(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123470
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】タイヤ成形用金型の検査装置
(51)【国際特許分類】
B29C 33/02 20060101AFI20240905BHJP
B29C 33/70 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
B29C33/02
B29C33/70
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030911
(22)【出願日】2023-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】末永 昭彦
【テーマコード(参考)】
4F202
【Fターム(参考)】
4F202AA45
4F202AH20
4F202AM14
4F202CA21
4F202CP03
4F202CS01
4F202CT10
4F202CU02
4F202CU07
(57)【要約】
【課題】異常があるベントプラグを簡易かつ確実に検出することが可能なタイヤ成形用金型の検査装置を提供する。
【解決手段】検査装置10は、ベントホール51bに配置されたベントプラグ60を有するタイヤ成形用金型50の検査装置である。検査装置10は、金型50が載置される載置部22を有する架台20と、載置部22に振動を与える加振装置30と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベントホールに配置されたベントプラグを有するタイヤ成形用金型の検査装置であって、
前記タイヤ成形用金型が載置される載置部を有する架台と、
前記載置部に振動を与える加振装置と、
を備える、タイヤ成形用金型の検査装置。
【請求項2】
前記架台が、
前記載置部を支持する基台部と、
前記載置部と前記基台部との間に配置されるバネと、を含んで構成され、
前記載置部が、前記バネを介して前記基台部により支持される、請求項1記載のタイヤ成形用金型の検査装置。
【請求項3】
前記載置部が、
前記載置部における前記タイヤ成形用金型の載置領域を側方より囲む係止部をさらに備える、請求項1又は請求項2に記載のタイヤ成形用金型の検査装置。
【請求項4】
前記載置部が、
前記載置部における前記タイヤ成形用金型の載置領域に敷設されたすべり止め部をさらに備える、請求項1又は請求項2に記載のタイヤ成形用金型の検査装置。
【請求項5】
前記載置部が、
前記ベントプラグを吸着可能な吸着部をさらに備える、請求項1又は請求項2に記載のタイヤ成形用金型の検査装置。
【請求項6】
前記加振装置が、
前記載置部に与える振動の振動数を調整するコントローラをさらに備える、請求項1又は請求項2に記載のタイヤ成形用金型の検査装置。
【請求項7】
前記加振装置が、
前記載置部への振動の付与期間を設定するタイマーをさらに備える、請求項1又は請求項2に記載のタイヤ成形用金型の検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ成形用金型の検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ベントホールに配置されたベントプラグを有するタイヤ成形用金型が知られている。ベントプラグは、ベントホールへのゴムの流入を防止し、タイヤ表面にスピューが発生するのを抑制する。このようなタイヤ成形用金型は、定期的にベントプラグの点検を実施し、異常があるベントプラグを交換する必要がある。ベントプラグの点検に関する技術としては、例えば、特許文献1に開示されたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、異常があるベントプラグを簡易かつ確実に検出することが可能なタイヤ成形用金型の検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)本発明に係るタイヤ成形用金型の検査装置は、ベントホールに配置されたベントプラグを有するタイヤ成形用金型の検査装置であって、前記タイヤ成形用金型が載置される載置部を有する架台と、前記載置部に振動を与える加振装置と、を備える。
【0006】
上記構成のタイヤ成形用金型の検査装置は、載置部に載置した金型に対して加振装置によって振動を加えることで、異常があるベントプラグをベントホールから脱落させることができる。このような検査装置によれば、ベントプラグの点検を1箇所ずつ行う必要がないため、短時間で簡易に行うことができる。さらに、このような検査装置によれば、作業者のスキルに関わらず的確に異常があるベントプラグを検出することができるため、異常があるベントプラグの検出精度を確保することができる。よって、上記構成の検査装置によれば、異常があるベントプラグを簡易かつ確実に検出することができる。
【0007】
(2)本発明の前記(1)の態様のタイヤ成形用金型の検査装置は、前記架台が、前記載置部を支持する基台部と、前記載置部と前記基台部との間に配置されるバネと、を含んで構成され、前記載置部が、前記バネを介して前記基台部により支持されると好ましい。
上記構成のタイヤ成形用金型の検査装置は、載置部を振動させることが可能な架台を簡易に構成することができる。よって、上記構成の検査装置によれば、異常があるベントプラグを簡易かつ確実に検出することができる。
【0008】
(3)本発明の前記(1)又は(2)の態様のタイヤ成形用金型の検査装置は、前記載置部が、前記載置部における前記タイヤ成形用金型の載置領域を側方より囲む係止部をさらに備えると好ましい。
上記構成のタイヤ成形用金型の検査装置は、前記係止部によって、載置部に載置した金型が、検査中の振動でずれて架台から落下することが防止できる。よって、上記構成の検査装置によれば、検査による金型の傷つきを抑制することができる。
【0009】
(4)本発明の前記(1)~(3)の何れかの態様のタイヤ成形用金型の検査装置は、前記載置部が、前記載置部における前記タイヤ成形用金型の載置領域に敷設されたすべり止め部をさらに備えると好ましい。
上記構成のタイヤ成形用金型の検査装置によれば、前記すべり止め部によって、載置部上のセグメントの移動を抑制することができ、これにより、載置部からの落下や載置部との接触・擦れによるセグメントの傷つきを抑制することができる。よって、上記構成の検査装置によれば、検査による金型の傷つきを抑制することができる。
【0010】
(5)本発明の前記(1)~(4)の何れかの態様のタイヤ成形用金型の検査装置は、前記載置部が、前記ベントプラグを吸着可能な吸着部をさらに備えると好ましい。
上記構成のタイヤ成形用金型の検査装置によれば、前記吸着部によって、金型から載置部に脱落したベントプラグを吸着することができる。これにより、金型から脱落したベントプラグが、検査中の振動で飛散するのを防止することができる。
【0011】
(6)本発明の前記(1)~(5)の何れかの態様のタイヤ成形用金型の検査装置は、前記加振装置が、前記載置部に与える振動の振動数を調整するコントローラをさらに備えると好ましい。
上記構成のタイヤ成形用金型の検査装置によれば、金型及びベントプラグの状態に合わせて、金型に付与する振動を調整することができる。これにより、異常があるベントプラグを金型から確実に脱落させることができ、検査精度を確保することができる。
【0012】
(7)本発明の前記(1)~(6)の何れかの態様のタイヤ成形用金型の検査装置は、前記加振装置が、前記載置部への振動の付与期間を設定するタイマーをさらに備えると好ましい。
上記構成のタイヤ成形用金型の検査装置によれば、金型及びベントプラグの状態に合わせて、金型に振動を付与する期間を変えることができる。これにより、異常があるベントプラグを金型から確実に脱落させることができ、検査精度を確保することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、タイヤ成形用金型について、異常があるベントプラグを簡易かつ確実に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る検査装置の全体構成を示す斜視模式図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に係る検査装置の全体構成を示す側面模式図である。
【
図3】
図3は、タイヤ成形用金型を示す断面模式図である。
【
図4】
図4は、ベントホールに配置されたベントプラグを示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[タイヤ成形用金型について]
図3は、タイヤ成形用金型を示す断面模式図である。
図3に示すタイヤ成形用金型50(以下、単に金型50とも称する)は、本発明に係る検査装置の検査対象であるタイヤ成形用金型の一実施形態である。
図3には、タイヤ成形用の金型50を備える加硫成形装置の一部が、ブラダーB及びタイヤTと共に示されている。この
図3において、上下方向はタイヤTの軸方向であり、左右方向は半径方向であり、紙面に垂直な方向は周方向である。
図3に示されたタイヤTは、加硫成形後の空気入りタイヤであり、トレッド、サイドウォール、ビード、カーカス、ベルト及びインナーライナーを備えている。
【0016】
図3に示す金型50は、ローカバーをタイヤTに成形するための金型である。ローカバーは、未加硫状態のタイヤであり、生タイヤとも呼ばれる。金型50は、セグメント51、上部サイドプレート52、下部サイドプレート53、上部ビードリング54及び下部ビードリング55を備える。金型50は、ブラダーBと共に、キャビティCを形成する。キャビティCは、セグメント51と、上部サイドプレート52と、下部サイドプレート53と、上部ビードリング54と、下部ビードリング55と、ブラダーBとにより囲まれた空間である。
【0017】
セグメント51は、軸方向に見て、実質的に円弧状である。金型50は、複数のセグメント51を周方向に連続してリング状に配置する。セグメント51は、金型50に組み込まれるときに、周方向に面する側面がその隣に配置される他のセグメント51の周方向に面する側面に当接する。
【0018】
セグメント51は、その円弧状の内周に、キャビティ面51aが形成される。キャビティ面51aは、タイヤTのトレッド面を形成する。セグメント51は、キャビティ面51aに、半径方向の凸凹が形成されている。この凸凹の形状は、トレッドパターンに応じて、適宜決定される。
【0019】
上部サイドプレート52は、実質的にリング状である。上部サイドプレート52には、軸方向内側に面するキャビティ面52aが形成されている。下部サイドプレート53は、上部サイドプレート52と同様に、実質的にリング状である。下部サイドプレート53には、軸方向内側に面するキャビティ面53aが形成されている。
【0020】
上部ビードリング54は、実質的にリング状である。上部ビードリング54には、キャビティ面54aが形成されている。下部ビードリング55は、実質的にリング状である。下部ビードリング55には、キャビティ面55aが形成されている。
【0021】
キャビティCは、セグメント51のキャビティ面51aと、上部サイドプレート52のキャビティ面52aと、下部サイドプレート53のキャビティ面53aと、上部ビードリング54のキャビティ面54aと、下部ビードリング55のキャビティ面55aとブラダーBとで囲まれて、形成されている。
【0022】
セグメント51には、ベントホール51bが形成されている。ベントホール51bは、キャビティ面51aからセグメント51の半径方向外側に貫通する貫通孔である。ベントホール51bの断面は、例えば円形である。ベントホール51bは、直線上に形成されている。ベントホール51bは、半径方向に対して平行に形成されている。ベントホール51bは、半径方向に対して傾斜していてもよい。ベントホール51bは、周方向に位置を変えてキャビティ面51aに多数形成されている。ベントホール51bは、軸方向にも位置を変えてキャビティ面51aに多数形成されてもよい。
【0023】
上部サイドプレート52には、ベントホール52bが形成されている。ベントホール52bは、キャビティ面52aから上部サイドプレート52の軸方向外側に貫通する貫通孔である。ベントホール52bの断面は、例えば円形である。ベントホール52bは、直線上に形成されている。ベントホール52bは、径方向に位置を変えてキャビティ面52aに多数形成されている。
【0024】
下部サイドプレート53には、ベントホール53bが形成されている。ベントホール53bは、キャビティ面53aから下部サイドプレート53の軸方向外側に貫通する貫通孔である。ベントホール53bの断面は、例えば円形である。ベントホール53bは、直線上に形成されている。ベントホール53bは、径方向に位置を変えてキャビティ面53aに多数形成されている。
【0025】
金型50は、各ベントホール51b,52b,53b内に配置されるベントプラグ60をさらに備える。ベントプラグ60は、キャビティC内の金型50とタイヤTとの間にある空気を排出する弁装置である。
【0026】
[ベントプラグについて]
図4は、ベントホールに配置されたベントプラグを示す断面模式図である。
図4に示すベントプラグ60は、本発明に係る検査装置が検査対象とするベントプラグの一実施形態である。
図4には、セグメント51のベントホール51bに配置されたベントプラグ60が例示される。
図4において、上下方向はタイヤTの半径方向であり、左右方向は軸方向であり、紙面に垂直な方向は周方向である。なお、ベントプラグ60は、ベントホール51bと同様に(向きは異なるが)、上部サイドプレート52及び下部サイドプレート53の各ベントホール52b、53bにも配置される。
【0027】
ベントプラグ60は、ベントホール51bを開閉する。換言すると、ベントプラグ60は、キャビティCから排出される空気がベントホール51bを流通可能な状態と、流通不可能な状態とを切り替える。ベントプラグ60は、ベントホール51bに装着される円筒状のケース61と、該ケース61に挿入される軸状の弁体62と、弁体62にバネ力を付勢する付勢部材63とを備える。
【0028】
ケース61は、円筒状であり、その軸方向に延びる貫通孔61aがキャビティC内の空気の排出流路を形成する。ケース61は、キャビティC側の端部の内周面において、弁座面61bを備える。弁座面61bは、円錐面に沿う形状を有する。この弁座面61bの形状は、後で説明する弁体62のシール面62dの形状に略一致する。ケース61は、キャビティC側とは反対側の端部において、内周面からその半径方向内側に突出した凸部61cを備える。凸部61cは、弁体62のケース61からの抜け止めとして機能する。
【0029】
弁体62は、その軸心方向にのびる軸部62aと、軸部62aの一端が拡径された弁部62bと、軸部62aの他端が拡径された拡径部62cとを備える。弁体62は、弁部62bをキャビティC側に向け、かつ、拡径部62cをキャビティCとは反対側に向けた姿勢で使用される。弁部62bは、その外周面に円錐状のシール面62dを備える。ベントプラグ60は、シール面62dと弁座面61bとが当接する場合、貫通孔61aが閉止される。一方、ベントプラグ60は、シール面62dと弁座面61bとが離間する場合、貫通孔61aが開放される。軸部62aは、ケース61の他端部(凸部61c)を通過し、ケース61の他端側まで延設される。拡径部62cは、ケース61の他端部の外側に位置する。弁体62は、拡径部62cが凸部61cに接触することで、一端側(キャビティC側)への変位が規制される。
【0030】
付勢部材63は、ケース61に収容された弁体62を一端側(キャビティC側)へ付勢する。本実施形態の付勢部材63は、軸部62aに外挿されるコイルバネにより構成される。付勢部材63は、一端部が弁部62bに係止されるとともに、他端部が凸部61cに係止される。
【0031】
ベントプラグ60は、キャビティC内の圧力が所定圧より低い場合、付勢部材63のバネ力によって、弁座面61bとシール面62dとが離間した状態となる。この場合のベントプラグ60は、貫通孔61aが開放されており、キャビティCから排出される空気がベントホール51bを流通可能な状態となっている。ベントプラグ60は、キャビティC内の圧力が所定圧を越えた場合、付勢部材63のバネ力に逆らって弁体62が他端側に変位し、弁座面61bとシール面62dとが接触する。この場合のベントプラグ60は、貫通孔61aが閉止されており、キャビティCから排出される空気がベントホール51bを流通不可能な状態となっている。この場合、貫通孔61a(ベントホール51b)へのゴムの侵入が防止される。
【0032】
[本発明の基礎となった知見]
金型50(
図3参照)の使用回数の増大に伴って、複数のベントプラグ60(
図4参照)の中には、異常が発生したものが現れてくる。ベントプラグ60に発生する異常の種類には、ケース61の割れ、弁体62の折れ、侵入したゴムによる弁体62の固着等がある。弁体62の固着であれば、ベントプラグ60及びベントホール51bの清掃を行えば正常な状態に回復することができるが、ケース61の割れ、弁体62の折れ等の異常が発生した場合は、ベントプラグ60の交換が必要となる。
【0033】
従来、ベントプラグに異常がないかどうかの点検は、a)ベントプラグに一つずつエアーを吹き付けて、ベントホールからベントプラグが抜けるかどうかを確認する、b)金型をハンマーで叩いて、ベントホールからベントプラグが抜けるかどうかを確認する、等の方法がとられていた。例えば、前記a)の方法では、弁体までエアーがうまく到達しない場合があり、作業者のスキルによって異常の検出精度に差が生じていた。また、前記a)の方法では、複数あるベントプラグについて1箇所ずつ異常の有無を確認していくため、その点検に多大な時間を要していた。また、前記b)の方法では、作業者によって力の入れ具合が異なるため、作業者によって異常の検出精度に差が生じていた。また、前記b)の方法では、金型を叩くため、金型に傷をつけるリスクもあった。そこで、ベントプラグの点検を短時間で簡易に行うこと、及び、作業者のスキルに関わらず異常の検出精度を確保すること、を可能にするタイヤ成形用金型の検査装置の構成について、本発明者らは鋭意検討した。
【0034】
[検査装置の全体構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る検査装置の全体構成を示す斜視模式図である。
図2は、本発明の一実施形態に係る検査装置の全体構成を示す側面模式図である。なお、
図2では、説明の便宜上、紙面手前側に位置する一部の部材(後で説明する係止部25)の記載を省略している。
図1及び
図2に示す検査装置10は、本発明に係る検査装置の一実施形態である。検査装置10は、ベントホール及びベントプラグを有するタイヤ成形用の金型50(
図3参照)について、ベントプラグの異常の有無を検査する装置である。具体的には、検査装置10は、金型50を構成する各部のうちのセグメント51の検査を行うことができる。検査装置10は、セグメント51を1個ずつ検査することができる。なお、本実施形態では、セグメント51を1個ずつ検査することができる検査装置10を例示するが、本発明に係る検査装置10は、全体の大きさ等を変更して、複数のセグメント51を同時に検査できるように構成してもよいし、上部サイドプレート52及び下部サイドプレート53についても検査できるように構成してもよい。
【0035】
検査装置10は、架台20及び加振装置30を備える。架台20は、1個のセグメント51を載置可能な台であり、基台部21、載置部22、及びバネ23を備える。基台部21は、載置部22を支持する基礎部分であり、矩形状の板材により構成される。本実施形態の基台部21は、トレイ状の(周囲に上側への折り返し部を有する)形態の板材により構成されている。本実施形態の基台部21は、金属製であるが、基台部21の材質はこれに限定されない。
【0036】
載置部22は、矩形状の板材により構成され、1個のセグメント51を載置可能に構成される。本実施形態の載置部22は、金属製であるが、載置部22の材質はこれに限定されない。載置部22は、バネ23を介して基台部21により支持される。載置部22は、加振装置30に接続されている。本実施形態のバネ23は、コイルバネにより構成される。バネ23は、載置部22にセグメント51が載置された状態で、載置部22及びセグメント51の振動を許容しつつ支持することができるばね定数及び剛性を有する。なお、バネ23は、コイルバネ以外のバネであってもよく、例えば、塊状の弾性体(ゴム)等であってもよい。
【0037】
加振装置30は、通電時に振動を発生させることができる装置である。加振装置30は、載置部22に接続されており、発生させた振動を載置部22に付与することができる。本実施形態では、商用電源(例えば100V)で動作可能な加振装置30を採用しており、電源プラグを備えた電源ケーブル31を備える。このため、検査装置10は、コンセントがある場所であれば検査を行うことができ、設置場所の変更も容易である。
【0038】
[検査装置による検査方法について]
検査装置10は、載置部22の上面(載置面22aとも称する)に1個のセグメント51を載置した状態で、加振装置30を作動させることによって、セグメント51に振動を与えることができる。セグメント51に振動が与えられると、ベントホール51bに配置されたベントプラグ60にも振動が付与される。異常がある(ケース61の割れ、弁体62の折れ等がある)ベントプラグ60は、振動が付与されると、ベントホール51bから脱落する。載置面22a上に脱落したベントプラグ60(具体的には、ケース61、弁体62等の部品)、及びベントプラグ60が抜け落ちたベントホール51bを目視で確認することで、ベントプラグ60の異常を検出することができる。
【0039】
検査装置10では、全てのベントプラグ60に対して、ほぼ同じ振動を付与することができる。このため、検査装置10では、作業者のスキルに関わらず、全てのベントプラグ60を同じ条件で検査することができ、これにより、異常があるベントプラグ60の検出精度を確保することができる。
【0040】
本実施形態の検査装置10は、載置部22においてさらに係止部25を備える。係止部25は、載置部22におけるセグメント51の載置領域を側方から囲んで配置される。本実施形態の検査装置10は、矩形状の載置部22にあわせて、四辺それぞれに壁状部材からなる係止部25を設けている。検査装置10は、載置部22及びセグメント51に振動を付与した場合、セグメント51が振動によって載置面22a上を移動し、その結果セグメント51が載置部22上から落下するおそれがある。本実施形態の検査装置10は、セグメント51の載置領域を側方から囲む係止部25を備えるため、セグメント51が振動で移動しても載置部22上から落下することがない。なお、本実施形態で示した係止部25は、壁状部材により構成されているが、例えば円柱状の突起を四方に設ける構成等であってもよい。
【0041】
本実施形態の検査装置10は、壁状である係止部25の内側面に弾性体28を設けている。セグメント51は、係止部25と接触した場合に傷つく可能性がある。本実施形態の検査装置10は、振動により移動したセグメント51は、係止部25と直接接触せずに弾性体28と接触する。このため、本実施形態の検査装置10は、係止部25を設けた場合であっても、セグメント51を傷つけることがない。
【0042】
本実施形態の検査装置10は、載置部22においてさらにすべり止め部26を備える。すべり止め部26は、係止部25で囲まれた矩形状の領域に設けられている。本実施形態の検査装置10は、すべり止め部26を、ゴム製シートにより構成している。すべり止め部26は、載置部22におけるセグメント51の載置領域にゴム製シートを敷設して構成される。本実施形態の検査装置10は、載置面22aにすべり止め部26を設けることで載置面22aの摩擦係数を高め、これにより、セグメント51の載置面22a上の移動を抑制している。また、すべり止め部26は、セグメント51と載置部22とが直接接触することを防止する。本実施形態の検査装置10は、セグメント51の載置領域にすべり止め部26を備えるため、載置部22上のセグメント51の移動を抑制することができ、これにより、載置部22からの落下や載置部22との接触・擦れによるセグメント51の傷つきを抑制することができる。なお、本実施形態の検査装置10は、係止部25及びすべり止め部26を両方備えているが、何れか一方を省略してもよい。
【0043】
本実施形態の検査装置10は、載置部22においてさらに吸着部27を備える。吸着部27は、載置部22におけるセグメント51の載置領域(載置面22a)に設けられる。ベントプラグ60は鋼製であるため、本実施形態の検査装置10では、吸着部27を複数の永久磁石により構成している。本実施形態の検査装置10は、すべり止め部26に開口部(切欠き部)を複数設けて、その開口部それぞれに永久磁石(吸着部27)を配置している。本実施形態の検査装置10は、載置面22aに吸着部27を設けることで、載置面22a上に脱落したベントプラグ60を、吸着部27により吸着させることができる。本実施形態の検査装置10は、吸着部27によって、脱落したベントプラグ60が振動によって飛散するのを抑制することができる。
【0044】
本実施形態の検査装置10は、加振装置30においてさらにコントローラ40を備える。コントローラ40は、加振装置30により発生させる振動の周波数の調整を可能とする調整部41を備える。ベントプラグ60には、ベントホール51bからの脱落が生じやすい振動の周波数が存在する。この周波数は、ベントプラグ60の仕様、及び、金型50の仕様に応じて異なる。本実施形態の検査装置10は、コントローラ40(調整部41)を備えることで、ベントプラグ60の仕様、及び、金型50の仕様に応じて、加振装置30で発生させる振動の周波数を調整することができ、これにより、異常があるベントプラグ60を、ベントホール51bから確実に脱落させることが可能となる。
【0045】
コントローラ40は、さらにタイマー42を備える。タイマー42は、加振装置30の起動及び停止を行うメインスイッチ43、及び、加振装置30の作動期間(即ち、セグメント51に振動を付与する期間)を設定する設定スイッチ44を備える。検査装置10は、タイマー42によって、加振装置30の作動期間を調整することができる。検査装置10を用いた検査では、所定期間の間振動を付与しても脱落しなかったベントプラグ60は、異常がないと判断する。本実施形態の検査装置10は、作業者がタイマー42の設定スイッチ44を操作して、タイマー42に前記所定期間を設定しておくことで、前記所定期間が経過したときに、検査装置10(加振装置30)を自動的に停止させることができる。本実施形態の検査装置10によれば、作業者は、タイマー42に前記所定期間を予め設定しておけば、後は加振装置30のメインスイッチ43を押すだけで、ベントプラグ60の検査を簡易に実施することができる。
【0046】
[各実施形態の作用効果]
(1)上記実施形態の検査装置10は、ベントホール51bに配置されたベントプラグ60を有するタイヤ成形用金型50の検査装置である。検査装置10は、金型50が載置される載置部22を有する架台20と、載置部22に振動を与える加振装置30と、を備える。
【0047】
上記構成の検査装置10は、載置部22に載置した金型50に対して加振装置30によって振動を加えることで、異常があるベントプラグ60をベントホール51bから脱落させることができる。このような検査装置10によれば、ベントプラグ60の点検を1箇所ずつ行う必要がないため、短時間で簡易に行うことができる。さらに、このような検査装置10によれば、作業者のスキルに関わらず的確に異常があるベントプラグ60を検出することができるため、異常があるベントプラグ60の検出精度を確保することができる。よって、上記構成の検査装置10によれば、異常があるベントプラグを簡易かつ確実に検出することができる。
【0048】
(2)上記実施形態の検査装置10は、架台20が、載置部22を支持する基台部21と、載置部22と基台部21との間に配置されるバネ23と、を含んで構成され、載置部22が、バネ23を介して基台部21により支持されている。
このような構成の検査装置10は、載置部22を振動させることが可能な架台20を簡易に構成することができる。よって、上記構成の検査装置10によれば、異常があるベントプラグ60を簡易かつ確実に検出することができる。
【0049】
(3)上記実施形態の検査装置10は、載置部22が、載置部22における金型50の載置領域を側方より囲む係止部25をさらに備えている。
このような構成の検査装置10によれば、係止部25によって、載置部22に載置した金型50が、検査中の振動でずれて架台20から落下することが防止できる。よって、上記構成の検査装置10によれば、検査による金型50の傷つきを抑制することができる。
【0050】
(4)上記実施形態の検査装置10は、載置部22が、載置部22における金型50の載置領域に敷設されたすべり止め部26をさらに備えている。
このような構成の検査装置10によれば、すべり止め部26によって、載置部22に載置した金型50が、検査中の振動でずれて架台20から落下することが防止できる。よって、上記構成の検査装置10によれば、検査による金型50の傷つきを抑制することができる。
【0051】
(5)上記実施形態の検査装置10は、載置部22が、ベントプラグ60を吸着可能な吸着部27をさらに備えている。
このような構成の検査装置10によれば、吸着部27によって、金型50から載置部22に脱落したベントプラグ60を吸着することができる。これにより、金型50から脱落したベントプラグ60が、検査中の振動で飛散するのを防止することができる。
【0052】
(6)上記実施形態の検査装置10は、加振装置30が、載置部22に与える振動の振動数を調整するコントローラ40(調整部41)をさらに備えている。
このような構成の検査装置10によれば、金型50及びベントプラグ60の状態に合わせて、金型50に付与する振動を調整することができる。これにより、異常があるベントプラグ60を金型50から確実に脱落させることができ、検査精度を確保することができる。
【0053】
(7)上記実施形態の検査装置10は、加振装置30が、載置部22への振動の付与期間を設定するタイマー42をさらに備えると好ましい。
このような構成の検査装置10によれば、金型50及びベントプラグ60の状態に合わせて、金型50に振動を付与する期間を変えることができる。これにより、異常があるベントプラグ60を金型50から確実に脱落させることができ、検査精度を確保することができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
以上説明された検査装置は、ベントプラグのみならず、孔内に配置して使用される部材について、その異常の有無を検出する用途に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0055】
10:検査装置
20:架台
21:基台部
22:載置部
23:バネ
25:係止部
26:すべり止め部
27:吸着部
30:加振装置
40:コントローラ
41:調整部
42:タイマー
50:金型(タイヤ成形用金型)