(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123530
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】壁紙
(51)【国際特許分類】
D06N 7/00 20060101AFI20240905BHJP
C08L 27/06 20060101ALI20240905BHJP
C08K 3/26 20060101ALI20240905BHJP
C08J 9/04 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
D06N7/00
C08L27/06
C08K3/26
C08J9/04 103
C08J9/04 CEV
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031024
(22)【出願日】2023-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】000000077
【氏名又は名称】アキレス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(72)【発明者】
【氏名】池田 武史
(72)【発明者】
【氏名】八木澤 遥
【テーマコード(参考)】
4F055
4F074
4J002
【Fターム(参考)】
4F055AA17
4F055BA12
4F055EA24
4F055EA26
4F055FA08
4F055FA40
4F055GA26
4F074AA35
4F074AA36
4F074AC17
4F074AC26
4F074AD01
4F074AD10
4F074AD11
4F074AG02
4F074AG03
4F074AG06
4F074AH04
4F074BA13
4F074CA29
4F074CC04Y
4F074CC10X
4F074CC22X
4F074CC28X
4F074CD20
4F074DA59
4J002BD031
4J002DE236
4J002EQ017
4J002FD016
4J002FD327
4J002GF00
4J002GL00
(57)【要約】
【課題】簡単な構成で軽質炭酸カルシウムを充填剤にでき、塗工性、エンボス性に十分な性能を得ることができる壁紙を提供する。
【解決手段】壁紙1は、基材シート10と、基材シート10上に形成される塩化ビニル樹脂層20と、からなり、塩化ビニル樹脂層20は、軽質炭酸カルシウム30を含み、塩化ビニル樹脂100質量部に対して軽質炭酸カルシウム30を20~150質量部含み、軽質炭酸カルシウム30は、最大粒径が1μmを超え100μm以下とされて構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シートと、
前記基材シート上に形成される塩化ビニル樹脂層と、からなる壁紙であって、
前記塩化ビニル樹脂層は、軽質炭酸カルシウムを含み、塩化ビニル樹脂100質量部に対して前記軽質炭酸カルシウムを20~150質量部含み、
前記軽質炭酸カルシウムは、最大粒径が1μmを超え100μm以下である、
ことを特徴とする壁紙。
【請求項2】
前記軽質炭酸カルシウムは、スラリー状のセメント成分中のカルシウム成分と、前記カルシウム成分に混入させた炭酸ガスと、からなる反応生成物で構成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の壁紙。
【請求項3】
前記塩化ビニル樹脂層は、発泡剤を含んで構成されている、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の壁紙。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁紙に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の内装材として使用される壁紙の一つに基材シート上に塩化ビニル樹脂層を形成したものがある。塩化ビニル樹脂層には、可塑剤、安定剤、減粘剤、発泡剤、充填剤、顔料などの種々の成分が添加される。充填剤としては、炭酸カルシウムが好ましく用いられている。
【0003】
壁紙で使用される炭酸カルシウムは、例えば特許文献1に開示された壁紙の製造方法では、紙質基材上に、電子線硬化型樹脂、発泡層、および炭酸カルシウムを含む組成物を押出し成形することで積層しており、樹脂100重量部に対して炭酸カルシウムの含有量を20~60重量部とし、炭酸カルシウムの粒子径分布を1~100μmの範囲に全粒子の70重量%以上が含まれるように調整している。
また、特許文献2に開示された壁紙の発泡前の積層体では、樹脂成分100重量部に対して、平均粒子径が2~10μmである炭酸カルシウムを10~100重量部含有させている。
【0004】
炭酸カルシウムには、石灰石を粉砕し分級した重質炭酸カルシウムと、カルシウム成分と炭酸ガスを反応させることで得られる反応生成物としての軽質炭酸カルシウム(合成炭酸カルシウム)とがあり、壁紙には、重質炭酸カルシウムが多く使用されている。
軽質炭酸カルシウムとしては、例えば特許文献3に、生コンクリート製造設備より発生する洗浄排水中の残渣物に炭酸ガスを混入することで石灰分を炭酸カルシウムに物性変化させて得るとともに、排水中の残渣物をコンクリート材料の一部として再利用するものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-274662号公報
【特許文献2】特開2013-032616号公報
【特許文献3】特開2007-190538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような壁紙の塩化ビニル樹脂に含有させる充填剤としての炭酸カルシウムは、特許文献1,2に記載されているように、平均粒子径および配合量を調整して用いられており、平均粒子径や粒子径分布の調整のためには、配合する各粒子径だけでなくその配合量の両方を調整しなければならないという問題がある。
また、軽質炭酸カルシウムを壁紙の充填剤として使用する場合にも、同様に、平均粒子径や粒子径分布の調整を行うことは煩雑であり、簡単な構成で塗工性、エンボス性に十分な性能が得られる壁紙が望まれている。
【0007】
本発明は、上記従来技術の問題点と現状に鑑みてなされたもので、簡単な構成で軽質炭酸カルシウムを充填剤にでき、塗工性、エンボス性に十分な性能を得ることができる壁紙を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
壁紙の塩化ビニル樹脂層に充填する炭酸カルシウムについて鋭意検討を重ねたところ、壁紙における樹脂層の塗工性、エンボス性を確保する上には、充填剤の配合量中の平均粒径や粒径分布による影響が小さく、充填剤の最大粒径と配合量による影響が大きいことを見出した。すなわち、炭酸カルシウムの粒子径を最大粒径で規制し、所定の大きさより小さいものが所定量配合されることで、壁紙における樹脂層に必要な性能を得ることが可能であることを見出し本発明を完成したものである。
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の壁紙は、
基材シートと、
前記基材シート上に形成される塩化ビニル樹脂層と、からなる壁紙であって、
前記塩化ビニル樹脂層は、軽質炭酸カルシウムを含み、塩化ビニル樹脂100質量部に対して前記軽質炭酸カルシウムを20~150質量部含み、
前記軽質炭酸カルシウムは、最大粒径が1μmを超え100μm以下である、
ことを特徴とする。
【0010】
前記軽質炭酸カルシウムは、スラリー状のセメント成分中のカルシウム成分と、前記カルシウム成分に混入させた炭酸ガスと、からなる反応生成物で構成されている、ことが好ましい。
【0011】
前記塩化ビニル樹脂層は、発泡剤を含んで構成されている、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の壁紙によれば、簡単な構成で軽質炭酸カルシウムを充填剤にでき、塗工性、エンボス性に十分な性能を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明にかかる壁紙の一実施の形態にかかる概略断面図である。
【
図2】本発明にかかる壁紙の他の一実施の形態にかかる概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。
本発明の壁紙1は、
図1に示すように、基材シート10と、基材シート10上に形成される塩化ビニル樹脂層20と、からなり、塩化ビニル樹脂層20は、軽質炭酸カルシウム30を含み、塩化ビニル樹脂100質量部に対して軽質炭酸カルシウム30を20~150質量部含み、軽質炭酸カルシウム30は、最大粒径が1μmを超え100μm以下とされて構成される。
【0015】
基材シート10は、壁紙1の裏打ち紙としての機能を有するものであり、これまで使用されている壁紙用の基材をそのまま用いることができる。基材シート10としては、例えば、紙、合成紙、難燃紙、不燃紙、無機質紙、ラミネート紙、合成樹脂フィルム、不織布など挙げることができる。基材シート10の坪量は、特に限定するものでなく通常の基材シート10で使用される範囲であれば良く、例えば坪量は、50~300g/m2、好ましくは50~80g/m2 とされる。
【0016】
塩化ビニル樹脂層20は、基材シート10上に形成される。塩化ビニル樹脂層20に用いる塩化ビニルは、一般的な塩化ビニルの樹脂製壁紙に使用されるものを使用でき、例えば、塩化ビニル単独重合体や塩化ビニルモノマーとそれと共重合し得る他のモノマーとの共重合体を挙げることができる。塩化ビニルモノマーと共重合し得る他のモノマーは、特に限定されず、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン等のオレフィン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ステアリン酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル等のビニルエーテル類;塩化ビニリデン等のビニリデン類;アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和カルボン酸及びその酸無水物;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ブチルベンジル等の不飽和カルボン酸エステル類;スチレン、αーメチルスチレン、ジビニルベンゼン等の芳香族ビニル化合物;アクリロニトリル等の不飽和ニトリル類;及びジアリルフタレート等の架橋性モノマー等が挙げられる。塩化ビニル樹脂は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
塩化ビニル樹脂層20は、塩化ビニル樹脂100質量部に対して軽質炭酸カルシウム30を20~150質量部含み、軽質炭酸カルシウム30は、最大粒径が1μmを超え100μm以下とされて構成される。軽質炭酸カルシウム30の配合量が150質量部を超えると、ペースト粘度が非常に高くなり、塗工性が悪化する。
ペースト粘度を低下させるために、可塑剤や減粘剤を使用することができるが、これらの配合量が多くなると、壁紙1として柔軟性が高くなりすぎて施工性の悪化を招き、時間の経過にともないブリードアウトの発生や表面のべたつきの発生などの不具合を生じる。したがって、軽質炭酸カルシウム30の配合量は、150質量部以下、より好ましくは、100質量部以下とする。
【0018】
軽質炭酸カルシウム30は、最大粒径が1μmを超え100μm以下のものが配合される。最大粒径を規定して配合することで、軽質炭酸カルシウム30の分級を100μmを超えるものを排除するだけで済み、簡単に用意することができる。
これまでの重質炭酸カルシウムを用いる場合に、平均粒径の範囲を規定し(特許文献2参照)、あるいは、平均粒径の範囲と全粒子に対する配合割合の範囲を組み合わせて規定する場合(特許文献1参照)に比べ、より一層簡単に用意することができる。軽質炭酸カルシウム30は、最大粒径を100μm以下とすることで、塩化ビニル樹脂の基材シート10への塗工時のすじの発生や表面の荒れを防止することができる。
軽質炭酸カルシウム30の最大粒径は、さらに好ましくは、60μm以下であり、すじの発生防止やロータリスクリーンメッシュの目づまりなどの不具合をより確実に防止できる。
一方、軽質炭酸カルシウム30は、最大粒径が1μm以下では、ペースト粘度が高くなり、作業性が悪化することから、1μmを超える最大粒径のものを用いることが好ましいが、配合量のすべてが1μm以下でなければ良く、特に分級して1μm以下を排除するまでもなく、100μm以下で分級したものを略そのまま使用することが可能である。
【0019】
軽質炭酸カルシウム30は、一般に採掘した石灰石を粉砕、分級、表面処理した重質炭酸カルシウムとは異なり、例えば、カルシウム成分と炭酸ガスとの化学反応で微細な結晶を液中で析出させることで得られるもの(合成炭酸カルシウム)である。
軽質炭酸カルシウム30の製造工程は、例えば、次の1)~3)の3つの工程で製造される。
1)焼成工程で、石灰石を高温で焼成することで脱炭酸し、生石灰を得る。
2)水化工程で、生石灰を十分な量の水と反応させ、消石灰スラリーを得る。
3)炭酸化工程で、消石灰スラリーに炭酸ガスを導入し、液中で炭酸カルシウムを析出させることで製造される。
また、カルシウム成分をコンクリート工場の高アルカリ排水(コンクリート工場の洗浄排水中の残渣物)から供給し、炭酸ガスを温暖化ガスから得ることで、軽質炭酸カルシウム30を合成することもできる。
こうして得られた軽質炭酸カルシウム30は、壁紙1の塩化ビニル樹脂層20の充填剤として利用する。これにより、軽質炭酸カルシウム30の製造工程で炭酸ガスが固定化されることで、地球温暖化ガスの濃度を減らすことに貢献できる。
なお、壁紙の充填剤として使用する軽質炭酸カルシウム30には、重質炭酸カルシウムを併用することもできる。
【0020】
塩化ビニル樹脂層20には、充填剤としての軽質炭酸カルシウム30のほか、通常の壁紙1に添加する種々の添加剤が使用できる。塩化ビニル樹脂には、可塑剤、安定剤、減粘剤、顔料、防かび剤等を添加することができ、これらの添加剤の具体例として、例えば、表1に記載のものを挙げることができる。
さらに、塩化ビニル樹脂に発泡剤を添加することで、塩化ビニル樹脂層20を塩化ビニル樹脂発泡層として壁紙1を構成することもできる。発泡剤としては、例えば、表1に挙げたADCA(アゾジカルボンアミド)などを挙げることができるほか、通常の壁紙1に添加している発泡剤を使用することができる。
塩化ビニル樹脂層20を塩化ビニル樹脂発泡層とする場合には、軽質炭酸カルシウム30の配合量は、非発泡の場合と同様に、塩化ビニル樹脂100質量部に対して150質量部以下、さらに好ましくは100質量部以下とされる。
塩化ビニル樹脂発泡層を加熱発泡した際に、発泡した塩化ビニル樹脂発泡層の発泡セルおよび塩化ビニル樹脂発泡層の表面が荒れてしまい次工程での印刷適性が悪化したり、エンボス加工による凹凸の賦形性が悪くなることを防止する。
【0021】
このような基材シート10と、基材シート10上に形成される塩化ビニル樹脂層20と、からなり、塩化ビニル樹脂層20は、軽質炭酸カルシウム30を含み、塩化ビニル樹脂100質量部に対して軽質炭酸カルシウム30を20~150質量部含み、軽質炭酸カルシウム30は、最大粒径が1μmを超え100μm以下とされて構成されている壁紙1は、軽質炭酸カルシウム30を充填剤として用いる場合に、最大粒径を1μmを超え100μm以下とし、塩化ビニル樹脂100質量部に20~150質量部配合することで、塗工性、エンボス性に十分な性能を得ることができる壁紙にでき、しかも最大粒径を調整して配合量を規定するだけの簡単な構成で壁紙にすることができる。
また、軽質炭酸カルシウム30として、コンクリート工場の高アルカリ排水(コンクリート工場の洗浄排水)からカルシウム成分を供給し、炭酸ガスをボイラーの排ガス等から得ることで、軽質炭酸カルシウム30を合成することもでき、得られた軽質炭酸カルシウム30は、壁紙1の塩化ビニル樹脂層20の充填剤として利用することにより、資源のリサイクルによる有効活用と、軽質炭酸カルシウム30の製造工程で炭酸ガスが固定化され、地球温暖化ガスの濃度を減らすことに貢献できる。
【0022】
このような軽質炭酸カルシウム30を用いる壁紙1の製造方法は、コーティング法、ロータリースクリーン印刷法など、特に限定するものでなく、これまでの壁紙の製造方法を適用することができる。また、塩化ビニル樹脂層20の表面に、
図2に示すように、印刷層40を、例えば、グラビア印刷、フレキソ印刷などで設けることもでき、さらに表面コート層50を設けて汚れ防止を目的とするフィルムのラミネート層を形成することや各種機能性表面コートを設けることも可能である。また、エンボス加工による凹凸模様60を形成することもできる。
【0023】
1)壁紙1の具体的な製造方法では、まず、軽質炭酸カルシウム30を用意する。ここでは、カルシウム成分を含む高アルカリ排水(コンクリート工場の洗浄排水)と炭酸ガスを含むボイラー排ガス等から生成された軽質炭酸カルシウム30を振動ふるい機で分級し、最大粒径が100μm以下(1μmを超える)のものを用意する。
2)塩化ビニル樹脂に軽質炭酸カルシウム30のほか、発泡剤など各種添加物を混合し、塩化ビニル樹脂ペーストを作製する。
3)基材シート10として、例えば坪量が65g/m2の壁紙用原紙を用意し、原紙上に、作成した塩化ビニル樹脂ペーストを、例えば厚さ、約0.2mmで塗工し、加熱乾燥する。
4)さらに、発泡温度まで加熱することで発泡させる。
5)必要に応じてエンボス加工により凹凸模様を賦形して壁紙とする。
【0024】
このような壁紙1の製造方法によれば、軽質炭酸カルシウム30を充填剤として用いる場合に、最大粒径を1μmを超え100μm以下とし、塩化ビニル樹脂100質量部に20~150質量部配合することで、塗工性、エンボス性に十分な性能を有する壁紙にでき、しかも最大粒径を調整して配合量を規定するだけの簡単な工程で壁紙とすることができる。
また、軽質炭酸カルシウム30として、コンクリート工場の高アルカリ排水(コンクリート工場の洗浄排水)からカルシウム成分を供給し、炭酸ガスをボイラーの排ガス等から得ることで、軽質炭酸カルシウム30を合成することもでき、得られた軽質炭酸カルシウム30は、壁紙1の塩化ビニル樹脂層20の充填剤として利用することにより、資源のリサイクル利用による有効活用と、軽質炭酸カルシウム30の製造工程で炭酸ガス(二酸化炭素)が固定化され、地球温暖化ガスの濃度を減らすことに貢献できる。
【実施例0025】
次に、本発明の実施例について比較例とともに説明するが、これら実施例は本発明を何ら限定するものではない。
使用素材
実施例および比較例では、使用素材として表1に示す、塩化ビニル樹脂(PCV)とこれに加える充填剤として軽質炭酸カルシウム(合成炭酸カルシウム)を分級して最大粒径を調整して4種類用意した。さらに、塩化ビニル樹脂に加える可塑剤、安定剤、減粘剤、発泡剤、顔料を用意した。なお、各素材のメーカーや呼称などは、表1に記載の通りである。
配合
壁紙を構成する塩化ビニル樹脂に添加する可塑剤などの配合量は、表1に示す通りである。
実施例および比較例
実施例1~6では、表1に示すように、軽質炭酸カルシウムの最大粒径と配合量に対応して減粘剤の配合量を変えたものを用意した。
比較例1~4では、表1に示すように、軽質炭酸カルシウムの最大粒径あるいは、配合量が規定値を越えたものを用意した。
壁紙の製造方法
基材シート(裏打紙)として普通紙(坪量:65g/m
2)を用い、基材シートの片面上に塩化ビニル発泡樹脂ペーストを厚さ約0.2mmで塗工し、加熱乾燥した。さらに加熱して発泡させ、発泡層の表面にエンボス加工により凹凸模様を賦形して壁紙を得た(
図2参照)。
【0026】
評価
1)塗工性
塩化ビニル樹脂ペーストを塗工できるか否かを評価した。
○:塗工できる。
×:塗工できない、または、すじや荒れの発生が見られる。
2)発泡性
発泡した表面の荒れの発生について評価した。
○:荒れの発生がない。
×:荒れの発生が見られる。
3)エンボス性
エンボス加工による凹凸の賦形状態を3つに区分し、○および△を良いと評価した。
○:凹凸の角がシャープである。
△:凹凸の角がシャープと丸みが混在する。
×:凹凸の角に丸みがある。
4)表面のべたつき性
壁紙の表面のべたつきについて手で触って3つに区分し、○および△を良いと評価した。
○:べたつきが全くない。
△:べたつきを感じる部分が僅かにある。
×:べたつきがある。
これらの評価の結果を、表1に示した。
【0027】
<実施例1>
表1に示す配合の塩化ビニル樹脂に、減粘剤を5質量部とし、充填剤として最大粒径が30μmを超え、100μm以下の軽質炭酸カルシウムを20質量部配合して壁紙を製造した。
この壁紙では、エンボス性が凹凸の角がシャープと丸みが混在する△の評価であったが、塗工性、発泡性、表面のべたつきには問題がなく良好であった。
【0028】
<実施例2>
充填剤としての軽質炭酸カルシウムを50質量部とした以外は、実施例1と同様である。
なお、壁紙の評価結果は、表1中に記載したとおりであり、以下評価結果の説明は省略する。
【0029】
<実施例3>
減粘剤を16質量部とし、充填剤としての軽質炭酸カルシウムを100質量部とした以外は、実施例1と同様である。
【0030】
<実施例4>
減粘剤を20質量部とし、充填剤としての軽質炭酸カルシウムを150質量部とした以外は、実施例1と同様である。
【0031】
<実施例5>
減粘剤を10質量部とし、充填剤としての軽質炭酸カルシウムの最大粒径が1μmを超え、30μm以下の軽質炭酸カルシウムを50質量部とした以外は、実施例1と同様である。
【0032】
<実施例6>
減粘剤を10質量部とし、発泡剤を0質量部とした以外は、実施例3と同様である。
【0033】
<比較例1>
充填剤としての軽質炭酸カルシウムの最大粒径を100μmを超え、120μm未満の軽質炭酸カルシウムとした以外は、実施例3と同様である。
【0034】
<比較例2>
減粘剤を25質量部とし、充填剤としての軽質炭酸カルシウムの最大粒径を30μmを超え、100μm以下の軽質炭酸カルシウムを160質量部とした以外は、実施例1と同様である。
【0035】
<比較例3>
充填剤としての軽質炭酸カルシウムの最大粒径を1μm以下とした以外は、実施例3と同様である。
【0036】
<比較例4>
充填剤としての軽質炭酸カルシウムを10質量部とした以外は、実施例1と同様である。
【0037】
以上の実施例および比較例に対して行った評価を示す表1の結果から、本発明における実施例1~6では、塗工性および発泡性に問題がなく、十分な性能を発揮するものであり、エンボス性に△の凹凸の角がシャープと丸みが混在するものがあり(実施例1)、表面のべたつき性に△のべたつきを感じる部分が僅かにある(実施例4)が見られたが、十分に発明の効果を奏するものであることが
確認できた。
一方、比較例1~3では、塗工性、発泡性、エンボス性、表面のべたつき性のいずれにも十分な性能を得ることができないこと、比較例4では、エンボス性の性能が不十分であることが確認できた。
【0038】
以上、実施の形態とともに、具体的に説明したように、本発明の壁紙1は、基材シート10と、基材シート10上に形成される塩化ビニル樹脂層20と、からなり、塩化ビニル樹脂層20は、軽質炭酸カルシウム30を含み、塩化ビニル樹脂100質量部に対して軽質炭酸カルシウム30を20~150質量部含み、軽質炭酸カルシウム30は、最大粒径が1μmを超え100μm以下とされて構成される。
かかる構成によれば、軽質炭酸カルシウム30を充填剤として用いる場合に、最大粒径を1μmを超え100μm以下とし、塩化ビニル樹脂100質量部に20~150質量部配合することで、塗工性、エンボス性に十分な性能を備える壁紙1を得ることができ、しかも最大粒径を調整して配合量を規定するだけの簡単な構成の壁紙とすることができる。
【0039】
また、軽質炭酸カルシウム30は、スラリー状のセメント成分中のカルシウム成分と、カルシウム成分に混入させた炭酸ガスと、からなる反応生成物で構成される。
かかる構成によれば、軽質炭酸カルシウム30として、コンクリート工場の高アルカリ排水(コンクリート工場の洗浄排水)からカルシウム成分を供給し、炭酸ガスをボイラーの排気ガス等から得ることで、軽質炭酸カルシウム30を合成することもでき、得られた軽質炭酸カルシウム30は、壁紙1の塩化ビニル樹脂層20の充填剤として利用することにより、資源のリサイクルによる有効活用と、軽質炭酸カルシウム30の製造工程で炭酸ガス(二酸化炭素)が固定化され、地球温暖化ガスの濃度を減らすことに貢献できる。
【0040】
また、塩化ビニル樹脂層20は、発泡剤を含んで構成されてもよい。
かかる構成によれば、塩化ビニル樹脂層20に発泡剤を添加することで、塩化ビニル樹脂発泡層を有する壁紙1とすることができ、塗工性、発泡性、エンボス性に十分な性能を備える壁紙1を得ることができ、しかも最大粒径を調整して配合量を規定するだけの簡単な構成の壁紙とすることができる。
【0041】