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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123540
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/532 20060101AFI20240905BHJP
   A61F 13/514 20060101ALI20240905BHJP
   A61F 13/51 20060101ALI20240905BHJP
   A61F 13/494 20060101ALI20240905BHJP
   A61F 13/534 20060101ALI20240905BHJP
   A61F 13/535 20060101ALI20240905BHJP
   A61F 13/42 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
A61F13/532 100
A61F13/514 100
A61F13/532 200
A61F13/51
A61F13/494 100
A61F13/534 110
A61F13/535 200
A61F13/514 213
A61F13/514 211
A61F13/42 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031046
(22)【出願日】2023-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】犹守 沙耶香
(72)【発明者】
【氏名】石橋 京子
(72)【発明者】
【氏名】川口 宏子
(72)【発明者】
【氏名】松久 誠
(72)【発明者】
【氏名】鹿谷 智也
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200BA02
3B200BA07
3B200BA12
3B200BA20
3B200BB04
3B200BB05
3B200BB09
3B200BB11
3B200BB17
3B200DA02
3B200DA21
3B200DB05
3B200DB17
3B200DB22
3B200DB24
3B200DD01
3B200DD02
3B200DF01
(57)【要約】
【課題】視認によらずとも排泄状態を把握することができる吸収性物品に関する。
【解決手段】吸収性物品は、縦方向と横方向と厚み方向を有し、かつ、腹側領域と股下領域と背側領域と、に区分される。吸収性物品は、吸収性部材を含む吸収体と透湿性を有するバックシートとを具備する。吸収性部材は、股下領域において一対の変形誘導部を有し、一対の変形誘導部の間に位置する中央領域と中央領域の横方向外側に位置するサイド領域とを有する。中央領域は、肌側に位置する肌側層と、非肌側に位置する非肌側層とを有する。吸収性部材は高吸水性ポリマーを含有し、中央領域において、高吸水性ポリマーは肌側層より非肌側層に多く偏在する。中央領域は、非肌側層のみが存在する第1領域と、厚み方向に非肌側層と肌側層が存在する第2領域とを有する。吸収性部材は、第1領域に、肌側層が存在しないことにより形成された空間を有する。第1領域に存在する非肌側層に含まれる高吸水性ポリマーは、吸水時に他の部材に固着しない。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の腹側から股間部を通って背側に延びる縦方向と、前記縦方向に直交し着用者の左右方向に対応する横方向と、前記縦方向及び前記横方向に直交する厚み方向を有し、かつ、前記腹側に配される腹側領域と、前記股間部に配される股下領域と、前記背側部に配される背側領域と、に区分される吸収性物品であって、
前記腹側領域から前記背側領域に亘って配置され、吸収性部材を含む吸収体と、
前記吸収体の非肌側に配置され、透湿性を有するバックシートと
を具備し、
前記吸収性部材は、前記股下領域において前記縦方向にそれぞれ延び、前記横方向中央を挟んで配置された一対の変形誘導部を有し、
前記吸収性部材は、前記一対の変形誘導部の間に位置する中央領域と、前記中央領域の前記横方向外側に位置するサイド領域とを有し、
前記吸収性部材の前記中央領域は、肌側に位置する肌側層と、非肌側に位置する非肌側層とを有し、
前記吸収性部材は高吸水性ポリマーを含有し、前記中央領域において、前記高吸水性ポリマーは前記肌側層より前記非肌側層に多く偏在し、
前記中央領域は、前記非肌側層のみが存在する第1領域と、前記厚み方向に前記非肌側層と前記肌側層が存在する第2領域とを有し、
前記吸収性部材は、前記第1領域に、前記肌側層が存在しないことにより形成された空間を有し、
前記第1領域に存在する前記非肌側層に含まれる前記高吸水性ポリマーは、吸水時に他の部材に固着しない
吸収性物品。
【請求項2】
前記バックシートの非肌側に配置される外装体を更に具備し、
前記バックシートの引裂強度が高い方向と、前記外装体の引裂強度が高い方向とは交差する
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記吸収体は、前記サイド領域に配置され前記縦方向に延びる弾性部材を更に有する
請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記中央領域において、前記肌側層は前記厚み方向を貫通する前記縦方向に延びる1以上のスリットを有し、
前記空間は前記スリットにより形成される
請求項1から3のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記肌側層及び前記非肌側層はいずれも前記高吸水性ポリマーと繊維を含む混合積繊層であり、前記第2領域において前記肌側層と前記非肌側層とは前記厚み方向に連続する
請求項1から4のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記肌側層と前記非肌側層はいずれも前記高吸水性ポリマーと繊維を含む混合積繊層であり、前記肌側層と前記非肌側層は前記厚み方向に積層される
請求項1から4のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記肌側層は前記高吸水性ポリマーと繊維を含む混合積繊層であり、前記非肌側層は親水性繊維シートと当該親水性繊維シートに挟まれた前記高吸水性ポリマーを含む高吸水性ポリマーシートであり、前記肌側層と前記非肌側層は前記厚み方向に積層され、
前記非肌側層の前記高吸水性ポリマーの坪量は、前記肌側層の前記高吸水性ポリマーの坪量よりも多い
請求項1から4のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記バックシートの坪量は20g/m以下である
請求項1から7のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項9】
前記バックシートの透湿度は1.5g/100cm・h以上である
請求項1から8のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項10】
前記バックシートは、複数の微細孔を有する透湿性フィルムで構成され、
前記バックシートでは、
0.06μm以上0.16μm以下の範囲の開孔径を有する微細孔の単位質量当たりの細孔容量が、2.5μm以上3.5μm以下の範囲の開孔径を有する微細孔の単位質量当たりの細孔容量よりも大きい
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項11】
前記バックシートは、複数の微細孔を有する透湿性フィルムで構成され、
前記バックシートは、前記微細孔に隣接して配置された微細な炭酸カルシウム粒子を有し、
前記バックシートでは、前記厚み方向から見た平面視において、
0.01μm以上0.5μm以下の大きさの前記炭酸カルシウム粒子に隣接して配置される前記微細孔の開孔径は、1.0μm以上1.5μm以下の大きさの前記炭酸カルシウム粒子に隣接して配置される前記微細孔の開孔径よりも小さい
請求項1から10のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項12】
前記バックシートは、複数の微細孔を有し、
前記バックシートは、前記微細孔に隣接して配置された微細な炭酸カルシウム粒子を有し、
前記バックシートでは、前記厚み方向から見た平面視において、
0.01μm以上0.5μm以下の大きさの前記炭酸カルシウム粒子の単位面積当たりの粒子数は、0.5μm以上2.0μm以下の大きさの前記炭酸カルシウム粒子の単位面積当たりの粒子数よりも少なく、
2μm以上の大きさの前記炭酸カルシウム粒子の単位面積当たりの粒子数は、0.5μm以上2.0μm以下の大きさの前記炭酸カルシウム粒子の単位面積当たりの粒子数よりも少ない
請求項1から11のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨ておむつ等の吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつには、例えば、排尿を知らせるインジケータが配されるものがある(特許文献1参照。)。当該インジケータは、排尿によって色が変化し、おむつの装着を介助する介助者は、インジケータの色によって着用者の排尿を確認することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-255559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、おむつが衣類に覆われている場合、衣類を脱がしてから上記インジケータの色の変化を視認することによって排泄状態を把握する必要がある。また、暗所下では、インジケータの色を確認することが難しい場合がある。また、介助者が例えば弱視や色覚異常等の視覚障害者である場合、インジケータの視認による排泄状態の把握が難しい場合がある。
【0005】
本発明は、視認によらずとも排泄状態を確認することができる吸収性物品に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態に係る吸収性物品は、着用者の腹側から股間部を通って背側に延びる縦方向と、上記縦方向に直交し着用者の左右方向に対応する横方向と、上記縦方向及び上記横方向に直交する厚み方向を有し、かつ、上記腹側に配される腹側領域と、上記股間部に配される股下領域と、上記背側部に配される背側領域と、に区分される。
上記吸収性物品は、吸収体と、バックシートとを具備する。
上記吸収体は、上記腹側領域から上記背側領域に亘って配置され、吸収性部材を含む。
上記バックシートは、上記吸収体の非肌側に配置され、透湿性を有する。
上記吸収性部材は、上記股下領域において上記縦方向にそれぞれ延び、上記横方向中央を挟んで配置された一対の変形誘導部を有する。
上記吸収性部材は、上記一対の変形誘導部の間に位置する中央領域と、上記中央領域の上記横方向外側に位置するサイド領域とを有する。
上記吸収性部材の上記中央領域は、肌側に位置する肌側層と、非肌側に位置する非肌側層とを有する。
上記吸収性部材は高吸水性ポリマーを含有し、上記中央領域において、上記高吸水性ポリマーは上記肌側層より上記非肌側層に多く偏在する。
上記中央領域は、上記非肌側層のみが存在する第1領域と、上記厚み方向に上記非肌側層と上記肌側層が存在する第2領域とを有する。
上記吸収性部材は、上記第1領域に、上記肌側層が存在しないことにより形成された空間を有する。
上記第1領域に存在する上記非肌側層に含まれる上記高吸水性ポリマーは、吸水時に他の部材に固着しない。
【発明の効果】
【0007】
本発明の吸収性物品によれば、視認によらずとも排泄状態を把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1の実施形態に係る使い捨ておむつの一例を示す概略斜視図である。
図2】第1の実施形態に係わる使い捨ておむつの平面図であり、使い捨ておむつを展開し、各部の弾性部材を伸張させて平面状に広げた状態で、肌側(表面材側)から見た態様を示す。
図3図2のIII-III線で切断した第1の実施形態に係わる使い捨ておむつの模式的な断面図である。
図4】第1の実施形態に係わる使い捨ておむつの一部を構成する吸収性コアの一例を示す平面図である。
図5】着用時における第1の実施形態に係わる使い捨ておむつの一例を示す模式的な断面図である。
図6】上記バックシートの細孔径分布の一例を示すグラフであり、横軸は細孔径(μm)、縦軸は細孔容量(ml/g)である。
図7】バックシートを構成する透湿フィルムの構造を模式的に示した平面図である。
図8】着用時における第2の実施形態に係わる使い捨ておむつの模式的な断面図である。
図9】着用時における第3の実施形態に係わる使い捨ておむつの模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、以下の実施形態では、本発明に係る吸収性物品がパンツ型使い捨ておむつとして構成される例を挙げる。
【0010】
<第1実施形態>
[使い捨ておむつの全体構成]
図1図5には、本発明の第1実施形態に係る吸収性物品として、パンツ型使い捨ておむつ1が示されている。パンツ型使い捨ておむつ1は、以下、おむつ1と称する。
おむつ1は、縦方向X、横方向Y及び厚み方向Zを有する。縦方向Xは、着用者の腹側から股間部を通って背側に延びる。横方向Yは、縦方向Xに直交し、着用者の左右方向に対応する。厚み方向Zは、おむつ1の縦方向X及び横方向Yに直交する方向とする。
本明細書において、横方向Yに関しては、おむつ1を横方向Yに2等分する縦中心線CLに近づく側を「横方向Y内側」といい、縦中心線CLから遠ざかる側を「横方向Y外側」という。
本明細書において、各構成を厚み方向Zから見る場合、平面視という。なお、本明細書では、各構成における肌側とは、使い捨ておむつ着用時の着用者の肌側に位置する側を示す。各構成における非肌側とは、使い捨ておむつ着用時の着用者の肌側とは反対側に位置する側を示す。また、厚み方向Zに関しては、着用時に着用者の肌に近い側を上、着衣に近い側を下ということがある。
【0011】
図1及び図2に示すように、おむつ1は、ウエスト開口部1W及び一対のレッグ開口部ILを備え、着用時に、着用者の胴回り及び股間部に配置される。
おむつ1は、着用時において着用者の腹側に配置される腹側領域Aと、着用時において着用者の背側に配置される背側領域Bと、腹側領域A及び背側領域Bの間に位置し着用時において着用者の股間部に配置される股下領域Cと、に区分される。腹側領域Aと、股下領域Cと、背側領域Bと、は、縦方向Xに沿って配置されている。腹側領域A及び背側領域Bは、横方向Yにおける側縁部A1,B1同士が接合されて、ウエスト開口部1Wを形成する。股下領域Cには脚繰りが形成され、この脚繰りがレッグ開口部1Lを形成する。
なお、図2は、おむつ1を展開し、各部の弾性部材を伸張させて、弾性部材の影響を一切排除した状態の設計寸法となるように平面状に広げた形態を示す。おむつ1を展開するとは、腹側領域Aの側縁部A1及び背側領域Bの側縁部B1を分離して展開することを意味する。
【0012】
図3に示すように、おむつ1は、トップシート2と、吸収体4と、サイドシート5と、バックシート3と、外装体6と、を有する。おむつ1は、外装体6、バックシート3、吸収体4及びトップシート2が厚み方向Zに積層された構成を有する。これらの構成は、例えば、ホットメルト接着剤等の公知の接合手段により互いに接合されている。
【0013】
図1及び図2に示すように、吸収体4は、腹側領域A、股下領域C及び背側領域Bにわたって配置される。吸収体4は、トップシート2とバックシート3の間に配置される。吸収体4は、着用者の尿などの液状排泄物(以下、「排泄液」)をトップシート2側の面から吸収し、内部で拡散させて当該排泄液を保持する。
吸収体4は、吸収性部材7と、コアラップシート41と、を有する。
吸収性部材7は、排泄液を保持することが可能な吸収性材料を主体として構成される。具体的に、本実施形態では、吸収性部材7は、繊維471と高吸水性ポリマー470を含む混合積繊層から構成される。吸収性部材7は、いわゆる吸収性コアである。
コアラップシート41は、吸収性部材7を被覆し、例えば吸収性部材7の形状を保持する機能等を有する。コアラップシート41は、例えばティッシュペーパー状の薄く柔らかい紙や液透過性の不織布等で形成される。
吸収体4の詳細については後述する。
【0014】
トップシート2は、おむつ1の着用時、着用者の肌に接するように配置される。トップシート2は、吸収体4の肌側(厚み方向Z上方側)に少なくとも配置される。図3に示す例において、トップシート2は、吸収体4の肌側から横方向Yにおける側縁部4sに延び、さらに吸収体4の非肌側まで回り込むように配置される。
トップシート2は、液透過性のシート材として構成され、合成繊維又は天然繊維を含む不織布等で形成される。トップシート2の材料としては、吸収性物品の技術分野において通常用いられる材料を用いることができる。シート材としては、例えばカード法により製造された不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、スパンレース不織布及びニードルパンチ不織布、メルトブローン不織布、スパンレース不織布及びニードルパンチ不織布等の種々の不織布を用いることができる。
【0015】
外装体6は、吸収体4の非肌側(厚み方向Z下方)、より詳細にはバックシート3の非肌側に配置され、例えば、おむつ1の非肌側の外表面を形成する。外装体6は、良好な肌触りを実現する観点から、不織布で構成されることが好ましく、さらに、防漏性を付与する観点から、例えば、液難透過性、水蒸気透過性及び撥水性等の機能を有していることが好ましい。
図3に示す例において、外装体6は、肌側シート61と、非肌側シート62と、を含む。
図1及び図2に示すように、外装体6は、ウエスト開口部1W及びレッグ開口部1Lを形成する。外装体6は、ウエスト開口部1Wに沿って配置されたウエスト弾性部材63と、レッグ開口部1Lに沿って配置されたレッグ用弾性部材64と、をさらに含む。外装体6は、複数のシート材で構成されることが好ましく、ウエスト弾性部材63及びレッグ用弾性部材64は、例えば、肌側シート61及び非肌側シート62の間に配置される。外装体6は、レッグ開口部1Lにその周方向に沿ってレッグ用弾性部材64が配されて形成されたレッグギャザーG3を有する。
【0016】
一対のサイドシート5は、トップシート2の横方向Y側部の肌側に配置され、立体ギャザーG2を形成する。具体的に、サイドシート5の非肌側の端部は、接着剤やヒートシール等によって、非肌側の部材(図3の例ではバックシート3)に接合されている。一方、サイドシート5の肌側の端部は、他の部材に接合されない自由端部として構成され、糸状又は帯状の先端部近傍弾性部材51が配置される。先端部近傍弾性部材51は、立体ギャザーG2の先端部53の近傍に配される。図に示す例では、1本の先端部近傍弾性部材51が配される例を挙げるが、複数本であってもよい。先端部近傍弾性部材51は、縦方向Xに延び、伸張した状態でサイドシート5に取り付けられる。これにより、着用時において、先端部近傍弾性部材51の収縮によってサイドシート5の肌側の端部が肌側に起立し、立体ギャザーG2が形成される。サイドシート5は、例えば、液難透過性及び撥水性等の機能を有するシート材で構成され、一例として不織布で構成される。
【0017】
バックシート3は、吸収体4の非肌側に配置される。バックシート3は、本実施形態において、樹脂フィルムで構成される。バックシート3は、液難透過性及び撥水性等の機能を有していてもよい。また後述するように、バックシート3は透湿性を有していてもよい。バックシート3は、吸収体4と外装体6との間に配置される。バックシート3は、接着剤によって吸収体4の非肌側面及び外装体6に接合されている。バックシート3の詳細については後述する。
【0018】
[吸収体の構成]
図4に示すように、吸収体4は、股下領域Cにおいて縦方向Xに延び、横方向Y中央を挟んで配置された一対の変形誘導部42を有する。
変形誘導部42は、吸収体4の折れ曲がりの起点となる部分である。変形誘導部42は、吸収体4の折れ曲がりを誘導できる構成であればよく、例えば、吸収性部材7のスリット、低坪量部、圧搾部、又は折り癖のついた部分のいずれかで構成され得る。
変形誘導部42となるスリットは、平面視において細長い形状を有し吸収性部材7を厚み方向Zに貫通する貫通孔を意味する。
低坪量部とは、周囲よりも吸収性部材7の坪量が低い部分を意味する。
圧搾部とは、圧搾加工により吸収性部材7が圧搾され、厚みが薄くなった部分を意味する。
折り癖のついた部分は、吸収体4又は吸収性部材7を折り曲げてプレスする処理等によって折り癖が形成された部分である。
これらのうち、変形誘導部42は、折れ曲がりを確実に誘導する観点から、スリット又は低坪量部で構成されることが好ましく、図3~5に示すように、スリットで構成されることがより好ましい。
【0019】
変形誘導部42は、少なくとも股下領域Cに配置されていればよく、腹側領域A又は背側領域Bの少なくとも一方まで延出していてもよい。また、変形誘導部42は、股下領域Cの全長にわたって延びている構成に限定されず、股下領域Cの少なくとも一部において、縦方向Xに延びていればよい。
「変形誘導部42が縦方向Xに延びる」とは、変形誘導部42が縦方向Xに平行に延びる態様に限定されず、全体として腹側から背側に延びていればよい。
また、変形誘導部42の平面視における形状も、縦方向Xに細長い形状であればよく、特に限定されない。図4に示す例では、変形誘導部42が線状(帯状)に構成されており、変形誘導部42の延在方向に直交する幅方向の寸法がほぼ一定である。あるいは、変形誘導部42では、当該幅方向の寸法が当該延在方向に沿って変化してもよい。
【0020】
吸収体4の横方向Y中央とは、おむつ1を横方向Yに2等分する縦中心線CL上の領域を意味する。つまり、一対の変形誘導部42は、縦中心線CLの横方向Y両側に配置される。この一対の変形誘導部42により、中央領域43とサイド領域44とが区画される。
【0021】
すなわち、吸収体4は、一対の変形誘導部42の間に位置する中央領域43と、中央領域43の横方向Y外側に位置するサイド領域44と、を有する。
中央領域43は、一対の変形誘導部42に挟まれた領域である。つまり、図4に示すように、中央領域43の横方向Yにおける側縁部43sは、変形誘導部42との境界部であって、変形誘導部42の横方向Y内側の内縁部に一致する。中央領域43の縦方向Xにおける端部は、一対の変形誘導部42の縦方向Xにおける端部間を結んだ部分である。
サイド領域44は、中央領域43の側縁部43s(つまり、変形誘導部42の内縁部)よりも横方向Y外側に位置する領域となる。
【0022】
ここで、着用者の股間幅は、一般に吸収体4の横方向Yにおける幅よりも狭いため、着用時には、変形誘導部42を起点として吸収体4が折れ曲がる。すなわち、図5に示すように、吸収体4は、着用者の股間部Kに収まるように変形し、中央領域43からサイド領域44が肌側に起立する。これにより、吸収体4は、中央領域43を底部、サイド領域44を起立部とする凹状に変形する。吸収体4の凹状の変形に基づいて、トップシート2も変形しておむつ1の肌側面に凹部Rが形成され、尿や便などの排泄物が一時的に溜まり易くなり、中央領域43により多く排泄液が供給されやすくなる。
【0023】
図3及び5に示すように、吸収性部材7は、肌側に位置する肌側層40と非肌側に位置する非肌側層47を有する。肌側層40と非肌側層47は、いずれも高吸水性ポリマー470と繊維471を含む混合積繊層から構成される。吸収性部材7は、厚み方向で高吸水性ポリマー470が偏在するように、肌側層40と非肌側層47とが積繊工程によって厚み方向Zに連続して一体化して形成される。
【0024】
非肌側層47は、肌側層40よりも、高吸水性ポリマーの含有割合が高くなっており、吸収性部材7は、高吸水性ポリマー470が、肌側層40よりも非肌側層47に多く偏在するように構成される。非肌側層47は、高吸水性ポリマー470のみから構成されてもよいし、わずかな繊維471と高吸水性ポリマー470とが存在する形態であってもよい。また、「高吸水性ポリマーが肌側層よりも非肌側層に多く偏在する」とは、肌側層に高吸水性ポリマーが含まれない形態も含むものとする。
尚、図3及び5において、肌側層40に高吸水性ポリマー470が含まれないように図示したが、高吸水性ポリマー470が含まれていてもよく、非肌側層47よりも高吸水性ポリマー470の含有率が低ければよい。肌側層40(非肌側層47)における高吸水性ポリマーの含有率(質量%)は、単位面積あたりの肌側層40(非肌側層47)の全質量に対する高吸水性ポリマーの質量の割合である。非肌側層47は、肌側層40よりも高吸水性ポリマーの含有率が高い高吸水性ポリマー高含有率層であるといえる。
【0025】
図3~5に示すように、中央領域43は、非肌側層47のみが存在する第1領域81と、厚み方向Zに非肌側層47と肌側層40の双方が存在する第2領域82と、を有する。
中央領域43において、肌側層40は、厚み方向Zを貫通する縦方向Xに延びる1つのスリット46を有する。スリット46は、平面視において細長い形状を有し肌側層40を厚み方向Zに貫通する。中央領域43において、スリット46より非肌側には非肌側層47のみが存在することになり、スリット46は第1領域81の空間Sを形成する。
「スリット46が縦方向Xに延びる」とは、スリット46が縦方向Xに平行に延びる態様に限定されず、全体として腹側から背側に延びていればよい。
尚、第1領域81を形成するスリット46の数は1つに限定されず、複数あってもよく、複数ある例を後述の第3実施形態で説明する。
【0026】
図3及び図5に示すように、吸収性部材7は、第1領域81に、肌側層40が存在しないことにより形成された空間Sを有する。当該空間Sはスリット46により形成される。吸収性部材7において、第1領域81は、吸収性部材7を構成する構成繊維がない、又は、わずかに存在するのみで、ほぼ高吸水性ポリマー470のみから構成される。
【0027】
第1領域81に存在する非肌側層47に含まれる高吸水性ポリマー470は、吸水時に他の部材に固着しない。ここで、「吸水時に他の部材に固着しない」とは、中央領域43が排泄液を吸水した際に、おむつの装着を介助する介助者(以下、「介助者」という。)が、外面側(外装体6側)からおむつ1を触ったときに、第1領域81に存在する高吸水性ポリマー470が指圧で移動可能な状態となっていることをいう。詳細な作用効果については後述するが、本発明では、おむつ1の中央領域43に高吸水性ポリマー470が高い割合で含有される非肌側層47のみからなる第1領域81を設けることで、介助者は、おむつ1を外装体6側から触ることで、吸水によって膨張してゲル状となった高吸水性ポリマー470の存在を感触で認識することで、排泄状態を把握することができる。
【0028】
図3及び図5に示すように、第1実施形態のおむつ1において、吸収体4は、サイド領域44に配置され縦方向Xに延びる吸収体用弾性部材45を有する。尚、吸収体用弾性部材45を有さないおむつとしてもよい。
吸収体用弾性部材45は、帯状又は糸状の弾性部材である。「吸収体用弾性部材45が縦方向Xに延びる」とは、吸収体用弾性部材45が縦方向Xに平行な態様に限定されず、全体として、腹側から背側に延びている態様を含む。
吸収体用弾性部材45は、自然長から伸張させた状態で、吸収体4の左右両側縁に接着剤等によって取り付けられる。吸収体用弾性部材45は、股下領域Cにおいて少なくとも延び、サイド領域44の縦方向X腹側及び/又は背側まで延出していてもよい。
【0029】
上記構成では、吸収体用弾性部材45によって、吸収体4のサイド領域44に縦方向Xに沿った収縮力が作用し、吸収体4の両側縁に吸収体ギャザーG1が形成される。これにより、着用時に、サイド領域44が変形誘導部42を起点に起立しやすくなる。したがって、着用時に、吸収体4が凹状の形状を安定して維持でき、凹部Rに排泄物が溜まり易くなり、中央領域43により多く排泄液が供給されやすくなる。
【0030】
吸収体用弾性部材45は、吸収体4の横方向Yにおける側縁部4sに配置されていることが好ましい。これにより、サイド領域44の全体を安定して起立させることができる。この場合、吸収体用弾性部材45の脱落を抑制する観点から、吸収体用弾性部材45は、側縁部4sの外表面(例えばコアラップシート41上)に配置され、トップシート2によって覆われていることが好ましい。また、吸収体用弾性部材45が側縁部4sに配置される他の態様としては、吸収性部材7の横方向Yにおける側縁部とコアラップシート41との間に配置されてもよい。
【0031】
[バックシートの構成]
バックシート3は、排泄液や汗などに由来する水蒸気を外部に放出してムレを抑制する観点から、透湿性を有する。「透湿性」とは、気流移動を伴わず、熱力学の第二法則に従って、高湿度側から低湿度側に水蒸気が拡散する性質を意味する。透湿性は、例えばJIS Z0208に基づいて測定された透湿度の値によって評価することができる。
【0032】
透湿度は、JIS Z0208に準じて測定することができる。以下、説明する。
まず、吸湿剤として塩化カルシウムを収容したカップを準備し、このカップを水平になるように配置する。試験前の塩化カルシウムの質量は、予め測定しておく。バックシートをカップの内径よりも10mm大きい直径を持つ円形に切断して試験片を準備し、この試験片をカップの上縁に配置し、試験片の周縁がカップの上縁の同心円上に位置するように調整する。カップの上縁に沿ったリング状のパッキンを準備し、試験片の周縁がカップの上縁に密着するように当該パッキンを押し込む。さらに、その上にリング状のおもりを配置し、透湿性フィルムがカップの上縁に固定された試験体を作製する。この試験体を、温度30℃±0.5℃、湿度90±2%RHにおいて1時間放置し、試験後の塩化カルシウムの質量を測定する。試験後の塩化カルシウムの質量から、試験前の塩化カルシウムの質量を減じた値を算出し、これを試験片の水蒸気透過面100cm当たりの値に換算して、透湿度を算出する。
【0033】
透湿性を実現するため、バックシート3は、複数の微細孔(ミクロボイド)を有する透湿性フィルムで構成されることが好ましい。透湿性フィルムは、例えば樹脂製フィルムを含み、単層構造でも積層構造でもよい。透湿性フィルムとしては、例えば、疎水性の熱可塑性樹脂(ポリオレフィン系樹脂等)と、該熱可塑性樹脂と相溶性のない無機微粒子(炭酸カルシウム等)とを、溶融混練してフィルムを形成し、該フィルムを一軸又は二軸延伸して得られる。フィルムの形成は、例えば、インフレーション法、Tダイ法等を用いることができる。
【0034】
バックシート3は、その引裂強度が高い方向が吸収体4の長手方向、つまり縦方向Xに平行となるように配される。典型的には、バックシート3を構成する透湿性フィルムは、そのMD方向が引裂強度の高い方向となっており、本実施形態のおむつ1では、バックシート3のMD方向が縦方向Xに平行となるようにバックシート3を配している。つまり、バックシート3は、おむつ1において耐横裂け性が高い。
また、おむつ1では、外装体6の繊維配向の方向が、横方向Yに平行となるように配される。不織布の繊維配向の方向は、引裂強度の高い方向である。つまり、外装体6は、おむつ1において耐縦裂け性が高い。
このように、おむつ1では、バックシート3の引裂強度の高い方向と、外装体6の引裂強度の高い方向とが交差するように配される。
【0035】
引裂強度の測定は、JIS P8116に従い測定することができる。バックシート3及び外装体6それぞれから、長さ100mm×幅25mmの測定サンプルを、該測定サンプルの長手方向と、おむつ1における横方向Yとが互いに一致するように切り出す。また、バックシート3及び外装体6それぞれから、長さ100mm×幅25mmの測定サンプルを、該測定サンプルの長手方向と、おむつ1における縦方向Xとが互いに一致するように切り出す。これらの測定サンプルに対し、JIS P8116に従い引裂強度を測定する。
そして、バックシート3(外装体6)において、横方向Yに長手方向を有する測定サンプルの引裂強度と縦方向Xに長手方向を有する測定サンプルの引裂強度とを比較し、数値の高い方の測定サンプルの長手方向と平行な方向を、バックシート3(外装体6)の引裂強度の高い方向とする。
【0036】
[作用効果]
本発明のおむつ1では、バックシート3が透湿性を有し、股下領域Cの吸収性部材7の中央領域43において、高吸水性ポリマー470が肌側層40より非肌側層47に多く偏在し、中央領域43には、厚み方向Zに非肌側層47のみが存在する第1領域81を有している。吸収性部材7は、第1領域81に、肌側層40が存在しないことにより形成された空間Sを有し、第1領域81に存在する非肌側層47に含まれる高吸水性ポリマー470は、吸水時に他の部材に固着しない構成となっている。
このような構成とすることで、介助者は、視認によらずとも排泄状態、より詳細には尿等の排泄液の排泄状態を触覚によって把握することができる。
以下、詳細に説明する。
【0037】
本発明のおむつ1では、おむつ1の吸収性部材7の中央領域43に、高吸水性ポリマー470が高い割合で含有される非肌側層47のみが存在し、肌側層40が存在しないことにより形成された空間Sを有する第1領域81が設けられる。おむつ1の着用時、着用者からの排泄液が吸収性部材7に供給されると、高吸水性ポリマー470は、水分を吸水し膨潤して、水分全体をゲル状にする。吸水によって膨張してゲル状となった高吸水性ポリマー470は、空間Sがあることで介助者が股下領域Cを摘まんだ時の指圧で移動可能となり、高吸水性ポリマー470を吸水時に他の部材に固着されない移動可能な状態とすることができる。
【0038】
これにより、介助者は、外装体6側からおむつ1の股下領域Cを摘まむことで、その感触によって排泄状態を確認することができる。つまり、吸水前では、股下領域Cを摘まんでも感触から高吸水性ポリマー470の存在自体を確認しづらい。これに対し、吸水後では、股下領域Cを介助者が摘まむことで水分を吸水し膨潤しゲル状となった高吸水性ポリマー470が指圧で移動し、介助者は、高吸水性ポリマー470の移動の感触を容易に感じ取ることができる。このように空間Sを設けることで吸水前後の高吸水性ポリマー470に起因する感触差がより大きく感じられるようになり、排泄状態を容易に確認することができる。
【0039】
ここで、おむつ1の着用時、吸収体4に吸収された排泄液は、おむつ内で水蒸気として蒸散される。吸収体4の非肌側には透湿性を有するバックシート3が配されていることで、バックシート3を構成する透湿性フィルムの微細孔を通って水蒸気が放出される。この際、放熱現象が生じる。
おむつ1では、吸収性部材7において、肌側層40よりも非肌側層47に高吸水性ポリマー470が多くなるように偏在している。つまり、高吸水性ポリマー470が高い割合で含まれる非肌側層47は、肌側層40よりも、透湿性の高いバックシート3により近く位置する。本実施形態では、中央領域43において、非肌側層47はコアラップシート41を介してバックシート3と隣接する。このため上記放熱現象がより生じやすくなり、吸水した非肌側層47の高吸水性ポリマー470が冷えやすくなる。加えて、非肌側層47は、肌側層40よりも非肌側にあり、着用者の皮膚温が伝わりにくい位置にあるため、高吸水性ポリマー470がより冷えやすい構成となっている。このように、高吸水性ポリマー470とバックシート3とを隣接させ、より放熱現象を生じやすくさせることで、介助者は、おむつ1の外装体6を触れたときに冷感を感じやすくなる。おむつは、排尿直後は体温等で温かいが、おむつの装着時間が長くなり、尿が大量に排泄されると、おむつ1が冷たくなる。介助者は、外装体6側からおむつ1の股下領域Cを触ることで、上記高吸水性ポリマー470の吸水前後の感触差に加え、温冷感覚によって、排泄液の多少等の排泄状態をより一層確認しやすくなる。
【0040】
また、おむつ1では、バックシート3は透湿性を有するため、排泄液の量が多くなると、バックシート3を構成する透湿性フィルムの微細孔を通って放出される水蒸気によって、おむつ1を覆う衣類が湿気を帯びてくる。これにより、介助者は、おむつ1を覆う衣類に帯びる湿気の状態によって排泄液の多少等の排泄状態をより一層確認しやすくなる。
【0041】
また、本実施形態のおむつ1では、触覚による尿等の排泄液の排泄状態をより一層確認しやすくする観点から、吸収性部材7が一対の変形誘導部42を備えている。
このような構成とすることで、上述したように、着用時には、変形誘導部42を起点として吸収体4が折れ曲がり、吸収体4は、着用者の股間部Kに収まるように変形し、中央領域43からサイド領域44が肌側に起立する。これにより、吸収体4は、中央領域43を底部、サイド領域44を起立部とする凹状に変形し、介助者が排泄状態を確認する際に触りやすい領域である股下領域Cの中央領域43により集中して排泄液が多く供給されやすくなり、触覚による排泄状態をより一層確認しやすくすることができる。
【0042】
このように、本発明のおむつは、視認によらずとも排泄状態、より詳細には尿等の排泄液の排泄状態を触覚によって把握することができる。
これにより、照明が暗い暗所下等でインジケータが視認しづらい状況下においても、触覚により排泄状態を確認することができ、おむつを覆っている衣類を脱がしてインジケータを視認する必要がない。また、明るい照明にせずとも、暗所下で触覚による排泄状態の確認ができるため、着用者の睡眠妨害をすることがなく、介助者及び着用者双方の負担を軽減することができる。また、視覚障害のある介助者においても排泄状態の確認が容易となる。
【0043】
また、本実施形態のおむつ1では、触覚による排泄状態をより一層確認し易くする観点から、吸収体4は、サイド領域44に配置され縦方向に延びる吸収体用弾性部材45を備える。
上述したように、吸収体用弾性部材45によって吸収体4の両側縁に吸収体ギャザーG1が形成され、着用時に、サイド領域44が変形誘導部42を起点に起立しやすくなり、排泄状態を確認する際に触りやすい領域である中央領域43により集中して多く排泄液が供給されやすくなり、触覚による排泄状態をより一層確認しやすくすることができる。
【0044】
おむつ1では、バックシート3の引裂強度の高い方向と、外装体6の引裂強度の高い方向とが交差するように配されることが好ましい。
おむつ1において、引裂強度の高い方向が縦方向Xに平行となるようにバックシート3を配することで、介助者がおむつ1の股下領域Cを摘まんだ時にバックシート3が破断しにくくなる。そして、おむつ1において、バックシート3の引裂強度の高い方向と外装体6の引裂強度の高い方向とが交差するように、バックシート3と外装体6を配することで、排泄状態確認のため股下領域Cをつまむときの指圧による圧力を分散させ、爪や指が外装体6やバックシート3等の部材を突き抜けることを防止することができる。
【0045】
[補足説明]
高い透湿性を有し、ムレの少ない快適なおむつ1とするとともに、防漏性を確保し、おむつ1を覆う衣類に湿気を帯びさせて排泄状態を確認しやすくする観点から、上述したJIS Z0208に基づいて測定されるバックシート3の透湿度の値は、好ましくは1.5g/100cm・h以上、より好ましくは1.7g/100cm・h以上であり、好ましくは3.6g/100cm・h以下、より好ましくは3.4g/100cm・h以下である。
このような透湿性を実現するため、バックシート3は、微細な複数の微細孔を含んでいる透湿性フィルム30であることが好ましい。
【0046】
バックシート3では、0.06μm以上0.16μm以下の範囲の開孔径を有する微細孔の単位質量当たりの細孔容量が、2.5μm以上3.5μm以下の範囲の開孔径を有する微細孔の単位質量当たりの細孔容量よりも大きいことが好ましい。これにより、0.06μm以上0.16μm以下の範囲の開孔径を有する微細孔を多数形成することができ、水蒸気(湿気)の透過性を高めることができる。その一方で、2.5μm以上3.5μm以下の範囲の開孔径を有する微細孔の数を規制することができ、水分の漏れをより確実に防止することができる。したがって、透湿性と防漏性を両立するバックシート3を得ることができる。
【0047】
(細孔容量の測定方法)
細孔容量は、JIS R 1655に規定される水銀圧入法に準じて、以下の方法で測定することができる。まず、測定対象の透湿性フィルム30から、所定のサイズ(例えば10mm×10mm)の測定サンプルを切り出す。この測定サンプルを、水銀ポロシメーター(例えば、「オートポアIV9520」、株式会社島津製作所製)にセットし、細孔径0.06μm以上3.5μm以下の領域の細孔径分布を測定する。得られた細孔径分布(図6参照)に基づいて、細孔径0.06μm以上0.16μm以下の領域の累積細孔容量と、細孔径2.5μm以上3.5μm以下の領域の累積細孔容量とを測定する。細孔径0.06μm以上0.16μm以下の領域の累積細孔容量が、細孔径2.5μm以上3.5μm以下の領域の累積細孔容量よりも大きかった場合、「0.06μm以上0.16μm以下の範囲の細孔径を有する微細孔の単位質量当たりの細孔容量が、2.5μm以上3.5μm以下の範囲の細孔径を有する微細孔の単位質量当たりの細孔容量よりも大きい」と判断する。
【0048】
このように、小さな微細孔37を多数形成する方法としては、例えば、透湿性フィルム30を均一に延伸する方法が挙げられる。図7(A)に示すように、透湿性フィルム30の延伸が不均一だった場合は、透湿性フィルム30の一部に十分に延伸されていない領域が生じ、小さな無機微粒子36を起点として十分に開孔できない部分(太線で示した未開孔部38)が形成され得る。さらに、透湿性フィルム30の面内において、延伸力が大きい領域では、無機微粒子36が大きく引きずられることで大きな微細孔37が形成され、延伸力が小さい領域では、無機微粒子36があまり引きずられないことで小さな微細孔37が形成されやすくなる。このため、微細孔37の大きさが、無機微粒子36の大きさと相関を有しないことがある。
【0049】
これに対し、図7(B)に示すように、透湿性フィルム30が均一に延伸された場合は、小さな無機微粒子36にも十分に延伸力が付加される。この結果、図7(A)の例では未開孔部38であった部分が、図7(B)では十分に開孔した微細孔37(太線で示した部分)となり、小さな微細孔37を増やすことができる。また、透湿性フィルム30の面内における延伸が均一である場合には、無機微粒子36の大きさに応じた微細孔37が形成されやすいことから、微細孔37の大きさと無機微粒子36の大きさとが正に相関する傾向を有する。
【0050】
透湿性フィルム30が均一に延伸されている指標として、透湿性フィルム30では、厚み方向Zから見た平面視において、0.01μm以上0.5μm以下の大きさの無機微粒子に隣接して配置される微細孔の細孔径は、1.0μm以上1.5μm以下の大きさの無機微粒子に隣接して配置される微細孔の径よりも小さいことが好ましい。上記構成では、透湿性フィルム30が均一に延伸されていることにより、小さな無機微粒子36に隣接する小さな微細孔37の数を増加させることができ、透湿性及び防漏性の高い透湿性フィルム30を得ることができる。
【0051】
(無機微粒子のサイズ及び微細孔の細孔径の測定方法)
透湿性フィルム30から所定のサイズ(例えば10mm×10mm)の評価サンプルを切り出す。切り出した評価サンプルを常法に従って固定し、走査型電子顕微鏡(SEM)で1000倍に拡大して撮像する。1つの画像から、画像解析技術を用いて、無機微粒子とそれに隣接する微細孔のそれぞれに対応する部分の輪郭を抽出する。抽出された無機微粒子に対応する領域のサイズと、それに隣接する微細孔に対応する領域のサイズとをそれぞれ測定する。なお、微細孔の細孔径は、抽出された微細孔に対応する領域のサイズ(面積)から円換算直径を算出することで得られる。1枚の透湿性フィルム30から100箇所の画像を撮像し、0.01μm以上0.5μm以下の大きさの無機微粒子に隣接して配置される微細孔の細孔径の平均値と、1.0μm以上1.5μm以下の大きさの無機微粒子に隣接して配置される微細孔の細孔径の平均値とを算出する。
【0052】
上述のように、無機微粒子36の大きさに応じた微細孔37が形成される場合、無機微粒子36の大きさの分布を制御することで、微細孔37の細孔径も制御することができる。このような観点から、透湿性フィルム30では、厚み方向Zから見た平面視において、0.01μm以上0.5μm以下の大きさの無機微粒子36の単位面積当たりの粒子数は、0.5μm以上2.0μm未満の大きさの無機微粒子36の単位面積当たりの粒子数よりも少なく、かつ、2.0μm以上の無機微粒子36の単位面積当たりの粒子数は、0.5μm以上2.0μm未満の大きさの無機微粒子36の単位面積当たりの粒子数よりも少ないことが好ましい。上記構成により、微小な微細孔37を多く形成でき、透湿性及び防漏性の双方を充足する透湿性フィルム30を得ることができる。
【0053】
バックシート3の坪量は、着用者の動きに追従しやすくする観点から、好ましくは20g/m以下、より好ましくは18g/m以下であり、耐水性の観点から、好ましくは11g/m以上、より好ましくは13g/m以上である。着用者の動きへの追従性及び耐水性を両立させる観点から、好ましくは11g/m以上20g/m2以下、より好ましくは13g/m以上18g/m以下である。
【0054】
第1領域81の空間Sを形成するスリット46の横方向Yの幅は、排泄液の排泄状態を触覚によって把握する観点から、好ましくは3mm以上、より好ましくは4mm以上であり、排泄液を前後方向に拡散させ吸水効率を高める観点から、好ましくは30mm以下、より好ましくは20mm以下であり、好ましくは3mm以上30mm以下、より好ましくは4mm以上20mm以下である。
【0055】
第1領域81の空間Sを形成するスリット46の深さ方向の寸法、換言すると肌側層40の厚み方向Zの寸法(高さ)は、排泄液の排泄状態を触覚によって把握する観点から、好ましくは1mm以上、より好ましくは2.5mm以上であり、装着時に吸収体を凹状に維持する観点から、好ましくは20mm以下、より好ましくは10mm以下であり、好ましくは1mm以上20mm以下、より好ましくは2.5mm以上10mm以下である。
尚、上記スリットの横方向Yの幅及び高さの数値は、吸水前の状態での測定値を示す。
【0056】
高吸水性ポリマー470としては、各種公知のものを特に制限なく用いることができ、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム、(アクリル酸-ビニルアルコール)共重合体、ポリアクリル酸ナトリウム架橋体、(でんぷん―アクリル酸)グラフト共重合体、(イソブチレン-無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物、ポリアスパラギン酸等が挙げられる。
混合積繊層を構成する繊維471としては、従来から吸収性コアの構成材料として用いられる公知のものを特に制限なく用いることができる。例えば、パルプ繊維、レーヨン繊維、コットン繊維、酢酸セルロース等の親水性繊維、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系繊維、ポリエステル、ポリアミド等の縮合系繊維等を用いることができる。高吸水性ポリマー及び繊維は、それぞれ一種又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0057】
吸収性部材の構成は第1実施形態の吸収性部材7の構成に限定されない。以下、他の形態の吸収性部材を有するおむつを、第2及び第3実施形態として説明する。以下の第2及び第3実施形態の説明において、既出の構成については同様の符号を付し説明を省略する場合がある。また、第2及び第3実施形態の説明では、第1の実施形態と異なる構成を中心に説明する。
【0058】
以下の第2実施形態及び第3実施形態に係わるおむつにおいても、第1実施形態のおむつ1と同様に、バックシートが透湿性を有し、股下領域Cの吸収性部材の中央領域において、高吸水性ポリマーが肌側層より非肌側層に多く偏在し、中央領域には、厚み方向Zに非肌側層のみが存在する第1領域を有している。そして、吸収性部材は、第1領域に、肌側層が存在しないことにより形成された空間Sを有し、第1領域に存在する非肌側層に含まれる高吸水性ポリマーは、吸水時に他の部材に固着しない構成となっている。
このような構成とすることで、介助者は、視認によらずとも排泄状態、より詳細には尿等の排泄液の排泄状態を触覚によって把握することができる。
以下、第2及び第3実施形態について説明する。
【0059】
<第2実施形態>
図8に示すように、第2実施形態に係わるおむつ1Aは、トップシート2と、吸収体4Aと、サイドシート5と、バックシート3と、外装体6と、を有する。
【0060】
吸収体4Aは、吸収性部材7と、コアラップシート41と、を有する。吸収性部材7Aは、排泄液を保持することが可能な吸収性材料を主体として構成される。具体的に、本実施形態では、吸収性部材7Aは、繊維471と高吸水性ポリマー470を含む混合積繊体から構成される。吸収性部材7Aはいわゆる吸収性コアである。第1実施形態の吸収性部材7は、肌側層と非肌側層が厚み方向で連続した一体的に形成された混合積繊体であるのに対し、本実施形態の吸収性部材7Aは、肌側層40Aと非肌側層47Aとが非連続の別々の層となっている。
【0061】
図8に示すように、吸収性部材7Aは、肌側に位置する肌側層40Aと非肌側に位置する非肌側層47Aを有する。肌側層40Aと非肌側層47Aとは積層される。肌側層40Aと非肌側層47Aは、いずれも高吸水性ポリマー470と繊維471を含む混合積繊層から構成される。肌側層40Aと非肌側層47Aとは、高吸水性ポリマー470の含有率が異なる。吸収性部材7Aにおいて、高吸水性ポリマー含有率は肌側層40Aよりも非肌側層47Aの方が高く、高吸水性ポリマー470が肌側層40Aよりも非肌側層47Aに多く偏在するように構成される。
このように、吸収性部材7Aを少なくとも2枚の混合積繊層を積層した構成とすることで、それぞれの層の高吸水性ポリマーの含有割合を異ならせることで、厚み方向Zでの高吸水性ポリマーの偏在化が容易となる。
【0062】
おむつ1Aにおいて、中央領域43は、非肌側層47Aのみが存在する第1領域81と、厚み方向Zに非肌側層47Aと肌側層40Aの双方が存在する第2領域82と、を有する。
中央領域43において、肌側層40Aは、厚み方向Zを貫通する縦方向Xに延びる1つのスリット46を有する。スリット46は、第1領域81を形成する。
【0063】
このように、吸収性部材7Aは、第1領域81に、肌側層40Aが存在しないことにより形成された空間Sを有する。当該空間Sはスリット46によって形成される。吸収性部材7Aにおいて、第1領域81は、高吸水性ポリマー470が高い割合で存在する非肌側層47Aのみから構成される。第1領域81の空間Sは、肌側層40Aに設けられるスリット46により形成される。第1領域81に存在する非肌側層47Aに含まれる高吸水性ポリマー470は、吸水時に他の部材に固着しない。
これにより、介助者は、視認によらずとも排泄状態、より詳細には尿等の排泄液の排泄状態を触覚によって把握することができる。
【0064】
<第3実施形態>
図9に示すように、第3実施形態に係わるおむつ1Bは、トップシート2と、吸収体4Bと、サイドシート5と、バックシート3と、外装体6と、を有する。
【0065】
吸収体4Bは、吸収性部材7と、コアラップシート41と、を有する。吸収性部材7Bは、排泄液を保持することが可能な吸収性材料を主体として構成される。
具体的に、本実施形態では、吸収性部材7Bは、肌側層40Bと、非肌側層47Bとが積層されて構成される。肌側層40Bは繊維471と高吸水性ポリマー470を含む混合積繊層からなるいわゆる吸収性コアから構成される。非肌側層47Bは高吸水性ポリマーシートから構成される。高吸水性ポリマーシートから構成される非肌側層47Bは、一対の親水性繊維シート71a及び71bと、当該親水性繊維シート71a及び71bに挟まれた高吸水性ポリマー層72とを有する。当該高吸水性ポリマー層72は、複数の高吸水性ポリマー470を有する。
【0066】
肌側層40Bと非肌側層47Bとは、高吸水性ポリマー470の含有率が異なる。吸収性部材7Bにおいて、高吸水性ポリマー含有率は肌側層40Bよりも非肌側層47Bの方が高く、高吸水性ポリマー470が肌側層40Bよりも非肌側層47Bに多く偏在するように構成される。高吸水性ポリマーシートから構成される非肌側層47Bの高吸水性ポリマーの坪量は、混合積繊層から構成される肌側層40Bの高吸水性ポリマーの坪量よりも多くなっている。
このように、混合積繊層と高吸水性ポリマーシートを積層して吸収性部材7Bを構成することで、厚み方向Zで高吸水性ポリマーを偏在化させることが容易となる。
【0067】
おむつ1Bにおいて、中央領域43は、非肌側層47Bのみが存在する第1領域81と、厚み方向Zに非肌側層47Bと肌側層40Bの双方が存在する第2領域82と、を有する。
中央領域43において、肌側層40Bは、厚み方向Zを貫通する縦方向Xに延びる2つのスリット46を有する。スリット46は、第1領域81を形成する。このように、空間Sを形成するスリット46が複数設けられていてもよく、第1及び第2実施形態においてもスリット46を複数設けることができる。
【0068】
このように、吸収性部材7Bは、第1領域81に、肌側層40Bが存在しないことにより形成された空間Sを有する。吸収性部材7Aにおいて、第1領域81は、高吸水性ポリマー470が高い割合で存在する非肌側層47Bのみから構成される。第1領域81の空間Sは、肌側層40Bに設けられるスリット46により形成される。第1領域81に存在する非肌側層47Bに含まれる高吸水性ポリマー470は、吸水時に他の部材に固着しない。
これにより、介助者は、視認によらずとも排泄状態、より詳細には尿等の排泄液の排泄状態を触覚によって把握することができる。
【0069】
また、本実施形態のおむつ1Bでは、高吸水性ポリマーシートから構成される非肌側層47Bが吸収体4の横方向Y全幅に亘って配されるのに対し、肌側層40Bは横方向Yにおいてサイド領域44には配されず、中央領域43のみに配される。このような構成とすることで、吸収性部材7Bでは、肌側層40Bと非肌側層47Bが積層されて存在する中央領域43は、非肌側層47Bのみが存在するサイド領域44よりも剛性が高くなり、肌側層40Bの横方向Yの両側縁に沿って曲げ剛性の境界が形成される。当該曲げ剛性の境界は、吸収体4Bの折れ曲がりの起点となる変形誘導部42となる。着用時には、変形誘導部42を起点として吸収体4が折れ曲がり、図9に示すように、吸収体4Bは、着用者の股間部Kに収まるように変形し、中央領域43からサイド領域44が肌側に起立する。これにより、吸収体4は、中央領域43を底部、サイド領域44を起立部とする凹状に変形し、股下領域Cの中央領域43に排泄液が供給されやすくなる。このように、一対の変形誘導部42を設けることで、排泄状態を確認する際に触りやすい領域である中央領域43に排泄液が集中して多く供給されやすくなり、触覚による排泄状態をより一層確認しやすくすることができる。
【0070】
<他の実施形態>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0071】
上述の実施形態では、吸収性物品がパンツ型使い捨ておむつとして構成される例を挙げたが、これに限定されない。例えば、テープ型使い捨ておむつ、パンツ型生理用物品、介護用パッドなどであってもよい。
【符号の説明】
【0072】
1、1A、1B…使い捨ておむつ(吸収性物品)
3…バックシート
4、4A,4B…吸収体
7、7A、7B…吸収性部材
40、40A、40B…肌側層
42…変形誘導部
43…中央領域
44…サイド領域
47、47A、47B…非肌側層
81…第1領域
82…第2領域
470…高吸水性ポリマー
A…腹側領域
B…背側領域
C…股下領域
S…空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9