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特開2024-123514異常検出方法及びアクチュエータ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123514
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】異常検出方法及びアクチュエータ装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 26/10 20060101AFI20240905BHJP
   G02B 26/08 20060101ALI20240905BHJP
   B81B 3/00 20060101ALI20240905BHJP
   B06B 1/04 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
G02B26/10 104Z
G02B26/10 C
G02B26/08 E
B81B3/00
B06B1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030993
(22)【出願日】2023-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100177910
【弁理士】
【氏名又は名称】木津 正晴
(72)【発明者】
【氏名】河岡 秀宜
(72)【発明者】
【氏名】井出 智行
【テーマコード(参考)】
2H045
2H141
3C081
5D107
【Fターム(参考)】
2H045AB13
2H045AB38
2H045AB73
2H045AB81
2H045BA13
2H141MA12
2H141MB24
2H141MC05
2H141MC07
2H141MC09
2H141MD13
2H141MD16
2H141MD20
2H141MD24
2H141MZ12
2H141MZ16
2H141MZ19
2H141MZ26
3C081AA15
3C081BA28
3C081BA33
3C081BA44
3C081BA47
3C081BA54
3C081BA74
3C081CA45
3C081DA04
3C081EA08
3C081EA09
3C081EA41
5D107AA15
5D107BB20
5D107CC09
5D107DD12
5D107FF10
(57)【要約】
【課題】アクチュエータ装置の異常をより確実に検出することができる異常検出方法、及びアクチュエータ装置を提供する。
【解決手段】アクチュエータ装置1は、第1可動部3と、第2可動部4と、磁石部9と、コイル7,8と、第1可動部3を共振駆動させるための第1駆動信号及び第2可動部4を非共振駆動させるための第2駆動信号をコイル7,8に供給する制御部11とを備える。異常検出方法は、制御部11が第2駆動信号をコイル8に供給するステップと、第2駆動信号がコイル8に供給されている状態においてコイル8に発生する逆起電力に対応する出力値を取得するステップと、コイル8に供給された第2駆動信号と取得された出力値とに基づいて第2可動部4の傾斜状態に異常が発生しているか否かを判定するステップとを含む。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクチュエータ装置の異常を検出する異常検出方法であって、
前記アクチュエータ装置は、
支持部と、
第1可動部と、
前記第1可動部を囲むように配置された第2可動部と、
前記第1可動部が第1軸線周りに揺動可能となるように、前記第1可動部を前記第2可動部に連結する第1連結部と、
前記第2可動部が前記第1軸線と交差する第2軸線周りに揺動可能となるように、前記第2可動部を前記支持部に連結する第2連結部と、
前記第2可動部に配置された検出用コイルと、
前記検出用コイルに作用する磁場を発生させる磁石部と、
前記第1可動部及び前記第2可動部を駆動させる駆動部と、
前記第1可動部を共振駆動させるための第1駆動信号、及び前記第2可動部を非共振駆動させるための第2駆動信号を前記駆動部に供給する制御部と、を備え、
前記異常検出方法は、
前記制御部が、前記第2駆動信号を前記駆動部に供給する供給ステップと、
前記供給ステップにより前記第2駆動信号が前記駆動部に供給されている状態において、前記検出用コイルにおいて発生する逆起電力に対応する出力値を取得する取得ステップと、
前記供給ステップにおいて前記駆動部に供給された前記第2駆動信号と、前記取得ステップにおいて取得された前記出力値とに基づいて、前記第2可動部の傾斜状態に異常が発生しているか否かを判定する判定ステップと、を含む異常検出方法。
【請求項2】
前記供給ステップでは、前記制御部が、前記第1駆動信号及び前記第2駆動信号を前記駆動部に供給し、
前記取得ステップでは、前記供給ステップにより前記第1駆動信号及び前記第2駆動信号が前記駆動部に供給されている状態において、前記出力値を取得する、請求項1に記載の異常検出方法。
【請求項3】
前記判定ステップでは、前記第2可動部が傾斜しているか否かを判定することにより、前記第2可動部の傾斜状態に異常が発生しているか否かを判定する、請求項1又は2に記載の異常検出方法。
【請求項4】
前記駆動部は、前記第1可動部及び前記第2可動部の少なくとも一方を駆動させるための駆動用コイルを有し、
前記検出用コイルは、前記駆動用コイルによって構成されている、請求項1又は2に記載の異常検出方法。
【請求項5】
前記駆動部は、前記第1可動部を駆動させるための第1駆動用コイルと、前記第2可動部を駆動させるための第2駆動用コイルと、を有し、
前記第1駆動用コイル及び前記第2駆動用コイルは、前記第2可動部に配置されている、請求項1又は2に記載の異常検出方法。
【請求項6】
前記検出用コイルは、前記第1駆動用コイル及び前記第2駆動用コイルによって構成されており、
前記取得ステップでは、前記第2駆動信号が前記駆動部に供給されている状態において、前記第1駆動用コイルにおいて発生する逆起電力に対応する第1出力値及び前記第2駆動用コイルにおいて発生する逆起電力に対応する第2出力値を取得し、
前記判定ステップでは、前記供給ステップにおいて前記駆動部に供給された前記第2駆動信号と、前記取得ステップにおいて取得された前記第1出力値及び前記第2出力値とに基づいて、前記第2可動部の傾斜状態に異常が発生しているか否かを判定する、請求項5に記載の異常検出方法。
【請求項7】
前記第1駆動用コイル及び前記第2駆動用コイルの一方の巻き数は、前記第1駆動用コイル及び前記第2駆動用コイルの他方の巻き数よりも多く、
前記検出用コイルは、前記第1駆動用コイル及び前記第2駆動用コイルの前記一方によって構成されている、請求項5に記載の異常検出方法。
【請求項8】
前記駆動部は、前記第1可動部を駆動させるための第1駆動部と、前記第2可動部を駆動させるための第2駆動部と、を有し、
前記第1駆動部は、前記第2可動部に配置されており、
前記第2駆動部は、前記第2可動部又は前記第2連結部に配置されている、請求項1又は2に記載の異常検出方法。
【請求項9】
前記駆動部は、前記第1可動部及び前記第2可動部の両方を駆動させるための単一の駆動用コイルを有し、
前記単一の駆動用コイルは、前記第2可動部に配置されており、
前記検出用コイルは、前記単一の駆動用コイルによって構成されている、請求項1又は2に記載の異常検出方法。
【請求項10】
前記供給ステップでは、前記制御部が、前記第2可動部を所定の振れ角で連続的に揺動させるための信号を前記第2駆動信号として前記駆動部に供給する、請求項1又は2に記載の異常検出方法。
【請求項11】
前記供給ステップでは、前記制御部が、前記第2可動部を所定の角度で停止させるための信号を前記第2駆動信号として前記駆動部に供給する、請求項1又は2に記載の異常検出方法。
【請求項12】
前記アクチュエータ装置は、増幅回路を更に備え、
前記取得ステップでは、前記増幅回路によって10倍以上に増幅された前記逆起電力を前記出力値として取得する、請求項1又は2に記載の異常検出方法。
【請求項13】
前記アクチュエータ装置は、前記第1可動部に形成され、光源からの光が入射する光学機能部を更に備える、請求項1又は2に記載の異常検出方法。
【請求項14】
前記判定ステップにおいて前記第2可動部の傾斜状態に異常が発生していると判定された場合に、前記光源から前記光学機能部への光の照射を停止させる停止ステップを更に含む、請求項13に記載の異常検出方法。
【請求項15】
支持部と、
第1可動部と、
前記第1可動部を囲むように配置された第2可動部と、
前記第1可動部が第1軸線周りに揺動可能となるように、前記第1可動部を前記第2可動部に連結する第1連結部と、
前記第2可動部が前記第1軸線と交差する第2軸線周りに揺動可能となるように、前記第2可動部を前記支持部に連結する第2連結部と、
前記第2可動部に配置された検出用コイルと、
前記検出用コイルに作用する磁場を発生させる磁石部と、
前記第1可動部及び前記第2可動部を駆動させる駆動部と、
前記第1可動部を共振駆動させるための第1駆動信号、及び前記第2可動部を非共振駆動させるための第2駆動信号を前記駆動部に供給する制御部と、
前記制御部から前記第2駆動信号が前記駆動部に供給されている状態において、前記検出用コイルにおいて発生する逆起電力に対応する出力値を取得する取得部と、
前記取得部による前記出力値の取得中に前記駆動部に供給された前記第2駆動信号と、前記取得部により取得された前記出力値とに基づいて、前記第2可動部の傾斜状態に異常が発生しているか否かを判定する判定部と、を備えるアクチュエータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエータ装置の異常検出方法、及びアクチュエータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、支持部と、コイルが形成された可動部と、可動部を支持部に揺動可能に連結する一対のトーションバーと、コイルに磁場を作用させる磁石部と、を備えるアクチュエータ装置が記載されている。特許文献1に記載のアクチュエータ装置では、コイルの抵抗値の増減に基づいてトーションバーの破断が検出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-19949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば、磁石部の減磁、又は磁石部とコイルとの間の位置ずれ等によりコイルに作用する磁力が変化した場合、コイルの抵抗値は正常なままであるにも関わらず、アクチュエータ装置が適切に動作しなくなるおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、アクチュエータ装置の異常をより確実に検出することができる異常検出方法、及びアクチュエータ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の異常検出方法は、[1]「アクチュエータ装置の異常を検出する異常検出方法であって、前記アクチュエータ装置は、支持部と、第1可動部と、前記第1可動部を囲むように配置された第2可動部と、前記第1可動部が第1軸線周りに揺動可能となるように、前記第1可動部を前記第2可動部に連結する第1連結部と、前記第2可動部が前記第1軸線と交差する第2軸線周りに揺動可能となるように、前記第2可動部を前記支持部に連結する第2連結部と、前記第2可動部に配置された検出用コイルと、前記検出用コイルに作用する磁場を発生させる磁石部と、前記第1可動部及び前記第2可動部を駆動させる駆動部と、前記第1可動部を共振駆動させるための第1駆動信号、及び前記第2可動部を非共振駆動させるための第2駆動信号を前記駆動部に供給する制御部と、を備え、前記異常検出方法は、前記制御部が、前記第2駆動信号を前記駆動部に供給する供給ステップと、前記供給ステップにより前記第2駆動信号が前記駆動部に供給されている状態において、前記検出用コイルにおいて発生する逆起電力に対応する出力値を取得する取得ステップと、前記供給ステップにおいて前記駆動部に供給された前記第2駆動信号と、前記取得ステップにおいて取得された前記出力値とに基づいて、前記第2可動部の傾斜状態に異常が発生しているか否かを判定する判定ステップと、を含む異常検出方法」である。
【0007】
[1]に記載の異常検出方法では、供給ステップにより第2駆動信号が駆動部に供給されている状態において、検出用コイルにおいて発生する逆起電力に対応する出力値を取得し、供給ステップにおいて駆動部に供給された第2駆動信号と、取得ステップにおいて取得された出力値とに基づいて、第2可動部の傾斜状態に異常が発生しているか否かを判定する。例えば、磁石部の減磁、又は磁石部と検出用コイルとの間の位置ずれ等に起因して検出用コイルが受ける磁力が変化した場合、検出用コイルにおいて発生する逆起電力も変化する。この異常検出方法では、検出用コイルにおいて発生する逆起電力を用いて第2可動部の傾斜状態の異常を検出するため、駆動部(例えば駆動用コイルや圧電素子)に異常が発生した場合だけでなく、磁石部の減磁、又は磁石部と検出用コイルとの間の位置ずれ等の様々な要因により発生するアクチュエータ装置の異常を検出することができる。よって、この異常検出方法によれば、アクチュエータ装置の異常をより確実に検出することができる。
【0008】
本発明の異常検出方法は、[2]「前記供給ステップでは、前記制御部が、前記第1駆動信号及び前記第2駆動信号を前記駆動部に供給し、前記取得ステップでは、前記供給ステップにより前記第1駆動信号及び前記第2駆動信号が前記駆動部に供給されている状態において、前記出力値を取得する、[1]に記載の異常検出方法」であってもよい。この場合、第1可動部を共振駆動させた状態において、第2可動部の傾斜状態に異常が発生しているか否かを判定することができる。
【0009】
本発明の異常検出方法は、[3]「前記判定ステップでは、前記第2可動部が傾斜しているか否かを判定することにより、前記第2可動部の傾斜状態に異常が発生しているか否かを判定する、[1]又は[2]に記載の異常検出方法」であってもよい。この場合、本来傾斜しているべき第2可動部が傾斜していない異常を検出することができる。
【0010】
本発明の異常検出方法は、[4]「前記駆動部は、前記第1可動部及び前記第2可動部の少なくとも一方を駆動させるための駆動用コイルを有し、前記検出用コイルは、前記駆動用コイルによって構成されている、[1]~[3]のいずれかに記載の異常検出方法」であってもよい。この場合、駆動用コイルとは別に検出用コイルを設ける場合と比べて、第2可動部におけるコイルの配置スペースを小さくすることができる。
【0011】
本発明の異常検出方法は、[5]「前記駆動部は、前記第1可動部を駆動させるための第1駆動用コイルと、前記第2可動部を駆動させるための第2駆動用コイルと、を有し、前記第1駆動用コイル及び前記第2駆動用コイルは、前記第2可動部に配置されている、[1]~[4]のいずれかに記載の異常検出方法」であってもよい。この場合、第1駆動用コイルが第1可動部に配置されている場合と比べて、共振駆動される第1可動部の軽量化を図ることができ、第1可動部を駆動させるための電力を低減することができる。また、第1可動部の第1軸線周りの慣性モーメントを低減することができ、共振周波数の低下を抑制することができる。
【0012】
本発明の異常検出方法は、[6]「前記検出用コイルは、前記第1駆動用コイル及び前記第2駆動用コイルによって構成されており、前記取得ステップでは、前記第2駆動信号が前記駆動部に供給されている状態において、前記第1駆動用コイルにおいて発生する逆起電力に対応する第1出力値及び前記第2駆動用コイルにおいて発生する逆起電力に対応する第2出力値を取得し、前記判定ステップでは、前記供給ステップにおいて前記駆動部に供給された前記第2駆動信号と、前記取得ステップにおいて取得された前記第1出力値及び前記第2出力値とに基づいて、前記第2可動部の傾斜状態に異常が発生しているか否かを判定する、[5]に記載の異常検出方法」であってもよい。この場合、第2可動部の傾斜状態に異常が発生しているか否かをより確実に判定することができる。
【0013】
本発明の異常検出方法は、[7]「前記第1駆動用コイル及び前記第2駆動用コイルの一方の巻き数は、前記第1駆動用コイル及び前記第2駆動用コイルの他方の巻き数よりも多く、前記検出用コイルは、前記第1駆動用コイル及び前記第2駆動用コイルの前記一方によって構成されている、[5]に記載の異常検出方法」であってもよい。この場合、第1駆動用コイル及び第2駆動用コイルのうちの巻き数が多いコイルによって検出用コイルが構成されているため、例えば第1駆動用コイル及び第2駆動用コイルのうちの巻き数が少ないコイルによって検出用コイルを構成する場合と比べて、検出用コイルにおいて発生する逆起電力を大きくすることができる。大きい逆起電力を取得することができれば、逆起電力を一定の値まで増幅させる際のゲインを小さくすることができ、逆起電力に対応する出力値に重畳するノイズを低減することができる。また、例えば第1駆動用コイル及び第2駆動用コイルの両方の巻き数を多くする場合と比べて、第2可動部の大型化を抑制することができる。
【0014】
本発明の異常検出方法は、[8]「前記駆動部は、前記第1可動部を駆動させるための第1駆動部と、前記第2可動部を駆動させるための第2駆動部と、を有し、前記第1駆動部は、前記第2可動部に配置されており、前記第2駆動部は、前記第2可動部又は前記第2連結部に配置されている、[1]~[7]のいずれかに記載の異常検出方法」であってもよい。この場合、第1駆動部が第2可動部に配置されているため、第1駆動部に第1駆動信号を供給して第1可動部を共振駆動させる際に、第2可動部も第1可動部の共振周波数に対応する周波数にて振動する。そのため、第2可動部に配置された検出用コイルにおいて発生する逆起電力が、第1可動部の傾斜状態を反映したものとなる。すなわち、この場合、取得ステップにおいて、第1可動部の傾斜状態が反映された逆起電力の出力値を取得することができる。また、第1駆動部が第1可動部に配置されている場合と比べて、第1可動部の軽量化を図ることができ、第1可動部の慣性モーメントを低減することができる。
【0015】
本発明の異常検出方法は、[9]「前記駆動部は、前記第1可動部及び前記第2可動部の両方を駆動させるための単一の駆動用コイルを有し、前記単一の駆動用コイルは、前記第2可動部に配置されており、前記検出用コイルは、前記単一の駆動用コイルによって構成されている、[1]~[4]のいずれかに記載の異常検出方法」であってもよい。この場合、第1可動部を駆動させるための駆動用コイルと、第2可動部を駆動させるための駆動用コイルとを別々に設ける場合と比べて、第1可動部及び第2可動部を駆動させるための駆動用コイル(単一の駆動用コイル)の巻き数を多くすることができる。そして、巻き数の多い単一の駆動用コイルによって検出用コイルを構成することで、検出用コイルにおいて発生する逆起電力の信号量を大きくすることができる。
【0016】
本発明の異常検出方法は、[10]「前記供給ステップでは、前記制御部が、前記第2可動部を所定の振れ角で連続的に揺動させるための信号を前記第2駆動信号として前記駆動部に供給する、[1]~[9]のいずれかに記載の異常検出方法」であってもよい。この場合、第2可動部を所定の振れ角で連続的に揺動させる場合において、第2可動部の傾斜状態に異常が発生しているか否かを判定することができる。
【0017】
本発明の異常検出方法は、[11]「前記供給ステップでは、前記制御部が、前記第2可動部を所定の角度で停止させるための信号を前記第2駆動信号として前記駆動部に供給する、[1]~[10]のいずれかに記載の異常検出方法」であってもよい。この場合、第2可動部を所定の角度で停止させる場合において、第2可動部の傾斜状態に異常が発生しているか否かを判定することができる。
【0018】
本発明の異常検出方法は、[12]「前記アクチュエータ装置は、増幅回路を更に備え、前記取得ステップでは、前記増幅回路によって10倍以上に増幅された前記逆起電力を前記出力値として取得する、[1]~[11]のいずれかに記載の異常検出方法」であってもよい。この場合、検出用コイルにおいて発生する逆起電力の変化が小さい場合であっても、第2可動部の傾斜状態に異常が発生しているか否かを良好に判定することができる。
【0019】
本発明の異常検出方法は、[13]「前記アクチュエータ装置は、前記第1可動部に形成され、光源からの光が入射する光学機能部を更に備える、[1]~[12]のいずれかに記載の異常検出方法」であってもよい。この場合、光源からの光が入射する光学機能部を備えるアクチュエータ装置の異常をより確実に検出することができる。
【0020】
本発明の異常検出方法は、[14]「前記判定ステップにおいて前記第2可動部の傾斜状態に異常が発生していると判定された場合に、前記光源から前記光学機能部への光の照射を停止させる停止ステップを更に含む、[13]に記載の異常検出方法」であってもよい。この場合、第2可動部の傾斜状態に異常が発生していると判定されたときに、光学機能部への光の照射が停止されるため、例えば、光学機能部において反射された光が対象物に照射され続けることによって当該対象物が損傷することを防止することができる。
【0021】
本発明のアクチュエータ装置は、[15]「支持部と、第1可動部と、前記第1可動部を囲むように配置された第2可動部と、前記第1可動部が第1軸線周りに揺動可能となるように、前記第1可動部を前記第2可動部に連結する第1連結部と、前記第2可動部が前記第1軸線と交差する第2軸線周りに揺動可能となるように、前記第2可動部を前記支持部に連結する第2連結部と、前記第2可動部に配置された検出用コイルと、前記検出用コイルに作用する磁場を発生させる磁石部と、前記第1可動部及び前記第2可動部を駆動させる駆動部と、前記第1可動部を共振駆動させるための第1駆動信号、及び前記第2可動部を非共振駆動させるための第2駆動信号を前記駆動部に供給する制御部と、前記制御部から前記第2駆動信号が前記駆動部に供給されている状態において、前記検出用コイルにおいて発生する逆起電力に対応する出力値を取得する取得部と、前記取得部による前記出力値の取得中に前記駆動部に供給された前記第2駆動信号と、前記取得部により取得された前記出力値とに基づいて、前記第2可動部の傾斜状態に異常が発生しているか否かを判定する判定部と、を備えるアクチュエータ装置」である。このアクチュエータ装置によれば、上述した理由により、アクチュエータ装置の異常をより確実に検出することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、アクチュエータ装置の異常をより確実に検出することができる異常検出方法、及びアクチュエータ装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施形態に係るアクチュエータ装置の平面図である。
図2】実施形態に係るアクチュエータ装置の異常検出方法を示すフローチャートである。
図3】共振駆動する第1可動部の駆動に起因する逆起電力を示すグラフである。
図4】非共振駆動する第2可動部の駆動に起因する逆起電力を示すグラフである。
図5】変形例のアクチュエータ装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を用い、重複する説明を省略する。
[アクチュエータ装置の構成]
【0025】
図1に示されるように、アクチュエータ装置1は、支持部2と、第1可動部3と、第2可動部4と、一対の第1トーションバー(第1連結部)5と、一対の第2トーションバー(第2連結部)6と、コイル7,8と、磁石部9とを備えている。アクチュエータ装置1では、ミラー面(光学機能部)31aを有する第1可動部3が、互いに直交するX軸(第1軸線)及びY軸(第1軸線と交差する第2軸線)の各々の周りを揺動する。アクチュエータ装置1は、例えば、光スキャナ、又は光通信用光スイッチ等に用いられ得る。
【0026】
支持部2、第1可動部3、第2可動部4、一対の第1トーションバー5及び一対の第2トーションバー6は、例えばSOI(Silicon on Insulator)基板によって一体的に形成されている。つまり、アクチュエータ装置1は、MEMS技術(パターニング、エッチング等)を用いて半導体基板を加工することにより製造されるMEMSデバイスとして構成されている。SOI基板は、一対の半導体層と、一対の半導体層の間に配置された絶縁層とを有している。例えば、各半導体層はシリコンにより形成されており、絶縁層は二酸化シリコンにより形成されている。支持部2は、矩形状の外形を有する枠状に形成されており、第1可動部3及び第2可動部4等を支持している。
【0027】
第1可動部3は、支持部2の内側に配置されている。第1可動部3は、本体部31と、環状部32と、一対の連結部33とを有している。本体部31は、円形状に形成されている。本体部31の表面には、円形状のミラー面(光学機能部)31aが形成されている。ミラー面31aは、例えばアルミニウムからなる金属膜である。環状部32は、本体部31を囲むように環状に形成されている。一対の連結部33は、Y軸上における本体部31の両側に配置され、本体部31と環状部32とを連結している。一対の連結部33は、第1トーションバー5及び第2トーションバー6とは異なり、本体部31を環状部32に揺動可能に連結するものではない(トーションバーではない)。第2可動部4は、枠状に形成されており、第1可動部3を囲むように支持部2の内側に配置されている。
【0028】
一対の第1トーションバー5は、X軸上における第1可動部3の両側に配置されている。第1トーションバー5は、第1可動部3がX軸周りに(X軸を中心線として)揺動可能となるように、X軸上において第1可動部3(環状部32)を第2可動部4に連結している。第1トーションバー5は、第2可動部4及び後述する第2トーションバー6を介して支持部2に連結されている。すなわち、第1トーションバー5は、第1可動部3がX軸周りに揺動可能となるように第1可動部3を支持部2に連結しているとみなすこともできる。各第1トーションバー5は、第1可動部3がX軸周りに揺動する際に捩れ変形する。各第1トーションバー5は、X軸上において真っ直ぐに延在している。
【0029】
一対の第2トーションバー6は、Y軸上における第2可動部4の両側に配置されている。第2トーションバー6は、第2可動部4がY軸周りに(Y軸を中心線として)揺動可能となるように、Y軸上において第2可動部4を支持部2に連結している。各第2トーションバー6は、第2可動部4がY軸周りに揺動する際に捩れ変形する。各第2トーションバー6は、蛇行して延在している。
【0030】
各コイル7,8は、第1可動部3を囲むように第2可動部4に配置され、平面視において渦巻き状に延在している。図1では、コイル7,8が配置されている配置領域Rがハッチングで示されている。コイル7,8は、X軸及びY軸を含む平面に沿って配置されている。各コイル7,8は、第1可動部3の周りに複数回巻回されている。この例では、コイル7の巻き数は、コイル8の巻き数よりも多い。コイル7,8は、例えば平面視において第2可動部4の幅方向に互い違いに並んでいる。各コイル7,8は、例えば銅又は金等の金属材料から形成されている。
【0031】
コイル7,8は、第1可動部3及び第2可動部4を駆動させる駆動部である。より具体的には、コイル7は、第1可動部3を駆動させるための第1駆動用コイル(第1駆動部)であり、コイル8は、第2可動部4を駆動させるための第2駆動用コイル(第2駆動部)である。コイル7は、後述する制御部11から駆動信号(駆動電流)が供給されることにより、第1可動部3を駆動させる。同様に、コイル8は、制御部11から駆動信号が供給されることにより、第2可動部4を駆動させる。コイル7,8による第1可動部3及び第2可動部4の駆動については後述する。
【0032】
アクチュエータ装置1は、複数の配線21,22,23,24と、複数の外部端子25,26,27,28とを更に備えている。外部端子25~28は、支持部2に設けられた電極パッドであり、後述する制御部11等と電気的に接続されている。配線21は、コイル7の内側端部と外部端子25とに電気的に接続されている。配線21は、コイル7の内側端部から対応する第2トーションバー6を介して外部端子25まで延在している。配線22は、コイル7の外側端部と外部端子26とに電気的に接続されている。配線22は、コイル7の外側端部から対応する第2トーションバー6を介して外部端子26まで延在している。
【0033】
配線23は、コイル8の内側端部と外部端子27とに電気的に接続されている。配線23は、コイル8の内側端部から対応する第2トーションバー6を介して外部端子27まで延在している。配線24は、コイル8の外側端部と外部端子28とに電気的に接続されている。配線24は、コイル8の外側端部から対応する第2トーションバー6を介して外部端子28まで延在している。各配線21~24は、例えばアルミニウム等の金属材料から形成されている。
【0034】
磁石部9は、例えば、ハルバッハ配列で並べられた複数の永久磁石によって構成されている。磁石部9は、コイル7,8に作用する磁場を発生させる。磁石部9は、支持部2、第1可動部3及び第2可動部4等に対してX軸及びY軸に垂直な方向における一方側(ミラー面31aとは反対側)に配置されている。
【0035】
アクチュエータ装置1は、制御部11と、取得部12と、増幅回路13と、判定部14とを更に備えている。制御部11、取得部12及び判定部14は、例えば、プロセッサ及びメモリ等を含むコンピュータ装置により構成されている。制御部11は、第1可動部3及び第2可動部4を駆動させるための駆動信号をコイル7,8に供給する。より具体的には、制御部11は、外部端子25,26及び配線21,22を介して第1駆動信号をコイル7に供給し、外部端子27,28及び配線23,24を介して第2駆動信号をコイル8に供給する。制御部11は、プロセッサによって電源(不図示)を制御することにより、電源からコイル7,8に駆動信号(駆動電流)を供給してもよい。制御部11、取得部12及び判定部14の少なくとも1つは、回路基板上の電子素子により構成されてもよい。例えば、制御部11及び判定部14がコンピュータ装置により構成され、取得部12が回路基板上のメモリにより構成されてもよい。或いは、制御部11、取得部12及び判定部14が回路基板上の電子素子により構成されてもよい。
【0036】
第1駆動信号は、X軸を中心線として第1可動部3を共振駆動(ノンリニア動作)させるための電気信号(駆動電流)である。共振駆動とは、駆動する対象物(この例では第1可動部3)の共振を利用した駆動である。コイル7に第1駆動信号が供給されると、磁石部9が発生させる磁場との相互作用によって、コイル7にローレンツ力が作用する。このローレンツ力に加え、共振周波数での第1可動部3の共振を利用することにより、X軸を中心線として第1可動部3を共振駆動させることができる。より具体的には、制御部11が、X軸周りにおける第1可動部3の共振周波数に等しい周波数の駆動電流(第1駆動信号)をコイル7に供給すると、コイル7と共に第2可動部4がX軸周りに当該周波数で僅かに振動する。この振動が一対の第1トーションバー5を介して第1可動部3に伝わることにより、X軸を中心線として第1可動部3を当該周波数で共振駆動させることができる。第1可動部3の共振周波数は、例えば、第1可動部3の質量及び構造、並びに一対の第1トーションバー5のバネ定数等によって決まる。
【0037】
第2駆動信号は、Y軸を中心線として第2可動部4を非共振駆動(リニア動作)させるための電気信号(駆動電流)である。非共振駆動とは、共振駆動とは異なり、駆動する対象物(この例では第2可動部4)の共振を利用しない駆動である。コイル8に駆動電流(第2駆動信号)が供給されると、磁石部9が発生させる磁場との相互作用によって、コイル8にローレンツ力が作用する。このローレンツ力と一対の第2トーションバー6の弾性力とのつり合いを利用することにより、Y軸を中心線として第2可動部4を非共振駆動させることができる。共振を利用せずに対象物を揺動させる非共振駆動と比べて、共振を利用して対象物を揺動させる共振駆動の方が対象物を高速に揺動させることができる。例えば、共振駆動の駆動周波数は数kHz~数十kHz程度であり、非共振駆動の駆動周波数は数十Hz程度である。すなわち、本実施形態では、X軸は、その周りを第1可動部3が高速に揺動する高速軸を構成し、Y軸は、その周りを第2可動部4が第1可動部3と比べて低速に揺動する低速軸を構成する。第1可動部3及び第2可動部4が揺動することにより、第1可動部3に形成されたミラー面31aも揺動する。
【0038】
第2可動部4が揺動すると、第2可動部4に配置されたコイル7,8が、磁石部9で発生した磁場内において移動する。このとき、コイル7,8には磁場に応じた逆起電力が発生する。コイル7,8にて発生する逆起電力に対応する出力値は、後述する取得部12によって取得され、アクチュエータ装置1の異常の検出に用いられる。つまり、コイル7,8は、アクチュエータ装置1の異常検出に用いられる逆起電力を検出するための検出用コイルを構成している。コイル7,8に発生する逆起電力は、コイル7,8が磁場を通る速度、磁場の強さ、及びコイル形状等によって決まる。
【0039】
取得部12は、コイル7及びコイル8において発生する逆起電力に対応する出力値を取得する。より具体的には、取得部12は、制御部11から第1駆動信号及び第2駆動信号がコイル7,8に供給されている状態において、コイル7,8に発生する逆起電力に対応する出力値を取得する。取得部12は、後述する増幅回路13を介してコイル7,8と電気的に接続されている。本実施形態では、取得部12は、増幅回路13によって増幅された逆起電力を、逆起電力に対応する出力値として取得する。
【0040】
増幅回路13は、コイル7,8において発生する逆起電力を増幅し、増幅した逆起電力を取得部12に出力する。増幅回路13は、外部端子25,26及び配線21,22を介して、コイル7と電気的に接続されており、外部端子27,28及び配線23,24を介して、コイル8と電気的に接続されている。増幅回路13は、コイル7,8において発生する逆起電力を、例えば10倍以上に増幅してもよいし、30倍以上に増幅してもよい。
【0041】
判定部14は、第2可動部4の動作に異常が発生しているか否かを判定する。より具体的には、判定部14は、第2可動部4の傾斜状態に異常が発生しているか否かを判定する。判定部14は、取得部12による逆起電力に対応する出力値の取得中に制御部11からコイル8に供給された第2駆動信号と、取得部12により取得された逆起電力に対応する出力値とに基づいて、第2可動部4の傾斜状態に異常が発生しているか否かを判定する。
【0042】
上述したように、コイル7,8に発生する逆起電力は、コイルが磁場を通過する速度、磁場の強さ、及びコイル形状等によって決まる。例えば、第2可動部4の傾斜状態に異常が発生している場合、第2可動部4に配置されたコイル7,8が磁場を通過する速度は、異常が発生していない場合の速度から変化する。つまり、第2可動部4の傾斜状態に異常が発生している場合のコイル7,8において発生する逆起電力は、異常が発生していない場合のコイル7,8において発生する逆起電力から変化する。判定部14は、この逆起電力の変化をモニタすることにより、第2可動部4の傾斜状態に異常が発生しているか否かを判定する。判定部14による判定処理の詳細については後述する。
【0043】
アクチュエータ装置1は、光源50を更に備えている。光源50は、光Lをミラー面31aに照射する。ミラー面31aにおいて反射された光Lは、ミラー面31aの揺動によって、光Lが照射される対象物に対して走査される。光源50から出射される光Lは、例えば、レーザ光であってもよいし、LED(Light Emitting Diode)による光であってもよい。
[アクチュエータ装置の異常検出方法]
【0044】
図2を参照して、アクチュエータ装置1の異常検出方法を説明する。この異常検出方法では、第2可動部4の傾斜状態に異常が発生しているか否かを判定することにより、アクチュエータ装置1の異常を検出する。
【0045】
まず、アクチュエータ装置1が用意される(用意ステップ)。続いて、制御部11が、駆動信号をコイル7,8に供給する(供給ステップS1)。具体的には、制御部11は、第1可動部3を共振駆動させるための第1駆動信号をコイル7に供給すると共に、第2可動部4を非共振駆動させるための第2駆動信号をコイル8に供給する。一例として、第1駆動信号は、第1可動部3を目標振れ角(この例では20°)で共振駆動させるための駆動電流であり、第2駆動信号は、第2可動部4を目標振れ角(この例では10°)で非共振駆動(連続的に揺動)させるための駆動電流である。なお、振れ角とは、光学的振れ角を意味する。光学的振れ角は、ミラー面31aにおける入射光と反射光とが成す角度であり、ミラーが傾く角度である機械的振れ角の2倍である。また、振れ角は、コイル7,8に駆動信号が供給されていない状態(この例では、ミラー面31aがX軸及びY軸に平行な状態)を基準(振れ角が0°である)とした角度である。
【0046】
供給ステップS1の実施に合わせて、光源50が光Lをミラー面31aに照射する。光Lは、ミラー面31aにおいて反射されて対象物に照射される。光源50による光Lの照射が開始されるタイミングは任意であり、供給ステップS1が開始される前であってもよいし、供給ステップS1が開始されてから所定の時間が経過した時点であってもよい。
【0047】
続いて、取得部12が、コイル7,8において発生する逆起電力に対応する出力値を取得する(取得ステップS2)。具体的には、取得部12は、供給ステップS1により第1駆動信号及び第2駆動信号が供給されている状態において、コイル7において発生する逆起電力に対応する第1出力値及びコイル8において発生する逆起電力に対応する第2出力値を取得する。コイル7,8は、第2可動部4に配置されている。そのため、コイル7,8の各々において発生する逆起電力は、第2可動部4の傾斜状態を反映したものになる。また、本実施形態では、コイル7に第1駆動信号を供給してコイル7を共振駆動させる際に、第2可動部4も第1可動部3の共振周波数に対応する周波数にて振動する。そのため、第2可動部4に配置されたコイル7,8の各々において発生する逆起電力は、第1可動部3の傾斜状態も反映したものとなる。すなわち、コイル7,8の各々において発生する逆起電力は、第1可動部3及び第2可動部4の両方の傾斜状態を反映したものとなる。増幅回路13は、コイル7,8において発生する逆起電力を増幅する。この例では、増幅回路13は、逆起電力を10倍以上に増幅する。取得部12は、コイル7において発生する逆起電力の増幅後の値を第1出力値として取得すると共に、コイル8において発生する逆起電力の増幅後の値を第2出力値として取得する。
【0048】
続いて、判定部14が、第2可動部4の傾斜状態に異常が発生しているか否かを判定する(判定ステップS3)。判定部14は、供給ステップS1においてコイル8に供給された第2駆動信号と、取得ステップS2において取得された第1出力値及び第2出力値とに基づいて、第2可動部4の傾斜状態に異常が発生しているか否かを判定する。この例では、判定部14は、第2可動部4が傾斜しているか否か(第2可動部4の振れ角が0°であるか否か)を判定することにより、第2可動部4の傾斜状態に異常が発生しているか否かを判定する。
【0049】
上述したとおり、第2可動部4に配置されたコイル7,8の各々において発生する逆起電力は、第1可動部3及び第2可動部4の傾斜状態を反映したものである。したがって、第2可動部4の傾斜状態に異常が発生している場合に取得される第1出力値及び第2出力値は、第2可動部4の傾斜状態が正常である場合に取得される出力値(正常な出力値)から変化する。より具体的には、第2可動部4が傾斜していない場合を第2可動部4の傾斜状態に異常が発生している場合とすると、第2可動部4が傾斜していない場合に取得される第1出力値及び第2出力値は、第2可動部4が傾斜している場合に取得される第1出力値及び第2出力値から変化する。判定部14は、この第1出力値及び第2出力値の変化をモニタすることにより、第2可動部4が傾斜しているか否かを判定し、第2可動部4が傾斜していないと判定した場合には、第2可動部4の傾斜状態に異常が発生していると判定する。
【0050】
コイル7,8の各々には、第1可動部3の駆動に起因する逆起電力と第2可動部4の駆動に起因する逆起電力とが発生する。共振駆動する第1可動部3の移動速度は速いため、第1可動部3の駆動に起因する逆起電力は比較的大きくなる。これに対して、非共振駆動する第2可動部4の移動速度は、第1可動部3と比べて遅いため、第2可動部4の駆動に起因する逆起電力は比較的小さくなる。
【0051】
ここで、第1可動部3の駆動に起因する逆起電力と第2可動部4の駆動に起因する逆起電力について図3,4を参照してより詳細に説明する。図3には、共振駆動する第1可動部3の駆動に起因する逆起電力が示されている。具体的には、第2可動部4の振れ角を0°とした場合における、第1可動部3の振れ角と第1可動部3の駆動に起因する逆起電力との関係が示されている。第1可動部3の駆動に起因する逆起電力の単位Vppは、変動する逆起電力の振幅の最大値と最小値との差(電位差)を表す。図4には、非共振駆動する第2可動部4の駆動に起因する逆起電力が示されている。具体的には、第1可動部3を振れ角20°で共振駆動させた状態で第2可動部4を60Hzで非共振駆動(連続的に揺動)させた場合における、第2可動部4の振れ角と第2可動部4の駆動に起因する逆起電力との関係が示されている。図4に示される逆起電力は、コイルに発生する逆起電力を39倍に増幅した値である。図3,4に示されるように、第1可動部3の駆動に起因する逆起電力、及び第2可動部4の駆動に起因する逆起電力の各々は、可動部の振れ角が大きくなるに連れて増加している。すなわち、コイル7,8の各々において発生する逆起電力は、第1可動部3及び第2可動部4の両方の傾斜状態(振れ角)を反映するものとなることが確認できる。したがって、判定部14は、コイル7,8において発生する逆起電力をモニタすることにより、第2可動部4が傾斜しているか否かの判定を行うことができる。
【0052】
図3を参照して述べたように、コイル7,8の各々において発生する逆起電力は、第1可動部3の傾斜状態を反映するものとなる。そのため、制御部11は、コイル7,8において発生する逆起電力に基づいて供給ステップS1により供給する第1駆動信号を調整することにより、第1可動部3の傾斜状態をフィードバック制御することができる。例えば、制御部11は、コイル7,8において発生する逆起電力と供給する第1駆動信号との位相差が90°に保たれるように調整を行うことにより、第1可動部3の共振状態を維持することができる。
【0053】
続いて、判定ステップS3において第2可動部4の傾斜状態に異常が発生していると判定された場合には、光源50が、ミラー面31aへの光Lの照射を停止させる(停止ステップS4)。対して、判定ステップS3において第2可動部4の傾斜状態に異常が発生していると判定されなかった場合には、光源50は、ミラー面31aへの光Lの照射を継続する。以上の異常検出方法を実施することにより、アクチュエータ装置1に異常が発生している場合に、当該異常を検出することができる。
[作用及び効果]
【0054】
本実施形態に係るアクチュエータ装置1の異常検出方法では、供給ステップS1により第2駆動信号がコイル8に供給されている状態において、コイル7,8において発生する逆起電力に対応する出力値を取得し、供給ステップS1においてコイル8に供給された第2駆動信号と、取得ステップS2において取得された出力値(第1出力値及び第2出力値)とに基づいて、第2可動部4の傾斜状態に異常が発生しているか否かを判定する。例えば、磁石部9の減磁、又は磁石部9とコイル7,8との間の位置ずれ等に起因してコイル7,8が受ける磁力が変化した場合、コイル7,8において発生する逆起電力も変化する。本実施形態に係る異常検出方法では、コイル7,8において発生する逆起電力を用いて第2可動部4の傾斜状態の異常を検出するため、コイル8に異常が発生した場合だけでなく、磁石部9の減磁、又は磁石部9とコイル7,8との間の位置ずれ等の様々な要因により発生するアクチュエータ装置1の異常を検出することができる。よって、本実施形態に係る異常検出方法によれば、アクチュエータ装置1の異常をより確実に検出することができる。
【0055】
本実施形態に係る異常検出方法は、本発明者らが次の知見を見出したことによりなされたものである。すなわち、第2可動部4が非共振駆動する場合、第2可動部4が共振駆動する場合と比べて第2可動部4の移動速度が遅いため、第2可動部4に配置されたコイル7,8に発生する第2可動部4の駆動に起因する逆起電力は比較的小さくなる。これは、逆起電力はコイル7,8が磁場内において移動する速度に応じて大きくなり、共振駆動の場合には移動速度が速いために逆起電力が大きくなるためである。例えば、図3,4に示されるように、非共振駆動する第2可動部4の駆動に起因する逆起電力(図4)は、mVオーダの値であり、共振駆動する第1可動部3の駆動に起因する逆起電力(図3)と比べて小さい。そのため、第2可動部4の振れ角の変化が僅か(例えば0.1°)である場合には、第2可動部4の駆動に起因する逆起電力の変化も僅かである。したがって、第2可動部4が非共振駆動する場合には、コイル7,8に発生する逆起電力に基づいて第2可動部4の角度を正確にモニタすること(目標振れ角から僅かにずれたことを検出すること)は難しいと考えられる。一方、本発明者らは、第2可動部4の角度を正確にモニタすることはできなくとも、比較的小さな逆起電力を用いることにより、第2可動部4の傾斜状態に異常が発生しているか否かを判定することは可能であることを見出した。具体的には、本発明者らは、第2可動部4の駆動に起因する逆起電力を用いることにより、例えば、第2可動部4が傾斜しているか否かの判定や第2可動部4の振れ角の大まかな判定等を行うことが可能であることを見出した。第2可動部4の振れ角の大まかな判定とは、例えば、1°以上の間隔で振れ角を判定することであり、例として、第2可動部4の振れ角が0°及び12°のいずれであるのか(いずれに近いのか)との判定、又は第2可動部4の振れ角が0°、5°及び10°のいずれであるのか(いずれに近いのか)の判定等である。第2可動部4が傾斜しているか否かの判定や第2可動部4の振れ角の大まかな判定等の結果に基づいて、第2可動部4の傾斜状態に異常が発生しているか否かを判定することができる。換言すると、本実施形態に係る異常検出方法によれば、コイル7,8に発生する第2可動部4の駆動に起因する逆起電力をモニタすることによって検出可能である異常を検出することができる。また、本実施形態に係る異常検出方法によれば、例えば、アクチュエータ装置1のような2次元ラスタースキャンに用いられる電磁式MEMSミラーを備える装置において、第2可動部4の振れ角をセンシングする機能部(例えば圧電素子やひずみゲージ等のセンサ)を別途設けることなく、第2可動部4の傾斜状態に関する異常を検出することができる。
【0056】
供給ステップS1では、制御部11が、第1駆動信号及び第2駆動信号をコイル7,8に供給し、取得ステップS2では、供給ステップS1により第1駆動信号及び第2駆動信号がコイル7,8に供給されている状態において、第1出力値及び第2出力値を取得する。これにより、第1可動部3を共振駆動させた状態において、第2可動部4の傾斜状態に異常が発生しているか否かを判定することができる。また、アクチュエータ装置1では、第1可動部3を駆動させるためのコイル7が第2可動部4に形成されている。これにより、コイル7に第1駆動信号を供給して第1可動部3を共振駆動させる際に、第2可動部4も第1可動部3の共振周波数に対応する周波数にて振動する。そのため、第2可動部4に配置されたコイル7,8において発生する逆起電力が、第1可動部3の傾斜状態を反映したものとなる。そのため、制御部11は、コイル7,8において発生する逆起電力に基づいて供給ステップS1により供給する第1駆動信号を調整することにより、第1可動部3の傾斜状態をフィードバック制御することができる。例えば、制御部11は、コイル7,8において発生する逆起電力と供給する第1駆動信号との位相差が90°に保たれるように調整を行うことにより、第1可動部3の共振状態を維持することができる。
【0057】
判定ステップS3では、第2可動部4が傾斜しているか否かを判定することにより、第2可動部4の傾斜状態に異常が発生しているか否かを判定する。これにより、本来傾斜しているべき第2可動部4が傾斜していない異常を検出することができる。
【0058】
第1可動部3及び第2可動部4を駆動させる駆動部が、第1可動部3を駆動させるためのコイル7及び第2可動部4を駆動させるためのコイル8を有し、検出用コイルが、コイル7,8によって構成されている。これにより、駆動用コイルとは別に検出用コイルを設ける場合と比べて、第2可動部4におけるコイルの配置スペースを小さくすることができる。
【0059】
第1可動部3及び第2可動部4を駆動させる駆動部が、第1可動部3を駆動させるためのコイル7と、第2可動部4を駆動させるためのコイル8と、を有し、コイル7及びコイル8が、第2可動部4に配置されている。これにより、コイル7が第1可動部3に配置されている場合と比べて、共振駆動される第1可動部3の軽量化を図ることができ、第1可動部3を駆動させるための電力を低減することができる。また、第1可動部3のX軸周りの慣性モーメントを低減することができ、共振周波数の低下を抑制することができる。
【0060】
検出用コイルが、コイル7及びコイル8によって構成されており、取得ステップS2では、第2駆動信号がコイル8に供給されている状態において、コイル7において発生する逆起電力に対応する第1出力値及びコイル8において発生する逆起電力に対応する第2出力値を取得し、判定ステップS3では、供給ステップS1においてコイル8に供給された第2駆動信号と、取得ステップS2において取得された第1出力値及び第2出力値とに基づいて、第2可動部4の傾斜状態に異常が発生しているか否かを判定する。これにより、第2可動部4の傾斜状態に異常が発生しているか否かをより確実に判定することができる。
【0061】
第1可動部3及び第2可動部4を駆動させる駆動部が、第1可動部3を駆動させるためのコイル7(第1駆動部)と、第2可動部4を駆動させるためのコイル8(第2駆動部)と、を有し、コイル7,8が、第2可動部4に配置されている。これにより、コイル7が第2可動部4に配置されているため、コイル7に第1駆動信号を供給して第1可動部3を共振駆動させる際に、第2可動部4も第1可動部3の共振周波数に対応する周波数にて振動する。そのため、第2可動部4に配置されたコイル7,8において発生する逆起電力が、第1可動部3の傾斜状態を反映したものとなる。すなわち、取得ステップS2において、第1可動部3の傾斜状態が反映された逆起電力の出力値を取得することができる。また、第2可動部4に配置されたコイル7,8において発生する逆起電力が第1可動部3及び第2可動部4の両方の傾斜状態を反映したものとなり、取得ステップS2において第1可動部3及び第2可動部4の傾斜状態が反映された逆起電力の出力値を取得することができる。また、コイル7が第1可動部3に配置されている場合と比べて、第1可動部3の軽量化を図ることができ、第1可動部3の慣性モーメントを低減することができる。
【0062】
供給ステップS1では、制御部11が、第2可動部4を目標振れ角(所定の振れ角)で連続的に揺動させるための信号を第2駆動信号としてコイル8に供給する。これにより、第2可動部4を目標振れ角で連続的に揺動させる場合において、第2可動部4の傾斜状態に異常が発生しているか否かを判定することができる。
【0063】
アクチュエータ装置1が、増幅回路13を備えている。取得ステップS2では、増幅回路13によって10倍以上に増幅されたコイル7において発生する逆起電力を第1出力値として取得し、増幅回路13によって10倍以上に増幅されたコイル8において発生する逆起電力を第2出力値として取得する。これにより、コイル7,8において発生する逆起電力の変化が小さい場合であっても、第2可動部4の傾斜状態に異常が発生しているか否かを良好に判定することができる。
【0064】
アクチュエータ装置1が、第1可動部3に形成され、光源50からの光Lが入射するミラー面31aを備えている。これにより、光源50からの光Lが入射するミラー面31aを備えるアクチュエータ装置1の異常をより確実に検出することができる。
【0065】
本実施形態に係るアクチュエータ装置1の異常検出方法は、判定ステップS3において第2可動部4の傾斜状態に異常が発生していると判定された場合に、光源50からミラー面31aへの光Lの照射を停止させる停止ステップS4を含んでいる。これにより、第2可動部4の傾斜状態に異常が発生していると判定されたときに、ミラー面31aへの光Lの照射が停止されるため、例えば、ミラー面31aにおいて反射された光Lが対象物に照射され続けることによって当該対象物が損傷することを防止することができる。
[変形例]
【0066】
図5に示されるアクチュエータ装置1Aは、支持部2、第1可動部3、第2可動部4、一対の第1トーションバー5、一対の第2トーションバー6、コイル7,8及び磁石部9に加えて、ベース111と、側壁112と、窓材113と、パッケージ120と、を備えている。
【0067】
ベース111は、例えば矩形板状に形成されており、ベース111上に支持部2が配置されている。より具体的には、ベース111には凹部111aが形成されており、凹部111aの底面には凹部111bが形成されている。凹部111aの底面上に支持部2が配置され、第1可動部3及び第2可動部4が凹部111bの底面と向かい合っている。コイル7,8は、X軸及びY軸に垂直な方向から見た場合に、凹部111aの外縁よりも内側に位置している。コイル7,8は、X軸及びY軸に垂直な方向から見た場合に、凹部111bの外縁よりも内側に位置している。
【0068】
側壁112は、例えば矩形筒状に形成されている。窓材113は、例えば透光性材料により矩形板状に形成されており、側壁112上に配置されている。窓材113は、振れ角が0°であるときのミラー面31aに対して傾斜するように配置されている。ベース111には配線が形成されており、当該配線は、ワイヤを介してコイル7,8と電気的に接続されている。
【0069】
ベース111を設けることにより、第1可動部3及び第2可動部4を有して比較的繊細なチップの破損を防止することができる。チップを安定的に支持して破損を防止する観点からは、ベース111の厚さ(凹部111a,111bが形成された箇所以外の厚さ)は、チップの厚さ(支持部2の厚さ)よりも大きいことが好ましい。ベース111の厚さを大きくすることで、環境温度の変化等によるベース111の歪みを抑制することができる。
【0070】
パッケージ120は、略直方体状の外形を有し、磁石部9を収容している。磁石部9は、磁石91,92,93を有している。磁石91~93は、ハルバッハ配列で並べられており、コイル7,8に作用する磁場を発生させる。磁石部9上にはベース111が樹脂115により固定されている。磁石部9は、支持部2、第1可動部3及び第2可動部4等に対してX軸及びY軸に垂直な方向における一方側(ミラー面31aとは反対側)(図5中の下側)に配置されている。磁石部9は、X軸及びY軸に垂直な方向において支持部2、第1可動部3及び第2可動部4等と重なるように配置されている。この例では、磁石部9が有する磁石91,92,93のうち中央に位置する(磁石91,91の間に位置する)磁石92(中央磁石)の少なくとも一部が、X軸及びY軸に垂直な方向において支持部2、第1可動部3及び第2可動部4等と重なっている。このようなアクチュエータ装置1Aにおいても、上述した異常検出方法により、アクチュエータ装置1Aの異常をより確実に検出することができる。なお、ベース111は設けられなくてもよく、例えばチップ(支持部2)が樹脂115を介して磁石部9上に配置されていてもよい。この場合、コイル7,8と磁石部9との間の距離が近くなるため、検出用コイルにおいて発生する逆起電力の信号量を大きくすることができる。
【0071】
本発明は、上記実施形態及び変形例に限られない。各構成の材料及び形状には、上述した材料及び形状に限らず、様々な材料及び形状を採用することができる。例えば、上記実施形態では、コイル7及びコイル8の両方が検出用コイルを構成していたが、検出用コイルは、コイル7及びコイル8の一方によって構成されていてもよい。検出用コイルがコイル7によって構成されている場合、取得部12は、コイル7において発生する逆起電力に対応する第1出力値を取得し、判定部14は、供給ステップS1においてコイル8に供給された第2駆動信号と、取得された第1出力値とに基づいて、第2可動部4の傾斜状態に異常が発生しているか否かを判定する。この場合、取得部12は、コイル8において発生する逆起電力に対応する第2出力値を取得しなくてもよい。
【0072】
第1可動部3を共振駆動させるためのコイル7によって検出用コイルを構成する場合、例えば第2可動部4を非共振駆動させるためのコイル8によって検出用コイルを構成する場合と比べて、検出用コイルにおいて発生する逆起電力が大きくなりやすい。大きい逆起電力を取得することができれば、逆起電力を一定の値まで増幅させるためのゲインを小さくすることができ、逆起電力に対応する第1出力値に重畳するノイズを低減することができる。具体的には、アクチュエータ装置1のように、第1可動部3を共振駆動させるためのコイル7の巻き数は、第2可動部4を非共振駆動させるためのコイル8の巻き数よりも多いことが一般的である。巻き数が多いコイル7によって検出用コイルを構成することにより、相対的に巻き数が少ないコイル8によって検出用コイルを構成する場合と比べて、より大きい逆起電力を取得することができ、第1出力値に重畳するノイズを低減することができる。すなわち、コイル7の巻き数がコイル8の巻き数よりも多い場合に、検出用コイルがコイル7によって構成されてもよい。この場合、検出用コイルにおいて発生する逆起電力を大きくすることができ、逆起電力に対応する出力値に重畳するノイズを低減することができる。また、例えばコイル7,8の両方の巻き数を多くする場合と比べて、第2可動部4の大型化を抑制することができる。なお、コイル8の巻き数がコイル7の巻き数よりも多くてもよく、この場合に検出用コイルがコイル8によって構成されてもよい。また、コイル7,8の巻き数は同じであってもよい。
【0073】
検出用コイルがコイル8によって構成されている場合、取得部12は、コイル8において発生する逆起電力に対応する第2出力値を取得し、判定部14は、供給ステップS1においてコイル8に供給された第2駆動信号と、取得された第2出力値とに基づいて、第2可動部4の傾斜状態に異常が発生しているか否かを判定する。この場合、取得部12は、コイル7において発生する逆起電力に対応する第1出力値を取得しなくてもよい。
【0074】
コイル7,8は、第2可動部4に配置されていなくてもよい。コイル7は、第1可動部3(例えば環状部32)に配置されていてもよい。アクチュエータ装置1は、コイル7,8とは異なる第2可動部4(例えば配置領域R)に配置された他のコイルを更に備え、検出用コイルは、当該他のコイルによって構成されていてもよい。検出用コイルが他のコイルによって構成されている場合、取得部12は、他のコイルにおいて発生する逆起電力に対応する出力値を取得し、判定部14は、供給ステップS1においてコイル8に供給された第2駆動信号と、取得部12により取得された出力値とに基づいて、第2可動部4の傾斜状態に異常が発生しているか否かを判定する。
【0075】
コイル7,8の一方が省略され、他方のコイルは、第1可動部3及び第2可動部4の両方を駆動させるための単一の駆動用コイルを構成してもよい。単一の駆動用コイルは、第2可動部4(例えば配置領域R)に配置され、検出用コイルは、単一の駆動用コイルによって構成されていてもよい。この場合、制御部11は、供給ステップS1において、第1駆動信号及び第2駆動信号が互いに重畳した信号を単一の駆動用コイルに供給してもよい。取得部12は、取得ステップS2において、単一の駆動用コイルに発生する逆起電力に対応する出力値を取得し、判定部14は、供給ステップS1において単一の駆動用コイルに供給された第2駆動信号と、取得ステップS2において取得された出力値とに基づいて、第2可動部4の傾斜状態に異常が発生しているか否かを判定する。この場合、第1可動部3を駆動させるための駆動用コイルと、第2可動部4を駆動させるための駆動用コイルとを別々に設ける場合と比べて、第1可動部3及び第2可動部4を駆動させるための駆動用コイル(単一の駆動用コイル)の巻き数を多くすることができる。そして、巻き数の多い単一の駆動用コイルによって検出用コイルを構成することで、検出用コイルにおいて発生する逆起電力の信号量を大きくすることができる。
【0076】
上記実施形態では、アクチュエータ装置1が電磁駆動式に構成され、第1可動部3及び第2可動部4を駆動させる駆動部がコイル7,8を有していたが、アクチュエータ装置1は圧電駆動式又は静電駆動式に構成されてもよい。前者の場合、駆動部は例えば圧電素子(例えば圧電膜)を含んで構成され、後者の場合、駆動部は例えば静電気力を発生させる駆動電極(例えば櫛歯電極)を含んで構成される。圧電膜は、一対の第2トーションバー6に配置されてもよい。第2可動部4を駆動させるための第2駆動部は、上記実施形態のように第2可動部4に配置されてもよいし、第2トーションバー6(第2連結部)に配置されてもよい。
【0077】
供給ステップS1では、制御部11が、第2可動部4を所定の振れ角で連続的に揺動させるための信号を第2駆動信号としてコイル8に供給したが、制御部11は、第2可動部4を所定の角度で停止させるための信号を第2駆動信号としてコイル8に供給してもよい。この場合、取得ステップS2では、供給ステップS1により第2可動部4を所定の角度で停止させるための信号がコイル8に供給されている状態において、取得部12が第1出力値及び第2出力値を取得してもよい。これにより、第2可動部4を所定の角度で停止させる場合(第2可動部4に静的な動作をさせる場合)において、第2可動部4の傾斜状態に異常が発生しているか否かを判定することができる。図4を参照して、第2可動部4を連続的に揺動させた場合において、第2可動部4の振れ角に応じて逆起電力が変化することを説明したが、第2可動部4を静的に(所定の振れ角で静止するように)駆動させた場合であっても、第2可動部4の振れ角に応じて逆起電力は変化する。第2可動部4を静的に駆動させた場合での逆起電力は、第2可動部4を連続的に揺動させた場合での逆起電力よりも小さい値となるが、その変化をモニタすることにより、第2可動部4の傾斜状態に異常が発生しているか否かを判定することができる。
【0078】
供給ステップS1では、制御部11が、第1駆動信号をコイル7に供給せずに、第2駆動信号のみをコイル8に供給してもよい。この場合、取得ステップS2では、供給ステップS1により第1駆動信号がコイル7に供給されていない状態において、取得部12が第1出力値及び第2出力値を取得してもよい。すなわち、取得部12は、第1可動部3が共振駆動していない状態において、第1出力値及び第2出力値を取得してもよい。
【0079】
上記実施形態では、判定部14が、第2可動部4が傾斜しているか否かを判定することにより、第2可動部4の傾斜状態に異常が発生しているか否かを判定したが、判定部14は、第2可動部4が傾斜しているか否かを判定せずに、第2可動部4の傾斜状態に異常が発生しているか否かを判定してもよい。例えば、判定部14は、第2可動部4が傾斜しているか否かの判定に代えて、第2可動部4の実際の振れ角が目標振れ角からずれているか否かを判定することにより、第2可動部4の傾斜状態に異常が発生しているか否かを判定してもよい。上述したように、非共振駆動する第2可動部4の駆動に起因する逆起電力は、共振駆動する第1可動部3の駆動に起因する逆起電力と比べて小さいが、比較的小さな逆起電力を用いることにより、第2可動部4の振れ角の大まかな判定を行うことは可能である。一例として、判定部14は、第2可動部4の目標振れ角が10°であるにも関わらず、第2可動部4の振れ角が10°ではなく5°であると判定した場合には、第2可動部4の傾斜状態に異常が発生していると判定する。
【0080】
アクチュエータ装置1は、増幅回路13を備えていなくてもよい。この場合、取得ステップS2において、取得部12は、コイル7において発生する逆起電力をそのまま第1出力値として取得し、コイル8において発生する逆起電力をそのまま第2出力値として取得してもよい。
【0081】
アクチュエータ装置1は、ミラー面31a以外の光学機能部が第1可動部3に形成されたデバイスであってもよい。第1可動部3に形成される光学機能部は、例えば回折格子等であってもよい。
【0082】
停止ステップS4が省略され、アクチュエータ装置1の異常検出方法は、停止ステップS4に代えて、光源50が照射する光Lの強度を低下させるステップ、又はアクチュエータ装置1が異常の発生を報知するステップ等を含んでいてもよい。アクチュエータ装置1が異常の発生を報知するステップは、例えば、判定部14が異常の発生を示す信号を出力装置(例えばディスプレイ又はスピーカ等)に出力し、出力装置が当該信号に基づいて異常の発生を報知(例えば画面出力又は音声出力)することにより行われてもよい。上記実施形態では、光源50は、アクチュエータ装置1の構成の一部として説明されていたが、光源50は、アクチュエータ装置1とは別の構成とみなされてもよい。アクチュエータ装置1は受光部を更に備え、光源50から出射され、ミラー面31aにおいて反射された光Lが受光部において受光されてもよい。この場合、第2可動部4の振れ角を更に正確に検出することができる。
【符号の説明】
【0083】
1…アクチュエータ装置、2…支持部、3…第1可動部、4…第2可動部、5…第1トーションバー(第1連結部)、6…第2トーションバー(第2連結部)、7…コイル(検出用コイル、駆動部、第1駆動部)、8…コイル(検出用コイル、駆動部、第2駆動部)、9…磁石部、11…制御部、12…取得部、13…増幅回路、14…判定部、31a…ミラー面(光学機能部)、50…光源。
図1
図2
図3
図4
図5