(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123539
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】使い捨ておむつ
(51)【国際特許分類】
A61F 13/494 20060101AFI20240905BHJP
A61F 13/49 20060101ALI20240905BHJP
A61F 13/535 20060101ALI20240905BHJP
A61F 13/532 20060101ALI20240905BHJP
A61F 13/514 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
A61F13/494 115
A61F13/49 315A
A61F13/535 200
A61F13/532 200
A61F13/494 111
A61F13/49 315Z
A61F13/514 100
A61F13/514 210
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031045
(22)【出願日】2023-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】犹守 沙耶香
(72)【発明者】
【氏名】石橋 京子
(72)【発明者】
【氏名】川口 宏子
(72)【発明者】
【氏名】松久 誠
(72)【発明者】
【氏名】鹿谷 智也
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200BA07
3B200BB09
3B200BB11
3B200CA08
3B200CA09
3B200DA02
3B200DA11
3B200DB05
3B200DD01
3B200DD02
3B200EA12
(57)【要約】
【課題】立体ギャザーからの排泄物の漏れを抑制し、高い着用感の使い捨ておむつに関する。
【解決手段】使い捨ておむつは、腹側に配される腹側領域と、股間部に配される股下領域と、背側部に配される背側領域と、に区分される。使い捨ておむつは、吸収体と、トップシートと、立体ギャザーと、バックシートと、外装体と、を具備する。トップシートは、吸収体の肌側に配置される。立体ギャザーは、縦方向の両側部に配置され、肌側に向けて起立する。バックシートは、吸収体の非肌側に配置され、立体ギャザーから横方向外側に向かって延出する延出部を有する。外装体は、バックシートの非肌側に配置されレッグ開口部を形成する外装体であって、レッグ開口部にその周方向に沿って第1弾性部材が配されて形成されたレッグギャザーを有する。バックシートは透湿性を有し、延出部と外装体とは非接合であり、延出部と第1弾性部材とは非接合である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の腹側から股間部を通って背側に延びる縦方向と、前記縦方向に直交し着用者の左右方向に対応する横方向と、を有し、かつ、前記腹側に配される腹側領域と、前記股間部に配される股下領域と、前記背側部に配される背側領域と、に区分される使い捨ておむつであって、
吸収体と、
前記吸収体の肌側に配置されるトップシートと、
前記縦方向の両側部に配置され、肌側に向けて起立する立体ギャザーと、
前記吸収体の非肌側に配置され、前記立体ギャザーから前記横方向外側に向かって延出する延出部を有するバックシートと、
前記バックシートの非肌側に配置されレッグ開口部を形成する外装体であって、前記レッグ開口部にその周方向に沿って第1弾性部材が配されて形成されたレッグギャザーを有する外装体と、
を具備し、
前記バックシートは透湿性を有し、前記延出部と前記外装体とは非接合であり、前記延出部と前記第1弾性部材とは非接合である
使い捨ておむつ。
【請求項2】
前記延出部の横方向の寸法は2mm以上である
請求項1に記載の使い捨ておむつ。
【請求項3】
前記吸収体は、前記股下領域において前記縦方向にそれぞれ延び、前記横方向中央を挟んで配置された一対の変形誘導部を有し、
前記吸収体は、前記一対の変形誘導部の間に位置する中央領域と、前記中央領域の前記横方向外側に位置するサイド領域とを有する
請求項1又は2に記載の使い捨ておむつ。
【請求項4】
前記吸収体は、前記サイド領域に配置され前記縦方向に延びる第2弾性部材を更に有する
請求項3に記載の使い捨ておむつ。
【請求項5】
前記立体ギャザーは、当該立体ギャザーの基端部近傍に配置され前記縦方向に延びる第3弾性部材を有する
請求項1から4のいずれか1項に記載の使い捨ておむつ。
【請求項6】
前記第1弾性部材は、前記股下領域で前記横方向に延在する部位を有し、
前記股下領域で、前記横方向に延在する部位と前記バックシートが重なる
請求項1から5のいずれか1項に記載の使い捨ておむつ。
【請求項7】
前記バックシートの透湿度は1.5g/100cm2・h以上である
請求項1から6のいずれか1項に記載の使い捨ておむつ。
【請求項8】
前記バックシートの坪量は20g/m2以下である
請求項1から7のいずれか1項に記載の使い捨ておむつ。
【請求項9】
前記バックシートは、複数の微細孔を有する透湿性フィルムで構成され、
前記バックシートでは、
0.06μm以上0.16μm以下の範囲の開孔径を有する微細孔の単位質量当たりの細孔容量が、2.5μm以上3.5μm以下の範囲の開孔径を有する微細孔の単位質量当たりの細孔容量よりも大きい
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の使い捨ておむつ。
【請求項10】
前記バックシートは、複数の微細孔を有する透湿性フィルムで構成され、
前記バックシートは、前記微細孔に隣接して配置された微細な炭酸カルシウム粒子を有し、
前記バックシートでは、前記厚み方向から見た平面視において、
0.01μm2以上0.5μm2以下の大きさの前記炭酸カルシウム粒子に隣接して配置される前記微細孔の開孔径は、1.0μm2以上1.5μm2以下の大きさの前記炭酸カルシウム粒子に隣接して配置される前記微細孔の開孔径よりも小さい
請求項1から9のいずれか一項に記載の使い捨ておむつ。
【請求項11】
前記バックシートは、複数の微細孔を有し、
前記バックシートは、前記微細孔に隣接して配置された微細な炭酸カルシウム粒子を有し、
前記バックシートでは、前記厚み方向から見た平面視において、
0.01μm2以上0.5μm2以下の大きさの前記炭酸カルシウム粒子の単位面積当たりの粒子数は、0.5μm2以上2.0μm2以下の大きさの前記炭酸カルシウム粒子の単位面積当たりの粒子数よりも少なく、
2μm2以上の大きさの前記炭酸カルシウム粒子の単位面積当たりの粒子数は、0.5μm2以上2.0μm2以下の大きさの前記炭酸カルシウム粒子の単位面積当たりの粒子数よりも少ない
請求項1から10のいずれか一項に記載の使い捨ておむつ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨ておむつに関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつは、例えば、トップシートと、バックシートと、トップシート及びバックシートの間に配置された吸収体と、を備える。典型的には、使い捨ておむつには、レッグ開口部からの排泄物の漏れを防止するために、着用者の肌側に向かって起立する立体ギャザーが設けられている。しかしながら、排泄物量が多い、あるいは着用者の身体動作が多いと、使い捨ておむつがずり落ちて隙間が発生し、排泄物が立体ギャザーを乗り越えて漏れることがある。
【0003】
これに対し、特許文献1に記載される使い捨ておむつでは、立体ギャザーとなる第1防漏カフの他、吸収体幅方向外側にバックシートが延出し外装体に接合してなる第2防漏カフを設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載される使い捨ておむつでは、外装体と延出したバックシートとが接合されていることで、接合部が硬くなり、着用感が低下する懸念があった。
【0006】
本発明は、立体ギャザーからの排泄物の漏れを抑制し、高い着用感が得られる使い捨ておむつに関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態に係る使い捨ておむつは、着用者の腹側から股間部を通って背側に延びる縦方向と、上記縦方向に直交し着用者の左右方向に対応する横方向と、を有し、かつ、上記腹側に配される腹側領域と、上記股間部に配される股下領域と、上記背側部に配される背側領域と、に区分される。
上記使い捨ておむつは、吸収体と、トップシートと、立体ギャザーと、バックシートと、外装体と、を具備する。
上記トップシートは、上記吸収体の肌側に配置される。
上記立体ギャザーは、上記縦方向の両側部に配置され、肌側に向けて起立する。
上記バックシートは、上記吸収体の非肌側に配置され、上記立体ギャザーから上記横方向外側に向かって延出する延出部を有する。
上記外装体は、上記バックシートの非肌側に配置されレッグ開口部を形成する外装体であって、上記レッグ開口部にその周方向に沿って第1弾性部材が配されて形成されたレッグギャザーを有する。
上記バックシートは透湿性を有し、上記延出部と上記外装体とは非接合であり、上記延出部と上記第1弾性部材とは非接合である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の使い捨ておむつによれば、立体ギャザーからの排泄物の漏れを抑制し、高い着用感が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る使い捨ておむつの一例を示す概略斜視図である。
【
図2】第1の実施形態に係わる使い捨ておむつを展開した斜視図である。
【
図3】第1の実施形態に係わる使い捨ておむつの平面図であり、使い捨ておむつを展開し、各部の弾性部材を伸張させて平面状に広げた状態で、肌側(表面材側)から見た態様を示す。
【
図4】
図3のIV-IV線で切断した第1の実施形態に係わる使い捨ておむつの模式的な断面図である。
【
図5】第1の実施形態に係わる使い捨ておむつの一部を構成する吸収性コアの一例を示す平面図である。
【
図6】着用時における第1の実施形態に係わる使い捨ておむつの一例を示す模式的な断面図である。
【
図7】第1の実施形態に係わる使い捨ておむつの一部を構成するバックシートの細孔径分布の一例を示すグラフであり、横軸は細孔径(μm)、縦軸は細孔容量(ml/g)である。
【
図8】上記バックシートを構成する透湿フィルムの構造を模式的に示した平面図である。
【
図9】着用時における第2の実施形態に係わる使い捨ておむつの模式的な断面図である。
【
図10】第3の実施形態に係わる使い捨ておむつの平面図であり、使い捨ておむつを展開し、各部の弾性部材を伸張させて平面状に広げた状態で、肌側(表面材側)から見た態様を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、以下の実施形態では、本発明に係る使い捨ておむつがパンツ型使い捨ておむつとして構成される例を挙げる。
また、以下の各実施形態の説明において、既出の構成については同様の符号を付し説明を省略する場合がある。また、
図6及び
図9において、図面を見やすくするために、接着剤の図示を省略している。
【0011】
<第1実施形態>
[使い捨ておむつの全体構成]
図1~
図4には、本発明の第1実施形態に係る吸収性物品として、パンツ型使い捨ておむつ1が示されている。パンツ型使い捨ておむつ1は、以下、おむつ1と称する。
おむつ1は、縦方向X、横方向Y及び厚み方向Zを有する。縦方向Xは、着用者の腹側から股間部を通って背側に延びる。横方向Yは、縦方向Xに直交し、着用者の左右方向に対応する。厚み方向Zは、おむつ1の縦方向X及び横方向Yに直交する方向とする。
本明細書において、横方向Yに関しては、おむつ1を横方向Yに2等分する縦中心線CLに近づく側を「横方向Y内側」といい、縦中心線CLから遠ざかる側を「横方向Y外側」という。
本明細書において、各構成を厚み方向Zから見る場合、平面視という。なお、本明細書では、各構成における肌側とは、使い捨ておむつ着用時の着用者の肌側に位置する側を示す。各構成における非肌側とは、使い捨ておむつ着用時の着用者の肌側とは反対側に位置する側を示す。また、厚み方向Zに関しては、着用時に着用者の肌に近い側を上、着衣に近い側を下ということがある。
【0012】
図1~
図3に示すように、おむつ1は、ウエスト開口部1W及び一対のレッグ開口部ILを備え、着用時に、着用者の胴回り及び股間部に配置される。
おむつ1は、着用時において着用者の腹側に配置される腹側領域Aと、着用時において着用者の背側に配置される背側領域Bと、腹側領域A及び背側領域Bの間に位置し着用時において着用者の股間部に配置される股下領域Cと、に区分される。腹側領域Aと、股下領域Cと、背側領域Bと、は、縦方向Xに沿って配置されている。腹側領域A及び背側領域Bは、横方向Yにおける側縁部A1,B1同士が接合されて、ウエスト開口部1Wを形成する。股下領域Cには脚繰りが形成され、この脚繰りがレッグ開口部1Lを形成する。
なお、
図3は、おむつ1を展開し、各部の弾性部材を伸張させて、弾性部材の影響を一切排除した状態の設計寸法となるように平面状に広げた形態を示す。おむつ1を展開するとは、腹側領域Aの側縁部A1及び背側領域Bの側縁部B1を分離して展開することを意味する。
【0013】
図4に示すように、おむつ1は、トップシート2と、吸収体4と、サイドシート5と、バックシート3と、外装体6と、を有する。おむつ1は、外装体6、バックシート3、吸収体4及びトップシート2が厚み方向Zに積層された構成を有する。これらの構成は、例えば、ホットメルト接着剤等の公知の接合手段により互いに接合されている。
【0014】
図1~
図3に示すように、吸収体4は、腹側領域A、股下領域C及び背側領域Bにわたって配置される。吸収体4は、トップシート2とバックシート3の間に配置される。吸収体4は、着用者の尿などの液状排泄物(以下、「排泄液」)をトップシート2側の面から吸収し、内部で拡散させて当該排泄液を保持する。
吸収体4は、吸収性コア40と、コアラップシート41と、を有する。
吸収性コア40は、排泄液を保持することが可能な吸収性材料を主体として構成される。具体的に、吸収性コア40は、親水性繊維の積繊体、当該積繊体に吸水性ポリマーを担持させた構成、又は吸水性ポリマーのみからなる構成等を有する。
コアラップシート41は、吸収性コア40を被覆し、例えば吸収性コア40の形状を保持する機能等を有する。コアラップシート41は、例えばティッシュペーパー状の薄く柔らかい紙や液透過性の不織布等で形成される。
吸収体4の詳細については後述する。
【0015】
トップシート2は、おむつ1の着用時、着用者の肌に接するように配置される。トップシート2は、吸収体4の肌側(厚み方向Z上方側)に少なくとも配置される。
図4に示す例において、トップシート2は、吸収体4の肌側から横方向Yにおける側縁部4sに延び、さらに吸収体4の非肌側まで回り込むように配置される。
トップシート2は、液透過性のシート材として構成され、合成繊維又は天然繊維を含む不織布等で形成される。トップシート2の材料としては、吸収性物品の技術分野において通常用いられる材料を用いることができる。シート材としては、例えばカード法により製造された不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、スパンレース不織布及びニードルパンチ不織布、メルトブローン不織布、スパンレース不織布及びニードルパンチ不織布等の種々の不織布を用いることができる。
【0016】
外装体6は、吸収体4の非肌側(厚み方向Z下方)、より詳細にはバックシート3の非肌側に配置され、例えば、おむつ1の非肌側の外表面を形成する。外装体6は、良好な肌触りを実現する観点から、不織布で構成されることが好ましく、さらに、防漏性を付与する観点から、例えば、液難透過性、水蒸気透過性及び撥水性等の機能を有していることが好ましい。
図4に示す例において、外装体6は、肌側シート61と、非肌側シート62と、を含む。
図1~
図3に示すように、外装体6は、ウエスト開口部1W及びレッグ開口部1Lを形成する。外装体6は、ウエスト開口部1Wに沿って配置されたウエスト弾性部材63と、レッグ開口部1Lに沿って配置された第1弾性部材としてのレッグ用弾性部材64と、をさらに含む。外装体6は、レッグ用弾性部材64が配されて形成されたレッグギャザーG1を有する。外装体6は、複数のシート材で構成されることが好ましく、ウエスト弾性部材63及びレッグ用弾性部材64は、例えば、肌側シート61及び非肌側シート62の間に配置される。外装体6はウエスト開口部1Wで折り返され、ウエスト開口端付近が3層以上のシートから構成されていてもよい。
【0017】
一対のサイドシート5は、トップシート2の横方向Y側部の肌側に配置され、立体ギャザーG3を形成する。具体的に、サイドシート5の非肌側の端部は、接着剤やヒートシール等によって、非肌側の部材(
図4の例ではバックシート3)に接合されている。一方、サイドシート5の肌側の端部は、他の部材に接合されない自由端部として構成され、糸状又は帯状の先端部近傍弾性部材51が配置される。先端部近傍弾性部材51は、立体ギャザーG3の先端部53の近傍に配される。図に示す例では、1本の先端部近傍弾性部材51が配される例を挙げるが、複数本であってもよい。先端部近傍弾性部材51は、縦方向Xに延び、伸張した状態でサイドシート5に取り付けられる。これにより、着用時において、先端部近傍弾性部材51の収縮によってサイドシート5の肌側の端部が肌側に起立し、立体ギャザー50が形成される。サイドシート5は、例えば、液難透過性及び撥水性等の機能を有するシート材で構成され、一例として不織布で構成される。
【0018】
バックシート3は、吸収体4の非肌側に配置される。バックシート3は、本実施形態において、樹脂フィルムで構成される。バックシート3は、液難透過性及び撥水性等の機能を有していてもよい。また後述するように、バックシート3は透湿性を有していてもよい。バックシート3は、吸収体4と外装体6との間に配置される。バックシート3は、接着剤H1によって吸収体4の非肌側面に接合されており、接着剤H2によって外装体6に接合されている。バックシート3の詳細については後述する。
【0019】
[吸収体の構成]
図5に示すように、吸収体4は、股下領域Cにおいて縦方向Xに延び、横方向Y中央を挟んで配置された一対の変形誘導部42を有する。
変形誘導部42は、吸収体4の折れ曲がりの起点となる部分である。変形誘導部42は、吸収体4の折れ曲がりを誘導できる構成であればよく、例えば、吸収性コア40のスリット、低坪量部、圧搾部、又は折り癖のついた部分のいずれかで構成され得る。
スリットとは、平面視において細長い形状を有し、吸収性コア40を厚み方向Zに貫通する貫通孔を意味する。
低坪量部とは、周囲よりも吸収性コア40の坪量が低い部分を意味する。
圧搾部とは、圧搾加工により吸収性コア40が圧搾され、厚みが薄くなった部分を意味する。
折り癖のついた部分は、吸収体4又は吸収性コア40を折り曲げてプレスする処理等によって折り癖が形成された部分である。
これらのうち、変形誘導部42は、折れ曲がりを確実に誘導する観点から、スリット又は低坪量部で構成されることが好ましく、
図4及び5に示すように、スリットで構成されることがより好ましい。
【0020】
変形誘導部42は、少なくとも股下領域Cに配置されていればよく、腹側領域A又は背側領域Bの少なくとも一方まで延出していてもよい。また、変形誘導部42は、股下領域Cの全長にわたって延びている構成に限定されず、股下領域Cの少なくとも一部において、縦方向Xに延びていればよい。
「変形誘導部42が縦方向Xに延びる」とは、変形誘導部42が縦方向Xに平行に延びる態様に限定されず、全体として腹側から背側に延びていればよい。
また、変形誘導部42の平面視における形状も、縦方向Xに細長い形状であればよく、特に限定されない。
図5に示す例では、変形誘導部42が線状(帯状)に構成されており、変形誘導部42の延在方向に直交する幅方向の寸法がほぼ一定である。あるいは、変形誘導部42では、当該幅方向の寸法が当該延在方向に沿って変化してもよい。
【0021】
吸収体4の横方向Y中央とは、おむつ1を横方向Yに2等分する縦中心線CL上の領域を意味する。つまり、一対の変形誘導部42は、縦中心線CLの横方向Y両側に配置される。この一対の変形誘導部42により、中央領域43とサイド領域44とが区画される。
【0022】
すなわち、吸収体4は、一対の変形誘導部42の間に位置する中央領域43と、中央領域43の横方向Y外側に位置するサイド領域44と、を有する。
中央領域43は、一対の変形誘導部42に挟まれた領域である。つまり、
図5に示すように、中央領域43の横方向Yにおける側縁部43sは、変形誘導部42との境界部であって、変形誘導部42の横方向Y内側の内縁部に一致する。中央領域43の縦方向Xにおける端部は、一対の変形誘導部42の縦方向Xにおける端部間を結んだ部分である。
サイド領域44は、中央領域43の側縁部43s(つまり、変形誘導部42の内縁部)よりも横方向Y外側に位置する領域となる。
【0023】
ここで、着用者の股間幅は、一般に吸収体4の横方向Yにおける幅よりも狭いため、着用時には、変形誘導部42を起点として吸収体4が折れ曲がる。すなわち、
図6に示すように、吸収体4は、着用者の股間部Kに収まるように変形し、中央領域43からサイド領域44が肌側に起立する。これにより、吸収体4は、中央領域43を底部、サイド領域44を起立部とする凹状に変形する。吸収体4の凹状の変形に基づいて、トップシート2も変形しておむつ1の肌側面に凹部Rが形成され、尿や便などの排泄物が一時的に溜まり易くなり、中央領域43により多く排泄液が供給されやすくなる。
【0024】
また、
図2及び
図4に示すように、立体ギャザーG3の基端部54は、立体ギャザーG3の付け根部分であり、吸収体4の非肌側に位置する。このため、着用時、立体ギャザーG3が、吸収体4の非肌側にある基端部54から吸収体4の左右両側縁近傍を通って肌側に立ち上がることで、吸収体4のサイド領域44がより一層起立しやすくなって、吸収体4が凹状の形状をより安定して維持でき、凹部Rに排泄物が溜まり易くなり、中央領域43により多く排泄液が供給されやすくなる。
【0025】
図4及び
図6に示すように、おむつ1において、吸収体4は、サイド領域44に配置され縦方向Xに延びる第2弾性部材としての吸収体用弾性部材45を有する。尚、吸収体用弾性部材45を有さないおむつとしてもよい。
吸収体用弾性部材45は、帯状又は糸状の弾性部材である。「吸収体用弾性部材45が縦方向Xに延びる」とは、吸収体用弾性部材45が縦方向Xに平行な態様に限定されず、全体として、腹側から背側に延びている態様を含む。
吸収体用弾性部材45は、自然長から伸張させた状態で、左右両側縁に接着剤等によって取り付けられる。吸収体用弾性部材45は、股下領域Cにおいて少なくとも延び、サイド領域44の縦方向X腹側及び/又は背側まで延出していてもよい。
【0026】
上記構成では、吸収体用弾性部材45によって、吸収体4のサイド領域44に縦方向Xに沿った収縮力が作用し、吸収体4の両側縁に吸収体ギャザーG2が形成される。これにより、着用時に、サイド領域44が変形誘導部42を起点に起立しやすくなる。したがって、着用時に、吸収体4が凹状の形状をより安定して維持でき、凹部Rに排泄物が溜まり易くなり、中央領域43により多く排泄液が供給されやすくなる。
【0027】
吸収体用弾性部材45は、吸収体4の横方向Yにおける側縁部4sに配置されていることが好ましい。これにより、サイド領域44の全体を安定して起立させることができる。この場合、吸収体用弾性部材45の脱落を抑制する観点から、吸収体用弾性部材45は、側縁部4sの外表面(例えばコアラップシート41上)に配置され、トップシート2によって覆われていることが好ましい。また、吸収体用弾性部材45が側縁部4sに配置される他の態様としては、吸収性コア40の横方向Yにおける側縁部とコアラップシート41との間に配置されてもよい。
【0028】
[バックシートの構成]
バックシート3は、排泄液や汗などに由来する水蒸気を外部に放出してムレを抑制する観点から、透湿性を有する。「透湿性」とは、気流移動を伴わず、熱力学の第二法則に従って、高湿度側から低湿度側に水蒸気が拡散する性質を意味する。透湿性は、例えばJIS Z0208に基づいて測定された透湿度の値によって評価することができる。
【0029】
透湿度は、JIS Z0208に準じて測定することができる。以下、説明する。
まず、吸湿剤として塩化カルシウムを収容したカップを準備し、このカップを水平になるように配置する。試験前の塩化カルシウムの質量は、予め測定しておく。バックシートをカップの内径よりも10mm大きい直径を持つ円形に切断して試験片を準備し、この試験片をカップの上縁に配置し、試験片の周縁がカップの上縁の同心円上に位置するように調整する。カップの上縁に沿ったリング状のパッキンを準備し、試験片の周縁がカップの上縁に密着するように当該パッキンを押し込む。さらに、その上にリング状のおもりを配置し、透湿性フィルムがカップの上縁に固定された試験体を作製する。この試験体を、温度30℃±0.5℃、湿度90±2%RHにおいて1時間放置し、試験後の塩化カルシウムの質量を測定する。試験後の塩化カルシウムの質量から、試験前の塩化カルシウムの質量を減じた値を算出し、これを試験片の水蒸気透過面100cm2当たりの値に換算して、透湿度を算出する。
【0030】
透湿性を実現するため、バックシート3は、複数の微細孔(ミクロボイド)を有する透湿性フィルムで構成されることが好ましい。透湿性フィルムは、例えば樹脂製フィルムを含み、単層構造でも積層構造でもよい。透湿性フィルムとしては、例えば、疎水性の熱可塑性樹脂(ポリオレフィン系樹脂等)と、該熱可塑性樹脂と相溶性のない無機微粒子(炭酸カルシウム等)とを、溶融混練してフィルムを形成し、該フィルムを一軸又は二軸延伸して得られる。フィルムの形成は、例えば、インフレーション法、Tダイ法等を用いることができる。
【0031】
図2~4、6に示すように、バックシート3は、立体ギャザーG3の基端部54から横方向Y外側に向かって延出する延出部31を有する。延出部31は、縦方向Xに延在する。延出部31と外装体6との間に接着剤は配されておらず、延出部31と外装体6とは非接合となっている。また、延出部31と立体ギャザーG3との間に接着剤は配されておらず、延出部31と立体ギャザーG3とは非接合である。
尚、
図3及び後述する第3実施形態のおむつを示す
図10において、延出部31をドットで示している。
【0032】
延出部31は、サイドシート5のレッグ開口部1Lに配されレッグギャザーG1を形成するレッグ用弾性部材64と非接合である。ここで、延出部31がレッグ用弾性部材64と非接合であるとは、延出部31が、レッグ用弾性部材64と直接接した状態で接合していない形態の他、延出部31が、他のシート部材を介してレッグ用弾性部材64と間接的に接した状態で接合してない形態を含む。本実施形態では、
図4及び
図6に示すように、レッグ用弾性部材64は、肌側シート61と非肌側シート62との間に配されており、延出部31は、肌側シート61を介してレッグ用弾性部材64と間接的に接した状態で接合しておらず、レッグ用弾性部材64は延出部31と非接合である。
【0033】
[作用効果]
【0034】
本発明のおむつ1では、バックシート3は透湿性を有し、当該バックシート3の一部である延出部31は外装体といった他の部材と非接合となっている。このような構成とすることで、高い着用感が可能となるとともに、着用時のおむつ1のずり落ちを抑制し、立体ギャザーからの漏れを抑制することができる。以下、詳細に説明する。
【0035】
おむつ1の着用時、吸収体4に吸収された排泄物の水分(排泄液)は、おむつ内で水蒸気として蒸散される。吸収体4の非肌側に透湿性を有するバックシート3が配されていることで、バックシート3を構成する透湿性フィルムの微細孔を通って水蒸気が放出される際に、放熱現象が生じる。
【0036】
ここで、おむつ1の着用時、一般に、股下領域Cにおいて、吸収体4の肌側面の横方向Y中央領域に着用者の排泄部が対向して位置するため、横方向Y中央領域には排泄物が供給されやすく、横方向Y中央領域は濡れて湿りやすいのに対し、横方向Yサイド領域は濡れにくく比較的乾燥している状態となることが多い。尿等の排泄液は、排泄直後から30分ほどの間は温かく、排泄液によって濡れた横方向Y中央領域(ウエット領域)と、乾燥している横方向Yサイド領域(ドライ領域)とでは温度差が生じる。このためウエット領域とドライ領域との境界付近では、上記放熱現象が特に増大しやすく、おむつ内に蒸散していた水蒸気が液化して肌により付着しやすくなる。これにより、延出部31と肌との接触箇所を適度な湿潤状態とすることができ、延出部31と肌との摩擦力が向上した状態で延出部31を肌に密着させることができる。
【0037】
更に、延出部31が、外装体6及びレッグ用弾性部材64といった他の部材と非接合であることで、レッグギャザーG1は柔らかく、また、着用時、延出部31と着用者の肌とは接触しやすい状態となって延出部31は柔らかく肌に密着する。このため、柔らかい肌触りの高い着用感が得られるとともに、延出部31が肌に密着して身体の動作に追従することができ、湿潤状態によって延出部31と肌との摩擦力が向上した状態での接触をより維持しやすくなっている。
【0038】
このように着用時に湿潤状態によって延出部31と肌との摩擦力が向上した状態で延出部31と肌とが接触することで、当該摩擦力によって、排泄物の重みや身体動作等によっておむつ1をずれ下がりにくくすることができ、おむつ1がずり下がって隙間が生じ、排泄物が立体ギャザーG3を乗り越えて漏れるといった事象の発生を抑制することができる。また、仮に、立体ギャザーG3を乗り越えて排泄物が漏れたとしても、立体ギャザーG3の横方向Y外側に位置する延出部31によって、おむつ1の外へ排泄物が漏れることを抑制することができる。
【0039】
以上のように、おむつ1は、立体ギャザーからの排泄物の漏れを抑制するとともに、高い着用感が得られるものとなっている。
【0040】
また、本実施形態のおむつ1では、延出部31によるおむつ1のずり落ち抑制効果を高める観点から、吸収体4がスリットによる一対の変形誘導部42を備えている。
上述したように変形誘導部42を備えることで、着用時、吸収体4は、中央領域43を底部、サイド領域44を起立部とする凹状に変形し、中央領域43により多く排泄液が供給されやすくなる。更に、スリットによる変形誘導部42の存在により、中央領域43で吸収された排泄液はサイド領域33に移行しにくい。
これにより、吸収体4内で、ウエット領域とドライ領域との境界をより確実に形成することができ、上記放熱現象がより増大して生じやすくなる。従って、肌を湿潤状態にしやすくなり、延出部31と肌との摩擦力が向上した状態で延出部31を肌により密着させやすくなり、着用時のおむつ1のずり落ちを抑制し、立体ギャザーからの排泄物の漏れを抑制することができる。
更に、着用時、吸収体4が、変形誘導部42によって、中央領域43を底部、サイド領域44を起立部とする凹状に変形することで、排泄液の吸収によって吸収体4が横方向Yに膨張しても凹部Rの凹形状を維持し易く、延出部31が肌から離れることを防ぎ、延出部31と肌との接触を維持しやすくなっている。
【0041】
尚、変形誘導部42が低坪量部で構成された場合においても同様の効果を得ることができる。
また、変形誘導部42が圧搾部で構成された場合においても同様の効果を得ることができる。圧搾部は、他の圧搾されていない領域と比べて、構成繊維密度が高くなっているため、中央領域43で吸収された排泄液は、圧搾部を越えてサイド領域44へと拡散しにくい。このため、ウエット領域とドライ領域との境界を確実に形成することができ、圧搾部においてもスリットの場合と同様の効果を得ることができる。
【0042】
尚、吸収体が変形誘導部を有さなくてもよい。吸収体が変形誘導部を有さないおむつにおいても、一般に股下領域において、横方向Y中央領域に排泄物がより多く供給されやすいため、液状排泄部によって濡れた横方向Y中央領域(ウエット領域)と、乾燥している横方向Yサイド領域(ドライ領域)との境界が形成され得る。
しかしながら、吸収体においてウエット領域とドライ領域との境界での上記放熱現象を増大させる観点から、変形誘導部を設けることがより好ましく、おむつのずり落ちをより一層抑制することができる。
【0043】
また、本実施形態のおむつ1では、延出部31によるおむつ1のずり落ち抑制効果を高める観点から、吸収体4は、サイド領域44に配置され縦方向に延びる吸収体用弾性部材45を備えている。
このような構成とすることで、吸収体用弾性部材45によって、吸収体4Bのサイド領域44に縦方向Xに沿った収縮力が作用する。これにより、着用時に、サイド領域44が変形誘導部42を起点に起立しやすくなり、着用時に、吸収体4が凹状の形状を安定して維持でき、凹部Rに排泄物が溜まり易くなる。つまり、中央領域43に、より一層排泄液が供給されやすくなり、中央領域43はサイド領域44よりも濡れやすくなる。これにより、ウエット領域とドライ領域との境界が形成されやすくなり、上記放熱現象を生じさせやすく、肌を湿潤状態にして延出部31と肌との摩擦力が向上した状態で、延出部31を肌に密着させることができ、おむつのずり落ちを抑制することができる。
【0044】
[補足説明]
図4を参照して、延出部31を肌により密着しやすくし、おむつのずり落ちを抑制する観点から、延出部31の横方向Yの寸法(以下、「幅」ということがある。)aは、好ましくは2mm以上であり、より好ましくは7mm以上である。尚、
図4において、延出部31を湾曲した形状で図示したが、延出部31の幅aは、延出部31をまっすぐに伸ばした状態の寸法である。
延出部31の幅aは、立体ギャザーG3の高さ寸法よりも短いことが好ましい。このような構成とすることで、延出部31の立体ギャザーG3への巻き込みを防止することができ、
図6に示すように、着用時に、確実に延出部31が立体ギャザーG3の横方向Y外側に位置するように肌に密着させることができる。更に、おむつ1を着用者にはかせるときに、着用者の脚に延出部31が引っ掛かるのを防止することができ、スムーズにおむつをはかせることができる。立体ギャザーG3の高さ寸法は、基端部54から先端部53までの長さに相当する(
図2参照。)。立体ギャザーG3の高さ寸法は、典型的には15mm~50mm程度である。
【0045】
高い透湿性を有し、ムレの少ない快適なおむつ1とするとともに、防漏性を確保し、延出部31と肌との接触箇所の適度な湿潤状態を維持して摩擦力を向上させておむつ1をずり落ちにくくする観点から、上述したJIS Z0208に基づいて測定されるバックシート3の透湿度の値は、好ましくは1.5g/100cm2・h以上、より好ましくは1.7g/100cm2・h以上であり、好ましくは3.6g/100cm2・h以下、より好ましくは3.4g/100cm2・h以下である。
このような透湿性を実現するため、バックシート3は、微細な複数の微細孔を含んでいる透湿性フィルム30であることが好ましい。
【0046】
バックシート3では、0.06μm以上0.16μm以下の範囲の開孔径を有する微細孔の単位質量当たりの細孔容量が、2.5μm以上3.5μm以下の範囲の開孔径を有する微細孔の単位質量当たりの細孔容量よりも大きいことが好ましい。これにより、0.06μm以上0.16μm以下の範囲の開孔径を有する微細孔を多数形成することができ、水蒸気(湿気)の透過性を高めることができる。その一方で、2.5μm以上3.5μm以下の範囲の開孔径を有する微細孔の数を規制することができ、水分の漏れをより確実に防止することができる。したがって、透湿性と防漏性を両立するバックシート3を得ることができる。
【0047】
(細孔容量の測定方法)
細孔容量は、JIS R 1655に規定される水銀圧入法に準じて、以下の方法で測定することができる。まず、測定対象の透湿性フィルム30から、所定のサイズ(例えば10mm×10mm)の測定サンプルを切り出す。この測定サンプルを、水銀ポロシメーター(例えば、「オートポアIV9520」、株式会社島津製作所製)にセットし、細孔径0.06μm以上3.5μm以下の領域の細孔径分布を測定する。得られた細孔径分布(
図7参照)に基づいて、細孔径0.06μm以上0.16μm以下の領域の累積細孔容量と、細孔径2.5μm以上3.5μm以下の領域の累積細孔容量とを測定する。細孔径0.06μm以上0.16μm以下の領域の累積細孔容量が、細孔径2.5μm以上3.5μm以下の領域の累積細孔容量よりも大きかった場合、「0.06μm以上0.16μm以下の範囲の細孔径を有する微細孔の単位質量当たりの細孔容量が、2.5μm以上3.5μm以下の範囲の細孔径を有する微細孔の単位質量当たりの細孔容量よりも大きい」と判断する。
【0048】
このように、小さな微細孔37を多数形成する方法としては、例えば、透湿性フィルム30を均一に延伸する方法が挙げられる。
図8(A)に示すように、透湿性フィルム30の延伸が不均一だった場合は、透湿性フィルム30の一部に十分に延伸されていない領域が生じ、小さな無機微粒子36を起点として十分に開孔できない部分(太線で示した未開孔部38)が形成され得る。さらに、透湿性フィルム30の面内において、延伸力が大きい領域では、無機微粒子36が大きく引きずられることで大きな微細孔37が形成され、延伸力が小さい領域では、無機微粒子36があまり引きずられないことで小さな微細孔37が形成されやすくなる。このため、微細孔37の大きさが、無機微粒子36の大きさと相関を有しないことがある。
【0049】
これに対し、
図8(B)に示すように、透湿性フィルム30が均一に延伸された場合は、小さな無機微粒子36にも十分に延伸力が付加される。この結果、
図8(A)の例では未開孔部38であった部分が、
図8(B)では十分に開孔した微細孔37(太線で示した部分)となり、小さな微細孔37を増やすことができる。また、透湿性フィルム30の面内における延伸が均一である場合には、無機微粒子36の大きさに応じた微細孔37が形成されやすいことから、微細孔37の大きさと無機微粒子36の大きさとが正に相関する傾向を有する。
【0050】
透湿性フィルム30が均一に延伸されている指標として、透湿性フィルム30では、厚み方向Zから見た平面視において、0.01μm2以上0.5μm2以下の大きさの無機微粒子に隣接して配置される微細孔の細孔径は、1.0μm2以上1.5μm2以下の大きさの無機微粒子に隣接して配置される微細孔の径よりも小さいことが好ましい。上記構成では、透湿性フィルム30が均一に延伸されていることにより、小さな無機微粒子36に隣接する小さな微細孔37の数を増加させることができ、透湿性及び防漏性の高い透湿性フィルム30を得ることができる。
【0051】
(無機微粒子のサイズ及び微細孔の細孔径の測定方法)
透湿性フィルム30から所定のサイズ(例えば10mm×10mm)の評価サンプルを切り出す。切り出した評価サンプルを常法に従って固定し、走査型電子顕微鏡(SEM)で1000倍に拡大して撮像する。1つの画像から、画像解析技術を用いて、無機微粒子とそれに隣接する微細孔のそれぞれに対応する部分の輪郭を抽出する。抽出された無機微粒子に対応する領域のサイズと、それに隣接する微細孔に対応する領域のサイズとをそれぞれ測定する。なお、微細孔の細孔径は、抽出された微細孔に対応する領域のサイズ(面積)から円換算直径を算出することで得られる。1枚の透湿性フィルム30から100箇所の画像を撮像し、0.01μm2以上0.5μm2以下の大きさの無機微粒子に隣接して配置される微細孔の細孔径の平均値と、1.0μm2以上1.5μm2以下の大きさの無機微粒子に隣接して配置される微細孔の細孔径の平均値とを算出する。
【0052】
上述のように、無機微粒子36の大きさに応じた微細孔37が形成される場合、無機微粒子36の大きさの分布を制御することで、微細孔37の細孔径も制御することができる。このような観点から、透湿性フィルム30では、厚み方向Zから見た平面視において、0.01μm2以上0.5μm2以下の大きさの無機微粒子36の単位面積当たりの粒子数は、0.5μm2以上2.0μm2未満の大きさの無機微粒子36の単位面積当たりの粒子数よりも少なく、かつ、2.0μm2以上の無機微粒子36の単位面積当たりの粒子数は、0.5μm2以上2.0μm2未満の大きさの無機微粒子36の単位面積当たりの粒子数よりも少ないことが好ましい。上記構成により、微小な微細孔37を多く形成でき、透湿性及び防漏性の双方を充足する透湿性フィルム30を得ることができる。
【0053】
バックシート3の坪量は、着用者の動きに追従しやすくする観点から、好ましくは20g/m2以下、より好ましくは18g/m2以下であり、耐水性の観点から、好ましくは11g/m2以上、より好ましくは13g/m2以上である。着用者の動きへの追従性及び耐水性を両立させる観点から、好ましくは11g/m2以上20g/m2以下、より好ましくは13g/m2以上18g/m2以下である。
【0054】
<第2実施形態>
図9を用いて、第2実施形態に係わるおむつ1Aについて説明する。以下では、第1実施形態と異なる構成を中心に説明する。
【0055】
第2実施形態のおむつ1Aのように、立体ギャザーG3Aの基端部54近傍に配置され縦方向に延びる第3弾性部材としての基端部近傍弾性部材52を備えていてもよい。基端部近傍弾性部材52は、基端部54の近傍、具体的には基端部54から3mm~12mm程度離れた部位に配される。
尚、第2実施形態のおむつ1Aでは、吸収体用弾性部材を設けない構成としたが、第1実施形態のおむつ1と同様に吸収体用弾性部材45が設けられていてもよい。
【0056】
おむつ1Aにおいても、第1実施形態のおむつ1と同様に、他の部材と非接合の延出部31を設け、延出部31を含むバックシート3が透湿性を有することで、高い着用感が可能となるとともに、着用時のおむつ1のずり落ちを抑制し、立体ギャザーからの排泄物の漏れを抑制することができる。
【0057】
更に、おむつ1Aでは、立体ギャザーG3Aの基端部54の近傍に基端部近傍弾性部材52を設けてギャザーを形成することで、凹部Rの凹形状が維持されやすく、延出部31が着用者の股間部の形状に沿ってより一層密着しやすくなる。これにより、着用時のおむつ1のずり落ちをより一層抑制することができ、立体ギャザーG3Aからの排泄物の漏れを抑制することができる。
【0058】
<第3実施形態>
図10を用いて、第3実施形態に係わるおむつ1Bについて説明する。第1実施形態と異なる構成を中心に説明する。
【0059】
第3実施形態に係わるおむつ1BのレッグギャザーG1を形成するレッグ用弾性部材64の配置形状について説明する。
図10に示すように、外装体6は、レッグ開口部1Lにその周方向に沿って第1弾性部材としてのレッグ用弾性部材64Bが配されて形成されたレッグギャザーG1を有する。レッグ用弾性部材64Bは、腹側レッグ用弾性部材65と、背側レッグ用弾性部材66と、を有する。
【0060】
腹側レッグ用弾性部材65は、腹側領域Aに外方端65aを有し、股下領域Cに内方端65bを有する。腹側レッグ用弾性部材65は、外方端65aから内方端65bに向かって、レッグ開口部1Lの周方向に沿って配され、続いて股下領域Cの縦方向X中央付近で、徐々に横方向Yに略平行となるように湾曲し横方向Y内側に向かって横方向Yに延びるように配される。
【0061】
背側レッグ用弾性部材66は、背側領域Bに外方端66aを有し、股下領域Cに内方端66bを有する。背側レッグ用弾性部材66は、外方端66aから内方端66bに向かって、レッグ開口部1Lの周方向に沿って配され、続いて股下領域Cの縦方向X中央付近で、徐々に横方向Yに略平行となるように湾曲し横方向Y内側に向かって横方向Yに延びるように配される。
【0062】
図10に示すように、腹側レッグ用弾性部材65及び背側レッグ用弾性部材66は、股下領域Cの縦方向X中央付近で、徐々に横方向Yに略平行になるように湾曲し横方向Y内側に向かって延びる途中で縦方向Xに延びる延出部31と平面視で交差し、更に延出部31を超えて横方向Y内側に向かって延びる。レッグ用弾性部材64Bは、股下領域Cで横方向Yに延在する部位67を有する。当該部位67は、レッグ用弾性部材64Bの徐々に横方向Yに略平行になるように湾曲し横方向Y内側に向かって延びる部分を指す。
レッグ用弾性部材64は、腹側レッグ用弾性部材65の内方端65bと背側レッグ用弾性部材66の内方端66bとが重なった重なり部640を有する。当該重なり部640は、展開し各弾性部材を伸ばした状態のおむつ1の肌側面(トップシートが位置する側)から平面視したときに、吸収体4とバックシート3とが重なる領域に位置する。本実施形態では、重なり部640は、腹側レッグ用弾性部材65の股下領域Cで横方向Yに延在する部位の一部と腹側レッグ用弾性部材65の股下領域Cで横方向Yに延在する部位の一部とが重なって構成される。
尚、
図10では、内方端65b及び66bとバックシート3との位置関係を説明するため、内方端65b及び66bを図示しているが、実際には、おむつ1をトップシート2側からみたときに、内方端65b及び66bは、吸収体4等によって見えない。
【0063】
このように、レッグ用弾性部材64Bは、股下領域Cで横方向Yに延在する部位67を有し、股下領域Cで上記部位67とバックシート3とは重なっている。
【0064】
おむつ1Bにおいても、第1実施形態のおむつ1と同様に、他の部材と非接合の延出部31を設け、延出部31を含むバックシート3が透湿性を有することで、高い着用感が可能となるとともに、着用時のおむつ1のずり落ちを抑制し、立体ギャザーからの排泄物の漏れを抑制することができる。
【0065】
更に、おむつ1Bでは、股下領域Cの一部でレッグ用弾性部材64Bが横方向Yに延在する部位67を有し、当該部位67とバックシート3とが重なっていることで、外装体6において部位67付近の縦方向Xの伸長が抑制される。これにより、排泄物の重みによる股下領域Cの垂れ下がりを抑制することができ、延出部31と肌との密着性をより維持しやすくなり、着用時のおむつ1のずり落ちをより一層抑制することができる。
【0066】
<他の実施形態>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0067】
例えば、上述の実施形態では、使い捨ておむつがパンツ型使い捨ておむつとして構成される例を挙げたが、これに限定されない。例えば、テープ型使い捨ておむつ、パンツ型生理用物品などであってもよい。
【符号の説明】
【0068】
1、1A、1B…使い捨ておむつ
1L…レッグ開口部
2…トップシート
3…バックシート
31…延出部
4…吸収体
6…外装体
64…レッグ用弾性部材(第1弾性部材)
A…腹側領域
B…背側領域
C…股下領域
G1…レッグギャザー
G3…立体ギャザー