット122との間、及び、そのミドルブラケット122とアッパブラケット81との間が、それぞれ、複数の連結ピン125を介して固定されている。そして、本実施形態の駆動伝達ユニット80は、これにより、これらロアブラケット121、ミドルブラケット122、及びアッパブラケット81の間の位置において、その伝達機構70の構成要素が、それぞれ、回転自在に支持される構成となっている。
【0058】
(最適設計)
さらに詳述すると、図13及び図14に示すように、本実施形態のドア装置20においては、その伝達機構70を構成するリンク駆動ギヤ90の支軸90x及びトルク入力ギヤ100の支軸100xが、車両前後方向に並んで配置されている。そして、本実施形態のリンク駆動ギヤ90は、駆動リンク55としての第1のリンクアーム11に支持されたドア5が全閉位置P0にある場合に、その基端部11bに固定されたリンク駆動ギヤ90の連結突部92が、車両前後方向に延在する構成となっている。
【0059】
尚、図13及び図14においては、各図中、左右方向が車両前後方向である。また、これらの各図中、上下方向が車幅方向である。そして、これらの各図中においては、上側が車幅方向外側、つまりは車外側であり、上側が車幅方向内側、つまりは車内側となっている。
【0060】
また、本実施形態のドア装置20において、伝達機構70を構成するリンク駆動ギヤ90は、そのセクターギヤ91のギヤ歯91aを有しない周方向位置に切欠き部130を有している。具体的には、この切欠き部130は、そのリンク駆動ギヤ90を径方向に切り欠く態様で設けられている。そして、本実施形態のリンク駆動ギヤ90は、この切欠き部130の形成により、略半円形の平面形状を有するものとなっている。
【0061】
また、本実施形態のリンク駆動ギヤ90においては、その周方向における切欠き部130の端部位置に、上記連結突部92が設けられている。更に、本実施形態のドア装置20は、ドア5が全閉位置P0にある場合に、その駆動装置51の伝達機構70を形成するセクターギヤ91としての構成を有したリンク駆動ギヤ90のギヤ歯91aが、車外側に臨むように構成されている。換言すると、このとき、そのリンク駆動ギヤ90のギヤ歯91aが、車内側に向かないように構成されている。そして、本実施形態のドア装置20は、これにより、全閉位置P0から全開位置P1まで、ドア5の開閉動作に伴いセクターギヤ91のギヤ歯91aに対するトルク入力ギヤ100の噛合位置が変位しつつ、その支軸90x周りにリンク駆動ギヤ90が回動する。
【0062】
つまり、本実施形態のドア装置20は、トルク入力ギヤ100を介してリンク駆動ギヤ90に伝達される駆動トルクに基づいて、その駆動リンク55を、全閉位置P0にドア5を支持する状態から開動作(各図中、反時計周り方向に回動)させる。そして、本実施形態のドア装置20は、これにより開動作した状態のドア5を支持する駆動リンク55を、その全閉位置P0に閉動作(各図中、時計周り方向に回動)させることが可能となっている。
【0063】
更に、本実施形態のドア装置20は、ドア5が全閉位置P0にある場合に、その駆動装置51の伝達機構70を形成するセクターギヤ91としての構成を有したリンク駆動ギヤ90に設けられた切欠き部130が車内側に臨むように構成されている。そして、本実施形態のドア装置20は、これにより、このリンク駆動ギヤ90が、ドア5が全閉位置P0にある場合に、その車体ブラケット63に固定された駆動伝達ユニット80の支持ブラケット78よりも、車内側に突出しない構成となっている。
【0064】
また、本実施形態のリンク駆動ギヤ90は、その切欠き部130に設けられた周方向に延在する係合凹部131を有している。具体的には、この係合凹部131は、リンク駆動ギヤ90の支軸90xを同心位置として周方向に延在する略円弧状の平面形状を有している。更に、本実施形態のドア装置20は、車体2に対して固定された状態で、この係合凹部131内に配置される軸状の係合突部132を備えている。本実施形態のドア装置20においては、その駆動伝達ユニット80のロアブラケット121とミドルブラケット122との間に介在された連結ピン125が、この係合突部132として機能する。そして、本実施形態のドア装置20は、これらの係合凹部131及び係合突部132によって、そのリンク駆動ギヤ90の回動を制限、つまりは、そのドア5を支持する駆動リンク55の開閉動作範囲を制限するストッパ機構135が形成される構成になっている。
【0065】
即ち、このストッパ機構135は、車体2に対する駆動リンク55の連結軸77と同軸に配置されたリンク駆動ギヤ90が支軸90x周りに回動することで、見かけ上、リンク駆動ギヤ90の係合凹部131内を、その係合突部132が周方向に移動する。具体的には、この係合突部132は、リンク駆動ギヤ90の回動に伴う見かけ上の周方向移動によって、その駆動リンク55としての第1のリンクアーム11に支持されたドア5が全閉位置P0にある場合には、係合凹部131の第1端部131a近傍に配置される。また、この係合突部132は、リンク駆動ギヤ90の回動に伴う見かけ上の周方向移動によって、駆動リンク55としての第1のリンクアーム11に支持されたドア5が全開位置P1にある場合には、その係合凹部131の第2端部131b近傍に配置される。そして、本実施形態のドア装置20においては、これにより、その係合凹部131の延在方向における係合突部132の相対変位が許容される範囲内に、リンク駆動ギヤ90の回動を制限するストッパ機構135が形成されている。
【0066】
また、本実施形態のドア装置20において、二段ギヤ103としての構成を有するトルク入力ギヤ100は、リンク駆動ギヤ90に歯合する第1ギヤ部101よりも、ピニオンギヤ104に噛合する第2ギヤ部102の方が大径となっている。換言すると、このトルク入力ギヤ100は、ピニオンギヤ104を介して駆動トルクが入力される入力側の第2ギヤ部102の方が、そのリンク駆動ギヤ90に駆動トルクを出力する出力側の第1ギヤ部101よりも大径である。更に、本実施形態のドア装置20は、このトルク入力ギヤ100の第2ギヤ部102が、その車体ブラケット63に固定された駆動伝達ユニット80の支持ブラケット78よりも、車内側に突出しない構成となっている。そして、本実施形態のドア装置20においては、これにより、ドア5が全閉位置P0にある場合に、そのリンク駆動ギヤ90が、トルク入力ギヤ100の第2ギヤ部102よりも車内側に突出しないように構成されている。
【0067】
さらに詳述すると、本実施形態の車両1においては、車体ブラケット63に隣接した車内側の位置に、その内装部材140として、衝撃吸収部材141が配置される。尚、この衝撃吸収部材141は、所謂「EAパッド」等と呼称されるものであり、例えば、ウレタン材を用いて形成される。また、本実施形態のドア装置20は、ドア5の開動作に基づいて、その駆動リンク55を構成する第1のリンクアーム11の基端部11bに固定されたセクターギヤ91としてのリンク駆動ギヤ90のギヤ歯91aが車内側に臨むように構成されている。本実施形態のドア装置20においては、このドア5の開動作に基づき車内側に臨む状態となったセクターギヤ91のギヤ歯91aが、車体ブラケット63に固定された駆動伝達ユニット80の支持ブラケット78よりも車内側に突出する。尚、本実施形態のドア装置20においては、このとき、セクターギヤ91のギヤ歯91aが、その伝達機構70を構成する駆動伝達ユニット80を車体2に支持する車体ブラケット63、詳しくは第1の車体側連結部75aよりも車内側に突出する。そして、本実施形態の車両1においては、このリンク駆動ギヤ90の車内側に位置する上記内装部材140の対向面140sに、そのドア5の開動作に基づき車内側に臨むセクターギヤ91のギヤ歯91aを内側に配置する溝状の凹部142が設けられている。
【0068】
(作用)
即ち、通常、車両1のドア5は、このドア5が全閉位置P0にある状態、つまりは、その全閉状態に最も長く保持される。この点を踏まえ、周方向の一部分にギヤ歯91aを有したセクターギヤ91を、そのドア5を支持する駆動リンク55と一体に回動するリンク駆動ギヤ90に用いるとともに、ドア5が全閉位置P0にある場合に、そのギヤ歯91aが車外側に臨む構成とする。これにより、そのリンク駆動ギヤ90が車内側に突出し難くなる。そして、そのギヤ歯91aに異物が干渉し難くなる。
【0069】
次に、本実施形態の効果について説明する。
(1)車両1のドア装置20は、車体2に対する第1の回動連結点X1と車両1のドア5に対する第2の回動連結点X2とを有する第1及び第2のリンクアーム11,12を備える。また、ドア装置20は、第1のリンクアーム11を駆動リンク55として、この第1のリンクアーム11を回動させることにより、その第1及び第2のリンクアーム11,12が形成するリンク機構15の動作に基づきドア5を開閉動作させる駆動装置51を備える。駆動装置51は、駆動トルクを出力するアクチュエータ65と、その駆動トルクを駆動リンク55に伝達する伝達機構70と、を備える。伝達機構70は、車体2に対する駆動リンク55の連結軸77と同軸位置に回動中心Mを有して駆動リンク55に固定されるリンク駆動ギヤ90と、このリンク駆動ギヤ90に噛合する状態で駆動トルクが入力されるトルク入力ギヤ100と、を備える。更に、リンク駆動ギヤ90は、周方向の一部分にギヤ歯91aを有したセクターギヤ91としての構成を有する。そして、リンク駆動ギヤ90は、駆動リンク55に支持されたドア5が全閉位置P0にある場合に、そのセクターギヤ91のギヤ歯91aが車外側に臨むように構成される。
【0070】
上記構成によれば、ドア5が全閉位置P0にある場合に、その車体2に対する連結軸77周りに駆動リンク55と一体に回動するリンク駆動ギヤ90の車内側への突出量を小さく抑えることができる。更に、そのギヤ歯91aに対して異物が干渉し難くすることができる。その結果、このリンク駆動ギヤ90については、その車内側の保護構造を簡素化することが可能になる。そして、これにより、例えば、カバー部材等の保護構造を含めた車内側への突出量を抑えることで、有効に利用することのできる駆動装置51近傍の車室空間を拡張することができる。
【0071】
(2)車体2に対する駆動リンク55の連結軸77は、この連結軸77の軸方向に離間した第1位置Y1及び第2位置Y2において、第1及び第2のリンク側連結部73a,73bと、第1及び第2の車体側連結部75a,75bとが回動可能に連結されてなる。そして、伝達機構70は、連結軸77の軸方向において、その第1のリンク側連結部73aと第1の車体側連結部75aとが連結された第1位置Y1と、その第2のリンク側連結部73bと第2の車体側連結部75bとが連結された第2位置Y2との間に配置される。
【0072】
上記構成によれば、駆動リンク55に対して駆動装置51の伝達機構70をコンパクトに配置することができる。その結果、車両1に対する高い搭載性を確保することができる。更に、第1及び第2の車体側連結部75a,75bが、伝達機構70の保護部材として機能する。そして、これにより、有効に利用することのできる駆動装置51近傍の車室空間を拡張することができる。
【0073】
(3)トルク入力ギヤ100は、同軸に一体回転する第1ギヤ部101及び第2ギヤ部102を備えた二段ギヤ103としての構成を有する。更に、このトルク入力ギヤ100は、リンク駆動ギヤ90に歯合する第1ギヤ部101よりも駆動トルクが入力される第2ギヤ部102が大径となっている。そして、ドア装置20は、ドア5が全閉位置P0にある場合に、そのリンク駆動ギヤ90がトルク入力ギヤ100の第2ギヤ部102よりも車内側に突出しないように構成される。
【0074】
即ち、トルク入力ギヤ100に二段ギヤ103を用いることで、簡素な構成にて、コンパクトに減速機構を形成することができる。そして、このトルク入力ギヤ100の第2ギヤ部102を基準にリンク駆動ギヤ90の車内側への突出量を抑えることで、より効果的に、有効に利用することのできる駆動装置51近傍の車室空間を拡張することができる。
【0075】
(4)リンク駆動ギヤ90は、そのセクターギヤ91としてのギヤ歯91aを有しない周方向位置に、このリンク駆動ギヤ90を径方向に切り欠いた切欠き部130を有する。そして、リンク駆動ギヤ90は、ドア5が全閉位置P0にある場合に、その切欠き部130が車内側に臨むように構成される。
【0076】
上記構成によれば、より一層、そのリンク駆動ギヤ90の車内側への突出量を抑えることができる。そして、これにより、より効果的に、有効に利用することのできる駆動装置51近傍の車室空間を拡張することができる。
【0077】
(5)ドア装置20は、リンク駆動ギヤ90の切欠き部130に設けられた周方向に延在する係合凹部131と、車体2に対して固定された状態で、その係合凹部131内に配置される係合突部132と、を備える。そして、ドア装置20においては、これにより、その係合凹部131の延在方向における係合突部132の相対変位が許容される範囲内に、そのリンク駆動ギヤ90の回動を制限するストッパ機構135が形成される。
【0078】
上記構成によれば、簡素な構成にて、ドア5の全閉位置P0を超える過剰な駆動リンク55の閉動作、及びドア5の全開位置P1を超える過剰な駆動リンク55の開動作を規制することができる。そして、リンク駆動ギヤ90の切欠き部130を利用することで、コンパクトに、そのストッパ機構135を形成することができる。
【0079】
(6)リンク駆動ギヤ90の車内側となる位置には、車両1の内装部材140が配置される。そして、ドア装置20は、ドア5の開動作に基づき車内側に臨むセクターギヤ91としての構成を有したリンク駆動ギヤ90のギヤ歯91aが、その内装部材140に設けられた凹部142の内側に配置されるように構成される。
【0080】
上記構成によれば、車両1の内装部材140を、その駆動装置51を構成する伝達機構70に対して、より近い位置に配置することができる。そして、これにより、有効に利用することができる車室空間を拡張することができる。
【0081】
更に、リンク駆動ギヤ90の車内側に配置された内装部材140が、そのリンク駆動ギヤ90の保護部材として機能する。そして、これにより、ドア5の開動作時におけるリンク駆動ギヤ90の保護を可能とすることで、高い信頼性を確保することができる。
【0082】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0083】
・上記実施形態では、リンク駆動ギヤ90は、セクターギヤ91としての構成を有するとともに、そのギヤ歯91aを有しない周方向位置に設けられた切欠き部130を備えることとした。しかし、これに限らず、セクターギヤ91としてのリンク駆動ギヤ90が、このような切欠き部130を有しない構成であってもよい。即ち、単にギヤ歯91aを有しない周方向位置を有した略円形の平面形状を有していてもよい。
【0084】
・上記実施形態では、駆動伝達ユニット80のロアブラケット121とミドルブラケット122との間に介在された連結ピン125が、ストッパ機構135の係合突部132として機能することとした。しかし、これに限らず、係合突部132の構成については、任意に変更してもよい。そして、必ずしも、このようなリンク駆動ギヤ90の切欠き部130を利用したストッパ機構135を有していなくともよい。
【0085】
・駆動リンク55に対するリンク駆動ギヤ90の固定構造は、任意に変更してもよい。
・上記実施形態では、トルク入力ギヤ100が二段ギヤ103としての構成を有することとしたが、このトルク入力ギヤ100の構成についてもまた、任意に変更してもよい。
【0086】
・上記実施形態では、車体2に対する駆動リンク55の連結軸77は、上下方向に延在することとしたが、必ずしも厳密に垂直でなくともよく、その連結軸77が傾きを有する構成であってもよい。
【0087】
・上記実施形態では、伝達機構70は、その車体ブラケット63に対し、支持ブラケット78を有した駆動伝達ユニット80を固定することにより形成される。そして、アクチュエータ65は、この駆動伝達ユニット80に固定された状態で、その駆動リンク55に位置付けられた第1のリンクアーム11における第1の回動連結点X1の形成位置に配置されることとした。しかし、これに限らず、上記のようなリンク駆動ギヤ90及びトルク入力ギヤ100を有する構成であれば、その伝達機構70の構成については任意に変更してもよい。例えば、必ずしも駆動伝達ユニット80のようにユニット化されたものでなくともよい。更に、車体2に対する駆動リンク55の連結軸77を形成する構造についてもまた、任意に変更してもよい。
【0088】
・駆動リンク55は、必ずしもメインリンク21に位置付けられた第1のリンクアーム11でなくともよい。サブリンク22に位置付けられた第2のリンクアーム12を駆動リンク55としてもよい。そして、第1及び第2のリンクアーム11,12の両方を駆動リンク55として、これらの第1及び第2のリンクアーム11,12に対して、それぞれ、そのアクチュエータ65の駆動力を付与する構成に適用してもよい。
【0089】
・上記実施形態では、リンク駆動ギヤ90の車内側となる位置に、内装部材140としての衝撃吸収部材141が配置されることとした。しかし、これに限らず、リンク駆動ギヤ90の車内側となる位置に配置される内装部材140は、どのようなものであってもよい。ドア5の開動作に基づき車内側に臨むセクターギヤ91としての構成を有したリンク駆動ギヤ90のギヤ歯91aを内側に配置する凹部142を形成可能であることが好ましい。そして、リンク駆動ギヤ90に隣接した位置に車両1の内装部材140が配置されない構成に適用してもよい。
【符号の説明】
【0090】
1…車両
2…車体
5…ドア
11…第1のリンクアーム
12…第2のリンクアーム
15…リンク機構
20…ドア装置
51…駆動装置
55…駆動リンク
65…アクチュエータ
70…伝達機構
77…連結軸
90…リンク駆動ギヤ
91…セクターギヤ
91a…ギヤ歯
100…トルク入力ギヤ
X1…第1の回動連結点
X2…第2の回動連結点
M…回動中心
P0…全閉位置
図1
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