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特開2024-123463木材用接着剤組成物、木材用接着剤キット、木質材料の製造方法及び木質材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123463
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】木材用接着剤組成物、木材用接着剤キット、木質材料の製造方法及び木質材料
(51)【国際特許分類】
   C09J 161/06 20060101AFI20240905BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20240905BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
C09J161/06
C09J11/04
C09J11/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】24
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030900
(22)【出願日】2023-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】000165000
【氏名又は名称】群栄化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100106057
【弁理士】
【氏名又は名称】柳井 則子
(72)【発明者】
【氏名】石井 慧
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 大介
【テーマコード(参考)】
4J040
【Fターム(参考)】
4J040EB031
4J040HA306
4J040HB31
4J040JB02
4J040KA17
4J040KA42
4J040LA03
4J040MA08
(57)【要約】
【課題】木部破断率に優れる木質材料が得られる木材用接着剤組成物及び木質材料の製造方法の提供。
【解決手段】レゾール型フェノール樹脂と有機酸エステルと無機フィラーとを含む木材用接着剤組成物。レゾール型フェノール樹脂と有機酸エステルと無機フィラーとを含む原料を混合して木材用接着剤組成物を調製する工程と、複数の木材を、前記木材用接着剤組成物を介して重ねて積層体を得る工程と、前記積層体中の前記木材用接着剤組成物を硬化させる工程と、を有する木質材料の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レゾール型フェノール樹脂と有機酸エステルと無機フィラーとを含む木材用接着剤組成物。
【請求項2】
前記無機フィラーが粒状であり、前記無機フィラーの平均粒径が100μm以下である請求項1に記載の木材用接着剤組成物。
【請求項3】
前記無機フィラーの含有量が、前記レゾール型フェノール樹脂の固形分100質量部に対して0.1~5.0質量部である請求項1又は2に記載の木材用接着剤組成物。
【請求項4】
前記レゾール型フェノール樹脂のpHが7~14である請求項1又は2に記載の木材用接着剤組成物。
【請求項5】
前記有機酸エステルの含有量が、前記レゾール型フェノール樹脂100質量部に対して1.0~40.0質量部である請求項1又は2に記載の木材用接着剤組成物。
【請求項6】
レゾルシノールをさらに含む請求項1又は2に記載の木材用接着剤組成物。
【請求項7】
前記レゾルシノールの含有量が、前記レゾール型フェノール樹脂100質量部に対して0.5~20.0質量部である請求項6に記載の木材用接着剤組成物。
【請求項8】
レゾール型フェノール樹脂を含む第1剤が収容された第1の容器と、
有機酸エステルを含む第2剤が収容された第2の容器と、
無機フィラーを含む第3剤が収容された第3の容器と、
を備える木材用接着剤キット。
【請求項9】
レゾール型フェノール樹脂及び無機フィラーを含む第1剤が収容された第1の容器と、
有機酸エステルを含む第2剤が収容された第2の容器と、
を備える木材用接着剤キット。
【請求項10】
前記無機フィラーが粒状であり、前記無機フィラーの平均粒径が100μm以下である請求項8又は9に記載の木材用接着剤キット。
【請求項11】
前記無機フィラーの含有量が、前記レゾール型フェノール樹脂の固形分100質量部に対して0.1~5.0質量部である請求項8又は9に記載の木材用接着剤キット。
【請求項12】
前記第1剤のpHが7~14である請求項8又は9に記載の木材用接着剤キット。
【請求項13】
前記有機酸エステルの含有量が、前記レゾール型フェノール樹脂100質量部に対して1.0~40.0質量部である請求項8又は9に記載の木材用接着剤キット。
【請求項14】
前記第2剤がレゾルシノールをさらに含む請求項8又は9に記載の木材用接着剤キット。
【請求項15】
前記レゾルシノールの含有量が、前記レゾール型フェノール樹脂100質量部に対して0.5~20.0質量部である請求項14に記載の木材用接着剤キット。
【請求項16】
レゾール型フェノール樹脂と有機酸エステルと無機フィラーとを含む原料を混合して木材用接着剤組成物を調製する工程と、
複数の木材を、前記木材用接着剤組成物を介して重ねて積層体を得る工程と、
前記積層体中の前記木材用接着剤組成物を硬化させる工程と、
を有する木質材料の製造方法。
【請求項17】
前記無機フィラーが粒状であり、前記無機フィラーの平均粒径が100μm以下である請求項16に記載の木質材料の製造方法。
【請求項18】
前記無機フィラーの含有量が、前記レゾール型フェノール樹脂の固形分100質量部に対して0.1~5.0質量部である請求項16又は17に記載の木質材料の製造方法。
【請求項19】
前記レゾール型フェノール樹脂のpHが7~14である請求項16又は17に記載の木質材料の製造方法。
【請求項20】
前記有機酸エステルの含有量が、前記レゾール型フェノール樹脂100質量部に対して1.0~40.0質量部である請求項16又は17に記載の木質材料の製造方法。
【請求項21】
前記原料がレゾルシノールをさらに含む請求項16又は17に記載の木質材料の製造方法。
【請求項22】
前記レゾルシノールの含有量が、前記レゾール型フェノール樹脂100質量部に対して0.5~20.0質量部である請求項21に記載の木質材料の製造方法。
【請求項23】
複数の木材が、請求項1又は2に記載の木材用接着剤組成物の硬化物を介して接着された木質材料。
【請求項24】
集成材である請求項23に記載の木質材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木材用接着剤組成物、木材用接着剤キット、木質材料の製造方法及び木質材料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、木材同士を接着して木質材料を製造するための接着剤として、レゾール型フェノール樹脂(アルカリフェノール樹脂)を含む接着剤が知られている。
レゾール型フェノール樹脂の硬化性を高めるために、レゾール型フェノール樹脂を含む接着剤に硬化促進剤を配合することがある。硬化促進剤としては、例えば有機酸エステルが知られている(特許文献1)。
【0003】
一方、せん断強さ、木部破断率の改善のため、接着剤に木粉を配合することが提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第7076049号公報
【特許文献2】特開平5-171122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載のようなレゾール型フェノール樹脂と有機酸エステルとを含む接着剤は、硬化性に優れるものの、得られる木質材料の木部破断率が充分ではないことがある。
本発明者らが、木部破断率の改善のため、レゾール型フェノール樹脂と有機酸エステルとを含む接着剤に、特許文献2に記載のように木粉を配合したところ、木部破断率は改善せず、かえって低下することがわかった。
【0006】
本発明は、木部破断率に優れる木質材料が得られる木材用接着剤組成物、木材用接着キット及び木質材料の製造方法、並びに木部破断率に優れる木質材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は鋭意検討の結果、レゾール型フェノール樹脂と有機酸エステルと無機フィラーとを組み合わせることで上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
本発明は、以下の態様を有する。
[1]レゾール型フェノール樹脂と有機酸エステルと無機フィラーとを含む木材用接着剤組成物。
[2]前記無機フィラーが粒状であり、前記無機フィラーの平均粒径が100μm以下である[1]に記載の木材用接着剤組成物。
[3]前記無機フィラーの含有量が、前記レゾール型フェノール樹脂の固形分100質量部に対して0.1~5.0質量部である[1]又は[2]に記載の木材用接着剤組成物。
[4]前記レゾール型フェノール樹脂のpHが7~14である[1]~[3]のいずれかに記載の木材用接着剤組成物。
[5]前記有機酸エステルの含有量が、前記レゾール型フェノール樹脂100質量部に対して1.0~40.0質量部である[1]~[4]のいずれかに記載の木材用接着剤組成物。
[6]レゾルシノールをさらに含む[1]~[5]のいずれかに記載の木材用接着剤組成物。
[7]前記レゾルシノールの含有量が、前記レゾール型フェノール樹脂100質量部に対して0.5~20.0質量部である[6]に記載の木材用接着剤組成物。
[8]レゾール型フェノール樹脂を含む第1剤が収容された第1の容器と、
有機酸エステルを含む第2剤が収容された第2の容器と、
無機フィラーを含む第3剤が収容された第3の容器と、
を備える木材用接着剤キット。
[9]レゾール型フェノール樹脂及び無機フィラーを含む第1剤が収容された第1の容器と、
有機酸エステルを含む第2剤が収容された第2の容器と、
を備える木材用接着剤キット。
[10]前記無機フィラーが粒状であり、前記無機フィラーの平均粒径が100μm以下である[8]又は[9]に記載の木材用接着剤キット。
[11]前記無機フィラーの含有量が、前記レゾール型フェノール樹脂の固形分100質量部に対して0.1~5.0質量部である[8]~[10]のいずれかに記載の木材用接着剤キット。
[12]前記第1剤のpHが7~14である[8]~[11]のいずれかに記載の木材用接着剤キット。
[13]前記有機酸エステルの含有量が、前記レゾール型フェノール樹脂100質量部に対して1.0~40.0質量部である[8]~[12]のいずれかに記載の木材用接着剤キット。
[14]前記第2剤がレゾルシノールをさらに含む[8]~[13]のいずれかに記載の木材用接着剤キット。
[15]前記レゾルシノールの含有量が、前記レゾール型フェノール樹脂100質量部に対して0.5~20.0質量部である[14]に記載の木材用接着剤キット。
[16]レゾール型フェノール樹脂と有機酸エステルと無機フィラーとを含む原料を混合して木材用接着剤組成物を調製する工程と、
複数の木材を、前記木材用接着剤組成物を介して重ねて積層体を得る工程と、
前記積層体中の前記木材用接着剤組成物を硬化させる工程と、
を有する木質材料の製造方法。
[17]前記無機フィラーが粒状であり、前記無機フィラーの平均粒径が100μm以下である[16]に記載の木質材料の製造方法。
[18]前記無機フィラーの含有量が、前記レゾール型フェノール樹脂の固形分100質量部に対して0.1~5.0質量部である[16]又は[17]に記載の木質材料の製造方法。
[19]前記レゾール型フェノール樹脂のpHが7~14である[16]~[18]のいずれかに記載の木質材料の製造方法。
[20]前記有機酸エステルの含有量が、前記レゾール型フェノール樹脂100質量部に対して1.0~40.0質量部である[16]~[19]のいずれかに記載の木質材料の製造方法。
[21]前記原料がレゾルシノールをさらに含む[16]~[20]のいずれかに記載の木質材料の製造方法。
[22]前記レゾルシノールの含有量が、前記レゾール型フェノール樹脂100質量部に対して0.5~20.0質量部である[21]に記載の木質材料の製造方法。
[23]複数の木材が、[1]~[7]のいずれかに記載の木材用接着剤組成物の硬化物を介して接着された木質材料。
[24]集成材である[23]に記載の木質材料。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、木部破断率に優れる木質材料が得られる木材用接着剤組成物、木材用接着キット及び木質材料の製造方法、並びに木部破断率に優れる木質材料を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】試験例1の結果を示すグラフ(横軸:無機フィラーの平均粒径、縦軸:木部破断率)。
図2】試験例2の結果を示すグラフ(横軸:無機フィラー量、縦軸:木部破断率)。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明において、pHは、特に記載がなければ、25℃における値である。
粘度は、25℃においてE型粘度計により測定される値である。
平均粒径は、湿式法で測定される粒度分布から求められる体積平均径である。
フェノール樹脂(レゾール型フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂)の重量平均分子量(以下、「Mw」とも記す。)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(以下、「GPC」とも記す。)により測定される、ポリスチレン換算値である。
固形分は不揮発分のことである。不揮発分は、試料1.5gを135℃で1時間加熱した時の残分である。
試料の固形分濃度(不揮発分濃度)の具体的な測定方法を以下に示す。
アルミ箔製皿(内径50mm、高さ15mm)の質量C(g)を量り、そこに試料を1.5±0.1gとなるように精秤し、当該試料の具体的な質量を乾燥前の試料質量S(g)とする。このアルミ箔製皿を、予め135±1℃に保った恒温器に入れ、60±2分間の乾燥処理を行った後、デシケーター中にて放冷し、その質量C(g)を量る。その結果から、次式(1)により乾燥後の試料質量D(乾燥処理後にアルミ箔製皿上に残った試料の質量)(g)を算出し、次式(2)により固形分濃度を算出する。
D=C-C ・・・(1)
固形分濃度(質量%)=D/S×100 ・・・(2)
【0012】
〔木材用接着剤組成物〕
本発明の一態様に係る木材用接着剤組成物(以下、「本組成物」ともいう。)は、レゾール型フェノール樹脂と有機酸エステルと無機フィラーとを含む。
本組成物は、レゾルシノールをさらに含むことができる。
本組成物は、必要に応じて、レゾール型フェノール樹脂、有機酸エステル、無機フィラー及びレゾルシノール以外の他の成分をさらに含むことができる。
【0013】
<レゾール型フェノール樹脂>
レゾール型フェノール樹脂は、アルカリフェノール樹脂とも称され、典型的には、フェノール類のアルデヒド類による付加縮合体(フェノール縮合体)、アルカリ性物質及び水を含む。アルカリ性物質の少なくとも一部は通常、レゾール型フェノール樹脂の製造に用いられたアルカリ触媒である。アルカリ触媒が中和されていてもよい。
【0014】
レゾール型フェノール樹脂のpHは、7~14が好ましく、8~14がより好ましく、9~14がさらに好ましい。pHが上記下限値以上であれば、有機酸エステルと混合した時に有機酸エステルが加水分解しやすく、有機酸エステルによる硬化促進効果が得られやすい。pHが上記上限値以下であれば、有機酸エステルの加水分解により生じた有機酸による硬化促進効果が得られやすい。
【0015】
レゾール型フェノール樹脂の粘度は、10~20,000mPa・sが好ましく、100~15,000mPa・sがより好ましく、1,000~10,000mPa・sがさらに好ましい。レゾール型フェノール樹脂の粘度が上記下限値以上であれば、木材への塗布時ならびに木材接着時に接着面からの液だれがしにくく、上記上限値以下であれば、木材間の接着において塗工性により優れる。
【0016】
レゾール型フェノール樹脂の固形分濃度は、30~70質量%が好ましく、40~60質量%がより好ましく、45~55質量%がさらに好ましい。レゾール型フェノール樹脂の固形分濃度が上記範囲内であれば、レゾール型フェノール樹脂の粘度を前記した好ましい範囲内としやすい。
【0017】
フェノール類は、芳香環及び芳香環に結合した水酸基を有する化合物である。フェノール類は、フェノール樹脂のモノマーとして公知の化合物であってよく、例えば、フェノール、アルキルフェノール類(o,m,pの各クレゾール、o,m,pの各エチルフェノール、キシレノールの各異性体等)、多芳香環フェノール類(α,βの各ナフトール等)、多価フェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ピロガロール、レゾルシノール、カテコール、ハイドロキノン等)等が挙げられる。これらのフェノール類は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
フェノール類としては、レゾール型フェノール樹脂の保存安定性の点では、レゾルシノール以外のものが好ましい。レゾルシノール以外のフェノール類として実用的な物質は、フェノール、o,m,pの各クレゾール、キシレノールの各異性体である。
【0018】
アルデヒド類は、ホルミル基を有する化合物及びその多量体からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物であり、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド、グリオキザール等が挙げられる。これらのアルデヒド類は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのうち、実用的な物質は、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒドである。
【0019】
アルカリ触媒としては、付加縮合反応を進行させ得るものであれば特に制限はなく、種々のアルカリ性物質を用いることができる。具体例としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属の水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)、カルシウム、マグネシウム、バリウム等のアルカリ土類金属の酸化物及び水酸化物、炭酸ナトリウム、アンモニア等の無機アルカリ性物質;トリエチルアミン、トリメチルアミン等の第3級アミン、DBU(1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン)、DBN(1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン)等の環式アミン等の有機アルカリ性物質;等が挙げられる。これらのアルカリ触媒は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0020】
レゾール型フェノール樹脂としては、例えば、ノボラック型フェノール樹脂がレゾール化されたもの(以下、「フェノール樹脂(1)」とも記す。)が挙げられる。
フェノール樹脂(1)は、具体的には、ノボラック型フェノール樹脂とアルデヒド類とのアルカリ触媒存在下での反応(二次反応、レゾール型反応)生成物であり、二次反応レゾール型フェノール樹脂とも称される。
フェノール樹脂(1)は、フェノール類とアルデヒド類とをアルカリ触媒存在下のみで反応させて得られるレゾール型フェノール樹脂に比べ、有機酸エステルの存在下での硬化性に優れており、冷圧や比較的低温での熱圧でも充分に硬化できるため、木材用途において好適に用いられる。
【0021】
ノボラック型フェノール樹脂は、フェノール類とアルデヒド類との酸触媒存在下での反応(一次反応、ノボラック型反応)生成物である。
ノボラック型フェノール樹脂には、2以上のフェノール類の芳香環同士がアルデヒド類由来のメチレン基を介して結合したフェノール縮合体が含まれる。二次反応では、前記フェノール縮合体の芳香環にアルデヒド類が付加してメチロール基が生成し、生成したメチロール基の一部が他のフェノール縮合体と反応し、高分子量化する。そのため、フェノール樹脂(1)は、メチロール基を有し、ノボラック型フェノール樹脂に含まれるフェノール縮合体よりも高分子量のフェノール縮合体が含まれる。
【0022】
一次反応に用いられる酸触媒としては、一次反応が進行するものであれば特に制限はなく、例えば塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸類、蓚酸、酢酸、クエン酸、酒石酸、安息香酸、パラトルエンスルホン酸等の有機酸類、酢酸亜鉛、ホウ酸亜鉛等の有機酸塩類が挙げられる。これらの酸触媒は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0023】
酸触媒の使用量は、フェノール類100質量部に対して0.05~2.0質量部が好ましく、0.1~1.0質量部がより好ましい。酸触媒の使用量が上記下限値以上であれば、充分な反応速度が得られ、上記上限値以下であれば、反応をコントロールしやすい。
なお、本明細書において、好ましい上限値及び下限値は適宜組み合わせることができる。例えば酸触媒の使用量は、フェノール類100質量部に対して0.05~1.0質量部であってもよく、0.1~1.0質量部であってもよい。
【0024】
ノボラック型フェノール樹脂におけるアルデヒド類/フェノール類のモル比(以下、「F/Pモル比」とも記す。)は、0.6~0.9が好ましく、0.7~0.8がより好ましい。ノボラック型フェノール樹脂におけるF/Pモル比が上記下限値以上であれば、レゾール化反応時(二次反応時)のアルデヒド類の量を減らすことができ反応時の発熱を抑えることができ、上記上限値以下であれば、ノボラック反応時(一次反応時)のゲル化を抑制することができる。
【0025】
ノボラック型フェノール樹脂のMwは、1,000~8,000が好ましく、1,500~6,000がより好ましい。ノボラック型フェノール樹脂のMwが上記範囲内であれば、フェノール樹脂(1)のMwが後述する好ましい範囲内となりやすい。
【0026】
二次反応に用いられるアルカリ触媒としては、前記と同様のものが挙げられる。
アルカリ触媒の好ましい使用量は、アルカリ触媒/フェノール類のモル比(以下、「アルカリ/Pモル比」とも記す。)によって規定される。
アルカリ/Pモル比は0.1~1.0が好ましく、0.2~0.9がより好ましく0.5~0.8がさらに好ましい。アルカリ/Pモル比が上記下限値以上であれば、速やかにフェノール樹脂(1)を得ることができ、上記上限値以下であれば、二次反応をコントロールしやすい。
【0027】
フェノール樹脂(1)におけるF/Pモル比は、2.0~2.8が好ましく、2.0~2.6がより好ましく、2.0~2.4がさらに好ましい。
ここで、フェノール樹脂(1)におけるF/Pモル比は、一次反応で用いられたフェノール類に対する、一次反応及び二次反応で用いられたアルデヒド類の総量のモル比である。以下、このモル比を「最終的なF/Pモル比」ともいう。
最終的なF/Pモル比が上記下限値以上であれば、フェノール樹脂(1)中に充分な量のメチロール基が存在するため、木材間の接着強度がより優れる。最終的なF/Pモル比が上記上限値以下であれば、木質材料の製造時に揮散する遊離アルデヒド類の量や、木質材料から放散されるホルムアルデヒドの量が少なくなる。遊離アルデヒド類は、未反応のアルデヒド類である。
【0028】
フェノール樹脂(1)の重量平均分子量(Mw)は、2,000~10,000が好ましく、3,000~10,000がより好ましく、3,000~8,000がさらに好ましく、3,500~8,000が特に好ましく、3,500~7,000が最も好ましい。フェノール樹脂(1)の重量平均分子量が上記下限値以上であれば、木材間の接着強度がより優れる傾向があり、上記上限値以下であれば、本組成物の粘度が低くなり、塗工性が向上する傾向がある。
【0029】
フェノール樹脂(1)に含まれるアルカリ性物質の少なくとも一部は通常、二次反応に用いられたアルカリ触媒である。アルカリ性物質の一部は、二次反応後に添加されたものであってもよい。
【0030】
フェノール樹脂(1)におけるアルカリ性物質/フェノール類のモル比は、0.1~1.0が好ましく、0.2~0.9がより好ましく、0.5~0.8がさらに好ましい。
ここで、フェノール樹脂(1)におけるアルカリ性物質/フェノール類のモル比は、一次反応で用いられたフェノール類の総量に対する、二次反応で用いられたアルカリ触媒及び二次反応後に添加されたアルカリ性物質の総量のモル比である。以下、このモル比を「最終的なアルカリ性物質/フェノール類モル比」ともいう。二次反応後にアルカリ性物質が添加されていない場合、二次反応で用いられたアルカリ触媒及び二次反応後に添加されたアルカリ性物質の総量は、二次反応で用いられたアルカリ触媒の量である。
最終的なアルカリ性物質/フェノール類のモル比が上記下限値以上であれば、大幅に分子量を成長させることなく(粘度上昇することなく)、フェノール樹脂(1)中の遊離アルデヒド類の量を低減でき、上記上限値以下であれば、充分な反応速度を得ることができコントロールしやすい。
【0031】
フェノール樹脂(1)の製造は、例えば、特開2018-53131号公報に記載の方法によって実施できる。
【0032】
レゾール型フェノール樹脂として、フェノール類とアルデヒド類とのアルカリ触媒存在下での反応生成物(以下、「フェノール樹脂(2)」とも記す。)を用いてもよい。
フェノール樹脂(2)は、フェノール類とアルデヒド類とをアルカリ触媒存在下のみで反応させて得られる。フェノール類、アルデヒド類、アルカリ触媒はそれぞれ前記と同様である。この反応生成物の製造は、公知の方法により実施できる。
【0033】
フェノール類とアルデヒド類とをアルカリ触媒存在下で反応させる際のアルカリ触媒の好ましい使用量は、アルカリ触媒/フェノール類のモル比(以下、「アルカリ/Pモル比」とも記す。)によって規定される。
アルカリ/Pモル比は0.1~1.0が好ましく、0.2~0.9がより好ましく0.5~0.8がさらに好ましい。アルカリ/Pモル比が上記下限値以上であれば、速やかにフェノール樹脂(2)を得ることができ、上記上限値以下であれば、レゾール反応をコントロールしやすい。
【0034】
フェノール樹脂(2)におけるF/Pモル比は、1.5~3.5が好ましく、2.0~3.0がより好ましく、2.0~2.4がさらに好ましい。F/Pモル比が上記下限値以上であれば、フェノール樹脂(2)中に充分な量のメチロール基が存在するため、木材間の接着強度がより優れる。モル比が上記上限値以下であれば、木質材料の製造時に揮散する遊離アルデヒド類の量や、木質材料から放散されるホルムアルデヒドの量が少なくなる。
【0035】
フェノール樹脂(2)の重量平均分子量(Mw)は、1,000~10,000が好ましく、1,500~10,000がより好ましく、2,000~8,000がさらに好ましく、2,000~7,500が特に好ましく、2,000~7,000が最も好ましい。フェノール樹脂(2)の重量平均分子量が上記下限値以上であれば、木材間の接着強度がより優れる傾向があり、上記上限値以下であれば、本組成物の粘度が低くなり、塗工性が向上する傾向がある。
【0036】
<有機酸エステル>
有機酸エステルは、硬化促進剤として機能する。冷圧又は熱圧をかける際、有機酸エステルが加水分解して有機酸が生成し、本組成物のpHが低下することで、硬化反応が促進されると考えられる。
【0037】
有機酸エステルとしては、例えば、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ジメチル等の炭酸エステル;γ-ブチロラクトン、α-アセトラクトン、β-プロピオラクトン等のラクトン;トリアセチン、エチレングリコールジアセテート、トリエチレングリコールジアセテート、酢酸エチル、酪酸メチル、酪酸エチル、ギ酸エチル、サリチル酸メチル、アセト酢酸エチル等のモノカルボン酸エステル;コハク酸ジメチル、コハク酸ジエチル、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、グルタル酸ジメチル、グルタル酸ジエチル、マロン酸ジエチル等のジカルボン酸モノエステル又はジカルボン酸ジエステルが挙げられる。これらの有機酸エステルは1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0038】
有機酸エステルとしては、上記の中でも、低温硬化性がより優れる点、及び沸点が比較的高い点で、炭酸エステル、ラクトン及びポリオールのカルボン酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ジメチル、γ-ブチロラクトン、α-アセトラクトン、β-プロピオラクトン、トリアセチン及びエチレングリコールジアセテートからなる群から選ばれる少なくとも1種がより好ましい。これらの中でも、より少ない量で硬化促進効果が得られる点で、炭酸プロピレン、γ-ブチロラクトン、トリアセチン及びエチレングリコールジアセテートからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。必要に応じて、これら以外の有機酸エステルを併用してもよい。
【0039】
<無機フィラー>
本組成物が無機フィラーを含むことで、得られる木質材料の木部破断率が向上する。
無機フィラーは、樹脂への分散性の点では、粒状が好ましい。
無機フィラーが粒状である場合、無機フィラーの平均粒径は、100μm以下が好ましく、60μm以下がより好ましく、45μm以下がさらに好ましく、30μm以下がよりさらに好ましく、20μm以下が特に好ましい。平均粒径が上記上限値以下であれば、木部破断率がより高くなる傾向がある。無機フィラーの平均粒径の下限は特に限定されないが、例えば0.1μm以上であってよく、1μm以上であってよい。
【0040】
無機フィラーの材質に特に制限は無く、水酸化物、酸化物、塩化物、炭化物、窒化物、ハロゲン化物、オキソ酸、オキソ酸塩の無機物から選定される。例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、チタン、クロム、マンガン、鉄、銅、銀、亜鉛、錫及びアルミニウムからなる群より選ばれる金属の水酸化物、酸化物、塩化物、炭化物、窒化物、ハロゲン化物、ケイ酸塩、炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、アルミン酸塩、ホウ酸塩及びリン酸塩等が挙げられる。具体例としては、炭酸カルシウム、炭酸バリウム等のアルカリ土類金属炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウム等のアルカリ土類金属硫酸塩、二酸化ケイ素(シリカ)等が挙げられる。無機フィラーは、上記無機物を1種類以上含む鉱物、セラミック、粘土、合金等であってもよく、例えばカオリン、タルク、ゼオライト、フローライト、アパタイト等が挙げられる。これらの無機フィラーは1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、樹脂への分散性の点から、シリカが好ましい。シリカとしては、湿式法シリカ、乾式法シリカ等が挙げられる。シリカは、親水化処理等の表面処理が施されていてもよい。
【0041】
無機フィラーは、レゾール型フェノール樹脂への親和性が良好であることが好ましい。具体的には、レゾール型フェノール樹脂100質量部に対し、無機フィラー1.0質量部を添加し、200rpmにて1分間攪拌したときに、無機フィラーがレゾール型フェノール樹脂の液面に滞留又は凝集していない状態であることが好ましく、無機フィラーがレゾール型フェノール樹脂に均一に分散している状態であることがより好ましい。無機フィラーのレゾール型フェノール樹脂への親和性が良好であれば、木部破断率の向上効果が発現しやすい。
【0042】
<その他の成分>
他の成分としては、例えば糖質、その他の各種の添加剤等が挙げられる。
【0043】
本組成物が糖質、特に還元糖を含むと、木質材料の製造時に揮散する遊離アルデヒド類の量を低減したり、木質材料から放散されるホルムアルデヒドの量を低減したり、硬化物の色調を淡色化したりすることができる。
還元糖としては、特に限定されず、例えば単糖、オリゴ糖、デキストリン等であってよい。ここで、「オリゴ糖」は2以上10以下の単糖が結合したものとし、「デキストリン」は一般的なマルトデキストリンの概念も含み、DEが20以下の糖組成物をいう。
単糖としては、例えばグルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、リボース、キシロース等が挙げられる。
オリゴ糖としては、例えばマルトース、ラクトース、イソマルトース等の二糖;マルトトリオース等の三糖;四糖以上のオリゴ糖(例えばマルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、マンノオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖等)等が挙げられる。
これらの還元糖はいずれか1種を単独で用いても2種以上併用してもよい。
【0044】
添加剤としては、木材用接着剤組成物の構成成分として公知の成分を適宜用いることができる。添加剤の例としては、有機酸エステル以外の他の硬化促進剤、増粘剤、無機フィラー以外の他の増量剤、粘度調整剤等が挙げられる。
他の硬化促進剤としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属炭酸塩が挙げられる。
増粘剤としては、例えば、小麦粉等の多糖類が挙げられる。
他の増量剤としては、例えば木粉、胡桃粉、リグニン、タンニン、血粉等の有機フィラーが挙げられる。
粘度調整剤としては、例えば、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、へキシレングリコール、フェノキシエタノール等の高沸点の水溶性の有機溶剤が挙げられる。
【0045】
<本組成物の組成>
本組成物において、有機酸エステルの含有量は、レゾール型フェノール樹脂100質量部に対して1.0~40.0質量部が好ましく、1.0~30.0質量部がより好ましい。有機酸エステルの含有量が上記下限値以上であれば、本組成物の硬化性、木材間の接着強度がより優れる傾向がある。有機酸エステルの含有量が上記上限値以下であれば、木材間の接着強度がより優れる。
【0046】
無機フィラーの含有量は、レゾール型フェノール樹脂の固形分100質量部に対して0.1~5.0質量部が好ましく、0.5~4.0質量部がより好ましく、1.0~3.0質量部がさらに好ましく、1.5~2.5質量部が特に好ましい。無機フィラーの含有量が上記範囲内であれば、木部破断率がより優れる傾向がある。
【0047】
レゾルシノールの含有量は、レゾール型フェノール樹脂100質量部に対して0.5~20.0質量部が好ましく、1.0~15.0質量部がより好ましく、2.0~10.0質量部がさらに好ましく、3.0~9.0質量部がよりさらに好ましく、3.0~8.0質量部が特に好ましい。レゾルシノールの含有量が上記範囲内であれば、本組成物の硬化性、木材間の接着強度がより優れる傾向がある。
【0048】
本組成物の固形分100質量%に対するレゾール型フェノール樹脂の固形分と有機酸エステルと無機フィラーとの合計の割合は、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、100質量%であってもよい。
本組成物がレゾルシノールを含む場合、本組成物の固形分100質量%に対するレゾール型フェノール樹脂の固形分と有機酸エステルと無機フィラーとレゾルシノールとの合計の割合は、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、100質量%であってもよい。
【0049】
本組成物の製造直後(全成分の混合直後)のpHは、7~14が好ましく、8~14がより好ましい。pHが上記下限値以上であれば、木材への浸透性が良好で、接着強さがより優れ、上記上限値以下であれば、硬化時間が十分速く、やはり接着強さがより優れる。
【0050】
本組成物の粘度は、10~20,000mPa・sが好ましく、100~15,000mPa・sがより好ましい。本組成物の粘度が上記下限値以上であれば、木材を仮接着するときに接着強度を充分に維持でき、上記上限値以下であれば、本組成物の塗工性がより優れる。
【0051】
本組成物の固形分濃度は、20~100質量%が好ましく、30~90質量%がより好ましく、40~70質量%がさらに好ましい。本組成物の固形分濃度が上記範囲内であれば、本組成物の粘度を前記した好ましい範囲内としやすい。
【0052】
<本組成物の調製方法>
本組成物は、レゾール型フェノール樹脂と有機酸エステルと無機フィラーとを含む原料を混合することにより調製できる。原料は、レゾール型フェノール樹脂、有機酸エステル及び無機フィラー以外に、必要に応じて、追加の水やアルカリ性物質、レゾルシノール、他の成分をさらに含んでいてもよい。
各原料の混合順序は特に限定されないが、レゾール型フェノール樹脂と有機酸エステルとが混合されると、レゾール型フェノール樹脂のゲル化による増粘が進行しやすくなるため、レゾール型フェノール樹脂と有機酸エステルとは、木質材料の製造直前に混合することが好ましい。同様に、レゾール型フェノール樹脂とレゾルシノールとが混合されると、レゾール型フェノール樹脂のゲル化による増粘が進行しやすくなるため、レゾール型フェノール樹脂とレゾルシノールとは、木質材料の製造直前に混合することが好ましい。
本組成物がレゾルシノールを含む場合、有機酸エステル及びレゾルシノールは、個別にレゾール型フェノール樹脂と混合されてもよく、レゾール型フェノール樹脂との混合前に予め混合されてもよい。木質材料の製造工程がより簡便で済むという点では、予め有機酸エステルとレゾルシノールとが混合されていることが好ましい。
レゾール型フェノール樹脂と、有機酸エステル及びレゾルシノールの少なくとも一方とが混合されてから本組成物を木材に塗布するまでの時間は、1時間以下であることが好ましい。
本組成物の調製方法としては、後述するキット(1)の第1剤と第2剤と第3剤とを混合する方法、又は後述するキット(2)の第1剤と第2剤とを混合する方法が好適である。
【0053】
本組成物は、木材用であり、木材同士を接着するために用いられる。木材については後で詳しく説明する。2以上の木材を本組成物により接着することで、木質材料が得られる。本組成物は、木質材料の製造用ともいえる。
【0054】
本組成物にあっては、レゾール型フェノール樹脂と有機酸エステルと無機フィラーとを含むため、木材同士を接着する接着性能に優れており、本組成物を用いて集成材等の木質材料を製造したときに、木部破断率に優れる木質材料が得られる。
無機フィラーにより木部破断率が向上する理由としては、接着面への塗布性の向上と表面への密着性の向上によることが考えられる。
【0055】
〔キット(1)〕
本発明の一態様に係る木材用接着剤キット(以下、「キット(1)」とも記す。)は、第1剤が収容された第1の容器と、第2剤が収容された第2の容器と、第3剤が収容された第3の容器と、を備える。
【0056】
キット(1)において、第1剤は、レゾール型フェノール樹脂を含む。第1剤は、有機酸エステル及びレゾルシノールを含まないことが好ましい。第1剤は、無機フィラー、他の成分のいずれか1以上をさらに含んでいてもよい。
レゾール型フェノール樹脂、他の成分はそれぞれ前記のとおりであり、好ましい態様も同様である。
第1剤のpHは、7~14が好ましく、8~14がより好ましく、9~14がさらに好ましい。
第1剤の粘度は、10~20,000mPa・sが好ましく、100~15,000mPa・sがより好ましく、1000~10,000mPa・sがさらに好ましい。
第1剤の固形分濃度は、30~70質量%が好ましく、40~60質量%がより好ましく、45~55質量%がさらに好ましい。
【0057】
第2剤は、有機酸エステルを含む。第2剤は、レゾール型フェノール樹脂を含まないことが好ましい。第2剤は、無機フィラー、レゾルシノール、他の成分のいずれか1以上をさらに含んでいてもよい。
有機酸エステルは前記のとおりであり、好ましい態様も同様である。
【0058】
第3剤は、無機フィラーを含む。第3剤は、典型的には、レゾール型フェノール樹脂、有機酸エステル及びレゾルシノールを含まない。第3剤は、他の成分をさらに含んでいてもよい。
無機フィラーは前記のとおりであり、好ましい態様も同様である。
【0059】
キット(1)中のレゾール型フェノール樹脂100質量部に対する有機酸エステルの好ましい含有量(質量部)は、本組成物におけるレゾール型フェノール樹脂100質量部に対する有機酸エステルの好ましい含有量と同様である。
【0060】
キット(1)中のレゾール型フェノール樹脂の固形分100質量部に対する無機フィラーの好ましい含有量(質量部)は、本組成物におけるレゾール型フェノール樹脂の固形分100質量部に対する無機フィラーの好ましい含有量と同様である。
【0061】
キット(1)中のレゾール型フェノール樹脂100質量部に対するレゾルシノールの好ましい含有量(質量部)は、本組成物におけるレゾール型フェノール樹脂100質量部に対するレゾルシノールの好ましい含有量と同様である。
【0062】
第1剤の固形分と第2剤の固形分と第3剤の固形分との合計100質量%に対するレゾール型フェノール樹脂の固形分と有機酸エステルと無機フィラーとの合計の好ましい割合(質量%)は、本組成物の固形分100質量%に対するレゾール型フェノール樹脂の固形分と有機酸エステルと無機フィラーとの合計の好ましい割合と同様である。
第2剤がレゾルシノールを含む場合、第1剤の固形分と第2剤の固形分と第3剤の固形分との合計100質量%に対するレゾール型フェノール樹脂の固形分と有機酸エステルと無機フィラーとレゾルシノールとの合計の好ましい割合(質量%)は、本組成物の固形分100質量%に対するレゾール型フェノール樹脂の固形分と有機酸エステルと無機フィラーとレゾルシノールとの合計の好ましい割合と同様である。
【0063】
キット(1)は、第1剤と第2剤と第3剤とが混合されて本組成物とされ、木材同士を接着するために用いられる。このとき、第1剤と第2剤と第3剤とを一括混合してもよく、予め第1剤と第3剤とを混合し、得られた混合物と第2剤とを混合してもよい。
【0064】
〔キット(2)〕
本発明の他の一態様に係る木材用接着剤キット(以下、「キット(2)」とも記す。)は、第1剤が収容された第1の容器と、第2剤が収容された第2の容器と、を備える。
【0065】
キット(2)において、第1剤は、レゾール型フェノール樹脂及び無機フィラーを含む。第1剤は、有機酸エステル及びレゾルシノールを含まないことが好ましい。第1剤は、他の成分をさらに含んでいてもよい。
レゾール型フェノール樹脂、無機フィラー、他の成分はそれぞれ前記のとおりであり、好ましい態様も同様である。
【0066】
第2剤は、有機酸エステルを含む。第2剤は、レゾール型フェノール樹脂を含まないことが好ましい。第2剤は、無機フィラー、レゾルシノール、他の成分のいずれか1以上をさらに含んでいてもよい。
有機酸エステルは前記のとおりであり、好ましい態様も同様である。
【0067】
キット(2)中のレゾール型フェノール樹脂100質量部に対する有機酸エステルの好ましい含有量(質量部)は、本組成物におけるレゾール型フェノール樹脂100質量部に対する有機酸エステルの好ましい含有量と同様である。
【0068】
キット(2)中のレゾール型フェノール樹脂の固形分100質量部に対する無機フィラーの好ましい含有量(質量部)は、本組成物におけるレゾール型フェノール樹脂の固形分100質量部に対する無機フィラーの好ましい含有量と同様である。
【0069】
キット(2)中のレゾール型フェノール樹脂100質量部に対するレゾルシノールの好ましい含有量(質量部)は、本組成物におけるレゾール型フェノール樹脂100質量部に対するレゾルシノールの好ましい含有量と同様である。
【0070】
第1剤の固形分と第2剤の固形分との合計100質量%に対するレゾール型フェノール樹脂の固形分と有機酸エステルと無機フィラーとの合計の好ましい割合(質量%)は、本組成物の固形分100質量%に対するレゾール型フェノール樹脂の固形分と有機酸エステルと無機フィラーとの合計の好ましい割合と同様である。
第2剤がレゾルシノールを含む場合、第1剤の固形分と第2剤の固形分との合計100質量%に対するレゾール型フェノール樹脂の固形分と有機酸エステルと無機フィラーとレゾルシノールとの合計の好ましい割合(質量%)は、本組成物の固形分100質量%に対するレゾール型フェノール樹脂の固形分と有機酸エステルと無機フィラーとレゾルシノールとの合計の好ましい割合と同様である。
【0071】
キット(2)は、第1剤と第2剤とが混合されて本組成物とされ、木材同士を接着するために用いられる。
【0072】
〔木質材料〕
本発明の一態様に係る木質材料は、2以上の木材が、本組成物の硬化物を介して接着されたものである。
【0073】
木材としては、無垢材、木質材料等が挙げられ、典型的には無垢材である。
無垢材としては、カバ材、桐材、杉材、桧材、松材、ヒバ材、サワラ材、パイン材等が挙げられる。無垢材の形態は、製材、ひき板等であってよい。
木質材料としては、合板、集成材、CLT(直交集成材)、LVL(単板積層材)、ブロックボード、べニア、木質ボード等が挙げられる。木質ボードとしては、IB(インシュレーション・ボード)、MDF(中密度繊維板)、HB(ハード・ボード)、パーティクルボード、OSB(オリエンテッド・ストランド・ボード)等が挙げられる。
【0074】
本態様の木質材料としては、木材の例として挙げた木質材料と同様のものが挙げられる。本態様の木質材料としては、合板、集成材、CLT又はLVLが好ましく、集成材、CLTがより好ましい。生産ラインへの適合性の点から、集成材が特に好ましい。
合板の場合、複数の木製単板が本組成物の硬化物を介して接着される。木質単板としては、特に限定されず、合板用の木質単板として公知のものを使用できる。例えば、スギ、カラマツ等が木質単板の材料として好適に用いられる。合板を構成する木製単板の数は、特に限定されず、例えば2~20枚とすることができる。
集成材の場合、複数のラミナが本組成物の硬化物を介して接着される。ラミナは一般に、ひき板が裁断されたものが使用される。集成材を構成するラミナの数は、特に限定されず、例えば2~30枚とすることができる。
【0075】
〔木質材料の製造方法〕
本態様の一態様に係る木質材料の製造方法は、
レゾール型フェノール樹脂と有機酸エステルと無機フィラーとを含む原料を混合して木材用接着剤組成物を調製する工程と、
複数の木材を、前記木材用接着剤組成物を介して重ねて積層体を得る工程と、
前記積層体中の前記木材用接着剤組成物を硬化させる工程と
を有する。
以下、木質材料として合板又は集成材を製造する場合を例に挙げて、本態様の製造方法を説明する。ただし、本態様の製造方法は以下の例に限定されるものではない。
【0076】
<合板の製造方法>
この例の合板の製造方法は、レゾール型フェノール樹脂と有機酸エステルと無機フィラーとを混合して本組成物を調製する工程(組成物調製工程)と、
複数の単板を、本組成物を介して重ねて積層体を得る工程(積層工程)と、
得られた積層体中の本組成物を硬化させる工程(接着工程)と、
を有する。
硬化工程の後、必要に応じて、作製された合板を積み重ね一定期間養生してもよい。
【0077】
組成物調製工程は、前記した本組成物の調製方法と同様である。
【0078】
積層工程では、合板において重なり合う単板の少なくとも一方の面に本組成物を塗布し、複数の単板同士を重ねる。本組成物を塗布する方法及び単板を重ねる方法はそれぞれ、公知の合板の製造において用いられる方法と同様であってよい。
本組成物の塗布量としては、例えば、単板の積層面の単位面積当たりの質量として、100~350g/mが挙げられる。
組成物調製工程においてレゾール型フェノール樹脂と有機酸エステル及びレゾルシノールの少なくとも一方とが混合されてから本組成物を単板に塗布するまでの時間は、前記したように、1時間以下であることが好ましい。
【0079】
接着工程において、積層体中の本組成物を硬化させる方法としては、例えば、積層体に冷圧のみ、熱圧のみ、又は冷圧及び熱圧をかける方法が挙げられる。冷圧及び熱圧をかける場合は、典型的には、冷圧をかけた後に熱圧をかける。
冷圧条件、熱圧条件はそれぞれ、本組成物を硬化できればよい。
冷圧条件としては、例えば、温度:室温(25℃)、圧力:0.1~2.0MPa、冷圧をかける時間:10~360分間の条件が挙げられる。
熱圧条件としては、エネルギーコストを考慮すると、温度は、300℃以下が好ましく、200℃以下がより好ましく、生産性を考慮すると、80℃以上が好ましく、100
℃以上がより好ましい。圧力は、例えば0.1~2.0MPaである。熱圧をかける時間は、例えば、熱圧をかける方向における熱圧後の厚さ1mmあたり10~100秒間である。
接着工程にて冷圧をかけた後に熱圧をかける場合、積層工程にて本組成物を単板に塗布した後、接着工程にて冷圧をかけるまでの間の時間、いわゆる開放堆積時間(オープンアッセンブリータイム)は、40分間以内が好ましい。冷圧をかけた後、熱圧をかけるまでの間の時間、いわゆる閉鎖堆積時間(クローズドアッセンブリータイム)は、3時間以内が好ましい。
冷圧又は熱圧をかけた後、必要に応じて、荷重をかける等の処理を施してもよい。
【0080】
<集成材の製造方法>
この例の集成材の製造方法は、レゾール型フェノール樹脂と有機酸エステルと無機フィラーとを含む原料を混合して本組成物を調製する工程(組成物調製工程)と、
複数のラミナを、本組成物を介して重ねて積層体を得る工程(積層工程)と、
得られた積層体を圧締して本組成物を硬化させる工程(接着工程)と、
を有する。
必要に応じて、作製された集成材を積み重ね一定時間、一定温度で養生してもよい。
【0081】
組成物調製工程は、前記した本組成物の調製方法と同様である。
【0082】
積層工程では、例えば、複数のラミナのうち、隣り合う又は重なり合うラミナの少なくとも一方の積層面に本組成物を塗布し、複数の木材同士を重ねる。本組成物を塗布する方法及び木材を重ねる方法はそれぞれ、公知の集成材の製造において用いられる方法と同様であってよい。
本組成物の塗布量としては、例えば、ラミナの積層面の単位面積当たりの質量として、100~350g/mが挙げられる。
組成物調製工程においてレゾール型フェノール樹脂と有機酸エステル及びレゾルシノールの少なくとも一方が混合されてから本組成物をラミナに塗布するまでの時間は、前記したように、1時間以下であることが好ましい。
【0083】
接着工程において、積層体中の本組成物を硬化させる方法としては、例えば、積層体に冷圧のみ、熱圧のみ、又は冷圧及び熱圧をかける方法が挙げられる。冷圧及び熱圧をかける場合は、典型的には、冷圧をかけた後に熱圧をかける。
冷圧条件、熱圧条件はそれぞれ、本組成物を硬化できればよい。
冷圧条件としては、例えば、温度:室温(25℃)、圧力:0.1~2.0MPa、冷圧をかける時間:10~360分間の条件が挙げられる。
熱圧条件としては、エネルギーコストを考慮すると、温度は、300℃以下が好ましく、200℃以下がより好ましく、生産性を考慮すると、80℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましい。圧力は、例えば0.1~2.0MPaである。
本組成物を塗布した後、冷圧又は熱圧をかけるまでの時間、いわゆる開放堆積時間(オープンアッセンブリータイム)は、40分間以内が好ましい。
【実施例0084】
以下に、本発明を実施例によってさらに詳しく説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。以下の各例において「部」、「%」は、それぞれ、特に限定のない場合は「質量部」、「質量%」を示す。
【0085】
<測定方法>
(平均粒径)
無機フィラーの粒度分布を、レーザ回折・散乱式粒子径分布測定装置(Microtrac BEL社製、MT3000II)を用い、湿式法で測定し、体積平均径を平均粒径とした。
【0086】
(GPC測定による重量平均分子量)
試料(フェノール樹脂)2gを2gの純水と10gのTHF(テトラヒドロフラン)で希釈し、pHを確認しながら、1N塩酸水溶液でpH4.0にした。THF層と水層に分離させ、THF層を5倍希釈してGPC測定用サンプルとした。
得られたGPC測定用サンプルについて、以下の測定条件でGPC測定を行い、その結果からポリスチレン換算の重量平均分子量を確認した。
カラム:TSKgel G3000HXL 7.8×300mm×1本(東ソー社製)、TSKgel G2000HXL 7.8×300mm×2本(東ソー社製)。
カラム温度:40℃。
検出器:RI(示差屈折率検出器)。
溶媒:THF(テトラヒドロフラン)。
流量:0.8mL/min。
【0087】
(粘度)
粘度は、25℃においてE型粘度計により測定した。
【0088】
(固形分濃度)
アルミ箔製皿(内径50mm、高さ15mm)の質量C(g)を量り、そこに試料を1.5±0.1gとなるように精秤し、当該試料の具体的な質量を乾燥前の試料質量S(g)とした。このアルミ箔製皿を、予め135±1℃に保った恒温器に入れ、60±2分間の乾燥処理を行った後、デシケーター中にて放冷し、その質量C(g)を量った。その結果から、次式(1)により乾燥後の試料質量D(乾燥処理後にアルミ箔製皿上に残った試料の質量)(g)を算出し、次式(2)により固形分濃度を算出した。
D=C-C ・・・(1)
固形分濃度(質量%)=D/S×100 ・・・(2)
【0089】
<製造例1:レゾール型フェノール樹脂の製造>
コンデンサー、温度計、撹拌装置を備えた反応装置にフェノール376.0部、50%ホルマリン192.0部(F/Pモル比:0.80)、30%硫酸1.25部、水26.2部を仕込み、還流条件下で3時間反応させた。その後、80℃以下まで冷却し、48%水酸化ナトリウム水溶液116.7部、50%ホルマリン384.0部(最終的なF/Pモル比:2.30)、水52.4部を添加し、65℃で、粘度が7,500mPa・sとなるまで反応させた後、ただちに50℃以下まで冷却した。反応液が50℃以下になったときに48%水酸化ナトリウム水溶液116.7部を添加して、固形分50%のレゾール型フェノール樹脂を得た。このレゾール型フェノール樹脂のpHは12.1、重量平均分子量は3300、粘度は1600mPa・sであった。
【0090】
<試験例1>
本試験は、無機フィラーが木部破断率に与える影響を評価する目的で実施した。
【0091】
(集成材の作製)
製造例1で得たレゾール型フェノール樹脂をそのまま比較例1の第1剤とした。
製造例1で得たレゾール型フェノール樹脂の固形分100部に対して2.0部の割合で、表1に示す無機フィラーを添加し、混合して実施例1~8の第1剤を得た。
各例の第1剤100部に対し、γ-ブチロラクトン1.4部、エチレングリコールジアセテート12.6部、レゾルシノール6.0部を添加し、1分間攪拌して比較例1、実施例1~9の木材用接着剤組成物を得た。
上記木材用接着剤組成物の調製後ただちに(概ね1分間以内)、2枚の木材(幅2.3cm×長さ15cm×厚さ1cm、広葉樹(構造用集成材の日本農林規格(JAS)のブロックせん断試験における樹種区分番号1に該当))それぞれの一方面に1.1gずつ上記木材用接着剤組成物を塗布し、塗布面同士を上下に重ね合わせ、150℃、1.8MPaで4分間熱圧をかけて、2Ply、厚さ2cmの集成材を得た。
【0092】
(評価)
集成材の長さ方向の両端から5mmまでの部分を除き、残りの部分から、長さ3cmのブロックせん断試験用テストピースを4枚裁断した。各テストピースについて、JASに準拠してブロックせん断試験を行い、せん断強さ(MPa)及び木部破断率(%)を求めた。
なお、せん断強さ及び木部破断率はともに、接着性能の指標であるが、通常、木部破断率の方が重要視される。
【0093】
(結果)
評価結果を表1及び図1に示す。表1に無機フィラーの平均粒径を併記した。図1は、無機フィラーの平均粒径を横軸に、木部破断率を縦軸にとったグラフである。
表1及び図1に示すように、無機フィラーを含む実施例1~8の木材用接着剤組成物は、無機フィラーを含まない比較例1に比べ、木部破断率が高く、接着性能に優れていた。
実施例1~8のなかでは、無機フィラーの平均粒径が小さいほど、木部破断率が高くなる傾向があった。
【0094】
【表1】
【0095】
表1中、シリカA~Cはそれぞれ以下のものを使用した。
シリカA:東ソー・シリカ株式会社製「ニップシール N-300A」、湿式法シリカ。
シリカB:東ソー・シリカ株式会社製「ニップシール L-300」、湿式法シリカ。
シリカC:日本アエロジル株式会社製「アエロジル 130」、乾式法シリカ。
【0096】
<試験例2>
本試験は、無機フィラー量が木部破断率に与える影響を評価する目的で実施した。
【0097】
(集成材の作製及び評価)
レゾール型フェノール樹脂の固形分100部に対する無機フィラー(シリカB)の添加量を1.0部又は4.0部にした以外は実施例2と同様にして、実施例9、10の木材用接着剤組成物を調製し、集成材を得て、評価を行った。
【0098】
(結果)
結果を表2及び図2に示す。表2に比較例1、実施例2の結果を併記した。表2及び図2中、無機フィラー量は、レゾール型フェノール樹脂の固形分100部に対する無機フィラーの割合(部)である。
表2及び図2に示すように、無機フィラー量が2.0部に近くなるにつれて木部破断率が高くなる傾向があった。
【0099】
【表2】
【0100】
<試験例3>
本試験は、フィラー種が木部破断率に与える影響を評価する目的で実施した。
【0101】
(集成材の作製及び評価)
無機フィラー(シリカB)の代わりに、木粉、タンニン(ミモサタンニン)又はクルミ粉を用いた以外は実施例2と同様にして、比較例2~4の木材用接着剤組成物を調製し、集成材を得て、評価を行った。木粉、ミモサタンニン、クルミ粉は予め、ふるいで粒径50μm以下に調整したものを使用した。
【0102】
(結果)
結果を表3に示す。表3に比較例1の結果を併記した。
表3に示すように、無機フィラーの代わりに有機フィラーを添加した比較例2~4では、比較例1よりも木部破断率が低くなった。
【0103】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明によれば、木部破断率に優れる木質材料が得られる木材用接着剤組成物、木材用接着キット及び木質材料の製造方法、並びに木部破断率に優れる木質材料を提供できる。
図1
図2