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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123542
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/49 20060101AFI20240905BHJP
   A61F 13/514 20060101ALI20240905BHJP
   A61F 13/56 20060101ALI20240905BHJP
   A61F 13/53 20060101ALI20240905BHJP
   A61F 13/51 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
A61F13/49 410
A61F13/514 100
A61F13/514 400
A61F13/56 211
A61F13/53 100
A61F13/514 213
A61F13/514 211
A61F13/51
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031048
(22)【出願日】2023-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石橋 京子
(72)【発明者】
【氏名】犹守 沙耶香
(72)【発明者】
【氏名】川口 宏子
(72)【発明者】
【氏名】松久 誠
(72)【発明者】
【氏名】鹿谷 智也
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200BB03
3B200BB30
3B200DA21
3B200DD01
3B200DD04
3B200DD09
3B200DE01
(57)【要約】
【課題】腹側における排泄物の漏れの誤認を効果的に防止できる吸収性物品に関する。
【解決手段】吸収性物品は、腹側領域における外装体の非肌側面に配置された腹側シートをさらに備える。腹側シートは、吸収体の縦方向ウエスト側における第1端部と重なるように配置される。腹側シートの坪量は、バックシート及び外装体各々の坪量よりも高い。外装体は、肌側面に非連続的に配置された第1接合部と、非肌側面に非連続的に配置された第2接合部と、を有する。外装体における腹側シートが配置された腹側シート配置領域において、第1接合部の占める面積の割合は、第2接合部の占める面積の割合よりも低い。バックシートは、厚み方向から見た平面視において、腹側シートの縦方向ウエスト側における端部である第2端部を横切るように配置され、着色された第1着色部を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収体と、前記吸収体の非肌側に配置された透湿性のバックシートと、前記バックシートの非肌側に配置された外装体と、を備え、着用者の腹側から股間部を通って背側に延びる縦方向と、前記縦方向に直交し前記着用者の左右方向に対応する横方向と、前記縦方向及び前記横方向に直交する厚み方向と、を有し、かつ、前記縦方向に沿って、腹側領域と、股下領域と、背側領域と、に区分された吸収性物品であって、
前記腹側領域における前記外装体の非肌側面に配置された腹側シートをさらに備え、
前記腹側シートは、前記吸収体の前記縦方向ウエスト側における端部である第1端部と前記厚み方向に重なるように配置され、
前記腹側シートの坪量は、前記バックシート及び前記外装体各々の坪量よりも高く、
前記外装体は、
前記バックシートを接合し、肌側面に非連続的に配置された第1接合部と、
前記腹側シートを接合し、非肌側面に非連続的に配置された第2接合部と、を有し、
前記外装体における前記腹側シートが配置された腹側シート配置領域において、前記第1接合部の占める面積の割合は、前記第2接合部の占める面積の割合よりも低く、
前記バックシートは、
前記厚み方向から見た平面視において、前記腹側シートの前記縦方向ウエスト側における端部である第2端部を横切るように配置され、着色された第1着色部を有する
吸収性物品。
【請求項2】
前記吸収性物品は、
前記背側領域の前記横方向における端部から前記横方向外側に延びる一対のファスニングテープをさらに備え、
前記腹側シートは、前記ファスニングテープと係合可能なシート材で構成される
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記バックシートは、前記横方向において、中央領域と、前記中央領域の前記横方向両側に位置する一対の側部領域と、に区画され、
前記中央領域の前記横方向における側縁部は、前記吸収体の前記横方向において最も外側に位置する吸収体側縁部を通って前記縦方向に平行に延び、
前記中央領域において前記第1着色部の占める面積の割合は、前記側部領域において前記第1着色部の占める面積の割合よりも高い
請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記第1着色部は、マンセル表色系においてBG(シアン)、B(青)、又はBP(紫)の少なくとも一つの色相で表される色を含む
請求項1から3のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記腹側シートは、着色された第2着色部を有する
請求項1から4のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記第2着色部は、前記第1着色部の少なくとも一部と前記厚み方向に重なるように配置される
請求項5に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記外装体は、エアスルー不織布を含む
請求項1から6のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記吸収体は、
吸収性コアと、
前記吸収性コアを覆い、前記吸収性コアの非肌側面と接合されたコアラップシートと、を有し、
前記コアラップシートは、紙材で構成される
請求項1から7のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項9】
前記腹側シートの前記第2端部は、前記吸収体の前記第1端部よりも前記縦方向ウエスト側に配置される
請求項1から8のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項10】
前記バックシートは、複数の微細孔を有する透湿性フィルムで構成される
請求項1から9のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項11】
前記バックシートの透湿度は、2.7g/100cm・h以上12g/100cm・h以下である
請求項10に記載の吸収性物品。
【請求項12】
前記バックシートでは、
0.06μm以上0.16μm以下の範囲の細孔径を有する前記微細孔の単位質量当たりの細孔容量が、2.5μm以上3.5μm以下の範囲の細孔径を有する前記微細孔の単位質量当たりの細孔容量よりも大きい
請求項10又は11に記載の吸収性物品。
【請求項13】
前記バックシートは、前記微細孔に隣接して配置された無機微粒子を有し、
前記バックシートでは、前記厚み方向から見た平面視において、
0.01μm以上0.5μm以下の大きさの前記無機微粒子に隣接して配置される前記微細孔の細孔径が、1.0μm以上1.5μm以下の大きさの前記無機微粒子に隣接して配置される前記微細孔の細孔径よりも小さい
請求項10から12のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項14】
前記バックシートでは、前記厚み方向から見た平面視において、
0.01μm以上0.5μm以下の大きさの前記無機微粒子の単位面積当たりの粒子数は、0.5μm以上2.0μm未満の大きさの前記無機微粒子の単位面積当たりの粒子数よりも少なく、かつ、
2.0μm以上の前記無機微粒子の単位面積当たりの粒子数は、0.5μm以上2.0μm未満の大きさの前記無機微粒子の単位面積当たりの粒子数よりも少ない
請求項13に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着用者の胴回りに着用される吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつ等の吸収性物品は、例えば、着用者の背側に配置される背側領域と、着用者の腹側に配置される腹側領域と、着用者の股下に配置される股下領域と、に区分できる。このような吸収性物品のうち、背側領域と腹側領域とが分離している展開型の使い捨ておむつは、例えば、背側領域の側端部に配置されたファスニングテープを、腹側領域のシート上に貼り付けることで、着用者の胴回りを覆うことができる。
【0003】
このような吸収性物品が、例えば這うことが多い乳児や尿道口が腹側に向きやすい男児などに着用される場合、尿などの排泄物が腹側領域から漏れることが懸念される。そこで、例えば特許文献1には、背側から腹側にわたって配置された不透液性のバックシートを備えた、展開型の使い捨て紙おむつが開示されている。
【0004】
一方で、吸収性物品が尿などの排泄物を吸収した場合、着用者の体温によって吸収性物品が温められて排泄物由来の水分が蒸発し、着用者がムレを感じやすくなる。このため、肌側の水蒸気を吸収性物品の外部へ放出しやすくする観点から、透湿性を有するバックシート(裏面シート)を備えた吸収性物品が知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4102059号
【特許文献2】特開2020-103430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
バックシートの透湿性が高い場合、吸収体からの水分の蒸発が促進され、気化熱によって吸収体の温度が低下し、これに伴って吸収性物品の外表面の温度が低下し得る。このため、介助者や着用者などが、腹側の外表面を触った際に冷たく感じ、尿などの排泄物が外部に漏れていると誤認する懸念があった。
【0007】
本発明は、腹側における排泄物の漏れの誤認を効果的に防止できる吸収性物品に関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一形態に係る吸収性物品は、吸収体と、前記吸収体の非肌側に配置された透湿性のバックシートと、前記バックシートの非肌側に配置された外装体と、を備え、着用者の腹側から股間部を通って背側に延びる縦方向と、前記縦方向に直交し前記着用者の左右方向に対応する横方向と、前記縦方向及び前記横方向に直交する厚み方向と、を有し、かつ、前記縦方向に沿って、腹側領域と、股下領域と、背側領域と、に区分される。
前記吸収性物品は、
前記腹側領域における前記外装体の非肌側面に配置された腹側シートをさらに備える。
前記腹側シートは、前記吸収体の前記縦方向ウエスト側における端部である第1端部と前記厚み方向に重なるように配置される。
前記腹側シートの坪量は、前記バックシート及び前記外装体各々の坪量よりも高い。
前記外装体は、
前記バックシートを接合し、肌側面に非連続的に配置された第1接合部と、
前記腹側シートを接合し、非肌側面に非連続的に配置された第2接合部と、を有する。
前記外装体における前記腹側シートが配置された腹側シート配置領域において、前記第1接合部の占める面積の割合は、前記第2接合部の占める面積の割合よりも低い。
前記バックシートは、
前記厚み方向から見た平面視において、前記腹側シートの前記縦方向ウエスト側における端部である第2端部を横切るように配置され、着色された第1着色部を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の吸収性物品によれば、腹側における排泄物の漏れの誤認を効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る吸収性物品(使い捨ておむつ)の平面図であり、各部の弾性部材を伸長させて平面状に広げた状態で、肌側(トップシート側)から見た態様を示す。
図2図1のII-II線で切断した上記使い捨ておむつの模式的な断面図である。
図3図1のIII-III線で切断した上記使い捨ておむつの模式的な断面図である。
図4】上記使い捨ておむつの裏面図であり、各部の弾性部材を伸長させて平面状に広げた状態で、非肌側から見た態様を示す。
図5】上記使い捨ておむつの透湿性フィルムで構成されたバックシートの拡大平面図であり、(A)は不均一に延伸された透湿性フィルムの例を示し、(B)は均一に延伸された透湿性フィルムの例を示す。
図6】上記バックシートの細孔径分布の一例を示すグラフであり、横軸は細孔径(μm)、縦軸は細孔容量(ml/g)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0012】
[使い捨ておむつの全体構成]
図1及び図2には、本発明の一実施形態に係る吸収性物品として、いわゆる展開型の使い捨ておむつ1が示されている。展開型の使い捨ておむつ1を、以下、おむつ1と称する。
おむつ1は、縦方向X、横方向Y及び厚み方向Zを有する。縦方向Xは、着用者の腹側から股間部を通って背側に延びる。横方向Yは、縦方向Xに直交し、着用者の左右方向に対応する。厚み方向Zは、おむつ1の縦方向X及び横方向Yに直交する方向とする。
本開示において、「横方向Y内側」とは、横方向Yにおいて、おむつ1を横方向Yに2等分する縦中心線CLに近づく側を意味し、「横方向Y外側」とは、縦中心線CLから遠ざかる側を意味する。
本開示において、「縦方向Xウエスト側」とは、縦方向Xにおいておむつ1のウエスト端部Wに近づく側を意味する。
本開示において、平面視とは、各構成を厚み方向Zから見ることを意味する。また、本開示において、各構成における肌側とは、使い捨ておむつ着用時の着用者の肌側に位置する側を示す。各構成における非肌側とは、使い捨ておむつ着用時の着用者の肌側とは反対側に位置する着衣側を示す。
本開示において、「複数の部材が厚み方向Zに重なる」とは、厚み方向Zから見た平面視において複数の部材が重なっていることを意味する。
【0013】
図1に示すように、おむつ1は、着用者の腹側に配置される腹側領域Aと、着用者の背側に配置される背側領域Bと、腹側領域A及び背側領域Bの間に位置し着用者の股間部に配置される股下領域Cと、に区分される。腹側領域A、股下領域C、及び背側領域Bは、縦方向Xに沿って配置されている。
なお、図1は、おむつ1を展開し、各部の弾性部材を伸長させて、弾性部材の影響を一切排除した状態の設計寸法となるように平面状に広げた形態を示す。
【0014】
おむつ1は、背側領域Bの横方向Yにおける端部B1から横方向Y外側に延びるファスニングテープ7を備える。ファスニングテープ7は、後述する腹側シート8に係合可能な係合部71を有する。係合部71は、例えば、面ファスナーのフックを含む。背側領域B及び腹側領域Aは、着用時に、ファスニングテープ7が腹側シート8に係合することにより一体化し、着用者の腰周り及びウエスト周りに配置される。
【0015】
股下領域Cは、例えば腹側領域A及び背側領域Bよりも幅狭となるように構成され、横方向Y内方に括れた脚繰りを含む。股下領域Cは、後述する吸収体4などの積層構造により、尿などの排泄物を吸収及び保持することができる。
【0016】
図2に示すように、おむつ1は、トップシート2と、吸収体4と、バックシート3と、外装体6と、を備える。股下領域Cにおいて、おむつ1は、外装体6、バックシート3、吸収体4及びトップシート2が厚み方向Zに積層された構成を有する。これらの部材は、例えば、ホットメルト接着剤等の公知の接合手段により互いに接合されている。
【0017】
トップシート2は、おむつ1の肌側表面の一部を形成し、着用者の肌に接するように配置される。トップシート2は、液透過性を有し、例えば合成繊維又は天然繊維を含む不織布等で形成される。トップシート2の材料としては、吸収性物品のトップシートとして使用可能なシート材を適宜用いることができる。
【0018】
吸収体4は、トップシート2とバックシート3の間に配置される。吸収体4は、着用者の尿などの排泄物の水分をトップシート2側の面から吸収し、内部で拡散させて当該排泄物の水分を保持する。
吸収体4は、例えば、吸収性コア40と、コアラップシート41と、を有する。
吸収性コア40は、水分を保持することが可能な吸収性材料を主体として構成される。具体的に、吸収性コア40は、親水性繊維の積繊体、当該積繊体に吸収性ポリマーを担持させた構成、又は吸水性ポリマーのみからなる構成等を有する。
コアラップシート41は、吸収性コア40を被覆し、例えば吸収性コア40の形状を保持する機能等を有する。コアラップシート41は、例えばティッシュペーパー状の薄く柔らかい紙材や液透過性の不織布等で形成される。なお吸収体4は、吸収性コア40の形態等に応じて、コアラップシート41を有していなくてもよい。
【0019】
バックシート3は、吸収体4の非肌側に配置される。バックシート3は、防漏性を有していることが好ましく、例えば、液難透過性及び撥水性等の機能を有するシート材で構成される。このようなシート材としては、例えば熱可塑性樹脂のフィルムや、当該フィルムと不織布とのラミネート等からなるシート材等が挙げられる。
【0020】
さらに、本実施形態におけるバックシート3は、排泄物や汗などに由来する水蒸気を外部に放出してムレを抑制する観点から、透湿性を有する。「透湿性」とは、気流移動を伴わず、熱力学の第二法則に従って、高湿度側から低湿度側に水蒸気が拡散する性質を意味する。透湿性は、例えばJIS Z0208に基づいて測定された透湿度の値によって評価することができる。透湿性を有するバックシート3は、上記透湿度の値が、例えば0.5g/100cm・hr以上であることが好ましい。このような透湿性を実現するため、バックシート3は、複数の微細孔を含んでいることが好ましい。なお、透湿度の詳細な測定方法及びバックシート3の詳細な構成については、後述する。
【0021】
外装体6は、バックシート3の非肌側に配置され、おむつ1の非肌側の外表面の一部を形成する。外装体6は、透湿性、通気性及び良好な肌触り等を実現する観点から、不織布で構成されることが好ましく、さらに、防漏性を付与する観点から、例えば、液難透過性及び撥水性等の機能を有していることが好ましい。外装体6を構成するシート材としては、例えば、エアスルー不織布、スパンボンド不織布、スパンボンド-メルトブローン-スパンボンド(SMS)不織布等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0022】
さらに、おむつ1は、一対のサイドシート5を備えることが好ましい。一対のサイドシート5は、トップシート2の横方向Y側部の肌側に配置され、股下領域Cにおいて立体ギャザー50を形成する。具体的に、サイドシート5の横方向Y外側の端部は、接着剤又はヒートシール等によって、非肌側の部材(図2の例ではトップシート2及びバックシート3等)に接合されている。一方、サイドシート5の横方向Y内側の端部は、他の部材に接合されない自由端として構成され、糸状又は帯状の弾性部材51が配置される。弾性部材51は、縦方向Xに延び、伸長した状態でサイドシート5に取り付けられる。これにより、着用時において、弾性部材51の収縮によってサイドシート5の横方向Y内側の端部が肌側に起立し、立体ギャザー50が形成される。サイドシート5は、例えば、液難透過性及び撥水性等の機能を有するシート材で構成され、一例としてこれらの機能を有する不織布で構成される。
【0023】
図1及び図3に示すように、立体ギャザー50は、腹側領域A及び背側領域Bの着用感を高める観点から、股下領域Cから腹側領域A及び背側領域Bの一部まで延在することが好ましい。立体ギャザー50が形成されない領域では、例えば弾性部材51が存在していなくてもよいし、弾性部材51が伸長しないように細かく切断されていてもよい。
【0024】
さらに、図1及び図2に示すように、おむつ1は、股下領域Cの横方向Y側縁部に配置されたレッグ弾性部材52をさらに備えていてもよい。これにより、股下領域Cの脚周りに沿ってレッグギャザーが形成され、股下領域Cの防漏性やフィット性を高めることができる。
【0025】
上記構成のおむつ1において、吸収体4が多量の排泄物を保持した場合、排泄物の水分が蒸発する際の気化熱によって吸収体4の温度が低下し得る。さらに、透湿性のバックシート3を用いた場合には、水蒸気によるムレを抑制できる一方で、吸収体4からの水分の蒸発が促進され、吸収体4の温度が低下しやすくなる。吸収体4の温度低下に伴って、おむつ1の非肌側の外表面の温度の低下が懸念される。特に、這うことが多い乳児や尿道口が腹側に向きやすい男児などにおむつ1が着用される場合、尿などの排泄物が腹側領域Aに拡散しやすい。おむつ1を交換する介助者等は、腹側からの漏れを懸念して、腹側領域Aの外表面を触れることがあるが、腹側領域Aの外表面の温度が低下した場合、当該介助者等が外表面の冷たさを感じ、排泄物が漏れていると誤認しやすくなる。これに対して、本実施形態では、腹側領域Aの最外層に腹側シート8を設けることで、吸収体4の温度低下に起因する腹側領域Aの外表面の温度低下を抑制し、排泄物の漏れの誤認を防止することができる。以下、腹側シート8等の詳細な構成について説明する。
【0026】
[腹側シートの構成]
図3及び図4に示すように、おむつ1は、腹側領域Aにおける外装体6の非肌側面6bに配置された腹側シート8をさらに備える。図3に示す腹側領域Aにおいて、おむつ1は、腹側シート8、外装体6、バックシート3、吸収体4及びトップシート2が厚み方向Zに積層された構成を有する。つまり、腹側領域Aにおいて、おむつ1の外表面は、腹側シート8の表面8aと、外装体6の非肌側面6bとを含む。
【0027】
本実施形態において、腹側シート8は、ファスニングテープ7と係合可能なシート材で構成される。例えば、ファスニングテープ7の係合部71が面ファスナーのフックを含む場合、腹側シート8は、例えば、面ファスナーのループを含むシート材や当該フックを係合可能な起毛した不織布等で構成される。なお、図4に示す例では、腹側シート8は長方形状であるが、腹側シート8の平面形状はこれに限定されない。
【0028】
腹側シート8は、効果的に排泄物の漏れの誤認を防止する観点から、吸収体4の縦方向Xウエスト側における端部である第1端部4eと厚み方向Zに重なるように配置される。例えば、腹側シート8の縦方向Xウエスト側における端部を第2端部8eとすると、第1端部4eは、第2端部8eと厚み方向Zに重なっていてもよいし、第2端部8eよりも縦方向Xにおける背側に配置されていてもよい。なお、各部材における「縦方向Xウエスト側における端部」とは、その部材において最もウエスト端部W側に位置する部分とする。
【0029】
吸収体4の第1端部4e又はその近傍に尿などの排泄物が拡散した場合、その排泄物由来の水蒸気は、厚み方向Zのみならず、吸収体4の存在しない縦方向Xウエスト側へも放出され得る。このため、排泄物を保持した吸収体4の第1端部4e又はその近傍は、水分の蒸発が促進され、気化熱により温度が低下しやすくなり、その非肌側に位置するバックシート3及び外装体6も、温度低下の影響を受けやすくなる。これに対し、上記構成では、特に温度が低下しやすい外装体6の非肌側面6b上に、腹側シート8が配置される。腹側シート8により、吸収体4の非肌側面4bから腹側領域Aの外表面までの部材数及び厚みが増加し、当該外表面の温度低下を抑制することができる。
【0030】
腹側シート8の坪量は、より効果的に排泄物の漏れの誤認を防止する観点から、バックシート3及び外装体6各々の坪量よりも高い。これにより、腹側シート8の断熱性を高めることができ、腹側領域Aの外表面を形成する腹側シート8の表面8aの温度低下を抑制することができる。具体的に、腹側シート8の坪量は、断熱性を十分に確保する観点から、好ましくは25g/cm以上、より好ましくは30g/cm以上であり、剛性の上昇を抑制して良好な着用感を維持する観点から、好ましくは60g/cm以下、より好ましくは55g/cm以下である。
【0031】
(坪量の測定方法)
測定対象の部材を片刃剃刀を用いて切断し、あらかじめ定めた面積となるように測定片を得る。それらの測定片の重量を電子天秤(例えば、株式会社エー・アンド・デイ製 電子天秤GR-300、精度:小数点以下4桁)を用いて測定する。求めた重量を各部の測定片の面積で除して測定片の坪量を算出する。各部のそれぞれについて、測定片5個の坪量の平均を坪量とする。
【0032】
[外装体の構成]
さらに、本実施形態では、吸収体4の非肌側に配置されたバックシート3、外装体6及び腹側シート8の接合形態を工夫することで、これらの非肌側の部材間における熱伝導性の低下を図る。
具体的に、図3に示すように、外装体6は、第1接合部61と、第2接合部62と、を有する。
第1接合部61は、バックシート3を接合し、外装体6の肌側面6aに非連続的に配置される。
第2接合部62は、腹側シート8を接合し、外装体6の非肌側面6bに非連続的に配置される。
本開示において、「接合部が非連続的に配置される」とは、接合部の配置される面上で、接合部が非接合部と交互に配置されることを意味する。第1接合部61及び第2接合部62は、例えば、ホットメルト接着剤等の接着剤や粘着剤等により構成される。この場合、第1接合部61及び第2接合部62は、例えば、非連続的な塗工パターンを有している。このような塗工パターンとしては、例えば、ストライプ状、スパイラル状、サミット状、オメガ状、カーテン状等が挙げられる。
【0033】
図3に示すように、外装体6における腹側シート8が配置された領域を腹側シート配置領域63とする。腹側シート配置領域63において、第1接合部61の占める面積の割合は、第2接合部62の占める面積の割合よりも低い。本開示において、「腹側シート配置領域63における接合部の占める面積の割合」は、厚み方向Zから見た平面視において、腹側シート配置領域63の面積を100%とした場合における、接合部の占める面積の割合を意味する。
腹側シート配置領域63における第1接合部61の占める面積の割合を第2接合部62の占める面積の割合よりも低くすることで、バックシート3と外装体6の間の熱伝導性を、外装体6と腹側シート8の間の熱伝導性よりも低くすることができる。これにより、吸収体4の温度低下に伴う外装体6の温度低下を抑制することができ、腹側シート8の温度低下をより確実に抑制することができる。
【0034】
[バックシートの構成]
吸収体4の温度低下の影響を抑制する観点から、バックシート3は、着色された第1着色部33を有する。なお、図4において、バックシート3は、破線の輪郭を有し薄いグレーで塗った領域として表されている。図4に示す例において、第1着色部33は、破線で示したハートの図柄を有する。第1着色部33は、インク等の着色剤で形成され、例えば塗工されたインクが固化した部分である。第1着色部33の形状は特に限定されず、図柄、文字等を含んでいてもよい。図3に示すように、第1着色部33は、バックシート3の非肌側面に配置されることが好ましい。これにより、第1着色部33が外装体6から透けて視認され得るため、介助者や着用者に対して製品の印象や情報を与えることができる。
【0035】
第1着色部33は、バックシート3を構成するフィルム等の基材上に形成されるため、水蒸気を透過させる微細孔を被覆する。これにより、バックシート3の透湿性を部分的に低下させることができ、水分の透過も抑制することができる。さらに、第1着色部33は、疎水性を有することが好ましく、例えば油性のインクで形成されることが好ましい。これにより、第1着色部33における水分の透過をより効果的に抑制することができ、バックシート3の防漏性を高めることができる。
【0036】
本実施形態において、第1着色部33は、厚み方向Zから見た平面視において、腹側シート8の縦方向Xウエスト側における端部である第2端部8eを横切るように配置される。つまりこの構成では、第1着色部33が、腹側シート8に重なる領域と腹側シート8よりも縦方向Xウエスト側の領域とにわたって配置される。一般に、腹側シート8よりも縦方向Xウエスト側の領域は、坪量の高い腹側シート8が存在しないため、おむつ1と肌の間に籠った水蒸気がバックシート3を透過して外部へ放出されやすくなる。これに対して、上記構成では、第1着色部33が腹側シート8よりも縦方向Xウエスト側の領域の水蒸気の透過を適度に抑制できるため、吸収体4の第1端部4e近傍からの水分の蒸発を適度に規制して、気化熱による吸収体4の温度低下を効果的に抑制することができる。また、第1着色部33は、バックシート3の断熱性を高めることができるため、腹側シート8の第2端部8e近傍の温度低下を抑制することができる。加えて、第1着色部33が疎水性を有する場合は、バックシート3における水分の透過も抑制することができ、実際の排泄物の漏れも抑制することができる。
【0037】
[上記構成の作用効果]
以上のように、上記構成によれば、透湿性の高いバックシート3を用いた場合でも、腹側領域Aにおける吸収体4の急激な温度低下を抑制しつつ、その温度低下に伴う腹側領域Aの外表面の温度低下を効果的に抑制できる。特に、上記構成では、腹側領域Aに腹側シート8を配置して腹側シート8の表面8aの温度低下を抑制することに加えて、腹側シート8よりも縦方向Xウエスト側の領域からの水蒸気の放出を抑制し、吸収体4の第1端部4e近傍の温度低下を効果的に抑制することができる。これにより、おむつ1を交換しようとする介助者等が腹側領域Aの外表面を触って排泄物の漏れを確認する際に、当該外表面が冷たく感じられて排泄物が漏れていると誤認することを効果的に防止できる。したがって、介助者等に、着用者の衣服を汚していないという安心感や、おむつ1への信頼感を与えることができる。以上のように、上記構成によれば、腹側の漏れ誤認を効果的に防止することが可能なおむつ1を提供することができる。
【0038】
[バックシート及び第1着色部の構成例]
図4に示すように、バックシート3は、横方向Yにおいて、中央領域31と、中央領域31の横方向Y両側に位置する一対の側部領域32と、の3つの領域に区画され得る。中央領域31と2つの側部領域32は、バックシート3の縦方向X全長にわたって延びる領域である。中央領域31の横方向Yにおける側縁部31sは、吸収体4の横方向Yにおいて最も外側に位置する吸収体側縁部4sを通り、縦方向Xに平行に延びるものとする。つまり、中央領域31は、横方向Yにおいて、吸収体4の最大寸法と同一の寸法を有し、かつ、吸収体4と厚み方向Zに対向する領域と、その領域を縦方向Xウエスト側に延長した領域と、を含む。
【0039】
中央領域31における第1着色部33の占める面積の割合は、側部領域32における第1着色部33の占める面積の割合よりも高いことが好ましい。「中央領域31における第1着色部33の占める面積の割合」は、中央領域31の面積を100%とした場合における、中央領域31に占める第1着色部33の面積の割合を意味する。同様に、「側部領域32における第1着色部33の占める面積の割合」は、一対の側部領域32全体の面積を100%とした場合における、一対の側部領域32全体に占める第1着色部33の面積の割合を意味する。
【0040】
中央領域31は、吸収体4と対向する領域を含むため、吸収体4に吸収された排泄物由来の水蒸気がより透過しやすい。このため、中央領域31における第1着色部33の面積の割合を高くすることで、中央領域31からの水蒸気の過剰な透過を抑制し、吸収体4中の水分の蒸発を緩和することができる。したがって、上記構成により、吸収体4の急激な温度低下を抑制することができ、腹側領域Aの外表面を触れた際の排泄物の漏れの誤認をより効果的に抑制することができる。
【0041】
第1着色部33は、排泄物の漏れの誤認をより確実に防止する観点から、マンセル表色系においてBG(シアン)、B(青)、又はBP(紫)の少なくとも一つの色相で表される色を含むことが好ましい。具体的には、第1着色部33は、マンセル表色系において、2.5BGからBを経由して10BPまでの色相で表される色を含むことが好ましい。このように表される色は、尿(例えば黄色)や便(例えば茶色)の色相と補色関係又はそれに近い色相を有する。第1着色部33が尿や便とは全く異なる色相の色を含むことにより、吸収体4に吸収された排泄物が、おむつ1の外表面からより一層透けて見えにくくなり、外表面を視認した際の排泄物の漏れの誤認をより効果的に抑制することができる。さらに、第1着色部33が排泄物とは全く異なる色相であることで、第1着色部33を排泄物の漏れと誤認しにくくなる。したがって、上記構成により、排泄物の視覚的な漏れの誤認をより効果的に防止することができ、おむつ1への信頼感や安心感をより一層高めることができる。なお、バックシート3上の色相は、一般に市販されている測色機器(例えば、コニカミノルタセンシング株式会社製の色彩色差計「CR-400」、分光測色計「CM-700d」等)を用いて測定することができる。
【0042】
[腹側シートの第2着色部の構成例]
腹側シート8は、着色された第2着色部81を有することが好ましい。図4に示す例において、第2着色部81は、輪郭を実線で示し、内部を濃いグレーで塗られたハートの図柄を有する。第2着色部81は、第1着色部33と同様に、インク等の着色剤で形成され、例えば塗工されたインクが固化した部分である。第2着色部81の形状は特に限定されず、図柄、文字等を含んでいてもよい。第2着色部81は、腹側シート8の表面8aに配置されることが好ましい。これにより、第2着色部81が明確に視認され得るため、介助者や着用者に対して製品の印象や情報を与えることや、ファスニングテープ7の貼り付け位置の目安を示すこと等が可能となる。また、腹側シート8に第2着色部81が配置されることで、腹側シート8の坪量を局所的に高めることができ、腹側シート8の断熱性をさらに高めることができる。これにより、腹側シート8の表面8aの温度低下をより効果的に抑制することができる。
【0043】
さらに、第2着色部81は、第1着色部33の少なくとも一部と厚み方向Zに重なるように配置されることが好ましい。第1着色部33及び第2着色部81の2つの着色部が重なる部分が存在することで、吸収体4に吸収された排泄物が、腹側領域Aの外表面からより一層透けて見えにくくなり、当該外表面を視認した際の排泄物の漏れの誤認をより効果的に抑制することができる。
【0044】
[外装体の構成例]
外装体6は、エアスルー不織布を含むことが好ましい。エアスルー不織布は、繊維ウェブに熱風を吹き付けて繊維を融着させるため、繊維間に隙間が形成されやすく、断熱性を高めることができる。したがって、外装体6にエアスルー不織布を用いることで、吸収体4の温度低下に伴うおむつ1の外表面の温度低下を効果的に抑制することができる。
【0045】
また、外装体6は、単層構造に限定されず、複数のシート材を含む積層構造を有していてもよい。この場合は、最外層のシート材が、断熱性の高いエアスルー不織布で構成されることが好ましい。さらに、外装体6が複数のシート材を有する場合は、シート材間が非連続的に接合されることが好ましい。これにより、隣り合うシート材間の熱伝導性を低下させることができ、おむつ1の外表面の温度低下をより効果的に抑制することができる。
【0046】
[吸収体の構成例]
図2及び図3に示すように、本実施形態における吸収体4は、例えば吸収性コア40と、吸収性コア40を被覆するコアラップシート41と、を有している。この場合、コアラップシート41は、吸収性コア40との分離を防止するため、例えば吸収性コア40の非肌側面40bと少なくとも接合されることが好ましい。具体的には、コアラップシート41が、吸収性コア40の非肌側面40bを接合する第3接合部42を含んでいることが好ましい。コアラップシート41の第3接合部42は、例えば、ホットメルト接着剤等の接着剤や粘着剤等により構成されることが好ましい。なお、コアラップシート41は、吸収性コア40の非肌側面40bに加えて、肌側面40aとも接合されていてもよい。
【0047】
コアラップシート41は、例えば紙材で構成されることが好ましい。これにより、吸収性コア40が排泄物などの水分を保持した場合に、コアラップシート41が濡れやすくなり、第3接合部43が剥がれやすくなる。したがって、吸収性コア40の排泄物吸収後に、吸収性コア40とコアラップシート41との間の非接合部が増加し、これらの間の空気層によって吸収性コア40とコアラップシート41の間の熱伝導性が低下し得る。したがって、吸収性コア40の温度低下に伴って、コアラップシート41の温度が低下しにくくなり、非肌側のバックシート3、外装体6及び腹側シート8の温度低下を効果的に抑制することができる。
【0048】
[腹側シートの配置例]
図1及び図4に示すように、腹側シート8の第2端部8eは、吸収体4の第1端部4eよりも縦方向Xウエスト側に配置されることが好ましい。吸収体4の第1端部4eよりも縦方向Xウエスト側まで腹側シート8が配置されていることで、吸収体4の第1端部4eから縦方向Xウエスト側への水蒸気の放出を抑制することができ、吸収体4の第1端部4e近傍における温度低下を抑制することができる。したがって、腹側領域Aのウエスト端部W近傍における外表面の温度低下をより効果的に抑制でき、排泄物の漏れの誤認をより効果的に防止することができる。さらに、腹側シート8の存在により、吸収体4の第1端部4eからの排泄物の実際の漏れもより効果的に防止することができる。
【0049】
[バックシートの構成例]
バックシート3は、複数の微細孔(ミクロボイド)を有する透湿性フィルムで構成されることが好ましい。透湿性フィルムは、例えば樹脂製フィルムで構成され、単層構造又は積層構造を有する。透湿性フィルムは、例えば、疎水性の熱可塑性樹脂(ポリオレフィン系樹脂等)と、該熱可塑性樹脂と相溶性のない無機微粒子(炭酸カルシウム等)とを、溶融混練してフィルムを形成し、該フィルムを一軸又は二軸延伸して得られる。フィルムの形成は、例えば、インフレーション法、Tダイ法等を用いることができる。このように製造される透湿性フィルムにおいては、延伸により熱可塑性樹脂と無機微粒子との界面を起点として微細孔が多数形成される。
【0050】
図5(A)及び(B)に例示するように、透湿性フィルム30では、延伸時に炭酸カルシウム粒子などの無機微粒子36に延伸方向Eに沿った力が加わり、無機微粒子36が延伸方向Eに引きずられることで、微細孔37が形成される。このため、透湿性フィルム30で構成されたバックシート3は、無機微粒子36と、無機微粒子36に隣接する微細孔37と、を含む。
【0051】
バックシート3では、例えば、0.06μm以上0.16μm以下の範囲の細孔径を有する微細孔37の単位質量当たりの細孔容量が、2.5μm以上3.5μm以下の範囲の細孔径を有する微細孔37の単位質量当たりの細孔容量よりも大きいことが好ましい。これにより、0.06μm以上0.16μm以下の範囲の小さな細孔径を有する微細孔37を多数形成することができ、水蒸気(湿気)の透過性を高めることができる。その一方で、2.5μm以上3.5μm以下の範囲の細孔径を有する微細孔37の数を規制することができ、水分の漏れをより確実に防止することができる。したがって、透湿性と防漏性を両立するバックシート3を得ることができる。
【0052】
(細孔容量の測定方法)
細孔容量は、JIS R 1655に規定される水銀圧入法に準じて、以下の方法で測定することができる。まず、測定対象のバックシート3から、所定のサイズ(例えば10mm×10mm)の測定サンプルを切り出す。この測定サンプルを、水銀ポロシメーター(例えば、「オートポアIV9520」、株式会社島津製作所製)にセットし、細孔径0.06μm以上3.5μm以下の領域の細孔径分布を測定する。得られた細孔径分布(図6参照)に基づいて、細孔径0.06μm以上0.16μm以下の領域の累積細孔容量と、細孔径2.5μm以上3.5μm以下の領域の累積細孔容量とを測定する。細孔径0.06μm以上0.16μm以下の領域の累積細孔容量が、細孔径2.5μm以上3.5μm以下の領域の累積細孔容量よりも大きかった場合、「0.06μm以上0.16μm以下の範囲の細孔径を有する微細孔の単位質量当たりの細孔容量が、2.5μm以上3.5μm以下の範囲の細孔径を有する微細孔の単位質量当たりの細孔容量よりも大きい」と判断する。
【0053】
このように、小さな微細孔37を多数形成する方法としては、例えば、透湿性フィルム30を均一に延伸する方法が挙げられる。図5(A)に示すように、透湿性フィルム30の延伸が不均一だった場合は、透湿性フィルム30の一部に十分に延伸されていない領域が生じ、小さな無機微粒子36を起点として十分に開孔できない部分(太線で示した未開孔部38)が形成され得る。さらに、透湿性フィルム30の面内において、延伸力が大きい領域では、無機微粒子36が大きく引きずられることで大きな微細孔37が形成され、延伸力が小さい領域では、無機微粒子36があまり引きずられないことで小さな微細孔37が形成されやすくなる。このため、微細孔37の大きさが、無機微粒子36の大きさと相関を有しないことがある。
【0054】
これに対し、図5(B)に示すように、透湿性フィルム30が均一に延伸された場合は、小さな無機微粒子36にも十分に延伸力が付加される。この結果、図5(A)の例では未開孔部38であった部分が、図5(B)では十分に開孔した微細孔37(太線で示した部分)となり、小さな微細孔37を増やすことができる。また、透湿性フィルム30の面内における延伸が均一である場合には、無機微粒子36の大きさに応じた微細孔37が形成されやすいことから、微細孔37の大きさと無機微粒子36の大きさとが正に相関する傾向を有する。
【0055】
透湿性フィルム30が均一に延伸されている指標として、バックシート3では、厚み方向Zから見た平面視において、0.01μm以上0.5μm以下の大きさの無機微粒子36に隣接して配置される微細孔37の細孔径が、1.0μm以上1.5μm以下の大きさの無機微粒子36に隣接して配置される微細孔37の径よりも小さいことが好ましい。上記構成では、透湿性フィルム30が均一に延伸されていることにより、小さな無機微粒子36に隣接する小さな微細孔37の数を増加させることができ、透湿性及び防漏性の高いバックシート3を得ることができる。
【0056】
(無機微粒子のサイズ及び微細孔の細孔径の測定方法)
バックシート3から所定のサイズ(例えば10mm×10mm)の評価サンプルを切り出す。切り出した評価サンプルを常法に従って固定し、走査型電子顕微鏡(SEM)で1000倍に拡大して撮像する。1つの画像から、画像解析技術を用いて、無機微粒子とそれに隣接する微細孔のそれぞれに対応する部分の輪郭を抽出する。抽出された無機微粒子に対応する領域のサイズと、それに隣接する微細孔に対応する領域のサイズとをそれぞれ測定する。なお、微細孔の細孔径は、抽出された微細孔に対応する領域のサイズ(面積)から円換算直径を算出することで得られる。1枚のバックシート3から100箇所の画像を撮像し、0.01μm以上0.5μm以下の大きさの無機微粒子に隣接して配置される微細孔の細孔径の平均値と、1.0μm以上1.5μm以下の大きさの無機微粒子に隣接して配置される微細孔の細孔径の平均値とを算出する。
【0057】
上述のように、無機微粒子36の大きさに応じた微細孔37が形成される場合、無機微粒子36の大きさの分布を制御することで、微細孔37の細孔径も制御することができる。このような観点から、バックシート3では、厚み方向Zから見た平面視において、0.01μm以上0.5μm以下の大きさの無機微粒子36の単位面積当たりの粒子数は、0.5μm以上2.0μm未満の大きさの無機微粒子36の単位面積当たりの粒子数よりも少なく、かつ、2.0μm以上の無機微粒子36の単位面積当たりの粒子数は、0.5μm以上2.0μm未満の大きさの無機微粒子36の単位面積当たりの粒子数よりも少ないことが好ましい。上記構成により、微小な微細孔37を多く形成でき、透湿性及び防漏性の双方を充足するバックシート3を得ることができる。
【0058】
また、バックシート3は、上述のように均一に延伸されることで、防漏性を維持しつつも薄く構成されることが好ましい。このような観点から、バックシート3の坪量は、好ましくは8g/cm以上、より好ましくは10g/cm以上であり、好ましくは20g/cm以下、より好ましくは18g/cm以下である。
【0059】
バックシート3の透湿度は、好ましくは2.7g/100cm・h以上、より好ましくは3g/100cm・h以上であり、好ましくは12g/100cm・h以下、より好ましくは10g/100cm・h以下である。これにより、バックシート3が十分に高い透湿性を有し、ムレの少ない快適なおむつ1を提供できるとともに、バックシート3の防漏性も確保することができる。
【0060】
(透湿度の測定方法)
透湿度は、JIS Z0208に準じて測定することができる。まず、吸湿剤として塩化カルシウムを収容したカップを準備し、このカップを水平になるように配置する。試験前の塩化カルシウムの質量は、予め測定しておく。バックシートをカップの内径よりも10mm大きい直径を持つ円形に切断して試験片を準備し、この試験片をカップの上縁に配置し、試験片の周縁がカップの上縁の同心円上に位置するように調整する。カップの上縁に沿ったリング状のパッキンを準備し、試験片の周縁がカップの上縁に密着するように当該パッキンを押し込む。さらに、その上にリング状のおもりを配置し、透湿性フィルムがカップの上縁に固定された試験体を作製する。この試験体を、温度30℃±0.5℃、湿度90±2%RHにおいて1時間放置し、試験後の塩化カルシウムの質量を測定する。試験後の塩化カルシウムの質量から、試験前の塩化カルシウムの質量を減じた値を算出し、これを試験片の水蒸気透過面100cm当たりの値に換算して、透湿度を算出する。
【0061】
[接合部の構成例]
部材間の熱伝導性を接合部によって効果的に制御する観点から、おむつ1は、さらに以下のような構成を適用することができる。
隣り合う第1接合部61間の最大間隔は、隣り合う第2接合部62間の最大間隔よりも大きいことが好ましい。これにより、隣り合う第1接合部61の間の空間を広く確保することができ、バックシート3と外装体6との間の断熱性をより効果的に高めることができる。したがって、吸収体4の温度低下に伴う腹側シート8の表面8aの温度低下を、より一層確実に抑制することができる。
【0062】
例えば、隣り合う第1接合部61間の最大間隔は、隣り合う第2接合部62間の最大間隔に対して、好ましくは110%以上、より好ましくは120%以上であり、好ましくは300%以下、より好ましくは250%以下である。
【0063】
[腹側シートに関する数値例]
おむつ1の腹側領域Aの横方向Yにおける最大寸法に対する、腹側シート8の横方向Yにおける最大寸法の割合は、腹側領域Aの広い範囲で断熱性を高め、かつ着用感を維持する等の観点から、好ましくは35%以上、より好ましくは40%以上であり、好ましくは90%以下、より好ましくは80%以下である。
腹側シート8の横方向Yにおける最大寸法は、おむつ1のサイズにもよるが、例えば好ましくは10cm以上、より好ましくは12cm以上であり、好ましくは22cm以下、より好ましくは20cm以下である。
腹側シート8の縦方向Xにおける最大寸法は、腹側領域Aの広い範囲で断熱性を高め、かつ着用感を維持する等の観点から、好ましくは2cm以上、より好ましくは2.5cm以上であり、好ましくは8cm以下、より好ましくは7cm以下である。
腹側領域Aのウエスト端部Wから腹側シート8の第2端部8eまでの最小距離は、尿の拡散する領域を確実に覆いつつ、着用感を維持する観点から、好ましくは1cm以上、より好ましくは1.2cm以上であり、好ましくは4cm以下、より好ましくは3cm以下である。
【0064】
[他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加えることができる。
【0065】
本発明に係る吸収性物品は、ファスニングテープを備えた展開型の吸収性物品に限定されず、パンツ型使い捨ておむつ、生理用物品(例えばパンツ型の生理用ナプキン)などであってもよい。
【0066】
例えば、腹側シートは面ファスナーのループ部材に限定されず、不織布などのシート材でもよい。この場合は、例えば、繊維間に空間部の多い嵩高な不織布(例えば、エアスルー不織布、レジンボンド不織布、スパンレース不織布、エアレイド不織布など)を用いることができる。
【符号の説明】
【0067】
1…吸収性物品(使い捨ておむつ)
2…トップシート
3…バックシート
33…第1着色部
4…吸収体
4a…第1端部
6…外装体
61…第1接合部
62…第2接合部
63…腹側シート配置領域
8…腹側シート
A…腹側領域
B…背側領域
C…股下領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6