(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123565
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】工作機械システム
(51)【国際特許分類】
B23Q 17/09 20060101AFI20240905BHJP
B23Q 11/10 20060101ALI20240905BHJP
B23Q 11/00 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
B23Q17/09 G
B23Q11/10 E
B23Q11/00 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031092
(22)【出願日】2023-03-01
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】000223285
【氏名又は名称】ユアサ商事株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094536
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 隆二
(74)【代理人】
【識別番号】100129805
【弁理士】
【氏名又は名称】上野 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100189315
【弁理士】
【氏名又は名称】杉原 誉胤
(72)【発明者】
【氏名】金山 久樹
【テーマコード(参考)】
3C011
3C029
【Fターム(参考)】
3C011BB31
3C011EE09
3C029DD16
(57)【要約】
【課題】作業者に大きな作業負担をかけることなく、工作機械の工具の寿命を最適化できる工作機械システムを提供する。
【解決手段】工作機械20及び情報処理装置10を備えた工作機械システムであって、工作機械20は、ワークWに近傍する位置に可聴範囲を設定可能なAEセンサ30が設置され、AEセンサ30は、ワークWの材質に応じて定めた領域の高周波信号を検知可能に可聴範囲が設定され、工作機械20が工具3でワークWを加工している際にワークWから発生される高周波信号を検知し、情報処理装置10に高周波信号を送信し、情報処理装置10は、ユーザから工具3の交換時期を判定するための閾値を受け付ける閾値設定部14と、AEセンサ30から高周波信号を受信する高周波信号取得部13と、受信した高周波信号と、受け付けた閾値とを比較して工具の交換時期を判定する工具判定部15とを有している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを加工する工具を備えた工作機械と、該工作機械との間で各種情報を授受する情報処理装置とを備えた工作機械システムであって、
前記工作機械は、前記ワークが載置されるワークテーブルを有し、該ワークに近傍する位置に可聴範囲を設定可能なAEセンサが設置されており、
前記AEセンサは、該ワークの材質に応じて定めた領域の高周波信号を検知するように可聴範囲が設定されており、前記工作機械が前記工具でワークを加工している際に該ワークから発生される高周波信号を検知するとともに、前記情報処理装置に該検知した該高周波信号を送信するようになっており、
前記情報処理装置は、
ユーザから前記工具の交換時期を判定するための閾値となる高周波信号の値を受け付ける閾値設定部と、
前記AEセンサから該高周波信号を受信する高周波信号取得部と、
前記受信した前記高周波信号と、前記受け付けた閾値とを比較し、該受信した前記高周波信号が前記閾値以上であれば工具の交換時期であると判定し、前記工作機械に工具交換を促す信号を送信する工具判定部とを有していることを特徴とする工作機械システム。
【請求項2】
前記情報処理装置は、
各種情報を表示するための表示部を有し、
前記閾値設定部は、前記表示部に前記高周波信号取得部が受信した高周波信号を表示して、ユーザに前記閾値の入力を受け付けるようになっていることを特徴とする請求項1に記載の工作機械システム。
【請求項3】
前記工作機械には、該工作機械で使用された使用済みクーラント液を濾過するとともに、該工作機械にろ過された清澄なクーラント液を供給するためのろ過システムが接続されており、
前記ろ過システムは、
前記工作機械から使用済みのクーラント液を受け入れて該使用済みクーラント液を濾過するろ過装置と、
超微細マイクロファインバブルを発生させ、該ろ過装置がろ過した清澄なクーラント液に前記超微細マイクロファインバブルを注入するマイクロファインバブル発生装置とを有し、
前記ろ過装置は、前記工作機械に、前記超微細マイクロファインバブルが注入されているろ過済みの清澄なクーラント液を供給するようになっていることを特徴とする請求項1又は2に記載の工作機械システム。
【請求項4】
ワークを加工する工具を備えた工作機械と、該工作機械との間で各種情報を授受する情報処理装置とを備えた工作機械システムであって、
前記工作機械は、前記ワークが載置されるワークテーブルを有し、該ワークに近傍する位置に可聴範囲を設定可能なAEセンサが設置されており、
前記AEセンサは、該工具の材質に応じて定めた領域の高周波信号を検知するように可聴範囲が設定されており、前記工作機械が前記工具でワークを加工している際に該工具から発生される高周波信号を検知するとともに、前記情報処理装置に該検知した該高周波信号を送信するようになっており、
前記情報処理装置は、
ユーザから前記工具の交換時期を判定するための閾値となる高周波信号の値を受け付ける閾値設定部と、
前記AEセンサから前記高周波信号を受信する高周波信号取得部と、
前記受信した前記高周波信号と、前記受け付けた閾値とを比較し、該受信した前記高周波信号が前記閾値以上であれば工具の交換時期であると判定し、前記工作機械に工具交換を促す信号を送信する工具判定部とを有していることを特徴とする工作機械システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械システムに関し、例えば、工作機械の工具寿命を最適化ができるとともに、工作機械の加工条件を最適化する工作機械システムに関する。
【背景技術】
【0002】
工場等の生産現場で用いられる工作機械は、一般的に「加工回数、加工時間(使用許容実働時間)等の交換条件」に応じて工具(刃物)を交換することが行われている。
【0003】
また、工作機械の工具交換時期を判断する技術として、例えば、特許文献1には、工作機械用工具交換時期検出方法(以下、「工具交換時期検出方法」という)が開示されている。
上記の工具交換時期検出方法は、工具を交換した際に、第1の仕上げ加工を実行し、表面粗さ測定器を使用して、第1の仕上げ加工品の表面粗さを測定し、その測定結果を記憶しておく。
また、上記の工具交換時期検出方法では、予め定められた期間、工具を使用した後、第1の仕上げ加工と同一の第2の仕上げ加工を実行し、表面粗さ測定器を使用して、第2の仕上げ加工品の表面粗さを測定し、第2の仕上げ加工品の表面粗さを、先に記憶されている第1の仕上げ加工品の表面粗さと比較し、現在の表面粗さと工具交換当初の表面粗さとの差分を算出する。
そして、上記の算出された差分が、予め定められた値より小さいときは、第2の仕上げ加工工程と表面粗さ測定器を使用して第2の仕上げ加工品の表面粗さを測定する工程と、第2の仕上げ加工品の表面粗さをさきに記憶されている第1の仕上げ加工品の表面粗さと比較する工程とを繰り返し実行し、現在の表面粗さと工具交換当初の表面粗さとの差が予め定められた値より大きくなったとき、工具交換時期が到来したと判定するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、工作機械に用いられる工具(刃物)は、品質にばらつきがある。
そのため、予め定めた「加工回数、加工時間(使用許容実働時間)等の交換条件」に応じて工具(刃物)を交換する方法では、品質が良い工具については、まだ、使える工具を早いタイミングで交換してしまうことになり、工具を無駄遣いするという課題が生じる。
一方、上記の交換条件に応じて工具(刃物)を交換する方法では、品質が悪い工具については、工具(刃物)の品質が劣化しているにもかかわらず、交換がされずにワークの加工に用いられることになり、この場合には、不良品を発生させてしまう虞があるという課題が生じる。
すなわち、予め定めた「加工回数、加工時間(使用許容実働時間)等の交換条件」に応じて工具(刃物)を交換する方法では工作機械の工具の寿命を最適化することができない。
【0006】
また、特許文献1に記載の工具交換時期検出方法は、仕上げ加工を実行した際に、作業者が、何度か(最低でも2回)、表面粗さ測定器を使用して仕上げ加工品の表面粗さを測定するとともに、2つの測定値の差分を算出して工具交換時期を判定しており、作業者の作業負担が大きいという課題を有している。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、作業者に大きな作業負担をかけることなく、工作機械の工具の寿命を最適化することができる工作機械システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた本発明の第1態様は、ワークを加工する工具を備えた工作機械と、該工作機械との間で各種情報を授受する情報処理装置とを備えた工作機械システムであって、前記工作機械は、前記ワークが載置されるワークテーブルを有し、該ワークに近傍する位置に可聴範囲を設定可能なAEセンサが設置されており、前記AEセンサは、該ワークの材質に応じて定めた領域の高周波信号を検知するように可聴範囲が設定されており、前記工作機械が前記工具でワークを加工している際に該ワークから発生される高周波信号を検知するとともに、前記情報処理装置に該検知した該高周波信号を送信するようになっており、前記情報処理装置は、ユーザから前記工具の交換時期を判定するための閾値となる高周波信号の値を受け付ける閾値設定部と、前記AEセンサから該高周波信号を受信する高周波信号取得部と、前記受信した前記高周波信号と、前記受け付けた閾値とを比較し、該受信した前記高周波信号が前記閾値以上であれば工具の交換時期であると判定し、前記工作機械に工具交換を促す信号を送信する工具判定部とを有していることを特徴とする。
【0009】
上記の構成を採用したのは以下の理由による。
本願発明者が工作機械の工具寿命の最適化、及び工作機械の加工条件の最適化の研究を進めるなかで、加工対象となるワークの材質に応じて定めた領域の高周波信号を検知するように可聴範囲を設定できるAEセンサを用いれば、工作機械がワークを加工している際にワークから発生される高周波信号だけを検知することができ、その検知される高周波信号が工具の経年劣化の程度によって変化することを見出した。
また、本願発明者は、工作機械で工具によりワークを加工する度に、工具でワークを加工している際にワークから発生される高周波信号をAEセンサでモニタリングをしているなかで、工具が所定品質でワークを加工できない状態になると、工具が所定品質でワークを加工できている状態と比べて、ワークから発生される高周波信号の値が大きい値になることが判った。
【0010】
そこで、本発明では、工作機械のワークテーブルの上に載置されたワークの近傍の位置に、可聴範囲を設定可能なAEセンサを設置し、このAEセンサに、工作機械が工具でワークを加工している際にワークから発生される高周波信号を検知させ、情報処理装置に検知した高周波信号を送信させるようにしている。また、本発明では、情報処理装置が、AEセンサから受信した高周波信号と、ユーザから設定された閾値とを比較し、受信した前記高周波信号が前記閾値以上であれば工具の交換時期であると判定するようにしている。
この構成によれば、工具の品質のばらつきに関係なく、工具が劣化してきた際に検知された「工具でワークを加工している際にワークから発生される高周波信号」から工具の交換時期を判定することができる。その結果、本発明によれば、工作機械の工具の寿命を最適化することができるとともに、不良品の発生を防止することができる。
また、本発明の上記構成によれば、上述した特許文献1に記載の工具交換時期検出方法のように、作業者が表面粗さ測定器を使用して仕上げ加工品の表面粗さを測定したり、異なるタイミングで測定した「表面粗さの測定値」を比較したりする必要がなく、特許文献1に記載の工具交換時期検出方法と比べて、作業者の労力負担が軽減される。
【0011】
また、前記情報処理装置は、各種情報を表示するための表示部を有し、前記閾値設定部は、前記表示部に前記高周波信号取得部が受信した高周波信号を表示して、ユーザに前記閾値の入力を受け付けるようになっていることが望ましい。
この構成によれば、ユーザ(作業者)は、工作機械がワークに加工を続けるなかで、加工する度に検知される「ワークから発生される高周波信号」の値の変化の推移を確認することができ、望ましい工具の交換時期となる高周波信号の値を判断することができるようになる。
【0012】
また、前記工作機械には、該工作機械で使用された使用済みクーラント液を濾過するとともに、該工作機械にろ過された清澄なクーラント液を供給するためのろ過システムが接続されており、前記ろ過システムは、前記工作機械から使用済みのクーラント液を受け入れて該使用済みクーラント液を濾過するろ過装置と、超微細マイクロファインバブルを発生させ、該ろ過装置がろ過した清澄なクーラント液に前記超微細マイクロファインバブルを注入するマイクロファインバブル発生装置とを有し、前記ろ過装置は、前記工作機械に、前記超微細マイクロファインバブルが注入されているろ過済みの清澄なクーラント液を供給するようになっていることが望ましい。
【0013】
このように、本発明において、クーラント液を濾過するとともに、そのろ過したクーラント液に超微細マイクロファインバブルを注入して工作機械に供給するろ過システムを設けたのは、AEセンサが高精度で安定して高周波信号を検知できるようにするためである。
具体的には、本発明の構成によれば、工作機械に対して、超微細マイクロファインバブルが注入されているろ過済みの清澄なクーラント液が供給されるため、ワークの加工中に発生する加工屑が速やかに除去される。
そのため、本発明によれば、工具やワークに加工屑が付着したままの状態になることが防止されるため、AEセンサが、高精度に高周波信号(工作機械が工具でワークを加工している際にワークから発生される高周波信号)を検知することができる。すなわち、本発明によれば、AEセンサが工具やワークに切り屑が付着した状態で「高周波信号」を検知してしまうことが防止されるため、工具の正確な状態が反映された高周波信号により、工具の交換時期を判定することができる。
また、本発明の構成によれば、ワークの加工中に発生する加工屑が速やかに除去されるため、工具やワークに切り屑が付着した状態で加工が行われることが防止され、不良品が発生する可能性が軽減されるとともに、工具の寿命を延ばすことができる。
【0014】
また、上記のように工作機械に供給するクーラント液に超微細マイクロファインバブルを注入すると、超微細マイクロファインバブルが消滅する際に発生する活性酸素の消毒機能により、クーラント液の劣化が防止される。その結果、クーラント液の廃液量を減少させることができる。
また、工作機械に供給するクーラント液に超微細マイクロファインバブルを注入すると、加工精度や洗浄性が高まり、ワークと工具との隙間に泡が入りこんで接触面の抵抗を減らすことが可能になり、その結果、工具の長寿命化、切削速度の向上化の効果が得られる。
このように、本発明の構成によれば、最適な状態で工具を用いることができるとともに、最適な作業環境が維持され、その結果、工作機械の加工条件を最適化することができる。
【0015】
また、本発明の第2態様は、ワークを加工する工具を備えた工作機械と、該工作機械との間で各種情報を授受する情報処理装置とを備えた工作機械システムであって、前記工作機械は、前記ワークが載置されるワークテーブルを有し、該ワークに近傍する位置に可聴範囲を設定可能なAEセンサが設置されており、前記AEセンサは、該工具の材質に応じて定めた領域の高周波信号を検知するように可聴範囲が設定されており、前記工作機械が前記工具でワークを加工している際に該工具から発生される高周波信号を検知するとともに、前記情報処理装置に該検知した該高周波信号を送信するようになっており、前記情報処理装置は、ユーザから前記工具の交換時期を判定するための閾値となる高周波信号の値を受け付ける閾値設定部と、前記AEセンサから前記高周波信号を受信する高周波信号取得部と、前記受信した前記高周波信号と、前記受け付けた閾値とを比較し、該受信した前記高周波信号が前記閾値以上であれば工具の交換時期であると判定し、前記工作機械に工具交換を促す信号を送信する工具判定部とを有していることを特徴とする。
【0016】
本発明の第2態様では、AEセンサが「工作機械が工具でワークを加工している際に工具から発生される高周波信号」を検知するようになっており、情報処理装置がAEセンサが検知した高周波信号と、ユーザから受け付けた閾値の周波数の値とを比較して、工具の交換時期を判定している。
この第2態様の構成においても、第1態様と同様、工具の品質のばらつきに関係なく、工具が劣化してきた際に検知された「工具でワークを加工している際に工具から発生される高周波信号」から工具の交換時期を判定することができる。その結果、本発明によれば、工作機械の工具の寿命を最適化することができるとともに、不良品の発生を止することができる。
また、本発明の上記構成によれば、特許文献1に記載の工具交換時期検出方法と比べて、作業者の労力負担が軽減される。
【0017】
本発明によれば、作業者に大きな作業負担をかけることなく、工作機械の工具の寿命を最適化することができる工作機械システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態の工作機械システムの構成を示した模式図である。
【
図2】本発明の実施形態の工作機械システムを構成する工作機械の工具、ワーク、AEセンサ、及び情報処理装置の関係を説明するための模式図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態の工作機械システムについて図面を用いて説明する。
ここで、
図1は、本実施形態の工作機械システムの構成を示した模式図である。
図2は、本実施形態の工作機械システムを構成する工作機械の工具、ワーク、AEセンサ、及び情報処理装置の関係を説明するための模式図である。
【0020】
《概略構成》
図1に示すように、本実施形態の工作機械システムは、ワークWを加工する工具3(
図2参照)を備えた工作機械20と、工作機械20との間で各種情報を授受する情報処理装置10とを備えている。
また、工作機械20には、工作機械20で使用された使用済みクーラント液をろするとともに、工作機械20にろ過された清澄なクーラント液を供給するためのろ過システム50が接続されている。
【0021】
また、
図2に示すように、工作機械20は、ワークWが載置されるワークテーブルTBを有し、ワークテーブルTBの上に載置されたワークWの近傍の位置に、可聴範囲を設定可能なAE(Acoustic Emission)センサ30が設置されている。なお、図示する例では、AEセンサ30は、ワークテーブルTBの上面に載置されている。
AEセンサ30は、工作機械20が工具3でワークWを加工している際にワークWから発生される高周波信号を検知するように可聴範囲が設定されており、情報処理装置10に検知した高周波信号を送信するようになっている。
【0022】
また、情報処理装置10は、ユーザから工具3の交換時期を判定するための閾値となる高周波信号の値を受け付け、AEセンサ30から送信された高周波信号を受信し、その受信した高周波信号と、受け付けた閾値の高周波数の値とを比較し、受信した高周波信号が閾値以上であれば工具の交換時期であると判定し、工作機械20に工具交換を促す信号を送信するようになっている。
【0023】
また、ろ過システム50は、工作機械から使用済みのクーラント液を受け入れて、使用済みクーラント液を濾過するろ過装置51と、超微細マイクロファインバブルを発生させ、ろ過装置51がろ過した清澄なクーラント液に超微細マイクロファインバブルを注入するマイクロファインバブル発生装置53とを有している。また、ろ過装置10は、工作機械20に、超微細マイクロファインバブルが注入されているろ過済みの清澄なクーラント液を供給するようになっている。
【0024】
上記の構成によれば、工具3の品質のばらつきに関係なく、工具3が劣化してきた際に検知された「工具3でワークWを加工している際にワークWから発生される高周波信号」から工具3の交換時期を判定することができる。その結果、本実施形態によれば、工作機械20の工具3の寿命を最適化することができるとともに、不良品の発生を止することができる。
【0025】
また、本実施形態によれば、工作機械20に対して、超微細マイクロファインバブルが注入されているろ過済みの清澄なクーラント液が供給されるため、ワークWの加工中に発生する加工屑が速やかに除去される。
そのため、本実施形態によれば、工具3やワークWに加工屑が付着したままの状態になることが防止されるため、AEセンサ30は、高精度に高周波信号(工作機械30が工具3でワークWを加工している際にワークから発生される高周波信号)を検知することができる。
【0026】
また、本実施形態によれば、ワークWの加工中に発生する加工屑が速やかに除去されるため、工具3やワークWに切り屑が付着した状態で加工が行われることが防止され、不良品が発生する可能性が軽減されるとともに、工具の寿命を延ばすことができる。
このように、本実施形態の構成によれば、最適な状態の工具3を用いることができるとともに、最適な作業環境が維持され、その結果、工作機械20の加工条件を最適化することができる。
以下、本実施形態の工作機械システムの各構成部について、順番に説明する。
【0027】
《工作機械20》
先ず、工作機械20の構成について説明する。
工作機械20は、自動工具交換機能を有し、自動的に工具3を交換し、フライス削りや中ぐり、穴あけ、ねじ立てなどの様々な加工を連続して行うようになっている。
【0028】
図1に示すように、工作機械20は、工作機械20の全体の動作を制御する制御部21と、液晶ディスプレイ等により構成される表示部22と、操作ボタン等で構成される操作部23と、情報処理装置10と各種情報の授受を行う通信処理部24と、自動工具交換機能を備えた工作機械部25とを有している。
【0029】
工作機械部25は、
図2に示すように、工具3が装着される主軸1と、ワークWが載置されるワークテーブルTBと、加工しているワークWにクーラント液を噴射するためのノズル5と、使用済みのクーラントを貯留するベッド(図示せず)とを備えている。
また、工作機械部25には、図示しないが、工具3の貫通穴を通して工具3の刃先にセンタースルークーラントを供給するためのノズル(センタスルー用ノズル)と、使用済みのクーラントを貯留するベッドを洗浄するためのクーラント(ベッド用ノズル)を噴射するためのノズル等も設けられている。
【0030】
また、工作機械部25には、ろ過システム50から清澄なクーラント液が供給される配管61が接続されていると共に、ろ過システム50に対して、工作機械部25に貯留されている使用済みのクーラント液を排出するための配管62が接続されており、工作機械部25と、ろ過システム50の間でクーラント液が循環している。
また、工作機械部25は、自動工具交換機能により、設定されている加工プログラムに応じて、主軸1に装着する工具3を自動交換できるようになっている。
【0031】
そして、制御部21が工作機械部25の動作を制御して、加工プログラムで定められてる工具3でワークWに加工を行う。また、制御部21は、工作機械部25にワークWを加工させる際に、ろ過システム50にクーラント・制御信号を送信し、ろ過システム50の動作を制御して、その加工の際に必要なクーラント液の供給を受けるようになっている。
すなわち、工作機械部25が、工具3でワークWを加工している最中に、ノズル5(或いは、センタスルー用ノズルやベッド用ノズル)からクーラント液(ろ過システム50から供給される清澄なクーラント液)が噴射されるようになっている。また、工作機械部25で使用済みのクーラント液は、ろ過システム50に排出されるようになっている。
【0032】
また、制御部21は、通信処理部24を介して、情報処理装置10から送信される「工具交換を促す信号」を受信すると、「工具交換を促す情報」を生成して、表示部22に生成した「工具交換を促す情報」を表示する。これにより、ユーザ(作業者)に対して、工具の交換時期を認識させることができる。
なお、本実施形態の工作機械20は、公知技術の構成のものを用いるため、詳細な説明を省略する。
【0033】
《ろ過システム》
次に、本実施形態の工作機械システムを構成するろ過システム50について説明する。
本実施形態のろ過システム50は、配管61、62が接続されたろ過装置51と、マイクロファインバブル発生器53とを備えている。
【0034】
ろ過装置51は、ろ過装置51の動作を制御する制御部と、清澄なクーラント液が貯留されたタンクと、タンクに貯留されている清澄なクーラント液を工作機械20に供給するためのポンプと、工作機械20から配管62を介して送られてくる使用済みのクーラント液をろ過してタンクに流入させるろ過部とを備えている。
ろ過装置51は、制御部が、工作機械20から送信されるクーラント・制御信号に応じて、ポンプを駆動させて、配管61を介して工作機械20に、タンクに貯留された「ろ過済みの清澄なクーラント液」を供給するようになっている。
さらに、ろ過装置51の制御部は、ポンプを駆動させる際に、マイクロファインバブル発生器51に、動作命令を送り、マイクロファインバブル発生器51を動作させて、超微細マイクロファインバブルを発生させる。
【0035】
また、マイクロファインバブル発生器53は、ろ過装置51から送られてくる動作命令に応じて動作し、平均直径100ナノメートルの超微細マイクロファインバブルを発生させる。また、マイクロファインバブル発生器53は、配管61を介して工作機械20に供給する「ろ過済みの清澄なクーラント液」に、発生させた超微細マイクロファインバブルを注入する。
これにより、工作機械20には、超微細マイクロファインバブルを注入された、清澄なクーラント液が供給される。
なお、本実施形態では、例えば、清澄なクーラント液1cc中に「超微細マイクロファインバブル」が約1億4000万個含まれるようになる。
【0036】
このように、工作機械20に供給するクーラント液に超微細マイクロファインバブルを注入すると、超微細マイクロファインバブルが消滅する際に発生する活性酸素の消毒機能により、クーラント液の劣化が防止される。
また、工作機械20に供給するクーラント液に超微細マイクロファインバブルを注入すると、加工精度や洗浄性が高まり、ワークWと工具3との隙間に泡が入ることで接触面の抵抗を減らすことが可能になり、その結果、工具3の長寿命化、切削速度の向上化の効果が得られる。
【0037】
なお、本実施形態のろ過システム50には、例えば、有限会社サンメンテナンス工機が製造販売する「マイクロファインバブル搭載精密ろ過装置」を用いることができる。
【0038】
《AEセンサ》
次に、AEセンサ30の構成について説明する。
AEセンサ30は、可聴範囲を設定可なAEセンサであり、振動センサでは検知できない高周波信号を検知できるようになっている。本実施形態のAEセンサ30は、60Hz~10000KHzの領域の信号を検知できるようになっており、その領域のなかで、ユーザが設定した周波数帯域の高周波信号を検知するようになっている。
【0039】
また、
図2に示すように、本実施形態のAEセンサ30は、工作機械20のワークテーブルTBの上面等のワークWに近傍な位置に設置され、工作機械20が工具3でワークWを加工している際にワークWから発生される高周波信号を検知するようになっている。
また、AEセンサ30は、工作機械20の外部に設置されたアンプ40と通信可能に接続されており、アンプ40を介して、情報処理装置10に、検知した高周波信号を送信するようになっている。
なお、AEセンサ30とアンプ40は、有線で通信可能に接続されていても良いし、無線で通信可能に接続されていても良い。
【0040】
また、アンプ40は、AEセンサ40から送られてくる高周波信号を受信し、その受信した高周波信号を増幅する。また、アンプ40は、情報処理装置10と通信可能に接続されており、情報処理装置10に、増幅させた高周波信号を送信する。
なお、アンプ40と情報処理装置は、有線で通信可能に接続されていても良いし、無線で通信可能に接続されていても良い。
【0041】
また、AEセンサ30は、加工対象のワークWの材質に応じて定めた領域の高周波信号を検知するように可聴範囲が設定されている。
例えば、AEセンサ30は、加工対象となるワークWが「銅」の場合には、60KHzを中心に前後所定範囲の領域の高周波信号を検知するように可聴範囲が設定される。また、例えば、AEセンサ30は、加工対象となるワークWが「鉄、ステンレス、FPR(繊維強化プラスチック)」の場合には150KHzを中心に前後所定範囲の領域の高周波信号を検知するように可聴範囲が設定される。また、例えば、AEセンサ30は、加工対象となるワークWが「セラミック」の場合には300KHzを中心に前後所定範囲の領域の高周波信号を検知するように可聴範囲が設定される。
【0042】
なお、AEセンサ30は、例えば、株式会社ジェイ・シー・シー製の「アーリーオブザーバー(登録商標)」を用いることができる。
【0043】
《情報処理装置》
次に、情報処理装置10の構成について説明する。
情報処理装置10は、液晶ディスプレ等により構成される表示部11と、工作機械20との間で各種情報の授受を行う通信処理部12と、AEセンサ30から送信される高周波信号を受信する高周波信号取得部13と、ユーザから工作機械20の工具交換時期を判定するための閾値(高周波信号の値)を受け付けるための閾値設定部14と、AEセンサ30から取得した高周波信号と設定された閾値とを用いて工具判定時期を判定する工具判定部15とを備えている。
また、情報処理装置10には、キーボードやマウス等で構成される入力装置17が接続されている。
【0044】
高周波信号取得部13は、アンプ40を介して、工作機械20のワークWの近傍に設置されたAEセンサ30が検知して送信した高周波信号(工作機械20が工具3でワークWを加工している際にワークWから発生される高周波信号)を受信する。
【0045】
閾値設定部14は、高周波信号取得部13が受信した高周波信号を取得し、時系列で高周波信号の推移を提示した高周波信号画像を生成して、表示部11に生成した高周波信号画像を表示する。
また、閾値設定部14は、表示部11に、ユーザから工具3の交換時期を判定するための閾値となる高周波信号の値を受け付けるための閾値受付画面を表示し、ユーザから閾値の入力を受け付ける。
なお、ユーザは、入力装置17を操作して、閾値受付画面上で閾値を入力する。
【0046】
工具判定部15は、高周波信号取得部13が受信した高周波信号と、閾値設定部14が受け付けた閾値の高周波周波数の値とを比較し、受信した高周波信号が閾値以上であれば工具の交換時期であると判定し、通信処理部12を介して、工作機械20に工具交換を促す信号を送信する。
【0047】
また、本実施形態の情報処理装置10は、例えば、CPU、主記憶装置、補助記憶装置、I/Оインタフェース、通信インタフェース、液晶ディスプレイ、各種操作スイッチ等を備えるコンピュータ(パーソナルコンピュータ)により実現される。この場合、補助記憶装置には、通信処理部12、高周波信号取得部13、閾値設定部14、及び工具判定部15の機能を実現するためのプログラム(コンピュータプログラム)が記憶されている。
そして、通信処理部12、高周波信号取得部13、閾値設定部14、及び工具判定部15の機能は、CPUが主記憶装置に前記プログラムをロードして実行することにより実現される。また、表示部11の機能は液晶ディスプレイにより実現される。
【0048】
本実施形態の工作機械システムを上記のような構成を採用したのは以下の理由による。
本願発明者が工作機械20の工具寿命の最適化、及び工作機械の加工条件の最適化の研究を進めるなかで、加工対象となるワークWの材質に応じて定めた領域の高周波信号を検知するように可聴範囲を設定できるAEセンサ30を用いれば、工作機械20がワークWを加工している際にワークWから発生される高周波信号だけを検知することができ、その検知される高周波信号が工具3の経年劣化の程度によって変化することを見出した。
また、本願発明者は、工作機械20でワークWを加工する度に、工具3でワークWを加工している際にワークWから発生される高周波信号をAEセンサ30でモニタリングをしているなかで、工具3が所定品質でワークWを加工できない状態になると、工具3が所定品質でワークWを加工できている状態と比べて、ワークWから発生される高周波信号の値が大きい値になることが判った。
【0049】
そこで、本実施形態では、工作機械20のワークテーブルTBの上に載置されたワークWの近傍の位置に、可聴範囲を設定可能なAEセンサ30を設置し、AEセンサ30に、工作機械20が工具3でワークWを加工している際にワークWから発生される高周波信号を検知させ、情報処理装置10に検知した高周波信号を送信させるようにしている。また、本実施形態では、情報処理装置10が、AEセンサ30から受信した高周波信号と、ユーザから設定された閾値とを比較し、受信した高周波信号が閾値以上であれば工具の交換時期であると判定するようにしている。
【0050】
この構成によれば、工具3の品質のばらつきに関係なく、工具3が劣化してきた際に検知された「工具3でワークWを加工している際にワークWから発生される高周波信号」から工具3の交換時期を判定することができる。その結果、本実施形態によれば、工作機械20の工具3の寿命を最適化することができるとともに、不良品の発生を防止することができる。
また、本実施形態によれば、上述した特許文献1に記載の工具交換時期検出方法のように、作業者が表面粗さ測定器を使用して仕上げ加工品の表面粗さを測定したり、異なるタイミングで測定した「表面粗さの測定値」を比較したりする必要がなく、特許文献1に記載の工具交換時期検出方法と比べて、作業者の労力負担が軽減される。
【0051】
また、本実施形態では、工作機械3に対して、超微細マイクロファインバブルが注入されているろ過済みの清澄なクーラント液が供給されるため、ワークWの加工中に発生する加工屑が速やかに除去される。
そのため、本実施形態によれば、工具3やワークWに加工屑が付着したままの状態になることが防止されるため、AEセンサ30が、高精度に高周波信号(工作機械が工具3でワークWを加工している際にワークWから発生される高周波信号)を検知することができる。すなわち、本実施形態によれば、AEセンサ30が工具3やワークWに切り屑が付着した状態での「高周波信号」を検知してしまうことが防止されるため、工具3の正確な状態が反映された高周波信号により、工具3の交換時期を判定することができる。
【0052】
また、本実施形態の構成によれば、ワークWの加工中に発生する加工屑が速やかに除去されるため、工具3やワークWに切り屑が付着した状態で加工が行われることが防止され、不良品が発生する可能性が軽減されるとともに、工具の寿命を延ばすことができる。
このように、本実施形態の構成によれば、最適な状態の工具3を用いることができるとともに、最適な作業環境が維持され、その結果、工作機械20の加工条件を最適化することができる。
【0053】
以上、説明したように、本実施形態によれば、ユーザ(作業者)に大きな作業負担をかけることなく、工作機械20の工具3の寿命を最適化することができる工作機械システムを提供することができる。
【0054】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内において種々の変更が可能である。
【0055】
上述した実施形態では、AEセンサ30が、加工対象のワークWの材質に応じて定めた領域の高周波信号を検知するように可聴範囲が設定され、工作機械20が工具3でワークWを加工している際にワークWから発生される高周波信号を検知するようになっているが、特にこれに限定されるものではない。
例えば、AEセンサ30が、加工対象の工具3の材質に応じて定めた領域の高周波信号を検知するように可聴範囲が設定され、工作機械20が工具3でワークWを加工している際に工具3から発生される高周波信号を検知して、情報処理装置10に送信するようになっていても良い。この場合、情報処理装置10は、受信した高周波信号(工作機械20が工具3でワークWを加工している際に工具3から発生される高周波信号)と、ユーザから受け付けた閾値とを比較し、受信した高周波信号が閾値以上であれば工具の交換時期であると判定し、工作機械20に工具交換を促す信号を送信する。この場合も上述した実施形態と同様の作用効果が得られる。
【符号の説明】
【0056】
W…ワーク
TB…ワークテーブル
1…主軸
3…工具
5…ノズル
10…情報処理装置
11…表示部
12…通信処理部
13…高周波信号取得部
14…閾値設定部
15…工具判定部
17…入力装置
20…工作機械
21…制御部
22…表示部
23…操作部
24…通信処理部
25…工作機械部
30…AEセンサ
40…アンプ
50…ろ過システム
51…ろ過装置
52…マイクロファインバブル発生器