(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123443
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】管内移動装置
(51)【国際特許分類】
G02B 23/24 20060101AFI20240905BHJP
B61B 13/10 20060101ALI20240905BHJP
F15B 15/10 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
G02B23/24 A
B61B13/10
F15B15/10 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030860
(22)【出願日】2023-03-01
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (刊行物1) (CLAWAR2022),Ponta Delgada,Portugal,2022,Robotics in Natural Settings pp.349-357.Industrial Robot and CLAWAR2022(令和4年9月13日発行) (刊行物2) ロボティクス・メカトロニクス講演会2022講演論文集(令和4年6月3日発行)2P1-L03にて公開
(71)【出願人】
【識別番号】599011687
【氏名又は名称】学校法人 中央大学
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】中村 太郎
(72)【発明者】
【氏名】成瀬 雄太
(72)【発明者】
【氏名】多加谷 一輝
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 文臣
【テーマコード(参考)】
2H040
3H081
【Fターム(参考)】
2H040AA02
2H040DA01
2H040DA55
3H081AA18
3H081CC29
3H081DD07
3H081FF23
3H081FF26
3H081FF48
(57)【要約】
【課題】移動体の長距離の移動を可能とする管内移動装置を提供することを目的とする。
【解決手段】配管内に設けられ、流体の供給により管径方向に膨張し、供給された流体を排出することにより管径方向に収縮する膨縮部を有し、膨縮部が膨張したときに配管の内周面に密接して配管内を閉塞し、膨縮部が収縮したときの最大外径が配管の内径よりも小さく構成された移動体と、配管外に設けられ、管を通じて前記移動体に流体を供給又は排出することにより、前記膨縮部の膨張・収縮を制御する流体給排手段と、前記移動体を配管内に配置するときに利用した開口部を閉鎖する蓋体と、前記膨縮部が膨張して移動体が配管内を閉塞した状態にあるときに、前記蓋体と前記移動体の間の空間に流体を供給し、前記移動体を押圧する押圧手段とを備えた構成とした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管内に設けられ、流体の供給により管径方向に膨張し、供給された流体を排出することにより管径方向に収縮する膨縮部を有し、膨縮部が膨張したときに配管の内周面に密接して配管内を閉塞し、膨縮部が収縮したときの最大外径が配管の内径よりも小さく構成された移動体と、
配管外に設けられ、管を通じて前記移動体に流体を供給又は排出することにより、前記膨縮部の膨張・収縮を制御する流体給排手段と、
前記移動体を配管内に配置するときに利用した開口部を閉鎖する蓋体と、
前記膨縮部が膨張して移動体が配管内を閉塞した状態にあるときに、前記蓋体と前記移動体の間の空間に流体を供給し、前記移動体を押圧する押圧手段と、を備えた管内移動装置。
【請求項2】
前記移動体は、膨縮部が配管の内周面に直接密接し、閉塞したときに配管の内周面との間で生じる摩擦よりも摩擦を小さくする摩擦低減部材を配管の内周面に密接する領域に備えた請求項1に記載の管内移動装置。
【請求項3】
前記移動体は、配管の管軸に沿って間隔を開けて複数設けられ、
各移動体は、前記流体給排手段と個別の管を通じて流体が供給、排出可能とされ、
進行方向先頭の移動体を除く後続の移動体は、前側で隣接する移動体から延長する前記管に固定されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の管内移動装置。
【請求項4】
配管外から配線を介して供給されるエネルギーにより配管内を移動可能とされた第1の移動体を備えた管内移動装置であって、
前記配線を貫通させて配管内に設けられ、流体の供給により管径方向に膨張し、供給された流体を排出することにより管径方向に収縮する膨縮部を有し、膨縮部が膨張したときに配管の内周面に密接して配管内を閉塞し、膨縮部が収縮したときの最大外径が配管の内径よりも小さく構成された第2の移動体と、
配管外に設けられ、管を通じて前記第2の移動体に流体を供給又は排出することにより、前記膨縮部の膨張・収縮を制御する流体給排手段と、
前記移動体を配管内に配置するときに利用した開口部を閉鎖する蓋体と、
前記膨縮部が膨張して移動体が配管内を閉塞した状態にあるときに、前記蓋体と前記移動体の間の空間に流体を供給し、前記第2の移動体を押圧する押圧手段と、を備えた管内移動装置。
【請求項5】
前記第1の移動体は、流体の給排により伸縮して推進する蠕動運動に基づいて配管内を移動可能に構成されたことを特徴とする請求項4に記載の管内移動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管内移動装置に関し、特に、配管内における長距離移動を可能とする管内移動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工場では、複雑に張り巡らされた細径の配管が流体の長距離輸送に用いられている。これらの配管は、長期間にわたり利用すると内壁に腐食が発生し、流体の品質低下を招く虞があるため定期的な検査が必要とされる。配管内の検査では、押し込み式の内視鏡が使用されることが多く、先端に設けられたカメラの配線を作業者が掴み、管奥へと押し込むことで配管内の視認検査がなされている。しかし、先端のカメラが管奥へと進むにつれて配線と管内壁との摩擦が大きくなり、作業者によって配線を押し込む力が内視鏡の先端まで伝達されず、先端のカメラを管奥へと押し込むことができなくなり、長距離にわたる配管の検査を困難にしている。
そこで、押し込み式の内視鏡に代わる検査手法の一つとして、例えば、特許文献1に記載されるように、配管内を自走可能に構成された管状移動体(以下単に移動体という)の先頭に、内視鏡のカメラに相当する探査ユニットを取り付けた管体内探査装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された移動体では、配管内において管軸方向に伸縮する複数の伸縮ユニットをユニット連結体で交互に連結し、ミミズの蠕動運動を模すように伸縮ユニットを所定の順序で軸方向に伸縮させることにより配管内における推進力を得ている。伸縮ユニットの伸縮は、空気圧を利用して動作するように構成されているため、移動体が配管内を移動する場合には、配管外から各伸縮ユニットに空気を供給する管を牽引しながら移動することになる。
しかし、牽引される空気管は、配管の内壁に引き摺られるように牽引されるため、移動体が配管の奥に行くほど摩擦が大きくなり、最終的に移動体の進行を妨げる程の負荷となる。
負荷となる摩擦は、配管における直管部分の内壁に空気管が擦れて生じるものと、曲管部分の内壁に空気管が押し付けられて生じるものとの2つが主たる要因とされる。
直管部分の摩擦は、長距離の場合、配管の長さ当たりに作用する摩擦力が一定と見なすことができる。また、曲管部分の摩擦は、検査距離の増加に伴い、空気供給管や電線に作用する張力が増加するため、それに従い摩擦力も増加する。長距離複雑管の検査時には、この曲管部分で生じる摩擦力が支配的となるため、曲管部分で生じた摩擦による張力の軽減が必要とされる。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するため、移動体の長距離の移動を可能とする管内移動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための管内移動装置の構成として、配管内に設けられ、流体の供給により管径方向に膨張し、供給された流体を排出することにより管径方向に収縮する膨縮部を有し、膨縮部が膨張したときに配管の内周面に密接して配管内を閉塞し、膨縮部が収縮したときの最大外径が配管の内径よりも小さく構成された移動体と、配管外に設けられ、管を通じて前記移動体に流体を供給又は排出することにより、前記膨縮部の膨張・収縮を制御する流体給排手段と、前記移動体を配管内に配置するときに利用した開口部を閉鎖する蓋体と、前記膨縮部が膨張して移動体が配管内を閉塞した状態にあるときに、前記蓋体と前記移動体の間の空間に流体を供給し、前記移動体を押圧する押圧手段と、を備えた構成とした。
本構成によれば、移動体の長距離の移動を可能にすることができる。
また、管内移動装置の他の構成として、前記移動体は、膨縮部が配管の内周面に直接密接し、閉塞したときに配管の内周面との間で生じる摩擦よりも摩擦を小さくする摩擦低減部材を配管の内周面に密接する領域に備えた構成とした。
本構成によれば、移動体を効率良く移動させることができる。
また、管内移動装置の他の構成として、前記移動体は、配管の管軸に沿って間隔を開けて複数設けられ、各移動体は、前記流体給排手段と個別の管を通じて流体が供給、排出可能とされ、進行方向先頭の移動体を除く後続の移動体は、前側で隣接する移動体から延長する前記管に固定される構成とした。
本構成によれば、前方の管に生じた張力を緩めることができ、先頭の移動体の長距離の移動を可能とすることができる。
また、上記課題を解決するための管内移動装置の構成として、配管外から配線を介して供給されるエネルギーにより配管内を移動可能とされた第1の移動体を備えた管内移動装置であって、前記配線を貫通させて配管内に設けられ、流体の供給により管径方向に膨張し、供給された流体を排出することにより管径方向に収縮する膨縮部を有し、膨縮部が膨張したときに配管の内周面に密接して配管内を閉塞し、膨縮部が収縮したときの最大外径が配管の内径よりも小さく構成された第2の移動体と、配管外に設けられ、管を通じて前記第2の移動体に流体を供給又は排出することにより、前記膨縮部の膨張・収縮を制御する流体給排手段と、前記移動体を配管内に配置するときに利用した開口部を閉鎖する蓋体と、前記膨縮部が膨張して移動体が配管内を閉塞した状態にあるときに、前記蓋体と前記移動体の間の空間に流体を供給し、前記第2の移動体を押圧する押圧手段と、を備えた構成とした。
本構成によれば、配線に固定された第2の移動体を配管内において第1の移動体方向に移動させることができるので、配線に生じた張力を緩めることができ、第1の移動体の長距離の移動を可能とすることができる。
また、前記第1の移動体は、流体の給排により伸縮して推進する蠕動運動に基づいて配管内を移動可能に構成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本実施形態に係る管内移動装置の概略構成図である。
【
図3】移動体が膨張収縮したときの配管に対する関係を示す図である。
【
図6】移動体が膨張し、配管を閉鎖したときの平面図である。
【
図11】把持ユニットの軸方向断面図及び動作図である。
【
図12】伸縮ユニットの軸方向断面図及び動作図である。
【0008】
以下、発明の実施形態を通じて本発明を詳説するが、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明される特徴の組み合わせのすべてが発明の解決手段に必須であるとは限らず、選択的に採用される構成を含むものである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、管内移動装置1の一実施形態を示す概略構成図である。
図1に示すように、本実施形態に係る管内移動装置1は、配管Z内に設けられ、配管Z内を移動する移動体80と、配管Z外に設けられ、管210を通じて移動体80に流体の供給や排出をする流体給排手段200と、配管Z外から配管Z内に流体を供給し、流体の圧力により移動体80を押圧する押圧手段300を備えた構成とされる。
【0010】
なお、以下の説明では、移動体80に供給される流体や、配管Z内に供給される流体を圧縮空気として説明するが、他の気体や液体等であっても良い。また、移動体80に供給される流体や配管Z内に供給される流体は、同じものに限定されず、一方が気体で、他方が液体であっても良く、一方の気体と他方の気体が異なるものであっても良く、一方の液体と他方の液体が異なるものであっても良い。
【0011】
図2は、移動体80の構成を示す軸方向断面図である。
移動体80は、内筒82と、外筒84と、一対の端部部材86;86とを備え、概略円筒状に形成されている。内筒82及び外筒84は、二重管をなすように配置され、内筒82の外周と外筒84の内周との間に所定の空間が得られるように内径や外径等の寸法が設定される。
【0012】
内筒82は、気密性及び伸縮性を有する弾性素材により構成され、軸方向及び周方向に伸縮が可能な筒体として形成される。内筒82を構成する素材には、例えば、シリコーンゴム等の合成ゴム、或いは天然ラテックスゴム等の天然ゴム等を利用することができる。
【0013】
外筒84は、例えば、弾性体として構成される円筒状の筒本体の内部に複数の繊維が内挿された構成とされる。筒本体は、例えば、気密性及び伸縮性を有する弾性素材により構成される。筒本体を構成する素材には、例えば、シリコーンゴム等の合成ゴム、或いは天然ラテックスゴム等の天然ゴム等を利用することができる。
【0014】
外筒84に内挿される複数の繊維は、例えば、筒本体内において各繊維が外筒84を形成する筒本体の軸線に沿うように延長方向が規定され、一端側から他端側まで連続するように内挿される。なお、繊維が筒本体の軸方向に沿うように延長するとは、軸方向に対して多少の傾斜(交差)を許容する。
【0015】
端部部材86は、概略円筒状を成し、内筒82及び外筒84の両端部に設けられ、内筒82の外周面と外筒84の内周面との間の空間を閉空間とすべく、内筒82及び外筒84が気密状態で固定される。以下この閉空間を流体室S80という。
【0016】
端部部材86の一方には、流体室S80への空気の流通を可能とする孔92が設けられる。孔92は、一端が端部部材86の内周面に開口(以下、内側開口部92Aという)し、他端が端部部材86の外周面に開口するように設けられる。なお、孔92が外周面に開口する位置は、内筒82と外筒84とが端部部材86に固定された範囲の間にあることは言うまでもない。
【0017】
内側開口部92Aには、流体給排手段200から延長する管210の一端が連結され、管210を介して流体室S80への圧縮空気の供給や流体室S80に供給された圧縮空気の排出がなされる。
【0018】
流体給排手段200は、移動体80を膨張、収縮させるために、移動体80の流体室S80に圧縮空気を供給、流体室S80に供給した圧縮空気を流体室S80から排出するための装置である。
【0019】
流体給排手段200は、例えば、流体室S80に供給する空気(圧縮空気)を生成するコンプレッサー202、コンプレッサー202で生成された圧縮空気を所定の圧力に減圧する移動体用減圧弁204、移動体用減圧弁204から流体室S80への圧縮空気の供給を制御する制御弁(移動体用供給弁)206、流体室S80に供給された圧縮空気の排出を制御する制御弁(移動体用排出弁)208、移動体80(内筒82や外筒84)の膨張状態を検出するための膨縮状態検出手段212などで構成することができる。
【0020】
流体給排手段200は、例えば、移動体用供給弁206及び移動体用排出弁208に二方弁を用いた場合、コンプレッサー202、移動体用供給弁206及び移動体用排出弁208を次のように接続することで、移動体80の膨張や収縮などの動作を制御するための流路を構成することができる。
【0021】
移動体80の膨張や収縮などの動作を制御するための流路は、例えば、コンプレッサー202と移動体用減圧弁204とを直接的若しくは管を介して接続し、移動体用減圧弁204と移動体用供給弁206とを直接的若しくは管を介して接続し、移動体80に一端が接続された管210の他端を移動体用供給弁206に接続して構成される供給流路、また、移動体用供給弁206と移動体80とを接続する管210の途中に分岐管を設けて、分岐管を介して管210に移動体用排出弁208を接続した排出流路のように構成することができる。
【0022】
移動体80を膨張させる場合には、移動体用排出弁208を閉じ、移動体用供給弁206を開くことにより、コンプレッサー202から流体室S80に圧縮空気が供給され、移動体80を膨張させることができる。
移動体80が所望の膨張状態に達した場合、排出用弁の閉じた状態を維持し、移動体用供給弁206を閉じることでコンプレッサー202から流体室S80への圧縮空気の供給が停止され、移動体80を所望の膨張状態で維持することができる。
また、移動体80を膨張状態から収縮させる場合には、移動体用供給弁206の閉じた状態を維持し、移動体用排出弁208を開くことで流体室S80から圧縮空気が排出され、移動体80を収縮させることができる。
【0023】
上記構成の移動体80は、流体給排手段200の動作により次のように動作する。
移動体80は、
図2(a)に示す状態から流体室S80に空気が供給されることにより、
図2(b)に示すように、外筒(膨縮部)84が径方向外側に、内筒82が径方向内側に向けて膨張するとともに軸方向の長さがL1からL2へと収縮する。この状態を単に膨張或いは膨張状態などという。
【0024】
また、移動体80は、
図2(b)に示す膨張状態から流体室S80に供給された空気が排出されることにより、外筒84が径方向内側に、内筒82が径方向外側に向けて収縮するとともに軸方向の長さがL2からL1へと収縮する。この状態を単に収縮或いは収縮状態などという。
【0025】
移動体80は、膨張状態に達したときには配管Zを閉塞し、収縮状態にあるときには配管Zに対して手で簡単に移動自在な状態となるように外径の寸法を設定すると良い。
具体的には、移動体80は、膨張状態とされたときに、外筒84の外周面が配管Zの内壁の円周方向全周にわたり密接可能な外径とされ、収縮状態とされたときに、配管Zの内径よりも小さな外径となるように、外筒84の寸法を設定すると良い。
【0026】
また、内筒82については、移動体80が膨張状態とされたときに、内筒82の内周面同士が密接し、収縮状態とされたときに、移動体80の両端に貫通する中空空間の一部を形成する。
【0027】
移動体80の膨張や収縮の状態は、膨縮状態検出手段212を設けることで検出することができる。膨縮状態検出手段212は、例えば、移動体用供給弁206から移動体80に供給される流量や、移動体80の内圧や内圧の変動を検出可能に構成することで膨張状態を検出することができる。また、膨縮状態検出手段212は、例えば、移動体用排出弁208から排出される流量や、移動体80の内圧や内圧の変動を検出可能に構成することで収縮状態を検出することができる。
【0028】
押圧手段300は、移動体80を配管Zの奥へと移動させるための装置である。
押圧手段300は、例えば、移動体80を配管Zの奥へと押圧するための空気(圧縮空気)を生成するコンプレッサー302、コンプレッサー302で生成された圧縮空気を所定の圧力に減圧する押圧用減圧弁304、押圧用減圧弁304から配管Z内への圧縮空気の供給を制御する制御弁(押圧用供給弁)306、押圧用供給弁306から配管Z内に圧縮空気を供給するための押圧用管310、配管Zの開口を閉鎖する蓋312などで構成することができる。
【0029】
蓋312は、配管Z内に移動体80を配置するときに利用した開口を塞ぐための手段である。
蓋312は、配管Zの開口を塞いだ状態を維持しつつ管210や押圧用管310が配管Z内へと貫通可能、かつ、管210や押圧用管310との間で気密状態を維持しつつ管210や押圧用管310の配管Zへの出入りを可能に構成される。
【0030】
移動体80の膨張や収縮の制御は、例えば、オペレータが移動体用供給弁206及び移動体用排出弁208の開閉操作を直接行うものであっても良く、また、電気的に移動体用供給弁206及び移動体用排出弁208の開閉を制御するものであっても良い。
また、押圧用管310から配管Z内に圧縮空気を供給するための制御は、例えば、オペレータが押圧用供給弁306の開閉操作を直接行うものであっても良く、また、電気的に押圧用供給弁306の開閉を制御するものであっても良い。
なお、電気的に制御するとは、例えば、コンピュータによるものであったり、オペレータがスイッチを操作するものであったりすることを含む。
【0031】
図4は、管内移動装置1の作用を示す図である。
図3は、移動体80が膨張収縮したときの配管に対する関係を示す図である。
まず、
図4(a)に示すように、配管Z内に移動体80を配置する。このとき移動体80は、収縮状態とされ、
図3(a)に示すように、外筒84の外周面と配管Zの内周面Zaとの間に隙間及び内筒82の内周側に配管Zの内部空間に連通する中空空間を有する。
次に、
図4(b)に示すように、配管Zの開口を蓋312により閉鎖する。このとき移動体80に接続された管210を蓋312に貫通させる。
次に、
図4(c)に示すように、押圧用管310を蓋312に貫通させ、先端を配管Z内に侵入させる。
次に、
図4(d)に示すように、管210を介して圧縮空気を移動体80に供給し、移動体80を膨張させる。これにより、移動体80は、
図3(b)に示すように、外筒84の外周面が配管Zの内周面Zaに沿って密接するとともに、内筒82の内周面が互いに密接し、配管Z内を閉塞する。
この閉塞により、配管Z内に蓋312と移動体80とで区画された閉空間(以下、チャンバーという)Cが形成される。
次に、
図4(e)に示すように、押圧用管310を介してチャンバーCに圧縮空気を供給する。これにより、チャンバーCの内圧が上昇し、チャンバーCの容積を広げるように、移動体80が位置P1から管奥の位置P2へと押圧されて進行することになる。
なお、配管Zを閉塞したときの移動体80の内圧は、移動体80を移動させるときのチャンバーCの内圧よりも高くなるように、移動体80の内圧及びチャンバーCの内圧を制御すると良い。
【0032】
図5は、管内移動装置1の他の作用を示す図である。
上記実施形態では、1つの移動体80を用いて管内移動装置1の作用について説明したが、移動体80の数量は1つに限定されず複数の移動体80を用いることで、先頭の移動体80を、より管奥へと進行させることができる。
【0033】
以下の説明では、3つの移動体80を用いた場合の管内移動装置1の作用について説明する。なお、進行方向先頭の移動体80を移動体80A、中間の移動体80を移動体80B、後尾の移動体80を移動体80Cという。また、図示しないが、流体給排手段200は、各移動体80A,80B,80Cの膨張・収縮を個別に(独立して)制御が可能となるように、移動体80A用の移動体用供給弁206,移動体用排出弁208及び移動体80Aに接続される給排用の管210A、移動体80B用の移動体用供給弁206,移動体用排出弁208及び移動体80Bに接続される給排用の管210B、移動体80C用の移動体用供給弁206,移動体用排出弁208及び移動体80Cに接続される給排用の管210Cを備えているものとする。
【0034】
図5(a)は、3つの移動体80A;80B;80Cを配管Z内に配置した状態を示している。
移動体80Aに接続される管210Aは、移動体80Bの内周側の空間及び移動体80Cの内周側の空間を貫通して配管Z外へと延長し、移動体80Bに接続される管210Bは、移動体80Cの内周側空間を貫通して配管Z外へと延長する。このとき移動体80B;80Cの内周側を貫通する管210Aは、移動体80B;80Cに対して自由な状態とされている。また、移動体80Cの内周側を貫通する管210Bは、移動体80Cに対して自由な状態とされている。なお、自由な状態とは、固定されていないということを意味する。
【0035】
次に、
図5(b)に示すように、先頭の移動体80Aを膨張させた後に、膨張状態を維持する。これにより、蓋312と移動体80Aとの間がチャンバーCとして形成される。このとき、移動体80B;80Cは、収縮状態のままとする。
【0036】
次に、押圧用管310から圧縮空気をチャンバーCに供給する。これにより、チャンバーCの内圧が移動体80Aより前方の空間の圧力よりも高くなり、
図5(c)に示すように、移動体80Aが管210Aを牽引しながら配管Zの奥へと移動する。
そして、牽引される管210Aと配管Zとの摩擦が大きくなり、管210Aに大きな張力が作用して移動体80Aが不動となるとチャンバーCへの圧縮空気の供給を一時停止する。
なお、移動体80Aの進行状態は、配管Z内に取り込まれる管210Aの変化を監視することで把握することができる。
【0037】
次に、
図5(d)に示すように、移動体80Aの膨張状態を維持したまま、移動体80Bを膨張させ、移動体80Bの膨張状態を維持する。これにより、蓋312と移動体80Bの間がチャンバーCとして形成される。
また、移動体80Bの膨張にともない、内筒82の内周側の空間を貫通する管210Aに内筒82が圧接することにより管210Aが移動体80Bに固定(把持)された状態となる。
このとき、移動体80Cは、収縮状態のままとされる。
【0038】
次に、押圧用管310から圧縮空気をチャンバーCに供給する。これにより、チャンバーCの内圧が高くなり、
図5(e)に示すように、移動体80Bは管210Bとともに内筒82によって把持された管210Aを牽引しながら配管Zの奥へと移動する。また、移動体80Bの移動に伴い、内筒82によって把持された管210Aが移動体80A方向に搬送されることにより移動体80Bから移動体80Aまでの区間の管210Aに弛みが生じ、張力が開放される。そして、牽引される管210B及び管210Aと配管Zとの摩擦が大きくなり、管210B及び管210Aに大きな張力が作用して移動体80Bが不動となるとチャンバーCへの圧縮空気の供給を一時停止する。
移動体80Bの進行状態は、例えば、配管Z内に取り込まれる管210Aや管210Bの動・不動を監視することで把握することができる。
【0039】
次に、移動体80A及び移動体80Bの膨張状態を維持したまま、移動体80Cを膨張させ、移動体80Cの膨張状態を維持する。これにより、蓋312と移動体80Cの間がチャンバーCとして形成される。また、移動体80Cの膨張にともない移動体80Cの内筒82が該内筒82の内周側の空間を貫通する管210A;210Bを挟み込むことで移動体80Cに管210A;210Bが固定(把持)されることになる。
【0040】
次に、押圧用管310から圧縮空気をチャンバーCに供給する。これにより、チャンバーCの内圧が高くなり、
図5(f)に示すように、移動体80Cは管210Cとともに内筒82によって把持された管210A;210Bを牽引しながら配管Zの奥へと移動する。また、移動体80Cの移動に伴い、内筒82によって把持された管210A;210Bが進行方向前方に搬送されることにより移動体80Bから移動体80Cまでの区間の管210A;210Bに弛みが生じ、管210A;210Bの張力が開放される。そして、牽引される管210A;210B;210Cと配管Zとの摩擦が大きくなり、管210A;210B;210Cに大きな張力が作用して移動体80Bが不動となるとチャンバーCへの圧縮空気の供給を一時停止する。
移動体80Cの進行状態は、例えば、配管Z内に取り込まれる管210A;210B;210Cの動・不動を監視することで把握することができる。
【0041】
そして、
図5(b)乃至
図5(f)に示した行程を繰り返すことで、先頭の移動体80Aを配管Zの奥へと移動させることができる。
【0042】
以上説明したように、管内移動装置1において3つの移動体80A;80B;80Cを用いることにより、先頭の移動体80Aの進行の妨げとなり得る管210Aを後続の移動体80Bが、また、移動体80Bの進行の妨げとなり得る管210Bを後続の移動体80Cが、それぞれ進行方向前方に移動させることができるので、1つの移動体80を配管Z内で移動させたときに比べて、先頭の移動体80Aをより配管Zの奥へと移動させることができ、長距離の移動が可能とされる。
【0043】
したがって、先頭の移動体80Aに後続させる移動体80の数量を多くすることで、より長距離の移動を可能とすることができる。
【0044】
なお、先頭の移動体80Aに後続させる移動体80は、全てをあらかじめ配管Z内に設けておく必要はなく、配管Z内にある移動体80の進行が停止した時点で、蓋314を外して配管Z内に配置するようにしても良い。
【0045】
また、上記実施形態では、先頭の移動体80Aの進行に追従するように、後続の移動体80Bや移動体80Cが配管Z内を進行するものとして説明したが、これに限定されない。例えば、
図5(e),(f)に示したように、移動体80Bや移動体80Cを進行させ、収縮させたときに、管210Bや管210Cを配管Zの外へと引き、移動体80Bや移動体80Cを蓋312側に引き戻すようにしても良い。
【0046】
配管Z内に取り込まれる管210A、管210B、管210C等の動・不動の監視は、目視であっても良く、センサ等を利用しても良い。
【0047】
したがって、上述の先頭の移動体80Aにカメラや照明を備えた検査ユニットを取り付けることにより管内移動装置1を管内検査装置として構成することができる。
また、検査ユニットに設けられたカメラや照明に電力を供給する電力供給線やカメラにより撮影した画像を出力する信号線等の配線は、移動体80A;80B;80Cの内周側の空間に貫通させて、配管Z外へと延長させれば良い。このように管内検査装置を構成することにより、検査対象とされる配管Zについて従来よりも長距離にわたり検査させることができる。
【0048】
図6は、移動体80が膨張し、配管Zを閉塞したときの平面図である。
図6に示すように、移動体80は、膨張した時に配管Zの内周面Zaに外筒84の外周面が押し付けられて密接する。そして、移動体80は、配管Zの内周面Zaに密接することで蓋312との間で形成したチャンバーCに圧縮空気が供給され、チャンバーCの内圧が高められることで、配管Zの内周面Zaを摺動しながら配管Zの奥へと進行するため、移動体80が摺動するときの摩擦(抵抗)が小さければ、チャンバーCの内圧が低い圧力であっても移動体80を容易に移動させることができる。
【0049】
図7は、移動体80の他の構成例を示す図である。
そこで、移動体80が、外筒84の外周面と配管Zの内周面Zaとの摩擦を低減する摩擦低減部材88を備えた構成とすれば良い。摩擦低減部材88は、例えば、
図7(a)に示すように、外筒84の外周面の全体を覆うように設けられていても良く、
図7(b)に示すように、膨張状態において配管Zの内周面Zaに外筒84の外周面が接触する領域(接触領域)CRに対応するように設けられていても良く、少なくとも領域(接触領域)CRを含むように設けられていることが好ましい。
【0050】
摩擦低減部材88に利用する素材は、外筒84を形成する弾性素材が配管Zの内周面に密接し、蓋312との間で形成したチャンバーCに圧縮空気を供給したときに、移動体80が移動を始める圧力よりも低い圧力で移動可能なものを用いれば良い。
例えば、アルミシートや固体潤滑材としての性能を有する樹脂素材のシート等を利用することができる。好ましくは、移動体80の膨張・収縮による外形形状の変化に許容可能なものが好ましい。
これにより、配管Z内で移動体80を移動させるためのチャンバーCの圧力が低い圧力であっても移動体80を移動させることができる。なお、低い圧力とは、膨張状態にある移動体80を挟んでチャンバーCと逆側の配管Z内の圧力よりも高い圧力であることは言うまでもない。
移動体80が少なくとも配管Zに密接する接触領域CRに摩擦低減部材88を備えることにより、移動体80を構成する外筒84の外周面が摩擦低減部材88により保護されるので、移動体80の破損を防ぎ、長寿命化できる。
【0051】
即ち、移動体80に対して摩擦低減部材88が設けられる形態は、配管Zに対する摩擦が低減できるものであればいずれであっても良い。
【0052】
また、上記実施形態の移動体80では、外筒84を形成するにあたり弾性素材に繊維を内挿することで、外筒84が径方向に膨張・収縮するときに、強制的に軸方向に収縮・伸長するように構成としたがこれに限定されない。外筒84は、繊維が内挿されない伸縮可能な弾性素材のみで形成しても良い。
【0053】
なお、管内移動装置1の構成において複数の移動体80(前述の3つの移動体80A;80B;80C)を用いる場合の説明では、先頭の移動体80Aから延長する管210Aに対して後方の移動体80Bが移動自在、移動体80Aから延長する管210A及び移動体80Bから延長する管210Bに対して移動体80Cが移動自在とし、移動体80Bの内筒82が膨張することにより管210Aに固定され、移動体80Cの内筒82が膨張することにより管210A及び管210Bに固定されるものとして説明したがこれに限定されない。
【0054】
例えば、移動体80Bについては、先頭の移動体80Aから延長する管210Aに固定し、移動体80Cについては、移動体80Aから延長する管210Aに対して移動自在とし、移動体80Bから延長する管210Bに固定したり、或いは管210A及び管210Bの両方に固定したりしても良い。この場合、3つの移動体80A;80B;80Cは、配管Z内における関係が維持されるようにしても良い。
【0055】
先頭の移動体80Aよりも後方の移動体80Bや移動体80Cを、管210Aや管210Bを利用して固定する場合には、例えば、移動体80Bや移動体80Cを構成する端部部材86を固定に利用すれば良い。
【0056】
図8,
図9は、移動体80の他の形態を示す図である。
また、移動体80Bや移動体80Cを管210Aや210Bに固定する場合には、例えば、
図8に示すように移動体80を構成しても良い。
例えば、
図8(a)に示すように、
図2に示すように構成された移動体80から内筒82をなくすとともに、移動体80の内周側の空間を、移動体80の両端に設けられた各端部部材86の開口部86Aに蓋94を取り付けて閉鎖するようにしても良い。この場合、移動体80Bに設けられる蓋94には管210Aの貫通を可能とする貫通孔94Aを、移動体80Cに設けられる蓋94には
図8(b)に示すように管210A及び管210Bの貫通を可能とする貫通孔94Aを2つもうければ良い。
【0057】
また、
図9(a)に示すように、移動体80は、端部部材86;86に代えて筒体96とし、筒体96の外周に外筒84を取り付け、外筒84と筒体96との間に圧縮空気を供給して径方向に膨縮するように構成しても良い。なお、この場合、筒体96の内周側の空間を閉鎖するように、前述の蓋94を両端に設けたり、内周側の空間を軸方向に区画するように隔壁を設けたりすれば良い。
【0058】
また、
図9(b)に示すように、移動体80は、筒体96に代えて、中実の柱体98とし、柱体98の外周に外筒84を取り付け、外筒84と筒体96との間に圧縮空気を供給して径方向に膨縮するように構成しても良い。
なお、この場合、筒体96の内周側の空間を閉鎖するように、前述の蓋94を両端に設けたり、内周側の空間を軸方向に区画するように隔壁を設けたりすれば良い。
外筒84を膨張させたときに、配管Zが閉塞するように構成されていれば良い。
【0059】
図10は、管内移動装置1の他の形態を示す図である。
上述した管内移動装置1は、
図10に示すように構成された前述の移動体80と推進動作が異なる移動体10と組み合わせても良い。
【0060】
即ち、本実施形態に係る管内移動装置1は、検査対象の配管Z内に設けられ、配管Z内を移動可能に構成された移動体(第1の移動体)10と、配管Z外に設けられ、移動体10の進行を制御する推進制御装置100と、配管Z内に設けられ、配管Z内を移動する移動体80(第2の移動体)と、配管Z外に設けられ、管210を通じて移動体80に流体の供給や排出をする流体給排手段200と、配管外から配管内に流体を供給し、流体の圧力により移動体を押圧する押圧手段300を備えた構成とされる。なお、移動体80や流体給排手段200、押圧手段300については説明を省略する。
【0061】
図10に示すように、移動体10は、例えば、配管Zの内壁との間で摩擦を生じさせるための把持ユニット20と、把持ユニット20を配管Zの管軸方向に移動させるための伸縮ユニット50とを交互に連結し、配管Zの内壁面との摩擦力を利用して配管Z内を移動可能に構成されている。本実施形態では、移動体10は、先頭側から伸縮ユニット50、把持ユニット20、伸縮ユニット50、把持ユニット20、伸縮ユニット50の順に連結されている。
【0062】
なお、以下の説明では、連結された把持ユニット20や伸縮ユニット50の位置を特定して説明する場合には、先頭側から伸縮ユニット50A、把持ユニット20A、伸縮ユニット50B、把持ユニット20B、伸縮ユニット50Cなどという場合がある。
【0063】
把持ユニット20は、空気の給排に基づいて動作し、空気が供給されることにより配管Zの内壁との間に摩擦力を生じさせ、供給した空気を排出することにより配管Zの内壁との間に摩擦力が解放されるように構成されている。
また、伸縮ユニット50は、空気の給排に基づいて動作し、空気が供給されることにより配管Zの管軸方向に伸長し、供給した空気を排出することにより配管Zの管軸方向に収縮するように構成されている。
【0064】
把持ユニット20及び伸縮ユニット50を動作させる空気は、推進制御装置100から延長し、各把持ユニット20及び伸縮ユニット50に接続された管118A~118C;119A,119Bを介して給排される。なお、管118A~118C;119A,119Bを纏めて配線114という。
【0065】
図11(a)は、把持ユニット2の構成を示す軸方向断面図である。把持ユニット20は、内筒22と、外筒24と、一対の端部部材26;26とを備えた構成とされる。内筒22及び外筒24は、両端が端部部材26;26に固定されることにより二重管をなすように配置されるとともに、内筒22の外周面と外筒24の内周面との間の空間が端部部材26;26により閉空間(以下流体室S20という)として閉鎖されている。
【0066】
内筒22は、気密性を有する素材で構成され、軸方向には伸縮が可能であり、半径方向(内周面側及び外周面側)からの外力に対しては実質的に拡縮が見られない特性を有する筒体として形成される。本実施形態では、上記特性を有する筒体として可撓性を有する素材で構成された螺旋状の蛇腹を用いている。なお、内筒22は、螺旋状の蛇腹に限定されず、気密性を有し、軸方向には伸縮が可能であり、半径方向からの外力には実質的に拡縮が見られないものであれば良い。
【0067】
外筒24は、例えば、弾性体より形成される円筒状の筒本体の内部に複数の繊維が内挿された構成とされる。筒本体は、例えば、気密性及び伸縮性を有する弾性素材が好適とされ、例えば、シリコーンゴム等の合成ゴム、或いは天然ラテックスゴム等の天然ゴム等を利用することができる。
【0068】
筒本体に内挿される複数の繊維は、例えば、筒本体内において各繊維が外筒24を形成する筒本体の軸線に沿うように延長方向が規定され、一端側から他端側まで連続するように内挿される。なお、繊維が筒本体の軸方向に沿うように延長するとは、軸方向に対して多少の傾斜(交差)を許容する。
【0069】
筒本体に内挿される複数の繊維は、例えば、各繊維の長さが筒本体の軸方向の長さを有するものや、筒本体の軸方向の長さよりも短いものであっても良い。筒本体の軸方向の長さとは、筒本体の一端から他端までの軸方向に沿った長さである。なお、筒本体の長さよりも短い繊維を用いる場合、繊維同士に軸方向に重複が得られるように一端側から他端側に分布させて内挿されることが好ましい。
【0070】
繊維の内挿される形態は、例えば、層状に複数積層して内挿しても良く、積層せずに単層であっても良い。
【0071】
繊維の素材は、軸方向への伸縮変化の小さい素材が好適である。例えば、繊維には、例えば、アラミド繊維、炭素(カーボン)繊維、ガラス繊維、ナイロン、ポリアミド系繊維やポリオレフィン系繊維、金属繊維等の被伸長性を有するものを適宜選択して用いても良い。
【0072】
また、各繊維には、適当なプライマー処理、又は、表面酸化処理を行うことで、筒本体への接着性を十分に向上させると良く、好ましくは、筒本体を構成するゴムとの接着性に応じて選択すると良い。
【0073】
また、各繊維の形態は、フィラメント、ヤーン(スパン・ヤーン及びフィラメント・ヤーン)、ストランド等のいずれの形態でも用いることができ、さらに、撚りをかけずに収束させた無撚繊維、これらの繊維を複数本撚って作成した繊維を用いることも可能である。繊維の種類にもよるが、二種類以上の素材の異なる繊維や形態の異なる繊維を組み合わせても良い。
【0074】
筒本体を構成する素材は、後述する流体室S20への圧縮空気の給排によってその形状が変化し得る材質であれば如何なる材質であっても良い。また、筒本体の厚さや繊維の配置については、外筒24の空気排出時の伸長する力等を考慮して決めれば良い。
【0075】
端部部材26;26は、概略円筒状の筒体として形成構成される。端部部材26は、一端側の内周側に内筒22を取り付けるための内筒固定部28、その外周側に外筒24を取り付けるための外筒固定部30を備える。
【0076】
内筒固定部28及び外筒固定部30は、内筒22及び外筒24が取り付けられたときに、内筒22及び外筒24が同軸に配置されるように設けられる。
【0077】
本実施形態では、内筒固定部28は、内筒22に螺旋状の蛇腹を用いていることから蛇腹の螺旋を利用して内筒22の端部側が内筒固定部28に固定すべく形成されている。具体的には、内筒固定部28は、内筒22の螺旋状の外周をねじ込み可能に螺旋状の溝として形成されている。これにより、内筒22は、外周面が内筒固定部28に密着して固定され、端部部材26との気密を形成する。
【0078】
なお、内筒固定部28は、内筒22の構成に応じて適宜設定すれば良く、内筒22の外周面と気密状態で密着し、内筒22が脱落不能に固定可能に構成されていれば良い。
【0079】
外筒固定部30は、外筒24の端部から外筒24の内周側に挿入可能に端部部材26の外周に設けられる。外筒固定部30は、例えば、外筒24の内周面が一周にわたり密着するような外径及び軸方向に所定範囲で形成されていると良い。外筒固定部30として外筒24が挿入される範囲には、端部部材26の円周方向に沿って一周分連続して窪む溝34が設けられている。
【0080】
外筒固定部30への外筒24の固定は、外筒固定部30として設けられた範囲に被せるように外筒24を挿入し、溝34に一致する部分において、外筒24の外周側から例えば、非伸縮のひも状の固定部材32を固定手段として外筒24の外周側から巻き付け、端部部材26に締め付けることで固定することができる。
これにより、外筒24が端部部材26に気密状態を維持しつつ密着し、端部部材26からの脱落を防止している。
【0081】
また、端部部材26の内筒22及び外筒24が取り付けられる逆側の端部には、軸方向に突出する連結部36が設けられる。連結部36は、端部から軸方向外側に向けて所定長さ形成され、把持ユニット20を伸縮ユニット50に連結するときの連結機構を構成する。
【0082】
また、一方の端部部材26は、流体室S20への空気の給排を可能にするための給排孔38を備えた構成とされる。給排孔38は、一端が端部部材26の外側(連結部36側)の端面に開口し、他端が端部部材26の外周面に開口するように設けられている。給排孔38の一端側は、後述の管118の端部が挿入、固定可能とされる。また、給排孔38の他端側は、溝34よりも内側(流体室S20側)に開口するように形成される。
【0083】
上記構成によれば、把持ユニット20は、給排孔38を介して流体室S20に空気が供給されると、外筒24に内挿された繊維が軸方向への伸長を拘束するため、
図11(b)に示すように、外筒24が半径方向外側に向けた膨張とされる。外筒24が半径方向外側に向けた膨張は、把持ユニット20全体を軸方向に収縮させることになる。外筒24を軸方向に収縮させる力は、内筒22を従属的に軸方向に収縮させる。
【0084】
したがって、把持ユニット20は、外筒24を配管Zの内径以上に半径方向外向きに膨張させることにより、外筒24を配管Zの内壁に押し付けられる。これにより、外筒24の外周面と配管Zの内壁面との間に摩擦が生じ、把持ユニット20の軸方向に外力が加わったときでも把持ユニット20が配管Zに対して不動となるように配管Zを把持させることができる。なお、以下の説明では、把持ユニット20が膨張して配管Zを把持した状態を単に膨張又は膨張状態等という。
【0085】
また、把持ユニット20は、膨張状態とするために流体室S20に供給された空気を排出することにより、外筒24の弾性及び内筒22の弾性による復元力によって、
図11(c)に示すように、半径方向に収縮しつつ軸方向に伸長して自然状態に戻る。自然状態とは、流体室S20が大気圧にある時の把持ユニット20の状態を言う。なお、以下の説明において、把持ユニット20が収縮した状態を単に収縮又は収縮状態という。
【0086】
つまり、把持ユニット20は、流体室S20への空気の供給により、軸方向に収縮しつつ半径方向に膨張し、流体室S20からの空気の排出により、軸方向に伸長しつつ半径方向に収縮するアクチュエータとして動作する。
【0087】
図12(a)は、伸縮ユニット50の構成を示す軸方向断面図である。
伸縮ユニット50は、軸方向に伸縮可能に構成される。例えば、伸縮ユニット50は、内筒52と、外筒54と、端部部材56;56とを備えた構成とされる。伸縮ユニット50は、二重管をなすように内筒52の外周に外筒54が配置され、内筒52の外周と外筒54の内周との間に、閉空間の流体室S50を形成すべく、端部部材56;56が設けられる。
【0088】
伸縮ユニット50は、外観視において円筒状に形成され、流体室S50に空気を供給することで軸方向に伸長し、排出することで軸方向に収縮するように構成される。伸縮ユニット50は、空気の給排による軸方向に伸縮に伴い、実質的に半径方向に膨縮しない(非膨張となる)ように半径方向への膨縮が小さい構成とされる。
【0089】
内筒52及び外筒54は、例えば、コイルばね58;62と、被覆体60:64とを利用して構成することができる。例えば、コイルばね58;62は、引っ張りばねを用いることができる。
【0090】
被覆体60;64は、コイルばね58;62の外周に巻き付けられるように設けられている。被覆体60;64は、例えば、気密性及び伸縮性がなく、可撓性を有するシート状の素材を利用して構成することができる。被覆体60;64を構成する素材には、例えば、ビニールやアルミ箔等を利用できる。
【0091】
被覆体60;64は、コイルばね58;62の伸縮動作を妨げないように、コイルばね58;62の自然長の長さよりも長く形成され、コイルばね58;62の外周において筒状とされる。
【0092】
内筒52を形成するコイルばね58及び外筒54を形成するコイルばね62は、端部部材56に取り付けられたときに、それぞれが自然長の長さとなるようにすると良い。外筒54を形成するコイルばね62が、内筒52を形成するコイルばね58の外径寸法よりも大径である。内筒52の外周には被覆体60が、外筒54の外周には被覆体64がそれぞれ設けられる。
【0093】
端部部材56;56は、内筒52及び外筒54の両端部に取り付けられる。端部部材56;56は、それぞれ概略円筒状の筒体として形成され、端部部材56は、内筒52を固定するための内筒固定部66、外筒54を固定するための外筒固定部68、把持ユニット20を連結するための連結部70を備える。
【0094】
内筒固定部66及び外筒固定部68は、内筒52及び外筒54が取り付けられたときに、内筒52及び外筒54が同軸に配置されるように設けられる。例えば、
図5に示すように、端部部材56は、一端側の外径が他端側の外径よりも小径の筒状となるように階段状とされ、小径部分の外周が内筒固定部66、小径部分に連続する大径部分の外周が外筒固定部68として利用される。
【0095】
内筒固定部66及び外筒固定部68は、例えば、内筒52を構成するコイルばね58の螺旋、外筒54を構成するコイルばね62の螺旋を利用したねじ込みによる固定を可能とすべく螺旋状の溝として形成される。これにより、コイルばね58;62は、端部部材56から脱落不能とされる。
【0096】
さらに、内筒52及び外筒54は、コイルばね58;62が内筒固定部66及び外筒固定部68にねじ込み固定された状態において、コイルばね58の外周、コイルばね62の外周を囲繞する被覆体60;64の上から非伸縮性のひも状の括り部材で締め付けることで内筒固定部66及び外筒固定部68に対して気密状態となるように密着される。
【0097】
連結部70は、端部部材56の他端側(内筒52や外筒54が固定される側の逆側)に設けられる。連結部70は、端部部材56の他端側の端面から一端側に向かうように端部部材56の内周面にめねじとして形成される。
【0098】
連結部70は、把持ユニット20の端部部材26に形成された連結部36が螺入可能に、端面から軸方向に所定長さ形成される。この連結部70は、把持ユニット20を伸縮ユニット50に連結するときの連結機構として機能する。
【0099】
また、一方の端部部材56は、流体室S50への空気の給排を可能にするための給排孔72を備えた構成とされる。給排孔72は、例えば、一端が連結部70よりも内側の内周面に開口し、他端が外筒固定部68よりも内側に開口するように設けられている。給排孔72の一端側は、後述の管119の端部が挿入、固定可能とされる。また、給排孔72の他端側は、流体室S50に開口する。
【0100】
上記構成によれば、伸縮ユニット50は、給排孔72を介して流体室S50に空気が供給されると、
図12(b)に示すように、内筒52及び外筒54を形成するコイルばね58;62の付勢力に対抗しながら軸方向に伸長する。また、流体室S50に供給された空気が給排孔72を介して排出されると、
図12(c)に示すように、内筒52及び外筒54を形成するコイルばね58;62の付勢力により軸方向に収縮する。
【0101】
つまり、伸縮ユニット50は、流体室S50への空気の供給により、実質的に軸方向にのみ伸長し、流体室S50からの空気の排出により、実質的に軸方向にのみ収縮するアクチュエータとして動作する。
【0102】
そして、移動体10は、
図10に示すように、把持ユニット20及び伸縮ユニット50を連結することにより、連結された伸縮ユニット50の内筒52及び把持ユニット20の内筒22の内周側の空間が連続し、移動体10には、先頭の伸縮ユニット50Aの先端から後尾の伸縮ユニット50Cの後端まで連続する一つの中空空間S10が形成される。
【0103】
この中空空間S10は、複数の伸縮ユニット50の動作を相互に作用させるための2本の拘束手段T1;T2や各把持ユニット20(20A;20B)及び各伸縮ユニット50(50A;50B;50C)に個別に空気を給排するための管118;119(118A;118B,119A~119C)の延長経路として利用される。
【0104】
拘束手段T1;T2は、例えば、それぞれ可撓性を有する非伸縮性のひも状部材で構成される。なお、拘束手段T1;T2は、可撓性及び非伸縮性を有するとともに、所定の引張強度が得られるものであれば、金属製、化繊等に関わらず素材は限定されない。
【0105】
拘束手段T1は、把持ユニット20Aを挟んで連結された伸縮ユニット50Aと、伸縮ユニット50Bとが連動して動作するように取り付けられる。また、拘束手段T2は、把持ユニット20Bを挟んで連結された伸縮ユニット50Bと、伸縮ユニット50Cとが連動して動作するように取り付けられる。
【0106】
本実施形態では、
図13に示すように、拘束手段T1は、一端が伸縮ユニット50Aの前側の端部部材56に固定され、他端が伸縮ユニット50Bの後側の端部部材56に固定され、拘束手段T2は、一端が伸縮ユニット50Bの前側の端部部材56に固定され、他端が伸縮ユニット50Cの後側の端部部材56に固定されている。
【0107】
拘束手段T1は、伸縮ユニット50Aの前側の端部から伸縮ユニット50Bの後側の端部までの距離を一定に拘束するように設けられ、拘束手段T2は、伸縮ユニット50Bの前側の端部から伸縮ユニット50Cの後側の端部までの距離を一定に拘束するように設けられる。
【0108】
なお、拘束手段T1の他端が固定される位置は、伸縮ユニット50Bの後側の端部部材56に限定されない。伸縮ユニット50Bの後側の端部部材56に固定されたものと見なせる位置であれば良く、例えば、伸縮ユニット50Bの後側の端部部材56に連結される把持ユニット20Bの前側の端部部材26や後側の端部部材26、或いは、把持ユニット20Bの後側の端部部材26に連結される伸縮ユニット50Cの前側の端部部材56であっても良い。
【0109】
また、拘束手段T2の一端が固定される位置は、伸縮ユニット50Bの前側の端部部材56に限定されない。伸縮ユニット50Bの前側の端部部材56に固定されたものと見なせる位置であれば良く、例えば、伸縮ユニット50Bの前側の端部部材56に連結される把持ユニット20Aの前側の端部部材26若しくは後側の端部部材26、或いは、把持ユニット20Aの前側の端部部材26に連結される伸縮ユニット50Aの後側の端部部材56であっても良い。
【0110】
拘束手段T1;T2を端部部材26や端部部材56に固定する方法は、特に限定されず、拘束手段T1;T2に張力が加わったときに固定状態が維持されるものであれば良い。
【0111】
拘束手段T1;T2の長さは、伸縮ユニット50A~50Cに設定された軸方向への伸縮量Stに基づいて設定すると良い。具体的には、拘束手段T1の長さは、伸縮ユニット50Aの伸縮動作が把持ユニット20Aを挟んで連結された伸縮ユニット50Bに作用するように設定され、拘束手段T2の長さは、伸縮ユニット50Bの動作が把持ユニット20Bを挟んで連結された伸縮ユニット50Cに作用するように設定される。
【0112】
拘束手段T1;T2は、例えば、伸縮ユニット50Bの伸縮動作に応じて伸縮ユニット50A及び伸縮ユニット50Cが連動するように長さを設定することができる。拘束手段T1;T2の長さは、例えば、伸縮ユニット50Bが最も伸長したときに、伸縮ユニット50A及び伸縮ユニット50Cが最も収縮し(
図12(b)参照)、伸縮ユニット50Bが最も収縮したときに、伸縮ユニット50A及び伸縮ユニット50Cが最も伸長するような関係を維持するように設定すると良い(
図12(c)参照)。
【0113】
各把持ユニット20(20A;20B)及び各伸縮ユニット50(50A;50B;50C)に接続される管118及び管119には、可撓性及び耐圧性を有する管が利用される。
【0114】
各把持ユニット20(20A;20B)及び各伸縮ユニット50(50A;50B;50C)に個別に接続された管118;119(118A;118B,119A~119C)は、中空空間S10の後端側から移動体10の外部へと延長し、配管Zの外部に設けられた推進制御装置100に接続される。
【0115】
推進制御装置100は、把持ユニット20A;20Bの膨張・収縮及び伸縮ユニット50A~50Cの伸長・収縮を制御するための装置であって、例えば、
図10に示すように構成することができる。
【0116】
推進制御装置100は、例えば、把持ユニット20A;20Bや伸縮ユニット50A~50Cに圧縮空気を供給するための空気供給装置110と、把持ユニット20A;20Bや伸縮ユニット50A~50Cから圧縮空気を排出するための空気排出装置120と、把持ユニット20A;20Bや伸縮ユニット50A~50Cへの圧縮空気の供給や排出を制御する給排制御装置130と、把持ユニット20A;20Bや伸縮ユニット50A~50Cに供給される圧縮空気や、把持ユニット20A;20Bや伸縮ユニット50A~50Cから排出される圧縮空気が流通する管118A;118B及び管119A~119C等の配線114で構成することができる。
【0117】
空気供給装置110は、例えば、圧縮空気を生成するコンプレッサー、コンプレッサーにより生成された圧縮空気を所定の圧力に調整するレギュレータ等により構成することができる。
空気排出装置120は、例えば、真空ポンプ等の減圧手段を用いることができる。
【0118】
給排制御装置130は、例えば、空気供給装置110からの把持ユニット20A;20Bや伸縮ユニット50A~50Cへの圧縮空気の供給や、空気排出装置120による把持ユニット20A;20Bや伸縮ユニット50A~50Cからの圧縮空気の排出を可能にするバルブと、バルブの動作を制御するコントローラーとで構成することができる。
【0119】
バルブは、例えば、電気的な信号に基づいて流路の開閉が可能な電磁弁を用いることができる。バルブは、把持ユニット20A;20B,伸縮ユニット50A~50C毎に、圧縮空気の供給用及び圧縮空気の排出用として一対設けられる。
【0120】
管118A;118B及び管119A~119C等の各管は、一端が把持ユニット20A;20Bや伸縮ユニット50A~50Cと接続され、他端が分岐管を介して供給用のバルブと排出用のバルブとに接続される。本実施形態では、管118Aが把持ユニット20A、管118Bが把持ユニット20B、管119Aが伸縮ユニット50A、管119Bが伸縮ユニット50B、管119Cが伸縮ユニット50Cに対応する。
【0121】
コントローラーは、演算処理手段としてのCPU、記憶手段としてのRAM、ROM、入出力ポート等の入出力手段などのハードウェアを備えるコンピュータであって、ROMに記憶させたプログラムをCPUで演算処理することでプログラムに書かれた信号を、出力ポートから把持ユニット20A;20B,伸縮ユニット50A~50Cに対応して設けられた各バルブに所定の順序で信号を出力することにより、配管Z内において移動体10を進行させるための駆動を制御する。コントローラーは、把持ユニット20A;20B及び伸縮ユニット50A~50Cに対応して設けられた各バルブに所定の順序で信号を出力し、把持ユニット20A;20B及び伸縮ユニット50A~50Cが所定の順序で膨張や収縮、膨張状態の維持、収縮状態の維持、或いは、伸長や収縮、伸長状態の維持、収縮状態の維持等を制御する。
【0122】
ここでいう所定の順序とは、把持ユニット20A;20B及び伸縮ユニット50A~50Cが、波動を伝播するように、換言すれば、蠕動運動を模した動作をすることにより、移動体10が管z内を前進や後進を可能とすることを言う。また、コントローラーによる制御は、前進や後進に限らず、停止動作を含むようにしても良い。
【0123】
なお、前述の推進制御装置100の構成は一例であって、移動体10が前進、後進、停止等の動作の制御を可能とされるものであれば前述の構成に限定されない。
【0124】
図13は、移動体10の推進動作を示す図である。なお、同図では、配管Zは省略してある。
図13(a)は、配管Z内に配置された移動体10が走行を開始する前の待機状態を示している。同図に示すように、例えば、移動体10は、把持ユニット20A;20Bが膨張状態とされ、伸縮ユニット50Bが伸長し、伸縮ユニット50A;50Cが収縮した状態とされる。つまり、本工程では、膨張した把持ユニット20A;20Bが配管Zの内壁を把持することにより、移動体10が配管Zに対して不動とされる。
次に、
図13(b)に示すように、把持ユニット20Aの膨張状態、伸縮ユニット50A;50Cの収縮状態及び伸縮ユニット50Bの伸長状態を維持したまま、後方の把持ユニット20Bを収縮させる。
次に、
図13(c)に示すように、把持ユニット20Aの膨張状態及び把持ユニット20Bの収縮状態を維持したまま、伸縮ユニット50Bを収縮させるとともに伸縮ユニット50A及び伸縮ユニット50Cを伸長させる。
この行程では、把持ユニット20Aが膨張状態にあるため、拘束手段T1を介して伸縮ユニット50Aに接続された伸縮ユニット50Bは、伸縮ユニット50Aの伸長に伴い把持ユニット20Aに押し付けられるように収縮する。加えて、拘束手段T2を介して伸縮ユニット50Cに接続された伸縮ユニット50Bは、伸縮ユニット50Cの伸長に伴い、さらに把持ユニット20Aに押し付けられるように収縮することになる。これにより、移動体10の伸縮ユニット50Cの後方端部部材56には、進行方向への牽引力が得られる。
次に、
図13(d)に示すように、把持ユニット20Aの膨張状態、伸縮ユニット50A;50Cの伸長状態及び伸縮ユニット50の収縮状態を維持したまま、把持ユニット20Bを膨張させて管zを把持させる。
次に、
図13(e)に示すように、把持ユニット20Bの膨張状態、伸縮ユニット50A;50Cの伸長状態及び伸縮ユニット50の収縮状態を維持したまま、把持ユニット20Aを収縮させて管zの把持を開放させる。
次に、
図13(f)に示すように、把持ユニット20Bの膨張状態及び把持ユニット20Aの収縮状態を維持したまま、伸縮ユニット50Bを伸長させるとともに、伸縮ユニット50A;50Cを収縮させる。これにより、移動体10が進行方向前方に大きく前進する。
そして、上記
図13(a)~(f)に示す行程を繰り返すことで、移動体10は配管Z内を移動することができる。なお、移動体10は、
図13(a)から(f)に至る行程の順序を逆向きとすることにより後進させることができる。
【0125】
また、移動体10において、拘束手段T1;T2は必須ではないが、把持部を挟んで設けられる推進力発生部の伸縮の関係をより効果的にすることを考慮すれば拘束手段を備える構成とすると良い。
【0126】
また、上記実施形態では、移動体10は、先頭と最後尾が推進力発生部となるように推進力発生部と把持部とを交互に連結する構成としたが、これに限定されない。例えば、移動体10は、先頭と最後尾が把持部となるように把持部と推進力発生部とを交互に連結する構成としても良い。即ち、推進力発生部及び把持部の連結の形態は適宜変更すれば良い。
【0127】
また、蠕動運動を模した推進が可能であれば、移動体10を構成する推進力発生部及び把持部の数量や順序は、適宜変更しても良い。
【0128】
以下、推進動作がそれぞれ異なる移動体10と移動体80とを組み合わせた管内移動装置1の作用について説明する。なお、ここでは移動体80は、
図2に示すように内筒82と外筒84とを備え、内筒82が径方向内側に、外筒84が径方向に外側に向けてそれぞれ膨張するものとして説明する。
【0129】
図14(a)に示すように、移動体10及び移動体80は、移動体10から延長する配線114を移動体80の内周側の空間を貫通させた状態で配管Z内に配置される。移動体10及び移動体80を配管Z内に配置した後、配管Zの開口部を蓋312により閉鎖する。なお、移動体10から延長する配線114、管210及び押圧用管310は、蓋312との気密状態を維持しつつ該蓋312を貫通する。
【0130】
移動体10に推進動作をさせて移動体10が配管Zの奥へと移動し、推進動作をしているにも関わらず進行が停止、或いはほとんど進行が見られないと判断される状態となったとする。移動体10の進行状態は、例えば、配線114の移動状態から判断することができる。
【0131】
次に、
図14(b)に示すように、移動体80に圧縮空気を供給し、配管Zの内で膨張させる。
このように移動体80を膨張させることにより、配管Zの空間を管軸方向に分断するように閉塞し、移動体80は蓋312との間にチャンバーCを形成する。また、移動体80の膨張によって、配線114が内筒82に固定される。
【0132】
次に、
図14(c)に示すように、移動体80の膨張状態を維持したまま押圧用管310から圧縮空気をチャンバーCに供給することにより、移動体80は配線114を掴んだ状態で奥へと移動させることができる。
これにより、配管Zとの摩擦により張り詰めた状態にある配線114にたわみが生じ、移動体10の進行が再開可能な状態となる。
【0133】
次に、
図14(d)に示すように、移動体80の膨張状態を維持したまま移動体10の推進動作を再開させる。そして、移動体10がたわみ分進行し、配線114が再び緊張状態となって移動体10が進行できなくなったときに移動体10の推進動作を停止させる。
【0134】
次に、
図14(e)に示すように、移動体10の推進動作の停止後、移動体80から空気を排出して収縮させることで配線114の把持状態及び配管Zの閉塞を解除する。これにより、移動体80が配線114に沿って自由に動くことが可能な状態となる。
【0135】
次に、
図14(f)に示すように、配管Z外から配管Z内に延長する移動体80の管210を、オペレータが配管Z外に引き出すことで、移動体80を蓋312側へと引き戻す。
そして、再び、
図14(b)に示すように、移動体80を膨張させる行程へと戻り、
図14(c)~14(f)に示した行程を繰り返せば良い。
【0136】
即ち、移動体10の進行が停止する毎に、移動体80が配線114を移動体10側に運ぶことで、移動体10に作用する配線114の負荷を軽減することで、移動体10を配管Zのより奥へと進行させることができ、配管Z内における長距離の移動が可能とされる。
【0137】
このような移動体10に対する移動体80の動作は、移動体10の進行を補助するものと言うことができる。つまり、移動体80及び移動体80を動作させるための流体給排手段200、押圧手段300などの構成は、移動体10の進行を補助するための装置(進行補助装置)と言える。
【0138】
したがって、移動体10において先頭の伸縮ユニット50Aにカメラや照明を備えた検査ユニットを取り付けることにより、管内移動装置1を、長距離にわたり配管Z内を検査可能な管内検査装置として構成することができる。
なお、検査ユニットを管内移動装置1に取り付けた場合、カメラや照明などに電力を供給する電力供給線や、カメラが撮影した画像を出力するための信号線などの配線は、移動体10に形成された中空空間S10を貫通させて、配線114とともに配管Zの外部に延長させれば良い。
【0139】
上述のように動作する移動体80によって移動体10の進行を補助する方法は、配管Z外から配線によりエネルギーを供給して移動体を推進駆動するものであれば、上記実施形態で説明した効果を得ることができる。
【0140】
即ち、移動体10は、尺取虫型の蠕動運動を模した動作をするものとして説明したが、これに限定されず、把持ユニット20を複数連結し、複数の把持ユニット20を軸方向に伸縮させて推進力を生じさせるミミズ型の蠕動運動のものでも良い。
【0141】
また、移動体10は、上記実施形態で説明した空気(流体)を利用して動作するものに限定されず、管外から電力を配線で供給することによりモーターを駆動して配管Z内を移動可能とされたものであっても良い。
【符号の説明】
【0142】
1 管内移動装置、10 移動体(第1の移動体)、20 把持ユニット、
50 伸縮ユニット、80 移動体(第2の移動体)、88 摩擦低減部材、
100 推進制御装置、110 空気供給装置、114 配線、118;119
管、120 空気排出装置、130 給排制御装置、200 流体給排手段、
210 管、212 検出手段、300 押圧手段、310 加圧用管、
310 噴射ノズル、312 蓋、Z 配管。