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特開2024-123516洗浄剤変質抑制剤、該変質抑制剤を含む洗浄剤、及びそれらの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123516
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】洗浄剤変質抑制剤、該変質抑制剤を含む洗浄剤、及びそれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/9728 20170101AFI20240905BHJP
   C11D 1/04 20060101ALI20240905BHJP
   C11D 7/44 20060101ALI20240905BHJP
   C11D 3/382 20060101ALI20240905BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20240905BHJP
   A61K 8/36 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
A61K8/9728
C11D1/04
C11D7/44
C11D3/382
A61Q19/10
A61K8/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030999
(22)【出願日】2023-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(71)【出願人】
【識別番号】591040144
【氏名又は名称】太陽油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒井 直樹
(72)【発明者】
【氏名】西薗 圭祐
(72)【発明者】
【氏名】政田 尚子
【テーマコード(参考)】
4C083
4H003
【Fターム(参考)】
4C083AA111
4C083AA112
4C083AB032
4C083AB052
4C083AC122
4C083AC251
4C083AC252
4C083AC302
4C083CC23
4C083CC38
4C083DD27
4C083EE01
4H003AB03
4H003BA12
4H003DA02
4H003EA21
4H003EB05
4H003EB08
4H003EB39
4H003ED02
4H003FA14
(57)【要約】
【課題】洗浄剤を保存した際の変臭や変色を十分に抑制することができる天然由来の洗浄剤変質抑制剤、該変質抑制剤を含む洗浄剤、及びそれらの製造方法を提供すること。
【解決手段】キノコ類加圧加熱抽出物を含有する、洗浄剤変質抑制剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キノコ類加圧加熱抽出物を含有する、洗浄剤変質抑制剤。
【請求項2】
前記キノコ類加圧加熱抽出物のpHが7以上である、請求項1に記載の洗浄剤変質抑制剤。
【請求項3】
前記キノコ類が、エノキタケ、舞茸、タモギタケ、シメジ、椎茸、エリンギ、及びマッシュルームからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の洗浄剤変質抑制剤。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の洗浄剤変質抑制剤と、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、パルミトレイン酸、エイコセン酸、及びエルカ酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の不飽和脂肪酸を含む脂肪酸のアルカリ金属塩を含有する、洗浄剤。
【請求項5】
キノコ類と抽出溶媒とを混合する工程、
前記混合により得られた混合物を大気圧よりも高い圧力条件下で100℃以上に加熱する工程、及び
前記加熱した混合物から前記キノコ類の抽出残渣を除去する工程を含む、洗浄剤変質抑制剤の製造方法。
【請求項6】
前記キノコ類と抽出溶媒とを混合する工程の前に、
前記キノコ類を70~100℃の水性液体に浸漬する工程を含む、請求項5に記載の洗浄剤変質抑制剤の製造方法。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の方法で得られた洗浄剤変質抑制剤を、洗浄成分に添加する工程を含む、洗浄剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄剤変質抑制剤、該変質抑制剤を含む洗浄剤、及びそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
洗浄剤には、皮膚や毛髪、衣料、食器類等を洗浄対象とする各種用途別の洗浄剤が存在する。これらの洗浄剤に含まれる洗浄成分の一つである、脂肪酸のアルカリ金属塩、いわゆる脂肪酸石鹸は古くから使用されているものであり、植物油脂の鹸化等によって製造されている。一方で、植物油脂の多くには不飽和脂肪酸が含まれているため、植物油脂を原料として製造した洗浄剤を高温下、光曝露下、及び/又は酸素曝露下等で保存すると、洗浄剤中の不飽和脂肪酸の酸化により生成するヘキサナール、ヘプタナール、オクタナール等の低級アルデヒドに由来する変臭や変色が、その洗浄剤の品質を大幅に低下させてしまうという問題が生じていた。
【0003】
このような洗浄剤の変質を抑制する目的で、一般的には天然のトコフェロール等の酸化防止剤が使用されているが、保存中にトコフェロール自体が酸化して着色や異臭が発生するといった問題もある。また、イソチアゾロン系の有機硫黄化合物、ベンズイソチアゾロン系の有機硫黄化合物、安息香酸類、アルコール系の2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオールや、ヨウ素系化合物等の合成酸化防止剤も使用されているが、近年、これら合成酸化防止剤は消費者の安全性や自然環境保護に対する意識の高まりにより、使用しないことが望まれている。
【0004】
そこで、天然物を使用した種々の方法で洗浄剤の変質を防止することが提案されている。特許文献1には、エルゴチオネイン及び/又はその誘導体を含有する組成物のpHを調整することによる、皮膚外用剤の変臭及び/又は変色抑制法が開示されており、具体的な用途としては石鹸、ボディーシャンプー、ハンドソープ等が挙げられている。特許文献2には、ローズマリー水溶性抽出物を酸化防止剤として使用することで、色素の変色防止や退色防止効果を発揮することが開示されており、具体的な用途として、石鹸、ボディーシャンプー、洗顔クリーム等の洗浄用化粧品が挙げられている。
【0005】
しかしながら、特許文献1及び2に記載の手法はいずれも天然由来の抽出物によるものではあるものの、洗浄剤に使用した際の変臭、変色抑制効果は十分なものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012-241013号公報
【特許文献2】特開2002-363557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、洗浄剤を保存した際の変臭や変色を十分に抑制することができる天然由来の洗浄剤変質抑制剤、該変質抑制剤を含む洗浄剤、及びそれらの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、キノコ類加圧加熱抽出物を含有する、洗浄剤変質抑制剤により、洗浄剤を保存した際の変臭や変色等の変質を十分に抑制することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明の第一は、キノコ類加圧加熱抽出物を含有する、洗浄剤変質抑制剤に関する。
前記洗浄剤変質抑制剤において、前記キノコ類加圧加熱抽出物のpHが7以上であることが好ましい。
前記洗浄剤変質抑制剤において、前記キノコ類が、エノキタケ、舞茸、タモギタケ、シメジ、椎茸、エリンギ、及びマッシュルームからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
本発明の第二は、前記洗浄剤変質抑制剤と、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、パルミトレイン酸、エイコセン酸、及びエルカ酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の不飽和脂肪酸を含む脂肪酸のアルカリ金属塩を含有する、洗浄剤に関する。
本発明の第三は、キノコ類と抽出溶媒とを混合する工程、前記混合により得られた混合物を大気圧よりも高い圧力条件下で100℃以上に加熱する工程、及び前記加熱した混合物から前記キノコ類の抽出残渣を除去する工程を含む、洗浄剤変質抑制剤の製造方法に関する。
前記洗浄剤変質抑制剤の製造方法において、前記キノコ類と抽出溶媒とを混合する工程の前に、前記キノコ類を70~100℃の水性液体に浸漬する工程を含むことが好ましい。
本発明の第四は、前記の方法で得られた洗浄剤変質抑制剤を、洗浄成分に添加する工程を含む、洗浄剤の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明に従えば、洗浄剤を保存した際の変臭や変色を十分に抑制することができる天然由来の洗浄剤変質抑制剤、該変質抑制剤を含む洗浄剤、及びそれらの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
[洗浄剤変質抑制剤]
本開示の洗浄剤変質抑制剤は、キノコ類加圧加熱抽出物を含有する。本開示の洗浄剤変質抑制剤は、洗浄剤の添加剤として用いられる。当該洗浄剤変質抑制剤を洗浄剤に添加することにより、洗浄剤を保存した際の変臭や変色等の変質を抑制することができる。
【0012】
本開示におけるキノコ類には、子実体だけでなく石突等の菌床も含まれる。前記キノコ類の種類は特に限定されず、例えば、エノキタケ、舞茸、タモギタケ、シメジ、椎茸、エリンギ、及びマッシュルーム等が挙げられ、これらのキノコ類の群から選ばれる少なくとも1種を使用することができる。洗浄剤に対する変質抑制効果、キノコの原材料費、キノコ自体の臭いの観点から、エノキタケ、舞茸、タモギタケ、シメジ及びエリンギが好ましく、エノキタケ、舞茸、タモギタケ及びエリンギがより好ましく、エノキタケ、舞茸及びエリンギが更に好ましく、エノキタケ及びエリンギが最も好ましい。
【0013】
前記エノキタケは、タマバリタケ科のキノコの一種であるFlammulina velutipes種のことをいう。例えば、人工的に栽培した白色かつもやし状の市販エノキタケ、野生種と栽培種の白色エノキタケをかけあわせたブラウン系エノキタケ、野生種等を使用することができる。前記市販エノキタケは、一般に食用とされており、容易に入手可能である。
【0014】
前記舞茸は、サルノコシカケ科マイタケ属に属するキノコの一種であるGrifola frondosa種のことをいう。舞茸の近縁種として、白舞茸も包含する。舞茸としては、子実体、菌糸体いずれも使用することができる。
【0015】
前記タモギタケは、ヒラタケ科のキノコの一種であるPleurotus cornucopiae var. citrinopileatus種のことをいう。天然のものや、人工的に栽培したものを使用することができる。
【0016】
前記シメジは、シメジ属に属するカクミノシメジ(Lyophyllum sykosporum種)、スミゾメシメジ(Lyophyllum semitale種)、シャカシメジ(Lyophyllum fumosum種)、ホンシメジ(Lyophyllum shimeji種)、ハタケシメジ(Lyophyllum decastes種)、オシロイシメジ(Lyophyllum cnnatum種)、及び、シロタモギタケ属に属するブナシメジ(Hypsizigus marmoreus種)のことをいう。天然のものや、人工的に栽培したものを使用することができる。
【0017】
前記椎茸は、ハラタケ目キシメジ科シイタケ属のキノコの一種であるLentinula edodes種のことをいう。天然のものや、人工的に栽培したものを使用することができる。
【0018】
前記エリンギは、ヒラタケ科ヒラタケ属のキノコの一種であるPleurotus eryngii種のことをいう。天然のものや、人工的に栽培したものを使用することができる。
【0019】
前記マッシュルームは、ハラタケ科ハラタケ属に属するキノコの一種である。マッシュルームの品種は特に限定されず、Agaricus bisporus種のホワイト種、オフホワイト種、クリーム種、ブラウン種、Agaricus bitorquis種等が例示され、いずれも好ましく使用することができる。天然のものや、人工的に栽培したものを使用することができる。
【0020】
前記洗浄剤変質抑制剤に含まれるキノコ類加圧加熱抽出物のpHは7以上であることが好ましい。特に、洗浄剤に対する変質抑制効果の観点から、pHは7~10がより好ましく、pHは7~9が更に好ましく、pHは7~8が特に好ましい。前記キノコ類加圧加熱抽出物のpHは、後記の製造方法において、加圧加熱抽出時に使用する抽出溶媒のpHや加圧加熱条件等の抽出条件を変化させることにより調整することができる。なお、本開示において、「~」とは、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む意味で用いる。
【0021】
洗浄剤変質抑制剤の性状としては、特に限定されず、例えば、後記の製造方法において、キノコ類の抽出残渣を除去する工程を経た直後のキノコ類加圧加熱抽出物をそのまま、希釈又は濃縮した液体状の洗浄剤変質抑制剤であってよく、液体状のキノコ類加圧加熱抽出物を濃縮及び/又は乾燥させた粉末状、粒状、顆粒状、ブロック状等の固体状の洗浄剤変質抑制剤であってもよい。計量や取り扱いの容易さの観点からは、液体状が好ましい。
【0022】
洗浄剤変質抑制剤における前記キノコ類加圧加熱抽出物の含有量は、固形分量において0.05~100重量%が好ましく、0.1~60重量%がより好ましく、0.1~40重量%が更に好ましい。
【0023】
キノコ類加圧加熱抽出物の固形分量は、後記の製造方法において、0.3mmのメッシュを通してキノコ類の抽出残渣を除去する工程を経たキノコ類加圧加熱抽出物5gを、105℃で5時間乾燥させた後の重量を測定し、固形分量(重量%)=乾燥後重量/乾燥前重量×100で算出することができる。
【0024】
洗浄剤変質抑制剤は、その効果を阻害しない限り、前記キノコ類加圧加熱抽出物以外の成分を含むことができ、例えば、水や水溶液等の水性液体、エタノール等の有機溶媒、動植物由来の抽出物、糖類、油脂類、塩類、香料、着色料、乳化剤、酸化防止剤、並びにデキストリンや澱粉等の賦形剤が挙げられる。
【0025】
本開示の洗浄剤変質抑制剤は、キノコ類と抽出溶媒とを混合する工程、前記混合により得られた混合物を加圧加熱する工程、及び前記加熱した混合物から前記キノコ類の抽出残渣を除去する工程を含む製造方法により得ることができる。なお、前記加圧加熱とは、大気圧よりも高い圧力条件の下で100℃以上に加熱する操作を指す。
【0026】
前記キノコ類と混合する抽出溶媒の種類は特に限定されず、例えば、水や水溶液等の水性液体、エタノール等の有機溶媒、並びに前記水性液体及び前記有機溶媒を含む混合溶媒が挙げられるが、加熱を伴う抽出操作の操作性の観点から、水性液体を用いることが好ましい。
【0027】
更に、洗浄剤に対する特に優れた変色抑制効果の観点から、抽出溶媒として、pHが7以上の水性液体を用いることがより好ましく、pH8~14を示す水性液体が更に好ましく、pH8.8~12を示す水性液体が特に好ましく、pH9.2~11を示す水性液体が最も好ましい。
【0028】
前記pHが7以上の水性液体としては、例えば、アルカリ水、炭酸水素ナトリウム等の溶質を溶解させたアルカリ性水溶液等が挙げられ、これらを抽出溶媒の全部又は一部に用いることができる。なお、前記pHが7以上の水性液体としては、溶質の影響の少ないアルカリ水を抽出溶媒の全部又は一部に用いることが好ましい。
【0029】
前記アルカリ水は、通常、電解アルカリ水、強アルカリ性水、強アルカリ性イオン水、超アルカリ水等の名称で呼ばれている水のことを指し、具体的には、温泉水及び湧水等の天然から得られるアルカリ性の水であってよく、水道水や電解質含有水を電気分解する水電気分解法で製造したアルカリ性の水であってよい。また、家庭用、工業用として市販されている酸性水製造機の副産物である電解アルカリ水を利用することもできる。
【0030】
抽出溶媒として、前記水性液体及び有機溶媒を含む混合溶媒のうち、水性液体及びエタノールを含む混合溶媒を用いる場合、洗浄剤の変質抑制効果の観点から、混合溶媒全体に対するエタノールの量は49vol%以下が好ましく、20vol%以下がより好ましく、5vol%以下が更に好ましい。
【0031】
前記キノコ類と混合する抽出溶媒の量は、洗浄剤に対する変質抑制効果及び抽出効率の観点から、前記キノコ類(湿重量)/前記抽出溶媒(重量比)が0.05~10となる量が好ましく、0.08~5となる量がより好ましく、0.14~1となる量が更に好ましい。ここで、前記キノコ類の重量は湿重量であるが、使用するキノコ類は生キノコ類でもよいし、乾燥したキノコ類でもよい。ただし、乾燥したキノコ類を用いる場合は、該乾燥キノコの重量ではなく、キノコ類が生の状態の時の湿重量を用いて、前記重量比を計算する。
【0032】
前記キノコ類と前記抽出溶媒の混合物の加圧加熱処理は常法により行うことができ、例えば、前記混合物を、加圧加熱耐性を有する容器に封入した後、レトルト処理装置や圧力釜を用いて大気圧よりも高い圧力条件下で100℃以上に加熱することで行うことができる。
【0033】
前記加圧加熱処理の圧力は、大気圧よりも高い圧力条件下であればよいが、抽出効率の観点から、0.05~0.3MPaが好ましく、0.1~0.3MPaがより好ましく、0.15~0.2MPaが更に好ましい。なお、前記圧力とは、ゲージ圧を意味し、大気圧をゼロとする相対的な圧力を指す。
【0034】
前記加圧加熱処理の加熱温度(抽出温度)は、100℃以上であればよく、100~150℃が好ましく、110~140℃がより好ましく、120~135℃が更に好ましい。加熱温度が100℃より低いと、抽出効率が悪くなり、洗浄剤に対する変質抑制効果が十分に得られない。
【0035】
前記加圧加熱処理の時間、言い換えれば、前記加圧及び加熱温度を保持する時間(抽出時間)は、抽出効率の観点から、0.2~5時間が好ましく、1~3時間がより好ましく、1.5~2時間が更に好ましい。
【0036】
前記加圧加熱処理が終了した後、前記キノコ類の抽出残渣を除去することで、キノコ類加圧加熱抽出物を得ることができる。また、前記キノコ類の抽出残渣を除去した後、適温、例えば、0~50℃まで冷却することが好ましい。キノコ類の抽出残渣の除去の具体的な方法としては、0.3mm以下のメッシュを通すこと等が挙げられる。
【0037】
また、抽出効率及び洗浄剤に対する変臭抑制効果を更に高める観点から、キノコ類と抽出溶媒とを混合する工程の前に、前記キノコ類を70~100℃の水性液体に浸漬する工程を含むことが好ましい。前記水性液体の種類は特に限定されず、例えば水や水溶液が挙げられるが、操作性の観点から、水を用いることが好ましい。
【0038】
前記浸漬工程で用いる水性液体の温度は、70~100℃であってよいが、抽出効率をより高める目的から、80~100℃が好ましく、90~100℃がより好ましく、95~100℃が更に好ましい。浸漬工程で用いる水性液体の温度が70℃未満であると、抽出効率を高める効果が十分に得られない。
【0039】
また、前記浸漬工程においてキノコ類を70~100℃の水性液体に浸漬する時間は、抽出効率と操作性の観点から、0.2~5時間が好ましく、0.5~3時間がより好ましく、1.5~2.5時間が更に好ましい。
【0040】
[洗浄剤]
前記洗浄剤変質抑制剤を含有する洗浄剤は、本発明の一態様を構成する。
【0041】
洗浄剤の具体的な種類は特に限定されないが、例えば、石鹸、ボディーシャンプー、洗顔クリーム等の皮膚用の洗浄剤、ヘアシャンプー等の毛髪用の洗浄剤、並びに洗濯石鹸等の衣料用の洗浄剤等が挙げられる。
【0042】
また、前記洗浄剤の性状は流動性を有する液体状であってもよく、粉末状、粒状、顆粒状、ブロック状等の固体状であってもよい。取り扱いの容易さの観点からは、液体状であることが好ましい。特に、不飽和脂肪酸の含有量が比較的多い液体状の洗浄剤の場合、保存により特に変質しやすいことから、本開示の洗浄剤変質抑制剤の配合による変臭や変色の抑制の効果が顕著である。
【0043】
洗浄剤における前記洗浄剤変質抑制剤の含有量は、前記洗浄剤変質抑制剤に含まれるキノコ類加圧加熱抽出物の固形分量に基づいて適宜調整することができる。液体状の洗浄剤の場合、前記洗浄剤における前記キノコ類加圧加熱抽出物の含有量は、固形分量で0.0001~1.0重量%が好ましく、0.0003~0.7重量%がより好ましく、0.0005~0.5重量%が更に好ましく、0.001~0.3重量%が特に好ましい。ここで、前記洗浄剤の重量は湿重量である。
【0044】
本開示の洗浄剤は、前記洗浄剤変質抑制剤と、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、パルミトレイン酸、エイコセン酸、及びエルカ酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の不飽和脂肪酸を含む脂肪酸のアルカリ金属塩を含有することが好ましい。アルカリ金属塩は、アルカリ金属元素の塩であり、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられる。洗浄成分として前記不飽和脂肪酸を含む脂肪酸のアルカリ金属塩を含む洗浄剤に、前記洗浄剤変質抑制剤を添加することで、保存中の変臭や変色等の変質抑制効果が特に顕著となる。
【0045】
また、洗浄剤における前記不飽和脂肪酸を含む脂肪酸のアルカリ金属塩の含有量は、3~36重量%が好ましく、5~35重量%がより好ましく、10~35重量%が更に好ましい。
【0046】
本開示の洗浄剤は、前記不飽和脂肪酸を含む脂肪酸のアルカリ金属塩の他にも、その効果を阻害しない限り、飽和脂肪酸のアルカリ金属塩を含有することができる。
【0047】
飽和脂肪酸としては、カプリル酸(炭素数8)、カプリン酸(炭素数10)、ラウリン酸(炭素数12)、ミリスチン酸(炭素数14)、パルミチン酸(炭素数16)、ステアリン酸(炭素数18)等が挙げられる。カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸は、脂肪酸自体が好ましくない臭いを呈し、カプリル酸、カプリン酸及びラウリン酸のナトリウム塩若しくはカリウム塩は皮膚刺激性があるため、洗浄剤中における炭素数14以下の飽和脂肪酸の含有量は、全脂肪酸の含有量を基準として、好ましくは90重量%以下、より好ましくは80重量%以下、更に好ましくは65%重量以下である。
【0048】
パルミチン酸、ステアリン酸等の炭素数16以上の飽和脂肪酸が多いと、得られる洗浄剤の粘度が高くなる傾向があり、場合によっては洗浄剤が固化するため、洗浄剤中における炭素数16以上の飽和脂肪酸の含有量は、全脂肪酸の含有量を基準として、好ましくは50重量%以下、より好ましくは40重量%以下、更に好ましくは30重量%以下である。
【0049】
洗浄剤中における飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の含有割合(「飽和脂肪酸の含有量:不飽和脂肪酸の含有量(重量比)」)は、特に限定されず、例えば20:80~95:5、好ましくは25:75~93:7、より好ましくは30:70~90:10である。
【0050】
本開示の洗浄剤のpHは、特に限定されないが、洗浄力、皮膚刺激性の観点から、8.5~10.99が好ましい。
【0051】
前記洗浄剤には、その効果を阻害しない限り、必要に応じ一般的に洗浄剤に用いられる成分を配合することも可能である。例えば、脂肪酸のアルカリ金属塩以外の陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、保湿剤、増粘剤、香料、pH調整剤、エキス成分、洗浄補助剤、防腐剤等を含んでもよい。
【0052】
脂肪酸のアルカリ金属塩以外の陰イオン界面活性剤としては、当技術分野において既知の任意のものを使用することができ、例えば、アルキルエーテルカルボン酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルエーテルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸塩、アルキルエーテルリン酸塩、アシルアミノ酸塩等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよく、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0053】
陽イオン界面活性剤としては、当技術分野において既知の任意のものを使用することができ、例えば、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルアンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、ベンゼトニウム塩、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよく、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0054】
両性界面活性剤としては、当技術分野において既知の任意のものを使用することができ、例えば、アルキル酢酸ベタイン、イミダゾリニウムベタイン、アルキルアミドプロピルベタイン、アルキルヒドロキシスルホベタイン等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよく、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0055】
非イオン界面活性剤としては、当技術分野において既知の任意のものを使用することができ、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット・ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、エチレングリコール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、アルキルグリセリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル脂肪酸エステル、ポリエーテル変性シリコーン等のシリコーン系界面活性剤等を挙げることができる。これらは1種を単独で使用してもよく、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの界面活性剤は、一般に化粧料、洗浄料に用いられるものから選択することができる。
【0056】
保湿剤としては、当技術分野において既知の任意のものを使用することができ、例えば、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、1,2-ペンタンジオール、プロパンジオール、ベタイン、トレハロース、ソルビトール、キシリトール等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよく、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0057】
増粘剤としては、当技術分野において既知の任意のものを使用することができ、例えば、キサンタンガム、カラギーナン、グアーガム、タマリンドガム、アルギン酸ナトリウム等の天然高分子;メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カチオン化グアーガム、カチオン化セルロース等の半合成高分子;カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、メタクリロイルエチルベタイン・メタクリル酸エステル共重合体、塩化ジメチルアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体等の合成高分子が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよく、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。増粘剤を使用することにより、洗浄剤の用途に合わせた好適な性状とすることができる。
【0058】
香料としては、当技術分野において既知の任意のものを使用することができ、例えば、リモネン、ゲラニオール、リナロール、シトラール等の単離香料又は合成香料、ラベンダー油、ペパーミント油、オレンジ油、イランイラン油、フランキンセンス油、ローレル油、ローズウッド油等の精油が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよく、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0059】
pH調整剤としては、当技術分野において既知の任意の無機酸、有機酸、無機塩基、有機塩基を使用することができる。なかでも有機酸と無機塩基が好ましく、例えば、有機酸は、クエン酸、乳酸、酪酸、グリコール酸等が挙げられ、無機塩基は、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよく、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0060】
エキス成分としては、当技術分野において既知の任意のものを使用することができ、例えば、アシタバエキス、アセンヤクエキス、アボカドエキス、アマチャエキス、アマチャヅルエキス、アルテアエキス、アルニカエキス、油溶性アルニカエキス、アルモンドエキス、アロエエキス、アンソッコウエキス、イチョウエキス、イラクサエキス、イリス根エキス、ウイキョウエキス、ウコンエキス、エイジツエキス、エチナシ葉エキス、オウゴンエキス、オウバクエキス、オウレンエキス、オオムギエキス、オクラエキス、オトギリソウエキス、油溶性オトギリソウエキス、オドリコソウエキス、油溶性オドリコソウエキス、オノニスエキス、オランダカラシエキス、オレンジエキス、オレンジフラワー水、海藻エキス、カキタンニン、カッコンエキス、カノコソウエキス、ガマエキス、カモミラエキス、油溶性カモミラエキス、カモミラ水、カラスムギエキス、カロットエキス、油溶性カロットエキス、カロット油、カワラヨモギエキス、カンゾウエキス、カンゾウ抽出末、カンゾウフラボノイド、カンタリスチンキ、キイチゴエキス、キウイエキス、キナエキス、キューカンバーエキス、キョウニンエキス、クインスシードエキス、クチナシエキス、クマザサエキス、クララエキス、クルミ殻エキス、グレープフルーツエキス、クレマティスエキス、黒砂糖エキス、クロレラエキス、クワエキス、ケイヒエキス、ゲンチアナエキス、ゲンノショウコエキス、紅茶エキス、コウホネエキス、ゴボウエキス、油溶性ゴボウエキス、コムギ胚芽エキス、加水分解コムギ末、コメヌカエキス、コメヌカ発酵エキス、コンフリーエキス、サイシンエキス、サフランエキス、サボンソウエキス、油溶性サルビアエキス、サンザシエキス、サンショウエキス、ジオウエキス、シコンエキス、油溶性シコンエキス、シソエキス、シナノキエキス、油溶性シナノキエキス、シモツケソウエキス、シャクヤクエキス、ジュズダマエキス、ショウキョウエキス、油溶性ショウキョウエキス、ショウキョウチンキ、ショウブ根エキス、シラカバエキス、油溶性シラカバエキス、シラカバ樹液、スイカズラエキス、スギナエキス、油溶性スギナエキス、スコルジニン、ステビアエキス、セイヨウキズタエキス、セイヨウサンザシエキス、セイヨウニワトコエキス、セイヨウネズエキス、セイヨウノコギリソウエキス、油溶性セイヨウノコギリソウエキス、セイヨウハッカエキス、セージエキス、油溶性セージエキス、セージ水、ゼニアオイエキス、セロリエキス、センキュウエキス、センキュウ水、センブリエキス、ダイズエキス、タイソウエキス、タイムエキス、チャエキス、チャ乾留液、チャ実エキス、チョウジエキス、チンピエキス、ツバキエキス、ツボクサエキス、油溶性テウチグルミエキス、デュークエキス、テルミナリアエキス、トウガラシチンキ、トウキエキス、油溶性トウキエキス、トウキ水、トウキンセンカエキス、油溶性トウキンセンカエキス、豆乳末、トウニンエキス、トウヒエキス、ドクダミエキス、トマトエキス、トルメンチラエキス、納豆エキス、ニンジンエキス、油溶性ニンジンエキス、ニンニクエキス、ノバラエキス、油溶性ノバラエキス、バクガエキス、バクガ根エキス、バクモンドウエキス、パセリエキス、ハダカムギ葉汁濃縮物、蒸留ハッカ水、ハマメリス水、ハマメリス抽出液、バラエキス、パリエタリアエキス、ヒキオコシエキス、ビワ葉エキス、油溶性ビワ葉エキス、フキタンポポエキス、ブクリョウエキス、ブッチャーブルームエキス、ブッチャーブルームエキス末、ブドウエキス、ブドウ葉エキス、ブドウ水、ヘイフラワーエキス、ヘチマエキス、ヘチマ水、ベニバナエキス、油溶性ボダイジュエキス、ボダイジュ水、ボタンエキス、ホップエキス、油溶性ホップエキス、マツエキス、マリアアザミエキス、マロニエエキス、油溶性マロニエエキス、ムクロジエキス、メリッサエキス、メリロートエキス、モモ葉エキス、油溶性モモ葉エキス、モヤシエキス、ヤグルマギクエキス、ヤグルマギク水、ユーカリエキス、ユキノシタエキス、ユリエキス、ヨクイニンエキス、油溶性ヨクイニンエキス、ヨモギエキス、ヨモギ水、ラベンダーエキス、ラベンダー水、リンゴエキス、レイシエキス、レタスエキス、レモンエキス、レンゲソウエキス、ローズ水、ローズマリーエキス、油溶性ローズマリーエキス、ローマカミツレエキス、ワレモコウエキス等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよく、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0061】
洗浄補助剤としては、当技術分野において既知の任意のものを使用することができ、例えば、炭酸塩、ムクロジエキス等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよく、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0062】
防腐剤としては、当技術分野において既知の任意のものを使用することができ、例えば、フェノキシエタノール、安息香酸又はその塩、ソルビン酸又はその塩、デヒドロ酢酸又はその塩、パラオキシ安息香酸エステル、塩化ベンザルコニウム、ヒノキチオール等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよく、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0063】
本開示の洗浄剤は、前記洗浄剤変質抑制剤を含有するものでれば、その製造方法は特に限定されるものではないが、例えば、前記製造方法によって得られた洗浄剤変質抑制剤を、洗浄成分に添加する工程を含む方法により製造することができる。ここで、洗浄成分とは、洗浄を目的とする成分であり、界面活性剤、脂肪酸のアルカリ金属塩、又は不飽和脂肪酸を含む脂肪酸のアルカリ金属塩等が挙げられる。洗浄成分に添加する方法は特に限定されず、例えば、洗浄剤変質抑制剤以外の1種以上の洗浄剤の原料の混合工程で前記洗浄剤変質抑制剤を添加して併せて混合してもよいし、洗浄剤変質抑制剤以外の洗浄剤の全ての原料を混合して得られた混合物に、前記洗浄剤変質抑制剤を後から添加し、混合してもよい。
【0064】
以下の各項目では、本開示における好ましい態様を列挙するが、本発明は以下の項目に限定されるものではない。
[項目1]
キノコ類加圧加熱抽出物を含有する、洗浄剤変質抑制剤。
[項目2]
前記キノコ類加圧加熱抽出物のpHが7以上である、項目1に記載の洗浄剤変質抑制剤。
[項目3]
前記キノコ類が、エノキタケ、舞茸、タモギタケ、シメジ、椎茸、エリンギ、及びマッシュルームからなる群より選ばれる少なくとも1種である、項目1又は2に記載の洗浄剤変質抑制剤。
[項目4]
項目1~3のいずれか1項に記載の洗浄剤変質抑制剤と、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、パルミトレイン酸、エイコセン酸、及びエルカ酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の不飽和脂肪酸を含む脂肪酸のアルカリ金属塩を含有する、洗浄剤。
[項目5]
キノコ類と抽出溶媒とを混合する工程、
前記混合により得られた混合物を大気圧よりも高い圧力条件下で100℃以上に加熱する工程、及び
前記加熱した混合物から前記キノコ類の抽出残渣を除去する工程を含む、洗浄剤変質抑制剤の製造方法。
[項目6]
前記キノコ類と抽出溶媒とを混合する工程の前に、
前記キノコ類を70~100℃の水性液体に浸漬する工程を含む、項目5に記載の洗浄剤変質抑制剤の製造方法。
[項目7]
項目5又は6に記載の方法で得られた洗浄剤変質抑制剤を、洗浄成分に添加する工程を含む、洗浄剤の製造方法。
【実施例0065】
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例において「部」や「%」は重量基準である。
【0066】
(固形分量)
キノコ類加圧加熱抽出物の固形分量の測定方法は、前記のとおりである。
【0067】
(脂肪酸のアルカリ金属塩の含有量)
洗浄剤中における脂肪酸のアルカリ金属塩の含有量は、下記式で算出される各脂肪酸のアルカリ金属塩の含有量の総和である。
各脂肪酸のアルカリ金属塩の含有量(重量%)=(構成脂肪酸の分子量-水素の原子量+構成アルカリ金属元素の原子量)/構成脂肪酸の分子量×洗浄剤中の構成脂肪酸の配合割合
【0068】
(製造例1)キノコ類加圧加熱抽出物の作製
表1に従って、市販のエノキタケ(子実体)50重量部(湿重量)を切断し、水100重量部を加えたキノコ類(湿重量)/水(重量比)が0.50である混合物を、127℃で0.2MPaのゲージ圧をかけて1.7時間保持した後、0.3mmのメッシュを通して抽出残渣を濾別し、濾液を75℃でパウチ包装し、その後チラー水槽に入れて5℃まで冷却することで、キノコ類加圧加熱抽出物を得た。該キノコ類加圧加熱抽出物の固形分量は、2.52重量%であり、pHは6.3であった。結果は表1に示した。
【0069】
(製造例2)キノコ類加圧加熱抽出物の作製
表1に従って、抽出に用いる溶媒を水からアルカリ水(エスオーシー(株)製温泉水99:pH9.9)に変更した以外は、製造例1と同様にして、キノコ類加圧加熱抽出物を得た。該キノコ類加圧加熱抽出物の固形分量は、2.56重量%であり、pHは7.4であった。結果は表1に示した。
【0070】
(製造例3)キノコ類加圧加熱抽出物の作製
表1に従って、キノコ類の前処理として、加圧加熱抽出前にエノキタケを大気圧下で100℃の熱水に2時間浸漬処理してから、製造例2と同様にして、キノコ類加圧加熱抽出物を得た。該キノコ類加圧加熱抽出物の固形分量は、0.26重量%であり、pHは7.5であった。結果は表1に示した。
【0071】
(製造例4)キノコ類加圧加熱抽出物の作製
表1に従って、エノキタケを市販のエリンギに変更した以外は、製造例3と同様にして、キノコ類加圧加熱抽出物を得た。該キノコ類加圧加熱抽出物の固形分量は0.20重量%であり、pHは7.3であった。結果は表1に示した。
【0072】
(製造例5)キノコ類加熱抽出物の作製
表1に従って、キノコ類の抽出温度を127℃から95℃に、抽出時のゲージ圧を0.2MPaから0MPa(大気圧)に変更した以外は、製造例1と同様にして、キノコ類加熱抽出物を得た。該キノコ類加熱抽出物の固形分量は1.00重量%であり、pHは7.1であった。結果は表1に示した。
【0073】
(製造例6)キノコ類抽出物の作製
表1に従って、市販のエリンギ(子実体)の乾燥物20重量部(生の状態の時の湿重量は284重量部であったもの)を切断し、30vol%エタノール水溶液400重量部を加え、キノコ類(湿重量)/30vol%エタノール水溶液(重量比)が0.71である混合物を、大気圧下で50℃にて5時間保持した後、チラー水槽に入れて5℃まで冷却し、0.3mmのメッシュを通して抽出残渣を濾別することで、キノコ類抽出物を得た。該キノコ類抽出物の固形分量は、1.93重量%であり、pHは6.2であった。結果は表1に示した。
【0074】
【表1】
【0075】
(実施例1~6及び比較例1~3)
製造例1~6で得られたキノコ類の各抽出物そのものを洗浄剤変質抑制剤として用いた。
【0076】
表2に示す配合に従って、脂肪酸、水、水酸化カリウム、グリセリン、クエン酸及び前記洗浄剤変質抑制剤を混合し、液状の洗浄剤をそれぞれ作製した。得られた液状の洗浄剤を透明のガラス瓶に入れ、50℃の暗所で60日間保存し、保存後の洗浄剤について下記評価を行い、その結果を表2に示した。また、得られた液状の洗浄剤の各組成も表2に示した。
【0077】
(参考例1)
表2に示す配合に従って、洗浄剤変質抑制剤を混合せず、液状の洗浄剤を作製した。この製造直後の洗浄剤についても下記評価を行い、その結果を表2に示した。また、得られた液状の洗浄剤の各組成も表2に示した。
【0078】
<洗浄剤の評価>
熟練した10人のパネラーがそれぞれ以下の評価基準にて変色及び変臭の評価を行い、その評価点の平均値を評価結果とした。変色の評価は洗浄剤をガラス瓶に入れたまま目視で行い、変臭の評価はガラス瓶の蓋を開けて瓶口での臭いを嗅いで行った。
【0079】
(変色の評価基準)
5点:参考例1と同等で、変色が全くない
4点:参考例1よりも僅かに劣るが、変色が殆どない
3点:参考例1よりも劣り、変色が若干あるが、商品品質上は問題ないレベルである
2点:参考例1よりも悪く、変色している
1点:参考例1よりも明らかに悪く、非常に変色している
【0080】
(変臭の評価基準)
5点:参考例1と同等で、変臭が全く感じられない
4点:参考例1よりも僅かに劣るが、変臭が殆ど感じられない
3点:参考例1よりも劣り、変臭が僅かに感じられるが、商品品質上は問題ないレベルである
2点:参考例1よりも悪く、変臭が感じられる
1点:参考例1よりも明らかに悪く、変臭が非常に強く感じられる
【0081】
(総合評価)
変色及び変臭の評価結果を基に、総合評価を行った。その際の評価基準は以下の通りであった。
A:変色及び変臭の評価がどちらも4.5点以上5.0点以下を満たしているもの
B:変色及び変臭の評価がどちらも4.0点以上5.0点以下であって、且つ4.0点以上4.5点未満が少なくとも一つあるもの
C:変色及び変臭の評価がどちらも3.0点以上5.0点以下であって、且つ3.0点以上4.0点未満が少なくとも一つあるもの
D:変色及び変臭の評価がどちらも2.0点以上5.0点以下であって、且つ2.0点以上3.0点未満が少なくとも一つあるもの
E:変色及び変臭の評価において、2.0点未満が少なくとも一つあるもの
【0082】
【表2】
【0083】
表2から明らかなように、大気圧下及び100℃未満で抽出されたキノコ類加熱抽出物を含有する洗浄剤(比較例1~3)に関しては、いずれも保存中に変色及び変臭が生じた。
【0084】
一方、キノコ類加圧加熱抽出物を含有する洗浄剤(実施例1~6)に関してはいずれも、50℃で60日間保存後の変色及び変臭が抑制されており、良好な品質を維持していた。
【0085】
また、特に、キノコ類としてエノキタケを用いた場合について見ると、アルカリ水を抽出溶媒として使用することで得られた、pHが7以上のキノコ類加圧加熱抽出物を洗浄剤変質抑制剤として含有する洗浄剤(実施例2~5)は、pH6.3のキノコ類加圧加熱抽出物を洗浄剤変質抑制剤として含有する洗浄剤(実施例1)と比べて、変色がより抑制されており、より良好な結果を示した。
【0086】
更に、大気圧下での熱水への浸漬処理を施した後にアルカリ水を抽出溶媒として使用して加圧加熱抽出を行って得られたキノコ類加圧加熱抽出物を含有する洗浄剤(実施例3~5)は、アルカリ水を抽出溶媒として使用したが、浸漬処理を施さずに得られたキノコ類加圧加熱抽出物を含有する洗浄剤(実施例2)と比べて、変臭がより抑制されており、より良好な結果を示した。