(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123454
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】空調制御システム
(51)【国際特許分類】
F24F 11/79 20180101AFI20240905BHJP
F24F 11/74 20180101ALI20240905BHJP
F24F 11/64 20180101ALI20240905BHJP
F24F 11/46 20180101ALI20240905BHJP
F24F 11/52 20180101ALI20240905BHJP
【FI】
F24F11/79
F24F11/74
F24F11/64
F24F11/46
F24F11/52
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030882
(22)【出願日】2023-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒川 悠文
(72)【発明者】
【氏名】折戸 真理
(72)【発明者】
【氏名】古橋 拓也
【テーマコード(参考)】
3L260
【Fターム(参考)】
3L260BA03
3L260BA07
3L260BA08
3L260BA42
3L260CA01
3L260CA02
3L260CA12
3L260EA07
3L260EA18
3L260EA19
3L260FA07
3L260FA08
3L260FC14
3L260GA11
3L260HA01
3L260HA06
(57)【要約】
【課題】対象空間の暖房を行う際において、当該対象空間にいる人にとって快適な温熱環境を適切に得ることが可能な空調制御システムを提供する。
【解決手段】空調制御システムは、対象空間100の空気調和を行う空気調和装置1と、対象空間100内における上下温度差を検知する上部温度センサ31および下部温度センサ32と、対象空間内100にいる人の位置を検知する人位置検知手段と、上部温度センサ31、下部温度センサ32および人位置検知手段の検知結果に応じて空気調和装置1を制御する制御手段と、を備える。空気調和装置1によって対象空間100の暖房を行う際、制御手段は、対象空間100内における上下温度差が閾値以上の場合、対象空間100内にいる人の顔を避けて当該人の足元へ温風が送られるように空気調和装置1を制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象空間の空気調和を行う空調手段と、
前記対象空間内における上下温度差を検知する温度差検知手段と、
前記対象空間内にいる人の位置を検知する人位置検知手段と、
前記温度差検知手段の検知結果および前記人位置検知手段の検知結果に応じて前記空調手段を制御する制御手段と、
を備え、
前記空調手段によって前記対象空間の暖房を行う際、前記制御手段は、前記対象空間内における上下温度差が閾値以上の場合、前記対象空間内にいる人の顔を避けて当該人の足元へ温風が送られるように前記空調手段を制御する空調制御システム。
【請求項2】
前記空調手段によって前記対象空間の暖房を行う際、前記制御手段は、前記対象空間内における上下温度差が第1閾値以上の場合に前記対象空間内にいる人の顔を避けて当該人の足元へ温風を送る運転を前記空調手段に開始させて、当該運転中に前記対象空間内における上下温度差が第2閾値以下になると当該運転を前記空調手段に終了させる請求項1に記載の空調制御システム。
【請求項3】
前記温度差検知手段は、前記対象空間内における上下温度差として、前記対象空間内にいる人の近傍の位置における上下温度差を検知することを特徴する請求項1または請求項2に記載の空調制御システム。
【請求項4】
前記制御手段は、前記対象空間内にいる人の顔を避けて当該人の足元へ温風が送る運転を前記空調手段に開始させた後、一定時間経過後に前記対象空間内における上下温度差が基準に達していない場合、前記空調手段による風速を上げる制御を行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の空調制御システム。
【請求項5】
前記対象空間内の上部の空気を下部へ搬送可能な送風手段を備え、
前記制御手段は、前記対象空間内にいる人の顔を避けて当該人の足元へ温風が送る運転を前記空調手段に開始させた後、一定時間経過後に前記対象空間内における上下温度差が基準に達していない場合、前記送風手段に前記対象空間内の上部の空気を下部へ搬送させることを特徴とする請求項1に記載の空調制御システム。
【請求項6】
前記空調手段から送られる冷風および常温の風が前記対象空間内の人へ当たることを妨げる気流を発生可能な送風手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の空調制御システム。
【請求項7】
前記対象空間内の暖気の上昇を抑制する気流を発生可能な送風手段を備えたことを特徴する請求項1に記載の空調制御システム。
【請求項8】
前記送風手段は、複数の送風機を含み、
前記制御手段は、前記対象空間内にいる人の顔に気流が当たらないように前記複数の送風機のうちの少なくとも1台を駆動させることを特徴とする請求項5から請求項7の何れか1項に記載の空調制御システム。
【請求項9】
前記制御手段は、前記対象空間内にいる人の個人情報の識別結果に応じて前記空調手段を制御する請求項1または請求項2に記載の空調制御システム。
【請求項10】
前記制御手段は、前記対象空間内にいる人の個人情報の識別結果に応じて前記対象空間内を複数のエリアに区分けするように前記空調手段を制御し、当該エリアの情報を報知手段に報知させる請求項9に記載の空調制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空調制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
冬季等において対象空間の暖房を行う場合、天井付近は暖かくなるものの床付近は寒く、当該対象空間内にいる人にとって快適な温熱環境が得られないということがあり得る。このような問題への対策として、対象空間内にいる人の足元へ向けて温風を送るということが考えられる。例えば、特許文献1には、人の足元への送風に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載された技術においては、暖房時に足元への送風が必要であるか否かについての考慮がされていない。このため、例えば、無駄に足元への送風が行われたり、あるいは、必要な時に足元への送風がされなかったり、ということが起こり得る。
【0005】
本開示は、上記のような課題を解決するためのものである。本開示の目的は、対象空間の暖房を行う際において、当該対象空間にいる人にとって快適な温熱環境を適切に得ることが可能な空調制御システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る空調制御システムは、対象空間の空気調和を行う空調手段と、前記対象空間内における上下温度差を検知する温度差検知手段と、前記対象空間内にいる人の位置を検知する人位置検知手段と、前記温度差検知手段の検知結果および前記人位置検知手段の検知結果に応じて前記空調手段を制御する制御手段と、を備える。前記空調手段によって前記対象空間の暖房を行う際、前記制御手段は、前記対象空間内における上下温度差が閾値以上の場合、前記対象空間内にいる人の顔を避けて当該人の足元へ温風が送られるように前記空調手段を制御する。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る空調制御システムであれば、対象空間の暖房を行う際において、当該対象空間にいる人にとって快適な温熱環境を適切に得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1の空調制御システムが用いられる対象空間を模式的に示す側面図である。
【
図2】実施の形態1の空調制御システムが用いられる対象空間を模式的に示す平面図である。
【
図3】実施の形態1の空調制御システムが有する空気調和装置の斜視図である。
【
図4】実施の形態1の空調制御システムが有する空気調和装置の吹出口近傍の拡大図である。
【
図5】実施の形態1の空調制御システムの制御系統の構成を示すブロック図である。
【
図6】実施の形態1における情報処理部および制御部の機能を実現する構成の一例を示す図である。
【
図7】実施の形態1の空調制御システムの制御動作の例を示すフローチャートである。
【
図8】実施の形態1の空調制御システムの第1変形例の構成を示す側面図である。
【
図9】実施の形態1の空調制御システムの第2変形例の制御動作を示すフローチャートである。
【
図10】実施の形態1の空調制御システムの第3変形例の構成を示す側面図である。
【
図11】実施の形態1の空調制御システムの第3変形例の構成を示す平面図である。
【
図12】実施の形態1の空調制御システムの第4変形例の構成を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付の図面を参照して、実施の形態について説明する。各図における同一の符号は、同一の部分または相当する部分を示す。また、本開示では、重複する説明については、適宜に簡略化または省略する。なお、本開示は、以下の実施の形態に限定されるものではない。本開示には、その趣旨を逸脱しない範囲において、以下の実施の形態によって開示される構成の種々の変形および組み合わせが含まれ得る。
【0010】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1の空調制御システムが用いられる対象空間100を模式的に示す側面図である。
図2は、実施の形態1の空調制御システムが用いられる対象空間100を模式的に示す平面図である。
【0011】
本実施の形態に係る空調制御システムは、
図1に示すような対象空間100内の空気調和を行うものである。対象空間100は、例えば、1つの部屋の内部空間である。空調制御システムは、対象空間100内にいる人にとって快適な温熱環境を得るためのものである。
【0012】
本実施の形態に係る空調制御システムは、対象空間100の空気調和を行う空調手段の一例として、空気調和装置1を備える。空気調和装置1は、対象空間100の空気調和を行うことで、対象空間100内の温熱環境を制御する機器である。空気調和装置1は、例えば、冷風を吹き出す冷房運転、温風を吹き出す暖房運転および常温の風を吹き出す送風運転等の空調運転を実行可能である。空気調和装置1は、送風方向、吹き出す空気の温度および吹き出す空気の風量を可変に構成されている。なお、本実施の形態において、空気調和装置1は、少なくとも、対象空間100の暖房を実行可能であればよい。
【0013】
空気調和装置1は、対象空間100に係る部屋の床面、壁面あるいは天井面に設置される。図示の構成例では、1台の空気調和装置1が天井面に設置されている。なお、本開示に係る空調制御システムは、複数の空気調和装置1を空調手段として備えていてもよいし、ヒーター等の加熱機器とその他の送風機とを組み合わせたものを空調手段として備えていてもよい。本開示に係る空調手段は、対象空間100の暖房、具体的には温風の送風が可能であればよい。
【0014】
本実施の形態における空気調和装置1とは、図示の通り、いわゆる「室内機」である。
本開示においては、室内機のことを、単に「空気調和装置」と称することもある。空気調和装置1には、冷媒が流れる配管を介して、室外機が接続されている。この配管および室外機の図示を、本開示では省略している。また、空気調和装置が空調運転を実行するために必要な冷凍サイクルを構成する各機器および対象空間100内に空気を吹き出すための送風ファン等の図示も、本開示では省略している。冷凍サイクルを構成する各機器には、例えば、熱交換器および圧縮機等が含まれる。
【0015】
図3は、実施の形態1の空調制御システムが有する空気調和装置1の斜視図である。
図4は、実施の形態1の空調制御システムが有する空気調和装置1の吹出口23近傍の拡大図である。
図3に示すように、空気調和装置1は、筐体20を備えている。筐体20は、略直方体形を呈する箱状に形成されている。筐体20の下部には、矩形状または正方形状の化粧パネル21が設けられている。
【0016】
筐体20の下部には、吸込口22が形成されている。吸込口22は、外部から筐体20の内部に空気を取り込むための開口である。一例として、吸込口22は、
図3に示すように、化粧パネル21の中央部分に配置されている。
【0017】
また、筐体20の下部には、吹出口23が形成されている。吹出口23は、筐体20の内部から外部へと空気を排出するための開口である。本実施の形態では、一例として、4つの吹出口23が形成されている。4つの吹出口23は、
図3に示すように、吸込口22の周囲に配置されている。4つの吹出口23は、それぞれ、化粧パネル21の各辺に沿って設けられている。
【0018】
空気調和装置1は、送風方向を可変に構成されている。一例として、空気調和装置1は、上下ルーバー24および左右ルーバー25を備えている。上下ルーバー24は、吹出口23のそれぞれに設けられている。上下ルーバー24は、吹出口23から吹き出される空気の上下方向の吹き出し角度を調整するためのものである。また、上下ルーバー24の内側には、吹出口23から吹き出される空気の左右方向の吹き出し角度を調整するための左右ルーバー25が備えられている。
【0019】
上下ルーバー24は、矩形の板状を呈する部材である。上下ルーバー24の一端は、吹出口23の縁部に、回動可能に取り付けられている。この一端を軸にして上下ルーバー24が回動することで、吹出口23から吹き出される空気の上下方向の吹き出し角度が変更される。
【0020】
左右ルーバー25は、矩形の板状を呈する複数枚の部材によって構成されている。この矩形の板状を呈する複数枚の部材は、吹出口23の長手方向に垂直な方向に沿うように配置されている。左右ルーバー25の一端は、吹出口23の縁部の奥側部分に、回動可能に取り付けられている。この一端を軸にして左右ルーバー25が回動することで、吹出口23から吹き出される空気の左右方向の吹き出し角度が変更される。上下ルーバー24の向きと左右ルーバー25の向きとの組み合わせを変更することで、様々な方向への送風が可能である。なお、上下ルーバー24と左右ルーバー25とは、互いに独立して駆動可能であってもよい。
【0021】
また、上下ルーバー24の向きが最も上向きにされることで、吹出口23は当該上下ルーバー24によって閉塞される。空気調和装置1は、複数の吹出口23のうちの一部を上下ルーバー24によって閉塞することで、当該一部の吹出口23からの送風を停止することが可能である。
【0022】
筐体20の内部には、吸込口22から吹出口23へと通じる風路が形成されている。この風路内には、図示しない送風ファン等が設置されている。送風ファンは、吸込口22から吹出口23へと向かう空気流を筐体20の内部の風路中に生成するためのものである。送風ファンが動作すると、吸込口22から空気が吸い込まれ、吹出口23から空気が吹き出される。この際、吹出口23から空気が吹き出される方向は、送風ファンの風下側に配置された上下ルーバー24および左右ルーバー25により、調整される。送風ファンの回転数を変化させることで、吹出口23から吹き出される空気の風量を変化させることができる。
【0023】
図1に示すように、本実施の形態に係る空調制御システムは、対象空間100内における上下温度差を検知する温度差検知手段の一例として、上部温度センサ31および下部温度センサ32を備える。上部温度センサ31は、対象空間100内の上部の室温を検知するセンサである。上部温度センサ31は、例えば、天井面に設置された空気調和装置1に設けられる。下部温度センサ32は、対象空間100内の下部の室温を検知するセンサである。下部温度センサ32は、例えば、対象空間100内において床面の近傍に設置される。上部温度センサ31の検知結果と下部温度センサ32の検知結果とに基づいて、対象空間100内における上下温度差を検知することができる。なお、本開示における温度差検知手段は本例に限られるものではない。温度差検知手段は、例えば、対象空間100内を上下方向に走査可能なセンサ機器、あるいは、対象空間100に係る壁面の表面温度を検知するサーモカメラ等から構成してもよい。
【0024】
また、本実施の形態に係る空調制御システムは、対象空間100内にいる人の位置を検知する人位置検知手段の一例として、表面温度センサ11を備えている。表面温度センサ11は、例えば、空気調和装置1の筐体20の下面部に設けられている。表面温度センサ11は、対象空間100内の対象物の表面温度を非接触で検知するセンサである。被対象物には、例えば、人体、床面および壁面等が含まれ得る。表面温度センサ11を用いることにより、対象空間100内における人の有無を判定することができるとともに、対象空間100内に人が存在する場合には人の位置の特定が可能となる。表面温度センサ11は、例えば、図示しない複数のサーモパイルを有する赤外線センサを備えた構成でもよい。なお、本開示における人位置検知手段は、表面温度センサ11を用いたものに限られない。例えば、対象空間100内の可視画像を撮影するカメラあるいは超音波センサ等を用いて人位置検知手段を構成してもよい。
【0025】
図5は、実施の形態1の空調制御システムの制御系統の構成を示すブロック図である。
図5に示すように、本実施の形態の空調制御システムは、情報処理部60および制御部63を備える。情報処理部60および制御部63は、本開示に係る制御手段の一例を構成するものである。情報処理部60は、上部温度センサ31、下部温度センサ32および表面温度センサ11から出力された検知結果の処理を行う。制御部63は、情報処理部60による情報処理の結果に応じて空気調和装置1に制御指令を出力する。
【0026】
情報処理部60は、例えば、温度差判定部61および人位置判定部62を有する。温度差判定部61は、上部温度センサ31および下部温度センサ32からの出力情報から、対象空間100内における上下温度差の判定を行う。人位置判定部62は、表面温度センサ11からの出力情報から、対象空間100内にいる人の位置の判定を行う。
【0027】
図6は、実施の形態1における情報処理部60および制御部63の機能を実現する構成の一例を示す図である。情報処理部60および制御部63の機能は、例えば、処理回路により実現される。処理回路は、プロセッサ131およびメモリ132を備えていてもよい。処理回路は、専用ハードウェア133であってもよい。処理回路の一部が専用ハードウェア133として形成され、かつ、当該処理回路はさらにプロセッサ131およびメモリ132を備えていてもよい。同図に示す例においては、処理回路の一部は専用ハードウェア133として形成されている。また、同図に示す例において、処理回路は、プロセッサ131およびメモリ132をさらに備えている。
【0028】
一部が少なくとも1つの専用ハードウェア133である処理回路には、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC、FPGA、又はこれらを組み合わせたものが該当する。処理回路が少なくとも1つのプロセッサ131及び少なくとも1つのメモリ132を備える場合、情報処理部60および制御部63の機能は、ソフトウェア、ファームウェア、又はソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。
【0029】
ソフトウェア及びファームウェアはプログラムとして記述され、メモリ132に格納される。プロセッサ131は、メモリ132に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、各部の機能を実現する。プロセッサ131は、CPU(Central Processing Unit)、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータあるいはDSPともいう。メモリ132には、例えば、RAM、ROM、フラッシュメモリー、EPROM及びEEPROM等の不揮発性又は揮発性の半導体メモリ、又は磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク及びDVD等が該当する。
【0030】
このようにして、処理回路は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又はこれらの組み合わせによって、情報処理部60および制御部63の各機能を実現することができる。なお、空調制御システムは、単一の装置により動作を制御する構成に限定されるものではない。空調制御システムは、複数の装置が連携することで動作を制御するものであってもよい。空調制御システムの制御系統を構成する情報処理部60および制御部63の機能の少なくとも一部は、空気調和装置1に搭載されていてもよいし、各機器の外部に設けられていてもよい。制御系統の機能の一部は、例えば、各機器を操作するためのリモコンあるいはネットワーク上のクラウドサーバ等に設けられていてもよい。
【0031】
上述したように、情報処理部60および制御部63は、本開示に係る制御手段の一例である。この制御手段は、温度差検知手段の検知結果および人位置検知手段の検知結果に応じて空調手段を制御するものである。具体的には、空調手段である空気調和装置1によって対象空間100の暖房を行う際、情報処理部60および制御部63は、対象空間100内における上下温度差が閾値以上の場合、対象空間100内にいる人の顔を避けて当該人の足元へ温風が送られるように空気調和装置1を制御する。
【0032】
暖房を行っている対象空間100内における上下温度差が閾値以上の場合とは、暖気によって対象空間100内の上部は温かくなっているものの人の足元は冷たくなってしまっている状態である。このような状態において足元へ温風を送ることで、対象空間100内の上下温度差を抑え、対象空間100にいる人にとって快適な温熱環境を得ることができる。また、人の顔への送風を避けることで、当該人の顔が温風を直接受けることがない。例えば、
図2に示すように、風向の左右方向を調整することで、人の顔を避けつつ当該人の足元へ温風を送ることができる。本実施の形態によれば、対象空間100内にいる人を頭寒足熱の状態にすることができ、快適性および知的生産性を向上させることができる。また、足元へ温風を送ることで、人近傍を効率よく暖房することができ、空気調和装置1の設定温度を下げることもできる。これにより、省エネの効果も得られる。また、上下温度差が閾値に達していない場合、すなわち暖房が適切に行われている場合においては、足元への無駄な送風をすることがない。このように、本実施の形態の空調制御システムであれば、対象空間100の暖房を行う際において、対象空間100にいる人にとって快適な温熱環境を適切に得ることが可能である。
【0033】
図7は、実施の形態1の空調制御システムの制御動作の例を示すフローチャートである。なお、このフローチャートは、対象空間100の暖房を行っていることを前提としているものである。暖房を行っている際には、まず、上部温度センサ31、下部温度センサ32および表面温度センサ11等のセンサによる検知データを取得する(ステップS101)。取得した検知データに基づいて、上下温度差が第1閾値以上であるか判定する(ステップS102)。上下温度差が第1閾値以上の場合には、足元へ温風を送る運転を空気調和装置1に開始させる制御を行う(ステップS103)。ステップS103の制御処理では、風向、風温および風量等が、情報処理部60により決定され、足元へ温風を送る運転を行うように制御部63によって空気調和装置1が制御される。当該運転中、例えば運転を開始してから一定時間経過後に、対象空間100内における上下温度差が第2閾値以下であるか判定する(ステップS104)。上下温度差が第2閾値以下になると、足元へ温風を送る運転を終了して、通常の暖房運転を行うように制御をする(ステップS105)。ステップS102において上下温度差が第1閾値未満である場合にも、通常の暖房運転を行うように制御をする。
図7の例では、足元へ温風を送る運転を開始するタイミングと終了するタイミングとを適切に制御することができる。なお、第1閾値と第2閾値とは同じ値として設定されてもよいし、異なる値として設定されてもよい。
【0034】
図8は、実施の形態1の空調制御システムの第1変形例の構成を示す側面図である。この第1変形例では、温度差検知手段の一例である上部温度センサ31および下部温度センサ32は、対象空間100内にいる人の近傍の位置における上下温度差を検知することが可能に構成されている。例えば、上部温度センサ31は人の頭付近の温度を検知し、下部温度センサ32は、人の足元付近の温度を検知する。上部温度センサ31および下部温度センサ32は、例えば、対象空間100内の椅子に設置される。なお、上部温度センサ31および下部温度センサ32の設置箇所は、椅子に限らず、例えば、テーブルなど、対象空間100内において人がいることが想定されるその他の箇所であってもよい。第1変形例によれば、人の近傍の位置における上下温度差を検知し、この検知結果を用いて空調制御を行うことで、対象空間100にいる人にとって快適な温熱環境をより適切に得ることが可能である。なお、
図8に示すように、上部温度センサ31および下部温度センサ32は、例えば、対象空間100内の全ての椅子に設置されていてもよい。そして、人位置検知手段の検知結果に基づいて、上部温度センサ31および下部温度センサ32のうち実際に人がいる位置の近傍に設けられているセンサの検知結果を利用してもよい。これにより、より精度の高い空調制御が可能となる。
【0035】
人の近傍の位置における上下温度差を検知する温度差検知手段は、例えば、上述したように、対象空間100内を走査可能なセンサ機器、あるいは、対象空間100に係る壁面の表面温度を検知するサーモカメラ等から構成してもよい。また、ウェアラブルデバイスあるいは各人が携帯する社員証等を、温度差検知手段として用いてもよい。ウェアラブルデバイスを用いる場合には、人の足首等に装着することで、当該足元付近の温度あるいは足部分の体温を検知してもよい。ウェアラブルデバイスによって足部分の温度を検知する場合には、この検知結果を用いて、実際に足部分の温度が低くなっている、すなわち寒さを感じている人の足元に向けて温風を送るように空調制御をしてもよい。
【0036】
図9は、実施の形態1の空調制御システムの第2変形例の制御動作を示すフローチャートである。
図9のフローチャートと
図7のフローチャートとの重複する部分については説明を簡略化し、相違点について主に説明する。
図7で示したフローチャートと同様、この第2変形例においても、暖房中に、上部温度センサ31、下部温度センサ32および表面温度センサ11等のセンサによる検知データを取得する(ステップS201)。上下温度差が第1閾値以上であるか判定し(ステップS202)、上下温度差が第1閾値以上の場合には、足元へ温風を送る運転を空気調和装置1に開始させる制御を行う(ステップS203)。ステップS203の制御処理では、風向、風温および風量等が、情報処理部60により決定され、制御部63によって空気調和装置1が制御される。
【0037】
本変形例では、足元へ温風を送る運転中、例えば運転を開始してから一定時間経過後に、対象空間100内における上下温度差が改善したかの判定を行う(ステップS204)。対象空間100内における上下温度差が改善したかの判定は、具体的には、上下温度差が予め設定された基準に達しているか否かの判定によって行う。上下温度差が改善していない場合、すなわち、運転を開始してから一定時間経過後に上下温度差が基準に達していない場合、制御内容を見直すために、ステップS203の制御処理を再び行い、風向、風温および風量等の決定処理を再度行う。具体的には、空気調和装置1による風速を上げるように制御をするとよい。風速を上げることで、温風を十分に足元まで届けることが可能となり、対象空間100内の上下温度差を小さくすることができる。
【0038】
ステップS204において上下温度差が改善した場合、運転を開始してから一定時間経過後に上下温度差が基準に達した場合には、制御内容を変更せずに足元へ温風を送る運転を継続する。運転の継続中、上下温度差が第2閾値以下であるか判定する(ステップS205)。上下温度差が第2閾値以下になると、足元へ温風を送る運転を終了して、通常の暖房運転を行うように制御をする(ステップS206)。ステップS202において上下温度差が第1閾値未満である場合にも、通常の暖房運転を行うように制御をする。
【0039】
また、
図10は、実施の形態1の空調制御システムの第3変形例の構成を示す側面図である。
図11は、実施の形態1の空調制御システムの第3変形例の構成を示す平面図である。この第3変形例において、空調制御システムは、対象空間100内の上部の空気を下部へ搬送可能な送風手段の一例として、送風機40を備える。送風機40としては、気流を発生させる任意の機器を用いることができる。図示の例では、箱状の筐体にファン等が設けられた吊り下げタイプの送風機40を示している。なお、送風機40は、例えば、壁あるいは床に設置されていてもよい。また、送風機40は、複数台設けられていてもよい。複数の機器を連携させることで、送風手段を構成してもよい。
【0040】
図示の例において、送風機40は、天井面に沿った水平方向の気流を発生する。この気流は、天井面を沿った後に壁に衝突して、壁面に沿って床の方へと向かう。送風機40は、天井面付近に滞留している暖気を、床付近へ搬送することができる。上述した第2変形例のように、本変形例においても、足元へ温風を送る運転中に対象空間100内における上下温度差が改善したかの判定を行う。上下温度差が改善していない場合、すなわち、運転を開始してから一定時間経過後に上下温度差が基準に達していない場合には、送風機40を動作させて、対象空間100内の上部の空気を下部へ搬送させる。これにより、暖気を足元まで届けることができ、対象空間100内の上下温度差を小さくすることができる。また、本実施の形態のような天井面および壁面に沿う気流を発生させる送風機40であれば、例えば、机あるいはパーテーション等の障害物の影響を受けずに、暖気を床付近へ下ろすことが可能である。なお、送風機40が発生させる気流の左右方向は、
図11に示すように、人を避けるように設定されることが望ましい。人へ直接的に気流が当たらないことで、寒気および不快感を防止することができる。
【0041】
また、
図12は、実施の形態1の空調制御システムの第4変形例の構成を示す側面図である。第4変形例において、空調制御システムは、第3変形例と同様に、送風手段の一例として、気流を発生させる送風機40を備える。空気調和装置1は、暖房運転中において、例えば、サーモオフ運転あるいはデフロスト運転を実行する場合がある。この時、空気調和装置1は、冷風あるいは常温の風を吹き出す。そこで、この第4変形例では、送風機40を、空気調和装置1から送られる冷風および常温の風が対象空間100内の人へ当たることを妨げる気流を発生可能に設置する。例えば、送風機40は、天井面と床面との間において且つ人の頭部より情報において、水平方向の気流を発生させる。この気流によって、天井面側から吹き下ろされる風が人に当たってしまうことを抑制することができる。この第4変形例によれば、対象空間100内の人が感じる寒気および不快感を防止することができる。
【0042】
図12に示す例のように送風機40が水平方向の気流を発生させる場合には、当該気流によって、対象空間100内の暖気の上昇を抑制することもできる。また、送風手段が発生させる気流の方向は、水平方向に限られるものではない。例えば、送風手段は、鉛直下方または斜め下方への気流を発生させて、当該気流をエアカーテンのように機能させてもよい。これにより、対象空間100内の特定のエリアに暖気を閉じ込めることができる。例えば、人がいる特定のエリアに暖気を閉じ込めることで、効率よく快適な温熱環境を実現することができる。
【0043】
図12に示す例では、1台の送風機40によって、冷風および常温の風が対象空間内の人へ当たることを妨げて且つ対象空間100内の暖気の上昇を抑制しているが、それぞれ別の機器によって実現してもよい。空調制御システムは、例えば送風手段として、それぞれ別の機能を有する複数の送風機40を備えていてもよい。また、異なる高さに複数の送風機40を設置してもよい
【0044】
空調制御システムが送風手段として複数の送風機40を備えている場合、対象空間100内にいる人の顔に気流が当たらないように複数の送風機のうちの少なくとも1台を駆動させるように制御を行うことが望ましい。これにより、対象空間100内の人が感じる寒気および不快感を防止することができる。
【0045】
また、本実施の形態および各変形例に係る空調制御システムは、対象空間100内にいる人の個人情報を識別可能な個人識別機能を有していてもよい。個人情報識別機能は、例えば、各個人が携帯する社員証等に情報をインプットしたり、カメラを利用したりすることで実現できる。空気調和装置1は、個人情報の識別結果に応じて制御されてもよい。具体的には、個人の好みに応じた制御を実行してもよい。例えば、冷え性の人に対しては、風速あるいは風温を上げたり、乾燥をしたくない人に対しては温風を送らなかったり、等の動作を行うとよい。個人に対応することで、快適性を向上させることができる。
【0046】
空気調和装置1によって、対象空間100内の全ての個人に対応することが難しいことがあり得る。そこで、対象空間100内を複数のエリアに区分けするように空気調和装置1を制御してもよい。例えば、対象空間100内を、温風を強く吹き出す冷え性向けエリアおよび温風を吹き出さない乾燥回避エリア等に区分けする。そして、区分けしたエリアの情報を、ディスプレイ、スピーカーあるいは携帯端末等の任意の報知手段によって報知してもよい。対象空間100内の人はこの報知結果に応じて移動することで、快適に過ごすことができる。
【0047】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0048】
(付記1)
対象空間の空気調和を行う空調手段と、
前記対象空間内における上下温度差を検知する温度差検知手段と、
前記対象空間内にいる人の位置を検知する人位置検知手段と、
前記温度差検知手段の検知結果および前記人位置検知手段の検知結果に応じて前記空調手段を制御する制御手段と、
を備え、
前記空調手段によって前記対象空間の暖房を行う際、前記制御手段は、前記対象空間内における上下温度差が閾値以上の場合、前記対象空間内にいる人の顔を避けて当該人の足元へ温風が送られるように前記空調手段を制御する空調制御システム。
(付記2)
前記空調手段によって前記対象空間の暖房を行う際、前記制御手段は、前記対象空間内における上下温度差が第1閾値以上の場合に前記対象空間内にいる人の顔を避けて当該人の足元へ温風を送る運転を前記空調手段に開始させて、当該運転中に前記対象空間内における上下温度差が第2閾値以下になると当該運転を前記空調手段に終了させる付記1に記載の空調制御システム。
(付記3)
前記温度差検知手段は、前記対象空間内における上下温度差として、前記対象空間内にいる人の近傍の位置における上下温度差を検知することを特徴する付記1または付記2に記載の空調制御システム。
(付記4)
前記制御手段は、前記対象空間内にいる人の顔を避けて当該人の足元へ温風が送る運転を前記空調手段に開始させた後、一定時間経過後に前記対象空間内における上下温度差が基準に達していない場合、前記空調手段による風速を上げる制御を行うことを特徴とする付記1から付記3の何れか1項に記載の空調制御システム。
(付記5)
前記対象空間内の上部の空気を下部へ搬送可能な送風手段を備え、
前記制御手段は、前記対象空間内にいる人の顔を避けて当該人の足元へ温風が送る運転を前記空調手段に開始させた後、一定時間経過後に前記対象空間内における上下温度差が基準に達していない場合、前記送風手段に前記対象空間内の上部の空気を下部へ搬送させることを特徴とする付記1から付記4の何れか1項に記載の空調制御システム。
(付記6)
前記空調手段から送られる冷風および常温の風が前記対象空間内の人へ当たることを妨げる気流を発生可能な送風手段を備えたことを特徴とする付記1から付記4の何れか1項に記載の空調制御システム。
(付記7)
前記対象空間内の暖気の上昇を抑制する気流を発生可能な送風手段を備えたことを特徴する付記1から付記4の何れか1項に記載の空調制御システム。
(付記8)
前記送風手段は、複数の送風機を含み、
前記制御手段は、前記対象空間内にいる人の顔に気流が当たらないように前記複数の送風機のうちの少なくとも1台を駆動させることを特徴とする付記5から付記7の何れか1項に記載の空調制御システム。
(付記9)
前記制御手段は、前記対象空間内にいる人の個人情報の識別結果に応じて前記空調手段を制御する付記1から付記8の何れか1項に記載の空調制御システム。
(付記10)
前記制御手段は、前記対象空間内にいる人の個人情報の識別結果に応じて前記対象空間内を複数のエリアに区分けするように前記空調手段を制御し、当該エリアの情報を報知手段に報知させる付記9に記載の空調制御システム。
【符号の説明】
【0049】
1 空気調和装置、 11 表面温度センサ、 20 筐体、 21 化粧パネル、 22 吸込口、 23 吹出口、 24 上下ルーバー、 25 左右ルーバー、 31 上部温度センサ、 32 下部温度センサ、 40 送風機、 60 情報処理部、 61 温度差判定部、 62 人位置判定部、 63 制御部、 131 プロセッサ、 132 メモリ、 133 専用ハードウェア、 100 対象空間