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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123577
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】塗料組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 167/02 20060101AFI20240905BHJP
【FI】
C09D167/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031116
(22)【出願日】2023-03-01
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 〔集会名〕 第58回JAPAN DIY HOMECENTER SHOW 2022 〔開催日〕 令和4年8月25日、26日、27日 〔刊行物等〕 〔集会名〕 ワンダーフェスティバル 2022年 夏 〔開催日〕 令和4年7月24日 〔刊行物等〕 〔集会名〕 ワンダーフェスティバル 2023年 冬 〔開催日〕 令和5年2月12日 〔刊行物等〕 〔集会名〕 よかも 第3回プラモデル展示会 〔開催日〕 令和4年8月23日~28日 〔刊行物等〕 〔集会名〕 GWCオリオン9 〔開催日〕 令和4年11月27日 〔刊行物等〕 〔集会名〕 ひめじSubかる☆フェスティバル2022 〔開催日〕 令和4年12月11日 〔刊行物等〕 〔集会名〕 SK本舗交流会 〔開催日〕 令和5年1月22日 〔刊行物等〕 〔掲載アドレス〕 https://www.coatingmedia.com/online/a/post-1175.html 〔掲載日〕 令和4年5月17日 〔刊行物等〕 〔掲載アドレス〕 https://yorozoonews.jp/article/14558651 〔掲載日〕 令和4年3月4日 〔刊行物等〕 〔掲載アドレス〕 https://twitter.com/saitopaint3110/status/1498900615283765249 〔掲載日〕 令和4年3月2日 〔刊行物等〕 〔発行者名〕 株式会社電波社 〔刊行物名〕 ラジコン技術2022年9月号 〔発行日〕 令和4年8月10日 〔刊行物等〕 〔公開者名〕 NHK大阪放送局 〔放送日〕 令和4年9月27日 〔刊行物等〕 〔発売場所〕 ヨドバシカメラ等 〔発売日〕 令和4年3月2日 〔刊行物等〕 〔発行者名〕 株式会社日刊工業新聞社 〔刊行物名〕 日刊工業新聞 〔発行日〕 令和4年4月6日 〔刊行物等〕 〔掲載アドレス〕 https://nippper.com/2022/05/56168/, https://nippper.com/2022/05/56620/, https://nippper.com/2022/05/57033/ 〔掲載日〕 令和4年5月13日、17日、29日
(71)【出願人】
【識別番号】520355426
【氏名又は名称】斎藤塗料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】池田 宏文
(72)【発明者】
【氏名】菅 彰浩
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038DD061
4J038JC30
4J038KA06
4J038KA08
4J038MA14
4J038NA12
4J038PC02
4J038PC08
(57)【要約】
【課題】様々な材料への高い密着性と高い伸び率を有する塗膜を形成できる塗料組成物を提供する。
【解決手段】芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、及び脂肪族ジオールの縮合反応物であるポリエステルポリオールを含む、塗料組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、及び脂肪族ジオールの縮合反応物であるポリエステルポリオールを含む、塗料組成物。
【請求項2】
前記脂肪族ジオールが、炭素数2~6の脂肪族骨格を有する、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項3】
前記芳香族ジカルボン酸が、o-フタル酸、m-フタル酸及びp-フタル酸からなる群から選択される1種以上である、請求項1または2に記載の塗料組成物。
【請求項4】
前記脂肪族ジカルボン酸の炭素数が4~9である、請求項1または2に記載の塗料組成物。
【請求項5】
さらに、ポリエステルポリオール100重量部に対し0.05~7000重量部の顔料を含む、請求項1または2に記載の塗料組成物。
【請求項6】
さらに、シリコーン化合物を含む、請求項1または2に記載の塗料組成
物。
【請求項7】
請求項1または2に記載の塗料組成物からなる塗膜。
【請求項8】
膜厚が15μmのときに300%以上の伸び率を示し、鉛筆硬度がB以上である、請求項7に記載の塗膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステルポリオールを含む塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
基材に塗料を塗装する際には、金属、ガラス、セメントなどの無機材料や、プラスチックなどの有機材料など、基材の材料に最適な塗料を使用するのが一般的である。しかし、この方法では、異なる材料を組み合わせた複合素材を塗装するときに2種以上の塗料が必要になり、塗装作業も煩雑になる。様々な材料に対し高い密着性をもつ塗料が求められている。また、天然ゴムなどの高弾性基材や、発泡材料や布などの変形しやすい基材に塗膜を形成した後も、基材の伸びや曲げに追随できる塗料が求められている。
【0003】
特許文献1には、顔料と、水溶性樹脂または樹脂エマルジョンとを含む水彩絵具が開示されている。また、特許文献2には、偏光パール粉、ポリエステル系樹脂、および溶剤を含む塗料組成物が開示されている。しかし、様々な材料への密着性の有無や、塗膜の弾性・伸縮性は検討されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-206678号公報
【特許文献2】特開2004-358812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、様々な材料への高い密着性と高い伸び率を有する塗膜を形成できる塗料組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸および脂肪族ジオールを反応させて得られるポリエステルポリオールを含む塗料組成物は、様々な材料への密着性と伸び率(弾性・柔軟性)を両立できることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、及び脂肪族ジオールの縮合反応物であるポリエステルポリオールを含む、塗料組成物に関する。
【0008】
前記脂肪族ジオールが、炭素数2~6の脂肪族骨格を有するものであることが好ましい。
【0009】
前記芳香族ジカルボン酸が、o-フタル酸、m-フタル酸及びp-フタル酸からなる群から選択される1種以上であることが好ましい。
【0010】
前記脂肪族ジカルボン酸の炭素数が4~9であることが好ましい。
【0011】
塗料組成物は、さらに、ポリエステルポリオール100重量部に対し0.05~7000重量部の顔料を含むことが好ましい。
【0012】
塗料組成物は、さらに、シリコーン化合物を含むことが好ましい。
【0013】
また、本発明は、前記塗料組成物からなる塗膜に関する。
【0014】
前記塗膜は、膜厚が15μmのときに300%以上の伸び率を示し、鉛筆硬度がB以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の塗料組成物を用いると、様々な材料への高い密着性と高い伸び率を有する塗膜を形成できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の塗料組成物は、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸及び脂肪族ジオールの縮合反応物であるポリエステルポリオールを含有する。
【0017】
<ポリエステルポリオール>
本発明で使用するポリエステルポリオールは、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸及び脂肪族ジオールの縮合反応物である。
【0018】
芳香族ジカルボン酸は特に限定されず、o-フタル酸(オルトフタル酸)、m-フタル酸(イソフタル酸)、p-フタル酸(テレフタル酸)、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸や、これらの酸無水物、アルキルエステル、酸ハロゲン化物などの反応性誘導体が挙げられる。これらの中でも、原料としての入手の容易さ、コストの観点から、炭素数8~14の芳香族ジカルボン酸及びその反応性誘導体が好ましく、o-フタル酸、m-フタル酸、p-フタル酸及びその反応性誘導体が特に好ましい。これらのジカルボン酸は、単独または2種以上併用して用いることができる。
【0019】
脂肪族ジカルボン酸は特に限定されず、直鎖状、分岐状又は環状の脂肪族ジカルボン酸や、これらの酸無水物、アルキルエステル、酸ハロゲン化物などの反応性誘導体が挙げられる。具体的には、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、グルタル酸、アゼライン酸、マレイン酸、フマル酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸などが挙げられる。これらの中でも、原料としての入手の容易さ、コストの観点から、炭素数4~9の脂肪族ジカルボン酸及びその反応性誘導体が好ましく、中でも直鎖状の脂肪族ジカルボン酸及びその反応性誘導体がより好ましく、アジピン酸及びその反応性誘導体が特に好ましい。これらのジカルボン酸は、単独または2種以上併用して用いることができる。
【0020】
芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジカルボン酸の、縮合反応時の比率は、両者の合計100重量部中、芳香族ジカルボン酸が20~80重量%含まれることが好ましく、30~70重量%がより好ましい。20重量%未満であると、基材への密着性が低下する傾向があり、80重量%を超えると、塗膜の弾性・柔軟性が低下する傾向がある。
【0021】
脂肪族ジオールは特に限定されず、直鎖状(エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオールなど)、分岐状(1,2-プロパンジオール(プロピレングリコール)、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオールなど)又は環状(1,4-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン)の脂肪族ジオールが挙げられる。これらのジオールは、単独または2種以上併用して用いることができる。これらの中でも、原料としての入手の容易さ、コストの観点から、脂肪族骨格が炭素数2~8のものが好ましく、炭素数2~6のものがより好ましい。
【0022】
ジオール成分として、脂肪族ジオールと芳香族ジオールを併用してもよいが、全ジオール成分中、脂肪族ジオールの割合が60~100重量%であることが好ましく、70~100重量%であることがより好ましく、80~100重量%であることがさらに好ましい。60重量%未満であると、塗膜の弾性・柔軟性が低下する傾向がある。芳香族ジオールとしては、ビスフェノールA、ヒドロキノン、フェノールノボラックなどが挙げられる。
【0023】
ポリエステルポリオールの数平均分子量(Mn)は1000~30000が好ましく、10000~20000がより好ましい。1000未満であると、弾性の低下傾向があり、30000を超えると、高粘度となり、ハンドリング性が大きく低下する傾向がある。なお、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いてポリスチレン換算で求めることができる。
【0024】
ポリエステルポリオールの重量平均分子量(Mw)は2000~60000が好ましく、20000~40000がより好ましい。2000未満であると、弾性の低下傾向があり、60000を超えると、高粘度となり、ハンドリング性が大きく低下する傾向がある。なお、重量平均分子量は、GPCを用いてポリスチレン換算で求めることができる。
【0025】
ポリエステルポリオールの水酸基価は5~100mgKOH/gが好ましく、5~50mgKOH/gがより好ましい。5mgKOH/g未満であると、膜強度の低下傾向があり、100mgKOH/gを超えると、膜の耐水性が低下する傾向がある。なお、水酸基価は、ポリエステルポリオールを無水フタル酸のピリジン溶液でエステル化し、過剰な無水フタル酸を水酸化ナトリウム溶液で滴定することにより求めることができる(JIS K 1557-1に準拠)。
【0026】
ポリエステルポリオールは、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸及び脂肪族ジオールを公知の方法で脱水縮合させて得ることができる。
【0027】
ジカルボン酸成分(芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジカルボン酸)とジオール成分との比率は、ジカルボン酸に含まれるカルボキシ基の合計モル数に対するジオール成分に含まれる水酸基の合計モル数の比(水酸基/カルボキシ基)が、0.5~1.5となることが好ましく、0.8~1.2となることがより好ましい。
【0028】
<シリコーン化合物>
本発明の塗料組成物は、さらにシリコーン化合物を含むことが好ましい。シリコーン化合物を配合することにより、塗膜表面のタッキングを防止できる。
【0029】
シリコーン化合物としては、ポリエーテル変性シロキサン、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエーテルエステル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性アクリル基含有ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性アクリル基含有ポリジメチルシロキサン、パーフルオロポリジメチルシロキサン、パーフルオロポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、パーフルオロポリエステル変性ポリジメチルシロキサン等を用いることができる。これらのシリコーン化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
シリコーン化合物の数平均分子量は1000~20000が好ましく、3000~15000がより好ましい。この範囲では、塗膜表面のタッキングを防止する効果が得られやすい。
【0031】
シリコーン化合物の重量平均分子量は2000~40000が好ましく、6000~30000がより好ましい。この範囲では、塗膜表面のタッキングを防止する効果が得られやすい。
【0032】
シリコーン化合物の配合量は、ポリエステルポリオール100重量部に対し0.3~10重量部が好ましく、0.5~5重量部がより好ましい。0.3重量部未満であると塗膜のタッキング防止効果が得られないおそれがあり、10重量部を超えると耐水性が低下し、水分の多い環境下で塗膜表面が白化するおそれがある。
【0033】
<顔料>
本発明の塗料組成物は、さらに、顔料を含むことが好ましい。顔料としては、着色顔料、体質顔料、金属粉、ラメ等が挙げられる。
【0034】
着色顔料としては、酸化チタン、酸化鉄系黄色顔料及び赤色顔料、カーボンブラック、弁柄、黄鉛、黒鉛、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ベンツイミダゾロン、キナクリンドン、アントラキノン、ナフトール、アゾ系各種顔料などが挙げられ、所望の色に応じて単独または2種以上併用して用いることができる。
【0035】
体質顔料としては、炭酸カルシウム、タルク、クレー、アルミナホワイト、硫酸バリウム、塩基性炭酸マグネシウム、バライトパウダー、珪藻土、シリカなどが挙げられる。
【0036】
金属粉としては、亜鉛末、アルミニウム粉、金、銀、インジウム、スズ、銅、パール雲母粉、真鍮粉、鱗片状酸化鉄粉などが挙げられる。金属粉を配合することにより、塗膜にメッキ調やプリズム調(偏光)の装飾を付与できる。特に、本発明の塗料組成物により高い伸び率を有する塗膜が形成されるため、被塗装物の動きに応じてメッキ調やプリズム調の金属光沢が変化し、高い装飾効果を得られる。
【0037】
ラメとしては、PETやウレタン、ポリエステルなどからなる樹脂フィルムにアルミニウム蒸着やレーザー加工などの処理を行った後、粉砕して得られた粉末が挙げられる。
【0038】
顔料の平均粒子径は0.005~1000μmが好ましく、0.01~200μmがより好ましい。
【0039】
顔料は、塗料組成物中での安全性や分散性を向上するために、脂肪族金属塩、リン酸塩、アミン塩、フッ素化合物、レーザー加工などで表面変性されたものを用いてもよい。
【0040】
塗料組成物における顔料の配合量は特に限定されないが、ポリエステルポリオール100重量部に対し0.05~7000重量部が好ましく、0.1~6000重量部がより好ましい。顔料として着色顔料、体質顔料を用いる場合、ポリエステルポリオール100重量部に対し0.1~300重量部が好ましく、1~200重量部がより好ましい。
【0041】
顔料として金属粉を用いる場合、通常のメタリック調の塗膜を得るためにはポリエステルポリオール100重量部に対し0.5~100重量部が好ましく、1~50重量部がより好ましい。メッキ調の塗膜を得るためにはポリエステルポリオール100重量部に対し30~6000重量部が好ましく、50~5500重量部がより好ましく、プリズム調(偏光)の塗膜を得るためにはポリエステルポリオール100重量部に対し0.5~5000重量部が好ましく、1~1000重量部がより好ましい。
【0042】
<溶剤>
本発明の塗料組成物は、さらに、溶剤を含むことが好ましい。溶剤は特に限定されず、シクロヘキサノン、酢酸ブチル、酢酸エチル、キシレン、トルエン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、トルエン、水などが挙げられる。溶剤の配合量を調節することにより、塗料組成物の固形分率を調節できる。
【0043】
<その他の添加剤>
本発明の塗料組成物には、上記以外に、必要に応じて分散剤、レベリング剤、増粘剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等の各種添加剤を添加することができる。
【0044】
分散剤は特に限定されず、ポリカルボン酸系顔料分散剤、ポリアミン系顔料分散剤、ノニオン系分散剤などが挙げられる。配合量は特に限定されないが、ポリエステルポリオール100重量部に対し0.1~10重量部添加することができる。
【0045】
レベリング剤は特に限定されず、ポリエーテル系レベリング剤、フッ素系レベリング剤、ポリエステル系レベリング剤、シリコーン系レベリング剤、アクリル系レベリング剤などが挙げられる。配合量は特に限定されないが、ポリエステルポリオール100重量部に対し0.1~10重量部が好ましく、0.2~5重量部がより好ましい。
【0046】
本発明の塗料組成物の製造方法は特に限定されず、各成分を任意の順序で、又は一括で、混合することにより製造できる。混合後は、溶剤中にポリエステルポリオールが分散した分散体とすることが好ましい。塗料組成物の固形分率は0.1~60重量%が好ましく、0.2~50重量%がより好ましく、0.5~40重量%がさらに好ましい。
【0047】
<塗膜>
本発明の塗膜は、本発明の塗料組成物の硬化物である。塗料組成物を基材に塗装する方法は特に限定されず、刷毛、ローラー、バーコート、スピンコート、ディッピング、スプレー、印刷、インクジェット等が挙げられる。塗装後は、10~40℃の温度で2~48時間、自然乾燥させることにより、塗膜が得られる。乾燥を促進するためには60~150℃で1~2時間の乾燥を行うこともできる。
【0048】
塗膜の膜厚は、メッキ調の塗膜の場合、薄膜であることでより光沢感が出る傾向があり、10μm未満が好ましく、5μm未満がより好ましい。メッキ調以外の塗膜の膜厚は5~200μmが好ましい。5μm未満では、膜強度が不十分なため、膜破断する傾向があり、200μmを超えると、反応性が不均一となり、指触感が悪くなる傾向がある。なお、200μmを超える厚みを必要とする場合には、数回に分けて塗装と乾燥を繰り返せばよい。
【0049】
本発明の塗膜は、膜厚が15μmの場合に300%以上の伸び率を示すことが好ましく、350%以上がより好ましい。ここで、伸び率とは、フリーフィルムの引張試験による値である。
【0050】
塗膜の鉛筆硬度は、B以上が好ましく、HB以上がより好ましく、F以上がさらに好ましく、H以上がさらにより好ましい。鉛筆硬度は、JIS-K5600塗料一般試験方法に基づき評価できる。
【0051】
基材の材質は特に限定されず、天然ゴム、合成ゴム(スチレン・ブタジエンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、ウレタンゴム、クロロプレンゴム、エチレン・プロピレンゴム、シリコンゴム等)、金属(鉄、ステンレス(SUS304、SUS430等)、アルミニウム(アルミ5052、アルミ6063等)、銅、真鍮等)、樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、静電処理ポリプロピレン、ポリカーボネート樹脂、6ナイロン、66ナイロン、PET樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアセタール樹脂、ABS樹脂、硬質塩化ビニル、軟質塩化ビニル、酢酸ビニル樹脂等)、ガラス、陶器、タイル、コンクリート、織布、不織布、合成皮革、天然皮革(牛革等)等が挙げられる。織布、不織布を構成する繊維は、前述した樹脂であってもよく、綿、絹などであってもよい。これらは単独でもよく、2種以上が組み合わされた複合素材でもよい。基材の形態も特に限定されず、フィルム、シート、成形体、発泡タイプ、フォームタイプが挙げられる。
【0052】
また、ポリエチレンなどの樹脂フィルム基材にレーザーエッチングにより微細な溝を多数形成し、その上に本発明の塗料組成物を塗布することにより、ラメ調の外観を有する塗膜を形成できる。反射率を高めるため、樹脂フィルム基材にはレーザーエッチングに加えて、アルミニウム蒸着を施してもよい。
【0053】
<用途>
本発明の塗料組成物は、模型、コスチュームプレイなどのホビー用途、下着、スポーツウェア、ストッキング、靴下、サポーターなどの衣料品用途、包帯、ガーゼ、絆創膏などの医療用品用途に好適に使用できる。本発明の塗料組成物は、透明な塗膜を形成するための塗料としても好適に使用できる。
【0054】
<透明塗膜、および透明積層体>
本発明の塗膜は、密着性と伸縮性に加えて、透明性を有する透明塗膜とすることもできる。透明塗膜単独での全光線透過率は90%以上であることが好ましく、93%以上であることがより好ましく、95%以上であることが更に好ましい。全光線透過率は可視光線透過率測定器を使用して、JIS K 7375の全光線透過率試験により評価できる。
【0055】
基材として透明な材料を用いることにより、基材と塗膜からなる積層体全体に高い透明度を付与することもできる。透明基材の材質は特に限定されず、樹脂、ゴム、ガラスが挙げられる。樹脂としては、静電処理ポリプロピレン、ポリカーボネート樹脂、6ナイロン、ポリエチレンテレフタレート樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ABS樹脂、硬質塩化ビニル、軟質塩化ビニル、酢酸ビニル樹脂、ポリスチレン等が挙げられる。ゴムとしては、ブチルゴム、ウレタンゴム、シリコンゴム等が挙げられる。ガラスとしては、熱線吸収ガラス、熱線反射ガラス、グリーンガラス、線入り板ガラス、着色ガラス等が挙げられる。透明基材は、これら2種以上が組み合わされた複合素材でもよい。基材の形状も特に限定されず、平面、曲面、球面等が挙げられる。また、第一の透明基材と第二の透明基材は同じでもよく、異なっていてもよい。
【0056】
透明積層体は、全光線透過率が75%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることが更に好ましく、95%以上であることが特に好ましい。
【0057】
透明塗膜単独でのヘイズは1%以下であることが好ましく、0.5%以下であることがより好ましい。透明積層体のヘイズは5%以下であることが好ましく、2%以下であることがより好ましい。ヘイズは、可視光線透過率測定器により測定し、算出することができる。
【0058】
透明塗膜の屈折率は、積層体の用途に応じて適宜設定することができるが、例えば、波長550nmにおいて1.2~1.7とすることができる。
【実施例0059】
以下、実施例によって本発明をより詳しく説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0060】
(1)実施例及び比較例で用いた各種薬品
(1-1)ポリエステルポリオール、アクリルポリオールの原料
表1に記載したものを用いた。
(1-2)シリコーン化合物
KR-500(メトキシシリル基を有するシリコーン化合物。メトキシ基を28重量%含有)、信越化学工業株式会社製
(1-3)溶剤
シクロヘキサノン
(1-4)顔料
酸化チタン:JR-901(テイカ株式会社製)
アルミニウム粉:0670TS(東洋アルミニウム株式会社製)
パール雲母粉:77121(OXEN NEW MATERIALS社製)
(1-5)分散剤
BYK-161(BYK社製)
【0061】
(2)作製した塗料組成物は以下の方法で評価した。
(2-1)密着性
塗料組成物を表1に記載の各種基材に塗装後、168時間の自然乾燥により厚み15μmの塗膜を形成した。この塗膜について、膜にカッターナイフで1mm四方の碁盤目状に切込みを入れた後、粘着テープを貼り付け、剥がし、基材に残存する膜の割合を見る事により、下記の7段階で密着性を評価した(JIS K 5600-5-6 クロスカット試験法に準拠)。
6:塗膜が基材に密着し、はがれた部分はなかった。
5:塗膜が0%を超えて5%以下の範囲ではがれた。
4:塗膜が5%を超えて15%以下の範囲ではがれた。
3:塗膜が15%を超えて35%以下の範囲ではがれた。
2:塗膜が35%を超えて65%以下の範囲ではがれた。
1:塗膜が65%を超える範囲ではがれた。ただし、クロスカットの切込みを入れず、粘着テープによる付け剥がしのみでは、はがれなかった。
0:塗膜が65%を超える範囲ではがれた。さらに、クロスカットの切込みを入れなくても、粘着テープによる付け剥がしのみではがれた。
【0062】
(2-2)伸び率
塗料組成物を天然ゴム基材に塗装後、168時間の自然乾燥により厚み15μmの塗膜を形成した。基材の両端を引っ張り変形させることにより、塗膜の伸び率を測定した。伸び率(%)は、引張前の長さに対して、塗膜が引っ張り破断した時点での基材の長さの比率で表す。
【0063】
(2-3)表面粘着性(タック感)
天然ゴム基材に形成した塗膜の表面を手で触り、触感を評価した。
×:タック感があった。
△:タック感は少なく、一般的な塗料と同等だった。
〇:タック感はほとんど無く、サラッとした肌触り感であった。
◎:タック感が無く、サラッとした肌触り感であった。
【0064】
(2-4)鉛筆硬度
SPCC-SBリン酸亜鉛処理板製の基材上に形成した厚み15μmの塗膜に対し、JIS-K5600塗料一般試験方法により評価した。
【0065】
(3)塗料組成物の製造および評価
(3-1)ポリエステルポリオールを含む塗料組成物
実施例1
芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジカルボン酸を表1に記載の重量比で混合し、ジカルボン酸混合物を得た。このジカルボン酸混合物に、脂肪族ジオールを表1に記載の重量比で混合し、公知の方法で縮合反応させ、ポリエステルポリオールを得た。Mnは17400、Mwは34100、水酸基価(固形)は10mgKOH/gであった。得られたポリエステルポリオールに対し、シリコーン化合物、酸化チタン、分散剤を表1に記載の重量比で混合し、さらに、溶剤としてシクロヘキサノン100部を混合して、塗料組成物を得た。
密着性、伸び率、表面粘着性及び鉛筆硬度の評価結果を表2に示す。
【0066】
実施例2~6、比較例1
表1に従い原料と配合量を変更した以外は、実施例1と同様にして塗料組成物を得た。
密着性、伸び率、表面粘着性及び鉛筆硬度の評価結果を表2に示す。
【0067】
(3-2)アクリルポリオールを含む塗料組成物
比較例2~5
(メタ)アクリル酸化合物を表1に記載の重量比で混合し、(メタ)アクリル酸混合物を得た。この(メタ)アクリル酸混合物100部に対し、開始重合剤としてアクリル酸エチル0.1部を添加し、170℃で1時間30分加温することによりアクリル重合反応を行い、アクリルポリオールを得た。得られたアクリルポリオールに対し、溶剤としてシクロヘキサノン100部を混合して、塗料組成物を得た。密着性、伸び率、表面粘着性及び鉛筆硬度の評価結果を表2に示す。
【0068】
【表1】
【0069】
【表2】
【0070】
表2に示すように、比較例1では脂肪族ジオールを含まないため、塗膜の伸び率が十分ではなかった。比較例2~5はアクリルポリオールからなる塗料組成物であるため、塗膜の伸び率に劣っていた。また、比較例1~5では、ゴム系材料、綿、皮革などの基材に対する密着性に劣っていた。実施例1~6では、塗膜の伸び率が優れており、幅広い基材に対し高い密着性を有していた。