IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ車体株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-ミスト捕集装置 図1
  • 特開-ミスト捕集装置 図2
  • 特開-ミスト捕集装置 図3
  • 特開-ミスト捕集装置 図4
  • 特開-ミスト捕集装置 図5
  • 特開-ミスト捕集装置 図6
  • 特開-ミスト捕集装置 図7
  • 特開-ミスト捕集装置 図8
  • 特開-ミスト捕集装置 図9
  • 特開-ミスト捕集装置 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123580
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】ミスト捕集装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 45/08 20060101AFI20240905BHJP
   B05B 14/43 20180101ALI20240905BHJP
【FI】
B01D45/08 B
B05B14/43
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031120
(22)【出願日】2023-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】迫田 耕二
【テーマコード(参考)】
4D031
4D073
【Fターム(参考)】
4D031AB08
4D031BA01
4D031BA10
4D031BB01
4D031BB08
4D031BB10
4D031EA01
4D073AA01
4D073BB01
4D073BB03
4D073CA30
4D073DC02
4D073DC17
4D073DC19
4D073DC30
4D073DD05
4D073DD09
4D073DD10
4D073DD15
4D073DD25
4D073DD40
(57)【要約】
【課題】 清掃作業効率に優れたミスト捕集装置を提供する。
【解決手段】 ミスト捕集装置10は、粘着性を有するミストMを捕集するためのものであり、蛇腹形状をなす複数の蛇腹壁部12を有し、ミストMを含むガスGが流れる流路6に複数の蛇腹壁部12がガス流れを横切るように配置されるバッフルプレート11と、バッフルプレート11をガスGのガス流れに沿って伸縮可能に保持する保持機構部20と、を備え、流路6に洗浄水を噴射してバッフルプレート11を清掃するとき、流路6にガスGが流れるミスト捕集時に比べてバッフルプレート11が延びて複数の蛇腹壁部12が平坦状に倒れるように構成される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着性を有するミストを捕集するミスト捕集装置であって、
蛇腹形状をなす複数の蛇腹壁部を有し、上記ミストを含むガスが流れる流路に上記複数の蛇腹壁部がガス流れを横切るように配置されるバッフルプレートと、
上記バッフルプレートを上記ガスのガス流れに沿って伸縮可能に保持する保持機構部と、
を備え、
上記流路に洗浄液を噴射して上記バッフルプレートを清掃するとき、上記流路に上記ガスが流れるミスト捕集時に比べて上記バッフルプレートが伸びて上記複数の蛇腹壁部が平坦状に倒れるように構成される、ミスト捕集装置。
【請求項2】
上記保持機構部は、上記バッフルプレートの一端部が固定される固定プレートを有し、上記固定プレートは、上記流路に露出しない対向空間を隔てて上記バッフルプレートと対向するように構成される、請求項1に記載のミスト捕集装置。
【請求項3】
上記保持機構部は、上記バッフルプレートの他端部が固定される可動プレートと、上記バッフルプレートが伸縮して上記複数の蛇腹壁部の向きが変わるように上記可動プレートを動かすための操作部と、を有する、請求項2に記載のミスト捕集装置。
【請求項4】
上記ガスは、塗装ブースの塗装室で発生した塗料ミストを含むミストガスであり、上記バッフルプレートは、上記塗装ブースの床面を形成するグレーチングの直下に設けており、上記グレーチングの通気部を通過した上記ミストガスが上記流路に流入するように構成される、請求項1~3のいずれか一項に記載のミスト捕集装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着性を有するミストを捕集するミスト捕集装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、塗料設備用のフィルターモジュールが開示されている。このフィルターモジュールは、排気ダスト内で生じた塗料ミストを捕集するために、エリミネータエレメントと称するジグザグ状のフィルター部材の複数を並設した構造を有する。フィルター部材は、使い捨てされるものであり、可燃性材料である段ボールによって製作されている。このフィルターモジュールによれば、塗料ミストを含む空気は、隣接する2つのフィルター部材の間の流路を、各フィルター部材の表面に衝突しながら蛇行して流れる。このときに、塗料ミストがフィルター部材の表面に付着して捕集される。ジグザグ状のフィルター部材を使用すると、塗料ミストの捕集効率を高めるのに有効である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特願2020-194693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のフィルターモジュールは、水に弱い段ボールからなるフィルター部材を使用したものである。このため、フィルター部材を設置状態のままで、空気の入口側から洗浄水を噴射するような清掃作業に適していない。仮に、フィルター部材の素材を段ボールに代えて耐水性を有するものに変更したとしても、ジグザグ状のフィルター部材には、洗浄水が当たり難い死角となる壁が含まれており、フィルター部材の全表面を洗浄水で均一に清掃するのが難しい。このため、フィルター部材を取り外して清掃する必要があり、清掃にかかる作業効率が低いという問題を抱えている。しかも、このフィルターモジュールは、使用後のフィルター部材を廃棄物として燃焼処理することを要する点や、交換用のフィルター部材を取り置くための場所を確保する必要がある点で不利である。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、清掃作業効率に優れたミスト捕集装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、
粘着性を有するミストを捕集するミスト捕集装置であって、
蛇腹形状をなす複数の蛇腹壁部を有し、上記ミストを含むガスが流れる流路に上記複数の蛇腹壁部がガス流れを横切るように配置されるバッフルプレートと、
上記バッフルプレートを上記ガスのガス流れに沿って伸縮可能に保持する保持機構部と、
を備え、
上記流路に洗浄液を噴射して上記バッフルプレートを清掃するとき、上記流路に上記ガスが流れるミスト捕集時に比べて上記バッフルプレートが伸びて上記複数の蛇腹壁部が平坦状に倒れるように構成される、ミスト捕集装置、
にある。
【発明の効果】
【0007】
上述の態様のミスト捕集装置において、バッフルプレートは、ミストを含むガスが流れる流路に複数の蛇腹壁部がガス流れを横切るように配置される。このバッフルプレートは、ガス流れに沿って伸縮可能となるように、保持機構部によって保持される。流路にガスが流れるミスト捕集時には、ガスに含まれるミストをバッフルプレートの複数の蛇腹壁部に慣性衝突させて捕集することができる。
【0008】
これに対して、流路に洗浄液を噴射してバッフルプレートを清掃するときは、ミスト捕集時に比べてバッフルプレートが伸びて複数の蛇腹壁部が平坦状に倒れる。複数の蛇腹壁部が平坦状に倒れることによって、複数の蛇腹壁部の全てが洗浄液の流れ方向に沿って配置される。これにより、複数の蛇腹壁部の中に洗浄液の流れに対して死角になるような蛇腹壁部が含まれるのを無くすことができる。したがって、バッフルプレートの表面全体に概ね均等に洗浄液を作用させることができ、バッフルプレートに捕集されているミストを洗浄液の圧力によってバッフルプレートから剥離させることができる。この場合、バッフルプレートを清掃するためにミスト捕集装置を設置場所から取り外したり分解したりする等の作業を要しない。その結果、ミスト捕集装置の清掃にかかる工数を抑えることが可能になる。
【0009】
上述の態様によれば、清掃作業効率に優れたミスト捕集装置を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態1にかかる塗装ブースの全体図。
図2】実施形態1のミスト捕集装置の一部を示す斜視図。
図3】実施形態1のミスト捕集装置をバッフルプレートの幅方向から見た様子を模式的に示す側面図。
図4図2のミスト捕集装置をミスト捕集時の状態にて示す斜視図。
図5図3のミスト捕集装置をミスト捕集時の状態にて示す側面図。
図6図2のミスト捕集装置をバッフルプレート清掃時の状態にて示す斜視図。
図7図3のミスト捕集装置をバッフルプレート清掃時の状態にて示す側面図。
図8】実施形態2のミスト捕集装置をバッフルプレートの幅方向から見た様子を模式的に示す側面図。
図9図8のミスト捕集装置をミスト捕集時の状態にて示す側面図。
図10図8のミスト捕集装置をバッフルプレート清掃時の状態にて示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
上述の各態様の好ましい実施形態について以下に説明する。
【0012】
上述の態様のミスト捕集装置において、上記保持機構部は、上記バッフルプレートの一端部が固定される固定プレートを有し、上記固定プレートは、上記流路に露出しない対向空間を隔てて上記バッフルプレートと対向するように構成されるのが好ましい。このミスト捕集装置によれば、固定プレートとバッフルプレートとの間の対向空間にミストが流入してバッフルプレートの裏面に付着するのを抑制できる。これにより、バッフルプレートの裏面へのミストの付着によってバッフルプレートの伸縮動作が規制されるのを防ぐことが可能になる。
【0013】
上述の態様のミスト捕集装置において、上記保持機構部は、上記バッフルプレートの他端部が固定される可動プレートと、上記バッフルプレートが伸縮して上記複数の蛇腹壁部の向きが変わるように上記可動プレートを動かすための操作部と、を有するのが好ましい。このミスト捕集装置によれば、作業者が操作部を操作して可動プレートを動かすことによって、バッフルプレートの伸縮動作を強制的に行うことができる。これにより、バッフルプレートの表面へのミストの付着によってバッフルプレートが形状変化しにくくなっている場合であっても、バッフルプレートの伸縮動作を担保することができる。
【0014】
上述の態様のミスト捕集装置において、上記ガスは、塗装ブースの塗装室で発生した塗料ミストを含むミストガスであり、上記バッフルプレートは、上記塗装ブースの床面を形成するグレーチングの直下に設けており、上記グレーチングの通気部を通過した上記ミストガスが上記流路に流入するように構成されるのが好ましい。このミスト捕集装置によれば、バッフルプレートをグレーチングの直下に設けて、グレーチングの通気部に流路を連通させるため、塗装室に近い箇所で塗料ミストを効率良く捕集することができ、また、洗浄液によるグレーチングの清掃に併せてバッフルプレートの清掃をも同時に行うことが可能になる。
【0015】
以下、上述の態様のミスト捕集装置の具体的な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0016】
この実施形態を説明するための図面において、特にことわらない限り、ミスト捕集装置を構成するバッフルプレートが延びている長手方向を矢印Xで示し、このバッフルプレートの幅方向を矢印Yで示し、このバッフルプレートの複数が並置される並置方向を矢印Zで示すものとする。
【0017】
(実施形態1)
1.塗装ブース1の全体構造
図1に示されるように、実施形態1にかかる塗装ブース1は、例えば、自動車ボディであるワークWの噴霧塗装を行うのに用いられる。この塗装ブース1には、整流室2と、整流室2の下方に位置する塗装室3と、塗装室3の下方に位置する排気室7と、が設けられている。空調機8で温度および湿度が調整された空調風は、給気ファン8aから塗装ブース1の整流室2に供給される。この空調風は、整流室2で整流された後に塗装室3に流入し、塗装室3を下向きに流れる下降流を形成する。一方で、排気室7の空気は、排気ファン9によって屋外に排気される。これにより、塗装ブース1には気流によるダウンフローが形成される。
【0018】
塗装室3には、ワークWに向けて塗料Nを噴霧するための塗装ノズル4が設けられている。塗装ノズル4から噴霧された塗料Nは、当該塗装ノズル4から噴出する圧縮エアーの流れにしたがってワークWに塗布される。塗装室3でワークWに塗布されなかった塗料Nは、気流によるダウンフローにしたがって噴霧状の塗料ミストMとして下向きに流れる。このとき、塗料ミストMは、空気中に浮遊する、塗料Nの液体分子であり、粘着性を有する。本形態では、この塗料ミストMを被捕集物としている。
【0019】
塗装室3の床面は、グレーチング5によって形成されている。グレーチング5は、複数の穴からなる通気部5aが開口形成された格子状の部材である。このグレーチング5は、通気部5aにおいて通気性及び排水性を発揮するとともに、格子状の骨格部分において作業者が塗装室3を安全に移動できるような強度を持つ。このグレーチング5は、「すのこ」とも称される。塗装室3で発生した塗料ミストMを含むガスGは、グレーチング5の通気部5aを通過して下降する。ガスGは、空気を主体としたものであり、塗料ミストMに加えて、塗料Nに由来する揮発成分を含有するミストガスである。
【0020】
グレーチング5の直下には、実施形態1のミスト捕集装置10が設けられている。ミスト捕集装置10は、粘着性を有する塗料ミストMを捕集するためのものである。このミスト捕集装置10は、グレーチング5に一体化されていても良いし、グレーチング5とは別の部材に固定されていても良い。このミスト捕集装置10は、バッフルプレート11を備えており、グレーチング5の通気部5aに連通する流路6にこのバッフルプレート11が配置されるように構成されている。このため、塗料ミストMを含むガスGは、流路6を流下するときにバッフルプレート11と接触する。このとき、バッフルプレート11の表面に、粘着性を有する塗料ミストMが付着して捕集される。
【0021】
2.ミスト捕集装置10の構造
図2及び図3に示されるように、ミスト捕集装置10は、概して、複数のバッフルプレート11と、保持機構部20と、を備えている。
【0022】
2.1 バッフルプレート11の構造
複数のバッフルプレート11はいずれも、平面視で蛇腹形状(「ジグザグ形状」ともいう。)をなす板状部材である。複数のバッフルプレート11は、並置方向Zに互いに間隔を空けて並置されている。このとき、複数のバッフルプレート11は、隣接する2つのバッフルプレート11の間に蛇行した流路6が形成されるように、相対位置が定められている。複数のバッフルプレート11は、グレーチング5の通気部5aを通過したガスGがそのまま流路6に流入するように、グレーチング5の直下に設けている。
【0023】
バッフルプレート11は、洗浄水での清掃に耐え得る耐水性を有するものであるのが好ましい。例えば、耐水性を有する金属材料や樹脂材料などによってバッフルプレート11を成形したり、耐水性を有する素材でバッフルプレート11の表面をコーティングしたりすることができる。バッフルプレート11は、耐水性を有するため継続的な使用が可能になる。したがって、使用後のバッフルプレート11を廃棄物として燃焼処理する必要がなく、また、交換用のバッフルプレート11を取り置くための場所を確保する必要がない、という利点がある。
【0024】
バッフルプレート11は、ヒンジ13によって連結された複数の蛇腹壁部12を有する。複数の蛇腹壁部12は、同一形状のものである。ヒンジ13は、2つの蛇腹壁部12の間の部位の板厚を薄くした薄肉部によって構成されている。或いは、2つの蛇腹壁部12を回転ヒンジ(図示省略)で連結するようにしても良い。バッフルプレート11は、塗料ミストMを含むガスGが流れる流路6に複数の蛇腹壁部12がガスGのガス流れを横切るように配置される。なお、複数のバッフルプレート11を処理ケースに収容してもよい。また、塗料ミストMの捕集性能を高めるために、バッフルプレート11の表面を凹凸面としたり、バッフルプレート11の表面を塗料ミストMの付着性に優れた材料で塗装したりしても良い。
【0025】
複数の蛇腹壁部12は、第1蛇腹壁部12aと第2蛇腹壁部12bのいずれかに分類される。第1蛇腹壁部12aは、バッフルプレート11を流路6の入口側(図3の上側)から見て視認できる壁部である。これに対して、第2蛇腹壁部12bは、バッフルプレート11を流路6の入口側から見て第1蛇腹壁部12aで隠れて視認できない死角位置にある壁部である。
【0026】
2.2 保持機構部20の構造
保持機構部20は、バッフルプレート11をガスGのガス流れに沿って伸縮可能に保持する機能を有する。保持機構部20は、固定プレート21と、可動プレート22と、連結部材23と、操作用ハンドル25と、を有する。
【0027】
固定プレート21は、その上端部がグレーチング5に固定され、バッフルプレート11に沿って配置されている。この固定プレート21は、その厚み方向(並置方向Z)から見た平面視の大きさがバッフルプレート11と同一か或いはバッフルプレート11を若干上回るように寸法設定されている。このため、固定プレート21を厚み方向から見たときに、バッフルプレート11が固定プレート21で隠れるようになっている。固定プレート21には、1つ或いは2つのバッフルプレート11の一端部11a(図3を参照)が固定されている。すなわち、固定プレート21には、バッフルプレート11が片面に固定されたものと、バッフルプレート11が両面に固定されたものと、がある。
【0028】
固定プレート21は、隣接する2つのバッフルプレート11の間に形成された流路6に露出しない対向空間14を隔ててバッフルプレート11と対向するように構成されている。この対向空間14は、バッフルプレート清掃時に蛇腹壁部12を倒して逃がすための空間である。また、この対向空間14は、流路6から切り離されているため、バッフルプレート11のうち流路6に露出している表面とは反対側の裏面に、塗料ミストMが付着するのを防ぐのに効果がある。これにより、バッフルプレート11の裏面に塗料ミストMが固着してバッフルプレート11の伸縮動作が阻害されるのを抑制することができる。この場合、バッフルプレート11を形状変化させるために要する力が少なくて済む。
【0029】
可動プレート22は、バッフルプレート11の幅方向Yの両側を並置方向Zに延びるように設けられている。この可動プレート22には、全てのバッフルプレート11の他端部11bが固定されている。この可動プレート22は、バッフルプレート11の長手方向Xに延びる連結部材23の下端部に固定されている。連結部材23の上端部は、回動軸部24を介して操作用ハンドル25に連結されている。
【0030】
操作用ハンドル25は、バッフルプレート11が伸縮して複数の蛇腹壁部12の向きが変わるように可動プレート22を動かすための操作部である。作業者が操作用ハンドル25を手指で直に把持して操作することにより、この操作用ハンドル25の位置を、連結部材23に対して横向きに寝かした第1位置P1に設定したり、いずれも連結部材23に沿って立てた第2位置P2及び第3位置P3(図6を参照)に設定したりすることができる。このように、本形態では、バッフルプレート11は、操作用ハンドル25によって、その形状を変化させることができる可変式のものとなっている。グレーチング5には、連結部材23及び操作用ハンドル25をともに、バッフルプレート11の長手方向Xに延ばした状態で同時に挿通させることができる挿通穴5bが貫通形成されている。
【0031】
3.ミスト捕集装置10の使用状態
次に、図4図7を参照しながら、ミスト捕集装置10の使用状態について説明する。
【0032】
3.1 ミスト捕集時
図4及び図5に示されるように、ミスト捕集装置10によって塗料ミストMを捕集する場合、操作用ハンドル25が第1位置P1に設定される。これにより、各バッフルプレート11は、複数の蛇腹壁部12が交互に折り返されて蛇腹形状をなす初期状態Q1に設定される。各バッフルプレート11が初期状態Q1に設定されることによって、互いに隣接する2つのバッフルプレート11の間に、蛇行した流路6が形成される。
【0033】
ミストMを含むガスGは、塗装ブース1の塗装室3からグレーチング5の通気部5aに流入する。このとき、ミストMの一部がグレーチング5に付着して堆積する。グレーチング5の通気部5aを通過したガスGは、蛇行した流路6の入口側から下向きに直線的に流入する。各バッフルプレート11において、第1蛇腹壁部12aは、ガスGのガス流れ方向の前側に傾斜配置されており、第2蛇腹壁部12bは、この第1蛇腹壁部12aよりもガス流れ方向の後側に傾斜配置されている。ガスGに含まれている塗料ミストMは、慣性を持っているため、蛇行した流路6における急速な方向変化についていけずに、第1蛇腹壁部12aに慣性衝突する。すなわち、第1蛇腹壁部12aが塗料ミストMに対して障害物となる。塗料ミストMは、粘着性を有するため、主に第1蛇腹壁部12aの表面に付着して捕集される。また、塗料ミストMは、第2蛇腹壁部12bに接触することによって、その表面に同様に付着して捕集される。一方で、バッフルプレート11と固定プレート21との間の対向空間14は、流路6から切り離されており、この対向空間14にガスGが流れ込むことがない。したがって、バッフルプレート11の裏面への塗料ミストMの付着が防止される。
【0034】
3.2 バッフルプレート清掃時
塗装ブース1では、グレーチング5及びミスト捕集装置10に塗料ミストMが付着して堆積すると、気流の流路が塞がれるため、気流によるダウンフローの形成を維持できなくなる。したがって、このような不具合が発生するのを防ぐべく、グレーチング5及びミスト捕集装置10の定期的な清掃が実施される。
【0035】
図6及び図7に示されるように、ミスト捕集装置10のバッフルプレート11を清掃するとき、操作用ハンドル25の位置が第1位置P1から第2位置P2を経て第3位置P3に設定される。操作用ハンドル25の位置が第1位置P1から第3位置P3まで切り替わる過程で、可動プレート22は、操作用ハンドル25及び連結部材23を介して強制的に押し下げられ、各バッフルプレート11の他端部11bを引っ張りながら下降する。これにより、各バッフルプレート11は、初期状態Q1では交互に折り返されていた複数の蛇腹壁部12が平坦状に形状変化した伸長状態Q2に設定される。
【0036】
本形態のミスト捕集装置10は、操作用ハンドル25の操作を利用することによって、流路6にガスGが流れるミスト捕集時(初期状態Q1)に比べてバッフルプレート11が伸びて複数の蛇腹壁部12が固定プレート21に沿って平坦状に倒れるように構成されている。各バッフルプレート11が伸長状態Q2に設定されることによって、互いに隣接する2つのバッフルプレート11の間で蛇行していた流路6の形状が上下に直線状に延びるように変化する。
【0037】
伸長状態Q2は、複数の蛇腹壁部12がバッフルプレート11の長手方向Xに一直線に並んで各バッフルプレート11の表面が完全な平坦面をなす状態であっても良いし、或いは、図6及び図7に示されるように、各バッフルプレート11の表面が若干の凹凸面をなす状態であっても良い。要するに、バッフルプレート11の伸長状態Q2は、その初期状態Q1に比べて、複数の蛇腹壁部12が固定プレート21に沿って倒れた状態であれば足りる。複数の蛇腹壁部12の平坦度合いが高くなるほど、洗浄水Cをバッフルプレート11の表面全体に均等に作用させることができ、バッフルプレート11の清掃効果を高めるのに効果がある。
【0038】
本形態では、操作用ハンドル25の操作を利用してバッフルプレート11を初期状態Q1から伸長状態Q2に強制的に切り替えるようにしている。このため、ミスト捕集時にバッフルプレート11に塗料ミストMが固着していることが要因で、バッフルプレート11を形状変化させるのに比較的大きい力が必要な場合であっても、操作用ハンドル25の操作を利用すれば、バッフルプレート11を伸長状態Q2に確実に設定することができる。
【0039】
各バッフルプレート11が伸長状態Q2に設定された状態で、流路6に入口側から洗浄水Cを噴射する。このとき、各バッフルプレート11の複数の蛇腹壁部12の全てが洗浄水Cの流れ方向に沿って配置されており、流路6が直線状に延びている。これにより、全ての蛇腹壁部12の表面に洗浄水Cの水流を概ね均一に作用させることができる。したがって、バッフルプレート11に捕集されていた塗料ミストMを洗浄水Cの水流によって物理的に剥離させることができる。その結果、流路6に洗浄水Cを噴射するのみでバッフルプレート11の全体を清掃することが可能になる。
【0040】
これに対して、各バッフルプレート11を初期状態Q1に設定したままの状態で流路6に洗浄水Cを噴射すると、複数の蛇腹壁部12のうち第2蛇腹壁部12bが洗浄水Cの流れに対して死角になる。したがって、流路6に洗浄水Cを噴射するのみでは、バッフルプレート11の全体を清掃することができず、ミスト捕集装置10を取り外して分解してバッフルプレート11の清掃を行う必要がある。
【0041】
バッフルプレート11の清掃は、グレーチング5の清掃と併せて実施するのが好ましい。すなわち、塗装室3からグレーチング5の通気部5aに向けて洗浄水Cを下向きに噴射すれば、通気部5aを通過した洗浄水Cがそのまま流路6に流入して、バッフルプレート11の清掃に供される。このように、グレーチング5の清掃に使用する洗浄水Cを、バッフルプレート11の清掃にも兼用できる。また、洗浄水Cに代えて、専用の洗浄液を使用するようにしても良い。
【0042】
バッフルプレート11の清掃後は、次回の塗料ミストMの捕集に備えて、操作用ハンドル25を第3位置P3から第2位置P2を経て第1位置P1に戻す。これにより、バッフルプレート11が伸長状態Q2から初期状態Q1に復帰する。
【0043】
4.作用効果
実施形態1のミスト捕集装置10において、バッフルプレート11は、塗料ミストMを含むガスGが流れる流路6に複数の蛇腹壁部12がガスGのガス流れを横切るように配置される。このバッフルプレート11は、ガス流れに沿って伸縮可能となるように、保持機構部20によって保持される。流路6にガスGが流れるミスト捕集時には、ガスGに含まれる塗料ミストMをバッフルプレート11の複数の蛇腹壁部12(特に、第1蛇腹壁部12a)に慣性衝突させて捕集することができる。
【0044】
これに対して、流路6に洗浄水Cを噴射してバッフルプレート11を清掃するときは、ミスト捕集時に比べてバッフルプレート11が伸びて複数の蛇腹壁部12が平坦状に倒れる。複数の蛇腹壁部12が平坦状に倒れることによって、複数の蛇腹壁部12の全てが洗浄水Cの流れ方向に沿って配置される。これにより、複数の蛇腹壁部12の中に洗浄水Cの流れに対して死角になるような蛇腹壁部12が含まれるのを無くすことができる。したがって、バッフルプレート11の表面全体に概ね均等に洗浄水Cを作用させることができ、バッフルプレート11に捕集されている塗料ミストMを洗浄水Cの水圧によってバッフルプレート11から剥離させることができる。この場合、バッフルプレート11を清掃するためにミスト捕集装置10を設置場所から取り外したり分解したりする等の作業を要しない。その結果、ミスト捕集装置10の清掃にかかる工数を抑えることが可能になる。
【0045】
上述のように、実施形態1によれば、清掃作業効率に優れたミスト捕集装置10を提供することができる。
【0046】
また、ミスト捕集装置10によれば、固定プレート21とバッフルプレート11との間の対向空間14に塗料ミストMが流入してバッフルプレート11の裏面に付着するのを抑制できる。これにより、バッフルプレート11の裏面への塗料ミストMの付着によってバッフルプレート11の伸縮動作が規制されるのを防ぐことが可能になる。
【0047】
また、ミスト捕集装置10によれば、作業者が操作用ハンドル25を操作して可動プレート22を動かすことによって、バッフルプレート11の伸縮動作を強制的に行うことができる。これにより、バッフルプレート11の表面への塗料ミストMの付着によってバッフルプレート11が形状変化しにくくなっている場合であっても、バッフルプレート11の伸縮動作を担保することができる。
【0048】
また、ミスト捕集装置10によれば、バッフルプレート11をグレーチング5の直下に設けて、グレーチング5他端部の通気部5aに流路6を連通させるため、塗装室3に近い箇所で塗料ミストMを効率良く捕集することができ、また、洗浄水Cによるグレーチング5の清掃に併せてバッフルプレート11の清掃をも同時に行うことが可能になる。
【0049】
なお、実施形態1に特に関連する変更例では、作業者が操作用ハンドル25を手指で直に操作することに代えて、モータや流体シリンダ等のアクチュエータを利用して可動プレート22を動かすようにしても良い。
【0050】
次に、上述の実施形態1に関連する他の形態について図面を参照しつつ説明する。他の形態において、実施形態1の要素と同一の要素には同一の符号を付しており、当該同一の要素についての説明は省略する。
【0051】
(実施形態2)
図8に示されるように、実施形態2のミスト捕集装置10Aは、保持機構部20が連結部材23及び操作用ハンドル25を具備しない点で、実施形態1のミスト捕集装置10と相違している。
【0052】
ミスト捕集装置10Aは、洗浄水Cの水圧を利用してバッフルプレート11を初期状態Q1から伸長状態Q2に切り替えるように構成されている。各バッフルプレート11は、流路6にガスGが流れるミスト捕集時に可動プレート22による重量に抗して初期状態Q1を維持できるような形状保持性を有する。また、各バッフルプレート11は、流路6に洗浄水Cが流れるバッフルプレート清掃時に洗浄水Cの水圧によって初期状態Q1から伸長状態Q2まで弾性的に形状変化するような形状可変性を有する。なお、必要に応じて、可動プレート22を省略しても良い。
【0053】
その他の構成は、実施形態1と同様である。
【0054】
図9に示されるように、各バッフルプレート11は、ミスト捕集時に上記形状保持性を発揮して初期状態Q1を維持するように構成されている。これにより、実施形態1の場合と同様に、ガスGに含まれる塗料ミストMをバッフルプレート11で捕集することができる。
【0055】
これに対して、図10に示されるように、各バッフルプレート11は、バッフルプレート清掃時に上記形状可変性を発揮して初期状態Q1から伸長状態Q2に切り替わるように構成されている。バッフルプレート清掃時に、各バッフルプレート11がその形状保持性に抗して伸長状態Q2になるように、流路6に噴射する洗浄水Cの水圧を高圧に設定する。伸長状態Q2のバッフルプレート11に洗浄水Cを作用させることによって、実施形態1の場合と同様に、洗浄水Cによってバッフルプレート11の全体を清掃することができる。洗浄水Cの水圧から解放されたバッフルプレート11は、上記形状保持性にしたがって伸長状態Q2から初期状態Q1に復帰する。
【0056】
実施形態2のミスト捕集装置10Aによれば、保持機構部20の構造を簡素化して、装置コストを低く抑えることができる。また、洗浄水Cの噴射を停止すればバッフルプレート11が初期状態Q1に復帰するため、バッフルプレート清掃後にバッフルプレート11を伸長状態Q2から初期状態Q1に復帰させるための操作を要しない。
【0057】
その他、実施形態1の場合と同様の作用効果を奏する。
【0058】
本発明は、上述の形態のみに限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の応用や変更が考えられる。例えば、上述の形態を応用した次の各形態を実施することもできる。
【0059】
上述の実態では、複数のバッフルプレート11を並置する場合について例示したが、バッフルプレート11の数は特に限定されるものではなく、必要に応じて1つのバッフルプレート11のみを使用しても良い。
【0060】
上述の実態では、自動車ボディの塗装設備に使用されるミスト捕集装置10,10Aについて例示したが、必要に応じて、これらミスト捕集装置10,10Aを、自動車以外の他の分野の塗装設備に適用することもできる。
【0061】
上述の形態では、塗料ミストMを捕集する技術について例示したが、被捕集物は塗料ミストMのみに限定されるものではなく、例えば、粘着性を有するオイルミストを被捕集物とすることができる。
【符号の説明】
【0062】
1…塗装ブース、 3…塗装室、 5…グレーチング、 5a…通気部、 6…流路、 10,10A…ミスト捕集装置、 11…バッフルプレート、 11a…一端部、 11b…他端部、 14…対向空間、 12,12a,12b…蛇腹壁部、 20…保持機構部、 21…固定プレート、 22…可動プレート、 25…操作用ハンドル(操作部)、 C…洗浄水(洗浄液)、 M…塗料ミスト(ミスト) G…ガス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10