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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123537
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/49 20060101AFI20240905BHJP
   A61F 13/514 20060101ALI20240905BHJP
   A61F 13/51 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
A61F13/49 315A
A61F13/49 413
A61F13/514 211
A61F13/514 213
A61F13/514 220
A61F13/51
A61F13/514 400
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031043
(22)【出願日】2023-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石橋 京子
(72)【発明者】
【氏名】犹守 沙耶香
(72)【発明者】
【氏名】川口 宏子
(72)【発明者】
【氏名】松久 誠
(72)【発明者】
【氏名】鹿谷 智也
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200BA05
3B200BA07
3B200BA11
3B200BA12
3B200BB03
3B200BB09
3B200BB30
3B200CA02
3B200CA09
3B200DA01
3B200DA02
3B200DA15
3B200DA21
3B200DA25
3B200DD09
(57)【要約】
【課題】本発明は、脚周りにおけるフィット性及び防漏性を高めつつ、ムレや肌トラブルを防止することが可能な吸収性物品に関する。
【解決手段】本発明に係る吸収性物品は、着用者の脚周りに配置されるレッグ開口部に沿って配置された、伸縮性のレッグギャザー部をさらに備える。レッグギャザー部は、非肌側に配置された第1不織布層と、第1不織布層と厚み方向に対向し肌側に配置された第2不織布層と、第1不織布層及び第2不織布層の間に配置され、透湿性フィルムで構成されたフィルム層と、外側弾性部材を含む外側伸縮領域と、内側弾性部材を含み外側伸縮領域よりも横方向内側に配置された内側伸縮領域と、を有する。フィルム層は、側端部が肌側に捲れた端部領域を有する。端部領域は、外側伸縮領域と内側伸縮領域との間に配置される。内側伸縮領域の装着圧は、外側伸縮領域の装着圧よりも低い。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の腹周りに配置されるウエスト開口部と、前記着用者の脚周りに配置される一対のレッグ開口部と、を備え、かつ、前記着用者の腹側から股間部を通って背側に延びる縦方向と、前記縦方向に直交し前記着用者の左右方向に対応する横方向と、前記縦方向及び前記横方向に直交する厚み方向と、を有する吸収性物品であって、
前記吸収性物品は、
前記レッグ開口部に沿って配置された、伸縮性のレッグギャザー部をさらに備え、
前記レッグギャザー部は、
非肌側に配置された第1不織布層と、
前記第1不織布層と前記厚み方向に対向し、肌側に配置された第2不織布層と、
前記第1不織布層及び前記第2不織布層の間に配置され、透湿性フィルムで構成されたフィルム層と、
前記第1不織布層及び前記第2不織布層の間に配置されて前記縦方向に延びる外側弾性部材を含む外側伸縮領域と、
前記第1不織布層及び前記第2不織布層の間に配置されて前記縦方向に延びる内側弾性部材を含み、前記外側伸縮領域よりも前記横方向内側に配置された内側伸縮領域と、を有し、
前記フィルム層は、
前記透湿性フィルムの前記横方向における側端部が肌側に捲れた端部領域を有し、
前記端部領域は、前記外側伸縮領域と前記内側伸縮領域との間に配置され、
前記内側伸縮領域の装着圧は、前記外側伸縮領域の装着圧よりも低い
吸収性物品。
【請求項2】
前記フィルム層は、前記第1不織布層及び前記第2不織布層と非連続的に接合されており、
前記端部領域は、前記第1不織布層及び前記第2不織布層と接合されていない
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記フィルム層は、
前記端部領域を含み、前記第1不織布層及び前記第2不織布層と接合されていない端部側非接合部を有し、
前記端部側非接合部の前記横方向における幅は、2mm以上である
請求項2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記フィルム層は、
前記端部領域よりも前記横方向内側に配置された着色部を含む
請求項1から3のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記着色部は、マンセル表色系においてBG(シアン)、B(青)、又はBP(紫)の少なくとも一つの色相で表される色を含む
請求項4に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記吸収性物品は、さらに、
前記着用者の腹側に配置される腹側領域と、
前記着用者の背側に配置される背側領域と、
前記腹側領域と前記背側領域の間に配置される股下領域と、を備え、
前記端部領域は、
前記腹側領域と前記背側領域とを分離して前記吸収性物品を平面状に展開した場合に、前記レッグ開口部の前記縦方向端部よりも前記縦方向において前記ウエスト開口部側まで延びる
請求項1から5のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記内側伸縮領域の前記横方向における幅は、前記外側伸縮領域の前記横方向における幅よりも広い
請求項1から6のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記内側伸縮領域に含まれる前記内側弾性部材の本数は、前記外側伸縮領域に含まれる前記外側弾性部材の本数よりも多い
請求項7に記載の吸収性物品。
【請求項9】
前記内側伸縮領域は、複数の内側弾性部材を含み、
前記外側弾性部材の装着圧は、前記複数の内側弾性部材各々の装着圧のうちの最大装着圧よりも高い
請求項7又は8のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項10】
前記内側弾性部材及び前記外側弾性部材各々の装着圧は、前記横方向において最も内側に配置された前記内側弾性部材から前記横方向において最も外側に配置された前記外側弾性部材に向かって、前記横方向に沿って順に高くなるように設定される
請求項9に記載の吸収性物品。
【請求項11】
前記透湿性フィルムは、複数の微細孔を有する
請求項1から10のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項12】
前記透湿性フィルムの透湿度は、2.7g/100cm・h以上12g/100cm・h以下である
請求項11に記載の吸収性物品。
【請求項13】
前記透湿性フィルムでは、
0.06μm以上0.16μm以下の範囲の細孔径を有する前記微細孔の単位質量当たりの細孔容量が、2.5μm以上3.5μm以下の範囲の細孔径を有する前記微細孔の単位質量当たりの細孔容量よりも大きい
請求項11又は12に記載の吸収性物品。
【請求項14】
前記透湿性フィルムは、前記微細孔に隣接して配置された無機微粒子を有し、
前記透湿性フィルムでは、前記厚み方向から見た平面視において、
0.01μm以上0.5μm以下の大きさの前記無機微粒子に隣接して配置される前記微細孔の細孔径が、1.0μm以上1.5μm以下の大きさの前記無機微粒子に隣接して配置される前記微細孔の細孔径よりも小さい
請求項11から13のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項15】
前記透湿性フィルムでは、前記厚み方向から見た平面視において、
0.01μm以上0.5μm以下の大きさの前記無機微粒子の単位面積当たりの粒子数は、0.5μm以上2.0μm未満の大きさの前記無機微粒子の単位面積当たりの粒子数よりも少なく、かつ、
2.0μm以上の前記無機微粒子の単位面積当たりの粒子数は、0.5μm以上2.0μm未満の大きさの前記無機微粒子の単位面積当たりの粒子数よりも少ない
請求項14に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨ておむつ等の吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつ等の吸収性物品は、例えば、着用者の腹周りに配置されるウエスト開口部と、着用者の脚周りに配置される一対のレッグ開口部と、を有する。着用時のフィット性や防漏性を高める観点から、レッグ開口部に沿って弾性部材を配置し、レッグギャザーを形成する技術が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、サイドシートと、サイドシートに積層されたプラスチックフィルムと、それらの間に配置されたレッグ弾性体と、を有し、レッグ開口の一部を構成するサイドフラップを備えたパンツ型吸収性物品が開示されている。また、特許文献2には、立体ギャザー部形成用シート及び撥水性フィルムを含み、当該撥水性フィルムが配置されていない端部に弾性部材が挟持された外側立体ギャザー部を備えた吸収性物品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-92947号公報
【特許文献2】特開2013-252323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
レッグギャザーにフィルムが配置されることで、レッグギャザーにおける防漏性が高められる。その一方で、フィルムは不織布等と比較して透湿性や通気性が低くなりやすい。このため、フィルムを含むレッグギャザーにおいて、フィット性や防漏性向上のために装着圧を高めると、ムレやそれに伴う肌トラブルが懸念される。
【0006】
本発明は、脚周りにおけるフィット性及び防漏性を高めつつ、ムレや肌トラブルを防止することが可能な吸収性物品に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態に係る吸収性物品は、着用者の腹周りに配置されるウエスト開口部と、前記着用者の脚周りに配置される一対のレッグ開口部と、を備え、かつ、前記着用者の腹側から股間部を通って背側に延びる縦方向と、前記縦方向に直交し前記着用者の左右方向に対応する横方向と、前記縦方向及び前記横方向に直交する厚み方向と、を有する。
前記吸収性物品は、
前記レッグ開口部に沿って配置された、伸縮性のレッグギャザー部をさらに備える。
前記レッグギャザー部は、
非肌側に配置された第1不織布層と、
前記第1不織布層と前記厚み方向に対向し、肌側に配置された第2不織布層と、
前記第1不織布層及び前記第2不織布層の間に配置され、透湿性フィルムで構成されたフィルム層と、
前記第1不織布層及び前記第2不織布層の間に配置されて前記縦方向に延びる外側弾性部材を含む外側伸縮領域と、
前記第1不織布層及び前記第2不織布層の間に配置されて前記縦方向に延びる内側弾性部材を含み、前記外側伸縮領域よりも前記横方向内側に配置された内側伸縮領域と、を有する。
前記フィルム層は、
前記透湿性フィルムの前記横方向における側端部が肌側に捲れた端部領域を有する。
前記端部領域は、前記外側伸縮領域と前記内側伸縮領域との間に配置される。
前記内側伸縮領域の装着圧は、前記外側伸縮領域の装着圧よりも低い。
【発明の効果】
【0008】
本発明の吸収性物品によれば、脚周りにおけるフィット性及び防漏性を高めつつ、ムレや肌トラブルを防止することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る吸収性物品(使い捨ておむつ)の斜視図である。
図2】上記使い捨ておむつの平面図であり、各部の弾性部材を伸長させて平面状に広げた状態で、肌側(トップシート側)から見た態様を示す。
図3図2のIII-III線で切断した上記使い捨ておむつの模式的な断面図である。
図4図3の要部拡大図である。
図5】上記実施形態の変形例に係る使い捨ておむつの模式的な断面図であり、図4と同様の位置における要部拡大図である。
図6】上記使い捨ておむつに用いられる透湿性フィルムの拡大平面図であり、(A)は不均一に延伸された透湿性フィルムの例を示し、(B)は均一に延伸された透湿性フィルムの例を示す。
図7】上記透湿性フィルムの細孔径分布の一例を示すグラフであり、横軸は細孔径(μm)、縦軸は細孔容量(ml/g)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、以下の実施形態では、本発明に係る吸収性物品がパンツ型使い捨ておむつとして構成される例を挙げる。但し、本発明の吸収性物品はこれに限定されず、例えば、展開型使い捨ておむつ、生理用物品などであってもよい。
【0011】
[使い捨ておむつの全体構成]
図1及び図2には、本発明の一実施形態に係る吸収性物品として、パンツ型使い捨ておむつ1が示されている。パンツ型使い捨ておむつ1は、以下、おむつ1と称する。
おむつ1は、縦方向X、横方向Y及び厚み方向Zを有する。縦方向Xは、着用者の腹側から股間部を通って背側に延びる。横方向Yは、縦方向Xに直交し、着用者の左右方向に対応する。厚み方向Zは、おむつ1の縦方向X及び横方向Yに直交する方向とする。
本開示において、「横方向Y内側」とは、横方向Yにおいて、おむつ1を横方向Yに2等分する縦中心線CL(図2参照)に近づく側を意味し、「横方向Y外側」とは、縦中心線CLから遠ざかる側を意味する。
本開示において、平面視とは、各構成を厚み方向Zから見ることを意味する。なお、本開示において、各構成における肌側とは、使い捨ておむつ着用時の着用者の肌側に位置する側を示す。各構成における非肌側とは、使い捨ておむつ着用時の着用者の肌側とは反対側に位置する着衣側を示す。
【0012】
図1及び図2に示すように、おむつ1は、着用者の腹周りに配置されるウエスト開口部1Wと、着用者の脚周りに配置される一対のレッグ開口部ILと、を備え、着用者の胴回り及び股間部に配置される。
おむつ1は、着用者の腹側に配置される腹側領域Aと、着用者の背側に配置される背側領域Bと、腹側領域A及び背側領域Bの間に配置され、着用者の股間部に配置される股下領域Cと、に区分される。腹側領域A、股下領域C、及び背側領域Bは、縦方向Xに沿って配置されている。
なお、図2は、おむつ1を展開し、各部の弾性部材を伸長させて、弾性部材の影響を一切排除した状態の設計寸法となるように平面状に広げた平面展開形態を示す。おむつ1を展開するとは、腹側領域Aの側縁部A1及び背側領域Bの側縁部B1を分離して展開することを意味する。
【0013】
本実施形態において、おむつ1は、腹側領域Aに配置された腹側外装体6Aと、背側領域Bに配置された背側外装体6Bと、股下領域Cに配置された股下外装体6Cと、を有する。腹側外装体6A及び背側外装体6Bは、それぞれ、横方向Yに延びる帯状に構成され、股下外装体6Cは、縦方向Xに延びる帯状に構成される。腹側外装体6A及び背側外装体6Bは、横方向Yにおける側縁部A1,B1同士が接合されて、ウエスト開口部1Wを形成する。腹側外装体6A及び背側外装体6Bには、横方向Yに延びる複数の弾性部材61が配置され、胴周りギャザーが形成される。また、股下外装体6Cの横方向Y側縁部と、腹側外装体6A及び背側外装体6Bの横方向Y側部とによって、レッグ開口部1Lが形成される。レッグ開口部1Lの近傍には、弾性部材が配置され、後述するレッグギャザー部7が形成される。
【0014】
図3に示すように、おむつ1の股下領域Cは、さらに、股下外装体6Cの他、トップシート2と、吸収体4と、バックシート3と、を有する。股下領域Cは、股下外装体6C、バックシート3、吸収体4及びトップシート2が厚み方向Zに積層された構成を有する。これらの構成は、例えば、ホットメルト接着剤等の接合手段により互いに接合されている。例えば、図3では、股下外装体6C及びバックシート3等に形成された接合部Hの配置例を示している。
【0015】
トップシート2は、おむつ1の肌側表面を形成し、着用者の肌に接するように配置される。トップシート2は、液透過性を有し、例えば合成繊維又は天然繊維を含む不織布等で形成される。トップシート2の材料としては、吸収性物品のトップシートとして使用可能なシート材を適宜用いることができる。
【0016】
吸収体4は、トップシート2とバックシート3の間に配置される。吸収体4は、着用者の尿などの排泄物の水分をトップシート2側の面から吸収し、内部で拡散させて当該排泄物の水分を保持する。
吸収体4は、例えば、吸収性コア40と、コアラップシート41と、を有する。
吸収性コア40は、水分を保持することが可能な吸収性材料を主体として構成される。具体的に、吸収性コア40は、親水性繊維の積繊体、当該積繊体に吸収性ポリマーを担持させた構成、又は吸水性ポリマーのみからなる構成等を有する。
コアラップシート41は、吸収性コア40を被覆し、例えば吸収性コア40の形状を保持する機能等を有する。コアラップシート41は、例えばティッシュペーパー状の薄く柔らかい紙や液透過性の不織布等で形成される。なお、吸収体4は、コアラップシート41を有していなくてもよい。
【0017】
バックシート3は、吸収体4の非肌側に配置される。バックシート3は、防漏性を有していることが好ましく、例えば、液難透過性及び撥水性等の機能を有するシート材で構成される。このようなシート材としては、例えば熱可塑性樹脂のフィルムや、当該フィルムと不織布とのラミネート等からなるシート材等が挙げられる。本実施形態において、バックシート3は、後述する透湿性フィルム30で構成される。なお、図2において、バックシート3(透湿性フィルム30)の配置される領域をグレーで示している。
【0018】
股下外装体6Cは、バックシート3の非肌側に配置される。本実施形態において、股下外装体6Cは、透湿性、通気性及び良好な肌触り等を実現する観点から、不織布で構成される。さらに、股下外装体6Cは、防漏性を付与する観点から、例えば、液難透過性及び撥水性等の機能を有していることが好ましい。なお、腹側外装体6A及び背側外装体6Bも、股下外装体6Cと同様に不織布で構成されることが好ましい。
【0019】
さらに、おむつ1は、一対のサイドシート5を備えることが好ましい。一対のサイドシート5は、トップシート2の横方向Y側部の肌側に配置され、立体ギャザー50を形成する。具体的に、サイドシート5の非肌側の端部は、接着剤又はヒートシール等によって、非肌側の部材(図3の例では股下外装体6C)に接合されている。一方、サイドシート5の肌側の端部は、他の部材に接合されない自由端部として構成され、糸状又は帯状の弾性部材51が配置される。弾性部材51は、縦方向Xに延び、伸長した状態でサイドシート5に取り付けられる。これにより、着用時において、弾性部材51の収縮によってサイドシート5の肌側の端部が肌側に起立し、立体ギャザー50が形成される。サイドシート5は、例えば、液難透過性及び撥水性等の機能を有するシート材で構成され、一例としてこれらの機能を有する不織布で構成される。
【0020】
[レッグギャザー部の構成]
おむつ1は、レッグ開口部1Lに沿って配置された、伸縮性のレッグギャザー部7を有する。レッグギャザー部7は、レッグ開口部1L全体に沿って配置されていてもよいが、図2に示すように、レッグ開口部1Lの一部に沿って配置されていてもよい。図3に示すように、レッグギャザー部7は、例えば、吸収体4の横方向Y外側に配置された股下外装体6C及びバックシート3等を含む。レッグギャザー部7は、排泄物の漏れを防止しつつ、弾性部材による締め付け等によるムレや肌トラブルを抑制できる構成であることが好ましい。以下、レッグギャザー部7の詳細な構成について説明する。なお、図3及び後述する図4においては、一方のレッグギャザー部7を拡大して示しているが、他方のレッグギャザー部7についても同様に構成される。
【0021】
図4に示すように、レッグギャザー部7は、第1不織布層71と、第2不織布層72と、フィルム層73と、外側伸縮領域74と、内側伸縮領域75と、を有する。
第1不織布層71は、非肌側に配置された不織布からなる層である。第1不織布層71は、本実施形態において、股下外装体6Cにより構成される。第1不織布層71は、股下領域Cにおける外表面を構成する。
第2不織布層72は、肌側に配置された不織布からなる層である。第2不織布層72は、図3に示すように、第1不織布層71と同一の不織布で構成されてもよい。この場合、第2不織布層72は、股下外装体6Cのうち、肌側に折り返された部分で構成され得る。
【0022】
フィルム層73は、第1不織布層71及び第2不織布層72の間に配置され、透湿性フィルム30で構成される。本実施形態において、透湿性フィルム30は、バックシート3を構成するフィルム材である。つまり、本実施形態におけるフィルム層73は、バックシート3の横方向Y側部で構成される。
【0023】
フィルム層73を構成する透湿性フィルム30は、排泄物や汗などに由来する水蒸気を外部に放出してムレを抑制する性質を有する。「透湿性」とは、気流移動を伴わず、熱力学の第二法則に従って、高湿度側から低湿度側に水蒸気が拡散する性質を意味する。透湿性は、例えばJIS Z0208に基づいて測定された透湿度の値によって評価することができる。透湿性フィルム30は、上記透湿度の値が、例えば0.5g/100cm・hr以上であることが好ましい。このような透湿性を実現するため、透湿性フィルム30は、複数の微細孔を含んでいることが好ましい。なお、透湿度の詳細な測定方法及び透湿性フィルム30の詳細な構成については、後述する。
【0024】
外側伸縮領域74は、外側弾性部材76を含む領域である。外側伸縮領域74は、フィルム層73と厚み方向Zに重ならないように、例えばフィルム層73の横方向Y外側に配置される。外側弾性部材76は、第1不織布層71及び第2不織布層72の間に配置されて縦方向Xに延びる。外側弾性部材76は、例えば糸状又は帯状のゴム等の細長い弾性部材によって構成される。この場合の「縦方向Xに延びる」とは、厳密に縦方向Xに平行な態様のみならず、全体として縦方向Xに延びる態様を含む。外側伸縮領域74は、少なくとも一つの外側弾性部材76を含んでおり、フィット性を高める観点から、複数の外側弾性部材76を含むことがより好ましい。
【0025】
内側伸縮領域75は、内側弾性部材77を含む領域である。内側伸縮領域75は、フィルム層73と厚み方向Zに重なるように配置される。「フィルム層73と厚み方向Zに重なる」とは、平面展開形態のおむつ1を厚み方向Zから見た平面視において、フィルム層73と厚み方向Zに重なることを意味する。内側弾性部材77は、第1不織布層71及び第2不織布層72の間に配置されて縦方向Xに延びる。内側弾性部材77は、例えば糸状又は帯状のゴム等の細長い弾性部材によって構成される。内側弾性部材77は、図4に例示するように、フィルム層73の非肌側に配置されていてもよく、あるいは図5に例示するように、フィルム層73の肌側に配置されていてもよい。内側伸縮領域75は、少なくとも一つの内側弾性部材77を含んでおり、フィット性を高める観点から、複数の内側弾性部材77を含むことが好ましい。
【0026】
ここで、上記構成のレッグギャザー部7は、不織布と比較して防漏性の高いフィルム層73を有し、かつ外側伸縮領域74及び内側伸縮領域75の2つの伸縮領域を有することで、排泄物の漏れを効果的に防止できる。その一方で、フィルム層73を構成する透湿性フィルム30は透湿性を有するものの、不織布と比較すると透湿性や通気性が低い傾向を有するため、排泄物や汗などに由来する水蒸気がレッグギャザー部7の内側に籠ってムレやすくなる。そこで、本実施形態では、防漏性を維持しつつも通気性及び透湿性を高める観点から、レッグギャザー部7が以下の構成を有する。
【0027】
フィルム層73は、横方向Yにおける端部に形成された端部領域78を有する。端部領域78では、透湿性フィルム30の横方向Yにおける側端部30sが肌側に捲れている。側端部30sは、透湿性フィルム30を平面状に延ばした際の横方向Y側端部を意味する。「側端部30sが肌側に捲れる」とは、側端部30sが透湿性フィルム30の他の部分と接合されずに、肌側に折り返され、又は肌側に立ち上がっていることを意味する。
【0028】
端部領域78は、外側伸縮領域74と内側伸縮領域75との間に配置される。つまり、端部領域78は、外側伸縮領域74の横方向Y内側に位置し、かつ、内側伸縮領域75の横方向Y外側に位置する。このため、端部領域78は、レッグギャザー部7における外側弾性部材76及び内側弾性部材77のいずれとも厚み方向Zに重ならない。
【0029】
さらに、レッグギャザー部7において、内側伸縮領域75の装着圧は、外側伸縮領域74の装着圧よりも低い。装着圧は、着用者に対する接触圧を意味し、例えば以下のように測定される。なお、内側伸縮領域75及び外側伸縮領域74の装着圧は、例えば、弾性部材の繊度、伸長率などによって調整することができる。
(装着圧の測定方法)
周長が320mmの円筒におむつ1のレッグ開口部1L(レッグギャザー部7)を装着し、直径8mmのエアパックを、測定対象となる伸縮領域と円筒との間に挿入する。具体的には、エアパックの中心を、おむつ1の縦方向X中央(股下領域Cに位置する、おむつ1を縦方向Xに2等分する線上)であって、測定対象である伸縮領域の横方向Y中央にセットする。例えば、各伸縮領域が複数の弾性部材を含む場合は、エアパックの中心を各伸縮領域の横方向Y中央の位置にセットする。続いて、装着圧測定装置(株式会社エイエムアイ・テクノ製の接触圧測定器(AMI3037-2))によってエアパックに付加される接触圧を測定することで、各伸縮領域の装着圧を測定する。各伸縮領域の装着圧は、左右両側の測定値(2点)の平均値とする。
【0030】
具体的に内側伸縮領域75の装着圧は、好ましくは0.1kPa以上、より好ましくは0.15kPa以上であり、好ましくは0.60kPa以下、より好ましくは0.50kPa以下である。
外側伸縮領域74の装着圧は、好ましくは0.15kPa以上、より好ましくは0.20kPa以上であり、好ましくは1.00kPa以下、より好ましくは0.80kPa以下である。
外側伸縮領域74の装着圧に対する内側伸縮領域75の装着圧の割合は、好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上であり、好ましくは90%以下、より好ましくは80%以下である。
【0031】
[作用効果]
上記構成のレッグギャザー部7によれば、フィルム層73、外側伸縮領域74及び内側伸縮領域75によって、排泄物の漏れを効果的に抑制することができる。さらに、上記レッグギャザー部7では、フィルム層73の端部領域78が外側伸縮領域74及び内側伸縮領域75の間に位置し、かつ、側端部30sが捲れた構成を有する。端部領域78がこのような構成を有することで、端部領域78において捲れた肌側の透湿性フィルム30と非肌側の透湿性フィルム30との間に空間が形成され、この空間が空気の通路として機能し得る。これにより、外側伸縮領域74及び内側伸縮領域75の間の締め付けが少ない領域に、空気の通路が形成され、レッグギャザー部7内の通気性を高めることができる。加えて、透湿性フィルム30により、湿った空気を外部へ放出することができる。したがって、上記構成により、レッグギャザー部7における湿った空気を端部領域78に流動させ、フィルム層73を介して当該空気を透過させることができる。この結果、レッグギャザー部7におけるムレを抑制することができる。加えて、フィルム層73と重なる内側伸縮領域75は、フィルム層73と重ならない外側伸縮領域74よりも装着圧が低く構成される。これにより、フィルム層73と重なる領域の締め付けを抑制し、ムレとそれに伴う赤みやかぶれなどの肌トラブルを抑制することができる。一方で、外側伸縮領域74の装着圧を十分に高めることで、レッグギャザー部7からの排泄物の漏れをより確実に抑制することができる。
以上より、上記構成のおむつ1(吸収性物品)によれば、脚周りにおけるフィット性及び防漏性を高めつつ、ムレや肌トラブルを防止することが可能となる。
【0032】
[フィルム層と不織布層の接合に関する構成例]
レッグギャザー部7における通気性及び透湿性を高める観点から、フィルム層73は、第1不織布層71及び第2不織布層72と非連続的に接合されることが好ましい。
つまり、フィルム層73は、肌側において第1不織布層71を接合する接合部H1と、非肌側において第2不織布層72を接合する接合部H2と、を有し、接合部H1,H2が、非接合部と交互に配置されることが好ましい。接合部H1,H2は、例えば、ホットメルト接着剤等の接着剤や粘着剤等により構成される。この場合、接合部H1,H2は、例えば、非連続的な塗工パターンを有している。このような塗工パターンとしては、例えば、ストライプ状、スパイラル状、サミット状、オメガ状、カーテン状等が挙げられる。隣り合う接合部H1,H2間の非接合部では、空気の流動スペースが確保されることに加えて、透湿性フィルム30の微細孔が閉塞されないため、フィルム層73の透湿性や通気性を維持することができる。なお、本開示において、接合部H1,H2を含む、部材間を接合する接合部を総称して「接合部H」と表すものとする。
【0033】
この場合、端部領域78は、第1不織布層71及び第2不織布層72と接合されていないことが好ましい。つまり、端部領域78に接合部H1,H2が配置されないことが好ましい。これにより、端部領域78が固定されずに、空気の通路をより形成しやすくなる。さらに、端部領域78が第1不織布層71及び第2不織布層72と接合されないことで、端部領域78の微細孔の閉塞が抑制される。これにより、端部領域78の透湿性も確保することができ、湿った空気の外部への放出を促すことができる。
【0034】
また、端部領域78における通気性及び透湿性を確実に得る観点から、端部領域78を含む端部側非接合部73nの幅を十分に確保することが好ましい。具体的に、フィルム層73は、端部領域78を含み第1不織布層71及び第2不織布層72と接合されていない端部側非接合部73nを有し、端部側非接合部73nの横方向Yにおける幅D1は、2mm以上であることが好ましい。端部側非接合部73nの幅D1は、平面視におけるフィルム層73の横方向Y外縁に位置する外縁部73sから、横方向Yにおいて最も外縁部73sに近い接合部H1,H2までの横方向Yにおける距離とする。なお、幅D1が縦方向Xに沿って一定でない場合は、外縁部73sから、横方向Yにおいて最も外縁部73sに近い接合部H1又は接合部H2までの横方向Yにおける幅のうち、最小の幅を幅D1とする。幅D1を2mm以上とすることで、捲れた構成を有する端部領域78の幅を十分に確保することができ、端部領域78の空気の通路としての機能を効果的に付与することができる。
【0035】
さらに、通気性を高める観点から、幅D1は、より好ましくは2.5mm以上であり、さらに好ましくは3mm以上である。また、幅D1は、第1不織布層71及び第2不織布層72の間におけるフィルム層73のヨレやズレを抑制する観点から、好ましくは10mm以下、より好ましくは8mm以下である。
【0036】
[着色部の構成例]
図5に示すように、フィルム層73は、端部領域78よりも横方向Y内側に配置された着色部79を含むことが好ましい。つまり、着色部79は、フィルム層73において端部領域78以外の領域に配置される。着色部79は、インク等の着色剤で形成され、例えば塗工されたインクが固化した部分である。着色部79の形状は特に限定されず、図柄、文字等を含んでいてもよい。着色部79は、フィルム層73の非肌側に配置されていることが好ましい。これにより、着色部79を第1不織布層71(股下外装体6C)から透けて視認させることができ、おむつ1の交換を行う介助者や着用者に対して製品の印象や情報を与えることができる。
【0037】
着色部79は、フィルム層73上に形成されるため、微細孔を被覆する。これにより、フィルム層73からの排泄物の透過も抑制することができる。さらに、着色部79は、疎水性を有することが好ましく、例えば油性のインクで形成されることが好ましい。これにより、着色部79における水分の透過をより効果的に抑制することができ、フィルム層73の防漏性を効果的に高めることができる。また、着色部79により、吸収体4に吸収された排泄物が第1不織布層71側の表面から透けて見えにくくなる。これにより、外表面1bを視認した際の排泄物の漏れの誤認を抑制することができる。
【0038】
その一方で、端部領域78に着色部79を配置しないことで、端部領域78における微細孔を着色剤によって塞がない構成とすることができる。これにより、端部領域78の通気性及び透湿性を維持することができる。したがって、上記構成により、排泄物の漏れやその誤認を防止しつつも、通気性及び透湿性の高いレッグギャザー部7を得ることができる。
【0039】
また、着色部79は、排泄物の漏れの誤認をより確実に防止する観点から、マンセル表色系においてBG(シアン)、B(青)、又はBP(紫)の少なくとも一つの色相で表される色を含むことが好ましい。具体的には、着色部79は、マンセル表色系において、2.5BGからBを経由して10BPまでの色相で表される色を含むことが好ましい。このように表される色は、尿(例えば黄色)や便(例えば茶色)の色相と補色関係又はそれに近い色相を有する。着色部79が尿や便とは全く異なる色相の色を含むことにより、吸収体4に吸収された排泄物が、非肌側の外表面からより一層透けて見えにくくなり、外表面を視認した際の排泄物の漏れの誤認をより効果的に抑制することができる。さらに、着色部79が排泄物とは全く異なる色相であることで、着色部79を排泄物の漏れと誤認しにくくなる。したがって、上記構成により、排泄物の視覚的な漏れの誤認をより効果的に防止することができ、おむつ1への信頼感や安心感を高めることができる。なお、フィルム層73上の色相は、一般に市販されている測色機器(例えば、コニカミノルタセンシング株式会社製の色彩色差計「CR-400」、分光測色計「CM-700d」等)を用いて測定することができる。
【0040】
[端部領域の配置例]
また、端部領域78は、脚周りのムレや肌トラブルを効果的に抑制する観点から、十分な長さを有することが好ましい。
このような観点から、図2に示すように、端部領域78は、腹側領域Aと背側領域Bとを分離しておむつ1を平面状に展開した場合に、レッグ開口部1Lの縦方向端部Leよりも縦方向Xにおいてウエスト開口部1W側まで延びることが好ましい。
【0041】
レッグ開口部1Lの縦方向端部Leは、図2のような平面展開形態において、レッグ開口部1Lにおいて最も縦方向Xウエスト側に位置する部分である。つまり、縦方向端部Leは、側縁部A1,B1のレッグ側の端部に一致する。「端部領域78がレッグ開口部1Lの縦方向端部Leよりも縦方向Xにおいてウエスト開口部1W側まで延びる」とは、おむつ1の平面展開形態において、ウエスト開口部1Wから端部領域78までの縦方向Xにおける距離が、ウエスト開口部1Wから縦方向端部Leまでの距離よりも短くなることを意味する。
【0042】
上記構成により、端部領域78が脚周りの広い範囲に配置され得る。これにより、レッグギャザー部7における通気性を広い範囲で高めることができ、レッグギャザー部7におけるムレや肌トラブルをより効果的に抑制することができる。
【0043】
さらに、図2に示す例のように、端部領域78は、外側弾性部材76及び内側弾性部材77よりも縦方向Xにおいてウエスト開口部1W側まで延びることが好ましい。これにより、端部領域78をレッグギャザー部7のほぼ全域に配置することができ、レッグギャザー部7における通気性をより効果的に高めることができる。
【0044】
[内側伸縮領域及び外側伸縮領域の構成例]
レッグギャザー部7においては、内側伸縮領域75が外側伸縮領域74よりも吸収体4の近くに位置するため、内側伸縮領域75は、装着圧の上昇を抑制しつつも、排泄物の漏れを抑制できる構成であることが好ましい。
そこで、図4に示すように、内側伸縮領域75の横方向Yにおける幅D2は、外側伸縮領域74の横方向Yにおける幅D3よりも広いことが好ましい。これにより、内側伸縮領域75による締め付けを抑制しつつも、内側伸縮領域75を広い範囲で着用者にフィットさせることができる。したがって、内側伸縮領域75からの排泄物の漏れが効果的に抑制される。
【0045】
幅D2は、内側伸縮領域75の最も横方向Y内側に配置された内側弾性部材77の横方向Y内側の端部から、内側伸縮領域75の最も横方向Y外側に配置された内側弾性部材77の横方向Y外側の端部までの寸法である。同様に、幅D3は、外側伸縮領域74の最も横方向Y内側に配置された外側弾性部材76の横方向Y内側の端部から、外側伸縮領域74の最も横方向Y外側に配置された外側弾性部材76の横方向Y外側の端部までの寸法である。内側伸縮領域75及び/又は外側伸縮領域74が1本の弾性部材を含む場合は、その弾性部材の横方向Yにおける幅を各伸縮領域の幅とする。また、これらの幅が縦方向Xに沿って一定でない場合には、内側伸縮領域75の最小幅を幅D2とし、外側伸縮領域74の最大幅を幅D3とする。
【0046】
上記構成を実現する観点から、内側伸縮領域75に含まれる内側弾性部材77の本数は、外側伸縮領域74に含まれる外側弾性部材76の本数よりも多いことが好ましい。内側弾性部材77の本数を多くすることで、幅D2を広くすることができ、内側伸縮領域75の防漏性を高めることができる。
【0047】
具体的に、内側伸縮領域75における内側弾性部材77の本数は、好ましくは3本以上であり、好ましくは7本以下、より好ましくは6本以下である。
また、外側伸縮領域74における外側弾性部材76の本数は、1本以上、好ましくは2本以上であり、好ましくは5本以下、より好ましくは4本以下である。
【0048】
一方で、内側伸縮領域75の装着圧の上昇を抑制する観点から、各内側弾性部材77の装着圧は低いことが好ましい。このため、外側弾性部材76の装着圧は、複数の内側弾性部材77各々の装着圧のうちの最大装着圧よりも高いことが好ましい。例えば、外側伸縮領域74が複数の外側弾性部材76を含む場合、外側弾性部材76各々の装着圧のうちの最小装着圧は、複数の内側弾性部材77各々の装着圧のうちの最大装着圧よりも高いことが好ましい。これにより、比較的容易に、内側伸縮領域75の装着圧を外側伸縮領域74の装着圧よりも低くすることができる。
【0049】
具体的に、内側弾性部材77の装着圧は、好ましくは0.05kPa以上、より好ましくは0.1kPa以上であり、好ましくは0.6kPa以下、より好ましくは0.5kPa以下である。外側弾性部材76の装着圧は、好ましくは0.15kPa以上、より好ましくは0.2kPa以上であり、好ましくは1.0kPa以下、より好ましくは0.8kPa以下である。なお、各弾性部材の装着圧は、上述の「装着圧の測定方法」に基づいて測定することができる。この場合、装着圧測定装置のエアパックの中心を測定対象の弾性部材上に配置することで、各弾性部材の装着圧を「装着圧の測定方法」で説明した方法で測定することができる。
【0050】
各弾性部材の装着圧は、弾性部材の繊度、伸長率などにより調整することができる。例えば、弾性部材が糸ゴムなどの繊維状の場合、弾性部材の繊度が高いほど、弾性部材の装着圧がより高くなる。また、弾性部材の伸長率とは、おむつ1から取り出された自然長における弾性部材の長さに対する、おむつ1の展開伸長状態において伸長された弾性部材の長さの割合を意味する。つまり、伸長率が高い弾性部材は、製造過程において、強く伸長された状態でおむつ1に搭載される。このため、伸長率の高い弾性部材では、着用時の弾性力が大きくなり、装着圧が高くなる。
【0051】
さらに、内側弾性部材77及び外側弾性部材76各々の装着圧は、横方向Yにおいて最も内側に配置された内側弾性部材77から横方向Yにおいて最も外側に配置された外側弾性部材76に向かって、横方向Yに沿って順に高くなるように設定されることが好ましい。つまり、横方向Y内側から外側に向かって、内側弾性部材77及び外側弾性部材76の装着圧が順に高くなることが好ましい。これにより、横方向Y外側に向かってレッグギャザー部7の装着圧を徐々に高め、レッグギャザー部7のフィット性を向上させることができるとともに、横方向Y内側に向かってレッグギャザー部7の装着圧を徐々に低下させ、フィルム層73と重なる部分の締め付け感を抑制することができる。この結果、レッグギャザー部7における防漏性と通気性の双方を向上させることができる。
【0052】
[透湿性フィルムの構成例]
以下、フィルム層73を構成する透湿性フィルム30の好ましい構成例について説明する。なお、フィルム層73がバックシート3で構成される場合は、バックシート3が以下のような構成を有することが好ましい。
【0053】
透湿性フィルム30は、複数の微細孔(ミクロボイド)を有することが好ましい。透湿性フィルムは、例えば樹脂製フィルムで構成され、単層構造又は積層構造を有する。透湿性フィルムは、例えば、疎水性の熱可塑性樹脂(ポリオレフィン系樹脂等)と、該熱可塑性樹脂と相溶性のない無機微粒子(炭酸カルシウム等)とを、溶融混練してフィルムを形成し、該フィルムを一軸又は二軸延伸して得られる。フィルムの形成は、例えば、インフレーション法、Tダイ法等を用いることができる。このように製造される透湿性フィルムにおいては、延伸により熱可塑性樹脂と無機微粒子との界面を起点として微細孔が多数形成される。
【0054】
図6(A)及び(B)に例示するように、透湿性フィルム30では、延伸時に炭酸カルシウム粒子などの無機微粒子36に延伸方向Eに沿った力が加わり、無機微粒子36が延伸方向Eに引きずられることで、微細孔37が形成される。このため、透湿性フィルム30は、無機微粒子36と、無機微粒子36に隣接する微細孔37と、を含む。
【0055】
透湿性フィルム30では、例えば、0.06μm以上0.16μm以下の範囲の細孔径を有する微細孔37の単位質量当たりの細孔容量が、2.5μm以上3.5μm以下の範囲の細孔径を有する微細孔37の単位質量当たりの細孔容量よりも大きいことが好ましい。これにより、0.06μm以上0.16μm以下の範囲の小さな細孔径を有する微細孔37を多数形成することができ、水蒸気(湿気)の透過性を高めることができる。その一方で、2.5μm以上3.5μm以下の範囲の細孔径を有する微細孔37の数を規制することができ、水分の漏れをより確実に防止することができる。したがって、防漏性の高い透湿性フィルム30を得ることができる。
【0056】
(細孔容量の測定方法)
細孔容量は、JIS R 1655に規定される水銀圧入法に準じて、以下の方法で測定することができる。まず、測定対象の透湿性フィルム30から、所定のサイズ(例えば10mm×10mm)の測定サンプルを切り出す。この測定サンプルを、水銀ポロシメーター(例えば、「オートポアIV9520」、株式会社島津製作所製)にセットし、細孔径0.06μm以上3.5μm以下の領域の細孔径分布を測定する。得られた細孔径分布(図7参照)に基づいて、細孔径0.06μm以上0.16μm以下の領域の累積細孔容量と、細孔径2.5μm以上3.5μm以下の領域の累積細孔容量とを測定する。細孔径0.06μm以上0.16μm以下の領域の累積細孔容量が、細孔径2.5μm以上3.5μm以下の領域の累積細孔容量よりも大きかった場合、「0.06μm以上0.16μm以下の範囲の細孔径を有する微細孔の単位質量当たりの細孔容量が、2.5μm以上3.5μm以下の範囲の細孔径を有する微細孔の単位質量当たりの細孔容量よりも大きい」と判断する。
【0057】
このように、小さな微細孔37を多数形成する方法としては、例えば、透湿性フィルム30を均一に延伸する方法が挙げられる。図6(A)に示すように、透湿性フィルム30の延伸が不均一だった場合は、透湿性フィルム30の一部に十分に延伸されていない領域が生じ、小さな無機微粒子36を起点として十分に開孔できない部分(太線で示した未開孔部38)が形成され得る。さらに、透湿性フィルム30の面内において、延伸力が大きい領域では、無機微粒子36が大きく引きずられることで大きな微細孔37が形成され、延伸力が小さい領域では、無機微粒子36があまり引きずられないことで小さな微細孔37が形成されやすくなる。このため、微細孔37の大きさが、無機微粒子36の大きさと相関を有しないことがある。
【0058】
これに対し、図6(B)に示すように、透湿性フィルム30が均一に延伸された場合は、小さな無機微粒子36にも十分に延伸力が付加される。この結果、図6(A)の例では未開孔部38であった部分が、図6(B)では十分に開孔した微細孔37(太線で示した部分)となり、小さな微細孔37を増やすことができる。また、透湿性フィルム30の面内における延伸が均一である場合には、無機微粒子36の大きさに応じた微細孔37が形成されやすいことから、微細孔37の大きさと無機微粒子36の大きさとが正に相関する傾向を有する。
【0059】
透湿性フィルム30が均一に延伸されている指標として、透湿性フィルム30では、厚み方向Zから見た平面視において、0.01μm以上0.5μm以下の大きさの無機微粒子36に隣接して配置される微細孔37の細孔径は、1.0μm以上1.5μm以下の大きさの無機微粒子36に隣接して配置される微細孔37の径よりも小さいことが好ましい。上記構成では、透湿性フィルム30が均一に延伸されていることにより、小さな無機微粒子36に隣接する小さな微細孔37の数を増加させることができ、透湿性及び防漏性の高い透湿性フィルム30を得ることができる。
【0060】
(無機微粒子のサイズ及び微細孔の細孔径の測定方法)
透湿性フィルム30から所定のサイズ(例えば10mm×10mm)の評価サンプルを切り出す。切り出した評価サンプルを常法に従って固定し、走査型電子顕微鏡(SEM)で1000倍に拡大して撮像する。1つの画像から、画像解析技術を用いて、無機微粒子とそれに隣接する微細孔のそれぞれに対応する部分の輪郭を抽出する。抽出された無機微粒子に対応する領域のサイズと、それに隣接する微細孔に対応する領域のサイズとをそれぞれ測定する。なお、微細孔の細孔径は、抽出された微細孔に対応する領域のサイズ(面積)から円換算直径を算出することで得られる。1枚の透湿性フィルム30から100箇所の画像を撮像し、0.01μm以上0.5μm以下の大きさの無機微粒子に隣接して配置される微細孔の細孔径の平均値と、1.0μm以上1.5μm以下の大きさの無機微粒子に隣接して配置される微細孔の細孔径の平均値とを算出する。
【0061】
上述のように、無機微粒子36の大きさに応じた微細孔37が形成される場合、無機微粒子36の大きさの分布を制御することで、微細孔37の細孔径も制御することができる。このような観点から、透湿性フィルム30では、厚み方向Zから見た平面視において、0.01μm以上0.5μm以下の大きさの無機微粒子36の単位面積当たりの粒子数は、0.5μm以上2.0μm未満の大きさの無機微粒子36の単位面積当たりの粒子数よりも少なく、かつ、2.0μm以上の無機微粒子36の単位面積当たりの粒子数は、0.5μm以上2.0μm未満の大きさの無機微粒子36の単位面積当たりの粒子数よりも少ないことが好ましい。上記構成により、微小な微細孔37を多く形成でき、透湿性及び防漏性の双方を充足する透湿性フィルム30を得ることができる。
【0062】
また、透湿性フィルム30は、上述のように均一に延伸されることで、防漏性を維持しつつも薄く構成されることが好ましい。このような観点から、透湿性フィルム30の坪量は、好ましくは8g/cm以上、より好ましくは10g/cm以上であり、好ましくは20g/cm以下、より好ましくは18g/cm以下である。
【0063】
透湿性フィルム30の透湿度は、好ましくは2.7g/100cm・h以上、より好ましくは3g/100cm・h以上であり、好ましくは12g/100cm・h以下、より好ましくは10g/100cm・h以下である。これにより、透湿性フィルム30が十分に高い透湿性を有し、ムレの少ない快適なおむつ1を提供することができるとともに、透湿性フィルム30の防漏性も確保することができる。
【0064】
(透湿度の測定方法)
透湿度は、JIS Z0208に準じて測定することができる。
まず、吸湿剤として塩化カルシウムを収容したカップを準備し、このカップを水平になるように配置する。試験前の塩化カルシウムの質量は、予め測定しておく。測定対象の透湿性フィルムをカップの内径よりも10mm大きい直径を持つ円形に切断して試験片を準備し、この試験片をカップの上縁に配置し、試験片の周縁がカップの上縁の同心円上に位置するように調整する。カップの上縁に沿ったリング状のパッキンを準備し、試験片の周縁がカップの上縁に密着するように当該パッキンを押し込む。さらに、その上にリング状のおもりを配置し、透湿性フィルムがカップの上縁に固定された試験体を作製する。この試験体を、温度30℃±0.5℃、湿度90±2%RHにおいて1時間放置し、試験後の塩化カルシウムの質量を測定する。試験後の塩化カルシウムの質量から、試験前の塩化カルシウムの質量を減じた値を算出し、これを試験片の水蒸気透過面100cm当たりの値に換算して、透湿度を算出する。
【0065】
[不織布層の構成例]
第1不織布層71及び第2不織布層72を構成する不織布、すなわち股下外装体6Cを構成する不織布としては、例えば、エアスルー不織布、スパンボンド不織布及びスパンボンド-メルトブローン-スパンボンド(SMS)不織布等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。このような不織布は、疎水性を高めて防漏作用を高める観点から、疎水性の合成繊維、特に疎水性の熱可塑性繊維を含むことが好ましい。
【0066】
また、股下外装体6Cは、複数のシート材の積層構造を有していてもよい。つまり、第1不織布層71及び第2不織布層72のそれぞれが積層構造を有していてもよい。この場合、各シート材が非連続的に接合されていることが好ましい。これにより、各シート材を一体化して股下外装体6Cを形成することができるとともに、これらのシート材間に非接合部を形成することで、非肌側の表面を柔らかい触感にすることができる。なお、腹側外装体6A及び背側外装体6Bも、上述の列記した不織布を用いることができ、また複数のシート材の積層構造を有していてもよい。
【0067】
[他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加えることができる。
【0068】
上述の実施形態では、レッグギャザー部7に含まれるフィルム層73がバックシート3を構成する透湿性フィルム30で構成されると説明したが、これに限定されない。例えば、フィルム層73を構成する透湿性フィルムが、バックシートとは異なるフィルム材であってもよい。
【0069】
上述の実施形態では、第1不織布層71及び第2不織布層72が、同一の不織布又は不織布積層体(股下外装体6C)で構成されると説明したが、これに限定されない。例えば、第1不織布層71及び第2不織布層72が、相互に分離された異なる不織布又は不織布積層体で構成されてもよい。
【0070】
上述の実施形態では、おむつ1(吸収性物品)が腹側領域A、背側領域B、及び股下領域Cで分割された腹側外装体6A、背側外装体6B及び股下外装体6Cを有すると説明したが、これに限定されない。例えば、1つの外装体が、腹側領域A、背側領域B及び股下領域Cにわたって連続して形成されていてもよい。
【0071】
本発明に係る吸収性物品は、外装体を有する吸収性物品であればよく、パンツ型使い捨ておむつの他、展開型使い捨ておむつ、生理用物品(例えばパンツ型の生理用ナプキン)などであってもよい。
【符号の説明】
【0072】
1…吸収性物品(使い捨ておむつ)
1L…レッグ開口部
1W…ウエスト開口部
2…トップシート
3…バックシート
30…透湿性フィルム
4…吸収体
7…レッグギャザー部
71…第1不織布層
72…第2不織布層
73…フィルム層
74…外側伸縮領域
75…内側伸縮領域
76…外側弾性部材
77…内側弾性部材
78…端部領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7