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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123515
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】粉砕装置
(51)【国際特許分類】
   B02C 18/14 20060101AFI20240905BHJP
   B02C 18/16 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
B02C18/14
B02C18/16 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030998
(22)【出願日】2023-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】輪嶋 雅樹
(72)【発明者】
【氏名】有馬 弘毅
(72)【発明者】
【氏名】上坊寺 亨
【テーマコード(参考)】
4D065
【Fターム(参考)】
4D065CA05
4D065CB02
4D065CC01
4D065DD04
4D065DD08
4D065DD24
4D065EA05
4D065EB11
4D065EB20
4D065ED27
4D065EE02
4D065EE15
(57)【要約】      (修正有)
【課題】バイオマスからのセルロースの可溶化率を高めることができる粉砕装置を提供する。
【解決手段】バイオマスを粉砕するための粉砕装置10aは、バイオマスが所定の方向に通過可能に互いに直列に連通する複数の粉砕室111,112,113と、複数の粉砕室111,112,113のそれぞれの内部に配置され、複数の粉砕室111,112,113のそれぞれの内部において回転することにより複数の粉砕室のそれぞれの内部に存在するバイオマスを攪拌(粉砕)するように構成される複数の粉砕機構17,18,19と、を備え、粉砕機構17,18,19の回転数は、粉砕室111,112,113ごとに異なる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマスを粉砕するための粉砕装置であって、
外部からバイオマスを供給可能に構成される上流端粉砕室と、外部にバイオマスを排出可能に構成される下流端粉砕室とを含み、前記上流端粉砕室から前記下流端粉砕室に向かってバイオマスが通過可能に直列に連通する複数の粉砕室が設けられる容器と、
複数の前記粉砕室のそれぞれの内部に回転可能に配置され、複数の前記粉砕室のそれぞれの内部において回転することにより複数の前記粉砕室のそれぞれの内部に存在する物体を攪拌するように構成される複数の攪拌部材と、
を備え、
複数の前記攪拌部材の回転数は、複数の前記粉砕室ごとに異なる、
粉砕装置。
【請求項2】
請求項1に記載の粉砕装置であって、
複数の前記攪拌部材の回転速度は、前記上流端粉砕室から前記下流端粉砕室に向かうにしたがって低くなる、
粉砕装置。
【請求項3】
請求項2に記載の粉砕装置であって、
前記上流端粉砕室に配置される前記攪拌部材の回転速度が最も高い、
粉砕装置。
【請求項4】
請求項2に記載の粉砕装置であって、
前記下流端粉砕室に配置される前記攪拌部材の回転速度が最も低い、
粉砕装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の粉砕装置であって、
複数の前記攪拌部材を回転させる単数または複数の駆動力源を備え、
前記駆動力源の数は前記攪拌部材の数よりも少ない、
粉砕装置。
【請求項6】
請求項5に記載の粉砕装置であって、
複数の前記攪拌部材は同軸に配置される、
粉砕装置。
【請求項7】
請求項6に記載の粉砕装置であって、
複数の前記攪拌部材のうちの隣り合う前記攪拌部材どうしの間には、前記上流端粉砕室または前記上流端粉砕室に近い側の前記粉砕室に配置される前記攪拌部材の回転を減速して前記下流端粉砕室または前記下流端粉砕室に近い側の前記粉砕室に配置される前記攪拌部材に伝達する動力伝達機構が配置される、
粉砕装置。
【請求項8】
請求項7に記載の粉砕装置であって、
前記動力伝達機構は遊星歯車機構である、
粉砕装置。
【請求項9】
請求項8に記載の粉砕装置であって、
前記容器は、前記容器の内部の空間を直列に並ぶ複数の空間に区画する単数または複数の区画板を備え、
複数の前記粉砕室のそれぞれは、前記区画板により区画される前記複数の空間のそれぞれであり、
複数の前記攪拌部材は前記区画板に回転可能に支持される、
粉砕装置。
【請求項10】
請求項9に記載の粉砕装置であって、
前記区画板の内部には、前記容器の外部から前記攪拌部材を回転可能に支持する部分へ潤滑油を供給するためのオイル経路が設けられる、
粉砕装置。
【請求項11】
請求項1に記載の粉砕装置であって、
同軸に分離可能に結合している複数のモジュールを備え、
前記複数のモジュールのそれぞれは、前記容器の一部を形成するとともに複数の前記粉砕室のそれぞれを形成する複数のサブ容器のうちの1つと、複数の前記サブ容器のうちの1つの内部に回転可能に配置される1つの前記攪拌部材と、を備える、
粉砕装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマスを粉砕する粉砕装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バイオマスを原料とするバイオ燃料の製造方法として、バイオマスに含まれるセルロースを加水分解などの糖化工程により糖化し、得られた糖を発酵させることによりバイオ燃料であるエタノールを製造する方法が知られている。そして、バイオマスから効率よくバイオ燃料を製造するため、バイオマスからのセルロースの抽出率を高めることが求められる。
【0003】
特許文献1には、バイオマスからセルロースを抽出する方法として、バイオマスを加熱下において粉砕することによりバイオマスに含まれるセルロースを可溶化し、可溶化したセルロースを水によって抽出する方法が開示されている。そして、特許文献1には、バイオマスを加熱下において粉砕することにより、バイオマスに含まれるセルロースの可溶化率を高めることができる旨が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、円筒容器の内部に配置された複数の回転体によってバイオマスを粉砕する粉砕装置が開示されている。具体的には、特許文献2に記載の粉砕装置は、公転可能に構成される円筒容器と、円筒容器の内部に収容され外周面に複数の突起が設けられた回転体を備える。そして、特許文献2に記載の粉砕装置は、円筒容器を公転させることによって回転体を容器の内部で転動させることにより、回転体の外周面の突起によりバイオマスを粉砕するように構成される。
【0005】
しかしながら、特許文献2に記載の粉砕装置はバッチ式であるため、粉砕対象のバイオマスを容器に投入する工程(投入工程)と、投入されたバイオマスを粉砕する工程(粉砕工程)と、粉砕されたバイオマスを取り出す工程(排出工程)とを、別々に行わなければならない。このため、多量のバイオマスを粉砕する場合には、投入工程と粉砕工程と排出工程とを繰り返し実行しなければならないから、時間を要する。このため、多量のバイオマスを粉砕するためには、粉砕装置が、バイオマスを粉砕しながら粉砕対象のバイオマスの投入と粉砕されたバイオマスの取り出しを実行できる連続式であることが好ましい。
【0006】
ところで、バイオマスを加熱下において粉砕することによりバイオマスに含まれるセルロースを可溶化する場合、粉砕中のバイオマスに掛ける力の経時的な履歴がセルロースの可溶化率に影響する。このため、セルロースの可溶化率を高めるためには、粉砕中のバイオマスに掛ける力を制御できる(具体的には経時的に変化させられる)ことが要求される。しかしながら、連続式の粉砕装置では、粉砕中のバイオマスに掛かる力を経時的に変化させることが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013-111034号公報
【特許文献2】特開2009-233542号公報
【発明の概要】
【0008】
(発明が解決しようとする課題)
上記実情に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、粉砕中のバイオマスに掛ける力を経時的に変化させることができる連続式の粉砕装置を提供することである。
【0009】
(課題を解決するための手段)
前記目的を達成するため、本発明に係る粉砕装置は、バイオマスを粉砕するための粉砕装置であって、外部からバイオマスを供給可能に構成される上流端粉砕室と、外部にバイオマスを排出可能に構成される下流端粉砕室とを含み、上流端粉砕室から下流端粉砕室に向かってバイオマスが通過可能に直列に連通する複数の粉砕室と、複数の粉砕室のそれぞれの内部に回転可能に配置され、複数の粉砕室のそれぞれの内部において回転することにより複数の粉砕室のそれぞれの内部に存在する物体を攪拌するように構成される複数の攪拌部材と、を備え、複数の攪拌部材の回転数は、複数の粉砕室ごとに異なる。
【0010】
本発明によれば、複数の粉砕室のうちの上流端粉砕室に供給されたバイオマスは、当該複数の粉砕室を下流端粉砕室に向かって移動し、下流端粉砕室から外部に排出される。バイオマスは、その間に各粉砕室において攪拌部材に攪拌されることにより粉砕される。バイオマスを粉砕する際にバイオマスに掛かる力は攪拌部材の回転数に影響され、攪拌部材の回転数が高いほど、バイオマスに掛かる力は大きい。そして、各粉砕室で攪拌部材の回転数が異なるから、上流端粉砕室に供給されてから下流端粉砕室から排出されるまでの間にバイオマスに掛かる力は経時的に変化する。このように、本発明によれば、粉砕中のバイオマスに掛ける力を経時的に変化させることができる。そして、本発明によれば、バイオマスに加える力の経時変化を、セルロースの可溶化を高めるために適した経時変化にすることができる。したがって、本発明によれば、セルロースの可溶化率を高めることができる。
【0011】
複数の攪拌部材の回転速度は、上流端粉砕室から下流端粉砕室に向かうにしたがって低くなる、という構成が適用できる。この場合、上流端粉砕室に配置される攪拌部材の回転速度が最も高い、という構成が適用できる。また、下流端粉砕室に配置される攪拌部材の回転速度が最も低い、という構成が適用できる。
【0012】
セルロースを可溶化するためには、バイオマスに力を加える必要がある。一方で、セルロースに長時間にわたって大きな力を掛け続けると、一端可溶化したセルロースが不溶化するため、いったん上昇した可溶化率が低下する。前記構成によれば、バイオマスの粉砕開始直後にバイオマスに大きな力を掛けることにより、可溶化率を短時間で上昇させることができる。そしてその後バイオマスに掛ける力を小さくすることにより、いったん可溶化したセルロースの不溶化を抑制することができる。このため、セルロースの可溶化率を高めることができる。さらに、バイオマスに大きな力を掛けることにより、短時間でセルロースの可溶化率を高めることができる。このため、粉砕に要する時間を短縮できる。
【0013】
複数の攪拌部材を回転させる単数または複数の駆動力源を備え、駆動力源の数は攪拌部材の数よりも少ない、という構成が適用できる。
【0014】
このような構成によれば、駆動力源の数を少なくできるから、粉砕装置の部品コストの削減を図ることができる。
【0015】
複数の攪拌部材は同軸に配置される、という構成が適用できる。この場合、複数の攪拌部材のうちの隣り合う攪拌部材どうしの間には、上流端粉砕室または上流端粉砕室に近い側の粉砕室に配置される攪拌部材の回転を減速して下流端粉砕室または下流端粉砕室に近い側の前記粉砕室に配置される攪拌部材に伝達する動力伝達機構が配置される、という構成が適用できる。さらにこの場合、動力伝達機構は遊星歯車機構である、という構成が適用できる。
【0016】
このような構成によれば、粉砕装置が備える駆動力源の数を攪拌部材の数よりも少なくすることができるとともに、複数の攪拌部材の回転速度を、上流端粉砕室から下流端粉砕室に向かうにしたがって低くできる。
【0017】
前記容器は、容器の内部の空間を直列に並ぶ複数の空間に区画する単数または複数の区画板を備え、複数の粉砕室のそれぞれは、区画板により区画される複数の空間のそれぞれであり、複数の攪拌部材は区画板に回転可能に支持される、という構成が適用できる。
【0018】
このような構成によれば、区画板により攪拌部材が回転可能に支持されるから、攪拌部材を回転可能に支持する部材を別途追加しなくてもよい。したがって、部品点数の増加および装置の構成の複雑化を招かない。
【0019】
区画板の内部には、容器の外部から攪拌部材を回転可能に支持する部分へ潤滑油を供給するためのオイル経路が設けられる、という構成が適用できる。
【0020】
このような構成によれば、攪拌部材を回転可能に支持する部分へ潤滑油を供給するための経路を構成する部材を別途追加することなく、攪拌部材を回転可能に支持する部分を潤滑できる。したがって、部品点数の増加および装置の構成の複雑化を招かない。
【0021】
同軸に分離可能に結合している複数のモジュールを備え、前記複数のモジュールのそれぞれは、前記容器の一部を形成するとともに複数の前記粉砕室のそれぞれを形成する複数のサブ容器のうちの1つと、複数の前記サブ容器のうちの1つの内部に回転可能に配置される1つの前記攪拌部材と、を備える、という構成が適用できる。
【0022】
このような構成によれば、粉砕室の数の増減が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本発明の第一実施形態に係る粉砕装置の構成を示す断面図である。
図2A図2Aは、本発明の第一実施形態に係る粉砕装置の上流端モジュールの構成を示す断面図である。
図2B図2Bは、本発明の第一実施形態に係る粉砕装置の中間モジュールの構成を示す断面図である。
図2C図2Cは、本発明の第一実施形態に係る粉砕装置の下流端モジュールの構成を示す断面図である。
図3図3は、本発明の第二実施形態に係る粉砕装置の構成を示す断面図である。
図4図4は、本発明の第三実施形態に係る粉砕装置の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の各実施形態に係る粉砕装置は、連続式の粉砕装置である。すなわち、本発明の各実施形態に係る粉砕装置は、連続的に供給されるバイオマスを粉砕することにより細粉化できるように構成されるとともに、細粉化したバイオマスを連続的に排出できるように構成される。本発明の各実施形態に係る粉砕装置の粉砕対象のバイオマスとしては、あらかじめ所定の大きさに粗粉化された(「予備粉砕された」と言うこともできる)サトウキビの茎、トウモロコシの茎、および木材などが挙げられる。
【0025】
<第一実施形態>
図1は、第一実施形態に係る粉砕装置10aの構成を模式的に示す断面図である。図1に示すように、第一実施形態に係る粉砕装置10aは、内部に複数の粉砕室111,112,113が設けられる容器11と、各粉砕室111,112,113のそれぞれの内部に配置される複数の粉砕機構17,18,19と、各粉砕機構17,18,19を駆動するための駆動力源20と、粉砕機構17,18,19どうしの間で駆動力を伝達する複数の動力伝達機構21,22と、を備える。このほか、粉砕装置10aは、容器11の内部に存在するバイオマスを加熱するための図略の加熱機構を備える。図1に示すように、本実施形態では、容器11の内部に第一粉砕室111、第二粉砕室112、および第三粉砕室113の3つの粉砕室が設けられ、各粉砕室のそれぞれの内部に第一粉砕機構17、第二粉砕機構18、および第三粉砕機構19の3つの粉砕機構のそれぞれが配置される構成を示す。また、本実施形態では、第一粉砕機構17と第二粉砕機構18とが第一動力伝達機構21により連結され、第二粉砕機構18と第三粉砕機構19とが第二動力伝達機構22により連結される構成を示す。なお、各粉砕室111,112,113の内部には、図略の複数(多数)の球体が収容されている。球体には、鉄などの金属材料や、ジルコニアなどのセラミック材料からなる部材が適用される。また、駆動力源20には、電動モータなどといった、回転動力を出力可能な公知の各種の駆動力源が適用される。同様に、加熱機構の構成は特に限定されるものではなく、従来公知の加熱機構が適用される。
【0026】
図1に示すように、容器11は、第一サブ容器12、第二サブ容器13、第三サブ容器14、第一区画板15、および第二区画板16を備える。容器11は、略円筒状の構成を備える。そして、容器11は、円筒の軸線方向の一端側から粉砕対象であるバイオマスを供給可能に構成されるとともに、他端側から粉砕されたバイオマスを排出可能に構成される。以下、説明の便宜上、容器11の一端側(容器11を円筒とみなした場合の当該円筒の軸線方向の一端側)であって「粉砕対象であるバイオマスが供給される側」(図1においては左側)を「上流側」と記し、その反対側であって「粉砕されたバイオマスが排出される側」(図1においては右側)を「下流側」と記すことがある。また、円筒の軸線方向(図1においては左右方向)を単に「軸線方向」と記すことがある。
【0027】
第一サブ容器12は、下流側が開口する有底の円筒状の構成を備える。上流側の端部(円筒の底に相当する部分)の中心には、後述する第一粉砕機構17の第一回転軸171を挿通可能な貫通孔である軸挿通孔121が設けられる。また、第一サブ容器12の上流側の端部近傍には、第一サブ容器12の外部から内部(第一粉砕室111の内部)にバイオマスを供給するための開口部である供給部122が設けられる。第一サブ容器12の下流側の端部は、第一区画板15を取り付け可能に構成される。本実施形態では、第一サブ容器12の下流側の端部には、円筒の半径方向外側に向かって延出するフランジ部123が設けられる。
【0028】
第二サブ容器13は、軸線方向の両端部が開口する円筒状の構成を備える。第二サブ容器13の上流側の端部は、第一区画板15を取り付け可能に構成され、下流側の端部は、第二区画板16を取り付け可能に構成される。具体的には、上流側の端部と下流側の端部のそれぞれに、円筒の半径方向外側に向かって延出するフランジ部131,132が設けられる。
【0029】
第三サブ容器14は、上流側が開口する有底の円筒状の構成を備える。第三サブ容器14の下流側の端部の近傍には、粉砕されたバイオマスを内部から外部に排出するための開口部である排出部141が設けられる。また、第三サブ容器14の上流側の端部は、第二区画板16を取り付け可能に構成される。例えば、第三サブ容器14の上流側の端部には、第二区画板16を取り付け可能で、半径方向外側に向かって延出するフランジ部142が設けられる。
【0030】
第一区画板15および第二区画板16は、略円板状の構成を備える部材である。第一区画板15および第二区画板16は、略同じ構成を備える。第一区画板15の中心部には、後述する第一回転軸171および第一動力伝達機構21を支持可能に構成される第一支持部151が設けられる。第二区画板16の中心部には、後述する第二回転軸181および第二動力伝達機構22を支持可能に構成される第二支持部161が設けられる。第一支持部151および第二支持部161は、いずれも軸線方向に貫通する貫通孔が設けられた円筒状の構成を備える。また、第一区画板15および第二区画板16のそれぞれには、外周面(円板の側面に相当する部分)から第一支持部151および第二支持部161のそれぞれの内部に潤滑油を送給できるとともに、第一支持部151および第二支持部161のそれぞれの内部から容器11の外部に潤滑油を排出できるように、外周面と第一支持部151および第二支持部161のそれぞれの内周面とを連通する孔であるオイル経路152,162が設けられる。
【0031】
さらに、第一区画板15および第二区画板16のそれぞれには、粉砕中のバイオマスの経路である第一経路部153および第二経路部163が設けられる。第一経路部153および第二経路部163は、いずれも軸線方向に貫通する貫通孔が設けられる部分である。
【0032】
そして、上流側から順に、第一サブ容器12、第二サブ容器13、および第三サブ容器14が、同軸に並べて配置される。さらに、第一サブ容器12と第二サブ容器13との間に第一区画板15が配置され、第二サブ容器13と第三サブ容器14との間に第二区画板16が配置される。具体的には、第一サブ容器12のフランジ部123と第二サブ容器13の上流側のフランジ部131とで第一区画板15の外周部が挟まれ、第二サブ容器13の下流側のフランジ部132と第三サブ容器14のフランジ部142とで第二区画板16の外周部が挟まれる。そして、図略のネジにより、第一サブ容器12のフランジ部123と第一区画板15と第二サブ容器13の上流側のフランジ部131とが締結され、第二サブ容器13の下流側のフランジ部132と第二区画板16と第三サブ容器14のフランジ部142とが締結される。これにより、全体として略円筒状の容器11が形成される。さらに、容器11の内部空間は、第一区画板15および第二区画板16によって、上流側から順に、第一区画板15よりも上流側の空間である第一粉砕室111と、第一区画板15と第二区画板16との間の空間である第二粉砕室112と、第二区画板16よりも下流側の空間である第三粉砕室113と、に区画される。第一粉砕室111は本発明の上流端粉砕室の例であり、第三粉砕室113は本発明の下流端粉砕室の例である。
【0033】
第一粉砕機構17は、駆動力源20から伝達される回転動力により第一粉砕室111の内部に存在する物体(球体およびバイオマス)を攪拌するように構成される。第一粉砕機構17は、複数のブレード173が設けられた第一回転軸171を備える。複数のブレード173が設けられた第一回転軸171は、本発明の攪拌部材の例である。第一回転軸171は、駆動力源20に直接的に(「他の粉砕機構を介さずに」ということもできる)連結されており、駆動力源20から伝達される回転動力により回転するように構成される。第一回転軸171は、容器11に略同軸に配置され、その少なくとも一部は第一サブ容器12の内部(第一粉砕室111の内部)に収容される。第一回転軸171の下流側の端部は、第一区画板15の第一支持部151の内部に挿入されており、第一区画板15の第一支持部151の内部に配置される軸受(ベアリングなど)によって、第一区画板15に対して(換言すると容器11に対して)回転可能に支持される。複数のブレード173は棒状の部分である。複数のブレード173は、第一回転軸171のうちの第一粉砕室111の内部に位置する部分の外周面に、第一回転軸171の半径方向外側に突出するように設けられる。
【0034】
第一動力伝達機構21は、第一粉砕機構17の第一回転軸171の回転動力を減速して第二粉砕機構18の第二回転軸181に伝達するように構成される。第一動力伝達機構21には、プラネタリ型の遊星歯車機構(太陽歯車が固定された遊星歯車機構)が適用される。第一動力伝達機構21としての遊星歯車機構は、第一内歯車211、複数の第一遊星歯車213、第一遊星キャリア214、および第一太陽歯車212を備える。
【0035】
第一内歯車211は、第一回転軸171の下流側の端部に、第一回転軸171と同軸かつ第一回転軸171と一体に回転するように設けられる。本実施形態では、第一回転軸171の下流側の端部(端面)には軸線方向に窪む凹部が設けられ、この凹部の内周面に第一内歯車211の歯が設けられる。このように、本実施形態では、第一内歯車211は第一回転軸171に一体に設けられる。
【0036】
第一太陽歯車212は、第一回転軸171に同軸に配置され、容器11に対して回転できないように配置される(後述)。ただし、第一太陽歯車212は、第一回転軸171および第一遊星キャリア214の第一太陽歯車212に対する回転を許容するように構成される。第一太陽歯車212は、本体部215(歯車の歯が設けられる部分)と、本体部215から上流側に突出する上流側軸部216と、本体部215から下流側に突出する下流側軸部217とを備える。そして、第一太陽歯車212は、上流側軸部216を介して第一回転軸171に対する相対的な回転が許容されるように支持される。具体的には、第一回転軸171の凹部の底面には有底の軸支持孔172が設けられ、第一太陽歯車212の上流側軸部216は、この軸支持孔172に挿入される軸受を介して第一回転軸171に支持される。第一太陽歯車212の下流側軸部217は、後述する第二太陽歯車222の上流側軸部226に、第二太陽歯車222の上流側軸部226に対して相対的な回転ができないように結合している。例えば、第一太陽歯車212の下流側軸部217と第二太陽歯車222の上流側軸部226との結合構造には、スプラインによる結合が適用される。
【0037】
複数の第一遊星歯車213は、第一内歯車211および第一太陽歯車212に噛み合うように配置される。第一遊星キャリア214は、第一回転軸171に同軸に配置され、第一太陽歯車212および第一内歯車211(すなわち第一回転軸171)に対して回転可能に構成される。本実施形態では、第一遊星キャリア214の中心部には軸線方向に貫通する軸挿通孔218が設けられており、この軸挿通孔218に第一太陽歯車212の下流側軸部227が挿入される。なお、第一太陽歯車212と第一遊星キャリア214との間には軸受け(ベアリング)が介在する。そして、第一遊星キャリア214は、複数の第一遊星歯車213のそれぞれを第一遊星キャリア214に対して回転可能に支持する(すなわち、自転可能に支持する)とともに、第一太陽歯車212の周囲を回転可能に支持する(すなわち、公転可能に支持する)。さらに、第一遊星キャリア214は、後述する第二回転軸181と一体に回転するように結合される。第一遊星キャリア214と第二回転軸181との結合構造には、スプラインによる結合が適用される。
【0038】
第二粉砕機構18は、第一動力伝達機構21を介して第一粉砕機構17から伝達される回転動力により、第二粉砕室112の内部に存在する物体を攪拌するように構成される。第二粉砕機構18は、複数のブレード183が設けられた第二回転軸181を備える。複数のブレード183が設けられた第二回転軸181は、本発明の攪拌部材の例である。
【0039】
第二回転軸181は、第二サブ容器13(第二粉砕室112)の内部に回転可能に配置される。また、第二回転軸181は、第一回転軸171および第一動力伝達機構21と同軸に配置される。第二回転軸181の上流側の端部は、第一動力伝達機構21の第一遊星キャリア214に、第一遊星キャリア214と一体に回転するように結合される。また、第二回転軸181は、軸線方向に貫通する貫通孔である軸挿通孔182が設けられる円筒状の部材(いわゆる中空軸)である。なお、「第二回転軸181の上流側の端部は、第一遊星キャリア214および軸受を介して第一区画板15に回転可能に支持される」ということもできる。また、第二回転軸181と第一遊星キャリア214とは、着脱可能に結合される。第二回転軸181と第一遊星キャリア214との結合には、スプラインによる結合が適用される。第二回転軸181に設けられる複数のブレード183は棒状の部分であり、第一回転軸171に設けられるブレード173と同様の構成を備えるすなわち、複数のブレード183は、第二回転軸181の外周面に、第二回転軸181の半径方向外側に突出するように設けられる。
【0040】
第二回転軸181の下流側の端部は、第二区画板16に回転可能に支持される。第二回転軸181の下流側の端部の第二区画板16による支持構造は、第一回転軸171の下流側の端部の第一区画板15による支持構造と同じである。すなわち、第二回転軸181の下流側の端部は、第二区画板16の第二支持部161に挿入されており、第二区画板16の第二支持部161の内部に配置される軸受(ベアリングなど)によって、回転可能に支持される。
【0041】
第二動力伝達機構22は、第二粉砕機構18の第二回転軸181の回転動力を減速して第三粉砕機構19の第三回転軸191に伝達するように構成される。第二動力伝達機構22は、後述する第二太陽歯車222の上流側軸部226を除いては、第一動力伝達機構21と略同じ構成を備える。第二動力伝達機構22は、第二内歯車221、複数の第二遊星歯車223、第一遊星キャリア214、および第二太陽歯車222を備える。
【0042】
第二内歯車221は、第二回転軸181の下流側の端部に、第二回転軸181に対して同軸かつ第二回転軸181と一体に回転するように設けられる。本実施形態では、第一回転軸171と同様に第二回転軸181の下流側の端部(端面)には軸線方向に窪む凹部が設けられており、この凹部の内周面に第二内歯車221の歯が設けられる。
【0043】
第二太陽歯車222は、第二回転軸181と同軸に配置され、容器11に対して回転不可能に配置される(後述)。ただし、第二太陽歯車222は、第二回転軸181および第二遊星キャリア224の第二太陽歯車222に対する回転を許容するように構成される。第二太陽歯車222は、本体部225(歯車の歯が設けられる部分)と、本体部225から上流側に突出する上流側軸部226と、本体部225から下流側に突出する下流側軸部227とを備える。そして、第二太陽歯車222は、上流側軸部226を介して第二回転軸181に対して相対的な回転が許容されるように支持される。具体的には、第二太陽歯車222の上流側軸部226は、第二回転軸181の軸挿通孔182に挿入されており、軸受を介して第二回転軸181に支持される。また、第二太陽歯車222の上流側軸部226の端部は、第一太陽歯車212の下流側軸部217と、第一太陽歯車212との相対的な回転が許容されないように結合している。また、第二太陽歯車222の下流側軸部227は、後述する固定軸23に対して、相対的な回転ができないように結合している。
【0044】
複数の第二遊星歯車223は、第二内歯車221および第二太陽歯車222に噛み合うように配置される。第二遊星キャリア224は、第二回転軸181に同軸に配置され、第二太陽歯車222および第二内歯車221(すなわち第二回転軸181)に対して回転可能に構成される。具体的には、第二遊星キャリア224の中心部には軸線方向に貫通する軸挿入孔228が設けられており、この軸挿入孔228に第二太陽歯車222の下流側軸部227が挿入される。なお、第二太陽歯車222と第二遊星キャリア224との間には軸受け(ベアリング)が介在する。そして、第二遊星キャリア224は、複数の第二遊星歯車223のそれぞれを第二遊星キャリア224に対して回転可能に支持する(すなわち、自転可能に支持する)とともに、第二太陽歯車222の周囲を回転可能に支持する(すなわち、公転可能に支持する)。さらに、第二遊星キャリア224は、後述する第三回転軸191と一体に回転するように結合される。
【0045】
第三粉砕機構19は、固定軸23、および複数のブレード193が設けられた第三回転軸191を備える。複数のブレード193が設けられた第三回転軸191は、本発明の攪拌部材の例である。そして、第三粉砕機構19は、第二動力伝達機構22を介して第二粉砕機構18から伝達される回転動力により、第三粉砕室113の内部に存在する物体を攪拌するように構成される。
【0046】
固定軸23は円柱状(円筒状であってもよい)の部材であって、第三サブ容器14の内部に第三サブ容器14に対して同軸に配置される。具体的には、固定軸23は、第三サブ容器14の下流側の端部(有底の円筒の底に相当する部分)から上流側に向かって突出するように配置される。なお、固定軸23の下流側の端部は、固定軸23が第三サブ容器14に対して回転しないように、第三サブ容器14に固定される。また、固定軸23は、第一回転軸171、第一動力伝達機構21、第二回転軸181、および第二動力伝達機構22と同軸に配置される。固定軸23の上流側端部は、第二太陽歯車222の下流側軸部227と、相対的な回転が許容されないように結合している。固定軸23と第二太陽歯車222の下流側軸部227との結合構造は、第二太陽歯車222の上流側軸部226と第一太陽歯車212の下流側軸部217との結合構造と略同じであり、例えばスプラインによる結合が適用される。
【0047】
第三回転軸191は、第三サブ容器14(第三粉砕室113)の内部に、固定軸23に同軸かつ容器11に対して回転可能に配置される。第三回転軸191の上流側の端部は、第二動力伝達機構22の第二遊星キャリア224に、第二遊星キャリア224と一体に回転するように結合される。なお、「第三回転軸191の上流側の端部は、第二遊星キャリア224および軸受を介して第二区画板16に回転可能に支持される」ということもできる。また、第三回転軸191は、軸線方向に貫通する貫通孔である軸挿通孔192が設けられる円筒状の部材(いわゆる中空軸)である。また、第三回転軸191と第二遊星キャリア224とは、分離可能に結合される。第三回転軸191と第二遊星キャリア224との結合構造は、第二回転軸181と第一遊星キャリア214との結合構造と略同じであり、例えばスプラインによる結合が適用される。第三回転軸191に設けられる複数のブレード193は棒状の部分であり、第一回転軸171に設けられるブレード173と同様の構成を備える。すなわち、複数のブレード193は、第三回転軸191の外周面に、第三回転軸191の半径方向に突出するように設けられる。
【0048】
なお、上記のとおり、固定軸23は、容器11に対して回転しないように固定される。そして、第二太陽歯車222の下流側軸部227と固定軸23とは相対的な回転が許容されないように結合しており、第一太陽歯車212の下流側軸部217と第二太陽歯車222の上流側軸部226とは相対的な回転が許容されないように結合している。このため、第一太陽歯車212および第二太陽歯車222は、容器11に対して回転できない。
【0049】
次に、粉砕装置10aの動作について説明する。第一回転軸171は駆動力源20に連結されており、駆動力源20から伝達される回転動力によって回転する。これにより、第一回転軸171に設けられる複数のブレード173が第一粉砕室111の内部で回転する。このため、第一粉砕室111の内部に収容される複数の球体および供給部122から供給されたバイオマス(粗粒化されたバイオマス)がブレード173によって攪拌される。したがって、バイオマスはブレード173および球体によって粉砕される。粉砕されたバイオマスは、第一区画板15の第一経路部153を通じて第二粉砕室112に流入する。
【0050】
第一動力伝達機構21の第一太陽歯車212は、容器11に対して回転できない。このため、第一回転軸171が回転すると(すなわち、第一内歯車211が回転すると)、複数の第一遊星歯車213は自転しながら第一太陽歯車212に対して公転する。そして、複数の第一遊星歯車213の公転により、第一遊星キャリア214は容器11に対して回転する。第一遊星キャリア214と第二回転軸181とは同軸に配置されており、一体に回転するように結合しているから、第二回転軸181は第一遊星キャリア214と同じ回転速度で回転する。なお、太陽歯車が固定された遊星歯車機構においては、遊星キャリアの回転速度(遊星歯車の公転速度)は太陽歯車の回転速度よりも低い。このため、第二回転軸181の回転速度は、第一回転軸171の回転速度よりも低い。このように、第一動力伝達機構21は、第一粉砕機構17の第一回転軸171の回転動力を、減速して第二粉砕機構18の第二回転軸181に伝達する。
【0051】
第二回転軸181が回転すると、第一粉砕室111から第二粉砕室112に流入したバイオマスおよび第二粉砕室112の内部に収容される複数の球体は、第二回転軸181に設けられる複数のブレード183によって攪拌される。このため、バイオマスはブレード183および球体によって粉砕される。なお、バイオマスを粉砕する際にバイオマスに掛かる力は、各回転軸171,181,191の回転数(すなわち、複数のブレード173,183,193の回転数)に影響され、各回転軸171,181,191の回転数が低いほど、バイオマスに掛かる力は小さい。そして、前記のとおり、第二回転軸181の回転速度は第一回転軸171の回転速度よりも低い。このため、第二粉砕室112においてバイオマスに掛かる力は、第一粉砕室111においてバイオマスに掛かる力よりも小さい。そして、第二粉砕室112において粉砕されたバイオマスは、第二区画板16の第二経路部163を通じて第三粉砕室113に流入する。
【0052】
第二回転軸181の回転動力は、第二動力伝達機構22を介して第三回転軸191に伝達される。第二動力伝達機構22の第二太陽歯車222は容器11に対して回転できないため、第二回転軸181が回転すると、複数の第二遊星歯車223が自転しながら第二太陽歯車222に対して公転する。そして、複数の第二遊星歯車223の公転により、第二遊星キャリア224は容器11に対して回転する。第二遊星キャリア224と第三回転軸191とは同軸に配置されており、一体に回転するように結合しているから、第三回転軸191は第二遊星キャリア224と同じ回転速度で回転する。このため、第三回転軸191の回転速度は、第二回転軸181の回転速度よりも低い。このように、第二粉砕機構18は、第三粉砕機構19に対して、第二回転軸182の回転動力を減速して伝達する。
【0053】
第三回転軸191が回転すると、第二粉砕室112から第三粉砕室113に流入したバイオマスおよび第三粉砕室113の内部に収容される複数の球体は、第三回転軸191に設けられる複数のブレード193によって攪拌される。このため、バイオマスはブレード193および球体によって粉砕される。第三回転軸191の回転速度は第二回転軸181の回転速度よりも低い。このため、第三粉砕室113においてバイオマスに掛かる力は、第二粉砕室112においてバイオマスに掛かる力よりも小さい。そして、第三粉砕室113において粉砕されたバイオマスは、排出部141を通じて容器11の外部に排出される。
【0054】
粉砕装置10aの動作中は、加熱機構により容器11の内部に存在するバイオマスを加熱する。これにより、粉砕装置10aは、バイオマスを加熱下において粉砕することができる。
【0055】
なお、複数の球体は、あらかじめ各粉砕室111,112,113に収容されていてもよく、粉砕対象のバイオマスと併せて容器11に供給し、粉砕されたバイオマスと併せて容器11から排出してもよい。複数の球体があらかじめ各粉砕室111,112,113に収容される場合には、供給部122、第一経路部153、第二経路部163、および排出部141は、バイオマスは通過可能であるが球体は通過不可能に構成される。例えば、供給部122、第一経路部153、第二経路部163、および排出部141のそれぞれには、メッシュ状の部材が配置される。粉砕対象のバイオマスと併せて容器11に供給し、粉砕されたバイオマスと併せて容器11から排出する場合、供給部122、第一経路部153、第二経路部163、および排出部141は、バイオマスおよび球体が通過可能に構成される。
【0056】
第一実施形態に係る粉砕装置10aの容器11の内部空間は、バイオマスの流動方向に同軸かつ直列に並ぶ複数の粉砕室111,112,113に区画される。複数の粉砕室111,112,113は、第一粉砕室111から第三粉砕室113に向かってバイオマスが通過可能に直列的に連通している。そして、各粉砕室111,112,113の内部には、回転するブレード173,183,193が配置されるとともに複数の球体が収容される。ブレード173,183,193の回転数は、バイオマスの流動方向の最も上流側の粉砕室(本実施形態では第一粉砕室111)において最も高く、下流側の粉砕室に向かうにしたがって徐々に(換言すると段階的に)低くなり、最も下流側の粉砕室(本実施形態では第三粉砕室113)において最も低い。そして、バイオマスを粉砕する際にバイオマスに掛かる力はブレード173,183,193の回転数に影響され、攪拌部材の回転数が高いほど、バイオマスに掛かる力は大きい。このため、バイオマスが第一粉砕室111、第二粉砕室112、および第三粉砕室113の順で移動する際に、各粉砕室111,112,113においてブレード173,183,193および球体から受ける力は、最も上流側に位置する粉砕室(第一実施形態においては第一粉砕室111)において受ける力が最も大きく、下流側に向かうにしたがって段階的に低くなり、最も下流側に位置する粉砕室(第一実施形態においては第三粉砕室113)において最も低くなる。
【0057】
このような構成によれば、バイオマスに加える力を、時間の経過と共も段階的に低くしていくことができる。換言すると、連続式の粉砕装置10aにおいて、粉砕中のバイオマスに掛かる力を経時的に変化させることができる。さらに換言すると、連続式の粉砕装置10aにおいて、粉砕中のバイオマスに掛かる力の経時的な変化を制御することができる。このため、このような構成によれば、粉砕中のバイオマスに掛かる力を、「セルロースの可溶化率を高めるために適した経時変化」にすることができる。
【0058】
さらに、このような構成によれば、バイオマスの粉砕に要する時間を短縮しつつ(または粉砕に要する時間が長くなることを防止もしくは抑制しつつ)、バイオマスに含まれるセルロースの可溶化率を高めることができる。すなわち、バッチ式の粉砕装置においては、粉砕工程においてバイオマスに掛ける力を経時的に変化させることにより、セルロースの可溶化率を高めることができる。しかしながら、バッチ式の粉砕装置においては、投入工程と粉砕工程と排出工程とを別々に実行しなければならないため、投入工程または排出工程の実行中には粉砕工程を実行できない。そして、バッチ式の粉砕装置により多量のバイオマスを粉砕するためには、これらの工程を繰り返し実行しなければならない。このように、バッチ式の粉砕装置では、粉砕工程を実行できない期間(いわゆるアイドルタイム)が発生するため、多量のバイオマスを粉砕には時間がかかる。
【0059】
これに対して、本実施形態によれば、粉砕装置10aを動作させながら粉砕対象のバイオマスの供給および粉砕されたバイオマスの排出を同時並行かつ連続的に実行できる。そして、本実施形態によれば、粉砕室111,112,113ごとにバイオマスに掛ける力を変更できるから、容器11に投入されてから容器11より排出されるまでの間に(すなわち、粉砕中に)バイオマスに掛かる力を、「セルロースの可溶化率を高めるために適した経時変化」にすることができる。したがって、バイオマスの粉砕に要する時間を短縮しつつ(または粉砕に要する時間が長くなることを防止しつつ)バイオマスに含まれるセルロースの可溶化率を高めることができる。
【0060】
なお、バイオマスに掛ける力を大きくすることにより、経過時間に対するバイオマスのセルロースの可溶化率の上昇率が大きくなる。一方で、バイオマスを粉砕する際に長時間にわたってバイオマスに対して大きな力を掛け続けると、いったん可溶化したセルロースが不溶化するため、セルロースの可溶化率が低下する。また、バイオマスのセルロースの可溶化率を高めるためには、バイオマスを細粒化することが好ましい(例えば、特開2009-233542号公報参照)。したがって、本実施形態によれば、粉砕開始直後に第一粉砕室111においてバイオマスに大きな力を掛けることによりセルロースの可溶化率を短時間で急速に上昇させる。そして、その後バイオマスが第二粉砕室112および第三粉砕室113に移動することにより、セルロースが不溶化し始めるよりも前にバイオマスに掛ける力を小さくすることができる。このため、第二粉砕室112および第三粉砕室113においては、セルロールの不溶化を防止ししつつ、バイオマスを粉砕できる。
【0061】
なお、バイオマスに対して、可溶化したセルロースが不溶化しない程度の力を掛けることにより、セルロースの可溶化率を高めることも可能である。しかしながら、このような方法によれば、バイオマスの粉砕に要する時間が長くなる。これに対して、本実施形態によれば、粉砕開始直後に大きな力を掛けることによりセルロースの可溶化率を短時間で急速に上昇させることができるから、バイオマスの粉砕に要する時間を短縮できる。
【0062】
また、本実施形態によれば、各粉砕機構17,18,19が動作中に、容器11に対して連続的に粉砕対象のバイオマスを供給できるとともに、粉砕対象のバイオマスを容器11から連続的に排出できる。したがって、バッチ式の粉砕装置に比較して、多量のバイオマスを短時間で粉砕できる。
【0063】
また、本実施形態によれば、1つの駆動力源20により、複数の回転軸(第一回転軸171、第二回転軸181、および第三回転軸191)の回転速度を互いに異ならせることができる。すなわち、1つの駆動力源20により、複数の互いに大きさが異なる「バイオマスに掛ける力」を発生させることができる。換言すると、回転速度の種類の数(バイオマスに掛ける力の大きさの種類の数)よりも駆動力源20の数を少なくできる。したがって、粉砕装置10aの部品点数の削減を図ること、および粉砕装置10aの小型化を図ることができる。
【0064】
また、本実施形態のように、複数の区画板15,16のそれぞれにより複数の回転軸171,181,191のそれぞれを回転可能に支持される構成であると、複数の回転軸171,181,191のそれぞれを回転可能に支持するために別個の部材を設けなくてもよい。このため、粉砕装置10aの部品点数の削減を図ることができる(または部品点数の増加を招かない)から、部品コストの削減を図ることができる(または部品コストの上昇を招かない)。
【0065】
さらに、本実施形態では、第一区画板15および第二区画板16のそれぞれに、貫通孔であるオイル経路152,162が設けられる。このような構成によれば、各支持部151,161のそれぞれに潤滑油を供給および排出するための経路を構成する部材を別途追加することなく、各支持部161,161に潤滑油を供給できる。したがって、粉砕装置10aの部品点数の増加および構成の複雑化を招かない。
【0066】
なお、本実施形態では、容器11の内部空間が3つの粉砕室111,112,113に区画される構成を示したが、粉砕室111,112,113の数は限定されない。すなわち、容器11の内部空間が2つの粉砕室に区画されてもよく、4つ以上の粉砕室に区画されてもよい。
【0067】
粉砕装置10aの各粉砕室111,112,113を構成する部材はモジュール化されている。図2A~図2Cは、粉砕装置10aのモジュールを示す模式図である。粉砕装置10aは、図2Aに示す上流端モジュール101、図2Bに示す中間モジュール102、および図2Cに示す下流端モジュール103を備える。上流端モジュール101は、第一サブ容器12、ブレード173が設けられた第一回転軸171、第一区画板15、および第一動力伝達機構21を備える。中間モジュール102は、第二サブ容器13、第二区画板16、ブレード183が設けられた第二回転軸181、および第二動力伝達機構22を備える。下流端モジュール103は、第三サブ容器14、ブレード193が設けられた第三回転軸191、および固定軸23を備える。なお、上流端モジュール101の第一遊星キャリア214と中間モジュール102の第二回転軸181との結合構造、および、上流端モジュール101の第一太陽歯車212の下流側軸部217と中間モジュール102の第二太陽歯車222の上流側軸部226との結合構造には、スプラインによる結合が適用される。同様に、中間モジュール102の第二回転軸181と下流端モジュール103の第三回転軸191との結合構造、および、中間モジュール102の第二太陽歯車222の下流側軸部227と下流端モジュール103の固定軸23との結合構造には、スプラインによる結合が適用される。
【0068】
このような構成によれば、上流端モジュール101と中間モジュール102との結合および分離が容易であるとともに、中間モジュール102と下流端モジュール103との分離および結合が容易である。さらに、前記のとおり、第一動力伝達機構21の第一遊星キャリア214と第二粉砕機構18の第二回転軸181との結合構造と、第二動力伝達機構22の第二遊星キャリア224と第三粉砕機構19の第三回転軸191との結合構造とは、略同じ構造である。このため、上流端モジュール101と下流端モジュール103とを直接的に結合可能である。また、略同じ構造を備える複数の中間モジュール102どうしも直接的に結合可能である。
【0069】
したがって、このような構成によれば、中間モジュール102を抜き取ることにより(換言すると、上流端モジュール101と下流端モジュール103とを直接に結合することにより)、粉砕装置10aが2つの粉砕室を備える構成にできる。また、複数の中間モジュール102を結合することにより(換言すると、上流端モジュール101と下流端モジュール103との間に複数の中間モジュール102を配置することにより)、粉砕装置10aが4つ以上の粉砕室を備える構成にできる。
【0070】
また、第一遊星キャリア214と第二回転軸181との結合構造、第二遊星キャリア224と第三回転軸191との結合構造、第一太陽歯車212の下流側軸部217と第二太陽歯車222の上流側軸部226との結合構造、および第二太陽歯車222の下流側軸部227と固定軸23との結合構造には、スプラインによる結合が適用される。このような構成によれば、モジュール101,102,103どうしの分離および結合が容易である。
【0071】
なお、各モジュール101,102,103の構成は前記構成に限定されない。例えば、第一動力伝達機構21が中間モジュール102に含まれ、第二動力伝達機構22が下流端モジュール103に含まれてもよい。また、第一区画板15が中間モジュール102に含まれ、第二区画板16が下流端モジュール103に含まれてもよい。
【0072】
<第二実施形態>
次に、第二実施形態に係る粉砕装置10bついて説明する。図3は、第二実施形態に係る粉砕装置10bの構成を示す断面模式図である。図3に示すように、第二実施形態に係る粉砕装置10bは、内部に2つの粉砕室401,402が設けられる容器40と、各粉砕室401,402のそれぞれの内部に配置される2つの粉砕機構44,45と、2つの粉砕機構44,45のそれぞれを駆動するための2つの駆動力源46,47と、を備える。なお、駆動力源46,47には、電動モータなどといった、回転動力を出力可能な公知の各種の駆動力源が適用される。また、各粉砕室401,402の内部には、図略の複数(多数)の球体が収容される。さらに、第二実施形態に係る粉砕装置10bは、容器40の内部に存在するバイオマスを加熱するための図略の加熱機構を備える。
【0073】
図3に示すように、容器40は、第一サブ容器41、第二サブ容器42、および区画板43を備える。容器40は、略円筒状の構成を備える。そして、容器40は、円筒の軸線方向の一端側から粉砕対象であるバイオマスを供給可能に構成されるとともに、他端側から粉砕されたバイオマスを排出可能に構成される。第二実施形態においては、図3中左側が上流側であり、右側が下流側である。
【0074】
第一サブ容器41は、下流側が開口する有底の円筒状の構成を備える。上流側の端部(円筒の底に相当する部分)の中心には、後述する第一粉砕機構44の第一回転軸441を挿通可能な貫通孔である軸挿通孔411が設けられる。また、第一サブ容器41の上流側の端部近傍には、第一サブ容器41の外部から内部(第一粉砕室の内部)にバイオマスを供給するための供給部412が設けられる。第一サブ容器41の下流側の端部は、区画板43を取付け可能に構成される。本実施形態では、第一サブ容器41の下流側の端部には、円筒の半径方向外側に向かって延出するフランジ部413が設けられる。
【0075】
第二サブ容器42は、第一サブ容器41と軸線方向に略対称な構成を備える。具体的には、第二サブ容器42は、上流側が開口する有底の円筒状の構成を備える。下流側の端部(円筒の底に相当する部分)の中心には、後述する第二粉砕機構45の第二回転軸451を挿通可能な貫通孔である軸挿通孔421が設けられる。また、第二サブ容器42の下流側の端部近傍には、第二サブ容器42の内部から外部に粉砕されたバイオマスを排出するための排出部422が設けられる。第二サブ容器42の上流側の端部は、区画板43を取付け可能に構成される。本実施形態では、第二サブ容器42の下流側の端部には、円筒の半径方向外側に向かって延出するフランジ部423が設けられる。
【0076】
区画板43は、略円板状の構成を備える部材である。区画板43には、粉砕中のバイオマスの経路である経路部431が設けられる。
【0077】
そして、第一サブ容器41と第二サブ容器42とが同軸に並べて配置されるとともに、第一サブ容器41と第二サブ容器42との間に区画板43が配置される。具体的には、第一サブ容器41のフランジ部413と第二サブ容器42のフランジ部423とで区画板43の外周部が挟まれ、図略のネジにより、第一サブ容器41のフランジ部413と区画板43と第二サブ容器42のフランジ部423とが締結される。これにより、全体として略円筒状の容器40が形成される。さらに、容器40の内部空間は、区画板43によって、区画板43よりも上流側の空間である第一粉砕室401と、区画板43よりも下流側の空間である第二粉砕室402と、に区画される。第一粉砕室401と第二粉砕室402とは、区画板43に設けられる経路部431により連通する。
【0078】
2つの粉砕機構は、第一粉砕機構44と第二粉砕機構45である。第一粉砕機構44は、第一駆動力源46から伝達される回転動力により第一粉砕室401の内部に存在する物体(球体およびバイオマス)を攪拌するように構成される。第一粉砕機構44は、複数のブレード442が設けられた第一回転軸441を備える。第一回転軸441は、第一駆動力源46に連結されており、第一駆動力源46から伝達される回転動力により回転するように構成される。第一回転軸441は、容器40に略同軸に配置され、その少なくとも一部は第一サブ容器41の内部(第一粉砕室401の内部)に収容される。複数のブレード442は、棒状の部分であり、第一回転軸441のうちの第一粉砕室401の内部に位置する部分の外周面に、第一回転軸441の半径方向に突出するように設けられる。
【0079】
第二粉砕機構45は、第二駆動力源47から伝達される回転動力により第二粉砕室402の内部に存在する物体を攪拌するように構成される。第二粉砕機構45は、複数のブレード452が設けられた第二回転軸451を備える。第二回転軸451は、第二駆動力源47に連結されており、第二駆動力源47から伝達される回転動力により回転するように構成される。第二回転軸451は、容器40に略同軸に配置され、その少なくとも一部は第二サブ容器42の内部(第二粉砕室402の内部)に収容される。複数のブレード452は棒状の部分であり、第二回転軸451のうちの第二粉砕室402の内部に位置する部分の外周面に、第二回転軸451の半径方向に突出するように設けられる。
【0080】
なお、本実施形態では、第一サブ容器41と第二サブ容器42とは、区画板43を中心として略対称の構造を備える。同様に、第一粉砕機構44と第二粉砕機構45とは区画板43を中心として略対称の構造を備える。すなわち、第一サブ容器41と第二サブ容器42とが同軸に配置されるとともに、第一粉砕機構44の第一回転軸441と第二粉砕機構45の第二回転軸451とが同軸に配置される。このような構成であると、第一サブ容器41と第二サブ容器42とは略同じ構造の部材が適用できるとともに、第一粉砕機構44と第二粉砕機構45には略同じ構造の機構が適用できる。ただし、第二粉砕機構45の第二回転軸451の回転速度は、第一粉砕機構44の第一回転軸441の回転速度よりも低い。
【0081】
次に、粉砕装置10bの動作について説明する。第一回転軸441は第一駆動力源46に連結されており、第一駆動力源46から伝達される回転動力によって回転する。これにより、第一回転軸441に設けられる複数のブレード442が第一粉砕室401の内部で回転する。したがって、第一粉砕室401の内部に収容される複数の球体および供給部412から供給されたバイオマス(粗粒化されたバイオマス)がブレード442によって攪拌され、その結果、バイオマスはブレード442および球体によって粉砕される。粉砕されたバイオマスは、区画板43の経路部431を通じて第二粉砕室402に流入する。
【0082】
第二回転軸451が回転すると、第一粉砕室401から第二粉砕室402に流入したバイオマスおよび第二粉砕室402の内部に収容される複数の球体は、第二回転軸451に設けられる複数のブレード452によって攪拌される。このため、バイオマスはブレード452および球体によって粉砕される。なお、前記のとおり、第二回転軸451の回転速度は第一回転軸441の回転速度よりも低い。このため、第二粉砕室402においてバイオマスに掛かる力は、第一粉砕室401においてバイオマスに掛かる力よりも小さい。そして、第二粉砕室402において粉砕されたバイオマスは、排出部422を通じて容器40の外部に排出される。
【0083】
前記のとおり、第二粉砕機構45の第二回転軸451の回転速度は、第一粉砕機構44の第一回転軸441の回転速度よりも低い。このため、バイオマスが第一粉砕室401および第二粉砕室402の順で流動する際に、各粉砕室401,402においてバイオマスがブレード442,452および球体から受ける力は、第一粉砕室401において最も大きく、第一粉砕室401の下流側に位置する第二粉砕室402において小さくなる。したがって、このような構成によれば、バイオマスに加える力を、時間の経過と共も段階的に小さくしていくことができる。
【0084】
このような構成によれば、第一実施形態と同様の効果を奏することができる。なお、本実施形態では、第一粉砕機構44と第二粉砕機構45とがそれぞれ別個の駆動力源46,47から回転動力を受ける構成を示したが、このような構成に限定されない。例えば、粉砕装置10bが、一つの駆動力源と、当該一つの駆動力源の回転動力を第一粉砕機構44と第二粉砕機構45とに分配して伝達する動力分配機構とを備えてもよい。この場合、動力分配機構は、第二粉砕機構45に伝達する回転動力の回転速度を、第一粉砕機構44に伝達する回転動力の回転速度よりも低くするように構成される。
【0085】
<第三実施形態>
次に、第三実施形態について説明する。図4は、第三実施形態に係る粉砕装置10cの構成を示す断面模式図である。図4に示すように、第三実施形態に係る粉砕装置10cは、複数のサブ容器62,63が含まれる容器61と、複数のサブ容器62,63のそれぞれの内部に配置される複数の粉砕機構64,65と、複数の粉砕機構64,65のそれぞれを駆動するための複数の駆動力源66,67と、を備える。複数のサブ容器62,63のそれぞれが複数の粉砕室のそれぞれを形成する。各サブ容器62,63の内部(各粉砕室の内部)には、図略の複数(多数)の球体が収容されている。図4では、粉砕装置10cが2つのサブ容器(第一サブ容器62および第二サブ容器63)と、2つの粉砕機構(第一粉砕機構64および第二粉砕機構65)と、2つの駆動力源(第一駆動力源66および第二駆動力源67)とを備える構成を例に示す。
【0086】
第一サブ容器62および第二サブ容器63は、いずれも内部に空間(粉砕室)が設けられる略円筒状の構成を備える。なお、本実施形態においては、第一サブ容器62および第二サブ容器63(すなわち複数のサブ容器)は互いに同軸ではない位置に配置される。ここでは、同軸ではない位置として、第一サブ容器62と第二サブ容器63とが略平行に配置される例を示す。また、この場合、第一サブ容器62と第二サブ容器63の上流側と下流側は互いに反対である。図4においては、図中左側が第一サブ容器62の上流側であり、かつ第二サブ容器63の下流側である。
【0087】
第一サブ容器62の上流側の端部(円筒の軸線方向の一方の端面に相当する部分)には、第一回転軸641を挿通可能な貫通孔である軸挿通孔621が設けられる。また、第一サブ容器62の上流側の端部近傍には、外部から第一サブ容器62の内部にバイオマスを供給するための供給部622が設けられる。第二サブ容器63の下流側の端部には、第二回転軸651を挿通可能な貫通孔である軸挿通孔631が設けられる。また、第二サブ容器63の下流側の端部近傍には、第二サブ容器63の内部から外部にバイオマスを排出するための排出部632が設けられる。また、第一サブ容器62の下流側の端部近傍と第二サブ容器63の上流側の端部近傍とは、筒状の部分である経路部68を介して互いに連通している。なお、供給部622、排出部632、および経路部68は、第一実施形態の供給部122、排出部141、および各経路部153,163と同様の構成を備える。
【0088】
第一粉砕機構64は、第一駆動力源66から伝達される回転動力により第一サブ容器62の内部に存在する物体を攪拌するように構成される。第一粉砕機構64は、複数のブレード642が設けられた第一回転軸641を備える。第一回転軸641は、第一駆動力源66に連結されており、第一駆動力源66から伝達される回転動力により回転するように構成される。第一回転軸641は、容器61に略同軸に配置され、その少なくとも一部は第一サブ容器62の内部に収容される。複数のブレード642は棒状の部分であり、第一回転軸641のうちの第一サブ容器62の内部に位置する部分の外周面に、第一回転軸641の半径方向外側に突出するように設けられる。
【0089】
第二粉砕機構65は、第二駆動力源67から伝達される回転動力により第二サブ容器63の内部に存在する物体を攪拌するように構成される。第二粉砕機構65は、複数のブレード652が設けられた第二回転軸651を備える。第二回転軸651は、第二駆動力源67に連結されており、第二駆動力源67から伝達される回転動力により回転するように構成される。第二回転軸651は、容器61に略同軸に配置され、その少なくとも一部は第二サブ容器63の内部に収容される。複数のブレード652は棒状の部分であり、第二回転軸651のうちの第二サブ容器63の内部に位置する部分の外周面に、第二回転軸651の半径方向外側に突出するように設けられる。
【0090】
なお、本実施形態では、第一サブ容器62と第二サブ容器63とは略同じ構造を備える。また、第一粉砕機構64と第二粉砕機構65とは略同じ構成を備える。このような構成であると、第一サブ容器62と第二サブ容器63とには略同じ構造の部材が適用できるとともに、第一粉砕機構64と第二粉砕機構65とには略同じ構造の機構が適用できる。ただし、第二粉砕機構65の第二回転軸651の回転速度は、第一粉砕機構64の第一回転軸641の回転速度よりも低い。
【0091】
次に、粉砕装置10cの動作について説明する。第一回転軸641が第一駆動力源66から伝達される回転動力によって回転すると、第一サブ容器62の内部に収容される複数の球体および供給部622から供給されたバイオマスがブレード642によって攪拌される。このため、バイオマスはブレード642および球体によって粉砕される。粉砕されたバイオマスは、経路部68を通じて第二サブ容器63に流入する。
【0092】
第二回転軸651が回転すると、第一サブ容器62から第二サブ容器63に流入したバイオマスおよび第二サブ容器63の内部に収容される複数の球体は、第二回転軸651に設けられる複数のブレード652によって攪拌される。このため、バイオマスはブレード652および球体によって粉砕される。なお、前記のとおり、第二回転軸651の回転速度は第一回転軸641の回転速度よりも低い。このため、第二サブ容器63においてバイオマスに掛かる力は、第一サブ容器62においてバイオマスに掛かる力よりも小さい。そして、第二サブ容器63において粉砕されたバイオマスは、排出部632を通じて容器61の外部に排出される。
【0093】
前記のとおり、第二粉砕機構65の第二回転軸651の回転速度は、第一粉砕機構64の第一回転軸641の回転速度よりも低い。このため、バイオマスが第二サブ容器63においてブレード652および球体から受ける力は、第一サブ容器62において受ける力よりも小さい。したがって、このような構成によれば、バイオマスに加える力を、時間の経過と共も段階的に小さくしていくことができる。
【0094】
このような構成によれば、第一実施形態と同様の効果を奏することができる。なお、本実施形態では、第一粉砕機構64と第二粉砕機構65とがそれぞれ別個の駆動力源66,67から回転動力を受ける構成を示したが、このような構成に限定されない。例えば、粉砕装置10cが、一つの駆動力源と、当該一つの駆動力源の回転動力を第一粉砕機構64と第二粉砕機構65とに分配して伝達する動力分配機構とを備えてもよい。この場合、動力分配機構は、第二粉砕機構65に伝達する回転動力の回転速度を、第一粉砕機構64に伝達する回転動力の回転速度よりも低くするように構成される。
【0095】
なお、本実施形態では、容器61が2つのサブ容器62,63を備える構成(換言すると、2つの粉砕室を備える構成)を示したが、容器61が備えるサブ容器の数は2つに限定されるものではなく、容器61が3つ以上のサブ容器を備えてもよい。この場合、複数のサブ容器は、例えば互いに平行に配置されてもよい。そして、複数のサブ容器は、経路部によって数珠繋ぎ状に(換言すると、直列的に、さらに換言すると、複数のサブ容器がバイオマスの通過可能な1本の経路を形成するように)連結されればよい。この場合、バイオマスの流通方向の最も上流側に位置するサブ容器における粉砕機構の回転軸の回転数が最も高く、下流側に向かうにしたがって徐々に(段階的に)低くなり、最も下流側に位置するサブ容器における粉砕機構の回転軸の回転数が最も低い。
【0096】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の改変が可能である。
【符号の説明】
【0097】
10a,10b,10c…粉砕装置、11…容器、12…第一サブ容器、13…第二サブ容器、14…第三サブ容器、17…第一粉砕機構、18…第二粉砕機構、19…第三粉砕機構、20…駆動力源、111…第一粉砕室、112…第二粉砕室、113…第三粉砕室、122…供給部、141…排出部

図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4