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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123481
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】時計
(51)【国際特許分類】
   G04B 19/28 20060101AFI20240905BHJP
【FI】
G04B19/28 Z
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030931
(22)【出願日】2023-03-01
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】502366745
【氏名又は名称】セイコーウオッチ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】杉本 達之
(72)【発明者】
【氏名】船本 千尋
(72)【発明者】
【氏名】原 康範
(72)【発明者】
【氏名】石原 悠
(72)【発明者】
【氏名】中屋敷 和博
(72)【発明者】
【氏名】野口 光一
(57)【要約】
【課題】操作感に優れ、かつ回転操作部の回転動作を規制できる時計を提供する。
【解決手段】時計は、ケースと、ケースに収容された円板状の文字板と、文字板の外周縁に沿うリング状に形成されて周方向に回転可能とされた内転リングと、内転リングを回転させる回転操作部7と、回転操作部7の動作を規制する回転規制部8と、を備える。内転リングは、複数の歯部を有する。回転操作部7は、文字板の径方向に沿う軸心の周りに回転可能な回転軸部71と、回転軸部71に設けられて歯部に噛合して内転リングを回転させる駆動伝達歯車73と、を備える。駆動伝達歯車73に、軸周り方向に位置を違えて複数の係止部78が形成されている。回転規制部8は、係止部78に向けて付勢されて係止部78に係脱可能に係止する係止受け部81を有する。係止受け部81は、係止部78に係止することにより駆動伝達歯車73の回転を規制する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、
前記ケースに収容された円板状の文字板と、
前記文字板の外周縁に沿うリング状に形成されて周方向に回転可能とされた内転リングと、
前記内転リングを回転させる回転操作部と、
前記回転操作部の動作を規制する回転規制部と、を備え、
前記内転リングは、複数の歯部を有し、
前記回転操作部は、
前記文字板の径方向に沿う軸心の周りに回転可能な回転軸部と、
前記回転軸部に設けられて前記歯部に噛合して前記内転リングを回転させる駆動伝達歯車と、を備え、
前記駆動伝達歯車に、軸周り方向に位置を違えて複数の係止部が形成され、
前記回転規制部は、前記係止部に向けて付勢されて前記係止部に係脱可能に係止する係止受け部を有し、
前記係止受け部は、前記係止部に係止することにより前記駆動伝達歯車の回転を規制する、
時計。
【請求項2】
前記係止部は、前記駆動伝達歯車の径方向の外側に突出する凸状に形成され、
前記係止受け部は、前記係止部に凹凸係合する受け凹部を有する、
請求項1記載の時計。
【請求項3】
前記回転規制部は、曲げ弾性力によって前記係止受け部を前記係止部に向けて付勢する付勢部をさらに備える、
請求項1に記載の時計。
【請求項4】
前記係止部は、前記駆動伝達歯車の駆動歯と同数であり、
前記係止部の前記軸周り方向の位置は、前記駆動歯に応じた位置である、
請求項1~3のうちいずれか1項に記載の時計。
【請求項5】
前記係止部は、前記駆動伝達歯車に形成された平坦部であり、
前記係止受け部は、面接触により前記平坦部に係止する、
請求項1記載の時計。
【請求項6】
前記係止部は、前記駆動伝達歯車に形成されて前記内転リングの前記歯部に噛合する駆動歯であり、
前記係止受け部は、前記駆動歯に凹凸係合する、
請求項1記載の時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計に関する。
【背景技術】
【0002】
文字板の外周縁に沿って回転可能な内転リングを備えた時計が用いられている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の時計では、回転操作部を回転させると、回転駆動力が内転リングの駆動歯車に伝達され、内転リングが回転する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-139399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の時計は、回転操作部を回転させる際の操作感が良くない場合があり、改善が求められていた。前記時計では、回転操作部が、衣服等との接触により、利用者が意図しないときに回転する可能性があった。
【0005】
本発明の一態様は、操作感に優れ、かつ回転操作部の回転動作を規制できる時計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)ケースと、前記ケースに収容された円板状の文字板と、前記文字板の外周縁に沿うリング状に形成されて周方向に回転可能とされた内転リングと、前記内転リングを回転させる回転操作部と、前記回転操作部の動作を規制する回転規制部と、を備え、前記内転リングは、複数の歯部を有し、前記回転操作部は、前記文字板の径方向に沿う軸心の周りに回転可能な回転軸部と、前記回転軸部に設けられて前記歯部に噛合して前記内転リングを回転させる駆動伝達歯車と、を備え、前記駆動伝達歯車に、軸周り方向に位置を違えて複数の係止部が形成され、前記回転規制部は、前記係止部に向けて付勢されて前記係止部に係脱可能に係止する係止受け部を有し、前記係止受け部は、前記係止部に係止することにより前記駆動伝達歯車の回転を規制する、時計。
【0007】
この構成によれば、係止受け部は、係止部に係止することにより駆動伝達歯車の回転を規制する。そのため、衣服等に触れることで回転操作部に回転力が加えられた場合でも、利用者が意図しない回転操作部の回転は起こりにくくなる。
この構成によれば、回転操作部を回転させる際に、複数の係止部と係止受け部との係止および解除が起きるため、回転操作部を操作する利用者はクリック感を得る。よって、回転操作部の操作感は良好となる。
【0008】
(2)前記係止部は、前記駆動伝達歯車の径方向の外側に突出する凸状に形成され、前記係止受け部は、前記係止部に凹凸係合する受け凹部を有する、(1)に記載の時計。
【0009】
この構成によれば、係止部と係止受け部との係止および解除の際に得られるクリック感は大きくなる。よって、回転操作部の操作感はさらに良好となる。
【0010】
(3)前記回転規制部は、曲げ弾性力によって前記係止受け部を前記係止部に向けて付勢する付勢部をさらに備える、(1)または(2)記載の時計。
【0011】
この構成によれば、付勢部によって、係止受け部を適切な力で付勢することができる。よって、回転操作部の回転規制力を適正化することができる。
【0012】
(4)前記係止部は、前記駆動伝達歯車の駆動歯と同数であり、前記係止部の前記軸周り方向の位置は、前記駆動歯に応じた位置である、(1)~(3)のうちいずれか1つに記載の時計。
【0013】
この構成によれば、クリック感が生じる位置と、駆動伝達歯車の停止位置とを対応させることができる。よって、クリック感が生じる位置と、内転リングの位置とにずれが生じず、操作感を良好にすることができる。
【0014】
(5)前記係止部は、前記駆動伝達歯車に形成された平坦部であり、前記係止受け部は、面接触により前記平坦部に係止する、(1)記載の時計。
【0015】
この構成によれば、係止部と係止受け部とは、面接触により係止するため、係止部と係止受け部に過大な力が作用しない。よって、回転操作部および回転規制部の耐久性を高めることができる。
【0016】
(6)前記係止部は、前記駆動伝達歯車に形成されて前記内転リングの前記歯部に噛合する駆動歯であり、前記係止受け部は、前記駆動歯に凹凸係合する、(1)記載の時計。
【0017】
この構成によれば、駆動伝達歯車および係止受け部の構造が簡略であるため、小型化、および製造コスト抑制の点で有利となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一態様によれば、操作感に優れ、かつ回転操作部の回転動作を規制できる時計を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1実施形態に係る時計の断面図である。
図2】第1実施形態に係る時計の一部の断面図である。
図3】第1実施形態に係る時計の拡大した断面図である。
図4】第1実施形態に係る時計の内部構造の斜視図である。
図5】第1実施形態に係る時計の内部構造の拡大した斜視図である。
図6】第1実施形態に係る時計の回転操作部および回転規制部の分解斜視図である。
図7】第1実施形態に係る時計の回転操作部および回転規制部の斜視図である。
図8】第2実施形態に係る時計の回転操作部および回転規制部の分解斜視図である。
図9】第2実施形態に係る時計の回転操作部および回転規制部の斜視図である。
図10】第3実施形態に係る時計の回転操作部および回転規制部の斜視図である。
図11】第4実施形態に係る時計の回転操作部および回転規制部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る時計1の断面図である。図2は、時計1の一部の断面図である。図3は、時計1の拡大した断面図である。図4は、時計1の内部構造の斜視図である。図5は、時計1の内部構造の拡大した斜視図である。
【0022】
図1に示すように、第1実施形態の時計1は、時計ケース2と、文字板3と、指針4と、時計用ムーブメント5と、内転リング6と、回転操作部7と、回転規制部8と、備える。
【0023】
時計ケース2(ケース)は、ケース本体10と、風防ガラス11と、ベゼル12と、裏蓋13とを備える。ケース本体10は、円筒状に形成されている。風防ガラス11は、ケース本体10の一方の開口を閉止する。ベゼル12は、ケース本体10の一方の開口端に設けられている。ベゼル12は、風防ガラス11を保持する。裏蓋13は、ケース本体10の他方の開口を閉止する。時計ケース2は、文字板3、指針4およびムーブメント5を収容する。
以下、図1に即して各構成の位置等を仮に定める。例えば、風防ガラス11は裏蓋13に対して上に位置する。ここに示す位置等は、時計1の使用時の姿勢を限定しない。
【0024】
文字板3は、円板状に形成されている。文字板3は、風防ガラス11を介して視認可能となっている。
指針4は、文字板3と風防ガラス11との間に配置されている。指針4は、ムーブメント5の回転軸14に取り付けられている。ムーブメント5は、文字板3と裏蓋13との間に配置されている。ムーブメント5は、回転軸14を駆動する駆動源などを備える。回転軸14は、文字板3の中央から、文字板3に直交する方向に延びる。
【0025】
図2に示すように、内転リング6は、文字板3の外周縁に沿うリング状に形成されている。内転リング6は、回転軸14を中心とする円環状に形成されている。内転リング6は、周方向に回転可能である。「周方向」は、回転軸14を中心とする円周方向である。「主径方向」は、文字板3の径方向である。
【0026】
図3に示すように、内転リング6の上面(風防ガラス11側の面)のうち内周縁を含む領域である情報表示面6aは、主径方向の内側に向けて下降する傾斜面である。情報表示面6aには、文字、記号、図形などにより情報表示を形成することができる。情報表示としては、方位表示目盛などが挙げられる。時計1では、方位表示目盛を用いて簡易的な方位測定が可能である。なお、情報表示は方位表示目盛に限らず、日付などでもよい。
【0027】
内転リング6の下面(裏蓋13側の面)には、周方向に並ぶ複数の歯部61が形成されている。歯部61は、内転リング6の下面から下方に突出する。
ケース本体10には、操作孔部10aが形成されている。操作孔部10aは、主径方向に沿ってケース本体10を貫通する。操作孔部10a内には、支持筒21が設けられている。
【0028】
回転操作部7は、回転軸部71と、ヘッド部72と、駆動伝達歯車73と、を備える。
回転軸部71は、支持筒21に挿通する。回転軸部71は、主径方向に沿う軸心の周りに回転可能である。回転軸部71の周りの方向を「軸周り方向」という。
【0029】
ヘッド部72は、回転軸部71の外側の端部に形成されている。ヘッド部72は、回転軸部71と一体に形成されている。ヘッド部72の外径は回転軸部71の外径より大きい。ヘッド部72は、ケース本体10の外側に位置する。
【0030】
図4および図5に示すように、駆動伝達歯車73は、Cリングなどの取付部材74によって回転軸部71に取り付けられている。駆動伝達歯車73は、回転軸部71と一体に軸周り方向に回転する。駆動伝達歯車73は、ケース本体10の内側に位置する。
【0031】
図6は、回転操作部7および回転規制部8の分解斜視図である。図7は、回転操作部7および回転規制部8の斜視図である。
図6および図7に示すように、駆動伝達歯車73は、主部75と、中央凸部76とを有する。主部75は、回転軸部71の軸心に直交する板状に形成されている。主部75の外周縁には、軸周り方向に並ぶ複数の駆動歯77が形成されている。複数の駆動歯77は、軸周り方向に位置を違えて形成されている。駆動歯77は、内転リング6の歯部61に噛合可能である。駆動伝達歯車73は、駆動歯77が歯部61に噛合することによって内転リング6を周方向に回転させる。
【0032】
中央凸部76は、主部75の外面から外側(主径方向の外側)に突出して形成されている。中央凸部76は、主部75の中央を含む部分が厚肉化されて形成された凸部である。中央凸部76は、主部75と同心の略円形とされている。中央凸部76の径は主部75の径より小さい。
【0033】
中央凸部76の外周面には、複数の係止部78が形成されている。係止部78は、例えば、中央凸部76の外周面から、駆動伝達歯車73の径方向の外側に突出する凸状に形成されている。係止部78は、例えば、円弧形状(例えば、半円形状)の凸状に形成されている。係止部78の形状は円弧形状に限らず、多角形状、逆V字形状などでもよい。
【0034】
複数の係止部78は、軸周り方向に位置を違えて中央凸部76の外周面に形成されている。複数の係止部78は、例えば、軸周り方向に間隔をおいて形成されている。複数の係止部78は、例えば、軸周り方向に等間隔に形成されている。
【0035】
係止部78は、例えば、駆動歯77と同数である。係止部78の軸周り方向の位置は、駆動歯77に応じた位置であることが望ましい。本実施形態では、係止部78の軸周り方向の位置は、駆動歯77の軸周り方向の位置と一致する。
【0036】
係止部78の軸周り方向の位置が駆動歯77に応じた位置であると、クリック感が生じる位置と、駆動伝達歯車73の停止位置とを対応させることができる。よって、クリック感が生じる位置と、内転リング6の位置とにずれが生じず、操作感を良好にすることができる。
【0037】
駆動伝達歯車73の中央には、回転軸部71が挿通する挿通孔73aが形成されている。挿通孔73aは、例えば、切欠円形状などの非円形状に形成されている。挿通孔73aは駆動伝達歯車73の中央部に、駆動伝達歯車73を厚さ方向に貫通して形成されている。
【0038】
回転規制部8は、係止受け部81と、付勢部82と、支持部83とを備える。回転規制部8は、回転操作部7の動作を規制することができる。回転規制部8は、回転軸部71の軸心に直交する板状に形成されている。
支持部83は、基部84と、一対の延出部85とを備える。基部84は、直線状に形成されている。一対の延出部85は、基部84の一端部および他端部からそれぞれ上方に延出する。一対の延出部85は、間隔をおいて向かい合って形成されている。一対の延出部85が並ぶ方向を幅方向という。一対の延出部85の一方は延出部85Aである。他方の延出部85は延出部85Bである。
【0039】
付勢部82は、例えば、支持部83と一体に形成された延出片である。付勢部82は、弾性的に曲げ変形可能である。付勢部82は、一方の延出部85の内縁から他方の延出部85に近づく方向に延出し、折り返された形状を有する。
【0040】
詳しくは、付勢部82は、ストレート部82aと、湾曲折返し部82bと、延出部82cとを有する。ストレート部82aは、延出部85Aの内縁から、基部84と平行に、延出部85Bに近づく方向に直線的に延出し、延出部85Bに近い位置に至る。湾曲折返し部82bは、ストレート部82aの先端から上方に略半円形状に湾曲して延びる。延出部82cは、湾曲折返し部82bの先端から、緩やかに下降しつつ延出部85Aに近づく方向に延び、支持部83の幅方向の中央付近で係止受け部81に達している。
【0041】
係止受け部81は、例えば、長円形状、矩形状、楕円形状などとすることができる。本実施形態では、係止受け部81は、長軸方向が幅方向に沿う長円形状とされている。係止受け部81は、例えば、付勢部82の先端部に、付勢部82と一体に形成されている。係止受け部81は、支持部83の幅方向のほぼ中央に位置する。
【0042】
係止受け部81の上縁には、受け凹部81aが形成されている。受け凹部81aは、係止部78に凹凸係合可能である。受け凹部81aは、係止部78を受け入れ可能な円弧形状(例えば、半円形状)の凹部である。係止受け部81は、受け凹部81aが係止部78に凹凸係合することによって係止部78に係止する。係止受け部81は、係脱可能(係止および解除可能)に係止部78に係止する。
【0043】
係止受け部81は、上下方向に移動可能である。係止受け部81は、上昇により係止部78に係止する。係止受け部81は、下降により係止が解除される。係止受け部81は、付勢部82の曲げ弾性により、上方(係止部78に近づく方向)に付勢されている。
【0044】
係止受け部81は、係止部78に係止することによって、駆動伝達歯車73の回転を規制する。詳しくは、係止受け部81が係止部78に係止したときの駆動伝達歯車73の回転トルクは、係止受け部81が係止部78に係止していないときに比べて大きくなる。そのため、衣服等に触れることでヘッド部72に回転力が加えられた場合でも、利用者が意図しない回転操作部7の回転は起こりにくくなる。
【0045】
係止受け部81は、駆動伝達歯車73の回転を完全に阻止するわけではない。所定の値以上の回転トルクが加えられた場合、回転操作部7は軸周り方向に回転する。詳しくは、所定の値以上の回転トルクが回転操作部7に加えられると、係止部78は係止受け部81を押し下げ、係止受け部81と係止部78との係止は解除される。これにより、回転操作部7は回転可能な状態となる。そのため、利用者が意図する場合には、回転操作部7は軸周り方向に回転可能である。
【0046】
回転操作部7および回転規制部8の構成材料は特に限定されない。回転操作部7および回転規制部8は、例えば、樹脂、金属などにより形成される。
【0047】
本実施形態の時計1では、駆動伝達歯車73に係止部78が形成されている。回転規制部8は係止受け部81を有する。係止受け部81は、係止部78に係止することにより駆動伝達歯車73の回転を規制する。そのため、衣服等に触れることでヘッド部72に回転力が加えられた場合でも、利用者が意図しない回転操作部7の回転は起こりにくくなる。
【0048】
時計1では、回転操作部7を回転させる際に、複数の係止部78と係止受け部81との係止および解除が起きるため、回転操作部7を操作する利用者はクリック感を得る。よって、回転操作部7の操作感は良好となる。
【0049】
回転操作部7および回転規制部8は構成部品が少ないため、時計1の内部の省スペース化を図ることができる。
【0050】
係止受け部81は、係止部78に凹凸係合により係止する受け凹部81aを有する。そのため、係止部78と係止受け部81との係止および解除の際に得られるクリック感は大きくなる。よって、回転操作部7の操作感はさらに良好となる。
【0051】
回転規制部8は、曲げ弾性力によって係止受け部81を付勢する付勢部82を備える。そのため、係止受け部81を適切な力で付勢することができる。よって、回転操作部7の回転規制力を適正化することができる。
【0052】
[第2実施形態]
第2実施形態の時計について説明する。第1実施形態と共通の構成については、同じ符号を付して説明を省略する。
図8は、回転操作部107および回転規制部108の分解斜視図である。図9は、回転操作部107および回転規制部108の斜視図である。
図8および図9に示すように、本実施形態の時計は、回転操作部7に代えて回転操作部107を使用する。回転規制部8に代えて回転規制部108を使用する。第2実施形態の時計は、これらの点で第1実施形態の時計1と異なる。
【0053】
回転操作部107は、駆動伝達歯車73に代えて駆動伝達歯車173を有する。駆動伝達歯車173は、主部75と、中央凸部176とを有する。中央凸部176は、主部75の外面から外側(主径方向の外側)に突出する。
【0054】
中央凸部176の外周面には、複数の係止部178が形成されている。係止部178は、中央凸部176の外周面に形成された平坦部である。係止部178は、駆動伝達歯車173の径方向に対して垂直な平坦面である。複数の係止部178は、軸周り方向に位置を違えて中央凸部176の外周面に形成されている。本実施形態では、中央凸部176の外周面に、互いに同じ形状の8つの係止部178が軸周り方向に並んで形成されている。そのため、駆動伝達歯車173の厚さ方向から見て、中央凸部176は正八角形となっている。
【0055】
係止部178は、例えば、駆動歯77と同数である。係止部178の軸周り方向の位置は、駆動歯77に応じた位置であることが望ましい。係止部178の軸周り方向の位置が駆動歯77に応じた位置であると、クリック感が生じる位置と、駆動伝達歯車173の停止位置とを対応させることができる。よって、クリック感が生じる位置と、内転リング6の位置とにずれが生じず、操作感を良好にすることができる。
【0056】
回転規制部108は、一対の係止受け部181と、支持部83とを備える。回転規制部108は、回転操作部107の動作を規制することができる。回転規制部108は、回転軸部71の軸心に直交する板状に形成されている。
【0057】
一対の係止受け部181は、基部84からそれぞれ上方に延出する。一対の係止受け部181は、間隔をおいて向かい合って形成されている。一対の係止受け部181の向かい合う面を内面という。一対の係止受け部181が互いに近づく方向を内方という。一対の係止受け部181が互いに近づく方向を外方という。係止受け部181は、内方および外方に弾性的に曲げ変形可能である。係止受け部181は、駆動伝達歯車173と接するとき、自らの曲げ弾性により内方に付勢される。
【0058】
係止受け部181の内面は、平坦に形成されている。係止受け部181は、面接触することで、係脱可能(係止および解除可能)に係止部178に係止する。係止受け部181は、内方移動により係止部178に係止する。係止受け部181は、外方に曲げ変形することにより係止が解除される。
【0059】
係止受け部181は、係止部178に係止することによって、駆動伝達歯車173の回転を規制する。詳しくは、係止受け部181が係止部178に係止したときの駆動伝達歯車173の回転トルクは、係止受け部181が係止部178に係止していないときに比べて大きくなる。そのため、衣服等に触れることでヘッド部72に回転力が加えられた場合でも、利用者が意図しない回転操作部107の回転は起こりにくくなる。
【0060】
係止受け部181は、駆動伝達歯車173の回転を完全に阻止するわけではない。所定の値以上の回転トルクが加えられた場合、回転操作部107は軸周り方向に回転する。詳しくは、所定の値以上の回転トルクが回転操作部107に加えられると、係止部178は係止受け部181を外方移動させ、係止受け部181と係止部178との係止は解除される。これにより、回転操作部107は回転可能な状態となる。そのため、利用者が意図する場合には、回転操作部107は軸周り方向に回転可能である。
【0061】
本実施形態の時計では、駆動伝達歯車173に係止部178が形成されている。回転規制部108は係止受け部181を有する。係止受け部181は、係止部178に係止することにより駆動伝達歯車173の回転を規制する。そのため、衣服等に触れることでヘッド部72に回転力が加えられた場合でも、利用者が意図しない回転操作部107の回転は起こりにくくなる。
【0062】
本実施形態の時計では、回転操作部107を回転させる際に、複数の係止部178と係止受け部181との係止および解除によって、利用者はクリック感を得る。よって、回転操作部107の操作感は良好となる。
【0063】
回転操作部107および回転規制部108は構成部品が少ないため、時計の内部の省スペース化を図ることができる。
【0064】
本実施形態の時計では、係止部178と係止受け部181とは、面接触により係止するため、係止部178と係止受け部181に過大な力が作用しない。よって、回転操作部107および回転規制部108の耐久性を高めることができる。
【0065】
[第3実施形態]
第3実施形態の時計について説明する。他の実施形態と共通の構成については、同じ符号を付して説明を省略する。
図10は、回転操作部107および回転規制部108の斜視図である。図10に示すように、本実施形態の時計は、駆動伝達歯車73に代えて駆動伝達歯車273を使用する。回転規制部8に代えて回転規制部208を使用する。第3実施形態の時計は、これらの点で第1実施形態の時計1と異なる。
【0066】
駆動伝達歯車273は、中央凸部76がなく、主部75のみで形成される点で、第1実施形態における駆動伝達歯車73(図6参照)と異なる。駆動歯77は、係止部として機能する。
【0067】
回転規制部208は、係止受け部281を有するアーム282を有する。アーム282は、弾性的に曲げ変形可能である。係止受け部281は、駆動歯77に凹凸係合可能である。係止受け部281は、アーム282の一部が凸状に屈曲して形成されている。係止受け部281は、駆動伝達歯車273に近づく方向に凸となるように形成されている。係止受け部281の一部は、隣り合う駆動歯77の間に入り込むことができる。これにより、係止受け部281は駆動歯77に係止する。
【0068】
係止受け部281は、上下方向に移動可能である。係止受け部281は、上昇により駆動歯77に係止する。係止受け部281は、下降により係止が解除される。係止受け部281は、アーム282の曲げ弾性により、上方(駆動歯77に近づく方向)に付勢される。
【0069】
係止受け部281は、駆動歯77に係止することによって、駆動伝達歯車273の回転を規制する。詳しくは、係止受け部281が駆動歯77に係止したときの駆動伝達歯車273の回転トルクは、係止受け部281が駆動歯77に係止していないときに比べて大きくなる。そのため、衣服等に触れることでヘッド部72に回転力が加えられた場合でも、利用者が意図しない回転操作部207の回転は起こりにくくなる。
【0070】
係止受け部281は、駆動伝達歯車273の回転を完全に阻止するわけではない。所定の値以上の回転トルクが加えられた場合、回転操作部207は軸周り方向に回転する。詳しくは、所定の値以上の回転トルクが回転操作部207に加えられると、駆動歯77は係止受け部281を押し下げ、係止受け部281と駆動歯77との係止は解除される。これにより、回転操作部207は回転可能な状態となる。そのため、利用者が意図する場合には、回転操作部207は軸周り方向に回転可能である。
【0071】
本実施形態の時計では、駆動伝達歯車273に、係止部として機能する駆動歯77が形成されている。回転規制部208は係止受け部281を有する。係止受け部281は、駆動歯77に係止することにより駆動伝達歯車273の回転を規制する。そのため、衣服等に触れることでヘッド部72に回転力が加えられた場合でも、利用者が意図しない回転操作部107の回転は起こりにくくなる。
【0072】
本実施形態の時計では、回転操作部107を回転させる際に、複数の駆動歯77と係止受け部281との係止および解除が起きるため、回転操作部207を操作する利用者はクリック感を得る。よって、回転操作部207の操作感は良好となる。
【0073】
回転操作部207および回転規制部208は構成部品が少ないため、時計の内部の省スペース化を図ることができる。
【0074】
本実施形態の時計では、駆動伝達歯車273および係止受け部281の構造が簡略であるため、小型化、および製造コスト抑制の点で有利となる。
【0075】
[第4実施形態]
第4実施形態の時計について説明する。他の実施形態と共通の構成については、同じ符号を付して説明を省略する。
図11は、回転操作部307および回転規制部308の斜視図である。
【0076】
図11に示すように、駆動伝達歯車373は、駆動伝達歯車73(図7参照)の中央凸部76に代えて、円形状の中央凸部376を有する。図11では、主部75(図7参照)の図示を省略した。
【0077】
中央凸部376には、複数の係止部378が形成されている。係止部378は、円筒状に形成されている。係止部378は、中央凸部376の外面から外側(主径方向の外側)に突出する。複数の係止部378は、例えば、軸周り方向に等間隔に形成されている。係止部378は、軸心に沿う中心軸の周りに回転可能なローラであってよい。係止部378がローラであると、係止受け部81との間の摩擦を低減することができる。
【0078】
回転規制部308は、係止受け部81と、付勢部82と、支持部383とを備える。支持部383は、基部84と、一対の延出部385とを備える。
【0079】
係止受け部81の受け凹部81aは、係止部378に凹凸係合可能である。係止受け部81は、係脱可能(係止および解除可能)に係止部378に係止する。
【0080】
本実施形態の時計では、第1実施形態の時計1と同様に、ヘッド部72に回転力が加えられた場合でも、利用者が意図しない回転操作部307の回転は起こりにくくなる。本実施形態の時計では、回転操作部307を回転させる際にクリック感が生じるため、回転操作部307の操作感は良好となる。
【0081】
本発明は、図面を参照して説明した上述の実施形態に限定されず、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
例えば、図7に示す回転操作部7および回転規制部8では、係止部78は凸状に形成され、係止受け部81に受け凹部81aが形成されているが、回転操作部および回転規制部の構造はこれに限定されない。例えば、係止部が凹部であって、係止受け部に、係止部に係合する凸部が形成されていてもよい。
【0082】
実施形態の時計では、内転リングの下面に、駆動伝達歯車と噛合する歯部が形成されているが、内転リングの歯部は、内転リングの下面に限らず、内転リングの内周面または外周面に形成されていてもよい。
実施形態の時計は、機械式の時計でもよいし、クオーツ式の時計でもよい。
【符号の説明】
【0083】
1…時計
2…時計ケース(ケース)
3…文字板
6…内転リング
7,107,207,307…回転操作部
8,108,208,308…回転規制部
61…歯部
71…回転軸部
73,173,273,373…駆動伝達歯車
77…駆動歯(係止部)
78,178,378…係止部
81,181,281…係止受け部
81a…受け凹部
82…付勢部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11