(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123556
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】ペースト用シリンジ
(51)【国際特許分類】
A61C 13/38 20060101AFI20240905BHJP
A61C 13/10 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
A61C13/38
A61C13/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031076
(22)【出願日】2023-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】391003576
【氏名又は名称】株式会社トクヤマデンタル
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】豊田 真奈
(72)【発明者】
【氏名】人見 美希
(72)【発明者】
【氏名】山崎 達矢
(57)【要約】
【課題】 シリンジの製作コストを徒に増大せしめることなく、シリンジ外筒のノズル部から排出される粉液混合型義歯床用裏装材の如きペーストの断面積を必要に応じて拡大することができるシリンジを提供する。
【解決手段】 ペースト用シリンジは、筒形状である主部及びこの主部の先端から延出するノズル部を含むシリンジ外筒と、シリンジ外筒内に収容されるペーストに作用してノズル部を通してペーストを排出するための押し部を含む押し子と、シリンジ外筒のノズル部に着脱自在に装着されてノズル部を封鎖する封鎖具とを含む。封鎖具は、シリンジ外筒のノズル部の先端からノズル部内に挿入されてノズル部を封鎖する封鎖部に加えて、シリンジ外筒のノズル部の先端からノズル部内に挿入されてノズル部の少なくとも先端部を塑性変形して内径を拡張するための拡張部を含む。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒形状である主部及び該主部の先端から延出するノズル部を含むシリンジ外筒と、該シリンジ外筒内に収容されるペーストに作用して該ノズル部を通してペーストを排出するための押し部を含む押し子と、該シリンジ外筒の該ノズル部に着脱自在に装着されて該ノズル部を封鎖する封鎖具とを含むペースト用シリンジにおいて、
該封鎖具は、該シリンジ外筒の該ノズル部の先端から該ノズル部内に挿入されて該ノズル部を封鎖する封鎖部に加えて、該シリンジ外筒の該ノズル部の先端から該ノズル部内に挿入されて該ノズル部の少なくとも先端部を塑性変形して内径を拡張するための拡張部を含む、
ことを特徴とするペースト用シリンジ。
【請求項2】
該シリンジ外筒の該ノズル部は円筒形状の内周面を有し、該封鎖具の該封鎖部は該ノズル部の内周面の内径に対応した外径を有する円柱形状であり、該封鎖具の該拡張部は該封鎖部と同心状に該封鎖部の片端に付設され且つ該封鎖部の片端から離隔する方向に向って該封鎖部の外径よりも大きい外径から該封鎖部の外径と同一の外径まで外径が漸次低減する円錐台柱形状である、請求項1記載のペースト用シリンジ。
【請求項3】
該封鎖具には該拡張部の該封鎖部に接続された基端の外縁部から該封鎖部に沿って延出する円筒形状の囲繞壁も付設されており、該封鎖部の外周面と該囲繞壁の内周面との間には該シリンジ外筒の該ノズル部を収容するための円環状の収容空間が規定されている、請求項1又は2記載のペースト用シリンジ。
【請求項4】
該封鎖具には該拡張部の先端から延出する付加封鎖部も付設されており、該付加封鎖部は該拡張部と同心状で且つ該封鎖部の外径と同一の外径を有する円柱形状である、請求項2記載のペースト用シリンジ。
【請求項5】
該シリンジ外筒は合成樹脂から一体に形成されており、該封鎖具の少なくとも該拡張部は該シリンジ外筒よりも硬度が高い材料から形成されている、請求項1又は2記載のペースト用シリンジ。
【請求項6】
筒形状である主部及び該主部の先端から延出するノズル部を含むシリンジ外筒と、該シリンジ外筒内に収容されるペーストに作用して該ノズル部を通してペーストを排出するための押し部を含む押し子と、該シリンジ外筒の該ノズル部に着脱自在に装着されて該ノズルを封鎖する封鎖具とを備えたペースト用シリンジにおいて、
更に、該シリンジ外筒の該ノズル部の先端から該ノズル部内に挿入されて該ノズル部の少なくとも先端部を塑性変形して内径を拡張するための拡張具を含む、
ことを特徴とするペースト用シリンジ。
【請求項7】
該シリンジ外筒の該ノズル部は円筒形状の内周面を有し、該拡張具は該ノズル部の内径よりも大きい外径から該ノズル部の内径に対応した外径まで外径が漸次低減する円錐台柱形状である拡張部を含む、請求項6記載のペースト用シリンジ。
【請求項8】
該拡張具には該拡張部の最小外径を有する片端から同心状に延出し且つ該拡張部の最小外径と同一の外径を有する付加封鎖部が付設されている、請求項7記載のペースト用シリンジ。
【請求項9】
該拡張具には該拡張部の最大外径を有する他端から延出する把持部が付設されている、請求項7又は8記載のペースト用シリンジ。
【請求項10】
該シリンジ外筒は合成樹脂から一体に形成されており、該拡張具の少なくとも拡張部は該シリンジ外筒よりも硬度が高い材料から一体に形成されている、請求項6記載のペースト用シリンジ。
【請求項11】
該シリンジ外筒の該ノズル部の内周面は円筒形状であり、該ノズル部の先端部の肉厚は該ノズル部の後端部の肉厚よりも低減されている、請求項1又は6記載のペースト用シリンジ。
【請求項12】
該シリンジ外筒の該ノズル部の該先端部の外周面は先細円錐台筒形状である、請求項11記載のペースト用シリンジ。
【請求項13】
該シリンジ外筒の該ノズル部の該後端部及び該先端部の外周面は円筒形状であり、該先端部の外径は該後端部の外径よりも小さい、請求項11記載のペースト用シリンジ。
【請求項14】
該シリンジ外筒の該ノズル部の該先端部における該後端部に隣接する基部には周方向に延在する環状溝が形成されている、請求項13記載のペースト用シリンジ。
【請求項15】
ペーストは非架橋樹脂を主成分とする粉材とラジカル重合性単量体を主成分とする液材が混合された粉液混合型義歯床用裏装材である、請求項1又は6記載のペースト用シリンジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンジ外筒、押し子及び封鎖具を備えたシリンジ、更に詳しくは非架橋樹脂を主成分とする粉材とラジカル重合性単量体を主成分とする液材が混合された粉液混合型義歯床用裏装材の如きペーストのためのペースト用シリンジに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、基準義歯から義歯を形成する際に、ポリエチルメタクリレートの如き非架橋樹脂を主成分とする粉材とメタクリレート系モノマーの如きラジカル重合性単量体を主成分とする液材とを混合して、粉液混合型義歯床用裏装材として使用されるペーストを生成し、基準義歯に適用することが開示されている。また、下記特許文献2及び3には、非架橋樹脂を主成分とする粉材とラジカル重合性単量体を主成分とする液材の好適例が詳述されている。
【0003】
本発明者等は、粉材と液材とを混合してペーストを生成し便宜に使用するために、シリンジを利用することを検討した。詳述すると、シリンジ外筒から押し子を離脱し且つシリンジ外筒のノズル部に封鎖具を装着してノズル部を封鎖した状態で粉材と液材とをシリンジ外筒内に投入し、混合ヘラの如き適宜の混合具をシリンジ外筒内に挿入して粉材と液材とを混合してペーストを生成する。しかる後に、封鎖具をシリンジ外筒のノズル部から離脱してシリンジ外筒のノズル部の封鎖を解除すると共にシリンジ外筒に押し子を組み合わせ、押し子を操作してノズル部の先端からペーストを排出して基準義歯の所要部位に適用することを検討した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021―187780号公報
【特許文献2】再公表特許WO2018/016602号公報
【特許文献3】特開2020―45459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
而して、粉液混合型義歯床用裏装材として使用されるペーストは、通常、常温(即ち15乃至25℃)で貯蔵弾性率が500乃至1500Pa程度の粘度で基準義歯の所要部位に適用することが望まれる。他方、一般的なシリンジにおいては、押し子の押し部の外周面にはゴムリングの如きシール部材が配設されており、シリンジ外筒の主部の内周面と押し子の押し部の外周面とは緊密に密接されている。本発明者等の実験によれば、かような一般的なシリンジの場合には、押し子に相当な力を加えても貯蔵弾性率が500乃至1500Pa程度の粘度のペーストを排出することが不可能であった。また、シリンジ外筒の主部の内径MDとノズル部の内径NDとの比(ND/MD)が過少な場合にも、押し子に過大な力を加えなければ貯蔵弾性率が500乃至1500Pa程度の粘度のペーストを排出することが不可能であった。
【0006】
本発明者等は、鋭意検討及び実験を重ね、シリンジ外筒の主部の内径MDと押し子の押し部の外径PDとの差(MD-PD)を適切な値に設定すると共に、シリンジ外筒の主部の内径MDとノズル部の内径NDとの比(ND/MD)を適切な値に設定することによって、貯蔵弾性率が500乃至1500Pa程度のペーストである場合でも押し子に適宜の力を加えることによってシリンジ外筒のノズル部を通して排出することができると共に、シリンジ外筒の主部の内周面と押し子の押し部の外周面との間隙を通ってペーストが逆流して損失されてしまうことを可及的に回避することができるペースト用シリンジを提供することができることを見出した。そして、本出願人の出願に係る特願2022―19008号(出願日:令和4年2月9日)において、
筒形状である主部と該主部の先端から延出するノズル部とを含むシリンジ外筒と、該シリンジ外筒内に収容されるペーストに作用して該ノズル部を通してペーストを排出するための押し部を含む押し子とを備えたペースト用シリンジにして、
該シリンジ外筒の該主部の内径MDと該押し子の該押し部の外径PDとの差(MD-PD)は0.03乃至0.40mmであり、
該シリンジ外筒の該主部の内径MDと該ノズル部の内径NDとの比(ND/MD)は0.15乃至0.70である、
ことを特徴とするペースト用シリンジを提案した。
【0007】
本発明者等が提案した上記ペースト用シリンジは、貯蔵弾性率が500乃至1500Pa程度のペーストである場合でも押し子に適宜の力を加えることによってシリンジ外筒のノズル部を通して排出することができると共に、シリンジ外筒の主部の内周面と押し子の押し部の外周面との間隙を通ってペーストが逆流して損失されてしまうことを可及的に回避することができる有用なものであるが、歯科医療現場においては、患者の症例に応じて、シリンジのノズル部から排出されるペースト即ち粉液混合型義歯床用裏装材の断面積を拡大することが望まれることがあり、かかる要望に応じることができない。
【0008】
本発明は上記事実になされたものであり、その主たる技術的課題は、シリンジの製作コストを徒に増大せしめることなく、シリンジ外筒のノズル部から排出される粉液混合型義歯床用裏装材の如きペーストの断面積を必要に応じて拡大することができる、新規且つ改良されたシリンジを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、鋭意検討及び実験を継続した結果、封鎖具にシリンジ外筒のノズル部の先端からノズル部内に挿入されてノズル部の少なくとも先端部を強制的に塑性変形して拡張する拡張部を付設する、或いは封鎖具とは別個に、シリンジ外筒のノズル部の先端からノズル部内に挿入されてノズル部の少なくとも先端部を強制的に塑性変形して拡張する拡張具を配設することによって、上記主たる技術的課題を達成することができることを見出した。
【0010】
本発明の一局面によれば、上記主たる技術的課題を達成するシリンジとして、
筒形状である主部及び該主部の先端から延出するノズル部を含むシリンジ外筒と、該シリンジ外筒内に収容されるペーストに作用して該ノズル部を通してペーストを排出するための押し部を含む押し子と、該シリンジ外筒の該ノズル部に着脱自在に装着されて該ノズル部を封鎖する封鎖具とを含むペースト用シリンジにおいて、
該封鎖具は、該シリンジ外筒の該ノズル部の先端から該ノズル部内に挿入されて該ノズル部を封鎖する封鎖部に加えて、該シリンジ外筒の該ノズル部の先端から該ノズル部内に挿入されて該ノズル部の少なくとも先端部を塑性変形して内径を拡張するための拡張部を含む。
ことを特徴とするペースト用シリンジが提供される。
【0011】
好ましくは、該シリンジ外筒の該ノズル部は円筒形状の内周面を有し、該封鎖具の該封鎖部は該ノズル部の内周面の内径に対応した外径を有する円柱形状であり、該封鎖具の該拡張部は該封鎖部と同心状に該封鎖部の片端に付設され且つ該封鎖部の片端から離隔する方向に向って該封鎖部の外径よりも大きい外径から該封鎖部の外径と同一の外径まで外径が漸次低減する円錐台柱形状である。該封鎖具には該拡張部の該封鎖部に接続された基端の外縁部から該封鎖部に沿って延出する円筒形状の囲繞壁も付設されており、該封鎖部の外周面と該囲繞壁の内周面との間には該シリンジ外筒の該ノズル部を収容するための円環状の収容空間が規定されているのが好都合である。好適には、該封鎖具には該拡張部の先端から延出する付加封鎖部も付設されており、該付加封鎖部は該拡張部と同心状で且つ該封鎖部の外径と同一の外径を有する円柱形状である。該シリンジ外筒は合成樹脂から一体に形成されており、該封鎖具の少なくとも該拡張部は該シリンジ外筒よりも硬度が高い材料から形成されているのが望ましい。
【0012】
本発明の他の局面によれば、上記主たる技術的課題を達成するシリンジとして、
筒形状である主部及び該主部の先端から延出するノズル部を含むシリンジ外筒と、該シリンジ外筒内に収容されるペーストに作用して該ノズル部を通してペーストを排出するための押し部を含む押し子と、該シリンジ外筒の該ノズル部に着脱自在に装着されて該ノズルを封鎖する封鎖具とを備えたペースト用シリンジにおいて、
更に、該シリンジ外筒の該ノズル部の先端から該ノズル部内に挿入されて該ノズル部の少なくとも先端部を塑性変形して内径を拡張するための拡張具を含む、
ことを特徴とするペースト用シリンジが提供される。
【0013】
好ましくは、該シリンジ外筒の該ノズル部は円筒形状の内周面を有し、該拡張具は該ノズル部の内径よりも大きい外径から該ノズル部の内径に対応した外径まで外径が漸次低減する円錐台柱形状である拡張部を含む。該拡張具には該拡張部の最小外径を有する片端から同心状に延出し且つ該拡張部の最小外径と同一の外径を有する付加封鎖部が付設されているのが好適である。該拡張具には該拡張部の最大外径を有する他端から延出する把持部が付設されているのが好ましい。該シリンジ外筒は合成樹脂から一体に形成されており、該拡張具の少なくとも拡張部は該シリンジ外筒よりも硬度が高い材料から一体に形成されているのが望ましい。
【0014】
本発明の一局面において提供される上記ペースト用シリンジ及び本発明の他の局面において提供される上記ペースト用シリンジにおいて、好ましくは、該シリンジ外筒の該ノズル部の内周面は円筒形状であり、該ノズル部の先端部の肉厚は該ノズル部の後端部の肉厚よりも低減されている。該シリンジ外筒の該ノズル部の該先端部の外周面は先細円錐台筒形状であるのが好適である。該シリンジ外筒の該ノズル部の該後端部及び該先端部の外周面は円筒形状であり、該先端部の外径は該後端部の外径よりも小さいことも好適であり、この場合に該シリンジ外筒の該ノズル部の該先端部における該後端部に隣接する基部には周方向に延在する環状溝が形成されているのが望ましい。ペーストは非架橋樹脂を主成分とする粉材とラジカル重合性単量体を主成分とする液材が混合された粉液混合型義歯床用裏装材でよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のペースト用シリンジにおいては、封鎖具に付設された拡張部或いは封鎖具とは別個に配設された拡張具を、シリンジ外筒のノズル部の先端からノズル部内に挿入してノズル部の少なくとも先端部を強制的に塑性変形して拡張することができ、かくしてシリンジの製作コストを徒に増大せしめることなく、シリンジ外筒のノズル部から排出される粉液混合型義歯床用裏装材の如きペーストの断面積を必要に応じて拡大することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に従って構成されたシリンジの好適実施形態を、一部を断面で示す分解正面図。
【
図2】
図1に図示するシリンジにおけるシリンジ外筒の主部の、
図1の線II-IIに沿った横断面図。
【
図3】
図1に図示するシリンジにおけるシリンジ外筒のノズル部の、
図1の線III-IIIに沿った横断面図。
【
図4】
図1に図示するシリンジにおける押し子の底面図。
【
図5】
図1に図示するシリンジの使用様式を説明するための、一部を断面で示す正面部。
【
図6】
図1に図示するシリンジの他の使用様式を説明するための、一部を省略して一部を断面で示す正面図。
【
図7】シリンジ外筒のノズル部の変形例を示す、一部を断面で示す部分図。
【
図8】シリンジ外筒のノズル部の他の変形例を示す、一部を断面で示す部分図。
【
図9】本発明に従って構成されたシリンジの他の好適実施形態を、一部を断面で示す分解正面図。
【
図10】
図9に図示するシリンジの使用様式を説明するための、一部を断面で示す部分正面図。
【
図11】
図9に図示するシリンジの他の使用様式を説明するための、一部を断面で示す部分正面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に従って構成されたペースト用シリンジの好適実施形態を図示している添付図面を参照して、更に詳述する。
【0018】
図1を参照して説明すると、全体を番号2で示すシリンジは、シリンジ外筒4、押し子6及び封鎖具8を備えている。シリンジ外筒4、押し子6及び封鎖具8は、ポリエチレン又はポリプロピレンの如き適宜の合成樹脂から形成することができる。シリンジ外筒4、押し子6及び封鎖具8、特にシリンジ外筒4、は透明乃至半透明であるのが好都合である。
【0019】
シリンジ外筒:
図1と共に
図2及び
図3を参照して説明を続けると、シリンジ外筒4は主部10とこの主部10の先端(
図1において下端)から延出するノズル部12を含んでいる。図示のシリンジ外筒4における主部10は円筒形状であり、円筒形状の内周面と円筒形状の外周面とを有する。主部10の内周面と外周面とは、円筒形状に限られるものではなく、楕円筒形状或いは正六角筒の如き正多角筒形状でもよく、そしてまた内周面と外周面とが同一形状ではなく、例えば内周面が円筒形状であり外周面が正多角筒形状であってもよい。シリンジ外筒4の主部10内に収容されるペーストが粉液混合型義歯床裏装材(この粉液混合型義歯床裏装材については後に言及する)である場合、その排出必要量等の点から、シリンジ外筒4の主部10の容量は20乃至80mL、特に25乃至50mL程度であり、シリンジ外筒4の主部10の内径は20乃至40mm程度で長さは50乃至130mm、特に70乃至100mm程度であるのが好都合である。主部10の基端(
図1において上端)には略楕円形状でよい張出フランジ14が付設されている。
【0020】
図示のシリンジ外筒4におけるノズル部12の内周面はその全体に渡って円筒形状である。ノズル部12の外周面も全体に渡って円筒形状でもよいが、後述するとおりにしてノズル部12の先端部を塑性変形して内径を拡張するのを助長するために、ノズル部12の後端部(
図1において上端部)12aの肉厚に対してノズル部12の先端部(
図1において下端部)12bの肉厚は低減されているのが好ましい。図示の実施形態においては、ノズル部12の後端部12aの外周面は円筒形状であるが先端部12bの外周面は先細円錐台形状であり、ノズル部12の先端部12bの肉厚は先端に向かって漸次低減されている。ノズル部12は、主部10の先端から主部10と同心状に延出しており、主部10の先端とノズル部12の基端(
図1において上端)とは接続壁16によって接続されている。接続壁16は主部10の中心軸線に対して垂直に延在する平坦壁でもよいが、図示の実施形態における接続壁16は
図1において半径方向外方に向かって上方に傾斜して延在する逆(先細)円錐台形状である。ノズル部12は、必ずしも主部10と同心状である必要はなく、主部10に対して偏心して主部10の先端から延出することもできる。
【0021】
上記特願2022-19008号の明細書に記載するとおり、シリンジ外筒4の主部10の内径MDとノズル部12の内径NDとの比(ND/MD)は0.15乃至0.70、特に0.16乃至0.45、殊に0.17乃至0.35、であるのが好ましい。比(ND/MD)が過少であると、押し子6を操作してシリンジ外筒4の主部10からノズル部12を通してペーストを押し出すことが困難であり、比(ND/MD)が過大であると、ノズル部12を通して排出されるペーストの断面積が過大になり粉液混合型義歯床用裏装材として使用するのに不都合になる。ノズル部12の内周面は、円筒形状に限られることなく、先細円錐台形状等でもよいが、語句「内径」は、先細円錐台形状である場合は先端の最小内径を意味する。
【0022】
押し子:
図1と共に
図4を参照して説明を続けると、図示の押し子6は、先端(
図1において下端)に位置する押し部18、基端(
図1において上端)に位置する操作部20、及び押し部18と操作部20とを接続する接続部22を有する。押し部18は、上記シリンジ外筒4の主部10の内周面に対応した外周面、従って図示の押し子6においては円筒形状の外周面、を有する薄円板形状である。押し部18の下面、即ち上記シリンジ外筒4の主部10内に収容されるペースト(このペーストについては後に更に言及する)に作用する押圧面、には同心状に下方に突出する円柱形状の突起24が付設されている。図示の押し子6においては、操作部20も薄円板形状であり、その外径は上記シリンジ外筒4の主部10の外径よりも幾分大きい外径を有する。接続部22は90度の角度間隔をおいて配設された4個の細長薄板片26(
図1には3個の細長薄板片26のみが図示されている)から形成されており、かかる4個の細長薄板片26の内側縁は相互に接続され、下端縁は押し部18の上面に接続され、上端縁は操作部20の下面に接続されている。4個の細長薄板片26の外側縁は押し部18の外周縁よりも半径方向内側に位置する。
【0023】
上記特願2022-19008号の明細書に記載するとおり、シリンジ外筒4の主部10の内径MDと押し子6の押し部18の外径PDとの差(MD-PD)は0.03乃至0.40mm、特に0.04乃至0.35mm、殊に0.05乃至0.30mm、であるのが好適である。差(MD-PD)が過少であると、押し子6を操作してシリンジ外筒4の主部10からノズル部12を通してペーストを押し出すことが困難であり、差(MD-PD)が過大であると、押し子6を操作してシリンジ外筒4の主部10からノズル部12を通してペーストを押し出す際にシリンジ外筒4の主部10の内周面と押し子6の押し部18の外周面との間隙を通ってペーストが逆流しペーストが無駄に損失されてしまう傾向がある。シリンジ外筒4の主部10の内周面及び押し子6の押し部18の外周面は、円筒形状に限られることなく、楕円筒形状或いは正多角形筒形状でもよく、語句「内径」及び「外径」は、楕円筒形状の場合は長径又は短径を意味し、正多角形筒形状の場合は対向する側面間の長さを意味する。
【0024】
封鎖具:
図1を参照して説明を続けると、本発明に従って構成されたペースト用シリンジ2においては、封鎖具8は封鎖部28と共に拡張部30を含んでいることが重要である。封鎖部28は円柱形状であり、その外径はシリンジ外筒4のノズル部12の内径と実質上同一であり、その長さはシリンジ外筒4のノズル部12の長さと実質上同一であるのが好都合である。拡張部30は封鎖部28と同心状に封鎖部28の片端(
図1において下端)に付設されており、封鎖部28の外径よりも大きい外径から封鎖部28の外径と同一の外径まで封鎖部28から遠ざかる方向(
図1において下方)に向って漸次外径が低減する先細円錐台形状である。拡張部30の最大外径は封鎖部28の外径(従ってシリンジ外筒4のノズル部12の内径)の1.2乃至1.7倍程度であるのが好都合である。
【0025】
図示の封鎖具8は、更に、拡張部30の基端、即ち封鎖部28に接続された端、の外周縁部から封鎖部28に沿って延出する円筒形状の囲繞壁32を含み、封鎖部28の外周面と囲繞壁32の内周面との間には円環状の収容空間34が規定されている(後に更に言及する如く、この収容空間34内にはシリンジ外筒4のノズル部12の先端部が収容される)。囲繞壁32の延出長さは、封鎖部28の長さの半分程度でよい。図示の封鎖具8には、拡張部30の先端(
図1において下端)から延出する付加封鎖部36も付設されている。この付加封鎖部36は、拡張部30と同心状であり且つ封鎖部28の外径と同一の外径を有する。付加封鎖部36の長さは、拡張部30と付加封鎖部36との合計長さが封鎖部28の長さと実質上同一になる長さ以上で付加封鎖部36自体の長さが封鎖部28の長さと実質上同一になる長さ以下であるのが好都合である。図示の実施形態においては、付加封鎖部36の長さは封鎖部28の長さと実質上同一である。封鎖具8、特にその拡張部30の外周部は、シリンジ外筒4を構成している材料よりも硬度が高い材料から形成されていることが望ましい。図示の実施形態における封鎖具8は硬度が比較的大きい合成樹脂、例えば硬質ポリエチレン又はポリプロピレン、から一体に形成されているが、所望ならば拡張部30の全体或いはその外周部を局部的にステンレス鋼の如き金属等の高硬度の材料から形成することもできる。
【0026】
シリンジの使用様式:
次に、主として
図5を参照して、シリンジ2の使用様式について説明する。粉液混合型義歯床裏装材を生成する際には、シリンジ外筒4から押し子6を分離する。そして、
図5に示す如く、シリンジ外筒4のノズル部12に封鎖具8を装着してノズル部12を封鎖する。更に詳しくは、封鎖具8の付加封鎖部36を把持して、封鎖具8の封鎖部28をノズル部12にその先端から挿入し、拡張部30の片端(
図5において上端)をノズル部12の先端に当接せしめてノズル部12を封鎖する。かくすると、封鎖部28の先端はシリンジ外筒4の接続壁16の内周縁と整合して位置する。また、ノズル部12の先端部は封鎖具8の封鎖部28と囲繞壁32との間の収容空間34内に収容される。次いで、シリンジ外筒4の主部10の基端(
図5において上端)に位置する開口を通して主部10内に所要量の粉材及び液材(図示していない)をこの順序で或いは逆順序で順次に投入する。上記粉液混合型義歯床裏装材を生成するための粉材はポリエチルメタクリレートの如き非架橋樹脂を主成分とする粉材であり、液材はメタクリレート系モノマーの如きラジカル重合性単量体を主成分とする液材である。かような粉材及び液材の詳細は、上記特許文献2及び3に詳細に記載されているのでかかる記載を引用し、本明細書においては説明を省略する。シリンジ外筒4のノズル部12は封鎖具8によって封鎖されている故に、主部10に投入された粉材及び液材がノズル部12を通して流下することはない。次に、混合ヘラの如き適宜の混合具(図示していない)をシリンジ外筒4の主部10内に挿入して投入された粉材と液材とを混合する。かくして、シリンジ外筒4の主部10内にペースト即ち粉液混合型義歯床裏装材が生成される。
【0027】
しかる後に、
図5に二点鎖線で示す如く押し子6の先端部をシリンジ外筒4内に進入させて、シリンジ外筒4に押し子6を組み合わせると共に、封鎖具8をノズル部12から離脱してノズル部12の封鎖を解除する。そして、シリンジ外筒4の張出フランジ14に人差し指及び中指を掛けると共に押し子6の操作部20に親指を係合させ、押し子6に押圧力を加えてシリンジ外筒4の主部10内に押し子6を漸次進行させ、これによって押し子6の押し部18によって主部10内のペーストを押圧し、ノズル部12を通して所要部位、例えば基準義歯の床面(裏面)上、に排出する。押し部18の下面に付設されている突起24はノズル部12内に進入し、ノズル部12内にペーストを実質上残留させることなくペーストを排出することができる。
【0028】
シリンジの他の使用様式:
上述したとおりのシリンジ2の使用様式においては、シリンジ外筒4のノズル部12から排出されるペーストの断面積はノズル部12の断面積に対応している。然るに、歯科医療の現場においては、患者の症例に応じてノズル部12から排出されるペーストの断面積を拡張することが望まれることがある。この場合には、
図6に図示するとおり、封鎖具8の上下方向を
図5の場合に対して反転させ、封鎖部28を把持して付加封鎖部36及び拡張部30をノズル部12にその先端から挿入する。拡張部28はノズル部12の内径と実質上同一の外径である他端(
図6において上端)から片端(
図6において下端)に向って外径が漸次増大しているので、拡張部30がノズル部12内に進入するのに応じてノズル部12の先端部(
図6において下端部)12bが漸次強制的に塑性変形されて内径が拡張される。ノズル部12の先端部12bの拡張度合いは、ノズル部12に対する拡張部30の挿入度合いによって調整することができる。
図6(a)に図示する位置まで拡張部30を挿入した場合にはノズル部12の先端の内径は拡張部30の最大外径に対応する大きさまで拡張され、
図6(b)に図示する位置まで拡張部30を挿入した場合には、ノズル部12の先端の内径は拡張部30の軸線方向中間部の外径に対応する長さまで拡張される。付加封鎖部36の先端部は、シリンジ外筒4の接続壁16の内周縁を幾分超えて突出する。しかる後に、
図5に図示する場合と同様に、シリンジ外筒4の主部10の基端(
図6において上端)に位置する開口を通して主部10内に所要量の粉材及び液材(図示していない)をこの順序で或いは逆順序で順次に投入する。次いで、混合ヘラの如き適宜の混合具(図示していない)をシリンジ外筒4の主部10内に挿入して投入された粉材と液材とを混合する。かくして、シリンジ外筒4の主部10内にペースト即ち粉液混合型義歯床裏装材が生成される。本発明者等の経験によれば、付加封鎖部36がシリンジ外筒4の接続壁16の内周縁を幾分超えて突出しても粉材と液材との混合に特に支障が発生することはない。逆に付加封鎖部36の先端がシリンジ外筒4の接続壁16の内周縁よりも
図6において下方に位置すると、ノズル部12の後端部12aの基部(
図6において上端部)に凹状の空間が生成され、かかる空間に進入した粉材及び液材の混合に支障が生ずる傾向がある。従って、ノズル部12の先端部の内径の拡張を極僅かにする場合にも、付加封鎖部36がシリンジ外筒4の接続壁16の内周縁よりも
図6において下方に位置することを回避するためには、付加封鎖部36の長さを封鎖部28の長さ(即ちノズル部12の長さ)と実質上同一にすることが望ましい。
【0029】
ノズル部12の先端部12bの内径の拡張は、粉材及び液材をシリンジ外筒4内に投入する前に限られることなく、粉材及び液材をシリンジ外筒4内に投入した後に遂行することもできる。この場合には、例えば、
図5に図示する如く封鎖具8の封鎖部28をノズル部12内に挿入してノズル部12を封鎖し、次いでシリンジ外筒4内に粉材及び液材を投入して混合しペースト即ち粉液混合型義歯床裏装材を生成する。しかる後に、封鎖具8をノズル部12から一旦離脱して上下を逆転し、付加封鎖部36及び拡張部30をノズル部12内に挿入する。
【0030】
次に、
図5に図示する場合と同様に、押し子6の先端部をシリンジ外筒4内に進入させて、シリンジ外筒4に押し子6を組み合わせると共に、封鎖具8をノズル部12から離脱してノズル部12の封鎖を解除する。そして、シリンジ外筒4の張出フランジ14に人差し指及び中指を掛けると共に押し子6の操作部20に親指を係合させ、押し子6に押圧力を加えてシリンジ外筒4の主部10内に押し子6を漸次進行させ、これによって押し子6の押し部18によって主部10内のペーストを押圧し、ノズル部12を通して所要部位、例えば基準義歯の床面(裏面)上、に排出する。ノズル部12の先端部12bの内周面は円錐台形状に拡張されているので、ノズル部12を通して流動するペーストは断面積が漸次増大され、ノズル部12の先端の断面積に応じた断面積でノズル部12から排出される。
【0031】
ノズル部の変形例:
図7には、シリンジ外筒4に配設されているノズル部12の変形例が図示されている。
図7に図示するノズル部12においては、その内周面は全体に渡って同一の内径を有する円筒形状であるが、その外周面は後端部(
図7において上端部)12aにおいては比較的大きい外径を有する円筒形状であるが先端部(
図7において下端部)12bにおいては比較的小さい外径を有する円筒形状であり、ノズル部12の外周面には後端部12aと先端部12bとの間に段差が生成されている。ノズル部12の後端部12aの肉厚に対して先端部12bの肉厚が低減されており、これによって上述したとおりの封鎖具8の拡張部30によるノズル部12の先端部12bの拡張が助長される。
【0032】
図8には、シリンジ外筒4に配設されているノズル部12の他の変形例が図示されている。
図8に図示するノズル部12は、肉薄である先端部12bにおける後端部12aに隣接する部位の外周面に周方向に延在する環状溝12cが形成されていている点において
図7に図示するノズル部12と相違する。
図8に図示するノズル部12においては、環状溝12cによって局部的に極薄肉部位が規定されており、上述したとおりの封鎖具8の拡張部30によるノズル部12の先端部12bの拡張が更に促進される。
【0033】
封鎖具とは別個に形成された拡張具を含むシリンジ:
図9は本発明に従って構成されたシリンジの他の好適実施形態を図示している。
図9に図示するシリンジ2は、
図1に図示する実施形態におけるシリンジ外筒4及び押し子6と同一でよいシリンジ外筒4及び押し子6に加えて、別個に形成された封鎖具128と拡張具130とを含んでいる。
【0034】
封鎖具128は、円形基壁128a、この基壁128aの周縁から上方に延出する円筒形状の囲繞壁128b及び基壁128aの中心から上方に突出する円柱形状の封鎖部128cを有する。封鎖部128cの外径はシリンジ外筒4のノズル部12の内径と実質上同一であり、封鎖部128cの長さはノズル部12の長さと実質上同一であるのが好都合である。封鎖部128cと囲繞壁128bとの間には円環状の収容空間128dが規定されている。囲繞壁128bの内径はシリンジ外筒4のノズル部12における上端部の外径と実質上同一であるのが好都合である。
【0035】
図9に図示する拡張具130は、拡張部130a、付加封鎖部130b及び把持部130cを有する。拡張部130aは円錐台柱形状であり、その片端(
図9において上端)の外径はシリンジ外筒4のノズル部12の内径と実質上同一であり、その他端(
図9において下端)の外径はノズル部12の内径の1.2乃至1.7倍程度であるのが好都合である。付加封鎖部130bは拡張部130aの上端から拡張部130aと同心状に延出する円柱形状であり、その外径は拡張部130aの上端の外径、従ってシリンジ外筒4のノズル部12の内径と実質上同一である。付加封鎖部130bの長さは、拡張部130aと付加封鎖部130bとの合計長さが封鎖具128の封鎖部128cの長さと実質上同一になる長さ以上で付加封鎖部130b自体の長さが封鎖具128の封鎖部128cの長さと実質上同一になる長さ以下であるのが好都合である。図示の実施形態においては、付加封鎖部130bの長さが、封鎖具128の封鎖部128cの長さ(即ちノズル部12の長さ)と実質上同一である。拡張部130aの下端から延出する把持部130cは、指で把持するのに適した任意の形状でよく、図示の拡張具130においては付加封鎖部130bの外径よりも幾分小さい外径を有する円柱形状である。
【0036】
シリンジ2の通常の使用様式においては、
図5を参照して説明した場合と同様に、シリンジ外筒4から押し子6を分離する。そして、
図10に示す如く、シリンジ外筒4のノズル部12に封鎖具128を装着してノズル部12を封鎖する。更に詳しくは、封鎖具128の封鎖部128cをノズル部12にその先端から挿入し、基壁128aの上面をノズル部12の先端に当接せしめてノズル部12を封鎖する。かくすると、封鎖部128cの先端はシリンジ外筒4の接続壁16の内周縁と整合して位置する。また、ノズル部12の先端部12bは封鎖具128の封鎖部128cと囲繞壁128bとの間の収容空間128d内に収容される。次いで、シリンジ外筒4の主部10の基端(
図5において上端)に位置する開口を通して主部10内に所要量の粉材及び液材(図示していない)をこの順序で或いは逆順序で順次に投入する。シリンジ外筒4のノズル部12は封鎖具128によって封鎖されている故に、主部10に投入された粉材及び液材がノズル部12を通して流下することはない。次に、混合ヘラの如き適宜の混合具(図示していない)をシリンジ外筒4の主部10内に挿入して投入された粉材と液材とを混合する。かくして、シリンジ外筒4の主部10内にペースト即ち粉液混合型義歯床裏装材が生成される。しかる後に、
図5に二点鎖線で示す如く押し子6の先端部をシリンジ外筒4内に進入させて、シリンジ外筒4に押し子6を組み合わせると共に、封鎖具128をノズル部12から離脱してノズル部12の封鎖を解除する。そして、シリンジ外筒4の張出フランジ14に人差し指及び中指を掛けると共に押し子6の操作部20に親指を係合させ、押し子6に押圧力を加えてシリンジ外筒4の主部10内に押し子6を漸次進行させ、これによって押し子6の押し部18によって主部10内のペーストを押圧し、ノズル部12を通して所要部位、例えば基準義歯の床面(裏面)上、に排出する。
【0037】
歯科医療の現場において、患者の症例に応じてノズル部12から排出されるペーストの断面積を拡張することが望まれる場合には、
図11図に図示するとおり、拡張具130の把持部130cを把持して付加封鎖部130b及び拡張部130aをノズル部12にその先端から挿入する。拡張部130aはノズル部12の内径と実質上同一の外径である片端(
図11において上端)から他端(
図11において下端)に向って外径が漸次増大しているので、拡張部130aがノズル部12内に進入するのに応じてノズル部12の先端部(
図11において下端部)12bが漸次強制的に塑性変形されて内径が拡張される。ノズル部12の先端部12bの拡張度合いは、ノズル部12に対する拡張部130aの挿入度合いによって調整することができる。
図11に図示する位置まで拡張部130aを挿入した場合には、ノズル部12の先端の内径は拡張部130aの最大外径に対応する大きさまで拡張される。付加封鎖部130bの先端はシリンジ外筒4の接続壁16の内周縁と整合して位置し、ノズル部12が封鎖される。しかる後に、
図5に図示する場合と同様に、シリンジ外筒4の主部10内に所要量の粉材及び液材(図示していない)を投入し、次いで混合ヘラの如き適宜の混合具(図示していない)をシリンジ外筒4の主部10内に挿入して投入された粉材と液材とを混合し、かくしてシリンジ外筒4の主部10内にペースト即ち粉液混合型義歯床裏装材を生成する。しかる後に、
図5に図示する場合と同様に、シリンジ外筒4に押し子6を組み合わせると共にシリンジ外筒4から拡張具130を離脱してノズル部12の封鎖を解除し、押し子6によってシリンジ外筒4の主部10内のペーストを押圧し、ノズル部12を通して所要部位、例えば基準義歯の床面(裏面)上、に排出する。ノズル部12の先端部12bの内周面は円錐台形状に拡張されているので、ノズル部12を通して流動するペーストは断面積が漸次増大され、ノズル部12の先端の断面積に応じた断面積でノズル部12から排出される。
【0038】
所望ならば、例えば、
図10に図示する如く封鎖具128の封鎖部128cをノズル部12内に挿入してノズル部12を封鎖し、次いでシリンジ外筒4内に粉材及び液材を投入して混合しペースト即ち粉液混合型義歯床裏装材を生成し、次に封鎖具128をノズル部12から離脱し、しかる後に拡張具130の付加封鎖部130b及び拡張部130aをノズル部12内に挿入してノズル部12の先端部12bを拡張することもできる。かような使用様式を採用する場合には、拡張具130において付加封鎖部130bを省略することもできる。
【符号の説明】
【0039】
2:シリンジ
4:シリンジ外筒
6:押し子
8:封鎖具
10:シリンジ外筒の主部
12:ノズル部
12a:ノズル部の後端部
12b:ノズル部の先端部
12c:環状溝
28:封鎖部
30:拡張部
32:囲繞壁
34:収容空間
36:付加封鎖部
128:封鎖具
128a:基壁
128b:囲繞壁
128c:封鎖部
130:拡張具
130a:拡張部
130b:付加封鎖部
130c:把持部