(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123534
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】洗濯機
(51)【国際特許分類】
D06F 21/06 20060101AFI20240905BHJP
D06F 23/04 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
D06F21/06
D06F23/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031039
(22)【出願日】2023-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】住吉 宏介
(72)【発明者】
【氏名】小松 源
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 有輝也
【テーマコード(参考)】
3B165
【Fターム(参考)】
3B165AA12
3B165AA15
3B165AB22
3B165AB30
3B165AE02
3B165AE07
3B165BA16
3B165BA82
3B165CA01
3B165CA02
3B165CA08
3B165CA11
3B165CA12
3B165CA21
3B165CB01
3B165CB31
3B165CB36
3B165CB64
3B165CB68
3B165CD05
3B165CD06
3B165CD15
3B165CE01
3B165CE02
3B165DW01
3B165DW02
3B165DW05
3B165EW01
3B165EW02
3B165EW03
3B165EW04
3B165FA02
3B165GA02
3B165GA25
3B165GA27
3B165JM02
(57)【要約】
【課題】回転翼と底板との隙間の寸法ばらつきが生じた場合であっても、回転翼と底板との隙間からの異物の侵入を抑制する。
【解決手段】
本発明は、筒状の胴板30と、胴板30の底部を覆う底板31とから構成された洗濯兼脱水槽3と、底板31に配置された回転翼4と、洗濯兼脱水槽3を内包し洗濯水を溜める外槽2と、洗濯兼脱水槽3および回転翼4を回転駆動する駆動モータ10と、を備える。回転翼4の外周部46には、外周側に向かって突出し、底板31と対向する異物侵入抑制リブ47を備える。異物侵入抑制リブ47は、回転翼4の外周部46の最下部に位置させた。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の胴板と、前記胴板の底部を覆う底板とから構成された洗濯槽と、
前記底板に配置された回転翼と、
前記洗濯槽を内包し洗濯水を溜める外槽と、
前記洗濯槽および前記回転翼を回転駆動する駆動部と、を備えた洗濯機であって、
前記回転翼の外周部には、外周側に向かって突出し、前記底板と対向する異物侵入抑制リブを備え、
前記異物侵入抑制リブは、前記回転翼の外周部の最下部に位置させたことを特徴とする洗濯機。
【請求項2】
請求項1に記載の洗濯機であって、
前記胴板は、下端部を内周側に折り曲げた折り曲げ部を備え、
前記底板は、前記折り曲げ部と接して前記胴板を固定する固定部を備え、
前記異物侵入抑制リブは、前記固定部の位置よりも下方に位置させたことを特徴とする洗濯機。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の洗濯機であって、
前記底板は、前記異物侵入抑制リブと対向する第1内周壁と、
前記第1内周壁の下端部から内周側に向かって伸びた溝部と、
前記溝部から上方に向かって突出した堰部と、を備えたことを特徴とする洗濯機。
【請求項4】
請求項3に記載の洗濯機であって、
前記堰部は、上下方向において前記異物侵入抑制リブと重なるように配置したことを特徴とする特徴とする洗濯機。
【請求項5】
請求項3に記載の洗濯機であって、
前記底板は、前記底板の外周側に位置すると共に上方向に向かって突出し、前記胴板の内周面と接する外周側突出部と、
前記外周側突出部から内周側に向かって伸びた平端部と、前記平端部の内周側に位置し、前記平端部から上方向に向かって突出した内周側突出部と、を備えたことを特徴とする特徴とする洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
洗濯槽を縦に置いた洗濯機は、洗濯槽の底板に回転翼を設け、この回転翼を正逆回転させて洗濯を行っている。回転翼は底板に対して回転可能に支持されているので、回転翼と底板との隙間から底板に異物が侵入しないような対策が必要である。この対策として、底板と対面する回転翼の外周部に、底板側に向かって突出したリブを設け、このリブを底板側に近付けて回転翼と底板との隙間を小さくするようにしている。このような技術として、例えば特許文献1に記載の技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に回転翼は樹脂で成型されている。樹脂成型品は、成形条件や温度環境によって寸法ばらつきが生じ易い。そのため、回転翼と底板との隙間が設計寸法よりも大きくなり、コイン等の異物が侵入し易くなる。特許文献1に記載の技術においては、回転翼と底板との隙間の寸法ばらつきの対策については考慮されていなかった。
【0005】
本発明の目的は、上記課題を解決し、回転翼と底板との隙間の寸法ばらつきが生じた場合であっても、回転翼と底板との隙間からの異物の侵入を抑制する洗濯機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために本発明は、筒状の胴板と、前記胴板の底部を覆う底板とから構成された洗濯槽と、前記底板に配置された回転翼と、前記洗濯槽を内包し洗濯水を溜める外槽と、前記洗濯槽および前記回転翼を回転駆動する駆動部と、を備えた洗濯機であって、前記回転翼の外周部には、外周側に向かって突出し、前記底板と対向する異物侵入抑制リブを備え、前記異物侵入抑制リブは、前記回転翼の外周部の最下部に位置させたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、回転翼と底板との隙間の寸法ばらつきが生じた場合であっても、回転翼と底板との隙間からの異物の侵入を抑制した洗濯機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態に係る回転翼が搭載される洗濯機を示す右側縦断面図である。
【
図4】
図3のIV-IV線で切断した回転翼の断面図である。
【
図6】
図5のVI-VI線で切断した回転翼の断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態(以下「実施形態」という)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下では、洗濯、すすぎ、脱水、乾燥を行うことができる洗濯機S(いわゆる、縦型の洗濯乾燥機)を例に挙げて説明する。
【0010】
図1は、本実施形態に係る回転翼が搭載される洗濯機を示す右側縦断面図である。
図1に示すように、洗濯機Sは、筐体の外枠1、洗濯水を貯留する外槽2、洗濯兼脱水槽3(洗濯槽)、回転翼4(パルセータ)、および駆動モータ(駆動部)10を備えている。外枠1は、板金(鉄板)をプレス加工等によって四角筒状に形成したものである。また、外枠1の下部には、合成樹脂製のベース32が設けられている。また、外枠1の上部には、合成樹脂製のトップカバー(上板)6が設けられている。なお、図示していないが、外枠1の内部は、補強部材を用いて外枠1が補強されている。また、ベース32は、内部に格子状のリブなどを設けて補強されている。
【0011】
外槽2は、合成樹脂製であり、有底略円筒状を呈し、外枠1内の中央において、防振装置(不図示)を介して支持されている。外槽2は、洗濯兼脱水槽3を内包する。防振装置は、バネや弾性ゴムからなり、外枠1内の上部から外槽2を吊り下げ支持している。
【0012】
洗濯兼脱水槽(洗濯槽)3は、上下方向が開放された筒状の胴板30と、開放された胴板30の底部を覆う底板31とから構成され、洗濯、脱水、乾燥される洗濯物(衣類)を収容する有底円筒形状を有する。胴板30は、ステンレス等の金属により構成され、底板31は合成樹脂等で構成されている。洗濯兼脱水槽3は、胴板30の折り曲げ部30aを底板31の固定部31aに固定して構成されている(
図7参照)。また、洗濯兼脱水槽3は、回転軸が略鉛直方向を向いている。また、洗濯兼脱水槽3は、外槽2の内部中央に設けられ、外槽2内において回転可能に支持される。また、洗濯兼脱水槽3の胴板30は、その外周壁に通水および通風のための多数の小さな貫通孔3a(
図1では一部のみ図示)を有している。また、洗濯兼脱水槽3の底板31は、通水および通風のための複数の貫通孔3bを有している。また、洗濯兼脱水槽3の上縁部には、流体バランサー3cを備えている。また、洗濯兼脱水槽3の底部(底板31)には、洗濯水を攪拌して、洗いやすすぎなどを行う回転翼4が回動可能に設けられている。
【0013】
回転翼4は、洗濯兼脱水槽3の底板31の中央に回転可能に配置されており、洗濯運転時および乾燥運転時に、正転/逆転を繰り返す動作が行われる。
【0014】
駆動モータ10は、外枠1内に設けられ、回転翼4および洗濯兼脱水槽3を選択的に回転駆動する。また、駆動モータ10は、例えばDCブラシレスモータが使用される。DCブラシレスモータは、ベクトル制御によって制御が行われる。また、駆動モータ10は、回転翼4および洗濯兼脱水槽3をダイレクトドライブするものであってもよく、ベルトなどの減速機構を用いて駆動してもよい。
【0015】
外枠1の上部には、開閉可能な外蓋5が設けられている。外蓋5は、外枠1の上部に設けられたトップカバー6に後側が軸支持されている。外槽2の上部には、外蓋5の下方に、内蓋34が後側の軸周りに開閉可能に設けられている。洗濯兼脱水槽3に対する洗濯物の出し入れは、外蓋5および内蓋34を開くことで行われる。
【0016】
外枠1内には、トップカバー6の外蓋5の後側に、給水ユニット7が設けられている。給水ユニット7は、内部に複数の水路を有する給水ボックス(図示せず)を有している。給水ユニット7は、トップカバー6から上方に突き出る給水ホース接続口8から供給される。この給水ホース接続口8から水道水や風呂水が供給され、外槽2の内部に注がれる。また、トップカバー6の前側には、洗剤および仕上剤の投入装置35が設けられている。洗剤および仕上剤は、投入ホース36により、外槽2と洗濯兼脱水槽3の間に注がれる。
【0017】
また、洗濯機Sは、洗濯物を乾かす乾燥機構9を備えている。乾燥機構9は、洗濯兼脱水槽3内の洗濯物を乾燥する乾燥用空気の循環送風や除湿を行う。乾燥機構9は、大部分が乾燥用空気循環路で占められている。乾燥用空気循環路は、外槽2の底部に連通する底部循環路20と、底部循環路20から上向きに延びる除湿用縦通路21とを備える。
【0018】
また、乾燥機構9は、洗濯機Sの乾燥運転において、乾燥風を作る送風機22およびヒータ(不図示)を有する。送風機22の下部の吸込側は、除湿用縦通路21の上端部に接続される。送風機22と除湿用縦通路21の間には乾燥フィルタ54が配置され、送風機22に異物が流入しないようになっている。送風機22の前部の排出側は、戻り接続循環路25と接続され連通している。戻り接続循環路25は、その一部の上部蛇腹ホース23を介して、外槽2の上部に連通する。戻り接続循環路25には、乾燥風を洗濯兼脱水槽3内に吐出する吐出口23aが形成されている。吐出口23aからは、
図1において矢印で示すように、乾燥風が上部蛇腹ホース23から洗濯兼脱水槽3内に鉛直方向下方に向けて吐出され、回転翼4の外周領域に吹き付けられる。
【0019】
底部循環路20は、その一部の下部蛇腹ホース26を介して、外槽2の底部に連通している。下部蛇腹ホース26は、外槽2の底落込部27に接続されている。底落込部27は、排水時のみ開弁される常閉型の排水弁53を介して、排水用の洗濯水排水路52に連通する。
【0020】
排水弁53は、洗濯運転時や乾燥運転時には閉じられている。排水弁53は、洗濯水を排水する排水時に開いて、外槽2に溜まっている洗濯水や濯ぎ水を、洗濯水排水路52から洗濯機Sの外部(機外)に排出する。
【0021】
洗濯機Sは、外槽2に溜まる洗濯水や濯ぎ水の水位を検知する水位センサ55を備えている。外槽2の底部近傍にはエアートラップ50が設けられている。エアートラップ50に連通してエアーチューブ56が接続されており、このエアーチューブ56の上端には水位センサ55が連通して接続される。
【0022】
外槽2に溜まる洗濯水や濯ぎ水は、循環水路51a、61aから循環水路51b、61bに流入し、循環水路51b、61b内を上方へ向かって流れる。循環水路51bを上昇した洗濯水は、糸屑が糸屑フィルタ33で取り除かれ、洗濯兼脱水槽3内に入る。一方、循環水路61bを上昇した洗濯水は、スリット状の吐出口61cから洗濯兼脱水槽3内の中央付近にシャワー状に散水される。
【0023】
次に、本実施形態に係る洗濯機Sの洗濯運転および乾燥運転における動作について説明する。
【0024】
洗い工程では、まず、給水ユニット7が、投入装置35に給水することで、洗剤と水道水等が外槽2内に供給される。そして、固体洗剤は水道水等で溶かされ、液体洗剤は水道水等で希釈され、高濃度洗剤液が生成される。このとき、必要に応じて、駆動モータ10が回転翼4を回転し、第1羽根43および第2羽根44による水流を発生させることで、高濃度洗剤液を生成しても良い。給水ユニット7は、回転翼4の下面(裏面)の第1羽根43および第2羽根44が浸かる程度の第1水位になると、給水を停止する。なお、第1水位は、回転翼4の上面を超えない低い水位が望ましいが、回転翼4の上面を僅かに超える水位であっても良い。
【0025】
第1水位において駆動モータ10が回転翼4を回転させると、外槽2の底に溜まっている高濃度洗剤液が、循環水路51b、61bを上方へ向かって流れ、洗濯兼脱水槽3内に供給される。このように、高濃度洗剤液を洗濯物に降り掛けるように循環させながら、回転翼4を正逆方向に交互に回転させて隆起部40aが洗濯物に上向きの力を繰り返し作用させることによって押し洗いする(前洗い)。その後、給水ユニット7が、第1水位より高い第2水位になるまで給水し、駆動モータ10が洗濯兼脱水槽3および回転翼4を正逆方向に交互に回転させ、高水位での洗いが行われる(本洗い)。
【0026】
すすぎ工程では、洗い工程と同様に、外槽2の底部に溜まるように給水した濯ぎ水を洗濯物に降り掛けるように循環させながら回転翼4を正逆方向に回転させて、洗濯物に含まれる洗剤成分を取り除く、すすぎを行う。脱水工程では、駆動モータ10が洗濯兼脱水槽3および回転翼4を一方向(逆回転の向き)に高速回転させることで、洗濯物に含まれる水分が遠心力によって脱水される。この脱水工程が終了すると、洗濯運転から乾燥運転に移行する。乾燥運転では、回転翼4を正逆方向に回転させながら外槽2内の空気を吸い出して水冷除湿した後に加熱して洗濯兼脱水槽3内に吹き込むように循環させて洗濯物を乾燥させる。
【0027】
ここで、
図2および
図3を用いて、回転翼4の上面側の形状について、詳細に説明する。
図2は、回転翼の上面側の形状を示す斜視図である。
図3は、回転翼の上面図である。回転翼4の上面側の形状は、前述した洗濯運転および乾燥運転において、洗濯物の動きに影響を与える。
【0028】
図2および
図3に示すように、回転翼4の翼ベース40の上面には、回転翼4の中心周辺から外径側へ延びる4つの隆起部40aと、周方向に隣り合う隆起部40aの間に位置する4つの谷部40bと、が形成されている。本実施形態では、隆起部40aおよび谷部40bをそれぞれ4つとした回転翼4の例を示すが、隆起部40aおよび谷部40bの個数は4つに限定されない。
【0029】
隆起部40aは、周方向について相対的に高い稜線40a1と、その周方向両側にあって連続的に下る凸状傾斜面40a2と、を有している。このため、回転翼4が回転すると、凸状傾斜面40a2によって、回転翼4上に載っている洗濯物に上向きの分力が繰り返し作用する。
【0030】
谷部40bは、隆起部40aと比べて相対的に低い凹状傾斜面(谷状の凹曲面)を有しており、径方向の中央部分が低く、内径側部分と外径側部分が高い、所謂お椀状となっている。また、谷部40bは、通水および通風のために翼ベース40を上下に貫通する多数の第2貫通孔40b1も有している。ここで、第2貫通孔40b1は、隆起部40aに形成しないことで、洗濯物との引っ掛かりを抑えることができ、洗濯物の布痛みを軽減できる。
【0031】
洗い工程時に回転翼4が回転すると、隆起部40aの凸状傾斜面40a2によって洗濯物が押し上げられる。このときに押し上げられた洗濯物が落下するときのたたき洗い効果と、回転翼4と洗濯物との間の摩擦力によるこすり洗い効果により洗浄力が向上する。また、乾燥運転時に回転翼4が回転すると、隆起部40aの凸状傾斜面40a2により、洗濯物が押し上げられ、上下の洗濯物の入れ替わりが促進される。この洗濯物の入れ替わりにより、洗濯物の乾燥むらが低減する。
【0032】
なお、本実施形態では、隆起部40aと谷部40bとが、それぞれ回転中心に対して点対称に設けられている。そのため、回転翼4を正回転させても逆回転させても、洗濯物の動きが変わらないので、布絡みや布片寄りが生じ難く、洗いむらや布傷みを抑制できる。
【0033】
図4は、
図3のIV-IV線で切断した回転翼の断面図である。
図4に示すように、回転翼4は、その回転中心の周辺に、上方へ膨出する膨出部41を有しており、膨出部41の内部には、駆動モータ10の動力により回転する軸を支持する軸受42が形成されている。また、翼ベース40の下面には、突条部を成す(リブ状の)裏羽根として、第1羽根43、第2羽根44および第3羽根45が形成されている。各羽根は下方へ突出し、その下端は、略同一平面上に位置している。これらの裏羽根は、回転翼4の強度を補強する役割を果たすとともに、特に第1羽根43および第2羽根44は、洗い工程およびすすぎ工程において、外槽2の底部に溜まった洗剤液や濯ぎ水に水流を発生させる役割も果たす。
【0034】
また、回転翼4の翼ベース40の外周部46には、径方向外側に向かって突出し、底板31と対向する異物侵入抑制リブ47が形成されている。異物侵入抑制リブ47の構成については後述する。
【0035】
以下、
図5、
図6を用いて、回転翼4の下面側の形状について説明する。
図5は、回転翼の下面側の形状を示す斜視図である。
図6は、
図5のVI-VI線で切断した回転翼の断面斜視図である。
【0036】
第1羽根43は、径方向に延びる裏羽根であり、軸受42の外径端よりも径方向外側に複数設けられ、翼ベース40の強度を向上させている。さらに、第1羽根43は、洗い工程等において、回転翼4の回転に伴い、外槽2の底部に溜まった洗剤液等を主に外径側に押し出し、その勢いで循環水路51b、61bを経由して、洗濯兼脱水槽3内に洗剤液等を供給する。なお、本実施形態では、第1羽根43が周方向に6枚形成された回転翼4の例を示すが、第1羽根43の枚数は6枚に限定されるものではない。
【0037】
また、周方向に隣り合う第1羽根43の間には、翼ベース40を上下に貫通する複数の第1貫通孔40cが形成されている。この第1貫通孔40cにより、周方向に隣り合う第1羽根43の間に、洗剤液等が流れ込みやすくなり、洗剤液等を外径側に押し出す勢いも強くなるので、洗剤液等の循環流量の増大に寄与する。
【0038】
第2羽根44は、径方向に延びる裏羽根であり、第1羽根43と異なる(径方向にずれた)位置、具体的には、第1羽根43の外径端よりも径方向外側に設けられ、翼ベース40の強度を向上させている。第2羽根44も、洗い工程等において、回転翼4の回転に伴い、外槽2の底部に溜まった洗剤液等を主に外径側に押し出し、その勢いで循環水路51b、61bを経由して、洗濯兼脱水槽3内に洗剤液等を供給する。特に、翼ベース40の上面に形成される谷部40bが、前述したように所謂お椀状であるため、第2羽根44の下方への突出量は、外径端において内径側よりも大きくなる。このため、第1羽根43によって外径側に押し出された洗剤液等が、さらに外径側にかき出され易く、循環水路51b、61bへ導かれ易くなっている。
【0039】
第3羽根45は、周方向に延びる裏羽根であり、同心円状に複数設けられ、翼ベース40の強度を向上させている。また、第3羽根45は、第1羽根43と軸受42との境界に設けられた内径側の羽根45aと、第1羽根43と第2羽根44の境界に設けられた外径側の羽根45bと、さらにその外径側に設けられた羽根と、で構成されている。
【0040】
ここで、第1羽根43も第2羽根44も、前述したように、外槽2の底部に溜まった洗剤液等を循環させる役割を果たすが、第2羽根44は鉛直方向下方に突出しているのに対して、第1羽根43は鉛直方向に対して傾斜して下方に突出している点で、異なっている。また、第1羽根43の上端面には、外径側に向けて低くなる段差が形成されている。
【0041】
本実施形態では、特に、下方から見て時計回り(逆回転の向き、
図4の矢印の向き)に回転翼4が回転するとき、第1羽根43が洗剤液等を外径側に押し出す勢いがより強くなり、第2羽根44による押し出す勢いとの相乗効果で、中心付近から外径側に向かう洗剤液等の流れが格段に大きくなる。その結果、循環水路51b、61bを経由して洗濯兼脱水槽3内に循環する洗剤液等の流量が増加し、洗浄力が向上する。また、下方から見て反時計回り(正回転の向き)に回転翼4が回転するときは、翼ベース40の下面から上面に向かう力が洗剤液等に作用するが、第1貫通孔40cを通る流れと第2貫通孔40b1を通る流れにより、外槽2の底部に溜まった洗剤液等の流れ全体が活性化し、洗浄力が向上する。したがって、洗い工程およびすすぎ工程において回転翼4の回転数を変えずに費やす時間だけを短くしても、一定の洗浄力を維持できる。すなわち、洗い工程等において回転翼4が回転する時間を短くできるので、洗濯物どうしが擦れる時間も短くでき、布傷みを低減し、糸くずの発生量を少なくすることが可能である。
【0042】
また、本実施形態では、第2羽根44や第3羽根45だけでなく第1羽根43も、翼ベース40と一体に形成されているので、部品点数や組み立て工数が増加することはない。第1羽根43を翼ベース40に固定するネジ穴も不要であるため、隣り合う第1羽根43の間の隙間を大きくでき、第1貫通孔40cの数や大きさを増やすことが可能となり、発生する水流を強くできる。
【0043】
ここで、第1羽根43は、第3羽根45のうち内径側の羽根45aと外径側の羽根45bとの間を径方向に接続しているので、前述のように第1貫通孔40cの総面積を大きくした場合でも、翼ベース40の強度を保つことができる。
【0044】
さらに、本実施形態の第1羽根43は、谷部40bが存在する領域よりも径方向内側にある膨出部41に形成されるので、下方への突出量を大きくできる。その結果、翼ベース40の強度がより向上し、発生する水流がより強くなる。
【0045】
一般的に回転翼は樹脂で成型されている。樹脂成型品は、成形条件や温度環境によって寸法ばらつきが生じ易い。そのため、回転翼と底板との隙間が設計寸法よりも大きくなり、コイン等の異物が侵入し易くなる。これを抑制するための手段について以下説明する。
【0046】
図7は、
図1のVII部の拡大詳細図である。
図7では、胴板30、底板31、回転翼4の関係を示している。
図8は、
図7に対する比較例を示す図である。
【0047】
胴板30は、下端部を内周側に折り曲げた折り曲げ部30aを備えている。底板31は、折り曲げ部30aと接して胴板30を固定する固定部31aを備えている。
【0048】
底板31は、底板31の外周側に位置すると共に上方向に向かって突出し、胴板30の内周面と接する外周側突出部31bと、外周側突出部31bから内周側に向かって伸びた平端部31cと、平端部31cの内周側に位置し、平端部31cから上方向に向かって突出した内周側突出部31dと、内周側突出部31dから下方に向かって伸び、下端部が平端部31cよりも下方に位置する第1内周壁31eと、第1内周壁31eの下端部から内周側に向かって伸びた溝部31fと、溝部31fから上方に向かって突出した堰部31gと、堰部31gの内周側に位置し堰部31gから下方に向かって伸びた第2内周壁31hを備えている。また、堰部31gは、上下方向において異物侵入抑制リブ47と重なるように配置している。
【0049】
回転翼4の外周部46の下端部(最下部)には、回転翼4の径方向外側(外周側)に向かって突出した異物侵入抑制リブ47が形成されている。異物侵入抑制リブ47は、回転翼4の外周全体に亘って形成されている。また、異物侵入抑制リブ47は、底板31の固定部31aの位置P1よりも下方であって、底板31の第1内周壁31eと対向するように配置されている。
【0050】
異物侵入抑制リブ47の外周端部と第1内周壁31eとの間には、回転翼4の回転を許容するために、所定のギャップG1が設けられている。ギャップG1は、異物の侵入を抑制するために、通常3mm~4mm程度に設定されている。
【0051】
また、異物侵入抑制リブ47の下端部と堰部31gの上端部との間には、回転翼4の回転を許容するために、所定のギャップG2が設けられている。ギャップG2は、異物の侵入を抑制するために、通常5mm~6mm程度に設定されている。
【0052】
洗濯兼脱水槽3に衣類を投入し洗濯を行うと、衣類のポケット等から出し忘れたコイン70が飛び出し、洗濯兼脱水槽3の下方に落下する。洗濯兼脱水槽3の下方に落下したコイン70は、回転翼4の遠心力により外周側に移動し、異物侵入抑制リブ47の外周端部と第1内周壁31eとの間(ギャップG1)に落下する。さらにコイン70は、異物侵入抑制リブ47の下端部と堰部31gの上端部との間(ギャップG2)を通って、第2内周壁31h側に移動しようとする。
【0053】
異物侵入抑制リブ47の外周端部と第1内周壁31eとの間(ギャップG1)に落下したコイン70は、
図7に示すように長手方向が上下を向くようになる。この時、コイン70の上部は内周側突出部31dと接し、下部は堰部31gと接する。さらに、コイン70は、内周側突出部31dと堰部31gの間に位置する部分が異物侵入抑制リブ47の外周端部と接する。この時の垂線に対するコイン70の傾きをθ1とすると、傾きθ1が小さい程、コイン70は異物侵入抑制リブ47の下端部と堰部31gの上端部との間(ギャップG2)を通り難くなる。本実施形態では、θ1を8°~10°にしている。θ1を小さくするためには、コイン70と接する異物侵入抑制リブ47の外周端部の位置を下方にすることが有効である。
【0054】
本実施形態では、回転翼4の外周部46の下端部に、外周側に向かって突出した異物侵入抑制リブ47を備えるようにしているので、垂線に対するコイン70の傾きθ1を小さくでき、コイン70が異物侵入抑制リブ47の下端部と堰部31gの上端部との間(ギャップG2)を通過するのを抑制することができる。
【0055】
さらに、本実施形態では、底板31の内周側に溝部31fと堰部31gを設けているので、コイン70の下端部は溝部31fに入り込み、また堰部31gによってコイン70の下端部の移動が規制される。この結果、コイン70が異物侵入抑制リブ47の下端部と堰部31gの上端部との間(ギャップG2)を通過するのを抑制することができる。
【0056】
図8は、
図7に対する比較例を示す図である。
図7と同一の構成については同一の符号を付している。
図8では、
図7に対し回転翼4の形状が異なる。
【0057】
図8では、回転翼4の外周部46sの上端部に、外周側に向かって突出した異物侵入抑制リブ47sが形成されている。異物侵入抑制リブ47sは、回転翼4の外周全体に亘って形成されている。
【0058】
異物侵入抑制リブ47sの外周端部と第1内周壁31eとの間には、回転翼4の回転を許容するために、所定のギャップG3が設けられている。ギャップG3は、
図7のギャップG1と同一である(ギャップG3=ギャップG1)。
【0059】
また、異物侵入抑制リブ47sの下端部と堰部31gの上端部との間には、回転翼4の回転を許容するために、所定のギャップG4が設けられている。ギャップG4は、ギャップG2と同一である(ギャップG4=ギャップG2)。
【0060】
図7の本実施形態と
図8の比較例では、異物侵入抑制リブ47,47sの高さ方向の位置が異なる。
図8の比較例では、底板31の固定部31aの位置P2と同じ高さに異物侵入抑制リブ47sが配置されている。
【0061】
図8の比較例では、本実施形態と比較して、コイン70と接する異物侵入抑制リブ47sが高い位置に配置されているため、垂線に対するコイン70の傾きをθ2が12°~13°となり、本実施形態でのコイン70傾きθ1より大きくなっている(傾きθ2>傾きθ1)。
【0062】
このため、
図8の比較例では、コイン70の下端部が堰部31gの上部に位置することになるので、成形条件や温度環境による寸法ばらつきでギャップG3が大きくなると、異物侵入抑制リブ47sの下端部と堰部31gの上端部との間(ギャップG4)からコイン70が落下する恐れがある。
【0063】
これに対し、本実施形態では、回転翼4の外周部46の下端部に、外周側に向かって突出した異物侵入抑制リブ47を備えるようにしているので、垂線に対するコイン70の傾きθ1を小さくでき、コイン70が異物侵入抑制リブ47の下端部と堰部31gの上端部との間(ギャップG2)を通過するのを抑制することができる。
【0064】
なお、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前述した実施形態では、乾燥機構を備える洗濯乾燥機について説明したが、乾燥機構を備えない全自動洗濯機に対しても適用できる。
【符号の説明】
【0065】
S…洗濯機、1…外枠、2…外槽、3…洗濯兼脱水槽(洗濯槽)、3a…貫通孔、3b…貫通孔、3c…流体バランサー、4…回転翼、5…外蓋、6…トップカバー、7…給水ユニット、8…給水ホース接続口、9…乾燥機構、10…駆動モータ(駆動部)、20…底部循環路、21…除湿用縦通路、22…送風機、23…上部蛇腹ホース、23a…吐出口、25…戻り接続循環路、26…下部蛇腹ホース、27…底落込部、30…胴板、30a…折り曲げ部、31…底板、31a…固定部、31b…外周側突出部、31c…平端部、31d…内周側突出部、31e…第1内周壁、31f…溝部、31g…堰部、31h…第2内周壁、32…ベース、33…糸屑フィルタ、34…内蓋、35…投入装置、36…投入ホース、40…翼ベース、40a…隆起部、40a1…稜線、40a2…凸状傾斜面、40b…谷部、40b1…第2貫通孔、40c…第1貫通孔、41…膨出部、42…軸受、43…第1羽根、44…第2羽根、45…第3羽根、45a…内径側の羽根、45b…外径側の羽根、46…外周部、46s…外周部、47…異物侵入抑制リブ、47s…異物侵入抑制リブ、50…エアートラップ、51a…循環水路、51b…循環水路、52…洗濯水排水路、53…排水弁、54…乾燥フィルタ、55…水位センサ、56…エアーチューブ、61a…循環水路、61b…循環水路、61c…吐出口、70…コイン