(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123541
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/49 20060101AFI20240905BHJP
A61F 13/51 20060101ALI20240905BHJP
A61F 13/494 20060101ALI20240905BHJP
A61F 13/539 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
A61F13/49 315A
A61F13/49 315Z
A61F13/51
A61F13/494 115
A61F13/49 410
A61F13/539
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031047
(22)【出願日】2023-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石橋 京子
(72)【発明者】
【氏名】犹守 沙耶香
(72)【発明者】
【氏名】川口 宏子
(72)【発明者】
【氏名】松久 誠
(72)【発明者】
【氏名】鹿谷 智也
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200BA07
3B200BA11
3B200BA12
3B200BB03
3B200BB09
3B200CA02
3B200CA09
3B200DA01
3B200DA21
3B200DD02
3B200DD04
3B200DE06
(57)【要約】
【課題】背側領域において高いフィット性及び防漏性を有しつつ、良好な着用感を有しムレや肌トラブルを防止することが可能な吸収性物品に関する。
【解決手段】吸収性物品は、背側領域から延びる一対のファスニングテープと、背側領域の横方向側部に配置された一対のギャザー部と、を備える。ギャザー部は、第1不織布層と第2不織布層とこれらの間に配置された弾性部材とを含むギャザー層と、ギャザー層の非肌側に配置された外層不織布層と、外層不織布層とギャザー層との間に配置され透湿フィルムで構成されたフィルム層と、を有する。ギャザー層は、低伸長領域と、低伸長領域の横方向外側に配置された高伸長領域と、に区分される。低伸長領域は、外層不織布層に接合されたフィルム層に接合される。高伸長領域は、フィルム層又は外層不織布層のいずれとも接合されておらず、少なくとも一部においてフィルム層と重ならない。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の腹側から股間部を通って背側に延びる縦方向と、前記縦方向に直交し前記着用者の左右方向に対応する横方向と、前記縦方向及び前記横方向に直交する厚み方向と、を有し、かつ、前記縦方向に沿って、腹側領域と、股下領域と、背側領域と、に区分された吸収性物品であって、
前記背側領域の前記横方向における端部から前記横方向外側に延びる一対のファスニングテープと、
前記背側領域の前記横方向側部に配置された、前記横方向に伸縮する一対のギャザー部と、をさらに備え、
前記ギャザー部は、
肌側に配置された第1不織布層と、前記第1不織布層の非肌側に配置された第2不織布層と、前記第1不織布層と前記第2不織布層との間に配置され、前記横方向に延びる弾性部材と、を有するギャザー層と、
前記ギャザー層の全体と前記厚み方向に重なるように、前記ギャザー層の非肌側に配置された外層不織布層と、
前記ギャザー層の一部と前記厚み方向に重なるように、前記外層不織布層と前記ギャザー層との間に配置され、透湿フィルムで構成されたフィルム層と、を有し、
前記ギャザー層は、
低伸長領域と、
前記低伸長領域の前記横方向外側に配置され、前記低伸長領域よりも前記横方向における伸長率の高い高伸長領域と、に区分され、
前記低伸長領域は、
前記外層不織布層に接合された前記フィルム層に接合され、
前記高伸長領域は、
前記フィルム層又は前記外層不織布層のいずれとも接合されておらず、少なくとも一部において前記フィルム層と前記厚み方向に重ならない
吸収性物品。
【請求項2】
前記フィルム層は、
前記低伸長領域及び前記外層不織布層に接合された第1接合領域と、
前記透湿性フィルムの前記横方向外側における端部である側端部を含み、前記第1接合領域の前記横方向外側に位置する端部領域をさらに有し、
前記端部領域は、前記ギャザー層に接合されていない
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記端部領域は、
前記第1接合領域と前記横方向に隣接する第2接合領域を有し、
前記第2接合領域は、前記外層不織布層に接合される
請求項2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記端部領域は、
前記側端部を含み、かつ、前記ギャザー層又は前記外層不織布層のいずれとも接合されていない非接合領域を有する
請求項2又は3に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記非接合領域の前記横方向における寸法は、5mm以上である
請求項4に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記非接合領域は、肌側に捲れている
請求項4又は5に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記高伸長領域の前記横方向における寸法は10mm以上である
請求項1から6のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記弾性部材は、
前記第1不織布層及び前記第2不織布層を接合し、前記横方向に沿って非連続的に配置されたギャザー接合部を含む
請求項1から7のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項9】
前記透湿性フィルムは、複数の微細孔を有する
請求項1から8のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項10】
前記透湿性フィルムの透湿度は、2.7g/100cm2・h以上12g/100cm2・h以下である
請求項9に記載の吸収性物品。
【請求項11】
前記透湿性フィルムでは、
0.06μm以上0.16μm以下の範囲の細孔径を有する前記微細孔の単位質量当たりの細孔容量が、2.5μm以上3.5μm以下の範囲の細孔径を有する前記微細孔の単位質量当たりの細孔容量よりも大きい
請求項9又は10に記載の吸収性物品。
【請求項12】
前記透湿性フィルムは、前記微細孔に隣接して配置された無機微粒子を有し、
前記透湿性フィルムでは、前記厚み方向から見た平面視において、
0.01μm2以上0.5μm2以下の大きさの前記無機微粒子に隣接して配置される前記微細孔の細孔径が、1.0μm2以上1.5μm2以下の大きさの前記無機微粒子に隣接して配置される前記微細孔の細孔径よりも小さい
請求項9から11のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項13】
前記透湿性フィルムでは、前記厚み方向から見た平面視において、
0.01μm2以上0.5μm2以下の大きさの前記無機微粒子の単位面積当たりの粒子数は、0.5μm2以上2.0μm2未満の大きさの前記無機微粒子の単位面積当たりの粒子数よりも少なく、かつ、
2.0μm2以上の前記無機微粒子の単位面積当たりの粒子数は、0.5μm2以上2.0μm2未満の大きさの前記無機微粒子の単位面積当たりの粒子数よりも少ない
請求項12に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着用者の胴回りに着用される吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつ等の吸収性物品は、例えば、着用者の背側に配置される背側領域と、着用者の腹側に配置される腹側領域と、着用者の股下に配置される股下領域と、に区分できる。このような吸収性物品のうち、背側領域と腹側領域とが分離している展開型のおむつは、例えば、背側領域の側端部に配置されたファスニングテープを、腹側領域上に貼り付けることで、着用者の胴回りを覆うことができる。
【0003】
一方で、仰臥位などの姿勢が多い着用者に吸収性物品が着用された場合、背側領域から便や尿などの排泄物が漏れる懸念がある。これに対し、例えば特許文献1には、背側領域(後身頃)におけるフィット性と防漏性とを高める観点から、止着部材が設けられた後身頃に水平方向に配置された複数本の弾性伸縮部材と、後身頃の吸収体よりも側方に延在して形成された防水フィルムと、を備えた吸収性物品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の吸収性物品において、防漏性向上のために防水フィルムを弾性伸縮部材の配置されたギャザー部まで広く延在させた場合、当該ギャザー部の着用感の低下が懸念される。それに加えて、この構成では、吸収性物品の透湿性や通気性が低下し、ムレやそれに伴う肌トラブルも懸念される。
【0006】
本発明は、背側領域において高いフィット性及び防漏性を有しつつ、良好な着用感を有しムレや肌トラブルを防止することが可能な吸収性物品に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態に係る吸収性物品は、着用者の腹側から股間部を通って背側に延びる縦方向と、前記縦方向に直交し前記着用者の左右方向に対応する横方向と、前記縦方向及び前記横方向に直交する厚み方向と、を有し、かつ、前記縦方向に沿って、腹側領域と、股下領域と、背側領域と、に区分される。
前記吸収性物品は、
前記背側領域の前記横方向における端部から前記横方向外側に延びる一対のファスニングテープと、
前記背側領域の前記横方向側部に配置された、前記横方向に伸縮する一対のギャザー部と、を備える。
前記ギャザー部は、
肌側に配置された第1不織布層と、前記第1不織布層の非肌側に配置された第2不織布層と、前記第1不織布層と前記第2不織布層との間に配置され、前記横方向に延びる弾性部材と、を含むギャザー層と、
前記ギャザー層の全体と前記厚み方向に重なるように、前記ギャザー層の非肌側に配置された外層不織布層と、
前記ギャザー層の一部と前記厚み方向に重なるように、前記外層不織布層と前記ギャザー層との間に配置され、透湿フィルムで構成されたフィルム層と、を有する。
前記ギャザー層は、
低伸長領域と、
前記低伸長領域の前記横方向外側に配置され、前記低伸長領域よりも前記横方向における伸長率の高い高伸長領域と、に区分される。
前記低伸長領域は、
前記外層不織布層に接合された前記フィルム層に接合される。
前記高伸長領域は、
前記フィルム層又は前記外層不織布層のいずれとも接合されておらず、少なくとも一部において前記フィルム層と前記厚み方向に重ならない。
【発明の効果】
【0008】
本発明の吸収性物品によれば、背側領域において高いフィット性及び防漏性を有しつつ、良好な着用感を有しムレや肌トラブルを防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る吸収性物品(使い捨ておむつ)の平面図であり、各部の弾性部材を伸長させて平面状に広げた状態で、肌側(トップシート側)から見た態様を示す。
【
図2】
図1のII-II線で切断した上記使い捨ておむつの模式的な断面図である。
【
図3】
図1のIII-III線で切断した上記使い捨ておむつの模式的な部分断面図である。
【
図4】上記使い捨ておむつの透湿性フィルムの拡大平面図であり、(A)は不均一に延伸された透湿性フィルムの例を示し、(B)は均一に延伸された透湿性フィルムの例を示す。
【
図5】上記透湿性フィルムの細孔径分布の一例を示すグラフであり、横軸は細孔径(μm)、縦軸は細孔容量(ml/g)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0011】
[使い捨ておむつの全体構成]
図1及び
図2には、本発明の一実施形態に係る吸収性物品として、いわゆる展開型の使い捨ておむつ1が示されている。展開型の使い捨ておむつ1を、以下、おむつ1と称する。
おむつ1は、縦方向X、横方向Y及び厚み方向Zを有する。縦方向Xは、着用者の腹側から股間部を通って背側に延びる。横方向Yは、縦方向Xに直交し、着用者の左右方向に対応する。厚み方向Zは、おむつ1の縦方向X及び横方向Yに直交する方向とする。
本開示において、「横方向Y内側」とは、横方向Yにおいて、おむつ1を横方向Yに2等分する縦中心線CLに近づく側を意味し、「横方向Y外側」とは、縦中心線CLから遠ざかる側を意味する。
本開示において、縦方向Xにおける「ウエスト側」とは、縦方向Xにおいておむつ1のウエスト端部Wに近づく側を意味する。
本開示において、平面視とは、各構成を厚み方向Zから見ることを意味する。なお、本開示において、各構成における肌側とは、使い捨ておむつ着用時の着用者の肌側に位置する側を示す。各構成における非肌側とは、使い捨ておむつ着用時の着用者の肌側とは反対側に位置する着衣側を示す。
本開示において、「複数の部材が厚み方向Zに重なる」とは、厚み方向Zから見た平面視において複数の部材が重なっていることを意味する。
【0012】
図1に示すように、おむつ1は、着用者の腹側に配置される腹側領域Aと、着用者の背側に配置される背側領域Bと、腹側領域A及び背側領域Bの間に位置し着用者の股間部に配置される股下領域Cと、に区分される。腹側領域A、股下領域C、及び背側領域Bは、縦方向Xに沿って配置されている。
なお、
図1は、おむつ1を展開し、各部の弾性部材を伸長させて、弾性部材の影響を一切排除した状態の設計寸法となるように平面状に広げた形態(展開伸長形態)を示す。
【0013】
おむつ1は、背側領域Bの横方向Yにおける端部B1から横方向Y外側に延びるファスニングテープ7を備える。ファスニングテープ7は、係合部71と、端部B1に固定された基端部72と、を含む。係合部71は、腹側領域Aの表面に配置されたターゲットテープ8に係合可能に構成される。係合部71は、例えば、面ファスナーのフックを含む。この場合、ターゲットテープ8は、例えば、面ファスナーのループを含むシート材や当該フックを係合可能な起毛した不織布等で構成される。背側領域B及び腹側領域Aは、着用時に、ファスニングテープ7がターゲットテープ8に係合することにより一体化し、着用者の腰周り及びウエスト周りに配置される。
【0014】
股下領域Cは、例えば腹側領域A及び背側領域Bよりも幅狭となるように構成され、横方向Y内方に括れた脚繰りを含む。股下領域Cは、後述する吸収体4などの積層構造により、尿などの排泄物を吸収及び保持することができる。
【0015】
図2に示すように、おむつ1は、トップシート2と、吸収体4と、バックシート3と、外装体6と、を備える。股下領域Cにおいて、おむつ1は、外装体6、バックシート3、吸収体4及びトップシート2が厚み方向Zに積層された構成を有する。これらの部材は、例えば、ホットメルト接着剤等の公知の接合手段により互いに接合されている。
【0016】
トップシート2は、おむつ1の肌側表面の一部を形成し、着用者の肌に接するように配置される。トップシート2は、液透過性を有し、例えば合成繊維又は天然繊維を含む不織布等で形成される。トップシート2の材料としては、吸収性物品のトップシートとして使用可能なシート材を適宜用いることができる。
【0017】
吸収体4は、トップシート2とバックシート3の間に配置される。吸収体4は、着用者の尿などの排泄物の水分をトップシート2側の面から吸収し、内部で拡散させて当該排泄物の水分を保持する。
吸収体4は、例えば、吸収性コア40と、コアラップシート41と、を有する。
吸収性コア40は、水分を保持することが可能な吸収性材料を主体として構成される。具体的に、吸収性コア40は、親水性繊維の積繊体、当該積繊体に吸収性ポリマーを担持させた構成、又は吸水性ポリマーのみからなる構成等を有する。
コアラップシート41は、吸収性コア40を被覆し、例えば吸収性コア40の形状を保持する機能等を有する。コアラップシート41は、例えばティッシュペーパー状の薄く柔らかい紙材や液透過性の不織布等で形成される。なお吸収体4は、吸収性コア40の形態等に応じて、コアラップシート41を有していなくてもよい。
【0018】
バックシート3は、吸収体4の非肌側に配置される。バックシート3は、防漏性を有していることが好ましく、例えば、液難透過性及び撥水性等の機能を有するシート材で構成される。このようなシート材としては、例えば熱可塑性樹脂のフィルムや、当該フィルムと不織布とのラミネート等からなるシート材等が挙げられる。本実施形態において、バックシート3は、後述する透湿性フィルム30で構成される。
【0019】
外装体6は、バックシート3の非肌側に配置され、おむつ1の非肌側の外表面の一部を形成する。外装体6は、透湿性、通気性及び良好な肌触り等を実現する観点から、不織布で構成されることが好ましく、さらに、防漏性を付与する観点から、例えば、液難透過性及び撥水性等の機能を有していることが好ましい。外装体6を構成するシート材としては、例えば、エアスルー不織布、スパンボンド不織布、スパンボンド-メルトブローン-スパンボンド(SMS)不織布等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0020】
さらに、おむつ1は、一対のサイドシート5を備えることが好ましい。一対のサイドシート5は、トップシート2の横方向Y側部の肌側に配置され、股下領域Cにおいて立体ギャザー50を形成する。具体的に、サイドシート5の横方向Y外側の端部は、接着剤又はヒートシール等によって、非肌側の部材(
図2の例ではトップシート2及びバックシート3等)に接合されている。一方、サイドシート5の横方向Y内側の端部は、他の部材に接合されない自由端として構成され、糸状又は帯状の弾性部材51が配置される。弾性部材51は、縦方向Xに延び、伸長した状態でサイドシート5に取り付けられる。これにより、着用時において、弾性部材51の収縮によってサイドシート5の横方向Y内側の端部が肌側に起立し、立体ギャザー50が形成される。サイドシート5は、例えば、液難透過性及び撥水性等の機能を有するシート材で構成され、一例としてこれらの機能を有する不織布で構成される。
【0021】
また、
図1及び
図2に示すように、おむつ1は、股下領域Cの横方向Y側縁部に配置されたレッグ弾性部材52をさらに備えていてもよい。これにより、股下領域Cの脚周りに沿ってレッグギャザーが形成され、股下領域Cの防漏性やフィット性を高めることができる。
【0022】
さらに、
図1に示すように、おむつ1は、背側領域Bの横方向側部B2に配置された、横方向Yに伸縮する一対のギャザー部10を備える。背側領域Bの横方向側部B2は、
図1に示すように、背側領域Bにおいて、吸収体4の配置された領域、又は吸収体4を縦方向Xに仮想的に延長した領域の横方向Y外側に位置する領域とする。一対のギャザー部10は、一対のファスニングテープ7の基端部72の近傍に配置される。本実施形態において、ギャザー部10は、サイドシート5、バックシート3及び外装体6を含む。ギャザー部10により、ファスニングテープ7をターゲットテープ8に留めておむつ1をウエスト周りに配置した際に、ウエスト周りに伸縮性を与えることができる。これにより、おむつ1のウエスト周りにおける着用感とフィット性を高めることができる。
【0023】
[ギャザー部の構成]
図3の部分断面図に示すように、ギャザー部10は、ギャザー層11と、外層不織布層12と、フィルム層13と、を有する。
ギャザー層11は、第1不織布層14と、第2不織布層15と、弾性部材16と、を有する。
ギャザー部10は、弾性部材16が配置され、その伸縮性が発揮されている部分である。なお、
図3は、左側のギャザー部10の構成を示しているが、右側のギャザー部10も同様に構成される。
【0024】
第1不織布層14は、肌側に配置された不織布で構成される。本実施形態において、第1不織布層14は、サイドシート5で構成される。第1不織布層14を構成する不織布としては、例えば、エアスルー不織布、スパンボンド不織布、SMS不織布等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0025】
第2不織布層15は、第1不織布層14の非肌側に配置された不織布で構成される。本実施形態において、第2不織布層15は、例えばサイドシート5の非肌側に配置された、サイドシート5及び外装体6とは別の不織布で構成される(
図1参照)。このような不織布としては、例えば上述の第1不織布層14として使用可能な不織布を適宜用いることができる。
図3において、第2不織布層15は、第1不織布層14と直接接合されていないが、弾性部材16の伸長性を損なわない範囲で適宜接合されていてもよい。
【0026】
弾性部材16は、第1不織布層14と第2不織布層15との間に配置され、横方向Yに延びる。弾性部材16は、例えば糸状又は帯状のゴム等の細長い弾性部材によって構成される。弾性部材16が「横方向Yに延びる」とは、厳密に横方向Yに平行な態様のみならず、全体として横方向Yに延びる態様を含む。ギャザー層11は、少なくとも一つの弾性部材16を含んでおり、フィット性を高める観点から、縦方向Xに離間して配置された複数の弾性部材16を含むことがより好ましい。弾性部材16は、横方向Yに伸長された状態で、接着剤等によって第1不織布層14及び第2不織布層15に固定される。これにより、横方向Yに伸縮可能なギャザー層11が形成される。
【0027】
外層不織布層12は、ギャザー層11の全体と厚み方向Zに重なるように、ギャザー層11の非肌側に配置される。外層不織布層12は、ギャザー部10の非肌側の外表面を構成し、本実施形態において、外装体6で構成される。外層不織布層12は、平面視において、ギャザー部10の全体に配置される。
図3において、外層不織布層12は、ギャザー部10よりも横方向Y外側の領域においてギャザー層11と接合されていないが、実際は適宜接合されていてもよい。
【0028】
フィルム層13は、ギャザー層11の一部と厚み方向Zに重なるように、ギャザー層11及び外層不織布層12の間に配置される。フィルム層13がギャザー層11の一部のみと厚み方向Zに重なることで、ギャザー部10にフィルム層13の存在しない領域を設けることができる。
図3に示す例において、フィルム層13は、ギャザー層11の横方向Y内側からギャザー層11の横方向Y中間部まで延びている。
【0029】
フィルム層13は、透湿性フィルム30で構成される。本実施形態において、透湿性フィルム30は、バックシート3を構成するフィルム材である。つまり、本実施形態におけるフィルム層13は、バックシート3の一部で構成される。
【0030】
フィルム層13を構成する透湿性フィルム30は、排泄物や汗などに由来する水蒸気を外部に放出してムレを抑制する性質を有する。「透湿性」とは、気流移動を伴わず、熱力学の第二法則に従って、高湿度側から低湿度側に水蒸気が拡散する性質を意味する。透湿性は、例えばJIS Z0208に基づいて測定された透湿度の値によって評価することができる。透湿性フィルム30は、上記透湿度の値が、例えば0.5g/100cm2・hr以上であることが好ましい。このような透湿性を実現するため、透湿性フィルム30は、複数の微細孔を含んでいることが好ましい。なお、透湿度の詳細な測定方法及び透湿性フィルム30の詳細な構成については、後述する。
【0031】
ギャザー部10がフィルム層13を有することで、ギャザー部10の防漏性を高めることができる。その一方で、フィルム層13を構成する透湿性フィルム30は透湿性を有するものの、不織布と比較すると透湿性や通気性が低い傾向を有するため、排泄物や汗などに由来する水蒸気がギャザー部10の内側に籠ってムレやすくなると考えられる。これに対して、本実施形態では、ギャザー部10にフィルム層13の存在しない領域を設けることで、ギャザー部10における通気性及び透湿性を高めることができる。さらに本実施形態では、フィルム層13による防漏性を効果的に発揮しつつ、フィット性や着用感を高める観点から、ギャザー部10が以下の構成を有する。
【0032】
ギャザー層11は、横方向Yに沿って、低伸長領域17と、高伸長領域18と、に区分される。低伸長領域17は、ギャザー層11の横方向Y内側に配置され、相対的に横方向Yにおける伸長率が低い。高伸長領域18は、低伸長領域17の横方向Y外側に配置され、低伸長領域17よりも横方向Yにおける伸長率が高い。各領域の横方向Yにおける伸長率とは、ギャザー層11に外力を付加していない自然状態の各領域の横方向Yにおける長さに対する、おむつ1を平面状に引き伸ばした展開伸長状態における各領域の横方向Yにおける長さの割合を意味する。
【0033】
(伸長率の測定方法)
おむつ1のギャザー部10を切り出して切断片を得る。ギャザー部10の縦方向Xにおける範囲は、弾性部材16が配置されている範囲とし、横方向Yにおける範囲は、弾性部材16の伸縮性が発揮されている範囲とする。そして、弾性部材16を伸長させていない自然状態の切断片を目視により確認し、低伸長領域17と高伸長領域18の境界部にマーカーなどで印を付ける。当該境界部は、ギャザーの襞の高さが変化している部分であるが、襞の高さが判別しにくい場合は、自然状態の平面視において視認されるフィルム層13の横方向Yにおける端部の位置としてもよい。上記切断片の印を付けた位置上を縦方向Xに沿ってさらに切断し、低伸長領域17と高伸長領域18の測定用サンプルをそれぞれ得る。各領域のサンプルについて、接着剤等によって固定された全ての弾性部材16を、酢酸エチル等の有機溶剤を用いて第1不織布層14及び第2不織布層15から取り外す。
弾性部材16が取り外された後の、各領域のサンプルにおける第1不織布層14又は第2不織布層15の横方向Yにおける長さを測定する。この長さを展開伸長状態における各領域の横方向Yの長さとする。
次に、取り外された各領域の弾性部材16における、伸長させていない自然状態の長さを測定する。各領域について、全ての弾性部材16の長さの平均値を算出し、この値を自然状態の各領域の横方向Yにおける長さとする。
そして、各領域について、自然状態における横方向Yの長さに対する、展開伸長状態における横方向Yの長さの割合を算出し、これを各領域の伸長率とする。
【0034】
低伸長領域17は、外層不織布層12に接合されたフィルム層13に接合されている。この構成において、フィルム層13は、低伸長領域17と厚み方向Zに重なるように配置される。低伸長領域17とフィルム層13、並びにフィルム層13と外層不織布層12の間の接合部は、詳細を後述するように、例えばホットメルト接着剤等の接着剤や粘着剤等によって構成される。低伸長領域17は、フィルム層13及び外層不織布層12と一体化されていることで、相対的に曲げ剛性が高められる。これにより、低伸長領域17では、弾性部材16による伸長性が低下する。その一方で、低伸長領域17では、フィルム層13の積層によって防漏性が高められる。
【0035】
高伸長領域18は、フィルム層13又は外層不織布層12のいずれとも接合されていない。つまり、高伸長領域18は、フィルム層13又は外層不織布層12のいずれによっても拘束されていない。これにより、高伸長領域18の曲げ剛性を低下させ、高伸長領域18において弾性部材16による伸長性を十分に発揮させることができる。
【0036】
さらに、高伸長領域18は、少なくとも一部においてフィルム層13と厚み方向Zに重ならない。例えば、高伸長領域18の全体がフィルム層13と厚み方向Zに重ならなくてもよいし、高伸長領域18の一部がフィルム層13と厚み方向Zに重ならなくてもよい。これにより、
図3に示すように、高伸長領域18と外層不織布層12との間に、フィルム層13を介さない間隙Sが形成される。したがって、上記構成により、高伸長領域18の柔軟性を高められるとともに、間隙Sによってギャザー部10の通気性を高めることができる。
【0037】
[上記構成の作用効果]
上記構成では、フィルム層13が低伸長領域17と積層されることで、ギャザー部10において特に排泄物の漏れが生じやすい、横方向Y内側の領域の防漏性を高めることができる。さらに、横方向Y外側に高伸長領域18を設けることで、ギャザー部10の伸長性を十分に確保し、フィット性を維持することができる。加えて、高伸長領域18がフィルム層13と重ならない領域を含むことで、高伸長領域18における柔軟性を高めることができ、高伸長領域18にふんわりと柔らかい感触を付与することができる。これにより、肌触りを向上させ、着用感を高めることができる。また、上記構成では、間隙Sが空気の通路として機能し、ギャザー部10内の通気性を高めることができる。この結果、ギャザー部10におけるムレを抑制し、ムレに伴う肌トラブルを抑制することができる。したがって、上記構成の吸収性物品(おむつ1)によれば、胴回りにおいて高いフィット性及び防漏性を有しつつ、良好な着用感を有しムレや肌トラブルを防止することが可能となる。
【0038】
なお、上記作用効果を確実に得る観点から、低伸長領域17及び高伸長領域18の伸長率は、以下の範囲であることが好ましい。
低伸長領域17の伸長率は、好ましくは110%以上、より好ましくは120%以上であり、好ましくは200%以下、より好ましくは190%以下である。
高伸長領域18の伸長率は、好ましくは130%以上、より好ましくは140%以上であり、好ましくは300%以下、より好ましくは280%以下である。
高伸長領域18の伸長率に対する、低伸長領域17の伸長率の割合は、好ましくは30%以上、より好ましくは40%以上であり、好ましくは90%以下、より好ましくは80%以下である。
【0039】
[フィルム層の構成例]
フィルム層13は、例えば、低伸長領域17と高伸長領域18の境界部で途切れていてもよいが、上述の間隙Sを安定して形成する観点からは、低伸長領域17と高伸長領域18との境界部から横方向Y外側へわずかに延在していることが好ましい。このような観点から、フィルム層13は、第1接合領域31と、端部領域32と、を有することが好ましい。
【0040】
第1接合領域31は、低伸長領域17及び外層不織布層12に接合された領域であり、例えば低伸長領域17と厚み方向Zに重なるように配置される。第1接合領域31は、例えば、肌側接合部H1と、非肌側接合部H2と、を含む。肌側接合部H1は、肌側面に配置され、低伸長領域17を接合する。非肌側接合部H2は、非肌側面に配置され、外層不織布層12を接合する。肌側接合部H1と非肌側接合部H2は、例えば、ホットメルト接着剤等の接着剤や粘着剤等で構成され、第1接合領域31において連続的に配置されていてもよいし、非連続的に配置されていてもよい。肌側接合部H1と非肌側接合部H2が非連続的に配置される場合は、これらが非連続的な塗工パターンを有している。このような塗工パターンとしては、例えば、ストライプ状、スパイラル状、サミット状、オメガ状、カーテン状等が挙げられる。
【0041】
端部領域32は、側端部35を含み、第1接合領域31の横方向Y外側に位置する。側端部35は、透湿性フィルム30の横方向Y外側における端部であり、透湿性フィルム30を平面状に延ばした際の横方向Y外側における端部である。
図3に示す例において、端部領域32は、低伸長領域17の境界部から横方向Y外側へ延在した領域である。端部領域32を設けることで、高伸長領域18と低伸長領域17との境界部において、凹凸を有する高伸長領域18から外層不織布層12を非肌側へ離間させることができる。これにより、間隙Sを安定して形成することができ、ギャザー部10における通気性を効果的に高めることができる。
【0042】
端部領域32の横方向Yにおける寸法は、間隙Sの厚みを大きくする観点から、好ましくは5mm以上、より好ましくは7mm以上であり、ギャザー部10の剛性の増加を抑制する観点から、好ましくは30mm以下、より好ましくは25mm以下である。なお、端部領域32の横方向Yにおける寸法は、端部領域32の透湿性フィルム30を平面状に延ばした場合の横方向Yにおける寸法を意味する。
【0043】
さらに、端部領域32は、第1接合領域31と横方向Yに隣接する第2接合領域33を有することが好ましい。第2接合領域33は、ギャザー層11とは接合されず、かつ、外層不織布層12に接合される。つまり、第2接合領域33は、厚み方向Zに対向し得る高伸長領域18とは接合されていない。その一方で、第2接合領域33には、非肌側接合部H2が第1接合領域31から横方向Y外側に延びている。第2接合領域33における非肌側接合部H2は、第1接合領域31と同様に、例えば、ホットメルト接着剤等の接着剤や粘着剤等で構成され、連続的又は非連続的に配置される。
【0044】
端部領域32が外層不織布層12と接合された第2接合領域33を含むことで、低伸長領域17及び高伸長領域18の境界部近傍に位置する外層不織布層12の剛性を局所的に高めることができる。これにより、外層不織布層12が、凹凸を有するギャザー層11から非肌側により離間しやすくなり、間隙Sを大きく形成することができる。したがって、上記構成により、ギャザー部10における通気性をより効果的に高めることができる。
【0045】
さらに、端部領域32は、側端部35を含み、かつ、ギャザー層11又は外層不織布層12のいずれとも接合されてない非接合領域34を有することが好ましい。端部領域32が第2接合領域33を有する場合、非接合領域34は、第2接合領域33の横方向Y外側に位置する。端部領域32が非接合領域34を有することで、非接合領域34が厚み方向Z肌側に折れ曲がりやすくなり、間隙Sの厚みをより大きくすることができる。これにより、ギャザー部10における通気性をより効果的に高めることができる。
【0046】
具体的に、間隙Sの厚みをより効果的に大きくする観点から、非接合領域34の横方向Yにおける寸法は、好ましくは5mm以上、より好ましくは7mm以上である。また、ギャザー部10の剛性の増加を抑制する観点から、非接合領域34の横方向Yにおける寸法は、好ましくは30mm以下、より好ましくは20mm以下である。なお、非接合領域34の横方向Yにおける寸法は、非接合領域34の透湿性フィルム30を平面状に延ばした場合の横方向Yにおける寸法を意味する。
【0047】
さらに、非接合領域34は、肌側に捲れていることが好ましい。これにより、厚みのある間隙Sをより確実に形成することができ、ギャザー部10の通気性をより一層効果的に高めることができる。非接合領域34は、例えば、横方向Y内側に折り返されていてもよいし、厚み方向Z肌側に立ち上がっていてもよい。また、このような非接合領域34の捲れは、予め透湿性フィルム30に折り癖を付与することで形成されてもよいし、後述するような坪量の低い透湿性フィルム30を外層不織布層12に十分に接合させ、非肌側面が引っ張られることで自然と捲れるように形成されてもよい。
【0048】
[ギャザー層の構成例]
ギャザー層11は、通気性を高める観点から、以下のように構成されることが好ましい。
例えば、弾性部材16は、第1不織布層14及び第2不織布層15を接合し、横方向Yに沿って非連続的に配置されたギャザー接合部H3を含むことが好ましい。ギャザー接合部H3は、低伸長領域17と高伸長領域18の全体にわたって配置され、横方向Yに沿って非接合部と交互に配置される。これにより、弾性部材16が、第1不織布層14及び第2不織布層15と非連続的に接合される。
【0049】
ギャザー接合部H3は、例えば弾性部材16に配置されたホットメルト接着剤等の接着剤や粘着剤として構成され得る。ギャザー接合部H3における非連続的な塗工パターンとしては、例えば、ストライプ状、スパイラル状、サミット状、オメガ状、カーテン状等が挙げられる。ギャザー接合部H3が接着剤で構成される場合、この接着剤は、弾性部材16の肌側及び非肌側の双方にそれぞれ塗工されてもよいし、肌側又は非肌側の一方に塗工されてもよい。例えば、弾性部材16が糸ゴムなどの細長い形状を有する場合、弾性部材16の肌側又は非肌側の一方に接着剤を塗工することで、流動性によって反対側にも接着剤が移行し、第1不織布層14及び第2不織布層15の双方を接合することができる。
【0050】
上記構成では、第1不織布層14及び第2不織布層15が、非接合部において、弾性部材16から離間するように相互に厚み方向Zに突出し(
図3参照)、縦方向Xに延びる縦襞Fを形成する。この縦襞Fの内部は、空気の通路として機能することができ、ギャザー層11における通気性を高めることができる。さらに、弾性部材16と接合されていない縦襞Fは、厚み方向Zにおける柔軟性が高いことから、ふんわりと柔らかい感触を有する。これにより、ギャザー層11の肌触りを向上させることができる。
【0051】
[透湿性フィルムの構成例]
以下、フィルム層13を構成する透湿性フィルム30の好ましい構成例について説明する。なお、フィルム層13がバックシート3で構成される場合は、バックシート3が以下のような構成を有することが好ましい。
【0052】
透湿性フィルム30は、複数の微細孔(ミクロボイド)を有することが好ましい。透湿性フィルムは、例えば樹脂製フィルムで構成され、単層構造又は積層構造を有する。透湿性フィルムは、例えば、疎水性の熱可塑性樹脂(ポリオレフィン系樹脂等)と、該熱可塑性樹脂と相溶性のない無機微粒子(炭酸カルシウム等)とを、溶融混練してフィルムを形成し、該フィルムを一軸又は二軸延伸して得られる。フィルムの形成は、例えば、インフレーション法、Tダイ法等を用いることができる。このように製造される透湿性フィルムにおいては、延伸により熱可塑性樹脂と無機微粒子との界面を起点として微細孔が多数形成される。
【0053】
図4(A)及び(B)に例示するように、透湿性フィルム30では、延伸時に炭酸カルシウム粒子などの無機微粒子36に延伸方向Eに沿った力が加わり、無機微粒子36が延伸方向Eに引きずられることで、微細孔37が形成される。このため、透湿性フィルム30は、無機微粒子36と、無機微粒子36に隣接する微細孔37と、を含む。
【0054】
透湿性フィルム30では、例えば、0.06μm以上0.16μm以下の範囲の細孔径を有する微細孔37の単位質量当たりの細孔容量が、2.5μm以上3.5μm以下の範囲の細孔径を有する微細孔37の単位質量当たりの細孔容量よりも大きいことが好ましい。これにより、0.06μm以上0.16μm以下の範囲の小さな細孔径を有する微細孔37を多数形成することができ、水蒸気(湿気)の透過性を高めることができる。その一方で、2.5μm以上3.5μm以下の範囲の細孔径を有する微細孔37の数を規制することができ、水分の漏れをより確実に防止することができる。したがって、防漏性の高い透湿性フィルム30を得ることができる。
【0055】
(細孔容量の測定方法)
細孔容量は、JIS R 1655に規定される水銀圧入法に準じて、以下の方法で測定することができる。まず、測定対象の透湿性フィルム30から、所定のサイズ(例えば10mm×10mm)の測定サンプルを切り出す。この測定サンプルを、水銀ポロシメーター(例えば、「オートポアIV9520」、株式会社島津製作所製)にセットし、細孔径0.06μm以上3.5μm以下の領域の細孔径分布を測定する。得られた細孔径分布(
図5参照)に基づいて、細孔径0.06μm以上0.16μm以下の領域の累積細孔容量と、細孔径2.5μm以上3.5μm以下の領域の累積細孔容量とを測定する。細孔径0.06μm以上0.16μm以下の領域の累積細孔容量が、細孔径2.5μm以上3.5μm以下の領域の累積細孔容量よりも大きかった場合、「0.06μm以上0.16μm以下の範囲の細孔径を有する微細孔の単位質量当たりの細孔容量が、2.5μm以上3.5μm以下の範囲の細孔径を有する微細孔の単位質量当たりの細孔容量よりも大きい」と判断する。
【0056】
このように、小さな微細孔37を多数形成する方法としては、例えば、透湿性フィルム30を均一に延伸する方法が挙げられる。
図4(A)に示すように、透湿性フィルム30の延伸が不均一だった場合は、透湿性フィルム30の一部に十分に延伸されていない領域が生じ、小さな無機微粒子36を起点として十分に開孔できない部分(太線で示した未開孔部38)が形成され得る。さらに、透湿性フィルム30の面内において、延伸力が大きい領域では、無機微粒子36が大きく引きずられることで大きな微細孔37が形成され、延伸力が小さい領域では、無機微粒子36があまり引きずられないことで小さな微細孔37が形成されやすくなる。このため、微細孔37の大きさが、無機微粒子36の大きさと相関を有しないことがある。
【0057】
これに対し、
図4(B)に示すように、透湿性フィルム30が均一に延伸された場合は、小さな無機微粒子36にも十分に延伸力が付加される。この結果、
図4(A)の例では未開孔部38であった部分が、
図4(B)では十分に開孔した微細孔37(太線で示した部分)となり、小さな微細孔37を増やすことができる。また、透湿性フィルム30の面内における延伸が均一である場合には、無機微粒子36の大きさに応じた微細孔37が形成されやすいことから、微細孔37の大きさと無機微粒子36の大きさとが正に相関する傾向を有する。
【0058】
透湿性フィルム30が均一に延伸されている指標として、透湿性フィルム30では、厚み方向Zから見た平面視において、0.01μm2以上0.5μm2以下の大きさの無機微粒子36に隣接して配置される微細孔37の細孔径は、1.0μm2以上1.5μm2以下の大きさの無機微粒子36に隣接して配置される微細孔37の径よりも小さいことが好ましい。上記構成では、透湿性フィルム30が均一に延伸されていることにより、小さな無機微粒子36に隣接する小さな微細孔37の数を増加させることができ、透湿性及び防漏性の高い透湿性フィルム30を得ることができる。
【0059】
(無機微粒子のサイズ及び微細孔の細孔径の測定方法)
透湿性フィルム30から所定のサイズ(例えば10mm×10mm)の評価サンプルを切り出す。切り出した評価サンプルを常法に従って固定し、走査型電子顕微鏡(SEM)で1000倍に拡大して撮像する。1つの画像から、画像解析技術を用いて、無機微粒子とそれに隣接する微細孔のそれぞれに対応する部分の輪郭を抽出する。抽出された無機微粒子に対応する領域のサイズと、それに隣接する微細孔に対応する領域のサイズとをそれぞれ測定する。なお、微細孔の細孔径は、抽出された微細孔に対応する領域のサイズ(面積)から円換算直径を算出することで得られる。1枚の透湿性フィルム30から100箇所の画像を撮像し、0.01μm2以上0.5μm2以下の大きさの無機微粒子に隣接して配置される微細孔の細孔径の平均値と、1.0μm2以上1.5μm2以下の大きさの無機微粒子に隣接して配置される微細孔の細孔径の平均値とを算出する。
【0060】
上述のように、無機微粒子36の大きさに応じた微細孔37が形成される場合、無機微粒子36の大きさの分布を制御することで、微細孔37の細孔径も制御することができる。このような観点から、透湿性フィルム30では、厚み方向Zから見た平面視において、0.01μm2以上0.5μm2以下の大きさの無機微粒子36の単位面積当たりの粒子数は、0.5μm2以上2.0μm2未満の大きさの無機微粒子36の単位面積当たりの粒子数よりも少なく、かつ、2.0μm2以上の無機微粒子36の単位面積当たりの粒子数は、0.5μm2以上2.0μm2未満の大きさの無機微粒子36の単位面積当たりの粒子数よりも少ないことが好ましい。上記構成により、微小な微細孔37を多く形成でき、透湿性及び防漏性の双方を充足する透湿性フィルム30を得ることができる。
【0061】
また、透湿性フィルム30は、上述のように均一に延伸されることで、防漏性を維持しつつも薄く構成されることが好ましい。このような観点から、透湿性フィルム30の坪量は、好ましくは8g/cm2以上、より好ましくは10g/cm2以上であり、好ましくは20g/cm2以下、より好ましくは18g/cm2以下である。
【0062】
透湿性フィルム30の透湿度は、好ましくは2.7g/100cm2・h以上、より好ましくは3g/100cm2・h以上であり、好ましくは12g/100cm2・h以下、より好ましくは10g/100cm2・h以下である。これにより、透湿性フィルム30が十分に高い透湿性を有し、ムレの少ない快適なおむつ1を提供できるとともに、透湿性フィルム30の防漏性も確保することができる。
【0063】
(透湿度の測定方法)
透湿度は、JIS Z0208に準じて測定することができる。
まず、吸湿剤として塩化カルシウムを収容したカップを準備し、このカップを水平になるように配置する。試験前の塩化カルシウムの質量は、予め測定しておく。測定対象の透湿性フィルムをカップの内径よりも10mm大きい直径を持つ円形に切断して試験片を準備し、この試験片をカップの上縁に配置し、試験片の周縁がカップの上縁の同心円上に位置するように調整する。カップの上縁に沿ったリング状のパッキンを準備し、試験片の周縁がカップの上縁に密着するように当該パッキンを押し込む。さらに、その上にリング状のおもりを配置し、透湿性フィルムがカップの上縁に固定された試験体を作製する。この試験体を、温度30℃±0.5℃、湿度90±2%RHにおいて1時間放置し、試験後の塩化カルシウムの質量を測定する。試験後の塩化カルシウムの質量から、試験前の塩化カルシウムの質量を減じた値を算出し、これを試験片の水蒸気透過面100cm2当たりの値に換算して、透湿度を算出する。
【0064】
[他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加えることができる。
【0065】
例えば、端部領域32は、第2接合領域33を有さず、全体が非接合領域34として構成されてもよい。あるいは、端部領域32は、非接合領域34を有さず、全体が第2接合領域33として構成されてもよい。他の例として、フィルム層13は、端部領域32を有していなくてもよい。この場合は、フィルム層13の側端部35が、第1接合領域31の横方向Yにおける周縁部を構成する。
【0066】
ギャザー部10に含まれるシート材は、股下領域Cに配置されるシート材とは別のシート材であってもよい。例えば、第1不織布層14はサイドシート5とは別の不織布で構成されてもよいし、フィルム層13を構成する透湿性フィルムは、バックシートとは異なるフィルム材であってもよい。また、外層不織布層12は、外装体6とは別の不織布で構成されてもよい。
【符号の説明】
【0067】
1…吸収性物品(使い捨ておむつ)
2…トップシート
3…バックシート
4…吸収体
7…ファスニングテープ
10…ギャザー部
11…ギャザー層
12…外層不織布層
13…フィルム層
14…第1不織布層
15…第2不織布層
16…弾性部材
17…低伸長領域
18…高伸長領域
30…透湿性フィルム
A…腹側領域
B…背側領域
C…股下領域