(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123510
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】覗き窓、覗き窓付きスナウト、および、覗き窓の異物付着抑制方法
(51)【国際特許分類】
C23C 2/00 20060101AFI20240905BHJP
【FI】
C23C2/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030985
(22)【出願日】2023-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184859
【弁理士】
【氏名又は名称】磯村 哲朗
(74)【代理人】
【識別番号】100123386
【弁理士】
【氏名又は名称】熊坂 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100196667
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100130834
【弁理士】
【氏名又は名称】森 和弘
(72)【発明者】
【氏名】相原 千洋
(72)【発明者】
【氏名】安福 悠祐
(72)【発明者】
【氏名】加▲来▼ 慶彦
【テーマコード(参考)】
4K027
【Fターム(参考)】
4K027AD10
(57)【要約】
【課題】窓部からの視界が遮られてしまうことを抑制しつつ、窓部に対する異物の付着を抑制することのできる覗き窓、覗き窓付きスナウト、及び覗き窓のヒューム付着抑制方法を提供する。
【解決手段】窓部8とヘッダー部9とを備えており、筐体5の内部を確認する覗き窓7であって、ヘッダー部9と筐体5とを予め設定された間隔をあけて連通する筒状のスペーサー部10と、ヘッダー部9とスペーサー部10との間に設けられており、スペーサー部10の内径よりも小さい内径の絞り部11と、ヘッダー部9に筐体5の内部の圧力よりも高い圧力のガスを供給する供給口とを備えている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窓部と、前記窓部が形成されたヘッダー部とを備えており、前記窓部を介して筐体の内部を確認する覗き窓であって、
前記ヘッダー部と前記筐体とを予め設定された間隔をあけて連通する筒状のスペーサー部と、
前記ヘッダー部と前記スペーサー部との間に設けられており、前記スペーサー部の内径よりも小さい内径の絞り部と、
前記ヘッダー部に、前記筐体の内部の圧力よりも高い圧力のガスを供給する供給口と
を備えている覗き窓。
【請求項2】
前記ヘッダー部の内部において、前記窓部の少なくとも一部を覆って前記窓部に対する異物の付着を抑制する抑制装置を更に備えている請求項1に記載の覗き窓。
【請求項3】
前記ヘッダー部の内部において、前記窓部に付着した異物を除去する除去装置を更に備えている請求項1に記載の覗き窓。
【請求項4】
前記窓部の外径をd、前記スペーサー部の内径をA、前記絞り部の内径をa、前記窓部と前記筐体との間の距離をB、前記窓部から前記絞り部までの距離をbとしたときに、(a-d)/b>(A-d)/Bの関係を満たす請求項1に記載の覗き窓。
【請求項5】
前記ヘッダー部の直径は、前記スペーサー部の直径よりも大きい請求項1に記載の覗き窓。
【請求項6】
前記抑制装置は、シャッターである請求項2に記載の覗き窓。
【請求項7】
前記除去装置は、ワイパーである請求項3に記載の覗き窓。
【請求項8】
請求項1に記載の覗き窓を備えており、めっき浴槽に先端部が接する覗き窓付きスナウト。
【請求項9】
請求項1ないし7のいずれか一項に記載の覗き窓の異物付着抑制方法であって、
前記供給口から前記ヘッダー部に前記ガスを供給して前記絞り部、および、前記スペーサー部を介して前記筐体側に向かうガス流を生じさせ、
前記ガス流によって前記筐体から前記ヘッダー部側に向かう異物の移動を抑制する
覗き窓の異物付着抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、覗き窓、覗き窓付きスナウト、覗き窓の異物付着抑制方法に関し、特に、薄板鋼板の連続溶融めっきラインにおいて、めっき浴槽用のスナウトの内部を観察するための覗き窓、覗き窓付きスナウト、および、覗き窓の異物付着抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
めっき浴槽用のスナウトの内部などの閉空間を観察するために、スナウトに覗き窓が設けられる場合がある。例えば、薄板鋼板の連続溶融めっきラインの場合、めっきの表面性状に関するトラブルの原因究明、および、抑止のために、スナウト内部のめっき浴槽の液面を観察する覗き窓がスナウトの壁面に設けられている。
【0003】
しかしながら、このようなスナウトの壁面に設けた覗き窓では、めっき浴槽やスナウト内で発生した金属のヒュームつまり金属の微粒子が覗き窓における窓部の内側に付着することによる視界不良が問題となっていた。
【0004】
このような問題を解決する装置や方法が従来検討されている。例えば、特許文献1には、プラズマ灰溶解炉の内部を覗く覗き窓が記載されている。その覗き窓は窓材が設けられるヘッダー部と、炉内にヘッダー部を連通する連通路とを有しており、ヘッダー部にパージガスを吹き込むように構成されている。また、連通路の内径はヘッダー部の内径よりも小さく設定されている。そのため、特許文献1の覗き窓では、炉内に向かって連通部を流動するパージガスの流速が増大し、これによりヘッダー部への炉内ガスの逆流を防ぎ、窓材にヒュームが付着することを抑制できる。また、特許文献2には、覗き窓とスナウトとの間にバルブを設けたスナウト内部の監視装置が記載されている。その装置では、バルブを閉じることによって窓部の内側にヒュームが付着することを抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-021326号公報
【特許文献2】実公平02-048420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の覗き窓では、上述したように、連通路の内径をヘッダー部の内径よりも小さくすることでパージガスの流速を増大させてヘッダー部への炉内ガスの逆流を防ぎ、窓部の内側にヒュームが付着することを抑制している。しかしながら、パージガスによって炉内ガスの逆流を十分に防ぐためには、連通部の全体の径をより狭くしてパージガスの流速をより増大させる必要があるが、そのように構成すると、覗き窓から炉内を覗く際の視界が連通部によって遮られてしまうという欠点があった。
【0007】
また、特許文献2に示すような、覗き窓とスナウトの間にバルブや回転式シャッターを設けることでヒュームを完全遮断する方法でも、スナウト内部の確認時にバルブを開けている際にスナウト内部のガスが覗き窓へと流れ込んで覗き窓にヒュームが付着する可能性がある。
【0008】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、窓部からの視界が遮られてしまうことを抑制しつつ、窓部に対する異物の付着を抑制することのできる覗き窓、覗き窓付きスナウト、及び覗き窓のヒューム付着抑制方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記の目的を達成するために、
[1]窓部と、前記窓部が形成されたヘッダー部とを備えており、前記窓部を介して筐体の内部を確認する覗き窓であって、前記ヘッダー部と前記筐体とを予め設定された間隔をあけて連通する筒状のスペーサー部と、前記ヘッダー部と前記スペーサー部との間に設けられており、前記スペーサー部の内径よりも小さい内径の絞り部と、前記ヘッダー部に、前記筐体の内部の圧力よりも高い圧力のガスを供給する供給口とを備えている覗き窓。
[2]前記ヘッダー部の内部において、前記窓部の少なくとも一部を覆って前記窓部に対する異物の付着を抑制する抑制装置を更に備えている上記の[1]に記載の覗き窓。
[3]前記ヘッダー部の内部において、前記窓部に付着した異物を除去する除去装置を更に備えている上記の[1]に記載の覗き窓。
[4]前記窓部の外径をd、前記スペーサー部の内径をA、前記絞り部の内径をa、前記窓部と前記筐体との間の距離をB、前記窓部から前記絞り部までの距離をbとしたときに、(a-d)/b>(A-d)/Bの関係を満たす上記の[1]に記載の覗き窓。
[5]前記ヘッダー部の直径は、前記スペーサー部の直径よりも大きい上記の[1]に記載の覗き窓。
[6]前記抑制装置は、シャッターである上記の[2]に記載の覗き窓。
[7]前記除去装置は、ワイパーである上記の[3]に記載の覗き窓。
[8]上記の[1]に記載の覗き窓を備えており、めっき浴槽に先端部が接する覗き窓付きスナウト。
[9]上記の[1]ないし[7]のいずれかに記載の覗き窓の異物付着抑制方法であって、前記供給口から前記ヘッダー部に前記ガスを供給して前記絞り部、および、前記スペーサー部を介して前記筐体側に向かうガス流を生じさせ、前記ガス流によって前記筐体から前記ヘッダー部側に向かう異物の移動を抑制する覗き窓の異物付着抑制方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、窓部からの視界が遮られてしまうことを抑制しつつ、覗き窓の窓部に対する異物の付着を抑制することができる。そのため、窓部から筐体の内部を広範囲にわたって観察することができるとともに、覗き窓の清掃、保守などのランニングコストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】連続溶融めっきラインの一例を示す側面断面図である。
【
図3】本発明に係る覗き窓の一例を示す断面図である。
【
図4】本発明に係る覗き窓の他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る実施形態について説明する。
図1は、連続溶融めっきラインの一例を示す側面断面図である。
図1に示す連続溶融めっきライン1は、めっき浴槽2に貯留されている溶融めっきに帯状の薄鋼板(以下、薄板と記す。)3を連続的に浸すことによって薄板3の表面にめっきを行うラインである。
図1に示す例では、薄板3の搬送方向で熱処理炉4の出側端部に筒状のスナウト5が接続されている。熱処理炉4は一例として連続焼鈍炉を挙げることができる。薄板3は図示しない搬送装置によって熱処理炉4の内部を搬送される。スナウト5の長さ方向で熱処理炉4とは反対側の先端部は、めっき浴槽2に貯留された溶融めっきに浸漬されている。これは、薄板3が外気に曝されると、薄板3の表面が酸化してしまうのでこれを避けるためである。すなわち、スナウト5の内部は外部に対して開放されておらず、使用時に外部から内部を監視することが難しい閉空間となっている。スナウト5が本発明の筐体に相当している。溶融めっきは、例えば、亜鉛、アルミニウム、鉛、錫、それらの合金などをそれらの融点以上の温度で溶融させた液相の金属を意味している。
【0013】
図2は、
図1に示すα矢視図である。
図1、および、
図2に示すように、溶融めっきの液面下にシンクロール6が配置されている。薄板3はめっき浴槽2の上下方向でシンクロール6の下側を通るようにシンクロール6に巻きかけられている。これにより、薄板3は溶融めっきに確実に浸漬され、また、シンクロール6によって薄板3の進行方向が上下方向で上側に変更され、めっき浴槽2から表面がめっきされた薄板3が引き上げられる。
【0014】
スナウト5に溶融めっきの液面を観察する本実施形態に係る覗き窓7が設けられている。
図3は本実施形態に係る覗き窓7の断面図である。
図3に示す覗き窓7はガラスなどの透過体から成る窓部8と、当該窓部8が設けられているヘッダー部9とを備えている。ヘッダー部9は筒状のスペーサー部10を介してスナウト5に接続されており、スペーサー部10の長さ分、ヘッダー部9とスナウト5とは互いに離隔されている。これは、めっき浴槽2で生じたヒュームなどの異物が窓部8に付着すると、溶融めっきの液面を観察しにくくなるので、これを避けるためである。そのため、スペーサー部10の長さは、窓部8にヒュームが到達し難い長さであることが好ましく、これは、例えば実験によって求めることができる。
【0015】
ヘッダー部9は、例えば中空の箱状を成しており、その高さ方向(
図3での左右方向)での一方の面の中央部に窓部8が一体に設けられている。ヘッダー部9における窓部8とは反対側の面に、板厚方向に貫通するほぼ円形の開口部が形成されており、開口部の周辺部分がフランジ部として機能するようになっている。具体的には、ヘッダー部9は、中空の円柱状を成しており、そのヘッダー部9の上面、すなわち、
図3の左右方向で左側面の中央部にほぼ円形の窓部8が設けられている。ヘッダー部9の底面、すなわち、
図3の左右方向で右側面の中央部にほぼ円形の開口部が形成されており、この開口部にスペーサー部10が接続されている。開口部の内径aはスペーサー部10の内径Aよりも小さく設定されている。そのため、開口部はスペーサー部10を介したヘッダー部9とスナウト5との間の流体流路を狭める絞り部11として機能する。
【0016】
スペーサー部10の長さ方向で一方の端部は、例えば、スナウト5の外周面に形成された貫通孔12に溶接によって接続されている。貫通孔12の内径はスペーサー部10の内径Aとほぼ同じ内径に設定されている。具体的には、スペーサー部10の中心軸線上に貫通孔12の中心をほぼ一致させた状態で、スナウト5の外周面にスペーサー部10が溶接されている。
【0017】
スペーサー部10の長さ方向で他方の端部に、半径方向で外側に突出するフランジ部が形成されている。
図3に示す例では、ヘッダー部9の中心軸線とスペーサー部10の中心軸線とをほぼ一致させた状態で、パッキン13を介してヘッダー部9のフランジ部とスペーサー部10のフランジ部とを互いに重ね合わせ、それらがボルト14によって連結されている。
【0018】
ヘッダー部9の外周面(側面)に板厚方向に貫通して開口部が形成されており、当該開口部にガスパイプ15が連通されている。ガスパイプ15は図示しないガス供給源に接続されている。それらのガスパイプ15、および、ヘッダー部9の側面に形成された開口部を介してガス供給源からヘッダー部9の内部にガスが供給されるようになっている。つまり、ヘッダー部9の外周面に形成された開口部がガスの供給口として機能する。ガスは窒素、二酸化炭素、希ガスなどの不活性ガスであることが好ましい。また、不活性ガスの圧力は少なくともスナウト5の内部の圧力とほぼ同じ圧力であることが好ましく、スナウト5の内部の圧力よりも高いことがより好ましい。これは、不活性ガスの圧力がスナウト5の内部の圧力よりも低いと、ヘッダー部9の内部の圧力がスナウト5の内部の圧力よりも低下してしまい、ヘッダー部9内にヒュームが侵入しやすくなる。そしてこれにより窓部8にヒュームが付着する可能性があるので、これを避けるためである。
【0019】
また、ヘッダー部9の内部において、窓部8の表面(以下、内側面と記す。)にヒュームが付着した場合にヒュームを除去するヒュームの除去装置がヘッダー部9に設けられている。除去装置としては、窓部8の内側面を拭ってヒュームを除去するワイパーや、窓部8の内側面に高圧の洗浄流体を吹き付けることによってヒュームを吹き飛ばして除去する洗浄装置を挙げることができる。
図3には、除去装置がワイパー16である場合の例を記載してあり、ワイパー16はヘッダー部9の内部に配置されている。
【0020】
ワイパー16にロッド17が連結されている。ロッド17は、
図3に示す例では、ヘッダー部9の半径方向に延びると共に、ロッド17の先端部はヘッダー部9の外部に突出している。すなわち、ヘッダー部9の側面に板厚方向に貫通して開口部が形成されており、その開口部に、ヘッダー部9の半径方向に移動可能にロッド17が通されている。なお、ヘッダー部9の気密状態を維持するため、開口部とロッド17との間に図示しないパッキンが設けられている。
【0021】
ロッド17の先端部にハンドル18が設けられている。ハンドル18を把持してヘッダー部9側に押し込み、また、元の位置に引き戻すことによって窓部8の内側面に付着したヒュームをワイパー16によって除去することができるように構成されている。なお、手動でワイパー16を作動させることに代えて、自動的に作動するように構成してもよい。例えば、ハンドル18、あるいは、ロッド17の先端部に動力伝達可能に図示しないモーターや流体圧シリンダーを接続する。そして、図示しないタイマーによってモーターや流体圧シリンダーを駆動してワイパー16を作動させ、あるいは、図示しない制御装置によってモーターや流体圧シリンダーの駆動を制御してワイパー16を作動させてもよい。
【0022】
ここで、覗き窓7の各構成のサイズについて説明する。ヘッダー部9の外径Dはスペーサー部10の内径Aや貫通孔12の内径よりも大きく設定されている。また、本実施形態では、絞り部11の内径aは窓部8の外径d以上(a≧d)に設定されている。さらに、絞り部11の内径aから窓部8の外径dを減算した値を
図3の左右方向でのヘッダー部9の高さbによって除算した値は、スペーサー部10の内径Aから窓部8の外径dを減算した値を
図3の左右方向での覗き窓7の高さBによって除算した値よりも大きく設定されている((a-d)/b>(A-d)/B)。こうすることにより、窓部8からスナウト5の内部を覗く際の視界が絞り部11やスペーサー部10によって遮られることを抑制することができる。
図3に窓部8からスナウト5の内部を覗く際の視界の範囲を一点鎖線で記載してある。
【0023】
(作用・効果)
図1に示す熱処理炉4で薄板3の熱処理が行われ、薄板3は図示しない搬送装置によってスナウト5を介して外気に曝されることなくめっき浴槽2に搬送される。そして、溶融めっきに薄板3が浸漬されてめっき処理される。めっき浴槽2に貯留されている溶融めっきは、高い温度で溶融している液相の金属である。そのため、めっき浴槽2では、金属のヒュームが生じる場合がある。ヒュームは上述した金属の微粒子であり、当該微粒子はスナウト5の内部の空気よりも重い。なお、上述した高い温度とは、少なくとも、溶融めっきとして使用する金属の融点以上の温度を意味している。
【0024】
一方、溶融めっきの液面では、空気が暖められて上昇気流が生じる。その結果、ヒュームは上昇気流によってスナウト5の内部を上下方向で上側に移動する。
【0025】
他方、覗き窓7のヘッダー部9には、図示しないガス供給源からガスパイプ15を介して連続的あるいは間欠的に不活性ガスが供給されることにより、ヘッダー部9からスナウト5側への不活性ガスのガス流が生じる。絞り部11の内径aはヘッダー部9の内径よりも小さいため、不活性ガスはヘッダー部9からある程度流出しにくくなり、これによって、ヘッダー部9の内部の圧力は高い状態、すなわち、陽圧に保たれる。
【0026】
そして、絞り部11の内径aはスペーサー部10の内径Aすなわち貫通孔12の内径よりも小さい。そのため、絞り部11をガス流が通過すると、その流速は、不活性ガスの流動方向で絞り部11の上流側のガス流の流速よりも増大する。こうして流速の増大されたガス流がスペーサー部10を介してスナウト5に流入する。
【0027】
スペーサー部10とスナウト5との接続部分では、上述したヒュームを含む上昇気流と不活性ガスのガス流とが衝突する。不活性ガスのガス流はヒュームやヒュームを含む空気をスナウト5側に押圧するため、スペーサー部10内へのヒュームを含む空気の流入を抑制することができる。また、スペーサー部10内にヒュームを含む空気が流入したとしても、スペーサー部10はある程度の長さがあり、スペーサー部10内の不活性ガスのガス流によってヒュームを含む空気はスナウト5側に押し戻される。そのため、スペーサー部10の内部をヘッダー部9側にヒュームが移動することを抑制することができる。
【0028】
また、絞り部11では、不活性ガスのガス流の流速が最も高い。絞り部11では、高い流速のガス流によってヒュームを押し戻すことになるため、ヒュームは絞り部11を通過しにくい。さらに、ヘッダー部9は上述したように陽圧に保たれている。そのため、これによってもヘッダー部9内にヒュームが侵入することを抑制することができる。そして、万が一、ヘッダー部9内にヒュームが侵入して窓部8の内側面に付着した場合には、ハンドル18を把持し、ハンドル18をヘッダー部9側に押し込み、また、元の位置に引き戻す。こうすることにより、窓部8に付着したヒュームをワイパー16によって除去することができる。
【0029】
また、本実施形態では、上述したように、絞り部11の内径aをスペーサー部10の内径Aよりも小さくすることで、絞り部11において不活性ガスのガス流の流速を最も高くし、ヘッダー部9内へのヒュームの侵入を抑制している。すなわち、スペーサー部10全体の内径Aを小さくすることなく、つまり、スペーサー部10の内径Aを絞り部11の内径aと同程度の大きさとすることなく、スペーサー部10とヘッダー部9との間にある絞り部11のみ内径を小さくしている。このような構成とすることで、ヘッダー部9内へのヒュームの侵入を抑制しつつ、スペーサー部10全体の内径Aを小さくする場合と比較して、窓部8からスナウト5の内部を覗く際の視界がスペーサー部10によって遮られることを抑制することができる。そして、窓部8からスナウト5の内部を広範囲にわたって観察することができる。
【0030】
このように、第1実施形態によれば、窓部8の内側面にヒュームが付着することや、窓部8の内側面にヒュームが付着することによる窓部8の曇りを抑制することができる。また、万が一、窓部8にヒュームが付着したとしても、ワイパー16によって容易にヒュームを除去することができる。そのため、第1実施形態によれば、覗き窓7の視界を確保し、溶融めっきの液面を確実に観察することができる。また、常時簡便に覗き窓7の清掃を行うことができるため、その分、覗き窓7のランニングコストを低減することができる。
【0031】
(第2実施形態)
図4は本発明に係る覗き窓の他の例を示す断面図である。
図4に示す例は、窓部8を覆ってヒュームの付着を抑制する抑制装置を覗き窓7に設けた例である。
図4に示すヘッダー部9は内部が中空の四角柱状となっている。抑制装置は例えば窓部8の少なくとも一部を覆うシャッター19であって、
図4に示す例では、覗き窓7の高さ方向(
図4での左右方向)でワイパー16と絞り部11との間に設けられている。シャッター19は例えば薄い平板状の部材であって、ヘッダー部9の断面形状とほぼ同じ矩形あるいは方形となっており、そのサイズはヘッダー部9の内側のサイズとほぼ同じサイズとなっている。シャッター19はアクチュエータによってヘッダー部9の内部に進入し、また、ヘッダー部9から退出してシャッターハウジング(以下、ハウジングと記す。)20に収容されるようになっている。したがって、
図4での上下方向におけるシャッター19の長さはヘッダー部9の内径とほぼ同じ長さに設定されている。
【0032】
アクチュエータは一例としてラックアンドピニオン装置21を挙げることができる。ラックアンドピニオン装置21はピニオンギヤ22と、ピニオンギヤ22に噛み合うギヤ歯が形成されたラック23とを備えている。ピニオンギヤ22に図示しない動力源がトルク伝達可能に連結されており、動力源から伝達されたトルクを受けてピニオンギヤ22が回転する。ピニオンギヤ22の回転に伴ってヘッダー部9側、あるいは、これとは反対側にラック23が移動するようになっている。
図4に示す例では、
図4での上下方向にラック23が移動するようになっている。上記のラック23に連結部24を介してシャッター19が連結されている。なお、上述した動力源としては例えばモーターを挙げることができる。
【0033】
ハウジング20は、
図4に示す例では、
図4での上下方向に延びており、上下方向でのハウジング20の一方の端部はヘッダー部9の外周面に一体化されている。ハウジング20の一方の端部にヘッダー部9の内部に連通する開口部が形成されており、その開口部を介してヘッダー部9の内部にシャッター19が進入し、また、退出するようになっている。ハウジング20の他方の端部に、ハウジング20の内部に連結部24が進入し、また、退出する開口部が形成されている。ハウジング20の気密状態を維持するため、ハウジング20の他方の端部における開口部にパッキン25が設けられている。他の構成は
図3に示す構成と同様であるため、
図3に示す構成と同様の構成については
図3と同様の符号を付してその説明を省略する。
【0034】
(作用・効果)
図4に示す第2実施形態では、覗き窓7を介して溶融めっきの液面の観察を行わない場合には、例えばオペレーターによって上述した動力源が作動させられ、動力源で発生させたトルクを受けてピニオンギヤ22が正方向に回転させられる。それによってピニオンギヤ22に噛み合うラック23が
図4の上下方向で下側に移動する。ラック23には、連結部24を介してシャッター19が連結されている。そのため、上述したようにラック23が
図4の上下方向で下側に移動すると、ハウジング20からシャッター19が退出し、ヘッダー部9の内部に進入する。そして、ヘッダー部9の内面のうち、ハウジング20とは反対側の内面にシャッター19が接触してその移動が停止する。これにより、窓部8はシャッター19によって覆われるため、万が一、ヘッダー部9内にヒュームが侵入したとしても、窓部8に付着することはない。
【0035】
これに対して、覗き窓7を介して溶融めっきの液面の観察を行う場合には、動力源によってピニオンギヤ22が正方向とは反対の逆方向に回転させられる。つまり、上述した原理と反対の原理によって、ヘッダー部9からシャッター19が退出し、また、ハウジング20の内部にシャッター19が収容される。そして、ガスパイプ15を介してヘッダー部9の内部に不活性ガスが供給され、第1実施形態と同様に、ヘッダー部9の内部へのヒュームの進入、および、窓部8に対するヒュームの付着が抑制される。
【0036】
このように、
図4に示す第2実施形態では、溶融めっきの液面の観察を行う場合に、シャッター19をあけ、それ以外の場合には、シャッター19を閉じることによって覗き窓7の窓部8に対するヒュームの付着を抑制することができる。そのため、溶融めっきの液面の観察を行わない場合に、不活性ガスの供給を停止することができる。つまり、不活性ガスの供給を停止する分、ランニングコストを削減することができる。また、溶融めっきの液面の観察を行うためにシャッター19をあけた場合には、上述したように、ヘッダー部9の内部に不活性ガスを供給するため、第1実施形態と同様の作用・効果を得ることができる。
【0037】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されないのであって、
図3では、ヘッダー部9の側面のうち、ガスパイプ15とは反対側にワイパー16が設けられているが、ガスパイプ15やワイパー16の設置位置は限定されない。また、
図4に示すアクチュエータはラックアンドピニオン装置21に代えて油圧シリンダーやエアシリンダーであってもよい。さらに、上述した各実施形態では、筐体としてのスナウトを備える薄板の連続溶融めっきラインを例として本発明の覗き窓について説明したが、本発明の覗き窓はスナウト以外にも適用することが可能である。例えば、溶融炉などの内部を監視することが難しい様々な筐体に適用することが可能である。
【0038】
また、
図3ではヘッダー部9の内部に除去装置としてのワイパー16を設け、
図4ではヘッダー部9の内部に除去装置としてのワイパー16と抑制装置としてのシャッター19の双方を設けていた。しかしながら、ヘッダー部9の内部にワイパー16等の除去装置を設けずにシャッター19等の抑制装置のみを設ける構成としてもよい。ヘッダー部9の内部にシャッター19のみを設ける構成であっても、各実施形態と同様に、覗き窓7の窓部8に対するヒュームの付着を抑制することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 連続溶融めっきライン
2 めっき浴槽
3 薄板
4 熱処理炉
5 スナウト(筐体の一例)
6 シンクロール
7 覗き窓
8 窓部
9 ヘッダー部
10 スペーサー部
11 絞り部
12 貫通孔
13 パッキン
14 ボルト
15 ガスパイプ
16 ワイパー(除去装置の一例)
17 ロッド
18 ハンドル
19 シャッター(抑制装置の一例)
20 シャッターハウジング
21 ラックアンドピニオン装置
22 ピニオンギヤ
23 ラック
24 連結部
25 パッキン