(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123570
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】電流遮断装置
(51)【国際特許分類】
H01H 9/54 20060101AFI20240905BHJP
H01H 33/59 20060101ALI20240905BHJP
H02H 3/093 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
H01H9/54 B
H01H33/59 H
H02H3/093 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031105
(22)【出願日】2023-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】390001812
【氏名又は名称】株式会社デンソーエレクトロニクス
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安田 尚由
(72)【発明者】
【氏名】杉本 恵一
【テーマコード(参考)】
5G004
5G028
5G034
【Fターム(参考)】
5G004AA04
5G004AB03
5G004DC01
5G004EA01
5G028AA22
5G028FB02
5G034AB14
(57)【要約】
【課題】負サージ発生を抑制できる電流遮断装置を提供する。
【解決手段】電気配線2に接続され、互いに並列接続されると共に電気配線2に流される電流を分流して流す複数のスイッチSW1~SWnを有するスイッチ群SWと、複数のスイッチSW1~SWnを個々にオンオフ制御する制御回路20と、を備える。制御回路20は、電気配線2に流される電流の遮断時には、複数のスイッチSW1~SWnのうちの一部のスイッチをオフしつつ、残りのスイッチをオンとする動作を繰り返し、複数のスイッチSW1~SWnの合成抵抗値を段階的に増加させ、最後に複数のスイッチSW1~SWnをすべてオフして電流を遮断する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気配線(2)に流される電流を遮断する電流遮断装置であって、
前記電気配線に接続され、互いに並列接続されると共に前記電気配線に流される電流を分流して流す複数のスイッチ(SW1~SWn)を有するスイッチ群(SW)と、
前記複数のスイッチを個々にオンオフ制御する制御回路(20)と、を備え、
前記制御回路は、前記電気配線に流される電流の遮断時には、前記複数のスイッチのうちの一部のスイッチをオフしつつ、残りのスイッチをオンとする動作を繰り返し、前記複数のスイッチの合成抵抗値を段階的に増加させ、最後に前記複数のスイッチをすべてオフして前記電流を遮断する、電流遮断装置。
【請求項2】
前記制御回路は、前記遮断時には、前記複数のスイッチのうちの1つもしくは複数を順番にオフすると共に残りのスイッチをオンしたのち、前記複数のスイッチのうちのオフスイッチ数を増やしてオフすると共に残りのスイッチをオンする動作を繰り返す、請求項1に記載の電流遮断装置。
【請求項3】
前記電気配線に流れる電流の大きさを検出する電流検出部(40)を有し、
前記制御回路は、前記電流の大きさが大きいほど、前記遮断時のオフスイッチ数を少ない数とすること、もしくは、前記合成抵抗値を段階的に増加させるために増加させるオフスイッチ数を少ない数とすること、の少なくとも一方を行う、請求項2に記載の電流遮断装置。
【請求項4】
前記複数のスイッチそれぞれの温度を検出する温度センサ(TS1~TSn)を有し、
前記制御回路は、前記温度センサの検出結果に基づき、前記複数のスイッチの中で温度が高いものを優先的にオフし、温度が低いものをオンさせる、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の電流遮断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電気配線の電流の供給を遮断する電流遮断装置に関し、特に電源から負荷に対して大電流を供給する電流経路における大電流を遮断する大電流遮断装置に適用して好適である。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1において、電気配線の電流の供給を遮断する際の突入電流を抑制する機能を有した突入電流抑制装置付開閉器が提案されている。この突入電流抑制装置付開閉器は、電流が流される電気配線中に備えられ、主遮断器および変流器が直列接続された回路に対して、スイッチおよび抵抗が直列接続された回路を並列接続した構成とされている。
【0003】
このような構成において、開閉器をオンして電気配線での電流の供給をオンする際に、抵抗が直列に挿入されているスイッチを先に駆動し、途中で抵抗が挿入されていない回路に備えられた主遮断器をオンして、主遮断器側の回路に切替える。これにより、開閉器をオンした瞬間には電流経路に抵抗が介在することで突入電流が抑制され、その後は、抵抗を挿入していない回路を通じて電流供給が行われるようにすることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の突入電流抑制装置付開閉器は、電流経路中に抵抗を挿入するという構成上、スイッチオフ時の負サージ発生を抑制することができない。
【0006】
本開示は上記点に鑑みて、負サージ発生を抑制できる電流遮断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、電気配線(2)に流される電流を遮断する電流遮断装置であって、電気配線に接続され、互いに並列接続されると共に電気配線に流される電流を分流して流す複数のスイッチ(SW1~SWn)を有するスイッチ群(SW)と、複数のスイッチを個々にオンオフ制御する制御回路(20)と、を備え、制御回路は、電気配線に流される電流の遮断時には、複数のスイッチのうちの一部のスイッチをオフしつつ、残りのスイッチをオンとする動作を繰り返し、複数のスイッチの合成抵抗値を段階的に増加させ、最後に複数のスイッチをすべてオフして電流を遮断する。
【0008】
このように、複数のスイッチのうちオンしているものの合成抵抗値が段階的に増加していくようにすれば、遮断時の電流の減少勾配が緩やかになり、負サージの発生が抑制できる。
【0009】
例えば、請求項2に記載の発明のように、制御回路は、遮断時には、複数のスイッチのうちの1つもしくは複数を順番にオフすると共に残りのスイッチをオンしたのち、複数のスイッチのうちのオフスイッチ数を増やしてオフすると共に残りのスイッチをオンする動作を繰り返せばよい。
【0010】
請求項3に記載の発明では、電気配線に流れる電流の大きさを検出する電流検出部(40)を有し、制御回路は、電流の大きさが大きいほど、遮断時のオフスイッチ数を少ない数とすること、もしくは、合成抵抗値を段階的に増加させるために増加させるオフスイッチ数を少ない数とすること、の少なくとも一方を行う。
【0011】
これにより、負サージの発生を抑制しつつ、電気配線に流れる電流の大きさに応じて遮断時にオフスイッチ数やその後の増加させるオフスイッチ数を調整できるため、遮断に要する時間の最適化が図れる。
【0012】
請求項4に記載の発明では、複数のスイッチそれぞれの温度を検出する温度センサ(S1~Sn)を有し、制御回路は、温度センサの検出結果に基づき、複数のスイッチの中で温度が高いものを優先的にオフし、温度が低いものをオンさせる。
【0013】
このように、複数のスイッチのうち高温になっていないスイッチをオンさせるようにすることで、高温によるスイッチの熱破壊を回避することも可能となる。
【0014】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本開示の第1実施形態にかかる電流遮断装置の回路図である。
【
図2】比較例として示す電流遮断装置の動作を示したタイミングチャートである。
【
図3】第1実施形態にかかる電流遮断装置の動作を示したタイミングチャートである。
【
図4】本開示の第2実施形態にかかる電流遮断装置の回路図である。
【
図5】本開示の第3実施形態にかかる電流遮断装置の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0017】
(第1実施形態)
図1は、本開示の第1実施形態にかかる電流遮断装置1の回路図である。この図に示すように、電流遮断装置1は、電流が供給される経路である電流経路を構成する電気配線2中に備えられる。本実施形態では、大電流駆動される負荷4と電源3との間に備えられる大電流遮断装置として電流遮断装置1が適用される場合を例に挙げて説明するが、大電流の遮断でなくても電流遮断装置1を適用できる。
【0018】
なお、電源3は、例えば車両用バッテリとされる場合には12V電源などとされる。負荷4は、例えば車載の電気機器などである。負荷4が大電流負荷の場合、負荷4の駆動時には、電気配線2を通じて100Aを超える大電流、例えば120Aの電流が負荷4に供給される。
【0019】
図1に示すように、電流遮断装置1は、メカスイッチ10、制御回路20およびスイッチ群SWを有して構成されている。
【0020】
メカスイッチ10は、ユーザによってオンオフ操作され、電流遮断装置1による電流経路のオンオフ、つまり通電と遮断を行うもので、例えばシーソースイッチなどで構成される。メカスイッチ10の操作状態は、電気信号として制御回路20に入力されている。
【0021】
制御回路20は、メカスイッチ10の操作状態に応じてスイッチ群SWを制御することで、電流遮断装置1による電流経路のオンオフを制御する。具体的には、制御回路20は、メカスイッチ10がオフ状態からオン状態にされた際には、スイッチ群SWを通電状態に切替え、メカスイッチ10がオン状態からオフ状態にされた際には、スイッチ群SWを遮断状態に切替える。この制御回路20によるスイッチ群SWの制御方法については後述する。
【0022】
スイッチ群SWは、複数のスイッチSW1~SWnが互いに並列接続されたもので構成されている。この複数のスイッチSW1~SWnによって電気配線2に流れる電流が分流される。
【0023】
より詳しくは、複数のスイッチSW1~SWnは、それぞれが電流経路を構成する電気配線2に対して接続されている。スイッチSW1~SWnの数は任意であり、ここでは便宜的にn個として図示してあるが、nは2以上の自然数であればよく、例えば100個とされる。
【0024】
スイッチSW1~SWnは、1つ1つが制御回路20からの制御信号に基づいて個別にオンオフ制御可能とされている。例えば、各スイッチSW1~SWnは、1チップの半導体チップ30に形成された半導体スイッチング素子で構成されている。ここでは、半導体スイッチング素子としてn型MOSFETを適用した例を示しているが、p型MOSFET、npnバイポーラトランジスタ、pnpバイポーラトランジスタなどであってもよく、IGBTやサイリスタなどであっても構わない。
【0025】
半導体スイッチング素子は、オン時にも素子特性により決まるオン抵抗を有している。このため、スイッチSW1~SWnがオンされている数に応じてスイッチ群SWの合成抵抗値が変化するようになっている。本実施形態では、各スイッチSW1~SWnを同じ素子構造とすることで同じオン抵抗を有したものとしている。この場合、オンするスイッチ数を多くするほどスイッチSW1~SWnの合成抵抗値が小さくなり、少なくするほどスイッチSW1~SWnの合成抵抗値が大きくなる。なお、各スイッチSW1~SWnに対して並列接続されたダイオードD1~Dnは、還流ダイオードである。ダイオードD1~Dnは、スイッチSW1~SWnと別部品として取付けられるものであっても良いが、MOSFETなどの場合、内蔵ダイオードとされてもよい。
【0026】
続いて、上記のように構成される電流遮断装置1の作動について、比較例と比較しながら説明する。
【0027】
図2は、比較例としての電流遮断装置1の作動を示したタイミングチャートである。また、
図3は、本実施形態の電流遮断装置1の作動を示したタイミングチャートである。
【0028】
電源3から負荷4への電流供給のオンオフを行う場合、一般的なスイッチの場合であれば、電流供給をオン状態とする場合とオフ状態とする場合との切替えだけ行われる。このような形態とする場合、本実施形態の電流遮断装置1を用いても、
図2の時点T1に示すように、電源3から負荷4への電流供給をオンする際には複数のスイッチSW1~SWnをすべて同時にオン状態とすることになる。同様に、
図2の時点T2に示すように、電源3から負荷4への電流供給をオフする際にも、複数のスイッチSW1~SWnをすべて同時にオフ状態とすることになる。
【0029】
電源3から負荷4への電流供給をオンする際には、複数のスイッチSW1~SWnをすべて同時にオン状態にしたとしても、負サージの問題は発生しない。
【0030】
しかしながら、電源3から負荷4への電流供給をオフする際に複数のスイッチSW1~SWnをすべて同時にオフ状態にすると、負サージを発生させてしまう。このため、例えば他の車載ECU(電子制御装置)などに影響を与える可能性がある。
【0031】
このため、本実施形態の電流遮断装置1では、電源3から負荷4への電流供給をオンする際には複数のスイッチSW1~SWnをすべて同時にオン状態とするが、電源3から負荷4への電流供給をオフする際には複数のスイッチSW1~SWnを複数段階に分けてオフする。
【0032】
ここで、複数のスイッチSW1~SWnをすべてオン状態としていた場合に、電源3の電圧が12V、負荷4に流れる電流が120Aであったとすると、電流遮断装置1を経由する電流経路と負荷4との合成抵抗値は0.1Ωとなる。また、スイッチ群SWの内部のスイッチSW1~SWnの抵抗値が0.1Ωで、スイッチSW1~SWnの数が100個(n=100)であったとする。
【0033】
上記したように、負荷4に通電する際には、スイッチSW1~SWnすべてをオン状態とするが、この場合、スイッチSW1~SWnの合成抵抗値は1mΩであり、負荷4に対して十分に小さい抵抗値のため、通電電流への影響は無視できる。一方、負荷4への通電を停止する遮断時には、スイッチSW1~SWnをすべて同時にオフすると、遮断時の電流の減少勾配が急峻になって、配線のインダクタンス成分と急峻に減少する電流とに基づく負サージが発生する。
【0034】
負サージを発生させないようにするためには、電源3から負荷4への電流供給をオフする際に複数のスイッチSW1~SWnを複数段階に分けてオフし、オンしているものの合成抵抗値が段階的に増加していくようにすればよい。このようにすれば、遮断時の電流の減少勾配が緩やかになり、負サージの発生を抑制できる。これを実現するには、複数のスイッチSW1~SWnのうちの一部をオフし、残りはオン状態を維持するという動作を繰り返し、スイッチSW1~SWnのうちのオフするスイッチ数(以下、オフスイッチ数という)を徐々に増やしていけばよい。ただし、負荷4が大電流負荷の場合、供給経路に流れる電流が大きく、スイッチSW1~SWnが熱破壊されることが想定される。このため、スイッチSW1~SWnのうちオフするものを高速で切替えることで、スイッチSW1~SWnのうちオン状態のままとされるものが過熱状態になることを抑制し、スイッチSW1~SWnの熱破壊を抑制すると好ましい。
【0035】
図3は、その作動の一例を示している。この図に示すように、スイッチSW1をオフしたのち、スイッチSW2をオフとし、さらにスイッチSW3、スイッチSW4と順番に複数のスイッチSW1~SWnを1つずつオフする。このとき、スイッチSW2をオフする際には、スイッチSW1をオンに戻し、まずはオフされるのが複数のスイッチSW1~SWnの1つだけとなるようにする。各スイッチSW1~SWnをオフする期間は短時間で、例えば1~数μsec程度としている。
【0036】
ただし、あるスイッチSWmをオフした後に、スイッチSWmをオンするタイミングとスイッチSWm+1をオフするタイミングを完全に一致させることは難しいため、スイッチSWmをオフさせている期間とスイッチSWm+1をオフさせる期間が若干重なるようにしても良い。なお、ここで用いたmはnより小さい自然数である。
【0037】
このようにすると、時点Ta~時点Tbの間となる期間I1の際には、スイッチ群SWの合成抵抗値がスイッチSW1~SWnのうちの1つがオフ状態になっている分だけ高くなり、電源3から負荷4に供給される電流が減少する。
【0038】
期間I1の次に、今度は、スイッチSW1、SW2を2つセットで同時にオフ、残りのスイッチSW3~SWnをオンとし、さらにスイッチSW3、SW4を2つセットでオフ、残りのスイッチSW1、SW2、SW5~SWnをオンする。この後も、スイッチSW5~SWnのうちの2つをセットとしてオフ、残りをオンとする動作を繰り返す。
【0039】
このようにすると、時点Tb~時点Tcの間となる期間I2の際には、スイッチ群SWの合成抵抗値がスイッチSW1~SWnのうちの2つがオフ状態になっている分だけ高くなり、電源3から負荷4に供給される電流が期間I1より減少する。
【0040】
期間I2に続けて、今度は、スイッチSW1~SW3を3つセットで同時にオフ、残りのスイッチSW4~SWnをオンとし、さらにスイッチSW4~SW6を3つセットでオフ、残りのスイッチSW1~SW3、SW7~SWnをオンする。この後も、スイッチSW7~SWnのうちの3つをセットとしてオフ、残りをオンとする動作を繰り返す。
【0041】
このようにすると、時点Tc~の間となる期間I3の際には、スイッチ群SWの合成抵抗値がスイッチSW1~SWnのうちの3つがオフ状態になっている分だけ高くなり、電源3から負荷4に供給される電流が期間I2より減少する。
【0042】
その後も、スイッチSW1~SWnのうちの4つずつをセットでオフ、残りをオンとすることを順番に繰り返していき、順にオフスイッチ数を増やしていき、最後に、すべてのスイッチSW1~SWnをオフすることで、電流経路を完全にオフする。
【0043】
なお、スイッチSW1~SWnのうち同時にオフするものの数が増えていくと、最後の1セットにおいて、同時にオフするスイッチ数が足りなくなり得る。その場合には、足りない数だけ、スイッチSW1から順にそのセットの中に含めて数合せして同時にオフすればよい。そして、その後は、スイッチSW1~SWnのうち数合せでオフしたスイッチの次のスイッチから、先ほど同時にオフしたスイッチ数よりも多いスイッチ数を1セットとしてオフしていくという動作を繰り返せば良い。
【0044】
以上のようにして、負荷4に供給される電流を徐々に減少させることが可能となり、急峻に低下させる場合のような負サージが発生することを抑制することが可能となる。これにより、負サージの発生によって他の車載ECUなどに影響を与えることが抑制される。
【0045】
(第1実施形態の変形例)
上記したように、第1実施形態では、電流遮断装置1にて電源3から負荷4への電流経路を遮断する際に、スイッチSW1~SWnを1つずつ順番にオフしたのち、次は2つずつ順番にオフするというように、オフする数を1つずつ増加させた。
【0046】
しかしながら、これは一例を示したに過ぎず、オフスイッチ数を段階的に増加させていくようにすれば良く、最初のオフスイッチ数も、その後に増加させるオフスイッチ数も任意である。すなわち、電流遮断装置1にて電源3から負荷4への電流経路を遮断する際に、複数のスイッチSW1~SWnのうちオン状態になっているものの合成抵抗値が段階的に増加していくようにしていれば良い。
【0047】
例えば、まずはスイッチSW1~SWnのうちの2つをセットとしてオフする動作を繰り返した後、次はスイッチSW1~SWnのうちの4つをセットとしてオフする動作を繰り返し、その後も徐々にオフスイッチ数を増加させるようにしてもよい。
【0048】
また、最終的にオン状態として残すスイッチ数について、最も少ないのは1つであるが、1つだけオン状態にした場合に、そのスイッチを通じて流される電流が大きくなり過ぎる可能性がある。このため、最終的にオン状態として残すスイッチ数について下限値を設け、2以上の複数とすることもできる。
【0049】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。
図4は、本実施形態にかかる電流遮断装置1の回路図である。
【0050】
図4に示すように、本実施形態では、電気配線2に流れる電流を検出する電流検出部40を備えている。電流検出部40は、電気配線2に流れる電流の大きさに応じた信号を検出結果として出力する。例えば、電流検出部40は、シャント抵抗などによって構成される。この電流検出部40での検出結果を示す信号は、制御回路20にフィードバックされている。そして、制御回路20により、電流検出部40での検出結果に基づいて、電流遮断装置1を遮断する際のオフスイッチ数を調整する。
【0051】
例えば、電流検出部40で検出される電流が大きいほど、遮断時の最初のオフスイッチ数を少ない数から始めること、もしくはその後に増加させるオフスイッチ数も少ない数にすることの少なくとも一方を行う。
【0052】
遮断時の最初のオフスイッチ数やその後に増加させるオフスイッチ数が多いほど、遮断時の電流の減少勾配が急峻になる。また、電気配線2に流れている電流が大きいほど、遮断時の最初のオフスイッチ数やその後に増加させるオフスイッチ数を同じにしても、遮断時の電流の減少勾配が急峻になる。このため、電気配線2に流れている電流が大きいほど、遮断時の最初のオフスイッチ数を少ない数から始めると共に、その後に増加させるオフスイッチ数も少ない数にすることで、遮断時の電流の減少勾配を緩やかにする。これにより、負サージの発生を抑制しつつ、電気配線2に流れる電流の大きさに応じて遮断時のオフスイッチ数やその後の増加させるオフスイッチ数を調整できるため、遮断に要する時間の最適化が図れる。
【0053】
(第3実施形態)
第3実施形態について説明する。
図5は、本実施形態にかかる電流遮断装置1の回路図である。
【0054】
図5に示すように、本実施形態では、各スイッチSW1~SWnの温度を検出する温度センサTS1~TSnを備えている。温度センサTS1~TSnは、例えばスイッチSW1~SWnを有する半導体チップ中において、各スイッチSW1~SWnに隣接して感温ダイオードを作り込むことによって構成され、各スイッチSW1~SWnの温度に応じた検出信号を出力する。この温度センサTS1~TSnでの検出結果を示す信号は、制御回路20にフィードバックされている。そして、制御回路20により、温度センサTS1~TSnでの検出結果に基づいて、電流遮断装置1を遮断する際にスイッチSW1~SWnのうちのどれをオフするか、換言すればオンのままにするスイッチから除外するものを決めることができる。また、制御回路20では、温度センサTS1~TSnでの検出結果に基づいて、オフスイッチ数を調整することもできる。
【0055】
温度センサTS1~TSnがスイッチSW1~SWnのうちのいずれかについて高温になっていると検出した場合、そのスイッチについては、高温破壊を避けるべく、通電させないようにして降温させた方が良い。このため、スイッチSW1~SWnの中でも温度が高いものが優先的にオフされ、温度が低いものがオンされるように、温度が高いものがオンするスイッチから除外されるようにする。
【0056】
具体的には、スイッチSW1~SWnの中で最も温度が低い方から順にオンするスイッチ数と対応する数のスイッチを選択したり、温度が高いスイッチを除外した中からオンするスイッチ数と対応するスイッチを選択したりする。例えば、温度センサTS1~TSnでスイッチSW1~SWnのうちの閾温度を超えて高温になっているものについては、オンさせるスイッチから除外する。このように、スイッチSW1~SWnのうち高温になっていないスイッチをオンさせるようにすることで、高温によるスイッチSW1~SWnの熱破壊を回避することも可能となる。
【0057】
(他の実施形態)
本開示は、上記した実施形態に準拠して記述されたが、当該実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0058】
例えば、上記各実施形態では、メカスイッチ10を電流遮断装置1の内部に備えた構成で図示した。しかしながら、これは一例を示したのであり、メカスイッチ10を電流遮断装置1の外部に備え、メカスイッチ10の操作状態を示す電気信号だけが電流遮断装置1に入力される構成とされていてもよい。
【0059】
また、上記各実施形態では、スイッチ群SWを1チップの半導体チップ30に備えた構造を例に挙げたが、制御回路20も同じチップ中に実装して1チップの集積回路としてもよい。
【0060】
また、上記第3実施形態では、各スイッチSW1~SWnに対してそれぞれ温度センサTS1~TSnを備えるようにしたが、必ずしもスイッチに対して1対1で温度センサを備える必要はない。例えば、スイッチ複数個に対して1つの割合で温度センサを備えてもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、電流遮断装置1にて電気配線2を遮断する際にスイッチSW1~SWnのうちオフするものの順序をスイッチSW1、SW2と参照符号の順としたが、この順序については任意である。また、同時にオフする複数のスイッチのセットについても、スイッチSW1~SWnから複数個を任意に設定すれば良く、参照符号の順としなくてもよい。
【0062】
さらに、上記各実施形態では、複数のスイッチSW1~SWnを同じオン抵抗の半導体スイッチング素子で構成する場合を想定しているが、各スイッチSW1~SWnのオン抵抗を異ならせてもよい。例えば、半導体スイッチング素子をMOSFETやIGBTなどで構成する場合には、ゲート長を異ならせる等、素子の構成要素のいずれかのサイズを異ならせたり、不純物濃度を変える等によって、オン抵抗を変化させることができる。又、半導体スイッチング素子に直列に抵抗を入れる等でもよい。
【0063】
このようにオン抵抗を異ならせる場合、電流遮断装置1にて電気配線2を遮断する際には、例えばスイッチSW1~SWnをオン抵抗が高いものから順番にオフするなどとすることができる。勿論、この場合にも、スイッチSW1~SWnのうちの複数を1セットとして同時にオフさせるようにしても良い。そして、徐々に、スイッチSW1~SWnのうちのオフするものの組み合わせを変えたセットで順番にオフしていき、スイッチSW1~SWnのうちオンしているものだけでの電流遮断装置1の合成抵抗値が徐々に大きくなるようにする。
【0064】
なお、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されるものではない。
【0065】
また、本開示に記載の制御回路20及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリーを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部20及びその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部20及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリーと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0066】
1…電流遮断装置、2…電気配線、3…電源、4…負荷、10…メカスイッチ
20…制御回路、30…半導体チップ、40…電流検出部、D1…ダイオード
SW…スイッチ群、SW1~SWn…スイッチ、TS1~TSn…温度センサ