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特開2024-123436ホスホリルコリン類似基を有する新規両親媒性物質および化粧料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123436
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】ホスホリルコリン類似基を有する新規両親媒性物質および化粧料
(51)【国際特許分類】
   C07F 9/09 20060101AFI20240905BHJP
   A61K 8/55 20060101ALI20240905BHJP
   A61Q 5/00 20060101ALI20240905BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240905BHJP
   C09K 23/14 20220101ALI20240905BHJP
   C09K 23/18 20220101ALI20240905BHJP
【FI】
C07F9/09 V CSP
A61K8/55
A61Q5/00
A61Q19/00
C09K23/14
C09K23/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030845
(22)【出願日】2023-03-01
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 奈良女子大学大学院人間文化総合科学研究科化学生物環境学専攻 修士論文発表会による公開 公開日:令和5年2月13日
(71)【出願人】
【識別番号】592042750
【氏名又は名称】株式会社アルビオン
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 靖
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 勝行
(72)【発明者】
【氏名】石黒 将士
(72)【発明者】
【氏名】吉村 倫一
(72)【発明者】
【氏名】矢田 詩歩
【テーマコード(参考)】
4C083
4D077
4H050
【Fターム(参考)】
4C083AC102
4C083AC122
4C083AC901
4C083AC902
4C083AD112
4C083AD352
4C083AD572
4C083CC02
4C083CC04
4C083CC31
4C083DD27
4C083EE06
4D077AA09
4D077AB11
4D077DC38X
4D077DC67X
4H050AA01
4H050AA02
4H050AB12
4H050AB68
4H050AC50
(57)【要約】
【課題】界面活性剤としての性能が高い新たな化合物を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、式(I)[式中、RおよびRは、炭素数10~22の炭化水素基であり、Rは、-NR、または、-N・Xであり、R、R、R、およびRは、C1-6アルキル基であり、Xは、アニオンであり、および、nは、2~30の整数である。]で表される化合物、またはその塩、に関する。本発明は、式(I)の化合物またはその塩を含む化粧料に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
[式中、
は、炭素数10~22の炭化水素基であり、
は、C1-6アルキル基であり、
は、C1-6アルキル基であり、
は、-NR、または、-N・Xであり、
は、C1-6アルキル基であり、
は、C1-6アルキル基であり、
は、炭素数10~22の炭化水素基であり、
は、アニオンであり、および、
nは、2~30の整数である。]
で表される化合物、またはその塩。
【請求項2】
が、直鎖または分岐鎖状のアルキル基である、請求項1に記載の化合物、またはその塩。
【請求項3】
が、炭素数10~16の直鎖状のアルキル基である、請求項1または2に記載の化合物、またはその塩。
【請求項4】
nが、3~20の整数である、請求項1~3のいずれか1項に記載の化合物、またはその塩。
【請求項5】
がメチル基であり、Rがメチル基であり、Rがメチル基であり、そして、Rがメチル基である、請求項1~4のいずれか1項に記載の化合物、またはその塩。
【請求項6】
が、直鎖または分岐鎖状のアルキル基である、請求項1~5のいずれか1項に記載の化合物、またはその塩。
【請求項7】
が、炭素数10~16の直鎖状のアルキル基である、請求項1~6のいずれか1項に記載の化合物、またはその塩。
【請求項8】
が、ハロゲン化物イオンである、請求項1~7のいずれか1項に記載の化合物、またはその塩。
【請求項9】
下記:
【化2】
からなる群から選択される、請求項1~8のいずれか1項に記載の化合物、またはその塩。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の化合物またはその塩からなる、界面活性剤。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか1項に記載の化合物またはその塩を含む、化粧料。
【請求項12】
化粧料を製造するための、請求項1~9のいずれか1項に記載の化合物またはその塩の使用。
【請求項13】
請求項1~9のいずれか1項に記載の化合物またはその塩を製造する方法であって、
式(II)の化合物を、式(III)の化合物と反応させて、式(Ia)の化合物を得る工程:
【化3】
[式中、R、R、R、R、R、およびnは、請求項1で定義されたとおりである。]
を含む、製造方法。
【請求項14】
式(Ia)の化合物を、R-Xaで表される化合物と反応させて、式(Ib-1)の化合物を得る工程:
【化4】
[式中、R、R、R、R、R、R、およびnは、請求項1で定義されたとおりであり、Xaは、ハロゲン原子である。]
をさらに含む、請求項13に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホスホリルコリン類似基を有する新規両親媒性物質となる化合物、およびそれを用いた化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
界面活性剤は親水性基と疎水性基、あるいは極性基と無極性基という二つの相反する部分を分子中に持つ物質であり、例えば、乳化、分散、可溶化、濡れ、洗浄、防食、潤滑、帯電防止などの効果を有することができる。界面活性剤を利用した産業は非常に多岐にわたるが、なかでも近年、生化学、医薬品、衛生材料、化粧品など生体に関連した分野において、より付加価値の高い高機能性界面活性剤が注目されている。
【0003】
化粧品分野において使用される界面活性剤としては、イオン性界面活性剤や非イオン性界面活性剤が挙げられ、使用用途や使用感、安定性などを考慮し、その都度配合する界面活性剤が選択されている。イオン性界面活性剤の中には、分子内に陽イオン部位と陰イオン部位を併せ持ったベタイン型界面活性剤も存在する。また1鎖1親水基型界面活性剤がスペーサーにより結合したジェミニ型界面活性剤(1分子内に複数の疎水性鎖と親水性基を持つ多鎖多親水基型の両親媒性物質)は、低臨界ミセル濃度や低クラフト点に代表される高い界面活性能、容易にベシクルなどの高次構造を形成する分子会合性などの特徴を有している。
【0004】
一方、ホスホリルコリン基は高い親水性を持つ両性の極性基であり、ホスホリルコリン基を有する代表的な化粧品原料としてリン脂質やレシチンがある。これまでにこれら天然物に由来した構造と類似の構造を持つジェミニ型界面活性剤が開発されている。例えば、非特許文献1には、親水基としてホスホリルコリン類似基を有するジェミニ型界面活性剤の合成およびその溶液物性に関する報告がなされており、該界面活性剤が優れた界面特性を有することが開示されている。
【0005】
さらに近年、使用感や皮膚への刺激性に配慮した界面活性剤の開発が求められており、生体に対する適合性が高く、低刺激性、高安全性でありながら界面活性剤として要求される特性を満たした高機能の界面活性剤が必要とされている。生体関連用途においては、生体に対するマイルドな特性、すなわち生体適合性が要求されていることから、生化学領域における界面活性剤(バイオサーファクタント)あるいはバイオサーファクタント類似の構造を持つことが好ましい。バイオサーファクタントの中には生体由来の界面活性剤(レシチンなど)や微生物が産生する界面活性剤、生体内に存在する界面活性剤がある。また、ある種の界面活性剤は、製剤における界面活性剤としての機能に留まらず、生体(例えば皮膚)に直接作用を及ぼして、有効に機能することが知れられている。例えば、特許文献1では、ホスホリルコリン類似基を含有する化合物が開発され、経皮吸収促進作用及び保湿性向上作用を示し、生体に有用であることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011-213602号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Org.Lett.,Vol.1, No.9, 1347-1350頁(1999)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のように、生体適合性を有し、界面活性剤としての性能が優れた新たな界面活性剤がさらに求められている。
【0009】
本発明者らは、鋭意検討の結果、特定のホスホリルコリン類似基を有する化合物が、生体適合性があり、例えば乳化または分散あるいは可溶化などの界面活性剤としての性能が高いことを見出して、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明は、生体適合性を有し、界面活性剤としての性能が優れた新規な化合物、およびそれを用いた化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、下記に挙げる実施態様を含むが、これらに限定されるものではない。
[1] 式(I):
【化1】
[式中、
は、炭素数10~22の炭化水素基であり、
は、C1-6アルキル基であり、
は、C1-6アルキル基であり、
は、-NR、または、-N・Xであり、
は、C1-6アルキル基であり、
は、C1-6アルキル基であり、
は、炭素数10~22の炭化水素基であり、
は、アニオンであり、および、
nは、2~30の整数である。]
で表される化合物、またはその塩。
[2] Rが、直鎖または分岐鎖状のアルキル基である、項[1]に記載の化合物、またはその塩。
[3] Rが、炭素数10~16の直鎖状のアルキル基である、項[1]または[2]に記載の化合物、またはその塩。
[4] nが、3~20の整数である、項[1]~[3]のいずれか1項に記載の化合物、またはその塩。
[5] Rがメチル基であり、Rがメチル基であり、Rがメチル基であり、そして、Rがメチル基である、項[1]~[4]のいずれか1項に記載の化合物、またはその塩。
[6] Rが、直鎖または分岐鎖状のアルキル基である、項[1]~[5]のいずれか1項に記載の化合物、またはその塩。
[7] Rが、炭素数10~16の直鎖状のアルキル基である、項[1]~[6]のいずれか1項に記載の化合物、またはその塩。
[8] Xが、ハロゲン化物イオンである、項[1]~[7]のいずれか1項に記載の化合物、またはその塩。
[9] 下記:
【化2】
からなる群から選択される、項[1]~[8]のいずれか1項に記載の化合物、またはその塩。
[10] 項[1]~[9]のいずれか1項に記載の化合物またはその塩からなる、界面活性剤。
[11] 項[1]~[9]のいずれか1項に記載の化合物またはその塩を含む、化粧料。
[12] 化粧料を製造するための、項[1]~[9]のいずれか1項に記載の化合物またはその塩の使用。
[13] 項[1]~[9]のいずれか1項に記載の化合物またはその塩を製造する方法であって、
式(II)の化合物を、式(III)の化合物と反応させて、式(Ia)の化合物を得る工程:
【化3】
[式中、R、R、R、R、R、およびnは、項[1]で定義されたとおりである。]
を含む、製造方法。
[14] 式(Ia)の化合物を、R-Xaで表される化合物と反応させて、式(Ib-1)の化合物を得る工程:
【化4】
[式中、R、R、R、R、R、R、およびnは、項[1]で定義されたとおりであり、Xaは、ハロゲン原子である。]
をさらに含む、項[13]に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、生体適合性を有し、例えば乳化または分散あるいは可溶化などの界面活性剤としての性能が優れた新規な化合物、およびそれを用いた化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳細を説明する。
【0014】
化合物
本発明は、式(I):
【化5】
[式中、
は、炭素数10~22の炭化水素基であり、
は、C1-6アルキル基であり、
は、C1-6アルキル基であり、
は、-NR、または、-N・Xであり、
は、C1-6アルキル基であり、
は、C1-6アルキル基であり、
は、炭素数10~22の炭化水素基であり、
は、アニオンであり、および、
nは、2~30の整数である。]
で表される化合物、またはその塩、に関する。以下、該化合物またはその塩をまとめて本発明化合物または本化合物とも称する。
【0015】
は、炭素数10~22の炭化水素基である。炭化水素基は、飽和炭化水素基であってもよいし、不飽和炭化水素基であってもよい。炭素数10~22の炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、および環状のいずれであってもよい。ただし、界面活性剤の性能(例えば、乳化、可溶化、分散など)の観点から、環状の炭化水素基の場合、芳香族環よりも脂環式環の方が好ましい。Rの炭化水素基は、好ましくは、直鎖状または分岐鎖状の炭化水素基であり、より好ましくは、直鎖状の炭化水素基である。炭素数10~22の炭化水素基は、1価の脂肪族アルコールからヒドロキシ基(OH)を除いた構造を有する炭化水素基(例えば、脂肪族の、アルキル基、アルケニル基)であってもよい。Rにおける炭化水素基の炭素数は、10~20がより好ましく、10~18がさらに好ましい。なお、飽和炭化水素基は、例えば、アルキル基と呼ばれるものであってよい。不飽和炭化水素基は、例えば、アルケニル基またはアルキニル基と呼ばれるものであってよい。式(I)の化合物において、Rは、界面活性剤における疎水基として機能し得る。そのため、Rの炭化水素基は疎水性の基であることが好ましい。
【0016】
は、飽和炭化水素基であることが好ましい一態様である。飽和炭化水素基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。Rは、直鎖または分岐鎖状のアルキル基であることが好ましい。直鎖アルキル基としては、例えば、デシル基(炭素数10)、ドデシル基(炭素数12;ラウリル基とも呼ばれる)、テトラデシル基(炭素数14;ミリスチル基とも呼ばれる)、ヘキサデシル基(炭素数16;セチル基とも呼ばれる)、オクタデシル基(炭素数18;ステアリル基とも呼ばれる)、ドコシル基(炭素数22;ベヘニル基とも呼ばれる)などが挙げられる。分岐鎖アルキル基としては、例えば、16-メチルヘプタデシル基(炭素数18;イソステアリル基とも呼ばれる)などが挙げられる。Rは、炭素数10~16の直鎖状のアルキル基であることが好ましい。さらに、そのうち、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、およびヘキサデシル基が好ましく、ドデシル基およびテトラデシル基がより好ましい。
【0017】
の炭化水素基は、不飽和であってもよく、その場合、不飽和は、炭素-炭素二重結合の不飽和、および炭素-炭素三重結合の不飽和のいずれであってもよいが、好ましくは、炭素-炭素二重結合の不飽和である。炭素-炭素二重結合を有する不飽和炭化水素基は、アルケニル基とも称せられる。不飽和の数は、1~3個が好ましく、1個または2個がより好ましく、1個がさらに好ましい。不飽和の数が2つ以上の場合、その全てが、炭素-炭素二重結合の不飽和であることが好ましい。不飽和炭化水素基としては、例えば、オレイル基(シス-9-オクタデセニル基とも呼ばれる)、リノレイル基などが挙げられる。
【0018】
は、C1-6アルキル基である。本明細書において、「C1-6アルキル基」とは、炭素数1~6個のアルキル基を意味する。Rのアルキル基は、直鎖状のアルキル基であってもよいし、分岐鎖状のアルキル基であってもよい。Rのアルキル基は、直鎖状のアルキル基であることがより好ましい。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基(n-プロピル基、イソプロピル基)、ブチル基(n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基)、ペンチル基(n-ペンチル基、ネオペンチル基など)、およびヘキシル基(n-ヘキシル基など)を挙げることができる。Rは、C1-3アルキル基(メチル基、エチル基、またはプロピル基)であることが好ましく、メチル基、またはエチル基であることがより好ましく、メチル基であることがさらに好ましい。
【0019】
は、C1-6アルキル基である(「C1-6アルキル基」の定義は上述のとおり)。Rのアルキル基は、直鎖状のアルキル基であってもよいし、分岐鎖状のアルキル基であってもよい。Rのアルキル基は、直鎖状のアルキル基であることがより好ましい。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基(n-プロピル基、イソプロピル基)、ブチル基(n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基)、ペンチル基(n-ペンチル基、ネオペンチル基など)、およびヘキシル基(n-ヘキシル基など)を挙げることができる。Rは、C1-3アルキル基(メチル基、エチル基、またはプロピル基)であることが好ましく、メチル基、またはエチル基であることがより好ましく、メチル基であることがさらに好ましい。
【0020】
とRは、同じ基であってもよいし、異なる基であってもよい。RとRは、同じ基であることが好ましい。RとRは、どちらも、メチル基、エチル基、またはプロピル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。
【0021】
は、-NR、または、-N・Xである。すなわち、Rは、
【化6】
[式中、波線は他の部分への結合を表す。]
で表される基である。
【0022】
は、C1-6アルキル基である(「C1-6アルキル基」の定義は上述のとおり)。Rのアルキル基は、直鎖状のアルキル基であってもよいし、分岐鎖状のアルキル基であってもよい。Rのアルキル基は、直鎖状のアルキル基であることがより好ましい。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基(n-プロピル基、イソプロピル基)、ブチル基(n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基)、ペンチル基(n-ペンチル基、ネオペンチル基など)、およびヘキシル基(n-ヘキシル基など)を挙げることができる。Rは、C1-3アルキル基(メチル基、エチル基、またはプロピル基)であることが好ましく、メチル基、またはエチル基であることがより好ましく、メチル基であることがさらに好ましい。
【0023】
は、C1-6アルキル基である(「C1-6アルキル基」の定義は上述のとおり)。Rのアルキル基は、直鎖状のアルキル基であってもよいし、分岐鎖状のアルキル基であってもよい。Rのアルキル基は、直鎖状のアルキル基であることがより好ましい。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基(n-プロピル基、イソプロピル基)、ブチル基(n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基)、ペンチル基(n-ペンチル基、ネオペンチル基など)、およびヘキシル基(n-ヘキシル基など)を挙げることができる。Rは、C1-3アルキル基(メチル基、エチル基、またはプロピル基)であることが好ましく、メチル基、またはエチル基であることがより好ましく、メチル基であることがさらに好ましい。
【0024】
とRは、同じ基であってもよいし、異なる基であってもよい。RとRは、同じ基であることが好ましい。RとRは、どちらも、メチル基、エチル基、またはプロピル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。
【0025】
ここで、R、R、RおよびRは、好ましくは、いずれも、独立して、メチル基、エチル基、およびプロピル基から選ばれる基であり、より好ましくは、独立して、メチル基およびエチル基から選ばれる基であり、さらに好ましくは、R、R、RおよびRは、全てメチル基である。
【0026】
は、炭素数10~22の炭化水素基である。炭化水素基は、飽和炭化水素基であってもよいし、不飽和炭化水素基であってもよい。炭素数10~22の炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、および環状のいずれであってもよい。ただし、界面活性剤の性能(例えば、乳化、可溶化、分散など)の観点から、環状の炭化水素基の場合、芳香族環よりも脂環式環の方が好ましい。Rの炭化水素基は、好ましくは、直鎖状または分岐鎖状の炭化水素基であり、より好ましくは、直鎖状の炭化水素基である。炭素数10~22の炭化水素基は、1価の脂肪族アルコールからヒドロキシ基(OH)を除いた構造を有する炭化水素基(例えば、脂肪族の、アルキル基、アルケニル基)であってもよい。Rにおける炭化水素基の炭素数は、10~20がより好ましく、10~18がさらに好ましい。なお、飽和炭化水素基は、例えば、アルキル基と呼ばれるものであってよい。不飽和炭化水素基は、例えば、アルケニル基またはアルキニル基と呼ばれるものであってよい。式(I)の化合物において、Rは、界面活性剤における疎水基として機能し得る。そのため、Rの炭化水素基は疎水性の基であることが好ましい。
【0027】
は、飽和炭化水素基であることが好ましい一態様である。飽和炭化水素基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。Rは、直鎖または分岐鎖状のアルキル基であることが好ましい。直鎖アルキル基としては、例えば、デシル基(炭素数10)、ドデシル基(炭素数12;ラウリル基とも呼ばれる)、テトラデシル基(炭素数14;ミリスチル基とも呼ばれる)、ヘキサデシル基(炭素数16;セチル基とも呼ばれる)、オクタデシル基(炭素数18;ステアリル基とも呼ばれる)、ドコシル基(炭素数22;ベヘニル基とも呼ばれる)などが挙げられる。分岐鎖アルキル基としては、例えば、16-メチルヘプタデシル基(炭素数18;イソステアリル基とも呼ばれる)などが挙げられる。Rは、炭素数10~16の直鎖状のアルキル基であることが好ましい。さらに、そのうち、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、およびヘキサデシル基が好ましく、ドデシル基およびテトラデシル基がより好ましい。
【0028】
の炭化水素基は、不飽和であってもよく、その場合、不飽和は、炭素-炭素二重結合の不飽和、および炭素-炭素三重結合の不飽和のいずれであってもよいが、好ましくは、炭素-炭素二重結合の不飽和である。炭素-炭素二重結合を有する不飽和炭化水素基は、アルケニル基とも称せられる。不飽和の数は、1~3個が好ましく、1個または2個がより好ましく、1個がさらに好ましい。不飽和の数が2つ以上の場合、その全てが、炭素-炭素二重結合の不飽和であることが好ましい。不飽和炭化水素基としては、例えば、オレイル基(シス-9-オクタデセニル基とも呼ばれる)、リノレイル基などが挙げられる。
【0029】
とRは、同じ基であってもよいし、異なる基であってもよい。RとRは、同じ基であることが好ましい一態様である。RとRは、どちらも、炭素数が同じ直鎖状のアルキル基であってよい。RおよびRは、両方とも、独立して、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、およびヘキサデシル基から選ばれる基であることが好ましく、さらに、ドデシル基およびテトラデシル基から選ばれる基であることがより好ましい。
【0030】
は、アニオンである。Rが、-N・Xである場合(第4級アミンが存在する場合)、化合物は、電気的に中性な状態を得るために、カウンターイオンとなるアニオンを要する。Xは、1価のアニオンであることが好ましい。Xとしては、ハロゲン化物イオン(F、Cl、Br、I)、水酸化物イオン(OH)などの無機アニオン、酢酸イオンなどの有機アニオンが挙げられる。Xは、ハロゲン化物イオンであることが好ましく、臭化物イオン(Br)であることがより好ましい。なお、溶液中などにおいては、式(I)の化合物は、解離して、Xと結合していない状態(遊離状態)で存在していてもよい。
【0031】
nは、2~30の整数である。nは、メチレン鎖の数を表しており、合成上の観点から、式(I)の化合物においては、少なくとも2である。nは、3以上が好ましい。nは、25以下が好ましく、20以下が好ましく、15以下が好ましい。nは、より好ましくは、2~15であり、さらに好ましくは、2~10であり、よりさらに好ましくは、3~10である。また、nは、2、3、4または5であることも好ましい。別の好ましい一態様において、nは、3~20の整数である。
【0032】
式(I)の化合物は、塩の形態になり得る。例えば、式(I)の化合物は、第3級アミン(NR)を有する場合に、この第3級アミンに酸が付加して、酸付加塩となってもよい。酸付加塩を形成する酸としては、塩酸、リン酸、硫酸などの無機酸、酢酸、ギ酸、クエン酸などの有機酸が挙げられる。また、式(I)の化合物は、アニオン性のホスフェート、およびカチオン性の第4級アミンを有しており、これらの部分にイオン(カチオンまたはアニオン)が付加して塩となってもよい。カチオンとしては、Na、Kなどの金属カチオンが挙げられる。アニオンとしては、ハロゲン化物イオン(F、Cl、Br、I)、水酸化物イオンなどの無機アニオン、酢酸イオンなどの有機アニオンが挙げられる。
【0033】
一実施態様において、式(I)の化合物は、式(Ia)の化合物であり得る。
【化7】
式中、R、R、R、R、R、およびnは、式(I)で定義されたとおりである。また、これらの置換基およびnの好ましい態様は、式(I)で述べたのと同様である。
【0034】
他の一実施態様において、式(I)の化合物は、式(Ib)の化合物であり得る。
【化8】
式中、R、R、R、R、R、R、X、およびnは、式(I)で定義されたとおりである。また、これらの置換基およびnの好ましい態様は、式(I)で述べたのと同様である。
【0035】
式(I)の化合物の好ましい態様について、以下に列挙する。
[態様1-1] Rが、炭素数10~22の炭化水素基であり、Rが、C1-6アルキル基であり、Rが、Rと同一のC1-6アルキル基であり、Rが、-NRであり、Rが、C1-6アルキル基であり、Rが、Rと同一のC1-6アルキル基であり、および、nが、2~30である、式(I)の化合物。
[態様1-2] Rが、C10-22アルキル基であり、Rが、C1-6アルキル基であり、Rが、C1-6アルキル基であり、Rが、-NRであり、Rが、C1-6アルキル基であり、Rが、C1-6アルキル基であり、および、nが、2~30である、式(I)の化合物。
[態様1-3] Rが、C10-22アルキル基であり、Rが、C1-3アルキル基であり、Rが、C1-3アルキル基であり、Rが、-NRであり、Rが、C1-3アルキル基であり、Rが、C1-3アルキル基であり、および、nが、2~30である、式(I)の化合物。
[態様1-4] Rが、C10-22アルキル基であり、Rが、C1-3アルキル基であり、Rが、Rと同一のC1-3アルキル基であり、Rが、-NRであり、Rが、C1-3アルキル基であり、Rが、Rと同一のC1-3アルキル基であり、および、nが、2~10である、式(I)の化合物。
[態様1-5] Rが、C10-22アルキル基であり、Rが、C1-3アルキル基であり、Rが、Rと同一のC1-3アルキル基であり、Rが、-NRであり、Rが、Rと同一のC1-3アルキル基であり、Rが、Rと同一のC1-3アルキル基であり、および、nが、2~10である、式(I)の化合物。
[態様1-6] Rが、C10-22アルキル基であり、Rが、メチル基またはエチル基であり、Rが、メチル基またはエチル基であり、Rが、-NRであり、Rが、メチル基またはエチル基であり、Rが、メチル基またはエチル基であり、および、nが、2~30である、式(I)の化合物。
[態様1-7] Rが、C10-22アルキル基であり、Rが、メチル基またはエチル基であり、Rが、メチル基またはエチル基であり、Rが、-NRであり、Rが、メチル基またはエチル基であり、Rが、メチル基またはエチル基であり、および、nが、2~10である、式(I)の化合物。
[態様1-8] Rが、C10-22アルキル基であり、Rが、メチル基であり、Rが、メチル基であり、Rが、-NRであり、Rが、メチル基であり、Rが、メチル基であり、および、nが、2~30である、式(I)の化合物。
[態様1-9] Rが、C10-22アルキル基であり、Rが、メチル基であり、Rが、メチル基であり、Rが、-NRであり、Rが、メチル基であり、Rが、メチル基であり、および、nが、2~10である、式(I)の化合物。
[態様1-10] Rが、C10-22アルキル基であり、Rが、メチル基であり、Rが、メチル基であり、Rが、-NRであり、Rが、メチル基であり、Rが、メチル基であり、および、nが、2、3、4または5である、式(I)の化合物。
[態様1-11] Rが、ドデシル基またはテトラデシル基であり、Rが、メチル基またはエチル基であり、Rが、メチル基またはエチル基であり、Rが、-NRであり、Rが、メチル基またはエチル基であり、Rが、メチル基またはエチル基であり、および、nが、2~10である、式(I)の化合物。
【0036】
ここで、上記の態様1-1~1-11は、全て、Rが-NRである態様であり、式(Ia)の化合物の好ましい態様も示している。
【0037】
[態様2-1] Rが、炭素数10~22の炭化水素基であり、Rが、C1-6アルキル基であり、Rが、Rと同一のC1-6アルキル基であり、Rが、-N・Xであり、Rが、C1-6アルキル基であり、Rが、Rと同一のC1-6アルキル基であり、Rが、炭素数10~22の炭化水素基であり、Xが、アニオン(好ましくはハロゲン化物イオン)であり、および、nが、2~30である、式(I)の化合物。
[態様2-2] Rが、炭素数10~22の炭化水素基であり、Rが、C1-6アルキル基であり、Rが、Rと同一のC1-6アルキル基であり、Rが、-N・Xであり、Rが、C1-6アルキル基であり、Rが、Rと同一のC1-6アルキル基であり、Rが、Rと同一の炭素数10~22の炭化水素基であり、Xが、アニオン(好ましくはハロゲン化物イオン)であり、および、nが、2~30である、式(I)の化合物。
[態様2-3] Rが、C10-22アルキル基であり、Rが、C1-6アルキル基であり、Rが、C1-6アルキル基であり、Rが、-N・Xであり、Rが、C1-6アルキル基であり、Rが、C1-6アルキル基であり、Rが、C10-22アルキル基であり、Xが、アニオン(好ましくはハロゲン化物イオン)であり、および、nが、2~30である、式(I)の化合物。
[態様2-4] Rが、C10-22アルキル基であり、Rが、C1-3アルキル基であり、Rが、C1-3アルキル基であり、Rが、-N・Xであり、Rが、C1-3アルキル基であり、Rが、C1-3アルキル基であり、Rが、C10-22アルキル基であり、Xが、アニオン(好ましくはハロゲン化物イオン)であり、および、nが、2~30である、式(I)の化合物。
[態様2-5] Rが、C10-22アルキル基であり、Rが、C1-3アルキル基であり、Rが、Rと同一のC1-3アルキル基であり、Rが、-N・Xであり、Rが、C1-3アルキル基であり、Rが、Rと同一のC1-3アルキル基であり、Rが、Rと同一のC10-22アルキル基であり、Xが、アニオン(好ましくはハロゲン化物イオン)であり、および、nが、2~10である、式(I)の化合物。
[態様2-6] Rが、C10-22アルキル基であり、Rが、C1-3アルキル基であり、Rが、Rと同一のC1-3アルキル基であり、Rが、-N・Xであり、Rが、Rと同一のC1-3アルキル基であり、Rが、Rと同一のC1-3アルキル基であり、Rが、C10-22アルキル基であり、Xが、アニオン(好ましくはハロゲン化物イオン)であり、および、nが、2~30である、式(I)の化合物。
[態様2-8] Rが、C10-22アルキル基であり、Rが、C1-3アルキル基であり、Rが、Rと同一のC1-3アルキル基であり、Rが、-N・Xであり、Rが、Rと同一のC1-3アルキル基であり、Rが、Rと同一のC1-3アルキル基であり、Rが、Rと同一のC10-22アルキル基であり、Xが、アニオン(好ましくはハロゲン化物イオン)であり、および、nが、2~30である、式(I)の化合物。
[態様2-9] Rが、C10-22アルキル基であり、Rが、C1-3アルキル基であり、Rが、Rと同一のC1-3アルキル基であり、Rが、-N・Xであり、Rが、Rと同一のC1-3アルキル基であり、Rが、Rと同一のC1-3アルキル基であり、Rが、Rと同一のC10-22アルキル基であり、Xが、アニオン(好ましくはハロゲン化物イオン)であり、および、nが、2~10である、式(I)の化合物。
[態様2-10] Rが、C10-22アルキル基であり、Rが、メチル基またはエチル基であり、Rが、メチル基またはエチル基であり、Rが、-N・Xであり、Rが、メチル基またはエチル基であり、Rが、メチル基またはエチル基であり、Rが、C10-22アルキル基であり、Xが、アニオン(好ましくはハロゲン化物イオン)であり、および、nが、2~30である、式(I)の化合物。
[態様2-11] Rが、C10-22アルキル基であり、Rが、メチル基またはエチル基であり、Rが、メチル基またはエチル基であり、Rが、-N・Xであり、Rが、メチル基またはエチル基であり、Rが、メチル基またはエチル基であり、Rが、Rと同一のC10-22アルキル基であり、Xが、アニオン(好ましくはハロゲン化物イオン)であり、および、nが、2~10である、式(I)の化合物。
[態様2-12] Rが、C10-22アルキル基であり、Rが、メチル基であり、Rが、メチル基であり、Rが、-N・Xであり、Rが、メチル基であり、Rが、メチル基であり、Rが、C10-22アルキル基であり、Xが、アニオン(好ましくはハロゲン化物イオン)であり、および、nが、2~10である、式(I)の化合物。
[態様2-13] Rが、C10-22アルキル基であり、Rが、メチル基であり、Rが、メチル基であり、Rが、-N・Xであり、Rが、メチル基であり、Rが、メチル基であり、Rが、Rと同一のC10-22アルキル基であり、Xが、アニオン(好ましくはハロゲン化物イオン)であり、および、nが、2、3、4または5である、式(I)の化合物。
[態様2-14] Rが、ドデシル基またはテトラデシル基であり、Rが、メチル基またはエチル基であり、Rが、メチル基またはエチル基であり、Rが、-N・Xであり、Rが、メチル基またはエチル基であり、Rが、メチル基またはエチル基であり、Rが、ドデシル基またはテトラデシル基であり、Xが、アニオン(好ましくはハロゲン化物イオン)であり、および、nが、2~10である、式(I)の化合物。
[態様2-15] Rが、ドデシル基またはテトラデシル基であり、Rが、メチル基であり、Rが、メチル基であり、Rが、-N・Xであり、Rが、メチル基であり、Rが、メチル基であり、Rが、ドデシル基またはテトラデシル基であり、Xが、Brであり、および、nが、2、3、4または5である、式(I)の化合物。
【0038】
ここで、上記の態様2-1~2-15は、全て、Rが-N・Xである態様であり、式(Ib)の化合物の好ましい態様も示している。
【0039】
式(I)の化合物は、下記:
【化9】
からなる群から選択される化合物であることがより好ましい。
【0040】
上記のように、式(I)の化合物は、ホスホリルコリン類似基を有する化合物である。本明細書において、ホスホリルコリン類似基とは、ホスホリルコリン基(-O-PO -(CH-N(CH)に類似する基であり、具体的には、-O-PO -(CH-N(C1-6アルキル)-として表すことができる。
【0041】
式(I)の化合物は、親水性基と疎水性基を有しており、界面活性剤として機能することができる。したがって、式(I)の化合物は、ホスホリルコリン類似基を有する新規両親媒性物質となる。式(I)の化合物では、炭化水素基が疎水性基を構成し、ホスホリルコリン類似基またはその一部(P原子側またはN原子側)が親水基を構成し得る。具体的には、例えば、式(I)の化合物は、乳化、分散、可溶化、濡れ、洗浄、防食、潤滑、帯電防止などの効果を発揮することが可能であり、特に、生化学、医薬品、衛生材料、化粧品など生体に関連した分野において、高い機能性を発揮し得る。そして、式(I)の化合物は、ホスホリルコリン類似基を有しているため、天然物に由来した構造と類似の構造の界面活性剤であることから、リン脂質やレシチンと同じかまたは類似の作用あるいはそれ以上の作用を得ることが可能である。また、式(I)の化合物は、生体由来の界面活性剤と類似の構造を有するため、生体適合性が高く、低刺激性、高安全性でありながら、界面活性能が高く、使用感のよい界面活性剤を得ることができる。また、式(I)の化合物は、界面活性能だけでなく、生体への直接的な作用(保湿作用、経皮吸収促進作用など)を及ぼすことも期待できる。なお、本明細書において、生体適合性とは、特に化粧品などにおいて外用で皮膚に使用したときに、無害であり、安全であり、好ましくは使用者に不快な使用感(例えば、べたつき、匂いなど)を与えないことを意味する。
【0042】
本発明は、式(I)の化合物またはその塩からなる界面活性剤に関する。上記のように、式(I)の化合物は、優れた界面活性能を有しており、界面活性剤として使用することが可能である。
【0043】
式(I)の化合物は、後述の実施例で示すように、親水性の溶媒(1価または多価アルコールなど)に対してリン脂質であるホスファチジルコリンよりも高い溶解性を示すことが実証されている。ホスファチジルコリンは、ホスホリルコリン基に、グリセロール構造を挟んで、疎水基となる脂肪酸が2個結合した構造を有している。一方、式(I)の化合物は、ホスホリルコリン類似基のリン原子(P)側に、グリセロール構造を介さずに、疎水基となる炭化水素基を1個有しており、また、ホスホリルコリン類似基の窒素原子(N)側に、アミノアルキル基が結合しており、これらの構造によって、ホスファチジルコリンよりも高い溶解性が得られ、そして優れた界面活性能が発揮されると推測される。
【0044】
ここで、式(Ia)の化合物は、ホスホリルコリン類似基の窒素原子(N)側に、アルキルアミノアルキル基が結合した構造を有する。そのため、界面活性能が向上し、優れた製剤を得ることが可能である。
【0045】
また、式(Ib)の化合物は、ホスホリルコリン類似基の窒素原子(N)側に、長鎖の炭化水素基と結合した第4級アミンを有するアミノアルキル基が結合した構造を有する。このような構造は、ホスホリルコリン類似基のリン原子(P)側に配置された界面活性剤の構造と、ホスホリルコリン類似基の窒素原子(N)側に配置された界面活性剤の構造とが結合した構造であるといえる。すなわち、式(Ib)の化合物は、1鎖1親水基型界面活性剤がスペーサーにより結合したジェミニ型界面活性剤(1分子内に複数の疎水性鎖と親水性基を持つ多鎖多親水基型の両親媒性物質)となり得る。したがって、式(Ib)の化合物は、低臨界ミセル濃度や低クラフト点に代表される高い界面活性能、容易にベシクルなどの高次構造を形成する分子会合性などの特徴が期待される。
【0046】
合成
上記の化合物は、好ましい一態様において、以下のスキーム1に示す方法によって製造することができる。
【化10】
[式中、R、R、R、R、R、R、およびnは、式(I)で定義されたとおりであり、Xaは、ハロゲン原子である。]
【0047】
上記スキーム1では、2-クロロ-2-オキソ-1,3,2-ジオキサホスホランと、R-OHで表されるアルコールとを反応させて、式(II)で表される中間体化合物を得る(スキーム1-1)。反応は、有機塩基などの塩基の存在下、有機溶媒中で行うことができる。有機塩基としては、例えば、トリエチルアミンなどが挙げられる。有機溶媒としては、例えば、テトラヒドロフランが挙げられる。反応温度は、例えば、-20℃~60℃であり得る。反応時間は、例えば、1~6時間であり得る。式(II)の化合物は精製してもよいし、精製しなくてもよい。ここで、式(II)の化合物は、精製すると、空気中の水蒸気で加水分解を起こし、5員環が開環してリン酸アルキル2-ヒドロキシエチルを生成し得る。そのため、好ましくは、式(II)の化合物は精製することなく次の反応に用いることができる。
【0048】
次いで、式(II)で表される化合物と、式(III)で表される化合物とを反応させて、式(Ia)で表される化合物を得る(スキーム1-2)。反応は、有機溶媒中で行うことができる。有機溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、アセトニトリルなどが挙げられる。反応温度は、例えば、0℃~100℃であり得る。反応は、還流条件で行ってもよい。反応時間は、例えば、1~48時間であり得る。得られた式(Ia)の化合物は、通常の方法(カラムクロマトグラフィー、再結晶など)によって、精製することができる。あるいは、式(Ib-1)を得る反応をさらに行う場合、式(Ia)の化合物は、精製することなく、次の反応に用いてもよい。以上により、式(I)の化合物の一態様である式(Ia)の化合物を得ることができる。
【0049】
さらに、式(Ia)の化合物を、R-Xaで表される化合物と反応させることにより、式(I)の化合物の別の態様である式(Ib-1)の化合物を得ることができる(スキーム1-3)。反応は、有機溶媒中で行うことができる。有機溶媒としては、例えばアセトニトリルなどが挙げられる。反応温度は、例えば、0℃~100℃であり得る。反応は、還流条件で行ってもよい。反応時間は、例えば、1~24時間であり得る。得られた式(Ib-1)の化合物は、通常の方法(カラムクロマトグラフィー、再結晶など)によって、精製することができる。
【0050】
ここで、Xaは、ハロゲン原子であり、具体的には、F、Cl、Br、Iが挙げられる。したがって、Xaは、ハロゲン化物イオンを表し、具体的には、F、Cl、Br、Iが挙げられる。Xaは、Brが好ましい。
【0051】
式(Ib-1)の化合物は、Xがハロゲン化物イオンである式(Ib)の化合物に相当する。Xがハロゲン化物イオン以外のアニオンである式(Ib)の化合物は、例えば、式(Ib-1)の化合物のハロゲン化物イオン(Xa)を、ハロゲン化物イオン以外のアニオン(X)に置き換えること(アニオン交換)によって、得ることができる。アニオンの交換は、例えば、一般的に公知のアニオン交換樹脂を用いて、適宜、行うことができる。
【0052】
上記のように、式(I)の化合物またはその塩の製造においては、式(II)の化合物を、式(III)の化合物と反応させて、式(Ia)の化合物を得る工程:
【化11】
[式中、R、R、R、R、R、およびnは、式(I)で定義されたとおりである。]
を含むことが好ましい。
【0053】
また、式(I)の化合物またはその塩の製造においては、式(Ia)の化合物を、R-Xaで表される化合物と反応させて、式(Ib-1)の化合物を得る工程:
【化12】
[式中、R、R、R、R、R、R、およびnは、式(I)で定義されたとおりであり、Xaは、ハロゲン原子である。]
をさらに含むことも好ましい。
【0054】
化粧料
本発明は、式(I)の化合物またはその塩を含む化粧料に関する。上述したように、式(I)の化合物は、優れた界面活性能を発揮することができ、化粧料の安定性を向上させることができる。また、式(I)の化合物は、生体適合性があり、刺激の少ない化粧料を得ることができる。さらに、式(I)の化合物の配合によって、化粧料の使用感を向上することができる。このように、式(I)の化合物またはその塩は、化粧料を製造するために使用することができ、好ましくは界面活性剤として使用することができる。
【0055】
化粧料の製剤形態としては、あらゆる形態の化粧料に用いることができる。溶液、懸濁液、乳化組成物(O/W型、W/O型、W/O/W型などを含む)、粉体含有組成物(粉体含有乳化組成物を含む)などであってよい。
【0056】
化粧料は、皮膚化粧料、または毛髪化粧料であり得る。式(I)の化合物は肌への適合性がよい。そのため、化粧料は、皮膚化粧料(皮膚用の化粧料)であることが好ましい。また、式(I)の化合物は、スキンケア製品およびメイク製品を含め、あらゆる用途の化粧料に適用可能である。
【0057】
皮膚化粧料としては、特に限定されるものではなく、種々の用途の化粧料として利用することができる。例えば、化粧水、乳液、クリーム、美容液、ハンドクリーム、アイクリーム、ボディクリーム、メーキャップ化粧料、コンシーラー、チーク、アイシャドウ、アイカラー、口紅、おしろい、化粧用下地、ファンデーション(例えば、リキッドファンデーション、固形ファンデーション、パウダーファンデーション)、日焼け止めなどの化粧料が例示される。
【0058】
毛髪化粧料としては、特に限定されるものではなく、種々の用途の化粧料として利用することができる。例えば、ヘアクリーム、ヘアワックス、ヘアリンス、ヘアマスク、ヘアトリートメント、毛髪用日焼け止めなどの化粧料が例示される。
【0059】
化粧料には、化粧料に配合可能な適宜の化粧料成分を配合することができる。化粧料は、式(I)の化合物またはその塩、およびその他の化粧料成分(基剤、油剤、活性成分、水など)を含有し得る。化粧料成分として、例えば、油剤、高分子(ポリマー)、アルコール類、界面活性剤、保湿剤、増粘剤、粉体、色素、被膜形成剤、pH調整剤、褪色防止剤、酸化防止剤、消泡剤、美容成分、植物抽出エキス、防腐剤、香料などが挙げられる。
【0060】
一態様において、化粧料は、アルコール類(1価または多価アルコール)を含有することが好ましい。アルコール類は、液体のアルコールであることが好ましい。1価アルコールとしては、エタノール、イソプロピルアルコールなどが挙げられる。多価アルコールとしては、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリンなどが挙げられる。アルコール類は溶媒であり得る。後述の実施例で示すように、式(I)の化合物は、アルコール類に対する溶解性に優れている。そのため、安定性の高い製剤を得ることができる。
【0061】
化粧料は、油剤を含有してもよい。油剤としては、炭化水素油(スクワランなど)、エステル油(2-エチルヘキサン酸セチル、トリ2-エチルヘキサン酸セチルなど)、シリコーン油(ジメチコン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコンなど)、高級アルコール(ベヘニルアルコール)、脂肪酸(ステアリン酸など)、脂肪酸グリセリル(ステアリン酸グリセリルなど)、脂肪酸ソルビタン(オレイン酸ソルビタン)などを挙げることができる。油剤は、液体、固体、半固体(ペースト)のいずれであってもよい。
【0062】
高分子は、天然または合成のポリマーを使用することができる。天然の高分子としては、キサンタンガムなどのガム類を挙げることができる。合成の高分子としては、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマーなどのアクリル酸系ポリマーを挙げることができる。
【0063】
粉体としては、マイカ、タルク、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄などを挙げることができる。
【0064】
化粧料中の式(I)の化合物の含有量は、これに限定されるものではないが、化粧料全量を100質量%としたときに、0.00001~50質量%とすることができ、0.0001~40質量%が好ましく、0.001~30質量%がより好ましく、0.01~20質量%がさらに好ましい。
【0065】
化粧料は、式(I)の化合物、および化粧料成分を混合することにより製造することができる。ここで、式(I)の化合物は、アルコール類への溶解性に優れる。そのため、式(I)の化合物をアルコール類に溶解させ、その溶解物を他の成分と混合してもよい。それにより、均一で安定な製剤を得ることができる。
【実施例0066】
以下、本発明の化合物を実施例により説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0067】
測定機器および条件
NMR測定は、H NMR:BRUKER ULTRASHIELDTM300MHzを用い、標準物質は、DSS(3-(トリメチルシリル)-1-プロパンスルホン酸ナトリウム)、またはTMS(テトラメチルシラン)とした。ESI-MSは、JEOL JMS-T100LCを用いた。元素分析は、PERKIN-ELMER 24002 CHNS/Oを用いた。
【0068】
合成例1:N,N-ジメチル-N-[(N’,N’-ジメチルアミノ)プロピル]アンモニウムエチルドデシルホスフェート(化合物1:C12PCAm)の合成
【化13】
4つ口フラスコに、1-ドデカノール(5.00g、1.0当量)とトリエチルアミン(1.0当量)を加え、約50mLのテトラヒドロフランに溶解させた。次いで、これに、テトラヒドロフランに溶解させた2-クロロ-2-オキソ-1,3,2-ジオキサホスホラン(4.22g、1.0当量)を0℃で約1時間かけて滴下して加えた。さらに、0℃で約2時間、45℃で約2時間撹拌した。反応終了後、析出したトリエチルアミン塩酸塩をろ過で除き、中間体化合物を得た。これを精製することなく、次の反応に使用した。
【0069】
次に、4つ口フラスコに、得られた中間体化合物(1.0当量)を入れ、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,3-ジアミノプロパン(1.0当量)を30分かけて滴下し、アセトニトリルとテトラヒドロフランの混合溶媒中で24時間加熱還流を行った。反応終了後、溶媒をエバポレータによって除去し、クロロホルム:メタノール:アンモニア水の混合溶媒(2:10:1、vol/vol/vol)に溶解させ、ワコーシル(登録商標)C-200を充填したカラムクロマトグラフィー(内径50mm、シリカゲル280g)により精製した。溶媒をエバポレータによって減圧留去し、白色固体として、表題の化合物(化合物1)を得た(収率:24.7%)。
H NMR(DO,DSS):δ 0.78-0.84(t,3H),1.22(m,18H),1.58-1.62(m,2H),1.90-2.12(m,2H),2.22(s,6H),2.41-2.50(m,2H),3.16(s,6H),3.35-3.41(m,2H),3.61-3.65(m,2H),3.83-3.90(m,2H),4.22-4.25ppm(m,2H).
ESI-MS:Calcd for[M+Na]:473.635, Found:473.48.
元素分析:Calcd. for C2147P・HO:C,57.25;H,11.21;N,6.36. Found:C,57.75;H,11.36;N,6.45.
【0070】
合成例2:N,N-ジメチル-N-[(N’,N’-ジメチルアミノ)プロピル]アンモニウムエチルテトラデシルホスフェート(化合物2:C14PCAm)の合成
【化14】
1-ドデカノール(1.0当量)の代わりに1-テトラデカノール(1.0当量)を用いたこと以外は、合成例1と同様の方法を実施することにより、表題の化合物(化合物2)を得た(収率:15.2%)。
H NMR(DO,DSS):δ 0.82-0.90(t,3H),1.23(m,22H),1.58-1.62(m,2H),1.92-2.10(m,2H),2.28(s,6H),2.41-2.50(m,2H),3.19(s,6H),3.40-3.50(m,2H),3.62-3.70(m,2H),3.81-3.90(m,2H),4.20-4.30ppm(m,2H).
ESI-MS:Calcd for[M+Na]:445.58, Found:445.42.
元素分析:Calcd. for C2351P・HO:C,58.95;H,11.40;N,5.98. Found:C,59.89;H,11.68;N,5.99.
【0071】
合成例3:N,N-ジメチル-N-ドデシル-3-[N’,N’-ジメチル-2-(ドデシルホスフェート)エチルアンモニウム]プロピルアンモニウムブロミド(化合物3:2C12PCAm)の合成
【化15】
上記合成例1で得た化合物1(5.00g、1.0当量)に、1-ブロモドデカン(5.56g、3.0当量)を加え、アセトニトリル溶媒中で6時間加熱還流を行った。反応終了後、溶媒をエバポレータによって除去し、ヘキサン、酢酸エチル、およびアセトンで洗浄を行った。残渣をクロロホルムに入れて、不溶物をろ過して取り除き、ろ液のクロロホルムをエバポレータによって除去し、白色固体として、表題の化合物(化合物3)を得た(化合物1の合成を含む全体の収率:1.9%)。
H NMR(CDCl,TMS):δ 0.85-0.88(t,6H),1.23(m,36H),1.59-1.70(m,2H),1.70-1.75(m,2H),2.70-2.90(m,2H),3.34(s,6H),3.45(s,6H),3.78-3.82(m,4H),3.84-3.90(m,2H),4.01-4.10(m,2H),4.20-4.30(m,2H),4.48-4.53ppm(m,2H).
ESI-MS:Calcd for[M+Na]:591.92, Found:591.57.
元素分析:Calcd. for C3372PBr・HO:C,57.46;H,10.81;N,4.06. Found:C,57.24;H,11.09;N,3.75.
【0072】
合成例4:N,N-ジメチル-N-テトラデシル-3-[N’,N’-ジメチル-2-(テトラデシルホスフェート)エチルアンモニウム]プロピルアンモニウムブロミド(化合物4:2C14PCAm)の合成
【化16】
化合物1(1.0当量)の代わりに化合物2(1.0当量)を用いるとともに、1-ブロモドデカン(3.0当量)の代わりに1-ブロモテトラデカン(3.0当量)を用いたこと以外は、合成例3と同様の方法を実施することにより、表題の化合物(化合物4)を得た(化合物2の合成を含む全体の収率:4.2%)。
H NMR(CDCl,TMS):δ 0.85-0.90(t,6H),1.12(m,44H),1.50-1.63(m,2H),1.70-1.82(m,2H),2.68-2.78(m,2H),3.35(s,6H),3.45(s,6H),3.70-3.98(m,10H),4.18-4.30ppm(m,2H).
ESI-MS:Calcd for[M+Na]:648.03, Found:647.69.
元素分析:Calcd. for C3780PBr・2HO:C,58.17;H,11.08;N,3.67. Found:C,58.40;H,10.82;N,3.91.
【0073】
試験例1
溶解性試験
化合物1~4について、溶媒(親水性溶媒)への溶解性を調べた。溶媒として、精製水、エタノール、イソプロピルアルコール、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、およびグリセリンを用いた。各溶媒5gと、各化合物またはリン脂質(ホスファチジルコリン)0.1gとを、25℃および70℃で混合し、各温度での溶解性を目視にて下記基準で評価した。
◎:均一に溶解している
〇:若干濁りが見られる
△:一部不溶物がある
×:不溶物がある
【0074】
表1(表1-1および表1-2)に結果を示す。
【表1】
【0075】
上記の表に示すように、化合物1~4は、溶媒に対して高い溶解性を示した。一方、ホスファチジルコリンは、溶解性が低かった。
【0076】
製剤例1
表2に示す組成(処方)の化粧料(製造例1-1~1-6)(化粧水)を製造した。なお、成分Aは界面活性剤、成分Dは水系成分であり、成分Cはそれ以外の成分である。
【表2】
【0077】
製造方法
1.成分Cと1,3-ブチレングリコールを混合し、加熱した一部の精製水を加え膨潤物を得た。
2.成分Aに残りの成分Dを加えて混合し、溶解物を得た。
3.上記2に上記1を加えて、化粧料(化粧水)を得た。
【0078】
評価
成分Aの溶解性:成分Dに対する溶解性(25℃)
各製剤の成分Aの成分Dへの溶解性を目視にて確認し、下記基準により評価した。
◎:均一に溶解している
〇:若干濁りが見られる
△:一部不溶物がある
×:不溶物がある
【0079】
肌馴染みのよさ
各製剤について専門パネル20名による使用テストを行い、パネル各人が下記絶対基準にて4段階に評価し、パネル全員の評点合計からその平均値を算出し、下記判定基準により判定した。
具体的には各製剤を肌に適量塗布し、塗布時の化粧料の肌馴染みのよさを評価した。
(絶対基準)
3:非常に感じる
2:感じる
1:やや感じる
0:感じない
(判定基準)
◎:2.5点以上
〇:2点以上2.5点未満
△:1点以上2点未満
×:1点未満
【0080】
塗布後5時間後のしっとり感
各製剤について専門パネル20名による使用テストを行い、パネル各人が下記絶対基準にて4段階に評価し、パネル全員の評点合計からその平均値を算出し、下記判定基準により判定した。
具体的には各実施例品を肌に適量塗布し、塗布後5時間後のしっとり感を評価した。
(絶対基準)
3:非常に感じる
2:感じる
1:やや感じる
0:感じない
(判定基準)
◎:2.5点以上
〇:2点以上2.5点未満
△:1点以上2点未満
×:1点未満
【0081】
表2に示すように、製剤例1-1~1-4は、成分Aの溶解性、肌馴染みのよさ、塗布後5時間後のしっとり感に優れていた。したがって、化合物1~4は、界面活性能が高いことが示唆された。一方、製剤例1-5(成分Aなし)、製剤例1-6(ホスファチジルコリン配合)は、評価がよくなかった。
【0082】
製剤例2
表3に示す組成(処方)の化粧料(製造例2-1~2-6)(乳液)を製造した。なお、成分Aは界面活性剤、成分Bは油系成分、成分Dは水系成分であり、成分Cはそれ以外の成分である。
【表3】
【0083】
製造方法
1.(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマーと一部の1,3-ブチレングリコールを混合し、加熱した一部の精製水を加え、膨潤物を得た。
2.成分Aに残りの成分Dを加えて混合し、溶解物を得た。
3.上記2に上記1と残りの成分C(水酸化ナトリウム)を加え、水系混合物を得た。
4.上記3を75℃に加熱し、これに75℃に加熱混合した成分Bを加えて乳化し、冷却後、化粧料(乳液)を得た。
【0084】
評価
成分Aの溶解性:成分Dに対する溶解性(25℃)
製剤例1の評価と同様の方法により、各製剤の成分Aの成分Dへの溶解性を目視にて確認し、評価した。
【0085】
肌馴染みのよさ
製剤例1の評価と同様の方法により、各製剤について専門パネル20名による使用テストを行い、肌馴染みのよさを評価した。
【0086】
塗布後5時間後のしっとり感
製剤例1の評価と同様の方法により、各製剤について専門パネル20名による使用テストを行い、塗布後5時間後のしっとり感を評価した。
【0087】
表3に示すように、製剤例2-1~2-4は、成分Aの溶解性、肌馴染みのよさ、塗布後5時間後のしっとり感に優れていた。したがって、化合物1~4は、界面活性能(特に乳化能)が高いことが示唆された。一方、製剤例2-5(成分Aなし)、製剤例2-6(ホスファチジルコリン配合)は、評価がよくなかった。
【0088】
製剤例3
表4に示す組成(処方)の化粧料(製造例3-1~3-6)(粉体含有水中油型乳化物(下地))を製造した。なお、成分Aは界面活性剤、成分Bは油系成分、成分Dは水系成分であり、成分Cはそれ以外の成分である。
【表4】

(注)
*1:SIMULGEL EG QD (SEPPIC S.A.)
【0089】
製造方法
1.キサンタンガムと(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー、一部の1,3-ブチレングリコールを混合し、加熱した一部の精製水を加え、膨潤物を得た。
2.成分Cの粉体とポリソルベート80、一部の1,3-ブチレングリコールを加え、分散物を得た。
3.成分Aに残りの成分Dを加えて混合し、溶解物を得た。
4.上記3に上記1と(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー・イソヘキサデカン・ポリソルベート80・水 混合物、トリエタノールアミンを加え、水系混合物を得た。
5.上記4を75℃に加熱し、これに75℃に加熱混合した成分Bを加えて乳化し、冷却後、乳化物を得た。
6.上記5に上記2を加え、混合し、粉体含有水中油型乳化物(下地)を得た。
【0090】
評価
成分Aの溶解性:成分Dに対する溶解性(25℃)
製剤例1の評価と同様の方法により、各製剤の成分Aの成分Dへの溶解性を目視にて確認し、評価した。
【0091】
肌馴染みのよさ
製剤例1の評価と同様の方法により、各製剤について専門パネル20名による使用テストを行い、肌馴染みのよさを評価した。
【0092】
塗布後5時間後のしっとり感
製剤例1の評価と同様の方法により、各製剤について専門パネル20名による使用テストを行い、塗布後5時間後のしっとり感を評価した。
【0093】
表4に示すように、製剤例3-1~3-4は、成分Aの溶解性、肌馴染みのよさ、塗布後5時間後のしっとり感に優れていた。したがって、化合物1~4は、界面活性能(特に乳化能、分散能)が高いことが示唆された。一方、製剤例3-5(成分Aなし)、製剤例3-6(ホスファチジルコリン配合)は、評価がよくなかった。