(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123441
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】作業機械用動力伝達装置
(51)【国際特許分類】
F16H 48/11 20120101AFI20240905BHJP
F16H 48/30 20120101ALI20240905BHJP
B60L 15/20 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
F16H48/11
F16H48/30
B60L15/20 S
B60L15/20 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030858
(22)【出願日】2023-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 明音
(72)【発明者】
【氏名】秋山 直也
【テーマコード(参考)】
3J027
5H125
【Fターム(参考)】
3J027FA17
3J027FA36
3J027FB13
3J027GB09
3J027GB10
3J027GC14
3J027GC24
3J027GC26
5H125AA12
5H125AC08
5H125BA01
5H125BE05
5H125FF01
(57)【要約】
【課題】作業機械用動力伝達装置のコスト低減を可能にする。
【解決手段】第1駆動モータ21および第2駆動モータ22の回転力をスプロケット2Lに伝達する第1伝達経路と、第1駆動モータ21および第2駆動モータ22の回転力をスプロケット2Rに伝達する第2伝達経路と、は対称に構成されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、前記車体の左右に配置される第1駆動輪と第2駆動輪とを含み、回転駆動されることで前記車体を走行させる駆動輪と、を備える作業機械に搭載され、前記駆動輪へ駆動力を伝達する、作業機械用動力伝達装置であって、
前記第1駆動輪に伝達される前記駆動力を出力する第1出力軸と、
前記第2駆動輪に伝達される前記駆動力を出力する第2出力軸と、
前記第1出力軸に連結され、複数の回転要素を含む第1遊星歯車機構と、
前記第2出力軸に連結され、複数の回転要素を含む第2遊星歯車機構と、
前記第1遊星歯車機構の複数の回転要素のうちの1つの回転要素に回転力を伝達可能、かつ、前記第2遊星歯車機構の複数の回転要素のうちの1つの回転要素に回転力を伝達可能に構成される、第1駆動モータと、
前記第2遊星歯車機構の複数の回転要素のうちの他の1つの回転要素に回転力を伝達可能、かつ、前記第1遊星歯車機構の複数の回転要素のうちの他の1つの回転要素に回転力を伝達可能に構成される、第2駆動モータと、を備え、
前記第1駆動モータおよび前記第2駆動モータの回転力を前記第1駆動輪に伝達する第1伝達経路と、前記第1駆動モータおよび前記第2駆動モータの回転力を前記第2駆動輪に伝達する第2伝達経路と、は対称に構成されている、作業機械用動力伝達装置。
【請求項2】
前記第1遊星歯車機構と前記第2遊星歯車機構との前記複数の回転要素は、サンギヤと、遊星キャリアと、リングギヤとを含み、
前記第1出力軸は、前記第1遊星歯車機構の前記遊星キャリアに連結されており、
前記第2出力軸は、前記第2遊星歯車機構の前記遊星キャリアに連結されている、請求項1に記載の作業機械用動力伝達装置。
【請求項3】
前記第1駆動モータは、前記第1遊星歯車機構の前記リングギヤに前記回転力を伝達可能、かつ、前記第2遊星歯車機構の前記サンギヤに前記回転力を伝達可能であり、
前記第2駆動モータは、前記第1遊星歯車機構の前記サンギヤに前記回転力を伝達可能、かつ、前記第2遊星歯車機構の前記リングギヤに前記回転力を伝達可能である、請求項2に記載の作業機械用動力伝達装置。
【請求項4】
前記第1駆動モータは、前記第1遊星歯車機構の前記サンギヤに前記回転力を伝達可能、かつ、前記第2遊星歯車機構の前記リングギヤに前記回転力を伝達可能であり、
前記第2駆動モータは、前記第1遊星歯車機構の前記リングギヤに前記回転力を伝達可能、かつ、前記第2遊星歯車機構の前記サンギヤに前記回転力を伝達可能である、請求項2に記載の作業機械用動力伝達装置。
【請求項5】
前記第1駆動モータおよび前記第2駆動モータは電動モータである、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の作業機械用動力伝達装置。
【請求項6】
前記作業機械はブルドーザである、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の作業機械用動力伝達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、作業機械に搭載される作業機械用動力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2015-21594号公報(特許文献1)には、左右の駆動輪にトルク差を与えながら駆動トルクを伝達することが可能な、動力伝達装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記文献に記載の動力伝達装置では、第一遊星歯車機構のサンギヤと第二遊星歯車機構のキャリアとが結合されて第一結合要素を形成し、第一遊星歯車機構のキャリアと第二遊星歯車機構のサンギヤとが結合されて第二結合要素を形成している。第一結合要素は中空軸を含んで構成されており、その内部に第二結合要素が挿通されている。軸が二重構造となっていることにより、通過トルクが大きなブルドーザなどに上記文献に記載の動力伝達装置を適用すると、装置が大型化することがある。
【0005】
本開示では、従来よりも改善された作業機械用動力伝達装置が提案される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る作業機械用動力伝達装置は、作業機械に搭載される。作業機械は、車体と、駆動輪とを備えている。駆動輪は、車体の左右に配置される第1駆動輪と第2駆動輪とを含んでいる。駆動輪は、回転駆動されることで車体を走行させる。作業機械用動力伝達装置は、駆動輪へ駆動力を伝達する。作業機械用動力伝達装置は、第1駆動輪に伝達される駆動力を出力する第1出力軸と、第2駆動輪に伝達される駆動力を出力する第2出力軸と、第1出力軸に連結され、複数の回転要素を含む第1遊星歯車機構と、第2出力軸に連結され、複数の回転要素を含む第2遊星歯車機構と、第1駆動モータと、第2駆動モータとを備えている。第1駆動モータは、第1遊星歯車機構の複数の回転要素のうちの1つの回転要素に回転力を伝達可能、かつ、第2遊星歯車機構の複数の回転要素のうちの1つの回転要素に回転力を伝達可能に構成されている。第2駆動モータは、第2遊星歯車機構の複数の回転要素のうちの他の1つの回転要素に回転力を伝達可能、かつ、第1遊星歯車機構の複数の回転要素のうちの他の1つの回転要素に回転力を伝達可能に構成されている。第1駆動モータおよび第2駆動モータの回転力を第1駆動輪に伝達する第1伝達経路と、第1駆動モータおよび第2駆動モータの回転力を第2駆動輪に伝達する第2伝達経路と、は対称に構成されている。
【発明の効果】
【0007】
本開示に従えば、作業機械用動力伝達装置のコスト低減を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に基づく作業機械の一例であるブルドーザの斜視図である。
【
図2】ブルドーザの動力伝達系統の構成を示す模式図である。
【
図3】第1実施形態における動力伝達装置を示すスケルトン図である。
【
図4】第2実施形態における動力伝達装置を示すスケルトン図である。
【
図5】第3実施形態における動力伝達装置を示すスケルトン図である。
【
図6】第4実施形態における動力伝達装置を示すスケルトン図である。
【
図7】第5実施形態における動力伝達装置を示すスケルトン図である。
【
図8】第6実施形態における動力伝達装置を示すスケルトン図である。
【
図9】第7実施形態における動力伝達装置を示すスケルトン図である。
【
図10】第8実施形態における動力伝達装置を示すスケルトン図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について図に基づいて説明する。以下の説明では、同一の部品および構成要素には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、これらについての詳細な説明は繰り返さない。実施形態から任意の構成が抽出され、それらが任意に組み合わされることも、当初から予定されている。
【0010】
[第1実施形態]
まず、実施形態の作業機械の一例として、ブルドーザ1の構成について説明する。
図1は、実施形態に基づく作業機械の一例であるブルドーザ1の斜視図である。ブルドーザ1は、車体7と、ブレード5と、リッパ6と、走行装置4とを主に備えている。
【0011】
ブレード5は、車体7に取り付けられている。ブレード5は、地表の掘削および整地などの作業を行なうための作業機である。ブレード5は、車体7の前方に配置されている。リッパ6は、車体7に取り付けられている。リッパ6は、岩石などの硬質材料を貫通し破砕するための作業機である。リッパ6は、車体7の後方に配置されている。
【0012】
走行装置4は、車体7の左右に設けられている。走行装置4は、左右方向に離れた左右一対の履帯3を有している、装軌式の走行装置である。車体7は、左右一対の履帯3の間に配置されている。左右のスプロケット2が履帯3を駆動することにより、ブルドーザ1が走行する。履帯3と、スプロケット2とは、車体7の左右に配置されている。
【0013】
図2は、ブルドーザ1の動力伝達系統の構成を示す模式図である。エンジン11は、ブルドーザ1の駆動源であり、たとえばディーゼルエンジンである。エンジン11は、車体7を走行させるための駆動力を発生する。エンジン11は、作業機(ブレード5、リッパ6)を動作させるための駆動力を発生する。エンジン11の出力は、エンジン11のシリンダ内に噴射される燃料量を調整することにより、制御される。
【0014】
動力取出装置(PTO)12は、エンジン11からの駆動力を、走行装置4を駆動する走行系と、作業機ポンプ13と、ファンポンプ14とに分配する。
【0015】
作業機ポンプ13は、作業機を駆動する油圧装置系に含まれる。作業機ポンプ13は、油圧ポンプである。作業機は、作業機ポンプ13が吐出する作動油によって駆動される。ファンポンプ14は、図示しないファンモータに作動油を供給する。ファンモータは、図示しない冷却ファンを回転させる。
【0016】
走行系は、発電機15と、動力伝達装置20とを含んでいる。発電機15は、エンジン11が発生した駆動力によって駆動され、機械エネルギーを電気エネルギーに変換する。動力伝達装置20は、エンジン11からスプロケット2L,2Rへの動力伝達経路に設けられている。動力伝達装置20は、第1駆動モータ21と、第2駆動モータ22とを備えている。発電機15は、配線16を介して、第1駆動モータ21および第2駆動モータ22に電気的に接続されている。
【0017】
第1駆動モータ21および第2駆動モータ22は、電動モータである。第1駆動モータ21と第2駆動モータ22とは、発電機15が発生した電力によって駆動され、電気エネルギーを機械エネルギーに変換する。ブルドーザ1は、エンジン11で発電機15を駆動し、発電機15が発生した電力で第1駆動モータ21および第2駆動モータ22を駆動させて走行する、ディーゼル・エレクトリック方式の電気式駆動装置を備えている。
【0018】
具体的に、第1駆動モータ21と第2駆動モータ22とは、回転力を発生する。第1駆動モータ21および第2駆動モータ22の発生する回転力がスプロケット2L,2Rに伝達されて、スプロケット2L,2Rが回転駆動される。スプロケット2L,2Rは、エンジン11の発生した駆動力により回転駆動されることで車体7を走行させる、駆動輪の一例である。スプロケット2Lは、車体7(
図1)の左側に配置される第1駆動輪の一例であり、スプロケット2Rは、車体7の右側に配置される第2駆動輪の一例である。
【0019】
なお、
図2において、発電機15から第1駆動モータ21および第2駆動モータ22に供給する電力を制御する制御部(インバータ、コンバータ)が設けられるが、これについては図示を省略している。
【0020】
図3は、第1実施形態における動力伝達装置20を示すスケルトン図である。なお、
図3および後続の
図4~
図10に示されるスケルトン図は、第1駆動モータ21および第2駆動モータ22からスプロケット2L,2Rへの動力伝達経路を簡略的に表した図である。
【0021】
図3に示す通り、動力伝達装置20は、第1遊星歯車機構30を備えている。第1遊星歯車機構30は、複数の回転要素を有している。第1遊星歯車機構30の複数の回転要素は、第1サンギヤ31と、第1プラネタリギヤ32と、第1遊星キャリア33と、第1リングギヤ34とを含んでいる。
【0022】
第1サンギヤ31は、第1遊星歯車機構30の中心に配置されており、回転可能に構成されている。複数の第1プラネタリギヤ32は、第1サンギヤ31の径方向外側に、周方向に間隔をあけて配置されている。各第1プラネタリギヤ32は、第1遊星キャリア33に支持されている。第1リングギヤ34は、第1プラネタリギヤ32の径方向外側に配置されている。第1リングギヤ34は、第1プラネタリギヤ32と噛み合う内周歯と、後述する第1入力ギヤ23と噛み合う外周歯とを有している。
【0023】
各第1プラネタリギヤ32は、第1サンギヤ31の外周歯と第1リングギヤ34の内周歯とに噛み合い、自転可能である。第1遊星キャリア33は、第1サンギヤ31の周囲を回転可能である。各第1プラネタリギヤ32は、第1遊星キャリア33に支持された状態で、第1サンギヤ31の周囲を公転可能である。第1リングギヤ34は、第1プラネタリギヤ32および第1遊星キャリア33の周囲を回転可能である。
【0024】
第1サンギヤ31、第1遊星キャリア33および第1リングギヤ34の回転中心、ならびに第1プラネタリギヤ32の公転軸は、同一直線上にあり、これを第1遊星歯車機構30の回転中心とする。
【0025】
第1サンギヤ31に、第1サンギヤ回転軸35が固定されている。第1サンギヤ回転軸35は、第1遊星歯車機構30の回転の軸方向に延びている。第1サンギヤ回転軸35は、第1遊星歯車機構30の回転中心と同心に配置されている。第1サンギヤ回転軸35は、第1サンギヤ31と一体に回転する。
【0026】
第1サンギヤ回転軸35は、第1サンギヤ31に固定されている一端と、一端と反対側の他端とを有している。第1サンギヤ回転軸35の他端に、第1軸端ギヤ36が固定されている。第1軸端ギヤ36は、第1遊星歯車機構30と同じ回転中心を有している。第1軸端ギヤ36は、第1サンギヤ31と共に、第1遊星歯車機構30の回転中心をなす直線上に配置されている。第1軸端ギヤ36は、第1サンギヤ回転軸35を介して、第1サンギヤ31に連結されている。第1軸端ギヤ36は、第1サンギヤ31と一体に回転する。第1サンギヤ31、第1サンギヤ回転軸35、および第1軸端ギヤ36は、一体に回転する。
【0027】
第1駆動モータ21の出力軸の先端に、第1入力ギヤ23が固定されている。第1入力ギヤ23と、第1遊星歯車機構30の第1リングギヤ34の外周歯とが噛み合っている。第1駆動モータ21の発生する回転力は、第1リングギヤ34に入力される。第1実施形態においては、第1遊星歯車機構30の複数の回転要素のうち、第1リングギヤ34が、第1駆動モータ21から回転力が入力される第1入力要素に対応する。
【0028】
動力伝達装置20は、第1出力軸71を備えている。第1出力軸71は、第1遊星歯車機構30の第1遊星キャリア33に連結されている。第1出力軸71は、スプロケット2Lに伝達される駆動力を出力する。第1出力軸71は、左のステアリングブレーキ73および左の終減速装置81を介して、左のスプロケット2Lに連結されている。第1遊星歯車機構30から第1出力軸71に伝達された駆動力は、終減速装置81を介して、スプロケット2Lに伝達される。第1遊星キャリア33は、第1出力軸71に連結されている第1出力要素に対応する。第1実施形態においては、第1サンギヤ31が、第1リングギヤ34および第1遊星キャリア33に対して相対回転可能な第1中間要素に対応する。
【0029】
ステアリングブレーキ73は、第1遊星歯車機構30と終減速装置81との間に配置されている。ステアリングブレーキ73は、第1出力軸71の回転を制動する。ステアリングブレーキ73は、たとえば、油圧によって制動状態と非制動状態とに切り換え可能な油圧式のブレーキである。ステアリングブレーキ73を制動状態にすることによって、第1出力軸71の回転が制動される。その結果、第1出力軸71に連結された終減速装置81の回転が低減され、スプロケット2Lの回転が制動される。
【0030】
第1サンギヤ31と第1出力軸71とは、第1遊星歯車機構30の回転の軸方向に、間隔を空けて並んで配置されている。第1サンギヤ回転軸35と第1出力軸71とは、第1遊星歯車機構30の回転の軸方向に、間隔を空けて並んで配置されている。第1出力要素を構成する第1出力軸71は、第1サンギヤ31を貫通しない。
【0031】
第1サンギヤ回転軸35の外周に、同軸上で駆動力を伝達する他の軸は存在しない。第1出力軸71の外周に、同軸上で駆動力を伝達する他の軸は存在しない。第1サンギヤ回転軸35を貫通する他の軸は存在しない。第1出力軸71を貫通する他の軸は存在しない。すなわち、特許文献1に見られるような同軸二重構造は、第1遊星歯車機構30の側(
図3の左半分)には存在しない。
【0032】
動力伝達装置20は、第2遊星歯車機構40を備えている。第2遊星歯車機構40は、複数の回転要素を有している。第2遊星歯車機構40の複数の回転要素は、第2サンギヤ41と、第2プラネタリギヤ42と、第2遊星キャリア43と、第2リングギヤ44とを含んでいる。
【0033】
第2サンギヤ41は、第2遊星歯車機構40の中心に配置されており、回転可能に構成されている。複数の第2プラネタリギヤ42は、第2サンギヤ41の径方向外側に、周方向に間隔をあけて配置されている。各第2プラネタリギヤ42は、第2遊星キャリア43に支持されている。第2リングギヤ44は、第2プラネタリギヤ42の径方向外側に配置されている。第2リングギヤ44は、第2プラネタリギヤ42と噛み合う内周歯と、後述する第2入力ギヤ24と噛み合う外周歯とを有している。
【0034】
各第2プラネタリギヤ42は、第2サンギヤ41の外周歯と第2リングギヤ44の内周歯とに噛み合い、自転可能である。第2遊星キャリア43は、第2サンギヤ41の周囲を回転可能である。各第2プラネタリギヤ42は、第2遊星キャリア43に支持された状態で、第2サンギヤ41の周囲を公転可能である。第2リングギヤ44は、第2プラネタリギヤ42および第2遊星キャリア43の周囲を回転可能である。
【0035】
第2サンギヤ41、第2遊星キャリア43および第2リングギヤ44の回転中心、ならびに第2プラネタリギヤ42の公転軸は、同一直線上にあり、これを第2遊星歯車機構40の回転中心とする。第1遊星歯車機構30と第2遊星歯車機構40とは、それぞれの回転中心が同一直線上にある。
【0036】
第2サンギヤ41に、第2サンギヤ回転軸45が固定されている。第2サンギヤ回転軸45は、第2遊星歯車機構40の回転の軸方向に延びている。第2サンギヤ回転軸45は、第2遊星歯車機構40の回転中心と同心に配置されている。第2サンギヤ回転軸45は、第2サンギヤ41と一体に回転する。
【0037】
第2サンギヤ回転軸45は、第2サンギヤ41に固定されている一端と、一端と反対側の他端とを有している。第2サンギヤ回転軸45の他端に、第2軸端ギヤ46が固定されている。第2軸端ギヤ46は、第2遊星歯車機構40と同じ回転中心を有している。第2軸端ギヤ46は、第2サンギヤ41と共に、第2遊星歯車機構40の回転中心をなす直線上に配置されている。第2軸端ギヤ46は、第2サンギヤ回転軸45を介して、第2サンギヤ41に連結されている。第2軸端ギヤ46は、第2サンギヤ41と一体に回転する。第2サンギヤ41、第2サンギヤ回転軸45、および第2軸端ギヤ46は、一体に回転する。
【0038】
第2駆動モータ22の出力軸の先端に、第2入力ギヤ24が固定されている。第2入力ギヤ24と、第2遊星歯車機構40の第2リングギヤ44の外周歯とが噛み合っている。第2駆動モータ22の発生する回転力は、第2リングギヤ44に入力される。第1実施形態においては、第2遊星歯車機構40の複数の回転要素のうち、第2リングギヤ44が、第2駆動モータ22から回転力が入力される第2入力要素に対応する。
【0039】
動力伝達装置20は、第2出力軸72を備えている。第2出力軸72は、第2遊星歯車機構40の第2遊星キャリア43に連結されている。第2出力軸72は、スプロケット2Rに伝達される駆動力を出力する。第2出力軸72は、右のステアリングブレーキ74および右の終減速装置82を介して、右のスプロケット2Rに連結されている。第2遊星歯車機構40から第2出力軸72に伝達された駆動力は、終減速装置82を介して、スプロケット2Rに伝達される。第2遊星キャリア43は、第2出力軸72に連結されている第2出力要素に対応する。第1実施形態においては、第2サンギヤ41が、第2リングギヤ44および第2遊星キャリア43に対して相対回転可能な第2中間要素に対応する。
【0040】
ステアリングブレーキ74は、第2遊星歯車機構40と終減速装置82との間に配置されている。ステアリングブレーキ74は、第2出力軸72の回転を制動する。ステアリングブレーキ74は、たとえば、油圧によって制動状態と非制動状態とに切り換え可能な油圧式のブレーキである。ステアリングブレーキ74を制動状態にすることによって、第2出力軸72の回転が制動される。その結果、第2出力軸72に連結された終減速装置82の回転が低減され、スプロケット2Rの回転が制動される。左右のスプロケット2L,2Rの回転速度を異ならせることで、ブルドーザ1は左右に旋回する。左右のスプロケット2L,2Rの一方のみを回転駆動させ、他方を停止させることで、ブルドーザ1は信地旋回する。
【0041】
第2サンギヤ41と第2出力軸72とは、第2遊星歯車機構40の回転の軸方向に、間隔を空けて並んで配置されている。第2サンギヤ回転軸45と第2出力軸72とは、第2遊星歯車機構40の回転の軸方向に、間隔を空けて並んで配置されている。第2出力要素を構成する第2出力軸72は、第2サンギヤ41を貫通しない。
【0042】
第2サンギヤ回転軸45の外周に、同軸上で駆動力を伝達する他の軸は存在しない。第2出力軸72の外周に、同軸上で駆動力を伝達する他の軸は存在しない。第2サンギヤ回転軸45を貫通する他の軸は存在しない。第2出力軸72を貫通する他の軸は存在しない。すなわち、特許文献1に見られるような同軸二重構造は、第2遊星歯車機構40の側(
図3の右半分)にも存在しない。
【0043】
第1出力軸71、第1サンギヤ31、第2サンギヤ41、および第2出力軸72は、第1遊星歯車機構30と第2遊星歯車機構40との回転の軸方向(
図3においては、図中の左右方向)に、互いに間隔を空けて、並んで配置されている。第1出力軸71、第1サンギヤ回転軸35、第2サンギヤ回転軸45、および第2出力軸72は、第1遊星歯車機構30と第2遊星歯車機構40との回転の軸方向に、互いに間隔を空けて、並んで配置されている。
【0044】
動力伝達装置20は、第1回転伝達要素50をさらに備えている。第1回転伝達要素50は、第1遊星歯車機構30および第2遊星歯車機構40の回転中心とは異なる回転中心を中心に、回転可能に構成されている。第1サンギヤ回転軸35は第1遊星歯車機構30の回転中心と同心に配置されており、第1回転伝達要素50は、第1サンギヤ回転軸35に対して、第1遊星歯車機構30の回転の径方向に離れて配置されている。第1回転伝達要素50は、第1リングギヤ34の径方向外側に配置されている。
【0045】
第1回転伝達要素50は、第1シャフト部51を有している。第1シャフト部51は、第1遊星歯車機構30の回転の軸方向と平行な方向に延びている。第1シャフト部51と第1サンギヤ回転軸35とは、平行に配置されている。第1シャフト部51と第1出力軸71とは、平行に配置されている。
【0046】
第1回転伝達要素50は、第1連結ギヤ52,53を有している。第1連結ギヤ52は、第1シャフト部51の一端に固定されている。第1連結ギヤ53は、第1シャフト部51の他端に固定されている。第1シャフト部51と第1連結ギヤ52,53とは、一体に回転する。
【0047】
第1連結ギヤ52は、第1遊星歯車機構30の第1リングギヤ34の外周歯と噛み合っている。第1連結ギヤ53は、第2軸端ギヤ46と噛み合っている。
【0048】
第1駆動モータ21の発生する回転力が第1リングギヤ34に入力されて、第1リングギヤ34が回転する。第1リングギヤ34の回転が、第1連結ギヤ52に伝達される。第1連結ギヤ53は、第1連結ギヤ52と一体に回転する。第1連結ギヤ53の回転が、第2軸端ギヤ46に伝達される。第2サンギヤ41は、第2軸端ギヤ46と一体に回転する。第1回転伝達要素50は、第1遊星歯車機構30の第1リングギヤ34の回転を、第2軸端ギヤ46を介して、第2遊星歯車機構40の第2サンギヤ41に伝達する。第1駆動モータ21は、第1遊星歯車機構30の第1リングギヤ34に回転力を伝達可能、かつ、第2遊星歯車機構40の第2サンギヤ41に回転力を伝達可能に構成されている。
【0049】
動力伝達装置20は、第2回転伝達要素60をさらに備えている。第2回転伝達要素60は、第1遊星歯車機構30および第2遊星歯車機構40の回転中心とは異なる回転中心を中心に、回転可能に構成されている。第2サンギヤ回転軸45は第2遊星歯車機構40の回転中心と同心に配置されており、第2回転伝達要素60は、第2サンギヤ回転軸45に対して、第2遊星歯車機構40の回転の径方向に離れて配置されている。第2回転伝達要素60は、第2リングギヤ44の径方向外側に配置されている。
【0050】
第2回転伝達要素60は、第2シャフト部61を有している。第2シャフト部61は、第2遊星歯車機構40の回転の軸方向と平行な方向に延びている。第2シャフト部61と第2サンギヤ回転軸45とは、平行に配置されている。第2シャフト部61と第2出力軸72とは、平行に配置されている。
【0051】
第2回転伝達要素60は、第2連結ギヤ62,63を有している。第2連結ギヤ62は、第2シャフト部61の一端に固定されている。第2連結ギヤ63は、第2シャフト部61の他端に固定されている。第2シャフト部61と第2連結ギヤ62,63とは、一体に回転する。
【0052】
第2連結ギヤ62は、第2遊星歯車機構40の第2リングギヤ44の外周歯と噛み合っている。第2連結ギヤ63は、第1軸端ギヤ36と噛み合っている。
図3においては、第2連結ギヤ62と第2リングギヤ44との間に破線が描かれ、第2連結ギヤ63と第1軸端ギヤ36との間に破線が描かれているが、実際には、第2連結ギヤ62は第2リングギヤ44に直接噛み合っており、第2連結ギヤ63は第1軸端ギヤ36に直接噛み合っている。第2回転伝達要素60は実際には、第1遊星歯車機構30および第2遊星歯車機構40の回転の周方向において、第1回転伝達要素50とは異なる位置に配置されているので、第2連結ギヤ62を第2リングギヤ44に直接噛み合わせることが可能であり、第2連結ギヤ63を第1軸端ギヤ36に直接噛み合わせることが可能である。
【0053】
第2駆動モータ22の発生する回転力が第2リングギヤ44に入力されて、第2リングギヤ44が回転する。第2リングギヤ44の回転が、第2連結ギヤ62に伝達される。第2連結ギヤ63は、第2連結ギヤ62と一体に回転する。第2連結ギヤ63の回転が、第1軸端ギヤ36に伝達される。第1サンギヤ31は、第1軸端ギヤ36と一体に回転する。第2回転伝達要素60は、第2遊星歯車機構40の第2リングギヤ44の回転を、第1軸端ギヤ36を介して、第1遊星歯車機構30の第1サンギヤ31に伝達する。第2駆動モータ22は、第2遊星歯車機構40の第2リングギヤ44に回転力を伝達可能、かつ、第1遊星歯車機構30の第1サンギヤ31に回転力を伝達可能に構成されている。
【0054】
動力伝達装置20が以上のような構成を備えているので、
図3に示されるスケルトン図において、第1駆動モータ21および第2駆動モータ22の回転力をスプロケット2Lに伝達する第1伝達経路と、第1駆動モータ21および第2駆動モータ22の回転力をスプロケット2Rに伝達する第2伝達経路と、は対称に構成されている。
【0055】
以上説明した動力伝達装置20は、第1駆動モータ21および第2駆動モータ22と、左右のスプロケット2L,2Rと、の間に、第1遊星歯車機構30と第2遊星歯車機構40とを備えている。第1出力要素をなす第1遊星キャリア33以外の第1遊星歯車機構30の回転要素と、第2出力要素をなす第2遊星キャリア43以外の第2遊星歯車機構40の回転要素とが、第1回転伝達要素50および第2回転伝達要素60で接続されている。具体的に、第1回転伝達要素50は第1リングギヤ34と第2サンギヤ41とを接続しており、第2回転伝達要素60は第2リングギヤ44と第1サンギヤ31とを接続している。これにより、4要素2自由度の差動機構が実現されている。
【0056】
第1駆動モータ21および第2駆動モータ22から出力されるトルクに差を与えると、このトルク差が差動機構によって増幅されて、左右の各駆動輪であるスプロケット2L,2Rに伝達される。このようにして、動力伝達装置20は、左右のスプロケット2L,2Rに伝達されるトルク差を増大することができる。
【0057】
図3に示されるスケルトン図において、上記した第1伝達経路と第2伝達経路とが対称な構造であるため、第1伝達経路を構成する各部品と第2伝達経路を構成する各部品とを共通化できる。部品種類を削減できることにより、動力伝達装置20のコスト低減を実現することができる。
【0058】
第1遊星歯車機構30の回転要素と第2遊星歯車機構40の回転要素とが、第1回転伝達要素50および第2回転伝達要素60によって接続されている。第1出力軸71は、第1遊星歯車機構30と第2遊星歯車機構40とのうち、第1遊星歯車機構30の回転要素に連結されており、第2遊星歯車機構40の回転要素には直接に連結されていない。第2出力軸72は、第1遊星歯車機構30と第2遊星歯車機構40とのうち、第2遊星歯車機構40の回転要素に連結されており、第1遊星歯車機構30の回転要素には直接に連結されていない。
【0059】
第1出力軸71、第1遊星歯車機構30の第1サンギヤ31、第2遊星歯車機構40の第2サンギヤ41、および第2出力軸72は、第1遊星歯車機構30および第2遊星歯車機構40の回転の軸方向において、並んで配置されている。第1出力軸71、第1サンギヤ31に連結された第1サンギヤ回転軸35、第2サンギヤ41に連結された第2サンギヤ回転軸45、および第2出力軸72は、第1遊星歯車機構30および第2遊星歯車機構40の回転の軸方向において、並んで配置されている。
【0060】
図3のスケルトン図で示される動力伝達経路において、第1出力軸71は、その全体が、第1遊星歯車機構30よりもスプロケット2Lに近く配置されている。動力伝達装置20は、第1出力軸71が第1遊星歯車機構30の回転要素を軸方向に貫通しない構造とされている。第1出力軸71と、第1遊星歯車機構30の回転要素とは、同軸二重構造を構成していない。第1出力軸71は、第1サンギヤ31を貫通していない。
【0061】
図3のスケルトン図で示される動力伝達経路において、第2出力軸72は、その全体が、第2遊星歯車機構40よりもスプロケット2Rに近く配置されている。動力伝達装置20は、第2出力軸72が第2遊星歯車機構40の回転要素を軸方向に貫通しない構造とされている。第2出力軸72と、第2遊星歯車機構40の回転要素とは、同軸二重構造を構成していない。第2出力軸72は、第2サンギヤ41を貫通していない。
【0062】
図3に示す通り、第1サンギヤ回転軸35の外周、第1出力軸71の外周、第2サンギヤ回転軸45の外周、および第2出力軸72の外周のいずれにも、同軸上で駆動力を伝達する他の軸は存在しない。第1サンギヤ回転軸35、第1出力軸71、第2サンギヤ回転軸45、および第2出力軸72のいずれにも、当該軸を貫通する他の軸は存在しない。すなわち、特許文献1に見られるような同軸二重構造は、以上説明した動力伝達装置20には存在しない。
【0063】
第1サンギヤ回転軸35、第1出力軸71、第2サンギヤ回転軸45、および第2出力軸72はいずれも、中空軸の内孔に他の軸を挿通する多重軸構造を構成しない。第1サンギヤ回転軸35、第1出力軸71、第2サンギヤ回転軸45、および第2出力軸72はいずれも、多重ではない一重の軸構造を有している。なお、第1サンギヤ回転軸35、第1出力軸71、第2サンギヤ回転軸45、および第2出力軸72の各軸が一重軸構造であることは、少なくとも1つの軸が中空軸であることを除外しない。
【0064】
したがって、各軸の径を、通過トルクに応じた最適な太さとなるよう設計することができる。これにより、ブルドーザ1などの作業機械に用いられる、大きなトルクを伝達する必要のある動力伝達装置20においても、装置全体が大型化することを防ぐことができる。
【0065】
[第2実施形態]
図4は、第2実施形態における動力伝達装置20を示すスケルトン図である。以降の実施形態の説明では、第1実施形態と同じ構成については説明を省略し、第1実施形態とは異なる各実施形態特有の構成に着目して説明する。なお
図4~
図10においては、左右のスプロケット2L,2R、左右のステアリングブレーキ73,74、および左右の終減速装置81,82は、第1実施形態と同じであるので、図示を省略されている。
【0066】
図4に示されるように、第1入力ギヤ23と、第1軸端ギヤ36とが噛み合っている。第1駆動モータ21は、第1サンギヤ31に入力される回転力を発生する。第1駆動モータ21の発生する回転力は、第1軸端ギヤ36を介して、第1サンギヤ31に入力される。第2実施形態においては、第1遊星歯車機構30の複数の回転要素のうち、第1サンギヤ31が、第1駆動モータ21から回転力が入力される第1入力要素に対応する。第2実施形態においては、第1リングギヤ34が、第1サンギヤ31および第1遊星キャリア33に対して相対回転可能な第1中間要素に対応する。
【0067】
第2入力ギヤ24と、第2軸端ギヤ46とが噛み合っている。第2駆動モータ22は、第2サンギヤ41に入力される回転力を発生する。第2駆動モータ22の発生する回転力は、第2軸端ギヤ46を介して、第2サンギヤ41に入力される。第2実施形態においては、第2遊星歯車機構40の複数の回転要素のうち、第2サンギヤ41が、第2駆動モータ22から回転力が入力される第2入力要素に対応する。第2実施形態においては、第2リングギヤ44が、第2サンギヤ41および第2遊星キャリア43に対して相対回転可能な第2中間要素に対応する。
【0068】
第1駆動モータ21の発生する回転力が、第1軸端ギヤ36に入力される。第1軸端ギヤ36と一体に、第1サンギヤ31が回転する。第1軸端ギヤ36の回転が、第2連結ギヤ63に伝達される。第2連結ギヤ62は、第2連結ギヤ63と一体に回転する。第2連結ギヤ62の回転が、第2リングギヤ44に伝達される。第2回転伝達要素60は、第1遊星歯車機構30の第1サンギヤ31の回転を、第2遊星歯車機構40の第2リングギヤ44に伝達する。第1駆動モータ21は、第1遊星歯車機構30の第1サンギヤ31に回転力を伝達可能、かつ、第2遊星歯車機構40の第2リングギヤ44に回転力を伝達可能に構成されている。
【0069】
第2駆動モータ22の発生する回転力が、第2軸端ギヤ46に入力される。第2軸端ギヤ46と一体に、第2サンギヤ41が回転する。第2軸端ギヤ46の回転が、第1連結ギヤ53に伝達される。第1連結ギヤ52は、第1連結ギヤ53と一体に回転する。第1連結ギヤ52の回転が、第1リングギヤ34に伝達される。第1回転伝達要素50は、第2遊星歯車機構40の第2サンギヤ41の回転を、第1遊星歯車機構30の第1リングギヤ34に伝達する。第2駆動モータ22は、第2遊星歯車機構40の第2サンギヤ41に回転力を伝達可能、かつ、第1遊星歯車機構30の第1リングギヤ34に回転力を伝達可能に構成されている。
【0070】
以上説明した第2実施形態の動力伝達装置20においても、
図4に示されるスケルトン図において、第1駆動モータ21および第2駆動モータ22の回転力をスプロケット2Lに伝達する第1伝達経路と、第1駆動モータ21および第2駆動モータ22の回転力をスプロケット2Rに伝達する第2伝達経路と、は対称に構成されている。第1遊星歯車機構30の回転要素と第2遊星歯車機構40の回転要素とが、第1回転伝達要素50および第2回転伝達要素60によって接続されている。第1出力軸71、第1サンギヤ回転軸35、第2サンギヤ回転軸45、および第2出力軸72は、第1遊星歯車機構30および第2遊星歯車機構40の回転の軸方向において、並んで配置されている。
【0071】
したがって、第2実施形態の動力伝達装置20によっても、第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0072】
[第3実施形態]
図5は、第3実施形態における動力伝達装置20を示すスケルトン図である。第3実施形態においては、
図5に示されるように、第1駆動モータ21の出力軸と、第1回転伝達要素50の第1シャフト部51とが、一体的に構成されており、一体に回転可能である。第1駆動モータ21の出力軸の一部分が、第1シャフト部51としての機能を有していてもよい。第2駆動モータ22の出力軸と、第2回転伝達要素60の第2シャフト部61とが、一体的に構成されており、一体に回転可能である。第2駆動モータ22の出力軸の一部分が、第2シャフト部61としての機能を有していてもよい。
【0073】
第1駆動モータ21の発生する回転力が、第1リングギヤ34に入力されるとともに、第2軸端ギヤ46に入力される。第2軸端ギヤ46と一体に、第2サンギヤ41が回転する。第2駆動モータ22の発生する回転力が、第2リングギヤ44に入力されるとともに、第1軸端ギヤ36に入力される。第1軸端ギヤ36と一体に、第1サンギヤ31が回転する。
【0074】
第3実施形態の動力伝達装置20においても、
図5に示されるスケルトン図において、第1駆動モータ21および第2駆動モータ22の回転力をスプロケット2Lに伝達する第1伝達経路と、第1駆動モータ21および第2駆動モータ22の回転力をスプロケット2Rに伝達する第2伝達経路と、は対称に構成されている。第1遊星歯車機構30の回転要素と第2遊星歯車機構40の回転要素とが、第1回転伝達要素50および第2回転伝達要素60によって接続されている。第1出力軸71、第1サンギヤ回転軸35、第2サンギヤ回転軸45、および第2出力軸72は、第1遊星歯車機構30および第2遊星歯車機構40の回転の軸方向において、並んで配置されている。
【0075】
したがって、第3実施形態の動力伝達装置20によっても、第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0076】
[第4実施形態]
図6は、第4実施形態における動力伝達装置20を示すスケルトン図である。第4実施形態においては、第1駆動モータ21の出力軸は、第1駆動モータ21から左右両側に延びている。第1駆動モータ21の出力軸が、第1回転伝達要素50の第1シャフト部51としての機能を有している。第1駆動モータ21の一方の出力軸に、第1連結ギヤ52が固定されている。第1駆動モータ21の他方の出力軸に、第1連結ギヤ53が固定されている。第1連結ギヤ52,53は、第1駆動モータ21の出力軸の先端に固定されていてもよい。
【0077】
第2駆動モータ22の出力軸は、第2駆動モータ22から左右両側に延びている。第2駆動モータ22の出力軸が、第2回転伝達要素60の第2シャフト部61としての機能を有している。第2駆動モータ22の一方の出力軸に、第2連結ギヤ62が固定されている。第2駆動モータ22の他方の出力軸に、第2連結ギヤ63が固定されている。第2連結ギヤ62,63は、第2駆動モータ22の出力軸の先端に固定されていてもよい。
【0078】
第1駆動モータ21の発生する回転力が、第1リングギヤ34に入力されるとともに、第2軸端ギヤ46に入力される。第2軸端ギヤ46と一体に、第2サンギヤ41が回転する。第2駆動モータ22の発生する回転力が、第2リングギヤ44に入力されるとともに、第1軸端ギヤ36に入力される。第1軸端ギヤ36と一体に、第1サンギヤ31が回転する。
【0079】
第4実施形態の動力伝達装置20においても、
図6に示されるスケルトン図において、第1駆動モータ21および第2駆動モータ22の回転力をスプロケット2Lに伝達する第1伝達経路と、第1駆動モータ21および第2駆動モータ22の回転力をスプロケット2Rに伝達する第2伝達経路と、は対称に構成されている。第1遊星歯車機構30の回転要素と第2遊星歯車機構40の回転要素とが、第1回転伝達要素50および第2回転伝達要素60によって接続されている。第1出力軸71、第1サンギヤ回転軸35、第2サンギヤ回転軸45、および第2出力軸72は、第1遊星歯車機構30および第2遊星歯車機構40の回転の軸方向において、並んで配置されている。
【0080】
したがって、第4実施形態の動力伝達装置20によっても、第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0081】
[第5実施形態]
図7は、第5実施形態における動力伝達装置20を示すスケルトン図である。
図7に示されるように、第1入力ギヤ23と、第1軸端ギヤ36とが噛み合っている。第1駆動モータ21の発生する回転力は、第1軸端ギヤ36を介して、第1サンギヤ31に入力される。第5実施形態においては、第2実施形態と同様に、第1サンギヤ31が、第1駆動モータ21から回転力が入力される第1入力要素に対応する。第1リングギヤ34が、第1サンギヤ31および第1遊星キャリア33に対して相対回転可能な第1中間要素に対応する。
【0082】
第2入力ギヤ24と、第2軸端ギヤ46とが噛み合っている。第2駆動モータ22の発生する回転力は、第2軸端ギヤ46を介して、第2サンギヤ41に入力される。第2実施形態においては、第2実施形態と同様に、第2サンギヤ41が、第2駆動モータ22から回転力が入力される第2入力要素に対応する。第2リングギヤ44が、第2サンギヤ41および第2遊星キャリア43に対して相対回転可能な第2中間要素に対応する。
【0083】
第1遊星歯車機構30の複数の回転要素のうち、第1出力要素である第1遊星キャリア33に、第1キャリアギヤ37が連結されている。第1キャリアギヤ37は、第1遊星キャリア33と一体に回転する。第2遊星歯車機構40の複数の回転要素のうち、第2出力要素である第2遊星キャリア43に、第2キャリアギヤ47が連結されている。第2キャリアギヤ47は、第2遊星キャリア43と一体に回転する。
【0084】
第1回転伝達要素50の第1連結ギヤ52は、第1遊星歯車機構30の第1リングギヤ34と噛み合っている。第1連結ギヤ53は、第2キャリアギヤ47と噛み合っている。第1回転伝達要素50は、第2出力要素である第2遊星キャリア43に回転を伝達する。第1回転伝達要素50は、第1リングギヤ34と第2遊星キャリア43との回転を同期する。
【0085】
第2回転伝達要素60の第2連結ギヤ62は、第2遊星歯車機構40の第2リングギヤ44と噛み合っている。第2連結ギヤ63は、第1キャリアギヤ37と噛み合っている。第2回転伝達要素60は、第1出力要素である第1遊星キャリア33に回転を伝達する。第2回転伝達要素60は、第2リングギヤ44と第2遊星キャリア43との回転を同期する。
【0086】
第5実施形態の動力伝達装置20においても、
図7に示されるスケルトン図において、第1駆動モータ21および第2駆動モータ22の回転力をスプロケット2Lに伝達する第1伝達経路と、第1駆動モータ21および第2駆動モータ22の回転力をスプロケット2Rに伝達する第2伝達経路と、は対称に構成されている。第1遊星歯車機構30の回転要素と第2遊星歯車機構40の回転要素とが、第1回転伝達要素50および第2回転伝達要素60によって接続されている。第1出力軸71、第1サンギヤ回転軸35、第2サンギヤ回転軸45、および第2出力軸72は、第1遊星歯車機構30および第2遊星歯車機構40の回転の軸方向において、並んで配置されている。
【0087】
したがって、第5実施形態の動力伝達装置20によっても、第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0088】
[第6実施形態]
図8は、第6実施形態における動力伝達装置20を示すスケルトン図である。第5実施形態と同様に、第1遊星歯車機構30の複数の回転要素のうち、第1出力要素である第1遊星キャリア33に、第1キャリアギヤ37が連結されている。第1キャリアギヤ37は、第1遊星キャリア33と一体に回転する。第2遊星歯車機構40の複数の回転要素のうち、第2出力要素である第2遊星キャリア43に、第2キャリアギヤ47が連結されている。第2キャリアギヤ47は、第2遊星キャリア43と一体に回転する。
【0089】
図8に示されるように、第1駆動モータ21の出力軸が第1サンギヤ回転軸35をなしている。第1駆動モータ21の発生する回転力が、減速機構を介さずに、第1サンギヤ31に入力される。第2駆動モータ22の出力軸が第2サンギヤ回転軸45をなしている。第2駆動モータ22の発生する回転力が、減速機構を介さずに、第2サンギヤ41に入力される。
【0090】
第5実施形態と同様に、第1回転伝達要素50の第1連結ギヤ52は、第1遊星歯車機構30の第1リングギヤ34と噛み合っている。第1連結ギヤ53は、第2キャリアギヤ47と噛み合っている。第2回転伝達要素60の第2連結ギヤ62は、第2遊星歯車機構40の第2リングギヤ44と噛み合っている。第2連結ギヤ63は、第1キャリアギヤ37と噛み合っている。
【0091】
第6実施形態の動力伝達装置20においても、
図8に示されるスケルトン図において、第1駆動モータ21および第2駆動モータ22の回転力をスプロケット2Lに伝達する第1伝達経路と、第1駆動モータ21および第2駆動モータ22の回転力をスプロケット2Rに伝達する第2伝達経路と、は対称に構成されている。第1遊星歯車機構30の回転要素と第2遊星歯車機構40の回転要素とが、第1回転伝達要素50および第2回転伝達要素60によって接続されている。第1出力軸71、第1サンギヤ回転軸35、第2サンギヤ回転軸45、および第2出力軸72は、第1遊星歯車機構30および第2遊星歯車機構40の回転の軸方向において、並んで配置されている。
【0092】
したがって、第6実施形態の動力伝達装置20によっても、第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0093】
[第7実施形態]
図9は、第7実施形態における動力伝達装置20を示すスケルトン図である。第5実施形態と同様に、第1遊星歯車機構30の複数の回転要素のうち、第1出力要素である第1遊星キャリア33に、第1キャリアギヤ37が連結されている。第1キャリアギヤ37は、第1遊星キャリア33と一体に回転する。第2遊星歯車機構40の複数の回転要素のうち、第2出力要素である第2遊星キャリア43に、第2キャリアギヤ47が連結されている。第2キャリアギヤ47は、第2遊星キャリア43と一体に回転する。
【0094】
図9に示されるように、第1回転伝達要素50の第1連結ギヤ52は、第1キャリアギヤ37と噛み合っている。第1連結ギヤ53は、第2軸端ギヤ46と噛み合っている。第1回転伝達要素50は、第1遊星キャリア33と第2サンギヤ41との回転を同期する。第2回転伝達要素60の第2連結ギヤ62は、第2キャリアギヤ47と噛み合っている。第2連結ギヤ63は、第1軸端ギヤ36と噛み合っている。第2回転伝達要素60は、第1サンギヤ31と第2遊星キャリア43との回転を同期する。
【0095】
第7実施形態の動力伝達装置20においても、
図9に示されるスケルトン図において、第1駆動モータ21および第2駆動モータ22の回転力をスプロケット2Lに伝達する第1伝達経路と、第1駆動モータ21および第2駆動モータ22の回転力をスプロケット2Rに伝達する第2伝達経路と、は対称に構成されている。第1遊星歯車機構30の回転要素と第2遊星歯車機構40の回転要素とが、第1回転伝達要素50および第2回転伝達要素60によって接続されている。第1出力軸71、第1サンギヤ回転軸35、第2サンギヤ回転軸45、および第2出力軸72は、第1遊星歯車機構30および第2遊星歯車機構40の回転の軸方向において、並んで配置されている。
【0096】
したがって、第7実施形態の動力伝達装置20によっても、第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0097】
[第8実施形態]
図10は、第8実施形態における動力伝達装置20を示すスケルトン図である。第4実施形態と同様に、第1駆動モータ21の出力軸は、第1駆動モータ21から左右両側に延びており、第1回転伝達要素50の第1シャフト部51としての機能を有している。第1駆動モータ21の一方の出力軸に、第1連結ギヤ52が固定されている。第1駆動モータ21の他方の出力軸に、第1連結ギヤ53が固定されている。
【0098】
第2駆動モータ22の出力軸は、第2駆動モータ22から左右両側に延びており、第2回転伝達要素60の第2シャフト部61としての機能を有している。第2駆動モータ22の一方の出力軸に、第2連結ギヤ62が固定されている。第2駆動モータ22の他方の出力軸に、第2連結ギヤ63が固定されている。
【0099】
第8実施形態の動力伝達装置20は、第1介在部材91と第2介在部材92とを備えている。第1回転伝達要素50の第1連結ギヤ52は、第1介在部材91を介して、第1遊星歯車機構30の第1リングギヤ34と噛み合っている。第1駆動モータ21の発生する回転力は、第1介在部材91を介して、第1リングギヤ34に入力される。第2回転伝達要素60の第2連結ギヤ62は、第2介在部材92を介して、第2遊星歯車機構40の第2リングギヤ44と噛み合っている。第2駆動モータ22の発生する回転力は、第2介在部材92を介して、第2リングギヤ44に入力される。
【0100】
第8実施形態の動力伝達装置20においても、
図10に示されるスケルトン図において、第1駆動モータ21および第2駆動モータ22の回転力をスプロケット2Lに伝達する第1伝達経路と、第1駆動モータ21および第2駆動モータ22の回転力をスプロケット2Rに伝達する第2伝達経路と、は対称に構成されている。第1遊星歯車機構30の回転要素と第2遊星歯車機構40の回転要素とが、第1回転伝達要素50および第2回転伝達要素60によって接続されている。第1出力軸71、第1サンギヤ回転軸35、第2サンギヤ回転軸45、および第2出力軸72は、第1遊星歯車機構30および第2遊星歯車機構40の回転の軸方向において、並んで配置されている。
【0101】
したがって、第8実施形態の動力伝達装置20によっても、第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0102】
第1~第7実施形態の第1回転伝達要素50および第2回転伝達要素60は、第1遊星歯車機構30および第2遊星歯車機構40の径方向外側に配置されている。これに対し、第8実施形態の第1回転伝達要素50および第2回転伝達要素60は、第1リングギヤ34の径方向内側に配置されており、第2リングギヤ44の径方向内側に配置されている。第1回転伝達要素50および第2回転伝達要素60は、第1遊星歯車機構30および第2遊星歯車機構40の回転中心により近く配置されている。
【0103】
したがって、第8実施形態の動力伝達装置20によれば、第1遊星歯車機構30および第2遊星歯車機構40の回転の径方向におけるさらなる小型化を実現することができる。第1駆動モータ21および第2駆動モータ22の、配置の自由度を向上することができる。
【0104】
第1、第3、第4および第7実施形態の動力伝達装置20において、第1駆動モータ21と第1リングギヤ34との間、および、第2駆動モータ22と第2リングギヤ44との間に、第8実施形態と同様の介在部材(第8実施形態における介在部材91,92)が設けられてもよい。第2、第5および第6実施形態の動力伝達装置20において、第1回転伝達要素50と第1リングギヤ34との間、および、第2回転伝達要素60と第2リングギヤ44との間に、介在部材が設けられてもよい。
【0105】
上記の実施形態では、エンジン11で発電機15を駆動し発電機15が発生した電力で第1駆動モータ21および第2駆動モータ22を駆動させる例について説明した。作業機械は発電機15に替えて油圧ポンプを備えてもよく、第1駆動モータ21および第2駆動モータ22が油圧モータであってもよい。油圧ポンプがエンジン11によって駆動されて圧油を吐出し、その圧油が第1駆動モータ21および第2駆動モータ22に供給されて第1駆動モータ21および第2駆動モータ22が駆動されることによって、第1駆動モータ21および第2駆動モータ22が回転力を発生してもよい。
【0106】
上記の実施形態では、作業機械の一例としてブルドーザ1について説明したが、ショベル、クローラダンプなどの、装軌式走行装置を備える他の種類の作業機械にも、本開示の思想を適用可能である。また、ホイールローダ、モータグレーダなどの、装輪式走行装置を備える作業機械にも、本開示の思想を適用可能である。
【0107】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0108】
1 ブルドーザ、2,2L,2R スプロケット、4 走行装置、7 車体、11 エンジン、15 発電機、16 配線、20 動力伝達装置、21 第1駆動モータ、22 第2駆動モータ、23 第1入力ギヤ、24 第2入力ギヤ、30 第1遊星歯車機構、31 第1サンギヤ、32 第1プラネタリギヤ、33 第1遊星キャリア、34 第1リングギヤ、35 第1サンギヤ回転軸、36 第1軸端ギヤ、37 第1キャリアギヤ、40 第2遊星歯車機構、41 第2サンギヤ、42 第2プラネタリギヤ、43 第2遊星キャリア、44 第2リングギヤ、45 第2サンギヤ回転軸、46 第2軸端ギヤ、47 第2キャリアギヤ、50 第1回転伝達要素、51 第1シャフト部、52,53 第1連結ギヤ、60 第2回転伝達要素、61 第2シャフト部、62,63 第2連結ギヤ部、71 第1出力軸、72 第2出力軸、73,74 ステアリングブレーキ、81,82 終減速装置、91 第1介在部材、92 第2介在部材。