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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123538
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/51 20060101AFI20240905BHJP
   A61F 13/53 20060101ALI20240905BHJP
   A61F 13/514 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
A61F13/51 100
A61F13/53 100
A61F13/514 100
A61F13/514 211
A61F13/514 213
A61F13/514 400
A61F13/51
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031044
(22)【出願日】2023-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石橋 京子
(72)【発明者】
【氏名】犹守 沙耶香
(72)【発明者】
【氏名】川口 宏子
(72)【発明者】
【氏名】松久 誠
(72)【発明者】
【氏名】鹿谷 智也
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200BA07
3B200BA14
3B200BA16
3B200BA19
3B200BB09
3B200BB30
3B200CA03
3B200CA11
3B200DA12
3B200DA15
3B200DA17
3B200DA21
3B200DA25
3B200DB01
3B200DD01
3B200DD02
3B200DD04
3B200DD09
3B200DE06
(57)【要約】
【課題】排泄物の漏れの誤認を効果的に防止でき、かつ、着用感の高い吸収性物品に関する。
【解決手段】本発明に係る吸収性物品は、トップシートと、透湿性を有するバックシートと、吸収体と、外装体と、吸収体とバックシートとの間に配置された疎水性のクッション層と、備える。吸収体の非肌側面である第2面は、クッション層と対向する第1対向領域と、第1対向領域の横方向外側に位置し、クッション層を介さずにバックシートと対向する第2対向領域と、を有する。吸収体は、トップシートを接合し、肌側面である第1面に非連続的に配置された第1接合部と、クッション層を接合し、第1対向領域に非連続的に配置された第2接合部と、を有する。第1対向領域における第2接合部の占める面積の割合は、第1面における第1接合部の占める面積の割合よりも低い。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性を有するトップシートと、透湿性を有するバックシートと、前記トップシートと前記バックシートとの間に配置された吸収体と、前記バックシートの非肌側に配置された外装体と、を備え、着用者の腹側から股間部を通って背側に延びる縦方向と、前記縦方向に直交し前記着用者の左右方向に対応する横方向と、前記縦方向及び前記横方向に直交する厚み方向と、を有する吸収性物品であって、
前記吸収体と前記バックシートとの間に配置され、前記吸収体の前記横方向中央部に対向する疎水性のクッション層をさらに備え、
前記吸収体は、
肌側面である第1面と、
非肌側面である第2面と、を有し、
前記第2面は、
前記クッション層と前記厚み方向に対向する第1対向領域と、
前記第1対向領域の前記横方向外側に位置し、前記クッション層を介さずに前記バックシートと前記厚み方向に対向する第2対向領域と、を有し、
前記吸収体は、さらに、
前記トップシートを接合し、前記第1面に非連続的に配置された第1接合部と、
前記クッション層を接合し、前記第1対向領域に非連続的に配置された第2接合部と、を有し、
前記第1対向領域における前記第2接合部の占める面積の割合は、前記第1面における前記第1接合部の占める面積の割合よりも低い
吸収性物品。
【請求項2】
前記バックシートは、
肌側面である第3面と、
非肌側面である第4面と、
前記第4面に配置され、着色された着色部と、を有し、
前記第3面は、
前記クッション層と前記厚み方向に対向する第3対向領域と、
前記吸収体の前記第2対向領域と前記厚み方向に対向する第4対向領域と、を有し、
前記着色部の少なくとも一部は、前記第4対向領域と前記厚み方向に重なる位置に配置される
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記第4対向領域において前記着色部と前記厚み方向に重なる領域の占める面積の割合は、前記第3対向領域において前記着色部と前記厚み方向に重なる領域の占める面積の割合よりも高い
請求項2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記着色部は、マンセル表色系においてBG(シアン)、B(青)、又はBP(紫)の少なくとも一つの色相で表される色を含む
請求項2又は3に記載の吸収性物品。
【請求項5】
隣り合う前記第2接合部間の最大間隔は、隣り合う前記第1接合部間の最大間隔よりも大きい
請求項1から4のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記バックシートは、
肌側面である第3面と、
非肌側面である第4面と、を有し、
前記第3面は、
前記クッション層と前記厚み方向に対向する第3対向領域を含み、
前記バックシートは、さらに、
前記クッション層を接合し、前記第3対向領域に非連続的に配置された第3接合部と、
前記外装体を接合し、前記第4面に非連続的に配置された第4接合部と、を有し、
前記第3対向領域において前記第3接合部の占める面積の割合は、前記第4面において前記第4接合部の占める面積の割合よりも高い
請求項1から5のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
隣り合う前記第3接合部間の最大間隔は、隣り合う前記第4接合部間の最大間隔よりも小さい
請求項6に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記吸収体は、
吸収性コアと、
前記吸収性コアを覆い、前記第2面を少なくとも構成するコアラップシートと、を有し、
前記クッション層の坪量は、前記第2面における前記コアラップシートの坪量よりも大きい
請求項1から7のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項9】
前記クッション層の坪量は、20g/cm以上である
請求項1から8のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項10】
前記吸収性物品では、
前記吸収体の前記第1面から前記トップシートで構成された肌側表面までの厚みが、前記吸収体の前記第2面から前記外装体で構成された外表面までの厚みよりも薄い
請求項1から9のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項11】
前記バックシートは、複数の微細孔を有する透湿性フィルムで構成される
請求項1から10のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項12】
前記バックシートの透湿度は、2.7g/100cm・h以上12g/100cm・h以下である
請求項11に記載の吸収性物品。
【請求項13】
前記バックシートでは、
0.06μm以上0.16μm以下の範囲の細孔径を有する前記微細孔の単位質量当たりの細孔容量が、2.5μm以上3.5μm以下の範囲の細孔径を有する前記微細孔の単位質量当たりの細孔容量よりも大きい
請求項11又は12に記載の吸収性物品。
【請求項14】
前記バックシートは、前記微細孔に隣接して配置された無機微粒子を有し、
前記バックシートでは、前記厚み方向から見た平面視において、
0.01μm以上0.5μm以下の大きさの前記無機微粒子に隣接して配置される前記微細孔の細孔径が、1.0μm以上1.5μm以下の大きさの前記無機微粒子に隣接して配置される前記微細孔の細孔径よりも小さい
請求項11から13のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項15】
前記バックシートでは、前記厚み方向から見た平面視において、
0.01μm以上0.5μm以下の大きさの前記無機微粒子の単位面積当たりの粒子数は、0.5μm以上2.0μm未満の大きさの前記無機微粒子の単位面積当たりの粒子数よりも少なく、かつ、
2.0μm以上の前記無機微粒子の単位面積当たりの粒子数は、0.5μm以上2.0μm未満の大きさの前記無機微粒子の単位面積当たりの粒子数よりも少ない
請求項14に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨ておむつ等の吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつなどの吸収性物品は、例えば、液透過性のトップシートと、バックシートと、トップシート及びバックシートの間に配置された吸収体と、を備える。吸収性物品が尿などの排泄物を吸収した場合、着用者の体温によって吸収性物品が温められて排泄物由来の水分が蒸発し、着用者がムレを感じやすくなる。このため、肌側の水蒸気を吸収性物品の外部へ放出しやすくする観点から、例えば透湿性を有するバックシート(裏面シート)を備えた吸収性物品が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
一方で、バックシートの透湿性が高い場合、吸収体からの水分の蒸発が促進され、気化熱によって吸収体の温度が低下し、これに伴って吸収性物品の外表面の温度が低下し得る。この場合、介助者や着用者などが、おむつを交換する際に外表面を冷たく感じ、排泄物が外部に漏れていると誤認する懸念があった。これに対し、吸収性材料の層(吸収体)とバックシートとの間に、不織布層を設ける技術が知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-103430号公報
【特許文献2】国際公開第2021/247471号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、吸収体とバックシートの間に断熱性の高い厚い不織布層を設けた場合、着用者の脚周りの動きが阻害され、着用感が低下する懸念があった。また、不織布層を吸収体に接合した場合は、吸収体の温度低下に伴って不織布層も温度が低下しやすくなり、外表面の温度が低下する懸念があった。
【0006】
本発明は、排泄物の漏れの誤認を効果的に防止でき、かつ、着用感の高い吸収性物品に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態に係る吸収性物品は、液透過性を有するトップシートと、透湿性を有するバックシートと、前記トップシートと前記バックシートとの間に配置された吸収体と、前記バックシートの非肌側に配置された外装体と、を備え、着用者の腹側から股間部を通って背側に延びる縦方向と、前記縦方向に直交し前記着用者の左右方向に対応する横方向と、前記縦方向及び前記横方向に直交する厚み方向と、を有する。
前記吸収性物品は、
前記吸収体と前記バックシートとの間に配置され、前記吸収体の前記横方向中央部に対向する疎水性のクッション層をさらに備える。
前記吸収体は、
肌側面である第1面と、
非肌側面である第2面と、を有する。
前記第2面は、
前記クッション層と前記厚み方向に対向する第1対向領域と、
前記第1対向領域の前記横方向外側に位置し、前記クッション層を介さずに前記バックシートと前記厚み方向に対向する第2対向領域と、を有する。
前記吸収体は、さらに、
前記トップシートを接合し、前記第1面に非連続的に配置された第1接合部と、
前記クッション層を接合し、前記第1対向領域に非連続的に配置された第2接合部と、を有する。
前記第1対向領域における前記第2接合部の占める面積の割合は、前記第1面における前記第1接合部の占める面積の割合よりも低い。
【発明の効果】
【0008】
本発明の吸収性物品によれば、排泄物の漏れの誤認を効果的に防止でき、かつ、着用感を高めることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る吸収性物品(使い捨ておむつ)の斜視図である。
図2】上記使い捨ておむつの平面図であり、各部の弾性部材を伸長させて平面状に広げた状態で、肌側(トップシート側)から見た態様を示す。
図3図2のIII-III線で切断した上記使い捨ておむつの模式的な断面図である。
図4図3の使い捨ておむつを着用者が着用した態様を模式的に示す断面図である。
図5】上記使い捨ておむつの透湿性フィルムで構成されたバックシートの拡大平面図であり、(A)は不均一に延伸された透湿性フィルムの例を示し、(B)は均一に延伸された透湿性フィルムの例を示す。
図6】上記バックシートの細孔径分布の一例を示すグラフであり、横軸は細孔径(μm)、縦軸は細孔容量(ml/g)を示す。
図7】上記使い捨ておむつの変形例に係る外装体を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、以下の実施形態では、本発明に係る吸収性物品がパンツ型使い捨ておむつとして構成される例を挙げる。但し、本発明の吸収性物品はこれに限定されず、例えば、展開型使い捨ておむつ、生理用物品などであってもよい。
【0011】
[使い捨ておむつの全体構成]
図1及び図2には、本発明の一実施形態に係る吸収性物品として、パンツ型使い捨ておむつ1が示されている。パンツ型使い捨ておむつ1は、以下、おむつ1と称する。
おむつ1は、縦方向X、横方向Y及び厚み方向Zを有する。縦方向Xは、着用者の腹側から股間部を通って背側に延びる。横方向Yは、縦方向Xに直交し、着用者の左右方向に対応する。厚み方向Zは、おむつ1の縦方向X及び横方向Yに直交する方向とする。
本開示において、「横方向Y内側」とは、横方向Yにおいて、おむつ1を横方向Yに2等分する縦中心線CLに近づく側を意味し、「横方向Y外側」とは、縦中心線CLから遠ざかる側を意味する。
本開示において、平面視とは、各構成を厚み方向Zから見ることを意味する。なお、本開示において、各構成における肌側とは、使い捨ておむつ着用時の着用者の肌側に位置する側を示す。各構成における非肌側とは、使い捨ておむつ着用時の着用者の肌側とは反対側に位置する着衣側を示す。
【0012】
図1及び図2に示すように、おむつ1は、着用者の腹周りに配置されるウエスト開口部1Wと、着用者の脚周りに配置される一対のレッグ開口部ILと、を備え、着用者の胴回り及び股間部に配置される。
おむつ1は、着用者の腹側に配置される腹側領域Aと、着用者の背側に配置される背側領域Bと、腹側領域A及び背側領域Bの間に位置し着用者の股間部に配置される股下領域Cと、に区分される。腹側領域A、股下領域C、及び背側領域Bは、縦方向Xに沿って配置されている。腹側領域A及び背側領域Bは、横方向Yにおける側縁部A1,B1同士が接合されて、ウエスト開口部1Wを形成する。

股下領域Cには脚繰りが形成され、この脚繰りがレッグ開口部1Lを形成する。
なお、図2は、おむつ1を展開し、各部の弾性部材を伸長させて、弾性部材の影響を一切排除した状態の設計寸法となるように平面状に広げた形態を示す。おむつ1を展開するとは、腹側領域Aの側縁部A1及び背側領域Bの側縁部B1を分離して展開することを意味する。
【0013】
図2及び図3に示す例において、おむつ1は、トップシート2と、吸収体4と、クッション層7と、バックシート3と、外装体6と、を有する。おむつ1は、外装体6、バックシート3、クッション層7、吸収体4及びトップシート2が厚み方向Zに積層された構成を有する。これらの構成は、例えば、ホットメルト接着剤等の接合手段により互いに接合されている。
【0014】
トップシート2は、おむつ1の肌側表面1aを形成し、着用者の肌に接するように配置される。トップシート2は、液透過性を有し、例えば合成繊維又は天然繊維を含む不織布等で形成される。トップシート2の材料としては、吸収性物品のトップシートとして使用可能なシート材を適宜用いることができる。
【0015】
吸収体4は、トップシート2とバックシート3の間に配置される。吸収体4は、着用者の尿などの排泄物の水分をトップシート2側の面から吸収し、内部で拡散させて当該排泄物の水分を保持する。
吸収体4は、例えば、吸収性コア40と、コアラップシート41と、を有する。
吸収性コア40は、水分を保持することが可能な吸収性材料を主体として構成される。具体的に、吸収性コア40は、親水性繊維の積繊体、当該積繊体に吸収性ポリマーを担持させた構成、又は吸水性ポリマーのみからなる構成等を有する。
コアラップシート41は、吸収性コア40を被覆し、例えば吸収性コア40の形状を保持する機能等を有する。コアラップシート41は、例えばティッシュペーパー状の薄く柔らかい紙や液透過性の不織布等で形成される。
【0016】
バックシート3は、吸収体4の非肌側に配置される。バックシート3は、防漏性を有していることが好ましく、例えば、液難透過性及び撥水性等の機能を有するシート材で構成される。このようなシート材としては、例えば熱可塑性樹脂のフィルムや、当該フィルムと不織布とのラミネート等からなるシート材等が挙げられる。
【0017】
さらに、バックシート3は、排泄物や汗などに由来する水蒸気を外部に放出してムレを抑制する観点から、透湿性を有する。「透湿性」とは、気流移動を伴わず、熱力学の第二法則に従って、高湿度側から低湿度側に水蒸気が拡散する性質を意味する。透湿性は、例えばJIS Z0208に基づいて測定された透湿度の値によって評価することができる。透湿性を有するバックシート3は、上記透湿度の値が、例えば0.5g/100cm・hr以上であることが好ましい。このような透湿性を実現するため、バックシート3は、複数の微細孔を含んでいることが好ましい。なお、透湿度の詳細な測定方法及びバックシート3の詳細な構成については、後述する。
【0018】
外装体6は、バックシート3の非肌側に配置され、おむつ1の非肌側の外表面1bを形成する。外装体6は、透湿性、通気性及び良好な肌触り等を実現する観点から、不織布で構成されることが好ましく、さらに、防漏性を付与する観点から、例えば、液難透過性及び撥水性等の機能を有していることが好ましい。
【0019】
図1及び図2に示す例において、外装体6は、ウエスト開口部1W及びレッグ開口部1Lを形成する。外装体6は、腹側領域A及び背側領域Bにおいて横方向Yに沿って配置された胴回り弾性部材61と、レッグ開口部1Lに沿って配置されたレッグ弾性部材62と、をさらに含む。ウエスト弾性部材61及びレッグ弾性部材62は、例えば、折り返されたシート材の間に配置されてもよいし(図3参照)、積層された複数のシート材の間に配置されてもよい(図7参照)。
【0020】
さらに、おむつ1は、一対のサイドシート5を備えることが好ましい。一対のサイドシート5は、トップシート2の横方向Y側部の肌側に配置され、立体ギャザー50を形成する。具体的に、サイドシート5の非肌側の端部は、接着剤又はヒートシール等によって、非肌側の部材(図3の例では外装体6)に接合されている。一方、サイドシート5の肌側の端部は、他の部材に接合されない自由端部として構成され、糸状又は帯状の弾性部材51が配置される。弾性部材51は、縦方向Xに延び、伸長した状態でサイドシート5に取り付けられる。これにより、着用時において、弾性部材51の収縮によってサイドシート5の肌側の端部が肌側に起立し、立体ギャザー50が形成される。サイドシート5は、例えば、液難透過性及び撥水性等の機能を有するシート材で構成され、一例としてこれらの機能を有する不織布で構成される。
【0021】
[クッション層の構成]
さらに、おむつ1は、クッション層7を有する。クッション層7は、吸収体4とバックシート3の間に配置され、吸収体4の横方向Y中央部に対向する。「吸収体4の横方向Y中央部」とは、吸収体4を横方向Yに3等分した中央の領域を意味する。クッション層7は、吸収体4の横方向Y中央部の少なくとも一部に対向して配置されていればよく、吸収体4の横方向Y中央部の外側まで延出していてもよい。
【0022】
クッション層7は、疎水性を有し、例えば厚み方向Zに弾性変形可能なシート材で構成される。クッション層7は、内部に微細な空間を含むシート材で構成され、例えば繊維を含有するシート材(不織布又は積繊体等)で構成される。特にクッション層7は、形状を安定して維持する観点から、不織布で構成されることが好ましい。当該不織布としては、嵩高な不織布が好ましく、例えば、エアスルー不織布、レジンボンド不織布、スパンレース不織布、エアレイド不織布等が挙げられる。
【0023】
クッション層7における疎水性とは、例えば下記方法で測定される水との接触角が90度以上であることをいう。
(接触角の測定方法)
測定対象(クッション層7)から表面を構成する要素のサンプル(例えば繊維)を切り出し、そのサンプルに対する水の接触角を測定する。測定装置として、例えば協和界面科学株式会社製の自動接触角計MCA-Jを用いる。接触角の測定には精製水(蒸留水、脱イオン水など)を用いる。インクジェット方式水滴吐出部(クラスターテクノロジー社製、吐出部開孔径が25μmのパルスインジェクターCTC-25)から吐出される液量を20ピコリットルに設定して、水滴をサンプルの真上に滴下する。滴下の様子を水平に設置されたカメラに接続された高速度録画装置に録画する。録画装置は後に画像解析をする観点から、高速度キャプチャー装置が組み込まれたパーソナルコンピュータが望ましい。本測定では、17msec毎に画像が録画される。録画された映像において、サンプル表面(例えば繊維)に水滴が着滴した最初の画像を、付属ソフトFAMAS(ソフトのバージョンは2.6.2、解析手法は液滴法、解析方法はθ/2法、画像処理アルゴリズムは無反射、画像処理イメージモードはフレーム、スレッシホールドレベルは200、曲率補正はしない、とする)にて画像解析を行い、水滴の空気に触れる面とサンプル表面とのなす角を算出し、接触角とする。サンプルが繊維である場合は、この繊維を繊維長1mmに裁断し、該繊維を接触角計のサンプル台に載せて、水平に維持する。1つのサンプルにつき異なる2箇所の接触角を測定する。5つのサンプルの接触角を小数点以下1桁まで計測し、合計10箇所の測定値を平均した値(小数点以下第2桁で四捨五入)を、クッション層7の水との接触角と定義する。測定環境は、室温22±2℃、湿度65±2%RHとする。
【0024】
クッション層7は、吸収体4が排泄物を吸収しやすい横方向Y中央部に配置されるとともに、疎水性を有する。これにより、吸収体4に保持された排泄物の外表面1bへの漏れを効果的に防止することができる。さらに、クッション層7は、内部に微細な空間を有することにより、熱伝導性の低い空気を内部に含有し、断熱性の高い構成となり得る。これにより、吸収体4中の排泄物の水分が蒸発する際の気化熱によって吸収体4の温度が低下した場合にも、それに伴うクッション層7の温度の低下を抑制することができる。したがって、クッション層7を介した外表面1bの温度の低下が抑制され得る。
一方で、クッション層7は、嵩高になりやすく、おむつ1の剛性に影響を与えやすい。特に、クッション層7が股下領域Cの横方向Y側部まで延在していると、当該側部の剛性が高まり、着用者の脚周りの動きや着用感に影響を与えやすい。
そこで、クッション層7による外表面1bの温度低下の抑制という効果を増強しつつ、クッション層7による着用感の低下を抑制する観点から、吸収体4を以下のように構成する。
【0025】
[吸収体の構成]
図3に示すように、吸収体4は、第1面4aと、第2面4bと、を有する。第1面4aは、吸収体4の肌側面であり、第2面4bは、吸収体4の非肌側面である。図3の例では、第1面4a及び第2面4bは、コアラップシート41により構成される。
【0026】
第2面4bは、第1対向領域43と、第2対向領域44と、の2つの領域を有する。
第1対向領域43は、クッション層7と厚み方向Zに対向する。
第2対向領域44は、第1対向領域43の横方向Y外側に位置し、クッション層7を介さずにバックシート3と厚み方向Zに対向する。
第1対向領域43は、後述するように、接着剤等によりクッション層7と接合されている。同様に、第2対向領域44も、接着剤等によりバックシート3と接合されていることが好ましい。
【0027】
第2対向領域44を設けることで、吸収体4の横方向Y側部に、クッション層7と厚み方向Zに重ならない領域を設けることができ、股下領域Cの横方向Y側部の曲げ剛性の上昇を抑制することができる。これにより、図4に示すように、着用時において着用者Hの両脚から股下領域Cに横方向Y内側へ向かう外力が付加された場合にも、股下領域Cの横方向Y側部が、着用者Hの身体に沿って柔軟に変形することができる。したがって、着用者の脚の動きが股下領域Cによって妨げられにくくなり、クッション層7を設けた場合でも着用感を維持することができる。
【0028】
また、外表面1bの温度低下を抑制する観点から、吸収体4は、第1接合部45と、第2接合部46と、を有する。
第1接合部45は、トップシート2を接合し、第1面4aに非連続的に配置される。
第2接合部46は、クッション層7を接合し、第1対向領域43に非連続的に配置される。
本開示において、「接合部が非連続的に配置される」とは、接合部の配置される面上で、接合部が非接合部と交互に配置されることを意味する。第1接合部45及び第2接合部46は、例えば、ホットメルト接着剤等の接着剤や粘着剤等により構成される。この場合、第1接合部45及び第2接合部46は、例えば、非連続的な塗工パターンを有している。このような塗工パターンとしては、例えば、ストライプ状、スパイラル状、サミット状、オメガ状、カーテン状等が挙げられる。
【0029】
さらに、第1対向領域43における第2接合部46の占める面積の割合は、第1面4aにおける第1接合部45の占める割合よりも低い。
第2面4bの第1対向領域43における第2接合部46の占める割合を低くすることで、吸収体4とクッション層7との熱伝導性を低下させることができる。これにより、吸収体4が気化熱によって冷却された場合でも、クッション層7が吸収体4によって冷却されにくくなり、おむつ1の外表面1bの温度低下を抑制することができる。一方で、第1面4aにおける第1接合部45の占める割合を高くすることで、吸収体4とトップシート2との熱伝導性を高めることができる。これにより、着用者の体温による熱がトップシート2を介して吸収体4に伝導しやすくなる。したがって、吸収体4の温度低下を抑制することができ、吸収体4に起因する外表面1bの温度低下をより効果的に抑制することができる。
【0030】
例えば、第1対向領域43における第2接合部46の占める面積の割合は、第1面4aにおける複数の第1接合部45の占める割合に対して、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上であり、好ましくは80%以下、より好ましくは70%以下である。
【0031】
[上記構成の作用効果]
以上のように、上記構成によれば、透湿性の高いバックシート3により、吸収体4からの水分の蒸発が促進された場合でも、吸収体4の急激な温度低下を抑制しつつ、その温度低下に伴う外表面1bの温度低下を効果的に抑制できる。これにより、おむつ1を交換しようとする介助者等が外表面1bを触って排泄物の漏れを確認する際に、外表面1bが冷たく感じられて排泄物が漏れているという誤認を防止することができる。したがって、介助者等に、着用者の衣服を汚していないという安心感や、おむつ1への信頼感を与えることができる。さらに、上記構成では、クッション層7による着用感の低下も抑制することができる。したがって、上記構成によれば、排泄物の漏れ誤認の防止と、着用感の向上とを両立するおむつ1を提供することができる。
【0032】
[バックシート及び着色部の構成例]
上記構成において、バックシート3は、肌側面である第3面3aと、非肌側面である第4面3bと、を有し、さらに、第4面3bに配置され着色された着色部35を有することが好ましい。着色部35は、インク等の着色剤で形成され、例えば塗工されたインクが固化した部分である。着色部35の形状は特に限定されず、図柄、文字等を含んでいてもよい。着色部35は、外装体6から透けて視認され得るため、介助者や着用者に対して製品の印象や情報を与えることができる。
【0033】
着色部35は、バックシート3を構成するフィルム等の基材上に形成されるため、水蒸気を透過させる微細孔を被覆する。これにより、バックシート3の透湿性を部分的に低下させることができ、水分の透過も抑制することができる。さらに、着色部35は、疎水性を有することが好ましく、例えば油性のインクで形成されることが好ましい。これにより、着色部35における水分の透過をより効果的に抑制することができ、バックシート3の防漏性を高めることができる。
【0034】
さらに、第3面3aは、クッション層7と厚み方向Zに対向する第3対向領域31と、吸収体4の第2対向領域44と厚み方向Zに対向する第4対向領域32と、を有し、着色部35の少なくとも一部は、第4対向領域32と厚み方向Zに重なる位置に配置されることが好ましい。「厚み方向Zに重なる」とは、厚み方向Zから見た平面視において重なっていることを意味する。
【0035】
ここで、第4対向領域32は、クッション層7と対向しないことで、第3対向領域31よりも吸収体4から生じた水蒸気が透過しやすい。上記構成では、着色部35の少なくとも一部が第4対向領域32に配置されることで、第4対向領域32における水蒸気の透過と、それに伴う吸収体4の温度低下とを効果的に抑制することができる。したがって、外表面1bの温度低下を効果的に抑制でき、外表面1bに触れた際の排泄物の漏れの誤認をより効果的に抑制することができる。さらに、着色部35により、吸収体4に吸収された排泄物が外表面1bから透けて見えにくくなる。これにより、外表面1bを視認した際の排泄物の漏れの誤認を抑制することができる。加えて、着色部35が疎水性を有する場合は、着色部35を介した外表面1bへの排泄物の実際の漏れも抑制することができる。したがって、上記構成により、おむつ1における排泄物の漏れやその誤認を防止することができ、おむつ1を交換する介助者等におけるおむつ1への信頼感や安心感をより効果的に高めることができる。
【0036】
また、着色部35は、第4対向領域32の他、第3対向領域31と厚み方向Zに重なる位置に配置されていてもよい。この場合、第4対向領域32において着色部35と厚み方向Zに重なる領域の占める面積の割合は、第3対向領域31において着色部35と厚み方向Zに重なる領域の占める面積の割合よりも高いことが好ましい。これにより、クッション層7と対向しておらず吸収体4の影響が大きい第4対向領域32を着色部35によって効果的に被覆することができ、上述の排泄物の漏れやその誤認の防止効果を高めることができる。
【0037】
また、着色部35は、排泄物の漏れの誤認をより確実に防止する観点から、マンセル表色系においてBG(シアン)、B(青)、又はBP(紫)の少なくとも一つの色相で表される色を含むことが好ましい。具体的には、着色部35は、マンセル表色系において、2.5BGからBを経由して10BPまでの色相で表される色を含むことが好ましい。このように表される色は、尿(例えば黄色)や便(例えば茶色)の色相と補色関係又はそれに近い色相を有する。着色部35が尿や便とは全く異なる色相の色を含むことにより、吸収体4に吸収された排泄物が、外表面1bからより一層透けて見えにくくなり、外表面1bを視認した際の排泄物の漏れの誤認をより効果的に抑制することができる。さらに、着色部35が排泄物とは全く異なる色相であることで、着色部35を排泄物の漏れと誤認しにくくなる。したがって、上記構成により、排泄物の視覚的な漏れの誤認をより効果的に防止することができ、おむつ1への信頼感や安心感をより一層高めることができる。なお、バックシート3上の色相は、一般に市販されている測色機器(例えば、コニカミノルタセンシング株式会社製の色彩色差計「CR-400」、分光測色計「CM-700d」等)を用いて測定することができる。
【0038】
[接合部の構成例]
部材間の熱伝導性を接合部によって効果的に制御する観点から、おむつ1は、さらに以下のような構成を適用することができる。
例えば、隣り合う第2接合部46間の最大間隔は、隣り合う第1接合部45間の最大間隔よりも大きいことが好ましい。これにより、第2接合部46の間に広い空間を設けることができ、吸収体4とクッション層7との間の断熱性をより高めることができる。したがって、吸収体4の温度低下に伴う、クッション層7の非肌側の外表面1bの温度低下を効果的に抑制することができる。
【0039】
例えば、隣り合う第2接合部46間の最大間隔は、隣り合う第1接合部45間の最大間隔に対して、好ましくは120%以上、より好ましくは140%以上であり、好ましくは500%以下、より好ましくは400%以下である。
【0040】
(接合部間の最大間隔の測定方法)
第2接合部46間の最大間隔を例に挙げて、その測定方法を説明する。第2接合部46の配置されている領域(例えば第2面4bの第1対向領域43)において、隣り合う第2接合部46間の間隔を10箇所測定し、測定値のうちの最大の値を「隣り合う第2接合部46間の最大間隔」とする。第1接合部45間の最大間隔についても同様に測定することができる。
【0041】
また、バックシート3は、第3接合部33と、第4接合部34と、を有することが好ましい。
第3接合部33は、クッション層7を接合し、第3対向領域31に非連続的に配置される。
第4接合部34は、外装体6を接合し、第4面3bに非連続的に配置される。
第3接合部33及び第4接合部34は、例えば、ホットメルト接着剤等の接着剤や粘着剤等により構成され、上述の間欠塗工パターンを有していることが好ましい。
【0042】
この場合、第3対向領域31において第3接合部33の占める面積の割合は、第4面3bにおいて第4接合部34の占める面積の割合よりも高いことが好ましい。第3面3aの第3対向領域31において第3接合部33の占める面積の割合を高くすることで、クッション層7をバックシート3にしっかりと固定し、クッション層7の位置ずれや破壊を防止することができる。これにより、クッション層7による断熱性や防漏性を維持することができる。また、第4面3bにおいて第4接合部34の占める面積の割合を低くすることで、バックシート3と外装体6との間の密着性を低下させ、これらの間の断熱性を高めることができる。これにより、吸収体4の温度低下に伴う外装体6の温度低下をより確実に抑制することができる。
【0043】
例えば、第3対向領域31において第3接合部33の占める面積の割合は、第4面3bにおいて第4接合部34の占める面積の割合に対して、好ましくは110%以上、より好ましくは120%以上であり、好ましくは300%以下、より好ましくは400%以下である。
【0044】
また、隣り合う第3接合部33間の最大間隔は、隣り合う第4接合部34間の最大間隔よりも小さいことが好ましい。これにより、隣り合う第4接合部34の間の空間を広く確保することができ、バックシート3と外装体6との間の断熱性をより効果的に高めることができる。したがって、吸収体4の温度低下に伴う外装体6の温度低下を、より一層確実に抑制することができる。
【0045】
例えば、隣り合う第3接合部33間の最大間隔は、隣り合う第4接合部34間の最大間隔に対して、好ましくは15%以上、より好ましくは25%以上であり、好ましくは90%以下、より好ましくは80%以下である。
【0046】
[クッション層の構成例]
クッション層7は、断熱性を確保する観点から、高い坪量を有することが好ましい。例えば、クッション層7の坪量は、例えばコアラップシート41の坪量よりも高いことが好ましい。また、クッション層7の坪量は、例えばトップシート2の坪量よりも高いことが好ましい。具体的に、クッション層7の坪量は、断熱性を十分に確保する観点から、好ましくは20g/cm以上、より好ましくは25g/cm以上であり、剛性の上昇を抑制して良好な着用感を維持する観点から、好ましくは50g/cm以下、より好ましくは40g/cm以下である。
【0047】
(坪量の測定方法)
測定対象の部材を片刃剃刀を用いて切断し、あらかじめ定めた面積となるように測定片を得る。それらの測定片の重量を電子天秤(例えば、株式会社エー・アンド・デイ製 電子天秤GR-300、精度:小数点以下4桁)を用いて測定する。求めた重量を各部の測定片の面積で除して測定片の坪量を算出する。各部のそれぞれについて、測定片5個の坪量の平均を坪量とする。
【0048】
また、クッション層7の厚みは、断熱性を十分に確保する観点から、好ましくは1.5mm以上、より好ましくは2mm以上であり、好ましくは7mm以下、より好ましくは6mm以下である。
【0049】
(厚みの測定方法)
坪量の測定方法と同様に、測定対象から測定片を得る。測定片を5kPaの圧力で10分間加圧し、除重後すぐに測定を行う。除重後のサンプルの中央域に、大きさ20mm×20mm、厚み3mmのアクリルプレートを置き、非接触式レーザー変位計(例えば、株式会社キーエンス製 レーザーヘッドLK-G30、変位計LK-GD500)を用い、測定片の厚みを測定する。切り出した測定片の大きさが小さく、非接触式レーザー変位計により測定し難い場合には、測定片の断面を、例えば、マイクロスコープ(株式会社キーエンス製 VHX-1000)を用いて20~100倍の倍率で観察し、測定してもよい。
【0050】
さらに、クッション層7は、疎水性繊維を含むことが好ましく、さらに、疎水性繊維を主体として構成されることがより好ましい。クッション層7の全構成繊維に占める疎水性繊維の割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上であり、100質量%でもよい。クッション層7が疎水性繊維を含むことにより、クッション層7が水分を外表面1b側に透過しにくくなり、排泄物の漏れやその誤認をより確実に抑制することができる。
【0051】
疎水性繊維としては、疎水性の合成繊維、特に疎水性の熱可塑性繊維を用いることができる。熱可塑性繊維の素材としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド;ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸アルキルエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0052】
また、クッション層7は、繊維間に空気を十分に含んで断熱性の高い構成とする観点から、トップシート2よりも嵩高な不織布で構成されることが好ましい。「嵩高な不織布」とは、その内部に、不織布の構成繊維によって画成される空間部(繊維等の不織布構成材料が存在していない部分)を多数有しており、不織布の全体積に占める空間部の割合(空間占有率)が大きい不織布を意味する。「トップシート2よりも嵩高な不織布」とは、トップシート2よりも見かけ密度が低い不織布を意味する。具体的な嵩高な不織布の例としては、トップシート2の繊維径よりも大きい繊維径を有する不織布や、エアスルー不織布、レジンボンド不織布、エアレイド不織布等の、繊維間の空間部を形成しやすい製法で製造された不織布等が挙げられる。
【0053】
(見かけ密度の測定方法)
測定対象となる部材から、4cmの範囲の部分を切断し、測定片を得る。測定片の切断面を、無荷重の状態でマイクロスコープ(株式会社キーエンス製 VHX-100)を用いて20~100倍の倍率で観察し、各部材の見かけ厚みを測定する。次いで、測定片の坪量を上述のように測定し、当該坪量を測定した見かけ厚みで除して、見かけ密度を測定する。各部材について5個の測定片の見かけ密度の平均値を算出し、各部材の見かけ密度とする。
【0054】
[吸収体の肌側と非肌側の厚みの構成例]
図3に例示するように、おむつ1では、吸収体4の第1面4aからトップシート2で構成された肌側表面1aまでの厚みD1が、吸収体4の第2面4bから外装体6で構成された外表面1bまでの厚みD2よりも薄いことが好ましい。厚みD1,D2は、おむつ1全体から吸収体4を含む測定片を切り出し、上記マイクロスコープによって測定片の断面を20~100倍の倍率で観察することで、測定することができる。なお、厚みD2は、クッション層7を含む部分の厚みとする。
【0055】
第1面4aから肌側表面1aまでの厚みD1が薄いことで、着用者の体温による熱がトップシート2を介して吸収体4に伝導しやすくなり、吸収体4の温度低下を抑制することができる。また、第2面4bから外表面1bまでの厚みが厚いことで、第2面4bと外表面1bの間の熱伝導性を低下させ、吸収体4の温度低下に伴う外表面1bの温度低下を抑制することができる。したがって、介助者等が外表面1bを触った際の排泄物の漏れの誤認を防止することができる。
【0056】
第1面4aから肌側表面1aまでの厚みD1は、第2面4bから外表面1bまでの厚みD2に対して、好ましくは15%以上、より好ましくは20%以上であり、好ましくは90%以下、より好ましくは80%以下である。
【0057】
[トップシートの構成例]
トップシート2は、熱伝導性を高める観点から、複数の開孔を有することが好ましい。開孔は、トップシート2の凹凸に伴って凹部の底部に形成されていてもよく、あるいは略平坦な面に形成されていてもよい。このような開孔により、着用者の体温による熱が開孔を介して吸収体4に伝導しやすくなり、吸収体4の温度低下をより効果的に抑制することができる。
【0058】
[バックシートの構成例]
バックシート3は、複数の微細孔(ミクロボイド)を有する透湿性フィルムで構成されることが好ましい。透湿性フィルムは、例えば樹脂製フィルムで構成され、単層構造又は積層構造を有する。透湿性フィルムは、例えば、疎水性の熱可塑性樹脂(ポリオレフィン系樹脂等)と、該熱可塑性樹脂と相溶性のない無機微粒子(炭酸カルシウム等)とを、溶融混練してフィルムを形成し、該フィルムを一軸又は二軸延伸して得られる。フィルムの形成は、例えば、インフレーション法、Tダイ法等を用いることができる。このように製造される透湿性フィルムにおいては、延伸により熱可塑性樹脂と無機微粒子との界面を起点として微細孔が多数形成される。
【0059】
図5(A)及び(B)に例示するように、透湿性フィルム30では、延伸時に炭酸カルシウム粒子などの無機微粒子36に延伸方向Eに沿った力が加わり、無機微粒子36が延伸方向Eに引きずられることで、微細孔37が形成される。このため、透湿性フィルム30で構成されたバックシート3は、無機微粒子36と、無機微粒子36に隣接する微細孔37と、を含む。
【0060】
バックシート3では、例えば、0.06μm以上0.16μm以下の範囲の細孔径を有する微細孔37の単位質量当たりの細孔容量が、2.5μm以上3.5μm以下の範囲の細孔径を有する微細孔37の単位質量当たりの細孔容量よりも大きいことが好ましい。これにより、0.06μm以上0.16μm以下の範囲の小さな細孔径を有する微細孔37を多数形成することができ、水蒸気(湿気)の透過性を高めることができる。その一方で、2.5μm以上3.5μm以下の範囲の細孔径を有する微細孔37の数を規制することができ、水分の漏れをより確実に防止することができる。したがって、透湿性と防漏性を両立するバックシート3を得ることができる。
【0061】
(細孔容量の測定方法)
細孔容量は、JIS R 1655に規定される水銀圧入法に準じて、以下の方法で測定することができる。まず、測定対象のバックシート3から、所定のサイズ(例えば10mm×10mm)の測定サンプルを切り出す。この測定サンプルを、水銀ポロシメーター(例えば、「オートポアIV9520」、株式会社島津製作所製)にセットし、細孔径0.06μm以上3.5μm以下の領域の細孔径分布を測定する。得られた細孔径分布(図6参照)に基づいて、細孔径0.06μm以上0.16μm以下の領域の累積細孔容量と、細孔径2.5μm以上3.5μm以下の領域の累積細孔容量とを測定する。細孔径0.06μm以上0.16μm以下の領域の累積細孔容量が、細孔径2.5μm以上3.5μm以下の領域の累積細孔容量よりも大きかった場合、「0.06μm以上0.16μm以下の範囲の細孔径を有する微細孔の単位質量当たりの細孔容量が、2.5μm以上3.5μm以下の範囲の細孔径を有する微細孔の単位質量当たりの細孔容量よりも大きい」と判断する。
【0062】
このように、小さな微細孔37を多数形成する方法としては、例えば、透湿性フィルム30を均一に延伸する方法が挙げられる。図5(A)に示すように、透湿性フィルム30の延伸が不均一だった場合は、透湿性フィルム30の一部に十分に延伸されていない領域が生じ、小さな無機微粒子36を起点として十分に開孔できない部分(太線で示した未開孔部38)が形成され得る。さらに、透湿性フィルム30の面内において、延伸力が大きい領域では、無機微粒子36が大きく引きずられることで大きな微細孔37が形成され、延伸力が小さい領域では、無機微粒子36があまり引きずられないことで小さな微細孔37が形成されやすくなる。このため、微細孔37の大きさが、無機微粒子36の大きさと相関を有しないことがある。
【0063】
これに対し、図5(B)に示すように、透湿性フィルム30が均一に延伸された場合は、小さな無機微粒子36にも十分に延伸力が付加される。この結果、図5(A)の例では未開孔部38であった部分が、図5(B)では十分に開孔した微細孔37(太線で示した部分)となり、小さな微細孔37を増やすことができる。また、透湿性フィルム30の面内における延伸が均一である場合には、無機微粒子36の大きさに応じた微細孔37が形成されやすいことから、微細孔37の大きさと無機微粒子36の大きさとが正に相関する傾向を有する。
【0064】
透湿性フィルム30が均一に延伸されている指標として、バックシート3では、厚み方向Zから見た平面視において、0.01μm以上0.5μm以下の大きさの無機微粒子36に隣接して配置される微細孔37の細孔径は、1.0μm以上1.5μm以下の大きさの無機微粒子36に隣接して配置される微細孔37の径よりも小さいことが好ましい。上記構成では、透湿性フィルム30が均一に延伸されていることにより、小さな無機微粒子36に隣接する小さな微細孔37の数を増加させることができ、透湿性及び防漏性の高いバックシート3を得ることができる。
【0065】
(無機微粒子のサイズ及び微細孔の細孔径の測定方法)
バックシート3から所定のサイズ(例えば10mm×10mm)の評価サンプルを切り出す。切り出した評価サンプルを常法に従って固定し、走査型電子顕微鏡(SEM)で1000倍に拡大して撮像する。1つの画像から、画像解析技術を用いて、無機微粒子とそれに隣接する微細孔のそれぞれに対応する部分の輪郭を抽出する。抽出された無機微粒子に対応する領域のサイズと、それに隣接する微細孔に対応する領域のサイズとをそれぞれ測定する。なお、微細孔の細孔径は、抽出された微細孔に対応する領域のサイズ(面積)から円換算直径を算出することで得られる。1枚のバックシート3から100箇所の画像を撮像し、0.01μm以上0.5μm以下の大きさの無機微粒子に隣接して配置される微細孔の細孔径の平均値と、1.0μm以上1.5μm以下の大きさの無機微粒子に隣接して配置される微細孔の細孔径の平均値とを算出する。
【0066】
上述のように、無機微粒子36の大きさに応じた微細孔37が形成される場合、無機微粒子36の大きさの分布を制御することで、微細孔37の細孔径も制御することができる。このような観点から、バックシート3では、厚み方向Zから見た平面視において、0.01μm以上0.5μm以下の大きさの無機微粒子36の単位面積当たりの粒子数は、0.5μm以上2.0μm未満の大きさの無機微粒子36の単位面積当たりの粒子数よりも少なく、かつ、2.0μm以上の無機微粒子36の単位面積当たりの粒子数は、0.5μm以上2.0μm未満の大きさの無機微粒子36の単位面積当たりの粒子数よりも少ないことが好ましい。上記構成により、微小な微細孔37を多く形成でき、透湿性及び防漏性の双方を充足するバックシート3を得ることができる。
【0067】
また、バックシート3は、上述のように均一に延伸されることで、防漏性を維持しつつも薄く構成されることが好ましい。このような観点から、バックシート3の坪量は、好ましくは8g/cm以上、より好ましくは10g/cm以上であり、好ましくは20g/cm以下、より好ましくは18g/cm以下である。
【0068】
バックシート3の透湿度は、好ましくは2.7g/100cm・h以上、より好ましくは3g/100cm・h以上であり、好ましくは12g/100cm・h以下、より好ましくは10g/100cm・h以下である。これにより、バックシート3が十分に高い透湿性を有し、ムレの少ない快適なおむつ1を提供することができるとともに、バックシート3の防漏性も確保することができる。
【0069】
(透湿度の測定方法)
透湿度は、JIS Z0208に準じて測定することができる。まず、吸湿剤として塩化カルシウムを収容したカップを準備し、このカップを水平になるように配置する。試験前の塩化カルシウムの質量は、予め測定しておく。バックシートをカップの内径よりも10mm大きい直径を持つ円形に切断して試験片を準備し、この試験片をカップの上縁に配置し、試験片の周縁がカップの上縁の同心円上に位置するように調整する。カップの上縁に沿ったリング状のパッキンを準備し、試験片の周縁がカップの上縁に密着するように当該パッキンを押し込む。さらに、その上にリング状のおもりを配置し、透湿性フィルムがカップの上縁に固定された試験体を作製する。この試験体を、温度30℃±0.5℃、湿度90±2%RHにおいて1時間放置し、試験後の塩化カルシウムの質量を測定する。試験後の塩化カルシウムの質量から、試験前の塩化カルシウムの質量を減じた値を算出し、これを試験片の水蒸気透過面100cm当たりの値に換算して、透湿度を算出する。
【0070】
[外装体の構成例]
図7に示すように、外装体6は、複数のシート材60の積層構造を有していてもよい。図7に示す例では、外装体6が2枚のシート材60a,60bを有する。各シート材60a,60bは、例えば不織布で構成され、上述の疎水性繊維を主体として含むことがより好ましい。各シート材60を構成する不織布としては、例えば、エアスルー不織布、スパンボンド不織布及びスパンボンド-メルトブローン-スパンボンド(SMS)不織布等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0071】
特に、複数のシート材60a,60bのうち、外表面1bを構成する最外層のシート材60aは、エアスルー不織布で構成されることが好ましい。エアスルー不織布は、繊維ウェブに熱風を吹き付けて繊維を融着させるため、繊維間に隙間が形成されやすい。このため、エアスルー不織布を用いたシート材60では、内部に空気を含みやすく、熱伝導性が低下しやすい。したがって、エアスルー不織布を介助者等が触れる最外層のシート材60として用いることで、吸収体4の温度低下に伴う外表面1bの温度低下を効果的に抑制することができる。
【0072】
さらに、外装体6は、複数のシート材60のうち厚み方向Zに隣り合うシート材60a,60bを接合する第5接合部63をさらに有することが好ましい。これにより、隣り合うシート材60a,60bが固定され、外装体6の破れなどを抑制することができるとともに、シート材60a,60b間に弾性部材(図7の例ではレッグ弾性部材62)を固定することが容易になる。
【0073】
例えば、第5接合部63は、隣り合うシート材60a,60b間において、非連続的に配置されることが好ましい。これにより、第5接合部63が非接合部と交互に配置されることになり、隣り合うシート材60間の熱伝導性を低下させ、クッション層7及びバックシート3の温度低下に伴う、最外層のシート材60aの温度低下を抑制することができる。したがって、外表面1bの温度低下をより効果的に防止し、排泄物の漏れの誤認を抑制することができる。
【0074】
[他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加えることができる。
【0075】
上述の実施形態では、1つの外装体6が、腹側領域A、背側領域B及び股下領域Cにわたって連続して形成される例について説明したが、これに限定されない。例えば、外装体6は、腹側領域A、背側領域B及び股下領域Cが分割された構成を有していてもよい。
【0076】
本発明に係る吸収性物品は、外装体を有する吸収性物品であればよく、パンツ型使い捨ておむつの他、展開型使い捨ておむつ、生理用物品(例えばパンツ型の生理用ナプキン)などであってもよい。
【符号の説明】
【0077】
1…吸収性物品(使い捨ておむつ)
2…トップシート
3…バックシート
4…吸収体
4a…第1面
4b…第2面
6…外装体
7…クッション層
43…第1対向領域
44…第2対向領域
45…第1接合部
46…第2接合部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7