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特開2024-123524タイヤトレッド用ゴム組成物およびそれを用いたタイヤ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123524
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】タイヤトレッド用ゴム組成物およびそれを用いたタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/06 20060101AFI20240905BHJP
   C08L 7/00 20060101ALI20240905BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20240905BHJP
   C08L 15/00 20060101ALI20240905BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20240905BHJP
   B60C 11/00 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
C08L9/06
C08L7/00
C08L9/00
C08L15/00
B60C1/00 A
B60C11/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031018
(22)【出願日】2023-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保 晴香
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
【Fターム(参考)】
3D131AA02
3D131BA01
3D131BA04
3D131BA05
3D131BA20
3D131BB01
3D131BB03
3D131BB11
3D131BC02
3D131BC12
3D131BC18
3D131BC19
3D131BC44
4J002AC01X
4J002AC06X
4J002AC08W
4J002AC11W
4J002FD010
4J002FD140
4J002FD150
4J002FD200
4J002GN01
(57)【要約】
【課題】燃費性能、ウェット性能、スノー性能およびノイズ性能を高い次元で両立させる。
【解決手段】スチレンブタジエン系ゴムおよびイソプレン系ゴムを含有するゴム成分を含み、23℃での硬度(23℃Hs)が55以上、64以下であり、-25℃での貯蔵弾性率(-25℃E’)が50MPa以上、150MPa以下であり、35℃での損失正接(35℃tanδ)に対する、0℃での損失正接(0℃tanδ)の比率(0℃tanδ/35℃tanδ)が、1.35以上、2.00以下である、タイヤトレッド用ゴム組成物、ならびに当該タイヤトレッド用ゴム組成物により構成されたトレッドを備えたタイヤ。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレンブタジエン系ゴムおよびイソプレン系ゴムを含有するゴム成分を含み、
23℃での硬度(23℃Hs)が55以上、64以下であり、
-25℃での貯蔵弾性率(-25℃E’)が50MPa以上、150MPa以下であり、
35℃での損失正接(35℃tanδ)に対する、0℃での損失正接(0℃tanδ)の比率(0℃tanδ/35℃tanδ)が、1.35以上、2.00以下である、タイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項2】
前記35℃tanδが、0.15以上、0.18以下である、請求項1に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項3】
前記23℃Hsに対する、前記-25℃E’の比率(-25℃E’/23℃Hs)が、0.90以上、1.80以下である、請求項1に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項4】
前記イソプレン系ゴムが天然ゴムである、請求項1に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項5】
前記スチレンブタジエン系ゴムは、シリカとの反応性を有する官能基で変性された変性スチレンブタジエンゴムを含む、請求項1に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項6】
請求項1~5に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物からなるトレッドを備えたタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤトレッド用ゴム組成物、およびそれを用いたタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤの低燃費性を改善する手法について、種々検討されている(例えば特許文献1参照)。タイヤの低燃費性は、転がり抵抗によって評価することができ、転がり抵抗が小さいほど、低燃費性に優れたタイヤであることが知られている。特許文献1には、タイヤのトレッドを構成するゴム組成の配合を工夫することで、転がり抵抗を低減させたタイヤが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6835284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
オールシーズンタイヤまたはオールウェザー仕様のタイヤにおいては、燃費性能、ウェット性能、およびスノー性能を高い次元で両立させることが求められる。しかしながら、転がり抵抗が低減すると、路面とのグリップ力が低下し、ウェット性能およびスノー性能が悪化する傾向がある。そのため、転がり抵抗を低減させつつ、ウェット性能およびスノー性能を向上させることは容易ではない。また、近年、自動車の車内における静粛性が重視されており、路面の凹凸に起因して発生するロードノイズの低減に対する要求も強くなっている。
【0005】
本発明の目的は、燃費性能、ウェット性能、スノー性能およびノイズ性能を高い次元で両立できるトレッド用ゴム組成物、および当該ゴム組成物で構成されたトレッドを有する空気入りタイヤを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るタイヤトレッド用ゴム組成物は、変性スチレンブタジエンゴムおよび天然ゴムを含有するゴム成分を含み、23℃での硬度(23℃Hs)が55以上、64以下であり、-25℃での貯蔵弾性率(-25℃E’)が50MPa以上、150MPa以下であり、35℃での損失正接(35℃tanδ)に対する、0℃での損失正接(0℃tanδ)の比率(0℃tanδ/35℃tanδ)が、1.35以上、2.00以下である。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るタイヤトレッド用ゴム組成物によれば、燃費性能、ウェット性能、スノー性能およびノイズ性能を高い次元で両立することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のタイヤトレッド用ゴム組成物(以下、単にゴム組成物という)は、スチレンブタジエン系ゴムおよびイソプレン系ゴムを含有し、23℃での硬度(23℃Hs)が55以上、64以下であり、-25℃での貯蔵弾性率(-25℃E’)が50MPa以上、150MPa以下であり、35℃での損失正接(35℃tanδ)に対する、0℃での損失正接(0℃tanδ)の比率(0℃tanδ/35℃tanδ)が、1.35以上、2.00以下である。これにより、燃費性能、ウェット性能、スノー性能およびノイズ性能を高い次元で両立することができる。なお、本明細書において、ウェット性能とは、湿潤路面での制動性・グリップ性を意味し、スノー性能とは、雪上路面や氷上路面での制動性・グリップ性を意味する。
【0009】
ゴム組成物の23℃での硬度(23℃Hs)は、55以上、64以下である。23℃Hsが当該範囲内であれば、操縦安定性を確保しつつ、優れたノイズ性能を発揮することができる。なお、本発明において、23℃Hsとは、加硫後のゴム組成物を、実施例に記載したJIS K6253に準拠した方法で測定した値である。
【0010】
ゴム組成物の23℃Hsの下限値は、55であればよいが、好ましくは56、より好ましくは57である。この場合、タイヤの剛性が向上し、操縦安定性が向上する。ゴム組成物の23℃Hsの上限値は、64であればよいが、好ましくは63、より好ましくは62である。この場合、ノイズ性能の向上がより顕著になる。
【0011】
ゴム組成物の-25℃での貯蔵弾性率(-25℃E’)は、50MPa以上、150MPa以下である。ゴム組成物の-25℃E’が当該範囲内であれば、ウェット性能とスノー性能とを両立することが可能となる。換言すれば、-25℃E’が50MPaよりも小さくなると、路面とのグリップ力が低下し、ウェット性能が悪化する。また、-25℃E’が150MPaよりも大きくなると、スノー性能が悪化する。なお、本発明において、-25℃E’とは、加硫後のゴム組成物を、温度-25℃、初期歪10%、動歪1%、周波数10Hzの条件で実施例に記載した方法で測定した値である。
【0012】
ゴム組成物の-25℃E’の下限値は、50MPaであればよいが、好ましくは65MPa、より好ましくは80MPaである。また、ゴム組成物の-25℃E’の上限値は、150MPaであればよいが、好ましくは130MPa、より好ましくは120MPaである。この場合、ウェット性能とスノー性能とを両立することが容易になる。
【0013】
ゴム組成物の-5℃E’は、好ましくは、18MPa以上、24MPa以下であり、より好ましくは、19MPa以上、23MPa以下である。-5℃E’が当該範囲内であれば、操縦安定性を確保しつつ、ウェット性能を向上させることができる。
【0014】
また、ゴム組成物の23℃Hsに対する、-25℃E’の比率(-25℃E’/23℃Hs)が、0.90以上、1.80以下であることが好ましい。-25℃E’/23℃Hsが0.90以上であれば優れたノイズ性能を発揮し、-25℃E’/23℃Hsが1.80以下であれば優れたスノー性能を発揮する。つまり、-25℃E’/23℃Hsが当該範囲内であれば、ノイズ性能とスノー性能とを両立することができる。
【0015】
ゴム組成物の35℃での損失正接(35℃tanδ)に対する、0℃での損失正接(0℃tanδ)の比率(0℃tanδ/35℃tanδ)が、1.35以上、2.00以下である。0℃tanδ/35℃tanδが当該範囲内であれば、優れた燃費性能を発揮しつつ、ウェット性能およびスノー性能を向上させることができる。換言すれば、0℃tanδ/35℃tanδが1.35より小さくなると、転がり抵抗が大きくなり、燃費性能が悪化する。また、0℃tanδ/35℃tanδが2.00よりも大きくなると、スノー性能が悪化する。なお、本発明において、35℃tanδとは、加硫後のゴム組成物を、実施例に記載した温度35℃、初期歪10%、動歪1%、周波数10Hzの条件で測定した値であり、0℃tanδとは、加硫後のゴム組成物を、実施例に記載した温度0℃、初期歪10%、動歪1%、周波数10Hzの条件で測定した値である。
【0016】
ゴム組成物の0℃tanδ/35℃tanδは、ウェット性能を向上させる観点から、1.95以下であることが好ましく、1.90以下であることがより好ましい。また、0℃tanδ/35℃tanδは、燃費性能を向上させる観点から、1.45以上であることが好ましく、1.55以上であることがより好ましい。
【0017】
ゴム組成物の35℃tanδは、1.35≦0℃tanδ/35℃tanδ≦2.00を満たせばよいが、より燃費性能を向上させる観点から、0.18以下であることが好ましく、0.17以下であることがより好ましい。また、35℃tanδは、操縦安定性を向上させる観点から、0.15以上であることが好ましい。よって、損失正接tanδの好適な範囲の一例は、0.15以上、0.18以下である。
【0018】
ゴム組成物の0℃tanδは、1.35≦0℃tanδ/35℃tanδ≦2.00を満たせばよいが、よりウェット性能およびスノー性能を向上させる観点から、0.24以上、0.31以下であることが好ましく、0.25以上、0.30以下であることがより好ましい。
【0019】
ゴム組成物は、スチレンブタジエン系ゴムおよびイソプレン系ゴムを含有するゴム成分を含む。これら2種類のゴムを含有することで、本発明の効果を発揮しつつ、加工性が向上したゴム組成物を得ることができる。
【0020】
スチレンブタジエン系ゴムは、スチレン系単位およびブタジエン系単位を有するゴムであれば特に限定されず、例えば、乳化重合スチレンブタジエンゴム(E-SBR)、溶液重合スチレンブタジエンゴム(S-SBR)等が挙げられる。なお、スチレンブタジエン系ゴムは、ゴム100質量部中のスチレン系単位およびブタジエン系単位の合計含有率が、例えば、95質量部以上であり、98質量部以上でも、100質量部でもよい。これらのスチレンブタジエン系ゴムは、1種を単独で用いてもよいが、2種以上を併用することが好ましい。
【0021】
スチレンブタジエン系ゴムは、非変性SBR、変性SBRのいずれであってもよいが、変性SBRを含むことが好ましい。変性SBRを含むことで転がり抵抗が低減し、良好な燃費性能が得られる傾向がある。なお、本明細書において、ゴム成分における「変性」とは、シリカとの反応性を有する官能基を有するもののことをいい、「未変性」とは、シリカとの反応性を有する官能基を有しないもののことをいう。シリカとの反応性を有する官能基としては、例えば、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アルコキシシリル基、エポキシ基などが挙げられ、当該官能基は、分子末端に導入されたものであってもよく、分子鎖中に導入されたものであってもよい。
【0022】
スチレンブタジエン系ゴムとしては、例えば、住友化学(株)、(株)ENEOSマテリアル、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等により製造・販売されているSBRを使用できる。
【0023】
上記ゴム組成物において、ゴム成分100質量部中のスチレンブタジエン系ゴムの含有量は、30質量部以上であることが好ましく、40質量部以上であることがより好ましく、50質量部以上であることがさらに好ましい。スチレンブタジエン系ゴムの含有量を30質量部以上にすることで、良好な燃費性能が得られる傾向がある。また、スチレンブタジエン系ゴムの含有量は、80質量部以下とすることが好ましい。スチレンブタジエン系ゴムを多量に使用することで、加工性が悪化することが懸念されるが、スチレンブタジエン系ゴムの含有量を80質量部以下とすることで、加工性の悪化を抑制できる。よって、スチレンブタジエン系ゴムの含有量の好適な範囲の一例は、30質量部以上、80質量部以下である。
【0024】
スチレンブタジエン系ゴムのガラス転移温度(Tg)は、本発明の効果が良好に得られるという観点から、-70℃以上、-20℃以下であることが好ましい。ここで、スチレンブタジエン系ゴムのガラス転移温度は、JIS K7121に準拠して示差走査熱量測定(DSC)法により、昇温温度:20℃/分にて(測定温度範囲:-150℃~50℃)測定される。
【0025】
イソプレン系ゴムとしては、例えば、イソプレンゴム(IR)および天然ゴム等タイヤ工業において一般的なものを使用することができるが、スノー性能を向上させる観点から、天然ゴムであることが好ましい。天然ゴムには、非改質天然ゴム(NR)の他に、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素化天然ゴム(HNR)、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム(UPNR)、グラフト化天然ゴム等の改質天然ゴム等も含まれる。これらのゴムは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
上記ゴム組成物において、ゴム成分100質量部中のイソプレン系ゴムの含有量は、15質量部以上であることが好ましく、20質量部以上であることがより好ましく、25質量部以上であることがさらに好ましい。
【0027】
ゴム成分には、スチレンブタジエン系ゴムおよびイソプレン系ゴム以外の他のゴム成分が含まれていてもよい。他のゴム成分としては、例えば、ブタジエン系ゴム(BR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)等のジエン系ゴムが挙げられる。これらのゴム成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
ブタジエン系ゴム(BR)は、ブタジエン系単位を主たる単位とする重合体であれば特に限定されず、例えば、高シス含量のBR、低シス含量のBR等を使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
本実施形態では、補強性充填剤として、カーボンブラックおよびシリカが用いられる。
【0030】
カーボンブラックとしては、特に限定されず、公知の種々の品種を用いることができる。例えば、カーボンブラックとしては、窒素吸着比表面積(NSA)(JIS K6217-2)が70~150m/gであるものを用いることが好ましい。具体的には、SAF級(N100番台),ISAF級(N200番台),HAF級(N300番台)のカーボンブラックが例示される。これら各グレードのカーボンブラックは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0031】
カーボンブラックの配合量は、ゴム成分100質量部に対して、10質量部未満であることが好ましく、8質量部未満であることが好ましい。カーボンブラックの配合量を減らすことで、ゴム組成物の硬度を低下させ、ノイズ性能を向上させることができる。また、カーボンブラックの配合量の下限は、例えば、2質量部超である。よって、カーボンブラックの配合量の好適な範囲の一例は、2質量部超、10質量部未満であり、より好ましくは、2質量部超、8質量部未満である。
【0032】
シリカとしては、特に限定されず、例えば、湿式沈降法シリカや湿式ゲル法シリカなどの湿式シリカを用いてもよい。シリカのBET比表面積(JIS K6430に記載のBET法に準じて測定)は、特に限定されず、例えば90~250m/gでもよく、150~220m/gでもよい。
【0033】
シリカの配合量は、ゴム成分100質量部に対して、60質量部超であることが好ましく、65質量部以上であることがより好ましい。シリカの配合量を60質量部超にすることで、ウェット性能が向上する。また、シリカの配合量は、90質量部未満であることが好ましく、85質量部以下であることがより好ましい。シリカの配合量を90質量部未満にすることで、転がり抵抗が減少する。よって、シリカの配合量の好適な範囲の一例は、60質量部超、90質量部未満である。
【0034】
本実施形態のゴム組成物には、上記成分の他に、シランカップリング剤、ステアリン酸、酸化亜鉛、ワックス、老化防止剤、オイル、加硫促進剤、加硫剤など、タイヤトレッド用ゴム組成物において一般に使用される各種添加剤を配合することができる。
【0035】
シランカップリング剤としては、スルフィドシランやメルカプトシラン等の公知のシランカップリング剤を用いることができる。シランカップリング剤の配合量は、特に限定されないが、シリカの配合量の2質量部以上、20質量部以下であることが好ましく、5質量部以上、15質量部以下であることがより好ましい。
【0036】
オイルとしては、一般にゴム組成物に配合される各種オイルを用いることができる。例えば、鉱物油、即ちパラフィンオイル、ナフテンオイル、およびアロマオイルからなる群から選択される少なくとも1種の鉱物油を用いてもよい。オイルの含有量は、特に限定されず、例えば、ゴム成分100質量部に対して40質量部以下でもよく、30質量部以下でもよい。
【0037】
加硫剤としては、硫黄が好ましく用いられる。加硫剤の配合量は、特に限定されず、例えば、ゴム成分100質量部に対して0.1質量部以上、5質量部以下でもよく、0.5質量部以上、3質量部以下でもよい。
【0038】
加硫促進剤としては、例えば、スルフェンアミド系、チウラム系、チアゾール系、およびグアニジン系などの各種加硫促進剤が挙げられる。これら加硫促進剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。加硫促進剤の配合量は、特に限定されず、例えば、ゴム成分100質量部に対して0.1質量部以上、5質量部以下でもよく、0.5質量部以上、3質量部以下でもよい。
【0039】
本実施形態に係るゴム組成物は、通常に用いられるバンバリーミキサーやニーダー、ロール等の混合機を用いて、常法に従い混練し作製することができる。すなわち、例えば、第1混合段階(ノンプロ練り工程)で、ゴム成分に対し、カーボンブラックおよびシリカとともに、加硫剤および加硫促進剤以外の添加剤を添加混合し、次いで、得られた混合物に、最終混合段階(プロ練り工程)で加硫剤および加硫促進剤を添加混合して未加硫のゴム組成物を調製することができる。
【0040】
なお、ノンプロ練り工程は、単一の混合工程としてもよく、混合と排出を繰り返す複数の混合工程に分けて実施してもよい。例えば、ノンプロ練り工程は、ゴム成分およびカーボンブラックの全量と、シリカおよびシランカップリング剤の一部とを混合する第1ノンプロ練り工程と、第1ノンプロ練り工程の混合物にシリカおよびシランカップリング剤の一部と、酸化亜鉛および老化防止剤の全量とを混合する第2ノンプロ練り工程とを含んでいてもよい。複数の混合工程に分けて実施することで、充填剤とポリマーの化学結合を均一に形成することが可能である。
【0041】
このようにして得られるゴム組成物は、空気入りタイヤの接地面を構成するトレッドゴムに用いられる。空気入りタイヤとしては、乗用車用タイヤでもよく、トラックやバスなどの重荷重用タイヤでもよい。実施形態の一例として、サマータイヤのトレッドに用いてもよい。ここで、サマータイヤとは、一般的に車に使われるタイヤで、冬用に特化したタイヤであるスタッドレスタイヤやスノータイヤなどのウインタータイヤ以外のタイヤのことを指す。
【0042】
空気入りタイヤの製造方法は、特に限定されない。例えば、上記ゴム組成物を、常法に従い、押出加工によって所定の形状に成型して未加硫のトレッドゴム部材を作製し、該トレッドゴム部材を他の部材と組み合わせて未加硫タイヤ(グリーンタイヤ)を作製した後、例えば140~180℃で加硫成型することにより、空気入りタイヤを製造することができる。
【実施例0043】
以下、実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0044】
バンバリーミキサーを使用し、下記表1に示す配合量(質量部)に従って、まず、第1混合段階で、ゴム成分に対し硫黄および加硫促進剤を除く他の配合剤を添加し混練し(排出温度=160℃)、次いで、得られた混練物に、最終混合段階で、硫黄と加硫促進剤を添加し混練して(排出温度=90℃)、ゴム組成物を調製した。表1中の各成分の詳細は、以下の通りである。
【0045】
・SBR1:(株)ENEOSマテリアル製「HPR355」(Tg=-21℃の変性溶液重合SBR)
・SBR2:(株)ENEOSマテリアル製「HPR850」(Tg=-24℃の変性溶液重合SBR)
・SBR3:(株)ENEOSマテリアル製「HPR350」(Tg=-32℃の変性溶液重合SBR)
・SBR4:(株)ENEOSマテリアル製「HPR840」(Tg=-60℃の変性溶液重合SBR)
・SBR5:旭化成(株)製「Tuf1834」(Tg=-68℃の溶液重合SBR)
・SBR6:(株)ENEOSマテリアル製「SBR0122」(Tg=-40℃の未変性ESBR)
・BR:宇部興産(株)製「BR150B」
・NR:RSS#3
・カーボンブラック1:東海カーボン(株)製「シースト6」
・カーボンブラック2:東海カーボン(株)製「シーストKH」
・シリカ:エボニックインダストリーズ社製「UltrasilVN3」
・シランカップリング剤:エボニックインダストリーズ社製「Si75」
・オイル1:アロマオイル、JX日鉱日石エネルギー(株)製「プロセスNC140」
・オイル2:アロマオイル、JX日鉱日石エネルギー(株)製「プロセスP200」
・樹脂:C5/C9系の脂肪族/芳香族共重合系炭化水素樹脂、東ソー(株)製「ペトロタック90」(ガラス転移温度:65℃、軟化点:95℃)
・ステアリン酸:花王(株)製「ルナックS-20」
・酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製「亜鉛華3種」
・ワックス:日本精鑞(株)製「OZOACE0355」
・老化防止剤1:大内新興化学工業(株)製「ノクラック6C」
・老化防止剤2:川口化学工業(株)製「アンテージRD」
・加硫促進剤1:大内新興化学工業(株)製「ノクセラーD」
・加硫促進剤2:住友化学(株)製「ソクシノールCZ」
・硫黄:鶴見化学工業(株)製「粉末硫黄」
【0046】
表1で得られた実施例1~8および比較例1,2の未加硫各ゴム組成物を、160℃で30分間加硫した所定形状の試験片を作製し、硬度および粘弾性特性を評価した。各評価方法は以下の通りである。
【0047】
<硬度測定>
JIS K6253に準拠して、デュロメータタイプA(型式:GS-719N、株式会社テクロック製)を用いて、各ゴム試験片の温度23℃での硬度Hsを測定した。
【0048】
<動的粘弾性測定>
JIS K6394に準拠して、東洋精機(株)製の粘弾性試験機を使用し、各ゴム試験片の-25℃E’(MPa)、-5℃E’(MPa)、0℃tanδ、35℃tanδを測定した。それぞれの測定条件は以下の通りである。
-25℃E:測定温度-25℃、初期歪10%、動歪1%、周波数10Hz
-5℃E:測定温度-5℃、初期歪10%、動歪1%、周波数10Hz
0℃tanδ:測定温度0℃、初期歪10%、動歪1%、周波数10Hz
35℃tanδ:測定温度35℃、初期歪10%、動歪1%、周波数10Hz
【0049】
表1で得られた実施例1~8および比較例1,2の未加硫各ゴム組成物をトレッドゴムに用いて、常法に従い加硫成型することにより試験用空気入りタイヤ(タイヤサイズ:195/60R17 90H)を作製した。なお、当該タイヤのトレッドパターンは、タイヤ周方向に延びる3本の主溝と、主溝で区画されたリブ状のブロックを備え、ブロックには、タイヤ周方向またはタイヤ軸方向に延びる複数の細溝が形成されている。得られた試験用空気入りタイヤを下記により評価した。
【0050】
<転がり抵抗>
転がり抵抗測定ドラム試験機を用いて、空気圧230kPa、荷重450kgf、温度23℃、80km/hの条件で各タイヤの転がり抵抗を測定し、比較例1の値を100として指数評価で示した。指数が小さいほど、低燃費性に優れることを示す。
【0051】
<ウェット性能>
各試験タイヤを排気量2000ccのFF車に装着し、湿潤路面にて、速度90km/hでABS作動させ20km/hまで減速時の制動距離を測定し(n=10の平均値)、比較例1を100とした指数で示した。数値が大きいほど制動距離が短く、制動性能が良好であることを示す。
【0052】
<スノー性能>
各試験タイヤ排気量2000ccのFF車に装着し、圧雪路にて、速度40km/hでABS作動させて制動距離を測定し、評価した。表1の〇はスノー性能に優れていることを意味し、×は〇の場合と比べてスノー性能に劣ることを意味する。
【0053】
<ノイズ性能>
各試験タイヤ排気量2000ccのFF車に装着し、車室内運転席の耳の位置にマイクロフォンを設置し、乾燥状態の平坦なアスファルト路面を80km/hで走行した時の音圧を測定した。表1の〇はノイズ性能に優れていることを意味し、×は〇の場合と比べてノイズ性能に劣ることを意味する。
【0054】
【表1】
【0055】
結果は表1に示す通りである。表1に示すように、実施例のゴム組成物をトレッドゴムに用いたタイヤは、燃費性能、ウェット性能、スノー性能およびノイズ性能を高い次元で両立されている。
【0056】
なお、本実施例においては、周方向に延びる4本の主溝と、主溝で区画されたリブ状のブロックとを備えるトレッドパターンを用いたが、トレッドパターンはこれに限定されない。例えば、主溝の本数が3本超、または3本未満のトレッドパターン、横溝が形成されたトレッドパターンであっても本発明の効果を発揮できる。
【0057】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これら実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその省略、置き換え、変更などは、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。