(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123485
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】ダンプトラック
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20240905BHJP
H02J 7/34 20060101ALI20240905BHJP
B60R 16/04 20060101ALI20240905BHJP
B60L 7/14 20060101ALI20240905BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20240905BHJP
B60L 58/13 20190101ALI20240905BHJP
B60L 58/18 20190101ALI20240905BHJP
【FI】
H02J7/00 B
H02J7/00 P
H02J7/00 302C
H02J7/34 B
B60R16/04 S
B60L7/14
B60L50/60
B60L58/13
B60L58/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030937
(22)【出願日】2023-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石原 和典
(72)【発明者】
【氏名】高田 知範
(72)【発明者】
【氏名】北口 篤
【テーマコード(参考)】
5G503
5H125
【Fターム(参考)】
5G503AA04
5G503AA07
5G503BA04
5G503BB02
5G503BB03
5G503CA08
5G503DA08
5G503EA05
5G503FA06
5G503GB03
5G503GB06
5G503GD03
5G503GD06
5H125AA12
5H125AC12
5H125BA00
5H125BB05
5H125BB07
5H125BC12
5H125BC28
5H125CB02
5H125DD01
5H125DD18
5H125DD19
5H125EE27
5H125EE57
5H125EE61
(57)【要約】
【課題】二種類の蓄電装置を備えるダンプトラックを、充放電処理を中断することなく走行させる技術を提供する。
【解決手段】ダンプトラックは、車体と、荷台と、電力を蓄電する第1蓄電装置と、第1蓄電装置より出力特性が劣り且つ蓄電可能量が多い第2蓄電装置と、第1蓄電装置及び第2蓄電装置の少なくとも一方に蓄電された電力によってタイヤを回転させる走行モータと、走行モータに対する電力の入出力の変化に追従して第1蓄電装置に充放電させると共に、第1蓄電装置の充電率が目標充電率に近づくように第2蓄電装置に充放電させる充放電処理を実行するコントローラとを備える。コントローラは、充放電処理を繰り返し実行する過程において、ダンプトラックの現在の動作状態に基づいて次の動作状態を推定し、第1蓄電装置の目標充電率を、推定した次の動作状態に対応する値に更新する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤの回転によって走行する車体と、
積荷を積載する着座姿勢及び積荷を放出する放出姿勢に姿勢変化が可能な荷台と、
電力を蓄電する第1蓄電装置と、
前記第1蓄電装置より出力特性が劣り且つ蓄電可能量が多い第2蓄電装置と、
前記第1蓄電装置及び前記第2蓄電装置の少なくとも一方に蓄電された電力によって、前記タイヤを回転させる走行モータと、
前記走行モータに対する電力の入出力の変化に追従して前記第1蓄電装置に充放電させると共に、前記第1蓄電装置の充電率が目標充電率に近づくように前記第2蓄電装置に充放電させる充放電処理を実行するコントローラとを備えるダンプトラックにおいて、
前記コントローラは、前記充放電処理を繰り返し実行する過程において、
前記ダンプトラックの現在の動作状態に基づいて次の動作状態を推定し、
前記第1蓄電装置の前記目標充電率を、推定した次の動作状態に対応する値に更新することを特徴とするダンプトラック。
【請求項2】
請求項1に記載のダンプトラックにおいて、
前記コントローラは、前記ダンプトラックの現在の動作状態が停車中で且つ前記荷台の積荷質量が上限閾値以上である場合において、
前記荷台が前記放出姿勢であれば、次の動作状態を空荷状態での走行と推定して、前記第1蓄電装置の前記目標充電率を第1目標充電率に設定し、
前記荷台が前記着座姿勢であれば、次の動作状態を積荷状態での走行と推定して、前記第1蓄電装置の前記目標充電率を前記第1目標充電率より大きい第2目標充電率に設定することを特徴とするダンプトラック。
【請求項3】
請求項1に記載のダンプトラックにおいて、
前記コントローラは、前記ダンプトラックの現在の動作状態が停車中で且つ前記荷台の積荷質量が上限閾値未満である場合において、
前記積荷質量が下限閾値以上であれば、次の動作状態を積荷状態での走行と推定して、前記第1蓄電装置の前記目標充電率を第3目標充電率に設定し、
前記積荷質量が前記下限閾値未満であれば、次の動作状態を空荷状態での走行と推定して、前記第1蓄電装置の前記目標充電率を前記第3目標充電率より小さい第4目標充電率に設定することを特徴とするダンプトラック。
【請求項4】
請求項1に記載のダンプトラックにおいて、
前記コントローラは、前記ダンプトラックの現在の動作状態が走行中である場合において、
前記ダンプトラックの進行方向の第1距離未満に登坂の入口がある場合に、次の動作状態を力行走行と推定して、前記第1蓄電装置の前記目標充電率を第5目標充電率に設定し、
前記ダンプトラックの進行方向の第2距離未満に降坂の入口がある場合に、次の動作状態を回生走行と推定して、前記第1蓄電装置の前記目標充電率を前記第5目標充電率より小さい第6目標充電率に設定し、
前記ダンプトラックの進行方向の第3距離未満に曲線路の入口がある場合に、次の動作状態を回生走行と推定して、前記第1蓄電装置の前記目標充電率を前記第5目標充電率より小さく且つ前記第6目標充電率より大きい第7目標充電率に設定することを特徴とするダンプトラック。
【請求項5】
請求項1に記載のダンプトラックにおいて、
前記ダンプトラックの速度が速いほど前記第1蓄電装置の前記目標充電率が小さくなる第1充電率マップと、
前記ダンプトラックの速度が速いほど前記第1蓄電装置の前記目標充電率が小さくなり、且つ前記目標充電率の平均値が前記第1充電率マップより小さい第2充電率マップと、
前記ダンプトラックの速度が速いほど前記第1蓄電装置の前記目標充電率が小さくなり、且つ前記目標充電率の変化率が前記第1充電率マップ及び前記第2充電率マップより大きい第3充電率マップとを記憶するメモリを備え、
前記コントローラは、
前記ダンプトラックの現在の動作状態が登坂を走行中である場合に、次の動作状態を力行走行と推定して、前記第1蓄電装置の前記目標充電率を前記第1充電率マップに従って第8目標充電率に設定し、
前記ダンプトラックの現在の動作状態が降坂を走行中である場合に、次の動作状態を回生走行と推定して、前記第1蓄電装置の前記目標充電率を前記第2充電率マップに従って第9目標充電率に設定し、
前記ダンプトラックの現在の動作状態が平地を走行中である場合に、次の動作状態を力行走行または回生走行と推定して、前記第1蓄電装置の前記目標充電率を前記第3充電率マップに従って第10目標充電率に設定することを特徴とするダンプトラック。
【請求項6】
請求項1に記載のダンプトラックにおいて、
前記第1蓄電装置は、第1DC/DCコンバータを介して前記走行モータに接続され、
前記第2蓄電装置は、前記第1DC/DCコンバータに直列に接続された第2DC/DCコンバータを介して、前記第1蓄電装置と並列に前記走行モータに接続されていることを特徴とするダンプトラック。
【請求項7】
請求項1に記載のダンプトラックにおいて、
前記第1蓄電装置は、第1DC/DCコンバータを介して前記走行モータに接続され、
前記第2蓄電装置は、前記第1DC/DCコンバータと並列に接続された第2DC/DCコンバータを介して、前記第1蓄電装置と並列に前記走行モータに接続されていることを特徴とするダンプトラック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二種類の蓄電池を備えるダンプトラックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、露天掘り鉱山などで使用されるダンプトラックには、回生時に走行モータから出力される電力を蓄電し、力行時に走行モータに電力を供給する蓄電装置が搭載される。但し、出力特性に優れる蓄電装置は蓄電可能量(容量)が少なく、容量が多い蓄電装置は出力特性が劣る傾向がある。そのため、必要な出力特性及び容量を一種類の蓄電装置のみで実現しようとすると、ダンプトラックの小型化及び軽量化が阻害される。
【0003】
そこで、出力特性に優れる第1蓄電装置と、容量が大きい第2蓄電装置とを協調して制御することによって、ダンプトラックを小型化及び軽量化する技術がある(例えば、特許文献1を参照)。より詳細には、特許文献1では、走行モータに対する電力の入出力の変化を吸収するように第1蓄電装置に充放電させ、第1蓄電装置の充電率が予め定められた目標充電率に近づくように第2蓄電装置に充放電させる充放電処理が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では前述の充放電処理を常に実行しているので、ダンプトラックの回生時に第1蓄電装置が満充電になったり、ダンプトラックの力行時に第1蓄電装置が空充電になると、充放電処理を中断して走行に支障が生じるという課題がある。
【0006】
本発明は、上記した実状に鑑みてなされたものであり、その目的は、二種類の蓄電装置を備えるダンプトラックを、充放電処理を中断することなく走行させる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、タイヤの回転によって走行する車体と、積荷を積載する着座姿勢及び積荷を放出する放出姿勢に姿勢変化が可能な荷台と、電力を蓄電する第1蓄電装置と、前記第1蓄電装置より出力特性が劣り且つ蓄電可能量が多い第2蓄電装置と、前記第1蓄電装置及び前記第2蓄電装置の少なくとも一方に蓄電された電力によって、前記タイヤを回転させる走行モータと、前記走行モータに対する電力の入出力の変化に追従して前記第1蓄電装置に充放電させると共に、前記第1蓄電装置の充電率が目標充電率に近づくように前記第2蓄電装置に充放電させる充放電処理を実行するコントローラとを備えるダンプトラックにおいて、前記コントローラは、前記充放電処理を繰り返し実行する過程において、前記ダンプトラックの現在の動作状態に基づいて次の動作状態を推定し、前記第1蓄電装置の前記目標充電率を、推定した次の動作状態に対応する値に更新することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、二種類の蓄電装置を備えるダンプトラックを、充放電処理を中断することなく走行させることができる。なお、上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係るダンプトラックの側面図である。
【
図2】ダンプトラックに搭載される駆動回路の回路図である。
【
図3】ダンプトラックのハードウェア構成図である。
【
図5】目標SOC設定処理のフローチャートである。
【
図6】走行中SOC設定処理のフローチャートである。
【
図7】巡航中SOC設定処理のフローチャートである。
【
図8】第1~第3充電率マップの例を示す図である。
【
図10】充放電処理を実現するコントローラの機能ブロック図である。
【
図11】目標SOCリセット処理のフローチャートである。
【
図12】走行中SOCリセット処理のフローチャートである。
【
図16】ダンプトラックの走行中における目標SOC1の推移を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係るダンプトラックの実施形態について、図面を用いて説明する。
図1は、本実施形態に係るダンプトラック1の側面図である。なお、本明細書中の前後左右は、特に断らない限り、ダンプトラック1に搭乗して操作するオペレータの視点を基準としている。
【0011】
図1に示すように、本実施形態に係るダンプトラック1は、車体フレーム2と、車体フレーム2の前部の左右両端に回転可能に支持された一対の前タイヤ3L、3Rと、車体フレーム2の後部の左右両端に回転可能に支持された一対の後タイヤ4L、4Rと、車体フレーム2上に起伏可能に支持された荷台5と、ダンプトラック1を操作するオペレータが搭乗するキャブ6とを主に備える。
【0012】
一対の前タイヤ3L、3Rは、オペレータによるステアリング操作によって舵角が変わる操舵輪である。一方、一対の後タイヤ4L、4Rは、走行モータ16(
図2参照)の駆動力が伝達されて回転する駆動輪である。なお、ダンプトラック1は、左右一対の後タイヤ4L、4Rそれぞれに独立して駆動力を伝達するために、左右一対の走行モータ16を備える。
【0013】
荷台5は、ホイストシリンダ7L、7Rの伸縮によって、車体フレーム2の後部のヒンジピン8を中心として、上下方向に起伏(姿勢変化)する。ホイストシリンダ7L、7Rは、一端が車体フレーム2に接続され、他端が荷台5に接続され、油圧ポンプ(図示省略)から作動油の供給を受けて伸縮する。そして、ホイストシリンダ7L、7Rが伸長すると荷台5が起立して放土姿勢(放出姿勢)となり、ホイストシリンダ7L、7Rが収縮すると荷台5が倒伏して着座姿勢となる。
【0014】
放出姿勢は、積載した積荷をダンプトラック1の後方に放出するときの荷台5の姿勢である。着座姿勢は、積荷を積載するときの荷台5の姿勢である。なお、荷台5に積載される積荷は土砂に限定されないが、土砂は積荷の代表例なので、以下、荷台5が土砂を積載するものとして説明する。
【0015】
キャブ6は、車体フレーム2の前端のデッキ9上の左端に配置されている。キャブ6は、ダンプトラック1を操作するオペレータが搭乗する運転室を形成している。そして、キャブ6の内部には、ダンプトラック1を動作させるための操作装置(図示省略)が配置されている。キャブ6に搭乗したオペレータが操作装置を操作することによって、ダンプトラック1が走行(加速、制動、旋回)し、荷台5が起伏する。操作装置は、例えば、アクセルペダル、ブレーキペダル、ステアリング、走行レバー、ホイストレバーを含む。
【0016】
アクセルペダルは、ダンプトラック1の加速を指示する操作装置である。ブレーキペダルは、ダンプトラック1の制動を指示する操作装置である。ブレーキペダルは、例えば、走行モータの回生ブレーキを実施するリタードブレーキペダルと、油圧駆動により機械的にブレーキを実施する油圧ブレーキペダルとを含んでもよい。ステアリングは、ダンプトラック1の旋回方向を指示する操作装置である。走行レバーは、アクセルペダルが踏み込まれたときのダンプトラック1の進行方向(前進位置、後退位置、ニュートラル位置)を指示する操作装置である。ホイストレバーは、荷台5の起伏(着座姿勢、排土姿勢)を指示する操作装置である。
【0017】
また、デッキ9の下方には、ダンプトラック1を駆動する駆動回路10が配置されている。
図2は、ダンプトラック1に搭載される駆動回路10の回路図である。駆動回路10は、例えば、エンジン11と、主発電機12と、補助発電機13と、第1蓄電装置14と、第2蓄電装置15と、走行モータ16と、補機モータ17と、グリッドボックス18と、AD/DCコンバータ19、20と、第1DC/DCコンバータ21及び第2DC/DCコンバータ22(以下、「DC/DCコンバータ21、22」と表記することがある。)と、インバータ23、24と、チョッパ25と、電圧計26、27、28と、電流計29、30、31と、温度計32、33とを主に備える。
【0018】
エンジン11は、燃料を燃焼させることによって、ダンプトラック1を駆動するための駆動力を発生させる。主発電機12及び補助発電機13は、エンジン11の出力軸に接続されている。主発電機12及び補助発電機13は、エンジン11の駆動力が伝達されて、三相交流電力を発電する。主発電機12で発電された三相交流電力は、AC/DCコンバータ19で直流電力に変換されて、第1DC/DCコンバータ21、インバータ23、及びチョッパ25に供給される。補助発電機13で発電された三相交流電力は、AC/DCコンバータ20で直流電力に変換されて、第2蓄電装置15及びインバータ24に供給される。
【0019】
第1蓄電装置14は、AC/DCコンバータ19、第2DC/DCコンバータ22、インバータ23、及びチョッパ25に、第1DC/DCコンバータ21を介して接続されている。また、第2蓄電装置15は、AC/DCコンバータ20及びインバータ24に直接接続され、AC/DCコンバータ19、第1DC/DCコンバータ21、インバータ23、及びチョッパ25に、第2DC/DCコンバータ22を介して接続されている。
【0020】
すなわち、第1蓄電装置14は、第1DC/DCコンバータ21を介して走行モータ16に接続されている。また、第2蓄電装置15は、第1DC/DCコンバータ21と並列に接続された第2DC/DCコンバータ22を介して、第1蓄電装置14と並列に走行モータ16に接続されている。換言すれば、第1蓄電装置14及び第1DC/DCコンバータ21と、第2蓄電装置15及び第2DC/DCコンバータ22とは、走行モータ16に並列に接続されている。
【0021】
そして、第1蓄電装置14は、主発電機12で発電された電力、第2蓄電装置15から供給された電力、または走行モータ16で発電された回生電力を主に充電する。また、第1蓄電装置14は、蓄電した電力を主に走行モータ16に供給する。また、第2蓄電装置15は、主発電機12で発電された電力、補助発電機13で発電された電力、または走行モータ16で発電された回生電力を主に充電する。また、第2蓄電装置15は、蓄電した電力を主に走行モータ16及び補機モータ17に供給する。
【0022】
ここで、第1蓄電装置14は、第2蓄電装置15と比較して、出力特性(出力密度)が高く、蓄電可能量(容量)が少ない。第1蓄電装置14は、例えば、コンデンサ、キャパシタなどである。第2蓄電装置15は、第1蓄電装置14と比較して、出力特性(出力密度)が低く、蓄電可能量(容量)が多い。第2蓄電装置15は、例えば、リチウムイオン電池などである。但し、第1蓄電装置14及び第2蓄電装置15の具体例は、前述の例に限定されない。
【0023】
そのため、第1蓄電装置14は、例えば、走行モータ16に対する電力の入出力の急激な変化に追従して、電力を充放電することができる。その一方で、第1蓄電装置14は、長時間に亘って充電または放電を継続することができない。これに対して、第2蓄電装置15は、例えば、走行モータ16に対する電力の入出力の急激な変化に追従して、電力を充放電することができない。その一方で、第2蓄電装置15は、長時間に亘って充電または放電を継続することができる。
【0024】
走行モータ16には、AC/DCコンバータ19を介して主発電機12から供給される直流電力、第1DC/DCコンバータ21を介して第1蓄電装置14から供給される直流電力、または第2DC/DCコンバータ22を介して第2蓄電装置15から供給される直流電力が、インバータ23によって三相交流電力に変換されて供給される。そして、供給された電力によって回転する走行モータ16の回転駆動力が減速機(図示省略)を通じて後タイヤ4L、4Rに伝達されることによって、ダンプトラック1が走行(加速)する。以下、電力の供給を受けて走行モータ16が回転してダンプトラック1が走行することを、「力行走行」と表記する。
【0025】
一方、ブレーキペダルが踏み込まれて後タイヤ4L、4Rが減速すると、走行モータ16が三相交流電力(回生電力)を発電する。走行モータ16で発電された三相交流電力は、インバータ23で直流電力に変換されて、第1蓄電装置14または第2蓄電装置15に蓄電される。以下、走行モータ16が回生電力を発電しながらダンプトラック1が走行することを、「回生走行」と表記する。
【0026】
補機モータ17には、AC/DCコンバータ20を介して補助発電機13から供給される直流電力、または第2蓄電装置15から供給される直流電力が、インバータ24によって三相交流電力に変換されて供給される。そして、供給された電力によって補機モータ17が回転することによって、補機(図示省略)が駆動する。補機モータ17の具体例は特に限定されないが、例えば、ファンモータなどが該当する。
【0027】
グリッドボックス18には、走行モータ16が発電した回生電力がチョッパ25を介して供給される。そして、グリッドボックス18は、チョッパ25を介して供給される回生電力を、熱に変換して消費する抵抗器である。すなわち、グリッドボックス18は、走行モータ16が発電した回生電力のうち、第1蓄電装置14及び第2蓄電装置15に充電しきれなかった回生電力を消費する。
【0028】
電圧計26は、第1蓄電装置14と第1DC/DCコンバータ21との間の第1電圧V
1を計測する。電圧計27は、第2蓄電装置15と第2DC/DCコンバータ22との間の第2電圧V
2を計測する。電圧計28は、DC/DCコンバータ21、22とインバータ23(走行モータ16)との間の第3電圧V
3を計測する。そして、電圧計26~28は、計測した電圧を示す電圧信号を、後述するコントローラ40(
図3参照)に出力する。
【0029】
電流計29は、第1蓄電装置14と第1DC/DCコンバータ21との間の第1電流I1を計測する。電流計30は、第2蓄電装置15と第2DC/DCコンバータ22との間の第2電流I2を計測する。電流計31は、DC/DCコンバータ21、22とインバータ23(走行モータ16)との間の第3電流I3を計測する。そして、電流計29~31は、計測した電流を示す電流信号を、コントローラ40に出力する。
【0030】
温度計32は、第1蓄電装置14の温度を計測する。温度計33は、第2蓄電装置15の温度を計測する。そして、温度計32、33は、計測した温度を示す温度信号を、コントローラ40に出力する。
【0031】
図3は、ダンプトラック1のハードウェア構成図である。ダンプトラック1は、コントローラ40を備える。コントローラ40は、CPU(Central Processing Unit)41と、メモリ42とを備える。メモリ42は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、またはこれらの組み合わせで構成される。コントローラ40は、ROMまたはHDDに格納されたプログラムコードをCPU41が読み出して実行することによって、後述する処理を実現する。RAMは、CPU41がプログラムを実行する際のワークエリアとして用いられる。
【0032】
但し、コントローラ40の具体的な構成はこれに限定されず、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)などのハードウェアによって実現されてもよい。
【0033】
コントローラ40は、操作装置、電圧計26~28、電流計29~31、温度計32~33、車速センサ43、荷台角度センサ44、積載質量センサ45、及びGPS(Global Positioning System)アンテナ46から出力される各種信号に基づいて、エンジン11、AC/DCコンバータ19~20、DC/DCコンバータ21~22、インバータ23~24、及びチョッパ25を制御する。
【0034】
コントローラ40は、アクセルペダルが踏み込まれたことに応じて、エンジン11の回転数を上昇させ、インバータ23を制御して走行モータ16の回転数を上昇させる。また、コントローラ40は、ブレーキペダルが踏み込まれたことに応じて、エンジン11の回転数を下降させると共に、走行モータ16を電気ブレーキとして作動させる。さらに、コントローラ40は、ホイストレバーが操作されたことに応じて、ホイストシリンダを伸縮させることによって、荷台5の姿勢を変化させる。
【0035】
車速センサ43は、ダンプトラック1の走行速度を検知し、検知した走行速度を示す速度信号をコントローラ40に出力する。車速センサ43は、例えば、走行モータ16の回転速度に基づいて、ダンプトラック1の走行速度を検知すればよい。荷台角度センサ44は、車体フレーム2に対する荷台5の角度を検知し、検知した角度を示す角度信号をコントローラ40に出力する。積載質量センサ45は、荷台5に積載された積荷の質量を検知し、検知した質量を示す質量信号をコントローラ40に出力する。積載質量センサ45は、例えば、前タイヤ3L、3Rを支持するサスペンションの圧力に基づいて、荷台5に積載された積荷の質量を検知すればよい。GPSアンテナ46は、GPS衛星からの電波に基づいて地球上におけるダンプトラック1の現在位置及び進行方向を検知して、検知した現在位置及び進行方向を示す信号をコントローラ40に出力する。
【0036】
次に、
図4~
図12を参照して、コントローラ40の処理を説明する。
図4は、車体制御処理のフローチャートである。コントローラ40は、エンジン11駆動している間、
図4に示す車体制御処理を所定の時間間隔で繰り返し実行する。なお、車体制御処理は、例えば露天掘り鉱山において、土砂を積み込む積込場と土砂を放土する放土場との間を、ダンプトラック1が予め定められた経路を通って往復することを前提としている。ダンプトラック1が通る経路の地形情報(起伏、走行方向、距離など)は、メモリ42に予め記憶されているものとする。
【0037】
まず、コントローラ40は、目標SOC設定処理を実行する(S11)。目標SOC設定処理は、ダンプトラック1の現在の動作状態に基づいて次の動作状態を推定し、第1蓄電装置14の目標充電率(目標SOC1)を、推定した次の動作状態に対応する値に更新する処理である。目標SOC設定処理の詳細は、
図5~
図8を参照して後述する。
【0038】
次に、コントローラ40は、充放電処理を実行する(S12)。充放電処理は、第1蓄電装置14及び第2蓄電装置15の充放電を制御する処理である。より詳細には、充放電処理は、走行モータ16に対する電力の入出力の変化に追従して第1蓄電装置14に充放電させると共に、第1蓄電装置14の充電率が目標SOC設定処理で設定された目標充電率(目標SOC1)に近づくように第2蓄電装置15に充放電させる処理である。充放電処理の詳細は、
図9及び
図10を参照して後述する。
【0039】
次に、コントローラ40は、目標SOCリセット処理を実行する(S13)。目標リセット処理は、直近の目標SOC設定処理で設定した目標SOC1を維持する(すなわち、ダンプトラック1の状態が変化していない)か、リセットする(すなわち、ダンプトラック1の状態が変化した)かを判定する処理である。目標SOCリセット処理では、目標SOC1をリセットする場合に目標番号に0が設定され、目標SOC1を維持する場合に目標番号に0以外の値(本実施形態では、1~11)が設定される。目標SOCリセット処理の詳細は、
図11及び
図12を参照して後述する。
【0040】
次に、コントローラ40は、目標番号の値(すなわち、目標SOC1をリセットするか否か)を判定する(S14)。そして、コントローラ40は、目標番号に0が設定されている場合に(S14:Yes)、ステップS11~S13の処理を実行する。一方、コントローラ40は、目標番号に0以外の値が設定されている場合に(S14:No)、ステップS11を実行せずに、ステップS12~S13の処理を実行する。そして、コントローラ40は、ダンプトラック1の運転が終了するまで(S15:No)、ステップS11~S14の処理を繰り返し実行する。
【0041】
すなわち、コントローラ40は、ダンプトラック1の状態が変化しない間、同一の目標SOC1を用いて、ステップS12~S13の処理を繰り返し実行する。一方、コントローラ40は、充放電処理(S12)を繰り返し実行する過程において、ダンプトラック1の状態が変化したことに応じて(S14:No)、ダンプトラック1の新たな状態に対応する目標SOC1を設定する。
【0042】
次に、
図5~
図7を参照して、目標SOC1を設定する処理を説明する。
図5は、目標SOC設定処理のフローチャートである。
図6は、走行中SOC設定処理のフローチャートである。
図7は、巡航中SOC設定処理のフローチャートである。
図8は、第1~第3充電率マップの例を示す図である。
【0043】
まず、コントローラ40は、車速センサ43から出力される速度信号に基づいて、ダンプトラック1が停車中(例えば、走行速度が0.5km/h未満)か否かを判定する(S21)。次に、コントローラ40は、ダンプトラック1が停車中と判定した場合に(S21:Yes)、積載質量センサ45から出力される質量信号に基づいて、荷台5に積載された積荷の質量(以下、「積荷質量」と表記する。)が上限閾値MAXth以上か否かを判定する(S22)。上限閾値MAXthは、荷台5に積荷が満載されていると判断できる値に設定される。
【0044】
次に、コントローラ40は、積荷質量が上限閾値MAXth以上(すなわち、積荷が満載されている状態)と判定した場合に(S22:Yes)、荷台角度センサ44から出力される角度信号に基づいて、荷台5の姿勢を判定する(S23)。
【0045】
そして、コントローラ40は、ダンプトラック1が停車中で且つ荷台5の積荷質量が上限閾値MAXth以上である場合において(S21:Yes&S22:Yes)、荷台5が放土姿勢(放出姿勢)と判定した場合(S23:Yes)、現在は積荷を放土中であり(現在の動作状態)、次に空荷状態で走行する(次の動作状態)と推定する。この場合、コントローラ40は、目標SOC1に目標充電率S1(第1目標充電率)を設定し、目標番号に1を設定する(S24)。
【0046】
一方、コントローラ40は、ダンプトラック1が停車中で且つ荷台5の積荷質量が上限閾値MAXth以上である場合において(S21:Yes&S22:Yes)、荷台5が着座姿勢と判定した場合(S23:No)、現在は積荷を満載して放土場の近傍で放土待ちしており(現在の動作状態)、次に放土場に向けて積荷状態で走行する(次の動作状態)と推定する。この場合、コントローラ40は、目標SOC1に目標充電率S2(第2目標充電率)を設定し、目標番号に2を設定する(S25)。
【0047】
また、コントローラ40は、積荷質量が上限閾値MAXth未満と判定した場合に(S22:No)、積荷質量が下限閾値MINth以上か否かを判定する(S26)。下限閾値MINthは、荷台5に積荷が積載されていないと判断できる値(例えば、油圧ショベルのバケット1杯分の積荷の質量)に設定される。
【0048】
そして、コントローラ40は、ダンプトラック1が停車中で且つ荷台5の積荷質量が上限閾値MAXth未満である場合において(S21:Yes&S22:No)、積荷質量が下限閾値MINth以上と判定した場合(S26:Yes)、現在は積荷中であり(現在の動作状態)、次に積荷状態で走行する(次の動作状態)と推定する。この場合、コントローラ40は、目標SOC1に目標充電率S3(第3目標充電率)を設定し、目標番号に3を設定する(S27)。
【0049】
一方、コントローラ40は、ダンプトラック1が停車中で且つ荷台5の積荷質量が上限閾値MAXth未満である場合において(S21:Yes&S22:No)、積荷質量が下限閾値MINth未満と判定した場合(S26:No)、現在は空荷の状態で積込場の近傍で積込待ちしており(現在の動作状態)、次に空荷状態で走行する(次の動作状態)と推定する。この場合、コントローラ40は、目標SOC1に目標充電率S4(第4目標充電率)を設定し、目標番号に4を設定する(S28)。
【0050】
ここで、ステップS24、S25、S27、S28で推定される次の動作状態は、力行走行である点で共通する。そのため、目標充電率S1~S4は、第1蓄電装置14の満充電に近い値に設定される。また、空荷状態での走行に対応する目標充電率S1、S4は、積荷状態での走行に対応する目標充電率S2、S3より小さい値に設定される。さらに、目標充電率S1、S4は同一または近い値に設定され、目標充電率S2、S3は同一または近い値に設定される。
【0051】
また、コントローラ40は、ダンプトラック1が走行中と判定した場合に(S21:No)、走行中SOC設定処理を実行する(S29)。まず、コントローラ40は、ダンプトラック1の現在位置及び進行方向をGPSアンテナ46から取得する(S31)。また、コントローラ40は、ステップS31で取得した現在位置周辺の地形情報をメモリ42から取得する(S32)。そして、コントローラ40は、ステップS31で取得した現在位置及び進行方向と、ステップS32で取得した地形情報とに基づいて、次の動作状態を推定して目標SOC1を設定する。
【0052】
コントローラ40は、ダンプトラック1が走行中と判定した場合において(S21:No)、ダンプトラック1の進行方向の距離D1(第1距離)未満に登坂の入口があると判定した場合(S33:Yes)、現在は登坂に向けて走行中であり(現在の動作状態)、次に登坂を力行走行する(次の動作状態)と推定する。この場合、コントローラ40は、目標SOC1に目標充電率S5(第5目標充電率)を設定し、目標番号に5を設定する(S34)。
【0053】
また、コントローラ40は、ダンプトラック1が走行中と判定した場合において(S21:No)、ダンプトラック1の進行方向の距離D2(第2距離)未満に降坂の入口があると判定した場合(S35:Yes)、現在は降坂に向けて走行中であり(現在の動作状態)、次に降坂を回生走行する(次の動作状態)と推定する。この場合、コントローラ40は、目標SOC1に目標充電率S6(第6目標充電率)を設定し、目標番号に6を設定する(S36)。
【0054】
また、コントローラ40は、ダンプトラック1が走行中と判定した場合において(S21:No)、ダンプトラック1の進行方向の距離D3(第3距離)未満に曲線路の入口があると判定した場合(S37:Yes)、現在は曲線路に向けて走行中であり(現在の動作状態)、次に曲線路を減速しながら回生走行する(次の動作状態)と推定する。この場合、コントローラ40は、目標SOC1に目標充電率S7(第7目標充電率)を設定し、目標番号に7を設定する(S38)。
【0055】
ここで、力行走行に対応する目標充電率S5は、満充電に近い値に設定される。また、回生走行に対応する目標充電率S6、S7は、空充電に近い値に設定される。すなわち、目標充電率S6、S7は、目標充電率S5より小さい値に設定される。さらに、曲線路を走行する際の回生電力は、降坂を走行する際の回生電力より小さいと推定して、目標充電率S7は目標充電率S6より大きい値に設定される。
【0056】
さらに、コントローラ40は、ステップS33、S35、S37のいずれにも該当しないと判定した場合、巡航中SOC設定処理を実行する(S39)。そして、コントローラ40は、ステップS31で取得した現在位置及び進行方向と、ステップS32で取得した地形情報と、
図8に示す充電率マップとに基づいて、次の動作状態を推定して目標SOC1を設定する。
【0057】
コントローラ40は、ダンプトラック1が走行中と判定した場合において(S21:No)、ダンプトラック1が登坂を走行中である場合(S41:Yes)、現在は登坂を力行走行中であり(現在の動作状態)、次も引き続き登坂を力行走行する(次の動作状態)と推定する。この場合、コントローラ40は、
図8(A)に示す第1充電率マップに従って目標SOC1に目標充電率S8(第8目標充電率)を設定し、目標番号に8を設定する(S42)。
【0058】
また、コントローラ40は、ダンプトラック1が走行中と判定した場合において(S21:No)、ダンプトラック1が降坂を走行中である場合(S43:Yes)、現在は降坂を回生走行中であり(現在の動作状態)、次も引き続き降坂を回生走行する(次の動作状態)と推定する。この場合、コントローラ40は、
図8(B)に示す第2充電率マップに従って目標SOC1に目標充電率S9(第9目標充電率)を設定し、目標番号に9を設定する(S44)。
【0059】
さらに、コントローラ40は、ダンプトラック1が走行中と判定した場合において(S21:No)、ダンプトラック1が平地を走行中である場合(S45:Yes)、現在は平地を走行中であり(現在の動作状態)、次も引き続き平地を力行走行または回生走行する(次の動作状態)と推定する。この場合、コントローラ40は、
図8(C)に示す第3充電率マップに従って目標SOC1に目標充電率S10(第10目標充電率)を設定し、目標番号に10を設定する(S46)。
【0060】
図8に示す第1~第3充電率マップは、ダンプトラック1の走行速度と、目標充電率との対応関係を示すマップであって、予めメモリ42に記憶されている。第1~第3充電率マップは、走行速度が速いほど目標充電率が小さくなる点で共通する。これは、走行速度が遅いほど次に加速される可能性が高く、走行速度が速いほど次に減速(制動)される可能性が高いからである。
【0061】
また、
図8(A)及び
図8(B)に一点鎖線で示すように、第2充電率マップの目標充電率の平均値は、第1充電率マップの目標充電率の平均値より小さく設定されている。換言すれば、同一の走行速度において、第2充電マップにおける目標充電率は、第1充電マップにおける目標充電率より小さく設定されている。これは、回生走行を想定した第2充電率マップでは、力行走行を想定した第1充電率マップより第1蓄電装置14の空き容量を多く確保する必要があるからである。
【0062】
さらに、
図8(A)~
図8(C)に示すように、ダンプトラック1の低速域(走行速度が閾値未満)において、第3充電率マップの目標充電率は、第2充電率マップの目標充電率より高く設定されている。一方、ダンプトラック1の高速域(走行速度が閾値以上)において、第3充電率マップの目標充電率は、第1充電率マップの目標充電率より低く設定されている。すなわち、第3充電率マップにおける目標充電率の変化率(傾き)は、第1充電率マップ及び第2充電率マップより大きく設定されている。これは、力行走行及び回生走行の両方を想定した第3充電率マップでは、次に力行走行をする可能性が高い低速域では第1蓄電装置14を満充電に近づけ、次に回生走行をする可能性が高い高速域では第1蓄電装置14を空充電に近づける必要があるからである。
【0063】
一方、コントローラ40は、ステップS41、S43、S45のいずれにも該当しないと判定した場合、エラーだと判定して、目標SOC1に目標充電率S11(第11目標充電率)を設定し、目標番号に11を設定する(S47)。
【0064】
次に、
図9及び
図10を参照して、充放電処理を説明する。
図9は、充放電処理のフローチャートである。
図10は、充放電処理を実現するコントローラ40の機能ブロック図である。
【0065】
まず、コントローラ40は、直近の目標SOC設定処理(S11)で設定された目標SOC1に対応する第1目標電圧V1refを決定する(S51)。なお、設定された目標SOC1が大きいほど、第1目標電圧V1refも大きな値になる。また、コントローラ40は、電圧計28で計測された第3電圧V3と、予め定められた第3目標電圧V3refとを比較する(S52)。第3目標電圧V3refは、予め定められた固定値(例えば、2400V)である。
【0066】
第3電圧V3が第3目標電圧V3ref未満になる場合とは(S52:Yes)、走行モータ16が発生させる駆動力が増加(すなわち、走行モータ16が必要とする電力が増加)した場合である。この場合、コントローラ40は、第3電圧V3が第3目標電圧V3refに近づくように(すなわち、走行モータ16が必要とする電力を供給するために)、第1蓄電装置14に放電させる(S53)。
【0067】
次に、コントローラ40は、電圧計26で計測された第1電圧V1と、ステップS51で決定された第1目標電圧V1refとを比較する(S54)。第1電圧V1が第1目標電圧V1ref未満になる場合とは(S54:Yes)、第1蓄電装置14が放電した結果、第1蓄電装置14の現在の充電率が、目標SOC1より小さくなっている場合である。この場合、コントローラ40は、第1電圧V1が第1目標電圧V1refに近づくように(すなわち、第1蓄電装置14の充電率が目標SOC1に近づくように)、第2蓄電装置15に放電させる(S55)。
【0068】
一方、第1電圧V1が第1目標電圧V1ref以上になる場合とは(S54:No)、第1蓄電装置14が放電中だが、第1蓄電装置14の現在の充電率には余裕があり、目標SOC1よりも大きい場合である。この場合、コントローラ40は、ステップS55の処理を実行しない。
【0069】
また、第3電圧V3が第3目標電圧V3ref以上になる場合とは(S52:No)、ダンプトラック1の制動力が増加(すなわち、走行モータ16が発電した回生電力が増加)した場合である。そこで、コントローラ40は、第3電圧V3が第3目標電圧V3refに近づくように(すなわち、走行モータ16が発電した回生電力を吸収するために)、第1蓄電装置14に充電させる(S56)。
【0070】
次に、コントローラ40は、電圧計26で計測された第1電圧V1と、ステップS51で決定された第1目標電圧V1refとを比較する(S57)。第1電圧V1が第1目標電圧V1ref以上になる場合とは(S57:Yes)、第1蓄電装置14が充電した結果、第1蓄電装置14の現在の充電率が、目標SOC1以上になっている場合である。この場合、コントローラ40は、第1電圧V1が第1目標電圧V1refに近づくように(すなわち、第1蓄電装置14の充電率が目標SOC1に近づくように)、第2蓄電装置15に充電させる(S58)。
【0071】
一方、第1電圧V1が第1目標電圧V1ref未満になる場合とは(S57:No)、第1蓄電装置14が充電中だが、第1蓄電装置14の現在の充電率には空きがあり、目標SOC1よりも小さい場合である。この場合、コントローラ40は、ステップS58の処理を実行しない。
【0072】
ステップS53、S56において、コントローラ40の電圧制御器50、電流指令リミッタ51、電流制御器52が、第1DC/DCコンバータ21を制御する。まず、電圧制御器50は、V3ref-V3に対応する第1目標電流I1refを算出する。そして、電流指令リミッタ51及び電流制御器52は、I1ref-I1が0に近づくように(すなわち、走行モータ16に対する電力の入出力の変化に追従するように)、第1DC/DCコンバータ21を制御する。
【0073】
また、ステップS55、S58において、コントローラ40の電圧制御器53、電流指令リミッタ54、電流制御器55が、第2DC/DCコンバータ22を制御する。まず、電圧制御器53は、V1ref-V1に対応する第2目標電流I2refを算出する。そして、電流指令リミッタ54及び電流制御器55は、I2ref-I2が0に近づくように(すなわち、第1蓄電装置14の充電率が目標SOC1に近づくように)、第2DC/DCコンバータ22を制御する。
【0074】
目標SOC1が更新された直後のステップS53、S56では、第1蓄電装置14の充放電量が最も大きくなる。すなわち、第1蓄電装置14は、走行モータ16に対する電力の入出力の変化に追従して、急速に充放電を行う。一方、ステップS55、S58で第2蓄電装置15に充放電を行わせることによって、第3目標電圧V3refとは無関係に第3電圧V3を増減させる。第1蓄電装置14は、第3電圧V3が第3目標電圧V3refに近づくように、充放電処理を繰り返し実行することによって、結果的に第1蓄電装置14の充電率を目標SOC1に近づけることができる。
【0075】
次に、
図11及び
図12を参照して、目標SOCリセット処理を説明する。
図11は、目標SOCリセット処理のフローチャートである。
図12は、走行中SOCリセット処理のフローチャートである。
【0076】
まず、コントローラ40は、目標番号が5未満か否かを判定する(S61)。直近の目標SOC設定処理において、目標番号に5未満の値が設定されるのはダンプトラック1が停車している場合であり、目標番号に5以上の値が設定されるのはダンプトラック1が走行している場合である。そして、コントローラ40は、目標番号が5未満である場合に(S61:Yes)、ダンプトラック1が停車中か否かを判定する(S62)。ステップS62の処理は、
図5のステップS21と共通する。
【0077】
次に、コントローラ40は、ダンプトラック1が走行中と判定した場合に(S62:No)、目標番号に0を設定して(S63)、目標SOCリセット処理を終了する。一方、コントローラ40は、ダンプトラック1が停車中と判定した場合に(S62:Yes)、目標番号が2か否かを判定する(S64)。
【0078】
次に、コントローラ40は、目標番号が2である場合に(S64:Yes)、荷台5が放土姿勢か否かを判定する(S65)。ステップS65の処理は、
図5のステップS23と共通する。次に、コントローラ40は、荷台5が放土姿勢と判定した場合に(S65:Yes)、目標番号に0を設定して(S66)、目標SOCリセット処理を終了する。一方、コントローラ40は、荷台5が着座姿勢と判定した場合に(S65:No)、ステップS66を実行せずに(すなわち、目標番号を変更せずに)、目標SOCリセット処理を終了する。
【0079】
次に、コントローラ40は、目標番号が2でない場合に(S64:No)、目標番号が4か否かを判定する(S67)。次に、コントローラ40は、目標番号が4である場合に(S67:Yes)、積荷質量が下限閾値MINth以上か否かを判定する(S68)。ステップS67の処理は、
図5のステップS26と共通する。
【0080】
次に、コントローラ40は、積荷質量が下限閾値MINth以上と判定した場合に(S68:Yes)、目標暗号に0を設定して(S69)、目標SOCリセット処理を終了する。また、コントローラ40は、積荷質量が下限閾値MINth未満と判定した場合に(S68:No)、ステップS69を実行せずに(すなわち、目標番号を変更せずに)、目標SOCリセット処理を終了する。さらに、コントローラ40は、目標番号が4でない(すなわち、目標番号が1または3である)場合に(S67:No)、目標暗号に0を設定して(S69)、目標SOCリセット処理を終了する。
【0081】
一方、コントローラ40は、目標番号が5以上である場合に(S61:No)、走行中SOCリセット処理を実行する(S70)。まず、コントローラ40は、目標番号が8未満か否かを判定する(S71)。そして、コントローラ40は、目標番号が8未満である場合に(S71:Yes)、ダンプトラック1の現在位置及び進行方向(S72)と、地形情報(S73)とを取得する。ステップS72-S73の処理は、
図6のS31-S32と共通する。
【0082】
次に、コントローラ40は、目標番号の設定値を判定する(S74、S75)。そして、コントローラ40は、目標番号が5である場合に(S74:Yes)、ステップS76-S77の処理を実行して、走行中SOCリセット処理を終了する。また、コントローラ40は、目標番号が6である場合に(S75:Yes)、ステップS78-S79の処理を実行して、走行中SOCリセット処理を終了する。さらに、コントローラ40は、目標番号が7である場合に(S75:No)、ステップS80-S81の処理を実行して、走行中SOCリセット処理を終了する。
【0083】
より詳細には、コントローラ40は、目標番号が5である場合に(S74:Yes)、ダンプトラック1が登坂走行中か否かを判定する(S76)。ステップS76の処理は、
図7のステップS41と共通する。そして、コントローラ40は、ダンプトラック1が登坂走行中と判定した場合に(S76:Yes)、目標暗号に0を設定して(S77)、走行中SOCリセット処理を終了する。また、コントローラ40は、ダンプトラック1が登坂走行中でないと判定した場合に(S76:No)、ステップS77を実行せずに(すなわち、目標番号を変更せずに)、走行中SOCリセット処理を終了する。
【0084】
また、コントローラ40は、目標番号が6である場合に(S75:Yes)、ダンプトラック1が降坂走行中か否かを判定する(S78)。ステップS78の処理は、
図7のステップS43と共通する。そして、コントローラ40は、ダンプトラック1が降坂走行中と判定した場合に(S78:Yes)、目標暗号に0を設定して(S79)、走行中SOCリセット処理を終了する。また、コントローラ40は、ダンプトラック1が降坂走行中でないと判定した場合に(S78:No)、ステップS79を実行せずに(すなわち、目標番号を変更せずに)、走行中SOCリセット処理を終了する。
【0085】
さらに、コントローラ40は、目標番号が7である場合に(S75:No)、ダンプトラック1が旋回走行中か否かを判定する(S80)。そして、コントローラ40は、ダンプトラック1が旋回走行中と判定した場合に(S80:Yes)、目標暗号に0を設定して(S81)、走行中SOCリセット処理を終了する。また、コントローラ40は、ダンプトラック1が旋回走行中でないと判定した場合に(S80:No)、ステップS81を実行せずに(すなわち、目標番号を変更せずに)、走行中SOCリセット処理を終了する。
【0086】
一方、コントローラ40は、目標番号が8以上である場合に(S71:No)、目標暗号に0を設定して(S82)、走行中SOCリセット処理を終了する。目標番号が8以上の場合とは、ダンプトラック1が巡航中の場合(S42、S44、S46)なので、目標SOC1を毎回リセットして、目標SOC1を現在の速度に応じた値に更新する必要があるからである。
【0087】
次に、
図13~
図15を参照して、駆動回路10の変形例を説明する。
図13は、変形例1に係る駆動回路10Aの回路図である。
図14は、変形例2に係る駆動回路10Bの回路図である。
図15は、変形例3に係る駆動回路10Cの回路図である。なお、
図2との共通点の詳細な説明は省略し、相違点を中心に説明する。
【0088】
図13に示すように、変形例1に係る駆動回路10Aは、走行モータ16に対する第1蓄電装置14、第2蓄電装置15、DC/DCコンバータ21、22の配置が、
図2の駆動回路10と相違する。より詳細には、第1蓄電装置14は、第1DC/DCコンバータ21を介して、走行モータ16に接続されている。また、第2蓄電装置15は、直列に接続されたDC/DCコンバータ21、22を介して、走行モータ16に接続されている。換言すれば、第1蓄電装置14と、第2蓄電装置15及び第2DC/DCコンバータ22とは、第1DC/DCコンバータ21(より詳細には、走行モータ16)に並列に接続されている。
【0089】
また、
図14に示すように、変形例1に係る駆動回路10Bは、主発電機12、補助発電機13、補機モータ17、AC/DCコンバータ19、20、及びインバータ24を、
図2に示す駆動回路10から省略したものに相当する。さらに、
図15に示すように、変形例2に係る駆動回路10Cは、主発電機12、補助発電機13、補機モータ17、AC/DCコンバータ19、20、及びインバータ24を、
図13に示す駆動回路10Aから省略したものに相当する。
図14及び
図15に示すように、本発明は、エンジン11、主発電機12、補助発電機13を搭載せず、第1蓄電装置14及び第2蓄電装置15に蓄電された電力のみで走行するダンプトラックにも適用可能である。
【0090】
次に、
図16~
図18を参照して、車体制御処理を実行した場合の各値の推移を説明する。
図16は、ダンプトラック1の走行中における目標SOC1の推移を示す図である。
図16に示すように、ダンプトラック1が空荷停止(a)→積込(b)→積載走行(c)→積荷停止(d)→放土(e)→空荷走行(f)→再び空荷停止(a)の各区間を走行すると仮定する。なお、積載走行(c)には、平地走行(c1)、登坂走行(c2)、再び平地走行(c3)といった勾配変化を含む。同様に、空荷走行(f)においては、平地走行(f1)、降坂走行(f2)、再び平地走行(f3)を含む。
【0091】
空荷停止(a)では、車速が停止判定値(例えば、0.5km/h未満など)より小さく、積荷質量がMAXthより小さい状態である。そのため、
図5に示す目標SOC設定処理に従って「空荷停車中」と判断され、目標SOC1は目標充電率S4に設定される。
【0092】
積込(b)では、積み込みが開始され(b1)、しばらくして積荷質量がMINth以上となったため(b2)、
図5に従って「積み込み中」と判断され、目標SOC1は目標充電率S3に設定される。
【0093】
積載走行(c)の平地走行(c1)では、現在位置が登坂、降坂、及び曲線路の入口まで距離があるため、
図7に従って「平地走行中」と判断され、
図8(C)に示す第3充電率マップに従って目標SOC1は目標充電率S10に設定される(c11)。そして、現在位置が登坂入口まで距離D1以下になると「登坂直前」と判断され、
図6に従って目標SOC1は目標充電率S5に設定される(c12)。
【0094】
積載走行(c)の登坂走行(c2)では、現在位置より車体が登坂に入るため、
図7に従って「登坂走行中」と判断され、
図8(A)に示す第1充電率マップに従って目標SOC1は目標充電率S8に設定される。
【0095】
積載走行(c)の平地走行(c3)では、現在位置より車体が登坂終了して平地に入るため、
図7に従って「平地走行中」と判断され、
図8(C)に示す第3充電率マップに従って目標SOC1は目標充電率S10に設定される。
【0096】
積荷停止(d)では、車体が停止し、積荷質量がMAXthより大きく、荷台5が着座姿勢であるため、
図5に従って「放土待ち停車中」と判断され、目標SOC1は目標充電率S2に設定される。
【0097】
放土(e)では、放土するため荷台角度が増加して放土姿勢になったため、
図5に従って「放土中」と判断され、目標SOC1は目標充電率S1に設定される。
【0098】
空荷走行(f)の平地走行(f1)では、現在位置が登坂、降坂、及び曲線路の入口まで距離があるため、
図7に従って「平地走行中」と判断され、
図8(C)に示す第3充電率マップに従って目標SOC1は目標充電率S10に設定される(f11)。そして、現在位置が降坂入口まで距離D2未満になると「降坂直前」と判断され、
図6に従って目標SOC1は目標充電率S6に設定される(f12)。
【0099】
空荷走行(f)の降坂走行(f2)では、現在位置が降坂に入ったため、
図7に従って「降坂走行中」と判断され、
図8(B)に示す第2充電率マップに従って目標SOC1は目標充電率S9に設定される。
【0100】
空荷走行(f)の平地走行(f3)では、降坂終了して平地に入ったため、
図7に従って「平地走行中」と判断され、
図8(C)に示す第3充電率マップに従って目標SOC1は目標充電率S10に設定される。そして、空荷走行(f)の後は、再び空荷停止(a)に回帰するので、
図5に従って目標SOC1は目標充電率S4に設定される。
【0101】
図17は、
図2及び
図14の駆動回路10、10Bにおける電圧V
1、V
2及び電流I
1、I
2の推移である。なお、
図17では、
図16に示す目標SOC1(S1~S10)に対応する第1目標電圧V
1refを、V
S1~V
S10と表記する。
【0102】
空荷停止(a)では、目標SOC1は満充電または満充電に近い値S4となる。
図17の例では、V
1<V
S4であるため、第1蓄電装置14を充電して第1電圧V
1を増加させる必要がある。この場合は、第2DC/DCコンバータ22を制御して、第2蓄電装置15に放電させる。これにより、第2電流I
2は放電側に流れ、第3電圧V
3が増加する。その結果、第3電圧V
3が第3目標電圧V
3refより大きくなるため、第3電圧V
3を下げる方向に第1DC/DCコンバータ21を制御して、第1電流I
1を第1蓄電装置14の充電側に流す。これにより、第1電圧V
1が第1目標電圧V
S4に近づく。
【0103】
積込(b)では、積み込みが開始されてしばらくの間(b1)は、目標SOC1は目標充電率S4に維持されているため、空荷停止(a)と同一の推移をする。そして、積荷質量がMINth以上となると(b2)、第1電圧V1と第1目標電圧VS3との差は(b1)時よりも大きくなるため、第2電流I2をさらに放電側に流す。その結果、空荷停止(a)と同様に第3電圧V3が増加して、第3目標電圧V3refより大きくなる。そして、第3電圧V3を下げるために、第1電流I1を第1蓄電装置14の充電側に流す。その結果、第1電圧V1が第1目標電圧VS3に近づく。
【0104】
平地走行(c1)の区間(c11)では、積荷停止状態から加速するため、走行モータ16が力行して第3電圧V3が大きく低下する。第3電圧V3を第3目標電圧V3refまで増加させるため、第1電流I1が放電側に流される。それに伴い、第1電圧V1が低下する。第1電圧V1が第1目標電圧VS10より小さいため、第2電流I2を放電側に流して、第3電圧V3を増加させようとするが、走行モータ16の力行で電力を消費するため、第3電圧V3はほぼ変化しない。第2蓄電装置15からの放電電力量が、走行モータ16の消費電力量より小さいため、第1電圧V1は減少する。加速が終了して、定速走行状態になると、走行モータ16による消費電力量が小さくなり、第2蓄電装置15からの放電電力量が上回る。このため、第3電圧V3は第3目標電圧V3refより少し大きくなり、第1電流I1が充電側に流れ、第1電圧V1は徐々に増加する。
【0105】
平地走行(c1)の区間(c12)では、第1目標電圧VS10より第1目標電圧VS5の方が大きい。このため、V1<VS5となり、第2電流I2の放電側電流は増加し、第1電圧V1が増加して第1目標電圧VS5に近づく。
【0106】
登坂走行(c2)では、走行モータ16は最大出力で力行するため、第3電圧V3が低下する。これを補うため第1電流I1を放電側に流すので、第1電圧V1が低下する。これにより、V1<VS8となるため、第2電流I2は放電側に流れて第1電圧V1を増加させようとする。しかしながら、走行モータ16の消費電力が大きいため、第1電圧V1は減少する。
【0107】
平地走行(c3)では、走行モータ16の消費電力は登坂走行(c2)に比べ小さくなるため、第3電圧V3の低下の程度も小さくなる。これに伴い、第1電流I1の放電側電流も小さくなる。これに加え、V1<VS10となるため、第2電流I2は放電側に流れて第3電圧V3を補うため、第1電圧V1の減少速度も緩まる。平地走行の開始当初は加速が必要であるため走行モータ16は力行側に作動するが、積荷停止(d)の停止位置近くになると車体は減速するため、走行モータ16は回生側に作動し、第1電流I1を充電側に流す。これにより第1電圧V1は増加するが、V1<VS10の状態は維持されるため、第2電流I2は引き続き放電側に流され、第1電圧V1の増加を促す。
【0108】
積荷停止(d)では、V1<VS2であるため、第2電流I2は放電側に流され、V3>V3refとなり、第1電流I1が充電側に流れて第1電圧V1の増加を促す。V1=VS2となった時点で、第2電流I2の放電側電流は停止する。
【0109】
放土(e)では、V1>VS1であるため、第2電流I2は充電側に流され、V3<V3refとなる。これにより、第1電流I1が放電側に流れ、第1電圧V1が低下する。V1=VS1となった時点で、第2電流I2の充電側電流は停止する。
【0110】
平地走行(f1)の区間(f11)では、空荷停止状態から加速するため、走行モータ16が力行し、第3電圧V3が低下する。但し、第3電圧V3の低下幅は区間(c11)よりは小さい。第3電圧V3を第3目標電圧V3refまで増加させるため、第1電流I1は放電側に流される。それに伴い、第1電圧V1が低下する。第1電圧V1が第1目標電圧VS10より小さいため、第2電流I2を放電側に流して、第3電圧V3を増加させようとする。しかしながら、走行モータ16の力行で電力を消費するため、第3電圧V3はほぼ変化しない。そして、第2蓄電装置15からの放電電力量が、走行モータ16の消費電力量より小さいため、第1電圧V1は減少する。その後、加速が終了して定速走行状態になると、走行モータ16による消費電力量が小さくなる。これにより、第2蓄電装置15からの放電電力量が、走行モータ16による消費電力量より大きくなると、V3>V3refとなり、第1電流I1は充電側に流れ、第1電圧V1は徐々に増加する。
【0111】
平地走行(f1)の区間(f12)では、第1目標電圧VS10より第1目標電圧VS6のほうが小さい。このため、V1>VS6となり、第2電流I2の充電側電流は増加し、V3<V3refとなる。これにより、第1電流I1が放電側に流れ、第1電圧V1が低下して第1目標電圧VS6に近づく。そして、V1=VS6となった時点で、第2電流I2の充電側電流は停止する。
【0112】
降坂走行(f2)では、走行モータ16が最大出力で回生するため、第3電圧V3が増加する。第3電圧V3を減少させるため、第1電流I1を充電側に流し、第1電圧V1が増加する。V1>VS9となるため、第2電流I2は充電側に最大限流れて第1電圧V1を低下させようとするが、走行モータ16の回生電力が大きいため、第1電圧V1は増加する。
【0113】
平地走行(f3)では、降坂から平地に入るため、走行モータ16は減速をやめ、回生電力は無くなる。しかし、V1>>VS10の状態は継続するため、第1電圧V1を低下させるために、第2電流I2は充電側に流れるので、第2電圧V2は増加する。これに伴い、第3電圧V3は減少する。その結果、V3<V3refとなり、今度は第3電圧V3を上げるために、第1電流I1は放電側に流れ、第1電圧V1は減少して第1目標電圧VS10に近づく。
【0114】
空荷停止(a)では、停止位置近くになると車体は減速するため、走行モータ16は回生側に作動し、第1電流I1を充電側に流す。これにより、第1電圧V1はさらに増加し、V1>VS10の状態が維持されるため、第2電流I2は引き続き充電側に流され、第1電圧V1の減少を促す。
【0115】
2回目の空荷停止(a)の初期は、走行モータ16は停止している。このため、力行も回生もしないが、V1>VS4の状態にあるため、第2電流I2が充電側に流れ、V3<V3refとなっている。これにより、第3電圧V3を増加させるために、第1電流I1は放電側に流れ、第1電圧V1は低下する。第1電圧V1が第1目標電圧VS4に近づくにつれ、第2電流I2は0となり、V3=V3refとなる。これにより、第1電流I1も0となる。
【0116】
上記のプロセスの結果、第3電圧V3と第1電流I1のタイミングチャートの形状は同じとなる。また、V1<V1refのときは第2電流I2が放電側になり、V1>V1refのときは第2電流I2が充電側になる。
【0117】
図18は、
図13及び
図15の駆動回路10A、10Cにおける電圧V
1、V
2及び電流I
1、I
2の推移である。
図17との主な相違点は、以下の通りである。まず、車体停止中及び定常速度走行中の走行モータ16が大きな動作をしていない場合は、
図17では第2電流I
2の流れにより、第3電圧V
3が増減したが、
図18では第3電圧V
3は第2電流I
2の流れの影響を受けず、オペレータ操作による車体加減速のみで変動する。また、第1蓄電装置14の充放電制御は、
図17の場合はDC/DCコンバータ21、22の両方を制御する必要があるが、
図18の場合は第2DC/DCコンバータ22のみの制御で実現可能である。
【0118】
図17及び
図18で推移に差が生じるのは、第3電圧V
3と第1電流I
1のみであり、さらに車体停止状態及び定速走行時において、走行モータ16の力行及び回生による第3電圧V
3の変動が小さい区間のみである。具体的には区間(a)、(b)、(c1)、(d)、(e)、(f1)である。しかし、第3電圧V
3および第1電流I
1の推移に違いはあっても、
図17の場合と以下の区間(a)~(f)の制御方法には変更がない。
【0119】
空荷停止(a)では、V1<VS4であるため、第1蓄電装置14を充電し、第1電圧V1を増加させる必要がある。この場合は、第2DC/DCコンバータ22を制御し、第2蓄電装置15を放電する。これにより、第2電流I2は放電側に流れ、第1蓄電装置14は充電されるため、第1電圧V1が増加して第1目標電圧VS4に近づく。
【0120】
積込(b)では、積み込みが開始されてしばらくの間は、空荷停止(a)と同一の推移をする(b1)。そして、積荷質量がMINth以上となると(b2)、第1電圧V1と第1目標電圧VS3との差は(b1)時よりも大きくなる。このため、第2電流I2をさらに放電側に流す。その結果、第1蓄電装置14は充電され、第1電圧V1が増加して第1目標電圧VS3に近づく。
【0121】
平地走行(c1)の区間(c11)では、積荷停止状態から加速するため、走行モータ16が力行し、第3電圧V3が大きく低下する。第3電圧V3を第3目標電圧V3refまで増加させるため、第1電流I1は放電側に流される。それに伴い、第1電圧V1が低下する。第1電圧V1が第1目標電圧VS10より小さいため、第2電流I2を放電側に流して、第1電圧V1を増加させようとするが、走行モータ16の力行の消費電力量が大きいため、第1電圧V1は減少する。加速が終了して定速走行状態になると、走行モータ16による消費電力量が小さくなり、第2蓄電装置15からの放電電力量が上回るため、第2電流I2の充電側電流により、第1電圧V1は徐々に増加する。
【0122】
平地走行(c1)の区間(c12)では、第1目標電圧VS10より第1目標電圧VS5のほうが大きいため、V1<VS5となる。これにより、第2電流I2の放電側電流は増加し、第1電圧V1が増加して第1目標電圧VS5に近づく。
【0123】
積荷停止(d)では、V1<VS2であるため、第2電流I2は放電側に流され、第1電圧V1の増加を促す。そして、V1=VS2となった時点で、第2電流I2の放電側電流は停止する。
【0124】
放土(e)では、V1>VS1であるため、第2電流I2は充電側に流され、第1電圧V1が低下する。そして、V1=VS1となった時点で、第2電流I2の充電側電流は停止する。
【0125】
平地走行(f1)の区間(f11)では、空荷停止状態から加速するため、走行モータ16が力行して第3電圧V3が低下する。但し、第3電圧V3の低下幅は区間(c11)より小さい。第3電圧V3を第3目標電圧V3refまで増加させるため、第1電流I1は放電側に流される。それに伴い、第1電圧V1が低下する。第1電圧V1が第1目標電圧VS10より小さいため、第2電流I2を放電側に流して第1電圧V1を増加させようとするが、走行モータ16の力行の消費電力量が大きいため、第1電圧V1は減少する。加速が終了して定速走行状態になると、走行モータ16による消費電力量が小さくなり、第2蓄電装置15からの放電電力量のほうが大きいため、第2電流I2の充電放電側電流により第1蓄電装置14は充電され、第1電圧V1は徐々に増加する。
【0126】
平地走行(f1)の区間(f12)では、第1目標電圧VS10より第1目標電圧VS6のほうが小さいため、V1>VS6となり、第2電流I2は充電側に流れ、第1蓄電装置14は放電されて第1電圧V1は低下する。そして、V1=VS6となった時点で、第2電流I2の充電側電流は停止する。
【0127】
上記の実施形態によれば、例えば以下の作用効果を奏する。
【0128】
上記の実施形態によれば、第1蓄電装置14の目標SOC1をダンプトラック1の次の動作状態に対応する値に更新することによって、ダンプトラック1の回生時に第1蓄電装置14が満充電になったり、ダンプトラック1の力行時に第1蓄電装置14が空充電になるのを防止できる。これにより、充放電処理を中断することなくダンプトラック1を走行させることができる。
【0129】
一例として、ダンプトラック1の停車中(現在の動作状態)において、次の動作状態が積荷走行か空荷走行かによって目標SOC1を変更する(
図5)。他の例として、ダンプトラック1の進行方向に登坂、降坂、曲線路の入口が近づいたことによって目標SOC1を変更する(
図6)。さらに他の例として、ダンプトラック1が登坂、降坂、平地のいずれを巡航していることによって目標SOC1を変更する(
図7)。このように、ダンプトラック1の次の動作状態を細かく分類することによって、目標SOC1に適切な値S1~S10を設定できる。
【0130】
また、
図13及び
図15のように、DC/DCコンバータ21、22を直列に接続することによって、第1DC/DCコンバータ21のみを大電流に対応させればよく、第2DC/DCコンバータ22を小型化することができる。但し、駆動回路の構成は
図13及び
図15に限定されず、
図2及び
図14でもよい。
【0131】
上述した実施形態は、本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をそれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。当業者は、本発明の要旨を逸脱することなしに、他の様々な態様で本発明を実施することができる。
【符号の説明】
【0132】
1 ダンプトラック
2 車体フレーム
3L,3R 前タイヤ
4L,4R 後タイヤ
5 荷台
6 キャブ
7L,7R ホイストシリンダ
8 ヒンジピン
9 デッキ
10,10A,10B,10C 駆動回路
11 エンジン
12 主発電機
13 補助発電機
14 第1蓄電装置
15 第2蓄電装置
16 走行モータ
17 補機モータ
18 グリッドボックス
19,20 AC/DCコンバータ
21 第1DC/DCコンバータ
22 第2DC/DCコンバータ
23,24 インバータ
25 チョッパ
26,27,28 電圧計
29,30,31 電流計
32,33 温度計
40 コントローラ
42 メモリ
43 車速センサ
44 荷台角度センサ
45 積載質量センサ
46 GPSアンテナ
50,53 電圧制御器
51,54 電流指令リミッタ
52,55 電流制御器