(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123439
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】トンネル掘削機の地盤測定装置
(51)【国際特許分類】
E21D 9/087 20060101AFI20240905BHJP
【FI】
E21D9/087 A
E21D9/087 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030854
(22)【出願日】2023-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】516308364
【氏名又は名称】JIMテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】中村 太三
(72)【発明者】
【氏名】山崎 友誉
(72)【発明者】
【氏名】市川 政美
(72)【発明者】
【氏名】本合 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】小林 修
(72)【発明者】
【氏名】西渕 雅之
【テーマコード(参考)】
2D054
【Fターム(参考)】
2D054AC02
2D054BA05
2D054BA07
2D054GA10
2D054GA62
2D054GA64
2D054GA92
(57)【要約】
【課題】トンネル掘削機の寸法や種類に関わらず搭載でき、実際の地盤の状態を正確に判定可能であり、耐久性が高くて安価なトンネル掘削機の地盤測定装置の提供。
【解決手段】カッターヘッド2の回転によって地盤から受ける負荷を検出する地盤負荷検出部3と、地盤負荷検出部3が検出した負荷に基づいて地盤の状態を判定する地盤状態判定部4とを備え、地盤負荷検出部3は、地盤と接触可能にカッターヘッド2に設けられる計測ロッド31と、計測ロッド31が地盤に接触しているときの計測ロッド31の歪みを検知する歪み検知部32とを有し、計測ロッド31は、カッターヘッド2の外周面から外側に伸長した位置と、内部に退避した位置とに移動可能である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転するカッターヘッドを有するトンネル掘削機の地盤測定装置であって、
前記カッターヘッドの回転によって地盤から受ける負荷を検出する地盤負荷検出部と、
前記地盤負荷検出部が検出した負荷に基づいて地盤の状態を判定する地盤状態判定部と、を備え、
前記地盤負荷検出部は、
地盤と接触可能に前記カッターヘッドに設けられる計測ロッドと、
前記計測ロッドが地盤に接触しているときの前記計測ロッドの歪みを検知する歪み検知部と、を有し、
前記計測ロッドは、前記カッターヘッドの外周面から外側に伸長した位置と、前記カッターヘッドの内部に退避した位置とに移動可能である
ことを特徴とするトンネル掘削機の地盤測定装置。
【請求項2】
前記計測ロッドは、前記トンネル掘削機が掘削する最外周より外側に伸長した位置まで移動可能であることを特徴とする請求項1に記載のトンネル掘削機の地盤測定装置。
【請求項3】
前記計測ロッドの最大伸長時に、前記歪み検知部が前記カッターヘッドの内部に退避していることを特徴とする請求項1に記載のトンネル掘削機の地盤測定装置。
【請求項4】
前記歪み検知部は、前記計測ロッドの前記カッターヘッドの回転方向における前後方向の少なくとも一側に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のトンネル掘削機の地盤測定装置。
【請求項5】
前記計測ロッドが軸周りに回転するのを規制する回転抑制機構を有することを特徴とする請求項4に記載のトンネル掘削機の地盤測定装置。
【請求項6】
前記トンネル掘削機は、コピーカッターを備え、
前記計測ロッドは、前記コピーカッターとは別に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のトンネル掘削機の地盤測定装置。
【請求項7】
前記計測ロッドが伸長して地盤に貫入する際の貫入抵抗を計測する貫入抵抗計測部と、を備え、
前記地盤状態判定部は、前記貫入抵抗計測部が計測した貫入抵抗に基づいて地盤の状態を判定することを特徴とする請求項1乃至請求項6のうちいずれか1項に記載のトンネル掘削機の地盤測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転するカッターヘッドを有するトンネル掘削機の地盤測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シールド掘進機により地中を安定して掘進するために、地山をはじめとする地盤の土質状態を検出し、検出した土質状態から、掘進スピードや排出土量の設定、添加剤量の調整等の管理計画をたてて施工している。
このように掘進する地盤の状態を知ることは重要であり、従来は、トンネル施工前に、地上からのボーリング調査により地盤状態を推定することが行われていた。
しかし、実際の地盤状態と推定した地盤状態とは相違することがあり、土質に応じた対応の遅れが生じて、掘削土砂量過多等のトラブルにつながっていた。
【0003】
地中レーダーでカッターヘッドの前方の地盤状態を計測することも行われているが、地中レーダーは非常に高価なうえに、計測精度を上げるためには大型のレーダーが必要であり、小口径のトンネル掘削機には設置するのが難しかった。
【0004】
また、特許文献1には、カッタヘッドの切羽側に複数のカッタビットが配置され、複数のカッタビット、或いは、カッタヘッドの切羽側に設けた複数の検出ロッドに、カッタビット或いは検出ロッドに加わる地盤負荷を計測する地盤負荷測定手段が設けられたシールド掘進機の掘削断面土層判定装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載のようなシールド掘進機の掘削断面土層判定装置は、カッターヘッドの切羽側の面に配置されたカッタビット或いは検出ロッドに地盤負荷測定手段が設けられているが、カッタヘッドはシールドジャッキによって地盤に押圧されており、カッタヘッドの前面で計測する地盤負荷は掘進スピードの影響を受けるため、純粋に地盤状態によってカッタビット或いは検出ロッドに加わる地盤負荷のみを測定することはできず、測定した値が不正確になりやすい。さらに、フレッシュな地盤の状態を測定しようとすると、切込み深さを確保する必要があることから常にシールドジャッキによる推進が必要となる。
また、長距離のトンネル掘削を行うと、カッタビットや検出ロッドが摩耗して切れ味や寸法が変わり、この結果、加わる地盤負荷が変化して誤差が生じ、計測精度が低下してしまう。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、トンネル掘削機の寸法や種類に関わらず搭載でき、実際の地盤の状態を正確に判定することが可能で、耐久性が高くて安価なトンネル掘削機の地盤測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願請求項1に係る発明は、回転するカッターヘッドを有するトンネル掘削機の地盤測定装置であって、前記カッターヘッドの回転によって地盤から受ける負荷を検出する地盤負荷検出部と、前記地盤負荷検出部が検出した負荷に基づいて地盤の状態を判定する地盤状態判定部と、を備え、前記地盤負荷検出部は、地盤と接触可能に前記カッターヘッドに設けられる計測ロッドと、前記計測ロッドが地盤に接触しているときの前記計測ロッドの歪みを検知する歪み検知部と、を有し、前記計測ロッドは、前記カッターヘッドの外周面から外側に伸長した位置と、前記カッターヘッドの内部に退避した位置とに移動可能であることを特徴とするトンネル掘削機の地盤測定装置である。
【0009】
本願請求項2に係る発明は、前記計測ロッドは、前記トンネル掘削機が掘削する最外周より外側に伸長した位置まで移動可能であることを特徴とする請求項1に記載のトンネル掘削機の地盤測定装置である。
【0010】
本願請求項3に係る発明は、前記計測ロッドの最大伸長時に、前記歪み検知部が前記カッターヘッドの内部に退避していることを特徴とする請求項1に記載のトンネル掘削機の地盤測定装置である。
【0011】
本願請求項4に係る発明は、前記歪み検知部は、前記計測ロッドの前記カッターヘッドの回転方向における前後方向の少なくとも一側に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のトンネル掘削機の地盤測定装置である。
【0012】
本願請求項5に係る発明は、前記計測ロッドが軸周りに回転するのを規制する回転抑制機構を有することを特徴とする請求項4に記載のトンネル掘削機の地盤測定装置である。
【0013】
本願請求項6に係る発明は、前記トンネル掘削機は、コピーカッターを備え、前記計測ロッドは、前記コピーカッターとは別に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のトンネル掘削機の地盤測定装置である。
【0014】
本願請求項7に係る発明は、前記計測ロッドが伸長して地盤に貫入する際の貫入抵抗を計測する貫入抵抗計測部と、を備え、前記地盤状態判定部は、前記貫入抵抗計測部が計測した貫入抵抗に基づいて地盤の状態を判定することを特徴とする請求項1乃至請求項6のうちいずれか1項に記載のトンネル掘削機の地盤測定装置である。
【発明の効果】
【0015】
本発明のトンネル掘削機の地盤測定装置は、地盤負荷検出部の計測ロッドを掘削面ではないカッターヘッドの外周面に設けてあるので、地盤負荷検出部が計測する負荷は、カッターヘッドを地盤に押し付ける力の影響を受けにくく、計測精度が向上する。
また、計測ロッドは、測定時のみにカッターヘッドの外周面から外側に伸長させ、計測を行わないときはカッターヘッドの内部に退避させておくことができるので、摩耗しにくく、耐久性が高い。
計測ロッドと歪み検知部とから成る地盤負荷検出部は構造が簡単でコンパクトなので、トンネル掘削機の寸法や種類に関係なく搭載することが可能であり、装置が安価でコストが低廉で済む。
【0016】
加えて、計測ロッドを、トンネル掘削機が掘削する最外周より外側に伸長した位置まで移動可能とすれば、伸長した計測ロッドを掘削によって乱されていないフレッシュな地盤に接触させることができるので、正確な地盤状態を測定できる。
【0017】
加えて、計測ロッドの最大伸長時にも、歪み検知部がカッターヘッドの内部に退避していることにより、計測ロッドの歪み検知部が設けられた部分は、超硬質素材を用いたり硬化肉盛を施さなくても摩耗の進行が抑えられ、歪み検知部による歪みの検出精度も担保することができる。
【0018】
加えて、歪み検知部を、計測ロッドのカッターヘッドの回転方向における前後方向の少なくとも一側に設けると、計測ロッドに加わる曲げモーメントの影響が最も大きい部分の歪みを計測でき、計測の正確性が高まる。
【0019】
加えて、計測ロッドが軸周りに回転するのを規制する回転抑制機構を有することにより、カッターヘッドの回転方向に対する歪み検知部の設置位置がずれないため、計測誤差が発生しにくい。
【0020】
加えて、トンネル掘削機がコピーカッターを備えている場合、計測ロッドをコピーカッターとは別に設けると、コピーカッターに計測ロッドを兼用させる必要はなく、コピーカッターによる切削が行われている時に、計測ロッドをカッターヘッドの内部に退避させておくことができるため耐久性が高まる。
【0021】
加えて、計測ロッドが伸長し地盤に貫入する際の貫入抵抗を計測する貫入抵抗計測部を備え、地盤状態判定部は、貫入抵抗計測部が計測した貫入抵抗に基づいて地盤の状態を判定することにより、地盤の状態をより正確に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係るトンネル掘削機の概略断面図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係るトンネル掘削機の正面図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係る地盤負荷検出部の退避状態における縦断面図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態に係る地盤負荷検出部の伸長状態における縦断面図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態に係る地盤負荷検出部の横断面図(
図3のX-X横断図)である。
【
図6】本発明の第1の実施形態に係る地盤状態判定部のブロック図である。
【
図7】本発明の第1の実施形態に係る地盤状態判定部が作成して表示した土層断面図の一例である。
【
図8】本発明の第2の実施形態に係る地盤状態判定部のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態につき図面を参照する等して説明する。
なお、本発明は、実施形態に限定されないことはいうまでもない。
【0024】
[第1の実施形態]
以下、本発明の第1の実施形態を、
図1乃至
図6を参照して説明する。
【0025】
図1はトンネル掘削機の概略断面図、
図2はトンネル掘削機の正面図、
図3は地盤負荷検出部の退避状態における縦断面図、
図4は地盤負荷検出部の伸長状態における縦断面図、
図5は地盤負荷検出部の横断面図、
図6は地盤状態判定部のブロック図である。
以下の説明において、トンネル掘削機の掘進する方向を前、その逆方向を後とする。
【0026】
本実施形態では、本発明をトンネル掘削機であるシールド掘進機に適用したものである。
図1及び
図2に示すように、シールド掘進機1は、セグメントTが内部で組み立てられる外胴部Sと、その前方に隔壁Kを介して回転可能に設けられるカッターヘッド2とを有する。
【0027】
カッターヘッド2は、ギア等を介して隔壁Kの後方に連結して設けられるモータ10の駆動することにより、中心軸周りに回転する。
カッターヘッド2は4本のカッタースポーク2aを備えており、カッタースポーク2aの前面には複数のカッタービット20が設けられ、カッターヘッド2を回転させるとともにシールドジャッキ11を伸ばして組み立てられたセグメントTに反力をとることにより掘進する。
【0028】
カッターヘッド2の外周面であってカッタースポーク2aの1本の先端には、トンネルの曲線部を掘削する際等に突出させて任意の範囲を余掘りするためのコピーカッター21が設けられる。
また、カッターヘッド2の回転角度はロータリーエンコーダ22で検出される。このデータは後述する地盤状態判定部4へ送られる。
【0029】
図1及び
図2に示すように、シールド掘進機1には、地盤の状態を測定することができる地盤測定装置Aが設けられている。
【0030】
地盤測定装置Aは、カッターヘッド2の回転によって地盤から受ける負荷を検出する地盤負荷検出部3と、地盤負荷検出部3が検出した負荷に基づいて地盤の状態を判定する地盤状態判定部4と、地盤状態判定部4の判定結果を表示する表示部5とを備える。
【0031】
地盤負荷検出部3は、
図3乃至
図5に示すように、ケーシング30と、計測ロッド31と、歪み検知部32とを備える。
ケーシング30は、断面が略円形の筒状体であって、内部に計測ロッド31が進退可能に収容されるもので、カッターヘッド2の外周面に開口するようカッターヘッド2の径方向に沿って設けられている。本実施形態では、ケーシング30は、カッタースポーク2aを利用して設けられる。
【0032】
ケーシング30が設けられるカッタースポーク2aは、コピーカッター21が設けられるカッタースポーク2aとは異なっている。本実施形態では、ケーシング30が設けられるカッタースポーク2aとコピーカッター21が設けられるカッタースポーク2aとは隣り合い、
図2に示すように、地盤負荷検出部3とコピーカッター21とはカッターヘッド2の周方向に90度ずれて設置されている。
【0033】
図3及び
図4に示すように、ケーシング30には、カッタースポーク2aの外周側から順に、外側空間30a、中間空間30b、内側空間30cが連続して形成されており、これらの空間に計測ロッド31が収容される。
これらの空間の断面は円形であって、外側空間30a及び内側空間30cは、中間空間30bよりも内空径が大きい。
【0034】
外側空間30a内の中間空間30bとの段差部分には、平板環状体300が取付けられる。
平板環状体300が備える開口部の周縁には、リングパッキン301が設けられている。
【0035】
中間空間30bを形成するケーシング30の内側空間30c側の部分には、環状であって内側に突出した環状突条302が形成されている。
環状突条302の内側周縁には、リングパッキン303が設けられている。
【0036】
図3乃至
図5に示すように、内側空間30cを形成するケーシング30の内周面は円形であるが、中間空間30b側であって、後述する計測ロッド31のフランジ312の張り出し部3120の両側の角部がそれぞれ摺動自在に係合する部分には、一対の溝部304が軸方向に沿って形成されている。
【0037】
図3及び
図4に示すように、計測ロッド31は、カッターヘッド2の径方向に摺動可能な伸縮ジャッキ部310と、伸縮ジャッキ部310の先端部に設けられ地盤に接触する地盤接触部311とを備える。
伸縮ジャッキ部310は、シリンダー3100とピストンロッド3101とを備える油圧式ジャッキであり、図示しない油圧経路を備えている。
【0038】
シリンダー3100の基端部にはフランジ312がピストンロッド3101を貫通させて取り付けられる。
フランジ312の一側部はシリンダー3100の外周面より突出して、断面角型の張り出し部3120が形成されている(
図5)
【0039】
シリンダー3100には、後述する歪み検知部32からの通信線320が通されるケーブル挿通孔3100aが形成されている。
ケーブル挿通孔3100aは、後述する地盤接触部311の基端側と内側空間30cに連通するように形成される。
【0040】
ピストンロッド3101のカッタースポーク2aの内周側に位置する端部3101aが内側空間30cに固定されている。具体的には、端部3101aに設けられた孔3101bに図示しない固定軸が貫通して設けられ、該固定軸の両端が内側空間30cを形成するケーシング30に固定される。
【0041】
地盤接触部311は、耐摩耗性の高い金属を素材とし、伸縮ジャッキ部310に固定される先端側が平坦な天井部によって閉口し基端側が開口した円筒形状の部材である。
地盤接触部311は、基端側に設けられた鍔部に通したボルト3110によってシリンダー3100の先端部に取り付けられる。
【0042】
計測ロッド31は、ケーシング30に形成された空間に収容される。
計測ロッド31のピストンロッド3101の端部3101aが内側空間30c内に固定され、シリンダー3100が外側空間30aから内側空間30cにわたって移動可能に設けられる。
【0043】
油圧の作用によって、シリンダー3100がピストンロッド3101に対して移動し、伸縮ジャッキ部310が伸縮する。
【0044】
シリンダー3100の外周は、外側空間30aに取り付けられた平板環状体300が備えるリングパッキン301と中間空間30bに設けられた環状突条302が備えるリングパッキン303が接するように設けられる。
また、シリンダー3100に取り付けられたフランジ312の張り出し部3120が内側空間30c内の溝部304に係合される位置に設けられる。
【0045】
シリンダー3100が移動しても、シリンダー3100の外周には、常に平板環状体300が備えるリングパッキン301と環状突条302が備えるリングパッキン303が接するので、シールされることになる。
また、シリンダー3100の外側のリングパッキン301とリングパッキン303との間には図示しない配管によってグリースなどが注入されるようになっておりよりシール性が確保されている。
【0046】
フランジ312の張り出し部3120は、ケーシング30の溝部304に係合し、シリンダー3100の伸縮方向の移動を許容するとともにシリンダー3100の回転を規制し、計測ロッド31が軸周りに回転するのを規制する回転抑制機構を構成する。
【0047】
図3に示すように、伸縮ジャッキ部310が作動して計測ロッド31が収縮すると、地盤接触部311がカッターヘッド2の外周面2bより内側に位置して、カッターヘッド2のカッタースポーク2aの内部に退避した位置に移動する。
【0048】
図4に示すように、伸縮ジャッキ部310が作動して計測ロッド31が伸長すると、地盤接触部311の先端部がカッターヘッド2の外周面2bから突出して地盤に接触することができるようになる。
【0049】
図3及び
図4に示すように、地盤接触部311の内周面の軸方向中間部において、カッターヘッド2の回転方向における前後方向の両側にそれぞれ歪み検知部32が設けられる。
歪み検知部32は、歪みを検知する例えば歪みゲージであり、地盤接触部311の内周面の軸方向に沿って取付けられる。
【0050】
計測ロッド31が伸長し地盤接触部311が地盤に接触した状態で、カッターヘッド2を回転させると、地盤から受ける抵抗力によって、地盤接触部311には歪みが生じる。歪み検知部32は、この歪みを検出する。すなわち、カッターヘッド2の回転によって地盤から受ける計測ロッド31の力学的な負荷(抵抗)は、地盤接触部311に生じる歪みを検出することによって検出される。
【0051】
本実施形態では、歪み検知部32は、地盤接触部311のカッターヘッド2の回転方向における前後方向の両側にそれぞれ設けられているので、地盤接触部311が地盤から受ける曲げモーメントによって生ずる引張力による伸びと圧縮力による縮みをそれぞれ計測する。
【0052】
地盤接触部311において、カッターヘッド2の回転方向における前後方向の両側は、曲げモーメントによる伸縮量が最も大きくなる部分であり、この部分に歪み検知部32を設けることにより、歪み検知部32は正確な歪みを計測することができる。
【0053】
また、上述したように計測ロッド31が軸周りに回転するのを規制する回転抑制機構を設けたので、カッターヘッド2の回転方向に対する歪み検知部32の位置が歪み計測中にずれることがなく、計測値に誤差が生じにくい。
【0054】
歪み検知部32には、検出信号を出力するために通信線320が接続されており、通信線320はケーブル挿通孔3100aに通されている。通信線320は、地盤状態判定部4に接続されている(
図1)。
【0055】
計測ロッド31は、地盤接触部311の先端部がカッターヘッド2の外周面から外側に伸長した位置(
図4)と、地盤接触部311の先端面までがカッターヘッド2の内部に退避した位置(
図3)との間を移動可能である。
【0056】
計測ロッド31は、最も伸長したとき、地盤接触部311の先端は、シールド掘進機1が掘削する最外周、即ち、カッターヘッド2の外周面から突出するコピーカッター21の先端面より外側に位置するまで移動することができる。
計測ロッド31が最も伸長したときであって、地盤接触部311の歪み検知部32が設けられる部分はカッターヘッド2の内部に退避した位置となっている。
【0057】
歪み検知部32は、地盤接触部311に曲げモーメントや圧縮力などが作用した際に、地盤接触部311の歪み検知部32が設けられた部分の歪みを検知するので、正確な計測のためには地盤接触部311の歪み検知部32が設けられた部分の断面積や断面係数が変化せず、かつ、当該部分が一様な材質で構成されることが望ましい。地盤接触部311の歪み検知部32を設けた部分が摩耗すると、摩耗の進行によっても歪み検知部32の歪みの検知は不安定となる。このような事態を防ぐために、地盤接触部311の歪み検知部32を設けた部分に超硬度材質を用いたり硬化肉盛を施したりすることも考えられるが、地盤接触部311が一様な材質ではなくなり、歪み検知部32の歪みの検知は同様に不安定となる。
このような事態をさけるために、計測ロッド31が最大に伸長したときであっても地盤接触部311の歪み検知部32を設けた部分がカッターヘッド2から露出しないようにすれば、地盤接触部311の当該部分を一様な材質とするとともに摩耗の発生を抑えることができ、正確な計測を行うことができる。
【0058】
なお、計測ロッド31が最大に伸長したときに、地盤接触部311のカッターヘッド2の外周面から突出する部分に摩耗防止用の加工を施してもよい。
【0059】
歪み検知部32の検出信号は、ケーブル挿通孔3100aを通る通信線320を介して、地盤状態判定部4に送られる。
【0060】
地盤状態判定部4は、地盤負荷検出部3が検出した抵抗に基づいて地盤の状態を判定する。
地盤状態判定部4は、公知の手段で形成されるもので良く、例えば、地盤の土質又は土層を判定するものでも良い。
【0061】
本実施形態の地盤状態判定部4は、
図6に示すように、受信部40と、演算部41と、土質判定部42と、土質断面図作成部43と、送信部44とを備える。
【0062】
受信部40は、カッターヘッド2の回転に伴って歪み検知部32が計測した歪み量、及び、ロータリーエンコーダ22からのカッターヘッド2の回転角度を逐次受信し、受信した歪み量及びカッターヘッド2の回転角度を演算部41へ送る。
【0063】
演算部41は、歪み検知部32が検知した地盤接触部311の歪み量から、計測ロッド31に加わる地盤負荷(力学的な負荷)を算出するとともに、カッターヘッド2の各回転角度から地盤負荷検出部3の回転位置を算出し、両者を紐づけて、土質判定部42に送る。
【0064】
土質判定部42は、地盤負荷に基づいて計測ロッド31が通過する地盤の土質を、地盤負荷検出部3の回転位置ごとに判定し、土質断面図作成部43に送る。このときに地盤の土層が変化する境界の情報も判定して送るようにしても良い。地盤の土層が変化する境界の情報とは、地盤負荷検出部3で検出される地盤負荷が、例えば所定の値より大きく変化することに基づいて判定されるものである。例えば礫層では地盤負荷が大きく、砂層では礫層よりも小さい場合、両層の境では地盤負荷が大きく変化することになる。
【0065】
土質断面図作成部43は、送られたデータから土質断面図を生成する。土層が変化する境界の情報がある場合には、土質の境界点を結んで土層断面図を作成する。
土質断面図作成部43が作成した土質断面図又は土層断面図は、送信部44から表示部5へ送られ、表示部5で表示される。
図7には、地盤の土層が変化する境界の情報に基づいて、例えば、礫層と砂層との境界と判定された2点を結んで表示した土層断面図を示す。
【0066】
地盤測定装置Aは次のようにしてシールド掘進機1が掘進する地盤の状態を測定する。
通常の掘進時には、
図3に示すように、地盤負荷検出部3の計測ロッド31の伸縮ジャッキ部310を収縮させてカッターヘッド2の外周面から内側の内部に退避した位置に没入させておき、地盤負荷の計測は行わない。
【0067】
地盤状態を測定するときは、
図4に示すように、地盤負荷検出部3の計測ロッド31の伸縮ジャッキ部310を伸長させてカッターヘッド2の外周面から突出させ、地盤接触部311の先端部を地盤に接触させる。
【0068】
この状態で、カッターヘッド2を一回転させ、地盤負荷検出部3が計測した地盤負荷と計測位置に基づいて、地盤状態判定部4は、シールド掘進機1が掘進する土層断面の土質を判定し、土層断面図を作成する。
作成した土層断面図は表示部5に表示される。
【0069】
この地盤負荷による測定は、シールド掘進機1の掘進している状態で行われるが、掘進が停止しているときに行っても良い。また測定は、1リングすべての掘進にわたって行われるのではなくカッターヘッド2の一回転分や所定掘進長の間だけ行うようにしても良い。
地盤状態判定部4が判定した地盤の状態は、シールド掘進機1の掘進管理などに用いられる。
【0070】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態を
図8と共に説明する。なお、第1の実施形態と同様の部分については説明を省略し、主に異なる部分について説明する。
【0071】
第2の実施形態では、第1の実施形態に加えて、伸縮ジャッキ部310に作用する油圧を計測する油圧計3102が設けられ、計測ロッド31の伸縮ジャッキ部310を伸長させて地盤に貫入させ、このときの油圧に基づく貫入抵抗からも地盤の状態を測定する点が異なる。
【0072】
受信部40は、計測ロッド31の伸縮ジャッキ部310の伸長による地盤への貫入の際に油圧計3102が計測した油圧、及び、地盤への貫入の際にロータリーエンコーダ22からのカッターヘッド2の回転角度を受信し、受信した油圧及びカッターヘッド2の回転角度を演算部41へ送る。
【0073】
演算部41は、油圧計3102が計測した油圧から、計測ロッド31の地盤への貫入抵抗(力学的な負荷)を算出するとともに、カッターヘッド2の回転角度から地盤負荷検出部3の回転位置を算出し、両者を紐づけて、土質判定部42に送る。
油圧計3102と演算部41は、貫入抵抗計測部に相当する。
【0074】
土質判定部42では、貫入抵抗から土質が判定される。
これをカッターヘッド2の所定回転角度ごとに繰り返して、カッターヘッド2を一回転させることで、切羽一周分の土質が土質判定部42で判定される。判定後の処理は第1の実施形態と同様である。
【0075】
この貫入抵抗による測定は、シールド掘進機1の掘進が停止した状態で行われる。
【0076】
[その他の変形例]
本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。例えば以下のようなものも含まれる。
【0077】
本実施形態では、地盤測定装置がシールド掘進機に搭載されているが、回転するカッターヘッドを有するトンネル掘削機であればどのような種類のものであってもよい。
【0078】
本実施形態では、地盤接触部の内周面において、カッターヘッドの回転方向における前後方向の両側にそれぞれ歪み検知部を設けてあるが、前後方向のいずれか一側であってもよい。
また、本実施形態では、歪み検知部は、地盤接触部の内周面において、カッターヘッドの回転方向における前後方向に設けられているが、これに限られず、地盤接触部の内周面において、シールド掘進機の前後方向の少なくともいずれか一側に設けられても良い。歪み検知部を地盤接触部に設けることについては、カッターヘッドの回転方向における前後方向の少なくともいずれか一側に設ける態様、又は、シールド掘進機の前後方向の少なくともいずれか一側に設ける態様が選択的に採用されても良いし、併用して採用されても良い。併用して採用された効果としては、歪み検知部が複数設けられることによる計測精度の向上は当然であるとともに、シールド掘進機のカッターヘッドの回転によって受ける抵抗とシールドジャッキの推進力によって受ける抵抗の双方の合成荷重による抵抗、すなわち通常の掘進状態による抵抗による計測が可能となる。なお、歪み検知部を地盤接触部に設けることについては、カッターヘッドの回転方向における前後方向の側及びシールド掘進機の前後方向の側だけでなく他の部分にも選択的又は併用して設けられても良い。
さらに、本実施形態では、歪み検知部は、地盤接触部の内周面に設けられているが、外周面に設けるようにしても良い。地盤接触部の外周面に設けられる場合であっても計測ロッドが最大に伸長した際に歪み検知部が露出しないようにすれば破損を回避することができる。歪み検知部を地盤接触部の外周面に設けることについては、地盤接触部の内周面に設ける態様、又は、地盤接触部の外周面に設ける態様が選択的に採用されても良いし、併用して採用されても良い。
【0079】
本実施形態では、計測ロッドの最大伸長時の突出長さがコピーカッターの突出長さより長くなっている、即ち、計測ロッドが最も伸長したとき、地盤接触部の先端は、シールド掘進機が掘削することができる最外周より外側に位置することができるようにしていた。しかしながら、シールド掘進機にコピーカッターが設けられない場合には、計測ロッドをオーバーカッターが掘削する最外周より外側に伸長した位置まで移動可能とし、地盤接触部の先端を、シールド掘進機が掘削することができる最外周より外側に位置することができるようにしても良い。
また、本実施形態では、シールド掘進機にコピーカッターを設ける場合であっても、計測ロッドの最大伸長時の突出長さがコピーカッターの突出長さより短くなるようにしても良い。この場合であっても、例えば、コピーカッターを使用しないときなどをはじめとしてフレッシュな地盤の状態を測定することができる。
【0080】
本実施形態では地盤接触部311は、水平断面の外径が円筒形状であったが、他の形状例えば矩形でも良い。
【0081】
本実施形態のカッター回転による計測ロッドの地盤負荷の測定による地盤測定については、掘進中に行って、地盤への計測ロッドの貫入抵抗の測定による地盤測定については、掘進停止中に行うようにしても良い。
【0082】
第2の実施形態の地盤への計測ロッド31の貫入抵抗は、伸縮ジャッキ部310に作用する油圧の計測によって測定されたがこれに限られない。第1の実施形態のような地盤接触部311に設けられた歪み検知部32によって測定されても良い。すなわち、計測ロッドが地盤に貫入されると地盤接触部311には圧縮力が作用することになるので、これによって発生する地盤接触部311の歪みを歪み検知部32によって検出するようにして測定する。
また、計測ロッド31が地盤に貫入されると地盤接触部311における円筒形状の部材の先端側を閉口する天井部には、地盤からの抵抗によって撓みが発生することになる。この撓みを検知して計測ロッドの地盤への貫入抵抗を計測するために、地盤接触部311の天井部に沿って歪み検知部を設けるようにしても良い。
【0083】
本実施形態の説明では触れていないが、計測ロッドに伸縮に係る移動距離を把握するために、ストローク計を設けるようにしても良い。計測ロッドの伸縮に係る移動距離を把握し、移動距離を制御し地盤接触部の突出量を調整することができる。例えば、コピーカッターを使用しないときであって、比較的硬い地盤が想定されるときには、地盤接触部を最大に突出させないようにして、地盤からの負荷による破損などを防ぎつつ地盤状態を測定することができる。
また、ストローク計を設けることによって、第2の実施形態のような地盤への貫入抵抗による測定をする際にも、貫入量と貫入抵抗の変化の関係を把握してより詳細な地盤状態の測定をすることができる。
【0084】
変形例を含むいずれの実施形態における各技術的事項を他の実施形態に適用して実施例としても良い。
【0085】
1 シールド掘進機
10 モータ
11 シールドジャッキ
2 カッターヘッド
20 カッタービット
21 コピーカッター
22 ロータリーエンコーダ
3 地盤負荷検出部
30 ケーシング
300 平板環状体
301 リングパッキン
302 環状突条
303 リングパッキン
304 溝部
31 計測ロッド
310 伸縮ジャッキ部
3100 シリンダー
3100a ケーブル挿通孔
3101 ピストンロッド
3102 油圧計
311 地盤接触部
3110 ボルト
312 フランジ
3120 張り出し部
32 歪み検知部
320 通信線
4 地盤状態判定部
40 受信部
41 演算部
42 土質判定部
43 土質断面図作成部
44 送信部
5 表示部